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作成:2005/02/03
作成:2014/08/05

3133年の傭兵プロフィール



 ダークエイジの傭兵についての記事。聖戦により大打撃を受けながらも、有名どころの部隊が多数生き残っています。
 News from Around the Sphereより。




リヴァ・ジュロの傭兵プロフィール:傭兵としての生き方:最後のフロンティア? (3133年9月16日)

 ハーレフ廃墟、アウトリーチ - 破壊された荒野がかつて活気に湧いた大都会だったものの残骸である。腐食し、汚染された高層ビルの廃墟、低層アパート、降下船の残骸、不気味な沈黙の中に眠る工業地域。大気は有毒で、大地は化学兵器、核兵器により汚染されている。運命の3067年11月とその後の日に死んだ者たちは残骸の中で埋葬されないまま残されている。ハーレフの廃墟、かつてのアウトリーチ首都、かつての傭兵業界の中心点は、現在、過ぎ去った時代の名残に過ぎない。

 あるいは今でもそうなのだろうか?

 このゴーストシティの南には、めちゃくちゃになった郊外に作られた新しい都市のドーム、足場、掩蔽壕が立っている。ニューカーニー(その名前は、現在干からびた大地となっているかつてのアウトリーチ最大の淡水湖から来ている)は、ほとんどが地下に潜り、地表からは見ることが出来ない。だが汚染された大地の下では人が生活しており、商業、交易、そして職業兵士たちのハブにさえなっているのである。

 もしかしたらそれはこの場所への感傷的な傾倒なのかもしれない。それと同じものがロステック探索者たちを、勇敢にも現在でさえも(ホロコーストから70年後)レムスの危険な荒野に引きつけている。そうしてこの世界は終わったと言われることもある伝統を続けることが出来るのだ。聖戦はこの世界から生命以上のものを奪った……誰をも魅了する傭兵という職業のロマンスを、総力戦の概念でうち砕いたのである。ブレイク派による「聖なる戦争」の恐怖は、中心領域で育った全世代に戦争を終わらせることを誓わせた。(スフィア)共和国では平均的な市民は平和主義者として生活するのを奨励される。

 そして、なぜ傭兵たちはいまだこの世界への巡礼を続けるのか? なぜ大小の帝国はいまだここで手伝いを捜すのか? なぜ、ウルフ竜機兵団とスピリットキャッツは合同でこの燃えがらの支配権を取り戻したのか?

 約一年前にHPG網が崩壊して以来、ニューカーニーの人口は、水耕農民と貿易業の労働者9万人から、ほぼ外部から訪れた傭兵による50万人以上にふくれあがった。同様の人口爆発は、アウトリーチよりはるかに暮らしやすい傭兵の集結地、ガラテアでも見られる。そのように、なぜ職業兵士への興味がふたたび呼び起こされたのか? なぜ、大勢が戻ってきて、金銭と引き替えに生命や手足を失うリスクを犯そうとしているのか?

 アウトリーチでは、話しかけるものによって答えは様々である。

 「傭兵については何も知らない」と、ニューカーニー市運営の計画開発部に雇われている鉱業メック整備士、アンドレイ・シューバートは言う。「毎年ここにやってくる連中の大半は探索者だ。奴らは旧都市(ハーレフ)を掘るか、旧アウトバック(レムス大陸)で運を試す。メックを売れば、例えそれがぼろぼろのものでも、市民権を得るか、金を得られる。だが、残念ながら、奴らの大半は荒野から戻ってこないんだ……」

 「惑星が爆撃された時、確かに竜機兵団の大半が退去したんだけど、一部が残って抵抗活動して、ジェイムがやってきたように戦いの流れを戻したのよ」と語るのは、地元のエンターテイナー、マリア・ワージントンである。「それからずっと、アウトリーチは傭兵ビジネスの知られざる中心地だったわ。もちろん志望者の多くは契約を求めてガラテアに行ったんだけど、知っている人たちはここに来たのよ。知りたいことはなんでも揃うここに」

 噂は多い。漁り取った兵器、部品から、情報、サービスまで揃うブラックマーケットがアウトリーチで繁盛しているとされる。だが、噂が事実だとすると、このマーケットは終わるかもしれない。スピットキャッツ(謎めいた流儀が彼らを思いも寄らない新たな飛び地領土に導いた)のガイドとして最近帰還したウルフ竜機兵団の小部隊は、アウトリーチに新たな夜明けをもたらされることを示している。

 「HPG網がダウンし、新しい軍隊が至る所にあらわれています。未来は暗いものに見えます」と語るのは特使ブリアナ・ウルフ。メーヴ・ウルフの名誉ある子孫を自称する人物である。「どういうわけか、特にこの周囲では、最悪を想定することは自然に見えます。この場所……人類の戦争の最盛期に人が集まったここは、そのような神秘性をいまだに持ち続けているように思えます。これは我らが新たな戦争の時代に転がり落ちていく、よくない兆候かもしれませんが、古い友人たち――そして新しい友人たち――が戻ってくるのを見ることになるでしょう」

 「ああ、奇妙に聞こえるかもしれませんが、私はこれに元気づけられているのです。つまり、誰かが竜機兵団の遺産を継承するなら、それは正統な後継者に渡るべきではないでしょうか?」

 結局の所、おそらくそれが答えなのだろう。暗い時代が戻ってきて、人々は本能的に、なじみ深いもの、落ち着けるものに手を伸ばす。人類全体にとって、そのなじみ深いものとは――あまりにも多かったものは――戦争の道具、防衛、侵略のための道具である。ウルフ竜機兵団にとって、それはかつての偉大な故郷、アウトリーチである。スピリットキャッツ(孤児となった氏族としての結びつきを共有する)にとっては、おそらく、故郷となるものなのかもしれない。これが中心領域の未来に何を示すのか? それがわかるのは先の話になるだろう。



リヴァ・ジュロの傭兵プロフィール:ケンタウリ第21槍機兵隊 (3133年9月30日)

 多くの者たちにとって、傭兵の人生とは、自由で限りのない冒険の約束であり、星々を巡る探検の夢であり、名誉と富と高貴な戦いを求めることで、政治的思惑や小君主の思惑に縛られないということである。他の者たちにとっては、傭兵とは天災で、海賊より少しましな存在で、安い金で動き、脅しを教え込まれた乱暴者で、人を殺し、雇い主が望めば何でも誰でも処分する。この職業が中心領域で確立されて以来、傭兵のライフスタイルはときにロマンティックなものとされ、ときに中傷されてきた。だが、現代の傭兵において、どれが真実で、どれがフィクションなのだろうか?

 この質問に答えるべく、わたしは有名な傭兵ケンタウリ第21槍機兵隊の第17装甲偵察隊に帯同した。彼らは、傭兵たちの星として名をとどろかせるガラテアで休養を取っていた。彼らの活躍(ガラテアの酒場、交渉の席から、ウフルの戦場にいたるまで)を見た後で、これらの男女が、単なる金で戦う兵士以上の、単なるトリビッドのありきたりな主人公・悪役以上であることが明らかになった。

 槍機兵隊は元々、給与未払いから1世紀半以上前に反乱を起こしたリャオ家のメック大隊から創設された。傭兵の世界でチャンスをつかみ、もう二度と不利な立場には追い込まれないと誓った彼らは、軍事的名声と同様、清廉潔白さの評判もまた得た。それ以来、彼らはリャオを除いた中心領域の全王家に仕え、交渉の場と戦場での独特なスタイルを作り上げた。これまで彼らは損害と勝利を同程度に得てきた。彼らの任務(注意深く選ばれ、しつこく交渉したもの)は、ケルハウンドやウルフ竜機兵団のようにニュースヘッドラインを飾りはしないが、戦場外での正直さや戦場での名誉ある行為から彼らの戦闘力を疑う雇い主はほとんどいない。

 「ここでは[司令官は]、自分たちのことに気を払う」私のガイドであるトーマス・カルデラは語る。大柄で色黒な男カルデラ(顔に張り付いた嘲笑が内面の優しさを隠している)は輸入品のティンビクイ黒ビール片手に話を始めた。「考えてくれ。我らは金の問題で[カペラ大連邦国を]離れた。歴代の司令官は、もう通りで物乞いをしないですむよう、いつも心にとめている。我らは夕食を食べるために働く。これは誰でも同じだが……戦場では小切手の額が割に合わないことに気づく」

 槍機兵隊の契約交渉はタフである。受け取ったすべての契約について、自分たちを罠にかけたり、支援の足りない状態にする条項がないか徹底的に精査する。部隊の扶養家族の移動――配偶者、子ども、その他の家族が基地のある世界から世界へと旅する――でさえも、大規模な作戦の前に安全が保証される。最後の点は、ワード・オブ・ブレイクの陰謀によって槍機兵隊自体がハイジャックされたときのことがまだ記憶に残っている。この出来事で、彼らの素晴らしい評判はほぼ失墜しかけたのだ。

 「[ブレイク派が]3058年に我々の家族を捕らえて、コムスターの契約を遂行しないよう銃口を向けた」カルデラは語る。「槍機兵隊に化けた連中の兵士が、我らに変わって地球を強襲した。我らは数ヶ月じっと待たねばならなかった。家族が人質に取られていたので、我らはそうした。たしかにブレイク派は誓約を守ったが、この悲劇を二度と起こしてはならなかった。今でも家族の安全は取り決めの一部に入る」

 槍機兵団は雇い主の正直さについて熱心だと、カルデラはまた教えてくれた。一度、裏切られているこの傭兵隊は、できるだけ大声で何度も不平を公に並び立て、ポリシーを伝える。問題のありそうな雇用候補者たちに警告を与えるためである。このポリシーとそれを実行する熱意は、究極の切り札になると、カルデラは考えている。

 「傭兵を正しい方向に進ませたいなら、ハンドルを正しく扱う方法を知るべきだ」と、彼は付け加えた。「ブラックリストは結局、どちらへでも行けるからな」

 それを説明してもらっていたとき、わたしはライラ共和国との契約交渉を直接見た。任務は、マーリック=スチュアート共和国のウフルへの懲罰攻撃である(書類上は目標襲撃とされていた)。ライラの世界ラーネへの違法な襲撃に対する報復だ。たいした目的はなかったが(軍事行動は許されないということを相手に思い出させるだけ)、それでもライラは傭兵を派遣して、安全保障を求めた。このような任務は一般的だとカルデラは言った。

「通常、こういう小さい目的に王家軍を使わないのは、政策上の問題だ。攻撃が交渉のための単なる"目覚ましコール"に過ぎないときでも、結局、軍旗を翻す兵士は侵攻軍と解釈されてしまう。……誰も全面戦争は望んでいないから傭兵を使う。傭兵にとって襲撃と海賊狩りが最近の飯の種だ」

 契約にサインがなされ、任務が始まった。移動中に、わたしは第17装甲偵察中隊の多彩なメンバーを紹介された。ナーゲルリンク出身の厳格な中隊指揮官リチャード・ティガルトから、人目を引く技術者長アイリア・マルヴァロまでがいた。この作戦には1個中隊で充分だった。カルデラと私自身は完全に傍観者だった。ウフルに到着するまで数週間の旅は心配と退屈の混合物であった。

 戦いは熾烈で短いものだった。槍機兵隊はより小規模なメックと車両の部隊と対峙した。マーリック=スチュアート軍は引き替えに戦車4両とメック2機を失い、残りは戦場から撤退した。サンコブラのなかで、カルデラの後ろの狭苦しいスペースに乗っていたわたしは、槍機兵隊の戦士たちが傷ついた敵を撃つのを控えて生かしたまま撤退させるのを見た。他の指揮官なら最大限の効果を得るため彼らを粉砕するかもしれないところだ。任務のガイドラインを与えられていたカルデラは、事実上、敵の「一掃」が雇い主にとって強い声明になるだろうと認めた。それでもテイガルト大尉は撤退に敬意を払った。数で劣るマーリック=スチュアート軍が逃げだし、目標は捕獲でも破壊でもできるようになった。

 戦闘後に理由を聞くと(その前に、バトルメックのコクピットではね回って打撲傷を負ったわたしの医療処置が行われた)、カルデラは傭兵哲学のもう一面について説明した。それは、他のプロ兵士たちが賛美する一方で、ケンタウリ第21槍機兵隊による福音だと考えられている。

 「我らは殺し屋でも盗賊でもない」簡潔にそう言う。「我らは傭兵で、最高の仕事をするために雇われた。あの[マーリック=スチュアートの]戦士たちは同じ理由でそこにいて、同じだけのリスクを背負っている。我らが退却するときは、同じ礼儀を期待する――。時代遅れの騎士道精神に聞こえるかもしれないが、少なくとも我々と戦うときは、敵であっても公平な扱いを受けるのだ。我らのビジネスは戦闘であって、殺しではない」

 正直、生存、名誉――現代傭兵の三つのゴールであり、ケンタウリ槍機兵隊の三本の柱である。傭兵が目立つのは、戦場で栄光ある勝利を得たときでなく、危険なビジネスでプロフェッショナリズムを見せたときなのだ。我らが不確実な時代に入るとき、我らはおそらく彼らの例から学ぶことができる。

 INN特派員のリヴァ・ジュロがガラテアからお送りしました。



リヴァ・ジュロの傭兵プロフィール:ケルハウンド (12/10/33)

 3010年、ふたりの「兵隊ごっこをする金持ちの甘やかされた子ども」がガラテアに到着した。彼らは、すぐに凄腕の技術者チームを編成し、新たな畏れられる傭兵連隊を作り出す大計画の第一歩とした。このやり口はうまくいき、最も熟達した部類に入る戦士たちを引き寄せ、そう遠くないうちに、このような謙虚な始まり方からケルハウンドが生まれたのだった。彼らが広く知られているのは、エリートの技量によるものだけでなく、ライラ国家、シュタイナー家との強い結びつきによるものであり、ウルフ氏族(放浪)のホストとしての役割によるものであり、ヘイムダールと呼ばれる秘密結社とのつながりを噂されてるからである。ケルハウンドは何度もホロドラマやニュース記事や歴史書の中心となってきた。傭兵ビジネスに携わる者は誰でもケルハウンドの噂を聞いており、また彼らエリート傭兵と提携してビジネスを始めるチャンスをつかんだ者さえいるのだ。

 ケルハウンドの初期の歴史は、イアン・ダヴィオン国王が死んだマローリーワールドの戦いから、第四次継承権戦争にメリッサ・シュタイナー(次期国家主席)の護衛役を務めたものまで、31世紀のもっとも重要な戦いを含んでいる。氏族侵攻のあいだ、彼らはルシエンでウルフ竜機兵団、クリタの精鋭部隊と肩を並べて、スモークジャガー、ノヴァキャットと戦った。また侵攻の最終局面においては、再生した星間連盟の兵士たちとともに幾度かの作戦に参加したのである。連邦=共和国内戦のあいだ、彼らは元国王=国家主席であったヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンの側につき、ピーター・シュタイナー=ダヴィオンのためにライラの首都ターカッドを取り戻すのを助けた。放浪ウルフ(ファルコンとウルフの拒絶戦争以来の同盟者)と肩を並べた彼らは、聖戦を生き延び、数多の勝利を重ね、仲間であるウルフ竜機兵団の戦士たちに安全な避難地を提供したのである。

 ケルハウンドの所領であるアークロイヤルを訪問した者は、いたるところにこの部隊の誇りと歴史を見いだすだろう(とくにモーガン・ケル、パトリック・ケル以来の創設者で指導者であるケル一族が所有する宮殿では)。ウルフ竜機兵団とケンタウリ第21槍機兵隊のように、彼らの評判はもっとも汚れなきもののひとつである。そして戦場の内外での高い規範がある。シュタイナー家とウルフ氏族へのつながりも明白であり、愛国心と兄弟心の両方を見せている――このふたつは傭兵隊には珍しいものだ。

 なにがケル・ハウンドを動かすのか、答えに近づくべく、わたしは広報担当官ラファエル・ブラッドレー少佐へのインタビューを首尾良く成功させた。彼はハウンドに関する疑問点や他の魅力的なことについて説明してくれた。

 「ケル一族は血統よりも婚姻でシュタイナー家とつながっています」ブラッドレーは言う。「ですが、関係は同じくらいに深くなり、双方の道に達しました。シュタイナー家は内戦のあいだでさえもハウンドに敬意を払ってきました。我らの戦力の半数は、聖戦の前でも後でも、国家主席から直接与えられたものなのです」

 「でも、単に成功の代わりに渡されたものではありません」ブラッドレーは微笑み、ウィンクして、すぐに付け加えた。「仕事を最高に上手くやってのけた報酬なのです」

 傭兵隊内を超えたところにもまた家族の絆が見られる。この絆は、ケルハウンドの後継者たちをシュタイナー家と結びつけただけでなく、放浪ウルフ(本拠地をわけあっている)とも結びつけた。フェラン・ケル(いわゆる放浪ウルフの初代氏族長)は、ケルハウンド創設者モーガン・ケルの実子なのである。彼は侵攻の初期にウルフに捕らえられたのだ。彼の影響はいまだに見ることができる。傭兵と氏族人は友情を分け合っており、家族の感覚は強調されてきた。このことが聖戦終了後、ジェイドファルコン氏族の攻撃に対するライラの中心的な防衛となったのである。

 ケルハウンドの下を訪れているあいだ、本物の作戦行動を見ることはできなかったのだが、ブラッドレー少佐は親切にも模擬戦闘訓練への同行を許してくれた。彼は強化小隊を率い、現地のウルフと戦った。低出力、ペイント弾を使った、傭兵のメック5機、氏族も同数の戦いである。両陣営の戦士たちの技量と勇気は明らかだった。本当の戦いよりも通信でのやりとりが多かったのだが、両軍とも目標を達成するために激しく戦い、そして「戦闘」はどう転がってもおかしくなかった。

 最終的には、地雷を使った巧妙な罠によってブラッドレーがこの日の勝利を収めた。彼のウォーハンマーが小隊員(ランスメイト)の助けで窮地をかろうじて脱したときに、追ってきたスターキャプテン・ダニエルのマッドキャットをキルゾーンに引き込むことに成功したのである。シミュレーターのコンピュータが75トンのマシンをシャットダウンすると、ケルハウンドの回線に勝利の声が響いた。ウルフの対戦相手が祝福と笑いで答えた。メックを使ったチェスの親善試合が、戦友たちのあいだで勝負を決したのだった。

 すべての大部隊と同じように、ケルハウンドはエリートの技量と独特のスタイル(名誉と情けを捧げる)を通して、名声と富を勝ち得てきた。だが、他のなによりも、家風がハウンドがなんであるかをはっきりさせるのである。団結の精神は戦場を超え、また単なる政治的なものよりも広がる。ときにはそれが一時的に組み合わさるかもしれないが、ハウンドは止まることなく1世紀以上も活動してきた。



リヴァ・ジュロの傭兵プロフィール:ローニン (3034年1月5日) The Ronin

 今日、活動しているすべての大規模な傭兵隊のなかで、ローニンはおそらくもっとも厳しい、不屈の存在である。元は、ドラコ連合第10ゴースト軍団の残存兵力から結成されたその兵士たちは、他の者たちと違うように見える。ストイックな戦士たちの目を一瞥して、そのことを理解せねばならない。

 わたしが最初に気づいたのは、彼らの明らかな外国人嫌いの気質である。カメラマン(連合に血筋をさかのぼる)は同行を許されず、わたしは部隊のなかを歩くのに彼らと同じ衣服を身につけねばならなかった。2名の武装したガイドがいつでも同行し、戦士たちを「惑わせる」かもしれない可能性を最小限にしていた。わたしの身が完全に保証されていた一方で、彼らは傭兵であり安全であることはないと確信した。わたしのようなガイジンは信頼を容易に勝ち取れるものではなかった。

 「我らが生まれてから」護衛の一人であるイシュラ・マサキは説明した。「我らは周囲に裏切られてきた。もうそう簡単にそんなリスクは犯さない」

 ローニンは明らかにドラコ連合の出身である。ドラコは日本の封建的な制度を持つ富める国で、サムライの掟に縛られ、紛れもなくクリタ王家に統治されている。だが、第10ゴースト軍団は、最初に結成されたとき、この社会の犯罪者集団であった。他のゴースト連隊と同じように、ヤクザの工作員や連合社会の屑から隊員が集められた。連邦=共和国の強襲をなんとか食い止めるべく、前連合軍司令官セオドア・クリタが苦肉の策略を巡らした結果である。戦闘の日々で力を実証してきたゴースト連隊は、聖戦のときまでに、DCMS(ドラコ連軍)の正統な一部となったのだった……名誉ある部隊だったとの言い分と事実はいささか異なるのであるが。

 実際に、全ゴースト連隊中で、第10隊はおそらく最悪の評判を得ていた。内部争いがその理由である。全隊員は、ライバルであるふたつのヤクザ(組)出身者で構成されており、両者は部隊の支配権を巡って争っていたのだ。

 「あのころ、我々は連帯していなかった」ローニンでガイドを務めてくれたファン・ロコヨ中尉(チューイ)は認めた。「ヤクザの2大帝国――ジリガワとミニトマ――が我らの隊員になることを要求したのです。不幸なことに、このふたつの帝国は意見を違えていましたし、多くの……不快な事件が初期にあったのです」

 実際に、内戦で第10連隊は破滅のふちまで追いやられ、その後、連合政府が問題を解決するためにISFの工作員(第三の組の戦士を装っていた)を送り込んだ。この詐欺的行為は、争いを終わらせるのに成功したけれども、第10隊ではいまだに裏切りと見なされ、離脱に結びついた。

「最後には、我らは主君(クリタ家)を許すようになった。あのペテンで我らが結束したからだ」ロコヨは言う。「でもその後のひどい裏切りには耐えられなかった」

 聖戦のさなか、第10ゴースト(まだ連邦=共和国内戦最終局面での損害から回復していなかった)は、ワード・オブ・ブレイクの猛烈な強襲からクエンティンを守れと命じられた。クエンティンは戦略的な世界で、地球からちょうど2度のジャンプで到達できた。すさまじい戦役のあいだ、援軍が約束されていたのに、なにもやってきはせず、連隊のほとんどが粉砕された(最終的に彼らは勝利した)。だが、DCMSは、良い仕事に感謝し、必要な救援物資を送るよりむしろ、第10隊にブレイク派と対する攻勢作戦の準備を命じたのである――成功のチャンスはほとんどなかった。この二度目の大きな裏切りが、部隊の放棄とローニンの設立につながったのである。

「我らは国を守ったのに、また犠牲を要求された。そのとき、突如、我らは主君が死にものぐるいになりすぎたと気づきました。名誉をかけるに値する主君を失い、我らはローニンとなったのです。主君を持たぬ戦士という意味です」

 ローニンは、再建と新兵募集(他の粉砕された連合軍部隊から)のために一時期戦闘から遠ざかった。仕事ができる状態になったのは、ブレイク派による聖戦が終わりに近づいたころだった。だが、戦いで免罪されたかもしれないのに、クリタ家はすでに判決を下していた。ローニンは無法者、脱走兵と見なされ、再び連合宙域に姿を現したら処刑されるだろう。

「それ以来」ロコヨは言う。「我らは故郷もなく、過去もなく生き続け、自身たちのためだけに行動している。龍は常に我らのうしろにいて、心と悪夢のなかで我らを駆り立てる。だが我らは我らの名誉のために戦う」

 第10ゴーストの離脱以来、ローニンの二世代が生きて死んできたのだが、子孫たちはまだ離脱の「不名誉」に面している。いつか法的に帰還できる日が来たとしても、彼らが知るのは傭兵としての人生だ。兵士として雇われてぎりぎりの生活を営んでいる。ローニンの戦士にとって、人生とは安らぎを見いだし、失われた栄光を探し求める永遠の闘争であり、この傭兵隊の全隊員がそれに死の誓いを立てている。

「カルマが我らを導く」ロコヨは言う。「それは我らを明確にしもする」



リヴァ・ジュロの傭兵プロフィール:ウルフ竜機兵団 (3034年1月5日)

 ウルフ竜機兵団。他部隊と比べてキャリアは長くないのだが、その名は伝説的である。その名は、敵に恐怖、畏怖、嫌悪、憎しみを呼び起こさせ、その一方で他の者たちには敬意、賛美、畏敬のみを与えてきた。彼らは神秘に包まれて登場し、エリート傭兵隊とてし王家に仕え、そのあいだにまだ来ぬ侵攻軍のためにスパイ活動をした。だが侵攻が始まったっとき、彼らは中心領域についた。彼らの隠されていた実体と目的は、時の経過によって最終的に変わった。裏切り者、盗賊、反逆者と呼ばれることもあったが、中心領域で最高の戦闘部隊のひとつとして生き残ったのである……聖戦の恐怖でさえも彼らを完全に破壊できなかった。

 だが、今日のウルフ竜機兵団はどうなっているのだろうか? 60年前、アウトリーチは包囲され、この伝説的な部隊の半数以上がブレイク派の猛攻によって死んでいった。答えを探すために、わたしは竜機兵団の現在の本拠地であるザンデリを訪れ、著名なブラックキャット大隊と行動を共にした。彼らは争いの絶えないグレートXの世界で作戦を行うために、準備を行っていた。このエリート傭兵隊がジェイドファルコンとの戦いで活躍したあとで、すぐ明らかになったことがあった。聖戦で悲劇があったとしても、ウルフ竜機兵団はその伝説的な力をまったく失っていない……。

「ルシエン(の戦い)のあと、我らは多少変化した」ブラックキャット隊副長でわたしのガイドを務めたドナテッロ・ランバート少佐は言った。「たしかに、竜機兵団は契約を交わし、他の政府のために戦った。だが広い視点を持っていた。我らは他の傭兵の手本であったのだ。我らの故郷アウトリーチは、ガラテアが没落したあとで仕事を求める傭兵隊を引きつけた。対氏族で結束していた中心領域の人々にとって、我らは好都合なことに敵をよく知る専門家だった。我らがいつか国家を作るという話もあった。もしかしたらプロの兵隊をこれっきり辞めるかもしれないと」

「もちろん、そうはならなかった……」

 聖戦の第一撃で、アウトリーチはワード・オブ・ブレイク軍によるすさまじい強襲を受けた。ハーレフ(傭兵取引の中心都市)は廃墟になった。レムス大陸にあった竜機兵団の産業基盤は壊滅した。聖戦が始まった日、アウトリーチには3個連隊がおり、粉砕された部隊を含む1個連隊以下が脱出した。彼らは放浪ウルフ居留地(アークロイヤル)をつかのまの安息の地とし、再建のための奇妙な、普通と違う方法をとったが、長いあいだ、かつての戦力を回復できなかった。

 今日、竜機兵団はこの星から遠く離れ(それが彼らを深淵から救った)、シュタイナー家のライラ共和国との契約の下に仕えている。ザンデリを本拠地として、竜機兵団はファルコン軍に対する任務を引き受けているのだ。ファルコンはグレートXからダストボールにいたるまで、中間地帯にある5つの国境世界を求めている。ここ数ヶ月の戦いはひどいもので、繰り返される衝突が惑星の政府をほとんど破壊してしまった。政府ビルにはためく旗は毎週変わっているかのようだった。

 ブラックキャット大隊にとって、今回の契約でファルコンと戦ったのはこの日が初めてだった。目標は、惑星北部の奥地にあるファルコン指揮・司令センターである。最近、ファルコンがグレートXを再奪取した後で建設したものだった。たやすい任務であるが、挑戦は残されていなかった。この強襲は、シュタイナーによる強襲の前衛になると予想されていたのだ。したがって、熟練したプロフェッショナリズムと、数十年の経験から来る効率性とともに、戦闘計画は作成された。第二目標が確認され、兵士たちは装備を整えた。ほとんどの傭兵隊にとって、この作業は移動中に行うか、最大二週間出発を遅らせて行うことになるかもしれないが、竜機兵団は三日で準備を終えた。8日後、ブラックキャットはグレートX星系のパイレーツポイントを通って到着した。

 強襲は緻密に実施された。竜機兵団の航空機(主力部隊の3時間先にいた)が前進し、衛星ネットワーク、地上基地レーダー、通信センターを殲滅して、友軍の降下地点を確保した。一度着陸すると、竜機兵団の降下船群は完全1個中隊のメックと二倍の装甲部隊を展開した。間接砲隊もまた、地上の艦船3隻が作った臨時の司令センターを守るためにひとかたまりとなった。ファルコンは自然とすばやく移動した。

 ファルコンの戦士は猛烈だったが、最小限の支援しかなかった。敵を認識した彼らは助命を求めも与えもしなかった。交戦規則はなかったが、竜機兵団には数で劣る敵がいた。装甲部隊が敵の側面を打ち、足の速いホバークラフトが回避戦術で後部を叩くなかで、竜機兵団のメックは、目標に近いゆるやかな平原にて、ファルコンととことん撃ちあった。非戦闘員は戦場への立ち入りを許されず、わたしは司令センターに送られてくる情報を降下船〈ジェイム・ウルフ〉の巨大なホロタンクで見ているしかなかった。1分以内に、ファルコンの強化三連星隊は破壊され、まだ動けた1個星隊のメックだけが撤退していった。にもかかわらず、戦いは高い代償をともなった。即座の勝利と引き替えに、4名のメック戦士と5名の戦車兵が失われたのだった。

 目的を達成するため、残された竜機兵団(戦力を保持していた)が前進していたまさにそのときに、復旧チームが戦場に緊急出動し、残骸から回収できるものを吟味していた。生き残った両陣営の戦士たちは、医療ケアを受けることになり、捕虜は竜機兵団に「吸収」される良い機会を得た。

「我らはまだルーツを保っている」吸収のプロセスについて尋ねると、ランバートは言った。「氏族の風習を守るなかで、戦場で捕らえた戦士はボンズマンになるかもしれない。もし優秀なら、あとで竜機兵団に加入できる。おぼえておいてくれ、大部分が拒否して、身代金をとって釈放するか、送還するのに雇い主に帰すのだが、何人かは――ほとんどがもちろん氏族人だが――ボンズマンとなる選択肢を選ぶのだ。なぜならまた戦えるチャンスがあるかもしれないからだ……」

 激しく戦い、計画通りに進んだ戦闘は、竜機兵団の最後のメック2機が基地に帰還するとあっけなく終わってしまった。ちょうど日暮れの時間で、生々しい傷痕が覗いた。もうひとつの任務は完了した。物的損失を埋め合わせるくらいの充分な回収を得たのだ……人的資源を除いて。

 目標の保持を命じられた竜機兵団は、もう一週間グレートXに残り、元気なライラ軍が到着すると胸をなで下ろしたのだが、ブラックキャット隊はまた戦える状態にあった。損害を修理し、この地域のファルコンの抵抗を一掃していたのである。シュタイナー家にとって、得たものは計り知れなく、短い期間であってもグレートXの所有権を再度主張できた。竜機兵団にとっては、彼らが中心領域でもっとも恐ろしく効果的な戦闘部隊のままでいるとさらなる証明をできたのだった。

 INN特派員のリヴァ・ジュロがザンデリからお送りしました。



プロフィール:ギャラクシーコマンダー・アナスタシア・ケレンスキー、スティールウルヴズ指導者

 表舞台に出たのはわずかに二年前なのだが、ギャラクシーコマンダー・アナスタシア・ケレンスキーは、極高周波発生装置(HPG)ネットワークが崩壊し、スティールウルヴズが現れて以来、嵐の中心にいる。ある者は彼女を愛し、ある者は憎んでいるが、誰もが求めているのは、スティールウルヴズの猛烈な新リーダーが実際には誰なのかということだ。今夜のスペシャル・プロフィールは、もしかしたらスフィア共和国の最も危険な敵かもしれないとされる女性についてお送りする。

 INNの記録によると、アナスタシア・ケレンスキーとして知られる女性は、3105年、ライラ共和国の(放浪)ウルフ氏族本拠地であるアークロイヤルで生まれた。彼女がケレンスキーの血筋を引くのは明白だが、正確な血統はウルフ内で固く秘密が守られている。だが、彼女の記録から、この激情的なメック戦士について多くが示唆されている。

 アナスタシアは最初の階級の神判で4機撃墜を記録した。これは戦士の神判で珍しい功績であり、ケレンスキーの血統で達成した者は歴史上一人しかいない。その唯一の戦士こそ、他ならぬ悪名高きナターシャ・ケレンスキー、一世紀以上前にウルフ竜機兵団の一員として中心領域を恐れさせた伝説の「ブラックウィドウ」である。外見が似ている(ウィドウのトレードマークとなっていた暗い赤の髪を含む)ことと相まって、アナスタシアはナターシャの直系子孫であると信じられている。

 だが、優れた戦士である一方、放浪ウルフ内の多くが彼女の指揮能力を疑った……特に、中心領域を守る守護派政策で知られるウルフの中で、彼女は中心領域を征服する反動的な侵攻派の視点を持っていたので。実際、上官の一人、バルドリック・ケルによるおおまかな分析には、「衝動的でせっかち」と記されている。アナスタシアは前線部隊の候補から外され、記録によると少なくとも一度、この問題に関して不服の神判に敗北している。

 挫折があったが、アナスタシアは24歳の時に、ブラッドネームを勝ち取る最初の機会に飛びついた……3129年、ジェイドファルコン襲撃の際に、スターコーネル・シドニア・ケレンスキーが死亡したのである。実戦経験が不足しており、星団隊指揮官としての能力と才能が証明されていなかったことから、この神判でアナスタシアのスポンサーになる者はおらず、グランドメレーに出ることを強制された。シブコを出たときにスターコーネルの階級を勝ち取ったのと同じ、驚くべき腕前を見せたアナスタシアは、メレー参加者を圧倒したのみならず、その後の挑戦者すべてを倒し、ついに切望したケレンスキーのブラッドネームを勝ち取ったのである。フラッドネームと階級を得たのだが、ケレンスキーの個性は、放浪ウルフ氏族の伝統と政治にぶつかり続け、さらなる不服の神判、拒絶の神判に結びついたのだが、降格することはなかった。神判の前と戦闘の最中に、ケレンスキーは繰り返しウルフ氏族の戦士として手腕を実証し、批判する者たちをしばしば愕然とさせたのだった。

 その後、3132年8月、HPGネットワークが中心領域全土で崩壊した直後、アナスタシア・ケレンスキーはリョウケンIIバトルメックと共にウルフ氏族領土から消え失せた。確認された証拠はないのだが、その年の後半、スフィア共和国第III宙域における戦闘の記録、特にディーロンとアケルナルのもので、ケレンスキーと特徴が一致し、リョウケンIIを畏るべき技術で操る女性が、親共和国軍を支援したことが示されている。ディーロンの撃ち合いでは総統その人を助力し、アケルナルではスティールウルヴズの侵攻を押し返すのを助けた。この女性、タッサ・ケイは、アナスタシア・ケレンスキーなのだろうか? 確かに類似点が多くあるのだが、どうやってスティールウルヴズに落ち着いたかは、いまだ議論を呼んでいる。

 知られているのは、アケルナル争奪戦からそう遠くないうちに、ケレンスキーが再び姿を現したことである。場所はティグレス、スティールウルヴズ派閥の本拠地にして、スティールウルヴズの指導者、ギャラクシーコマンダー・カル・ラディックの司令本部だ。スティールウルヴズでの階級の神判でスターコーネルになったケレンスキーは、ほぼ「同胞」として受け入れられた。新たな戦友たちから得られた信頼はアークロイヤルでと同じようなものだったようだ……なぜなら、この月、スティールウルヴズが行った数度の交戦で、アナスタシアは参加しなかったからだ。

 3133年5月、ケレンスキーは素手の戦闘で、カル・ラディックを破り、殺した。勝利の褒賞は、ラディックの階級とスティールウルヴズの指揮権だった。軽率な決断を下した理由は完全に説明できるものでないが、直後、第III宙域、第IV宙域で各種のあまり重要でない世界を攻撃した後、ケレンスキーはスティールウルヴズを最初の重要目標地点、ノースウィンドに導いた。最終的にはタラ・キャンベル女侯爵のハイランダーズと聖騎士エゼキエル・クロウの連合部隊に敗れたのだが、ノースウィンドで見せたリーダーシップと戦略能力は、スフィア共和国の人々にとって新しいスティールウルヴズが現れたことの警告となったのである。ケレンスキーの下で、小規模な守備隊に挑戦することも、小さな勝利を狙うこともなくなったウルブズの作戦行動は、いまや共和国を支持する中心人物たちに直接向けられている。ケレンスキーが舵を取るスティールウルヴズは、もう一度、恐れられる勢力となったのだ。







傭兵の世界



惑星詳細:アウトリーチ Outreach

恒星型:K9V
星系内位置:2番惑星(8惑星中)
衛星数:1(ケルベロス)
ジャンプポイントからの行程: 3日
海面比率:75%
大気圧:通常(呼吸可能)
重力:1.10
赤道面の気温:24度
原始生命の種類:魚類
人口:116万人
統治者:エマニュエル・ホリングス
惑星軍総督:ブリアンナ・ウルフ

概要:

 アウトリーチは31世紀の半ばに傭兵取引の中心地だったことで知られる。星間連盟の軍事オリンピックが開かれ、後に有名なウルフ竜機兵団(氏族から傭兵になった)と、メック生産大企業GM=ブラックウェル社の本拠地になった。だが、今日、この世界は以前の影に過ぎず、荒廃し、放射性の燃えかすとなり、わずかな残った魂が故郷を求めている。歴史家の多くが、ワード・オブ・ブレイクによる聖戦は3067年後半のアウトリーチ強襲から始まったとしている。そのとき、裏切り者の傭兵隊が行った電撃的な奇襲によって、惑星首都のハーレフが打撃を受けた。その作戦をブレイク派が調整・支援していた。次にパイレーツジャンプポイントからの待ち伏せで、ワード・オブ・ブレイクの戦艦が、惑星の宇宙防衛を抹殺した(ウルフ竜機兵団の全艦隊、両軌道バトルステーションも破壊された)。この銀河でもっとも畏れられた傭兵隊の生き残りが、絶望的な結集か撤退をしようとしたまさにそのとき、ブレイク派の艦隊が、艦砲射撃と核弾頭で惑星を爆撃した。レムス大陸(竜機兵団の軍事製造研究施設、テツハラ訓練場、GM=ブラックウェル社の生産工場があった)は核の炎で完膚無きまでに破壊され、そのあいだロムルス大陸の主要都市は戦艦とバトルメックの砲撃で続けざまに打たれた。竜機兵団と同盟部隊の残存兵力は、ホロコーストから脱出した……3000年代の初期に氏族の同胞を捨てて以来、本当の唯一の故郷になっていた星を手放したのである。いま惑星に残されているのは、限定的に居住できる岩場だけである。その海洋(アルゴシャン海)はレムス荒廃によって飽和している。ロムルスでは植物がほとんど生長せず、農業と商業はドーム都市か地下都市で続き、激減してしまった人口を支えている。空気と水の浄化装置が外部から輸入され、惑星の汚染された物質を取り除く。アウトリーチの実質的な首都で、宇宙港があるのは、ニューカーニーだ。ハーレフの廃墟から作られた地下都市で、カーニー湖(アウトリーチにおける新鮮な水の最大の供給源)のほとりに位置する。固い粘土層の湖を見下ろすニューカーニーには、惑星人口のほぼ半数が住んでいる。都市の郊外にあるジェイム・ウルフ記念恒星間宇宙港は、ウルフ竜機兵団の創設者・指導者に捧げられたものだ。この人物は、第四次継承権戦争後にアウトリーチの新たな時代を産み出し、そして聖戦での運命的な惑星防衛の最中に死んだのだった。



惑星詳細:ガラテア Gatatea

恒星型:F8II
星系内位置:6番惑星(8惑星中)
衛星数:1(小ガラテア)
ジャンプポイントからの行程: 12日
海面比率:35%
大気圧:通常(呼吸可能)
重力:1.0
赤道面の気温:55度
原始生命の種類:ほ乳類
人口:6億2821万8000人
統治者:ブラッドフォード・ノヴァコフスキ
惑星軍総督:セリーヌ・リヒトホーフェン

概要:

 黄白巨星の軌道から遠く離れているのだが、それでもなおガラテアは暖かく、赤道と熱帯地方に大規模な不毛の地が広がっている。熱くない地域や北極、南極(太陽光線がそれほど強くない)では、大地が何世紀も紫外線にさらされたため、殺菌され、窒素に欠けている。その結果、ガラテアではほとんど植物が育たず、海洋から伸びる川岸に見られるのみだ。アメルジア海は北極地帯に、キレリ海とパラダイス海は南極地帯にある。だが、三つの海洋はすべて陸地に囲まれ、惑星中に跨るラボックス大陸に閉じこめられている。不毛な環境を与えられた最初の入植者たち(2250年)は、ガラテアモグラと呼ばれる、毛に覆われた、穴に住む、齧歯類じみた肉食獣が、生態系の頂点に立っていることに驚いた。実際に、初期の測量技師たちがこの世界を予備調査したところ、惑星の生態系は地下水脈が根本になっているらしいとわかった。この理論は、惑星全土の地下にオアシスが発見されると一部が実証された。オアシスでは、非常に独特な動植物が進化していたのだ。だが、反技術的な宗教集団(アーミッシュ、ネイティブアメリカン、アフリカ出身者が含まれていた)が植民すると、それ以上の調査は不可能になった。地球同盟への技術依存を逃れたいと切実に願っていた植民者たちは、調和と共に生きていた。その後、ガラテアは地球帝国とライラ共和国の共同統治を受けることになった。星間連盟の下で、ガラテアはSLDFの訓練地となり、星間連盟の技術者が、無秩序に広がった宇宙港ガラポート(首都ガラテアシティの北部)の建設を助けた。さらに、帝国政府が資源に富んだ世界を開発のために解放すると、採掘・精製企業が群がった。自然主義者たちはガラテア開発ラッシュのなかで脇に追いやられつつあることに気がついた。その一方で、産業と経済は星間連盟の繁栄に依存するようになった。アマリス危機のあいだ、ガラテアは戦場となり、しばしば星間連盟軍と簒奪軍が争った。ふたたび自然主義者たちは犠牲となり、全面戦争にさらされた。戦いがやむまでに、星間連盟は混乱の渦に叩き落とされ、ガラテアもそうであった。数世紀後、生存者たちはベストを尽くした。反技術的な入植者たちは結局移住していき、南半球の一角に居を構えなおしたその一方で、より工業的に発展した北半球は鉱石と金属の輸出とその他の限られた交易でなんとかやっていった。結局、コムスターとの賢明な取引によって、ガラテア政府の高官たちはなんとか傭兵仲介所として世界を確立したのである。中心領域で働くソルジャー・オブ・フォーチュン(傭兵)たちの停留所となったのだった。人々の行き来がガラテアの好況を産み出した。犯罪率もまた増えたものの、好況は星間連盟時代をほとんどしのぐほどだったのである。だが、第四次継承権戦争後、有名なウルフ竜機兵団がアウトリーチを名誉ある傭兵取引の場として確立すると、ガラテアの幸運は再び変わった。素晴らしい規範と後援の大きさによって、竜機兵団の雇用ホールはすぐにガラテアを覆い隠した。大小の雇用主はまだガラテアで傭兵を探したのだが、この惑星は二流となり、落ちぶれた不名誉な者たちの本拠地となり、犯罪発生率が急上昇していった。しかしながら、連邦=共和国内戦に続く数年間、できるかぎりのプロを雇おうとするあらゆる勢力の代表者がやってきて、傭兵ビジネスは再び花盛りとなった。ガラテアの停滞した経済にとっては、当初はよかったのだが、連邦=共和国で内戦が勃発すると、各勢力の緊張が途端に爆発したのだった。即座にガラテアは全土に渡ってバトルメックギャング同士の争いに飲み込まれていった。戦火のなかで、土地は荒廃し、罪のない市民たちが死んでいった。最終的に惑星は、ケレンスキーによる解放のときと同じくらい荒廃した。それでも傭兵隊のグループWが争いを平定し、秩序の回復らしきものを助けたのだった。聖戦のあいだ、ガラテアはもう一度戦場になり、ブレイク派とその傭兵たちが、ライラ同盟、デヴリン・ストーン抵抗軍の軍と衝突した。それは地元の人々がかつて見たことのないひどいメック戦役であった。ガラポートとガラテアシティ、それに北半球の工業化された都市の80%が事実上破壊された。戦争に恐怖した市民たちは、デヴリン・ストーン共和国による平和と秩序の回復を歓迎した。首都と宇宙港の再建が始まり、完成までに40年近くが費やされたのだった。



惑星詳細:プレイオネ Pleione

恒星型:M8VI
星系内位置:3番惑星(9惑星中)
衛星数:1(カラン)
ジャンプポイントからの行程: 2日
海面比率:84%
大気圧:通常(呼吸可能)
重力:0.89
赤道面の気温:58度
原始生命の種類:魚類
人口:7億1864万2000人
統治者:ニコル・ラムゼイヤー
惑星軍総督:ゴードン・ウェイミューラー

概要:

 地球からの脱出初期に植民化されたプレイオネは、もっと遠くの星へ行くときの踏み石となった。惑星は居住に適さない砂漠だったのだが、豊富に水を供給できた(定期的に輸出した)。陸地は惑星の20%以下しかなく、唯一の大陸ジェズラエルの人口増加率は制限されている。点在する岩場を除いて、地形にはほとんど特徴がない。プレイオネではほとんど農産物を育てることができないので、大半を輸入に頼っている。かつてプレイオネは、カペラ大連邦国に加入するまでは、チコノフ大連合の一員であった。元の星間連盟は、プレイオネを補給地点として使い、ジェズラエルの大規模な岩場に要塞を作った。この要塞は司令部・連隊補給庫として使われた。カペラ人はこれを「サンダー・ロック」と名付けた。第四次継承権戦争では、カペラ軍がここでダヴィオンの傭兵と戦った。3057年、マーリック=リャオ侵攻の結果によってサーナ境界域が崩壊したとき、大連邦国軍は再度プレイオネを獲得できた。大連邦国が「新生」運動をしていたあいだ、プレイオネとニンポー、ポズナニは、リャオ家への忠誠を再確認した。世界の防衛を保証するため、またニンポー、ポズナニの大連邦国軍をバックアップするために、大連邦国はリトルリチャード機甲旅団をプレイオネに配備した。連邦=共和国内戦の間の3066年10月、旅団はジェノアとアルボリスを獲得すべく送り込まれた。ジェノアでは、第12ヴェガ特戦隊の手によって、リトルリチャードは災厄にあった。一ヶ月後に、プレイオネ防衛軍は故郷に送り返された。連隊の戦力は1個大隊にまで減っていた。ブレイク軍が侵攻してきたとき、この部隊は回復の途上にあった。リトルリチャード軍は勇敢に戦ったが、その甲斐はなかった。「サンダーロック」で最後の一兵まで死んでいったのである。惑星は降伏せざるを得なくなった。







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