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作成:2005/09/06
更新:2019/05/12

星間連盟防衛軍 STAR LEAGUE DEFENSE FORCES



 2784年、ケレンスキー艦隊、エクソダス。星間連盟は崩壊し、中心領域において継承権戦争が始まります。ようやく星間連盟が復活したのは、それから300年後。皮肉にも氏族――元星間連盟防衛軍(SLDF)と戦うために、王家が手を組んだのです。








星間連盟防衛軍 3062

星間連盟防衛軍は、人類の美点のすべてを具現化している。すなわち、専制と暴政に立ち向かう名誉、勇気、ねばり強さ、意志である。
          ――アレクサンドル・ケレンスキー 2753年3月6日

 第一回ホイッティング議会が招集されたのは、星間連盟を再興し、氏族への逆襲を主導するためであり、また星間連盟防衛軍(SLDF)を再設立するためのものでもあった。その究極の目標は完全に独立したSLDFを作るものであったが、まずは連盟所属国の兵士たちが集められ、星間連盟の後援の下に活動し、SLDFの規則と規範に従うこととなった。ブルドッグ作戦とサーペント機動部隊はこれを実現した。連携した兵士たちは共通の目的のために行動し、共通の指揮系統に従ったのである。







エリダニ軽機隊 Eridani light horse


伝統
 ELHは現存する中心領域で最も伝統に縛られた部隊のひとつとして知られている。最近の、星間連盟の再結成と第19機兵連隊の創設が、唯一わずかな伝統の変更である。ELH内では様々なセレモニーが行われている。


組織
 第3連隊戦闘団は、当初から諸兵科連合部隊だったが、各兵科タイプ(バトルメック、車両、気圏戦闘機、歩兵)の間には明確な区分があった。たとえばある大隊が、車両、歩兵、メックを持っていたとしても、各機体はそれぞれの隊に分かれて所属するのである。加えて、かつてのELHは軽機連隊にふさわしい、中軽量機を使っていた。

 だが、三世紀におよぶ戦役で状況は変わり、現在では、軽機隊に各兵科、重量の機体が肩を並べているのを見かけられるかもしれない。たとえば、第71軽機連隊の第17偵察大隊、第14偵察中隊、偵察小隊は、ジェンナー1機、ペガサス偵察ホバー戦車2両、1個ジャンプライフル歩兵で構成される。各連隊は、ひとつの小隊に各兵科を混ぜるのをやめて、元の隊形に戻ろうとしているのだが、いまだ混合中隊を作り、数個の混合小隊までもがある。コムガードにさえもこのような入り組んだシステムはない。にもかかわらず、軽機隊は見事に運営しており、変更する予定はない。だが、我らは星間連盟防衛軍の他部隊がもっと伝統的な組織をする必要があることを渋々ながら認めている。


訓練
 長い間、軽機隊は自前のアカデミーと訓練施設を確保し、少数のスタッフを維持し続けているのだが、スタッフの大半は、最近開学したツカイードのフォヒト軍事大学に移っている。実際、名誉なことに――そして我らの優れた訓練技術を証明したことに――元軽機隊アカデミーの校長、スコット・ハインシック大佐がフォヒト大学の学長を任されたのである。



人物

エドウィン・アミス准将
 アミスはタウラス連合の惑星ランドマークで生まれた。その短身で頑強な体格は、地球より重力の重い世界でよく見られる特徴である。アミスはその人生を通して一匹狼であった。第30ライラ防衛軍の一パイロットとして軍隊生活を始めたアミスは、第四次継承権戦時、ニューカレドニアでアンティン軍団の気圏戦闘機に撃墜され、重傷を負った。五ヶ月後に除隊となった彼はエリダニ軽機隊と契約した。

 彼は第71軽機連隊に配属され、着実に大佐の階級まで昇進した。3039年、ジャマル・フォーリー大佐(ウィンストン大佐の後継者)が戦死すると、彼は第21の指揮を引き受けることになった。アミスはハントレスの戦いでアリアナ・ウィンストン名誉将軍が死ぬまで第21を率い、全軽機隊の指揮官の座についたのである。

 アミスはいつもフレンドリーで人好きのする男である。彼は馬鹿騒ぎをする傾向があり、適切な軍の礼儀作法を欠いている。これはアントネスク大佐の嫌悪の種になっている。しかしながら、この全軽機隊のトップは自由気ままな態度と向こう見ずな勇気を自ら抑えつけているのである。それでもオープンな人柄が部下に愛されており、また葉巻を吸うのをやめようとはしていない。


サンドラ・バークレー大佐
 サンドラ・バークレー大佐は軽機隊の中でも新参者である。"ダッシング"ジョン・マカリスターの義理の娘である彼女は、NAIS軍事科学部を優等で卒業した後、エリートの第7南十字星部隊に二期勤務した。それから彼女は突然、部隊を離れることを決断し、軽機隊に入隊した。なぜ、このような格式高い部隊を辞めて傭兵に転じたかは、説明を拒否している。通常の訓練の後、彼女を驚愕させたことに、彼女はジェイドファルコンの手で崩壊した第71連隊の再建を任されたのである。

 連隊再建後、コベントリで第71が大打撃を被ったことは、バークレー大佐に動揺を与え、部下に危険な行動を取らせたがらなくなった。これは最初、ハントレスの戦いで問題を引き起こしたのだが、バークレーは落ち着きを保ち続け、悪夢を振り払ったのである。


チャールズ・アントネスク大佐
 チャールズ・アントネスクはブロムヘッドで生まれ、傭兵たちの周囲で育った。彼の父親はハンセン荒くれ機兵隊とライラ共和国の連絡士官だった。高校の卒業に際し、アントネスクはいくつかの傭兵隊に入隊志願書を送った。三つの部隊が彼を受け入れた……荒くれ機兵隊と第12スターガードとエリダニ軽機隊である。父とLCAF士官たちのアドバイスを求めた結果、アントネスクはコルチェスターに向かい、基礎訓練を始めた。そして、25年後、第151軽機連隊の指揮をとることになったのである。彼はこの部隊を中心領域で最高と考えている。アントネスクには気取ったところがあり、階級が低い者、経験に劣る者を軽く扱う。

 人付き合いに問題があるにせよ、アントネスクは優れたリーダーであり、切れる戦術家である。必要に応じ、守勢に回る時は不屈の意志を見せ、攻勢に回る時は無情となる。


イヴリン・アイヒャー大佐
 イヴリン・アイヒャーはアミスのあとを継いで第21打撃連隊の指揮をとった。彼女は部隊に順応していないが優秀な指揮官である。だが、ひとつの潜在的な欠点を持っている……自らの行動を後で後悔してしまうのである。これまでのところ、この欠点が戦場で現れたことはない。戦いが終わった後で、決断が正しかったのかと思い悩むのである。現在の彼女は連隊を指揮している。この性格が実戦で影響するかどうかはまだわからない。


ポール・カルバン大佐
 ポール・カルバンは「馬上で育った」、第二〜三世代(あるいはもっと代を重ねた)軽機隊員である。彼の母、ダーレン・オルセンは、第50重機兵隊の第1偵察中隊でフェニックスホークに乗っていた。カルバンはELHの新兵として軍隊生活を始め、すぐに大佐まで昇進し、新たに結成された第19機兵連隊の指揮権を与えられた。カルバンは優秀にして信頼できる戦士であり、軽騎兵戦略・戦術に通じている。彼の諸兵科連合戦術に対する理解は注目に値する。

 カルバンは単調な生活を行う物静かな男である。他の戦士たちと違って、彼は酒も煙草もやらない。ある意味で、カルバンは昇進に困惑を感じている。部下から高く評価されていることに大いなる誇りと名誉を感じているのだが、昇進によって部下から引き離されてしまうことを恐れているのである。



指揮・輸送部門 COMMAND AND TRANSPORT DIVISION

 エリダニ軽機隊の指揮中隊は、他部隊と違って、よく戦闘に参加する。戦場外にいるのを潔しとしないホースマンの将軍たちは、ジェニファー・ダークソン名誉将軍の時代から常に部下たちと共に戦ってきた。これによって複数の将軍が戦死した――最近のウィンストン名誉将軍の死が好例――のだが、部隊の士気を向上させ、上層部に対する信頼を上げることが、損害のリスクを上回ると指揮官たちは信じているのである。アミス准将はこれを心にとどめ、指揮中隊は聖アイヴスの紛争で積極的に行動した。


士官
 ビバリー・ヤナ少佐はサーナ至高国から徴募された人物で、軽機隊に来てわずか一年である。カペラ大連邦国による侵攻の危機が絶えず続いていることに疲れ果てたヤナは、故郷を離れ、星間連盟防衛軍に入隊した。超自然的なまでのメック技量により、彼女は第151軽機連隊に籍を得て、すぐ中隊指揮官となった。3062年の前半、アミス将軍は彼女に興味を持ち、お気に入りとした。昇進が早いことに対するやっかみは、アミスが彼女と関係を持ったかもしれないとのジョークを生み出した。だが、聖アイヴス内の世界での戦闘で、彼女は現在の地位にふさわしい価値があると証明したのである。


戦術
 2個メック小隊、1個メック・車両混合小隊、1個間接砲小隊で構成される最高司令部は、ほぼどんな状況でも他の軽機隊兵士を強化してきた。

ELH最高司令部
中隊/エリート/熱狂的
指揮官:エドウィン・アミス准将
副指揮官:ビバリー・ヤナ少佐
 軽機隊はハントレスで回収された多量の氏族装備を使えるのだが、最高司令部はその装備でアップグレードしていない。

輸送部門
拡大連隊/一般兵/熱狂的
艦隊司令官:デイヴィッド・ナターレ准提督
 航宙艦15隻、降下船31隻の全艦隊を指揮しているデイヴィッド・ナターレ――軽機隊内では単に「ザ・キャプテン」と呼ばれる――は、中心領域で最大の艦隊のひとつを指揮している。軽機隊がどこに配備されようとも、すべての降下船と航宙艦の艦長は、ナターレに直接報告を行う。彼はサーペント機動部隊と共にハントレスに同行したが、それほどの指揮権は持っていなかった。彼は軽機隊が戦艦を捕獲できなかったことについて、幾度か遺憾の意を述べている。

パスファインダーズ
中隊/古参兵/熱狂的
歩兵隊長:ウィリアム・カイル大尉
 パスファインダーズはエリダニ軽機隊で最も新しい部隊にして最も論争を呼んでいる部隊である。ハントレスの戦いで、ドラコエリートストライクチーム(DEST)とラビッド・フォックス・チームの有用性に感銘を受けたウィンストン将軍は、中心領域から離れる前に、ディファイアンスから暗号メッセージを、軽機隊訓練所の共同所長、グレゴリー・オストロフとエフレイム・コルムナに送った。特殊な目的のための小部隊を作るためである。だが、軽機隊員の多くは、このような部隊を政府による秘密のテロリズムと同一視し、軽機隊は彼らを訓練、採用すべきでないと考えていた。この部隊が引き起こしている緊張を緩和するため――ELHの隊員は彼らをブラックハーツと呼び始めていた――エドウィン・アミス准将は彼らを直接の指揮下に置き、民間人に対しては使わないと断固として宣言したのである。パスファインダーズが戦友たちの敵意を逃れられるかはまだわからない。彼らは最近グレイデス軍団より購入したグレイデス軽偵察アーマーを装備している。



第71軽機連隊:白馬連隊

 第71軽機隊は、30年で壊滅2度、全滅2度を記録した中心領域でも数少ない部隊という、ありがたくない名誉を持っている。

 3039年戦争で、第71軽機隊は連合軍の逆侵攻によって一掃された。再建された連隊は、3053年、ジェイドファルコンの手により惑星キクユで壊滅した。軽機隊は数年かけて第71を再建したが、3058年にコベントリ遠征軍に参加して、重い損害を被っただけだった。またも再建された第71は、3060年、サーペント機動部隊の一部として、すさまじい被害を出した。

 ほとんどの連隊は、最初に全滅した段階で解散してしまうものだが、エリダニ軽機隊は伝統を放棄することはなかった。SLDFに入隊した大量の新兵の助けを借りて再建中の第71は、新隊員をひとつにまとめようとしているところである。それが実現できるか、「第71の呪い」を払拭出来るかはこれからの話だ。


士官
 コベントリでの激しい戦いは、サンドラ・バークレー大佐の自信をうち砕き、ハントレス戦役でトラブルを引き起こした。彼女は、この遠く離れた世界の血塗られた戦場を生き抜いたことで、ようやく自らにかけられた呪いを乗り越えることが出来たのである。彼女は、第71の輝かしい歴史と同等の戦果を上げることを自分自身の目標に定めた。第71で最も有名なのは、アマリス軍を突破してカーヴァーVに補給を行ったことである。これによって星間連盟海兵隊の生き残りたちは、2773年に世界が解放されるまで持ちこたえることが出来たのだ。

 テレマコス・ジーク・ジュニア大尉(第12歩兵中隊、キングスピン、指揮官)は、数多の戦いを経験し、ハントレス戦で生き残った数少ない歩兵士官である。対メック戦術に通じていることから、彼の中隊は、軽機隊全歩兵隊がバトルアーマーを再装備する場合に備え、中心領域バトルアーマーの2個分隊をテストしているところである。


戦術
 第71が中心としている戦術は、他の軽機隊連隊と同じものだ――スピードである。素早く攻撃して、戦いが激しいものとなる前に撤退する彼らは、敵を不安定な状態とし、指揮系統と補給線を混乱させるのと当時に、敵の士気を下げるのである。


第71軽機隊(白馬連隊)
連隊(定員割れ)/古参兵/疑問
指揮官:サンドラ・バークレー大佐
副指揮官:ルーベン・アヴィラ少佐
第11偵察大隊:キャシー・リッケン少佐
第82重機兵大隊:ロン・ジェンキンス少佐
第17偵察大隊:ジェームズ・フォッシル少佐
 他のエリダニ軽機隊と同じように、第71は諸兵科連合部隊である。星間連盟時代の簡潔な組織から進化し、車両、歩兵、気圏戦闘機、メックをひとつに統合している。だが、諸兵科連合の使用は、コムガードの例で見られるように、圧倒的な効果をもたらすのである。



第151軽機連隊:黒馬連隊

 第151軽機連隊は、第8偵察大隊(サイクロンズ)と第50重機兵大隊(血まみれ50)が所属する連隊である。伝統は2798年に生まれた。当時、ドラコ連合の世界だったセンダイで、この2個大隊がエリダニ軽機隊の全扶養家族を守ったのである。

 この年、軽機隊はドラコ連合との契約を終えたところだった。これに怒ったセンダイの行政官は2個大隊の家族を捕らえ、人質にとり、エリダニ軽機隊に降伏を迫った。期限が過ぎると、行政官はすぐさま2000人の家族を全員処刑した。

 激怒した第8、第50大隊は惑星に降り立った。政府官僚全員と連合のメックが狩り尽くされ、抹殺された後で、ようやく彼らは惑星を離れたのである。2部隊の士官たちは命令なしに行動したのだが、ブラッドレー大佐(軽機隊指揮官)は辞職願いを拒否した。この日、両大隊はそのニックネームを得たのである。

 第151は継承権戦争の重要な戦争に参加してきた――「黒馬連隊」のニックネームを得ることになった2900年の惑星ラダラーはそのひとつ――のだが、軽機隊の扶養家族を守る以上の名誉を得ることはなかったのである。

 第151軽機隊の指揮官たちの一部は、ドラコ連合の惑星ディーロンに移動するというアミス将軍の決定に対し、諸手をあげて賛成することが出来なかった。連合の世界で第8、第50大隊の扶養家族が虐殺されたことを考えると、第151の隊員と地元DCMS部隊の兵士たちとのあいだで幾度か喧嘩が起きているのは驚くに値しないだろう。軽機隊の家族が第71に守られてディーロンにやってきた時には、不満はさらにつのった。この役割は、常に第50重機兵隊、第8偵察大隊に任されてきたものだったからだ。だが、この件は、聖アイヴス紛争の数多の戦いにおいて、彼らの戦いぶりに影響を与えなかった。


士官
 第50重機兵大隊(血まみれ50)の指揮官、ケント・フェアファクス少佐は、ディーロンへの移動に最も声高な反対をしている。彼は目に付くドラコ人をすべて嫌い、それを隠そうともしない。

 第8偵察大隊指揮官、ガリー・リビック少佐はフェアファクス少佐と同じ感情を共有しているが、容易に連合嫌いを隠してみせる。

 両士官は、規律を乱したとして、数度の戒告を受けている


戦術
 軽機隊の扶養家族を守るというその役割から、第151は固定目標を防衛する特殊な戦略を開発している。そのひとつは、全人員と重要な機材を密かに別の場所にすべて移動させ、元の目標を全部隊で守るというものである。それから第151は撤退を装い、敵部隊の突破を許す。同時に2個部隊を両側面に送り込み、敵部隊の包囲を完了するのである。雇用主の中には、施設の被害に文句を言う者がいるかもしれないが、重要な部分は完全に残されているのである。


第151軽機隊(黒馬連隊)
混合連隊(定員割れ)/古参兵/疑問
指揮官:チャールズ・アントネスク大佐
副指揮官:チャン・シ・コー
第50重機兵大隊:ケント・フェアファクス少佐
第8偵察大隊:ガリー・リビック少佐
第6偵察大隊:ベネデット・ポーリス少佐
 ディーロンへの移動に対して、小規模だが断固とした反対があったことから、第151軽機隊は現在、忠誠に疑問のある部隊としてリストされている。にもかかわらず、第151は強力な連隊で、六ヶ月以内に完全に戦力回復する予定である。



第21打撃連隊:四騎士

 無数の戦いを繰り広げてきたにもかかわらず、第21打撃連隊がニックネームを賜ったのはつい最近のこと、20年間エドウィン・アミスの指揮下に入った後でのことだった。常に軍の流儀、教義を馬鹿にしてきたアミスは、3039年戦争の終結後からハントレス戦役まで、第21を率いてきた。長らく衝動的な一人の隊長の指揮下にあったことから、部隊は通常の戦術にほとんど敬意を払わず、まったく使わないようになっている。この「向こう見ず」な態度から、第151軽機連隊のチャールズ・アントネスク大佐(軍隊の流儀にうるさい)は、黙示録にあやかって「四騎士」のニックネームをつけた。この名称は彼らにぴったりのもので、第21は誇りを持って使っている。

 彼らの実力を妨げるものは存在しない。ハントレス戦はさておき、第21で最も知られているのは、キクユの第71軽機隊壊滅に対するジェイドファルコンへの報復である。技術的にひどく劣っていたにもかかわらず、第21は、3053年後半から3054年前半にかけて、ジェイドファルコン国境に激しい襲撃を仕掛けた。この過程で1個大隊が失われたのだが、第21は非正統的な戦略が氏族技術に勝てることを証明して見せたのである。


士官
 イヴリン・アイヒャー大佐はまだ新しい地位になじんでいない。前任者より控えめで、自信を欠く彼女は、ゆっくりと第21の手綱をとっているところである。これは変化を嫌う部下たちの怒りを買っている。彼女が連隊の熱意を抑制できるか、あるいは彼女が隊員の望む通りの無鉄砲になるか、いずれ明らかになるだろう。
 一方で、ステイシー・ヴォーリス大尉(第3打撃大隊、第85中隊指揮官)は、部隊の歴史と同じく無鉄砲である。STU-5Kスツーカに乗る彼女は、中隊を率いて、ハントレスで氏族のオムニ戦闘機に対し驚くべき勝利を達成した。彼女はスツーカを酷使しすぎて幾度か墜落したが、愛する戦闘機を手放すのを拒否している。彼女はアイヒャー大佐の友人である。連隊員の多くは、この恐れ知らずのエースが大佐に「分別を教えてやる」ことを望んでいる。


戦術
 第21が好む戦術は存在しない。まとまった戦闘計画を欠いていることは、敵を混乱させる。部隊がランダムに交替する、攻撃し撤退する、奇妙な方向からの攻撃を仕掛ける、これらはすべて、第21が意図して生み出した混乱をさらに大きくするのである。


第21打撃連隊(四騎士)
混合連隊(定数割れ)/古参兵/信頼できる
指揮官:イヴリン・アイヒャー大佐
副指揮官:フィル・パークス少佐
第3打撃大隊:リアンナ・アームストロング少佐
第5打撃大隊:アントニー・ヴィティナ少佐
第7打撃大隊:ジョナサン・フィールズ少佐
 気圏戦闘機、メック、車両、歩兵の寄せ集めなのだが、第21打撃連隊は他の軽機隊連隊よりも気圏戦闘機の割合が多い。これにより、第21は連続した爆撃、機銃掃射でさらなる破壊をもたらすことができる。



第19機兵連隊:不死鳥馬

 2771年の3月、アミティでステファン・アマリスの軍勢がエリダニ軽機隊の第19打撃連隊を殲滅した。地球が奪還され、各王家が星間連盟評議会の支配権を争い、評議会が解散し、ケレンスキーがエグゾダスしたのに伴い、混乱の中で失われた1個連隊を再建するのは難しくなった。そして軽機隊が傭兵としての生活を始めると、今度は純粋にその資源がなかったのである。

 3061年3月、エドウィン・アミス准将は、新しい連隊を作り、この290年ではじめて軽機隊を元の4個連隊にまで戻すことに決めた。第19打撃を再生させるつもりはなかったのだが、新連隊を遙か昔の姉妹連隊を結びつけるのは重要であると感じた。そうして、彼は新部隊の呼称を第19機兵連隊とし、不死鳥馬(Equine Phoenix)のあだ名をつけたのである。伝承にある灰から生まれた不死鳥のように、第19機兵連隊は第19打撃の伝統を名誉に思うだろう。

 部隊創設から一年経っていないのだが、第19は激しい訓練を行っている。ホースメンの多くは、新連隊を誇っているのだが、彼らを聖アイヴス協定での戦役に投入するつもりであるとアミス将軍が発表すると、衝撃を受けた。しかしながら、士官の多くが戦闘で鍛えられた部隊から徴募されていたので、第19はすぐにも、危険な敵であることと、軽機隊の一員としての価値があることを実証してみせたのである。


士官
 ティ・ヴァン・トラーン少佐はつい最近、軽機隊員となったのだが、彼こそが第19が戦場で大暴れした要因のひとつとなっている。元々はケンタウリ第21槍機兵隊第3大隊の指揮官だったトラーン少佐は、指揮官のエヴェレナ・ハスケル大佐といさかいを起こし、アウトリーチへと向かった。アウトリーチにいた軽機隊の連絡士官は相手が誰かを知るとすぐさまELH最高司令部に連絡した。軽機隊員たちは、このような尊敬され名誉ある部隊の指揮官と契約できたのを喜んだのだった。彼は即座に第2打撃大隊の指揮官となると同時に、第19の副指揮官をつとめ、カルバン大佐の親友となった。


戦術
 諸兵科連合部隊の中でも独自の編成を持つ第19は、巧妙に仕組まれた歩兵の罠に敵を引き込むためにメックを使い始めた。集団攻撃、膝関節攻撃を仕掛けるか、落とし穴、インフェルノを使う第19はメックより上に歩兵が立っているように見えることで有名になった。


第19機兵連隊(不死鳥馬)
2個大隊/一般兵/狂信的
指揮官:ポール・カルバン大佐
副指揮官:ティ・ヴァン・トラーン少佐
第2打撃大隊:ティ・ヴァン・トラーン少佐
第4打撃大隊:カール・ウェリントン少佐
 定数割れしているが、第19機兵連隊は歩兵が中心である。トラーン少佐は諸兵科連合戦術に対する経験をさほど持っていないのだが、カルバン大佐の監視下で、見る間に習得している。











親衛ブラックウォッチ連隊 Royal Black Watch Regiment



訓練
 ブラックウォッチは主に他のSLDF部隊から募兵を行っているが、SLDF指揮官(現在はヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン戦司教)の許可を受け、必要な入隊試験を通った者なら、中心領域のどの部隊からでも募兵を行えるようになった。

 ブラックウォッチの各隊員は身を投げて第一君主を守る必要があるので、新兵に課せられる厳格な身辺調査と戦闘試験はしばらくのあいだ続く。このように長く時間がかかることから、ブラックウォッチの拡大ペースはゆるやかなもので、大隊サイズに到達したのみである。

 にもかかわらず、ブラックウォッチは中心領域で最高の部類に入るメック戦士を揃え、ゲンヨウシャ、中心領域騎士団、ウルフ竜機兵団などの部隊と肩を並べる。だが、ブラックウォッチは現状に満足しておらず、隊員を交替でフォヒト軍事大学のガンスリンガープログラム(一年間)に送り始めたところだ。



人物

ニール・キャンベル大佐
 ニール・キャンベル大佐は親衛ブラックウォッチ連隊の現指揮官である。星間連盟の昔話を聞きながら育ったキャンベルはその理想を守って生きなければならないと思うようになった。十代にさしかかると、彼は個人的な誓いを立てた……中心領域の誰もが星間連盟は消滅したと考えようとも、彼は行動によって星間連盟を生かし続けると。

 ノースウィンドのハイランダー軍学校卒業に際して、キャンベルは第1カーニーハイランダーズに配属された。最初の2年の任期で、彼は優れたメック戦士であり、突出したリーダーであることを証明してみせた。セン大佐はすぐに彼を信頼するようになり、少佐の階級を与え、第3大隊の指揮を任せた。同時期、ハイランダーズ内の小規模なグループが、彼の星間連盟の理想への傾倒に気づき、ブラックウォッチに関して教え、すぐ彼を隊員として迎えた。そのリーダーシップと星間連盟への傾倒により、彼は再生したブラックウォッチのリーダーとなり、輝かしい地位である大尉への降格を喜んで受け入れたのである。

 部隊をハントレスに率いたキャンベルは、第一君主の前に現れ、大佐の階級を授かった。これは元の連隊サイズに戻るというブラックウォッチの目標を表したのである。

 第一君主セオドア・クリタの許可を得て、キャンベル大佐は一年間任務を離れ、3062年1月1日、フォヒト軍事大学のガンスリンガープログラムに入学した。彼は合格した最初の志願者だった。

 平均よりやや背の低いキャンベル大佐は赤毛で、スコットランドの血を引くことを証明する頑健な体格である。


アネット・マクヘンリー少佐
 アネット・マクヘンリー少佐はハントレスから生還した三人のウォッチ隊員の一人で、キャンベル大佐が帰還して以降、ウォッチの指揮をとっている。

 第2カーニーハイランダーズ隊員の娘なのだが、若き頃のマクヘンリーは軍隊での生活にほとんど興味を持たなかった。彼女は部隊から逃げ出し、世界から世界へと放浪した。

 第四次継承権戦争が勃発した時、マクヘンリーは世界を飛び回る生活を二年間続けていた。ノースウィンドハイランダーズが故郷に戻ったと聞いてショックを受けた彼女は、自身も帰還するべき時が来たと考えた。ノースウィンドについた彼女は、移民したスコットランドのハイランダーたちを魅了したこの世界と恋に落ちた。さらに衝撃的だったのが、ハイランダーズが彼女を放蕩娘のように受け入れたことである。

 完全に変わった彼女はノースウィンド軍学校に入学し、父のように第2カーニーハイランダーズの一員となった。およそ20年後、若きニール・キャンベルは彼女をブラックウォッチに迎え入れたのだった。



親衛ブラックウォッチ連隊

 現在のブラックウォッチ連隊が任務に就いてから数年しか経っていないが、その歴史は中心領域で無比のものである。ウォッチは全ての王家、傭兵連隊から尊敬されている。しかし、ブラックウォッチと、各王家指導者の護衛部隊との摩擦は不可避なものだ――カペラ首相のデスコマンドとの間で起きた事件のように。緊張を沈めるため、これはキャンベル大佐とヒュン・ツァイ上校のナイフ対決に行き着いたのである――両者が同時に血を流し、引き分けに終わった。似たようなことが、セオドア・クリタ大統領の護衛、オトモとの間でも起きた。これまでのところ、決闘は起きていないが、避けられないように見える。火に油を注ぐのが、ガンスリンガープログラムの卒業生たちがウォッチに帰っていることである。第一君主セオドア・クリタが推奨しようとしまいと、二度目の秘匿戦争の機会が生まれている。

 氏族はブラックウォッチのことを、真の星間連盟の不快な猿まねに過ぎないと考えている。このことから、戦場でウォッチと相まみえた氏族の大半は、怒り狂うことになる。ハントレスでスモークジャガーの戦士と戦うたびにこのようなことが発生した。


士官
 タカシ・イネガ大尉が、ブラックウォッチ第3中隊の指揮を任されたのはつい最近のことだ。イネガは第一君主セオドア・クリタに直接コンタクトを取り、ブラックウォッチに加われるよう、第2ヴェガ軍団からの解任を要請した。突然のことではあったが、クリタは彼の望みを叶えてやった。ルシエンのDCMS部隊(オトモが筆頭)とブラックウォッチの間にあった緊張緩和を期待していたのである。イネガは、他の志願者と同じように、すべてのテストをパスせねばならなかった。だが、アネット・マクヘンリー少佐は、彼の成績と人柄に感銘を受け、第3中隊指揮官の座につけたのだった。


戦術
 ブラックウォッチ連隊は、中心領域最高のメック戦士が集まっている事実を信頼している。優れた操縦、射撃の優位を用い、単純に敵を機動と砲撃で圧倒する。


親衛ブラックウォッチ連隊
バトルメック大隊/エリート/熱狂的
指揮官:ニール・キャンベル大佐
副指揮官:アネット・マクヘンリー少佐(現場指揮官)
副指揮官:ジェフリー・モーガン大尉(現場副指揮官)
 虚勢と呼ぶ者もいるが、ブラックウォッチはそのメックに氏族製の技術を一片たりとも使っていない。彼らは氏族を呪詛のようなものと考えており、優れた腕前が、技術上の優位をうち消すと信じている。それは事実となりがちなのである。だが、彼らは中心領域で入手出来る最高のメックを持っており、兵士は好きな機体を選択可能である――SLDFは中心領域、辺境で生産されているメックのほぼすべてを購入出来るのだ。
 加えて、タカシ・イネガ大尉の中隊は、ドラコ連合製の有用なC3コンピューターシステムを使っている(他の部隊ではまだである)。全第3中隊はC3指揮システムを搭載している――これらのC3スレイブユニットを装備していなかったメックは改造された。











第1親衛バトルメック連隊(モーガン・ライオンズ) 1ST ROYAL BATTLEMECH REGIMENT(MORGAN'S LION)

TO: ヴィクター・シュタイナー・ダヴィオン戦司教
FROM: アンドリュー・レッドバーン大佐、第1親衛バトルメック連隊(モーガン・ライオンズ)指揮官

ハロー、ヴィクター

 あなたの下に戻れたことをうれしく思っております。この数ヶ月、やるべきことが多すぎて、ほとんど寝る時間がなく、副指揮官に強制された時だけ食事をとっております。第1親衛バトルメック連隊(モーガン・ライオンズ)と命名した新連隊――星間連盟の伝統とサーペント機動部隊の記憶より――は必要な訓練を行っているところです。コムスターのインベーダー銀河隊を相手にした演習で、彼らの首をとってやりました。私たちはそれを誇りすぎてはいけないことを知っています……その前に二回やられているからです。しかし、これは前進なのです。

 添付いたしましたのは、あなたが要求なさった戦闘準備状況です。私としては、部隊名をすぐ第1親衛バトルメック師団に変えないことをお願いするまでです。

 最後になりますが、私にとって悩ましいのは、部隊名にウィンストン将軍でなくモーガンを選んだことです。しかし、彼のカリスマ的なリーダーシップがなければ、訓練を生き残り、1000光年におよぶ旅を行い、その後、ハントレスで戦うのは不可能だったでしょう。ですが、恐れながら、次のSLDF連隊には、アリアナ・ウィンストンのすばらしいリーダーシップとスモークジャガーを倒した自己犠牲に敬意を表して、彼女の名を使うことを提案します。

 次の夕食のお誘いには行けないかもしれません。

 敬具

――アンドリュー・レッドバーン大佐、第1親衛バトルメック連隊


歴史
 親衛バトルメック連隊の歴史は起伏に富んでいても短いものである。戦士たちの大部分は、解散した第1カシル槍機兵隊から来ているのだが、ハントレスで戦ったほぼすべての部隊(第11ライラ防衛軍、第4竜機兵団、キングストン軍団)とのつながりがある。我が隊には、マクロード連隊のメック戦士2名、中心領域騎士団のメック戦士1名さえもがいる。コムガード第2師団、エリダニ軽機隊、特殊部隊だけが我が隊に入隊していない。

 この六ヶ月、連隊の全隊員が自分たちの部隊を作るべく奮闘した。最近の訓練で、インベーダー銀河隊に勝利し、我らは最初の一歩を達成した。六ヶ月以内に、実戦に出る準備が出来ると私は信じている。


訓練
 第1親衛バトルメック連隊の訓練は猛烈である。ほぼ三世紀ぶりに作られた最初の「新」SLDF連隊になるため、部隊の全隊員は、中心領域で最高の部隊であるのを証明し、新星間連盟に誇りをもたらす必要がある。

 従って、彼らは可能な限り最高の部隊を相手に訓練をしている……エリダニ軽機隊、コムガードの数師団、ノヴァキャットの数星団隊である。聖アイヴス協定に配備される前は、特にキャットのタウ銀河隊と訓練を重ねていた。第1はイザナギ・ウォリアーズ、第1ゲンヨウシャとさえも演習場に出た。彼らは連合の両部隊に負けたのだが、これによって鼓舞され、インベーダー銀河隊に勝った直接の要因になったのである。

 第1は全王家部隊との演習の許可を求めているが、これまでのところ拒否されている。


募兵
 サーペント機動部隊の生存者が第1の中枢を占めているのだが、部隊は一部の新隊員を受け入れている。たいていはSLDFの認可した訓練校の卒業生である。

 第1親衛バトルメック連隊の創設を頼まれた時、レッドバーン大佐は長い時間をかけて旧星間連盟の訓練・徴募要項を研究した。募兵が始まると、彼はSLDFが長年使っていたプログラムを実施した。入隊を許された若干数は軍曹の階級を与えられることとなった。訓練校の卒業生が軍曹の階級で任官するのは珍しいが、旧SLDFが士官候補生にしていたことの反映である。これはまた、通例なら新兵のはずの中尉が古参兵のように戦うというSLDFの神秘を生み出すことになるだろう。


伝統
 このような若い部隊には珍しいことであるが、レッドバーン大佐は、ばらばらの隊員たちをまとめるために、第1が固有の伝統を持つのが重要だと感じている。ノヴァキャット氏族のタウ銀河隊を尊敬するようになった第1は、ノヴァキャットの慣習である戦闘年代記に影響を受けた儀式を発展させ始めている。年代記より遙かに非公式的なものであるが、第1の隊員たちは月に一度集まって、ハントレスで失われた戦友たちを追悼し、「訓練」の成果を自慢し合っている。この伝統は第1をまとまった部隊にするための長い道のりに向かっている。



人物

アンドリュー・レッドバーン大佐
 アンドリュー・レッドバーン大佐は3024年にカペラ境界域、ニューシルティスのウォリアーズホールを卒業し、すぐさまハンス・ダヴィオン国王直々のプロジェクトである候補生訓練隊に配属された。この訓練隊は候補生の境界地方で訓練を受けたメック戦士によって結成され、人員を配置された。第四次継承権戦争が始まると、レッドバーンは候補生訓練隊デルタ中隊の指揮をとった。正規部隊は公然と候補生たちを馬鹿にしていたが、レッドバーン率いるデルタ中隊が勝てそうもない敵を相手に勝利を重ねると、このような態度は変わっていったのだった。この戦争の一局面において、彼は少佐に昇進した。彼の中隊は他の似たような部隊と合併し、モーガン・ハセク=ダヴィオン指揮の下、第1カシル槍機兵隊となったのである。

 モーガンが連邦=共和国元帥に昇進すると、レッドバーンは准将に昇進し、第1カシル槍機兵隊の指揮権を与えられた。レッドバーンは氏族侵攻中、数多の成功した作戦の計画に寄与したのだった。

 ハントレスにおいて、レッドバーンの慧眼と意志の力が数個連隊を崩壊から救った。さらに、彼はストラナメクティに移動して、第1カシル槍機兵隊の1個小隊を率い、第10ライラ防衛軍とヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンと共に、スモークジャガーとの大拒絶を戦った。

 中心領域への帰還に際し、レッドバーンはキャサリンに仕えることができず、AFFCを除隊した。彼はSLDFの新部隊を作るという任務を引き受けた――それに伴い階級を降格した。カシル槍機兵隊の生存者たちの大半と、ハントレスの地獄を生き残った他部隊の生存者たちの多くが彼に従うと、レッドバーンは驚いたのだった。



第1親衛バトルメック連隊(モーガン・ライオンズ)

 今年の2月、第1親衛バトルメック連隊はコムガードのインベーダー銀河隊を相手に三度の演習を行った。元戦司教アナスタシウス・フォヒトは、氏族との戦い方を中心領域の兵士たちに教えるため、氏族の編成を真似てインベーダー銀河隊を作り上げた。インベーダー銀河隊はほぼ氏族メックを使ってないのだが、コムガードでも最高水準の装備を持っている。このような相手を得たレッドバーン大佐は時間を無駄にせず、新部隊をインベーダー銀河隊で試すため、一連の演習を行った。3061年に二回敗北した第1は、戦場での有効性をあげようと、他部隊と演習場での交戦を行った。コムガード部隊を破ったという自信を得て、第1はインベーダー銀河隊に再び立ち向かった。

 第1を真似るかのように、インベーダー銀河隊はまず長距離砲火を交わしたが、それからデビルズバス……沸騰する泥の蒸気と切り立った花崗岩の酷い地域に撤退していった。インベーダー銀河隊は、ツカイード戦の頂点で第6師団が達成したスティールヴァイパー氏族第1ヴァイパーガードに対する勝利を再現しようと試みたようだ。

 だが、レッドバーン大佐と第1の隊員たちは、六ヶ月かけてツカイードを研究しており、デビルズバスを安全にくぐり抜けられる道をすべて知っていたのである。演習終了まで12時間が経過したが、第1が勝利を手にした。

 第1親衛バトルメック連隊の記章としてサーペント機動部隊の記章が正式に採用された。キャメロンスターに絡みつく、牙をむき出しにした黒蛇である。


士官
 かつて第4竜機兵団の大佐(Oveste)だったカール・スレイプネス少佐は、第2大隊の指揮官である。アナスタシウス・フォヒトは部隊壊滅後に第4竜機兵団の再建を命じたのだが、残った戦士たちはその申し出を辞退した。めけ目のない戦術家である彼の外交手腕は、自由ラサルハグ共和国で高まりつつある反コムスター的な動きを抑えるのに役立っている。

 アナリーズ・プロクター少佐は元々、第1中心領域騎士団の一員で、FLWMを辞めて新SLDF連隊に入隊し上官とレッドバーン大佐を驚かせた。その理由については何も語っていないが、新たに結成された連隊の異質な隊員たちを仲立ちするその能力によって、すぐさま第3大隊の指揮を任されたのだった。


戦術
 第1親衛バトルメック連隊の戦術は中心領域部隊の戦闘スタイル――集中砲火――を統合することに主眼を置き、氏族メックの技術的優位を使う。長射程を持つモーガン・ライオンズは1個小隊以上で1機の目標を狙い、その間にゆっくりと後退していく。敵の射程を逃れつつ、敵を射程に入れ続けるようにするのである。


第1親衛バトルメック連隊(モーガン・ライオンズ)
連隊/エリート/熱狂的
指揮官/第1大隊:アンドリュー・レッドバーン大佐
副指揮官:ピーター・ココル大尉
第2大隊:カール・スレイプネス少佐
第3大隊:アナリーズ・プロクター少佐
 ハントレスで得た回収品があるので、第1親衛バトルメック連隊はすべて氏族メックで構成される。だが、オムニメックは20%以下で、そのすべてが各大隊の指揮中隊に配備されている。
















星間連盟防衛軍 3067


TO:ホヒロ・クリタ国王、星間連盟防衛軍将軍
FROM:アンドリュー・レッドバーン大佐、第1親衛バトルメック連隊(モーガン・ライオン)指揮官

ホヒロサマへ

 依頼されていた、第4回星間連盟評議会用の準備レポートを添付いたしました。部隊招集の日が来ても――ウルフ氏族がツカイードの停戦に縛られなくるのは時間の問題――我らには準備ができています。ゴーストベア、ジェイドファルコンを撃退するのにSLDFが使われなかったことに、市民は失望しております。星間連盟が安っぽい政治的策略以上のものであることを、我らは見せるつもりです。それがいったい何を意味するかを、見せたいと思っています。

 昨年、私はルシエンの夏を本当にエンジョイいたしました。次の訪問を楽しみにしています(私はシンジローにシミュレーターで「ダヴィオンのケツを蹴る」チャンスを与えると約束しました。クリタの子どもたちは大人に敬意を払うことを教えられているのでしょうか?)。



血戦 WAR TO THE KNIFE

 3062年、第151軽機連隊と第19重機兵連隊がミロスに配備された。カペラの猛攻によって陥落した、聖アイヴス協定の世界である。新たに選出された第一君主セオドア・クリタの命令は、いたってシンプルだった――平和維持軍となり、カペラによる星間連盟加盟国への進撃にブレーキをかけろというものだ。

 惑星降下は、予想より難しいと判明した。軽機隊の小型艦艇部隊は、星系内に降下船を展開する前に、カペラの戦艦〈エリアス・ジュン〉の手によってキタリーへと撤退させられたのだ。けんか早い巡洋艦がいなくなると、平和維持軍はミロスにそっと戻り、ようやく仕事場にたどり着き、テロリストの攻撃と市民の反感(カペラが後押ししたもの)に歓迎された。軽機隊は守るはずだったまさにその市民に包囲されていることに気がついたのだ。現地のゲリラによる狙撃、襲撃と、「侵略者」に対するデモで、軽機隊は精神を摩耗したが、腕が鈍ることはなかった。

 いらだたせられた数週間後に、マッカロン装甲機兵隊の第2連隊がようやく軽機隊に攻撃を仕掛けた。ELHの兵士たちは、やっと普通の敵と戦えてほとんど安心した。第2MACは軽機隊に重ダメージをあたえられ、追い払われた。だが、軽機隊を勝利を宣言できなかった。混乱の中で破壊工作員が軍事境界線に浸透し、地上の降下船数隻に爆発物を仕掛けたのである。

 そのあいだ、第一君主クリタとSLDF指揮官ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは、他の評議会員から星間連盟兵を撤退させるよう圧力を受けていた。コムスターの戦艦が、軽機隊の撤退を援護するために派遣されたのだった。



待つ者たち THOSE WHO STAND AND WAIT

 星間連盟所属国家が、3062年と3064年、別個の氏族に攻撃を受けたとき、中心領域はそれが氏族侵攻の始まりかどうか確認するのに歯がゆい思いで待った。幸運にも氏族は大拒絶の結果を甘受し、氏族同士の連携された強襲は実現しなかった。ドラコ連合もライラ同盟も、星間連盟の助けを求めず、SLDF軍は配備されなかった。ノヴァキャットがゴーストベアに立ち向かったのは、連合内にある保有地が攻撃を受けたからだ。ゴーストベアとジェイドファルコンは最終的に撃退されたが、星間連盟を守ると誓った者たちにとっては、ストレスの溜まる時期だったのである。



新メンバー NEW MEMBERS

 連邦=共和国内戦、それにドラコ境界域とクリタの私的な戦争で、第三回星間連盟評議会は中立を保つのが難しくなった。最終的に自由世界同盟がホスト役を買って出た。

 この会では、コムスター、ワード・オブ・ブレイク、それにタウラス連合が星間連盟新メンバーとして推薦された。サン=ツー・リャオ首相のタウラス推薦の動きは、彼がカノープス統一政体を支持すると予想していた者たちを驚かせた。3勢力の推薦は受け入れられ、新メンバーは3年の試験期間をほぼ終わらせた。とくに問題は浮上せず、今年の評議会で投票権のあるメンバーになることが予期される。

 第一君主になろうとしたカトリーナ・シュタイナー=ダヴィオンは、再び兄によって妨げられた。妹が人殺しであると糾弾したヴィクターは、その座にふさわしくないと疑問を呈した。結局、自由ラサルハグ共和国選定公クリスチャン・マンスドッターが、候補者となることで妥協が図られたのである。



軍事オリンピック Martial Olympiad

 氏族による脅威が続いていることを認識している星間連盟評議会は、SLDF指揮官ホヒロ・クリタによる提案を受けた。それは、所属国が訓練と演習に参加し、技術を磨き、王家間の協調を促進するというものだった。準備が進むうちに、このアイディアは成長し、中心領域国家群は初代星間連盟の軍事オリンピックを復活させた。ウルフ竜機兵団はアウトリーチ(元のオリンピックが行われた)での開催を断り、ツカイードでコムスターが主催することになった。

 3067年の3ヶ月間、疑似戦闘が戦場を駆けめぐった。そこは3052年に氏族が撃破された土地だった。誰をも驚かせたことに、カペラ大連邦国の赤色槍機兵隊がタイトルをもぎ取ったのである。



輝ける未来 GOLDEN FUTURE

 過去5年の大規模な紛争はようやく解決し、少なくとも中心領域は平和と安全の利益を受け取るチャンスがあるかもしれない。それは星間連盟が守ろうとしているものだ。氏族の脅威が排除されたとはとても言えないが、氏族の侵攻派・守護派の哲学は、徐々に拡大主義と孤立主義の派閥にとって代わりつつある。どんな未来があったとしても、星間連盟防衛軍は、連盟が続く限り、守る準備ができている。



親衛ブラックウォッチ連隊 ROYAL BLACK WATCH REGIMENT

 ブラックウォッチは現在、オレステスに駐留しており、第一君主クリスチャン・マンスドッターのボディーガードとしての役割を続けている。氏族技術の使用はまだ避けているが、旧星間連盟のデザインを熱狂的に受け入れている。ブラックウォッチのメックの多くは、ターゲティング・コンピュータ、ロータリー・オートキャノン、ヘビー・ガウスライフルのような中心領域の新技術を使っている。この有名な部隊が拡大されるとの話もあるが、適正のある戦士が不足しており、ブラックウォッチは大隊戦力にとどまっている。



第1親衛バトルメック連隊 FIRST ROYAL BATTLEMECH REGIMENT

 ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンが最終的に運命を受け入れ、妹を権力の座から追い払うと宣言したとき、戦司教の地位は別として、SLDF指揮官を辞めねばならなかった。SLDFの兵士たちが参加したがっていることは知っていたが、氏族の脅威が残るなかで、駆け出しの軍隊から人員を奪うのを避けたのである。SLDFの中立性を傷つけたくもなかった。スモークジャガーへの勝利を率いたことで兵士たちにアピールしていたヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは、第1親衛バトルメック連隊(モーガン・ライオンとしても知られる)にSLDF加入時の誓いを守るよう求めたのである。兵士の一部は故郷を守るべきと感じていたが、大半は星間連盟の召集を固持したのである。

 厳しい訓練プログラムが、連隊の技量を保っていることに、敵はツカイードの訓練場でしばしば気づくことになる。コムガード、ノヴァキャット氏族、放浪ウルフ氏族との兵士交換プログラムは、相互の尊敬と協力を促進させた。



エリダニ軽機旅団 ERIDANI LIGHT HORSE BRIGADE

 ディーロンの修繕されたSLDF城塞は、軽機隊の本拠となった。伝説的な指揮官にちなんでフォート・ウィンストンと名付けられたこの基地は、部隊家族の住宅にもなっている。近隣のアルディンガ住人は当初、元傭兵隊が"侵攻した"と疑いの目を抱いており、ELHの兵士も同様に過去の行いから連合に注意を払っていた。だが、障害は取り除かれ、親しみが生まれたのだ。ハントレス戦役は、軽機隊を熟達した名誉ある戦士として描いた。憎まれていたスモークジャガー氏族と戦ったので、よりそうなったのである。

 ハントレスと失望のミロス戦役からの再建は、減少する新兵の供給でまかなわれた。3060年代に星間連盟所属国家の多くが大規模な紛争を行うなか、SLDFはふさわしい候補生を惹きつけられなくなっている。軽機旅団の装備は他のどんな部隊よりも優秀だが、ハントレス戦役で重間接砲を失ったままである。その一方で、旅団の歩兵の1/3は中心領域の各種バトルアーマーを配備している。



司令・輸送部門 Command and Transport Division

 司令・輸送部門はディーロンにある。ミロスでカペラ戦艦に直面したあと、エドウィン・アミスは旅団に恒常的な戦艦支援を付けるよう要求した。だが、中心領域の各国家は最近の紛争で艦隊を失っており、艦船を提供したがらなかった。コムスターはSLDFの要求に沿う革新的な新型艦を造船すると申し出た。だが最近の予算削減で、開発は中断された。一時しのぎとして、輸送部門は、旧型の艦艇を3隻のオーバーロードA3、2隻のネコノホノオ強襲降下船と交換した。

 パスファインダーズ(サーペント作戦後に加わった特殊中隊)はミロスでの対テロ作戦でその価値を証明した。戦後、部隊はグレイデス軽バトルアーマーを完全に装備し、偵察・浸透に極めて熟達することとなったのである。


第71軽機連隊 71th Light Horse Regiment

 第71軽機隊は第151軽機隊と交代で、SLDF守備隊としてハントレスに駐留した。いわゆる中心領域人(Spheroids)に敵意を向ける氏族もあったが、ELHはゴリアテ・スコーピオン氏族と滅多にない暖かい関係を育んでいる。この氏族人たちは、第一星間連盟の生ける遺物に心奪われているように見える。


第151軽機連隊 151st Light Horse Regiment

 第151軽機連隊は氏族本拠地からの長旅を終えたら、ディーロンに駐留することになるだろう。第50重機兵大隊(血まみれ50)は特に本拠地に帰りたがっており、軽機隊員の家族を守る役割を負いたがっている……家族がクリタ家の手の中で安全なことに安心しているのではあるのだが。


第21打撃連隊 21th Striker Regiment

 ハントレスの第71軽機隊と第151隊の交代に伴い、第21隊はディーロンの軽機隊司令部と――さらに重要な――部隊の扶養家族の護衛を託された。


第19重機兵隊 19th Heavy Cavalry Regiment

 第19隊は、第21打撃連隊とともにディーロンに駐留しており、3個完全諸兵科大隊の規模に拡大した。





星間連盟防衛軍
(部隊配備状況、3067年10月1日現在)

指揮官:ホヒロ・クリタ大将
補佐:カラドック・トレヴェナ少将
戦力:約6個連隊

エリダニ軽機隊
指揮官:エドウィン・アミス准将
補佐:ビバリー・ヤナ少佐

部隊名経験/忠誠度所在地戦力氏族技術/先進技術/オムニ
エリダニ軽機隊
(指揮官:エドウィン・アミス准将)
エリート/熱狂的ディーロン100%20/80/5
第71軽機連隊
(指揮官:サンドラ・バークレー大佐)
古参兵/信用出来るハントレス99%50/50/15
第151軽機連隊
(指揮官:チャールズ・アントネスク大佐)
エリート/信用できる移動中95%60/40/20
第21打撃連隊
(指揮官:イヴリン・アイヒャー大佐)
エリート/信用できるディーロン100%45/55/10
第19重機兵連隊
(指揮官:ポール・カルバン大佐)
古参兵/熱狂的ディーロン100%42/58/12


親衛ブラックウォッチ連隊
指揮官:ネイル・キャンベル大佐
補佐:アネット・マクヘンリー少佐

部隊名経験/忠誠度所在地戦力氏族技術/先進技術/オムニ
親衛ブラックウォッチ連隊
(指揮官:ネイル・キャンベル大佐)
エリート/熱狂的オレステス100%0/100/15


第1親衛バトルメック連隊
指揮官:アンドリュー・レッドバーン大佐
補佐:ピーター・ココル大尉

部隊名経験/忠誠度所在地戦力氏族技術/先進技術/オムニ
第1親衛バトルメック連隊
(指揮官:アンドリュー・レッドバーン大佐)
エリート/熱狂的ツカイード100%100/0/18













ノヴァキャット 3062



歴史



創設者たち

 我々の生まれ方は他の氏族とよく似ているのだが、成立に寄与した創設者の一人が星間連盟防衛軍の隊員でないという事実は数世紀にわたって嘲りの対象となってきた。ノヴァキャットの成獣としての歩き方はフィリップ・ドラモンドとアンナ・ロッセによって定められた。我が氏族の一部ではアンナが軽んじられ、娘のサンドラが持ち上げられているが、ひとつ忘れてはならぬことは、この時代は現代のシブコと違って母親が娘を育てていたということだ。アンナの指導なしには、サンドラは最愛の氏族長とはならなかったであろう。



フィリップ・ドラモンド

 ステファン・アマリスが第一君主を処刑し、星間連盟を破壊すると、フィリップ・ドラモンドはひどい裏切りを受けたと感じた。彼は他の辺境国家が反乱を起こした際に祖国が星間連盟と共にあったことに大きな誇りを持っていた。アマリスの計画の真の姿が明らかになると、ドラモンドは辺境世界共和国軍の男女の多くと同じように、絶望に打ちひしがれた。たった一瞬で、ドラモンドの忠誠心は完膚なきまでに破壊され、彼はアレクサンドル・ケレンスキーに忠誠を移すことを熱望した。ケレンスキーこそが信頼できるかもしれない男だと確信したのである。

 ドラモンドはケレンスキー本部の警備を突破して、その知略と簒奪打破にかける決意を示して見せた。暗殺者の疑いで略式処刑されようとしたまさにそのとき、ケレンスキー将軍が間に入り、ドラモンドはSLDFに加わって辺境世界共和国軍の防衛に関する知識を提供すると持ちかけた。ケレンスキーは直感的に彼の誠実さを認識し、彼を新人中尉として受け入れた。

 だが、ドラモンドは戦闘任務を拒否し、情報部への永続的な配属に落ち着いた。周囲のSLDF戦士たちは彼をスパイか裏切り者と信じた。数年にわたる誠実な勤務と、正確な情報提供によって、彼は徐々に仲間たちの尊敬を得ていった。



アンナ・ロッセ

 アンナ・ロッセの人生は幼少期から残虐で妥協を許さぬものであった。簒奪者が地球に侵攻したとき、彼女は若干9歳だった。捕まった彼女は強制収容所に移送され、レジスタンス・セルに救助された。2年間の逃走劇の後、女性のみで構成されたギリシャのレジスタンス・セルが彼女を受け入れた。この神秘主義に深く傾倒したグループは、ロッセの精神的な傷を癒やすのを助け、ロッセは通信ネットワークの改善や補給の入手と分配の方法に関して思慮深く知的な提案を行うことで、これに応えた。セルのリーダーたちはすぐさま彼女の価値に気がつき、効率化のために他のセルに派遣し始めた。年を経るにつれて、彼女が編み出した手法はヨーロッパとアジアのレジスタンス・セルの大半で一般的となった。ケレンスキー兵による地球解放までに、彼女はモスクワに滞在していた。

 レジスタンスの英雄として迎えられたアンナ・ロッセは、レジスタンスの指導者たちと解放軍の最初の会合において、SLDFのピーター・カルポフ大尉と出会った。ふたりは一年以内に結婚し、共にエグゾダスに加わった。彼らは〈プリンツオイゲン〉に乗って中心領域を発った。

 この艦と乗組員たちの裏切りについては誰もが知るところである。偉大なる父に逆らった〈プリンツオイゲン〉と他8隻は中心領域に戻る決断を下した。解決策はひとつしかなかった。ケレンスキーは9隻を拿捕し、士官たちを処刑したのである――この中にはカルポフも含まれていたのだ。

 この行動で我らは破滅から救われたと、氏族の全員がわかっている――中心領域が氏族本拠地を発見した時、何が起きたのかを見るがいい。だが、カルポフの死はロッセの精神的問題を悪化させ、アレクサンドル・ケレンスキーの一般命令137を持ってしても慰められることはなかったのである。SLDFが5つのかろうじて住める惑星(後にペンタゴンワールドと名付けられた)にようやくたどり着くと、彼女は惑星キルケに新しい住居を定めた。夫の従兄弟ふたりと暮らした彼女は新たな人生をスタートさせようとした。レジスタンス・セルの神秘的な力を覚えていた彼女は、個人的な儀式によって癒やしのプロセスを開始した。失ったすべてをつかむのを助けるメンタルテクニックとして始まったものは、人生を見つめる方法として開花した。彼女は儀式の力を理解するようになり、ヴィジョンの真実を受け入れ始めた。フィリップ・ドラモンドに出会ったのはこのころであった。

 ペンタゴンワールドへの到着後に行われたSLDFの動員解除において、ドラモンドは科学者になっていた。ロッセは成功した商人となり、入植の平和な数年の内にあった。彼らは新しい家族を作り、3人の子供が生まれた。



エデンの死

 平和な日々は長く続かなかった。すぐにも、扇動、憎悪、古き忠誠が、ここまで旅してきた者たちの心の中に巣くったのである。アマリス内戦で共に傷を負っていたドラモンドとロッセは、ついに暴動が発生すると恐怖に凍り付き、他の家族と共にキルケの自然の中に逃げ込んだ。だが、彼らの小さなコミニュティは攻撃を受け、3人の子供のうち2人が殺された。悲しみにくれていたにも関わらず、彼らは惑星政府を支持する軍に加わった。

 彼らは残忍な戦闘にうんざりし、ニコラス・ケレンスキーの第二エグゾダスの呼びかけに応え、生き残った娘のサンドラと共にストラナメクティへと向かった。

 ドラモンドはキルケの戦闘では使われなかった戦闘技術を磨き、ニコラスが作った新氏族のテストに難なく合格した。各氏族が戦士の中から選ばれた2人の氏族長に選ばれることをニコラスが発表すると、ドラモンドは新ノヴァキャット氏族の指揮官の座についたのである。我らのリメンバランスがほのめかすところでは、ニコラスが父親への長年にわたる忠実な奉仕に報いるため、そして氏族ではかつての忠誠が問題にならないという事実を強調するため、影響力を行使したとされている。我らの社会では、もしその人物がふさわしいのなら、高い地位につくことができる。フェラン・ケルがリバイバル作戦時に捕らえられ、活躍してウルフ氏族の氏族長の地位に上ったことで、このことは響き渡ったが、我らノヴァキャットは創設者が喜んだであろうことを常に信じている。フェランは戦士としての価値を証明しなかっただろうか?

 氏族が内部を固め、ペンタゴンワールドへの帰還のために訓練を始めると、アンナ・ロッセは商人階級に落ちた。階級間の関係性が制限され始めていたが、ドラモンドとロッセは秘密裏に関係を持った。ゴーストベア氏族の創設者たちと同じように、彼らは我らを定義することになる家族を持っていたのである。

 ペンタゴンワールドへの帰還命令がついに出ると、ノヴァキャット氏族は、キルケ奪還のためマングース氏族、スノウレイヴン氏族、名無し氏族に加わった。クロンダイク作戦の完了までに1年を要したが、氏族はついにペンタゴンワールドを征服したのである。我らが戦士たちは敵の装甲の弱ったところを狙い続ける神秘的な能力によって、ほとんど伝説的なステータスを得た。



サンドラ・ロッセの登場

 ペンタゴン戦役の後、ドラモンド氏族長は自身が冴えを失っていることに気がついた。退行性の病変によって彼はゆっくりと死に近づき、すぐにも地位を失うだろうことに気づいて落胆した。だが、希望は生まれた……娘のサンドラが階級の神判をスターキャプテンで突破したのである。

 サンドラは両親の長所を受け継いだ才能ある戦士であった。生まれつきのリーダーであり、神秘主義という覆いの中に多くの答えが隠されていると確信していたサンドラは、大人物になろうかとしていた。ドラモンドが病状を娘に伝えると、サンドラは母の家にあるプライベートな聖地に引きこもった。3日間の断食と瞑想の後で、彼女は答えを胸に出てきた。彼女は父に代わって氏族長になることを決めた。

 サンドラはすでに指揮官の座にあったが、ブラッドネームが必要であることを知っていた。母親に敬意を表して、彼女はロッセのブラッドネームを争うことを選んだ。同名であるこのブラッドネームは、実際にはアンナの従兄弟であるジェイソン・ロッセに属していた(サンドラの母親は戦士階級にならなかったので、名字が800のブラッドネームに入ることはなかった)。異例ではあるが、ブラッドライトの神判のルールはまだ決まっておらず、族長評議会への請願によって、ロッセの名前を争う権利が与えられた。

 彼女はブラッドライトの神判を勝ち抜き、サンドラ・ロッセとなった。支持を得て、数ヶ月以内に、サンドラは氏族長の座にふさわしくないとして、ドラモンド氏族長に不服の審判を挑戦した。対等の環の中で、サンドラは伝統を破り、父に辞職する機会を与えた。フィリップ・ドラモンドがすべてを捨て去ったのは、これが人生で二度目であった。

 だが、ノヴァキャット戦士たちの多くがこれを感傷主義的なものと見て怒り狂い、すぐさまサンドラに不服の審判の挑戦を行った。彼女はすべての戦いに勝利し、戦闘技術と勇敢さを見せつけ、氏族長として受け入れられたのである。



ノヴァキャット再誕

 氏族長の座についたのに伴い、ロッセ氏族長は再び聖地に籠もった。5日後、彼女は確信と共に戻ってきた。ヴィジョンが、創設者の意図したところを越えてノヴァキャットを完璧な社会へと導く道を見せてくれたのである。ロッセ氏族長がヴィジョンに基づいて決断を下していると発表すると、多くが混乱したのだが、挑戦するものは現れなかった。不服の審判での勝利は記憶に新しいもので、戦士たちは判断を保留にしたのだ。

 サンドラは抜本的な変化を起こし始めた。大きな変化のひとつは、商人階級に必要と判断したことをやらせる権限を与えたことであった。氏族が黄金世紀に入ると、これは配当をもたらした。だが、サンドラ最大の貢献は、神秘的な生き方を提供したことにある。彼女の指導により我らの目は開かれた……人生とは道を選択することにあり、どんな行動であれ数世紀後に影響するかもしれないことを示したのである。遙か先を見通す我らの力は、なぜいま星間連盟の道を歩いているかの理由になっている。

 自己鍛錬の必要性を確信したロッセ氏族長は、氏族の精神的な力と福祉を補助するためにオースマスターの職を創設し、ルイ・チェンを任命した。これが氏族長について最初の公式な行動だった。歴史の中で、氏族を正しい道に導くのに必要なヴィジョンの力を持たない氏族長たちが何人かいた――この強力な役割はオースマスターに任された――が、これは我らのやり方に強みがあることの証明である。氏族長からその地位を奪おうとしたオースマスターはこれまで存在しないのだ。

 ニコラス・ケレンスキーは族長会議の場でオースマスターに戦士を任命したことを非難し、ロッセ氏族長に対する拒絶の神判の権利をウルフ氏族が勝ち取った。この氏族に勝利し、オースマスターの座をめぐる一連の階級の神判が保証された。ルーシー・モリスが公式の初代オースマスターとなった。創設者ニコラスは単にこの新たな役職の重要性を強調したかっただけと信じて、ロッセ氏族長は憤慨したりしなかった。

 他氏族はオースマスターに似た職務をすぐに導入したものの、最終的に全誓言を施行する公式式典の儀仗兵役に発展したのだった。



予見の法

 そういった出来事の後、ロッセ氏族長は母と自身のヴィジョンについて述べた書『予見の法(Ways of Seeing)』を上梓した。こんにち我らが行っている儀式はこの書から来ている。本書とヴィジョンについて記し続けたロッセ氏族長の日誌は、オースマスター・グランドメレーにおける法規討論会の土台となっている。

 他氏族の氏族長たち幾人かはロッセの変わった改革に異論を唱えたが、ロッセは創設者ニコラスが誰の精神的活動にも干渉しないという布告を出したことについて指摘するだけだった。明白に非氏族的な行動の事例は存在しなかったので、氏族長たちはノヴァキャットが躓くであろうことを確信して機会をうかがっていた。

 だが、そのときは来なかったのである。氏族をよろめかせるどころか、ロッセ氏族長は我らに精神と感情を集中させることを教え、それによって我らは他氏族の成果に歩調を合わせるか、あるいは追い越したのである。



ジャガーとの対立

 氏族が成長するに従い、数多の苦い確執が生まれた。しかしノヴァキャットとスモークジャガーの遺恨(最後にはスモークジャガーの破滅に結びついた)ほど始まり方が珍しかったものはない。サンドラは氏族長になった直後、スモークジャガーの副氏族長であるリアム・イスミリルに魅了されたことに気がついた――そしてリアム・イスミリルも同様であった。彼らはしばしの時間を楽しんだが、ロッセ氏族長は互いの哲学がまったく違うのを無視することが出来なかった。

 聖地に籠もった彼女はヴィジョンを得て、関係を続けたらノヴァキャットの破滅につながると確信した。彼女は即座にイスミリル副氏族長との関係を断ったが、1頭のノヴァキャットの死体が繁殖プログラム用の鉄の子宮の中で発見された。こうして彼女はスモークジャガーの敵意を知ったのである。



ドラモンド帰還

 疑いようもなく、ロッセ氏族長のヴィジョンは歴史における我らの現在の位置へと進む道に我らを置いた。だが、決断の内の一部は災害的なものであった。名無し氏族が係争中のブライアンキャッシュの独占所有を求めたとき、ロッセ氏族長は族長会議で彼らを支持した。名無し氏族の拒絶の神判とその後の殲滅の後、ウルフ氏族のウィンソン氏族長は直々に、名無し氏族を支持してきた各氏族の氏族長たちに不服の審判を行った。ロッセ氏族長は善戦したが、神判中に死亡した。

 ロッセ氏族長の死を聞いて、治療済みのフィリップ・ドラモンドは自身こそがノヴァキャットの新たな精神性をはぐくみ続けることが出来る唯一の人物であると気がついた。過酷な階級の神判を勝ち抜いた彼は、氏族評議会で語りかけた。その雄弁ぶりで彼は氏族長として認められ、黄金世紀に向けてノヴァキャットを率い、112歳まで生き延びた。他氏族より現役年齢の長いノヴァキャットでさえも、これは空前の記録であった。



黄金世紀

 黄金世紀はノヴァキャットにとって素晴らしいものであった。自由を与えられた科学者階級と商人階級に背中を押された我々はすぐに氏族の先頭集団に入った。他の氏族がオムニメックとエレメンタルを作り、鉄の子宮技術を完成させる間、我らが科学者たちは長射程レーザーを完成させたのである。商人階級はケレンスキー星団内で活発に動き回っていたシーフォックス氏族(後のダイアモンドシャーク)とコンタクトを取り、発見された資源と引き換えに資金と物資をフォックスの探検活動に提供した。これによって、新たな資源都予算が絶え間なく流入することとなったのである。放棄があっても、この関係が制限されても、終わることはなかった。

 この時期にウィドウメーカー氏族とマングース氏族が吸収されたものの、我らが氏族は我らの道を進み続けた。各銀河隊は他氏族(有名なのはクラウドコブラ氏族とジェイドファルコン氏族)に敵意を向けたが、氏族全体が対立していたのはジャガーだけだった。しかし、黄金世紀が終わりに近づくと、中心領域に戻りたがる一部の者たちの欲望によって全氏族はふたつの派閥に別れた。中心領域を外部の侵攻から守る守護派と、中心領域を征服して星間連盟を再興する侵攻派である。



リバイバル作戦

 ジェイドファルコン氏族が2980年に侵攻を呼びかけたが、守護派氏族たちは中心領域侵攻を68年先延ばしにすることにどうにか成功した。だが、コムスターの航宙艦アウトバウンドライトが現れると、抵抗は儚く費え、帰還が始まった。

 オースマスターとして、私はヴィジョンで見た差し迫る脅威を氏族長に警告すべく絶望的な試みを行った。セヴァーン・ルルー、ルシアン・カーンズ両氏族長は歴戦のノヴァキャット戦士であり、この地位にふさわしい以上のものがあったが、失われた楽園に戻るという栄光によって目を曇らされ、侵攻に加わるべく他氏族と戦闘を行った。ノヴァキャットは最初の侵攻に加われなかったが、スティールヴァイパーに継ぐ戦果を残し、初期の作戦に若干参加しさえしたのだった。

 しかし、アナスタシウス・フォヒト軍司教がウルフ氏族の旗艦〈ダイアウルフ〉に赴いた際に、ノヴァキャット氏族の親衛隊は護衛を行った。軍司教を前にして、私はヴィジョンで見たものが目の前にいるとすぐ気づき、彼を地面に引き倒した。私はノヴァキャットが自滅に向かっていることをみなに伝えようとしたが、氏族長たちは耳を傾けようとはしなかった。私は副氏族長に不服の神判を挑戦すらしたのだが、敗北して、ヴィジョンが現実になるのを座して見るしかなくなったのである。

 レオ・シャワーズ大氏族長が殺害され、ウルフ氏族のウルリック・ケレンスキーが大氏族長に選ばれると、ウルリックはノヴァキャットを侵攻に参加させた。だが、憎きスモークジャガーと侵攻路を分けることで、我々は代償を支払ったのである。3051年11月から3052年3月の間に、我が軍は16個の世界――ターンバイ、ビャアレッド、ソーヤー、チャパデロ、ジーネット、クールシュヴァル、イレース、エイヴォン、ルシエン、イタビアナ、ジュアゼリオ、ムーラン、テニエンテ、カリパレ、キレナイカ、カノウィット――に侵攻した。ルシエンが最悪の恥ずべき敗北となった。スモークジャガーと共に、我が軍はアルファ、デルタ銀河隊をルシエン攻略に送り込んだ。だが、16個エリート正規連隊が束になって立ち向かって、容赦なく攻撃し、我が軍は退却を余儀なくされた。

 もちろんのこと、地球を賭けたツカイードの戦いで、この件は印象が薄くなった。ノヴァキャットはどの氏族よりもコムガードにダメージを与えたものの、それはピュロスの勝利に過ぎず、最後には敗北と共に惑星を離れたのだった。



未来の道

 ノヴァキャットの氏族長たちは、不明と傲慢を恥じて、ツカイード後にはヴィジョンを求めて私に従うようになり、それは栄光へと戻る道になった。私は長時間かけて儀式と断食を行い、氏族はいずれドラコ連合と話し合いの場を持つことになるだろうことを伝えるために戻った。氏族長たちはショックを受けたが、破壊されたノヴァキャットのメックがツカイードに横たわるという私のヴィジョンは達成されており、二人は私の言葉を耳にしたのである。

 我々はたまに憎きジャガーを襲撃したものの、崩壊した氏族軍を再建することに力を費やし、占領地点の民衆と関係を築き、ドラコ連合との対話を続けた。3058年にブルドッグ作戦が始まると、我が軍の数個星団隊がアブタカとなって侵攻軍に加わり(戦士として受け入れられた)、その後SLDFの一員としてジャガーと戦った。

 ヴィクター・シュタイナー・ダヴィオンが中心領域侵攻に対する拒絶の神判を侵攻派氏族に挑戦すると、我らが氏族たちは星間連盟の側に立って、ストラナメクティでアイスヘリオン氏族と戦った。我々はメック戦士トレントをボンズマンとして捕らえすらした――彼はジャガーを裏切り、エグゾダスロードの座標を中心領域に伝えた。大拒絶として知られるこの戦いの中で、セヴァーン・ルルー、ルシアン・カーンズは死亡し、星間連盟は勝利をつかんだ。トレントのメックは破壊されたが、死体は発見されなかった。

 何世紀にもわたってわかっていたように、最も価値のある道は常に危険をはらんでおり、そして星間連盟への帰還はゆゆしき結果をもたらした。大拒絶から1週間以内に、我らは放棄され、他氏族は襲いかかってきた。我が軍の戦士たちは勇敢に戦ったのだが、連係した戦力を押しとどめることは出来なかった。ユプシロン、ロー、カッパ銀河隊の戦士たちによる究極のヒロイズムと、ダイアモンドシャーク氏族、スノウレイヴン氏族からの突然の援助を持ってしてようやく、我々は民間階級の生存者少数を中心領域へと移住させることが出来たのだ。中心領域の我らに加わった氏族宙域の戦士たちは3個完全星団隊以下であった。

 そして我らの道はまだ終わっていない。連合市民のほとんどがいまだ我らを敵と見ていることはわかっているのだが、我らの行動は新中心領域への忠誠を見せつけたのである。星間連盟に戻るために、両氏族長が犠牲となり、同胞による放棄を受け入れたではないか? もしそれで充分でないのなら、我が軍とDCMSが衝突したら、たった一度の戦闘でも我らを侵略者に見せてしまう。そのような挑発を我慢すれば、すでに目の前にあるものを守れるだろう。状況は悲観的であるが、数ヶ月前にイレース管区を作ったセオドア・クリタ大統領の慧眼は我らの知るところである。ノヴァキャットとDCMSの部隊を引き離すことで、受け入れられるための時間が作られることを望んでいるが、道は長いことを固く胸に止めるべきである。これよりさらにやっかいなのは、氏族の中に、道を見通すことが出来ず、不和を生み出しかねない者たちがいることである。






ノヴァキャット 3067

 炎によって試練を与えられ、復讐によって鍛えられた我らの旅は、危険と栄光にはらんだものだった。氏族長のヴィジョンは、困難をぬって我らを導いた。我らは試練を突破した。だが、数百万の同胞が、我らを殲滅せんとする者たちの手によって死んでいった。我らは倒れなかったが、より強くなるべく生き残った。ノヴァキャットは、怠りなく竜を見張り、生き方を守っている。

 サンティン・ウェスト族長の命により、私は念入りに情報をまとめ、第一君主クリスチャン・マンスドッター宛のフィールドマニュアルを完全にアップデートした。この概況書は、現在のノヴァキャット氏族をあますことなく記述している。氏族軍の傾向や、ノヴァキャット部隊がDCMS元帥の指揮下に入ることを含む、連合社会への統合の進捗状況も書かれている。

 ――ミノル・ノヴァキャット、オースマスター、ノヴァキャット氏族


ノヴァキャットの流儀 WAY OF THE NOVA CAT

 他の氏族は、我らの型にとらわれない性質と習慣を誤解しがちである。ダイアモンドシャークと同じく、我らは商人階級に自由を許しており、それが革新的な経済政策の立案をうながしている。その強い霊的な性質と、下位階級への公平な取り扱いは、他氏族と大きく異なる。霊的なヴィジョン(予知視)の力が、ノヴァキャット氏族の繁栄を確実なものとしている。私は、ヴィジョンによって、キツネに導かれた。彼は私の後継者になるかもしれない。まだ若いながら、鋭く、精神に満ちている。私はキツネの父ではないが、彼の中に炎を見ている。彼を私のやり方とノヴァキャットの流儀で訓練するつもりである。ヴィジョンがキツネを導くだろう。


星間連盟のノヴァキャット THE STAR LEAGUE NOVA CATS

 星間連盟に加わるべく中心領域に帰還して、我らの旅は終わった。星間連盟の誕生を見て、我らの任務は完了した。氏族の同胞は我らを裏切り者と呼んだが、ヴィジョンに導かれた我らの道を真に理解はしていない。それは栄光の道ではないのだが、深く素晴らしい名誉の道なのだ。ゴーストベア戦争後に我らと星間連盟の関係はひどくまずいものになってしまったのだが、我らはSLDFに対する義務を遂行し続けている。誓約の印として、シグマ銀河隊はツカイードに駐留したままである。


ドラゴンとノヴァキャット THE DRAGON AND THE NOVA CAT

 氏族から放棄されたあとで、ノヴァキャットは過去を葬り去るべく、中心領域に入植し、懸命に働いた。ドラコ連合の住人たちが我らをいやいや受け入れたとき、この旅が困難であるとわかった。だが、名誉ある未来が待っていることを我らは知っている。連合市民が我らの精神的な血族であることが判明すると、我らの戦士たちに絶大な効果が及ぼされ、融和政策は楽なものとなったのである。

 ゴーストベアが3062年の12月に不意打ちを仕掛けたとき、ノヴァキャットはまったく用意が出来ていなかった。ヤマロフカの世界で、第1ドラゴンキャット星団隊は、第11アルシャイン隊を足止めしつつもほとんど破壊されるところだったのだが、ゼータ銀河隊の2個星団隊がどうにかアルシャイン部隊を破壊したのだった。勝利したにもかかわらず、ヤマロフカの防備は薄くなり、すぐさまベアの手に落ちた。一月目に、ゴーストベアはイタビアナ、ラブリア、カリパレを目標とし、結局、オメガ銀河隊、キー銀河隊を失うことになった。さらにひどいことに、ゴーストベアはゼルブリゲンを尊重しなかった。不公平な放棄が、またもや再現されたのだ。そしてさらなる問題が持ち上がった。ゼータ銀河隊の残った部隊(2個星団隊と見積もられているが確証はない)が、ベアの第10胸甲機兵隊の強襲を受けていた際に、惑星を離れどこかに消えてしまったのだ。我らのウォッチ(諜報部)とO5Pは関係を育んでいなかったが、逃亡者たちの居場所を突き止めることができた。問題を抱えた銀河隊は哀しい最後を迎えたのだった。

 こういう挫折はあっても、我が軍の総合的な力は良いものである。ゴーストベアがどこを攻撃したとしても、ノヴァキャットは猛烈に星を守り、龍のために命を捧げた。勇敢な無私無欲の行為に、連合の戦士たちと市民は感謝を感じたのである。

 戦後、ノヴァキャットは、消耗しているが誇り高き軍の再建に取りかかった。リソースが限られていたために、この任務は長く難しいものとなった。

 決闘の訓練が成功したのを評価したDCMSとノヴァキャット軍は、統合を一歩進めた。3065年5月にノヴァキャットの1個銀河隊が、2年の期限付きで、DCMSの指揮下に置かれた。タウ銀河隊はキヨモリ・ミナモト元帥に仕え、その一方で第2アルカブ軍団がウェスト氏族長指揮下のアルファ銀河隊に配備されている。タウ銀河隊はペシュト軍管区内で演習を行い、ノヴァキャットに対する好意と受容を助長させた。アルカブ軍団の似たような境遇が、すぐさま両陣営のあいだに結びつきを作った。二度目の交換は、3067年の3月、デルタ銀河隊と第2リュウケンで行われた。残念ながら、この交換プログラムは、ノヴァキャットは中心領域によって汚染されるべきではないと考える少数の者たちもまた産み出してしまったのだった。


キャットとシャーク THE CAT AND THE SHARK

 他氏族から放棄されたノヴァキャットは常に災厄に見舞われた。侵攻派氏族が我らが民を殲滅しようとしたときには、ダイアモンドシャークだけが我らを守ってくれた。〈黄金期〉以来、我らは相互支援を享受しており、それが利益と強い同盟関係を生み出した。この「特殊な関係」は両陣営に利益を出し続けた。最近、ノヴァキャット氏族がダイアモンドシャークのハージェル(トワイクロス星系のヨナ・リーチで産出されるもの)を2%勝ち取ったのに対し、ダイアモンドシャークは惑星イタビアナを勝ち取ったのである。我らの商人たちは、マッドキャットII、ハオトコと引き替えに、シャークの惑星トワイクロス再生を助けることになった。オムニメックのノヴァキャットを生産する権利もシャークに与えたのだった。


ノヴァキャットの報復 NOVA CAT RETRIBUTION

 3067年5月、ノヴァキャットは建造中だったゴーストベアのリヴァイアサン級戦艦を賭けて、ベアに所有の神判を挑もうとした。最初、ゴーストベアは拒否して、我らの部隊を攻撃したのだが、第2海軍星隊による二度目の入札に応じた。この二度の戦闘をひとつのものと考えると、継承権戦争以来、最大の海戦になる。ベアの勝利は被害甚大なものだった。艦隊の半数が失われた。

 ノヴァキャットの損害は大きかったが、ひどいものとはならなかった。戦闘で失われたのは、ヨーク級SLS〈アンナ・ロッセ〉、ヴィンセントMK42級〈ライチャス・リターン〉、フレダサ級〈スピリット・サイト〉、イージス級〈ボンド〉〈ブラッド・オース〉、ローラIII級〈フェイスフル〉、コングレス級〈トゥルー・ヴィジョン〉である。我らが〈ラサルハグ〉を捕獲できなかった一方で、我らが復讐を果たし、失われた名誉を取り戻そうと企てたことに彼らは満足したのだった。




ノヴァキャット氏族軍 NOVA CAT TOUMAN

 現在の我が軍は小規模だが、その爪はカミソリの刃のごとく研ぎ澄まされている。5年間の平和によって、放棄とゴーストベア戦争で被った損害の大部分を置き換える余裕を与えられた。約15個星団隊以上の損失を隠し続けているゴーストベアとは違い、ノヴァキャットは傷痕を誇り、いかなる敵と直面するのも畏れない。


海軍艦隊 Naval Fleet

 艦隊は、ヴィジョン海軍星隊(ヴィンセント・マーク42級〈SLSファーヴィジョン〉、キャラック級〈SLSトゥルーパス〉、イージス級〈SLSパス・オブ・オナー〉〈SLSプロミス〉)、トランセデント海軍星隊(SLSフレダサ級〈SLSフューチャー・トライアンフ〉、キャラック級〈SLSペリレス・ヴィジョン〉、イージス級〈SLSブレード〉〈SLSヴィジョン・クエスト〉)、ミスティック海軍星隊(ブラックライオン級〈セーヴェレン・ルルー〉、ヴィンセント・マーク42級〈SLSスピリット・ヴィジョン〉、キャラック級〈SLSヴォイド〉、イージス級〈SLSプリンシプル〉〈SLSクロニクル〉〈SLSリメンバランス〉)である。さらに、商人艦隊は、ローラIII級〈SLSグロウラー〉〈SLSレンジャー〉〈SLSハンター〉と12隻のキャラック級〈SLSファー・スター〉〈SLSエンライテンド・パス〉〈SLSネビュラ〉〈SLSグローリー・ロード〉〈SLSブレスド・ヴィジョン〉〈SLSパスファインダー〉〈SLSガイディング・ヴィジョン〉〈SLSブライトスター〉〈SLSフェイスフル・ライト〉である。


アルファ銀河隊 Alpha Galaxy: (Vitory Over Delusion)

 ノヴァキャット氏族長に率いられるアルファ銀河隊は、ゴーストベアへの逆襲としてカリパレを攻撃し、すぐイタビアナに移った。我が軍はカリパレでゴーストベアのロー銀河隊分隊と交戦した。アルファ銀河隊は不思議なコツで命中弾を与え、ベアの第18戦闘星団隊と支援部隊に似たような損害を与えた。ゴーストベア軍はヘルズホースの強襲に対応するため本拠地に戻っていった。イタビアナでは、守っていた敵のオメガ銀河隊を破り、惑星を奪取したのだった。


デルタ銀河隊 Delta Galaxy: (Ways of Seeing)

 デルタ銀河隊がツカイードでコムスター・インベーダー銀河隊を相手に訓練していたそのとき、ベアの攻撃が始まった。3063年の早春に、デルタはゴーストベアドミニオンに侵攻し、惑星アルテンマルクト、ノックス、スカンディア、マウレ、ヘイルゾーウェンを叩いた。アウレではノヴァキャットがベア第304強襲星団隊を捕らえた。ベアがヤマロフカとムーランであのような行動を取ったことから、キャットはゼルブリゲンに縛られず、デルタ銀河隊は第304星団隊に圧勝した。2個三連星隊が捕らえられるか、破壊されたあとで、ベアの部隊は混乱のなかユトレヒトに撤退した。


シグマ銀河隊 Sigma Galaxy: (Spiritual Vision)

 シグマ銀河隊はラブリアに上陸し、ベア軍を叩いた。ノヴァキャット部隊は猛烈に戦い、ベアを押しまくり、復讐を求めた。総崩れになったベアは惑星から手を引き、ヘルズホース氏族に対処すべくドミニオンに撤退していった。ノヴァキャット槍機兵隊に率いられたシグマ銀河隊の第79、第189星団隊はティナカに上陸し、ゴーストベアの惑星アルシャインに侵攻の脅威を与えたのだった。


タウ銀河隊 Tau Galaxy: (A New Path)

 タウ銀河隊はゴーストベア戦争中、キタリーで過ごし、帰還命令を拒絶した。このベアとノヴァキャットの紛争を、ベアとドラコ連合のものと考えたのである。従ってSLDFとして活動していたタウ銀河隊が参加したら、SLDFの中立性を傷つけるものとなる。戦士たちの名誉は、彼らが上級司令部の命令を無視したことを許さないだろうが、SLDFが部隊を手放さなかったことで、星間連盟とノヴァキャット氏族軍全体の関係は冷たいものとなった。


クシー銀河隊 Xi Galaxy: (Rossei's Faithful Followers)

 ヴィジョンの影響を受けたギャラクシーコマンダー・デリポータスはウェスト族長に陳情を行った。イタビアナとカリパレでの戦果を根拠に、部隊の前線級格上げを迫ったのである。ノヴァキャット上層部(ロッセイ・クロイスターのメンバーを含む)からの支援もあってクシーは前線部隊になったのだった。


ラムダ銀河隊 Lambda Galaxy: (Seishin-no Nekoryu)

 ゴーストベア戦争中、連合に代わって犠牲となったことから、大統領は彼が言うところの「気高い龍の守護者」を援助するため、ラムダへの資金協力に同意した。ラムダ銀河隊には、ノヴァキャットの戦士と、DCMS軍事士官学校から選ばれた候補生(イレース管区と結びつきの強い者)が配置されている。日本語で「龍猫の魂」を意味する名を持つ新銀河隊は、3067年8月の前期に活動を開始した。


オミクロン銀河隊 Omicron Provisional Galaxy: (Purified in Soul)

 3063年に行われたゴーストベア氏族への逆襲の際、第6守備隊と第5ノヴァキャット正規隊はマラウィを攻撃した。ベア第17PGCの不意を打ったノヴァキャットは、ベアを打ちのめし、戦争が終わるまで世界を保持した。

 連邦=共和国内戦のあいだ、ノヴァキャットの力を見せつける目的で、第4ノヴァキャット正規隊(最近レジェに改名)が、リヨンの世界を強襲し、シュタイナーの気概を試した。







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