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作成:2002/09/11
更新:2008/11/02

ウルフ竜機兵団 Wolf's Dragoons



 最大にして最高の傭兵部隊「ウルフ竜機兵団」。
 氏族侵攻後の3051年、彼らは自らの出自を明らかにします。氏族が送り込んだ調査部隊だったのです。
 classicbattletechより。
 略歴年表は、竜機兵団の歴史をまとめたものです。

 ウルフ竜機兵団の編成(3028年)
 ウルフ竜機兵団(3059年)
 ウルフ竜機兵団(3067年)






ウルフ竜機兵団略歴年表

2980年
氏族(エクソダスしたケレンスキー艦隊の生き残り)が中心領域への帰還を画策し、情報収集を始める。

3000年
族長会議にて中心領域へ先遣隊を派遣することが決まる。

3004年
ウルフ竜機兵団が出発する。部隊はウルフ氏族のフリーボーンの戦士より編成されていた。総司令官ジェイム・ウルフ。

3005年
恒星連邦の辺境デロスIVに到着、出自を隠したまま傭兵として契約する。

3006年
ハロランVにて、リャオ家の2個連隊を撃破する。ウルフ竜機兵団の初仕事。

3008年
ニューアランゴンの戦い。傭兵ワコー特戦隊司令官の息子を戦死させ恨みを買う。

3009年
報告と補給のため、一時氏族世界に戻る。

3010年
恒星連邦を離れ、リャオ家と契約する。

3014年
ウルフ竜機兵団は自由世界同盟のアントン・マーリックの元へ送られる。アントンは兄のヤノス・マーリックに対し反乱を企てており、隣国のマクシミリアン・リャオが密かに手を貸していた。独立中隊“ブラックウイドウ”が新たに創設される。

3015年
敗色濃厚で追いつめられたアントン・マーリックはウルフ竜機兵団に無分別な命令を下す。ウルフ大佐が拒絶すると、連絡士官となっていた弟のジョシュア・ウルフが処刑される。竜機兵団は逆襲に出てアントンを抹殺する。このとき手を下したのはブラックウイドウとナターシャ・ケレンスキーだった。その後、ヤノス・マーリックが竜機兵団を雇うこととなる。

3019年
ヘスペラスIIの戦い。作戦は失敗したものの、ライラ共和国のカトリーナ・シュタイナー国家主席に強い印象を与える。再び氏族宙域に戻り、補給と族長会議への報告を行う。そのかたわら、ウルフ氏族長ケルリン・ワードと密かに会合を持ち、特別な命令を受ける。もう二度と彼らが氏族に戻ることはなかった。

3020年
ウルフ氏族は新しい装備を中心領域に持ち帰った。加えて、先進技術データ、氏族作戦報告書、旧星間連盟記録文章まで携えていた。それによると惑星アウトリーチには、まだ発見されていない工場と保管庫があった。部隊は新たにライラ共和国と契約する。

3023年
前触れなくシュタイナーの元を去り、ドラコ連合と契約。ホフの戦いでダヴィオン家のエリダニ軽機隊を撃破する。クリタの連絡士官ミノブ・テツハラが惑星クエンティンにてジェイム・ウルフの命を救う。彼はその後リュウケン連隊(ウルフ竜機兵団を模範とした新部隊)の創設者となる。

3028年
ウルフ竜機兵団とドラコ連合の信頼関係は次第に悪化していき、契約が切れると同時に、惑星ミザリーにおいて決闘が行われる。この戦いでジェイム・ウルフは盟友のミノブ・テツハラと戦うことになる。最終的に勝利を収めたものの、部隊は甚大な損害を被った。またミノブ・テツハラも責任を取り腹を切った。ウルフ大佐は、メリッサ・シュタイナーの結婚式の場において、ドラコ連合に挑戦を宣言する。

3030年
ダヴィオン家と再契約した竜機兵団は、第四次継承権戦争でクリタ軍と激しくぶつかりあった。すべてが終わると部隊は1個連隊規模にまで打ち減らされていた。恒星連邦は惑星アウトリーチを傭兵に与えた。

3031年
ジェイム・ウルフは戦災孤児を集め訓練するなどして部隊の再建に乗り出す。また氏族の技術により、ウルフ竜機兵団版のトゥルーボーンを産み出し始めた。増強されたブラックウイドウ大隊が傭兵任務に復帰する。

3032年
惑星首都のハーレフに雇用ホールを開設する。

3035年
ベータ連隊が復帰。ブラックウイドウ大隊は教導部隊となり、対氏族戦術を竜機兵団員に教え込む。

3037年
アルファ連隊再建。

3039年
ガンマ連隊が契約できる状態となる。

3042年
エプシロン連隊再建。

3045年
デルタ連隊再建。元の5個連隊に戻る。

3048年
氏族は中心領域への侵攻を決定する。しかしウルフ竜機兵団は族長会議の帰還命令を無視し、氏族から反逆者の烙印を押される。代わりに、ウルフ氏族長ケルリン・ワードの過去の命令に従い、戦力をアウトリーチに集める。

3050年
氏族の本格的な侵攻開始。大族長レオ・シャワーの死に際して、攻勢が一時的に停止する。新たな大族長を選定するに当たり、全ブラッドネーム保持者に招集命令が下る。これに応じ、ナターシャ・ケレンスキーは氏族へと戻っていった。

3051年
侵攻が止まっているあいだに、ジェイム・ウルフは各国指導者をアウトリーチに呼び寄せ、氏族のデータ・戦術を教え込む。ルシエンの戦いにて、仇敵ドラコ軍と肩を並べて戦い、ノヴァキャット氏族、スモークジャガー氏族を撃破する。

3052年
コムスターにかわり、アウトリーチで傭兵斡旋業を開始する。それぞれの部隊に竜機兵団評価値をつける。

3055年
ウルフ竜機兵団内戦「エルソンの挑戦」。ルシエンでボンズマンとなった歩兵隊長エルソン・ノヴァキャットが、ジェイム・ウルフに反旗を翻す。彼はマッケンジー・ウルフ(ウルフ大佐の息子)を殺し、孫のアルピン・ウルフを擁立しようと考える。しかしメック戦士メーヴの活躍などにより、反乱は集結する。この事件のあと、竜機兵団の結束はさらに強まり、ウルフパックと呼ばれるようになる。

3058年
コベントリの戦い。ジェイドファルコン氏族の侵攻に対し、デルタ連隊がエリダニ軽機隊とともに派遣される。

3067年
本拠地のアウトリーチがワード・オブ・ブレイクによって攻撃され、部隊はほぼ壊滅する。ウルフ大佐もその際に死亡。生き残りがアークロイヤルに避難する。





ウルフ竜機兵団 3055

 その名は、技術、勇気、プロフェッショナリズム、革新を意味する。何世代にも渡って、ミステリアスで高度に訓練されたウルフ竜機兵団は、中心領域の傭兵のスタンダードを定めてきた。彼らは先進的なバトルメックと優れたトレーニングを駆使して、中心領域が用意した最高のメック戦士たちをうち破ってきた。創設者ジェイム・ウルフの指揮の下で、彼らの戦場での規律、都市ハーレフの雇用ホール、傭兵評価と契約仲介の復興、アウトリーチの広範囲な訓練施設などによって、竜機兵団は現存する他の傭兵部隊よりさらに傭兵業の職業化を果たした。

 第四次継承権戦争で、竜機兵団の約1/6の生命が奪われ、部隊はほぼ壊滅した。新兵に戦災孤児を補充して(竜機兵団の革新の一例である)、その世代のうちに部隊は再建された。部隊が所有しているメック製造施設(他の革新の例)も、部隊の驚くべき回復に寄与した。また同時にほとんどの傭兵部隊が背負ってしまう不安定な経済から竜機兵団を解放した。

 これらの業績は彼らの傭兵伝説を不動のものとしたが、氏族の侵攻を食い止めた竜機兵団の役割によってこそ、彼らは中心領域の年代記にその名を記すこととなったのである。コムガードがツカイードで英雄的な活躍をしたにもかかわらず、もし竜機兵団が氏族に関する詳細な知識を喜んで中心領域の権力者たちに渡さなかったら、継承国家は侵略者の猛攻の前に陥落していたかもしれない。

 これら賞賛すべき事柄の長いリストは、普通の傭兵部隊にとって考えられないことで、他のすべての傭兵部隊からかけ離れている。2世代にわたって竜機兵団は、ジェイム・ウルフ――最良の戦術家、最高の戦略家、抜け目ない政治アドバイザーの手によって率いられてきた。竜機兵団は中心領域で最高の戦士であり、ウルフは最良の司令官だった。

 最近、ウルフ大佐に対する反乱が起こり、彼らは没落・分解してしまうのではないかと予言された。結果、竜機兵団は悲観論者を無視して、猛烈で致命的な試練を切り抜けた。内戦の試練によって、彼らはより団結が強まった。部隊の新たな力と熱烈な忠誠を反映して、専門家たちは新しい竜機兵団を「ウルフパック」と呼んだ。その名が定着しようとしまいと、竜機兵団が将来の戦いで生き残っていくことに、誰も疑いを持たない。


竜機兵団の妥協:

 3000年、ゴーストベア氏族長ナディア・ウィンソンは、侵攻派の優位を感じて、投票の強要を試みた。しかしウルフ氏族長ケルリン・ワードが、賢い妥協案を示唆して、彼女を妨害した。そのような重要な決定を下すには、まだ情報が充分でないとケルリン・ワード氏族長は主張した。よって、傭兵に偽装した大規模な氏族軍を送り込み、中心領域の軍備、経済、政治を探り、未来の敵の力量と欠点を詳細に族長会議に報告させよう、そう彼は提案したのである。

 族長会議はその計画が優れていると認めた。そしてウルフ氏族は部隊を招集する名誉を与えられた。最高の戦士たちを危険にさらすよりはと、ウルフ氏族はフリーバースや低く見られていた戦士を使うことにした。もし彼らが良い働きを見せれば、遺伝子プールに加えられることによって報われるだろう。

 この部隊に「ウルフ竜機兵団」の名が授けられ、複合連隊をジェイム、ジョシュア・ウルフが率いた。彼らはふたりともフリーバースだったため、論争の種になった。氏族の多くはこの選択に躊躇した。しかし族長会議は最終的に、ウルフ氏族に竜機兵団の人員・装備を選ぶ権利があると認めた。竜機兵団の編成には何人かの志願したブラッドネーム保持者が含まれていた。その中には若くて、生きのいいナターシャ・ケレンスキーがいた。

 竜機兵団は3004年に中心領域へ向かった。彼らはブライアンキャッシュから持ち出した脱出(エクソダス)前の古いバトルメックを装備していた。先進技術が偶然、中心領域の手に渡るのを防ぐため、他の車両・装備は脱出前のパーツが使われた。若いフリーバースの「扶養家族」たちが付随して、放浪の傭兵部隊の外観は円熟した。

 彼らのやってきた位置がわからないように、長く遠回りの旅程を辿り、一年後、竜機兵団は中心領域に到達した。彼らは中心領域での仕事を通して、奉仕した政府・軍隊の子細な情報を集める歴史的な回路を作り上げた。3009年、部隊は修理のため氏族へと帰っていった。また彼らは中心領域に関する最初の報告書を提出した。

 竜機兵団の報告は、氏族が(中心領域と接触する前に)理解していたこととまったく対照的だった。中心領域は崩壊の間際でなく回復への途上にあると、竜機兵団は報告したのだ。この事実により族長会議は分裂した。氏族が新しい情報の意味を考えているあいだ、竜機兵団は中心領域への帰還と作戦の続行を命令された。

 竜機兵団は戻っていった。しかし第三次継承権戦争の終結が近づき、彼らの族長会議への諜報報告は理由もなく滞りはじめた。竜機兵団は中心領域において自由を見つけることが出来た。そこにはカーストがなく、活動的な戦士として老いていくことは望ましかった。一方で、ジョシュア・ウルフの死によって、ジェイム・ウルフと竜機兵団の生き残りは族長会議の大計から離れてしまったのかもしれない。族長会議は突然の竜機兵団の沈黙に備えていなく、どう反応すればいいのか、彼らの情報収集活動をどう補えばいいのか、わからなかった。

 3029年のおわりに恒星連邦とライラ共和国の合併を示唆する噂が辺境から流れてくると、守護派と侵攻派は新しく熱い論争の準備をした。もし噂が真実なら、そのような合併により、氏族が星間連盟を再興しようとする試みの大きな障害になると侵攻派は主張した。

 ウルリック・ケレンスキー族長(ウルフ氏族長ケルリン・ワードの後継者)は、第四次継承権戦争のニュースが氏族のもとに届くと、族長会議の投票を充分に遅らせた。この新しい戦争によって、中心領域統一が間近という侵攻派の主張から、熱気のほとんどを奪い去った。第四次継承権戦争が終わるまで投票を延期すべきだ、というウルリック族長の提案は優位を保った。提案はかろうじて受理されたが、ウルリック族長はもっとも急進的な侵攻派のジェイドファルコン指導者と敵対した。


侵攻:

 わたしは、〈結社〉が氏族侵攻の決定的な引き金になったことに気づいて、あぜんとなった。ある日、ROMの探査船「アウトバウンドライト」がハントレスのジャンプポイントに現れた。この惑星は氏族スモークジャガーの居住地だった。中心領域が氏族領域を発見する寸前なのではないかと、レオ・シャワー族長は恐れた。そして船と乗組員を無事なまま拿捕せよと命じた。捕まえたことを族長会議にすぐ知らせるかわりに、レオ族長は数日間、探査船の乗組員を尋問した。

 最終的に発見を他の氏族に知らせたとき、レオ族長は中心領域の情勢とコムスター(以前は氏族が知らなかった勢力)がどのようなものかについて豊富な知識を得ていた。族長レオ・シャワーは知り得た情報を操作して、氏族間の大論争を再開し、いくつかの新しい問題について考えさせた。最も説得力があったのは、我らの使命によって氏族の位置がすぐ中心領域に知られてしまうかもしれない、というレオ族長の主張だった。しかし族長会議の参加者たちは、中心領域軍が氏族領域を侵攻するとは考えなかった。族長レオ・シャワーは中心領域でなにが起こってるかを暴いた。明白な事実として、連邦=共和国は戦いによって証明されていた。またロステックは突然の回復をみせ、中心領域は屠殺場から遠く離れつつあった。連邦=共和国は残った中心領域の国家を征服するかもしれないし、星間連盟を復活させるかもしれない、そう族長は推測した。これはすべての氏族人が人生をかけて達成しようとしている願望の猿真似である。非常に説得力のある論証だった。

 結果、族長会議の投票で侵攻が決まった。ウルフ氏族だけが反対にまわった。氏族長ウルリック・ケレンスキーは、ウルフ氏族による拒絶の神判を要求した。オッズは16対1で始まったが、交戦入札によって4対1まで削減された。ウルフ氏族の戦士たちは勇敢に戦った。特に第3星団隊は戦いの矢面に立った。彼らはもう少しでレオ・シャワー族長と彼の軍勢から勝利をさらうところだったが、勝ったのは一部でしかなく、打ちのめされたウルフ軍は撤退した。レオ・シャワー族長は侵攻支持派のなかで人気を集め、族長会議の大族長に選出された。中心領域侵攻の準備がすぐに始まった。彼らの計画はリバイバル作戦と名付けられた。

 レオ・シャワー大族長はすぐにでも人生の野望が達成されるであろうことに満足していた。長年、彼はウルフ竜機兵団を軽蔑していたにもかかわらず、「野蛮な内地にいる我らが勇敢な戦士たち、帰還せよ」と呼びかけ、正式な帰還命令を発した。もはや信頼がおけなくなっていたウルフ氏族に対する、最後の呼びかけであった。これによってウルフ氏族が暗に疑われることを、彼は望んでいた。竜機兵団で唯一生き残ったブラッドネーム保持者、ナターシャ・ケレンスキーが召喚に応じ、これによって大族長の主張が正しいように見えた。

 侵攻が止まったのは、コムスターが地球争奪戦の代理戦場にツカイードを用いたときである。もし氏族が勝ったら地球は彼らのものになり、負けた場合、3067年が終わるまでの15年間、停戦となる予定だったのである。





アントンの反乱

名前:ジェイム・ウルフ
役職:司令官、ウルフ氏族竜機兵団遠征隊(ウルフ竜機兵団)
階級:大佐
年齢(3015年):35

 ウルフ氏族のメック戦士ジョン・ヴィッカーズとブリジット(商人階級)の息子、ジェイム・ウルフはエデン飛び地領にあるアップルゲートの農業居住地で生まれた。通例のごとく、10歳でジェイムはどの階級がふさわしいかのテストを受けた。飛び抜けた反射神経と平均以上の知性の組み合わせを披露した、この若きフリーボーンは、戦士階級に入るための訓練を受けるというたぐいまれな名誉を賜った。ガンマ10シブコに割り振られた、成長途上のジェイムは、ヴィッカーズの血統によくある小柄で筋肉質な体型を継承した。ジェイムは古いアーチャーを操縦し、階級の神判での勝利を得た。トゥルーボーンの操縦するブラックホークを撃墜し、その後、ソアに見事なレーザーの一撃をもらって、損傷していたバトルメックが行動不能となったのである。

 3000年、メック戦士として、エプシロン銀河隊のショエール守備星団隊に配属されたジェイムは、星団隊が所有の神判でキルケの採掘権を守っていた際に、ノヴァキャット三連星隊を撃破するのを手助けし、すぐに頭角を現した。戦場でのキャットに対する勇敢な行動は、ジェイムに前線部隊での地位をテストする機会を与えた。地形の巧みな利用で相手を敗ったジェイムは、対戦相手が乗っていたソアをアイソーラ(戦利品)とし、第328強襲星団隊でスターコマンダーの地位を我がものとしたのである。スターキャプテン・ナターシャ・ケレンスキーの指揮の下、ジェイムは、パクストンでダイアモンドシャークを、エデンでジェイドファルコンを叩くのを助け、3003年、ケレンスキーのスターコーネル昇進後に、苦もなくスターキャプテンになったのだった。

 ウルフのブラッドネームを創設するという約束(ほとんど前代未聞の名誉)をもって、ワード氏族長はスターキャプテン・ジェイムと弟のジョシュアに、ウルフ竜機兵団の指揮をとらないかと持ちかけた。多くの氏族はこの選択に尻込みしたが、族長会議はウルフ氏族にふさわしい部隊と隊員を決める権利があると決定した。

 竜機兵団は辺境でいったん足を止め、戦艦とそのほかの装備を隠した……中心領域に竜機兵団がSLDF出身であることを見抜かれるだろうと前衛斥候が報告してきたのである。ジェイムはこの任務に選ばれた「一族郎党」の一人、エレンと結婚した。3005年の4月、恒星連邦の世界デロス上空に竜機兵団が現れ、地元の防衛隊にパニックを引き起こした。竜機兵団の指揮官がジェイム・ウルフ大佐と名乗り、竜機兵団が雇用主を探している傭兵であると地元司令官に通告すると、彼らはいくぶん落ち着いた。装備の良い5個連隊、支援部隊を持つ竜機兵団は、仕事を探すのに苦労することはなかった。ウルフ竜機兵団の指揮下で、ウルフ竜機兵団は精強にして腕の立つ傭兵部隊であるとの評判を確立した――その一方で、出自を尋ねられると、礼儀正しく首を振ったのだった。

 ジェイムがアルファ連隊を率いてカペラ大連邦国のステュクスで戦っていた時に、エレンは最初の子供、マッケンジーを出産した。マックは翌年、妹のリンとブリジットを得た。保安上の理由により、家族のことは中心領域の権力者たち、竜機兵団の大部分の目から隠された。子供たちは、カーティス・ウィニングハムの孤児、ダーネル、キャリー、サラとされたのだった。アントン・マーリックの手によって、弟のジョシュア、妻エレン、娘のリン、ブリジットが死んだのは、ジェイムを打ちのめしたに違いない。偶然にも、マッケンジーだけが虐殺を逃れた。彼は恒星連邦で言語障害の治療中だったのである。


竜機兵団の妥協

 ナディア・ウィンソン(ゴーストベア氏族長にして熱心な侵攻派)は、氏族の中心領域への帰還を争点にしようとした。ケルリン・ワードは、そのような重要な決定をするには、必要な情報が足りないと主張した。妥協案として、傭兵に偽装した一個部隊を中心領域に派遣し、将来の敵の強みと弱みに関する詳細な報告を入手することを、彼は提案した。族長会議はこれを受け入れ、主としてフリーバースと、その他の評価が低い戦士たちからなる部隊を招集する名誉をウルフ氏族に与えた。フリーボーンの「一族郎党」が放浪する傭兵部隊という外見を仕上げ、数名のブラッドネーム持ち戦士たち(ナターシャ・ケレンスキー含む)がこの任務に志願した。

 数ヶ月間、ゴリアテスコーピオン・ハートベノム星団隊の訓練を受けたのち、ウルフ竜機兵団は2004年に中心領域へと向かい、その後は有名な歴史の知る通りである。




名前:ジョシュア・ウルフ
役職:副司令官、ウルフ氏族竜機兵団遠征隊(ウルフ竜機兵団)
階級:少佐
年齢(3015年):34

 兄のように、ジョシュアはフリーバースの生まれにもかかわらず、戦士階級に入るための訓練を受ける名誉を与えられた。階級の神判の激闘の結果、ジョシュアはキルケの第二線級ショエール守備星団隊に配属された。ここで彼は兄と同じくらい腕が立つことを証明して見せた……ウルフ氏族ベータスリー鉱業施設群を巡る所有の神判で、スノウレイヴン氏族の第14戦闘星団隊に手痛い敗北を与えるのを手伝ったのである。レイヴンの気圏戦闘機は、守備隊を痛めつけていたが、突然キルケ特有の大嵐に遭遇した。レイヴンの航空支援が地上に戻ると、ジョシュアは千載一遇のチャンスをつかんで、三連星隊の生き残った隊員を率いて、即興の逆襲を行い、レイヴンの地上部隊を粉砕したのだった。

 キルケでの行動が評価され、ジョシュアは階級の神判を許され、前線部隊に入った――具体的には、エリート第328強襲星団隊のスターキャプテン・ナターシャ・ケレンスキー率いる三連星隊である。スターコマンダー・カーチャ(ナターシャ・ケレンスキーと同じシブコ出身のトゥルーボーン)に仕えたジョシュアはメック戦士としての特別な才能を発揮し続けた――3002年、エデンでのとある神判で、ジェイドファルコンを重要な瞬間に釘付けとし、3002年、スターコマンダーの階級に昇進した。

 ジェイムと並んでジョシュアはウルフ竜機兵団の指揮を持ちかけられた。ジェイムが氏族長となり、ジョシュアが副氏族長の役割をこなすのである。氏族偵察隊を組織するのに必要だった数ヶ月のうちに、ジョシュアの管理事務的な才能が発掘され、解放されたジェイムは、ゴリアテスコーピオン氏族の志願者の助けを借りて、竜機兵団の戦術的技能をとぎすますことが出来たのである。

 中心領域到達に際して、ジョシュアはジェイムの幕僚として仕え続け、すべての契約交渉に深く携わり、雇い主との連絡任務をこなした。ジョシュアは最期の瞬間にもこの役目を果たしていた……彼と27名の竜機兵団員、家族(ジェイムの妻、娘含む)は、アントン・マーリック兵に虜囚として捕らえられ、処刑されたのだった。


スパイダーとウルフ

 当初、ジョシュアに対するナターシャ・ケレンスキーの関心は、純粋に職業的なものだった。彼女はジェイムの手腕に多大な敬意を払うようになり、そしてジョシュアが同等の能力を発揮すると、三連星隊の損失(ダイアモンドシャークを破った時に被ったもの)を埋めるように要求したのである。第328強襲星団隊に共に仕え、強い友情の絆が、ケレンスキーとフリーボーン兄弟の間に生まれた。

 3003年、スターコーネルの地位に上昇したケレンスキーは、キャリアがここで止まってしまったことに気づいた。政治的忍耐がまったく欠けていたことは、重要な任務からはずされることを意味していたのである。さらに悪いことに、戦場で成功していたことから、他の氏族は入札を絞って彼女の星団隊を排除し始めた。結果、ウルフ氏族の敵が行きすぎた過剰入札をし、戦場での大敗を喫した一方で、ケレンスキーと第328は、他部隊が軍事的栄光を勝ち得ているのをサイドラインから見ていることになった。中心領域での作戦行動、冒険のチャンスに、性急なケレンスキーが飛びついたのは不思議ではない――たとえそれが、事実上、ポイントコマンダーの階級への降格を意味していたとしても(ワード氏族長は、ケレンスキーを連隊指揮官のような目立つ地位につけると、竜機兵団の正体のあからさまな手がかりになってしまうと感じたのである)。

 ジョシュアとナターシャの関係がいつ友人から恋人になったのか、それを語る記録は存在しないが、状況証拠によると、竜機兵団がカペラ大連邦国と契約していた際に、関係が始まったものと思われる。二人は関係を隠すのに苦労したのだが、ジェイムは何が起きていたかに気づいていたようだ。明らかにジョシュアの死は、ケレンスキーに大打撃を与えた。ニューデロスでの最期の戦闘後、彼女は「ブラックウィドウ」を自称して登場したのである。






友と敵 3028

チーム・バンザイ TEAM BANZAI

 ウルフ竜機兵団とチームバンザイのつきあいは、継承国家で最も奇妙な同盟の一つである。謎めいたB・バンザイ博士に指揮される、この革新的連隊は、常に中心領域の技術の最先端を走っているように見える。最近は恒星連邦のエンフォーサーを開発、改良し、伝えられるところによると、ライラのハチェットマンを設計したという。

 バンザイ博士とウルフ大佐の接触はきわめて内々のもので、それほど知られていない。竜機兵団の技術的進歩の多くは、チームバンザイの影響にあり、あるものはその逆である。このことは、竜機兵団とチームバンザイがアレクサンドル・ケレンスキーの子孫の諜報員で、正規軍が中心領域に帰還する準備のために偵察活動をしていることを示唆していると、主に「星間連盟工作員」論者は言っている。



ファドレ・シン FADRE SINGH

 3020年に雇われたセンチュリオンパイロット、ファドレ・シンはけして勇敢さを失うことがなく、竜機兵団の秘密のいくつかに関わっていた……ホフでの「不名誉」の前には。命令に背いたシンは、エリダニ軽機隊の戦線を通り抜けて、敵の補給庫にかなりの損害を与えた。残念ながら、部隊を見捨てたシンの性急な行動は、メック数機の破壊と小隊員一名の死をもたらしたのである。彼はきびしい譴責を受け、ミザリーに異動となった。そして彼が左遷と考える守備任務についたのである。

 竜機兵団に残る以外の選択肢がなく、ウルフ大佐に再アピールする機会を失ったシンは、ミザリーで惨めに過ごし、不幸で、間違った扱いをされていると感じた。よって、グリーグ・サムソノフ元帥が提案を持って近づいてきた時、シンが心変わりする準備は出来ていたのである。シンはクリタの士官になるチャンスに飛びつき、自ら竜機兵団の秘密の多くを漏らした。その中に、家族を避難させる部隊の極秘脱出プランがあったのである。

 シンはミノブ・テツハラのリュウケンで大佐となった。ミザリーの戦いの序盤に、竜機兵団はシンを捕らえた。彼が不遜な態度でウルフ大佐の前に出ると、ナターシャ・ケレンスキー大尉はすぐに彼を殺した。竜機兵団のだれも後悔することはなかった。



グレッグ・カー大佐 COLONEL GREGG CAR

 3020年、竜機兵団に加入したあとで、グレッグ・カー大尉は、命令系統の難解さを嫌っていることが明らかとなり、のちの3022年、中尉へ降格され、ふいに竜機兵団を辞め、自らの部隊グレッグ・ロング・ストライダーを結成した。連隊は、タマラー雇用ホールにいた荒仕事向きで不満を持ったメック戦士で組織されており、ライラ共和国のために働き、第四次継承権戦争では襲撃任務でのみその活動を見ることができた。

 カー(竜機兵団では真に満足していなかった)は、竜機兵団の秘密を教えてもらえなかった。これはおそらく正しい判断だったろう。カー大佐は前部隊にほとんど愛着がないと公言しており、公正な値がつけばすべてしゃべってしまうと思われるからだ。彼がクリタの諜報部と接触したことで、竜機兵団の保安手続きに損なわれた部分があるかもしれない。またジェイム・ウルフに、部隊運営上の重要な部分をいくつか変更させたかもしれない。



賞金稼ぎ THE BOUNTY HUNTER

 竜機兵団とエリダニ軽機隊のあいだにあるライバル関係とは違って、ナターシャ・ケレンスキーと賞金稼ぎの憎悪は極端で個人的なものである。

 メック戦士、傭兵界隈の伝説であり、憶測の対象になっている両者の敵対関係は、その原因が一般に知れ渡っていない。我々の調査チームが集中的に戦歴を洗い、市民、役人、関係者に話を聞いた結果、この有名な不和に至った経緯が明らかとなった。

 アントン・マーリックによる3014年の反乱は、多くの傭兵部隊を打ちのめした。このなかには、ウルフ竜機兵団と、賞金稼ぎの殺人専門集団が含まれていた。ノヴァ・ローマでの作戦中、賞金稼ぎとナターシャ・ケレンスキー(当時中尉だった)率いる重量級小隊は、ドーン川周囲の荒れ地にて、国王派を片づける任務を命じられていた。

 おそらく偵察任務についていた賞金稼ぎは、狭い渓谷に敵の姿はないと、ケレンスキーに信号を送った。黒のマローダーを操縦していた若き中尉は、その一帯にメックを移動させた。隠れていた国王派のメックが発砲し、彼女の部隊を粉々にした。ケレンスキー中尉は罠にかかったことに気がついた。絶望的な位置に押し込まれた彼女のマローダーはダメージを負い、オーバーヒートした。ケレンスキーは緊急脱出して、露出した大きな岩の上に落ち、気を失った。

 ウルフ大佐は、ケレンスキー中尉を免職にするどころか、彼女の素晴らしい経歴に、事件の責任はほとんどないと記録したのだった。その後、現在の悪名高いブラックウィドウ中隊となる部隊の指揮をとるよう、すぐ彼女に申し出た。そしてケレンスキー大尉は現在の「メック戦士の女王」となる道を歩き始めたのだ。

 一方で賞金稼ぎは、中心領域でもっとも憎まれる傭兵への道を歩み始めた。彼が乗るメックはナターシャ・ケレンスキーのマローダーに他ならず、いまは鮮やかな緑にペイントされ、目立つ記章をつけている。ケレンスキーはこの行為をけして許さなかった。またこの二人の幾度かの遭遇は、両者に消えない憎悪を植え付けたのである。もっとも苦々しいものとなったのは、最近のベネットIIIでの作戦で、ケレンスキー大尉と中隊は憎むべきライバルと一時的に同盟を組まねばならなくなった。

 実際に二人は短い間、協力したにもかかわらず、それが不和の雪解けを示すことはありそうにない。


ウィドウは語る THE WIDOW SPEAKS

 意識が回復すると、私は岩のふちまで這い、渓谷を見下ろしました。賞金稼ぎのメックとマーリック正規軍数機が、私の小隊の残りを回収しているのが見えました。賞金稼ぎ自身はグリフィンの中にいて、私のマローダーを引きずっていました。深刻なダメージを受けていましたが、修復可能でした。賞金稼ぎが私の小隊の回収権と引き替えに裏切ったのがわかりました。見ていると、国王派の歩兵隊がライフルマンからオルモス軍曹を引き出しました。彼は生きてはいませんでした。頭を撃ち抜かれており、賞金稼ぎと国王派は死体を残していきました。

 賞金稼ぎとマーリックは私が死んだと考えたのでしょう。私を捜したりしませんでした。この査問の結果がどうなろうとも、辞令が許すかどうかにかかわらず、私はこの屈辱、苦痛、損失を賞金稼ぎに返してやるつもりです。ありがとうございます。

 ――竜機兵団査問委員会でのケレンスキー中尉の証言、3028年アンティンに残された竜機兵団の記録から発見された




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