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作成:2002/09/16
更新:2004/08/05

ツカイードの戦い The Battle of Tukayyid



 3050年より始まった氏族の中心領域侵攻。ケレンスキーの末裔たちは、強力なオムニメックで旧ライラ領、ドラコ領を蹂躙し、新国家自由ラサルハグ共和国を滅亡寸前にまで追い込みます。
 氏族の目標地点は地球。この惑星は人類の発祥の地であり、旧星間連盟の中心であり、現在ではコムスターの本拠地です。氏族の思惑に気づいたコムガード(コムスター軍)の戦司教(総司令官)アナスタシウス・フォヒトは、氏族と戦うために立ち上がります。
 コムスターは平和な中立組織を装いつつも、継承国家に匹敵する大軍団を組織していました。その序列には星間連盟時代の強力なバトルメックを含んでいます。しかしいかんせん実戦経験に乏しく、戦司教フォヒトは頭を悩ませます。
 そして3052年、地球の支配権を賭け、コムガード25個師団(50個連隊)、氏族連合軍25個銀河隊(ギャラクシー)が惑星ツカイードで激突したのです。
 classicbattletechより。




ツカイード:氏族撃破のレッスン


 コムスターの戦司教は多大な時間をかけて、氏族と各中心領域軍の間で行われた戦いの記録を学び、氏族の戦闘スタイルにひとつの弱点を見つけたと感じた。彼はツカイードの戦いにおいて敵のアキレス腱を攻撃することに決めた。氏族の戦闘哲学は、迅速、決定的攻撃、短期強襲からなることを、フォヒトは知っていた。氏族は素早く攻撃し、素早い勝利をあてにしていて、長期作戦を進めるのに必要な後方支援が困難なのだ。

 戦司教は注意深く防衛計画を練った。一ヶ月以上、修理部品と弾薬を供給できるように充分な量を備蓄した。彼の部隊を氏族に直接ぶつけるよりもいやがらせ攻撃に使って、ツカイードの戦いを引き延ばし、作戦中の氏族の支援限度を超えさせようと考えていた。

 氏族軍は戦闘の経験において圧倒的な優位に立っていた。フォヒトのコムガードは数十年間、戦闘訓練を続けていたにもかかわらず、いまだ戦争を経験していなかった。経験不足を補うため、戦司教はタモ山脈の深い塹壕から戦いを調整しようと試みた。バーチャルリアリティを利用すれば、ツカイードのどこにいる部隊でも、必要に応じて個々に指揮できた。

 侵攻に参加した6氏族が、ツカイードのそれぞれ2都市ずつ攻撃した。スモークジャガー氏族はディンジュ・ハイツとポート・レイシスを攻撃する。ノヴァキャット氏族の目標はジョジとトスト。ゴーストベア氏族はスパナクとルークを狙う。スティールヴァイパー氏族はケリー・スプリングスとレンチ・ステーションを攻撃するだろう。ウルフ氏族の標的はブロゾとスクポ。ダイアモンドシャーク氏族はアルクナットとコジス・プライムを割り当てられ、ジェイドファルコン氏族はヒュームチュリップスとオラーラを攻撃することになった。

 戦いは5月1日に始まった。それぞれの氏族が目標近くの戦略地点に降り立つ。戦術に従って氏族長たちは部隊を展開した。ウルリック・ケレンスキーは氏族の戦闘指導者であったにもかかわらず、他の族長たちは、ウルリックがツカイード争奪戦の調停者になるのを拒否した。ウルフ氏族が降下地点を攻撃するのは5日後のことである。

 惑星の各地が襲撃され、司令官たちは、まるでそれぞれ別の戦いが行われているかのように感じた。全体図を把握するのは困難だった。戦いを記録したコムガードのホロテープもおおざっぱであった。

 スモークジャガーが降り立ち、最初の大きな戦闘が始まった。彼らはふたつのグループにわけることができた。素早く勝ち目的を達したかったグループと、ウォルコット、ルシエンの敗北で失われた名誉を取り戻したかったグループである。

 スモークジャガー隊はディンジュ山脈に着地し、第50コムガード師団(まとまった演説)に襲いかかり、彼らを麓の丘陵地帯に足止めした。比較的経験に乏しいコムガードは、スモークジャガーのアルファ銀河隊(ギャラクシー)に対抗できず、スモークジャガー隊は安全に目標を達成するかのように見えた。

 レイシス川岸の三角州で、第401、第207、第367コムガードが、スモークジャガーのベータ銀河隊に取り付いた。地の利を生かし、一撃離脱戦法に出る。すぐにベータ銀河隊は崩壊し、撤退を余儀なくされた。

 ノヴァキャット隊は悲惨であった。大胆な混合降下作戦は、第417コムガードの気圏戦闘機によって、大災害に変えられた。アルファ銀河隊指揮官を乗せた降下船が撃墜され、降下予定地点を通過していった。ノヴァキャット隊は、スモークジャガー隊と同じように、コムガードの用意した戦場に引きずり込まれていった。第9コムガード(豊かな言葉)は、空から地上から攻撃し、ノヴァキャット隊のジョジ進軍を北数キロメートルの地点で阻んだ。氏族は消耗戦を強いられた。補給の用意がなく、長引く戦いで物資と弾薬が不足した。ノヴァキャット隊は窮地に陥った。

 ゴーストベアは、未熟なコムガード第1軍にうまく対処した。最初の二日の戦いで、第121師団を粉砕しルークへと進んだ。しかし第91、第12師団がゴーストベアの精鋭部隊第20ポラーベア攻撃星団隊を罠にかけ、彼らが撤退するまで連打した。

 ジェイドファルコンとダイアモンドシャークが着陸すると、最初は大きな抵抗がなかった。しかしジェイドファルコンが注意深く前進したことによって、戦司教は一撃離脱戦法を使うことができ、氏族に最大限のダメージを与えた。この戦術は王家軍が使ったのと同じもので、氏族をすり減らすのに有効だと感じていたのである。

 ジャガー隊は次にディンジュ山道の狭い境界で、コムガード第1軍第323、第299師団の待ち伏せの餌食となった。そこは彼らの目標であるディンジュ頂上が見える地点であった。ジャガー擲弾兵隊は大損害を受けたが、血と死を残しつつ無理に山道を突破した。

 スモークジャガーの両氏族長は頂上の戦いで死んだ。大族長ケレンスキーはスモークジャガー氏族に撤退を命じた。リーダーシップと指揮系統の崩壊により、生き残りが完全に破壊されてしまうのを恐れたのである。その決定でスモークジャガーとウルフ氏族の間に残っていた苦いわだかまりが再燃した。第6ジャガー竜機兵隊を含む数部隊が命令に従うのを拒否し、不名誉より死を選んだ。殺戮の中で第6ジャガー竜機兵隊のうち8名だけが生き残った。

 次にダイアモンドシャーク氏族がコムガードの剣にかかった。コジス・プライムを臨む山麓における、第85師団(辺境のライオン)との一連の戦闘で、シャーク第19重星団隊(バラクーダ隊)は30%以上の損失を強いられた。最も酷い目にあったのは、第85師団第2、第4大隊に待ち伏せされた、ダイアモンドシャーク第222星団隊(リッパー)であった。全兵力のうちたった二名が生き残った。氏族は不名誉なブラッドネームのひとつをはぎ取った。

 5月3日までに、ノヴァキャット氏族はジョジとトストを奪うため3部隊に分かれた。彼らはすぐに弾薬を使い果たしてしまった。大族長が非エネルギー兵器を使うことについて警告を発していたのに、彼らは砲・ミサイルがメインのオムニメックプライマリー仕様を揃えたのである。この判断ミスにも関わらず、氏族はコムガードに対して前進した。第417、第9師団は最終的にジョジの方へ退却した。コムガードはこの行動でふたつの勢力に注意を分断させるつもりだった。ふたつの勢力とは、氏族の後方でベータ銀河隊を降下地点と補給物資から分断しようとしている第467師団(旋風)と、氏族が対面している師団である。コムガードはベータ・ガンマ銀河隊に嫌がらせ攻撃をし、素早い小規模な戦闘で弾薬を使い果たすよう促した。ガンマ銀河隊は撤退すると第244師団と第467師団を引きつけ、ベータ銀河隊が待ち伏せをかけた。彼らはこの二部隊を撃破し、コムスターの補給廠をいくつか勝ち取った。

 コムスターはすぐに猛烈な逆襲を開始し、ノヴァキャットの戦線を引き裂き、陣地を奪い取った。コムガードがルシージュ湖水地方の半分以上の支配権を取り戻すと、ノヴァキャットは不承不承撤退した。氏族軍のなかでノヴァキャット氏族は想像を絶する損失を被った。降下船に戻ったの3個星隊以下だった。

 スティールヴァイパー氏族は、スモークジャガー氏族の失敗から学び、より保守的な降下パターンを選んだ。コムガードは間接砲と気圏戦闘機を活用した遅延攻撃で、氏族降下地点と目標地点の間に突っ込む時間を作ったが、ブリーン族長率いるヴァイパーはコジス・レンチ・ステーションに向けて前進した。

 ヴァイパーが敵戦線を踏み越えたとき、主目標からちょうど18キロメートルの地点で、彼らは「悪魔の浴槽」で知られる地獄の穴に突っ込んだ。恐ろしいことに、間欠泉、沸騰する泥、多数の花崗岩の石柱に挟まれた狭い境界が組み合わさって、軍団は十数キロメートルまで引き延ばされてしまった。ヴァイパー隊は目の前のコムガードを押しつつ、「悪魔の浴槽」を進んでいった。しかしその過程で多くの弾薬を消費した。コムガードはヴァイパーの補給線を攻撃し続け、「悪魔の浴槽」にて生命線となる軍需品を欲していた敵軍を丸裸にした。

 ゴーストベア氏族はベータ銀河隊の第7ベアガードを失った。この部隊はルーク攻撃からの撤退を援護していたのだが、ホルスの森で第12コムガード師団(純粋な波形)の待ち伏せにあい、火をかけられたのである。バッケンバーガー族長はコムガードの戦術について大族長に正式な抗議をした。しかし彼の軍勢はすでに森で一掃されていたのだ。

 ダイアモンドシャーク氏族は第3コムガード軍と一日間の膠着に陥った。唯一決定的な動きが、ガンマ銀河隊と第85師団の間で起こった。一日で第85師団はシャークの補給線を破壊し、ガンマ銀河隊は報復攻撃でコムガード部隊を破壊した。第2、第5軍が到着して、シャークの補給線を完全に分断した。コムガード隊は強化陣地から間接砲射撃を集中し、氏族が離脱して惑星から撤退しようとしたときに、敵部隊を完全に破壊した。

 ジェイドファルコンは若干の軍勢を失ったが、目標遂行に失敗した。第11コムガードは戦司教の計画通り、ヒュームチュリップスとオラーラに向かうファルコン隊を悩まし、補給線を削っていった。最終的に氏族がプリズノ川にたどり着いたとき、彼らが渡ろうとしていた橋を両方ともコムガード工兵部隊が破壊した。

 ファルコンガード、この部隊はいまだツカイードの敗北での汚辱を被っていた。彼らはどうにか混乱のプリズノ川を横断すると、川から離れた地点で間接砲を護衛していたコムガード部隊に後方から襲いかかり、ジェイドファルコン重強襲用の上陸拠点を作った。渡河のあとファルコンガードは目標都市のひとつであるオラーラに向かった。しかし知らされていた座標はオラーラのものではなく、コムガードの罠だったのだ。

 ジェイドファルコンは重大な損害を被りながらも、ヒュームチュリップスからコムガードの援軍が来るまで、着実に進んだ。橋の防衛戦と、コムガードによる幸運なファルコン弾薬集積所への攻撃が同時に行われ、ジェイドファルコン氏族長は両方の目標を落とすには補給物資が足りないと判断した。そして不承不承、撤退を命令した。その撤退は高くついた。コムスターは氏族の降下地点と降下船を攻撃し、後退する敵部隊の背中から強襲を実行した。ファルコンガードのエレメンタルと小部隊からなる三連星隊が、コムスターの2方面攻撃を防ぎ、残ったファルコン軍の多くは惑星から撤退した。

 ウルフ氏族は戦いが始まってから5日目になって戦場へと入った。いくつかの点でウルフ氏族は有利だった。大族長ウルリック・ケレンスキーが戦司教フォヒトのやり口を見抜いていたこと、諜報活動、ナターシャ・ケレンスキーとフェラン・ワード(ケル)が中心領域の戦術に詳しいこと、そして数日かけて他氏族とコムスターの戦闘を見ていたこと、などだ。

 ウルフ氏族は着陸してすぐに戦闘隊形を作った。最初に未熟な第283師団と接敵した。彼らはコムガードのブロゾとスクポ防衛線(両都市ともウルフ氏族の目標)から遠く離れていた。ベータ銀河隊の第3星団隊、ガンマ銀河隊の第7星団隊、アルファ銀河隊の第4ウルフガードが、第278隊と第10軍を陣地から押しのけた。しかし、ウルフ氏族がコムガード主力防衛部隊の周囲に張り巡らしていた罠の完成を、第283師団が防いだ。コムガードが引き返し新たな防衛線を構築すると、ウルフ氏族は攻撃しなかった。コムスターはすぐにその理由を知る。一連の掃討攻撃を使い、ナターシャ・ケレンスキーの第13ウルフガード(精鋭ウルフスパイダーを含む)は第10軍の周囲をすり抜け、第166師団を出し抜き、スクポに進もうとした。これを阻止するために、コイブ司教は古参兵の第282コムガード師団(明瞭な思考)を送りこんだ。第282隊は重大な損害を受けたものの、ウルフスパイダーの進軍をとどめ、第10軍が次の防衛位置につく余裕を与えた。これまでのところ、戦いはふたつの重要な点でウルフ氏族に有利だった。この氏族は、戦役用の豊かな補給品と補給線を維持する戦術を、戦いの初期から続けていた。またツカイードに臨んでほとんどのオムニメックをエネルギー兵器メインにしていて、それぞれの部隊が独立行動できた。戦司教フォヒトはウルフ氏族がツカイードの戦いの流れを変えてしまうのでないかと恐れた。

 マイアーヴェング司教率いる第10軍はウルフ氏族と、スクポ市、ブロゾ市のあいだにいた。しかしコムガードが動く前に、ウルフ氏族が別の攻撃を始めた。戦線を通り抜けて、突如メック、戦車、歩兵が現れた。彼らは開けた丘の上から現れたように見えた。ウルフスパイダー隊は恐ろしく頑強に戦い続け、コムスターを再び押し返した。スクポが包囲されてしまうかに思えたとき、第9軍(マルヴェナ司教指揮)からコムガードの援軍が到着した。ウルフ氏族はこれ以上進めなかった。しかしコムガードにとっても勝利は高くつき、50%以上の損失を被り、その大部分は第138師団(バンディッツ)だった。

 ウルフ氏族が2目標の包囲を狭めていたころ、スティールヴァイパー氏族は「悪魔の浴槽」から脱出しようともがいていた。ウルフ氏族がツカイード地表に降りたってから2日後、スティールヴァイパーはどうにかコムガード第6師団を包囲した。彼らはほとんどが地獄のような穴と間欠泉の中央にいた。ヴァイパーは攻撃の繰り返しで第6軍を破壊し、地獄から這いだし始めた。

 第6軍に対して勝利したものの、「悪魔の浴槽」から抜け出たヴァイパーガンマ銀河隊は、コムガード軍の予備戦力である第2、第5師団と直面した。この新戦力がヴァイパーの前線を破った。しかし敗走させることはできなかった。第6軍386師団、第1師団が到着し、コジス・レンチ・ステーションから10キロメートルの地点でバックアップにまわった時点で、ヴァイパーは撤退を強いられた。スティールヴァイパー氏族は25%の損害を被り、両氏族長は負傷していた。

 スティールヴァイパーの撤退により、ツカイードでコムガードと戦っているは2氏族のみとなった――ウルフとゴーストベアである。ゴーストベアは第4軍の間接砲射撃からスパナク市を守った。部隊は間接砲で釘付けにされることなくスパナク市を守る必要があり、ルーク市を攻め取ろうとしていた。彼らが攻撃したとき、第1軍の師団がベアの補給廠を強襲した。これにより補給品、パーツ、弾薬が不足していき、それまでに得た地域のほとんどを失った。この状況にもかかわらず、アルファ銀河隊第15打撃星団隊(モーラー)の数個星隊が、ルーク市の郊外になんとか押し入った。しかし都市を獲得するにはあまりに小規模過ぎた。ひとつの目標を勝ち取って、ゴーストベアは戦役を終えた。

 ウルフ氏族は押し続けた。ウルフスパイダーが第138師団を破壊すると、デルタ銀河隊第11ウルフガードが第178師団の保持していた戦線を傾けた。コムガード軍は優れた指揮下にあったにもかかわらず、ウルフガードが第278師団担当箇所を引き裂いた。スクポはウルフ氏族の手に落ちた。コムガードは、氏族軍がスクポでコムガード軍を包囲している残存兵力と合流しようとしていることに気づいて、撤退していった。

 ウルフ隊は次の照準をブロゾ攻撃にあわせた。第10軍は氏族の重量級・強襲級オムニメックと対峙していた。第9軍は10軍を支援するために移動したが、両軍の合流地点をウルフ氏族が破り、敵軍を分断状態に追い込んだ。第11軍が援軍に駆けつけたものの、ウルフ氏族は第9軍へのそれ以上の攻撃を弱め、そのかわりにコムスターの補給廠襲撃に集中し、補給品を我が物とした。

 ウルフ氏族はポロジツ山コムスター陣地の周囲を動き回れる機動力を持っていたが、スティンソン司教の第11軍と直接交戦する道を選んだ。総攻撃のために一連の小競り合いを中止した。ベータ銀河隊が第11軍に重い損害を与えた。ガース・ラディック族長が戦いのクライマックスで死んだが、コムスターの援軍である第13軍が争乱に加わる前に戦争は終わった。

 ラディック族長の死によってウルフ氏族の士気が下がったにもかかわらず、コムガードはウルフをブロゾからもスクポからも追い出すことができなかった。ウルフ氏族の補給線への攻撃は意味がなかった。ケレンスキー族長がこれら重要地点の防御を強化したからだ。彼女が持っていた中心領域の知識が、氏族の成功に役立った。

 21日間の戦いのあと、氏族の大族長はコムスターの勝利を認めた。ウルフ氏族だけが両目標都市の確保に成功した。ゴーストベア氏族はスパナクを確保したが、ルーク奪取に失敗した。ジェイドファルコン氏族は残存兵力の差によって、引き分けを達成した。

 両陣営とも莫大な損失を被った。ツカイードがこの三世紀でもっとも規模の大きな戦いであった、とすぐに明らかとなった。コムガードは40%近い死者とそれ以上の負傷者を出した。スモークジャガーは32%が死に、もっとも多い被害を被った。ウルフ氏族は20%の損害を出しただけだった。

 これは中心領域の偉大な勝利である。コムスターはツカイードの大地を血に染め、地球と15年の停戦を得た。戦司教フォヒトの軍事的勝利は、首位者ウォータリーによるスコーピオン作戦の影にならなかった。





ウルフ

 ウルフ氏族の降下船は目標(都市ブロゾ、スクポ)の40キロメートル南に着陸した。他の氏族が着地して5日後のことだった。降りて、安全を確保してから、ウルフ氏族銀河隊は整列した。あたかも、ルーズな移動縦列を組むよりも、最初の一歩から戦闘を望んでいるようだった。

 ウルフ氏族にこぞって立ち向かったのは第10軍だった。その一部はコムガードが用意した最高の師団、連隊である。正確に氏族上陸地点を示したV・マルゴー・コイヴ司教は、部隊を展開するのに、ポロジツ山の丘陵にカバーされるよう木に沿わせた。

 両者が接触したのは、ウルフ氏族がフォレスト・エンドの小村を通過したときのこと。コムスター軍は、ベータ銀河隊の第3戦闘星団隊、ガンマ銀河隊の第7戦闘星団隊と交戦した。第283師団が、アルファ銀河隊の第4ウルフガードを受け流した。第283隊は、経験に欠けていたのだが、期待されていたより良く戦い、ウルフ氏族(主戦場の師団を狙っていた)が罠の輪を閉じるのを妨げた。

 第283師団が第4ウルフガードを抑えていた一方で、氏族右側面にいた分隊は、精鋭の第66師団に悩まされていた。たやすくはいかないと見ていたウルフ氏族長は、攻撃戦線の中央を叩いた。コムガード隊形の弱いところに圧力を集中し、第278隊を丘の陣地から追い出した。

 せっぱ詰まったコムガードは、間接砲支援の援護の下、引き返し始めた。両陣営の航空隊は地上の部隊をほとんど助けることができなかった……それぞれの戦いを続けていたのだ。退却は整然と実行され、第10軍はブロゾ、スクポから20kmの地点に再結集し、新たな防衛戦を構築した。

 フォレスト・エンドからの撤退になぜか追撃がなく、コイヴ司教は心配を募らせることとなった。彼女は常ならざる攻撃にさらされると予期していた……特にウルフ氏族が数個師団を痛めつけてからはそう考えていた。だが、軍をブロゾ、スクポの陣地につけたときには、敵の姿が見えなかった。

 司教の心配は的中した。氏族は第10軍の横をすり抜け、後方にまわりこむか、迂回してスクポに前進しようとしていたのだ。コムガードは偵察兵と戦闘機をウルフ捜索のために派遣したが、偵察戦闘機はウルフ氏族の戦闘機に悩まされ、コイヴの偵察兵は木と丘以外のものを見つけられないのであった。

 コムガードが引き返し始めたとき、アルファ銀河隊の第13ウルフガードが第166師団の背後に忍び寄った。司教はすぐに予備師団を進める命令を出し、古参の第282師団を送り込んだ……第13ウルフガードの相手をさせ、第166隊の周囲とスクポから追い払うためだった。

 次の二時間は重要なものとなった。コムガードは陣地から戻りはじめたが、単に他のウルフ氏族から攻撃を受けただけだった。コムガードが退却をやめて、ウルフ氏族が戦線に滑り込んでくるのを食い止めるなら、軍を危険なまでに薄く引き延ばさねばならなかった。撤退の援護でウルフの圧倒的な力に直面するなか、司教は予備軍に断固立ちふさがるように命じた。

 第282師団は第13ウルフガード(ウルフスパイダー)と接触し、続いて起きた戦いで多大な代償を支払ったものの、ウルフスパイダーの前進を阻止してのけた。ウルフスパイダーがとってかえすまでに、第10軍のほとんどは、ふたつの都市とそこにつながる道路を望む、険しい丘の頂上(5キロメートル以内の位置)に立っていた。

 コムガード軍が突っ込む前に、ウルフ氏族がべつの攻撃を開始した。再び彼らはコムガードと交戦し、戦線を行ったり来たりした。守備側が弱まったとき、彼らは復讐心を秘めて戦線の中央を叩き、防衛線を限界まで押し込んだ。突破に成功したウルフ氏族の戦士たちは、両都市のあいだの道路に立った。

 あたかもウルフ氏族がブロゾを取り囲んで、第10軍のほとんどを罠にかけたように見え始めた。だがウルフスパイダーはショックにさらされた。彼らが丘の上に近づいたとき、メック、戦車、歩兵分隊が塹壕から出てきて、呆然とするウルフの戦士たちに砲撃を始めたのだ。塹壕での戦いは、熾烈で容赦のないものとなった。まったくの頑強さと不本意な撤退、それだけがウルフスパイダーを救ったのだった。

 一時間の近距離砲撃戦の後、コムガード師団はウルフスパイダーに続いて撤退した。彼らは道路に辿り着き、北方向への押し込みとスクポ包囲の継続を準備した。第9軍の分隊(気圏戦闘機と間接砲隊に支援されていた)が北西から現れた。この元気な兵士たちは、ウルフ氏族が両都市のあいだに作っていた樽(のようなふくらみ)の中に詰め込まれていった。第9軍の分隊は、ふらついていた第138隊の増援にも使われた。

 真夜中までに戦線は「M」の文字に似たものとなっていた。スクポ、ブロゾ周囲の輪を閉じるのを妨げられるなか、ウルフ氏族は多大な損失を受けていた。コムガードは大きいが高価な勝利を達成した……第10軍は第9軍が到着するまで持ちこたえたのだ。

 司教と幕僚たちは戦闘中に重要な発見をしていた。ウルフ氏族は (他の氏族と違って)弾薬を用心深く扱っていた上に、オムニメックをエネルギー兵器中心の構成にしていたのだ。さらに、エレメンタルのほとんどは通常使われるSRMパックを取り外して戦い、補給隊が第二戦線のすぐ後ろに続いていた。この倹約はひとつの事柄を確かにした。ウルフ氏族が弾薬を使い果たすのを、コムガードは計算できないということだ。

 スクポ、ブロゾをかけた戦いは、短い休息のあとで続いた。ウルフスパイダー(第138師団への攻撃を再開した)がその中心だった。氏族からの重火力の下、士気をくじかれ、経験に欠ける戦士たちは崩壊し逃走した。第9軍の予備部隊が第138隊の支援として派遣されたにもかかわらず、ウルフスパイダーは獲物を完全に破壊した。ケレンスキー氏族長が狩りを終えたとき、デルタ銀河隊の第11ウルフガードは第278師団と交戦し、第166隊は第13ウルフガードの残存兵力と一撃離脱戦を繰り広げていた。

 コムガード軍は最後に圧倒された。スクポはウルフ氏族の手に落ちた。第13ウルフガードが北進を続け、他の部隊と合流しようとすると、コムガードはその前進を遅延させることができなかった。結果、引き起こされた包囲によって、スクポ内のコムガード師団は閉じこめられたのだった。多くの戦士を失うリスクを犯すよりはと、コムガードは退却し、ウルフ氏族にスクポを与えたのだった。

 撤退すら難しいものとなった……ウルフ氏族が事実上同時に大攻勢を開始したからだ。このことが退却する軍を相当な混乱に陥れた。コムガード師団の司令官たちは、混乱をパニックにしなかったとして、称賛されることとなる。ウルフガードはスクポ包囲でほぼ200名の戦士を捕らえた。

 第4ウルフガードと第13戦闘星団隊は、優勢を再現した。両者は過去2日間で目立っており、彼らの到着が恐れられる充分な理由となった。彼らの攻撃の主軸は、ブロゾを直接狙っていた。多数の氏族製重量級、強襲級オムニメックが都市防衛を破るために襲撃をかけ、士気をくじいた。第10軍が折れたのもわかろうというものだった。彼らがすぐにはやられなかったのは、名誉あることといえるだろう。

 第9軍の数個師団は、第10軍を支援する攻撃(ウルフの攻勢を遅延させるもの)の開始命令を待ちきれなかった。ウルフ氏族2個強襲星団隊は、攻撃の軸をずらした。第9軍の強襲は、氏族軍を足止めできず、ウルフ氏族が防衛の輪(2個軍が合流すべき場所)を破るのを許してしまったのである。この分断によって、コムガード軍は二手に分かれてしまった。危険な状況だった。

 これらの新しい攻撃に対応して、第11軍が危ういブロゾ防衛を強化するために急派された。ウルフ氏族による第9軍攻撃が予測されたのだが、前衛斥候の報告によると、氏族はコムガードの補給庫襲撃に相当な力を裂いており、また自身の補給庫は隠していた。

 有利な位置を占めたコムスターの周囲で活動するのに、ウルフ氏族が機動力を使いたがるのは明白であったが、彼らはポロジツ山にとどまった。第11コムガードは、ウルリック・ケレンスキー大族長の部隊と直接交戦するため、その区域に割り当てられた。

 ウルフ氏族は最後の決戦に備え、徐々に個々の戦いをやめ、山中で再結集した。戦いは雷雨にさらされるなか始まった。ウルフ氏族は山にいるという利点を活かすため、ゆっくりと進み、陽動をかけ、推進した。補給基地への経路は保たれており、コムスターがこれらの補給線を分断しようと多少の襲撃を行ったが、すぐに撃退された。これら有利な点があったのに、ウルフはわずかな土地を得るのに多大な代償を支払った。ガース・ラディック族長(ベータ銀河隊を指揮していた)は殺害された。

 ウルフ氏族はコムスター軍(山中の第13軍)に充分な大損害をあたえた。しかしながら、新たなコムスター軍が戦いに加わる前に、ツカイードの戦いは終わったのだった。





ゴーストベア

 ヨルゲンソン氏族長は、ツカイード侵攻の権利をかけ、公式に3個銀河隊を入札し、5番目に降下する権利を勝ち取った。ゴーストベアは双子都市のスパナクとルークを目標とする。ヨルゲンソン、カブリンスキー氏族長は、コムガードを素早く粉砕するために、シンプルで直接的な戦闘計画を立案した。その戦力が勝利をもたらすと確信していた。

 ゴーストベアは目標都市に直進し、コムガード第1軍と予備部隊の第4軍の抵抗にあった。上級指揮官キャサリン・ルアルカは第1軍を展開させ、降下中のベアと交戦させた。古参の第103師団(対話の真実)はスパナク守備に残した。第4軍の新兵が氏族のオムニメックと直面したらやられてしまうのではないかと恐れた彼女は、第4軍をルークの守備隊とした。

 ゴーストベアは部隊を二手に分けた。降下中のアルファ銀河隊はスパナクを臨む丘の上に、ベータとデルタはルークの近くに。両隊とも抵抗を受けずに降下したが、前進すると一撃離脱攻撃を受けた。第1軍の第308師団(思考の明瞭)は、古参のアルファ銀河隊をほとんど遅延させることができず、ベータ銀河隊は第121師団(グレイ・バックス)をほぼ殲滅した。第1軍の第91、第12師団はもっとうまくやった。デルタ銀河隊の第20ポラーベア星団隊を、ホルスの森周辺で罠にかけ、氏族の兵士に重大な損害を与えたのだった。ベアがルークに押し進むなか、小競り合いの流れが変わり、ベータ、デルタ銀河隊は撤退せざるを得なくなった。第91師団は、その後、スパナク防衛の手助けのためとって返したのだが、アルファ銀河隊が郊外で陣地を構える前に何とか都市に入れたのだった。ベアは、ルーク攻撃に失敗した連中が援軍として到着するまで、スパナクを包囲すべく腰を落ち着かせた。氏族にとっては不幸なことに、コムガードの第12軍が素晴らしい待ち伏せで、これらの援軍を待ちかまえていたのである。ホルスの森に火をかけ、ベータ銀河隊第7ベアガードが燃えさかる木々から逃げてくると、攻撃をしかけた。消耗した第7隊が最終的に火炎から逃れ、森林を通って丘へと続く広い道を駆け下りていった。これらの回廊に入るまでに、ベアは第12軍の塹壕に入った部隊から驚異的な近距離射撃を受け撃墜されていった。オーバーヒートしたゴーストベアのメックは森で死んでいった。

 そのあいだに、コムガードは別の戦線に問題を抱えていた。第91師団の兵たちは、スパナクで適切な防衛陣を敷くのに失敗し、ベータ、デルタ銀河隊が到着したことで、包囲していたベアは第91師団を突破して、彼らの補給庫の多くをほぼ完全に奪取することができたのだ。都市陥落が差し迫ったことを悟った戦司教は、ルアルカ司教に第103師団をスパナクから出すように命じた。

 ゴーストベアは都市を奪ったが、すぐに第4軍2個師団の逆襲に直面した。ルークを守備していた第4軍の師団は、これまでツカイードでほとんど戦っていなく、従ってスパナクに到着したときには元気で戦う準備ができていた。第4軍の間接砲隊が都市に砲撃の雨を降らし、第91、第12隊の残りは郊外を襲撃した。ベア氏族長はベータ、デルタ銀河隊をスパナク保持のため残し、そのあいだアルファ銀河隊はルーク強襲のために結集することを選んだ。

 ルークにて、アルファ銀河隊は、氏族の由来となったゴーストベアの残忍さを持って、第4軍の残りの師団を引き裂いた。コムガードが数で勝っていたにもかかわらず、第4軍は破滅の間際にあった。その後、ルアルカ司教が我に返り、第103師団と第308師団の残存兵力を率いて、アルファ銀河隊の補給庫を攻撃した。この強襲によってベアは補給を守るためとって返さざるを得なくなった。第50打撃星団隊はなんとかルークの郊外に入ったのだが、都市を奪い取るには戦力が不足していた。アルファ銀河隊は第1コムガード軍の援軍による襲撃と戦ったのだが、その上で大きな損害を被り、ベア族長はスパナクから撤退する命令を不承不承出したのだった。

 この時点で大氏族長は、ゴーストベア戦役の終了を宣言した。元気なコムガード兵がいるルークを奪うには戦力が欠けているのを知っていたベア氏族長は、異論を挟まなかった。ツカイードの戦いはもう終わっていた。他の数氏族が撃破されていたのだ。だから、ベアが戦いを続けても、コムガードはスパナクから氏族を追い出すために、他の戦域にいる軍を簡単に持ってくることができただろう。すでに得たものをすべて失うよりも、ゴーストベアは勝利を主張しつつ撤退した。

 戦司教もベア戦役の終了を歓迎した。コムガードはすでにこれらの敵に負けていたのだが、彼らがツカイードから出発したことで、第1、第4軍を激しく戦ってるジェイドファルコンに投入することができたのだ。ゴーストベアがスパナクを落としたこと、ルークの守備隊を破ったこと、受けた損害より与えた損害が大きかったことから、ケレンスキー大族長と戦司教フォヒトは、ゴーストベアがコムガードに対し限定的な勝利を得たことを認めたのだった。





ノヴァキャット

 後にツカイードの停戦として知られる計画を討議するために、ケレンスキー大族長は他の侵攻氏族長たちと会い、それが難しい仕事であることに気がついた。ジェイドファルコン、ゴーストベア氏族長が、この早まった結論に反対した。ただ、無用な損害を避けるために、地球をかけて戦うことの利点は確かにわかっていた。スモークジャガー氏族のオシス、ウィーバー族長はこの計画が示唆する意味に憤った。氏族は仕事を完遂できないということではないか。敵との取引は不名誉と侮蔑を証明してしまう。ノヴァキャット氏族長は、常に戦いで失われる戦士と物資の価格に気を払っており、停戦のアイディアについて注意深く考えこれを受け入れた。オースマスター・ウィンタースに、ヴィジョンで決定の確認を求めと、彼女はすべての氏族が白い霧に包まれた悲劇の情景を説明するだけだった。そしてそれが過去のヴィジョンで出た疑問の答えだと主張した。氏族長は気短に彼女の拒絶を退け(シャワー大族長の死で預言が達成されたとした)、ツカイードに賛成の投票をした。

 入札の手順を利用して、ウルフ氏族を最後にツカイードへ上陸させるというジェイドファルコン氏族とスモークジャガー氏族の巧妙な計画に対し、ルルー族長は反対を唱える一方、ノヴァキャット氏族は最後まで返事を待たせた――結局、勝利の値段は、断続的な栄光と、自らが大氏族長になる機会の更新だったのだ。ほとんどが新兵であるコムガード軍に対する成功を確信していた族長は、残った使える2個銀河隊と、さらに元気なガンマ銀河隊を、目標奪取に入札した。彼らは三番目に上陸する権利を勝ち取った。

 都市ジョジ、トストを目指す上で、ノヴァキャットはコムガード第7軍と、第12軍の数個師団(両都市に予備部隊として駐留していた)に直面した。ウルフ氏族と戦う第12軍から派遣されたコセルカ司教の第278師団、ジェイドファルコン氏族と直面していた第349師団のホワイトライオンに加えて、残った第12軍の部隊……彼らには重要な戦闘の経験というものが欠けていた。

 ルルー族長は、効率的かつ効果的なホバー降下機動で戦役を始めることにした。降下船を大気圏内の低空に置き、オムニメックとエレメンタルを低空降下させる。大気圏外降下のように耐熱ポッドで束縛されることはない。ノヴァキャットにとっては不運にも、コムガード第417師団の気圏戦闘機が氏族降下地点の航空優勢を確保したのである。第417隊は機銃掃射と爆撃で、アルファ銀河隊を残骸に変えた。もっとも痛手だったのは、コムガードハンマーヘッド戦闘機のカミカゼ攻撃で銀河隊司令降下船を破壊されたことだった。降下船に積まれていたのは、第4ノヴァキャット槍機兵隊のブラボー、デルタ超新星三連隊に所属するオムニメック30機とエレメンタル6個星隊だった。このような破滅的な損失を受け、はたしてアルファ銀河隊にトストを奪取する能力があるのか、ルシアン・ケアンズ副族長はすぐ疑問に思ったが、ルルー族長は計画通り部下たちを都市に導いた。

 ガンマ銀河隊とアルファ銀河隊の残存兵力は第244師団を押し込み、ジョジに突進した。これを都市北部の郊外周辺部で止められたのは、第417隊と第9師団だけであった。実際に第9隊と第417隊は、ジョジへ進むキャットを誘引し、振動地雷原と気圏戦闘機、装甲隊のコンビネーションで氏族の攻勢を止めたのだった。ノヴァキャットは、増援のベータ銀河隊第44ノヴァキャット機兵隊をトストに送り込もうとした。しかし向かっている最中に、機兵隊は、第13、第431師団の予備部隊に粉砕されたのだった。

 戦いの三日目までに、ノヴァキャット氏族は弾薬不足が危険な水準に近づいているのに気がついた。だが熾烈な攻撃でジョジ防衛隊を痛めつけ、第9、第417師団を再結集のための退却に追い込んだ。氏族軍を降下地点から切り離そうというコムガード第467師団の嫌がらせ攻撃を受け、ケアンズ副族長は、ガンマ銀河隊に降下地点への撤退を命じた。損害を受けたベータ銀河隊のオムニメック一握りを、ガンマにつけた。そして部隊の存在を誇示するように言ったのである。そのあいだ、ベータ銀河隊のメックの残りは、ルシージュ湖の底に身を隠し、すぐには気づかれないようにした。

 ケアンズが望んだように、第244、第467師団は湖にやって来た。戦力低下した部隊を組み合わせ、逃げる氏族軍を追撃するためである。スレイグル、シェイキース司教が湖畔で軍勢を組織しようとしたとき、ベータ銀河隊が水中から出現し攻撃した。ノヴァキャットは両師団を粉砕し、コムスターの補給庫をいくつか捕獲したのだった。

 ノヴァキャット・アルファ銀河隊の敗走を見たコロンビーニ司教(第9隊)、ランデーカー司教(第417隊)は、ルシージュ湖地区を支配している氏族軍への全面攻撃を命じた。ベータ銀河隊、ガンマ銀河隊が捕獲した補給物資を使う前に、第9、第417、第116師団は氏族軍への熾烈な逆襲に身を投じ、補給庫奪還に成功したのだった。つまずいたルルー氏族長は、打ちのめされたメック戦士たちに降下船への撤退を命じた。コムガードは降下地点に引き返すノヴァキャットをずっと悩ませた。ベータ銀河隊はオムニメック1個三連星隊にまで打ち減らされていたのだった

 両都市の奪取に失敗したノヴァキャットは、ツカイードで敵にもっとも多くの損害を与えたにもかかわらず、コムガードに敗北したと判定された。オースマスター・ビッコン・ウィンタースは、自分のヴィジョンを文字通りに解釈した。各氏族の背後につながる白い霧は、各占領域に潜む密偵であり、そしてそれはノヴァキャット氏族を最終的に負かしたコムガードの白いメックの軍だったのである。





ダイアモンドシャーク

 (中心領域)侵攻でそうだったように、イアン・ホーク族長はこの歴史的な戦いでも重要な位置を占められなかった。先陣の権利を勝ち取ることを熱望しすぎ、また部下の戦力を過信していたホーカー族長は、当初、わずか6個星団隊を入札し、あえてそこから大きく下げなかった。他の氏族すべてはダイアモンドシャーク氏族よりも、譲歩できる点で勝っていた。ゆえにダイアモンドシャーク氏族は最終的に、二番目に上陸することになったのだった。さらに悪いことに、スモークジャガー氏族が先陣の権利を勝ち取った。

 ダイアモンドシャークの目標都市は、コジス・プライムとアルクナットで、両都市の距離はコジス谷を挟んでわずかに20キロメートルだった。シャーク強襲隊の全5個星団隊は谷の中に着陸した。アルファ銀河隊の第19重星団隊と第39打撃星団隊はコジス・プライムに向かい、その一方、ガンマ銀河隊第222強襲星団隊と第369打撃星団隊はアルクナットに向かった。

 アルファ銀河隊第19重星団隊は、コジス・プライムを望む丘の上で、第3コムガード軍の第182、第85師団と遭遇した。一方、精鋭の第39打撃星団隊はコジス谷の末端に入ったときに、第8軍の1個師団とぶつかった。第19重隊は、第85師団を片づけたが、少し目標に向けて進んだだけで、第182師団に側面を突かれたのだった。第182師団は残忍な激しい撃ち合いのなかでアルファ銀河隊を釘付けにした。そのあいだ、第85師団の残ったメックは、第31、第56師団に加わり、シャークの補給線を分断しようと試みた。

 ガンマ銀河隊はすぐ新たな脅威に注意を向け、第222強襲星団隊が襲撃者を破壊する名誉を勝ち取った。第222星団隊とコムガード第85師団の衝突は、特に残忍なものとなり、どちらの陣営もしばらくは優勢を得られなかった。最終的にスターコーネル・セス・デイヴィスは、ガンマ銀河隊の残った星団隊に助けを求め、フラストレーションを募らせた。増援のメックのおかげで第85師団は粉砕され、復讐を求める第31、第56師団には、ひとりのメック戦士を失うだけで済んだ。

 ガンマ銀河隊が、第85師団と第8軍の師団群を破滅に導く一方で、ブルケンビーネ司教の第5軍がシャーク前線の後方に戦闘降下を行い、アルファ・ガンマ銀河隊を降下地点と補給からきれいに切断した。そのあいだ、コムガードの兵士たちはすでに、第82、第201、第182師団から援軍を受けていた。ショックを受けたダイアモンドシャーク氏族長は、部下の銀河隊が完全に包囲され、危険なほどまでに弾薬が不足しているのに気がついた。

 ホーカー氏族長は、生き残ったアルファ・ガンマ銀河隊を再結集し、コムガードのメックによる死の輪を突破する絶望的な試みを図った。そのあいだ、セネット副族長は、罠にかかった前線部隊救出のため、オメガ銀河隊の予備戦力メックを集めた。道中、オメガ銀河隊が、第323、第299師団と戦う一方で、他のコムガードは小麦を刈るようにアルファ・ガンマ銀河隊のメックを切り刻んでいった。残忍な戦いのなか、前面強襲(他の戦術より氏族的であるという考えからホーカー氏族長が重視していた)は、致命的な誤りだったと証明された。コムガードは装備が良く、遙かに巧妙だったのである。

 コムスターから重大なダメージを受けたにもかかわらず、オメガの予備メックは最終的になんとかコムガードの鉄条網に穴を開けた。アルファ・ガンマ銀河隊の残りは降下地点に足を引きずりながら戻り、コムガードは側面や後方から彼らを悩ました。ちょうど降下船が見えてきたときに、コムガードは最後の強襲をしかけた。ダイアモンドシャークは致命的な一撃を食らったが、屈しなかった。そのかわり、オメガ銀河隊のフリーバースメック戦士たちが静かに広がり、敵を迎え撃った。コムガードはオメガ銀河隊を破壊した。しかしフリーバースの犠牲が、アルファ・ガンマ銀河隊の脱出路を切り開いたのだった。

 常々価値がないとおもっていた下層階級の戦士たちの信じられない勇気を評価し、軟化したホーカー氏族長は正式に、フリーバースの戦士は前線オムニメックに乗せないという禁止命令を無効にした。彼らが勇気を示したにもかかわらず、ダイアモンドシャーク氏族はツカイードでほとんどの兵士を失ったのだった。





スティールヴァイパー

 ツカイードをかけた入札は熾烈なものとなった。スモークジャガーは上陸一番乗りの権利を勝ち取ったが、結局、彼らは破滅に追いやられたのだった。ツカイードの戦闘計画で、ヴァイパーはコジス・レンチ・ステーションとケリー・スプリングスを担当した。目標都市の近くに降下したスモークジャガー氏族の失敗から学んで、ヴァイパーは目標の遠くに降下するという保守的な戦略を選択した。ブリーン族長は主戦力をコジス・レンチ・ステーションに送り込んだ。断続的な間接砲、航空機の弾幕にさらされたにもかかわらず、ヴァイパーのメックは着実に主目標へと進んでいった……「悪魔の浴槽」と呼ばれる一帯で災厄が待ちかまえていることには気づかなかった。18キロメートル続く間欠泉、沸騰する泥、巨大な花崗岩が、ヴァイパーの破滅をもたらした。

 「浴槽」のふちに辿り着くと、ヴァイパーはコムガード第6師団と遭遇した。砲火を交えたあとで、コムガードは敗北したように見えた。迅速な勝利を渇望していたブリーンは、部下を率いて敵メックの後を追った。数分以内に、彼女は向こう見ずに罠へと部下を率いたことに気がついた。全星隊が泥の中に沈み始めた。氏族軍の長距離兵器は、花崗岩の柱の森に囲まれ、役に立たなかった。このひどい地形から退却するか、敵を追うか、ブリーンがためらっていると、コムガード司令官はメックの中から衛星リンクを通して、侮蔑的な挑戦を言い広めた。挑戦に激怒し、他の氏族に対して面子を保ちたかったブリーンは、攻撃を再開した。

 ヴァイパーはコムガード兵に多大な損失を与えたが、彼ら自身も多大な損失を受け、「悪魔の浴槽」の終わりにさしかかったときには弾薬のほとんどを消費していた。そこで彼らは元気なコムガード部隊に直面した。コムガードはヴァイパーの戦線を突破し、氏族のマシンを占領した。一方、コムガードの援軍がコジス・レンチ・ステーションとケリー・スプリングスに殺到していた。このときまで、すでにヴァイパー全4部隊のうち1部隊が破壊され、ブリーン族長とザールマン副族長が負傷していた。目標までたった数キロメートルの地点だったにもかかわらず、ブーリンは降下船への退却と、惑星脱出を部下に命じた。ツカイードでの完全な敗走を恥じて、また侵攻氏族の主要な位置を勝ち取るための戦闘神判で見せたひどい戦果をまだ振り払おうとしていたブリーン族長はその地位から退いた。




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