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作成:2003/01/07
更新:2011/02/24

辺境の海賊



 西暦3000年の宇宙には海賊が存在します。たいていは辺境の世界に居を構えており、他の惑星を襲撃するか、航宙艦を待ち伏せして奪います。前者はバイキング、後者は中世の私掠船といったところでしょうか。海賊が多く住むライラ=ドラコ辺境付近は、ちょうど氏族の侵攻ルートと重なりました。
 classicbattletechより。








辺境 3025

アンタロス Antallos

 かつては外世界同盟、ドラコ連合の間の繁栄した交易世界だったアンタロスは、星間連盟技術の貯蔵庫があったため、継承権戦争中何度も襲われた。惑星の住人たちは半野蛮な生活に戻り、遊牧的でアジア的な部族が惑星の地表の支配者である。これらのうち、惑星で最大の交易地であるポートクリンの支配者が、男性支配的で大々的に奴隷を使う社会構造を押し付けている。

 惑星の大半は略奪されているが、いまだ未到達の空間が多数存在し、そこに星間連盟技術が存在するかもしれない。放浪する山賊たちがこれらの地域を支配していることから、そのような技術の存在の確認は失敗し続けている。

 この数ヶ月、ポートクリン管理者、アデン・フォラックスがドラコ連合の高官と交渉した。存在するかもしれない星間連盟の貯蔵庫を採掘する権利と引換に、数機の大型バトルメックを得るためだった。もしこのような手配が進んだら、ポートクリンは惑星を支配する国家となり、また連合は図りしれないほど科学的に有利な立場を得るだろう

惑星名: アンタロス
恒星型:K4IV
星系内位置:3番惑星
ジャンプポイントからの行程: 4.34日
補給ステーション: なし
政治指導者: 各都市国家の指導者
コムスター施設: B
コムスター代表者: ハドリアン・ロング司教
人口:180万人
原生生命の%と進化レベル:20%、鳥類
解説:
 2674年に植民化されたアンタロスは、クリタや海賊からの度重なる搾取に苦しんだ。2800年代のはじめ、特に野蛮だった数度のクリタの襲撃によって、人口の半分が失われ、散在していた都市国家群(それぞれが独自の社会政治システムを持っていた)の社会基盤が破壊された。前世紀のあいだに都市国家のひとつであるポートクリンが、軍に奴隷を使い、のし上がってきた。数年をかけて、この経済システムを男性支配的な政治システムに変換した。彼らの将来性は、ポートクリンの奴隷商人がもたらす富、軍技術者、クリタ家との取引にかかっている。
















蛮王国と海賊団 3050

 蛮王国は第四次継承権戦争で優位に立った。中心領域の世界を注意深く選んで襲撃を行った。戦後、中心領域の指導者たちは辺境に遠征軍を送り込んで、復讐を果たそうとした。だが、すべての海賊を逮捕・殺害することはできなかった。

 スターズエンドの海賊モーガン・フレッチャーは、最近、まるで小さな海賊団のように、本拠地の要塞から遠く離れたところに現れた。この動きに対し、コムスターは中心領域内では効率的に対処したが、問題の大半はちょうど辺境王国に移ったところだった。

 辺境の海賊における恐怖のバランスに影響を及ぼした大きな出来事といえば、それはマリア・モーグレインとレッドジャック・ライアンの連合である。モーグレイン・ヴァルキリー領とビュート・ホールドの海賊の合併で、グレーター・ヴァルキリー領が作られた。この国にはおそろしい軍隊であるライアン反乱軍がついていた。この事件の良い面はオベロン連邦を抑制する効果であり、悪い方は連邦=共和国の国境線に成長する毒蛇の巣が作られたことだった。ライアンとモーグレインの長女であるスージー"隻眼"モーグレイン=ライアン少佐は、有能で有害な軍事指導者になったと判明した。この地域の文明化された世界の未来にとっては悪い前兆だった。

 オベロン連邦(もっとも尊重されている蛮王国)は、3035年ごろに軍を増強し始めた。これはライアン=モーグレイン連合に対抗するためと思われる。だが、ビュートホルドを攻撃するかわりに、オベロンはよそに攻撃の矛先を向けた。連邦=共和国、ラサルハグ、ドラコに対してでさえもである。

 オベロン連邦はそれ自身が、既知宇宙を超えて活動している海賊の襲撃目標となった。この活動は活発化しているようなのだが、確かなことはほとんどわかっていない。なぜなら、コムスターはオベロンIV、並びにエリスの地(オベロン保護領)とのコンタクトを3045年に失ってしまったからだ。内乱があったのか、新領主が外部からやってきたのか、はたまた単なる機器の故障なのかは不明である。また中心領域は、ここ数年間、サンタンダーワールドと公的に接触していないのだが、このような邪悪な地では珍しいことではない。
















蛮王国 3058



ベルトパイレーツ(モーグレイン・ヴァルキリー領) Belt Pirates(Morgraine's Valkyrate)

 氏族の到着(3049年)で、グレーター・ヴァルキリー領は破滅に追いやられた。ウルフ氏族とジェイドファルコン氏族は、何度かの戦いで、ライアン反乱軍を手早く片づけた。ウルフ氏族軍はザ・ロックで反乱軍第1大隊を粉砕し、ジェイドファルコンの戦士は惑星ラストチャンスと惑星ゴッターデンメルングで第2、第3大隊を敗走させた。当初の報告によると、ジェイドファルコンはライアン反乱軍の第2、第3大隊を破壊したことになっていた。だが、最近、ジェイドファルコンが事実を隠蔽して、リーダーのメンツを立てようとした証拠が見つかったのである。確かに第2大隊はラストチャンスで破壊されたものの、ゴッターデンメルングの第3大隊は生き延びたのである。

 ファルコンによるヴァルキリー領首都強襲は、完全にスージー・ライアンと第3大隊の不意を打った。盗賊の兵士たちは、戦力で劣っていることにすぐ気づき、なんとか損害が少ないうちに撤退した――やや不本意ながら敵がそれを助けたのである。盗賊ごときがたいした抵抗をしないだろうと予期していたジェイドファルコン氏族の司令官たちは、部下を有効に使いはしなかった。この瞬間的な足踏みを利用して、マリア・モーグレインと数名のメック戦士たちは、敵に突っ込んで戦い、スージーと第3大隊の大部分が逃げる時間を稼いだのだった。スージー・ライアンと反乱軍の2個中隊は、氏族の侵攻路から遠く離れ、辺境の奥深くへと逃れていった。

 ツカイードの戦い後すぐに、スージー・ライアンとメック戦士たちは氏族に"勝利した"とのいささか誇大した話をひっさげ、スターズエンドに上陸した。到着後のまもなく、スージーはモーガン・フレッチャーに提案をした――ベルトパイレーツと連合する。そして二つの打ちのめされた蛮王国が氏族に「苦い薬の味」を与えてやる、と。スージー・ライアンによるただひとつの要求は、部下を直接指揮し、総指揮権をモーガン・フレッチャーと共有することだった。指揮の共有については注意すべきだが、モーガンは氏族への逆襲を望んでおり、反乱軍の経験を使うのは望みを果たすのにもっとも良い方法だと思えた。彼女は提案を受け入れ、ニューベルトパイレーツが誕生した。

現在の状況

 ツカイード後の6年間で、スターズエンドはウルフ氏族占領域における海賊活動の温床となった。様々な小海賊団、悪漢傭兵隊、さらには孤立した中心領域軍部隊の残存兵力でさえもがスターズエンドに現れた。彼らは氏族に逆襲する機会を与えてくれるならどんな部隊にでも入りたがっていたのである。当初、ウルフ氏族はスターズエンドにほとんど注意を払わなかった。寄り集まった海賊団を、戦闘機部隊のための哀れな言い訳と見なしていた。氏族の戦闘機は、海賊がウルフ占領宙域を通るときに、そこかしこで部隊を破壊する競争をしている。だが、ここ2年で、スターズエンドからの襲撃は、より注意を引くほどに増え始めた。ウルリック・ケレンスキー大氏族長は、侵攻派の戦士を送り込むことで襲撃の増加に対処した。伝えられるところによると、拒絶戦争に割って入ったときは、断固とした措置を行うと考えているという。

 この内乱は、ニューベルトパイレーツに計り知れない幸運をもたらした。少なくとも危機から一時的にでも逃れられた。ウルフ氏族軍、ジェイドファルコン氏族軍が粉砕されるとともに(ウルフの生き残りの大多数は中心領域に逃れ、残った侵攻派ウルフはまだ混乱のただ中にあった)、ニューベルトパイレーツはほとんど戦うことなくウルフの所有する世界を襲撃する機会を得た。この5ヶ月で、スターズエンド近隣世界への襲撃は増加し、襲撃のうち何度かはスージー・モーグレイン=ライアンによって率いられた。噂によると、スージーとモーガン・フレッチャーは氏族製マシンを完全な状態で手に入れたとのことである。もっともこれらの噂は証明されていない。とてつもない話も存在し、それは海賊の指導者二人がゴーストベア氏族から戦艦を奪ったというものだ――まずありそうもない話である。

 あとどれくらい、ニューベルトパイレーツが襲撃の馬鹿騒ぎを続けられるかは不明である。拒絶戦争によってウルフ、ジェイドファルコンの兵力は激減したのだが、襲撃部隊に問題を引き起こすに足る部隊を充分に備えている。行動に餓えている侵攻派戦士たちは、最近、技術を磨くために海賊狩りを始めた。彼らはツカイードの停戦が無効になるのはもはや必然であると考えていた。加えて、打ちのめされた2氏族が戦力を回復したら、ウルフ氏族占領域内での軍事支配を強めるのは間違いなく、スターズエンドに軍を動かすかもしれない。スージー・ライアンとモーガン・フレッチャー2世の権力闘争で、ニューベルトパイレーツが自滅する可能性もある。





ヴァンス・レザックのバンド・オブ・ザ・ダムド

 バンド・オブ・ザ・ダムドの名で知られる海賊団が最初に現れたのは、3042年のドラコ連合国境、ホンゴールを襲撃隊が襲い、プラチナとともに脱出したときのことである。その後、バンドは連合と近くの外世界同盟を目標とし、襲撃頻度は増えていった。3048年、バンドがコクペティの穀物倉庫を襲った後で、DCMSはこの海賊を捜索し殲滅する旨を発表した。

 この任務を任されたDCMS士官は、カーティス・ベンジンガー大佐であった。連合内で活動していたコムスター工作員の情報によると、ベンジンガーはこの時、密かにこの海賊団と共謀していたことが示唆されている。これは、なぜ彼が、第7ペシュト正規隊(組織不足で、年老いたメック戦士と他の部隊を追放された兵士からなる大隊規模の部隊)を派遣したかの説明になっているかもしれない。

 数カ月間、第7ペシュト正規隊の第2大隊はドラコニス・リフト中で海賊を追跡した。この部隊はついに辺境の星図にない世界で盗賊たちを追い詰めた。二週間にわたる熾烈な戦いで、両陣営は大損害を負った。加えて、海賊たちは正規隊の航宙艦を破壊するのに成功し、事実上、惑星に立ち往生させた。クリタ大隊指揮官、ヴァンス・レザック少佐は援軍の要請を出し、部下たちに守りを固めるよう命じた。ほぼ同数の部隊はもう一ヶ月間、小競り合いを繰り広げたが、どちらも決定的な勝利をおさめることはできなかった。危険なほど補給が不足し、求めていた援軍の兆候がなかったので、レザックは行き詰まりを打破する絶望的な試みとして正面強襲を行うよう命じた。

 DCMS上層部に対するレザックの通信はその後途切れた。よって攻撃の結果とその後に付いては不明である。だが、翌年、レザックはバンド・オブ・ザ・ダムドを率いてクリタの国境世界に対する数度の襲撃を行ったのが目撃されている。襲撃の間、レザックは裏切られたことに応じてドラコ連合に対する個人的な戦争を宣言したとされている。ここ数年、レザックはこの言葉の通り、バンドを率いてクリタの目標を多数襲撃している。このグループは激しく攻撃し、捕獲できるものはなんでも(人間含む)奪い取った。海賊たちはアンタロスの奴隷市場で取引している。一部は、レザックが実は連合のスパイで、彼が連合から離れたのは単に表向きの身分を作るための綿密に計画された策謀なのだとしている。だが、この説を裏付ける証拠は存在しない。

 現在、レザックはアンタロスの都市国家、ポートクリンに地所を有している。この地所はバンド・オブ・ザ・ダムドの作戦本部として二倍の大きさになった。もっとも最近我々は〈レザックの穴〉というふさわしい名前の世界が、準備地点、修理施設になっているのを発見している。この小規模な遅れた世界はかろうじて生命を維持できるのみで、大きく広がる無防備な連合国境に戦略的に近いというところ以外、利点はない。これはレザックの目的にとって理想的で、この世界の位置は長い間隠されている(なぜROM諜報員が発見に手間取ったかの説明になっている)。現在、バンドの戦力はメック1個大隊と推測され、またレザックは連合と外世界同盟で活動するスパイと情報提供者のネットワークを維持しているとされる。


ヴァンス・レザック

 高貴なクリタ一族に生まれた非常に聡明で野心高いヴァンス・レザックは、今日、辺境で活動する最も残虐で恐ろしい海賊リーダーのひとりである。現在のキャリアにつく前に、レザックはドラコ連合でトップの軍事養成校で学び、DCMSのメック指揮官として広範囲におよぶ活動を行っていた。これらの経験が抜け目無さと組み合わされて、他の私掠船員たちよりもはるかに危険な存在としている。

 レザックの唯一目立った外観的特徴は、顔の傷と人工の左腕である。これらは両方ともDCMS時代のクレン襲撃の際にコクピック爆発の結果として負ったものだ。

 バンド・オブ・ザ・ダムドの活動に加え、レザックはアンタロスの拠点から数多の違法活動を操っていると噂されている。これらの活動は奴隷貿易から連邦共和国深くへの密輸まで幅広い。彼はプライバシーを守る秘密主義者である。それにも関わらず、これらの活動によって彼は最も裕福な辺境の住人の一人であると推定されている。





ペイン・アンド・ラック(モリソン・エクストラクター) Pain & The Rack (Morrison's Extractors)

 この15年でもっとも頻繁に略奪行為を行った海賊団のひとつであるモリソン・エクストラクターは、凶暴との評判を得ており、その一部は、彼らが所有する星間連盟技術と、生来残酷な自称国王ホッパー・モリソンからきている。コンパス座連邦ブラック戦士団の中隊指揮官モリソンは、ライラ宙域への襲撃のあいまに孤立した惑星で休んでいたとき、小さな遺失技術(ロステック)の貯蔵庫に出くわした。他の標準的なケースと比べたら、大規模とは言えなかったものの、貯蔵庫にはバトルメックが含まれており、モリソンにとってそれは莫大な富に見えた。それらの戦利品を持ってコンパス座連邦に戻るよりも、モリソンと彼の大隊は、貯蔵庫の中身を所有し、新たな海賊団としてのキャリアをスタートするのに使った。

 3040年代が終わるまでに、盗賊になって8年足らずのモリソン・エクストラクターは、ライラ宙域辺境周辺の悩みの種となり、以前に所属していた国家を襲撃して大きな成功を収めた。盗賊による搾取は、作戦と手軽な金儲けを求めていたメック戦士の裏切り者たちを惹きつけ、3048年までにエクストラクターは1個連隊に成長した。3042年に海賊団を結成した際、ホッパー・モリソンは文明された宇宙域から遠く離れた惑星に作戦基地を設営した。彼はその世界にペイン(痛み、苦しみ)と名付けた。暗いユーモア精神の現れであった。3048年に、モリソンは近隣の不毛な世界を占領し、ラック(苦痛)と命名した。

 氏族の侵攻は、不幸にもエクストラクターに触れることがなかった。氏族が選んだ地球への侵攻ルートは、彼らの領土から離れていたのである。実際にその侵攻はモリソンと部下たちに恵みをもたらした。彼らが好むライラの目標は、共和国が必死に氏族の攻撃を防ごうとしていたために、現実的に兵をはぎ取られていた。モリソン・エクストラクターは絶え間なくライラ国境の世界に襲いかかった。侵略者の注意を引かないよう、氏族前線から充分離れたところにとどまった。3052年にツカイードの停戦で氏族の侵攻が止まって以来、ライラ軍部隊はエクストラクターを再び主要目標とした。ライラ同盟のカトリーナ・シュタイナー=ダヴィオン国家主席は、最近、ホッパー・モリソンの首に多額の賞金をかけた。しかしながら、これまでのところ、海賊は、ライラ軍、AFFCの部隊の双方から補足されずに逃げている。

 過去2年間で、エクストラクターはさらに大きくなった。モリソンと彼の部下が、シモンソン・カットスロート(連邦=共和国に雇われていた部隊で氏族と戦う命令を受けて盗賊となった)と争ったときに、拡張した兵員のほとんどを獲得した。騒ぎが収まったとき、エクストラクターはカットスロートを撃破し、その生き残ったメック戦士の大多数を吸収したのである。少数の落伍者がモリソンへの復讐を誓い、深辺境の未知の領域へと逃げ出したが、勝利の望みを果たせるほどの力を得られるか依然不明なままである。現在、エクストラクターはおよそ2個メック連隊を展開しており、そこには星間連盟期のメックが含まれている。モリソンは団の襲撃目標リストに、産まれたばかりのリム・コレクションを付け加えた。その6つの世界はちょうど貧困の世紀から身を起こし始めている。

 残忍な男ホッパー・モリソンは、苦痛と被害をふりまくのを楽しんでいる。捕らえた軍人に慈悲を与えるよりも、なぶり殺しにすることで悪名高い。

3063年アップデート 3063 Update

 モリソンは近隣の新興国リム・コレクションへの大規模な襲撃を行ったが、傭兵エイブル・エースと彼らに鍛えられた市民軍に撃退された。エクストラクターは2個大隊を失い、現在残されているのは4個大隊である。




フチダ機兵連隊 Fuchida's Fusiliers

 かつては信頼と誠実で知られていたこの傭兵部隊は海賊に近い存在に成り下がった。3042年、AFFCの装甲部隊が、ポーラ“死の婦人”トレバリン(海賊)を打破したあと、彼らはトルトゥーガ自治領を支配している。自治領内から、機兵連隊は近隣の領地に頻繁な襲撃を行い、辺境沿いの連合=共和国の惑星にも攻撃をしかけている。

 トルトゥーガ自治領は、再統合戦争の際にタウラス前哨地を奪取しようと無意味で自殺的な攻撃を行った、恒星連邦の第237軽機兵隊の生存者によってつくられた。パイレーツ・オブ・トルトゥーガと自ら改名した第237とその子孫たちは恒星連邦の世界を幾度も襲撃し、5つの星系に植民できるくらい繁栄し、安定した。自治領を支配した最後のトルトゥーガの海賊、ポーラ・トレヴァリンは辺境の歴史上、最も堕落した盗賊の支配者でもあった。「レディ・デス」は捕虜をゆっくりと殺す前に公に侮辱することで悪名高く、彼女の指揮の下、トルトゥーガの海賊は第四次継承権戦争の最中と以後、恒星連邦の災厄となった。

 3030年代の半ば、AFFCが主目標にトルトゥーガ自治領を加えると、ポーラ・トレヴァリンは作戦対象をタウラス連合国とミカ・マジョリティに移した。どちらの辺境国家も海賊にそれほどの抵抗ができなかった――ミカ・マジョリティには大規模な軍事力が欠けており、タウラス連合国では護民官が連邦=共和国の侵攻可能性以外の脅威は脇においていたのである。AFFCが3039年戦争の準備に心を砕いていたとき、レディ・デスとトルトゥーガの海賊は自由に恒星連邦の世界を襲撃することができた。3033年から3040年にかけて、自治領の盗賊たちは止められないように見えた。

 トルトゥーガの襲撃再開後、AFFS司令官は海賊による恐怖の時代を永遠に終わらせる決断を下した。3042年、AFFC最高司令部は、第9連隊戦闘団を、自治領があるとおぼしき宙域に送り込んだ。2ヶ月間、自治領の主星を探査したあとに、第9RCTはトルトゥーガ・プライムに降り立ち、レディ・デスと部下の兵士たちの不意を打った。第9隊は激しい戦いのあとに海賊を圧倒し、レディ・デスを捕らえ、軍をほぼ殲滅した。連邦=共和国へ帰還するのに際し、第9RCTは厳重な警備でポーラ・トレヴァリンをニューシルティスを護送した。今日でも彼女はここにいる。

 残忍な海賊王たちを追い払ったことに心底喜んだ自治領の住人たちは、資源の使い果たされた世界で出来うる限りの生活を続けた。かつての恐ろしい蛮王国は、指導者のいない、最低の生活水準しかない惑星の集まりと化している。

 機兵連隊は3051年に連合=共和国との契約を破棄した。AFFC(連合=共和国正規軍)が最新技術の装備を与えずに、氏族域への派遣を命令したあとでのことである。氏族軍に粉砕されてしまうのでないかと恐れた機兵連隊は、命令を拒絶し別の手段をとったのだ。傭兵部隊はタンクレディIVのプレシャス兵器社の工場を襲撃し、大量の装備を捕獲、その過程で施設にひどい損害を与え、その後急いで共和国から立ち去った。外世界同盟領内を通り抜け、食べ物と水のためだけに襲撃を行い、部隊はちょうど同盟沿いの向こうにある星の砂漠をさまよった。短期間ミカ・マジョリティ内で立ち止まり、合法的手段で補給と若干の金塊を手に入れた、機兵連隊は彼らの旅を続けた。ランディス結社との小競り合いは別として(彼らはアンタロスのバトルメック貯蔵庫をめぐる戦いで機兵連隊を撃破した)、3054年まで無法傭兵部隊の活動は聞かれなかった。このとき、ミカ・マジョリティとタウラス連合国を行き来する辺境の商人が顧客を捜して、トルトゥーガ・プライムの近くに一時滞在した。伝えられるところによれば、機兵連隊は空から商人と彼女の船を一撃し、商人はすぐに自治領から退散したとのことである。

 この事件から四年、機兵連隊はトルトゥーガの海賊を復活させ、届く範囲の領地をすべて襲撃した。連合=共和国の惑星は彼らの好む目標であるようにみえる。AFFCは襲撃に応じて、機兵連隊の首に高い懸賞金をかけた。

フチダ機兵連隊(1個大隊) 古参兵/信用できる/トルトゥーガプライム
(指揮官:ツイラ・サミュエル少佐)





アンタロス Antallos

 27世紀の後半に、恒星連邦、ドラコ連合、外世界同盟、地球帝国の貿易会社が集まり、帝国の前哨世界であったアンタロスを植民化した。帝国に名目上支配されていたのだが、アンタロスは中立地帯として機能し、すぐにこの地域の恒星間貿易の、独立した活気がある中心地となった。アンタロスの重要性が認められるようになると、星間連盟政府は惑星に基地をいくつか建設した。海賊の襲撃に対処するため――そして連合、外世界同盟の面倒な政府を監視し続けるためでもあった。アンタロスはハイテクノロジーで繁栄し、それがために星間連盟の崩壊後、破滅へと導かれたのである。第一次継承権戦争中のドラコ連合軍による度重なる襲撃が、惑星の政府を粉砕した。アンタロスでは生まれたばかりの都市国家が、継承権戦争が荒れ狂う中で、支配権を争うことになった。

 数世紀に渡る戦争と技術衰退で、アンタロスは逃亡者と海賊団の隠れ家となった。犯罪者たちとともに、貿易商、冒険者、ロステック探索者がたまにやってきた。彼らは破壊を免れた星間連盟の技術を探していたのである。31世紀が始まるまでに、アンタロスはどんな物でも誰でも適正価格で買える場所だとの評判を得た。この世界はかつての交易の中立地としての栄光を取り戻したが、このとき地下組織、犯罪組織に順応しつつあったのである。犯罪活動の中心地はポートクリン、アンタロス最大の都市国家であった。

 ポートクリン(もしくは「ザ・ポート」と現地で呼ばれている)は、アンタロスの最初の植民化が始まってすぐに建設された。期間は短かったが猛烈なゴールドラッシュで急発展し、それから金がなくなると数十年をかけてゆっくりと衰退していった。継承権戦争が貿易を停止させ、現実的にポートクリンの経済を破壊した。31世紀の初頭までこの都市国家の回復が始まることはなかった。そのときポートクリンは奴隷貿易で相当な利益を稼ぎ始めたのである。加えて、ポートクリンは海賊団(隠れ家と不正入手した物品の売却先を探していた)のメッカとなった。ポートクリンの指導者は、奴隷と海賊の捕虜から大規模な軍隊を作り、この組み合わせと増え続ける富が、ポートクリンを都市国家で最大勢力にし続けたのである。

 第四次継承権戦争の終了後すぐ、大規模な星間連盟貯蔵庫がポートクリンの近くにあるとの噂が広まったとき、ザ・ポートは貴重なロステックを探しに来た数千人のトレジャーハンターから莫大な利益を得た。貯蔵庫があると噂される広大な砂漠近くの最大の都市国家として、ポートクリンは発掘希望者のための中継地点となった。何かを見つけた者はほとんどいないが、財宝ブームとそれをとりまく違法活動は、アンタロス――そしてザ・ポート――の犯罪者の楽園としての評価を永久的に確立した。合法的な、準合法的な、違法な貿易の好況に支えられて、ザ・ポートは成長し続けている。ポートクリンに住む企業家数名がソラリススタイルのバトルメックゲームを3030年代の後半にスタートさせた。奴隷貿易は、中心領域と辺境社会のあらゆる層から買い手と売り手を惹きつけ続けている。

 3058年のアンタロスは盗賊の避難地であり続けている。辺境中から海賊団が、ギャンブル、取引、中心領域での違法な傭兵活動のためザ・ポートにやってくる。中心領域と辺境の全犯罪シンジケートから来た代表者がアンタロスに支店を作った。そのほとんどがポートクリンであるが、他の都市国家にも存在する。最近の噂によると、アンタロスはデズグラと呼ばれる氏族戦士に好まれる港にもなっている。彼らはルシエンやツカイードの敗北で粉砕された後、辺境に逃げてきた連中だ。加えて階級外の氏族人――しばしば「盗賊」「暗黒」階級のメンバーだと言われる――がアンタロスの都市国家か無法地帯のフリーゾーンに住んでいると推測されている。これらの噂を確認するのは現実的に不可能な一方で、追放された氏族の存在は確かにもっともらしいことだ。自由港、そして合法・違法取引の中心地としての惑星の地位が、アンタロスの他の場所では生きていけない様々なタイプの人々を集めた。アンタロスの人口(人類の領域中から追放された者含む)は、多くが過去の暗い出来事を隠し続ける。もし氏族から追放された人間が混じっていたら、氏族生まれであることを隠すだろう。氏族であると知られたら、故郷を氏族に荒廃させられた中心領域・辺境の市民に目標とされるだろう。もしくは面目を失った氏族の戦士が、少しでも失われた名誉を取り戻すため、さらに不名誉な追放された者たちを殺すだろう。

 アンタロス都市国家間の絶え間ない戦役は、現在の好況の影響で収まった……警告も確かな理由もなしに、いつまた再開するともしれないのではあるが。人類が作ったあらゆる兵器(核を除く)が惑星の歴史上で何度か使われてきた。特にアンタロスにおける暴力の最悪な遺産は、いわゆるフリーゾーンの大気中としばしば大地に残留する生物化学物質である。フリーゾーンはドームに覆われた各都市国家のあいだに存在する無人の一帯である。この世界には法と秩序がまったくもって欠けている。

 フリーゾーンは防備が薄い交易キャラバンを狙う遊牧民族とギャング団の住みかである。ギャングはちょっとした挑発でも攻撃してくる。彼らが持っている軍事兵器と同様、しばしば野生の危険な肉食獣を使う。バトルメックを持つギャングもいると噂されている。フリーゾーンにうごめくもっとも良い装備の部隊はヴィンソン自警団である。容赦なく海賊行為をするようになったならず者の傭兵部隊だ。


ヴィンソン自警団 Vinson's Vigilantes

 ヴィンソン自警団は、最近の海賊行為で違法離脱傭兵部隊となり果てた。氏族の侵攻があるまで、自警団はほとんどの継承国家に一度以上仕えてきた。氏族の初期の侵攻において、自警団は幸運にも戦闘を避けることができたのだが、3052年のおわりごろ連邦=共和国最高司令部から、ジェイドファルコン氏族占領地境界への派遣を命じられた。いまの装備のままでは氏族の優れたメックと装備には対抗できない、そう自警団は主張し、侵略者に対抗するためAFFC(連邦=共和国正規軍)に改修キットを要請した。最高司令部は彼らの求めに応じなかった。彼らは氏族と戦い確実な消滅に瀕するより、連邦=共和国との契約を破ることを選んだ。

 自警団は連邦=共和国の兵器庫をいくつか襲撃し辺境へと消えていった。一時、AFFCの数部隊が傭兵を追ったものの、自警団が共和国宙域から離れたところですぐに狩りを中止した。前の雇用主がもう追ってこないことに気づくと、自警団は約一年間、荒廃しひび割れたドラコ領をうろつきまわった。3055年、彼らは最終的に、独立星系アンタロスの都市国家ポートクリン外のフリーゾーンに腰を落ち着けた。過去三年間、彼らはアンタロスにとどまっている。仕事を探すのに失敗し、時々思い切って補給部品のための襲撃をしている。

 ポート・クリンの消息筋によれば、自警団は中心領域に帰りたい人間と、海賊生活を受け入れた人間のあいだの内部抗争に、だんだん負けそうになっている。しかしながら、これらの階級闘争によっても、彼らの戦闘能力に重大な損失は発生していない。アンタロスの都市国家を行き来する商人は、自警団の攻撃を避けるため、彼らに金を支払うよう警告される。

















盗賊の活動状況 3062

 氏族との戦争が終わったことにより、持ち場放棄する傭兵部隊(氏族との前線で戦うよりは辺境に逃げることを選んだ部隊)の増加は収まった。しかしながら、ここ10年間の初期に辺境へと辿り着いた連中のほとんどは、すでに縄張りを確保しているか、すでに存在する海賊団に加わるかして、辺境から離れるそぶりを見せなかったのである。加えて、スモークジャガーの戦士階級が崩壊したことで、生き残りのほとんどが、野蛮な活動に走ったのだ。小規模なジャガーの部隊は、辺境での不安定な生活を補うために、孤立した惑星を襲撃した。辺境の市民にとって幸運だったことに、ジャガーは中心領域の海賊団と組むことを拒んだ。海賊をデズグラよりも悪いものと見なしていたのである。

 ジャガーの数部隊は、最近、ポートクリンやアンタロス(海賊の避難地として知られる)の他の都市に姿を現した。彼らは小さな海賊団をいくつか破壊し、注意を引いた。なぜそうしたのか、まだ誰も決めることができない。ジャガーはまだヴィンソン自警隊のような大規模部隊に手を出してはいないが、地元民は遠からずそうなるだろうと考えている。そのあいだに、アンタロスの様々な組織犯罪団体は、ジャガーのメック戦士を雇おうと試みた。これまでのところ、それに成功した者はいない。

 伝えられるところによれば、他のジャガーの戦士は、アストロカジーの独立した世界に腰を据えたという。過去、旧SLDFが補給地点として使っていたという噂に引き寄せられたのだ。星間連盟はそこを休息する場としていた。彼らは星間連盟の貯蔵庫の支配を得るため、他氏族のデズグラ部隊と交戦したといわれている。他氏族のデズグラ部隊の存在は、噂(中心領域の王家が極秘の新型機をアストロカジーの荒野でテストしているというもの)の有力な源となっているのである。

 ニューベルトパイレーツは、まだウルフ氏族占領域で行動中であるが、これ以上長くは持たないかもしれない。拒絶戦争で侵攻派ウルフ氏族軍が激減し、3058年から3059年のはじめにかけて、ウルフ保有世界への海賊の襲撃が増加したが、過去2年間、侵攻派ウルフは彼らに対する作戦を強化しているのである。ウルフ氏族長ウラジミール・ワードは、このような不名誉な任務にソラーマ部隊を割り当てるという氏族の慣例を破り、新しいウルフ部隊と、いわゆる収穫の神判で他氏族から獲得した部隊を、訓練として、盗賊狩りの遠征に使ったと取りざたされている。ニューベルトパイレーツは、充分な力を持ったウルフ氏族部隊に長いあいだ対抗できそうになく、おそらく次の年が終わる前に、辺境へと戻っていくだろう。

 ヴァンス・レザックとバンド・オブ・ダムドは、ドラコ連合国境でトラブルを引き起こし続けている。旧母国に対するレザックの個人的な戦争だ。DCMSは、ノヴァキャットをドラコ連合に統合するという難題に忙殺されており、まだ海賊を決定的に処理していない。海賊の襲撃により、犠牲となった国境世界の人々は、ノヴァキャットを受け入れていない。彼らは時間を費やすため、また連合の指導者・軍部の注意を引くため、キャットを非難している。もし「薄汚い氏族人」がいなければ、大統領は海賊を全滅させるために最高の部隊を送り込むだろうと、彼らは信じている。

 そのあいだに、カトリーナ・シュタイナー=ダヴィオン国家主席は、連邦=共和国の信頼を勝ち取る意思表示として、フチダ機兵連隊の首にかけた賞金を倍増させた。この海賊となった悪漢部隊は、3051年に氏族前線で戦うことを拒否してから、連邦=共和国の世界を襲撃することに全精力を傾けている。国家主席が連邦=共和国を支配してすぐに、機兵連隊は国境への襲撃を増加させた。彼女が、AFFC内のヴィクター派を相手するのに手が一杯だろうと推測したのだ。これまでのところ、海賊のギャンブルは成功している。しかしながら、賞金の高騰で、機兵連隊の運は尽きるかもしれない。
















辺境の海賊 3063

ジョリーロジャー(海賊旗)の下で


 辺境の海賊に関する話は、長年、ホロヴィッドの題材にされてきた。しかしそれらの話の大半が空想上のフィクションである――想像ばかりで事実はほとんどない。以下のセクションは、トルトゥーガ自治領として知られる蛮王国の元支配者、ポーラ"レディ・デス"トレヴァリンから直に得たものである。ある星系群に関する戦略諜報と引換に、トレヴァリンは辺境で活動している海賊団に関する概要をまとめることに合意した。
 ――CSJ






レディ・デス LADY DEATH

 権力の座から陥落したことで、私は蛮王国を支配することの難しさという厳しい教訓を与えられた。それゆえ、私は一人ではトルトゥーガ自治領に戻らなかった。その代わり、私は私の下で働く志願者たちを募集し、ヴェルディグリ星系に向かった。もちろん私は、応じた数千の盗賊たちのうち、最高の連中のみを選んだ。私は残りの連中をパイレーツ・ヘイヴンと呼ばれる星団に導いた。マーチャント級航宙艦を獲得した後、クルーたちと私はアテナズ・チョイスに向かい、素早い襲撃で補給物資を奪いとり、2隻目の降下船を追加した。

 そこから我らは、ヘイヴン、50近くの星を持つ星団に向かった。その惑星の一部はめちゃくちゃな軌道を回っていた。他は複数の星々の重力に捕らえられていた。星団の中心は原始星である……航宙艦の接近を危険なゲームにしているのと同じ重力によって引き裂かれ、完全な星になるのを妨げられている星だ。この混沌、宇宙の危険地帯の中に入ると、我々は星団内の居住可能な惑星に降下した(安全に近づける方法を知っている海賊の航法士は数十名のみであり、そのうち7名が現在私の支配下にある)。

 この時、惑星はいまだブラッディ・ジェイムズ・カイテンの個人的な要塞となっていた。ブラッディ・ジェイムズにとっては残念なことに、彼はかろうじてこの惑星を保持しているだけだったのである。その上、彼はその夜、静かに眠ることができなかった――蹴り飛ばされ、鞭打たれ、最後には舌で喉をつまらせることになった。ヘイヴン星団の残りは、私に喝采に浴びせた。

 現在私のチーム――デス・コンソルト――と私の支配は挑戦を受けていない。

士官
 ジャックソンは海賊生活を拒否したスモークジャガーの裏切り者である。私はアテナズ・チョイスで彼にでくわした……捕獲した降下船から退去するのを拒否したのである。舌戦を交わした後、彼は一対一の戦いで私に挑戦した。彼は私が決闘に選んだ武器であるムチの取り扱いに慣れてなかったようだ。彼はムチの一撃で左目を失った後で敗北を認めた。

戦術
 私は自分自身のアドバイスに従っている。入り、ほしいものを取り、出て行く。もし、立ち止まって戦うときは、いつも自分のやり方でやる。私がもっと戦術計画を明かすと思ってるのなら、愛しい人よ、きみは夢を観ているのだ。私は刃向かう者は容赦なく単純に破壊する。それは得るのと同じくらい良いことなのだ。

デス・コンソルト
大隊/エリート/信頼できる
指揮官:ポーラ"レディ・デス"トレヴァリン
第1大隊:ジャックソン
第2大隊:ギャリー"チーク"ティクアルミー
 ジャックソンのためにヴァンス・レザックからマサカリを購入したのだが、彼はこのマシンをウォーホークと呼ぶように主張している。さらに彼は大隊に氏族と同じメック5機編成の小隊を使わせ、これを「星隊」と呼んでいる。これによって、彼の大隊は通常の編成より9機のメックが増えている。どのような奇癖を持っていようと、彼の成功に文句は言えない。私は彼の「三連星隊」のうち2個をエリートと評価している。

ウィングド・デス
3個航空中隊/エリート/熱狂的
 第1航空中隊(サイスズ)は6名のエリートパイロットで構成される。第2航空中隊(ルビー・スカルズ)は古参兵を持つ。キッカーが第3航空中隊である。エリートぞろいであるが、この航空中隊は4隻のシャトルとそれに乗り込む兵士からなる。これらの乗っ取り突撃兵たちはすでに私に対しその価値を証明しており、私にとって唯一の通常「歩兵」であり続けている。

ヘイヴン・イレギュラーズ
5個歩兵連隊/新兵/信頼できる
 イレギュラーズは4000人の男女からなり、毎日その数は増えている。(トルトゥーガ)自治領と同じ最低限の支援レベルに達するには時間を要するだろう。さらなる襲撃と海賊行為が必要だ。なんとも恥ずかしい。時間があれば、自治領からヘイヴンに多くを吸い上げられるかもしれない。





ヴァンス・レザック Vance Rezak

 ドラコ連合の軍部はヴァンス・レザック少佐を死地に送ったようだ。レザックが指揮するペシュト正規隊の大隊に対し、バンド・オブ・ダムドを追跡し、殲滅するよう命じたのである。その後、大隊の航宙艦が損傷を負ったというのに、DCMSの指揮官はレザックによる補給の要求、援軍、救援の求めを無視した。レザックがついにダムドのリーダーを破ると、彼は海賊の長となり、良きサムライの習慣として裏切りに対する復讐に着手した。私はこれを正義と呼ぶ。呪われた楽しみとも呼ぶ。

 ダムドは〈レザックの穴〉としてのみ知られる世界に基地を維持している。他の海賊基地のように、その正確な場所は秘密が保たれている。レザックは海賊の世界アンタロスに大規模な地所を維持しており、奴隷貿易から違法な武器売買にまで手を染めている。最近、ダムドはヴィンソン自警団と幾度か衝突した。ヴィンソン自警団とは、ポートクリンの事実上の守護者となった不名誉な傭兵団である。この落ちぶれた傭兵連隊はとうとうダムドが力を付けていることに気づき、もっと強くなる前に抑えようと考えたようだ。そうだとしても遅すぎた。実際、彼らはこの強力な海賊団がポートクリンに居るのを許してくれることに感謝せねばならないだろう。

士官
 ヴァンス・レザックは最も裕福な海賊の一人であるが、富を非常に上手く隠している。私のスパイは彼がニューアヴァロンとルシエンに影響力を持つことを突き止めた。これは、レザックの情報提供者と悪徳政治家のネットワークが中心領域中の裏路地から高官にまで及んでいるかもしれないことを意味している。これまでのところ、彼は集めた情報を売ることにのみ興味をいだいているようだ。

 彼の次席である「ディッキー」スミスは正体不明である。あいまいな過去、脳天気な――ほとんど不注意な――態度、野心なし。もし、私がレザックの天分とスパイネットワークを知らなかったら、この男は外部の軍部からダムドに潜入するために送られた密偵であると言っていただろう。

戦術
 レザックのダムドは、戦場での戦術の多くを連合のドクトリンからとっている。レザックがサンツァン兵学校で訓練を受けたのを考えると、それは驚くべきことではない。彼は敵を大胆に、注意不足にさせるため、装甲車両に陽動、単独での突撃を行わせる。それから達人的なチェスの妙技を持ってメックを配置する。戦力のすべてが配置につき、望んだとおりに敵が分散するかあるいはひとかたまりになると、名誉あるサムライスタイルの突撃によって戦闘を終わらせるのである。

バンド・オブ・ダムド
大隊/エリート/信頼できる
指揮官:ヴァンス・レザック
 何年にもおよぶ襲撃によって、ダムドはドラコ連合の最高のマシンから選り抜きを揃えている。ここには1個中隊分のDCMSオムニメックが含まれる。またダムドは氏族技術の兵器を載せたオムニ1個打撃小隊を展開している。これらの装備は逃亡するジャガーの裏切り者たちとの戦闘であさりとったものである。その上、ダムドは辺境の海賊団のうちで最高の支援員を持っている。よって彼らのマシンは常に最高の状況にある。

ダークエンジェルズ
航空中隊/一般兵/信頼できる
航空大隊指揮官:"スマック"クレジェスキー
 4個航空小隊の戦力を持つダークエンジェルズは、重量級、軽量級の気圏戦闘機を同数配備している。これによりダムドは各任務に適合できる柔軟性のある航空戦力を持つ。ダークエンジェルスは陸上部隊にあるような戦術的洗練とは無縁だが、無謀な戦術によってそれを埋め合わせている。

バンド・オブ・ダムド
2個大隊/一般兵/熱狂的
装甲隊指揮官:ルドルフ・キャラターノ
 装甲部隊を攻勢に用いる数少ない海賊であるダムドは、戦車兵の損害を無視しているように見える。どの戦いでも手ひどく傷めつけられるであろうことを知っているにも関わらず、奇妙なことに、戦車兵たちはレザックに熱狂的な忠誠を誓っている――戦場に投入されるときはたいてい約1/3の車両が失われる。そういった見込みがあるにも関わらず、ダムド装甲大隊への入隊を求める戦車兵は不足しそうにない。その競争自体が熱狂を加速させるのだ。





トルトゥーガ機兵連隊 Tortuga Fusiliers

 トルトゥーガ自治領は連合と外世界同盟の間の空白な地域における、6個の世界の密集した島として存在し続けている。交易路から遠く、確固たる産業を持たない自治領は、海賊行為による略奪品に頼っており、殺人鬼たちの中間準備地点として長い間機能してきた。この星系の最も重要な世界、トルトゥーガ・プライムは自治領の中心としての地位のみならず、海賊都市、レイダーズ・ルーストで有名である。私が42年に失墜したあと、この権力の空白を埋める者はなかった。自治領の世界が生命維持出来る程度の惑星の集まりとして存在したのは3054年までのこと。フチダ機兵連隊が到着したのである。

 連邦=共和国に裏切られ、氏族の猛攻の前面に立つ犠牲となることを求められた機兵連隊は、共和国との契約を破り、辺境に逃げ出した。彼らがトルトゥーガ自治領に姿を現すと、民衆は彼らを影響力を取り戻す手段として見た。機兵連隊は一年以上国境を閉じた。沈黙が破られると、それはまるで自治領が12年におよぶ眠りから冷めたようだった。ダヴィオン家への襲撃は私がこの手でやったのと同じくらいの損害を与え、タウラス連合、外世界同盟を狙うのに時間はかからなかった。当然、後に彼らはタウラスへの襲撃を中止し、しぶしぶ私に領土とパイレーツ・ヘイヴンを与えたのである。

 機兵連隊は長き伝統の多くを捨て去り、現在では、新たな故郷から名前をとっている。

士官
 トワイラ"ザ・メジャー"スメラルは、旧機兵連隊の指揮官である。報告によると、彼女は海賊の女王としての生活によく馴染んでいるようだ。もし彼女に弱点があるとしたら、それは(仲間の海賊に対してさえも)約束を守る傾向があることだろう。トワイラはいかなる犠牲を払おうとも誓いを守ることで知られている。だが、裏切られたときは、彼女は遺恨を宣言し、敵が死ぬまで続けるだろう。

戦術
 機兵連隊は真に市街戦のこつをつかんでいる。これは建物を通って移動したり公園を地雷原にするといった制限を失ってから開発されたものである。彼らが好む戦術のひとつ(私はすでに我が物としている)は、ジャンプできるメックを使って敵軍を囲い込み、破壊するというものだ。彼女の「死の渓谷」戦術は、ジャンプできないメックを建物と建物の間に配置し、ジャンプできるメックを周囲の屋根に移動させる。この十字砲火はまさに殺人的に他ならない。

トルトゥーガ機兵連隊
大隊/古参兵/信頼できる
指揮官:トワイラ"ザ・メジャー"スメラル少佐
 機兵連隊は、私が新兵募集の呼びかけを行うまで、2個大隊に拡大していた。若干の隊員が部隊を離れ、私に加わろうとした――この決断は他の隊員にとって気に食わないものだった。ちょっとした戦いが勃発し、第1大隊を離れようとした1個小隊が連続した砲撃戦で破壊された。すべてが終わったとき、機兵連隊は2個中隊を失っていた。部隊はそれ以来、4個中隊からなる1個大隊に再編成している。各中隊は単独でも、大規模な戦闘部隊としても行動可能である。

トルトゥーガ・コルセア
2個航空大隊/一般兵/疑問
航空大隊指揮官:キャメロン"ホットシート"クライン
 長年、トルトゥーガ自治領は、敵の交易路への襲撃で捕獲した宇宙船からなる大規模な航宙艦隊を維持してきた。かつての誇り高き艦隊は、現在、少数の航宙艦と支援降下船からなっている。機兵連隊は、交易路を妨害し、惑星の襲撃を支援するために、航空宇宙強襲部隊の再建を行っている。コルセアは中量級以上の19機の気圏戦闘機を展開している。素早く宇宙船を無力化するのがコルセアの専門である。

第1トルトゥーガ歩兵隊(スカルプハンターズ)
連隊/一般兵/信用できる
歩兵指揮官:ライアン"レディキラー"コールマン
 機兵連隊の自治領との関係は、彼らに相当なマンパワーを与えた。スカルプハンターズはマンパワーを使おうという試みである。通常の軍事部隊と同じやり方で組織されたこの歩兵連隊は、戦場の戦術と群衆コントロールの訓練も行っている。ハハハ、機兵連隊はなにか大きな計画を立てているようだ。





海賊の世界 Pirate Worlds

 人間性の最悪の側面を避けたかにみえる部分が、海賊世界として知られている多くの惑星を植民地化した。かわりに彼らは自分たちが最悪中の最悪なものになっていることに気がついた。これらの世界での生活は必ずしも悪いものではない――無法ときまぐれな残虐さを嫌う市民以外にとっては。それらの人々にとって、海賊の世界での生活は身の破滅より悪いものになりうる。



アンタロス Antallos

 星間連盟最後の世紀に、星間貿易を営むコングロマリットがアンタロスを植民化した。300年以上前にホールが開かれて以来、そこは交易者の交差点として知られるようになり、文字通り何でもすべてを得ることができた――価格さえあっていれば。星間連盟が崩壊して以降、アンタロスもまた、隠れ家を探す海賊・厭世家のメッカとなった。

 世界は多数の独立都市国家に支配されているが、最も知られている都市はポートクリンである。様々な海賊や実力者が他の都市の所有権を主張している。「ザ・ポート」は開かれた中立都市である。少なくとも、力ずくでこの都市を奪い取るか、支配しようと脅したものは、数時間以内に死ぬ結果となっている。

 アンタロスでの生活は困難だが、世界の経済は驚くほど強固である。そのほとんどは海賊と、財宝ハンター(星間連盟時代の貯蔵庫があると長い間噂されている)による。対氏族戦とスモークジャガー氏族の殲滅が終わって以来、多くの不名誉な氏族人がアンタロスにやってきて、ポート・クリンの周囲に居を構えた。彼らは立ちふさがるものを殺すのをやめたように見えるが、ゆっくり盗賊になろうとしている者もいる。もちろん、氏族の「暗黒階級」がそこに行ったという噂を確かめるのはほとんど不可能なのだが、氏族人が「適合」し始めた事実は、噂にあるていどの信用を与えている。



ペイン・アンド・ラック Pain & The Rack

 モリソン・エクストラクターの支配するふたつの世界での生活は、残虐で困難である。これらの世界は他の海賊団から狙われている。そういった連中は名をあげようとしているか、単にエクストラクターから資源を盗もうとしている。エクストラクターはペイン・アンド・ラックと呼ばれる本拠地で、数千人の「自由」な人々の制限を緩めた。小さな文明を維持するために市民が必要なことに気づいたからである。一方で、エクストラクターはここ数年、数千人以上の囚人を連れてきて奴隷にした。もっとも信頼できる統計を見ても、両世界の人口の合計は15000人から20000人で、半分以上が奴隷だとわかるだけである。ホッパー・モリソン王の王宮(プレハブの複合建築)でさえ、環境はひどい。もっともましなのはペインの大陸ハーデスの奥地で自活する人々だといわれている。



パイレーツヘイブン群星団 Pirates Haven Star Cluster

 現在でさえパイレーツヘイブン群星団に関してはほとんど知られていない。50の星々からなる群星団が小さくまとまっており、パイレーツヘイブン(海賊の避難地)については文字通りである。様々な報告によると、少なくとも2ダースの異なる海賊団が存在し星団を定期的に使ってきたとのことだが、星団に送られた軍事遠征隊はほとんど何も発見できなかった。彼らは星々を綿密に調査した。これらの星には二連星や珍しい三連星が含まれており、センサーと通信装置を混乱に陥れた。遠征隊のうちかなりの数が群星団から戻ってこなかった。ジャンプで天体に近づきすぎたためだと思われる。より多くの海賊船が同じ原因で失われたと私は報告を受けている。星団の星系内にはいくつかの惑星があるといわれている。しかしながら、星団の性質により、防護服なしでは数時間以上惑星の表面にはとどまれない。多量の可視放射線が降り注いでいるのである。



〈レザックの穴〉 Rezak's Hole

 ヴァンス・レザックはポート・クリンに財産のようなものを持っているかもしれないが、彼は作戦のすべてを〈レザックの穴〉と呼ばれる星系から行っている。〈レザックの穴〉はドラコ連合辺境のどこかに位置しており――彼と部下たちは星系の位置に関する秘密を漏らさぬよう慎重である――取るに足らないことだといわれている。戦略的な要地として使う以外にはほとんど役に立たないが、レザックと荒くれ者たちは連合の臀部に容易にアクセスできるのだ。通常軽い防護がなされているそれらドラコ連合の地域は、いま解放されているも同然だ。ゴーストベアと連邦=共和国内戦に対処するため、連合が部隊配備を再調整した結果である。



〈さいはて(スターズ・エンド)〉 Star's End

 〈レザックの穴〉と同じようにスターズ・エンドは、ただひとつだけ有効な利益をもたらす。この星系は小惑星帯に囲われており、やってくるのがほとんど不可能なのだ。一方、星系が小惑星帯内に存在する事実は、隕石や他のスペース・デブリが基地に落下しないよう監視し続ける必要があることも意味している。

 ニュー・ベルト・パイレーツはほとんどいつもうろついており、星系を守るために名ばかりの防衛部隊を残しているといわれている。これらの噂によると、小惑星帯は相当に採掘されていて、海賊は強力な防衛層を築いてるともいう。この事実は"片目の"モーグレイン=ライアンの伝説的な「警告」――もしくは妄想により容易に信じることができる。



トルトゥーガ自治領 Tortuga Dominions

 再統合戦争最後の年に、恒星連邦のデネブ第237軽装甲機兵連隊によって植民地化されて以来、トルトゥーガ自治領は海賊の指導者に束縛されているように見える。他の多くの辺境世界のように、トルトゥーガプライムとそれを取り巻く星系は、戦争による大勢の難民の目的地となった。不機嫌な第237隊は、数世紀のあいだトルトゥーガの海賊・人類の疫病として知られるようになり、それはAFFCが3042年に海賊を破壊し、指導者ポーラ・トレヴァリンを捕まえるまで続いた(彼女はなんとかニューシルティスの監獄から抜け出したという、噂が正しければ)。悪漢傭兵団のフチダ機兵連隊は、氏族と直面するよりはとAFFCとの契約を破棄し、彼女がいなくなったあとの惑星を乗っ取った。

 トルトゥーガ自治領での生活は驚くほどよい。星系は互いに支援でき、軽工業が発達している。機兵連隊は海賊行為の誘惑に負けたこともあるが、年一回の徴収を除いては自治領内の人々をそのままにしている。





新しい伝説の誕生

 以下は独立した報告には値しない海賊団――いまのところはまだ――のいくつかである。しかし、海賊を侮るなかれ――これらのうちの一部は極めて危険である。もちろん、そうじゃない連中は、権力の座にあるだけの牙の抜けた老犬に率いられている。なぜなら、その海賊団はリーダーを放逐できないほどに間抜けだからだ。

"レッドアイ"ローディン大尉
 リムコレクションのリムワード沿い宙域を基点に活動する"レッドアイ"ローディン大尉の一団は、コレクションとコンパス座連邦にとって災いとなっている。このグループはライラ同盟への商船襲撃も行っており、ハーフウェイ星系のような奥深くにまで攻撃を行う。私の知る限り、ローディンは地上の目標を攻撃したことはない。
 ローディンは左目で簡単に見分けられる。血管の破裂によってほとんど真っ赤なのだ。(噂によると、ローディンはかつて網膜点眼の幻覚剤中毒だったという)

レッドコルセア
 だれがこのゲームをやろうとしているのか私は知らない。元々のレッドコルセアは、ライラの反乱軍が50年前にしでかした悪ふざけに過ぎなかった。3055年に彼女が「帰還」し、それから「目撃」されていることは、疑いようのない噂であり、ぺてんであり、気取り屋の仕事である。この「新しい」コルセアの危険性がどうであれ、彼女は我々から離れるのにベストを尽くしている――海賊は偽物を嫌うのだ。

サノス・テリブルス
 サノス・テリブルスはリーダーのせいでないにしろ、目立たない海賊団のひとつである。裏切りを新たな段階に引き上げた卑劣漢であるサノスは苦痛、苦悩、死の権威である。興味を惹かれる男だ。
 アンタロス周辺の寂れた宙域で活動するテリブルスは、内部工作の達人である。かれらはいつも守備隊、目標とする船に浸透し、兵士、船員を脅迫するか、あるいは金銭を約束して歩み寄る。一人だけに頼ることのないサノスはひとつの仕事ごとによく三名以上を使う。最高でも生き残れるのはそのうち一名である――その他は当局の手に残されるか、その場で殺される。生き残ったものには多額が支払われるが、次の任務において犠牲となるようだ。

ダーク
 ここしばらく、氏族の裏切り者たちがアンタロスに惹きつけられている。だが、スモークジャガーの崩壊が、最大の氏族戦士流入を生み出し、彼らは絶え間なくいわゆる「海賊の首都」にたどり着いている。元氏族人たちのうち、ダークはおよそ1個大隊の戦力を持つ最大のグループである。これらの元氏族戦士たちは、必要に応じて襲撃と決闘を行い、他の集団とは接触を拒絶することで、自らを保っている。ひとつの海賊団のみが、氏族技術の取引を求めてこの氏族集団と接触を図った。ダークは海賊を皆殺しにし、ガラクタとなったメックをポートクリン外の巨大なゴミ山に放り投げ、他者にも知らしめた。
 ダークの名前は、氏族の盗賊階級、いわゆる暗黒階級から来ている。「我らダーク」は、この集団の構成員が外部に明かしている唯一の事柄である。

マーク・ブラッディ・ギャング
 マーク・ブラッディ・ギャングはアンタロスを基点に活動するもうひとつの海賊団である。連合、恒星連邦、外世界同盟の地上目標をほぼ専門としている。このギャング団はメックを使って銀行の金庫を破るか宝石店に押し入り、退却する。この集団のメンバーたちは、古いウェスタンのアウトローのイメージを作るのを楽しみ、メックの「顔」に黒いバンダナをペイントしさえしている。

ジュエル・ピカルーンズ
 これまでのところ、ピカルーンズは自由世界同盟、(マリア)帝国、(カノープス)統一政体、相当数の小独立辺境世界の目標を襲撃している。最近、カノープス統一政体が、彼らに私掠許可証を与えた(合意によると、統一政体、ニオプス協会の目標を襲撃しないことになっている)。現在、カノープスの私掠部隊と考えられるピカルーンズは、その兵器をマリア帝国に向けている。近年、帝国がワード・オブ・ブレイクの一派閥と組んで攻撃を仕掛けてきたことに対する報復である。

マルカディア兄弟
 コンパス座連合とカノープス統一政体の間にある海賊の楽園で活動する、双子のマルカディア兄弟は、インベーダー級航宙艦1隻と、オーバーロード2隻、古いフォートレス1隻を指揮している。マルカディア軍は、バトルメック2個中隊とエリートの気圏戦闘機中隊で構成される。兄弟はすぐにこの地域の勝ち組となり、アルファードの宇宙港からゲルマニウムを輸送していることで多くの影響力ある友人たちを作ることになるだろう。
















海賊 3067

サン=ジャメ戦司教: レディ・デスが思ったより従順でないのが心配だ。特使は背中をムチで叩かれて、成果無しで帰ってきた。借りは返したとあの女は言っているし、こちらからもっと要求するなら「気を引く飾り立てた贈り物」が必要だ。このアップデートをまとめるにあたって、すべての情報を網羅した。トレヴァリンをどうすべきだろうか? ―ケルノフ

[アレクサンダー: ピュリファイアー・バトルアーマーの1個分隊を、挨拶と一緒に送ろう。我らが同盟者に寛大であると、教えることができる。そして敵に対しては無慈悲だと奴は考えるはずだ。―CSJ]


レディ・デス LADY DEATH

 ポーラ・トレヴァリン率いる殺人部隊が、作戦行動可能になってきたことを、彼女自身の言葉が良く表している。最近の要望に対して、彼女が出した唯一の返答が以下のものだ。「我らは昨日より強くなり、明日はもっと強くなる」

 パイレーツヘイヴンは、トレヴァリンの海賊団デス・コンソルトにとって都合がいい。近くのカルデロン保護国の結成と、ベルアイル、ティレニアの緩慢な死が、有望な獲物を彼らに与えた。彼らは何をすべきか知っていそうだ。


バンド・オブ・ダムド BAND OF THE DAMNED

 3064年、スノウレイヴン氏族の斥候が、隠れ家世界の〈レザックの穴〉を発見して、ワード・オブ・ブレイクの辺境での作戦を頓挫させた。ヴァンス・レザックとスミス(副指揮官でワード・オブ・ブレイクの工作員)は、ダークエンジェルスの1個小隊、1個装甲大隊、1個バトルメック中隊(これまでに存在が知られていたもの)を失い、さらにワード・オブ・ブレイクが何とか隠し続けてきた2個バトルメック中隊を失った。

 レザックとスミスはこのとき、ポートクリンにあるレザックの屋敷にいた。この損失後、レザックは素早く新たな権力基盤をうち立てた。戦う意志のないヴィンソン自警団の一団がやってきたとき、ワード・オブ・ブレイクのスパイネットワークと、レザック自身の評判が役に立った。彼らはポートクリンを奪い取るような氏族の動きに対して抵抗しており、ワード・オブ・ブレイクが必要と考えるかもしれない攻撃を支援する準備ができている。


ニューベルトパイレーツ NEW BELT PIRATES

 スージー"隻眼"ライアンがニューベルトパイレーツの支配権を得て、かつての海賊王を追い出してから、ワード・オブ・ブレイクがモーガン・フレッチャーと関係を培ってきた時間が無駄となった。ウルフ氏族が専門の銀河隊を派遣して、数ヶ月の海賊討伐任務に当たらせた結果、ニューベルトパイレーツの1個大隊以上が失われた。この後に彼女がこういう行動に出たのは明らかである。ウルフの怒りを買うほど海賊団をけしかけすぎたのだと、スージーはモーガンを責めたようだ。彼女と部下たちは地下に潜ったが、復讐を手に戻ってくるのは間違いない。


シェン=セ・ティエン SHEN-SE TIAN

 この「暗き日」団は、相次いで災厄に見舞われ、かつて連隊規模だった部隊が1個強化大隊にまで減少した。優秀な戦士たち(見方によっては最悪の戦士たち)だけが残された。この部隊は、海賊行為を行えるほどに小さく、間違いなく古参兵の腕がある。フロンツリーチ、カノープス統一政体、タウラス連合国によく襲撃を仕掛けている。ミューリドックスで第5連邦予備機兵隊に叩きのめされて以来、彼らは大連邦国の世界につかの間の休息を与えている。


カルデロン奇襲部隊 CALDERON COMMANDO

 ワード・オブ・ブレイクが聞き及ぶ限り、この新海賊団を結成したのは、カルデロン保護国の離脱時に見捨てられた兵士たちである。以来、彼らはタウラス宙域を横切って移住し、フロンツリーチ内のどこかに基地を設営した。そこから連合国と(たまに)統一政体に襲撃を仕掛けている。この名を選んだのは、単に混乱を呼ぶためであるようだ。


オーダー・オブ・フェイスフル ORDER OF THE FAITHFUL

 アストロカジーへの帰還はワード・オブ・ブレイクにとって想定されたリスクだった。幸い、サン=ツー・リャオと統一政体の干渉はワード・オブ・ブレイクのミスを指摘した。砂漠の海賊団に浸透し、マスターのご意志に沿うよう転向させるのに長い時間を要したが、その人数は多く、勝ち取った忠誠心は強い。

 「キャメロットの策略」は実を結んだ。埋蔵された備蓄物資を発見した後で、ワード・オブ・ブレイクの各「予言者」、遺跡漁り、武王たちは、多くを得て、地元民を支配したのである。工作員ハダイ・トルと、武王オバッカ・ラシエールが共同で新海賊団(2個連隊の戦力がありまだ拡大している)を率いている。これまでのところマリア帝国、統一政体、自由世界同盟にさえも襲撃を成功させている。
















辺境 3134



バートラム・ハービーズのツーリング・ザ・スターズ 第48回:辺境の住人
Touring the Stars with Bertram Habeas Volume XLVIII: Denizens of the Periphery


 現代のツアーガイドは、辺境の世界アンタロスに頭を悩ます必要はない……地元の人間に手を出さないよう注意する点を除いては。だが、星間連盟期にさかのぼると、この惑星は、連盟、近隣の恒星連邦、ドラコ連合、外世界同盟の貿易中心地となっていた。星間連盟の崩壊とともに、この世界とロステック貯蔵庫は、近隣国家による野蛮な襲撃の対象となった。その後の2800年代後半、最終的に政府に似たものはすべて崩壊した。この星の全社会組織は都市国家に分裂することになる。その多くは放浪民に統治されているか、クリタ家、外世界同盟の難民に統治されている。様々な形式の政府はしばしば衝突した。だが、200年後にポートクリンが惑星の政治を支配する勢力として浮上した。海賊行為と奴隷売買で繁栄し、無理に結合したのである。

 タリシー海岸の南に位置するポートクリン市の外では、不毛の砂漠と荒れ地が広がっており、都市国家が散在している。バトルメックを持っているのは少数派である。盗掘屋、漁り屋、海賊、放浪民が不毛の地を徘徊している。彼らの生存手法は、不注意な旅行者たちの潜在的な危機である。法が及ばず、適者生存の外世界では、海賊と敗残傭兵隊が都市を駆け回り、都市のあらゆる角に裏切りが潜んでいる。


 我らが辺境について考えるとき、イメージしがちなのがアンタロスである。我らは呪われた不毛の地を想像し、おそらく失われた過去の栄光に思いを馳せる。我らは山賊と漁り屋が、殺人と掠奪で生計を立てているのを思い描く。我らはネガティブなイメージを抱き、それが人類の領域の外辺のすべてであると信じている。

 しかし、周知のごとく、この地域には、中心領域と同じくらい豊かで複雑な王国が存在するのである。カノープス統一政体には、力強い経済、豊かな文化的歴史、ぜいたくな経済がある。隣の好戦的な警察国家カペラ大連邦国とは対照的である。同様にタウラス連合国は、隣接する大国の恒星連邦から毅然と独立を保っている。マリア帝国でさえも(この国は海賊から野心と闘争の果てに成り上がった)、近隣の元自由世界国家であるリム共和国とタマリンド=アビー公国の、奇妙な対立候補となっている。

 これらの王国を超えたところにさらに独特な国家と小国がある。ライラ宇宙のすぐ向こうには、リム・コレクションが存在する。自由世界同盟から追放された者と、都市の議員が、大いなる夢を持って、3048年に立ち上げた7つの世界からなる民主国家だ。長年、海賊の襲撃と戦い、国家創設に付き物の産みの苦しみと格闘したコレクションは、民主主義国として存続している。貿易と自衛のために連合したのだが、指導者の選出と立法は自由である。ここの人々は、隣のライラと同じくらいに、よく働き、独立している。また一般に親切でもある。

 この国からそう遠くないところに、11の世界からなる蛮王国リム・テリトリーがある。聖戦の混乱の折りにライラからもぎ取った世界と、同時期に避難してきた者たちの植民地でできている。とにかく秩序と身の安全を求めていた人々は、ためらいなくこの地域を根城にしていた強力な蛮王の庇護下に入った。「庇護者たち」が近隣の王国を餌食にする一方で、彼らはどうにかして生計を立てた。

 そこからリムワードにいくと、消滅したコンパス座連邦(マリア帝国のような海賊国家だったが、聖戦の最後の年に主星とともに消滅した)の先に、ロシア連盟がある。6つの凍てついた世界からなる連合である。創設したのは再統合戦争時のタウラス人難民で、31世紀の中ごろにはマリア帝国によって短期間占領されていた。聖戦の混乱の折りに自由を取り戻したのだが、連盟と帝国は強いつながりを保っており、明らかにローマ風の政府がロシアの世界には残っている。

 帝国とリム共和区(元自由世界同盟)のあいだにくさびを打つ形で、小国家が存在する。ニオプス協会と呼ばれる3惑星からなる同盟である。星間連盟時代に、天文調査基地として開発されたこれらの世界は、継承権戦争の難民が流入すると小国家に成長し、貴族階級のインテリ(調査員たちの末裔)が統治するなか、比較的平和を保っている。

 中心領域のリムワード地方には、フロンツリーチを見ることができる。かつてはカノープス統一政体とタウラス連合国のあいだの新植民地区と呼ばれていた、11個の世界からなる同盟だ。3060年代に独立を勝ち取ったこれらの世界は、カノープス統一政体と――ひいてはカペラ大連邦国と――緩い提携関係にある。中央政府は弱体で、軍隊は傭兵と「社会復帰した」海賊からなる。創設者であるタウラス人・カノープス人と同じく、ここの住人は旺盛な人々である。自らの血、汗、涙を流して生き残ると決心しており、同じく収益を上げるために戦い死んでいくと決心している。

 恒星連邦の国境を超えると、さらにふたつの辺境王国(昼と夜のように違う)が存在する。恒星連邦から分離した7つの星からなるフィルトヴェルト連合は昼のほうだ。文化的にダヴィオン国とつながる連合は、文明化されているが、母国から離れたままでいるのを決めた。聖戦でニューアヴァロンから分断されたときに、統治者は権力を手放さないと誓ったのである。トルトゥーガ自治領はむろんのこと「夜」だ。海賊が統治する6つの世界……本物の蛮王国である。ここでは力が正義であり、バトルメックの腕前で誰が統治者かが決まるのだ。

 さらにコアワードに3つの世界からなる別の同盟国家がある。まるでニオプス協会の双子のようだが、出生の点で異なっている。ミカ・マジョリティ(長年の採掘で枯渇した3世界)は、ドラコ連合の流刑地として創設された。極寒の世界のドームに住む人々は、採鉱と近郊星系との取引でなんとかささやかに生きている。労働者たちの成果は、もっとも悲惨な類の海賊たちの注意すら引かないのである。

 だが、辺境国はもっと小さくなれることを証明するかのように、我らはランディスIVに出くわす。メック戦士の古代結社(ブラザーフッド)が支配する世界である。彼らは、それぞれ厳しい試練(トライアル)……エリートの氏族戦士の勇気でさえもテストできるものの途上にある。ランディス結社(まるで修道騎士団のような)は、何世代にも渡ってこの平和な農業世界を守っており、ランディス領と呼ばれる世界の封建的な階層の頂点を作り出したのだった。

 コアワード地方には、氏族の占領域とレイザルハーグ統制の向こうに、〈不毛地帯(Barrens)〉が存在する。無法者が支配する世界であるが、海賊や裏切り者の氏族人が、常に災厄を引き起こしている。真のフロンティアであるこれらの世界は、氏族の支配下で秩序らしきものをすべて失った。聖戦の恐怖のあと、ヘルズホース氏族とアイスヘリオン氏族による侵攻を受けたのである(氏族本拠地の壊滅的な戦いについては言うまでもない。氏族たちは、本拠から分断された戦いについて沈黙を保っている)。かつては3つの小国家――オベロン連邦、グレーター・ヴァルキリー領、エリスの地――が治めていたこれらの世界は、氏族と中心領域の統治から自由でいようという猛烈な決意でのみ連合している。この領域では、海賊はそう珍しいものではない。惑星を掠奪、襲撃するのでなく、非公式な同盟の下、傭兵として彼らを守っているのだ。聖戦時の難民の子孫もまた見られるかもしれない。彼らは中心領域から遠く離れた立派な植民地を開発すべく、懸命に働き、いまでは国境の向こうは堕落したと見なしている。この地にある野蛮と高貴の混合物は、この数世紀見られなかったものだ。

 これらの王国と地域の周囲には、もちろん独立した世界がある。しばしば隣国の餌食になるか、隣国を餌食とするか、もしくは孤立と価値ある資源の不足によって安全なのである。これらの世界は広大な宇宙のフロンティアの自作農地である。その多くは、愚かな戦争から逃げてきた難民の居住地であり、それ以外は、黄金期に残された星間連盟貯蔵庫の噂を聞きつけた宝探したちが住む。

 彼らはふたりの人間と同じくらいに異なっているが、既知宇宙の外辺部で暮らすために協力している。彼らは辺境の民だ。力強く、独立心を持っている。望んで継承国家を離れ、自らの未来を探す。




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