indexに戻る
作成:2004/09/28
更新:2012/05/23

リバイバル作戦 OPERATION REVIVAL



 3050年、継承権戦争が終わり平和だったその年、謎の軍勢が中心領域を襲いました。氏族を名乗る彼らは、数百年前に消息を絶ったケレンスキー艦隊の生き残りだったことが判明します。






リバイバル作戦 OPERATION REVIVAL

 最初の強襲は、中心領域のコアワードから襲いかかる波のようだった。それは3050年の3月7日に始まった。3月20日までにすべての侵攻氏族は、連邦=共和国、ドラコ連合、自由ラサルハグ共和国の兵士たちと交戦した。中心領域の防衛網は、辺境から大規模な攻撃が来ることをほとんど予期しておらず、すぐに崩壊していった。いくつかの世界では防衛隊が地下に潜り、効果的なゲリラ戦を行った。氏族たちは、連邦=共和国とドラコ連合の後継者を捕らえるまでに接近した。それを知らぬスモークジャガーは、タートルベイでホヒロ・クリタ(セオドア・クリタの息子)を数週間捕虜にしていた。彼が悪名高いクルシイヤマ収容所から逃げ出してから、ようやくジャガーは手からすり抜けていった者が誰だったのかに気づいたのである。

 ホヒロ・クリタの逃亡には、もうひとつの重要な意義があった。この件がタートルベイでの一連の暴動を後押しし、ジャガーの旗艦がエドシティを軌道爆撃することで頂点に達したのだ。猛烈なこの攻撃で、中心領域は氏族が核兵器を使ったと考えた。ほぼ数百万人がこの強襲で死んだ。残虐で異様な行動に、中心領域と氏族でさえも多くがジャガーを敵視したのである。(ジャガーの)シャワーズ大氏族長とファルコンのクリッチェル氏族長ですらも怒り狂い、他の氏族長たちは、入札から戦艦を取り除くというウルフの意見に喜んで従った。だが、ファルコンがズーテルメールで同様の戦術を使うのは妨げられなかった。

 4月の後半までに、第一波は終わりに近づいていった。征服に酔っていた氏族は、シャワーズ大氏族長が要求していた協調行動に失敗した。全4氏族は強襲の報告書を提出したが、ファルコンとジャガーのものは事実というよりフィクションであった。これが残りの侵攻の気風を作った……共同しての中心領域侵攻というより、侵攻氏族間での点取り競争になったのである。当初の計画を破棄して、氏族は一週間だけ待って強襲を開始した。5月末までに第二波が終わった。ウルフが提出した第三波の改正スケジュールは、第三波と第四波をくっつけて強襲のペースを加速しており、他の氏族を怒らせた。もしウルフが成功したのなら、彼らが競争の事実上のトップとなってしまう。そして失敗したら敵につけこまれる隙を作ることになる。ゴーストベアはとくにこの動きに憎悪を募らせた。彼らは反乱軍から「解放」された世界を守るためにスティールヴァイパーと増援軍の契約をせねばならかったのだ。

 ウルリック・ケレンスキーは自由ラサルハグ共和国の首星を強襲すると決めた。その惑星はウルフとゴーストベアの侵攻回廊の境界にあり、両氏族は惑星ラサルハグを奪取する名誉を賭け、入札したのである。第五波まで待つことなく、第三波の間に入札することで、ウルリックは数ヶ月前に結んだゴーストベア氏族長との協定を破っていたが、それを守るとベアが固執すればメンツを失うことになったろう。その代わりに、ベアはできうる限りウルフを妨害し、そのほかの強襲を妨げた。ゴーストベアの新氏族長ビヨン・ヨルゲンソンとアレサ・カブリンスキー氏族長は、ウルフがラサルハグを勝ち取るというのなら、受容できる兵力削減をさらに下回る入札をせざるをえないようにした。彼らはウルフがお手上げになるのを期待した。が、ウルリックは秘密の武器を持っていたのだ。

 わたしが収集した諜報情報を利用して、ウルリックはラサルハグの防衛軍を思いのままに操作した。ファルコンやジャガー(中心領域軍に正面強襲戦術を熱心に用いた)と違って、ウルリックは自軍の損害と、ウルフの領地になるかもしれない土地へのダメージが、もっとも少なくなるよう願った。ラサルハグで達成したものに対する嫉妬が、究極的にジャガーによる惑星ウォルコットでの屈辱を導いた。

 その一方、スモークジャガーもまた強襲のペースを早めた。大氏族長に率いられ、素早く目的を果たしていった。ジェイドファルコンとゴーストベアより先に進んでいたのだが、すぐ犠牲者の座へと墜ちていくこととなった。いわゆる「パラダイス・シンドローム」(奪取した中心領域の惑星への尊敬の念に近いもの)が、土地と領地への所有の神判を増やした。連合が後援する反乱が彼らの世界で活発化すると、この氏族は難しい立場に追い込まれていった。重要な補給を失い、暴動を素早く収めていったというのに、3059年のブルドッグ作戦までこういった活動に悩まされることとなった。

 強襲の第五波は3050年の8月(ファルコンとウルフは7月)に始まった。時を待たずして、誰も予期していなかったドラマが起きた。9月10日、連邦=共和国の逆襲がトワイクロス(6月、ファルコンに奪取されていた)で開始された。連邦=共和国の兵士は二線級の氏族戦士(反抗に対しほとんどなにもできないだろう)と交戦することになると予期していた。かわりに彼らが見つけたのは前線星団隊のファルコンガードだった。グレート・ガッシュ(大断層)でのカイ・アラード=リャオの大胆な行動によって、連邦=共和国はわずかな、だが重要な勝利を得た。どんなに激しい戦いだったといっても、氏族軍――おそらくエリート隊――が中心領域の手で負かされたのは事実だった。さらに悪いことが続いた。

 ウルフに領土の広さで負けているのを補う方法を探していたスモークジャガーは10月2日にウォルコットを強襲した。ホヒロ・クリタはジャガーを失敗に導いた。そしてジャガーは連合の罠に突っ込んでいったのだった。彼らは撤退し、二度とこの世界を攻撃しないことを承認し、DCMS(ドラコ正規軍)に4機のオムニメックと24体のバトルアーマースーツを提供した。DCMSの兵士が氏族の神聖を汚したと確信したジャガーは、中心領域からのバッチェル(両軍が交戦の目的と使用する隊を決める儀式的な交渉)を二度と受けないと誓った。その一方でゴーストベアはどうにか進んでいた。ラサルハグを賭けた入札に失敗した彼らは、他のいくつかの強襲を完全に成功させた。これらの実績(ふたりの新氏族長の任命に伴う)は、ベアの態度変更をもたらした。それは実質的にベアをもっとも強い氏族とし、守護派に転向させる原因となった。だが、彼らがその道に踏み出す前に、さらにショッキングな出来事が起きたのである。

 ウルフ氏族の着実な拡大に伴い、シャワーズ大氏族長は3050年11月1日に大戦争評議会の招集を命じた……おそらくウルリック氏族長を非難するためだった。が、氏族はレオ大氏族長の意図を知ることはなかった。10月31日、艦隊がラドスタットに集結すると、自由ラサルハグの選定公マグヌッソンを護衛した輸送隊が、ラドスタット星系にジャンプしてきた。ラサルハグ軍は選定公の航宙艦が逃げる時間を稼ぐために、素早く戦闘機を発進させた。パイロットたちは素晴らしい英雄的行動を見せた。とくに我が古き友人であるティラ・ミラボーグは。戦闘機を駄目にされたティラは、ウルフ氏族の旗艦ダイアウルフに自殺的突撃を行った。即座に彼女は死んだ。そのショックでレオ・シャワーズ大氏族長が死に、ウルリック・ケレンスキー氏族長が死にかけた。たったひとりでティラ・ミラボーグは丸一年間、氏族の侵攻を止めたのである。


平和の年 THE YEAR OF PEACE

 氏族人のなかには、大氏族長の死に復讐するべきと主張した者もいた。中心領域の人間に数千倍にして返すべきであると。幸運なことに、冷静な者の方が多かった。

 侵攻派氏族は主星のストラナメクティに帰還して、新たな大氏族長を選出することにした。戦闘のなかでもたらされたこの凪は、〈平和の年〉として知られるようになった。

 氏族の本拠地は地球から1300光年の位置にある。中心領域−辺境の国境から約800光年離れている。氏族艦隊が帰還しているあいだ、継承国家は一時的な同盟をする時間を与えられ、反撃の方法を学ぶ機会を得た。氏族がストラナメクティに集まる一方で、中心領域の指導者たちも同じようにアウトリーチ――ウルフ竜機兵団(中心領域と運命をともにした)の本拠地にいた。竜機兵団は中心領域の戦争指導者たちに、氏族の戦闘スタイルを教えた。残された猶予は長くないと知っていた。

 そのあいまに、氏族はレオ・シャワーズに対する調査を進め始めた。ほとんどの者たちにとって、今世紀で最初の大氏族長が中心領域の手で死んだのは、非常に悪い兆候だととらえられていた。

 猛烈な議論が巻き起こり、氏族にも氏族人にも大氏族長の死に関する責任はないとされた。しかしこの討論はもっと危険な政治的ゲームの足がかりとなった。残留氏族は侵攻氏族の前進に不満を持っており、侵攻軍に加わることを請願した。進行氏族はいかなる権力の縮小にも反対し、よって彼らのうちから新たな大氏族長が選ばれることになった。本来なら、中心領域に対する戦争で炎を調整できる者だけが、そのポストにふさわしかった。

 最終的に守護派的精神を持つウルリック・ケレンスキーが指名と選考されたことは多くの者……特に侵攻氏族の驚きをもたらした。だが、それを巧みに計画実行した者には、理由があったのである。ケレンスキーをウルフ氏族長の座から外して、新しいウルフ氏族長を侵攻派のシンパに代えることを望み、それによって族長会議のコントロールを強固なものにしようとしていた。また守護派の大氏族長に、侵攻派の政策をとらせる皮肉をも気に入ってた。が、ウルリックは伝説的なナターシャ・ケレンスキー(最近氏族宙域に戻った)を新たな地位につけて、彼らの裏をかいた。ウルフ竜機兵団に生存していたただ一人のブラッドネーム保持者として、ナターシャはただ一人、氏族からの帰還命令に従った。彼女は強固な守護派で、ウルリックはウルフ氏族の支援が受けられることとなった。侵攻派が族長会議を牛耳っており制約を課されているのだが、大氏族長は柔軟性を与えられたのである。

 残留氏族からの圧力に屈して、ウルリックはさらに三つの氏族を参加させた……スティールヴァイパー、ノヴァキャットを強襲隊として、ダイアモンドシャークを新たな予備氏族として。この動きには三つの目的があった。第一に、侵攻派を邪魔する一方で、侵攻力を増強できる。追加された二つの強襲氏族は、もっとも外側の侵攻ゾーン(ファルコンとスモークジャガーの侵攻回廊)に割り当てられる。ファルコンとジャガーの戦闘能力は殺がれ、さらに重要なことに、新参者たちに占領地域をいくらか渡さなければならなかったのだ。

 第二に、これら3氏族は、強襲における侵攻派の力を弱めた。ダイアモンドシャークとノヴァキャットが守護派である一方、スティールヴァイパーは両者のあいだを行き来する「日和見主義者」として知られていた。この三つの守護派氏族は、ウルフ氏族が三つの侵攻派氏族とバランスを取る役割を果たした。他方、ゴーストベアは侵攻派的な見方から確実に離れつつあった。よって守護派の優位は保証されたように見えた。

 第三に、この態度は残留氏族を落ち着かせた。侵攻軍に三つの氏族を加えることで、自分たちにも参加させろという要求の正当性を除去した。アイスヘリオン(もっとも顕著な侵攻派のひとつ)は選ばれることを望んでいたが、数年前に行った行動によって、そうはいかなくなった。元の侵攻軍から外されたことに不満を持った彼らは、氏族宙域での襲撃を開始した(「ヘリオンズ・フューリー戦役」と呼ばれた)。この攻撃は軍の勇気と力強さを示したのだが、戦力を代償とし、他氏族と疎遠になったのである。従って、彼らが選ばれるチャンスはなかった。


血の涙 TEARS OF BLOOD

 3051年の後半、氏族は中心領域に帰ってきて、11月の前半に、攻勢作戦を始めた。だいたいにおいて、氏族はうまくやっていたが、〈平和の年〉のあいだに、中心領域は氏族の優位をいくらか跳ね返す戦術と装備を開発していたのである。侵攻速度の低下と大氏族長の後押しを鑑みて、ノヴァキャットとスモークジャガーはドラコ連合をノックアウトすることに決めた。11月20日、ウルリックは「ちょっと重要なとある世界」に関する情報をコムスターに請求した。ルシエンである。

 連合首都に対する強襲は3052年の1月4日に始まった。5個銀河隊――ジャガー3個、ノヴァキャット2個――が惑星に降り立った。彼らの主目標は帝都(インペリアルシティ)であったが、優れた諜報の成果によって、軍事の管領セオドア・クリタは攻撃に対する準備ができていた。氏族に相対するは、16個連隊……9個連合部隊、7個傭兵部隊である。前者は、精鋭のヴェガ軍団、オトモ、第1〈光の剣〉、両ゲンヨウシャ部隊。後者は、ケルハウンドとウルフ竜機兵団だった。この両傭兵隊は、連邦=共和国のハンス・ダヴィオン国王からの支援としてルシエンに送られたものだ。多数の二線級部隊を従えた防衛軍は二日間、大地を守り抜き、究極的に敵を防ぎきった。両陣営は、多くの英雄的な行動を見せ、驚異的な損害を被った。ルシエンはこれまでの戦いで最大のものとなり、ジャガーとノヴァキャットの半数以下しか惑星から脱出できなかった。

 ルシエンでの敗戦は、氏族にいくつかの教訓を与えた。第一に、トワイクロスとウォルコットの敗北が例外であると主張できなくなった。ルシエンは立ち向かいあっての戦いであり、連合が何度か罠を用いたにせよ、戦闘のほとんどは公明正大であった。中心領域軍は、考慮に値することを証明したのである。第二に、大氏族長の個人的な支援なしでは、この2氏族の協調関係に問題があると露呈された。ノヴァキャットとジャガーは互いに敗北の責任をなすりつけあった。未来における両者の協力の可能性は一切無くなったのであった。

 だが、あっけなく、ルシエンの件は重要性を失った。1月7日、ミンド・ウォータリー(コムスター首位者)は、サタライスで大氏族長と会合を持った。その場で、ウルリックは氏族の究極的な目標を明らかにした……地球の「解放」と星間連盟の再建である。

 コムスター(この時点まで氏族と協力していた)は、突如、好戦的なスタンスを取った。戦いが続く一方で、コムスターの戦司教は、地球を賭けた戦いを計画した。彼も大氏族長も、人類発祥の地での戦いを望まなかった。そこで彼らは代理となる世界、ツカイードを選んだのである。その星は自由ラサルハグ共和国に位置していた。ツカイードの戦いは、すべての侵攻氏族がコムガードと戦い、それぞれの目標を持つことになる。もし氏族が勝てば、コムスターは地球を引き渡し、その管理統治部門となる。氏族が負ければ、15年の停戦を受け入れ、ツカイードから地球までの世界を奪取することができなくなる。

 叙事詩的な戦いが3052年5月1日に始まり、25日間続いた。たったひとつの単語がすべてを表している。大量殺戮、である。コムガードは兵士の40パーセントを失い、同じ割合が負傷した。氏族は、スティールヴァイパーの死者9パーセント、29パーセント負傷から、スモークジャガーの30%死亡、60パーセント負傷まで幅があった(ジャガーはルシエンの復讐を求め、それが故に無謀な戦いをしたのである)。ウルフ氏族だけが目的を達した……ジェイドファルコン、ゴーストベア氏族が引き分けであった。氏族の敗北はツカイードの停戦に結びついた。3067年まで侵攻を再開できなくなったのである。


執行された平和 ENFORCED PEACE

 停戦は侵攻派の気に召さなかった。6月12日に大戦争評議会が合意に批准したあとでさえも、侵攻派はその裏をかく方法を探していた。コムスターによるスコーピオン作戦(ミンド・ウォータリーによる災厄、中心領域の支配権を取るためのもので失敗した)の余波で、氏族の「領域人」に対する態度は頑ななものとなった。すぐウォータリーが辞職したにもかかわらず、コムスターはもう信頼できないと感じていた。ウルリック・ケレンスキーが氏族長たちに停戦を受け入れさせたことは、彼の政治的能力の証拠となり、すべての挑戦を退け続けた……拒絶戦争の運命的な出来事までは。

 戦士たちから戦場が奪われ、氏族は不満のはけ口を別に求めた。多くの神判と小競り合いが氏族のなかで起き、氏族内での襲撃――侵攻のあいだには、少なくとも占領域ではなかったこと――が、顕在化した。長期に渡るヴァイパーとファルコンの確執はエスカレートしていった。後者は3052年から3055年のあいだに、9つの占領した世界を失った。翻って氏族宙域では、スターアダーが戦力と優位性を残留氏族に示すため、ダイアモンドシャークとの一連の戦いを続けていた。バーロック氏族はファイアマンドリルに対し、似たような領土奪還を目指し、飛び地においやった。

 この時、ジェイドファルコンはふたつの戦争の矢面に立っていた。3051年、彼らはスノウレイヴン氏族と同盟を結び、取引を拡大して、リバイバル作戦のあいだに戦艦10隻を借り受けていた。ところが、レイヴンは形勢を変え、ファルコンに合意を破棄するよう迫った。これが両氏族に苦い不和を産み出した。ファルコン軍の大半が中心領域にいるなかでレイヴンは畏れなかった……もっとも一連の襲撃で海軍は傷ついたのだが。しかし、この戦いによって、ヴァイパーは充分に息を付く余裕を与えられた。ヴァイパーとスノウレイヴンは長きに渡り対立しており、皮肉な結果といえる。

 この内戦は中心領域の人々にとってさほど意味を持たなかった。もっと重要だったのはいわゆる「レッドコルセア」による襲撃である。真相は解明されていないのだが、ジェイドファルコンが停戦ラインを超えて兵を送り、ツカイードの停戦を破ることを考えたようである。それを公然と行うことはできないので、ウルフの侵攻派と共謀して「盗賊による襲撃」を作り上げた。こうなると中心領域は氏族の宙域に部隊を送らざるを得なくなる。氏族は中心領域が協約を破ったと主張でき、ペナルティを受けることなく侵攻を再開できる。わたしはウルフ氏族軍(条約を守り、レッドコルセアを司法の場に出す任務を負っていた)を率いた。わたしは対等の環で、個人的にコナル・ワード(陰謀の中心にいた人物)と会った。彼は侵攻派が何をしているかを認めたが、ファルコンとつながっている証拠は得られなかった。だが、この期間にファルコンのほぼ1個星団隊が消えていることは、偶然の一致であるはずがない。あらゆる側面で、計画は失敗した。だが、中心領域への襲撃は公然と続いた。









ウルフ氏族

ツェストレグ 3050
 ウルフ氏族は3050年3月、ツェストレグに降下した。この世界を守っていたのは、第1、第2ツェストレグ市民軍機械化歩兵連隊だった。アニック森林の戦いで、第352強襲星団隊の指揮三連星隊、エレメンタル三連星隊が、防衛部隊をあまりに圧倒したために、惑星政府はそれ以上の破壊を避けるために、すぐさま降伏した。


シャトー 3050
 ウルフ氏族は3050年3月、ジ・エッジに降下した。彼らに立ち向かったのは、第10ドネガル防衛軍RCTと、第1、第2シャトー機械化市民軍だった。サラ・シュタイナー指揮するドネガル防衛軍は、氏族侵攻の第一波で最も手強い抵抗を見せた。スターコーネル・ララ・ワードは第279戦闘星団隊の指揮超新星隊、第1三連星隊ですべての抵抗を押し切るつもりだったが、シュタイナー准元帥の戦術的手腕の前に挫折した。

 戦役の決定的なポイントは、シャトー市民軍がパニックに陥り、防衛軍の陣地を脅かした時にやってきた。シュタイナー准元帥は退却を呼びかけたが、メック2個小隊と3個通常連隊以下しか救うことができなかった。


ジ・エッジ 3050
 ウルフ氏族は3050年3月、ジ・エッジに降下した。彼らに立ち向かったのは、傭兵メック大隊アウトローズと、第1機械化旅団であった。型破りの戦いの中で氏族と戦うのは、自殺に他ならないと、トルネトレスクの戦いにおいて証明された。アウトローズの2個中隊だけが、第16戦闘星団隊の指揮超新星隊、第2超新星隊、アルファ、ブラボー戦闘機星隊から逃れ得たのだった。


アッレゲ 3050
 ウルフ氏族は3050年3月、アッレゲに降下した。彼らに立ち向かったのは、傭兵メック大隊スキナー・シミタースと、第2、第5アッレゲ戦車連隊、第1アッレゲ歩兵連隊であった。防衛部隊の大部分は、第37打撃星団隊の強襲超新星隊によって壊滅した。シミタースの1個中隊が生き残り、脱出してロディゴに行くのに成功したのだった。


アイカー 3050
 ウルフ氏族は3050年3月、アイカーに降下した。彼らに立ち向かったのは、第12スターガード第3連隊、第3アイカー装甲旅団であった。第1、第2超新星隊、アルファ強襲星隊(第4ウルフガード)は、降下地点を攻撃した直後に、スターガードの第2大隊を撃破した。スターガード指揮官、ハンナ・ケイトリン大佐はポファダー渓谷での逆襲を行ったが、目標達成に失敗した。クーアンガーでエレメンタル隊が降下船に進み、惑星脱出の試みを阻止して、ガードを降伏に追い込んだ。


ヴェルザンディ 3050
 ウルフ氏族は3050年5月、ヴェルザンディに降下した。この世界を守っていたのは、ケルハウンド第2大隊(第2ケルハウンド)、第3大隊(第2竜機兵団)、第4ヴェルザンディ装甲歩兵旅団であった。ハウンドと竜機兵団(Drakons)は、氏族に関する情報を求め、プリンス・ウィリアム・アイランド(森林の小島)にリモートカメラやその他の記録装置のネットワークを設置した。第328のスターコーネル・エイゼン・ケデルクによる挑戦がなされると、防衛隊はプリンス・ウィリアム・アイランドを戦場にすることを要求した。バッチェルを尊重する相手の能力に感銘を受けたウルフ氏族は同意した。

 防衛隊が素早く敵に次から次へと一撃を見舞うと、戦いは熾烈なものとなった。5時間の戦闘後、ハウンドと竜機兵団は撤退を命じた。エレメンタルの1個星隊が防衛ラインを突破し、記録装置のほとんどを破壊したのである。ハウンドは連邦=共和国に脱出し、竜機兵団はラサルハグにジャンプした。


ロディゴ 3050
 ウルフ氏族は3050年5月、ロディゴに降下した。この世界を守っていたのは、アウトローズ、スキナー・シミタース(傭兵2個強化小隊)の残存勢力と、第1ニュースターブルク機械化機兵連隊であった。第11戦闘星団隊、指揮三連星隊のオムニメックは、傭兵のメックと機兵連隊の高速車両によって、ほとんどすぐニュースターブルク隊の内側に釘付けにされてしまった。

 いやいやながら、そして困惑しつつ、スターコーネル・アビオセ・ウィンソンは入札を破棄し、第16戦闘星団隊のスターコーネル・ドゥイルト・ラディックに救援を要請したのだった。


リッダーケルク 3050
 ウルフ氏族は3050年7月、リッダーケルクに降下した。この世界を守っていたのは、第1ライラ正規隊RCTだった。ライオン・ハーテッド(第328強襲星団隊)は彼らのDZ(防衛地区)を叩き、抵抗を受けることなく首都ヴェシニュールに進撃した。彼らは、第1ライラ隊の指揮官が交通事故で昏睡状態にあり、次席指揮官が部隊を統制できてないことに、気付いてなかった。

 第328がついに第1ライラと遭遇すると、ライラ隊はリーダーシップと戦術的統制を欠いていたために、惑星からの退却すら絶望的となった。その日が終わった時、第1ライラ正規隊は消滅していた。


ヴァルカン 3050
 ウルフ氏族は3050年9月、ヴァルカンに降下した。第1、第2ヴァルカン装甲旅団は、勇敢に戦ったが、第279戦闘星団隊、指揮、第1、第2超新星隊の速度とどう猛さに耐えることができなかった。


メミンゲン 3051
 ウルフ氏族は3051年11月、メミンゲンに降下した。スターコーネル・マルコス・ラディックは、この世界を攻撃する権利をナターシャ・ケレンスキー氏族長から勝ち取ったのだが、入札での勝利は高くついた。あまりに少数を入札したので、狂信的な第3竜機兵団、傭兵隊ブラックオーメン、アウトローズの残存兵力、第1メミンゲン装甲師団との殴り合いは、不可能となってしまったのである。彼は竜機兵団から遠く離れたところに降下して、高速機動戦略を用いた。これは非常に上手くいったが、スターコーネル・ラディックをいらだたせたのである。

 ダントンの戦いで、竜機兵団がどこかに消え去えさると、彼の忍耐は限界に達した。怒り狂った彼は、惑星の反抗的な民衆に対する見せしめとして、ダントンの村と、近隣のグリーンヴェイルの村の破壊を命じた。数百の民間人が死んだ。さらなる市民の被害を怖れた竜機兵団はサタライスに移動したが、その前にスターコーネル・ラディックに対するメッセージを送っていた。ダントンとグリーンヴェイルを忘れないことを誓い、マルコス・ラディックに償わせるというものである。


3051 ギュンツベルグ
 3051年12月、防備の固い世界ギュンツベルグに対する入札は熾烈なものになった。最後の入札は、ナターシャ・ケレンスキー氏族長(ウルフスパイダーズ)と、スターコーネル・マルコス・ラディック(ヒールスナッパーズ)の間で行われた。メミンゲンの入札でナターシャ・ケレンスキーにしてやられたの気に病んでいたスターコーネル・ラディックは、仕返しを望んだ。ケレンスキーが惑星の奪取をたった一人、スターコマンダー・フェラン・ウルフのみで行うと申し出ると、ラディック、そして見守っていた氏族長たちは愕然として黙り込んだ。フェランはケルハウンドの一員として、ギュンツベルグに駐屯していたことがあり、トール・ミラボーグ将軍のことを良く知っていたのである……親しみは抱いてなかったのだが。

 トールはカリスマ的なギュンツベルグの指導者だっただけでなく、ラドスタット州の総司令官であった。彼はティラ・ミラボーグ大尉の父親でもあった。このパイロットはラドスタットでダイアウルフに特攻し、その結果、レオシャワー大氏族長を殺していた。彼をたった一人で説き伏せるというのは、馬鹿げた考えに見えたが、スターコマンダー・フェランはひるまず率直に真実を語る能力を持っていた。フェランはミラボーグ将軍に対し、もし氏族と戦えば、ギュンツベルグ・イーグルス、装甲連隊、第1、第2機械化歩兵連隊は名誉を得るが、勝つことは望みかなわず、確実に全滅すると語った。彼は、この戦いでギュンツベルグに与えられる苦痛と被害を、名誉と比べるように求めた。ミラボーグが抱いていた市民への懸念に対する、スターコマンダー・フェランのアピールが成功し、ギュンツベルグは戦うことなくウルフ占領域の一部となったのだった。


コーベ 3051
 惑星コーベは氏族人にとって特別な場所であった。それは、氏族の神話に見られる「楽園の世界」のひとつだったからである。この神話の背景には、コーベが星間連盟の絶頂期に人気の保養地だったということがあった。ガース・ラディック氏族長と麾下のアークティック・ウルヴズが3051年の12月に降下し、火山活動によって破壊された世界を見ると、彼らは失望することになった。ベータ銀河隊に立ち向かったのは、タマラーから押し出された第26ライラ防衛軍RCTと、第1、第2コーベ機械化旅団の2個メック大隊だった。

 エレメンタルがライラの戦線をすり抜け、ジョーイ・コレッリ少将を殺すと、ベータはアッシュバレーの緒戦で勝利を納めた。ライラ隊の指揮権は、ジンダース・グリーン=ダヴィオンの手に渡った。彼は落ち着きとリーダーシップを見せ、第26ライラ隊を再編成し、総崩れになるのを押しとどめた。しかながら、その後の戦いでウルフを惑星の政治・産業の中心地(再生された首都ニュー・ポンペイ)から遠ざけるのは難しいと判明した。第26ライラ防衛軍はトゥーンへと後退した。


トゥーン 3051
 第26ライラ防衛隊の生存者たちは、ベータ銀河隊の降下船がトゥーンに現れた時には、いまだ戦闘からの回復を図っているところだった。グリーン=ダヴィオン准将はローガン・デルタ市を守るために部隊を配備した。よって、予備部隊は敵の攻撃に対し、素早い反応が可能になったのである。

 これは懸命な処置であった……なぜなら、ガース・ラディックは第26ライラを撃破したくてうずうずしていたからである。ヘッドハンター諸星隊はライラ指揮官を探しだして殺すのに失敗した。それはあたかもライラの戦線が破られることはないかのようであった。だがそれは、ラディック氏族長が直々にアルファ指揮星隊を率いてローガンデルタに低高度降下するまでの話だった。ライラ隊はばらばらになり、撤退に追い込まれた。


セヴァーン 3051
 鉱物資源と大規模な農地を持つセヴァーンは、価値のある目標だったので、ガース・ラディック氏族長は入札に勝つため、権力を振りかざした。彼と対決したのは、第25アークトゥルス防衛軍RCTの指揮官で、第四次継承権戦争、3039年戦争を経験した、ギルダ・フェルラ少将であった。ベータ銀河隊がカーリスルー大陸に降下すると、将軍はディントン・エーカーで素早く強烈な一撃を加えた。この戦いは決定的なものではなかったが、ウルフの最初の攻撃を効果的に鈍らせた。ベーシングデールで、第3戦闘星団隊はアークトゥルス防衛軍戦線の弱点を発見して攻撃し、フェルラ将軍が援軍を送る前に、守備側を圧倒して、後方に切り込んだ。アークトゥルス防衛軍は守勢に回った。最終的に、リップチャック山の戦いで大隊本部がヘッドハンター部隊によって壊滅した後、フェルラ将軍と部下たちは惑星を離れ、コルマーに向かった。


アルテンマルクト 3052
 3052年2月、ウルフスパイダーは、コクスタッドで第1アルテンマルクト旅団を素早く片づけた。第1アルテンマルクト・メック連隊は、惑星に関する知識を有利に使って数日間持ちこたえた。マイデンベルクで指揮官が死ぬと、抵抗は途切れたのだった。


スークII 3052
 ナターシャ・ケレンスキー氏族長は、スークIIを守っていた第33アヴァロン装甲機兵隊RCTに関して、どのような幻想も抱いていなかった。彼女が知る彼らは、重メック4個大隊に率いられた、タフで決意を秘めた連隊の集団である。彼女は長期戦の準備をして、装甲機兵隊が予期していた降下地点から離れたところを選び、それからスークIIで最大の大陸の人口が密集した東海岸に注意深く接近した。戦闘が始まると、それは氏族長が予測したのと同じくらい困難であるとわかった。戦闘の第一週目に補給物資(特に弾薬)の大半を使い切ってしまうと、アルファ銀河隊にとって兵站が悪夢と化した。

 補給状況が最悪になったので、ケレンスキー氏族長はすべてのメックをエネルギー兵器に換装するように命じ、オートキャノンとミサイルのわずかな弾薬を、特殊強襲星隊群のために温存した。エレメンタルが装甲機兵隊の戦車1個連隊に対し集団攻撃を行うと、アルファ銀河隊がついに優位を得た。軽高速オムニメックが装甲機兵隊の後方を攻撃するための道が切り開かれたのである。手の施しようがない状況になると、ジョン・ヤプト少将は撤退を伝え、装甲機兵隊はオークニーに向かった。

 この紛争は、3052年の1月、2月を丸まる費やした、ウルフ氏族による侵攻で最も長い戦役のひとつとなった。


ドメイン 3052
 氏族が中心領域に現れたことは、各種の様々なリアクションをもたらしたが、聖キャメロン騎士団ほど変わった反応を見せた者たちは他にそうないだろう。この傭兵隊(隊員たちは、星間連盟のキャメロン家が採用していた高い道徳規準に心の底から心酔していた)は、氏族と戦うべきなのか、あるいは星間連盟正規軍の子孫たちに敬意を払うべきなのか、決められないでいた。フェリックス将軍にとって、答えは明白であった。騎士団が結んでいた連邦=共和国との名誉ある契約は、果たさねばならぬものだったのである。従って、3052年の1月、第1聖キャメロン騎士団は、ウルフ氏族第352強襲星団隊をセスワーン平原で迎え撃ち、戦ったのである。

 裏をかかれ、劣勢の騎士団は、ドメインの地形の大半を占める丘や広い平原を通って撤退し、クッソン山脈に向かったが、ザズ川で側面を突かれることとなった。騎士団は首都クッソンで最終的な敗北をこうむり、それから謎の失踪を遂げた。生存者たちは惑星を脱出できたはずなのだが、そうしていない。これまでのところ彼らの足取りは不明である。未確認であるが、もっともらしいところでは、彼らは氏族に加わった可能性がある。


ラスタバン 3052
 聖キャメロン騎士団第2連隊は、姉妹連隊と同じように、氏族の到着によって、忠誠心を試されることになった。不幸なことに、第2連隊の戦士たちがどうなったかは説明可能である。聖キャメロン騎士団は猛烈な闘志を見せ(手腕ではなかったが)、ラスタバンの首都キャッスルシティに向かうウルフ氏族第3戦闘星団隊の進撃をとどめようとした。

 3032高地で、騎士団の1個大隊は丘陵の尾根を長く保持しすぎて、包囲された。彼らは降伏を拒否して最後のメック戦士の一人まで戦った。残った騎士団の大半は、サンギーヌ・バレーの特に残忍な突進の最中に、第3戦闘星団隊のオムニメック、エレメンタルの手によって戦死した。








ゴーストベア氏族


侵攻の始まり

 氏族長たちの要望に応じて、大氏族長は辺境を自由に参加できる領土であると宣言した。これによって、ゴーストベアはエリスの地(厳密に言えばウルフ回廊に位置する)に入札する機会を得た一方、スモークジャガー氏族がヘルマー・ヴラセックとサンタンダーワールド(ゴーストベア回廊内)の海賊を攻撃したのである。

 オベロン連邦の保護領であるエリスの地(理想の地の意)は、歴史上、平和的な農学者たちの共同体となっていた。主に軍事的挑戦と技術の獲得に興味があったベアは、最初、エリスの地を無視しようとした。ゴーストベア氏族がこの星団に興味を持ったのは、スターコマンダー・スワーラが星間連盟の記録に古い言い伝えの一節を見つけた時のことである。スワーラは、エリスの地のどこかにある極秘研究施設、プロジェクト・アキレスに関する隠された記述を発見したのである。連盟の科学的革新の最盛期において、第一君主ニコラス・キャメロンは多数の研究施設を作り、人類領域の各地に残した。これら施設があちこちにあったことで、優秀な研究者たちは地球帝国に移動する必要がなくなった。これら研究者たちの多くがケレンスキー将軍のエグゾダスに参加したので、彼らは中心領域の目から基地を隠し、その倉庫にかなりの量の装備を残すことがよくあった。ケレンスキー将軍は、中心領域に戻った時、隠された貯蔵庫が星間連盟防衛軍の利益になると主張し、技術を破壊せず保存するのを正当化したのだった。ウルフ竜機兵団とスノード・イレギュラーズは長年描けて中心領域内のこれら施設を発掘していったが、どちらも辺境では調査を行わなかった。

 スターコマンダー・スワーラはすぐ上官に発見を伝え、スターキャプテン・エドウィン・ギルモアはエリスの地を奪取する権利を入札者なしで獲得した。他の指揮官たちは、抵抗の見込みがない世界をうち負かして栄光を得る見せかけの攻撃であると片づけたので、ギルモアはシルバー・コディアックの三連星隊を最初に入札出来たのだった。予想通り、コディアックは抵抗に直面しなかった。マングリンゲイネとニーセルタの世界はどんなたぐいの防衛も行わず、地元の民衆はバトルメックを見るとすぐさまパニックに陥った。両世界の政府は、コディアックが首都に進みさえする前に降伏したのだった。

 うっそうとした熱帯の世界エリッサ(古い研究所があると予想された)は、上陸したゴーストベアの戦士たちを魅了した。一人はこう言った……外辺部の世界がこんなに美しいのなら、地球は楽園に違いないと。シルバー・コディアックは上陸してすぐに分散し、首都へと向かった。彼らはマングリンゲイネやニーセルタと同じ反応を期待していた……よって、惑星の地表からハイパーパルス信号が発進されたと航宙艦の艦長から聞いた時に、ショックを受けたのである。彼らはすぐに発信元のクラスV・ハイパーパルス施設を見つけだしたのだが、コムスターの担当者はコディアックに送信アンテナを壊される前に、どうにか短い悲痛なメッセージを送ったのである。コムスターへのメッセージには、攻撃したメックの記章はウルフの頭であるとされていた。シルバー・コディアックのシンボル、ベアの頭を見誤ったのである。コムスターが侵攻氏族についてさらに学んだ時、彼らはエリッサがウルフ氏族の手に落ちたと推定した。

 シルバー・コディアックは一週間近くかけて惑星を探査し、最終的に、山脈の深くに広がる一連のトンネルを発見した。スターキャプテン・ギルモアは直々に遠征を行ってトンネルと大洞窟を調査し、放棄された廃坑でしかないことに気づいたのだった。無駄な時間を浪費したことに怒り狂ったギルモアはすぐさまスターコマンダー・スワーラに不服の神判を挑戦した。生きて〈対等の環〉を出たのはギルモアだけだった。ベアは即座にエリスの地から脱し、氏族全体の恥でしかない惑星への駐留を拒否した。ツカイード後、ウルフ氏族のギャラクシーコマンダー・コナル・ワードが所有の神判でエリッサを勝ち取った。

 ゴーストベアは苦労することなく、残りの辺境の目標を落としていった。獲得した三つの世界の原始的な植民地は、より大規模な帝国には入ってないと主張し、最小限の抵抗を行った。デルヴィラー氏族長は、ブールジョン氏族長の見積もった補給物資の量でさえも過大評価だったと信じ始めた。初期の侵攻を評価する戦争評議会の中で、ゴーストベア氏族長は価値ある抵抗がなかったことに関する報告を行った。第一波の準備をすべく、氏族に戻ったころにはもう、ケレンスキー氏族長の警告は頭の中から消え失せていたのだった。彼らは辺境の技術、訓練レベルを真に受けて、中心領域でより優れたものに会うことをまるで予期しなかった。


第一波:戦いを探して

 伝統に則り、ゴーストベアの戦士たちは、最初の世界を征服する名誉をかけて第一波の最初に投票を行った。この過程は長いものとなり、ベアが予定していたタイムテーブルを相当に遅くした。各戦士は自部隊で最初の惑星を征服する名誉を求め、置いていかれるのを望まなかった。一週間の煮え切らない投票の後、デルヴィラー氏族長は三個銀河隊のすべてが侵攻に参加すると宣言した。各部隊が、自由ラサルハグ共和国の惑星テューレの大陸をひとつずつ攻撃することになる。

 ラサルハグ王家軍の第1軽機兵隊には、氏族から世界を守る準備が出来ていた。彼らはベアのバッチェルに対し返答を拒否した。銀河隊が何を表現したのかわからなかったのだが、ジョアニー・スウィガルド大佐はフレスドン砂漠(不安定な地形、ここで訓練していた)に兵士を集め、戦いに備えた。ゴーストベアの船が惑星に降下すると、ブールジョン氏族長は、攻撃軍が各銀河隊の代表を集めた混成軍になることを宣告した。各銀河隊の指揮官は、混成部隊に入る権利を賭けて、熾烈な入札を繰り広げた。

 3個三連星隊(そのうち1個は超新星隊)は、素早い勝利を予想して不毛の平原に降り立ったが、氏族軍はテューレの正午の太陽がもたらす、信じられないような熱を念頭に置いていなかったのである。氏族戦士の発砲により、この戦いは始まった。彼らを驚かせたことに、この環境が引き起こす過大な発熱は、技術的優位をないものにしたのである。最初の砲撃で異常な熱が発生し、氏族メックの多くがシャットダウンした。こうして、これらのメックは、軽機兵隊の二番目に大きな利点、間接砲の餌食となったのである。砲弾がほとんど動けなくなった氏族軍に降り注ぎ、ベアはマシンの再始動をどうにか成功させるまでのあいだに、1個三連星隊分の装備を失っていたのである。第1軽機兵隊は持久戦を開始し、軽量級メックを使ってゴーストベアの射撃を誘発し、それから安全なところに移動した。それからオーバーヒートした敵を倒すために引き返すのである。

 スターコーネル・フランボイス・コートが最初に入札を破り、星団隊の残りに対し、東から軽機兵隊に迫るよう命じた。軽機兵隊はこの戦略を予想しており、近づいてくる第3ベア打撃星団隊に機銃掃射するべく、気圏戦闘機を送り込んだ。応じて、スターコーネル・シュテファン・ハンツィグは入札を破り、気圏戦闘機分隊を呼び寄せた。上空で戦闘機が舞う中、第50打撃星団隊(ブラックベアーズ)は前進した。第1軽機兵隊を包囲した氏族2部隊は、交戦を開始しようとしなかった。突如静かになったのを怪しんだ軽機兵隊は理由を探るべく偵察部隊を送り込んだ。これらの部隊が帰還に失敗した時、大佐はベアがあきらめておらず、夜を待っているのに気がついた。氏族が優位を得るのを待つよりも、スウィガルド大佐は陽が高い内に、ゴーストベアの戦線を押すと決めた。

 間接砲による弾幕を移動のカバーに使って、第1は北の側面から氏族戦戦を叩いた。ベアーズが軽量級部隊を軽機兵隊にぶつけて、流れを変えようとすると、スウィガルド大佐は部隊を移動させ、バックアップするゴーストベアの重量級部隊から単純に遠ざかり、即座の強行突破を成功させた。ベアーズは後を追った。この時、ゴーストベアのパイロットたちは航空優勢を確保し、足の速いベアのメックを援護していたのだが、続いていた間接砲の弾幕が、ゴーストベアの後方戦線に大きな穴をうがった。スターコーネル・ポール・ヴィジオは入札を破り、軽機兵隊の長距離砲を沈黙させるべく、気圏航空隊を呼びだした。

 間接砲を取り上げられた軽機兵隊は、逃げるしかなかった。彼らは、フレスドン平原を貫く大河に行き、そこで海軍と合流した。1個中隊が氏族の最終攻勢に対して自らを犠牲にし、軽機兵隊が巨大な貨物船に乗り込み、河をさかのぼる時間を稼いだ。船はすぐさま、ゴーストベア氏族の射程距離から脱し、侵攻軍の指揮官にジレンマを押し付けた。航空戦力を使って船を沈め敵軍を一掃すべきか、それとも航空隊で軽機兵隊を追いかけ、上陸したところで戦闘を再開すべきか? その場にいた戦士たちの投票で船を沈めるのは氏族の名誉に反すると結論が出され、船が接岸するまで追跡すべく、部隊が派遣された。

 軽機兵隊の大部分が戦場を去ったのに伴い、惑星はゴーストベアの支配を受け入れたように見えた。ゴーストベアの氏族長はこの世界の征服を宣言し、次の目標世界に視線を定めた。テューレの守備隊として第312強襲三連星隊をあとに残し、第1軽機兵隊が上陸を選んだ時に彼らを殲滅することにした。

 今後、ゴーストベアは似たような不十分な軽守備隊を、征服した世界に残していくことになる。ベアとウルフの守備隊に差があることを指摘した一部の戦士は、ケレンスキー氏族長のアドバイスを真に受けすぎたかどで非難された。大半の戦士はベアの氏族長に同意した。侵攻の初期段階で弱い抵抗にしか遭遇しなかったということは、この先に大きな挑戦が待っているはずだと、彼はまだ考えていたのである。

 ゴーストベアは第一波をスムーズに終えて、予定より先に進んだ。一部のベア侵攻派はさらなる戦闘任務を扇動したが、氏族長たちはこれらの野心的な戦士たちに、攻撃計画は注意深く計画され、投票によって承認を受けていることを思い出させた。よって計画は完全に予定通り進められることになったのである。第一波の成功を祝うため、氏族長は戦士が参加する競技を行うと宣言した。これらの競技は各波の終わりに行われ、勝者は次の攻撃波の任務を選べるのである。


第二波:災厄的攻撃

 3050年の5月、ゴーストベアは侵攻における大きな困難にぶつかった。皮肉なことにそれは人がもたらしたものではなく自然がもたらしたものだった。第二波の第一目標はジャレットの世界で、ゴーストベア氏族ははじめてドラコ連合の兵士と遭遇した。スモークジャガーの報告によると、連合の戦術は、名誉と残虐性の奇妙な混合ということだったが、事実がどうあれ、ベアたちは、これらの兵士たちがこれまでに戦ったラサルハグ人や辺境の烏合の集よりも、良い戦いを見せてくれるものと確信していたのである。テレサ・デルヴィラー氏族長はジャレットを服従させる名誉を勝ち取り、アルファ銀河隊(ゴールデンベアーズ)の一部を率いて、第9アルシャイン正規隊と戦った。

 バッチェルを受けた連合軍の指揮官、ソニア・ゼブ大佐は、ゴーストベア氏族長が望んでいた返答を理解していなかった。彼女が知っていたのは、指揮下の部隊が未熟だったことである。氏族に対し戦闘経験がないのを知らせるつもりはなかった。ゼブにとっては不幸なことに、デルヴィラー氏族長はコムスターの担当者から、新兵の第9連隊が3個大隊を惑星北部に分散させていたのを聞いていたのである。デルヴィラー氏族長は部隊を通常の戦闘隊形で降下させ、すぐさま第9の決意に満ちた戦士たちとぶつかった。戦闘はデルヴィラー氏族長が1機のコマンドゥに挑戦したところから始まった。氏族長のエレメンタルポイントは瞬時にコマンドゥを切り裂いたが、このメックのパイロットはあきらめず、氏族の巨大なバトルアーマー兵との戦いを続けた。氏族長はこの若い元気な若者を捕らえ、自身のボンズマンとした。そして遙か昔にアルカディアでやったのと同じく、ゴーストベアの戦士たちは敵を殺さず捕らえていった。これが第9の驚異的な生存率につながったのである。

 氏族とドラコ連合はジャレットをかけて、ソラン・ジャングルのうっそうとした森の中で大規模な交戦を行った。第9は木々のカバーを巧みに使い、後に管領クリタはこの教訓を参考にすることになる。逃げながら戦い、第9は一週間にわたって生き残ったのだが、ゴーストベアはこの狐狩りを続け、中心領域のゲリラ戦術に関して多くを学んだのである。第9はゴールデンベアーズが上陸してから約10日後に膝を屈した。

 第二波の征服は計画通りに進んでいった……ラサルハグが再びテューレの支配権を取り戻したとの一報が飛び込んできたのはこの時である。第1軽機兵隊がついに姿を現し、ゴーストベアの守備隊を撃破したのである。実際、氏族長たちは、ベアの支配世界の多くで似たような暴動が起きていることに気づいた。コムスターの職員は大衆をなだめようと最善を尽くしたように見えたが、ベアがなんらかの行動を起こさねばならないのは明らかになっていった。新たに得た世界に形だけの守備隊を残すと、ゴーストベアは反乱で沸き立つ世界に権威を取り戻すべく戻っていった。

 ゴールデンベアーズはテューレに戻り、惑星の寒冷な南方にいた第1軽機兵隊を捕らえた。ベアーズは容易に軽機兵隊の準備した陣地を一掃した。第1が要塞として使おうとした狭い塹壕を、エレメンタルたちが支配したのである。デルヴィラー氏族長はこう言ったそうである「我らの手を煩わせないように、墓穴を掘っておくとは礼儀正しいことだ」と。戦いはほとんど始まる前に終わっていた。ある証拠によると、ジョアニー・スウィガルドはすでにボンズマンから戦士の地位にあがったとなっている。

 ブールジョン氏族長とブリッツリークは、鎮圧に向かったすべての世界で全面規模の作戦に直面した。たいていの場合、市民たちは氏族の守備隊を片づけた後で、大都市の周辺すべてに振動地雷を仕掛け、路地を埋め尽くした。武装した防衛隊は、降伏よりも死を覚悟していたのである。一週間に及ぶ絶え間ない戦闘で、デルタ銀河隊指揮官ロベルト・スヌーカは、勝利を達成するにはすべての都市を倒壊させねばならないことに気がついた。民衆にとっては幸運なことに、この惑星で愛されていたコムスター准司教が介入し、地元の各メディアを通じて平和を呼びかけた。コムスターが氏族の惑星統治に協力して、有益なものにすることを約束したのである。この発表は暴力の大半を終わらせ、強力な守備隊の助けもあって、氏族の支配を回復させた。

 ベアのベータ銀河隊は、ブラックオーメン傭兵中隊の本拠地、ダミアンを再平定するために送られた。ゴーストベアが最初にこの世界を攻撃した時、オーメンは侵攻軍から隠れた。そして時を待ち、敵の大半が惑星を離れるとすぐに、守備隊を叩いた。この不名誉な行動は、ゴーストベアの激しい傭兵嫌いの一因となった。氏族長たちはベータのダミアンへのジャンプを5月17日に予定した。ギャラクシーコマンダーはダミアンの星系内に到着次第、上級指揮官にHPGを通じてメッセージを送ることになっていた。このメッセージが来ることはなかった。

 HPGの故障はまれであるが、そういうことが起きるのを全氏族が承知していた。HPGの送信不能が珍しいことである一方、氏族長たちは他のことで忙しく、一週間、消えた銀河隊に注意を払って待った。

 ブラックベアーズが消えた銀河隊を追跡するために展開した時、彼らはダミアンにたどり着き、ベータ銀河隊の戦艦が星系に入った時に小規模な小惑星隊と衝突したことを知った。衝突角度により、損害は降下船一隻に制限されたが、一個星団隊が完全に失われたのである。戦艦自体もまた氏族の設備が無くては修理が出来ない状態となり、よってベータは艦を放棄して惑星の地表へと向かっていった。ダミアンにはコムスターの施設がなかったため、ベータ銀河隊には通信の手段がなかったのである。ブラックベアーズが到着するまでに、ベータ銀河隊はブラックオーメンを殲滅し、惑星の支配権を固く握っていた。

 エリート1個星団隊分のメック戦士が失われたことは、ゴーストベアを深悲しませた。氏族長たちは地球に向かう時間を割いて伝統的な儀式を行うことでゴーストベアたちの死に敬意を払う許可を出した。他の氏族が侵攻の第三波を始める中、必要不可欠な駐屯任務を命じられていない全ベア戦士がダミアンに集合した。この死者を弔う儀式は丸二日間続いた。

 ゴーストベアはダミアンから第三波に着手したが、その過程で、予期せぬ問題に対処せねばならないことに気がついた。駐屯部隊が必要であることと、全1個星団隊が失われたことが組み合わされて、ゴーストベアは致命的な戦力不足に見舞われてしまったのである。6月上旬、僅差の投票の結果、戦士たちは前進し続けることに合意し、氏族長たちは予備戦力を減らすことで潜在的な不足に備えたのだった。


第三波:風向きの変化

 5月の後半、シャワーズ大氏族長はデルヴィラー氏族長に連絡をとり、惑星ラサルハグ征服という名誉に入札する気があるかどうか尋ねた。大氏族長が指摘したのは、この惑星がベアの侵攻回廊の境界に近いことから、入札することでウルフ氏族の猛攻を合法的に緩められるということだった。デルヴィラー氏族長は、ベアが期待をはるかに下回る成果しか残せていないことに気づいており、ラサルハグ征服が氏族の運勢をあげるかもしれないことと、確実に士気向上させるだろうことに同意した。彼女とブールジョン氏族長は共に攻撃計画を策定し、それからウルリック・ケレンスキー氏族長に自由ラサルハグ共和国の主星を奪う権利をかけて入札したい旨を通告した。ケレンスキー氏族長が大氏族長に抗議すると、シャワーズは、氏族の伝統に基づきすべての氏族がどの世界に入札してもいいと答えた。ウルリック氏族長はゴーストベア氏族長に対し6月27日に入札を行うため会合を持つと宣言した。

 同時期、第三波のオープニングショットとして両ベア氏族長が惑星ラストフロンティアに対する攻撃に参加したことは不可解と思われていたが、単にラサルハグを攻撃するためにそこに身を置いたことがすぐ明らかになった。

 6月23日、ゴーストベア氏族は、ラストフロンティアの防衛隊、第1フリーメンに襲いかかった。短く残虐な戦いの結末は当然のものであるかのように見えた。未熟なラサルハグ連隊は勇敢に戦ったが、エリートの氏族隊に対し真の脅威を与えることが出来なかった。しかし、彼らは氏族に対し、強力な一撃を放っていたのである。デルヴィラー氏族長率いる、オース親衛隊が6月24日にフリーメンの弾薬庫を強襲した時、守っていたクヌーテ・クリタ大佐の中隊が突撃してくる氏族メックに対し砲火を開き、デルヴィラー氏族長へのミサイル直撃を記録したのだった。指揮下のポイントは急いで彼女を戦場から運んだが、すでに損害は与えられていたのである。デルヴィラー氏族長は昏睡状態に陥り、二度と目を覚ますことはなかった。

 ブールジョン氏族長はラストフロンティアを確保し、それから新氏族長を投票で選ぶため、ブラッドネーム持ち戦士による会議を招集した。現在のオースマスターであるメック戦士アレッサ・カブリンスキーが、厳しい競争を勝ち抜いて副氏族長の座を射止めた。副氏族長として彼女がとった最初の行動は、戦士たちを集め、ブールジョン氏族長(いまだ優秀な戦士)が指導者の器にはないと提案したことだった。彼女の声明はベアの戦士たちの心に響いた。彼らはこれまでの氏族の不満足な成果を、氏族長の無能さによるものかもしれないと感じたのである。彼女はブールジョン氏族長に挑戦するため出席していた戦士のうち一人を指名した。この名誉を与えられたのは、スターコーネル・ビョルン・ヨルゲンソンだった。

 完全に不意を付かれたブールジョン氏族長は、戦士たちの不満の度合いを測るために投票を求めた。戦士たちは匿名で新氏族長を選ぶ投票を行い、非常に好戦的で戦術的能力を持った気圏戦闘機パイロット、スターコーネル・ビョルン・ヨルゲンソンを新しいゴーストベア氏族長として選んだ。ブールジョン氏族長が拒絶の神判を求めると、ヨルゲンソン氏族長(部隊と密に結びつき、この侵攻で活躍していた)は、個人的にこの挑戦を受けることを選んだ。格闘戦が苦手だったことから、ブールジョン氏族長は機体による戦闘を選んだ……そうすることはヨルゲンソン氏族長の気圏戦闘機に有利だったにもかかわらず。ヨルゲンソン氏族長は珍しいことに、ラストフロンティア赤道直下の熱帯雨林を戦場に選んだが、これが最終的には彼に味方した。

 弱い雨が降り始めたのは、戦闘員たちが機体に乗り込み、始動し始めた時だった。決闘の最初の段階においてブールジョン氏族長が上手を取り、ジャングルを遮蔽に使ってヨルゲンソンの機銃掃射を交わし、通過する戦闘機が旋回して戻ってくるまでにジャングルから出て砲撃を浴びせた。見ていた者たちは、なぜヨルゲンソンがもっと積極的に攻撃しないのかといぶしがったが、この戦闘機パイロットは堪え忍び、敵が滑りやすい泥をかき回すのを待ち続けた。ブールジョンのメックは徐々に速度低下し、ヨルゲンソンの赤外線センサーの中で明るく輝いた。ブールジョンがぬかるみにはまったと判断したヨルゲンソンは本格的な攻撃を始めた。ブールジョンは敵からの容赦ない連続攻撃には耐えられず、ヨルゲンソンが申し出たヘジラを受けたのだった。

 ヨルゲンソンは再び氏族長となり、仕事に入ってから最初の数日で、有能かつ決断力のある指導者であることを証明することになる。最優先事項として、彼はレオ・シャワーズ大氏族長に連絡を取り、何が起きたかを知らせ、またラサルハグ奪取がゴーストベアにとって最大の懸案事項であることを保証したのだった。次に彼はウルリック・ケレンスキー氏族長に連絡を取り、氏族長の交代によってラサルハグの入札が遅れることを通告した。ヨルゲンソンはウルフ氏族からの不明瞭な抗議を単に受け入れ、これを利用する方法がないか探すことを決めた。

 三番目の公式な行動として、ヨルゲンソン氏族長は渋々ながら、スティールヴァイパー氏族がゴーストベア占領世界に駐屯するという契約を結んだ。ラサルハグ入札を成功させるために出来るだけ多くの戦士が必要なことが分かっていたのだが、軽蔑する氏族に助けを請うのは受け入れがたいことであった。(氏族によく見られる対立と違い、ゴーストベア氏族とスティールヴァイパー氏族の間の長き争いは、特定の事件や侮蔑が原因ではなく、氏族創設者の哲学の違いに基づいていたのである)

 ラサルハグに対する入札は、3050年の7月4日、〈ダイアウルフ〉艦上で行われ、90分の神経戦は多くの教科書に氏族の入札の典型例とされることになった。ヨルゲンソン氏族長は入札に負けたことに気づいてからも、ウルフの入札を下げさせるために競争を続けた。ラサルハグ奪取のチャンスを失ったことに落胆したのだが、ヨルゲンソン氏族長はウルフ氏族が入札を破ること無しにこの世界を奪えないと自信を持った。彼は共和国首都への攻撃命令を待ちかまえていた戦士たちのところに戻り、その代わり、彼らを第三波の残った目標に送り込んだのだった。

 スティールヴァイパー軍はすでにゴーストベアが支配する世界に駐屯しており、全ゴーストベア侵攻軍が侵攻回廊にある残った世界を確保する任務のために解放されたのだった。新氏族長は兵を率いて着実に素早い勝利を重ねていったが、多くの世界で多大な民間被害が出た。ベアは民衆を捕虜キャンプに閉じこめるのではなく、都市の再建を行わせた。それはペンタゴンワールド奪還の際の民衆に対する方針を思わせるものだった。征服した相手の生き方を認めようとする努力らしきものは、侵略者に対する中心領域の見方を根本的に変えた……少なくともゴーストベアに占領された惑星では。暴動の数は一定の反逆状態から、たまの独立した暴動にまで落ちたのだった。

 氏族長の変更とラサルハグ入札で時間が失われ、ゴーストベアには第三波でふたつの世界、ラジー、ポリスニゴを征服する時間しかなかった。ポリスニゴでは、第304強襲星団隊(ハウリングベアーズ)が民衆を専制的な政府の支配から解放することになった。惑星の防衛に関するコムスターの説明は、ほとんど後付けで、惑星政府が違法な香辛料取引を行い、市民の生活を残酷にあらゆる点で支配することで、ISFの監視を逃れていたことにも言及していた。

 ハウリングベアーズはバッチェルに対する返事を受け取らず、民衆による暴動のただ中に上陸した。政府のメック大隊と増強歩兵1個連隊は両陣営から攻撃された。地元民たちはゴーストベアの登場に元気づけられ、政府軍と補給庫に対するゲリラ戦に着手し、そしてゴーストベアはすぐにこの状況を利用して、メック大隊への直接強襲に集中した。守備側はすぐさま山脈の地下に伸びる特別に掘られたトンネル網へと後退した。感謝していた民衆は勇敢にも、政府隊を駆逐しようとする第304を助けたが、30パーセント近い敵兵を仕留め損なった。市民たちは氏族の道とゴーストベアの管理を喜んで受け入れ、引き替えにベアは前線部隊を駐屯させて新しい階級の者たちを守ったのだった。


第四波:再開

 ヨルゲンソン氏族長は、第四波を続ける前に、三週間近い遅れを出してでも、兵士たちに充分な補給を行うことを決めた。また、他の氏族にならって、臨時守備星団隊(PGC)を招集し、前線守備隊と交代した。さらにベータ銀河隊所属の壊滅した星団隊を本拠地の損害を受けていない星団隊と入れ替えた。よって、彼らは侵攻入札時と同じ戦力に戻ったのである。ヨルゲンソンとカブリンスキー副氏族長は第四波の成功を目指し、肩を並べて働いた。彼らは戦士たちがウルフ氏族と競いたがっていることを知っていた。また、中心領域軍がこれまでよりも頑強な抵抗を示すと信じていた。クリタ家が実戦で鍛え上げられた前線部隊で各惑星を守るつもりだとコムスターを通して知ってからは特にそうなった。ベアの戦士たちはこの挑戦を歓迎したが、容易に勝てる時期が終わったことがわかっていた。

 一ヶ月におよぶ修理と再補給で、ゴーストベアは他の氏族に対する威信を失った。彼らは二ヶ月でベアが予定していた8つの世界を得るのは不十分であると見ていたのである。この挑戦に対し、カブリンスキー副氏族長はギャラクシーコマンダー、スターコーネルたちに、入札を破るほうが失われる名誉は多く、失われるものよりも勝ち取れるものが多いだろうことを固く思い起こさせた。加えて、中心領域の指揮官たちが少なくとも氏族の入札の習慣を知っており、氏族が許す限りそれを有利に使うだろうことを通告した。

 第四波の始まりで、ベアは予想していたより弱い抵抗に遭遇し、一ヶ月と数日で5つの世界を獲得した。彼らは中心領域の対応能力を過大評価していたかもしれないと考え始め、よって氏族長たちはペースを加速してタイムテーブルにあわせられるかもしれないと望み始めた。

 第3ベアガード(大氏族長の盾)は、六番目の目標であるラサルハグの世界、カセレスで激しい戦闘に巻き込まれた。狂信的な第2機兵連隊は、軽部隊を使って側面を悩まし、ベアガードを古い工業地帯に引き寄せた。ここで機兵連隊の重部隊が強化陣地から襲いかかった。接近戦によって第3ベアガードの優位な射程は打ち消されてしまったが、火力がそれを補った。ベアは敵から出来るだけ多くのボンズマンを取る習慣を持っていたにもかかわらず、熾烈な戦闘で最後の一人までを殺さねばならなかったのだった。

 第四波が終わろうとしている時に奪取されたソヴェルゼネは、真に意欲を持った中心領域軍が何が出来るのか、ゴーストベア氏族に見せつけた。ドラコ連合の第2アルシャイン正規隊(通常の惑星守備部隊)は第27ディーロン正規隊から援軍を受け取っていた。両指揮官は、氏族に対しこの鉱物資源豊富な世界で大きな犠牲を支払わせようと決意した。ジャシック・ヨシロ大佐とアノ・タールス大佐は惑星の各地に隠した補給物資から優位を得るため、機動戦を画策した。ベアが星系内に到着し、2個連隊に直面していることに気づくと、ヨルゲンソン氏族長は入札のプロセスを飛ばして、全ベータ銀河隊を惑星奪取に投入した。ギャラクシーコマンダー・ローリー・ツェンは、保守的な侵攻計画の承認を得て二カ所に部隊を下ろし、惑星にある二つの重要地点にそれぞれ送り込んだ。

 第27ディーロン正規隊はアヴェルティ防衛を任され、目標に突っ込んできた第12ベア機士団と第14戦闘星団隊を阻止するために移動した。空爆を利用した第27は、2個星団隊をキリマンジェロ・フィヨルドに集合させた。操られていることに気づいたベアは用心深く進み、狭い水路の端に第27ディーロンが待ちかまえているのに気づいた。第12ベア機士団は2個連合メック中隊と戦うために1個三連星隊を送り込んだが、ベアが近づくと第27は両脇の崖に直接後退し始めた。三連星隊は突撃し、第27ディーロンのジャンプ可能なメックがすでに崖の上にいるのを見た。一瞬後、激しい爆発がこの地域を揺すぶり、三連星隊の大半を土砂崩れでフィヨルドに転落させた。第27にとっては不幸なことに、この罠で破壊されたオムニはごくわずかだった。さらに悪いことに、第14戦闘星団隊が東から側面を突き、崖の上にたどり着いたところでこの人手不足の2個中隊をとらえたのである。ベアの攻撃は中心領域マシンの大半を水に沈めたが、この時、第27の残ったメックが三日月形のフィヨルドの林からあらわれ攻撃を行った。第12ベア機士団と第14戦闘星団隊はすぐに水路に下り、急ごしらえの脱出用トンネルを通って、第27を追撃した。第27ディーロンはフィヨルドの反対側から姿を現すと、直ちにあらかじめ仕掛けていた爆薬を起爆した。勝利を確信してアヴェルティに戻った彼らは、都市がベアによるほぼ無血の奇襲で陥落していることを知った。ゴーストベアの指揮官は、フィヨルドの戦いの最中、トンネルにエレメンタルを送り込み、連合の仕掛けた爆薬の大部分を除去していたのでなある。

 第2アルシャイン正規隊は第304、第332強襲星団隊を相手に、より酷い状況に追い込まれた。ベアは機動戦を行う第2アルシャインを追い回し、弾薬補給基地への撤退を余儀なくさせた。そうすることによって、ベアは基地の正確な位置をつかみ、航空戦力によって破壊したのである。弾薬を使い果たした第2アルシャインは、第304強襲星団隊の激しい追撃を受けながら、北に退却した。氏族の気圏戦闘機隊は第2を森林に押し込み、そこで第332強襲星団隊が敵の到着を待ちかまえていた。2個強襲星団隊の間に挟まれた第2アルシャイン正規隊は大損害を出した。破滅を逃れた彼ら兵士たちはアヴェルティで救援任務を行い、捕らえられた第27ディーロンの連合の兵士と装備を解放した。ベアは二週間にわたって反逆者たちを追いつめていったが、やがて捜索をあきらめることになった。ブラッドネーム持ちの戦士たちが、大氏族長を選ぶためストラナメクティに呼び戻されたのである。第27ディーロンと第2アルシャインはかろうじて惑星からの脱出に成功したが、壊滅的な損害を受けていた。

 8つの世界を獲得し、ほとんど抵抗を受けず駐屯したことから、ゴーストベア氏族は新しい氏族長の指導下、第四波で適切な成功を収めたと考えた。カブリンスキー、ヨルゲンソン氏族長はラドスタットでの戦争評議会に向かった際、すべての物事が管理下に置かれているとの確信を得てから出発した。遅刻した彼らはレオ・シャワーズが死んだというショッキングなニュースを最後に知らされた。

 シャワーズ大氏族長は戦争評議会でウルフ氏族の侵攻速度をいくらか低下させるというチャンスを失ったが、氏族長たちに対立の機会を与えた。氏族長たちの大半は、中心領域に大氏族長の死の責任を取らせるためすぐに追加の部隊を持ってくるべきだとした。他の者たちは、運命の皮肉に報復するため、慎重に立てられた計画を放棄するべきでないと指摘した。スティールヴァイパー氏族のペリガード・ザールマン氏族長は、氏族長たちの不和を利用して、ストラナメクティに戻って新たな大氏族長を選ぶべきだとし、場の頭を冷やさせた。これは苦労して勝ち取った領土を残していくのが賢明なのかどうかより熱い議論を呼んだのだが、そしてまたヨルゲンソン氏族長はザールマンの意見に異を唱えるほうに傾いたのだが、最終的に氏族長たちは新しい大氏族長を選ぶことが侵攻軍の肩を並べさせる唯一の方法だと同意したのだった。

 ストラナメクティへの帰還の途中、ヨルゲンソン、カブリンスキー氏族長は、ジェイドファルコン、スモークジャガー氏族長と共謀し、ウルリック・ケレンスキー氏族長にレオ・シャワーズ大氏族長の死の責任を押しつける策を練った。事実を証明するまっとうな証拠はなかったのだが、ウルリックはこれに反論できないだろうと考えていた。また、ゴーストベア氏族長たちは、どんな小さなやり方でもウルフ氏族を攻撃する準備をしており、予備となる計画を出した。もしウルリック氏族長が無実を証明できたなら、ケレンスキーを大氏族長として選ぶことによって侵攻派に牛耳られた氏族長会議の意志に縛り付け妨害するのである。彼らはまた、ローアマスター・コナル・ワードが新氏族長となり、侵攻派に荷担するのを予期していた。新氏族長を選ぶために氏族長会議が招集されたとき、その最初の議題は、侵攻派のウルリック・ケレンスキーに対する告発を裏付けすため証言を聞くことだった。怒り狂ったフェラン・ウルフの主張に基づき、ウルリックのシャワーズ大氏族長の死に関する責任はすべて晴らされた。ウルリックを大氏族長とする投票はスムーズにいったが、ケレンスキー大氏族長の次の行動はだれにも予想できなかった。彼はナターシャ・ケレンスキーをウルフ氏族の氏族長とし、集まった氏族長たちとブラックウィドウ自身を驚かせた。無意味な勝利を手にした侵攻派の氏族長たちにできたのは、ナターシャが階級の神判に失敗し、氏族長として不適格になるのを期待することだけだった。歴史が示していた通り、彼女は神判ですさまじい戦果を見せつけ、氏族長たちを唖然とさせた。ベア戦士たちの憎しみを和らげたのは、次の侵攻波でゴーストベアを他の氏族と組ませないと決めたことだけだった。

 数ヶ月かけて中心領域に戻ったことで、氏族長たちは7つの侵攻氏族を攻勢・守勢計画に参加させるか、外すかについて議論する充分な時間を得た。前任者の失敗を繰り返さないと決意したゴーストベア氏族長たちは、本拠世界からウルフ氏族に匹敵するような大量の補給物資を輸送し、商人階級を使って強固な補給線を確立した。この動きはゴーストベア氏族の歩みを遅いものとしたが、氏族宙域から占領域まで滞りなく補給が入ってきたのである。カブリンスキー、ヨルゲンソン氏族長は、スモークジャガー氏族の戦闘計画を真似て第五波の戦略を作成し、ひとつの攻勢に各1個銀河隊を割り当てた。小宙域の惑星すべてを占領することになった最初の銀河隊が、第五波で最後の世界を獲得する名誉を与えられた。バッチェルに対し中心領域が二枚舌を使ってきたのを考えみて、氏族長たちは入札の禁止を推薦したが、大半は成り行きを見守ることにした。


第五波:吼えるベア

 訓練の一環としてテッサロニーキに配置された第12サンツァン兵学校候補生隊は、突如として氏族が再来し、囲まれたことに気がついた。この新兵部隊を惑星外に移すことはできなかったので、第8アルシャイン正規隊のターシャ・グリアー大佐は、デルタ銀河隊が星系内に入るとすぐ安全な地域に後退するよう命令を出した。アンソニー・ファンホーン大佐は丁重に、だが断固として命令を拒否した。候補生たちは竜の伝統通り、持ち場を守って任務を果たす意思があった。第12サンツァンが後退を拒絶したことから、グリアー大佐はこの部隊を戦闘計画に入れることを決断した。

 ヨルゲンソン氏族長は直々にデルタ銀河隊を率い、この攻撃がベアの中心領域帰還の合図となった。ベアの再突入地点に一番近かったのは惑星ケンプテンなのだが、ゴーストベア氏族長たちはテッサロニーキの防衛隊、第8アルシャイン正規隊と戦い力を証明することを選んだ。ヨルゲンソン氏族長は通常のバッチェルを行ったが、挑戦に対する返事はなかった。コムスターより提供された情報を元に氏族長は第68打撃星団隊を送り込み、第8アルシャインと戦わせた。ヨルゲンソン氏族長は中心領域軍が森林に潜んで、遮蔽から射撃を行うのを予期したが、氏族のようにまっすぐに立ち向かってきたのを見て、うれしい驚きを禁じ得なかった。第68星団隊は攻撃を強行して敵との距離を詰め、そのあいだクリタ軍は立ち続けていた。氏族の戦士たちが長射程兵器で撃ち始めると、クリタ軍は応射しながらゆっくりと後退し始めた。戦闘は第68星団隊にとって予想外にうまくいった。クリタ兵は予想されていたような戦いぶりを見せず、ほぼ着実に陣地を失っていた。氏族の指導者が罠を警告したそのとき、スターコーネル・チヨウ・ヴォンはクリタの部隊が後方から迫ってくるのを探知した。グリアーは部隊の一部を第68星団隊の側面に配置し、ついに彼らを戦闘に投入したのである。

 ベアはすぐに両部隊の違いに気づいた。新しく入った兵士たちは射撃の精度が高く、圧力に対し素早く反応した。スターコーネル・ヴォンは上司にふたつの異なった部隊に遭遇したことを報告し、ヨルゲンソン氏族長は第73戦闘星団隊を送ることで応じた。第68星団隊の戦士たちが他部隊と栄光を分け合うことを拒絶すると、第8アルシャインはこの混乱を利用して大打撃を放った。偵察部隊が第68の降下船を発見したのである。第1大隊が彼らを拘束する間、連隊の残りがベアの降下地点に移動し、ベアの輸送船を破壊するため全面攻撃を仕掛けた。離陸に成功した1隻の降下船は損害が大きすぎたために、第68星団隊のところにたどり着く前に墜落した。

 第73戦闘星団隊率いるヨルゲンソン氏族長は第12サンツァン兵学校候補生隊を押しつぶし、戦闘力を残した部隊を第8アルシャインのみとした。残ったクリタ兵たちは惑星市民軍が提供した装甲、歩兵部隊に加わり、遅延行動で氏族部隊を苦しめた。ヨルゲンソン氏族長はこの戦術の変化を防衛部隊が援軍を待っているのではないかと疑い、もしベアがただちに惑星を確保するのに失敗したら、この惑星をかけた戦いは割り当てられた攻勢自体を遅らせることになるのではないかと恐れた。危機に直面した彼はデルタ銀河隊の他部隊を呼び寄せた。協力した5個星団隊は容易に通常連隊を圧倒したが、第8には逃げられ続けた。彼らは氏族が予期していないときに襲撃を仕掛け、首尾一貫して氏族の弱い側面を叩いた。ヨルゲンソン氏族長は最大限の努力を払ったのだが、連合の気圏戦闘機はデルタ銀河隊の航空優勢を拒否した。フラストレーションの募る一週間が経過し、ベアはクリタ防衛軍がどうやって毎回氏族の裏をかいてきたかについて気づくこととなった。

 ほとんど偶然、デルタ銀河隊の戦艦の一隻が、テッサロニーキ軌道上の小さな月から発せられたメッセージを傍受した。このメッセージが氏族部隊の正確な位置を教えていることに気づいたヨルゲンソン氏族長は、信号の発信元を調査するためにエレメンタルを載せた降下船の一隻を派遣した。月の迅速な調査により、小さな研究所の存在が明らかとなった。そこの職員たちは高性能な望遠鏡で惑星を監視し、それから氏族の移動を連合指揮官に伝えていたのである。エレメンタルはこの施設を奪取し、送信機を停止した。スパイからの情報を奪われた第8はデルタ銀河隊の前に壊滅した。

 第五波における最初の攻勢で確保された他の惑星は、ケンプテン、ケソン、シェリアクだった。3つの世界は最小限の抵抗を示したのみで、ゴールデンベアーズ(アルファ銀河隊)が最後の目標を狙う権利を勝ち取った。管区の主星、アルシャインである。


アルシャイン

 アルファ銀河隊の第五波の攻勢はカブリンスキー氏族長の指揮の下で成功してきたが、氏族長も戦士たちも守りの堅いアルシャインが容易に落ちるとは予期していなかった。カブリンスキーは全アルファ銀河隊でこの世界を攻撃することを宣言した。

 セオドア・クリタは、この世界を守る第6アルシャイン正規隊に、支援としてエリートの第2〈光の剣〉連隊を送り込んだ。ケリー・ドク=トゥ大佐はカブリンスキーの挑戦に直接応じて、誰がこの世界を守っているかを正直に話したが、ひとつの戦場に運命を託すのを拒否した。カブリンスキー氏族長はゴールデンベアーズを分割する決断を下し、できるだけ多くのクリタ兵士を釘付けにしようとした。第1ベアガード(ザ・レイジ)が第6アルシャインに組み付く一方で、第3ベアガード(大氏族長の盾)と第50打撃星団隊(ブラックベアーズ)が第2〈光の剣〉連隊に対処した。

 第1ベアガードは第6アルシャイン正規隊がポロトミー山脈にいるのを見つけた。アルシャイン正規隊は守りに最も有利な頂上を使って、塹壕を作った。ベアガードの気圏戦闘機部隊が何度か機銃掃射を仕掛けたが、第6アルシャインをひるませることすらできず、またベアのメックはあらゆる方角からの砲撃に直面した。アルシャイン正規隊は山脈がもたらす自然の遮蔽を利用し、一日にわたる戦争で『ザ・レイジ』が進むのを妨げた。カブリンスキー氏族長はついにブラックベアーズに対し第2〈光の剣〉との交戦を中止し、第1ベアガードの支援をするよう命令した。

 ベアーズは第2〈光の剣〉との勝負が付かない戦いをしぶしぶ切り上げた。管領クリタの戦略――遭遇した際は移動し続け、頭を下げ、身を隠し、それから集中砲火を浴びせる――に従い、エリートのクリタ部隊は敵に大打撃を与えていた。連合の戦士たちの各個人はベアの一騎打ちの挑戦に応えたのだが、氏族の戦士がいつも勝つことが明らかになるとドク=トゥ大佐はそれを禁止した。第2は着実に地勢を失っていったが、後退させられたというより自らそれを放棄していた。彼らが戦っていた岩とクレバスの峡谷は、理想的な遮蔽を提供しており、上空での白熱した空戦はどちらの陣営も航空支援を呼ぶことを妨げた。

 当初、クリタ人たちはジャンプ可能な軽量級機を使って罠を仕掛け、ベアを峡谷の下に誘い出した。ベアがドク=トゥ大佐の望んだ反応(軽量メックに襲いかかり、崖の上に逃げていくのを見て驚く)を取ると、彼女は大隊に命じてベア軍を撃ち下ろさせた。クリタの優位は短いものだった……ブラックベアーズのメックの大半もまたジャンプできたのである。戦闘は射撃大会となり、その後、第3ベアガードが崖に沿って作られた急勾配の道を発見した。経験から学んでいたスターコーネル・ハンター・ツェンはエレメンタルに道を掃討するよう命じた。彼らが発見した数トン分の爆発物は、ベアガードを消滅させていたかもしれない。エレメンタルが爆弾を除去するとすぐに、『大氏族長の盾』は道を進み、第2〈光の剣〉の脇を突こうとした。上にたどり着いたとき、彼らはブラックベアーズが同じ計画を採ったことに気がついた。第2〈光の剣〉が逃げ出したことに気づくまでの混乱した数秒間、両ベア部隊は互いに撃ち合った。

 クリタ軍はこの瞬間を選び、痛烈な逆襲を行った。混乱の中、1個重大隊がベアの弱点である左側面に突撃し、1個三連星隊を孤立させ、撃破しようとしたのである。他のベア部隊が第2に火力を向ける前に、〈光の剣〉はシルバーデイルに全面撤退していた。戦いの流れが変わったことを確信した氏族長は、ブラックベアーズにポロトミー山まで行ってザ・レイジを助けるように命じた。大氏族長の盾は第2〈光の剣〉を追撃し続け、罠にまっすぐ突っ込んでいった。第2〈光の剣〉は全4個大隊を第3ベアガードに向け、死にものぐるいとなっているスターコーネル・ツェンに、いかなる犠牲を払っても第2〈光の剣〉の戦線を突破するよう命令させたのである。大損害を受け、大量の弾薬を使い果たした第3ベアガードは後退を計画した。第2〈光の剣〉は有利な状況を利用することなく、シルバーデイルで降下船に乗り込んだ。

 指示の通り、ブラックベアーズが第6アルシャインの強固な防衛線の背後に降下すると、待ちかまえるザ・レイジの火砲が連合部隊を一掃するのは時間の問題となった。第6アルシャインが脱出のため絶望的な突撃を敢行し、レイジの戦線に穴を開けると、ベアーズはすぐに後方の間隙を埋めたが、この優勢はすぐに失われた。第2〈光の剣〉連隊はこの瞬間、第1ベアガードの真上に大胆な戦闘降下を行った。続く混乱で第6アルシャインは近くの降下船に撤退し、第2〈光の剣〉は戦闘退却を行った。集合したゴーストベアは集団で攻撃しクリタ人を全方位から押したが、防衛戦線を破ることはできなかった。

 大氏族長の盾は第2〈光の剣〉に遅れること1時間、戦場に降下したが、遅すぎた。戦闘が始まったときから予備となっていた惑星市民軍が、突如としてベアーズに襲いかかり、第6アルシャイン正規隊、第2〈光の剣〉の残存戦力がアルシャインから脱出するのに必要な時間を稼いだのだった。


新規則

 アルシャインを失ったことは、連合にとって驚くべき打撃となった。最初の攻勢をスケジュール通り終えたことから、ベアの戦士たちは通常の休息、修理のプロセスを飛ばして直ちに次の攻勢にかかる投票をしたが、ゴーストベアはすぐに異常に長い補給線が非効率的なほどに遅延していることにすぐ気がついた。彼らはほとんど問題なく攻勢を終わらせたのだが、5つの世界を獲得するのに弾薬の備蓄の大半を消費してしまったのである。ゴーストベアは第二、第三攻勢のあいだ、兵站が前線に達するまで一ヶ月近く待った。

 補給の不足と、中心領域が絶えず戦術を変更していたことから、3052年1月、ヨルゲンソン氏族長は全面的な規則の改定を発した。オムニメックの仕様をただちに変更し、ミサイルとオートキャノンをレーザーとPPCに交換することを命じた。また氏族長は伝統的な氏族の交戦規定を一時的に停止した。中心領域は繰り返し名誉の欠如を見せており、従って名誉ある扱いを受ける権利は失われていた。ヨルゲンソンは侵攻の残りで、バッチェルとゼルブリゲンの使用を禁止した。

 彼はさらに補給線を担当した商人階級に対し、どれだけ費用がかかろうとも必要な補給を探すように命じた。商人たちはこの挑戦に対し、奪取した世界のエキゾチックな商品を交易することで応じた。この手法は想像だにしなかった副作用をもたらした――補給物資を集める商人たちが中心領域におもむき、占領された世界の市民たちに氏族の異なった面を見せることになったのである。カブリンスキー氏族長は非戦士の氏族員と接触させることで、PGCに取り締まられる世界での反乱が減ることを望み、ヨルゲンソン氏族長の計画への貢献に成功した。

 第五波のあいだ、ゴーストベアはどの氏族よりもぬきんでた……ウルフ氏族を除いて。彼らは18の世界を奪い、誇り高きゴーストベアの戦士たちはついに自分たちにふさわしい戦果を残したと感じた。ゴーストベアの氏族長たちは、ケレンスキー大氏族長が惑星ツカイードでコムスターと地球をかけた戦闘を行うことに合意したとのニュースを受け取ったとき、非常に異なった反応を見せた。ヨルゲンソン氏族長は15年の停戦が約束に入っていたので全面的に反対した。カブリンスキー副氏族長は、氏族が確実に勝利するだろうという自信を抱き、氏族長の取引を歓迎した。




indexに戻る
inserted by FC2 system