indexに戻る
作成:2003/04/26
更新:2003/05/22

ブルドッグ作戦 Operation Bulldog



 スモークジャガー氏族は中心領域でもっとも嫌われている氏族です。
 強硬な侵攻派である彼らは、中心領域侵攻の端緒を開き、その過程で惑星タートルベイのエドシティを軌道上無差別砲撃しました。そして最後には中心領域連合軍に滅ぼされることとなります。スモークジャガー氏族の歴史は、氏族侵攻の歴史と言って良いでしょう。
 classicbattletech.comより。



一氏族の殲滅



イントロダクション Introduction

 3058年、長年のライバルであるウルフ氏族との破滅的な戦争を終えたばかりだった、ジェイドファルコン氏族はライラ同盟に侵攻した。弱ったファルコン氏族を利用しようと考えていた敵勢力に自らの力を見せつけるためであった。ライラ宙域に200光年浸透したあとで、侵略者はツカイードの停戦ラインのちょうど手前でコベントリの世界に降り立ち、最高の軍勢を送って中心領域に挑戦した。

 これに応えて、中心領域の王家は共同機動部隊を形成した――すべての王家から集まった軍事司令官たちが、星間連盟崩壊以来初めて、共通の敵のためにくつわを並べて戦ったのである。コムスターの戦司教アナスタシウス・フォヒトと、連邦=共和国ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン国王の指揮の下、機動部隊はファルコンにヘジラ(名誉を保ったまま撤退する機会)を申し出て、侵略者たちはこれを受け入れたのだった。無傷の勝利のなか、シュタイナー=ダヴィオンは、中心領域の力を結集して連合軍を作り、氏族に対する戦争を行おうと提案したのである。

 中心領域の指導者たちは、この提案を熱狂的に歓迎し、3058年の10月3日、ターカッドの世界上に、中心領域の指導者たちが正式に話し合うために集まった。会合のあいだ、戦司教アナスタシウス・フォヒトは提案を行った。一体になった政治的機関と同盟軍を作って、氏族と対面する統一戦線を形成してはどうかというものであった。

 集まった指導者たちはこれを受け入れ、新しい星間連盟憲章を起草する歴史的一歩を踏んだのである。カペラ大連邦国首相のサン=ツー・リャオが儀式的な地位である第一君主となった。彼を選択したことは、(小さなリャオ家が)他の大きく強力な王家と同等であるという象徴的なものとなり、中心領域の力強い団結を見せつけたのであった。

 ほとんどすぐ、王家指導者と配下の戦略家たちは、氏族に対する攻勢の大計画を立案し始めた。こうして生まれたのがブルドッグ作戦だった。人類の歴史始まって以来の大作戦であり、中心領域の王家が達成した最も偉大な勝利となったのであった。



戦争の実行 Taking the War to the Enemy

 王家は対氏族戦役を始めるにあたって、スモークジャガー氏族を強襲することを選んだ。ジェイドファルコン氏族とウルフ氏族が戦争をしたことにより、ジャガーが中心領域で最も強い侵攻派氏族軍となっていたからである。王家の指導者たちはジャガーを攻撃することによって、中心領域が連合して氏族と戦うことができ、また氏族と対等か上回ることができると、氏族に思わせることを望んでいた。

 また中心領域の指導者たちが、ジャガーを目標としたのは、この氏族が占領域と軍勢をドラコ連合内に集中させていたからである。このことにより、ドラコ連合が厳密に情報をコントロールして、氏族の諜報ネットワークに計画を入手させにくくすることがより簡単だったのである。さらに、連合大統領セオドア・クリタは、連合軍がノヴァキャット氏族(中心領域のスモークジャガーと同じ回廊に惑星を保持しており、またジャガーの不退転の敵であった)を説得できると信じていた。またノヴァキャットはジャガーへの協力を拒否し、それが中心領域を助けることになるとも信じていた。

 連合軍のプランナーたちは、小規模なゲリラ部隊をジャガーの保有する惑星に送り込むことで、ジャガーへの攻勢を始めようと企図した。連合軍の準備から気を逸らし、また暴動に対処するため前線部隊を引き抜かせようとしていたのである。新たに結成されたSLDFは、五波に渡る主攻撃(暗号名ブルドッグ作戦)を、スモークジャガーのバランスを崩し続けるために八ヶ月間隔で始める。慎重な見積もりによると、第四波が始まるちょうど五ヶ月前に、第一波を始めるべきだと結論付けられた。また第二波は侵攻の始まりの1年後に行われるべきだと結論付けられた。モーガン・ハセク=ダヴィオンに指揮される大規模な予備隊は、侵攻が始まるとドラコ連合領内に移動し、ジャガーのあらゆる反撃の試みに対して準備をする。



予期せぬ同盟 Unlikely Allies

 最初、他の中心領域の指導者たちは、セオドア・クリタの提案(ノヴァキャットを同盟軍として加えて、ジャガーに対する軽蔑を煽る)に対して難色を示した。しかしながらセオドアは、ノヴァキャットが連合軍の一部を占める必要がないことを指摘して、なんとか指導者たちを説得するのに成功した。彼が描いていた同盟の構想では、ノヴァキャットと中心領域は最小限の協力しか要求されていなかった。ノヴァキャットは中心領域軍と全面的に戦って力を弱めるより、ノヴァキャット占領域の世界で連合軍への単なる抵抗をすることで連合を助けるよう説得できると、彼は正確に推測していたのである。

 ノヴァキャットはすぐに協力のレベルに関する大統領の初期提案に応えた。それは彼らがセオドアの計画をよくわかっていることを示唆していた。ノヴァキャットの司令官はDCMSに先制の挑戦宣告(バッチェル)を申し出ることによって、「防衛」軍の質と数を自発的に明らかにした。実際に戦闘が起きなくなるまで軍勢を減らしたケースもあった。この間接的な援助により、連合はジャガーに対する軍勢を集中させることができ、攻勢の後方に残された無防備な地域を処理する負担を減らすことが出来たのである。

 伝えられるところによれば、セオドア・クリタがノヴァキャットを説得するのに、ノヴァキャット氏族長の見たヴィジョンが助けとなったという。そのヴィジョンは、龍がノヴァキャットを倒すものと、ノヴァキャットと龍がともにスモークジャガーを殺すものだった。



ドラゴンロアー(龍の咆吼) The Dragon Roars

 比類なき大規模軍事戦役において、中心領域連合軍は4ヶ月でスモークジャガーの陣地を蹂躙した。戦役はふたつの段階で行われた。ゲリラ戦役を進める暗号名バードドッグ作戦と、全面攻勢の暗号名ブルドッグ作戦である。



バードドッグ作戦 Operation Bird Dog

 3059年の5月13日、戦司教とヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは強襲の機が熟したとの判断を一致させた。主力強襲の前哨となるバードドッグ作戦の開始日が発表された。小さな中隊規模の部隊(ほとんどがライラ同盟、連邦=共和国、ドラコ連合の大規模な連隊から編成された特別部隊)が、スモークジャガー前線後方の、9つの世界のパイレーツポイントにジャンプした。氏族製オムニメック、もしくはドラコが設計したオムニメックを装備したこれらの部隊は、主力侵攻部隊が彼らのもとにやってくるまで、目標となった世界で、スモークジャガー軍に対しゲリラ戦を行った。

 作戦はめざましい成功を見た。侵攻隊は目標となった世界で氏族の作戦部隊を分断し、また連合軍の攻勢は範囲も規模も限定的だと誤解させた。さらに、ゲリラ部隊はジャガーの防衛力をテストし、主力隊に正確な情報を提供した。そしてジャガーの備蓄物資を襲撃した。氏族の司令官は彼らの軍勢を宇宙の広範囲に散らし、大規模な強襲に対処する能力が殺がれていった。おそらく最も重要な点は、侵攻の第一波において、前進する部隊が目標惑星におけるスモークジャガー守備隊を強化させなかったことである。

 調査によれば、ゲリラ戦役が始まってから数週間後でも、スモークジャガーは全面攻勢強襲に対する予想も準備もしていなかった。



ブルドッグ作戦 Operation Bulldog

 スモークジャガー占領域への連合軍の前進は素早いもので、頑強なドラコ連合正規軍の連隊司令を穂先とし、驚くべき速度で世界から世界へと抑えていった。第一波は5ヶ月かかるとしていた初期の評価と異なり、ブルドッグ作戦の最初の一波はちょうど5日間以上続いたのである。従って、連合軍による第二波はスケジュールを3〜4ヶ月前倒しして進められ、およそ数週間でなんとか目的を達成したのである。確かに攻勢は効果的だったため、中心領域司令官は第五波は不要と考えた。コンピューターシミュレーションが示していた必要時間より圧倒的に少ない時間、ちょうど4ヶ月で連合軍は全作戦を終えたのだった。



第一波: カタナは振り下ろされる Wave One: The Katana Falls

 3059年5月20日、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンと戦司教フォヒトは、スモークジャガー占領域国境沿いの15の世界にメッセージを急送した。すべてのメッセージはそれぞれ内容が違うものだったが、キーワードを含んでいた。主侵攻の目標に対して40個連隊以上を送るというものであった。17個連隊(本拠地の星系のジャンプポイントにとどまり続けていた)は、目標にしているスモークジャガーの世界5つのパイレーツポイントに、5時間以内にジャンプできるよう、注意深く計算していた。そのような強襲は、4つの世界でスモークジャガーを驚かせ、新生星間連盟防衛軍は抵抗なしに着陸した。

 惑星ハイナーでは、第3ジャガー機士団が、SLDFが待つなかにまっすぐに突っ込んでいった。スモークジャガーが防衛行動を取るまでに、すでに戦闘に負けていた。ドラコ連合第2〈光の剣〉連隊はあるていどの損害を被っていたにもかかわらず、ハイナー戦役は三日以内に終わったのである。

 他の世界ポートアーサーでも、SLDFはめざましい勝利を得た。惑星を守っているのは、スモークジャガーのボンズマンが操縦する中心領域で捕獲されたメックからなる小規模な守備隊だけだと、最初、SLDFの司令官は信じていた。SLDFの予定では、すぐに防衛軍を一掃し、ポートアーサーを、侵攻の第二波に参加するDCMS3個連隊用の集結準備地点として準備することになっていた。最新の諜報活動として、SLDFはバードドッグ作戦の一環で第1ダヴィオン近衛隊の第1大隊をポートアーサーに送り込み、スモークジャガー保有世界への主強襲の前奏曲とするつもりだった。軽い抵抗が予想されていたのだが、守っていた氏族のボンズマンは予想よりもよく戦い、近衛隊はほとんど圧倒されてしまった。援軍が二週間以内に来ないことを知っていた近衛隊は、敵の手からポートアーサーの支配権を奪いとるための周到な計画を練り上げた。

 ジャガーの色に塗られた氏族製メックが生ずる猛烈な砲火の下から、突然近衛隊があらわれたとき、1日に渡っておこなわれた激戦は終わろうとしていた。貧弱な防衛からはほど遠いことに、ポートアーサーは現在ジャガー第168守備星団隊によって占領されていた。彼らは惑星の南方大陸に駐屯しており、中心領域侵攻軍を撤退させるべく、戦闘の陣地に到着した。しかし第168隊がダヴィオン近衛隊と接敵したまさにそのとき、中心領域の援軍が到着したのである。DCMSの3個連隊がジャガー軍を数で圧倒した。到着した連隊が氏族の星団隊を粉砕し、夕暮れ前に効率的に戦闘を終わらせた。惑星から逃げることができなかった生存者は、次の2日で追いつめられた。脱出した者たちは、続く海戦の思わぬ参加者となった。

 キアンバとアースガルドでは、スモークジャガーは反応が遅すぎて、効果的に戦闘機隊を展開できなかった。不利な状況で圧倒され(4個ジャガー前線星団隊は4個SLDF連隊と直面した)、ジャガーの部隊はSLDF連合軍に取り除かれた。彼らの損害は微々たるものであった。

 惑星タラゼドのジャガー軍は、不運だった仲間たちよりも警戒していたのだが、致命的なミスを犯してしまった。カイ・アラード=リャオの挑戦宣告(バッチェル)に対してセーフコンを許してしまい、戦闘機隊を呼び戻し、SLDFの降下船を安全に着陸させたのである。第7ジャガー竜機兵団は、クライチェック山を戦いの舞台に選んだ。不幸なことに、竜機兵団は相手にしている軍勢の規模を理解してなく、そのため彼らの選択は凄惨なものとなったのである。第7ジャガー隊が渓谷網をぬって進んでいたとき、SLDFの連隊が彼らを切り刻み、壊滅させた。戦闘とブルドッグ作戦の第一波はそれからちょうど5日後に終わった。

 SLDFは準備のできていない敵に対して、圧倒的な力を用いた。結果、カタナが絶妙な位置から振り下ろされたかのように、戦いは素早く致命的なものとなったのだった。1週間以内に、SLDFは目的を達成した。彼らの戦術家たちは、5ヶ月かかると予言していた。なるほどジャガーたちは確かに勝利を手にしていたものの、数が少なく、中心領域の強襲を妨げることはできなかったのだ。SLDFが第一波で驚異的な勝利を得たために、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは第三波のために補給物資を分配することができ、また全タイムスケジュールを一ヶ月早めることができたのである。

 SLDFは第一波で9つのノヴァキャットの世界もまた目標にしていた。それぞれ1個連隊のDCMS連隊が、1〜2個の支援連隊にバックアップされて、目標に向かった。しかしながら、ノヴァキャットが先制の挑戦宣告(バッチェル)を宣告したため、これらの支援部隊は着陸する必要がなかった。中心領域連合軍に対する彼らの合意は真実のもので、彼らはDCMSの部隊に効果的に降伏していった。キャットの長年のライバルかつ敵に対するSLDFの行動を援護したのである。

 カノウィットとエイボンでは、両者の名誉を守るため、実際の戦いが行われた。中心領域で氏族占領域の最先端に位置していたこれらのふたつの世界では、真剣な競争が必要とされたのである。しかしながら前線から遠く離れた世界では、ノヴァキャットは戦闘の必要をあまり感じていなかった。実際に、ソウヤー(第一波の目標となった世界からもっとも離れていた)において、第3夜行兵団航空大隊の司令官は、ノヴァキャット守備隊を撃破し、惑星を勝ち取った……気圏戦闘機シミュレーターの戦いによって。

 第一波が終わるまでに、ジャガーはエイボン(ルシエンにかなり近く、重防衛されていた)を除いて、所有していた国境の世界を失っていた。SLDFはこの星を、スモークジャガーが(あまりありそうにない)逆襲をするための集結地点と考えていた。ノヴァキャットは残った隙間を埋めていた。それらの地域は、SLDFが支配している世界で構成されている強力な戦線をすり抜けて、スモークジャガーが逆襲のためドラコ連合まで到達するのに通らなければいけない一帯であった。侵攻軍との戦いにおいて、このような圧倒的な敵を撃破するのは困難で、スモークジャガーの逆襲はちょうど第三波の前まで遅れてしまったのである。



第二波: 進撃 Wave Two: Driving Forward

 第一侵攻波の驚異的な成功にもかかわらず、第二波はスケジュールを数日間だけ前倒しした3059年6月26日に開始された。侵攻のための軍勢の移動と補給ルート構築は、強襲の始まる数ヶ月前に整えられていた。最後の瞬間に、それらの準備を変えてしまうと、全強襲は分裂してしまうかもしれないと、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン国王は感じた。しかしながら彼は第二波の目標世界をさらに3つ加え、合計で11個の世界が目標となった。第一波の倍以上の世界を目標とすることで、ヴィクター国王は新SLDFの敵に対してさらなるショックを与え、混乱させることを望んでいた。

 惑星タートルベイ、アルムンゲは防衛されてない状態にあり、よって人的、物的損害なしで、SLDFの手に落ちると思われた。ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンはヴェガ軍団にタートルベイ再奪取を命じ、彼らがかつて喫した敗北を取り返すささやかなチャンスを与えた。この部隊は10年近く前にジャガーと戦い、この世界を失っていた。第11、第16、及び第2軍団の一部が、惑星解放に参加した。

 ノヴァキャットが保有していたエイボンとキャリペアはその半分が侵攻の第一波の最中に奪われ、今ではSLDF軍とノヴァキャット星団隊がノヴァキャット支配地域を集結点として使っており、ここからそれぞれの世界上のジャガー軍を叩くつもりだった。ノヴァキャットと中心領域の明白な共同作業に直面したスモークジャガーの司令官は死ぬまで戦おうとせず、かわりにスモークジャガー占領域の深くまで引き返していった。

 同様にバイズヴィルとハノーバーでは、司令官が部隊の一部をなんとか救いだし、近隣の世界(攻撃を受けていなかったところ)に戻っていった。バイズヴィルの守備星団隊はほとんど全兵力を保つことができた。ハノーバー隊には運がなかった。強力なSLDF連隊の戦列に粉砕された彼らは、2個三連星隊とわずかなエレメンタル、航空支援隊をかろうじて撤退させた。

 ヤマロフカ、ヴィレントフタ、ナイクバーン、ラブレアから逃げられたスモークジャガーの戦士はいなかった。最初のふたつの世界――特にヤマロフカ――では、猛烈な戦いとなり、多くの犠牲が払われた。その世界において、スモークジャガーは重要な工廠を守るため最後の一兵まで戦った。ラブレアでの戦いはそれほど猛烈でもなく、戦士6名だけが戦闘に関わった。フェラン・ケルの放浪ウルフ氏族が氏族の伝統的な戦術を使い、前線星団隊を捕獲しようとしたのである。

 ルザーレンにはほとんど資源がなく、事実上、軍需工場がなかったのだが、この世界での戦いは、SLDFが全強襲のあいだに直面したもっともやっかいな挑戦のひとつになった。戦艦による海戦で、破滅的な接近がもたらされた結果、惑星の地表にたどり着けた強襲軍は半分だけであった。1個守備星団隊と遭遇することを予想していたSLDFは、同様に新たに結成された前線星団隊と直面した。ジャガー隊はSLDFの部隊を惑星上に渡って追い散らした。わずかに2個大隊だけが、なんとかジャガーに直面する結束力の強い部隊を結成することが出来た。数時間以内にルザーレンは2個優良連隊の墓場になりそうだった。

 すべてのジャガーの世界で戦闘の猛威がふるっていたとき、ノヴァキャット氏族は形だけの戦闘の申し出をDCMSに行った。それによってDCMSはノヴァキャットの世界とボンズマンとして捕まっていた戦士を取り返すことが出来た。DCMSとノヴァキャットのあいだで、メックによる実際の戦闘が行われたのはムーランだけであった。目標となった他の5つの世界では、個人の戦闘か、形式上の挑戦がほとんどであった。ビジャレッドでは、対決としてコイントスが行われた。キャサリン・オルション大佐は、スターコーネル・オリビア・ドラムンドに裏表の宣言をうながし、スターコーネルが「縦」と宣言をしたときには黙っていた。ノヴァキャットが新SLDFにビジャレッドの守備を任せ、惑星を離れる前に、オルションはスターコーネル・ドラムンドに、彼女の選択について聞く機会があった。ドラムンドの返答は簡潔にして雄弁だった。「勝利をイメージするんだ」彼女は言った。「私が勝った場合のをな」

 3059年7月までに、ドラコ連合は目標とした世界(ノヴァキャット氏族に奪われていた)を、再び取り返し、ルザーレンを除いて、スモークジャガー世界での交戦状態を解除した。ルザーレンでは、包囲されていたSLDF軍が防衛陣地にこもり、敵であるジャガーと小競り合いを繰り広げた。この形は、侵攻の第三波が始まるまで続いた。



スモークジャガーの逆襲 Smoke Jaguar Counterattack

 ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンとアナスタシウス・フォヒトはスモークジャガーの反攻を予測し、計画を立てた――しかし考えていたのは第一波に対する報復であり、第三波に対するものではなかった。

 7月27日、ジャガーによる攻撃の最初の報告が、HPGネットワークを通して惑星ウォルコットに届いた。この予期せぬ攻撃は、スモークジャガーの力強さを示しているのでないかと(最初の二波で見せた抵抗よりも)、ヴィクター国王は心配を募らせた。その心配を沈めるために、コムスターの諜報ネットワークと、フェラン・ケル氏族長の状況分析が、素早くなされた。SLDFの司令官たちは逆襲について吟味し始め、またジャガーの攻撃がどのように第三波に影響するかについてと、新たな脅威に直面することになるかについて判断しようと務めた。

 成功したSLDFの強襲に対応するには、スモークジャガーの攻勢は弱いと彼らは結論付けた。氏族は勝利し続けるのに充分な軍勢を用意できず、たとえジャガー軍が目標としていたSLDFの補給基地を捕獲できたとしても、第三の侵攻は計画通り進むことができる。なぜなら第三波の軍勢はすでに完全な補給を済ませていたからだ。最悪の場合でも、ジャガーの反攻は第四波を数ヶ月遅らせることができるだけである。しかしスモークジャガーが強力な援軍を呼ばなかったら、目標となっている連合の5世界の守備隊は、攻撃するジャガーを撃破できるか、もしくは近隣の惑星から簡単に援軍を呼ぶことができるだろう。最終的に、SLDFの予測は正しいと証明された。

 スモークジャガーのデルタ銀河隊司令官は新たに編成された第3強襲星団隊を率い、重要な世界であるペシュトを奪取するため、絶望的な入札を行った。しかしながら、最初からジャガーの勝つチャンスは小さいもので、氏族の地上軍は戦闘降下してすぐに、ジャガー航空隊に見捨てられた。民間人の抵抗に遭遇したジャガーは焦土戦術を始め、続くSLDF軍との戦いの間に世界を痛めつけた。それらの戦いは数日間続いた。

 強襲星団隊は、第7〈光の剣〉、第3リュウケン、第1ケルハウンドに遭遇するのを予期していたと、メックの通信を傍受したSLDFの分析家はのちに断定した。だが、第2ウルフ軍団が彼らの側面を叩き、銀河隊指揮三連星隊を殲滅したのである。統制を失った第3強襲星団隊の戦士たちは、突破できると考えケルハウンドに突っ込んでいった。だが、ハウンドは第7〈光の剣〉とリュウケンの攻撃の金床となり、氏族軍を粉砕させたのだった。数日以内に、SLDF軍は残ったジャガー星隊を追いつめていった。

 マカリスターでは、スモークジャガーはなんとかSLDF補給基地のいくつかに損害を与えた。実際に、ジャガー守備星団隊は、かなり短い時間でかなり多くの損害をもたらした。この損害によって、どれほどうまく侵攻が進んだとしても、SLDFは満足できなくなるであろうことを、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは気にとめた。しかしながら結局のところ、ジャガー隊は圧倒的なSLDFの存在に屈服したのである。

 メタモラス、メイナコスの世界での戦いは似たような様相を見せた。両惑星では、前線ジャガー星団隊が大軍をもって叩いたのであるが、中心領域防衛部隊は、近隣の世界から援軍がやってくるまで何とか持ちこたえたのだ。メタモラスでは、第9打撃星団隊の攻勢を妨害するために、民間人が勇敢にも2個守備連隊を助けた。曲がり角ごとに民間人の有効な対抗策に妨害されて、第9隊は身を守るためにひとまとめになることを強いられた。のちに、第4リュウケンが夜間の戦闘降下でジャガー支配地域に降り立ち、メタモラスの2個守備連隊とともに進軍を調整して、なんとかジャガーを押し戻した。

 ルナコニングの世界上では、SLDFは幸運を得た。援軍をすぐに送れない状況で、守備をしていたSLDF部隊が重大な損失を被ったのではないかと、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは予期していた。しかし氏族の司令官は、惑星の防衛隊を直接強襲するよりも、陽動と牽制機動を行うことを選んだ。この戦術ミスにより、SLDF守備隊は、敵との大規模な交戦を避けていたあいだ、それなりのジャガーの目標にそれなりの損害を与えたのである。

 最終的に3059年8月13日、ジャガーの指揮官は逆襲を中断して、彼らの軍勢を呼び戻した。ルナコニング攻撃軍のほぼ99%がなんとか戦闘から撤退したが、メイナコスでは半分、メタモラスでは一握りのジャガー部隊だけがなんとか逃げ出した。ジャガーは航空隊のほとんどを維持し、傷ついたオムニメックを修理し、SLDFの補給基地をいくつか叩いたが、究極的に反攻は規模が小さすぎ、遅すぎたのである。



第三波:ジャガーの滅び Wave Three: Bringing Down the Jaguar

 ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンとアナスタシウス・フォヒトは8つの強襲計画(3059年夏スモークジャガーの逆襲の間に行われたもの)が奇襲の要素を持つことを望んでいた。しかしながらスモークジャガー司令官のなかには、逆襲の実現性に対して信頼を置いていなかった者がいたので、彼らは来るべきSLDFとの戦いのために戦力を残しておき、侵攻が始まったときよりもより良い準備をしていた。用意を行ったことに関する賞賛のほとんどは、アルファ銀河隊司令官ブレンドン・コルベットに向かうに違いない。この人物は、エイボンでベータ銀河隊司令がSLDFに負かされたあと、星域司令官に任命されていた。その地位にふさわしいと思われる他のジャガー司令官のほとんどは、行われた侵攻波のなかで殺されるか、回復不能なまでに負傷していた。

 ジャガーの新たな戦闘に対する用意が、最初に明らかになったのは、第6リュウケン連隊が、ルザーレンにて強力な抵抗に遭遇したときのことである。しかしながら、援軍が到着すると、戦いはすぐSLDFのほうに傾いた。スモークジャガーはいまだ決意とともに戦っており、世界を放棄するのを拒否した。ルザーレン戦役の終結は、公式には8月8日である。氏族がその反攻を中断するほんの数日前のことだ。

 ジャガーのアルファ銀河隊司令と第9ジャガー機士団は、惑星マーシュデールにて同様の体裁をなした。銀河隊指揮三連星隊(エリート戦術打撃隊として行動していた)は、オリエント機兵連隊にあるていどの損害を与え、また第2リュウケン連隊の完全な中隊をなんとか壊滅させた。しかし第9ジャガー機士団は強襲の主戦力に対抗できず、8月12日、氏族の部隊は、第2リュウケン連隊と第9コムガード師団の無慈悲な圧力の下で崩壊し始めた。

 バンガーとスカイラーでもまた、スモークジャガー軍は強固な防衛を見せたが、対するSLDF連隊の戦列にかなう見込みがなかった。ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは自身の「ドリームチーム」を率いてスカイラーに向かい、バンガーは第2ディーロン隊、第1ウルフ軍団、カペラダイダチ家と争うことを強いられた。

 ベータ銀河隊指揮三連星隊と第1ジャガーガードの残存兵力は、結局、アウターヴォルタで罠にかかった。彼らは、第267戦闘星団隊のメイナコス強襲を支援するため送りこまれていた。イザナギ戦隊と第8〈光の剣〉(コムガード第39師団に援護されていた)に囲まれた氏族軍は5日で粉砕された。

 スモークジャガーは、ロックランド、クードゥックス、ガーステッド、シュヴァルツでは、単なる形式的な抵抗を行っただけだった。惑星上のSLDF司令官全員が予期していた猛烈な反攻はついに来なかった。

 第三波――そして氏族占領域に対するSLDF強襲の主攻撃――がいつ終わるのか、誰にも予見できなかった。スモークジャガーは防衛戦のほとんどの場面において、自由な交戦規則を用い、何度か遅延行動を行った。なにかを待っているように見えたが、それは不明瞭なままであった。のちにアナリストたちが考えたのは、銀河隊司令官コルベットは第三強襲波のあいだ、新生SLDFとジャガーの防衛戦略の力をテストしたかったということだ。

 とにかく、スモークジャガーの指導者たちは、実際上、8月13日に中心領域を放棄して、彼らの部下たちに占領域からの撤退を命じ、使えるどんな艦船でも使って氏族宙域へ帰還した。その呼び戻し命令が、リンカーン・オシス族長によるものか、もしくは銀河隊司令官コルベットによるものかは、このとき誰も知らなかった。

 この決定により、第三波で目標となった世界に駐屯していた氏族軍の半分以上――逆襲軍として適していた――が、完全な形で脱出することができた。少なくとも2つの守備していた世界の完全な部隊が、戦いから静かに逃れた。



第四波:一掃 Wave Four: Clean-up

 スモークジャガーが旅立ったのを見て、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンとアナスタシウス・フォヒトは、主強襲が終わり、中心領域が勝利を得たことに気がついた。しかしながら、常に慎重だったヴィクター国王は、スモークジャガー軍の残兵を中心領域から一掃する計画のあいだ、SLDFを戦闘準備状態にし続けた。逃げるスモークジャガーを追って、ヴィクターが数個部隊を率い、辺境に向かっていたとき、フェラン・ケルがドラコ連合での最後の戦闘の指揮をとった。

 サヴィンスヴィルとスタップルフィールドの世界では、カッパ銀河隊の星団隊が、彼らの名誉を満足させるだけ長く戦った。脱出する望みがない中で、守備星団隊の司令官はSLDFに対し最後の所有の神判の交渉を行った。その入札は、侵攻の初期にノヴァキャットが行った挑戦宣告(バッチェル)と似たようなものとなった。スモークジャガーは負けることを知っており、よって屈する前にメンツを保とうと計画したのである。サヴィンスヴィルではジャガー軍は公式には第4ウルフガード強襲星団隊に捕らえられた。そのあいだスタップルフィールドでは、第1アンフィジーン軽強襲団が、敵を撃破した。

 カバーを守るために残された守備星団隊は、所有の神判に合意する前に相当長く持ちこたえた。何度か遅延行動を行った守備軍は、メタモラスから艦船が惑星を離れるために戻ってくるまで持ちこたえるのを望んでいた。最後には第20ディーロン隊が、救援が来ないことを星団隊に納得させて、ようやく所有の神判が始まった。その挑戦は、ディーロン正規隊と支援するノヴァキャット星団隊のあいだで、ほとんど平等に分割された。

 しかしながら、ジェロニモとアルビエロでは、スモークジャガーは死ぬまで戦った。両惑星においてSLDF軍が、少数の回収(サルベージ)と捕虜を手にしたが、ほかにはほとんど何もなかった。カペラ大連邦国のダイダチ家の戦士だけが、ジャガーの一杯に満たされた補給庫と技術者を獲得し、どうにか少数の価値のある資産を手にした。補給物資は規定通りに惑星上のSLDF全軍のあいだで分割したものの、技術者の捕虜たちはダイダチのボンズマンになることを選んだ。

 3059年9月18日、侵攻の第四波は公式に幕を閉じた。かつてスモークジャガーに占領されていたすべての世界は、SLDFの守備隊によって平和を樹立した。すべてのノヴァキャット占領世界はSLDFの管理下にあるが、予期せぬ同盟相手に関心を払っていなかったSLDFはそれらの惑星のほとんどに軍勢を置かなかった。例外はゴーストベア占領域国境に沿った世界であった。ここは交戦状態にあると考えられた。



ノヴァキャットを飼い慣らす TAMING THE NOVA CATS

 ノヴァキャットとSLDFは、エイボン、キャリペア、チューペデロ、ムーランにおいて、正面からの戦いで所有の神判を行った。他の惑星では、両者はいささか伝統から外れる手法をとった。ソウヤーにおいて、ノヴァキャットは降伏したが、挑戦にはアーケードゲーム「スレイヤー」が使われていたのだ!(公式には「航空シミュレーターの決闘」ということにされた)。一方、ビジャレッドではコイントス(ノヴァキャットは縦と言った)でけりがついた。イレースでの、歩兵ユアン・パルトローとノヴァキャットのパイロットソーラによる「スタミナのテスト」は、小柄な氏族の空兵がアルコール中毒で病院に担ぎ込まれた。イタバイアナでは、サッカーの試合で惑星の支配権が決した。第5サン・ツァン候補生チームがペナルティのあとに5-3で勝利した。




indexに戻る
inserted by FC2 system