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作成:2009/04/08
更新:2013/05/24

聖戦 3067-3081



 3067年末。星間連盟解散を機に、ワード・オブ・ブレイクが大艦隊、核生化学兵器を持って中心領域への大攻勢を開始しました。聖戦のはじまりです。
 10年以上にわたって続いたこの戦争は、対立、分裂、闘争というバトルテックのテーマの総決算的なものと言えるかもしれません。やがて宇宙は謎の人物、デヴリン・ストーンの下でひとつに結集し、これまで中心領域に存在しなかった平和というものが実現されることになります。
 そんな聖戦にまつわる記事のうち、ごく一部を紹介してみます。
 ニュース記事という性質上、各勢力のプロパガンダが多分に含まれていることに注意してください。なお、[ ] でくくられている文章は、ブレイク教団や編者が挿入したものです。










Jihad Hot Spots: 3070


傭兵の裏切り続く (3068年10月7日)

 ガラテア[DBC] - MRBCはモバイルファイアが違法離脱部隊になったと宣言した。モバイルファイアは、契約延長の交渉を打ち切り、ワード・オブ・ブレイクに鞍替えしたことが確認されている。

[このような嘘に耳を傾けるな! ワード・オブ・ブレイクは正統な取引を持ちかけたということを知って欲しい。我らは軍事アドバイザー契約の技量と勇気に敬意を払い、幅広く、エキサイティングな雇用の機会を様々に提示している]

 モバイルファイアが持ち場を放棄すると、準備不足のLAAFは不意を打たれた。モバイルファイアがニューアース星系からジャンプアウトしてわずか数日後に、ブレイク侵攻軍がニューアースを攻撃したのだ。混乱したニューアースからの報告によると、ブレイク信徒はアウトリーチ、ターカッド、ディーロンで行った残虐行為をくり返したという。近隣の星系も攻撃下にあると報告されている。

[不信心者たちが我らの名誉を汚そうとしている! 我らがターカッドで核兵器など使用しなかったことを、誰もが知っている。ムフリド、ソーン、ニューアースが集中爆撃を受けたとの報告も存在しない]

 MRBCは、ブレイク信徒に仕えた者が違法離脱部隊扱いになることを、すべての傭兵隊に思いおこさせ、釘をさした。






ガブリエルを見つけだせ
(3068年10月28日 - System Error 0404 - バックアップ送信、3068年11月20日)

 アークロイヤル[INN] - 昨年、ワード・オブ・ブレイクは、中心領域が察知していなかった戦艦の大艦隊を解き放った。「ガブリエル遺跡」がこの艦隊を作るのに役割を果たしていたことは疑いようがない。星間連盟の貯蔵庫がライラ宙域に存在するとの噂は長年にわたり存在したが、キャメロットコマンドの発見で終わったと考えられていた。だが、ワード・オブ・ブレイクはまた別のSLDF施設を発見したようなのである。

[聖なるブレイクの光が我らを導いたのである]

ガブリエル遺跡を見つけてワード・オブ・ブレイクをそこから切り離すのは、最優先の課題である。

[不信心者の目は曇っている。信ずる者だけが道を見つけるのだ!]

 ブレイク派は自由世界同盟の戦艦プログラムをスタートさせ、カペラ大連邦国に援助を与えるのに充分な資源を再発見した。

[その代価を受け取る時は近づいている]

 加えて、おそらく遺跡はブレイク派の戦艦を増やすのに寄与していると思われる。一説に寄れば50隻以下の主力艦があるとのことだ。

[ブレイクの力に震えよ!]

 矛盾した目撃例によると、奇妙なジャンプ信号は、ワード・オブ・ブレイク船のK-Fドライブがかつてないほどの性能を持っているとの証拠を積み増している。もしこれが事実なら、敵艦隊の戦力は甚だしく過大評価されているかもしれない。だが、これには恐ろしい意味が含まれている。集中した戦力を素早く展開してその地域の優勢を確保する能力は、再統合戦争時のリチウム核融合バッテリーによる広域展開のように、従来の戦略的思考を事実上エアロックの外に放り出すこととなるだろう。

[聖なるブレイクの戦士たちは五倍の力で戦うだろう!]

 他にどんなすばらしい技術(あるいは最悪の技術)が、遺跡から出てくるのだろうか? 200トンのバトルメックやメック戦士の代わりになるAI戦闘コンピュータについて再評価するべきかもしれない。

[予言されていたように、知識の金床は贖罪の武器を鋳造するために使用されるのである]





ブラックウォッチ消滅
(3068年10月30日 - System Error 0404 - バックアップ送信、3068年12月4日)

 ニューサマルカンド[VOTD] - 元SLDF連隊のブラックウォッチが、包囲されたディーロンの救援を試みた際に壊滅したことを報告する。

 フォートウィンストンのエリダニ軽機隊司令部、第21打撃連隊、旅団の家族が全滅したのだが、キャンベル大佐は1個中隊以上の第19機兵隊が生き残ったとのニュースを受け取った。ツカイードで第1親衛バトルメック連隊が壊滅し、残ったELH連隊群と連絡が取れなくなった状況において、ブラックウォッチのみが元戦友たちを助けられる立場にあった。

 オレステスを発ったブラックウォッチ(DCMSの助けがあった)はディーロンに向かい、パイレーツポイントから星系内に入った。悲劇的にも、幸運は彼らと共になかった。少なくとも1隻のブレイク派戦艦が待ちかまえていたのである。

 ブラックウォッチは他のSLDF部隊と同じように、戦艦を持っていなかった。圧倒的に不利だったが、どうやら航宙艦に戻るには遠すぎたようでブラックウォッチは地表へと向かっていった。彼らの航宙艦は、星系から追い払われる前に、2隻の降下船が破壊され、3隻目がコントロール不能のまま再突入するのを記録した。

 ブラックウォッチ連隊は、現在、完全に全滅したと考えねばならないだろう。






>>>コムスターROM通信傍受、必要に応じて再転送せよ<<<

 Flash traffic: Alert One…Alert One
 From: 戦司教キャメロン・サン=ジャメ
 SOJ/ROM Security Protocol: Gamma-Zebra 6699
 DATE/TIME: 10263068 - 2206 Zulu Prime

 ////フェニックスは計画通り進行中。全前線で進んでいる……敵は混乱し、無秩序に逃亡している。////
 ////当勧告はアウトリーチのスカージ作戦でAMC軍の残存戦力を取り逃がしたことを懸念している。AMCの4個部隊が作戦可能なまま残されている。もし結託すれば、間違いなく現在進行中の作戦が危険にさらされるだろう。////
 ////以下の部隊には、もっとも適切かつ致命的なやり方で対処せねばならない。けして過小評価するべからず。各部隊は我らの任務に多大な危機をもたらす能力を持つ。////

 ウルフ竜機兵団(デルタ旅団) - 現在位置:キーセン、ドラコ連合
 ディオスクーリ - 現在位置:モルゲス、ライラ同盟
 ワイルドギース - 現在位置:不明、最終目撃地点アルタビスタ、恒星連邦
 第13ストーキングホース - 現在位置:不明、最終目撃地点アルタビスタ、恒星連邦
 第3ディズマル・ディシンヘリテッド/バートン旅団 - 現在位置:不明、最終目撃地点ホール、自由世界同盟

////竜機兵団とディオスクーリは離れた場所にいる。干渉の可能性:低。ディシンヘリテッド/バートンはホールで大きな損害を追っている(50%の戦力と見積もられる)。干渉の可能性:低。ワイルドギースとストーキングホースは、竜機兵団/放浪ウルフ氏族がアウトリーチを襲撃した後に姿をくらました(直後、ギースの指揮官アリサンディ・フォークナーがAMCの長に指名された)。我が軍は両部隊と以前に戦闘を行っている。敗北を被ったが、両隊は戦力とタイムテーブルに重大な損害を被っている。これらの隊に遭遇した全部隊は必要ないかなる手段をとってもかまわない。明白な戦術的優位がある場合を除き、地上での交戦を禁ず。////
 ////追記:AMCはガラテアのオフィスを通し積極的に兵士の補充を行っている。活動停止中。
 ////メッセージ終了////

 >>>コムスターROM通信傍受終了<<<






ゴースト・オブ・ブラックウォッチ
(3069年1月3日)
 ディーロン[ディーロンアンダーグラウンドプレス] - ディーロン市民よ、心せよ! 侵略者どもはブラックウォッチの戦士たちが死に絶えたと言っていたが、彼らは生きていた! 現在、彼らは、武器を取った勇敢な市民たちと共に戦っている。

 戦力激減し、エリダニ軽機隊の戦友たちが壊滅したというのに、彼ら「ゴースト・オブ・ブラックウォッチ」は、侵略者たちと戦う英雄的なDCMSの戦士たちと共に戦うことを誓っている。再び、ワード・オブ・ブレイクと拝金戦士たちはかきたてられた彼らの怒りを感じることになるだろう。ゴーストは義勇兵と英雄的DCMSの助けを借りて、ブレイク派のパトロール、補給庫、強制収容所を攻撃した。

 これまでで最も大胆な作戦は、ヨミチ谷の「再教育センター」を襲ったことである。ブレイク信徒の「看守」を圧倒したブラックウォッチは数百人の囚人を解放するのを手助けした――この中には、昨年の奇襲で壊滅した第3ディーロン正規隊の捕虜が大勢いた。

 ゴーストの活動は侵略者たちにとってとても無視できないものとなっている――かなりの額の賞金が、彼らと解放された捕虜の両方に賭けられいてる。





ニマカチ工場破壊される!
(3069年3月4日)
 テマタギ[CNI] - ここ数ヶ月、オーダー・オブ・フェイスフル(忠勇騎士団)の名で知られる海賊団は、リム共和区内の世界に襲撃を仕掛け、二週間前にテマタギを攻撃した。パイレーツポイントを使ったオーダーは二日の加速の後で降下を行った。約1個連隊のバトルメックを展開した彼らはニマカチの工場へと進み、数時間でオルロフ擲弾兵隊の分遣隊とニマカチ保安隊を圧倒した。その後の二週間でニマカチ工場の全体が破壊され、後には瓦礫だけが残された。オーダーが回収品と工場で見つけた品物を持ち去っていった一方で、テマタギの市民に対するさらなる攻撃はなかった。

 だが、第3大隊を破壊された今の第8オルロフは、オーダーのような大規模で装備の良い敵と戦うには、薄く分散しすぎている。コーテリだけが近くのカンポレオーネを守るのに成功している……しかし、彼らでさえも、テマタギを攻撃したのと同じ規模の戦力にはかなわないように見える。

 憂慮すべきは、オーダーの配備している機種がワード・オブ・ブレイク製の新品に見えることである。さらに憂慮すべきは、リム共和国を無視しているかのような最近のマーリックの言動だ。あるテマタギの地元民は言う。「我々は無視されている……自分たちで海賊や帝国を払いのけねばならない。我々がとうとう助けを求めた時でさえ、マーリックは第8オルロフを送ってきただけだった……奴等は盗賊より問題だ。仕事の後でいなくならないからだ。いま我らは[第8]には対処できない驚異に直面している。我らはまた一人ぼっちでいるように思える」





混迷するコムガード
(3069年4月2日)
 アークロイヤル[DBC] - かつては誇りある中心領域の守護者と見られていたコムガード――ツカイードの血塗られた戦場で戦い死んでいき、それを証明した――は、今日、その存在への深刻な驚異に直面している。しかし、この大いなる驚異は、氏族がもたらすものでなく、ワード・オブ・ブレイクがもたらすものでさえもない……内なるものだ。

 士気――カオス境界域に駐屯する師団の酷い損害により落ちていた――は、ケースホワイト事件によりさらなる打撃を受けた。その後、首位者がクリタの工作員だったという事実が暴露され(いつものプロパガンダではなく、確固たる証拠が添えられていた)、またHPGネットワークが分断され、このすべてが組み合わさって、信頼がほぼ全面的に崩壊したのである。

 この「ホワイトアウト」の間に、コムスターからの離脱は驚くべきレベルに達し、コムガードはある種の流行病を経験した。幻滅を感じた戦士たちは単純に辞めていった。ある者は家に帰った。そうでない者たちは、引退を拒んで、傭兵としての生活を選び、一部が中心領域の装甲軍に入隊した。また大いに不安視されているのは、不確定数の離脱者がかつての同僚であるワード・オブ・ブレイクに入団する結論を下したと思われることだ。

 単純な事実として、シュタイナー=ダヴィオン戦司教が結集できる戦力は、3067年の1/3であると思われる。損害か離脱によって定数未満となった部隊の再建は容易なことではない。そしてコムスターは新兵の募集を事実上停止していると報告されている。





フォックスティース、いまだ研ぎ澄まされしその牙
(3069年11月11日)
 ミラ[FSNS] - ワード・オブ・ブレイクによる恒星連邦の世界デーメルテールの掌握はまだ完全からほど遠い。先月、マッキノン中隊がこの惑星を襲撃し、それをありありと表現して見せた。

 マッキノン襲撃隊、フォックスティースとしても知られるこの一流部隊(第7南十字星部隊所属)は、数ヶ月にわたりブレイクの手中にある世界を攻撃していった。ロス・マッキノン大尉の指揮下で、彼らは部隊の規模からは考えられないほどの混乱と損害を敵に与えたのである。作戦の目的は機密のままである一方、中隊に同行した新型バトルアーマーの実地試験の詳細がAFFSによってリリースされている。

 デーメルテールで、ブレイク派のコールトゥフェイスフルIIIデルタは、兵士を派遣して、とらえどころのないマッキノンのメック隊を追撃させたのだが、慎重に統制された待ち伏せにかかるだけに終わった。マッキノン襲撃隊のバトルメックをついに追いつめたと思ったブレイク派は、潜伏していた新型ホーバーク強襲バトルスーツが背後に現れると、混乱に突き落とされたのである。バトルアーマーからのミサイルの雨あられの中にとらわれたワードの軽量な装備はすぐに破壊された。生き残ったブレイク派が歩兵に向かう前に、マッキノンのメックが攻撃を開始した。生き残ったわずかな敵は戦場を脱し、それから我らが兵士たちはデーメルテールを離れた。

 AFFSは新装備の性能に「大変満足している」という。そして「ブレイク派を領土から追い出す」貴重な戦力になると思われている。





報復のベテルギウス
(3069年11月12日)
 ベテルギウス[FWLN] - ウィスキー川沿いに立つフィルミール商業プラントの上空は晴れ渡っている。ここは春であり、夜明けだ。空は東に行くに従い銅、赤、金へと変わり、太陽光がイミールから昇る煙の中を突き抜けていく――そこは炎上する都市である。第1自由世界軍団がコンキスタからパイレーツポイントを通ってベテルギウス星系内に入ったのは、地元時間の正午であった。

 カマタ家の気圏戦闘機が迎撃に上がってくると、第1気圏戦闘機大隊(ウィラービー・ロスリン空軍大佐指揮)が敵と最初に交戦した部隊となった。ほぼトランスグレッサーのみで構成されたカマタ大隊は大気圏外での交戦を行おうとしたが、第1大隊のスティングレイとリーバー――新型シヴァに搭乗する指揮小隊のロスリン空軍大佐とバーバラ・ウィリアムソン少佐に率いられていた――が敵の盾をリボンのように切り裂いた。

 明白な航空宇宙優勢をとったトレーシー・フェントン将軍は邪魔されることなく配下の部隊を地表に下ろした。第1、第2大隊が各地の重要な軍事、兵站目標を叩いている間、第3大隊がカマタ家の要塞を攻撃した。全体の重量では劣っていたのだが、第3大隊のイーグル、レイス、ハンマー/アンヴィル小隊は、カマタのチンガウ、ラオ・フー、シャ・ユーを上回るものだったのである。

 惑星の防衛力が事実上消滅すると、フェントン将軍はベテルギウスの驚異を取り除きにかかった。その効果は、3066年のいわれなきアンドゥリエン奇襲により統一政体のドラゴンスレイヤーズとマルシガマ軍団を無力化したのと同程度のものがあった。

 我が軍のカルノフが護衛の必要なく降下地点からフィルミールプラントまでやってきた。ここの設備は、アンドゥリエン公国に対して使われるかもしれないので、取り外されていた。本記者はこの黄金の夜明けのような風景の中を何にも邪魔されず飛ぶことなる。公国と自由世界同盟にとって新たな日の前兆となるかもしれない。

 ベテルギウスより第1自由世界軍団に同行中のリズ・アルテア。





ソラリス郷土防衛同盟、ノーウェアを確保

「今からお伝えすることはすべて事実です。創作、情報操作、曲解は一切ありません。私はソラリスアンダーグラウンドのアダム・クリストフです。ワード・オブ・ブレイクの宣伝にもかかわらず、抵抗活動は続行中であり成功しています。昨夜、私は、エリック・グレイのソラリス郷土防衛同盟(SHDL)がノーウェア市近くのワード・オブ・ブレイク前線基地を叩く現場にいました」

「SHDLのメック中隊と支援バトルアーマーが、ブレイク防衛隊の6機を攻撃しました……グレイのエンペラーは最初の数秒でフェニックスホークを爆発させたのです。他のメックも活躍しましたが、地元の英雄、カール・エドワーズがヴァルキリーのコクピットを敵のスコーピオンに攻撃されて戦死しています。キャバリア兵たちは素早く敵の兵舎を占領し、ブレイク信徒を外に出しました。敵のパイロット、兵士、テック、コックまでもが一人ずつ尋問を受け、SHDLの求めていたものを提供しました。これに抵抗できたのはわずかでした」

「その間、SHDLのメックは撃墜されたメック7機の残骸を漁っていました。一部は倒れた敵をまだ攻撃し続けていました。SHDLが運んでいけなかった破片は、ブレイクの前哨基地の残骸と傲慢な狂信者たちの死体の上に積み上げられました。これは戦争の大量殺戮の不安な暗示であり、慈悲を求めも与えもしないというこの戦争の残忍なサインとなっています」

「これがソラリスの真実です。ソラリスアンダーグラウンドプレス、アダム・クリストフがお送りしました」

――3070年1月9日付け、地元の抵抗軍によって惑星外のISAPに持ち出された音声報告





新たな氏族の侵攻
(3070年12月20日)
 アレクサンドリア[INN] - ハントレスのエリダニ軽機隊との連絡が絶たれた後、不穏なニュースが氏族占領域から流れ出てきており、LAAFは辺境沿いに配備した部隊を警戒態勢に置くこととなった。ヘルズホース氏族が中心領域に戻ってきたというのだ。

 これまでのところ、ホースはウルフ氏族領のみに注意を向けているが、専門家の多くはホースが中心領域にまで足を伸ばしてくるのは時間の問題だとしている。悪いことに、ひとつの氏族があらわれたことは、他の氏族もやってくることの前触れかもしれない。すでにダイアモンドシャークが中心領域に侵攻し、静かに着実に経済的侵攻をしており、その一方でスノウレイヴンの外世界同盟到着はドラコ連合と恒星連邦にとって頭の痛い問題となっている。

 兵力が分散している状況において、さらなる氏族の辺境到着は、LAAFにとって最悪の悪夢となるに違いない。万一、氏族がいわゆる大拒絶を公然と無視して、侵攻を再開しようとするのなら、ポールズボ、コロフラティへの攻撃はスカイアを通り地球へと進んでいくものになるだろう。





諜報報告概要:ムンド・ヌーブラ
›››Encrypt/timestamp19:00hrs/08193070OR ‹‹‹

To: アダム・シュタイナー将軍
From: 工作員ナイジェル・ホーキンス、サマーセット前哨基地
Date: 3070年8月19日

シュタイナー将軍へ

 願わくば、この報告により、以前話したときよりもあなたが元気になることを望みます。アダム、あなたがお忙しいことは知っています。しかし、両陣営のアドバイザーは、私の評価を完全に受け入れてないませんが、送付した深辺境とワード・オブ・ブレイクに関する報告は最近の支出を正当化すると信じています。

 最近、我らの警備隊は、深辺境からライラ宙域に入ってくる酷く損傷したマナティー降下船を捕らえました。乗っていたのは、小傭兵偵察隊、ラングフォード・レイスです。隊員のうち、二名は重傷でした……このうち一人はワード・オブ・ブレイクの侍祭であることが判明しています。彼はしばらく前にワードと袂を分かったと主張していますが、我らは彼を最もセキュリティの高い隠れ家に拘束し、徹底的な尋問を行いました。他の大半は脱水症状と栄養不良に苦しんでおります――不十分な計画で脱出したというわずかばかりの証拠です。

 傭兵隊の指揮官は、ムンド・ヌーブラと呼ばれる世界の近くで基地に遭遇したと主張しています。彼らが言うところでは、この基地はブレイク軍に占領されており、その大半が科学者と兵士たちだったということです。しかし、アダム、私を驚かせたのは、彼らが惑星全体を破壊できるような現実離れした船を見たと言っていることです。彼らはハンザ同盟の近くでそれに遭遇し、盗んだマナティーと共にかろうじて脱出したとしています。

 これが非現実的なことだとわかっています。私は彼らの主張を一蹴するところでした――特に、このような古代の遺物に乗って、ライラ宙域に入ってきたのですから。当然ながら、マナティーほどの古い船が存在するのなら、内部で発見した技術的アップグレードは、ブレイク派に属するものであろうと我々は考えています。部下たちの大半はレイスがブレイク派のスパイであると信じています。でも、もしそれが本当なら、我らは彼らを尊敬せねばなりません――なぜなら彼らは氏族人を改宗させたことになるからです。

 私は彼らが見た船が少なくとも何らかの形で存在したと信じています。アドバイザーたちは反対していますが、この地域におもむき調査を行う偵察チームを編成いたしました。もしブレイク派が惑星を破壊できるような船を組み立てたのなら、我らはそれを見つけ、奪い取るか、あるいは破壊せねばなりません。

 あなたと同盟に永遠の忠誠を

 工作員ナイジェル・ホーキンス、サマーセット前哨基地





ベテル強襲、イレギュラーズ壊滅!

「ニュース45のアッシュリー・メイザーが速報をお送りします」

「KDNLニュースはカペラ境界域軍内の情報源から確認済みの報告を受け取りました。ワード・オブ・ブレイク第10師団の分隊がベテルでドロップシップ・イレギュラーズ傭兵団を殲滅したとのことです。この攻撃によってベテル市が破壊され、北方大陸の大半が汚染されました」

「この報告によると、ブレイク派のレベック・クレインズ司教は傭兵隊に二度目の攻撃を行い、リック・レイズリー博士を拉致して、イレギュラーズに先の敗戦の報復を行おうとしました。以前、ブレイク派はアカマーでレイズリー博士を拉致しようとしており、この時、イレギュラーズが割って入って、彼を救出したのです」

「イレギュラーズは首都外部のサロング平原に陣を取り、強化レベルIII部隊を迎えうちました。両陣営は間接砲の砲撃の応酬を行い、それから接近戦に移りました。イレギュラーズ指揮官ミドロン・プライド大佐はクレインズを不利な陣地に追い込むような機動をとったのですが、ブレイク派は以前と違ってそう簡単にあきらめることはなかったのです」

「プライド大佐がクレインズとのメック対メックの戦闘で敗れ、戦況はついにひっくり返りました。イレギュラーズは怒り狂い、我を忘れてブレイク派に襲いかかり、クレインズ隊を圧倒することになります」

「この時点で――我らがどうにか確認したところによると――ブレイクのメックの1機、おそらくはクレインズ自身が軌道上の部隊に特別な信号を送り、核兵器の砲撃を要請したようです。この攻撃はサロング平原の両軍を殲滅し、それから近くの首都と北方大陸の大半を破壊しました。損害は数百万の人命と、数十億ポンドのインフラだと推定されます」

「ブレイクの攻撃が始まった時点でレイズリー博士は首都にいたと我々は理解しています。現在の居場所はわかっていませんが、AFFSは死んだのでなく行方不明であるとしています」

KDNLニュース(FSNS特約)より特別リポート、ダニエルズ、3070年11月25日





戦線維持
(3070年12月3日)
 ニューシルティス[NSNS] - 先週、ベイドはブレイク派による災厄の被害者となった。キタリーかマラダーかレッドフィールドを拠点に活動していると思われる襲撃部隊が、惑星の首都、ニューポストを攻撃したのである。

 当初、この襲撃部隊(3〜4個メック・歩兵レベルII部隊)は装備不足の地元市民軍を脅かしかけたが、その時、AFFSのバトルメック亜中隊が侵攻軍の側面に出現した。息を吹き返した市民軍に直面したブレイク派たちは混乱し、降下船に戻って、この星系から逃げ出した。

 ベイドでの騒ぎが収まった時、AFFSの英雄たちはデヴィッド・マッキノン・マッキノン中尉に率いられていたことが明らかとなった。この人物は、伝説的なフォックス・ティースの大尉、ロス・マッキノンの従兄弟である。マッキノン中尉は、降下船の不調で一時的に立ち往生した中量級小隊と、カペラ前線から戻ってきた負傷したメック戦士と損傷を負ったバトルメックを寄せ集めにして、救援部隊を作り上げた。

 いつも率直で論争を引き起こすマッキノン中尉は、撤退したブレイク派からの回収品で臨時部隊を強化した。捕獲したブラックナイトのコクピットから話を行ったマッキノンは、AFFSが適切な守備隊を送り込んで来るまでベイドにとどまるつもりであることを発表した。

 ニューシルティスのナサニエル・ハセク元帥は、マッキノンが第20アヴァロン装甲機兵隊への帰還命令を無視したことについて、まだコメントを行っていない。このような尊大な――そして取るに足らない――アピールは、マッキノンの華やかな経歴にさほどの意味を与えないだろう。











Jihad Hot Spots: 3072





概算報告
(3071年1月18日)
 アークロイヤル[INN] - アダム・シュタイナー将軍に近い筋の士官たちは、今日、ワード・オブ・ブレイク軍の全体規模の概算に関するLIC(ライラ情報部)の報告を発表した。この報告はブレイク軍を解明するのみならず、LICのスポークスパーソン、ロビン・パワーズからの警告ともなっている。彼はブレイク軍の戦力と配備先がほとんど推論と解釈によるものであると報道陣に念を押した。

「我らに言えるのは」パワーズは言った。「ブレイク派は、偵察を混乱させ、新戦力の配備状況を隠すために、戦力を動かしているのかもしれないということだ…それに我々はライラ国外のワードの配備状況に関する確実なデータをほとんど持っていない…」

 この報告では、3070年半ば時点のブレイク派の戦力は、約45師団前後の前線部隊があると見積もられている。これは、約48〜50個の通常バトルメック連隊と、ほぼ同数の非メック部隊のバックアップに等しい数字である。

 これらの数値は、ワード・オブ・ブレイク市民軍が中心領域に対する聖戦を始めた直後の予想の倍であり、さらに、支援部隊――保護領市民軍、ワードの下で働く数十の傭兵隊――は含まれていないのである。だが、この概算が危険なもの(LAAFの戦前の戦力に匹敵する)である一方、現在、ブレイク派に対して陣容を整えている中心領域軍全体からは遙かに劣っているのである。

「消耗戦ではワードは敗北する」とパワーズ。「核兵器、細菌兵器、サイボーグなくしては彼らは滅ぶことになるだろう」

 また、この報告に記されている――友好国とコムスターの資料を引用している――ところでは、ワード市民軍(謎に満ちたシャドウ師団含む)は現在でも減少した戦力で活動しているかもしれないということだ。パワーズはその原因を、戦闘による損害と、戦争が始まってからこれら部隊を迅速に配備する必要があったからだと主張している。

「彼らが打撃を受けたことはわかっています。損失を出したことはわかっています。ワードは無敵ではありません。必ずや止まることでしょう」






牙と爪
(3071年6月20日)
 メロぺー[TNS] - 三日前、ローンスター傭兵連隊の兵士たちは、向かってくる降下船を探知した。軽蔑され、恐れられている傭兵の殺し屋、ハンセン荒くれ機兵団がメロぺーを包囲するためにやってきたのである。このニュースにも関わらず、最近我らの用心棒たちが他の侵攻軍に勝利を収めたことから、士気は高いままである。

 だが、ローンスターが一押しに荒くれ機兵団を押し返そうとすることはなさそうである。荒くれ機兵団がさらなる核兵器(エレクトラで自由の戦士たちに使ったような)を持ってきたことを、ここのだれもが信じている。もしローンスターが一カ所に集まれば、同じ戦術に対し脆弱になってしまうだろう。そうする代わりに、ローンスターが機動力を使って、低速なダヴィオンの大軍勢を殺いでいくことになると、ここのタウラス防衛軍は信じている。プレイアデス星団解放が始まった約5年前に、タウラス連合が民間人を殺したと恒星連邦に騙されて以来、ハンセン荒くれ機兵団はタウラスの部隊を次々と撃破していた。プレイアデス戦役は、ダヴィオンがタウラスに奇襲をかけて、数十年に渡る全国境地帯の緊張を破ってから始まったのだった。

 ここメロぺーにおいて、ローンスターはこの世界が犯罪部隊、荒くれ機兵団の墓地になると確信している。数週間前にレイモンド紅衣隊を跳ね返した際の回収品のおかげで、この連隊は最上級の機体(そのうち一部はワード・オブ・ブレイクの同盟軍が気前よく貸与してくれたもの)を装備している。従って、ローンスターは恒星連邦の雇った殺人鬼を数の上で圧倒しているのである。さらに、シャープレン護民官は賢明にも、バトルメックのみのローンスターを支援するために数個大隊の通常部隊を送り込んでいる。これら戦士たちの多くは、荒くれ機兵団の首にかけられた数十億の懸賞金の分け前を狙うチャンスを待っている。この賞金は、荒くれ機兵団がエレクトラで核攻撃を仕掛け、生存者たちに拷問を加えたことから、護民官自身がかけたものである。






踏み台
(3071年2月11日)
 ペシュト[ザ・ドレイク] - 先週、ワード・オブ・ブレイクがペシュトに聖戦を持ち込んだ。空から降ってくる降下船が市民を起こし、邪悪な風が苦々しい種をばらまいた。第29師団――ディヴァイン・ファイア(神の炎)――が審判のためにやってきたのだ。

 彼らはその名にふさわしかった。

 ディヴァイン・ファイアは、ビルを倒壊させ、作物を燃やし、文明を根底から引き裂いて、我らが世界を荒廃させた。だが、最悪なのは、第29とは比べものにならないほど酷い第42シャドウ師団がいたことである。

 ベリアルズ・エンジェルス・オブ・カオス。

 私はハイウェイのカーブに沿って飛ぶ、真っ黒なハンマーヘッド戦闘機を忘れることが出来ない。それは地表からわずか20メートル上を飛び、太陽光がキラキラと反射していた…

 そして白い煙を引いていた。

 神経ガスが拡散し、すべてを殺し、全員を殺した。鳥や虫が空から落ちていった。世界は突如として金属と衝突音、割れるガラスの音楽に包まれた。それから沈黙が訪れた。動かない車とトラックがハイウェイに溢れ、我が軍の兵士、メックの移動を妨げた。

 そして、5000名の民間人が犠牲となった。

 キノコ雲が昇ると、被害は飛躍的に増大した。

 だが、最も恐ろしいのは、ペシュトが降伏してすぐにエンジェルスが我らを残し、他の不幸な世界へとジャンプしていったことだ。

 私が心配しているのは、その不幸な星の名がブラックルシエンでないかということだ。






ファルコンの使者、アークロイヤルに?
(3071年4月14日)
 アークロイヤル[ARNN] - 今日、ジェイドファルコン氏族の紋章をつけたライオン級降下船が地元の宇宙港に惑星降下したとの噂がオールドコンノートのあちこちでささやかれている。政府関係者はコメントを拒否しているが、未確認の噂によるとジェイドファルコンの高官が降下地で目撃されているという。もしこれが事実であれば、放浪ウルフの旗艦〈ワーウルフ〉上で現在開催されているサミットにまたひとつの氏族が参加するという可能性が想起される。

 タマラーが荒廃し、ヘルズホースによる攻撃を受けたウルフ氏族は交渉のテーブルに付かざるを得なくなっている。我らに想像出来るのは、ジェイドファルコンにもウルフと似たような災厄に直面しているのかもしれないということである。しかしながら、氏族戦線からのニュースはそのような期待を裏切るものである。我が軍は半ダースの世界でいまだファルコン侵攻軍と戦っている最中なのだ。





ナイトウォーカーズきたる
(3071年5月23日)
 ウォリス[FWNS] - ナイトウォーカーズとは何者か? 部隊の正体を推測するのが、ウォリスのいかがわしい酒場のバックルームから、社会的エリートのカクテルパーティーまで、好まれるゲームとなっている。

 正体不明の海賊は自由世界同盟宙域では珍しくないが、空からやってきて、レグルス軽機兵の全1個連隊を片づけ、痕跡を残さず逃げ去ったことは人々の想像をかきたてた。地元のブックメーカーは賭を始めたが、アマチュアが撮影した第2軽機兵ガスコイン平原基地での熾烈な戦闘のトリビッドが公開されると、賭の申し込みが殺到した。

 何度も放映されている映像は部隊の正体についての証拠をほとんど提供していない。彼らの好む塗装は白、黒、紫で、マシンの多くは同盟の工場で作られているものであるように見える――これによって、新しい自由世界防衛軍でないかとの説に人気が出ている。だが、マリアの海賊、ブレイク派の詐称、アリス・マーリックの裏切り者、ライラの傭兵隊が高配当を出し続けている。

 ナイトウォーカーズが何者であれ――彼らの名前は、アルバトロスに乗った指揮官らしき人物が射撃を始める直前に放送したほとんど氏族的な挑戦から来ている――は、軽機兵に慈悲を見せなかった。ナイトウォーカーズのメックは脱出したパイロットを撃ち倒し、軽機兵基地にいた隠蔽壕と兵舎に潜んでいた戦士や非戦闘員さえも殺したのである。より不安にさせるのが、ナイトウォーカーズが軽機兵のみを攻撃し、ほんの一時間のところにあるローニン・メック工場を完全に無視したことである。ナイトウォーカーズが戻ってくるかもしれないと信じている者もいる。

 戦闘の残虐さとは正反対に、ナイトウォーカーズの正体に関する気楽な賭と討論はほとんど非現実的なように見える。だが、ウォリス人がいわゆる「ナイトウォーカーズ・ミステリー」に夢中になっているのは彼らの恐怖を覆い隠している。唯一の防衛部隊が虐殺された……もしこの残酷な反逆者たちが戻ってきたら、民衆が次の犠牲者になるのではないか?






さらなる氏族が来る?
(3071年6月18日)
 ウィンター[ISAP] - 過去数週間、辺境が攻撃を受けているとの噂が、ジェイドファルコン占領域から漏れてきている。スティールヴァイパーが復讐のためにやってきたのではないのかとの推測は、決定的な報告によって覆された……これまで中心領域では見かけることのなかったアイスヘリオンがかなりの戦力を引き連れてやってきたのだ。ボーン=ノーマンとエニウェアが攻撃されているのを見ると、ヘリオンはヘルズホースのウルフ氏族領侵攻と同じやり方でファルコンに向かっているようだ。この2氏族が足並みを揃えているかどうかは不明である。

 一部のアナリストは、三番目の氏族がゴーストベアを攻撃するだろうと予想している。侵攻氏族が中心領域と長く接触しすぎて「汚染された」として、そのような判断を下したのかもしれない。もし、このような粛正が実行に移されているのなら、最も重要な疑問は、どの新氏族が中心領域に残ることになるかだ。他の専門家は、本拠残留氏族のすべてが新たな中心領域侵攻を始めたことの兆候でないかと恐れている。この新たな驚異がどれだけのものになるか、現時点では不明である。






ファルコン、グレートX、ザンデリに再来
(3071年6月20日)
 アークロイヤル[ARNN] - モルゲスで勝利を収めた後、ファルコンのデルタ銀河隊はグレートXに戻ってきた。今年の前半、彼らはこの世界でライラの強硬な抵抗に遭遇し、やむを得ず放棄していたのである。デルタはモルゲスで傭兵部隊ディオスクーリを粉砕したのだが、そのために多大な犠牲を支払った。ディオスクーリ指揮中隊のヘッドハンター攻撃により、ギャラクシーコマンダー・ユヴィン・ブハーリンが殺されたと伝えられている。そしてその後の数週間で残った4個星団隊は痛めつけられた。3069年に第7タロン星団隊がべーカー3で失われたのに伴い、昇進した新ギャラクシーコマンダー・リー・ニュークレイは4個星団隊のみ(そのうち1個は装備の悪いソラーマ隊)を新たな攻撃に投入した。

 ファルコンが戻ってくるまで数ヶ月の時間を得たガイガー准将(第25アークトゥルス防衛軍指揮官。ソーリンFMMと聖キャメロン騎士団の支援を受けていた)は十二分に用意をしていた。ギャラクシーコマンダー・ニュークレイはジャイルファルコン・ソラーマ星団隊を突撃隊として使い、なんとか降下地点を確保したが、代償にこの星団隊は失われた。モルゲスの戦いからまだ回復の途上にあった残った3個星団隊は、アークトゥルス防衛軍とFMMの連合軍を突破するのに必要な火力を欠いており、その間、聖キャメロン騎士団(機動予備)がファルコンの攻撃を妨げた。第8タロン星団隊が孤立し殲滅されると、ガイガー准将は全面的強襲を通知した。生き残った第1ファルコンが脱出する時間を稼ぐために、第4ファルコン竜機兵団は壊滅したのだった。

 同時期に、イオタ銀河隊の一部がザンデリに対する二度目の強襲を行った。トゥース・オブ・ユミルとグリンバーグゴジラしかいないと考えていた第5タロン、第305強襲星団隊、ジャイルファルコンエリー星団隊は、気が付くとライラの援軍、強力な航空隊に捕まると同時に、新たにやってきたトール・ハンマーの絶え間ない間接砲攻撃に足止めされた。氏族軍はザンデリにとどまっているが、状況が変わらない限り、ライラの勝利はすぐにも達成されると思われる。

 ライラ同盟の人々は同じ疑問を持っている。氏族の無敵のウォーマシーンはついにガス欠となったのだろうか?





キタリー解放!
(3071年6月20日)
 ヌメノール[FSNN] - カペラ境界域からの混乱した報告によると、キタリーがワード・オブ・ブレイクの占領から解放されたという。情報の詳細はそれぞれ異なっているが、そのすべてが一点においては同意されている。地元の抵抗グループ(カペラ、恒星連邦政府からまったく支援を受けていない)は、ブレイク占領軍に対する有効なゲリラ戦を実施するのに充分な人員と兵器を蓄えたと思われる。7月の下旬、デヴリン・ストーンという名の反乱軍リーダーが全面的な暴動を起こし、それはキタリーの圧政を覆すことになった。

 どのようにストーン(キタリー生まれではないとされる)がブレイク守備隊を圧倒するような軍隊を立ち上げ訓練したかは不明である。しかしながら、数ヶ月にわたって、キタリーとカペラ境界域にあるその他の世界が、ワード・オブ・ブレイクにとらわれた者たちの巨大な「捕虜収容所」となっているとの未確認の噂が伝えられている。もしこれが本当なら、確かに戦意溢れる兵士たちの供給源となるだろうが、これらの報告にはもれなく「再教育センター」に関するとてつもない話を伴うものなのである。ここでは、ブレイク信徒たちが、B級ホロノベルにあるような筆舌に尽くしがたい様々な実験を収容者たちに行っているという。

 さらに重要な懸念は、ストーン(地元で英雄として迎えられている)が規模、戦力不明の軍隊を保ち続け、またキタリーの支配を恒星連邦の代表に返していない事実である。そうする代わり、彼は地区、惑星の政府を再構築して、忠実な支持者を権力の座につけているという。この動きは、キタリーの人民は専制的な統治者を交替させただけという見方を作っている。





歴史的勝利!
(3071年12月11日)
 ソラリスVII[SRN] - 自由!

 ついにソラリスVIIにいる我らはそれを味わうことが出来た。まるで、長い間足を突っ込んでいた湿地帯から抜けだし、冷たい泉の水を飲んだようなものだ。だが、12月11日、苦しさと悲しみで知られた一日を我らは祝う理由がある。ワード・オブ・ブレイクがソラリスを離れたのだ。

 ソラリス市民の多大な努力と犠牲のおかげで、この世界はワードにとって費用がかかり過ぎ問題をはらんだ星になったのである。銀河中から集まった市民で構成されるこの都市は友情の精神で結ばれようとしている――力を合わせ、自称大君主を追い払っただけでなく、この打ちのめされた世界を再建しようとしているのである。ソラリス人として自分たちのためだけにそれをするのではなく、希望の光として行うのである。

 大勢がこの日のために死んだが、我らがあきらめることはなかった。戦争――本物の戦争――の試練の中で、我らは以前より関係を深めることとなった。入れ墨をしたヤクザが青い目のライラ貴族に包帯を巻いてもらったり、カペラ境界域の戦士たちが少ないレーションをカペラの飢えた子供たちと分け合っているのを目撃したことがある。自由世界同盟の者たちまでもが、文化的違いを乗り越えて、ひとつの目的を目指した。ワード・オブ・ブレイクを追い出すのである。

 確かに、全員が苦難を味わっているわけではないのだが、我らは協力して再建に当たっている。ブレイク派と肩を並べて戦ったチームはすぐに長引く火災を消火し、家を無くした者のためのシェルターを作っている。ブルドーザーがソラリス宇宙港の破壊されたコンコースを片づけ、惑星外との輸送ルートを再開しようとしている。

 もうこの日はソラリスにとって不名誉ではないだろう。栄光となることだろう。こちら、キヴァ・クーパー。解放されし世界より。ここでは回復が始まっている!





ブレイク派タスクフォース、二週間で二度の攻撃を撃退
(3071年7月28日)
 ヴェガ[ISAP] - DCMSは、1月にコー星系でリュウケン=ヨン連隊と全支援部隊が失われたことを最終的に確認した。スモークジャガーに対するメタモラス夜間襲撃と、ゴーストベア氏族に対するクールシュヴァル防衛で有名な古参バトルメック連隊と8個通常連隊は、コー星系のナディールジャンプポイントに集結していた。インブロスIII解放を命じられたこの侵攻小艦隊は、帆を開いていた時に、ジャンプしてきたワード・オブ・ブレイクの船にとらえられた。重装甲降下船(未知の船種)の密集方陣を先陣とし、大規模な戦闘機スクリーンに支援されたブレイク強襲軍は連合の戦闘機を切り裂き、それから逃げる地上軍輸送船に襲いかかった。脱出ポッドにたどり着いた数少ない生存者の報告によると、ワード・オブ・ブレイクは無力化された航宙艦に乗り込んで、3隻を完全な形で拿捕することに成功したという。

 残骸を分析するために送られたDCMSの調査官は、インブロスIII小艦隊が完全に失われたことを確認している。だが、彼らはワード・オブ・ブレイクが勝利に重い代償を支払ったということに、いくらかの暗い満足感を得た。戦闘での損失に加え、ブレイク派航宙艦の多くが深刻な損傷を負っていると思われた。攻撃軍はやむを得ずそれらを放棄し、輸送出来なかった降下船と戦闘機もそうしたのである。

 似たような事件が二週間前に、恒星連邦のニューロードスIIIで起きたことを我々は知っている。この世界で第8デネブ軽機兵隊がアディックスにいる部隊への襲撃を準備していた。デネブの輸送船が帆を展開していたその瞬間を、またもワード・オブ・ブレイクが最適のタイミングでとらえた。プライド・オブ・アーガイル(リチウム核融合装備のスターロード級航宙艦)が帆を切り離し緊急ジャンプを行ってバトルメック1個大隊とバトルアーマー1個大隊を運んでいったが、強襲軍の残りはリュウケンと同じく殲滅されることになった。この時もまた、ブレイク派は放棄せざるを得なくなった装備を徹底的に破壊していっている。

 カペラ軍もまた同様の攻撃の被害を受けているかもしれないが、CCAFはいつものように固く口を閉ざしている。

 プライド・オブ・アーガイルのセンサー記録によると、同じタスクフォースが両事件に関わっているのが示唆されている。ワード・オブ・ブレイクは明らかに優れた諜報ネットワークを持ち、船を危機から危機に迅速に動かす、広範囲な指揮系統を確立しているようだ。






地獄より

>>>通信破損//シークエンス べーカー=べーカー=マーリック<<<

「……ブソン自由同盟は、フォートマスターズの内外にドミニの訓練基地がいくつかあるのを確認した。それは懸念の種というもの以上である。恐るべきものだ。ほぼ毎日、彼らは首都の周囲で『作戦』を行い、同盟を公に支持している者を一斉検挙している。奴等は真夜中にやってきた……」

<判別不能>

「……NGFL(ニューギブソン自由同盟)のJエドガー戦車が放った一斉射撃を受けると、彼女は飛び出し、コクピットを突き破って出てきたのである。彼女は戦車兵の何人かを放り出しただけでなく、戦車に接続し、近くのセーフハウスを破壊するのに使った――絶対に見つからないと考えていたセーフハウスのひとつである! どれくらい長……」

<判別不能>

「……間前に、我らはブレイク信徒がテストしていたと思われる新型戦車を撮影した。まるで誰かに撮られるのを挑んでいたかのように、五秒間、シルエットを浮かびあがらせたのである。まるで『今週のホラーホロビッド』のようであるが、本物の動く悪夢なのである。この恐怖を消すには、寝る前に睡眠薬を飲むしか……」

>>>通信切り取り//シークエンス終了<<<

――オリエント諜報報告(未確認)より抜粋、3071年10月10日






デイヴィッド・リーア生存!
(3071年12月24日)
 シーアン[SINS] - アラード=リャオと全大連邦国にとって喜ばしいニュースである! 大連邦国の英雄、カイ・アラード=リャオの息子、デイヴィッド・リーアが生きていたのである! 3070年、カペラスター号が痕跡を残さず行方不明となったとき、船員、乗客と共に死亡したと考えられていたデイヴィッド(ここシーアン大学の優等生)と乗組員はワード・オブ・ブレイクの襲撃隊に捕らわれていたのである。

 キタリーで虜囚となっていたデイヴィッドは、カペラ的な創意工夫を活かして脱出し、傀儡政権を倒すための抵抗運動を組織した。キタリーに残ったデイヴィッドは、正統な政府と共に侵攻軍がもたらした損害の回復にあたり、人民のためカペラ大連邦国に再統合する準備をしている。

 我らはデイヴィッド・リーアとキタリー人民の帰還を楽しみにしている。





聖バレンタインデーの勝利

[画面はメック戦士用の服を着た男。背が低く中年に見えるが、カーキ色のズボンから鍛えられた筋肉が浮き上がっている。彼が地面について振り向くと、視聴者は彼の目が警戒を浴びた青であるのを知る。彼は断固たる決意を秘めており、その顔は中心領域で最も知られたもののひとつである。ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンだ]

[カメラがパンし、あばた顔で50代の太った男を移す。その男は軍用の戦闘服を着て、シャツのポケットにプレス証を挟んでいる]

ルッソ「こちらヨセフ・ルッソです。ドネガル解放について、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン軍司教に話を聞きます。どのようにそれを成し遂げられたのですか?」

シュタイナー=ダヴィオン「同盟による勝利です。コムスター、LAAF、放浪ウルフの結集した力なくしては、これを達成できなかったでしょう」

[画面はゴーストホワイトのトヤマがゴーストホワイトのクラブと戦ってる映像に切り替わる。ルッソとシュタイナー=ダヴィオンの声がそこにかぶる]

ルッソ「ブレイク派を破るのに充分な戦力を集められたわけですね」

シュタイナー=ダヴィオン「というよりも、共に働くことでブレイク派を破ることが出来ただけなのだと言わねばなりません」

[画面は、ウルフ氏族の赤茶とグレーの塗装を施したマッドドッグAがSRMの射撃の後にLB 5-Xでトヤマを引き裂く場面に変わる。氏族人たちの攻撃により、傷ついたクラブは撤退の余裕を与えられた]

ルッソ「共同作戦だったことを強調なさっているようですが」

シュタイナー=ダヴィオン「信じてほしい、ジョー。もし中心領域がこの狂気から回復したいのなら、我々は共に働く方法を探さねばならないだろう」

――INN放送より、ドネガル、3072年2月14日





キタリー、自由の闘士たちが前進
(3072年4月10日)
 ヌメノール[FSNS] - 謎めいたデヴリン・ストーンの活動は、支持者たちがカペラ境界域でワード・オブ・ブレイクを叩くごとに驚きを作り続けている。自身をストーン・ラメントと呼ぶ臨時編成部隊を先陣に、自称キタリー自由軍はスピカ、シチュエートをブレイクが背後についた部隊から解放した。

 シチュエートでラメントは傭兵ブラック・アンガス・ボーイズを追いつめ、降伏させた。その他のワード・オブ・ブレイク兵士たちはより頑強なところを見せ、その多くが死ぬまで戦った。最新の報告によると、ストーンの兵士たちはパラディン(ベイドを本拠地とするデビッド・マッキノン指揮下の独立部隊)と合流してメンタスタを解放した。この連合部隊は現在、この地域のワード・オブ・ブレイクと戦うために移動しているところとされる。

 ワード・オブ・ブレイクがストーン軍に対し有効に動けていないことは、彼らが致命的に引き延ばされていることのサインとなっている。ターカッド解放と続くニューアヴァロンその他の重要世界の戦いは、ついにブレイクの戦争機構に打撃を与えるかもしれない。

 その間、デヴリン・ストーンの活動は疑いの目で見られるようになっている。それは彼の支持者たちが地元の指導者、高官に取って代わっているからだ(彼らがブレイクの後援か脅迫で動いていたかに関わらず)。それが単に秩序を再建するのに必要な動きなのか、ストーンが大王家の混乱を利用して個人の王国をうち立てようとしているかは、現在では不明である。






堕ちし偶像

カーク・キャメロン=ジョーンズ「ソーニャ、荷物をまとめろ! ここを出なければならない! マーク、何が起きているか確かめろ! 第1はどこに行ったのか?!」

マーク・ブランドハーバー(大佐)「グローブスナー少佐が現在、エスプラナードで敵と交戦中です、総帥! しかし、奴等はこの宮殿に接近しています。今すぐ次の地点に移らねばなりません!」

キャメロン=ジョーンズ「わかってる、マーク! くそっ、わかってるんだ! ソーニャなにをやっておるのだ、急げ!」

ソーニャ・アモーラ「(静かな声で)落ち着いて、カーク、愛しい人。パニックになっている時間はありません……」

キャメロン=ジョーンズ「時間がない――? 都市が攻撃を受けてるのだ! どうか、我が最愛なる――急いでくれ! ここを出なければならないのだ!」

アモーラ「(静かな声で)私は心配ありません、愛しい人。私はどこにも参りません」

キャメロン=ジョーンズ「なんだって? 愛しい人、私は心から君を愛しているし、君がこの町を愛していることを知っているが、君を残してはいけぬ! ナイトウォーカーズはウォリスの人々を皆殺しにしたのだ! おいていくものを気にしなくていい。安全が確保出来たら、君が望むものはなんでも用意する!」

アモーラ「(薄く笑い静かな声で)ああ、愛しいカーク。望むものはすべてここにあるのです。このオペラは終局にたどり着いたところなのですよ」

キャメロン=ジョーンズ「愛しい君よ、いったい何を言っているのだ? この都市は――」

ブランドハーバー「ミズ・アモーラ、どうか一緒に来てください。力ずくで、というのは避けたいのです」

アモーラ「(ドアの開く音、声色が変わる)ああ、私もそれをアドバイスする、大佐」

ブランドハーバー「き、聞いてください、レディ! 陛下がどう思っているのかは知りませんが、あなたを相手にしている時間はないのです。あなたが10秒以内に荷物をまとめなければ、おいていきます!」

キャメロン=ジョーンズ「マーク、彼女によくそんな口が聞けるものだな?」

ブランドハーバー「お許しください閣下、しかし時間がないのです。メックが外にいる音が聞こえます。私の任務はお二人を安全に――」

アモーラ「ああ、ここは実に安全だ、大佐。といっても、おまえは違うが」

ブランドハーバー「なんですって? 脅しているのですか? いいだろう! ここにいろ! 宮殿を燃やす海賊たちにおまえの魅力で挑むがいい! 閣下――」

アモーラ「(嘲笑し、固い声で)ああ、おまえたち『生身』は笑わせてくれる。おまえたちは遅すぎたのだ。ナーマーはすでにここにいる」

ブランドハーバー「だれだ? ああ――」

キャメロン=ジョーンズ「ナーマー? な、なんだ? ソーニャ、おまえは何を言っているのだ? わからない!」

アモーラ「ああ、おまえは本当に哀れだな、カーク、愛しい人よ。マークの目には理解の光が浮かんでいるぞ。ナーマーはおまえの屈服の前触れだ。ナーマーはおまえが持つものすべてに破壊をもたらすものだ。そしてナーマー・ナイトウォーカーズ――我がナイトウォーカーズ――は、彼の意志の手足である」

ブランドハーバー「彼の意志? ハラスか? すべてこれのために仕組んだのだな! 暗殺に失敗したら、今度は誘惑か?」

アモーラ「おまえの愚かさにはもはや驚くまい、大佐、まだ実行中なのだよ。私はあの詐欺師にも奴の仲間にも仕えてなどいない。命令したのはアポリオン卿であるが、私は純粋にマスターの手である」

[外部でレーザーの速射音、悲鳴が続く。ドアが吹き飛ばされる音と風切り音]

アモーラ「ああ、行かなければならない、愛しい人よ」

ブランドハーバー「なんなんだ? 衛兵! 射殺しろ――いますぐ!」

[自動小銃の射撃音がレーザーに遮られる。重いあえぎが他の音にかき消され、鋭い息継ぎが一番大きい音となる]

キャメロン=ジョーンズ「マーク!」

正体不明の男性の声「(祈りのように)宮殿は確保されました、司教。第49は再びあなたの指揮下に入ります」

アモーラ「ありがとう、ダンタリオン」

キャメロン=ジョーンズ「ソ、ソーニャ?」

アモーラ「ブランドハーバー大佐にはお悔やみを申し上げる。我々にはそのような計画があった。ああ、ついにおまえは理解したようだ。おまえは憎しみの目で私を見ようとするかもしれないが、原因はおまえだということを忘れるな。おまえの権力闘争が失敗したのだ。おまえの反乱は核の炎で終わった。図々しく聞こえるか? 私をここに連れてきたのはおまえなのだよ。ごきげんよう、総帥。愛する都市、崩壊した王国でくすぶる遺体を見るごとに、おまえの背信がこれを引き起こしたことを思い出すがいい」

キャメロン=ジョーンズ「ソーニャ? 愛する人? どうか教えて――(喉の詰まる音)」

アモーラ「駄目だ! そいつを離せ、ダンタリオン。奴が自分自身を、民を、都市を破滅に導いたことを味あわせてやるのだ。奴が何をしようと、どこに行こうと、ワードの報復からは逃れられないことを思い知らせてやるのだ。宮廷を離れる。残りを焼き尽くせ。行くぞ」

――マーク・ブランドハーバー大佐の遺体から見つかった録音、レグルス、3072年6月6日






歴史の残骸
(3072年7月22日)
 ルシエン[ボイス・オブ・ブレイク] - 昨日、神聖なるワード・オブ・ブレイクと戦う者が破滅を運命づけられているという証拠がまたもあがった。7月14日、無限の力を持つ氏族の代表者がワード・オブ・ブレイクの慈善事業を潰す目的で、ルシエン星系にジャンプしてきた。

 誰が氏族の軍事力に対抗することが出来るのだろうか? 裏切り者のノヴァキャットが、戦艦3隻、降下船小艦隊、地上部隊3個星団隊と共に到着した。その全てがワードの高貴なる守護に対し、血の渇望をぶちまけようとしていた。

 裏切り者のキャットは、我が軍の航空宇宙隊の勇気と、第42シャドウ師団の戦闘能力を侮っていた。

 アラモ、サンタアナ・ミサイルを使ったワードの航空宇宙隊はノヴァキャット隊の先陣を粉砕した。〈ソード・オブ・プロミス〉、〈ライト・オブ・ホープ〉の勇士たちは氏族侵攻軍を押し返すために自らを犠牲とし、1隻を航行不能とし、2隻に大損害を与えた。

 キャットは不誠実なる落とし子を惑星に下ろすことに成功したが、ブダ帝立兵器工廠の廃墟の中で、マスターの手により倒されただけだった。

 ドラコ連合とライラ同盟の市民たちは、どれほど氏族の止まるところを知らぬパワーの前に震撼してきただろうか? だが我ら――ワード・オブ・ブレイク――は恐れない。ブレイクの聖なるビジョンが我らに力を授け、我らを無敵とする。ノヴァキャットのルシエン攻撃が何かを証明しているとしたら、それはワードに刃向かうすべては歴史の残骸になるということである。

[明らかに偏りはあるが、これはノヴァキャットのルシエン攻撃に関するかなり良い説明である。だが、惑星の衛星防衛ネットワークがほぼ完全に破壊されたことは言及されていない。おそらくザ・ドレイクの補完にこの記事が使えるだろう。-Ed]






ノヴァキャット、ルシエン強襲

***ドレイク・ニュースフラッシュ - 3072年7月24日***

 10日前、ある機動艦隊が惑星までわずか7時間というパイレーツポイントを通ってルシエンに入った。この侵攻軍――ノヴァキャット氏族、クシー銀河隊と特定――は7月19日のイレース核攻撃への返答として第42に対する殲滅の神判を宣言した。

 ルシエンの生き残った戦闘衛星防衛システムに支援されるブレイク戦艦〈ソード・オブ・プロミス〉と〈ライト・オブ・ホープ〉が、1個戦闘機連隊と共に、迫ってくる艦隊を迎撃した。ノヴァキャットは、1個星団隊近い戦闘機、強襲降下船1個小艦隊と、支援するイージス級巡洋艦3隻、〈クロニクル〉〈ブレード〉〈ビジョンクエスト〉を敵にぶつけた。

 ブレイク派戦闘機はノヴァキャットの戦艦にアラモ、サンタアナ・ミサイルを発射したが、有効な防御機動、対ミサイルスクリーンのおかげでキャットには最低限のダメージしかなかった。〈ビジョンクエスト〉のみが命中をくらったが、このかすり傷では船が完全に沈むことはなかった。それから強襲降下船が、敵の支配下にある戦闘衛星、ブレイク派降下船との交戦を始め、両陣営の戦艦が交戦できるようにした。ブレイク派戦闘機と戦艦は、ノヴァキャットの兵員輸送船を痛めつけたが、少なくとも4個星団隊が生き残り、ブレイク防衛軍は宇宙と地上に戦闘機を分割せざるを得なくなったのである。ノヴァキャットの攻撃で、2ダース近い戦闘衛星、ブレイク派戦闘機の半数、そして最も重要なことに戦艦〈ソード・オブ・プロミス〉と〈ライト・オブ・ホープ〉が失われた。ノヴァキャットはそれと引き替えに航空宇宙部隊の半数(強襲降下船のすべてを含む)を失い、戦艦3隻が大打撃を受けた。〈ビジョンクエスト〉はジャンプ不可能となった。

 地上での戦いはさらに残忍なものとなった。クシー銀河隊が大気圏内の激しいドッグファイトの中で、カド=グチ谷、第42師団の真上にホバー降下し、5個星団隊が分散して、順番にシャドウ隊を切り刻んでいった。ここにノヴァキャットの戦闘機が攻撃に加わり、敵戦闘機が秘密基地から飛んでくるまで必要なところに支援を提供した。氏族1個星団隊が首尾良くブレイク戦線の突破に成功して帝都に入り、その間、他のクシー銀河隊は進撃路にいるすべてを破壊することにいっそうの努力を払った……しばしば敵に与えたのと同じくらいの損害を受けた。

 都市内では、ブレイク派の援軍が、ギャラクシーコマンダー・シュタイナーとその部隊を押し返した。ワセダ丘陵への退却と再集結を強いられたキャットが第二波の準備をしていたその時、戦術核兵器(全六発)の攻撃が再結集中のキャットをとらえたとされる。1個星団隊分のノヴァキャットだけが生き残り、降下船に退却して軌道上にあがった。後にはほぼ全滅した第42師団とルシエン周辺の破壊された防衛網が残された。






タウラス連合、非常警戒態勢
(3072年7月9日)
 タウラス[TNS] - 防衛省の担当者は、本日、最近のアテナズチョイス攻撃の損害評価報告を発表し、去年のヤンセンズホールドの損害評価報告を改訂した。この数字は最終的なものでないことに注意が必要であるが、渦中にあるタウラス防衛軍が調査に投入できる時間と人員を考えると最良のものである。

 先月、アテナズチョイスで、クリーンキル傭兵部隊が、恒星連邦イスラマバードCrMMの記章を付けた部隊の攻撃によって事実上全滅した。回収されたバトルROMによると、交戦地帯の内外でダヴィオンの応答信号が確認され、また攻撃部隊が残した回収品からその正体が恒星連邦であることが証明された。

 ヤンセンズホールドからの情報は、TDFの士官が恐れた以上のものであった。ロングウッド蒼衣隊は何とか崩壊を免れたが、きわめて重大な損失を被ったのである。ある蒼衣隊士官の報告はそれまでに聞いていた話と同じであった。相当数のAFFS部隊(ROMと目撃情報により確認されている)が蒼衣隊を痛めつけ、それから傭兵隊が守っていた脆弱な戦車生産工場を略奪した。

 プレイアデスの各惑星に限定した我らの純粋な戦役はうち砕かれたかのように見える。明らかに、ダヴィオンの長い腕は周囲を一掃し始めたのである。






危機にさらされるプレイアデス

――傭兵ローンスター連隊に同行していたTNS報道員より抜粋、メロぺー、3072年7月18日

「いや、ラリー、現在の正確な位置を言うのは許可されていない。同行している連中は、追跡部隊の通信傍受を心配していて、従ってここ三ヶ月間、何も話していない。残った兵士を回収する降下船との合流まであと二日しかない。メック戦士たちは賭けに出るのを嫌がっている」

「三ヶ月前、我が隊はメック戦士6名、戦車1個中隊、歩兵100名、1個輸送隊だった……しかし、荒くれ機兵団は我が傭兵自由戦士団を容赦なく狩りたてていった。この時の損害は若干であったが、先週の待ち伏せで多くが戦死し、捕らえられた……爆薬が近くの滝の一部を崩落させたのである。士気は日増しに低下している。荒くれ機兵団の戦車が見えただけで、メック戦士たちと歩兵は逃げだし、崩落に飲み込まれた者たちを見捨てたのだった。我々はジャンプジェットを使って渓谷の壁を乗り越えたが、降伏した歩兵たちは残酷にもダヴィオン車両の射撃を受けて倒れていった。移動中行った他の半中隊とのわずかな通信によると、我が隊と同じく士気は低く、ブレイク派の先進技術が使えるというのに、戦闘力は低下しているという。いま、友軍のほとんどは早めに手を引いて、自陣に戻るのを切望している」

「八ヶ月前……メロぺー・ランの戦いの前から、事態は大きく変化している。ローンスターは二週間の戦闘で、鈍足な荒くれ機兵団を薄く引き延ばし、分散した戦争犯罪者たちを撃退出来るという自信を持っていたが、車両がパラシュート降下してきて不意を打たれた。荒くれ機兵団は指揮隊を分断しようとしたのだ。その間、地上掃射する降下船と戦闘機が戦場に気化爆弾を投下した。釘付けとなったローンスターは1個大隊以上の戦力を失い、その後、半中隊に分かれて分散し、援軍がやっくてるまで連邦ネズミの傭兵を悩ませようともくろんだ」

「だが、援軍はやってこず、最先任士官は脱出のための輸送船を呼ばざるを得なかった。唯一の明るいニュースは、メロぺー・ランの戦いの最中に、ウォルフガング・ハンセン大佐が重傷を負ったという噂である。そして、ラリー、ひとつ伝えねばならないことがある。パイロットの一人が、我らを狙う相当数のハンターキラーグループを見つけ、我々は―」

[爆発音。通信終了]







不可解な退却命令

From: メリディアン・アークス少校、ラバーラ国土防衛隊
To: 軍事戦略調整官、シーアン
Subject: ラバーラ地区、隔月報告 (7月、72年)

 状況: ラバーラ航空宇宙港の施設は確保されている。敵軍(ジェイコブ・ジャガーノーツ)は地下の防衛が破られた直後に全面撤退した。理由不明。現地の安全は保たれている。航空偵察によると、敵の展開地点は放棄されている。宇宙軍は敵のすべてがこの星系を離れたことを確認した。再結集。助言求む。

 状態: 車両:20パーセント可動中、5パーセント修理中、10パーセント回収可能。武器:52パーセント備蓄。弾薬:備蓄は払底、生産中。再補給求む。

 兵士: 40パーセント作戦可能、35パーセント負傷。募兵中。援軍求む。士気: 必ずや首相のために!

 諜報(確認済み)
 ユンナー: 抵抗軍の報告によると、一ヶ月前、第44シャドウ師団は、周辺の病院、療養所から数百名の人質を取った直後、宇宙港を発った。
 ルサール: タオ少校は傭兵隊の分隊(マーズ胸甲機兵隊と推測される)による襲撃を報告している。直接的な交戦は発生しなかった。敵軍は橋頭堡を築き、事前の偵察攻撃を行った直後に、惑星を離れている。
 ボーラ: サイバー強化した未知の部隊が、リヴァルディ軽機兵隊によって首尾良く撃退された。敵軍の損害評価: 5パーセント。防衛部隊: 30パーセント。敵は退却中。

 分析: 情報不足により不可能。外部では何が起きているのか? ワードは撤退中か? 我が軍は勝っているのか? 返答を求む。誰でも。







血と鋼鉄の軍団

 10年前、誰かに「マネイ・ドミニ」という単語について聞いたら、首を傾げられるか、下手なラテン語を直されたことだろう。

 そして現在、マネイ・ドミニとはどこから現れたのか不明な――諸説あるのだが――ワード・オブ・ブレイクのエリート部隊のことである。その出所が議論される一方で気づかされるのは、装備するサイバーウェア、奇妙な儀式、死ぬまで戦いさらに死を超えて戦うところが氏族にそっくりだということである(彼らは氏族を軽蔑していると主張している)。

 マネイ・ドミニは、最高の技量、恐怖、技術のすべてを持つ。そのとどまるところを知らぬ軍勢は、技術で汚染されたデストピアを我らに押しつけるまで休みそうにない。

 それに加えて、この機械人間たちは、正体不明の主人たちが悪夢的先見性で作り上げたオムニメックとバトルアーマーを受け取っているらしいのだ。彼らはこれらのマシンをセレスティアル、デーモンと呼んでいる――まるで命名によって神秘的な恐怖を引き起こすことを、なぜか彼らは必要としているかのように。

 幸いにも、氏族の指揮系統に関する知識を持ち、ワードを押しとどめようとする意志を持つA評価の部隊でない限り――あるいは不運にもワードが狙う主要星系の防衛を任じられてない限り――戦場でさほど多くのマネイ・ドミニと遭遇することはなさそうである。だが、そうなったときは、困難な戦いになることを覚悟すべきである。

 マネイ・ドミニは通常歩兵でさえも恐るべき敵である。強化マイアマーインプラント(兵士一人あたり中戦車と同額の費用がかかる!)、もしくは人工四肢(接近戦から、メックを盗み取ることまでが可能)を装備するこれらの兵士は、不注意な傭兵を愕然とさせることになる。マシンガンの群れ、インフェルノ、大量のインフェルノミサイル――たとえ彼らを一発で倒せなくても驚いてはならない。

 これが乗り物になると、さらに状況は厳しくなる。セレスティアルはサイボーグ用のカスタムメイドである――サイボーグたちは通常のブレイク信徒搭乗員よりも防護が厚く、倒れるまでに多大なダメージに耐えることが出来る。それに加え、ドミニの悪漢たちは自機に神経を直結しており、よってセレスティアルは邪悪な優美さでもって移動し、致命的なほどまで効果的に射撃が出来るのである。彼らに対し、最も有効なのは、数で圧倒するか、重砲火を浴びせることである。

 心にとめておいて欲しいのは、マネイ・ドミニが氏族のようにタフであるのと当時に、氏族のように戦うことはないということだ。彼らは一対一の勝者がすべてを得る決闘を求めることはないだろう。そして偵察兵に集中砲火を浴びせたり、障害を除去するために都市に火をかけるのを躊躇したりはしない。

 読者諸兄、ページを閉じることはないように。希望はあるのだ。マークネット・マガジンは次号で、ドミニの戦士たちと遭遇した時に同じ土俵で戦えそうな手法について検討する予定である。

――アルマンド・ライトフット、マークネット・マガジン、MRBC出版(アークロイヤル)、3072年11月






混沌の種

[カーゴマスター・スリー]: ダックス、これを見たか? ガラテア管制塔に朗報だ! 信じられない!
[オーディナンス・フォー]: すまない、ジャズ、見逃した。進路が酷くて再調整が必要だ
[CMスリー]: あのドロッパー(降下船)を見たか? あれはハイランダーズだ!
[Oフォー]: なんだって? ジェリー、確認したか?
[ロードマスター・トゥエンティ]: ちょうど港湾長から聞いたところだ。すばらしい光景だよ。船が実際に見えるんだ! おそらく、ワーディーたちにやり返すことが出来るぞ!
[Oフォー]: 連中はどうやって逃げてきたんだ?
[CMスリー]: 元カペラのジェフレイが1個大隊と共に脱出したと聞いた
[LMトゥエンティ]: 本当か? こちらは――おい、なんで奴等は分散しているんだ? 管制塔が着地地点を用意しているのに……
[港湾長]: チャーリー、あれを見ろ、一体……
[Oフォー]: どういうことなんだ? ああ、なぜ奴等はカーゴドアを開けてるんだ? 一体どういうことなんだ――?
[LMトゥエンティ]: くそっ! 奴等は強襲降下をしてる! なんで――
[港湾長]: 全地上クルー、回線開け! メックが来るぞ!
[CMスリー]: なんてこった、奴等はハイランダーじゃないぞ――!
[爆発]
[Oフォー]: ジャズ! 聖母マリアよ、奴等はワード・オーだ!
[港湾長]: 全宇宙港職員へ、現在、我らは攻撃を受け――!
[戦闘機のエンジン音が突っ切り、爆破音で途切れる]
[LMトゥエンティ]: 攻撃されている方に行くな! 貨物作業員! ハンガーへ行け! くそった――!
[Oフォー]: なんてこったキングクラブが突撃――!
[悲鳴が途切れる]
[港湾長]: 誰か聞いている者は都市に連絡してれ……ワードが――

――ガラポートの通信から書き起こし、3072年10月6日





ケンタウリ第21槍機兵隊 - 倒れども死なず

 ツカイードで荒れ狂うワード・オブ・ブレイクの炎の嵐の中で全滅……それが、有名な傭兵隊、ケンタウリ第21槍機兵隊の最期だったと多くは考えていた。だが、そう見られていたにもかかわらず、槍機兵隊は踏みとどまっていたのである。ゴーストベア氏族がこのラサルハグの世界を解放するまで、一握りの生存者が2年間、ブレイク派の占領を耐え抜いた。他の者たちは、キラービーの助けを借りて脱出した――第二星間連盟が存在した短い期間、コムスターとSLDFの信任を受けていた傭兵隊である。

 ついに解放されたジェームズ・ルモンド大佐(槍機兵隊第1大隊の元指揮官で、生き残った最上級士官)は、第21再建のため、ツカイードで全滅した部隊の生存者たち、そしてキラービーに入隊の要請を行った。この大胆な提案は1個諸兵科連合大隊という結果を生み出した。槍機兵隊の古参兵、キラービーの生存者、故国から離れたラサルハグ人、愛想を尽かしたコムガード兵など、多彩な人材がひとつに集まったのである。現在、ルモンド大佐は雇用される準備が出来たと宣言している。ワード・オブ・ブレイク及びその代理人と戦う任務には優先権を与えるとしている。

 興味のある団体は、アークロイヤルのMRBCを通してルモンド大佐に連絡されたし。

――マークネットマガジン、MRBC出版(アークロイヤル)、3072年11月






クレセントホーク、再び羽ばたく

[トリッシュ・マキニス]:「……で、ビジネスウーマンのモリー・フッティは尻尾を巻いて辺境から戻ってきました。間接砲を売るというベンチャーは需要がなくて破産したのです。彼女は立ち直るでしょうか? それは今後わかるでしょう。ジャスティン?」

[ジャスティン・フライケップフ]:「ありがとう、トリッシュ。地元のニュースでは、ケルハウンドの危機が差し迫っていると大いに誇張されています。ルフォン宇宙港での目撃情報によると、有名なクレセントホーク中隊に所属する降下船が、今日、未確認の目標地点に向かって出発しました。噂に寄れば、最近、再び本隊から分離したこの中隊――高名なクレセントホークの指揮官、ジェイソン・ヤングブラッドの息子、ジェレミア・ヤングブラッド大尉指揮――は、ヘスペラスIIからニューアヴァロンまであらゆるところを飛び回ってるとのことです。いずれにしても、この配備は、ケルハウンド――3069年6月にダニエル・アラード中佐を失って以来、綱渡りを続け、先月、ターカッド奪還で重大な損失を被った――が、ワード・オブ・ブレイクと戦うため、着実に立ち直っている証拠です」

「声明を求めると、ケルハウンドはARNNに対し、クレセントホークの行き先は公表できない、ウルフハウンド大隊が未公表の雇用主と交渉中であると伝えています。この両部隊は地元で生産されているヴェルフォルガーなど、最新の装備を持っているとされます。ホークに関する話は、3052年のルシエン以降、あまり知られていませんが、彼らが改善され、かつての強さを取り戻そうとしていることを我らは知っています。」

「我らが兵士たちに幸運を、クレセントホークが戻ってきたのです。トリッシュにお返しします」

[トリッシュ・マキニス]:「ありがとう、ジャスティン。面白いニュースがここにあります。地元では、今週、ディアドラ・ナカムラ博士のブックツアーがニューハノーバーから……」

――アークロイヤルライブ、アークロイヤル、3072年2月23日、ARNNホロブロードキャストより





デヴリン・ストーンとは何者か?
(3072年11月21日)
 ヌメノール[FSNS] - 2年以内に、デヴリン・ストーン(カペラ/恒星連邦国境にいる反ワードの自由戦士)は無名の状態から身を起こし、キタリー・サム全域のワード・オブ・ブレイクを追い出して独自の「保護領」を作り上げた。だが、この男は誰なのか? どこから来たのか? そして彼が真に求めているものは何なのか?

 デヴリン・ストーンの過去は謎に包まれている。3071年にRBMU105(マッキンレー・ランチ野生動物保護区に作られたワード・オブ・ブレイクの捕虜キャンプ)から脱出する以前の彼の記録は、恒星連邦の系図アーカイブに存在していない。熱狂的な支持者たちが主張するところでは、RBMU105に収容される以前の記憶をストーンは持っていないという。名前すらも分からない状況で、ブレイク派の看守が付けた名を使っているとされている。残念ながら、この男の正体を少しでも明かすかもしれない証拠は、彼の抵抗軍がかつての囚人仲間を解放するため戻ってきた時に破壊されてしまった。

 記録無しに我らはどうやってデヴリン・ストーンのことを知ればいいのか? 2メートルの長身に、鍛えられた身体、黒髪に、マホガニーの瞳のストーンは目を引く人物である。彼は整形手術を受けた兆候があり、歯科記録、指紋、バイオメトリックデータの作成が疑われている。声の分析は彼がキタリー出身でないという報告を支持しており、専門家はカレドニア、フィルグローブ、グラスゴー、キルマーノック、マッキンゼーなどの世界をストーンの故郷の候補としている。この男について他に何が分かるだろうか? 彼の格闘戦と小火器に関する素質、そして鹵獲したブレイク派のバトルメックを操縦する技能は、明らかに軍事訓練を受けていることを示している。彼が中心領域の軍事学校を卒業している可能性は高い――彼が戦略的、戦術的ひらめきを見せていることからそう推測されている。

 だが、ストーンの謎めいた過去に関する質問は、この重要な問いかけに比べればたいしたものではない……彼が求めているものは何なのか? AFFSとCCAFが全戦線で交戦を行っていると思われる現状において、ストーンは望むがままの行動を取れるように見える。キタリーを中心とする星団からワード・オブ・ブレイクと支持者たちを独力で追い出した彼は、恒星連邦=カペラ大連邦国国境に構える小国家の事実上の統治者となっているのである。











Jihad Secrets: The Blake Documents





爆弾と野蛮
(3073年1月30日)
 アークロイヤル[ISAP] - 1月22日の破滅的な事件より一週間足らずが経過し、ここアークロイヤルの多くはブレイク派のテロによりショックを受け青ざめたままである。この爆発の威力は初期の報告ほど強力なものではなかったが、その結果、百名以上が死に、数百名が負傷した。ワード・オブ・ブレイク危機に対する同盟の首脳会議を狙ったこの攻撃は、中心領域の最も有力な指導者たちの命を奪った。LAAFのサビーヌ・シュタイナー准将(アダム・シュタイナー最高司令官の副官)やウルフ竜機兵団のメーヴ・ウルフ将軍が攻撃の直後に死亡した。

 この攻撃で死んだ他の重要な高官たちは、ドラコ連合大統領ホヒロ・クリタの近しい副官、シン・ヨダマ。恒星連邦のヴァネッサ・ビスラ元帥、ダニエル・ダーウィズ元帥。コムスターの諜報の専門家、カラドック・トレヴェナ。スノード・イレギュラーズの退役指揮官、ロンダ・スノード。さらに、放浪ウルフ氏族のマルコ・ホール副氏族長。ジェイドファルコンのダイアナ・プライド。ゴーストベア氏族のビョルン・ヨルゲンソン氏族長。彼の側近たちは単に議事録を見るために来たという。

 分析の結果、爆発の中心がフリッツ・ドナーであることが確認された。この人物は、コンパス座連邦の悪名高きブラックウォリアーズの元指揮官である。二発目の爆弾が使われた可能性はあるが、鑑識によると中心となったのは特殊な埋め込み式のプラスチック爆弾である。ドナーの骨に移植されたものか、もしくは完全に交換されたものかもしれない。昨年の11月、ニューホームへの勇敢な襲撃で、ブレイク派の最も厳重な収容所から解放されたドナーは、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン戦司教の指示によって会談の場へと連れてこられた。彼が関与したブレイク派の作戦と計画に関する重要な情報を明かすためだったという。これが同盟者たちの信頼を得るための計略だったのか、あるいは共通の敵と戦うための誠意だったかのかはわかっていない。

 「ドナー爆弾」と呼ばれることもあるこれはワード・オブ・ブレイクが近年実行している一連の自殺爆弾攻撃が洗練されたことを反映している。リチャード・シュタイナーの3071年の自殺爆弾と多くの点で似通っているが――自由世界同盟タマリンドのジェレミー・ブレット元帥の命を奪った――この攻撃は、X線、磁気スキャンを含む中心領域で最高のセキュリティを突破するのに成功したのだ。

 両事件の心理分析によると、リチャード・シュタイナーやその他の事件よりも時間のかかる綿密な手法が使われたとされる。通常の爆弾は、自分が何をしているか知っている転向者やその他の人々によって運ばれるが、首脳会談の前にドナーの精神状態を調べた専門家は、ドナーは暗殺者となっていることを知らなかったかもしれないと示唆している。これらの詳細は、ワード・オブ・ブレイクのテロ戦役を描き出している。作り出された無意識の「スリーパー」が現在でさえも我々の周囲を歩き回り、ブレイク派の主人たちのためにスパイし、あまつさえ我らの中で爆発するかもしれないのだ――この全員がよもや敵のために働いているとは気づいていないのである。





ケルハウンド、ニューエクスフォードで攻撃受ける
(3073年1月30日)
 オールドコンノート、アークロイヤル[ARNN] - 悲劇が再び我らが世界を襲った。アークロイヤルの人々は愛するケル一族のさらにもう一人が犠牲になったというニュースをフォートから受けて悲しみに暮れている。短い声明によると、第1ケルハウンド連隊はニューエクスフォードでブレイク軍の攻撃を受け、ほぼ壊滅したという。死者の中には、クリスチアン・ケル、第1連隊の代理指揮官にして故パトリック・ケルの息子が含まれていたという。モーガン・ケル公爵(今年初め、同盟首脳会議での自殺爆弾攻撃をかろうじて生き延びた)はこのニュースに打ちひしがれているという。

 我々の情報源によると、ブレイク軍は8月28日、ニューエクスフォードから数時間のパイレーツポイントに到着したという。3隻の降下船は惑星に向かい、呼びかけに応じることなく、ハウンドが構築した緊急の航空宇宙防空網を突破した。バトルROMは不正確ながらこの攻撃軍を第50シャドウ師団(つい最近、アトコンガで目撃された)であると特定した。ハウンドの第2大隊は大胆に側面へと迂回し、師団の側面を叩こうとしたが、不幸にも、攻撃軍はこの戦術を読んでいたのである。広大な地雷原と足止めの罠がハウンドを気づかぬうちにとらえ、バトルアーマー(数ダースのVTOL、ホバークラフトから展開した)が集団で群がった。この攻撃を生き残ったハウンドは一人もおらず、即死しなかった者はコクピットで、あるいは脱出後に殺されたと報告されている。虐殺が始まったのはこの数分後である。

 その間、第50シャドウ師団のメックは残った大隊群を攻撃し、「ヘッドハンター」諸分隊が連隊指揮官、クリスチアン・ケルを目標とした。ケルは交戦中に倒れ、ハウンド――ずたずたに引き裂かれ、士気崩壊した――は、70パーセント以上の損害で撤退に追い込まれた。勝利したブレイク派はハウンドの基地を襲い、弾薬、スペアパーツ、回収品を略奪したという。

 ケル大公は次の三日を喪の期間であると宣言した。半旗が掲げられ、公共施設は全て閉じられ、商店主たちは死に敬意を表す証として店を閉じるよう依頼された。我々、ARNNはケル大公とケルハウンドの生存者に弔意を表す。

 ダン・ウォーレス、ARNN、アークロイヤル。





理想の裏切り

 >>転送せよ:ペシュト/ディーロン/ゲイルダン管区の全部隊へ
 かつて第10ゴースト連隊と呼ばれていた部隊は浪人化したとここに宣言する。発見次第、逮捕するか殲滅するように。グレッチェン・ノダ大佐はISFの指名手配となる。
 第10ゴーストの行方に関する情報はいかなるものでも、地元のISF連絡士官へ。
 >>メッセージ終了 7OCT3072

[DCMSは第10ゴーストが浪人であると宣言するまでかなり待ったようだ。ノダ大佐は3070年にブレイク派がクエンティンから去った後で、部隊を動かしたと我々は考えている。もっとも、彼らの無許可離脱はHPGへのダメージによりしばらく気づかれなかったのだが。IEの拠点二カ所からの信頼できる情報によると、部隊は3071年に〈レザックの穴〉で目撃されている。スターコープスがオデッサでの任務に彼らを送り出した時に大隊戦力だったことを考えると、レイヴンが〈レザックの穴〉を一掃した後で、彼らは惑星上の隆起の中で何かしらの価値あるものを発見したということになる。

彼らは貯蔵庫を見つけ、73年、オレステスに現れる前に再建したというのが私の推測である。彼らがクエンティンで犠牲的な命令を受けたという情報が重要なのでないかと私は疑っている。仏陀が彼らを不確かな未来に導いたのかもしれない。-PA]





内部抗争
(3074年11月11日)

ニューシルティス[INN] - ここ数年間、ワード・オブ・ブレイクは狂信的なサイバー戦士で構成された一枚岩の大軍勢であるかのように思われてきたが、これは実情ではなかった。他のあらゆる組織と同じように、ワードは様々な理由で聖戦に参加する、やる気に幅のある人間によって構成されている。ブレイク派、同盟者たちのうち一部は、聖戦が望んだものでないことに気づき始め、ブレイクの意志に反する活動を行っている。

 ブレイク保護領の世界はそのようなグループに入る。少なくとも3個のWoBM師団と保護領市民軍の大多数が、国境を守るのではなく、ワードの不安定な権力基盤に対する反乱を鎮圧していると考えられている。

 これらの鎮圧作戦がすべて有効というわけではない。3071年、保護領から離れた飛び地、キタリー、シチュエート、ガーネットに駐屯していたワード兵は、「再教育」キャンプの囚人によって潰走した。相当数の保護領市民軍が、キャンプの内情にショックを受けたようで、抵抗運動側についた。他にも、つい先月、イリアンでは反乱軍がレッドフィールド反逆隊をほぼ殲滅し、この惑星に配備されていた傭兵隊群を壊滅させた。

 数ヶ月前、保護領の産業の中心地たる各世界で反乱ののろしが上がった。チコノフ、タウン、ワセットは保護領市民軍を忙殺させ、チコノフでは反乱軍がワードの戦術核兵器を彼らに対して使用し、アースワークスの工場を確保した。これらの反乱――保護領の最も守りの堅い世界でも勃発していると思われる――がどこまで進行するかは不明だが、ワード帝国がどれだけ不安定が表されている。

 カオス境界域の世界の一部は自発的に保護領に入ったが、援助を渇望していたわけではなかった。だが、ワードが注意深く情報をコントロールしているにもかかわらず、保護領に自ら参加した世界であっても、ワード・オブ・ブレイクと手を組んだのがばかげた行為であったことに気がついている。地球帝国を別の名で再建するチャンスを与えてくれた都合のいい同盟者は、第一次継承権戦争並みの破壊をもたらすまでにエスカレートした紛争に彼らを縛り付けたのである。一部は「虎の尾を握り」続け、死にものぐるいの防衛強化に力を貸しているが、他は手を引き、ワードへの協力を減らしている。

 正式に保護領から脱退しようとする世界はないが、一部はワードの情報・保安部門との協力をやめようとしている。他の世界も反ワード派の弾圧に熱心ではなくなっており、最近、シェンの議会選挙では反ワード政党が議席を獲得しさえしている。まだ分離はしていないが、これらの惑星は以前の同盟者から離れようとしているのである。

 ワードに雇われている傭兵のすべてが、人間の持つ最も獣的な側面を見せているわけではない。その多くは単に生き残ろうとしているだけだ。傭兵業界の専門家が注意しているように、傭兵隊の半分は最初の六ヶ月以内に失敗するか、壊滅する。そのようなプレッシャーの下で、傭兵隊はワード・オブ・ブレイクとの契約について考慮するに違いない。彼らは一貫して作られたばかりの部隊に対し、すばらしい条件を提示しているのである。残念ながら、傭兵がワードの仕事をしないようにMRBCが厳しい手段をとっていることは、皮肉にも、良い部隊をワードの雇用に縛り付けてしまっているのである。

 つい数ヶ月前、ヘビーヘル・レイザーズがイリアンの市民を虐殺せよとの命令を受け取ったその時、傭兵中隊群の2/3が命令を拒否したのみならず、反乱軍の側についた。生存者たちはその後WoBMの航宙艦一隻をハイジャックするのにどうにか成功し、アリス・マーリックの反乱軍にサービス(それと最新の情報)を買わないか持ちかけたとされている。これは最初の傭兵による反乱ではなく、そしてマーズ胸甲機兵隊の「実例」でさえも、ワードの傭兵たちがほぼ毎日実行するように命じられている戦争犯罪に対する抵抗を緩めているようには見えないのである。

 そして他には、ブレイク信徒がいる。コムスターは、教団分派(Schism)の前には、我らがいま見ているワードとさほど違いのない組織であった。その例外は以前のコムスターがより巧妙だったことである――よってコムスターの最も忠実なる信奉者たちは、コムスターが人類のためにただ平和を求め、暴力を許容しないと、本当に信じていたのである。教団分派の後、これらの忠義深い者たちは、フォヒト戦司教の世俗化を許容できず、ワード・オブ・ブレイクの下に逃れ、今日まで残っているのである。

 ワード上層部はこれら忠実なしもべたちを真実から遠ざけてブレイクの名の下で働かせようとする一方、聖戦の残虐は長く続きすぎたのである。時間はかかったかもしれないが、ワードの平和な忠臣たちはブレイクの名において起こされた恐怖に気づいている。

 平和を好むブレイクの信奉者たちは、当然ながら、ワード・オブ・ブレイク市民軍にはおらず、また上層部から外されるのだが、あまりに数が多いので、その衝撃は伝わってくる。その顕著な例であるルッツ准司教は、ニューアースの再教育キャンプの管理を押しつけられた。通常この仕事に使われるはずの悪漢たちが足りなくなったからだ。ルッツは立場を利用してデータをいじり、飢餓に陥った再教育キャンプにわずかな反体制派しか受け入れないことになっていると伝え、その一方、治安部隊には数万人が予定通り処刑されたと伝えた。このやり方で、3070年から3072年の間に、ルッツは6万人以上の囚人を救出し、目に付きにくいニューアースの僻地に「追放」したと考えられている。





契約無効
(3073年8月10日)

コンコード[シルバーホーク・エグザミナー] - 継承国家と傭兵契約を結ぶのはしばしば多くの欠点を伴うものである。契約条件はたいがいそれなりによく、利益レベルはたいがい低く、命令系統は厳格なものである。だが、それらと釣り合う要素は、安定性である――小規模な雇用主が生き残るか否かというところで、王家は延々と続いていくのである。

 それはつい最近までのことだ。小さな波紋が広がっていき、今では傭兵たちは、新しい雇用主を見つけ次第すぐに自由世界同盟との契約から逃げるになっている。水門が開いたのは3069年である……オルソン・アヴェンジャーズがライラ同盟と契約し、国境を渡ってライラの世界、デキシーにジャンプした。

 「自由世界同盟はもうない」と、オルソン・アヴェンジャーズのチャーリー・オルソン少佐。「ひとつの国家であるふりをする、小国家の集合体に過ぎない」

 部隊がデキシーについてから10日後、自由世界同盟はアヴェンジャーズとの契約を取り戻そうとして、問題をMRBCに持ち込もうとさえしたが、政府がばらばらであったことからそれ以上話が進むことはなかった。カメレオン・ストライカーズはオリエント公国と契約し、その一方、アンドゥリエンはアサド・アッシリア・アサッシンズを確保した。フォックスフォースは恒星連邦に戻り、第57特殊作戦中隊、パンツァーグループ4は、ライラ同盟のオルソン・アヴェンジャーズに加わった。デビルドッグスが統一政体に行ったとの噂は根拠がないが、ここ、シルバーホークの指導部は、バッドドリームとジャクソン襲撃隊に誘いをかけている。

 これらの事実は、同盟の未来にとって吉兆ではない。同盟内の各国は、同盟が雇用していた部隊を雇って同盟を支援したりはしていないが、どの国も市民を見捨てたわけではない。我々に出来るのは、すばらしい我が国から戦争の災禍が去るのを祈ることだけであるが――もし、同盟が法的に解消されてしまったら、我が同盟部隊の横で戦うのは傭兵ではなくなるだろう。





ブレイク派、ラドスタットに!
(3074年4月2日)

ラサルハグ[ドムネット] - 死の輝くビームに、破壊の飛行機雲。それらはラドスタットで何が起きたかを示す最初のサインとなった。3月7日に戦闘が始まったのだ。第3クローのエレメンタルがミュンヘン近くの隠れ家から出てきたブレイク派のサイボーグと交戦すると、ブレイク派の傭兵が現れ、彼らに猛烈な射撃を浴びせた。ミュンヘンの郊外に広がっていた第3クローは、近くのコール宇宙センターにいた第5ベア正規隊に注意を促した。その間、第5の分隊は、第3クロー、FRRティール連隊と共に、ブレイク軍に立ち向かった。その相手は、エリートの第43師団であると現在では確認されている。

 どうやってワードがドミニオン宙域深くまで入ってきたのかは誰にもわかってないが、彼らの意図は、コール宇宙センターにキノコ雲があがり、中性子の嵐で施設を殲滅した時に明らかとなった。二番目の攻撃では、都市に水を供給するワグナー湖近くの工業区域が目標となった。だが、三番目の――そして最も卑劣な――攻撃は一時間後に起きた。ブレイクは味方を無視して、ミュンヘンの中心で中性子爆弾を起爆し、第5正規隊だけでなく、名誉なき傭兵隊も不意打ちしたのである。FRRの戦闘機はキャンプ・アイゼンヴァイスを狙った四度目の戦闘機による攻撃を迎撃し、その残骸からは核爆弾が回収された。

 シャドウ師団と残ったゴーストベア/FRR軍の戦闘は残虐な殺し合いとなり、ブレイク派が隠匿した降下船にゆっくり戻っていく間、ドミニオン軍は1メートル進むごとに代償を支払った。最終的に、第3クローがブレイク派キャンプに決死の攻撃を仕掛けたというのに、ブレイク派兵士の小部隊が脱出するのを妨げることはできなかった。しかしながら、彼らの餞別は長く記憶に残ることとなるだろう。離陸した直後、ブレイク派気圏戦闘機の数機がラドスタットに戻り、正体不明の化学物質が入った容器を惑星の水資源数カ所に投下したのである。化学物質による損害はこれまではっきりしていないが、戦闘とブレイク派の大量破壊兵器によって200万人以上が死んだとされ、一方、第5ベア正規隊と第3クローはあらゆる意味で消滅した。ティール連隊のうち、1個バトルメック中隊のみが戦闘可能な状態で残され、近い将来ワードが戻ってくるのに備え、かろうじて傷つき病気の蔓延した世界、ラドスタットを守っている。





合同軍の状況
(3074年1月24日)

 アンクルへ
 要求された通り、作戦に参加する各パートナーの「取り急ぎおおざっぱな」概要をまとめました。オデッサでの任務はあのような結果に終わりましたが、このような堂々とした男女たちと共に仕事ができたことは、汗顔の至りであり私の誇りです。

 ツカイードでの会合に備えて、ゴーストベアの代表のために暗号化したコピーを一本作成しました。さらに自由時間を使って、ベアのために日記の情報の残りを抜粋してコピーしました。私たちが持っている地雷のことを考えると、これを彼らに見せるのが最良だと思います。ミルザは反対していますが、氏族にこのデータのすべてを見せる必要があると本気で考えているのです。ケル氏族長が数年前に言ったことが半分でも事実なら、これは彼らを激しく動揺させることでしょう。

 -マルセル・ウェブ


 カオス・イレギュラーズ:この部隊がブレイクと「関係」しているとの汚名は、アークトゥルスの試練ですべて払拭された。外部の重砲基地と補給庫の雄々しい防衛は、ほとんど熱狂的なまでだった。シムソン大佐は旧式のモーラー4機を受け取ったことに多大な感謝を表した。この機体は彼らの損失を埋めるために、HTE(ハチマンタローエレクトロニクス社)が提供したものである。両大佐は次の作戦の準備が出来ていることを再保証した。可能ならイレギュラーズを半個中隊に分けて、側面部隊として使うことを提案している。

 クレセントホーク:アークトゥルスで部隊の1/4を失い――そしてヤングブラッド大尉はブレイク派のヴァンキッシャーに対する劇的な最後の戦いで手を失った――のだが、ホークはすぐに立ち直った。ジェレミアは人工四肢への交換が操縦の妨げなっていないことを保証している(腕が「むずむず」するそうだ)。最近行われた演習によってこれが証明されている。この部隊の代替の戦闘機を用意できていないが、もし必要ならスカイライダーズがホークの降下船にちょっとした援護を与えられるかもしれない。
 ブラーヘ大佐との合意に基づき、ホークがケルハウンドの記章をつけて飛んでいないことを記す。幸運にもハウンドは戦死したメック戦士3名の補充が可能であり、よって我らはチャンドラセカール流の古典的な寛大さで大佐に保証をすることを提案するものである。

 デビル旅団:アークトゥルスの戦闘で重い損害を受けた――第47の指揮レベルIIIと遭遇したとされる――彼らは旅団を75パーセントの戦力までしか戻せていない。だが、この理由の大部分は、ワードがスターコープスの輸送路を遮断し拿捕していることに原因がある。私たちは旅団が持つこの会社とのコネクションに頼りすぎたのかもしれない。旅団の将来的な損失を穴埋めするために、契約に追加条項を作って、彼らの回収権を増加させることを提案する。
 余談として、LAW(ルシエンアーマーワークス)はケラー少佐のグラディエイターを求めている。

 ゴースト・オブ・ザ・ブラックウォッチ:この「傭兵」部隊は最近我らに加わった……彼らはそれに気づいていないが。ジェフレイ大佐の名誉の意識により、彼らはスターコープスから物質的な支援と多額の契約ボーナスを得ている。こうしてジェフレイはノースウィンドを解放する個人的な戦いの準備を続けることが出来ているのだった。
 ゴーストは現在、オデッサに浸透し、情報を集める準備をしている。

 マクファーデン・スカイライダーズ:スカイライダーズは戦場で数機のコブラ、シャドウ戦闘機を撃ち落とし、その実力を証明して見せた。あなたのジャラスター、ワカザシとのコンタクトを使って、我らはスカイライダーズの規模を倍にするのに成功した。指揮官マクファーデンが、我々の雇用した失機者のパイロットたちを精査し、大規模な訓練を施した後、スカイライダーズは作戦可能な状態となっている。

 ペリフェリースターガード:不幸にも、これまでのところ彼らはこの戦役で最大の損害を出している。PSGはワードの攻撃を真っ先に受けるところにおり、そして戦闘中にブレイク派は明確にPSGを探そうとしていた。ブレイク派がこの部隊を壊滅させようとあらゆる努力を払ったので――自殺攻撃さえ仕掛けた――アナポリス大佐とホールデン中尉は生き残った唯一の隊員となった。
 PSGの海軍支援部隊は、降下船を破壊工作で爆破された時に全滅した。

 ローニン:元第10ゴーストのこれらDCMS兵士たちは、竜が彼らにひどい罪業を犯したと感じて、連合を離れた。彼らはあなたとスターコープス(彼らと契約中)とのつながりを知らない。彼らにこれを知られないようにすることを推薦する。グレッチェン・ノダは相当短気な指揮官であり、簡単に契約を破棄し、任務を放棄し、伝令を撃ち殺すかもしれない。オデッサでの任務が終わったら、契約を終えるべきである。

 スターシーズ:私の部隊である。士官たちの一部がしでかしたことについて、今一度、心よりの謝罪を申し上げる。もし私が適切な調査を行っていたら、彼らのROMとのつながりを暴けたことだろう。今では、ワードがどのように我らがアークトゥルスにいると知ったのか、部隊編成、防衛状況を知ったのか、そしてさらに重要なことに、どのようにスターガーズマンの降下船に爆発物を仕掛けたのかをたどることが可能である。
 センカー大尉の助けを得た我らは、ブレイク派と関係している可能性がある者たち全員を追放し、その結果、裏切り以前より結束のある部隊を作ることが出来た。私はこれを喜ばしく思っている。
 我ら全員、クリタ卿、あなたを支援する準備が出来ている。






古きものの再生
(3074年7月20日)
 アークトゥルス[マークネット] - オールドテック。レトロテック。呼び方はどうあれ、これが中心領域で流行り始めたトレンドである。

 第一次、第二次継承権戦争の間、各王家の軍需産業は酷い損害を受け、よって中心領域は〈戦争の時代〉後半と同程度の技術力まで低下した(民間の技術は比較してさらに酷い状況となった)。工場が破壊できないくらい貴重なものとなると、戦術に変化が起き、工場は多大な価値のある報償となって、生産能力の低下は止まったのだった。しかし、現在、ワード・オブ・ブレイクは我らを継承権戦争初期の悪しき時代に戻したのである。さらに悪いことに、通信と恒星間交易がかつてないほどに遮断され、生き残った兵器工場の多くは重要な素材と部品を手に入れるのが難しくなり、この数世紀で初めて生産ラインが止まることになったのである。

 市民軍と傭兵にとって、これは良いニュースではない。供給が需要に追いつかない場合、常に、王家正規軍が優先的に物資を受け取るからだ。これを受けて、兵器と装備の製造業者は歴史書をひもとき、既存の部品だけで作れる機種、地元で生産できる代行品を使える機種を求め、徹底的に調べあげた。これらの「レトロテック」機種はたいてい現代の基準に比べて粗悪である。だが、古いものと新しいものを組み合わせることによって、実用的な装備を限られた資源で作れるようになったのである。加えて、整備修理センターはこれらの高度でない機種の生産ラインに組み替えられた。生産速度は低いものだが、これら「解体工場」からの出荷は、市民軍と雇われの兵士たちを保つのに大きく貢献しているのである。

 今では、バトルアックス、ファイアビー、グラディエイター、ハンマーハンズのような伝説の機種が、忘れ去られし戦車、気圏戦闘機と共に戦場に戻ってきている。






デヴリン・ストーン:その任務
ゴメス・キス「軍事記録概要」3075年1月9日より

 過去を持たぬ男、デヴリン・ストーンはどこからともなく現れ、ワード・オブ・ブレイクに立ち向かうための有効な連合軍を初めて作り上げた。「キタリー管区」――恒星連邦/カペラ大連邦国国境のキタリーを中心とする一握りの星系――を確保した後の3073年後半、ストーンはその注意をライラ領に移した。この戦役には二つの理由があった。第一に、複数の中心領域勢力、氏族が活動しているこの地域は、ブレイク派と戦う混合軍を作るのに便利な場所であったこと。第二に、ライラ宙域の重要な世界のいくつかがワード・オブ・ブレイクの占領下にあるか、攻撃される脅威の下にあることだ。

 コベントリ:ブレイク派に完全に征服されたわけではないのだが、首都とコベントリメタルワークスの必要不可欠な工場は、イージス級〈イモータル・スピリット〉の事実上の封鎖により、ライラが立ち入れないものとなっていた。

 3063年に星系内で座礁した〈イモータル・スピリット〉(内戦中、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンが来る前にLAS〈アーサー・シュタイナー=ダヴィオン〉を沈めるのに使われた船。連邦共和国内戦を長引かせ、二国家に最大限のダメージを与えるためだった可能性がある)は、ワード・オブ・ブレイクが3067年、全中心領域に銃口を向けるまで、ガスジャイアントの小惑星帯と氷のリングの中に潜んでいた。

 3074年の2月5日、ザンデリの天頂ジャンプポイントから出発したジェイドファルコン/ライラのタスクフォースは、3月16日コベントリに到着した。ライラの「ポケット戦艦」小艦隊の支援を受けたファルコンの〈ゴールドタロン〉はブレイク派の封鎖を圧倒した。捨て鉢な攻撃で、致命的な損傷を負った〈イモータル・スピリット〉はファルコンの戦艦に衝突しようとしたが、ライラオーバーロードA3降下船の1個中隊がスピリットの機動ドライブにミサイルを放ち決着を付けたのだった。宇宙戦の後、第4ファルコン打撃星団隊、第8ライラ正規隊、第7ドネガル防衛軍、コムガード第4軍の一部が4日間の短い戦闘で地上を確保し、いささか拍子抜けとなった。

 戦利品(〈イモータル・スピリット〉のジャンプドライブを修理していたニューグランジ級ヤードシップ)の分け前について多少のいさかいがあったが、連合軍の中にあった協力の姿勢は将来を約束していたのである。

 スカイア:コベントリのワード・オブ・ブレイクが排除されていたその時、デヴリン・ストーンはスカイアの兵力増強に動いた。送り込まれたのはウルフ氏族、放浪ウルフ氏族、コムガード第1軍、キタリー管区臨時中隊からの部隊である。ばらばらの合同軍をひとつに保つことはストーンにとって難題だったが、デヴィッド・リーアの助けを得た彼は、3074年の6月にワード・オブ・ブレイクの強襲があるまで彼らをまとめ続けた。

 海戦はひどいものとなり、〈ウルリック・ケレンスキー〉と〈タウマン〉が、核兵器で武装したブレイク派「ポケット戦艦」の餌食となった。合同軍が最大限の努力を払ったにもかかわらず、ブレイク第3師団と支援傭兵隊の大半は惑星に降下し、ニューグラスゴーに動いた。だが、第1スカイア猟兵隊と第2スカイア防衛軍は頑強に守り、都市が包囲されるのを妨げ、第13ウルフガード、第1ウルフ槍機兵星団隊が到着するまでの時間を稼いだ。

 戦闘がニューグラスゴー郊外の平原での乱戦になると、ストーンはデヴィッド・マッキノンのパラディン中隊を中心にコムガード、氏族、ライラ軍からなる1個大隊をかき集め、投入した。かつてないこの部隊を直々に率いたストーンはブレイク派の側面を叩き、第3師団の指揮官と移動司令部を捕まえた。突如として指揮統制を失った第3は降下船に舞い戻った――傭兵支援を文字通りウルフに投入したのである。合同軍の気圏戦闘機はブレイク派の降下船数隻をつみ取ったが、第3師団の1/3以上がスカイアより脱出したのだった。

 ヘスペラスII:コベントリとスカイアでの勝利の勢いを失いたくなかったストーンはヘスペラスIIを解放する野心的な計画を提案した。補給が致命的なまでに低下する中で、この惑星の軍需工場群は合同軍にとって必要不可欠なものだったのである。

 ウルフ氏族のデルタ銀河隊に先導された合同強襲隊は11月にヘスペラスIIを叩いた。第40シャドウ師団だけに直面すると予期していたストーンと兵士たちは、第38師団と第2師団の一部もまた存在するのを見て、愉快でない驚きを味わうこととなった。第1スカイア猟兵隊に強化されたウルフは第40師団に圧力をかけつづけ、マリアエレジーの陣地を孤立させた。その間、ヴィクター・ダヴィオン戦司教はコムスター第1軍の残存勢力と数個傭兵隊(バトルコープスなど)の増強をもって、ディファイアンス工業のミョー山脈工場周辺に陣取る第38、第2師団に対処した。

 7日間の残忍の戦いの後で、コムスター第79師団が突破し山脈の工業地帯内に入ったが、コムガードのバトルアーマーが工場を確保するのにもう一日の戦闘が必要となった。第40シャドウ師団は、第1スカイア猟兵隊が大胆な夜間強襲で戦線を突破するまで、マリアエレジー(ヘスペラスII首都)に張り付き続けたのだった。











Jihad Hot Spots: 3076






ディヴィッドへ

 このパケットに入っている情報の多くは、ここ数年の中心領域に関する概要、要約となっています。ボスワースの完全なプログラム3点もまた入っています。彼とスタッフたちは既知宇宙中の報道機関と軍事ネットワークから情報を選り分け、ここに詰め込みました。彼の死から三年がたった現在でさえも、彼の驚異的な組織力と分析力は惜しまれるものです。

 私は年単位で情報を分類しました。扱われている分野は多く、あなたのチームがここまでの状況の全面的な概要を理解すると確信しています。私はブレイク派が毎日INNを監視しているのかどうか疑問に思っています。

 以下は73年と74年の情報収集活動の際に、チャンドラセカール(-CK)、ピーター(-PA)の目を引いた雑多なノートと記事です。INNはボスワースの跡を継いで3075〜76年の要約を作成しました。いつでも好きなときに目を通してください。あなたが一番興味を持ってるのは、この二年間に関するものでしょう。爆破テロの後でヴィクターがかき集めた千鳥足の合同軍の情報が含まれているからです。アンクルはストーンがなそうとしていたことを好ましく思っていたようです。よって彼がこのデータを使うのなら、アンクルは許可を出しただろうことを確信しています。

 アンクルの不幸な死後、私とシードを雇い続けてくださっていることに多大な感謝をしております。あなたとストーンのために我らがしくじることはないでしょう。

――マルセル・ウェブ






断崖絶壁の上で

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 HPG信号が途絶えたとの噂がファルコン占領域の奥深くから届いている。商人のコンタクトとの連絡も理由なしに途絶えている。占領域の半分近くが沈黙している。ファルコン宙域での諜報任務を何度か行ったが、失敗に終わった。私は、ワードが氏族を事実上無力化したのではないかと想像するのみである。[近頃、プライド氏族長がケル氏族長と話し合いたがっていることを説明しているかもしれない。-PA.0473]

 アークトゥルスの私の活動に関するニュース報道は良いものがほとんどない。ブレイク派に受けた損害がまだ気にかかっている。イレギュラーズとスターガードの重い損失を適切に補うことが出来るのか確信できない。ケラーは旅団が再建に使えるリソースを持っていると請け負った。奇襲を受けたにも関わらず、ブレイク派の攻撃は、我らが「ガブリエル」前哨地への正しい道筋にいたことを証明した。よって、再建の間、オデッサに向かう準備を始めるつもりである。 -CK.0573

 ワン・シェンにいるダンガン・ダオからの報告は、憂慮すべきものである。イセサキ商船造船所がカペラの核砲撃によって破壊されたのだ。傷ついた同盟の世界を強襲した大連邦国がどんなゲームを行っているのかはわからないが、自制なく、民間の付随被害を考えずに核兵器を投入したことには当惑させられる。 -CK.0773

 ギブソンからのニュースはぞっとするものである。レグルスのタスクフォースがほぼ完全に抹殺されたのである。ブレイク派が生存者たちを逃がしたのは、目撃した悪夢を伝えさせるためなのではないかと私は疑っている。 -PA.0873

 カレドニアのコンタクトを通して、第22スカイア特戦隊虐殺の件を聞いた。ライラの部隊が失われたことは宇宙を揺るがすほどではないが、憂慮すべきなのは、ワードの第52シャドウが最後の一兵まで彼らを殺したことである。情報を組み合わせたところ、この部隊はギブソンでレグルスのタスクフォースを殲滅したのと同じ部隊であるらしい。 -PA.1073

 ケル氏族長との会談は上手く言った。公(ピーター)がオデッサに関する証拠を示すと、熟考した放浪ウルフは私が計画した作戦のために海軍、地上支援を提供すると約束した。ケルがいくつかの提案を行い、私は熟慮の末にそれを受けた。ライラの支援が保証され、我らのオデッサ戦役は進んだように思える。 -CK.1173

 ストーンは面白い男である。彼は存在するだけで尊敬を引きつけるが、本当に彼のグループをまとめているのかどうかはわからない(そして私は誰が背後にいるのか疑っている)。ダヴィオンは彼に夢中になっているが、ノヴァキャットはそれ以上だ。キャットがイレース管区国境から大量離脱するのではないかと恐れているほどだ。ホヒロは私のアドバイスを受け入れ、氏族の半数がドラゴンに戻ることを強要した。彼らはそれを喜ばなかったようだ(後で代償を支払う羽目になるのではないかと疑っている)。ストーンは当然起きた拒絶の神判に勝利し、よってこの氏族はとどまらなければならなくなった。この行動によってファルコンの代理人は仕方なく彼に敬意を払い、またホヒロは彼を信用したようだ。大統領の命令により、私はストーンにオデッサの計画を見せ、彼からの全面的な支援を得た……兵士をすぐに出してもらえることはなかったのだが。彼の計画を監視するためだけにも、ストーン一味に誰か送り込めないか、マルセルと話す必要がある。場合によっては、周囲の誰かの陰謀によってドラゴンが傷つくかもしれない。 -CK.1273

 ピーター国家主席暗殺のニュースを聞いた時、我らはツカイードまでジャンプ一回のところにいた。だが、新たな国家主席をアダム・シュタイナー将軍にするという彼の後継指名は驚くものではなく、来るべき戦役に対しライラから支援を受け続けられることはわかっている……最初の計画はシュタイナー将軍のオフィスを通して作られたのだ。ピーターは同盟にとって良き国家主席であり、ターカッドでブレイク派のハンターグループの一歩先を行くインスピレーションを持っていた。現在でも、兄や姉を越える尊敬される指導者なのではないかと、私は考えている。 -CK.1273

 オデッサ。我々の計画は完全に達成された。スターコープスの傭兵たちを「だまして」、攻撃の一ヶ月前に偵察を行わせ、それから我が臨時同盟軍がこの世界を激しく叩いた。望んだとおり惑星の部隊が秘密海軍基地に警報を出し、よって放浪ウルフとシュタイナーは素早くガブリエルを発見した。だが、ワードは我らに対する準備を行っていた――アークトゥルスのスパイは我らが考えていたより多くを語ったようだ――〈ユグドラシル〉は大打撃を受けた[またも!-PA]。しかしながら、ガブリエル基地からはすでに重要な情報が欠けていた。これはアークトゥルス(への奇襲)の後再建中に、ワードがガブリエルを放棄して、解体したことを意味している。稼働する戦艦は残されていなかった。一部稼働していたナーガ級は放浪ウルフに撃沈され、激しい防衛に使われた無人戦闘機さえも自爆装置と思われるものによって回収は出来なかった。それでも大規模な基地は陰謀から取り除かれたのだ。 -CK.0174 [我らが引き上げた後に、ワードが惑星を化学兵器攻撃したのはどうなのだろうか? 我が軍の損害は大きくこの星系を維持することはできなかった。攻撃の結果、ライラの知事に計画を邪魔されたことから(またガブリエルが暴露されたことから)ワードはアラリオンを殲滅したのと似た化学兵器を解き放ったようである。我らは自分たちの上にこのような荒廃をもたらすことが出来ようか? -PA.0174]

 「ブリオン軍団、ウマイル公爵を救う」<<file BOLTIMES.200274.vol2a>> … 第52師団の跳梁に対する英雄的な最期であった。ブレイク派恐怖の兵士たちに対する最期の戦いで、軍団は完全に壊滅したが、ウマイル公爵は惑星の地表とブレイクの手を逃れることが出来たのである。主星を失ったことは、ボラン市民にとって深い傷となったが、傷のひとつは癒されるだろう…[第52シャドウを率いているのは、アポリオン司教に他ならないことを私はほぼ確信している。我々はこの人物がマネイ・ドミニの指揮官だと不確かながら認識している。彼らの無慈悲で残忍な攻撃は、ふたつの目的を持っていた。著名な正規部隊を叩き、惑星の貴族を処刑することである。それは宇宙中にメッセージを送る彼らのやり方である。 -PA.0374]

 『スターコープス社の施設、壊滅的な被害受ける』<<file SONHOABLUS.250474.vol4g>> ……化学兵器が使われたと見られ、スターコープス主工場の施設と人員への損害は大規模なものだった。死亡者数は不明であるが、現時点で生存者がいる望みは限りなく少ないと見られる。ワードの攻撃は警告なしに……[最悪である、まったく持って。化学兵器攻撃で生き残った者はなく、施設は降下船に支援された気圏戦闘機に連続爆撃された。企業への損害はかなりのものである……重役会議がこの時開かれていたのだ。緊急時対応策が実行に移されている。 -CK.0574]

 タウラスへの大規模な小惑星攻撃の一報が届いた。ワードが関わったということはありえるだろうか? 我々はすべての背後にブレイク派の影を見なければならないのだろうか? -PA.0574

 アダムはアークトゥルス男爵、ヘザー・フィーネと結婚するつもりなのだろうか? 興味深い。彼女は最善の選択というわけでないが、庶民の友人であるスペクターとではなく、貴族との結婚が必要とされたのかもしれない。 -CK.0574

 ブレイク派との厳しいスカイア争奪戦の最中に、ロバートが核(我らは彼が持っていると知っている)を落とさなかったことは、ストーンのカリスマ性を雄弁に物語っている。ストーン以外のものが防衛を指揮していたとしたら、ロバートは土地を守るため躊躇なく核兵器を使ったことだろう……そこに市民がいたとしても。 -CK.0774

 ブレイク派の特殊部隊、シャドウハンターのせいで、グレンガリーへの投資は無に帰した。私が購入した工場は鉄骨と灰だけになり、ブリューアー軍団は消滅した。ここが私の資産だとハンターに見抜かれたのか、あるいは単なる偶然であったのか、どうなのだろうか。ソーリンのHTC施設を破壊したのがシャドウハンターと確認されているので私は…… -CK.1074

 ルシエン解放! ストーンとベアの秘密会談は実を結んだ。首都からついにブレイク派が追い払われたということは安心である。もし黒龍会 を一掃できたら、その時は、龍が再び咆吼することになろう。 -CK.1274

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ヴィクターとイシス、真実は?
(3074年12月12日)
アークロイヤル[DBC] - 数週間の熟考の後、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン軍司教は、イシス・マーリックと結婚しているとの公式のプレスリリースを出した。結婚式は、星間連盟最後の会合の前日、ターカッド上空、コムガードの旗艦の中で行われたと思われる。

 「私たちは(星間連盟)評議会の最中に結婚を発表することを計画していたが、星間連盟の解散と、その後のワード・オブ・ブレイクの攻撃によって、それは二の次となってしまった」、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン軍司教は語る。「ブレイク派が戦争に向かう中で、発表を遅らせるのが最善であると感じた。もちろんのこと、ジャーナリストたちの努力のおかげで、隠すことは出来なくなってしまった」

 そしてヴィクターとイシスの関係が実り多いものであったことも判明した。連邦共和国の元初代国王は、3068年に娘のジェイドをもうけ、3072年には双子の息子、バートンとリーが生まれたのである。軍司教は子供たちがライラ同盟、恒星連邦の玉座とどう関係しているかについてはっきりとさせた。

 「私がイボンヌとピーターを擁立して退位した時に、将来生まれてくるかもしれない私の子供は継承権を持たないことを宣言している」と、シュタイナー=ダヴィオンは語った。

 興味深いことに、ダヴィオン軍司教は自由世界同盟の継承権を得られるかについては何も言わなかった。







サンパース契約を更新
(3075年5月3日)
アークロイヤル[マークネット] - バック・トリップ少佐(サンパース強襲大隊指揮官)は公式にフィルトヴェルト政府との新しい契約を受けた。3069年以来、サンパースは、辺境の盗賊たちと戦うフィルトヴェルト軍養成校訓練大隊の生徒たち、近隣のウェタンカ、マリールンドの地元部隊を支援している。トリップ少佐の部隊は、統一された防衛を確立するために、フィルトヴェルト軍養成校の教員たちと共に働き続けるだろう。軍事用の補給物資が欠乏する中で、連合軍は地元の資源に頼るようになっている。その結果、連合のメック隊は地元で作られた「レトロテック」を大規模に使うようになり、武装された産業メックすら使うようになった。

 AFFSがニューアヴァロンと地球回廊での戦役に足を取られる中――特にダヴィオンのアウトバック(辺境地方)は――ますます自助努力を必要とされるようになっている。新たに結成されたフィルトヴェルト連合は、中心領域で生まれたいくつかある同盟のうちのひとつである。これら「ポケット帝国」は新傭兵隊にとって中期の素晴らしい契約を提供することだろう。だが、ひとつ注意せねばならないことがある。大王家が現在の危機に対処できたら、その軍事力は「成り上がりたち」に向けられることになるだろう。







戦争のルール

 このメッセージはデヴリン・ストーン合同軍に派遣された全ウルフ指揮官に送信される。

 諸君らも知っての通り、放棄されしノヴァキャットと無法者の放浪ウルフが、デヴリン・ストーンの集めた「大軍勢」の一部となっている。諸君らの大多数はここに加わるのに反対しているが、本氏族評議会は話し合いを行い、氏族の義務を果たすこととなった。現時点で、この件に関する拒絶の神判はワード氏族長の命令で延期されている。

 デズグラ部隊や中心領域軍と共に戦うのは避けられないこととなろう。ストーン将軍の指揮権の下で作戦する間、諸君らは合同軍の上官から与えられた命令に従わなければならない。命令違反者は、氏族長とローアマスターからの報復を受けることになる。戦士評議会の意志を覆すことのなきように……ウルフは優れた氏族であり、族長評議会の陳腐で間の抜けた例を繰り返してはならない。

 活動が少なかった時期、合同軍に配属されたウルフ氏族の全員があらかじめ決められた飛び地領土と輸送船に縛り付けられていた。こうすることによって、他者の堕落と誘惑から逃れることが出来た。よってこれを懲罰と受け取るべきではない。我々は周囲を取り囲むであろうデズグラ部隊に出来るだけ汚されないよう務めなければならない。

 ブレイク派の脅威に目を向ければ、勝利をつかみ取ることになろう。

 イヴァン・ケレンスキー副氏族長、ウルフ氏族(メッセージの日付、3075年1月20日)






新コムガードの兵士募集、多大な成功を収める
(3075年5月3日)

アークロイヤル[INN] - 今週、ダヴィオン元帥の兵士募集プログラム(妻の努力と中心領域指導者たちの無言の支援によって助けられた)は、重要な一点を越えた。新兵たちの入隊率はコムガードの人員減少(戦闘による損失、自然減の両方)を上回っている。

 20年にわたる氏族とワード・オブ・ブレイクとの戦闘は、コムガードに過酷な犠牲を強いてきた。かつて12個の軍を持っていたガードは、近頃、6個軍に再編成された。続くワード・オブ・ブレイクとの戦いで、さらなる損害が出ることは避けられないだろう。ブレイク派と戦い、勝つにはガードの戦力を保ち続けるのが重要だとわかっていたシュタイナー=ダヴィオン軍司教(部下たちからダヴィオン元帥と呼ばれる)は、中心領域全体での新兵募集の音頭を取った。

 戦力が定員に近づき、新たな仲間を得た今、ブレイクと戦い勝利を目指す最初の一歩になる計画にダヴィオン元帥は「静かな自信」を得ているとされる。






ハウンドとウルフ

 ケルハウンド広報部長、ジェシカ・フレーザーとの90分のインタビューのダイジェストをお送りします。我々は聖戦全般について話し合いました。特に、ケルハウンドと放浪ウルフの関わりについて。現代戦に対する彼女の見解、その他です。

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[フランクリン]:ミズ・フレーザー、あなたはミスター・ストーンと直接お会いしたそうですね? 彼について教えてもらえますか?

[ジェシカ]:事実です、彼に、一、二度会いました。彼はとても寡黙な男性で、あまり話をせず、一人でいることが多いのです。彼は素晴らしい戦術家で戦略家です。聞かれる前にひとつ答えておきましょう……違います、彼は、アーサー・シュタイナー=ダヴィオンではありません(笑顔で)。

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[フランクリン]:ケルハウンドがミスター・ストーンの抵抗軍に加わったのはいつのことですか?

[ジェシカ]:モーガンケルとフェラン・ケル氏族長は、あの恐ろしいアークロイヤルの自爆攻撃の後、彼に会いました。私はそこにいませんでしたが、その時の話は聞いています。彼らは、50時間、会議室から出てきませんでした。ミスター・ストーンは強い印象を与えたようです。スカイアをどのように救うのか、どうコベントリとヘスペラスを解放するかの巧妙な計画を携えていたのです。なので、ハウンドとウルフはその場ですぐにミスター・ストーンを支援するために全力を注ぐと合意しました。

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[フランクリン]:氏族との状況についてどうお考えですか? 一部はワード・オブ・ブレイクに対する戦役に参加するようで、氏族本拠地との通信が絶たれたとの情報があり、地球に向かうための新しい大きな策略を始めたのだと言っている人もいます。

[ジェシカ]:ええ、ハウンドとウルフは国境から目を離していません。はい、ゴーストベア、ノヴァキャット、それにウルフやジェイドファルコンまでもが小規模な分遣隊をミスター・ストーンに送っています。しかし、私はあなたと同じくらい、占領域と本拠地の状況を憂慮しています――私たちはどのような情報も得ていないのです。

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インタビューの全体は21時からこのチャンネルで!

――ISAP番組宣伝、3075年4月14日






影を追って

ロックウェル大佐

 次のデータパケットに、ホワイトホースからの通常の諜報報告と、ピーターが実行したがっている作戦提案があります。私はそれとなく賛同を示しました。

 私はこの数年衝突してきたドミニ部隊とタップダンスし続けるため、リソースをタップ(要求)してきました。あの人でなしと手下の悪魔どもは、ガブリエルでスパイダーを殲滅しかけました。我らを負かしたと思わせるつもりはありません。

 それが正しいというわけではないのです。

 74年に受け取ったグレンガリーの報告によると、彼らはプロキオン、リゲル・ケンタウルス、ガブリエルでやりあった時と同じくらい腕利きであるようです。その致死性と動きは、エモリー自身をそのまま拡大させたかのようです。

 しかしながら、1月、彼らに何かが起き、再編成したのではないかと私は考えております。ああ、彼らはいまだ致死的です――74年に我らが送り込んだ反乱軍セルを徹底的に掃討しました――しかし、何かがそこで起きたのでしょう。

 オパクス・ヴェナトーリの最終目撃地点はタウンの直後、イセサキです。そこでの任務は上手くいかなかったようです。私が見たヴィッド(映像)によると、ウコンソイを破壊して脱出した部隊は半数のみでした。奇妙なことに、オパクスの半分のみです。私には、企業の保安チームが鍛え上げられた5名の兵士を倒せたとは思いませんが、そうとしか考えられません。

 イセサキでの作戦後、エモリーのオパクスはどこかに消え失せました。これまでにないパターンですが、何かがあったのでしょう。あの人でなしどもは、傷を舐めるためにどこかに隠れたのではないかと思います。スパイダーには晴らさねばならないちょっとした恨みがあります。

 私はこの小さな重要でないプロジェクトについて報告し続ける予定です。

――ブラックウィドウ中隊のステイシー・チャーチからとされるウルフ竜機兵団諜報報告、匿名のソースによりISAPにリークされたもの、3075年4月22日






侮蔑と侮辱

TO: ライラ海軍司令部、ターカッド
RE: オデッサの状況

ご命令の通り、タスクフォース・マンドレイクはガブリエルの状況を監視中です。5月22日の朝、ゴーストベア氏族の海軍隊は強引にジャンプを行い、繰り返し警告をしたにもかかわらず、強襲を開始しました。警告射撃を行った〈インプレカブル〉は〈リヴァイアサン〉に破壊されました。ゴーストベア軍はガブリエルに向かっていきました。

監視していたブレイク派は撤退しました。損害は最小限です。ガブリエル基地と付属の施設は撤退中に破壊されました。ゴーストベアはまだこの星系を占領しています。

〈インプレカブル〉から救出された生存者は68名だけでした。

即座の援軍を要請します。ベアに代償を支払わせなければなりません。

署名、カムディング・スタンウェイ提督

〈ロバート・マースデン〉からの通信(確認済み)、3075年5月22日、ターカッド・インテルニュース・ネット印刷






ライラ、同盟軍、コンパス座の侵攻軍を撃退
(3075年6月30日)

タマリンド[TNN] - 何かの前触れであるかのように、自由世界同盟軍(FWLM)とライラ同盟装甲軍(LAAF)は共同で、コンパス座軍とワード・オブ・ブレイク軍に占領されたポールズボ、コーンケンを強襲した。両ライラ世界は解放され、占領軍は壊滅するか、大打撃を受けて惑星から追い出された。

 これまで自由世界同盟とライラ同盟は戦略面で調整を行ってきたのだが、2国家の兵士が肩を並べて戦ったのはこれが初めてだった。FWLMの匿名の情報筋によると、解放軍は数個部隊によって作られた臨時の編成であった――この戦役により彼らの本拠地は無人で残された。解放軍の実数と構成は保安の都合上公開されていないが、FWL分遣隊の中核となったのはオリエント機兵連隊の第1旅団の中心部隊であるとされる。ライラ分遣隊はブエナ領内の部隊から集められた。

 解放自体の詳細は明らかとなってないが、数的優位にある同盟/ライラ軍が6月21日、両世界を同時に叩いた。

 占領軍はすぐにコーンケンの民衆と工業地帯を手放した。惑星首都、パタヤは数時間以内に解放された。ウェン・ヤイの宇宙港は二日後に解放された。その時点から戦いは、コンパス座・ブレイク軍を大陸中央の無人の荒野に追いやり、少しずつ殲滅していくものとなった。

 ポールズボ解放はもっと難しいものだった。占領軍にはバンゴール(ライラ共和国が500年前に作り上げた軍事要塞)と首都バンゴールハイト周辺の自然の防衛網という利点があった。惑星の荒れる海と山は解放軍の戦術的選択肢を制限し、待ちかまえる占領軍はその強襲を予想することが出来た。しかしながら、勇気、決意、「輝かしい革新」と言われたものによって、チャップマン=ポチョムキン大佐は成功することが出来たのである。最後の陣地は、6月28日、月曜日の早い時間に根絶された。

 侵攻軍のごく一部(およそ10%)は脱出を図った。バンゴールが陥落した時に、重装甲の軍用降下船が発進したのである。彼らがポールズボ星系を脱したというのはあり得そうにないが、その運命は不明である。

 情報筋によると、コンパス座/ワード・オブ・ブレイク軍は、コーンケンとポールズボで同じ戦術を採ったという。あらゆる交戦で、まず不正規兵と徴兵されたものと思われる部隊が戦闘に入り、「猛烈な自棄と科学の欠如」と称されるもので戦った。これらの部隊が消耗、壊滅すると初めて、第二波としてより規律が取れ、組織化した部隊が配備される。軍旗、記章を着用した占領軍はなかったが、規律が取れているほうの部隊は新型のバトルメックを展開していた。これらの戦術と装備は、ワード・オブ・ブレイクとコンパス座連邦の組織と資源について、多くの推測をもたらすものである。

 重要となるかもしれない最初の合意によって、同数の自由世界同盟、ブエナ領の兵士たちが、コンケンとポールズボに駐屯している。





タウラス、ブルセットを攻撃
(3075年6月30日)

ブルセット[NSNN] - ワード・オブ・ブレイクの襲撃がここブルセットの貧弱な防衛をうち砕いた一ヶ月後、AFFS最高司令部の予想通り、タウラス海軍の機動艦隊が到着した。キホーテ級フリゲート(ワード・オブ・ブレイクがレストアし、提供したと思われる)を中心とする艦隊は今から4時間前に星系内にジャンプし、惑星の防衛担当者によれば、降下船と戦闘機の護衛を伴っているという。

 タウラスがブルセットに大規模な強襲を仕掛けたのは、この2年で二度目だった。一度目は傭兵ハンセン荒くれ機兵団に撃退された。彼らは地上部隊が上陸した直後に砲火を浴びせ、タウラス攻撃軍を出し抜き、どうにか殲滅に成功したのである。ブレイク派兵士が5月に再びこの世界を攻撃した時、AFFSはブレイクの襲撃とタウラスの強襲の関連性を理解していた――連合の動きを予測して、FCS〈カシル〉を中心とする機動艦隊を派遣していたのである。ブルセットの衛星の軌道上にいたフォックス級〈カシル〉はすでに到来したタウラス艦の迎撃に動いているという。

 〈カシル〉の存在は、この地域におけるタウラス海軍の優位をうち消し、連合の恒星連邦に対する言われなき戦役の穂先を鈍らせることになろう。それが望まれる。





ケバルライ解放、その代償は?
(3075年8月23日)

ケバルライ[ISAP] - 五つの閃光。五つの死と破壊の雲。それによって、ゴーストベアの成功していたケバルライ戦役は勝利から悲劇へと変わった。8月半ば以来、ゴーストベアはケバルライを守るブレイク軍を根絶する残忍な戦役を遂行していた。都市は次々と解放者の前に陥落し、防衛部隊は完全に全滅させられるか、あるいは――慈悲が与えられないことが伝わると――破滅を逃れ逃げ出した。第1、第7ベア正規隊、第69臨時守備星団隊と特定されたゴーストベア軍は、素早く降下地点を確保し、数日以内にブレイク派をレノーリ大陸から追いやった。圧力をかけ続けた彼らはブレイク派をサリーナ中で追跡し、三日にわたる残忍な戦役の後の8月18日、首都ニュー・ウェイドを奪還した。

 この時点でゴーストベア軍は二手に分かれ、第1ベアは損害の回復のためサリーナに残り、ブレイク派から再建された政府を守った。一方、ぼろぼろになった敵傭兵隊と保護領市民軍はドラッガの大都市三カ所に引き返した。ブレイク派ののど元に食らいついたゴーストベア軍は、ブレイク市民軍主力がいるカムリン要塞に全面的な強襲を開始した。8月20日の朝、ベアが工業都市の半ばまで入ったところで、絶望的なブレイク派が都市中に隠していた中性子爆弾を起爆した。すさまじい爆発が攻守双方を引き裂き、ゴーストベア軍を完全に殲滅した。わずかな生存者だけが脱出した。結局、ゴーストベアの予備である第10臨時守備星団隊がドラッガの残りを確保した。オミクロン銀河隊による作戦は、現在、状況の評価と回復のため中断されている。





ガラテアの戦闘続く
(3075年11月18日)

アークロイヤル[マークネット] - ガラテアでの同盟軍とワード・オブ・ブレイク軍の戦いは、合同軍が上陸に成功した後で、身動きが取れないものとなった。ガラテアシティを確保するため家屋から家屋への激しい戦いで、ワード・オブ・ブレイク第11師団は、コムガード、ルーイザ・ドラガ司教の第79師団と戦うための、貴重な再編成と機動の時間を稼いだ。ブレイク軍の側面を叩こうとした第1スカイア猟兵隊は、新兵器に出くわし妨げられた――ボーラ・ステルス戦車である。進軍が再開されたのは、スティーヴン・キマーリー司教と第103師団が惑星降下してからのことで、必要とされた瞬間に決定的な援軍となった。

 ガラテアを確保することは、合同軍にとって戦略的、政治的に重要な一歩である。傭兵たちの星を保有しているブレイク派は、傭兵を募集し雇用することに合法性という飾りを付けることが出来るのだ。雇われ兵士たちがこの戦争の初期に喜んでワード・オブ・ブレイクに仕えたことは、王家と傭兵隊の関係に計り知れない打撃を与えた。アウトリーチが事実上消滅すると、ガラテアの傭兵のハブとしての重要性は著しく大きなものとなった。

 進行は遅々としたものである――メートル単位で測定されることもある――そして、ここにいる者たちの多くは、この重要な世界を確保するために援軍を呼ぶ必要があるかもしれないと考えている。





ノースウィンド、忘れ去られし戦線
(3075年7月3日)

ニューアヴァロン[NANS] - いったいノースウィンドで何が起きたのか? この紛争が始まって以来、ノースウィンドはほとんど地図から抜け落ちている。彼らの名前がブレイクによるガラテア侵攻に使われたのは別として、有名なノースウィンド・ハイランダーズが戦場から姿を消したことは注目に値する。音信不通であることから、ノースウィンドはアウトリーチと同じ運命をたどったと推測されている。(ブレイク)保護領の玄関の脅威を抹殺するために、ワード・オブ・ブレイクはまたも核兵器を使ったのだろうか? ブレイク派がノースウィンドを封鎖しているという報告は保護領から漏れ伝わっている。もしそれが本当なら、彼らがすべての前線で戦うなかでそれを続けているのは不透明である。なぜ彼らは、ウルフ竜機兵団と同じく対立している傭兵隊に全面攻撃を仕掛けないのだろうか?

 情報が明るみに出るのに従い、ワード・オブ・ブレイクはノースウィンドでジレンマに陥ったことがわかってきた。彼らのアウトリーチへの攻撃は防衛という理由でいくらか正当化される……ウルフ竜機兵団の地球星系強襲は無視できないものであったからだ。しかし、ノースウィンドは別である。この時、人口の多い惑星への攻撃は、ブレイクが保護領に求めていたイメージにそぐわないものと考えられたようなのだ。同時に彼らはノースウィンド・ハイランダーズの脅威を無視することは出来なかった。ワード・オブ・ブレイクの強襲降下船が急襲し、ハイランダーズの航宙艦を奪って、惑星を孤立化させた。しかしながら、他の戦線で急速に進展した状況は、その任務を終わらせるのに必要な戦力を引き抜かせたのである。

 従ってノースウィンドは行き詰まってしまった。ハイランダーズは星系外に出る輸送船を持っていないが、ワードは地上部隊を大きな損害無しに粉砕する地上部隊を集めることが出来なかったのである。戦艦による直接的な攻撃は正当化出来ない状況で、ノースウィンドはどっちつかずとなっており、ハイランダーズは逃げるのに必要な航宙艦を待っている。






警告する報告

 恒星連邦を罰する攻勢において、我々は序盤で成功したにもかかわらず、多くの重大な誤りを犯したという結論に達した。近くに駐屯していたワード・オブ・ブレイク軍の支援があったというのに、連邦星系への襲撃で奪い取った領土を統合するのに充分な時間を稼ぐことができなかった。

 我らが奪った世界の多くが、短期間ではほとんど役に立っていない。両陣営は既存のインフラを破壊して、居住地周辺の天然資源を毒で汚した。4月のレンサムで私の部隊は50パーセント近い損害を被り、そしてそのうち負傷者は半数だけである。

 パーディション(タウラスの惑星)でハンセン荒くれ機兵団がロングウッド蒼衣隊を吸収したことと、両方の施設を破壊したことは、すでに深刻な状況にあった我が軍の兵站問題をさらに悪化させた。傭兵と遭遇した我が軍の防衛部隊は平均50パーセントから70パーセントの損失を負い、我らの市民軍は、襲撃の機会をうかがうこの地域の海賊団と戦うのに必要な防衛力を失ってしまった。

 とっておきの切り札である〈ヴェンデッタ〉でさえも、ブルセットを確保しようとした時に大破して、再び戦うには大規模な修理が必要な状況となった。よって、私は、軍評議会に却下されない限り、地上軍、海軍の双方を70%の戦力に回復させるまでは、これ以上の中心領域での大規模な攻勢を差し控える決断をした。

――TDF元帥カル・ショグワによる報告の概要、3075年10月29日






ガラテア確保
(3076年1月21日)

アークロイヤル[マークネット] - 昨日、ガラテアでの激しい戦いは、残ったブレイク占領軍の撤退という形で終了した。去年の11月に上陸して以来、合同軍(第1スカイア猟兵隊に支援されたコムスター第1軍の第79師団、第103師団)は、ワード・オブ・ブレイク第11師団と同規模の支援傭兵隊の熱狂的な抵抗に直面した。ブレイク軍がガラテアシティから追い払われ、戦闘はすぐに終わるという兆候が初期には見られたが、戦闘が地方に移ると泥沼にはまりこんだ。敵をあらかじめ用意されていた陣地と惑星上の戦略地点から排除するのに、長引く戦いが行われたのである。

 12月の中頃、ブレイク派の「ヘッドハンター」攻撃でスティーヴン・キマーリー司教が死んだ後、連合部隊の指揮権はルーイザ・ドラガ司教に渡った。戦略を考え直したドラガはさらなる支援を求めた。応じてアークロイヤル公爵モーガン・ケルは、聖キャメロン騎士団とトゥース・オブ・ユミルを派遣し、この両傭兵団は新年まであともう少しという時に到着した。パフォス周辺から第79師団の大半を引き抜いたドラガは、第1スカイア猟兵隊を残して駐屯する2個レベルIIIを足止めさせ、残ったブレイク派のうち最大規模の部隊に立ち向かうためピグマリオンに移動した。パフォスのブレイク軍は戦友たちへの圧力を軽減しようとしたが、逆襲は用心深いスカイア兵に妨げられた。

 ケルの傭兵たちから追加の火力を得ても、ピグマリオン周辺のワードの防衛を破るのには三日を要した。突破すると、第103師団はそこから流入し、ついにブレイク派を総崩れにして、パフォスの部隊に合流しようとするのを妨害した。合同軍がブレイクの主力を粉々にすると、パフォスの防衛隊は離脱して、降下船へと逃げていった。





保護領へ
(3076年4月3日)

アークロイヤル[INN] - 勇敢なるコムガードと合同同盟軍がワード・オブ・ブレイク保護領の宙域で作戦を開始したと、今日、INNは確認した。その大胆な動きの中で、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン軍司教は、固く守られた目標への一連の攻撃を率いた。保安上の問題により、現時点でその詳細は明らかとなってないが、首位者ギャヴィン・ドゥはこれをブレイク派の終わりの始まりと歓喜で迎えている。

「この恐ろしい紛争の流れは変わりました」と、ドゥは言う。「そして我々は、今、攻勢に出ています。我々は人類が直面している残虐きわまりない攻撃を押し返さねばなりません。今、我々には、狂犬病にかかったようなワードとまだ見ぬ『マスター』を捕らえるという使命が降りかかっています。我々は全人類のために、いわゆるブレイク保護領の圧政に苦しむ惑星を解放し、人類のゆりかごを奪い返すつもりです」

 声明を用意したシュタイナー=ダヴィオン元帥は兵士に対し自信を示し、中心領域は重要な転機に立っているとの見解を示した。

「ワード・オブ・ブレイクにとって唯一の希望は、彼らが全ての勢力を無慈悲に攻撃し続ける間、我らが分裂したままであることです。我らが恐怖と混乱のまま政策を決めてしまえば、彼らは既知宇宙のすべてを踏みつけにすることが出来るでしょう。しかし、我らは氏族と戦う中で価値ある教訓を得ており、新たな連合軍によってその時成功したのと同じ団結を取り戻すことが出来ます。私が望むのは、我らの行動が中心領域にとっての手本となることです。星間連盟の精神を再び得た我らは団結し、共に保護領を取り戻すのです」





ヘリオンの裏切り者、ラサルハグの防衛状況をテスト
(3076年3月14日)

アークロイヤル[INN] - 近辺境(Near Periphery)にある海賊の巣の隠れ家から飛び出したアイスヘリオン氏族の崩壊した生き残りは、近頃、ゴーストベア氏族がワード・オブ・ブレイクと戦うのに夢中になっているのを利用して、ベアとラサルハグの防衛状況をテストした。全ゴーストベア氏族軍がワード・オブ・ブレイクとの戦争に動いているように見えることから、ゴーストベアドミニオンの防衛は一握りのラサルハグ人守備星団隊に任されている――この中にはラサルハグ王家軍に一部組み入れられただけの部隊が含まれている。このことでドミニオンの後方は大きく戦力低下した――信用できない部隊がさらにそれを助長した。

 最初のヘリオン軍との接触は、ホルムスブ急襲だったという。そこでヘリオンは新しく作られた――そして最も訓練不足の――守備隊をうち破り、元王家軍が即応部隊を送り込む前に、工業製品の倉庫を略奪して出発した。次に、彼らはコンスタンスを叩き、ほぼ同じことが繰り返された。

 王家軍が派遣した防衛部隊がどうにか裏切り者を足止めしたのは、ヘリオンがピナクルを叩いた後の、ダミアンであった。ここで、定数割れの第2機兵隊が数に勝る気圏戦闘機部隊を使ってヘリオンの降下船を着陸させ、星団隊規模の混合ヘリオン部隊と一連の一撃離脱戦を行った。そこに第3竜機兵星団隊、第2自由兵星団隊からなる援軍が到着したのである。

 3個王家軍星団隊はともにヘリオン軍をくい止めた。しかし、ダミアンの首都の外にある森林の激しい戦いで、数十平方キロメートルの森に火がかけられ、ヘリオンは第2機兵隊を接近戦の殴り合いで分断するのに成功したのである。それにも関わらず、勝利を手にしたのは元王家軍だった……逃げる前にヘリオンを倒したのである。ミミルとウォッチはそれ以上の攻撃を避けるためにヘリオン軍の作戦基地をたどろうとしている。





ダイアモンドシャーク、影響力を拡大
(3076年5月3日)

アークロイヤル[マークネット] - 近年、ダイアモンドシャーク氏族の商人たちは中心領域でよく見られるようになっている。実際、中心領域の軍事産業がワード・オブ・ブレイクの手でひどい打撃を受けるなか、この氏族の戦士=商人は、多数の傭兵部隊(と中心領域の道を誤った数カ国)にとって、貴重な武器と装備の、最も信頼できる入手先となったのである。

 シャーク自身、補給し続けることを喜んでいる――もちろん、適正な価格でもってして。現在、ダイアモンドシャークは活動をさらに拡大させることを発表している。新しい交易ルートがラモーラ、ツカイード、ハーフウェイで確立された。噂によると、この動きはデヴリン・ストーンと合同軍の合意の結果だという。ブレイクと戦い続けるのにシャークは不可欠であるので、これは本当かもしれない。

 しかしながら、傭兵はダイアモンドシャーク輸送船団に近づくべきでない。逆説的であるが、この商業氏族は、仕事を得ようとする兵士たちを歯牙にもかけず、また輸送艦隊を守っている護衛たちは非常に攻撃的だと評判である。現在のところ、シャークに護衛任務を求めた傭兵たちはきっぱりと拒絶されている。ダイアモンドシャーク輸送船団に近づいた船から、ひどい事件が起きたとの報告が届いている……これは氏族がまず撃って、それから質問する存在であることを鮮やかに表現している。結局のところ、ダイアモンドシャークは広い停泊地を与えられた捕食者なのである。






竜の損失
(3076年2月21日)

ニューサマルカンド[VOTD] - 今日、我々は敬意と悲しみと共に、あるクリタ家の人物について思いを巡らせている。チャンドラセカール・クリタは、周囲の者たちを奮い立たせ、竜への献身に走らせる力でよく知られていることだろう。彼の支援と援助は、セオドア・クリタに高く評価されており、企業家として活動していた時でさえも強く尊敬されていたのである(その活動は連合を強くし続けた)。竜の軍隊がまさに戦場で敵を撃破していた時、名誉あるクリタは市場と会議室で商人たちとビジネスマンたちをうち負かしていたのである。

 クリタは危険を知らないわけではなかった。来るべき聖戦の前兆として、名誉なきワード・オブ・ブレイクは何度か彼を目標としたが、その都度、DCMSの英雄的な戦士たちによって防がれてきたのである。ブレイク派がようやく暗殺に成功したのは、クリタが勇敢にも連合の精鋭による守りを外した時だった――彼は傭兵を信頼し、勇敢なる連合の兵士たちが敵を攻撃できるようにしたのである。彼に軍人としての才能はなかったかもしれないが、クリタは連合の敵と戦い続け、真の侍のようにその最後を迎えたのだった。







アストロカジー襲撃
(3076年4月22日)

アストロカジー[MNN] - 今月の初め、カノープス軍が無法世界アストロカジーにあるブレイク基地と思われるものを狙って、強襲を行った。MAF最高司令部は、ブレイク軍と、ワードの後援を受けた海賊の両方が、ここから統一政体、マリア帝国、自由世界同盟の一部に対する攻撃を行っていると信じている。第1カノープス軽機隊の2個大隊が、2個中隊に分かれ、基地だと疑われている三カ所に降下した。奇襲によって軽機兵隊は三カ所すべてを最小限の損害で抑え、スリン・オバッカ・ラシール・サルタン領で再結集する前に素早く再補給を行った。

 サルタン領を占領していた海賊団、オーダー・オブ・フェイスフルの1個連隊(ソード・オブ・フェイスフル軽機兵隊)は数で勝っていたが、経験で優れる軽機隊と戦って行き詰まり、その後、地元の抵抗軍が突如として(ラシールを殺したと思われる)ソード・オブ・フェイスフル軽機兵隊を叩いた。パニックに陥ったフェイスフル部隊はカノープス軽機隊が防衛戦を突破するのを許し、戦いはすぐさま敗走に移行した。ソード・オブ・フェイスフル軽機兵隊は半分以下となってアストロカジーの荒野に散っていったとされる。

 サルタン領に残った部隊は一週間もたず、カノープス軽機隊は地元の抵抗軍に回収品の半分を残し、統一政体宙域に戻っていった。抵抗軍はラシールの元サルタン領を奪還し、フェイスフルの生存者たちを追跡して捕らえているという。しかしながら、騎士団のもう1個連隊が行方不明であることから、今後、アストロカジーがどうなるかは不確かである。







ストーン、恒星連邦、ニューヘッセンの支援を勝ち取る
(3076年6月2日)

ニューヘッセン[NHN] - ハンプトン将軍がデヴリン・ストーンとその多国籍連合軍に対し、ニューヘッセンを作戦基地として使う許可を与えてからわずか二週間後となる二日前、兵士と物資を乗せた最初の輸送船が到着した。戦略的な要地であり、強固な防衛隊がいたことから選ばれたニューヘッセンは、この年の始め、ストーンの密使によるアプローチを受けていたのだった。

 ハンプトン・ヘッセン傭兵団が、ガラテアからニューヘッセンまで保護領を通り抜けての長い戦いの旅を終えてから、ハンプトン大佐(当時)はまずロビー活動を行い、その後無血クーデターによって星系議会から惑星の支配権を苦労して得た後に、防衛費と兵器製造に多額を投じた。だが、ワード・オブ・ブレイクによる攻撃は実現していない一方で、支持者たちは大規模な通常部隊と要塞の強化が、費用のかかるブレイクの惑星征服を妨げていると指摘している。

 この星系を宇宙の中継地点として使うのと引き替えに、ストーン軍がニューヘッセンに駐屯し、ワード・オブ・ブレイクの襲撃があった場合は、ニューヘッセン地元指揮官の下に入って惑星の防衛を強めることになる。また、現在、ハンマーハンド、バトルアックスなどのレトロテックおよび、地元設計のルーク・バトルメックを生産している政府所有の「防衛工場」は、他の世界で生産されている装甲、エンジン、その他の部品を受け取る予定で、既存の生産ラインは限定的なアップグレードが可能となる。

 投票によると、ニューヘッセン市民は、賛成60%、反対38%、どちらでもない12%で、ストーン連合軍を支持している。しかしながら、投票者の74パーセントがワード・オブ・ブレイクによるニューヘッセン攻撃の確率が上がると感じており、それを無視するヘッセンはほとんどいない。






ニューアース襲撃
(3076年8月14日)

デヴリンへ

 各部隊の指揮官たちが提出したニューアース襲撃に関する各種報告を添付した。守りが堅いことは予想していたが、ここまで要塞化されているとは誰も考えていなかった。もしこれがブレイク派の防衛網を表しているのなら、今後、厳しい戦いに直面することになるだろう。きみの手間を省くために、マクレラン司教の報告の抜粋を用意した。報告の全体を読む前に、どう考えればいいかわかるだろう。第一波に関しても祝辞を送らせてもらう。ロシェルのSDS(宇宙防衛システム)は恐ろしい驚きだった。

……コムガードは宇宙/大気圏防衛網を突破した際に重い損害を出しました。ブレイク派の指揮官はライラがLZを確保すると火力を集中させ、第39ワード・オブ・ブレイク師団(WoBM)に名目上所属している2個レベルIIIがその穂先となりました。ケンドリック元帥は部隊の全体が降りきる前にLZを放棄せねばならなくなり、ブレイク派は残された戦力を包囲し殲滅しました。

 恒星連邦軍はもっとうまくやり、橋頭堡からまっすぐ目標に向かいましたが、重砲、通常歩兵支援を持たない彼らはブレイク派の要塞を突破、あるいは弱体化できませんでした。
[デーヴ、これらの要塞はあちこちにあるようだ。各世界にいる我が軍はこの問題に直面している。-VSD]。ホートン将軍は約2個師団分のブレイク派が陣地から出てきた時に戦いながらの退却を命じました。バトルROMの分析によると、この部隊の大半は通常兵力で、軽メックの支援を受けていただけでした。よって、第7南十字星部隊は何事もなく離脱可能で、その一方、大規模な航空支援がさらなる追撃を思いとどまらせました。

 軍司教、第1師団は、新部隊への期待と同じくらい上手くやりました。幸運にもブレイク派の攻撃は主に上陸する前のもので、地上では1個レベルIIIが我が軍の前哨兵を悩ませるために残っただけだったのです。氏族装備を多数持っていたことは、第39師団になんらかの援軍があったことを示唆していますが、その正体は確認されていません。

 私の大きな懸念は、ドラコ軍のミッチャム大佐が民間人の損害を無視し、合同軍として戦う能力を持ってないことです。ブレイク派の要塞を弱体化させるのに必要な戦闘工兵と十分な間接砲支援が欠けていることから、上陸してから数時間以内に状況は不安定なものとなり、攻勢は不可能となりました。我々はもっと連携して戦わなければなりません、サー!






大いなる善のために
(3076年8月14日)

[ハンセン]:信じられない! 最初は再補給なしでおたくらの星系を守らせて、今度は補給と交代人員を用意して戦場に戻らせないという!

[ナイトバーグ]:あなたの鍛えられた部隊はブレイク派を押し戻すのにふさわしいという決断です。だからあなた方は地球へと向かうストーン合同軍に入ることになります。ブルーコートの吸収であなた方は戦力を強化しましたが、独力ではこれ以上、国家にはかなわないでしょう。あなたの部下たちの大半は人工四肢を使っています。それはトースターどもを馬鹿にすることになります。

[ハンセン]:我々の仕事が不十分だと言ってるのか? くそっ、我々はあいつらをチキンのように走り回らせ――

[ナイトバーグ]:大佐、あなた方はよくやりました! やつらの攻撃部隊は行動不能となり、もしやつらが攻撃してきたとしても最小限の抵抗のみで済みます。あの忌々しい戦艦だけは気になりますが、あなたがたには対処しようのないものです。もし我が軍に使える2個RCTがあったら、すべての世界を取り戻せた上に、いくつかを奪ってやれたでしょう! でも、我らの手には何もなく、皮肉なのはあの牛どもを怒らせるのはあなた方の存在なのです。[間]

ハセクはあなた方を移動させ、別の疲弊していない兵士を(タウラス)連合戦線に回せば、タウラスの狙う目標がなくなって士気低下し、星系を取り戻せると考えています。

[ハンセン]:それが我らに対する感謝なのか? 部下たちが何をするかわからないぞ?

[ナイトバーグ]:あなたの部下がどう思うかは無関係です。あなたの契約主からの直接の命令です。あなた方が使っている航宙艦は我々のものです。契約を破棄して深宇宙で立ち往生したくないのでない限り、あなた方は応じるでしょう。

[ハンセン]:メアリーがこれを許してくれることを望む。

[ナイトバーグ]:ウォルフ、10年近くが経ちました。この悪夢はどれだけひどいものになりましたか?

――ウォルフガング・ハンセン大佐と恒星連邦の連絡士官アレクサンドル・ナイトバーグ大尉の会話とされるもの、3076年8月17日





ダヴィオン軍司教の報告
(3076年9月1日)

アークロイヤル[INN] - 現在、ダヴィオン軍司教は〈インヴィジブル・トゥルース〉上の司令本部から短い声明を発した。

「我が軍による戦役の第一段階が首尾良く成功したと発表出来るのをうれしく思っています。今月の4月以来、合同軍はこの準備を進めていました。情報を集め、敵軍を拡散させるために、ワード・オブ・ブレイク保護領の目標への襲撃を仕掛けていたのです。コムガードと合同軍にとって困難で危険な任務でしたが、勇気とプロフェッショナリズムをもって実行に移されました」

「現在、第二段階が始まっています。現時点で詳しいことは言えませんが、コムガード第3軍、第4軍が先陣をつとめる合同軍は保護領世界への最初の強襲に着手しました。もう妨害、陽動を意図した襲撃ではありません――敵を疑心暗鬼にするために、このような任務は実行され続けているのですが。我が軍は大挙して敵地に上陸し、そこにとどまっています」

「最終的な目標を隠すつもりはありません。地球は常にワード・オブ・ブレイクを破るための鍵です。地球への道は長く困難なものになるでしょうが、いま最初の一歩を踏みしめたのです」





ゴーストベア、保護領内を進軍
(3076年9月14日)

ヘスペラスII[INN] - ストーン連合軍とワード・オブ・ブレイクの非公式な停戦と比較的静かな数ヶ月の後、6月、連合軍は重要な保護領の世界に対する一連の強襲に着手し、戦闘は再び再開された。この月の後半、ゴーストベア・ドミニオン軍が戦闘に再加入した。今回はスノウレイヴン氏族の戦艦数隻による援軍を伴っていたようだ。激しく襲いかかったゴーストベア軍は、保護領の長い国境線に沿って攻撃を仕掛け、すべての世界を一度に叩いた。保護領の防衛に関する諜報報告から、大規模な戦力――3個銀河隊規模――が防衛の要であるデイヴを攻撃し、4個目の銀河隊が分散して、サビク、ムーア、ラムブレヒト、カーヴィル、コーを叩いた。

 デイヴの戦いは残虐で長引くものとなった。ブレイク派の占領中、惑星の重要地点に大規模な防衛戦線と掩蔽壕が構築され、それが直接的な強襲を長く血塗られた戦役としたのである。他の世界の抵抗は軽いもので、ラムブレヒト、サビク、コーの戦いは大半が終わった。これらの世界を占領するために、デヴリン・ストーン連合軍から守備隊(大半がクリタ市民軍)が派遣された。なぜなら、これまでゴーストベアはブレイク派の抵抗を抹殺した後で、惑星上に戦力を置きたがらないからだ。

 報告によると、ゴーストベア軍はデイヴ周辺の世界を切り離すため、すでに攻撃した目標を離れ、ゆっくりと新たな目標――スコンディア、パイクIV、リヨン――に移動した。これらの世界における抵抗は軽いもので、合同軍による保護領の重要な世界への攻撃に対応するため、ブレイクが重要でない世界から戦力を動かしているという説に説得力を与えている。





ニューヘッセンの勝利!
(3076年10月10日)

 ニューヘッセン[NANS] - ブレイク襲撃軍最後の拠点がハンプトン将軍指揮下の部隊に掃討されたとの一報が昨夜届いた。ニューヘッセンにおけるブレイク反乱軍の一大拠点として知られていたこの施設は、15時間の激しい攻防の後に確保された。残念ながら、ブレイクに襲撃されたニューヘッセン・メックワークスの物資は戻ってこなかった。襲撃成功直後、ワードが惑星外に持ち去ったのだとハンプトン将軍は示唆している。

 周辺地域への損害はかなりのものだった……ブレイク派の最終拠点はアグリポール鉱業施設群の中にあったのだ。噂されている戦術核での攻撃は未確認である一方、地元市民軍は民間人のこの地域への侵入を制限している。

 市民軍のブライアン・アンドレポフはこの施設が陥落した後で数名の捕虜をとったことを明らかにした。同盟軍の指揮官たちがどう対処すべきか話し合っている間、彼らは秘密の場所に閉じこめられている。8月にミュンヘン恒星間宇宙港が大量破壊兵器によって破壊されたことから、政府関係者たちは即座の処刑を求めているが、捕虜たちがこの件に関わっているかは不明である。

「すぐにも尋問が開始される予定であり、本物の犯罪者が誰であるか明らかになるだろう」と、ハンプトン将軍は短い声明を残している。





差し迫った危機
(3076年11月11日)

 アリス、現時点であなたとレグルス人の関係が良好かどうかはわかりませんが、以下はレグルス人が知りたいであろうものです。この情報をどうするかはあなた次第ですが、ストーンは同盟国がこれ以上傷つくべきでないと言っています。これは、部下が首尾良くギブソン星系に送りんだスパイ衛星の一基が傍受した会話の書き起こしです(航宙艦はワードが追いつく前に脱出に成功しました)。送ったのは基本的な部分だけです。すべて見たいならいつもの価格でお願いします。-C

>>>抜粋開始<<<

[声1:ナーマー、別名ソーニャ・アモーラ]:戦艦も失われたのですか?

[声2:アポリオン(別名不明)]:その通りだ。新しい国王は警告に耳を傾けるだろうと思っていたが、どうも国を運営する力がないか、意志に反することが出来ないようだ。いずれにせよ、これは答えることが出来ない。

[ナーマー]:(激怒する)なぜそんなことを気にかけるのですか? 生身どもはおのれの面倒を見ることが出来ます。うぬぼれ屋の軍司教は我らを軽蔑しています。我々と違って――

[アポリオン]:(厳しく)言葉を慎め、娘よ! 生身を守るのは神聖な任務だ……例え彼らがそれを拒絶しようとも。この召命の一部により、彼らが反抗の結果を理解するのは確実となるのだ。

[ナーマー]:我々は惑星を抹殺すべきです。それが結局の所、彼らのやったことに見合っているでしょう。

[アポリオン]:そうして、一人の指導者の厚顔無恥を理由に、数十億の民を罰するのか? それはならない。一人の男の行動でひとつの世界に刑を執行するつもりはない。そのような考え方により我らはジャーディンを失った。私はジャーディンを失ったのだ。違う。メッセージを直接、明確に、国王へと届けなければならない。彼が確実に理解する何かを。何かを……本能的にわかるような。

[ナーマー]:奴は弱い男です。私が宮殿にいたときの奴は気取り屋でした。奴が気骨を見せたのは、結婚してからやっとです。[口ごもり]今考えます……

[アポリオン]:彼について詳しく知る必要はない。誰に責任があるのかを彼に思い知らせてやればいいのだ。

[ナーマー]:信用してください、法務官(Praetor)。そうなることでしょう。





デイヴにブレイク派の逆襲!
(3076年12月31日)

 ケッセル[ISAP] - 保護領の世界、デイヴの残忍な戦役は、悪い方に向かい始めたようである。7月から続くこの世界への攻撃は、陣取るブレイク派を徐々に排除し、最終局面に向かっていた……残ったふたつのブレイク派拠点のうちひとつを発見するのに成功したところだった。しかしながら、ゴーストベア軍が圧倒的な強襲に着手する前に、状況は変わってしまった。デイヴのパイレーツポイントに姿を現したワード・オブ・ブレイクの援軍はゴーストベアとレイヴンの戦艦を突破する決断を下した。

 強襲が始まった時から惑星を守っていたのは、リバイアサンII級〈ラサルハグ〉、ナイトロード級〈ウルサス・メジャー〉と、レイヴンのイージス級〈スケブバード〉であった。このゴーストベア軍の間を押し通ろうとしたのは、3隻のワード・オブ・ブレイク戦艦、イージス級〈ライチェス・フューリー〉、ワールウィンド級〈ファイアファング〉、コングレス級〈ホーリングス・ヨーク〉と、支援する1ダースのポケット戦艦、強襲降下船だ。

 ゴーストベア艦隊との交戦に入り、猛攻を受けた彼らは、到着した兵員輸送降下船艦隊の盾となった。これら援軍のうち2/3が惑星に降下し、軌道爆撃から逃れるために数カ所に分散した。

 宇宙での戦闘の結果、イージス級〈スケブバード〉とワード・オブ・ブレイク全戦艦が破壊された。〈ウルサス・メジャー〉は大打撃を受け、〈ラサルハグ〉所属の気圏戦闘機1/3が失われた。

 地上では、保護領市民軍からの数個部隊と第28、第32ワード・オブ・ブレイク市民軍師団が発見されている。ようやく終わりかけていたかに見えた戦闘は、長く厳しいものへと再び変わった。ゴーストベアの封鎖を突破した大胆さと、デイヴに配備したこれらの戦力は、この世界がワード・オブ・ブレイクにとってどれだけ重要なのかを雄弁に物語っている。この惑星を確保するのに両陣営がどれだけの犠牲を払うのか、いずれ明らかになるだろう。





キタリー・マニフェスト

[このいわゆる「キタリー・マニフェスト」は、本年の6月、テラ・ファーマで見かけられるようになり――ブレイク派が検閲しているにも関わらず――惑星中に急速に広まった。オリジナルのメッセージは、3071年7月9日、すべての受信トレイ、匿名サイト、公開掲示板にスパムとして投稿された]

 500年前の今日、星間連盟は生まれた。そして、それ以来、人類はその代価を支払っている。

 星間連盟は暴力の中で誕生し、その最初の行動は、むき出しの侵略と領土の拡大であった。ほんの200年で星間連盟は終わった。王家の君主たちはその遺産を手にするため戦い、勝利によって灰以外のなにも得られないだろうということに気づきも用心もしなかった。氏族は征服と支配によって星間連盟を力ずくで作り直そうとし、数百万人が死んだ。第二星間連盟は大量虐殺のために作られ、身勝手と無関心の中で崩壊するまで10年持たなかった。

 過去の失敗から約束された未来に目を向ける時が来た。国家と民族への古き忠誠心を取り払い、古き国境と憎悪を超えて、運動を作りあげるのだ。我らを止めようと武力行使する者たちがいるだろうが、抵抗の際に我らの崇高な使命を忘れてはならない。我らの望みは永続的な平和であるが、それを達成するには戦争が避けられない。我らが戦争を知る最後の世代になることを望み、そうするものである。喜んでその重荷を背負う。これが我らの求める目的である。今日、奮闘している者たちの理解を超えているだろうが、今、ここでそうするべきである。

 今が変化の時であり、ここが始まりの場所である。





AFFSリストラ
(3076年10月20日)

 ニューアヴァロン[アヴァロンプレス] - 恒星連邦が過去最も激しい戦いのひとつで被った、ここ10年分の損害が明らかとなる中で、AFFSは大規模なリストラプログラムを開始すると発表した。一部の部隊――最も有名なのは、第3南十字星部隊と第22アヴァロン装甲機兵隊――が現実的に書類上のみの存在となる中で、AFFSの約20パーセントが現役から外され、軍旗を回収することになった。

 この削減が恒星連邦軍の軍事力を落とすことはないだろう。兵士たちと装備は、他の部隊に回されることになるからだ。また、連隊の多くは、まとまった数のバトルアーマー、戦闘車両、航空戦力を受け取ることになっている。連隊戦闘団のシステムと似ているが小規模なこれは、より均一な部隊であり、ワード・オブ・ブレイクが採用している兵種混合に対処するための優れた装備となるだろう。境界域市民軍(連邦共和国内戦後よりも大きく減少している)はさらに大規模な再編が予想されている。各連隊のバトルメック隊は大隊戦力に削減されると思われる。





ラサルハグの反乱
(3076年11月30日)

 ペシュト[ISAP] - 炎上する車両。割れた窓。建物にもたれかかる破壊されたバトルメック。それがトロントハイムの首都、ミスビーフラット市民が地下や避難所から出てきたときに見た光景である。その前夜はラサルハグにとって最悪の日として記憶されることになるだろう。11月23日、ラサルハグ人が互いに戦ったのだ。

 第2自由兵星団隊の反抗的な中核部隊と第1ティール強襲星団隊の砲撃戦は、両者の話し合いがひどい中傷合戦に変わった後で始まった。第1ティールが反乱兵たちを武装解除に動き、反乱兵が抵抗して放火を開いたところで、治安行動は残虐な砲撃戦に変わった。夜明けが黒煙を照らしたとき、生き残った第2自由兵はいなかった。破壊されたバトルメックは工業地区の倉庫周辺、あるいは場合によっては、郊外の居住地区に横たわった。

 反乱が始まったのは10月後半だった。ラサルハグ王家軍がゴーストベア氏族軍に改変される中、第2自由兵星団隊と第1機兵隊の隊員に対し、基地に戻って階級の神判を行うよう命令が下ったのである。

 初期の神判で、テストを受けた王家軍のメック戦士のうち15パーセントから20パーセントが脱落し、戦車兵、歩兵、さらには民間の任務に降格させられることとなった。第2自由兵と第1機兵隊の戦士たちは長年の戦闘で彼ら自身の力が証明されたと感じており、テストする必要があるという含みに憤慨した。最終的に両星団隊は後退を拒否し、他の数部隊でも不満が高まることになった。これによってゴーストベアドミニオンは、王家軍に圧力をかけるため、ラサルハグ人による3個前線星団隊――ラサルハグ・ベアーズ、第1ティール強襲星団隊、ギュンツブルク・イーグルス――を帰還させるしかなくなった。

 11月の中旬、トロンハイムについた第1ティールは第2自由兵団に直面し、サタライスのラサルハグ・ベアーズは第1機兵隊に圧力をかけた。一週間におよぶにらみ合いと交渉の後、第1機兵隊は手を引き、撃つことなく縛に付いた。不幸にも、第1ティールと第2自由兵の中傷合戦は最終的に暴力へと結びついた。この交戦を生き残った第2自由兵のメック戦士は6名のみで、バトルメック全武器庫は第1ティールによって破壊された。第1機兵隊の首謀者と生き残った自由兵に対し軍法会議が開かれている。





賞金稼ぎブーム
(3075年3月5日)

 アークロイヤル[マークネット] - 今日、MRBCの担当者は、好況にあるバウンティハンター(賞金稼ぎ)業界の契約取引が、先月、5.3パーセント上昇し、新記録である8ヶ月連続の上昇であると発表した。

 賞金総額の増加は、中心領域中で賞金首が増えていることを反映しているのみならず、賞金額の平均がほぼ倍になっていることにもある。その上、雇用主たちは、通常、どこで戦闘が起きてもバウンティハンターに完全な回収権を与えるのである。だとしても、傭兵が実施する賞金稼ぎ任務の数は大幅に増加している。特に各勢力が軍人だけでなく、議論を引き起こしやすい政治的人物、貴族に賞金をかけるようになってからはそうなった。デモクラシー・ナウの工作員、マーリック議会にいる反ブレイク議員、そして地下インターウェブのジャーナリストさえもが、傭兵を雇う資金力を持った当局によって首に賞金をかけられているのである。

 新しいトレンドのひとつは、バウンティハンター・チームが作られていることである。3名から12名(あるいはそれ以上)の傭兵団で、装備は通常車両、小火器から、パワーアーマースーツ、バトルメックさえも使う(目標によって)。これらのグループは民間人に化けて、金のかかった獲物を探し出し捕らえるまで惑星を静かに洗っていく。これら小チームの多くはよく大規模な傭兵隊と組んで移動する。ハンターたちは間接費を節約する一方で、傭兵隊に分け前をやる共生関係を作るのである。

 チーム・レヴナント(比較的成功しているバウンティハンター中隊)のエドワード・ビショップは、このやり方の長所について説明してくれた。

 「たいていの部隊にとって、賞金契約を単独で狙うのは経済的に割に合わないことだ。なぜなら、賞金額はスペアパーツのいくつかと数トンの装甲を買うだけにしかならないからだ。実際、ソラリスやアンタロス、ガラテアのような賞金首だらけの状況にいるのでもない限り、大規模な戦闘が起きたら、修理額が賞金を超えてしまうかもしれないということだ」

 「それでも、割のいい賞金は隊員の給料の一、二ヶ月分にはなる……装備の損失を避けられれば。だから、我々のようなハンターは賞金の一部とと引き替えに、無料の輸送と施設の使用を持ちかける。そうして、我々が仕事をしているあいだ、彼らはそのために雇われた職務を果たすことになる。ハンターたちは独立しているから、傭兵たちの手と評判はいくらかきれいに保たれる――とくに賞金首が訳ありの場合は」





ブラックウェル社に再び打撃、解散も
ワードの攻撃後、不渡りの危機
(3075年6月12日)

 ニューバレンシア[FNS] - 先月起きたゼネラルモータース/ブラックウェル提携工場への攻撃は、いまだ再建中であった工業地区を破壊したのみならず、約18ヶ月分の製品を代償とした。AFFSが、ブラックウェル社のAFFS向けの積荷を載せた輸送降下船をワードに破壊されたとき、同時にブラックウェルが抱いていた決済の最後の望みは断たれてしまったかもしれない。

 ワード・オブ・ブレイクの襲撃は正確無比なものだった。ブラックウェルの生産に関連する90パーセント以上の施設(マローダーIIの生産ライン含む)はシステマチックに破壊された一方で、GMの残った工場は50パーセント分の損害を受けただけだった。

 今日、AFFSの補給局が、ブラックウェルが引渡契約を果たさずよって支払いしないことを決めたのに伴い、ブラックウェルは死活していた資本注入を失った。アウトリーチの壊滅からまだ立ち直っていないブラックウェルは、ニューバレンシアの工場を操業するのに、ゼネラルモータースからの信用貸しと好意に頼っていた。知的財産権(その大半はワード子飼いの業者の手にある)だけが残されたブラックウェルの未来は暗いものである。





石の壁の向こうにあるもの

 「それでこのデヴリン・ストーンは誰なのでしょうか。そして、もっと重要なのは、なぜ彼のアドバイザー集団は彼を公の目から守っているのでしょうか?」

 「あちこちに出没するデイヴィッド・リーアについて取り上げてみましょう。カペラの英雄、カイ・アラード=リャオの息子であるリーアは、小規模なストーン一派の外部の者と話すことはほとんどありません。自身天才であるこの若き『ドクター』(学位不明)は非常に内向的なようで、公衆の面前に出るときは、ほとんどいつもストーンの背後に隠れています。リーアは本当にストーンがやってきた離れ業の背後にいるブレーンなのでしょうか? それともおびえた子供のように、主人の肩にしがみつくデーモンの一種なのでしょうか? ストーンはリーアを歓迎しているように見えるので、彼は役に立つのでしょう。一度ならず、本レポーターはリーアがいないことでストーンが落ち着きを失っているのを目撃したことがあります」

 「そして、ストーンの護衛であることが明白な、謎の『ペドロ』についてはどうでしょうか? どう見ても彼はストーンお気に入りの氏族人、エレメンタルであり、その仕事を完璧にこなしています。それは内戦時にヴィクターがアマゾネスのようなボディーガード、ティアレトを使っていたのとよく似ています。アークロイヤル滞在中に少なくとも二度、ストーンの命がねらわれ、失敗しており、その要因はペドロの稲妻のような反射神経と行動によるものでした。しかし、放棄されたノヴァキャット含め、どの氏族も彼の出身であると主張していないのです。彼は身元を表す『コデックス』を手首につけていません。このような致死的で謎めいた人物がストーンに従っているのは、何を示しているのでしょうか?」

 「そして扇動屋のベル・リーについても忘れてはなりません。その燃えるような赤毛と同じく短気である彼女の部下たちは、いまだその足跡を崇拝しています。ストーンは彼女に頼って麾下の部隊、『ストーン・ラメント』、キタリーの悪夢から生まれた抵抗活動家たちによる最初の連隊を率いていおり、彼女はその役目を果たしています。ストーンの軍事的戦術は彼女によるものであるという見方が一般的ですが、それは本当なのでしょうか? NAMA……NAIS軍事科学部を落第した――『慢性の不服従』のためです――リーはラメントの兵士たちをストーンの手中にまとめています。彼らはリーのために戦っているのでしょうか? それとも彼女が尊敬し賞賛する男のために戦っているのでしょうか? 彼女とストーンが恋人であるとの噂は不合理なほど陳腐なものです。彼らの相性が悪いことは、衝突と打撲の歴史が物語っています。しかし、ストーンは成長する合同軍を率いる彼女と兵士たちを信頼しています」

 「ストーンの周囲には他の人物もいます――我らが元国王ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンと、自由世界同盟反乱軍の指導者、アリス・ルーセ=マーリックが、ストーンの広報部門に加わったようです――が、結論は単純です……なぜなのか? なぜ、これらの人々がこの男を取り囲み、彼が再臨したキリストであるかのように彼の言葉に耳を傾けるのか?」

 「それは彼のカリスマのためです。しかし、記者団は伝説になりつつある人物にインタビューを申し込んでいるのですが、短いものですら拒否されています。彼と話し、人物のほどを推し量るまで、我らに出来るのはデヴリン・ストーンが何者なのか、ワードを撃退するためのどんな力を持っているのか想像することだけです」

 「ニューアヴァロンニュースのラーズ・アンダースがお送りしました」

――NANSアラウンド・スフィア、ニューアヴァロン、3075年12月12日






*SpaceCadet46 enters the room*
*Ravensfriend enters the room*

Ravensfriend: どうも、レイヴンの仲間たち! ご機嫌はいかがかな?
Stoopkin22: おまえは本物のレイヴンじゃないだろう。クイネグ?
Ravensfriend: もちろん、レイヴンだよ。おたくら、ルウムについて話してたのかい?
UnkindOne: 外世界同盟人にチャッターウェブを使わせるのは失敗だったな。
Stoopkin22: アフ。消え失せろ、フリーバース。ローカルチャンネルを使え。
Ravensfriend: 違うよ、兄さんたち、俺はおたくらと一緒で本物のレイヴンだよ。

*Cardshark1 enters the room*

Cardshark1: どうも、レイヴンたち。
Stoopkin22: おかえりシャーク。
Cardshark1: この間の入札から話が進んだだろうか?
UnkindOne: アフ。我らが求めた技術プランと引き替えに、ラモーラをシャークの貿易地とすることを認める予定だ。
Ravensfriend: 俺はメック1個中隊を入札する!

*Ravensfriendがチャンネルから強制退室されました*

Stoopkin22: どうも。
UnkindOne: 氏族長とアクセス制限について話し合わねば。
Cardshark1: 良い交渉だった。ここは氏族本拠地より少し静かなようだ。クアイフ?
Stoopkin22: わからない。ヴァイパーどもが狂ってからはこっちにいるから。
UnkindOne: ヴァイパーの副氏族長が放送を行った時、私はルウムにいた。だが、彼女は直後に本拠地を離れた。もっと大勢が来ることを我々は知っておくべきだった。
Cardshark1: 評議会の馬鹿共め! ラボフ副氏族長が死ななくとも、ヴァイパーをはじめて大氏族長に選んだ最悪の奴ら。だが、ウルフが関わっていたに違いない!
UnkindOne: え? あんたたちシャークは追い出されたのか?
Cardshark1: アフ。だが、マンドリルどもが間抜けなことをしでかすまではそこにいた。それ以降、なにがあったのかはわからない。
Stoopkin22: 聞いている限り、マンドリルはしでかしたことの報いを受けるべきだな。
Cardshark1: アフ、おそらく。やつらはいつもオーバーリアクションだ。
Stoopkin22: コヨーテとコブラもまた代償を支払わせた。
UnkindOne: アダーどもが自分たちのところにとどまっていたら良かったのに。外世界同盟人はアダーをあしらうことなくとも対処できる。
Cardshark1: ネグ! アダーじゃない。そいつらはB-

*SpaceCadet46がUnkindOneに強制退室させられました - ローカルチャンネルを使え、フリーバース*

――ルーシャンのリアルタイム・チャッターウェブより。日付、3076年9月16日






聖キャメロン騎士団失踪
(3076年11月1日)

 ドネガル[DBC] - 不可解な事件が起きて、傭兵の聖キャメロン騎士団が中心領域から姿を消した。

 近頃ガラテアに帰還したこの連隊は、数週間を費やして、ワード・オブ・ブレイク保護領に対する次の攻撃に備えていた。旧式のリバイアサン級航宙艦が星系内に到着し、民間用降下シャトルを派遣したのはこの時である。シャトルは騎士団の野営地に降下し、ひとりの乗客を降ろした。この件における数少ない目撃者によると、この謎の人物は質素な茶のローブを身に纏い、巨大な剣を携えていたという。これはセントキャメロン教団(騎士団が関係を持っていると疑われているほぼ消滅した集団)の修道士の格好によく似ていた。

 訪問者はモーティマー・デューイ大佐に歓迎され、両者は騎士団の機動指揮車に入った。残念ながら、車中で行われた長い会談の内容を聞き及んだ者はいないのだが、騎士団の上級士官たちが呼び寄せられ、来客と三日間に及ぶ協議を行った思われる。

 その後、到着した時と同じくらい急に、騎士団の未知なる来訪者は降下シャトルに戻り、出発した。直後、騎士団の野営地は大忙しとなった。修理作業塔は分解され、補給物資がまとめられ、傭兵のオーバーロード級降下船にすべてが搭載された。

 騎士団の活動に対する問いかけは無言によって応じるのみで、傭兵隊による通信は、翌日の夜明けに行われた離陸許可だけだった。

 その日、降下船群は離陸し、待っていた航宙艦に合流した。ガラテアの宇宙管制センサーが、騎士団の航宙艦と正体不明のリバイアサンもジャンプアウトしたことを確認した。両艦はアルコーに向かう航海プランを提出したが、どちらもその星系にたどり着くことはなかった。MRBCとライラの交通管制当局は聖キャメロン騎士団の行方不明を宣言した。ガラテアとアークロイヤルのMRBC事務局は行方不明になった傭兵隊との連絡が取れるような情報について賞金をかけている。

 だが、それ以降、ライラ宙域で聖キャメロン騎士団に関する目撃は確認されていない。






シャドウはどこに消えたのか?
(3076年9月22日)

ヘスペラスII[INN] - 中心領域の地図を取り出し、ここ一年超のワード・オブ・ブレイクの活動地点を赤いピンで刺したとしよう。その活動範囲は幅広いはずだ。つい昨年、ブレイク派は地球から同程度の距離にあるカーメンツとレンサムを襲撃した。ブレイク兵たちはシーアン、ボラン、スカイア、カノープスのような中心領域中の重要な世界を確保するか強襲した。だが、最前線を担当したのはシャドウ師団だった……独特で、サイバネティックス強化された、超エリートの戦士たちである。彼らはワードの正体不明のマスターにとって、スレッジハンマーと同じくらい恐怖の武器であった。

 しかしながら、ちょうど一年前にブレイク保護領を越えて広がっていた赤い点は、突如として激減した(自由世界同盟を除けば、アトレウスの周囲は赤点だらけである)。ご自慢のシャドウ師団までもが消え去り、わずかにあちこちで一連の襲撃に関与しているのみである。

 ワード・オブ・ブレイクが守勢に回っている一方で、ここ数年の報告によると、通常のWoBM(ブレイク市民軍)とマネイ・ドミニが分業体制にあったことが示されている。中心領域周辺の諜報によると、多くの場合、シャドウはワードの闘犬となり王家やその他の勢力をかき回す一方で、市民軍はより防衛的な役割を果たすか、通常の強襲の主力となった。シャドウがギブソンを本拠地にし、WoBMが地球を本拠地にしているのは明白だが、包囲されたブレイク保護領の中心、地球がこの国を守るために後退する戦線となることもまた明らかだろう。しかしながら、シャドウはまだ攻勢にあるかもしれない。

 あるいは、ワードは我らがおおざっぱに数えているよりもさらに傷ついているのだろうか?

 戦争を応援する前に、シャドウ師団がどれだけ手に負えないか、思い出す必要があるだろう。3073年、エリートの第52シャドウ師団(それまでの彼らは行動原理がわかりづらかったためにブギーマンとなっていた)は十ヶ月の戦役を開始し、ライラ、同盟、保護領の5つの世界で、いくつかの部隊(正規兵、傭兵双方)を壊滅させた。戦力を失うことなくこの作戦を終えたことは、シャドウがどれだけ恐ろしいほどに優秀であるかを物語っている。一部は合同軍の手によって消滅したのだが、少なくとも10個のシャドウ師団が完全に作戦可能な状態で残されている。

 だが、彼らはこれまでのように殺人的には使われていない。一部は同盟宙域に姿を現し、また一部は保護領で見られる(一部の混乱した報告によると、彼らは保護領の守備隊を攻撃していることが示唆されているが、他の報告では守備をしていることになっている)。大多数は単に行方不明(MIA)となっている。

 これは何を意味するのだろうか? ワードは我らが想像しているよりも打撃を被ってるのだろうか? あるいは次の大攻勢に備え結集してるのだろうか?

 我らにはそれを確かめる余裕があるのだろうか?






ヤマトの陰謀
(3076年11月1日)

 それではみなさん、これを見ていただきたい。あなた方が寝る前に考えられるような話をもうひとつ見つけてきた。

 61年、ヤマトに関する話が出ていた。おぼえているだろうか? ああ、おそらく知らないだろう。超極秘の戦艦である彼女は高級将校の通信でのみ触れられていた。(覚えて置いて欲しい、私はネットワークの亡霊だよ、ベイビー。私はどこにでも姿を現す)

 とにかく、DCA(ドラコ海軍)の働き者たちはこの大仕事を中止にしたのだが、船の上部構造を作ったニューサマルカンド造船所は、五年の仕事が無に帰すのは納得がいかなかった。どういうわけか、彼らはそれをどこかに移動させ、パッと消したのだ! タカシの死体が検死する前に消えたのとよく似ている。情報は乏しく、ISF(おそらく)ですら船の行方をつかめていない。(ゴースト)ベア戦争が巻き起こる中で、それは最重要事項ではなかったのだ。

 さて、70年に部外秘のアーカイブノードに出くわした時、私は改装されたトグラの軌道上工場を旅し(どうやってかは聞かないでほしい)、建造中止になったカガ級の部品が残っていることに気がついた。彼らは部品をまだ送っていたが、計画は62年に中止となったのだ。覚えているだろうか? ドーバーかあるいはそのあたりに送られていた。

 好奇心の強い私はさらなるデータ調査を行った。

 (実のところ、君たちISFは改善する必要がある。O5Pのネットワークを破るのは難しいが、君たちISF諸君にはちょっとした教育が必要だ)

 ここで語る時間は足りないので、以下を要約したい。オーケー、このビッグプロジェクトは辺境のワカザシ軌道工場で続行中である。おそらく数十年前に閉鎖されたところだ。データベースからその名前を抜き出すのは難しい(前述の通り、O5Pをクラックするのは難しいのだ!)が、69年に新品のリチウム核融合がチャッタムから運ばれたことはわかった。これに加えて数百トン分の「修理設備」「モジュール式非与圧支柱」やその他も見つかった。はてさて奇妙なり。

 翻って、先月、LAW(ルシエンアーマーワークス)のスーツ野郎はども、いささか無分別に泣きわめき、前言を撤回したではないか? 「ニューサマルカンド造船所のヤマトとワカザシのリュウプロジェクトを含む、新しい型軌道工場のための試験」に関する何かを。

 これらの情報を組み合わせて考えようじゃないか、諸君。

 私の唯一の疑問はこれだ。なぜまだ完成していないのか? なぜクソったれたブレイク派をぶっ飛ばしてないのか? 変だとは思わないかね!

――オーシカ地区のドレイクネットワークに投稿された陰謀スパム、3076年11月18日(未確認)











Jihad Hot Spots: Terra





なにかの兆候?
(3076年12月3日)
 アセラ[ドレイク] - たいていの人にとって、アセラ戦役はいくつかある戦いのうちのひとつに過ぎないであろう。この戦いで、ゴーストベアはブレイク派に対し手を抜くことがなく、ブレイク派もすべての武器を持ってして氏族人たちに抵抗した。ブレイク派の核兵器が我らの兄弟たちに与えた恐怖を考えると、13日間の戦役で氏族がブレイク派を処理したことを祝う理由がわかるだろう。

 しかし、最近「脇の下」の住人たちは、珍しい事実に気づきつつある。首都コピオサスが比較的完全な状態で保たれていることだ。

 ストーン・ラメントは少しずつ都市周囲の各ワード強化地点を進んでいった。攻撃の5日目、彼らは生き残った多数のブレイク派の降伏を受け入れた。この中にはHPGにいた首脳部の大半が含まれていた。反対するものは6日目に素早く片づけられた。

 さらに注目すべきなのは、ゴーストベアの来訪である。彼らはまるでコピオサスを強襲するかのような隊形で到着した。なぜ仲間が守る都市にそんな機動で近づくことがあるのだろうか?

 唯一の理論的な説明……彼らはストーン軍が首都を確保したことに気づかなかったのだ。通信ミスで説明できるだろうか? もしかしたらそうなのかもしれない。だが、検証してみよう。ストーン・ラメントは惑星で最も守りの堅い都市を奪うのに成功し、損害を受けることも、ゴーストベアの強襲の特徴となっている民間被害を出すこともなかったのだ。どう見ても(特に無駄を嫌う氏族人の基準から見ると)、彼の勝利はベアが成し遂げたすべてよりも優れているものだった。となるとこれはベアへの平手打ちに近いものである。これがベアの反感を買ったのは疑いようもない……彼らは出来るだけ早くアセラを離れたのだ。

 ストーンはなぜわざと最も精強で、最も浅薄な同盟相手を怒らせたのだろうか?

 コピオサスはベアへの教育のようなものとして意図されたのか? これは彼の優位を証明するものなのか?

 真実がどうであれ、ベアがストーンの征服のやり方を真似ることが望まれる。





浄化の時
(3076年12月28日)
 デイヴ[VotW] - 速報! 栄光あるワード・オブ・ブレイク市民軍は平和と正義のために一撃を見舞った! 12月前半、第28師団がデイヴ反撃の急先鋒に立ち、第32師団からの分遣隊が戦力を強化した。支援する古参兵部隊は、第3ブライアント、第1リプトン、第2ニューアース、第1ゾスマ保護領市民軍師団である。

 このあらかじめ計画された強襲が行われたその時、惑星上の市民軍はゴーストベアの非道を遅延戦術でくい止めていた。ケレンスキーの呪われし子供たちの不意をついた市民軍部隊は勇敢にもスノウレイヴン、ゴーストベアの戦艦の間を突き抜けて惑星降下を果たした。損害は痛ましいものだったが、予想されたほどではなかった。

 我らの勇敢なる部隊は首都ノヴァヤ・メンスク近くに上陸成功し、トロッグポートで戦線を安定させた。地形をうまく使った第28、ブライアント、リプトンの各部隊はチュピック小峡谷と広大な鉱山トンネルネットワークに入った。ベアのアルファ、オメガ銀河隊は、我らが輝かしい軍勢を自然の要害から排除せねばならなくなった。その一方で、南部では、我らの第32師団がニューアース、ゾスマ師団に支援され、巨大な要塞(連合がデイヴを我らに割譲した時に供給したもの)に入った。カッパ、パイ銀河隊は我らの陣地を奪おうと苦々しい戦いを行ったが、彼らの努力は無駄に終わった。損失は予想されたものだったが、氏族人は我らが聖なる炎を浴びることだろう。

 北部では、我らが兵士たちが断固とした敵に直面した。これらの残忍なゴーストベアは無謀にも我らの戦線を強襲し、倒せるはずのないものを倒そうとして代価を支払った。しかしまた、我らがマスターはブレイクの剣が敵の剣を切り落とし、ケレンスキーの忌むべき一族からデイヴを解放するだろう。






デイヴの検屍報告
(3077年1月28日)

トロンハイム[NRS] - ノヴァキャット氏族と戦った悲惨な3067年のアルシャイン海戦(艦隊の大部分が一度の交戦で犠牲になった)以来、ゴーストベアは過去最大の戦闘艦で海軍を強化している。この艦隊はその後のすべての紛争で活躍している……ツカイード、ルシエン、ペシュト。ベアの戦艦は核攻撃をはねのけ、向かう者すべてと戦い、勝利を得た……

 デイヴが例外である。ついにブレイク派は、戦艦1隻、強力なイージス級巡洋艦を沈めるのに成功したのだ。明らかに力の劣る相手に対し、ベアの機動艦隊が1/3を失ったのはなぜなのだろうか?

 書類上、それははっきりした戦いだった。リバイアサン、イージス、ナイトロードが、ワールウィンド、イージス、コングレスと戦った。リバイアサン単独で3隻の敵艦を次々と始末できたはずである。戦いの詳細は例によって公開されていないが、我らの推測するところはこの強力な氏族の海軍が想像ほど素晴らしくないということである。

 あるいは、ゴーストベアはこれまでの勝利に満足しているのだろうか? リヴァイアサンはどのような敵にも勝てると彼らが感じているのは確実である。よって他の艦は警戒を緩めることになったのかもしれない。あるいは、まず他の船を最初に撃つのが賢いことに敵が気づいたのだろうか? リヴァイアサンは強力であるが、3隻のうちの1隻に過ぎず、どこにでもいられるわけではないのだ。これらの巨獣から護衛を奪い取ってやれば、ベア海軍の選択肢を狭めてやることができるだろう。これがブレイク派がデイヴでやったことだ。戦艦で敵の主力を拘束したのである。ワードは裏口を通して援軍を送り込んだ。ベアがこの失敗から学ぶだけの能力があるかはいずれわかるだろう。





さらなる傭兵たちが逃亡
(3077年4月18日)

ガラテア[マークネット] - つい先日までワード・オブ・ブレイクのために働いていた傭兵部隊指揮官と席をともにする機会があった。デリラ・ガントレット指揮官、デリラ・フィンである。

[クリステン・ガードナー]: 「あなたがたがどのようにブレイク派のために働くことになったのか。彼らのところで働くのはどうだったのか、お教えくださいますか?」

[デリラ・フィン]: 「最初、彼らは我々の宗教的信条を喜んで受け入れ、本気でカポラの市民を支援していました。民衆はいくらかの安定を得て喜びました。雇用主としての彼らは面倒見がよく、期日通りに高い報酬を支払ってくれました」

[ガードナー]: 「それが変わったのはいつですか?」

[フィン]: 「ええ、息苦しくなってきたのが3072年前後です。この世界が短い時間経験していた個人の自由は期待を抱かせるものでしたが、ワードが大連邦国時代の偏執症的な感覚を持ち込みはじめました。3075年までに事態は恐ろしいものとなりました。大量破壊兵器に関する噂が広まり、ワンスター教が電波望遠鏡と他の高度な装置を持っていたことから、彼らに避難の矛先が向かいました。そして我々にも目が向けられることとなったのです。市民軍が基地を攻撃する前に、我々はかろうじてジャングルに逃げ出しました」

[ガードナー]: 「それからゲリラ戦を行ったわけですね?」

[フィン]: 「敵となったのは、まさに我々が訓練を施した市民軍だったのです、はい。もっとも、民衆は我々を助けてくれました。我々は修理用の資材と弾薬をいくらか手に入れることが出来ました。たいていは大規模な交戦を避けました。ついに市民軍の大佐が我々と戦うために部隊を集結させていることを情報提供者たちが知らせてくれました。大佐は1個中隊を持っているだけだったので、立ち向かう決心をしました。この戦いで1個小隊分のメックと忠実な戦友の一人を失いました。我々は彼らのユニオン級の1隻を奪い、この惑星から逃げ出しました。生き残ったわずかな信者たちを残していくのは気が引けたのですが、1個連隊全体、あるいは彼らが持っていたなにかと戦うことは出来なかったのです」

[ガードナー]: 「ガントレットは次にどうしたのですか?」

[フィン]: 「修理を終えて、ストーンと契約しました。我々はこれ以上ワードが無辜の人々を虐殺するのを許すことが出来ません」

[ガードナー]: 「フィン大尉、ありがとうございました」





オフィシャルアップデート3
(3077年6月20日)

クエンティン[VOTD] - 三ヶ月におよぶ戦闘の後、管領キヨモリ・ミナモトと合同軍のドラコ連合方面軍は、クエンティンにいたワード・オブ・ブレイク自慢の第47シャドウ師団を負かした。この激戦による勝利は、苦難なしにとはいかなかった。

 当初、たどり着いたタスクフォースはクエンティン保護領市民軍に直面しただけで、すぐに敵を撃退した。しかしながら、すべての兆候は、より大規模な部隊がこの重要な工業世界にいる(隠れている)ことを示していた。ここはアトラス・バトルメックのメーカー、インディペンデンス工業の本拠地なのである。

 管領の疑いはすぐに現実のものとなった。ブレイク派の奇襲部隊がまず降下船数隻を破壊し、それから管領の命を狙おうとしたのである。だが、竜はいまだ力強いままであり、暗殺者は捕らえられるか殺された。それでも、タスクフォーに対する暴動とデモは、さらなる悪巧みが進行していることの証明となった。

 5月、第47シャドウ師団が、長く伸びすぎたウルフ氏族のパトロールを待ち伏せし、その姿を表した。2個星隊分のメックが破壊され、これと同時に北半球における恒星連邦の航空優勢の間違いが判明した。隙間を突いたブレイク派の船が軌道上に入り、惑星上に数個レベルIIを落とした。

 状況は悪化した。

 援軍を得たブレイク派は、タスクフォースと大衆の両方に対する猛攻を開始した。いつでも彼らは撃退された。普通のやり方で勝てなかったブレイク派は、合同軍に対して化学兵器攻撃を数回行い、数百トン分の食料と補給物資を汚染させ、数十名を罹患させた。臆病者のやり方である。

 7月10日、ついに管領ミナモトは首都近くで発見された山岳基地に対する素晴らしい攻撃を行い、敵を足止めした。それから第1〈光の剣〉とタウ銀河隊がブレイクのマネイ・ドミニを粉砕したが、一部がやってきた戦艦の援護砲撃の下、逃げ出すのに成功した。

 しかしながら、同盟部隊の間違いにもかかわらず、DCMSはまたも永続的な勝利を得たのである。

 次は、ディーロンで!





S.O.S.

[ガンスモーク・シックス]: 「第3偵察隊通信途絶。こちら西の峰のトーチカから猛射撃を受けている」

[アルファ・アクチュアル]: 「ガンスモーク、包囲275に後退せよ! スティール・ワン、グリッド720から724へ全中隊での砲撃だ!」

[ガンスモーク・シックス]: 「ローニンがやられた! マック、我々は今まさに虐殺されている」

[アルファ・アクチュアル]: 「ここから出ていきやがれ。グランド12に降りると大佐に伝えてくれ」

…これがバトルコープス軍団からの最後の通信の一部である。偵察襲撃がひどい失敗に終わったようだ。ベル・リー将軍の機動部隊の一部であった軍団は、恒星連邦方面の第一波に先んじてヤンツィーチァン偵察を任された。軍団の輸送船の一隻がもたらした戦闘ログによると、最初の30分で1個中隊以上が一掃された。傭兵のアルファ大隊の残りは大打撃を受けた後で上陸した。通信が断絶し、ワードの防衛軍が事前に考えられていたより遙かに数が多かったことを考えると、バトルコープスが生き残ったかは大きな疑問が残る。

 軍団は厳しい状況になれている。3073年1月、彼らの第2大隊は悪名高いオパクス・ヴェナトーリにリバティで捕まった後でほぼ一掃された。3068年のアルラ・アウストラリスと3067年のカンスーのでも同じような不幸にはまりこんでいる。しかし、彼らは常にどうにか勝利を得てきたのである。が、明らかに予想していた以上の5倍の敵に直面した彼らの幸運はついに尽きたのかもしれない。

 彼らとはっきり対称的である第12ヴェガ特戦隊はアディックス襲撃を行い、ワードの防衛軍をほぼ敗走させかけた。サンドヴァル=イトー元帥がアディックス解放を一ヶ月前倒しにしたとの報告を受け取ったところである。長い成功の伝統を持つ特戦隊は数世紀にわたる戦闘技術で何が出来るかを我々に示している。

 ――ピーター・レモンデ、FSNS、チコノフ、3077年2月23日






血まみれの戦い
(3077年1月28日)

ナンキン[FSNS] - 大連邦国は狂気に陥った。まるでカペラ境界域の声明放送に聞こえるかもしれないが、これは客観的な評価である。合同軍とカペラ軍はほとんど同時に打ちのめされた世界、ナンキンにたどり着いた。恒星連邦グループIIIの船が、ナンキンの天底点で待っていたカペラ航宙艦艦隊の真ん中に到着したのである。両艦隊は同じ目標を目指していた。ブレイク派からのナンキン解放だ。そして私はデヴリン・ストーンに近い情報源から、サン=ツー首相がこの件に関し合同軍の攻撃に干渉しない合意を結んだと聞いていた。

 ナンキンにいたCCAFの部隊は合同軍と協調するために止まったりはしなかった。彼らは持てる情報を提供しようとしなかった。そして彼らは確かに地上で合同軍と協力しようとはしなかった。武家フジタ率いるCCAF軍は、降下船の加速限界である2.5Gで前進し、移動時間を通常の2/3にした。Gにさらされた兵士たちは疲れ果て、体調不良となり、数々の症状で苦しんだ……捻挫、筋断裂、心臓発作、その他である。展開したフジタ家はナンキン保護領市民軍(PM)の玩具となり、断固たるブレイク派の逆襲に対し自分の上陸地点を守るのが精一杯となった。

 より耐えやすい1.5Gで猛進した恒星連邦のグループIIIは約一日後に到着し、ナンキンPMの戦線の背後に大胆な戦闘降下を行った。ブレイク派は第17ベンジャミン正規隊とノヴァキャット氏族デルタ銀河隊の砲撃の前に勢いを失い、第5ライラという鋼鉄の下で押しつぶされ、終わった。

 謝意を表したフジタ家は恒星連邦グループIIIに即座の出発を命じた。当然、合同軍の指揮官は拒否した……ブレイク派が逃走中だったからである。応じて、フジタ家は第5ライラの基地に対し、核兵器を放ったのである。

 生き残った合同軍はナンキンを離れ、この世界とブレイク派が蔓延する政府をカペラの狂気に渡したが、本レポーターはこの世界を憐れむべきか、この世界をかけて戦っている大連邦国を憐れむべきかわからないでいる。





タウンの伝説
(3077年4月22日)

タウン[ロビンソン・ガゼッター] - よく言う通り、死体を数える以外すべてが終わった。四週間におよぶ熾烈な戦いの末、恒星連邦とその合同同盟軍はワード・オブ・ブレイクからタウンを解放したのである。戦いは3ヶ月前、フォックスティースの勇敢な偵察襲撃によりはじまり、5日前にティースが出発して終わった。惑星の支配権を得た第15アークトゥルス防衛軍は今日惑星を離れ、次の目標へと向かっていき、残った恒星連邦グループIは再武装し、チコノフから駐屯部隊が来るのを待つ間、民間の指導部への引継ぎを助けている。

 だが、どんな甘い言い方をしても、勝利は試練なしには得られなかった。最も激しい戦闘はハウェル大陸の山脈で起きた。山脈の奥深くに、ワードは降下船を大規模に修理できる能力を持った降下船工場を建設中だった。ワードは深く潜っていたので、失敗の可能性は非常に高かった。シュタイナー=ダヴィオン女王=摂政からの直接の許可を得て、FSS〈インディファティガブル〉は移動し、ピンポイントの機動爆撃をこの軍事施設に対し、実施した。ワードは壊滅し、ついにタウンは解放されたのだった。

 これさえも莫大な代償が必要とされた。ロス・マッキノン大尉と部下たちが勇敢に戦い、首尾よく降下船工場の地上設置型艦船用ミサイルランチャーを無効化させたにもかかわらず、〈インディファティガブル〉はタウンの機動にもう少しで近づけなくなるところだった。惑星の小惑星帯に、鉱物処理ステーションに偽造した多数の艦船用ミサイルランチャーが隠されていたのだ。このフォックス級戦艦が通過したのを感知して目を覚ましたランチャーは数千キロメートル彼方から数十発を発射した。戦艦に近づいてから起動した弾道ミサイルは、〈インディファティガブル〉に大打撃を与え、タウン解放をもう少しで破滅に導くところだったのである。





イングレス、フレッチャー陥落
(3077年12月3日)

ロビンソン[ロビンソン・レジスター] - 地球への進撃速度はどんどん早くなっている。最近の勝利により、恒星連邦攻勢は地球をねらえる位置にまで近づいた。来年の初め、最後の攻勢に向けてワードに汚染された最後の諸惑星をきれいにしているそのころには、サンドヴァル=イトー元帥が地球に「ドゥリトル襲撃」を仕掛けるのを見ることができるだろう。この道は平坦なものではなかった。ヒーンで〈インディファティガブル〉を失ったことから、伝説の戦士ロス・マッキノンの死まで、我が軍の兵士たちは血を流した。そして恒星連邦は、同盟内部から、あるいは少なくとも法律上の「同盟国」から、あまりに多くの挑戦に直面した。

 サンドヴァル=イトーは、ウォルター・ホワイト=ダヴィオン少将と指揮下の第5南十字星部隊にイングレス解放を命じた。今ではデヴィッド・マッキノンが指揮しているフォックスティースはほぼ無血の勝利に重要な貢献を果たした。最低限の抵抗しかなかったことから、グループIはすでに次の世界を狙う準備をしている。

 フレッチャーもまた、恒星連邦にとってたいした挑戦ではなかった。コナー・ソーテックが第1ダヴィオン近衛隊を率いる以上、そうならない理由があろうか? コムガード第2軍とともに戦った近衛隊は、すぐにワード軍の裏をかいた。そして、コムガード軍はAFFSの英雄ガーレン・コックスに率いられていたことから、事実上、AFFSの延長となった。受ける損害よりも与えたもののほうが多かったグループIIの兵士たちは、ブレイク軍を粉砕し、すでに次の攻勢に出る準備ができている。

 優れたリーダーシップ、最先端の装備、他の合同軍より長い成功の歴史を持つことが組み合わされ、この同格による「合同軍」で恒星連邦がどれだけの重さを引っ張っているのか確かな証拠となっている。





白馬上の死
(3077年8月9日)

ニンポー[CBS] - 私はクァン・イン・チャン、カペラブロードキャスティングのレポーターである。いまニンポーの首都ニンボーの生き残ったバンカーの中にいる。この二週間、ワード・オブ・ブレイクの第13師団とCCAF軍が、ここで戦闘を行った。戦術核兵器と化学兵器を惜しみなく使ったことで都市はほぼ消滅し、人民のほとんどは死ぬか、負傷するか、行方不明となった。

 第13師団は8月3日、ニンボーの南、50キロメートルのところに戦闘降下した。カペラ軍の国土防衛隊部隊が敵を止められる位置に移動し、その一方、武家マ=ツ・カイがブレイクの側面を叩くために戦闘機動を行った。続く非核戦は工場と周辺の町の大半を破壊した。国土防衛隊は、マ=ツ・カイが敵の側面に急ぐあいだ、不承不承、後退した。

 ブレイク派が最初のWMD(大量破壊兵器)を発射したときに戦闘はひどいものとなった。マ=ツ・カイは深刻な損害を出したが、同じやり方で応じ、第13師団の1個レベルIIIを抹殺した。それでもブレイク軍は防衛部隊を都市に押し込んだ。両陣営は多数の化学、核兵器含むWMDを撃った。彼らは互いを破壊しようとしてニンボーを更地にした。他に選択肢のなかったマ=ツ・カイはブレイク派の陣地に対し、絶望的な自殺攻撃に着手した。これは成功したがマ=ツ・カイはすさまじい代償を支払ったのである。折良くイジョーリ家が到着してニンボーの陥落を防ぎ、生き残ったブレイク派は退却を命令した。だが、離陸した降下船は軌道上に行く前に、イジョーリ兵に対する連携した密集機銃掃射を行った。イジョーリ家は恐ろしい損害を被った。

 この記録を惑星外に送信するために執筆をとめなければならない。このレポートがどこに届くかわからないが、ニンポーの恐怖を知らせるために、他に送ってほしい……。





ジオン解放

 セキュリティ・プロトコル: Tango Sierra Uniform Omega Prime///Eyes Only
 Date/Time: 031677 - 2325 Zulu Local - Zion
 To: ルシファー司教
 From: ポルターガイスト−デルタ・レズリー

 地球ドミニ、ストライカー大佐を発見しました。彼はジオンにいます。これはジオンのインディペンデント・プレスのニュースです。

 >>>報告開始<<<

 今日、ブレイク派の支配から解放されて最初のリポートをお伝えします。この日、3077年3月15日、ジオンがついにワード・オブ・ブレイクの圧政から解放されたことをレポートするのを喜ばしく思います。ジオン人の全員がブラックハーツに感謝しています。

 ブラックハーツは3069年の後半密かにジオンに上陸し、彼らの動きはワード・オブ・ブレイクのROMにすら気づかれなかったとのことです。それから全部隊は8年を費やして惑星の奥地で再建し、ワセットでブレイク第3師団、傭兵と戦った苦境から回復しました。

 最近確認されたところによると、ブラックハーツは惑星上の地元政府、その他の戦略地区の各階層に浸透し、情報を収集したとされています。加えて、ブラックハーツ独自の特殊作戦部隊は地元民を徴募、訓練し、ブレイク派ないしその協力者と独立して戦うことのできる特殊ゲリラ部隊を作り上げました。

 ネットワークを築いた後で、ブラックハーツ指揮官、グレン・ストライカー大佐はワード・オブ・ブレイクの支配をうち砕き、地元の防衛を崩壊させるためのシステマチックな作戦に着手しました。二ヶ月以内に、ブラックハーツとジオンのゲリラ部隊はワードと協力者を退却させるのに成功しました。逃げるのに失敗したブレイク派は捕らえられ、ただちに処刑されました。いかなる兵士、シンパに対しても慈悲が与えられることはなかったのです。

 首都ベールシェバの祝勝会で私はストライカー大佐と少しだけ話しました。彼の計画はジオンのためものだったのか尋ねると、ブラックハーツはいまだ自由世界同盟との契約下にあると彼は考えており、計画はアリス=ルーセ・マーリックの部隊と連携しているとの返答がありました。ジオンの市民に対して彼は付け加えました。「いまあなたたちは、訓練され、装備された自分たちの防衛隊を持っています」

 当面、ブレイク派との戦争は続くかもしれませんが、今のところジオンは戦争の恐怖から解き放たれています――もしそれがつかの間であったとしても。

 >>>報告終了<<<

 ストライカーと彼が「グリヴィスタ・ダ・テンペステード」と読んでいる「終生の友」のヴィッド映像があります。許可があれば、彼とストライカー大佐を抹殺します。

 [返信:なにもしないように。我々のプランは動き出している]

 ――エプシロン・エリダニのHPGデータストアで発見されたとされるもの(真偽不明)






概観:アリス・マーリック
(3077年8月9日)

 現在地と作戦計画を話すことはできないが、いまSCOUR作戦が実行に移され、ブレイク派が保持している(自由世界)同盟の世界のいくつかで戦闘が起きている。

 アリス・ルーセ=マーリック女公は同盟での作戦を統括する司令官である。ノヴァキャットのサンティン・ウェスト氏族長が副司令官、レオナルド・スチュワート公爵、コムスターのハリス・ハーヴィソン司教、ボール・ザーデット准将の全員が下級指揮官となる。主力となる同盟の兵士たちが各バトルグループに散らばり、氏族、コムスター、連合、ライラ、恒星連邦、さらには傭兵の奇妙な組み合わせがグループの空きを埋めた。

 第7ペシュト正規軍の自信過剰は傲慢に近いもので、コムスター第5軍と傭兵デビル旅団の双方に圧力がかかった時、郷土防衛軍の勇敢なる努力だけがグループIIの団結を守ることになる。

 LAAFを代表する第7ドネガル防衛軍と第3ライラ防衛軍は確固たる戦士たちであるが、彼らの利益は同盟兵と相反しているように見える。ダヴィオンの関与は最小限である――マーレット南十字星境界域市民軍がおそらく駐屯任務向けの部隊よりはましな程度の戦力を与えるだろう。

 そして氏族がいる。ウェスト氏族長は、グループIIIをワセットに投入する際の反応が遅く、ノヴァキャットの誓約には疑問が残る。第20マーリック市民軍は準備ができており、ジャンプしたがったが、戦友であるキャットのアルファ銀河隊とコムスター第4軍を待たねばならなかったのだった。その一方で、ヘルズホースの第11機械化機兵隊(MCAV)は第7ペシュトの傲慢さに匹敵するものだが、それに続くのがダリル・ケレンスキー副氏族長の放浪ウルフ・ベータ銀河隊で、ホースさえも冷静に見せるのだった。彼らは本物の戦いを行うのだろうか? それとも――いわゆるケレンスキーの子らの多くがやるように、厳しい戦いになったときには健闘を語るだけで、手を引いてしまうのだろうか?

 ことわざにもあるとおり、逆境は奇妙な仲間を生み出す。この混成軍を統制するのは、女公にとって本物の挑戦になることが証明されるだろう。

 ――ナイジェル・ホルムグレン。同盟方面攻勢に帯同するINNレポーター、3077年3月17日





チャラ作戦報告

To: ケル氏族長
From: ギャラクシーコマンダー代理・アレクシア・ライド
Topic: チャラ交戦後報告

 我が氏族長、重大なニュースを報告します。我が軍の諜報は弱められており、チャラ攻撃の最中は支援を得られませんでした。我が軍は多くを失いましたが、なによりランナ・ケレンスキーがそのうち一人であることはあなたにとって耐えられないことでしょう。あなたが我らの道を受け入れたのはわかっていますが、あなた方の関係は我々のあいだでは一般的なものではありません。あなたが悲しみを忘れる方法を見つけられるよう祈っております。チャラは大きな後退です。

 最初の侵攻時、我が軍は〈ワーウルフ〉と〈フリージア〉を失いました。キャットはキャラック級の一隻を失いました。ブレイク派が核兵器を使用するSDSシステムを投入したのです。「ダモクレス」はこれを我が軍に伝えることがありませんでしたし、市民軍に加えて元自由世界同盟の3個連隊(第4自由世界軍団、第13マーリック市民軍、鋼鉄衛団)が待ち構えていることにも気付かなかったようです。

 上陸した我が軍の戦士たちはよく戦いましたが、それだけでは充分でありませんでした。覆すには難しいほど敵の重量そのものがあったのです。第2(ウルフ)軍団が鋼鉄衛団と交戦する一方、第16(ウルフガード)が第4自由世界軍団を叩きました。銀河隊ののこりは2個市民軍部隊を押しましたが、敵戦線を突破するのは不可能だったのです。第4自由世界軍団が第16を痛めつけたことから、我が軍は戦線を保てませんでした。我が軍は彼らに深刻な損害を与えましたが、最後には退却せざるを得ませんでした。スターコーネル・ランナはブレイク派のコクピット直撃で死亡しました。戦死した戦友たちと同じく、彼女の死体も回収できませんでした。

 指揮官を失ったことから、我が軍の退却は予想より素早いものとなりました。我が軍はタリサに後退しましたが、大量の装備と補給物資を残さざるを得ませんでした。我が軍は、あなたかアリス・ルーセ=マリックからの命令を待っています。

――(放浪)ウルフ氏族公文書、3077年10月17日(確認済み)





アウトリーチ解放
(3077年11月21日)

アウトリーチ[ISNS] - 約10年の時を経て、アウトリーチは再び自由となった。アウトリーチ陥落の前にいくつかの世界がブレイクに与していた一方で、現在、我々が聖戦と呼んでいる戦争において最初に陥落した世界であると主張できるところはアウトリーチ以外にほとんどない。

 そして、住人たちは受け取った苦しみ以上のことを行った。大規模な内戦と、ありとあらゆるものの破壊的な爆撃によって、アウトリーチの人口は急減し、惑星のインフラと経済は崩壊した。かつて人類宇宙で最も進んでいた世界、アウトリーチは1000年前にありふれていたテクノロジーすら生産に困難をもたらすようになったのだ。

 ブレイク派がアウトリーチを保護領に組み込もうとして失敗したことは今では明らかとなっている。全体像を描くには早すぎるが、これまでのデータによるとブレイク派は機能する政府を作ろうとしなかった。そうする代わりに、彼らはどのような残虐な手段を使っても、惑星を平定し、竜機兵団の名残、この世界における影響力を排除しようとした。

 残虐行為の特に悲痛な一例は、ニューワイアットの北部で見られるものだ。囚人たちは地元の「再教育キャンプ」で過ごし、一日中、キャンプの周囲に塹壕を掘り続ける。その背後には死体が投げ捨てられる。埋葬するものはだれもいない。ここで見つかる遺体の量は、本当に完全に呆然とさせられるものだ。

 このような残虐性を考えると、アウトリーチ市民の精神は立派なものである。ブレイク派に尋ねられたときはいつでも、男性の場合は「ジェイム・ウルフ」、女性の場合は「ナターシャ・ケレンスキー」と答えるのである。それはおそらく、いまだ捕まっていない反乱軍、四騎士の指導者が自身を「タラ・ルーカス」と呼んでいる(71年に死んだとされたあとも)精神にあるだろう。ワナメーカーズ・ウィドウメーカーズに手ひどい損害を与えた四騎士はいまだシンボルで在り続けている。

 おそらくこれらは、アウトリーチの都市や工場は破壊されようとも、人々の精神は完全に残されているサインだろう。






レイヴンの飛行
(3078年1月9日)

ディーロン[ドレイク] - 以下はスターアドミラル・ジェームズ・ランケノウの日誌からの書き起こしである。どこで入手したかは聞かないでほしい。

10月8日, 13:00: 〈アークロイヤル〉はジャンプに成功し、ディーロンにアプローチする〈リバイアサン〉と〈ウルサ・メジャー〉に合流した。

10月10日, 18:00: ディーロンへのアプローチに対する抵抗は掃討された。若干の気圏戦闘機と強襲降下船がいただけだった。

10月11日, 08:00: 侵攻が始まり、ゴーストベア軍は最小限の損害で降下地点を確保し、ブレイク派との交戦を始めた。

10月20日, 22:12: 地上戦の進展は緩やかだが着実だった。敵はうまく掘られた陣地におり、軌道火力支援の余地はほとんどなかった。

11月19日, 04:37: センサーがこちらにやってくるドライブ炎数隻分を捉えた。後に確認されたところでは戦艦で、激しい電波輻射管制(EMCON)の下、迫ってきていた。〈リバイアサン〉のスターアドミラル・ギルモアと状況について話し合った。

11月19日, 14:00: 我が軍は敵と遭遇し交戦することになろう。ウォッチはデイヴ(援軍を惑星に送り込むために我が艦隊を引き寄せた)とは違った動きである可能性が高いとした。しかし、6隻の戦艦と対決するためには、全艦が必要であるとスターアドミラル・ギルモアは感じている。

11月20日, 06:48: 前衛部隊が交戦した。敵は、FWLN〈サルディス〉、FWLN〈アエネアス〉、FWLN〈モルドレッド〉、FWLN〈トリスタム〉、WoBS〈エンド・オブ・ウィズダム〉、WoBS〈ライト・オブ・グローリー〉と多数の強襲降下船であると識別された。

11月20日, 07:32: FWLN〈アエネアス〉撃沈。〈リバイアサン〉は、ECMとその他の妨害部隊があったにも関わらず、敵艦隊全軍の攻撃で大破した。

11月20日, 07:36: WoBS〈ライト・オブ・グローリー〉とFWLN〈トリスタム〉撃沈。〈リバイアサン〉大破、〈ウルサ・メジャー〉は〈リバイアサン〉を狙うブレイク派ポケット戦艦を迎撃しようとする。

11月20日, 07:40: 〈リバイアサン〉航行不能、ポケット戦艦は〈ウルサ・メジャー〉の砲撃を無視していまだ砲撃中。ゴーストベア軍はバーサーク化。

11月20日, 07:45: FWLN〈モルドレッド〉、WoBS〈エンド・オブ・ウィズダム〉撃沈、FWLN〈サルディス〉は航行不能となり、乗員を脱出させる。

11月20日, 08:35: 戦闘終了。〈ウルサ・メジャー〉中破、〈リバイアサン〉は失われたと思われる、〈アークロイヤル〉小破。ゴーストベア気圏戦闘機部隊は大打撃を受け、戦闘機のうち1/4のみが稼働中で残存兵力を追い詰めている。侵攻軍地上部隊の大半は惑星降下し、ギャラクシーコマンダーたちは警戒を受けた。

12月2日, 19:00: マッケナ氏族長に報告。〈リバイアサン〉は回収不能と判明。ゴーストベア軍は船体の残りが汚されることのないように、船を自沈させる準備をしている。セラ級は修理可能である。我らはこの船を回収し、〈レイヴンズ・ネスト〉と名付けた。この空母は我らと同盟によって使用される。






ニューホームの勝利
(3078年6月16日)

ニューホーム[FSNS] - 我々は地球で起こるであろうことを目撃し、心の底から震撼することとなった。ブライアントやアケルナルのような惑星は、いまだブレイク派の下で戦う保護領市民軍や傭兵たちが断固たる決意を固めたらどうなるかを知ることができた。ニューホームはまったく新しいレベルのゲームを我らに見せつけた……我々はワードのシャドウ師団のサイバー化された戦士たちに直面したのである。

 ニューホームへの到着はもう少しで惨憺たる結果に終わるところだった。このとき、我々は、第45、第47シャドウ師団がニューホームの軌道からわずか数光分のところに信じがたいほど危険なパイレーツジャンプしたのをかろうじて避けたのである。私は独占インタビューのためにデヴリン・ストーンに会うところだったが、我々が安全に惑星にたどり着くまでに、(地上にいる)ストーンと麾下の部隊は包囲されていた。ラメントが2個エリート師団の力を防いでいる間、私はバトルコープス傭兵団のゲストとなり、居座る第43師団への援軍を防ぐため野越え丘越え疾走するモーニングスター戦車の後部で飛び跳ねていた。

 最終的に、ストーンはイージス級〈プロミス〉の犠牲によって救われた。この艦はワード・オブ・ブレイク宇宙軍からの危険な砲撃に身を晒したが、WBS〈ライオネス〉のすぐ近くまでの機動し、第47の陣地に強力で正確な機動爆撃を行った。ストーンの側面に移動しようとしていたシャドウはまともに攻撃を受け、半分に切り刻まれた。

 チャンスをとらえたストーンはラメントを率いて残虐な逆襲を率い、第47の生存者をほぼ殲滅し、やってきたベル・リー将軍の部隊と合流した。ストーンはそれから都市に逃げるブレイク派さえも追いつめ、マネイ・ドミニに対する流れを変えた。次の29時間、ブロックからブロックへの残忍な戦闘で3個シャドウ師団が事実上一掃されるのを自分の目で目撃した――しかし、この勝利は大きな代償なしではもたらされなかった。リュウケン=ロクと第2恒星連邦装甲機兵団が実質的に壊滅し、バトルコープス軍団とノヴァキャット氏族シグマ銀河隊は70パーセント以上の損害を出した。戦闘に参加した他の全部隊も、ワードが撤退する前に大きな打撃を受けた。

 ニューホームは開放されたが、その代償は耐えきれないほどに高いものであった。もしワードがニューホームのように激しい戦いを繰り広げるなら、地球ではどれほど激しいものになるのだろうか? デヴリン・ストーンの合同軍には戦い続ける決意があるのだろうか? 我々は人類生誕の地を守っているに違いない防衛を突破する戦力を持っているのだろうか?





新年、新攻勢
(3078年2月5日)

シェン[レジスタンスデイリー] - 以下は、アリス・ルーセ=マーリックのタスクフォースに同行しているナイジェル・ホルムグレンからの続報で、INNのニュースからだ。

 ルーセ=マーリック女公の同盟方面タスクフォースは担当の回廊を深く進み続け、各種強度の抵抗に遭遇している。保安上の理由から、レポートできるのは、部隊編成に関する大まかな概要と、同時に複数の惑星が強襲されたことだけである。

 1月3日、タスクフォースは、シェルタン、ズーベ、アスンシオン、エグリン、シェンへの同時強襲を開始した。

 シェルタンでは、コムスターの第4軍は上陸したほぼ直後、両シェルタン師団と接触した。シェルタンの防衛軍はしぶとく戦い、もう少しで第4軍を惑星から追い出すところだったが、コムガード部隊の経験と技量が最後にはものをいった。持ちこたえられない陣地に押し込まれたシェルタン保護領市民軍は降伏し、同盟の占領のために道をあけたのだった。

 ズーベでは、地元の両保護領市民軍師団が、ノヴァキャット氏族アルファ銀河隊と第20マーリックから世界を守った。ブレイク派は、マーリック軍とノヴァキャット軍の結合した戦力に太刀打ちできず、すぐに膝を屈し、比較的早くズーベから退却した。

 アスンシオンは計画立案者たちが言っていたほど難しくなかったことが証明された。グループIVが上陸すると、彼らが遭遇した抵抗は完全に混乱した。これら防衛隊は戦い続けたが、一週間の後、アスンシオンは降伏したのだった。

 対称的に、グループIIはエグリンで重い抵抗に遭遇した。エグリンの保護領市民軍師団は激しく惑星を守り、同盟の世界解放を非常に難しいものとした。アリス隊はそれなりの損害を受けたが、市民軍はその指揮官を失ったあとついに降伏したのだった。

 作戦の開始から、シェン争奪戦は泥沼に足をつっこんだ。シェンの防衛隊はシェン・ホットヘッズ(シェンを起源とする傭兵隊)と、シェン保護領市民軍師団からなっていた。同盟側――第12アトレウス竜機兵団、第7ドネガル防衛軍、ヘルズホース氏族第11MCAV、デビル旅団傭兵隊――は、だいたい同数で戦闘が始まったにもかかわらず、守備側を押し込んだ。だが、カペラ大連邦国の第4マッカロン装甲機兵団と第4タウ・ケチ・レンジャー部隊が上陸すると、混乱がまき散らされた。このCCAF軍はブレイク派、合同軍の双方と同時に交戦した。だが、合同軍の指揮官はカペラにブレイク派と戦うよう説得し、一週間の激しい戦闘の後、敵を圧倒することに成功した。だが、打ちのめされた守備側が降伏しようとした時、CCAFはそれを無視して、攻撃を仕掛けたとされる。合同軍指揮官が介入しようとすると、カペラはまたも合同軍を攻撃し、最終的には撤退に追い込まれた。疲れ果てた合同軍はついに惑星と捕虜たちを確保したが、50パーセントもの損害を出したのだった。

 現在、1ヶ月におよぶ激しい戦いの後、同盟方面攻勢は休息と補給のために停止し、地球への最終攻勢に向けて準備をしている。





ベタニヤ・バーレット: オリエントのヒーロー

 たった一人でブレイク保護領の世界、ホールを陥落させて以来、ベタニヤ・バーレットはデヴリン・ストーンの新軍隊で人気の人物となり、今ではストーン・ラメントの新第4大隊の指揮官に昇進している。彼女という星はいまだ昇り続けているようだ。カリスマ的な女性である彼女は、この困難な時代において、オリエントの民衆に誇れる人間を与えている。

 ホールでの外交的手柄はよく知られているが、あまり知られていないのは、この女性が休みなくワード・オブ・ブレイクと戦い続けていることである。ストーンの自称師匠であるディヴィッド・リーアの近しい腹心であるバーレットは、幾度と無く大義への傾倒を示し、最近デヴリン・ストーンの命を救ったことでそれは頂点に達した。この独占報告において、バーレット(ロエチェスで生まれ、オリエントで育った)がいかに合同軍のリーダー暗殺を阻止し得たのか詳しく述べる。

 しかし、誰もが現在の彗星のような昇進を喜んでいるわけではない。ストーンの実力主義を表立って賞賛しているにも関わらず、ベル・リー将軍は「新しい女」への嫌悪を隠そうとしていない。これをちょっとした嫉妬だと言う者もいれば、リーのようなメック戦士がバーレットのような歩兵に向ける伝統的な軽蔑によるものだとする者もいる。リーが昇進させたのではなく、はじめてストーン自身が(リーアの推薦によって)昇進させたから、ともされる。

 だが、彼女の不満に関係なく、リー将軍でさえもバーレットと彼女の部隊の勇気と度胸を否定する事はできない。彼らは、デヴリン・ストーン自身の生命を終わらせようとしたマネイドミニの暗殺者二人と戦い、勝利したときに、それを見せつけた。以下はその話である……

――特報: オリエントの英雄、オリエント・オブザーバー・ヴィドジンより抜粋、3078年5月10日





プロフィール:リン・ムラカミ

 名前: リン・ムラカミ
 生年: 3045年(3077年時点で32歳)
 地位: 外交官

 ストーン合同軍内の同僚たちとは違って、ムラカミの過去は比較的確実でもったいぶったところがない。トグラでDCMSの中佐と地元の百姓の女の間に生まれたムラカミは、両親が面倒を見られなかったことからすぐに見捨てられた。彼女は孤児院で数年間、惨めに過ごした。ムラカミの一族が3052年に彼女を養子にとったとき、彼女は読み書きができず、ほとんど話すこともできなかった。新たな両親は、彼女を障害児だと考えた。

 しかしなから、幼いムラカミが必要としていたのは、愛情と育ててくれる家庭だったのである。ひどい環境から解放された彼女は非常に知的で優秀な若き女性に育った。17歳で彼女は名門のニューサマルカンド大学法学部に合格し、これまでに前例のない2年間で卒業し、最優等をとったのだった。彼女は管区通信省の法務部長というめったにない地位をあたえられ、3067年に行方不明になるまでそこにいた。

 二ヶ月のおざなりな調査の末、凶悪犯罪(不幸にもニューサマルカンドのストリートではそう珍しくない)の犠牲になったと間違われると、その後、この明るく知的で小柄な弁護士について考えるものはなくなった。養親は2年前に死んでおり、また彼女は人とつきあうより鋭い分析に時間をつぎ込むことで知られていたのである。

 3072年、ゲリラ軍の手によってニューアヴァロンの捕虜収容所から解放されたことは、まだ彼女のことを覚えていたわずかな官僚たちに大きな衝撃を与えた。彼女が連合の古き敵の首都でどのようにワード・オブ・ブレイクに捕まったかは謎のまま残されている。だれにも見つからず、恒星連邦に亡命したのだろうか? ムラカミはこの件に関する返答を拒否している。

 ムラカミはデヴリン・ストーンの幕僚に働きかけているところがよく見られる(たいていは裏側で)。外交的な要求のほとんどは彼女を通し、また彼女は国家主席たちを相手にした時でさえもストーンの代理として話す権限を持っているようだ。彼女は妥協と外交の達人で、ストーンとディヴィッド・リーアのためにデリケートな政治問題を取り扱っている。合同軍のなかで増えつつある政争に勝つためには、リン・ムラカミ外交官と関係を深め、そして厳しい批判を交わす必要があるのは明白だろう。






船長の航海日誌
(3078年8月26日)

 現在までに戦闘は集束し、散発的な小競り合いが、バラバラになった生存者と我が艦隊の間でおきているのみである。わずか4時間で、あまりに大規模な破壊と死がここで起きた。少なくとも我が軍が勝利し、目標を獲得した。あるいは目標のうち、残されていたものを。予備観測によると、造船所の約2/3が戦闘で破壊された。ブレイク派の破壊工作によるものか、砲台・隠れた部隊を掃討するために我が軍が撃ったものだ。

 比較的容易だったはずの作戦は、ジャンプインした瞬間に悲惨なものとなった。どうしたことか、彼らは我が軍を待ち構えており、守りを率いるのは完全に動作するキャスパーIIシステムであった。ブレイク派の第一陣が追いつく前に、我が艦隊はかろうじてジャンプポイントをきれいにした。ブレイクの先陣に立ったのは気圏戦闘機と長距離ミサイルで、ポケット戦艦と戦艦三隻、〈デスブロウ〉(エセックス級)、〈ナルボンヌ〉(ダンテ級)、〈マンチェスター〉(シュフラン級)が続いた。我々が発見した初期の記録によると、これら三隻はすべてケースホワイトから回収された艦である。

 我が軍は2個海軍「星隊」になった。ゴーストベアとレイヴンが第1星隊で、ウルフとファルコンが第2星隊。我らと〈レアー・オブ・マイティヴルム〉は予備、指揮艦となった。2個の星隊の態度の違いは最初から明らかだった。連携を組む練習時間がないという状況において、レイヴンとゴーストベアは2年間緊密に活動していたところを示し、ファルコンとウルフはそれぞれ自力に頼ろうとした。

 キャスパーからの第一射は別として、ワード軍が核兵器を使わなかったことは奇妙だった。ディーロンで見せたように、ブレイク派は弾薬不足に陥っており、地球のために節約しているのかもしれないと思われた。もちろんのこと、核を使わなかった理由は、新たな「炎のつぼみ」が死の花となったときに明らかとなった。破壊されているかに見えた施設から、数十発のダミーミサイルとそこに混じっていた十数発のピースメーカー弾頭が、ほぼ至近距離で発射された。哀れなベア、〈リバイアサン〉ですらこの攻撃には耐えられなかった。ベア氏族長に、あなたはリバイアサン級残り一隻しか持っていませんと言うのが私でないことにほっとする。少なくとも我々は、地球を守るための罠がどれほど見事に働いたかを知っている。

 我が陣営の戦艦半ダースが沈み、残りはこれ以上の実戦に耐えられそうもない。ベレシックが地球での作戦で我々の救援を必要としないことをねがっている。そうするには時間がかかりそうなのだ……

 ――LAS〈ロバート・マーズデン〉艦長の航海日誌から抜粋





目的地:東
(3078年2月5日)

[茶色のウェーブヘアの女性が、混雑した宇宙港のエプロンに立っている映像]

[レベッカ・ドワイヤー]:「INNのレベッカ・ドワイヤーです。リー将軍の降下船で行われた戦域ブリーフィングから出てきたところです。東方作戦域を任されたリーの部隊は東京からカイロにまで上陸しました」

「リーの戦術は、この戦域の強化要塞多数に対して有効だと証明されました」

[ビデオの右上隅が、強襲バトルテックを運ぶ6機の虫のようなVTOLに差し変わる]

「降下船での短距離移動強襲、そしてトンボ重輸送VTOLでの大胆な空中移動をも利用したリーは、ワードが使う多数のキャッスルブライアンを目標としました。その電撃的な攻撃は、モスクワとシンガポールのバンカー内にいたワード軍を容易に陥れ、バンカーに入ったワードを追い出し始める前に、この地区を確保するためのさらなる部隊を持ってくることが可能となりました」

[右上隅のビデオが、アンドリュー・レッドバーンがダイシのコクピットに登る姿に変わる。レベッカ・ドワイヤーはしゃべり続ける]

[ドワイヤー]:「憂慮すべきニュースは、レッドバーン将軍が消息をたってから24時間が経過していることです。しかし、リー将軍はジュネーブに移動していたリベレーターズとのコンタクトが失われていることに対して無関心なままです」

[ドワイヤーの映像が戦闘服でホロテーブルを覗き込むリー将軍に変わっていく]

[リー将軍]:「アンディはヴィクターが生まれて以来の難題に取り組んでいるんだ。奴は自分が何をやっているのか知っている。単にブレイク派の最高司令部の前まで行ってドアを叩くわけじゃあない。奴の前に立ちはだかるブレイクのクズどもがほとんど哀れだね。ほとんど、ね」

[カメラはレベッカ・ドワイヤーに戻る。挿入されている映像は、ギリシャのパルテノン神殿と、破壊され煙を上げるライノ戦車を見つめるベージュのグランドタイタン、漆黒のブラックホーク=ク]

[ドワイヤー]:「アテネの報告は期待されていたよりも良いものです。別のやり方を選んだリーは、集められるだけの極秘、特殊作戦部隊をすべて集め、攻撃の先鋒としました。スターシーズ特殊歩兵部隊に率いられ、ソレンセン・セイバースとバトルコープス、カオスイレギュラーズに支援されたアテナ開放作戦は、失敗に終わったケースホワイト作戦以降隠れていた数個コムガード部隊とリンクさえしたのです」

「確かにこれは我々全員にとってシンボルです。各国から立場を同じくする者たちが集まるオリンピックの聖地が、中心領域の各地を代表する男女によって解放されたのです。バトルコープスのような傭兵がクリタの精鋭と肩を並べられるなら、おそらくストーン合同軍は一時の同盟以上のものになれるでしょう」

「確かなこととして私が伝えられるのは、地球開放が幸先よく、そして本当に始まったということです」

「INNのレベッカ・ドワイヤーが、シドニー外部のスチュワート本部からお送りしました」

――INN特別報道、地球、3078年8月19日 -INN special report, Terra, 19 August 3078





カイロの叫び

[オントス戦車の背後にいるレポーターの映像。遠くから砲撃の炸裂音が聞こえてくる]

[マクファーソン]:「こちら、シェーン・マクファーソン。ナイル川、カイロ南の管領ミナモト司令部からレポートします。現在、合同軍は再結集しています。ブレイク派が支配する都市深くにあるROM本部への最初の強襲は、大失敗に終わりました。未確認の報告によると、かなりのライトオブマンカインド特殊作戦部隊が、キャッスルブライアン城塞を根城にする第36師団、テラセクの装甲歩兵数個大隊についていたようです」[砲弾の音が上空をひき裂く。マクファーソンはかすかに引きつる]

「配置についた後で、有名なケルハウンド連隊がカイロ強襲の先陣を切りました。合同軍は都市内のキャッスルブライアンに敵が隠れていると信じました。ハウンドの2個半連隊は、激しい砲撃の援護の下、目標に進みました。第2ディーロン正規隊は支援に動き、ストーン・レヴナントと第1〈光の剣〉が逆襲に備えて両側面を守りました」

「最初の数キロメートルで抵抗を受けなかったハウンドは、カイロ南の商業地区に入りました。ナイル銀行にたどり着くと、高層ビルが連続して爆発し、数ブロック分が崩落しました。煙と残骸が晴れると、数機のメックのみがあらわれ、ハウンドとディーロンは消えていました」[停止]

「この地域を進んでいた75機のバトルメックのうち、合同軍の戦列に戻ったのは20機以下で、さらにそれらのメックは大きな損傷を負っていたのです。救援活動が続く間、管領は合同軍を守勢に回らせました。ハウンドと正規隊の兵士数名が発見され、救出されましたが、奇妙にも民間の被害に関する報告は存在しません。明らかにワード・オブ・ブレイクは我々を待ち受けています――カイロは当初考えられていたような守りの薄い砂漠のオアシスではなさそうです」

 ――ISAPの現場報告、地球、カイロ、3078年8月20日





東京、確保
(3078年8月21日)

地球[VOTD] - 東京タスクフォース指揮官、太守イソロク・クリタによると、霞ヶ浦から川苔山麓にかけての東京とその周辺部が確保されたという。

 第23アークトゥルスは東京キャッスルブライアン・コンプレックス外の国師ヶ岳の斜面に陣取った。初期の報告によるとコンプレックスからの抵抗は限られたもので、大多数は自動の固定砲台からのものだった。施設はロックダウンしている様子で、移動、通信、その他の活動は探知できなかった。

 第1南十字星部隊は東京の北で大きな抵抗はなかったと報告している。同じく第2ゲンヨウシャは京都周辺の地域にブレイク派の部隊はなかったとしている。もしこれらの評価が正確なものであるなら、キャッスルブライアンが破られるのは数日以内となる可能性がある。

 不気味にも、通りは往来がなく静かで、アークトゥルスのメックと戦車を見る市民の目は不信をたたえている。アークトゥルスは東京都の外に陣取った。本州に陣取った他の部隊もそれにならうと考えられる。

 これまでのところ目立った行動がないことから、ワード・オブ・ブレイクに関わるすべてを根絶したがっている兵士たちがいらだっているのは明らかだろう。キャッスルが破られるまで確実とは言えないが、ほとんど戦闘無しで日本列島は合同軍の支配下に入ったようだ。

 それでも占領は被害無しでとは行かなかった。昨日、アークトゥルスの歩兵二名が、食べ物に仕込まれた毒で死亡し、数名が食中毒になっていることから、太守は通りの店の食べ物にさわるのを禁じた。クエンティンでの記憶は新しい。これが最悪のケースで終わることを祈るのみである。





血塗られた月がのぼる

[ヴィッド・スクリーンに、汚れた装甲環境戦闘スーツを着たレポーターが映る。彼を取り囲む空間はデブリまみれで、壁に大口径の焼けた弾痕がある]

[オルロフ]:「ルナシティを出てすぐのところにあるテラセクの元指揮センターに立っています。背後にごらんいただけるのは、最後の戦いで大きな損傷を負った指揮センターです」

「およそ4日前、マルセル・ウェブ大尉指揮下の合同軍は、指揮管制センターの支配権を得るため直接戦闘降下を行いました。ここは明白にストーン将軍の侵攻軍に対する脅威を与えていました。ルナ強襲軍は、DCMSのDEST分隊群、スターシーズのバトルアーマー兵、ジェイドファルコン・アルファ銀河隊、ウルフ氏族・デルタ銀河隊のエレメンタル星隊群で大半が構成されています。この部隊がルナの軌道に入ると、テラセクの戦闘機数機が阻止しようと動きました。我が軍の戦闘機護衛部隊は、強襲降下船の火力と組み合わされ、短い交戦の後、テラセクの戦闘機を撤退させました」

「バトルアーマー部隊が基地の周囲の東西南北に降下しました。主強襲はスターシーズ、ファルコン、ウルフが担当し、DESTチームのために注意を引きました。DESTが任されたのは、指揮センターの防衛システムを無効化し、確保することです。当初から戦闘は合同軍にとってきわめて困難だと判明しました。テラセクの地上部隊は、有人操作のエネルギー兵器砲塔と、多数のミサイルを持ち、守りやすいところで待ちかまえていたのです。ひるまず合同軍は、陣地に対する教科書通りの強襲を行いました。すぐに兵士たちはふたつの防衛境界線のうちひとつを突破し、それからテラセクの援軍による逆襲を受けました」

「DESTが基地に押し入ると、ファルコンとウルフのエレメンタルが主防衛戦を蹂躙しました。これで防衛ネットワークすべてが崩壊し、ブレイクの防衛軍は基地に撤退せざるを得なくなりました。残虐な7日間の「武装した鬼ごっこ」の後、基地はついに陥落しました。その寸前には、中央司令室の近くで熾烈な撃ち合いがありました。両陣営の損害はすさまじいものです。合同軍のうち約半数が死亡し、15パーセントが負傷しました。テラセクの防衛部隊のうち、数個分隊のみが生き残り、捕虜にとられました」

「INN、アイヴズ・オルロフが、テラセクのルナ指揮センターからお送りしました」

――3078年8月22日に撮影されたビデオジャーナル






リオ停電
(3078年9月8日)

地球[INN] - リオデジャネイロ。南アメリカ大陸の輝ける宝石である。そしてまた、ストーン合同軍による最新の勝利の地でもある。

 8月半ばの上陸は、当初、うまくいった。魅力的で決断力に富むジョン・ダヴィオン元帥は部隊――鉄衛団、第5南十字星部隊、第20マーリック国民軍――を率いて、統制のとれた急襲降下と橋頭堡確保でこの都市最大の生産拠点を奪い取った。成功した合同軍はアマゾン地区で最大の生産地とテラセクの主補給庫、フォーテ・サンタクルーズの集結地点を抑えてみせた。

 しかしながら、ダヴィオン元帥と兵士たちがゴヴェルナドール島のSDS司令要塞に進むと、事態はひどいものとなった。そこで彼らは塹壕と防衛網によって停止した。

 ダヴィオン元帥は、絶え間ない砲撃、空爆、降下船爆撃で要塞を叩いた。三週間に及ぶ集中爆撃と研究の後、エリート・バトルアーマー打撃チームは、要塞の地下へのアクセスポイントに侵入し、施設に通電していた巨大発電所を破壊するのに成功した。三つの核施設が完全にメルトダウンすると、全地球SDS防衛ネットワークは連鎖的に停止した。そして突然、合同軍は空へのアクセスを得たのである。





ナイル壊滅
(3078年9月1日)

[管領キヨモリ・ミナモトの顔が映像にアップになる]

[ミナモト]「昨日、地元時間2300時のことであるが、1個混合通常連隊に支援された第2ケルハウンドの2個中隊が、ジャベル・ウム・アルダの北西から都市に入った。上空偵察のデータによると1個レベルIIIが都市内への道を守っていることになっていた。我が軍の側面部隊はこのレベルIIIが相当な砲撃支援を持っていることに気がついた。両陣営の被害は大きく、60パーセントが破壊されるか戦闘不能に陥った」

「引き替えに、ハウンドと支援部隊は、少なくとも40パーセントの損害を与えたと見積もってるが、そのうち回復不能なものがどれだけかは現時点でわかっていない。ハウンドはアダビヤへの退却中、VTOLによる砲撃でさらに1個小隊のマシンを失った」

[画面はミナモトの顔からナイルデルタ地帯の地図に変わる。部隊はそれぞれの色で記されている。大きな灰色の雲が地図の右上に向かい、ミナモトの声がかぶる]

[ミナモト]「ケルハウンドの退却の間、ワード・オブ・ブレイクは集中した砲撃を使って我が軍の主戦線を押し、現在の位置である南に追いやった。この砲撃は煙幕と化学物質の弾頭双方を使っていた。兵士たちの大半がNBCに対する準備をしていたことから、被害は100人以下だった。しかし、分析担当は化学物質の煙がデルタ全体に広がっていったと知らせた。民間人の被害者は大きいだろう。きわめて大きい。現在、被害は75万人に上るとみられており、二倍になる可能性がある」

[画像は怒っているミナモトに戻る]

[ミナモト]「我々は化学兵器の煙が向かう方向にいる民間人にそれを知らせ、数カ所の緊急医療センターを設置しはじめた。だれもスーツとNBC訓練を受けた兵士によるチェックなしに放置されることはない。余ったスーツ、フィルター、その他を持っているものは、部隊の医療部門に寄付してほしい。民間の救急隊に分配中である」

[ミナモトはカメラを見る。その目は燃え上がっている]

[ミナモト]「戦士たちよ、油断するな。ワードは逆襲の口実にこれを使うかもしれない。質問はすべて各自の指揮官たちへ」





リオ奪取、ダラス炎上
(3078年9月15日収録)

地球[INN] - 地球開放の予備報告は、南北アメリカに関して、様々な様相を示している。南米のリオデジャネイロは、ジョン・ダヴィオン元帥率いる部隊が陥落させた。開放作戦の初期段階において、都市の大半はほぼダメージなしに素早く陥落し、8月21日、三つの巨大な軍事工場とテラセクの補給庫が確保された。補給庫と工場はすでに地球中の合同軍を強化している。それから強襲はSDS司令要塞の外で停止した。調査攻撃で若干の損害を出した後で、ダヴィオン元帥は、要塞包囲戦におけるいにしえの戦術を採用すべく、工兵たちに頼った……掘削である。地元のコメドール・デ・モンタンハス建築会社は、輸出取引が崩壊したことから倉庫にいくつかの巨大トンネル掘削機を保持しており、これらは地球の工学が優れていることの好例となった。12日にわたる穴掘りのあいだ、ダヴィオン元帥は施設に砲撃を浴びせ、第5南十字星部隊、第20マーリック国民軍のバトルアーマーは地下から要塞の中に殺到し、驚く防衛部隊を圧倒した。

 このような成功は北アメリカでは見られなかった。なぜなら、ワード・オブ・ブレイクが人類史上最も残酷な兵器のひとつを使用したからである。ヒルトンヘッド島を調査したあとに戦術的撤退した後で、ストーンは集結地点としてダラス=フォートワースを確保すべく兵士たちを急き立てた。ブレイク派が都市を攻撃したのはこの時である――自分たちの都市を核兵器で攻撃したのだ。マルレット境界域市民軍とハンセン荒くれ機兵団が大きな損害を負ったが、軍事的な損失は民間の被害に比べるとたいしたことがない。数百トンの高出力兵器である半ダースの弾頭が双子都市の市街地のみを狙った。ワードはまるでストーン合同軍がどこに上陸したかを知らないかのようだった。

 この兵器がもたらした炎の嵐は、都市南部の肥沃な農地に燃え移り、文字通り数千平方キロメートルの焦土を生み出した。だが、もっとひどい損害は目に見えないものである。六発の核兵器はコバルト爆弾で、激しいフォールアウトが土地を汚した。汚染は通常の数週間ではなく、数十年続くだろう。これらの兵器が軍事的な理由で使われることはない。なぜなら、現代の軍事部隊はこのような兵器から身を守る保護装備と密閉式生命維持装置を持っているので、ダラス=フォートワース地区での作戦を不便にする効果しかないからだ。民間に関してはその限りでなく、数百万人が死んだとみられる。





サンドハースト陥落
(3078年9月21日)

ジュネーブ、地球[INN] - 地球に上陸してから一ヶ月あまり、サンドハーストのブレイク派司令本部はついに合同軍の手に落ちた。1000年以上にわたって軍事訓練施設となっているサンドハーストは、アリス・ルーセ=マーリックのタスクフォースと、1ダースの異なるブレイク派部隊から集められた戦力との間で戦いの焦点となっていた。ロンドン大都市圏から十数キロあまり離れていたことから、この地域の支配権を確実にすることはそう簡単ではないことが判明した。多数のテロ事件が士気を下げた。ワードは訓練施設群そのものに興味を持っていなかったようだった。作戦基地にするには、攻撃されやすいと考えたのかもしれない。代わりに彼らは、ソールズベリ平野、ウェールズ山脈、ペナイン山脈など、ブリテン全域に分散して活動を行った。この分散したアプローチによりマーリック公爵は部隊を分割せねばならなくなり、自由世界ゲリラの指導者である彼女が慣れ親しんでいた一撃離脱戦術に対して脆弱となったのである。ブレイク派の戦術はまたその戦力をごまかすもので、まるで実数よりも大きく見せるのに混乱を使う、100トンの巨獣と粒子兵器を使ったシェルゲーム(詐欺)のようだった。

 しかしながら、現在、ブリテン島での抵抗は終わったようで、指揮官たちのあいだで摩擦が生じているようだ。9月17日、サンドハーストは合同軍を前に陥落し、シュタイナー=ダヴィオン軍司教とルーセ=マーリック女公が激しい議論を交わしているのが目撃されている。対立の本質は不明だが、作戦中に困難に直面したことと、ブレイク軍に関する諜報が失敗したらしいことが問題になっているのかもしれない。

 サンドハーストと近郊が確保されると、西ヨーロッパの注意はレッドバーン将軍のジュネーブ包囲に移った。ここは地球帝国の元政治的、行政的首都で、ワードの第4師団に守られていた。リベレーターズが南のラ・プライユ、北の宇宙港、西のシャトレーヌの周辺に塹壕を掘ったのに伴い、タスクフォースは都市の首を閉めたかのようにみえた。宇宙港からレマン湖(ジュネーブ湖)への果敢なパトロールによって、アリアナ公園内外にいるブレイク軍の重要な情報が集まり、最後の強襲への道筋が切り開かれた。

 しかしながら、攻撃を仕掛ける前に、それまで未確認であったブレイク部隊(アムステルダム近郊で集結していると思われた)が宇宙港を守っていた合同軍の後方叩き、戦線を突破して第5師団に合流した。この勢いを利用して、ワード軍はジュネーブを放棄し、レマン湖の北部沿岸で戦いながらの後退を行い、モルゲス、ローザンヌ、ブベーで後衛戦を行なって、それからローヌ渓谷に落ち延びた。ストーン・リベレーターズとタスクフォースの他部隊はすぐ背後から追撃を行っているが、ブレイク軍の目的地は不明なままである。





内陸追跡
(3078年10月1日)

地球(ブラチスラヴァ)[INN] - 夜が明けると、我々はワード第4師団とアンドリュー・レッドバーン将軍指揮下の合同軍の激しい戦いで生み出された昨夜の残骸を目撃した。ジュネーブより逃走してから十数日、第4師団はアルプスの曲がりくねった地形を活かして戦い、800キロメートル進軍した。合同軍の狩人たちは繰り返し、敵を傷つけ遅らせようとする断固たるワード兵士たちの伏撃を受けた。二度、合同軍は第4を追い詰めたかと思ったが、ブレイク派は罠から逃れた。

 合同軍の指揮官たちを驚かせたことに、ワードは人口密集地帯を避け、インスブルックとザルツブルグの外を通って東に向かった。東アルプスに到達してはじめてこれは変わった。第5ライラ防衛軍、第6コムガード軍によって方向転換させられたのである。合同軍に進路を狭められた第4は東向きに行かざるを得なくなり、ウィーンとノイジードル湖をかすめて、ジェールの北西でまたも合同軍の足止めに遭遇した。押し通りはせず、ブレイク派は北に向かい、ブラティスラバのドナウ橋まで合同軍と競争した。ここで彼らは素早く防衛境界線を構築し、合同軍と戦うのに備えた。

 正面からの戦いは彼らの望むところではなかったかもしれない。工兵たちは夜が迫ると橋を落とした。合同軍が到着するまでに渡河地点は5つのうち2つを閉じただけだったのだが、一番小さい地点をのぞいて地雷原が作られ、破壊の準備がされた。第6コムガードとスチュワート国防軍の工兵による勇敢な働きを持ってのみ(全員が激しい砲火の下で活動した)橋は保たれたのである。

 ブレイク派の抵抗は、ブラチスラヴァスキー・フラッド(ブラティスラバ城)とグラサルコヴィチュ宮殿で主に行われた。ドナウを見下ろす断崖に位置する前者の城は自然の要害であり、ワードの狙撃手と間接砲が渡河地点を妨害するのに最適の高台となっていた。城の奪取は第一目標であり、ストーン・リベレーターズに任された。一方、宮殿への強襲はディヴィッド・マッキノンとフォックスティースの指揮下で行われた。他の合同軍は渡河地点を確保し、第4の脱出を防ぐ任務を課された。

 古い都市であるブラチスラヴァはメックと装甲車両の戦闘に理想的とはいかず、よってこの夜の血塗られた衝突の多くは、歩兵による接近戦となり、都市のブロックを掃討する道具として、手榴弾、銃剣、自動小銃が使われたのだった。城は地元時間0300時に陥落した――5時間におよぶ血なまぐさい戦いの後で。

 二時間後、宮殿内外での抵抗は終わったが、散発的な戦闘がブラティスラヴァの各地、とくに旧市街区で続いた。正確な死傷者数は不明だが、両陣営にかなりの損害が出たと思われる。第4師団の大半が都市内で死んだようだが、1個レベルIIIのみが進路を切り開き、東のブダペストに逃げて行った。





クルップス突破
(3078年10月10日)

地球(ブタペスト)[INN] - アンドリュー・レッドバーン指揮下の合同軍がワード第4師団最後の生き残りを追撃したとき、彼らは止めの一撃を浴びせることになるのを予想していた。そこで彼らを待っていた戦いは、ブラティスラヴァの虐殺が色褪せるようなものだった。

 クルップ兵器製作所の本部であるブダペストは、常に第4師団の目的地だったかもしれないが、ここで再軍備を計画していたのか、ブレイク兵の集結地点にするつもりだったのかは不明である。第16師団の一部とかなりのテラセクの分隊がいたことは、うれしくない発見となった……もっともひとつひとつは合同軍に対処できない戦力ではなかったのだが。ブレイク派戦線を突破し、クルップの施設に押し入るのは、難問であると判明した。第16とテラセクの妨害により偵察は効果が薄いものとなり、攻撃の目的とタイミングに関する通信ミス(とくにスチュワート国防軍と第5ライラ防衛軍のあいだのもの)が強襲の息を合わせる努力を妨げた。戦線が破られたのは、10月3日の晩遅くのこと、フォックスティースの奇襲が弱い側面を突破したのだ。

 ブレイク派が外周の防衛を放棄し、クルップス周辺の小さな輪にまで小さくなると、この成功は死に物狂いの争いに変わった。ブレイクの一部がレッドバーン合同軍を外で足止めし、残った部隊が内側でマッキノン部隊を粉砕しようと戦った。両陣営にとってこれは競争であった――ブレイク派にとっては後方を脅かすフォックスティースを殲滅するためのものであり、合同軍にとってはフォックスティースが粉砕される前に圧力を軽減するためのものだった。両陣営は粘り強さと凶暴さを発揮し、損害を出したものの陣地を失うことはなかった。弾薬がワードとフォックスティースにとって重要な問題となり、格闘とエネルギー兵器が密集した戦いにおける第一の武器となった。

 10月5日に入ってすぐ、第16師団の残りと第21師団の一部による大胆な戦闘降下がついに行き詰まりを打破し、レッドバーン兵をクルップスから追い払ってブレイクに再武装するチャンスを与えた。フォックスティースにそのような一息つく余裕は与えられず、すぐにROMの特殊部隊によると思われる対メック作戦の訓練を積んだ歩兵による熾烈な強襲にさらされた。マッキノン隊は深刻な損害を負ったが、強襲をどうにか跳ね返すのに成功した。

 ブレイク派が強化されたのに伴い、包囲されたダヴィオン兵を救えるのは非常手段だけになったかもしれない。10月10日の朝、レッドバーン将軍は集中砲撃とホバリングした降下船からの砲撃を使って包囲を破ることができた。マッキノンの泥まみれの部隊は、8日間持ちこたえ、ブレイク派に施設を使わせなかった英雄として苦境を脱した。この虐殺を生き残り得たブレイク兵士はわずかであった……東のロシアに向かった者たちである。合同軍としての権利を使って――そしてクルップス社首脳部の反対があったにも関わらず――レッドバーン軍は工業地域の物資を使って補修と再装備を行った。このことは、タスクフォースがバルカンかカイロに再配備されたのではないかという推測をもたらしている。市議会がこの強襲の民間巻き添え被害(特に低空飛行した降下船によるもの)に関する話し合いを求めているが、これまでのところ合同軍は何も答えていない。





シンガポール炎上
(3078年10月19日)

地球[INN] - 古代都市シンガポールは早朝の数時間で猛烈に破壊された。島の大半を占める巨大なキャッスルブライアンの中心の近く、ブキ・ティマ地区で数度の爆発が起きたのだ。地表での爆発は小型核兵器に似た核爆発だと確認された。当局は地下での爆発も似たものであると考えている。

 第5自由世界防衛隊の匿名の士官たちは、爆発がワード・オブ・ブレイクによる自爆の結果だという。なぜブレイク派が半日前に施設を奪還した後で起爆したかは不明だが、生き残った合同軍は爆発の前に本土に戻るのに成功した。

 現時点での推定死亡者数は100万人以上で、炎が燃え広がるごとに上昇し続けると思われる。救急隊と救援活動は実行中で、うまくいけば荒れ狂う火災を消化し、除去処理が行われることになるだろう。

 ワード・オブ・ブレイクがこの地域に存在する兆候はなく、施設を取り戻した部隊は爆発で死んだものと思われる。






カイロ戦線停止
(3078年11月12日)

地球[INN] - ナイル川、古代都市での緊張は高まっている。合同軍はワード・オブ・ブレイクによる膨大な防衛を前に足止めされ続けている。同盟側は損害を受けているが、最も大きいのは民間人の損害である。未確認の推定によると、死亡者数は100万人におよぶ……その大半は、約一ヶ月前にブレイク派がポートサイド周辺の逆襲で使用した生物化学兵器攻撃によるものである。ここナイル・デルタから地中海沿岸までの肥沃な大地は、おそらく回復不能なまでに毒されただろう。

 管領ミナモトの忍耐が尽きつつあるというのは控えめな言い方になるだろう。容易な目標と信じられていたものは、合同軍で最大のボトルネックの一つとなった。ストーンとその指揮官たちは、ROMがここのキャッスルブライアンを放棄して火星の本部に移ったと信じており、ナイル・デルタ周辺にこういったレベルの防衛網が構築されていることを予期していなかった。両陣営の間の土地は廃墟と化している。戦闘は「なわばり争い」以上のものとなり、互いに一ブロックずつを争っている。都市のあちこちが待ち伏せ地点、ブービートラップ、その他の奇襲地点であることから、合同軍はその戦術を攻勢包囲から遅延行動に変えた。管領のタスクフォースに援軍を送れる部隊はないので、大軍をもってキャッスルブライアンを強襲するプランは実行不可能である。加えて、艦隊が致命的な損失を出したことから軌道攻撃を停止したとリー将軍が言っている。

 11月のはじめ――最初の強襲から一ヶ月以上がたっている――我が軍はレッドバーン将軍とそのヨーロッパ戦線の部隊から援軍を受け取ったが、これは遅すぎたかもしれない。大嵐が近づいてきており、一週間におよぶ季節外れの大雨で、南方のヴィクトリア湖地区が水浸しになると思われる。地元の専門家によると、その数日後にナイルに影響がもたらされるという。予想水位は歴史的なレベルに達し、古代の堤防と排水路を超える可能性がきわめて高い。もし氾濫が起きたら、カイロのそのほかの部分は、泥、通れない道、流砂、鉄砲水に満たされるだろう。

 レッドバーン将軍指揮下の兵士たちに流れている噂によると、出発が迫っているらしい。ケルハウンドのアキラ・ブラヘ大佐は、将軍と管領が火星コーリョーのROM本部に関して議論していたとほのめかした。私が理解する限り、管領のみがこのような攻撃に割ける充分な兵士を持っている。もしこの計画が実施されれば、ナイルの人員は致命的なレベルにまで低下し、強襲するには少なすぎ、かろうじて戦線を保つほどの少数が残されるだろう。

 管領がこれらの問題を緩和する方法を見つけられないのなら、カイロはこの戦争におけるワード最後の砦となるだろう。





逃がさない

[映像にナイジェル・ホルムグレンが映る。地面に転がりくすぶるバトルメックの腕の横に立っている]

[ホルムグレン]:「ナイジェル・ホルムグレンです。ワード・オブ・ブレイクの軍司教キャメロン・サン=ジャメがデヴリン・ストーンと撃ち合いの決闘を行い、死亡したとされてから数時間が経っています。今日、合同軍はここ、北アメリカ西部のデビルスタワー複合施設外部の防衛陣地からブレイク派を駆逐しました。しかし、大気圏高層での大規模な電波妨害により、通信が届く範囲は最大で500キロメートル長となっています」

[画面は、混成部隊と共に前進するブレイク派メックのガンカメラ映像に変わる。ブレイク派のPPC射撃がかすめ、映像が揺れる。戦闘の映像のままホルムグレンはしゃべり続ける]

[ホルムグレン]:「軍司教キャメロン・サン=ジャメは、サンダンスのストーン陣地にNBCミサイルの集中攻撃を行った後、合同軍にさほどの時間を与えませんでした。ワードは0600時に先制攻撃を行い、それはすぐに猛烈な交戦に変わりました。太平洋岸北西部から呼び戻された援軍が、北に約100キロメートルのところで移動中に核攻撃を受けて、最初に大損害を負った部隊となりました」

「援軍が失われると、ワードは合同軍の戦線全域に大規模な攻撃を仕掛け、ストーン部隊を突破、分断しようとしました。戦線は折り曲がりましたが、最終的に保たれました。ストーン将軍と臨時指揮中隊が到着し、ブレイク派を押し戻したのです。その後、将軍は戦線のあちこちを移動しました。すぐにストーンの兵士たちは前進し、ワードを一歩一歩後退させました。両陣営は1メートルごとに血と金属を支払いました」

[映像はVTOLからの空撮に変わる。映像の隅に、アトラスIIが重々しいオウサムと遠距離で砲撃を交わすのが映る。映像が止まり、メックにズームする。ホルムグレンが話を続けるあいだ、激しい戦いが再生される]

[ホルムグレン]:「戦闘が巻き起こるその傍らで、ストーンとサン=ジャメが交戦しました。周囲の戦闘が収まるに連れて、現場がはっきり見えるようになりました。この決闘に近づいた機体はぼろぼろに破壊されました。突如としてオウサムはアトラスIIに撃ち抜かれ、崩れ落ちました。生じたまばゆいプラズマの爆発で、ストーンのメックは転倒。つかの間、私でさえもワードが降伏するだろうと思いました。リーダーが砂の中で死んだのですから」

[しゃべり続けるホルムグレン、映像は他の戦闘に変わる]

[ホルムグレン]:「しかし、軍司教が失われたにも関わらず、ワードはデビルスタワーをかけた激しい戦いを続けました。降下船の一隻が近くの廃墟から離陸したのが探知されています……」[打ち上げられたバッカニア級がカメラから遠ざかっていく映像]「……そしてその直後、タワーは爆発して崩壊しました。兵士たちの多くは、内部の爆発があったときに地面が激しく振動したと報告しています」

[デビルスタワーが崩壊する映像]

[ホルムグレン]:「残ったわずかなブレイク軍は、その直後、合同軍に降伏し始めました。サン=ジャメが死んだというニュースとご覧頂いた映像が地球のあちこちに放送されていますが、電離層の妨害はいまだ惑星の通信を断片的にしています」

「それにもかかわらず、ストーン将軍はワードの総降伏が差し迫っていると信じています」

――ナイジェル・ホルムグレンによるレポート、地球、3078年12月19日





カイロ降伏
(3079年1月3日)

地球[VOTD] - 2日前、カイロに残ったわずかな敵は無条件降伏を承諾した。7ヶ月におよぶ戦闘は地球で最も長い戦役のひとつとなった。

 北アメリカでサン=ジャメ軍司教が死んだというニュースが届いた後でさえも、ワード軍は逆襲を繰り返し、小規模な軍用降下港を再奪取するのに充分な分だけ管領ミナモトの部隊を押し返した。大胆にも管領は直々に合同軍の逆襲を率いて、陣地から出たブレイク派をとらえ、ROM司教ケルノフと小規模なボディガードを捕まえた(不幸にもケルノフと部下たちは拘留中に死んだが、管領と幕僚たちは何もしてないとしている)。奇襲を完全に成功させた管領はそれから施設を確保し、まっすぐキャッスルブライアンに向かった。

 強襲が要塞の門に殺到する直前、デヴィッド・リーアが機動指揮所に現れ、管領と個人的な面談を行った。リーアが去ったあと、合同軍はスエズまで後退するよう命令された。その理由は、激しい軌道爆撃と戦術核兵器砲撃によって明らかとなった。劫火が数時間にわたって続き、要塞を溶かして砂へと変えたようだ。廃墟の周囲10キロ平方メートルが現在でも公的な立ち入り禁止区域となっている。

 爆撃による実際の死亡者数は不明であるかもしれない。軌道攻撃のうち数発が要塞から最大で10キロメートル外した。数カ月にわたる包囲戦で都市はすでに荒廃しているが、どれだけの民間人が生き残ったかは不明だ。

 デルタ周辺で生き残ったわずかなワード軍はキャッスルブライアンの崩壊直後に降伏した。カイロをかけた長い戦いは終了した。





戦争のビジネス
(3078年12月1日)

ガラテア[マークネット] - ウルフ竜機兵団、エリダニ軽機隊、ブルー・スター・イレギュラーズ。これらの伝説的な部隊は、数個連隊の支援があったら3050年にカペラ大連邦国を征服できたかもしれない。現在、彼らはほとんど残っていない。聖戦の厳しさにより、レキシントン戦闘団、リトル・リチャード機甲旅団、オルウェイズ・フェイスフルがほぼ消滅して上記の列に加わった。竜機兵団はかつての残骸に過ぎず、アウトリーチ奪還と引き換えに、ストーンの家臣になったとの噂がある。ケルハウンドはカイロでの敗北後、1個中隊すら編成することが難しい状況だ。

 幸いにも、傭兵業界には新しい血が入っている。我々の世代には伝説があり、そして未来には新たな伝説が作られることになるだろう。スターシーズはストーンの近くで働いて運勢を向上させ、第12ヴェガ特戦隊は地球で輝き続けた。第21ケンタウリ槍機兵隊は現在市場に出ており、カポラのブレイク派の生き残りであるデリラ・ガントレットも同様だ。他には、関わりのある国家に加入した部隊もある。ワンアイド・ジャックスは、ライラの新部隊、ブラックジャックスの中核となり(フリーロ政府と長期契約を結んだ)、一方、カノープス・ハイランダーズはその名前のままでMAFに加入した。

 しかしながら、一部の守旧派がまだ生き残っている。ハンセン荒くれ機兵団は地球への前進で活躍したが、テキサス低地で核兵器を受けてほぼ全滅し、再建には時間を要するだろう。ブランク・コヨーテやハンニバル・ハーミッツのようなブレイク派に与した部隊はその罪を問われることになろう。(ノースウィンド)ハイランダーズでさえも、聖戦中の行動により――あるいは行動しなかったことにより――完全な調査を求められることになりそうだ。人生にかかわるすべてのように、うまくやれる者たちはまた輝くことになるかもしれない。そして悪い選択をするか、悪い働きを見せた者たちは、落ちぶれることになるだろう。






ホラーショー
(3078年12月31日)

ギブソン[SBC] - [レポーター]:「最初のレグルス小艦隊がギブソン星系に入ったとき、それはマネイ・ドミニの惑星を一掃する大規模なレグルスの強襲のさきがけになると思われました。そしてそれは正しかったのです。ですが、そのやり方は予想とは違うものでした。この画像から憂慮すべき事実がわかるでしょう」

[画像のスライドが始まる。数秒おきに撮影されたものである。画像の中に緑と青の惑星がある。手前にレトロジェットを撃つ降下船の艦隊が見える。戦闘機が互いに交戦し、小さな爆発が弧を描く]

[レポーター]:「匿名の傭兵がリークしたギブソンの模様です。非常におそろしいものです。我々は聖戦でワードがもたらした極めて残虐な映像を見てきましたが、レグルスによってなされた野蛮さはそれらとすら比べ物にはなりません。レグルス艦隊が大気圏外に侵入し、ギブソンの防衛部隊がレグルスの気圏戦闘機の大群と交戦しているのを見ることができます」

[大規模な爆発が大気圏に点在する]

[レポーター]:「ここでレグルス艦隊が核弾頭を使って防衛隊の降下船を片付けているのが見えます。これはレグルスの通常の戦術で、彼らの憎悪から見ると驚くべきものではありません。ご覧ください、気圏戦闘機が大気圏内に入りました」

[戦闘機の大群が様々な角度で大気圏に侵入する]

[レポーター]:「この時点でレグルス軍は弾薬を投下したと思われます。なにが起きたのか御覧ください……」

[画像が進み、惑星は明るい花に包まれ、雲に変わる。一輪の花が消えると、他の花が咲く。すぐに見える範囲が炎で包まれる]

[レポーター]:「これらの気圏戦闘機は帰還しませんでした。自殺攻撃だったのです。彼らはブレイク派の強化建造物を叩くために文字通り地面に突っ込んだのでしょう。お知らせの後で映像を流しますが、この墓場からのメッセージを一緒にお聴きください」

[耳障りな声が画像にかぶさる。言葉のすべてに憎悪がこもっている]

[アポリオン]:「汝らは我らを倒したと思っているのか? 汝らはマスターズ・チョーズンを倒したと思っているのか? 王よ、汝らのやったことは無意味だ! 我らはドミニ! 我はドミニである! 我らはエセリアル! 我らはエターナル! ブレイクの主だ! 我らは天が燃え尽き、空が落ちるまで汝と戦い続けるだろう……」





火星: 勝利
(3078年12月17日)

火星[INN] - 火星での組織的な抵抗は12月13日の早朝に終り、プッロ・エアロドームは崩壊した。プッロでの痛ましい民間人の損失は、この戦争で人類が被った残虐行為の長大なリストに加わるものである。1万2000人近い死者が、戦争で疲弊した中心領域にとって注目に値しないのは心乱されることである。

 そして、昨日、最高位のブレイク士官、ローレンス・スティーヴンソン准司教がコーリョでレッドバーン将軍に対し公式に降伏した。

 火星攻防戦の致傷率は注目にあたいする。3氏族、ストーン・レベレーターズ、第7ドネガル防衛軍の統計によると、火星でのブレイク派の捕虜は最小限であるかもしれない。多数の居住地での戦闘は文字通り部屋から部屋へのものとなり、氏族エレメンタル、ノーム、ゴーレムバトルアーマーがブレイク派の拠点を躊躇なく強襲した。

 あらゆる点で、火星争奪戦は素早く集結した……合同軍はほぼすべての状況において、ブレイク派を数で圧倒していたのだ。しかし、航空宇宙優勢が著しく欠けていたことから展開能力は妨げられた。氏族戦闘機が最善の努力を払ったにも関わらず、レッドバーン将軍は幾度も妨害された。

 ワード・オブ・ブレイクはもう火星を支配していないが、大衆にとって平和は遠いかもしれない。実のところ、火星人たちはワードの政権を好んでいたようで、連合合同軍を侵攻軍と見ているのである。ちょうど今朝、私はノヴァキャット兵舎の向かいに男が「火星を解放せよ!」と書いているのを目撃した。











Jihad: Final Reckoning





ブレイク派、オリエントを襲撃
(3079年3月20日)

オリエント[ISAP] - ワード・オブ・ブレイクによる一連の攻撃(戦艦支援付きの少なくとも4個師団が行った)が、オリエント公国の少なくとも5個を直接攻撃し、この元自由世界同盟の所属国家に破壊をもたらした。公国当局によると、一ヶ月におよぶ襲撃戦役はおそるべき正確さで行われ、この地域の航空宇宙・地上防衛力を削ぐのに焦点が置かれていた。さらなる攻撃の序章である可能性があるという。

 オリエント公国政府を代表し、ロイヤル・ブキャナン将軍はレポーターたちに対し、ブレイク派タスクフォースがどこから来たのか不明としているが、今年初めに終わった地球戦役から逃げた者たちとは考えられないと強調している。

「襲撃隊の中から、我らはそれぞれ違った4個師団の記章を確認した」ブキャナンは言う。「これまで遭遇してなかった1個シャドウ師団がいた」

 襲撃隊は2月6日、まずオーレンセンを叩き、核攻撃で素早く駆逐艦〈シュラック〉を破壊し、その子、惑星上に兵士を下ろして第1マーリック市民軍を粉砕し、極高周波発生装置(HPG)を使用不能とした。キルクバッケンとスザノからの援軍(コルベット艦〈アカリ〉〈クスタラクネ〉含む)が一週間以内に到着したが、ワード・オブ・ブレイクのタスクフォースを圧倒するのは不可能だと証明された。〈クスタラクネ〉は僚艦を守り、到着した第4オリエント機兵連隊を援護しようとしている間に破壊されたとされ、〈アカリ〉は――後に判明したところでは――マネイドミニに奪い取られた。

 3月12日、襲撃隊は傷ついた〈アカリ〉をトロイの木馬に使って、オリエントに対する大胆な一撃離脱攻撃に着手した。ブレイクの襲撃隊から逃げているように見えたこの〈アカリ〉は、公国の首都をパトロールしていた空母〈サントリーニ〉の不意を打った。再び戦闘機搭載の戦術核兵器を使った〈アカリ〉は、〈サントリーニ〉のKFドライブを使用不能にした。次に〈アカリ〉は破壊されたが、その攻撃によって公爵の艦隊で最も強力な船は、ワードの二度目の攻撃に対応できなくなったのである。攻撃を受けたのは、わずか一日後、レ・アル、デイル・クーナ、ジュークだった。

 ジュークの損害は特にひどいもので、2個ワード・オブ・ブレイク師団が守る第2機兵連隊を殲滅し、基地の補給物資を略奪し、一週間するかしないかのうちに、近くの人口密集地帯に対する核攻撃という援護射撃を受けて出発した。

 公国当局は、近隣の全国家(カペラ大連邦国、平定された地球保護領含む)に対し、ブレイクのタスクフォースに関する警告を出したが、この報告の時点で、返答も、敵襲撃隊の目撃情報もない。





この日、炎の中に終わる
(3081年4月2日)

コンパス座[RNS] - 宇宙での戦闘は数時間前に終わった。ワード・オブ・ブレイクとコンパス座が持つ最後の航空宇宙戦力は、我がタスクフォースの降下船、戦艦により追いやられた。すでにレグルス公国の船は軌道上の位置(大半が赤道沿い)についてる。一方、我が軍の旗艦RPS〈デロス〉は、コンパス座連邦の首都にして、ワード・オブ・ブレイクの油断ならないマスター、トマス・マーリック最後の拠点、ザカリアの静止軌道に入ってる。

 規則に従って、艦隊は無線交信を行わず、連携のとれた攻撃のため、光学と事前に計画した軌道に頼った。コンパス座とワード・オブ・ブレイクの船、戦闘機、地上基地から交信の試みがあったものの、我がタスクフォースは返答しなかった。艦隊は外交の試みに妨げられることはなく、またワード・オブ・ブレイクの科学テロリストがタスクフォースに電子的に浸透して、破壊工作を行うチャンスを、どれだけ小さいものであっても許さなかったのである。

 眼下に、スペースデブリの薄い層を通して、ワード・オブ・ブレイクの臆病なマスター、最後の避難地がある。地球からギブソンに逃亡し、それからパラダイスに赴いた、このカルト教団のリーダー(中心領域への聖戦を計画し実行した)は、マネイドミニの侵入者たちと共にすべての世界を毒してきた。避けられない敗北を食い止めるため、核・化学兵器を投入するという狂信によって、デヴリン・ストーン合同軍から支援を得られなかった(レグルス)公国は、似たような対応を余儀なくされた。追跡のなかで、各世界は死に絶え、悪に正義の鉄槌を下すために数えきれない人々が犠牲となった。

 ワード・オブ・ブレイクから地球を奪い取った同盟諸国は、マスターの権力基盤を打ち砕いたのだが、中心領域に残ったブレイクの生き残りを追跡し、滅ぼすレグルスへの支援をしなかった。それどころか彼らはレグルス公国の行動を「血の復讐」と非難し、ワードの危機を永久的に終わらせる唯一の方法を、我ら自身に対する最後の一撃であるとしたのである。

 そして今日、タスクフォースの降下船群があらかじめ決められた任務をこなしていることから(彼らは最後の戦略兵器を持っている)、我らは――うまくいけば――ワードに対する戦争を終わらせることができるだろう。

 コバルト弾頭ミサイルがレグルスの正義を眼下の海賊の首都に運ぶと、艦隊に注意深い楽観主義が広まっていくのが感じられた。非常に長くなったが、これでこの恐ろしい戦争が終わることを願っている。そしてレグルス(そして中心領域)の人々は、真の復興を始めることができるだろう。





恐怖と不確実性が元同盟内に新たな傭兵市場を作る
(3079年9月12日)

アル・ジュバイラ[マークネット] - ニュースをいくつか見るに、傭兵産業は死に絶えたと考えられるかもしれない。確かに、聖戦は雇われガンマンになるのに、最高の時代ではなかったかもしれない。クリタ人は古き「傭兵に死を」の道に戻った。ワードは良い部隊を悪い契約に捕らえ、無法者、悪漢たちにさらに悪いことをやらせた。傭兵たちは死傷率で5本指に入る戦争へと投入された。しかし、聖戦は傭兵ビジネスにとって優しくなかったが、終わらせたわけではなかった。

 できるはずがないのだ。

 それで最近のホットな傭兵市場はどこだろう? 雇われ兵士たちはどこに群がっているのか? この10年のカオス境界域はどこだ? INNのベテランレポーターであるレイチェル・フランシスによると、新しい傭兵市場は自由世界同盟であるという(より正確に言うと、自由世界同盟であった崩壊した国家である)。6つの大国、多数の独立世界、至る所にある外部の敵対的国家といったもの考えると、需要が不足することはない。歴史の研究者たちは、30世紀後半を振り返ると、現在の自由世界と似た部分が見つかるはずだ。ここ数十年は連隊規模の傭兵部隊の時代だったところを、現在は継承権戦争後半に戻っている。1個中隊のメックが、惑星全体の運命を変えることができるかもしれないのだ。

 アル・ジュバイラよりも良い例は他にない。独立に満足していたアル・ジュバイラのムスリムたちは、レグルスが公国への編入を求めても喜ばなかった。バトルコープス傭兵団が雇い入れられた。ちょうど一週間後、この諸兵科連合部隊はアル・ジュバイラに到着し、熱烈な歓迎の準備を援助し始め、レグルスが返答に対してなにもしないようにした。フランシスによると、バトルコープスが選んだ6つの契約のうちすべてが元自由世界同盟のものだという。

 傭兵市場は生きていて、儲かるものである。どこを見るか知るべきであろう。





供述書

 今度の裁判で陪審に提示するため、マッケソンの手記から関係するところを抜き出しました。太字になっていない文章は、重要でなく、無関係な部分です。我々は重要な部分のみを見せることを強くお勧めします。

 この告白は三名の精神分析医を前にサインされました。あなたはマッケソンの精神状態に関するプロの意見を読むことができます。彼は極めて不安定な状態にあるので、陪審がそれを理解するまで、証言台には立たせないほうがいいでしょう。

 ご協力に感謝します。

 ――リサ・アブロット準法務部長、地球保護領、3079年2月3日


 私、ジャーヴィス・マケッソン司教は、健全な心と健康な体にあり、以下の供述書を捕縛者に提出する。私はいつか部下たちに対する罪が赦されるかもしれないことを願い、自由意志で提出するものである。

 私の担当は、地球の東南アジア全体の指揮で、司令本部はシンガポールの巨大都市内にあった。私は3060年2月9日にこの地位にのぼった。私の任務は、この地域の大部分の平和を維持し、各国の高官と互いに連絡を取り合い、必要に応じて治安と援助を提供し、訪問中の市民軍部隊と私の管轄下にあるテラセク(地球保安軍)部隊の訓練を調整し、この地域の軍需物資の輸出入を監視することにある。

 3078年10月上旬、私の主指揮施設が、トマス・ホガース将軍率いる合同軍の攻撃を受けた。敵軍は、第5自由世界防衛軍、コムガード第1軍、第2ダヴィオン近衛隊からなっていた。スコット・エイブラムス准司教が最初の防戦で戦死した後、私は素早くテラセクの指揮を取った。1対3近い数的不利にあった我が軍は、都市に退避するあいだ、防衛隊形をとっていた。残念ながら、上空の戦闘機に爆撃されて、高層ビル数棟が炎上した。ホガースの兵士たちは損害を受けなかったようで、民間地区をかきわけて進み、カランのエントランス・ナンバー2近くの司令本部に移動する間、公然と歴史的で人口の多い地区を破壊していった。

 我々は一週間近く持ちこたえた……生き残った我が軍の大半は、どうにかシンガポール海峡トンネルを通って脱出するのに成功し、その一方、私と幕僚たちはキャッスルブライアンをホガースとその部下たちに明け渡した。私が繰り返し保証したにも関わらず、ホガースは通りから通りを捜索するための「掃除」を続けた。が降伏のための交渉をしていたまさにその時に――海峡のバタム島に隠れていると私が教えたので――ホガースは扇動工作員と疑われたものを集めて投獄した。この「容疑者」の大半は、警官、救急隊員、公共事業職員、大学生などの制服をきた政府職員だった。熱心過ぎる捕縛者たちは、ぞんざいな調査の後に彼らを処刑した。

 恐怖した私は、残った兵士たちとまだブレイクとの雇用化にある傭兵隊たちと連絡をとり、この施設を奪還するように懇願した。都市を荒らすものたちを取り除くためなら何でもするように。

 我が軍はホガースの不意をうち、大半を都市の外に追い出した。私と忠実なる兵士2人は、ホガースをジュロン島に追い詰め、降伏を求めた(彼を使って和平交渉を行い、部下たちの安全な移動を保証するつもりだった)。我々が話し合いを始めたちょうどその時、突然の爆発が台地を揺るがし、ホガースのアトラスIIをよろめかせ、私のレガシーにのしかからせた。私は身動きできなくなってしまったのである(後に私はなにが起きたかを知った。誰かがキャッスルブライアンの核自爆処置を実行に移したのである。数百万人が爆発とフォールアウトで死んだことに私はいまだ嘆き悲しんでいる)。私の同行者たちは近くのガス爆発で死亡し、ホガースの副官が彼らをコクピットから引きずりだして、頭に銃弾を撃ちこみ、とどめをさした。

 捕縛者がなにを言おうとも、私はストーンと彼の合同軍が地球を救うために来たのではないことがわかっている。地球はすでに中心領域の恐怖から救われていたのだ……ストーンはホガースやダヴィオンのような狂人を連れてきただけなので、戦争の残酷さは続くだろう。人類を清め、理想の存在とするために、彼らのような男たちを宇宙から浄化せねばならない。行われるであろう偽裁判の前に、誰を示さねばならないとしたら、それは彼らである。私は人類を保護したいだけである。

 私は責務を果たしたのみである。

 サイン、ジャーヴィス・マケッソン司教(別名「シンガポールの虐殺者」)






剣を金属片に: 回収を行わない風潮が広まる
(3079年12月19日)

リギル・ケンタルス[マークネット] - パディントン金属工場に、どこにでもあるクルセイダーから独特なアークエンジェルまで、27機のメックが塔になって積み重なっている。一般の市場に出せば10億コムスタービルの価値があるかもしれないが、これらの残骸(リギル・ケンタルス解放の際に捕獲、放棄されたもののすべて)から得られるのは、1/10だけとなるだけだろう。パディントンはこれらのメックを修理するつもりも、分解するつもりもなく、骨格まで部品を剥ぎとってから、金属に溶かす予定である。

 惑星統治議会の新しい立法では、ワード・オブ・ブレイクが生産・使用してリギル・ケンタルスが入手した兵器は破壊されねばならない。だが、このような措置を取ってるのはこの世界のみではないのだ。

 多くの世界(とくに元ブレイク保護領の世界)がブレイク派の兵器を処分する法律を可決するか、法令を出している。文言は様々だが、ほとんどがマネイドミニとワード・オブ・ブレイクのエリートのシンボルである恐るべき「セレスティアル」オムニメックシリーズを含んでいる。

 多くの世界でこれらの機種を使用・販売するのは違法であるが、リギル・ケンタルスほど極端なのは珍しい。ニューアースでは、これらのマシンの部品は売却されるが、フレームそのものは悪名高い「ボーンヤード」に投棄せねばならない。これらはスクラップされるものと思われる。フリーダムは、いつの日か、自分たちが残ったグリゴリを使ってしまうことを恐れて、シャシーの廃棄を求めている。

 総合的に考えてみると、そこには確かな皮肉がある。たいていの征服者たちのように、ワード・オブ・ブレイクは敵に恐怖と畏敬を植えつけるために、自らの武器をそのシンボルとした。いまや、戦争に負けて、生き残りが散らばっているワードのシンボリズムは、アマリス一族や中央アジア同盟のような弾圧的体制という過去に加わった。聖戦後の時間が経つにつれて、ワードが勝ち取った敬意のシンボルは単純に消え失せ、失われたトリビアの片隅に消えていくことだろう。






氏族宙域: 新たな海賊のフロンティア?
(3080年11月12日)

アークロイヤル[DBC] - 海賊。それは人類の災いであり、人類最古の職業であるかもしれないとされる。時代を経て、海賊は何度も根絶されては再び姿をあらわしてきた。彼らがいるのは二箇所である。法律がないところと、海賊と革命が始まるくらい法律が圧政的であるところである。

 そう考えると、氏族の占領地で海賊行為が新たなうねりとなっていることは驚きである。氏族の初期の侵攻において、数少ない祝福の一つは、ライラ同盟国境の向こうで海賊行為が根絶されたことだった。海賊の避難地は、氏族が通るところ、次々と掃討されていった。もしくは氏族たちはそう信じていた。まるで人間の形をしたゴキブリのように、海賊たちは社会の隙間に逃げていった。まるで毒性を持ったカビのように、彼らは再建を果たし、新たな脅威に対応した。そして、氏族が侵略者から占領者になると、彼ら固有の闇社会もまた定着するようになった。中心領域の海賊と氏族の暗黒階級は、互いに生き残りをかけて、最初はぶつかった。

 しかし、聖戦が我らの注意をひきつけると、2つの闇社会は共通の基盤と目的を発見したのである。共通の敵とたたかうために協力した彼らは、氏族の注意が分散しているのを利用して、聖戦に追い詰められた中心領域の氏族相手から多数の小さな勝利をもぎ取った。

 中心領域の新たな時代が明けると、氏族に占領された宇宙は、中心領域で最も海賊の活動が活発なところとなっていた。氏族たちが数世紀かけても暗黒階級を潰すのに失敗していることを考えると、新しい海賊の脅威に終止符が打たれることはなさそうである。

 国境のこちらがわにいる我々は、氏族宙域がライラ宙域よりも容易な目標であり続けることを祈るのみである。







スフィア共和国の軍隊

 なにもないところから軍隊を立ち上げるのは容易ではない。我々は過去10年間を、多国籍合同軍をまとめることに費やしてきたが、それぞれ違う者たち(友軍から仇敵まで様々)を永久的な軍隊にするというのは、まったく別の問題なのである。もし我らの新しい共和国を長い間残したいのなら、デヴリン、統合のプロセスを注意深く管理する必要がある。克服すべき長年の憎悪があるのみならず、聖戦が対処すべき新しい問題を生み出したのである。そして、いまや我々には氏族がいる。元(ブレイク)保護領に存在する、あまりに多くの異なる国家から来た、あまりに多くの部隊は、今後数年で克服すべき独特の合併症を生み出している。


指導部

 これらの合併症を克服する鍵の一つは、導くものを選ぶことにある。残念ながら、ベルはこの地位につくことを拒んだ。私は彼女を説得してきたが、無駄であった。それでも、彼女はおそらく旅団を指揮する地位に最適の人員だろう。我々はすでに遠くない将来カペラに対してどう対処するのかを計画し始めており、彼女を前線に送り込むのが最良であろう。彼女は戦場の悪魔である……後方のデスク上ではそこまですばらしくはない。ああ、長期間デスクに座っているようなことがあったら、彼女は我々の肝臓を両方とも朝食にしてしまうだろう。だが、最終的に彼女を戦場から戦略的な地位に移す必要があるだろうと私は考えている。将来、彼女が出すとわかっているプログラムを実行するとき、彼女の兵士の間での人気は問題となるだろう。我々が必要になるだろう最後のことは、彼女を支持する忠実なる兵士たちに立ち向かうことである。兵士に対する彼女の影響力を排除することは、我らの利益にとっていいアイディアになるだろう。

 ヴィクターは二番目の選択肢かもしれないが、疑いの目で見る者は多く、公然と敵意を向けられることすらあるのだが、それにも関わらず優れた指揮官にしてモチベーターであり、異なったグループをひとつの軍隊にする経験を持っている。彼は総司令官の地位につくことを若干遠慮しており、私は彼を非難すると言うことは出来ない。我々のうちの全員がワード・オブ・ブレイクの手で多大な被害を被ったが、ヴィクターにとって聖戦は20年近くにおよぶ苦い惨劇の仕上げであった。奇妙な言い方になるが、新しい軍隊を立ち上げる責務を負うことは、彼にとってよいことかもしれない。過去の失敗は彼を我々の目的が成功するように邁進する男に変えた。よって我々はほかの司令官では出来ない方法でそれを利用することができる。彼が聖騎士の一人になる予定なのを考えると、あなたが多少躊躇しているのはわかっているが、私はうまくいくと考えている。加えて、構築されたRAF(共和国装甲軍)を引き継ぐ恒久的な候補者が見つかるまでに、いくらかの余裕を与えてくれるだろう。


軍部

 もたらされた問題は、我が軍にある部隊にどう対処すべきかということだ。合同軍から譲渡された部隊は状態が良くない――ああ、一部はかろうじて生きながらえているだけ――なのだが、彼らは共和国軍を作り上げるのに必要な確固とした基礎を与えてくれる。彼らは互いに愛し合ってないのだが、彼らのうち全員が……氏族部隊までもが、この仕事を達成したいとの希望を共有してるのだ。重要となるのは、どのように彼らをまとまったひとかたまりとするか、可能な限り早く、スムーズなやり方で、ナショナリズムの感覚を排除するかである。

 まず最初にやるべき第一歩は、贈与された連隊を小グループに分けて、共和国の世界に配置することだろう。地球戦役で使った戦略に続き、我々は中隊、大隊規模の部隊を、伝統的に非友好的な国家の部隊と組ませて、駐屯部隊とした。大きな敵愾心を持つこれら部隊(第9〈光の剣〉連隊と、デネブ軽装甲機兵隊のような)を、私はもっとも緊張の高い国境地帯に配置した。強力な外部の敵に対して戦線を保つことで、まとまることを期待しているのである。加えて、避けられない戦争が始まったら、これらの部隊は高い損害を出すことになり、従って、さらなる補充が必要になる。これにより「外国人」兵士を我らの正規部隊に統合する計画が容易になるだろう。この人員の再配置と、戦場で戦友たちと危険を共にすることは、これら本質的に異なる部隊を進化させる望み通りの効果を引き出し、異なったスタイルと歴史を持つ部隊をただちに真の共和国軍とすることだろう。

 我々が受け取った氏族銀河隊群は大きな問題である。なぜなら王家軍と同じように分割できないからだ。SCOUR作戦で戦士たちが肩を並べて戦ったあとでさえも、王家軍の兵士たちは氏族戦士を部隊の中に受け入れようとはしていない――この感情は氏族の兵士も共有している。私が恐れるのは、共和国内の氏族人たちが長期的に問題を引き起こすことであるが、今のところ、我々は国家全体を運営することに集中している……心配するのは後でだ。

 ノヴァキャットは、あなたも知る通り、信頼できるので、前線に置かれている。ビジョンにより彼らは共和国が――そして特にあなたが――中心領域と市民たちの運命であることを確信している。これにより、ウルフ、ファルコンたちよりも、喜んで命令に従うのである。ウルフとファルコンは、当面の間、共和国の主要世界のいくつかで駐屯部隊として予備につき続けている。ほかにも我らの旗下に集まった若干のゴーストベア、ヘルズホース兵士と、次の数年で入ってくる予定の氏族戦士たちがいる。王家軍の兵士に対するのと同じやり方、彼らを損害が出た前線部隊の補充として統合できると考えていたが、氏族人を管理するのは少々手強いことがわかった。ケレンスキーの社会で育成された、超攻撃的な戦士文化ときわめて競争主義的なことは、克服が難しく、これを完全に弱めることは出来ないかもしれない。もっと分析が必要であり、もし我々が内部に重武装して不安的ないくつかの派閥を持ちたくないのなら、もっと急進的な解決方法さえもが必要になるかもしれない。


海軍

 共和国海軍というのは、現時点でジョークでしかない。我が軍に稼働する戦艦はノヴァキャットが供給した2隻しかないので、ほかの勢力が悪い状況にあるのはとてもよいことであろう。すべての海軍が聖戦で大打撃を受けたことを考えると、我々は今のところ安全であると考えられる。最終的には巨大艦の時代が来るだろうが、ポケット戦艦の時代が、そう長くないにしても、数十年間続くだろう。なぜなら、だれもが戦艦より一般的な航宙艦の再建について懸念しているからだ。そのため、海軍の中枢を強化するために、AFFSに所属しているメデューサンズを雇えないかどうか確認したい。残った大規模な傭兵群のうち、我々はハイランダーズとデビル旅団を雇うのに成功している。なので、(適切なインセンティブがあれば)メデューサンズを得るのはそう難しくないと考える。



共和国に贈与された軍事部隊

ドラコ連合
第9〈光の剣〉連隊

恒星連邦
第4デネブ軽装甲機兵隊、第8デネブ軽装甲機兵隊

自由世界同盟
第12アトレウス竜機兵団、第5自由世界防衛軍、第3自由世界軍団、第20マーリック国民軍、クリステン・クラッシャーズ

ライラ同盟
スカイア防衛軍、第4スカイア特戦隊、第17スカイア特戦隊

氏族
ジェイドファルコン氏族、アルファ銀河隊
ノヴァキャット氏族、アルファ銀河隊、デルタ銀河隊、タウ銀河隊
ウルフ氏族、デルタ銀河隊

コムスター
第1軍、第5軍、第6軍



騎士

 我が軍の連隊の構成について、2年前の最初の計画から大規模に考え直さねばならなかった。あなたはすべてのバトルメック戦力を別々の部隊に分散し、我が軍の大半を占める通常戦力を単独で残すことを考えていたが、これがうまく働くとは思えない。カペラと戦うときが来て兵士たちをメックと共に活動させる際、命令系統、部隊内のライバル関係の問題を引き起こしたくない。よって、私は現時点でメックをあるべきところに配備するのが最善と考える。戦いが落ち着いたなら、我々はあとでいつでもこれを変更可能である。騎士というあなたのアイディアは優れたものであるが、これを機能させるには、いくらかの調整が必要となるだろう。よって、騎士連隊群を主力のRAF部隊から引き離す代わりに、ヴィクターがプログラムを実施し、それによって最も有望な候補者たちと手本となる騎士たちが、共和国市民に求められるものの規範を示すという名誉を与えられる。これらの「騎士たち」は我が軍の部隊に配属され、戦友たちと指導者たちの事例として機能することになる。また戦略メディアキャンペーンを行って、彼らを大衆のヒーローとして描き、あなたの理想の延長とするつもりだ。もちろん、騎士の候補者たちは非の打ち所のない背景と、我らの大義に忠実でないとならないが、ヴィクターと彼のアドバイザーたちはすでにすでに100人近い候補者を選出しており、あなたの承認を得るためすぐにもこのリストを受け取ることになる。(テオは民間人の「騎士」というすばらしいアイディアを思いついた。この騎士は一般社会に対する貢献を表彰するものである。結局のところ、手本と英雄になるのは、軍人である必要はないのだ。が、我々はこの件について後で話し合うことできる)

 私の試算によると、カペラが問題になるまでわずか数週間というところだろう。サン=ツー・リャオが公式式典の前後に先制攻撃のようなものに着手しても不思議ではない。そして(自由世界)同盟からの驚異を私が忘れているとは思わないでほしい。RAFはよいスタートを切ったが、我が軍が同盟軍の集合体から真の共和国になるまでまだ長い道のりがあるのだ。過酷な言い方になるが、来るべき戦いは激しいものになることは間違いない。しかし、それは永続的な軍隊を作り上げる最高の機会でもあるのだ。





コムガード

 秘密主義者、賞賛されしもの、地獄に落とされしもの。

 裏切り者、救世主、追い出されたホームレス。

 中心領域の軍隊が持つ歴史のなかで、コムガードの実績ほどジェットコースターに近いものはなかった。コムスターが「保安部隊」の存在を発表して以来、控えめに言っても物議を醸す存在であった彼らは、中心領域の政治で不正規の要素であった。40年間にわたって、実質的には大きな軍事行動をとったことはなかったのだが、コムガードのことを考慮に入れず、決断や進展がなされることはなかったのだ。王家軍を赤面させるに足る資源、人員、生産力を持つ本格的な軍隊を無視することは難しいのである。そして、星間連盟の影響を受けたコムスターの豊穣から、悪しき落とし子が産み落とされ、15年におよぶ戦争を引き起こすとは思われていなかった。

 再び戦争がコムスターに犠牲を強いた。罪をあがなうために、コムガードは開戦時直後から前線で激しく戦った。彼らの犠牲なくしては、多くの戦闘が違った結果に落ち着いたことだろう。実数でいうと、元の6個軍のうち1個だけが、現在、戦闘可能な態勢にあるとされる。ほかの部隊はほぼ90パーセントの損失を出した――一般的に全滅と言われる重要なポイントを上回っている。海軍に関して言うと、ケースホワイトの大敗から、地球での最後の戦いまでで、コムスター艦隊は完全に破壊されている。

 聖戦の終盤に、コムスターの生き残った軍事部隊は我らの合同軍に編入され始め、以後、我らの旗下でその姿が見られる――全員が教団の非公式の認可を受けている。コムガードの第4軍(シェルタン戦後、骨組みだけに減らされた)は、3078年、正式に解散し、リー将軍率いるレヴナントに編入された。ルイテンの敗走後、第2、第3軍は地球への攻勢に備え、戦力を強化するため第6軍に組み入れられたが――ジュネーブへの降下中、軌道防衛に粉砕され、生存者はほとんどなかった。

 第1軍はこれよりわずかにましな程度で、目標であるシンガポールに達するその前に、マネイドミニがそそのかした民間人の自殺攻撃によって、ほとんど壊滅したのである。これで残されたのは第5コムガード軍だけだった。それなりの戦力を持ち現在現役である唯一の第5軍は、残ったコムガードにとって後方再集結地点としての役割を果たしているが、最大戦力からはほど遠く、我らの指揮下にある。

 彼らの未来は不確かなものである。コムガードの全軍が名目上RAFに加わる中で、首位者ドゥはコムガードの公式な解散に関心を示している。結局のところ、地球の工業地帯を使えなければ――最高の時期であっても許可できない――防衛軍を立ち上げ、維持する教団の能力はないも同然なのである。

 だが、これはコムスターが真に武装解除するのか、「白紙に戻す」機会であると見ているのか、それとも密かに再び軍隊を立ち上げようとしているのか、現時点ではだれにもわからない。ドゥは軍事的というより政治的かもしれないが、この首位者に続くのはだれなのだろうか?








氏族


氏族の産業の状況

 本拠地の領地を失ったらしいことから、氏族が中心領域内でインフラを再建しようと急いでいることは不思議でない。だが、ウルフ氏族とヘルズホース氏族をのぞいて、大半は産業基盤を一から作るというよりは、既存の生産施設を拡大するという形になっている。結果、それぞれの氏族にまったく異なった結果がもたされた。


氏族の産業

 「血の祭典」において占領域にいたすべての氏族が被害を受けた。ダイアモンドシャーク氏族は、イタビアナのインダストリプレックスCを失い、トレルシェア重工業がひどい損害を被った。ゴーストベア・ドミニオンはカッパ4工場を破壊されてファイアモスが入手できなくなり、ジェイドファルコン氏族はレッドデビル工業の車両生産ラインを失った(この工場の出荷物のどうしようもない品質を考えると、大きな損失ではないが)。最後に、ワード・オブ・ブレイクはスターズエンドにあるかつて海賊のものだった航宙艦ヤードを奪うのに成功したが、ヘルズホース氏族はすでに老朽化し整備の悪い施設を放棄していたようである。

 全体として、氏族の軍事生産は非常によい状態にあり、メックのラインは70パーセントが稼働する。だが、詳細を把握するのは難しい。氏族内の政治により、一つの氏族がすべての生産物を入手するのが不可能なのだ。たとえばジェイドファルコン氏族はノヴァキャット氏族のスフィンクスをいつでも使えるわけではない。その上、生産の水準は下がっている。現時点でオムニメックは16機種しか生産されておらず、生産の大半は退化したバトルメックである(中心領域技術のものさえある)。最後に、生産率を調べる手がかりがない。たとえば、ジェイドファルコン氏族は6機種ものオムニメックを生産できるかもしれないが、イーグルクラフトグループは限られた高コストな生産である一方、オリベッティ・ウェポンリー社は続く反乱と航宙艦の欠如によって資源に窮乏している。おそらくこれらによる最も重大な結果は、戦車、バトルアーマー、プロトメックが氏族軍に増えていることにある――これらはすべて大量生産するにあたって、少ない技術的蓄積と資源しか必要としないのである。


航空宇宙産業

 最後に、我々は氏族の航空宇宙産業の状態について考慮する必要がある。CSR〈ミッチェル・アヴェラー〉の進水に伴い、航宙艦を生産できる場所は氏族支配地域に三カ所となった。アルシャイン、バトラー、キャトル・ベルである。これに加え、氏族宙域では、7つの降下船造船所と、3つの大規模な小船舶工場が稼働しているのが知られる。

 しかし、やはり悪魔は細部に宿る。氏族は独立国家であり、互いの資産にアクセスすることはできない。すべての氏族はそれぞれの民間の要望を満たさねばならない。これを実証するのが、アルシャインから出荷されるのはすべて商人の船という事実であり、そのうち一部は民間に売却されすらしている。大量の小船舶は星系内の交易や税関のパトロールのようなありふれた任務で使われる一方、ミュール級やダナイス級のような古星間連盟の標準型は非軍事輸送の欠陥として働いている。

 インフラの再建が必要なことを考えると、船の建造は(中心領域のように)戦艦よりも航宙艦に専念することになりそうである。降下船においてのみ、軍事に注視しているのが見られる。なぜならゴーストベアをのぞく氏族は、3070年以前に航空宇宙戦力への生産に投資しておらず、また氏族軍向けの輸送能力が必要になるであろうからだ。より整備されたドミニオンでは、軍事船の2倍の速度でアケドゥクト級とミュール級を生産しており、ほかの氏族もそれにならうものと見られる。


氏族の経済

 氏族の商業部門は様々である。驚くべきことに、最も成功しているのはダイアモンドシャーク氏族ではなく、ゴーストベア・ドミニオンである。前者は中心領域への移住で妨げられ、商人の数が少ない一方で、ドミニオンは文字通りすべての世界で人民が自由に金を稼げるようにし、望んでそうしているのである。外世界同盟は同じく自由な民衆から利益を得ており、氏族のリソースに注入している。加えて、ジェイドファルコンをのぞくすべての氏族は、人口の比率に対して宇宙輸送力が大きいという優位を持っている。最後に、占領域は比較的遠隔地であり、ワード・オブ・ブレイクの侵攻による被害が少なくなっている。

 もちろん、すべてが完全にバラ色というわけではない。氏族のやりかたを押しつけると、経済は被害を被り、そして聖戦が終わったのにともない、すべての氏族は彼らの権威を再確認しようとしている。すべての氏族は続くゲリラ活動に直面しており、それはワードの敗北と一緒に終わりそうはない。氏族の大半は問題を緩和する戦力を持っているが、彼らこそ非生産的で不必要に資源を圧迫する存在の代表なのである。さらに氏族は名目上統制経済なのにも関わらず、本質的には「クレジット・バブル」によって成り立っている。これは彼らが中心領域に根を下ろすのに不可欠なのだが、いつか代価を払うことになるだろう。







傭兵の状況

 傭兵産業は、聖戦前の状況に比べると、ぼろをまとってよろよろ歩いているようなものである。聖戦で最悪の戦線に関わったことから(すべての陣営において)、傭兵が多くの世界において被害の急先鋒に立ったのは驚くべきことではない。ウルフ竜機兵団がアウトリーチと火星でほぼ殲滅されたことから、ノースウィンド・ハイランダーズが封鎖されて紛争の数年後に無傷のまま現れたことまで、傭兵の勇気とごまかしについては同じ分だけ語ることがある。以下に記されるのは、有名な部隊いくつかの概要と、彼らがいかに聖戦を過ごしたか、そして聖戦中に創設された有名でない部隊、聖戦で有名になった部隊についてである。


傭兵雇用斡旋所

 アウトリーチとガラテアの合法的な雇用所が失われたことは、傭兵産業に対して大きな痛手となった。多数の小さな雇用所(再建されたガラテア含む)は、プロの兵士と雇用主が利用できたが、MRBCによる指導はほとんどなかった。実際には、組織自体はまだ存在したのだが、強大な竜機兵団なしでは、MRBCが契約や争いの仲介をする権限を保てないのである。コムスターを信用する者がおらず、王家は受け入れられないことから、この損失を埋める中立の団体を発見するのは難しそうだ。MRBCが復活する可能性もあるが、急増する各国運営の小規模な雇用所が傭兵とその国家の契約を手助けするようになる可能性も同じくらいある。

 後者が起これば、傭兵業界は事実上壊滅し、以下のふたつの結果がもたらされるだろう。雇用主を選べないことから傭兵の扱いが悪くなるか、傭兵隊が特定の「信用できる」雇用主に引きつけられることである。


傭兵同盟軍(AMC)

 ウルフ竜機兵団が創設したこの傭兵部隊の集まりは、ブレイク派の拡大に単独で警告を発した。王家は呼びかけに呼応しなかったのだが、ワードは初期にこれら傭兵部隊に注視し、追及の手を緩めることはなかった。ノースウィンド・ハイランダーズをのぞいて(輸送船が破壊され、本拠地に封じ込められた)、そのほかのAMC所属部隊は聖戦を通して50パーセント以上の損失を被り、大半の被害はそれ以上だった。ディズマル・ディシンヘリテッド、リンドン大隊、オルウェイズ・フェイスフル、グリム・デターミネーション、アルカディアンズは完全に殲滅された。竜機兵団自身は80パーセント以上の損失を被り、艦隊のすべてと本拠地のアウトリーチを失った。かつて強大だった傭兵旅団の生き残りは、いまや意気消沈した死に損ないに過ぎず、その多くは聖戦の恐怖でトラウマを背負っている。


ケルハウンド

 ケルハウンドは聖戦前に完全な2個連隊分の戦力であった。現在の彼らは1個中隊以上のメックと、支援人員、ぼろぼろになった通常部隊を展開できるのみである。ジェイドファルコンは、3069年にハウンドの指揮官であるダニエル・アラードを殺し、その後指揮権はアキラ・ブラヘの手に落ちた。

 クレセントホーク中隊(ハウンドの半独立部隊)は、ターカッド解放を手助けしたあとに彼らの袂を分かち、ハウンドが経験した大量虐殺(戦争後半でのクリスチアン・ケルの戦死含む)の手をあらかた逃れている。ケルハウンドの生き残りたちは、地球のカイロにおける死の罠の中で、ワード・オブ・ブレイクのROM軍を追い落とそうとして死んでいった。それにも関わらず、生き残った4個メック小隊は挑戦的であり、将来、アークロイヤルを守るために再建する意思を持っている。


ノースウィンド・ハイランダーズ

 新しい氏族の長老たちを選ぶ際、ブレイクに全航宙艦を奪われたハイランダーズは、本拠地であるノースウィンドに閉じ込められた。ブレイクの戦艦艦長が惑星のHPG基地と航空宇宙輸送能力を吹き飛ばすと、移動不能となって、ほかの星系と通信する手段もなくなったハイランダーズは、戦闘準備レベルを保ち続けたのだが、ドラコ連合軍に解放されるまで脱出するすべての望みを絶たれた。

 解放に感謝したハイランダーズは、ワード・オブ・ブレイクに対する連合方面攻勢に加わり、ディーロンの掃討を行うなどした。地球では、ハイランダーズはリー将軍のシドニー強襲戦力の重大な部分を占めた。この戦いで、彼らの数が多かったことと、状況がよかったことは、ほかの同盟部隊が半数を失ったという地獄を逃れる手助けとなったのである。

 再建中である彼らは、代替メックに乗せるのに充分な腕を持つ戦士たちをすでに集めている。その一方、若干の失機者はノースウィンド軍養成校で生徒たちの教官となり、現代的な諸兵科連合の統合と、大量破壊兵器に対する限られた防御手段を教えている。ノースウィンドは自前の工場を持っていることから、ハイランダーズは数年どころか数ヶ月で戦力定数に戻ることが予期されるが、我々の申し入れに熱心に応じているので、彼らは近いうちに傭兵でいることをやめるかもしれない。結局のところ、ノースウィンド星系が共和国の支配下にあることから、ハイランダーズはRAFを故郷が再び驚異にさらされないための現実的な手段と見ているのである。


死刑囚

 多くの傭兵部隊が望んでブレイク派の聖戦に参加し、そのうち一部は喜んで軍事・民間目標に大量破壊兵器を使いさえしたのである。これら悪漢傭兵部隊の大多数が追い詰められ、根絶された。降伏したものはほとんどなかった……戦争犯罪で有罪となり処刑されるであろうことを知っていたのである。掃討されたと確認された傭兵部隊は、第51ダークパンツァー・イェーガー、ブロードソード軍団、ワナメーカー・ウィドウメーカーズ、ブロンソン群団、カーソン反逆隊、フィスト・オブ・モーカル、ハンニバル・ハーミット、バラード装甲機兵団、グレイゴースト、マーズ胸甲機兵隊、ステルシー・タイガースなどである。

 保護領から逃げ出したことが知られる少数の傭兵たちには、身柄の確保・死に対する許可証と賞金が出されている。各ハンターはすでにこれら賞金の一部を獲得している。これら賞金稼ぎのうち若干数が、RAFに加わり特殊作戦を行うという申し入れをされている。これらの有望な者たちは、将来の特殊部隊の基礎を作るかもしれないと考えられている。


辺境

 中心領域と同じように、辺境で雇われた傭兵たちもまた戦闘に参加したが、継承国家に比べるとはるかに規模が少なかった。同じなのは、傭兵の多くが戦火の勇気を示す一方で、気軽に契約を破ったものたちがいたことである。注目に値するのは、上記の両方を行ったラミリー襲撃隊だろう。彼らはフロンクリーチの持ち場を放棄したのだが、カノープスIVでの地下抵抗運動を続けるのに尽力したのである。第41シャドウ師団に対する捨て身の攻撃で、暴動の主導者たちが脱出可能となったが、生きて彼らに加わったのはほんのわずかだった。単に契約を破った部隊は、ロングウッド蒼衣隊である。タウラス人による軽視に愛想を尽かした彼らは、ハンセン荒くれ機兵隊に加わりさえしたのだった。


新顔

 中心領域のあちこちで数十の著名な部隊が一掃され、残った部隊は元の戦力に比べると残骸に過ぎないものとなった。それでも彼らは意思の力を持ってしてしがみつき続けたのである。あまり知られていない部隊が、若干の損害のみでこの大災害を生き延び、驚かれたが、こういった「タフなナット」は本当にごくわずかだった。概して、聖戦を生き残った傭兵の大半は、1個連隊以下の規模で、輸送船を所有している部隊だった。深刻な脅威とはならず、機動力を持ったこれら部隊は、暗殺者たちに見逃され、破壊を免れるために動き回ることができた。これらの一例は、デリラ・ガントレット、ギャノン・キャノンズ、ホルト・ヒルトッパーズ、フライング・バットレス、リアンジャミン・アヴェンジャーズ、フォウル・テンパードである。

 聖戦中、そのほかの新しい傭兵部隊の多くが中心領域と辺境で生まれた。一部は現れると同時に死んだが、一部は生き残り、残忍な戦争の中で成功しさえした。全滅を逃れた古い部隊と同じように、小規模な部隊はおおむね無視され、大きな部隊は狙われやすかった。よって、現在の市場には中隊規模(そしてもっと小さい規模)の部隊があふれており、一方で複数の連隊を持つ傭兵部隊――ハイランダーズ、アイリシアン槍機兵隊、クレーターコブラなど――は非常に少なくなっている。これは雇い主となって利益となった。なぜなら、小さい部隊はより経済的で、簡単に輸送可能だったからだ。コウキ・ノ・オタケビと、トンプソン・オーガスト・ウォリアーズは、聖戦後の業界における新顔のふたつである。


傭兵の政治的展望

 ブレイク派の脅威を排除するために、数多くの傭兵団からの支援を受けたにもかかわらず、たいていの民衆は傭兵業界を不信の目で見続けている。軍縮を行い、国家に所属しない軍隊を統制するという我らの目的を達成するには、傭兵業界を抑制するか、傭兵の使用を全面的に違法化する必要がある。傭兵はどの旗の下にもつかず、建前上、最も支払いの多い者にのみ従うことから、これらの部隊を使うのは固有のリスクがあり、戦争は政治的な目標を達成するための手段であるという暗黙の了解が残る。これは協定(共和国と近隣継承国家の絆を強めるもの)の裏をかくことになるので、こうなるのを許してはならない。

 聖戦前、傭兵の使用を完全に停止するという意見に賛成するのはほとんど不可能だったかもしれないが、聖戦で大規模な損害が出たことで、我々に有利になる可能性がある。MRBCが崩壊し、大規模な傭兵部隊が残ってない状況において、現在の傭兵団の平均は中隊規模となっている。ウルフ竜機兵団の政治的な影響力は消滅している。彼らは武装解除するか共和国に加わるという提案をはねのけたが、それは完全な拒絶というより氏族の遺産によるものだと我々は感じている。同じようにケルハウンド(彼ら自身無力化されている)は、ライラ国境で氏族を監視する必要な一部となり続けており、彼らを舞台から排除するのは国家主席自身による抵抗に遭遇するだろう。ケルと王族の一族的なコネクションについては言うまでもない。

 我々の最大の成功は、ノースウィンド・ハイランダーズを共和国に加わらせたことであるが、彼らが聖戦のほとんどに参加せず、それ故に評判を傷つけたことがなければ、そう容易にはいかなかっただろう。それでも、ハイランダーズは他部隊に対する手本となった。数多くの小部隊がRAFに編入されるか、寛大な補償パッケージを受け取って引退し、国内に腰を落ち着けた。我々はまだ慎重に動く必要がある。非国家の軍隊を武装解除するのが我々の目的であるが、銃口を突きつけて彼らをコクピットから下ろし、引退においやると見られるのは避けなければならない。そのようなとらえ方が広がったら、傭兵はカペラ大連邦国のような雇い主に走り、我々の非武装政策に賛成することは確実になくなるだろう。

 我々がすでに傭兵部隊の起源と我々の共和国に対する意見の相関関係を認識していることは、付記する価値があるだろう。旧星間連盟部隊の子孫であるか影響を受けた者たち(疑いようもなく聖戦を生き延びたのは少数だった)は、ノースウィンド・ハイランダーズのように我らを高く尊重している。そのほかの者たち、ケルハウンドのようて星間連盟崩壊後に作られた部隊は、共和国の概念に中立的であるように見えるが、非武装化という我々の意見には反対しているようだ。親ダヴィオンの第12ヴェガ特戦隊のような特定の王家に忠誠を誓い続けている部隊も同様である。このような例に対しては、雇用して非武装化するよりも、傭兵を雇っている王家に呼びかけることが、我々の目的を達成しやすいかもしれない。

 利点として使える民衆からの支持は限られたものであるが、チャンスはある。我々は親共和国の傭兵に国軍化を呼びかけるか、安定を餌に雇用している傭兵に長期契約を持ちかけている。適切な言葉を使うことによって、彼らに負債を与え「直営店化」しているように見せるのを避けることが出来るかもしれないが、私たちはまだ時間をかけてRAFへの編入を勝ち取ることが出来るだろう。こうすることが、影響力を持ち、有能な傭兵を公開された市場から排除する最高の手段となりそうである。

 正直なところ、傭兵コミュニティ全体を排除するのは不可能かもしれない。特に傭兵に依存してる継承国家の協力なくしては。従って、戦争と戦士に対する近年の雰囲気を利用して、傭兵の力と影響力を殺ぐことをゴールとするべきだろう。傭兵の中でさえも反戦的な雰囲気が高まっていることは、我らに利する。このために努力することのほかに楽しいことはほかにない。





ワード・オブ・ブレイク残存戦力

 我らが地球を征服し、狂信者たちの手から人類のゆりかごを解放したことは、ワード・オブ・ブレイクに対する最終的な勝利になると考えられていた。これは大きな達成だったのだが、ワード軍の殲滅は望んでいたより遙かに遠かったことがすぐにわかった。ブレイク軍の多くは単純に保護領を守っていたわけではなかったのである。

 幸いにも、ケルノフがデータを抹消していたにも関わらず、地球・保護領征服によって、ブレイク軍の真の戦力と配置に関する情報収集は以前よりも楽になった。これらのデータは、チャンドラセカール・クリタが数年前に提供したものと見事に一致したのだった。マスターとキャメロン・サン=ジャメの対立は、捕虜たちへの尋問と保護領各地で発見された資料によって鮮明なものとなった。またこれによって、ワード・オブ・ブレイク市民軍、傭兵のような提携戦力、戦艦艦隊の正確な戦力と配置が一目でわかるようになったのである。


シャドウ師団

 シャドウ師団は聖戦中、ワード・オブ・ブレイクで最も恐れられた戦力で、マスターが重要な仕事を必要とした場所――もしくは純粋に衝撃が必要とされたところに配備された。これらの猟犬たちは、元々、氏族と戦うために作られたのだが、第二星間連盟の解散によって、中心領域に解き放たれることとなったのである。聖戦の直前に12個師団が現役となったのだが、その後さらに2個が作られたという証拠がある。ルイテン68-28奪還時に得られた情報により、多くのシャドウ師団の運命を再構築することができた。

 シャドウ師団は聖戦の全戦線で活動し、新しい目標、一触即発となった地域に素早く展開するため、たいていスーパージャンプを使った。これらの攻撃で数個シャドウ師団が損害を負ったが、大半は脱出に成功し、戦力を回復することができた。ただし、それは3074年までのことである。ゴーストベア氏族がルシエンを強襲したときついに壊滅した最初のシャドウ師団が出た。第42師団が3個氏族銀河隊の力で粉砕されたのである。それ以来、数個師団の壊滅が確認された。第43、45、47のすべてがニューホームでデヴリン・ストーンを殺そうとした「ウィーク・オブ・ファイア」の際に死んだ。次に死んだのは地球を最期の地とした第51師団であった。

 レグルス軍によるギブソン爆撃で、惑星を守っていた第41、第52シャドウ師団が殲滅され、またマスターを追い詰める際、ポールスボーで第53が倒された。

 残ったシャドウ師団は、コンパス座でマスターと共に死んだ一部の部隊以外、行方不明となっている。不明なシャドウ師団のひとつが、ヘスペラスIIで最後に遭遇し、かろうじて全滅を逃れた第40師団である。ニューアヴァロンで1年間活動し、3074年9月に離れた第44師団もそれ以来目撃されていない。

 3078年、コムガードはルイテン68-28の第46、48、54師団を追い詰め、殲滅しようともくろみ、残ったコムガードの中枢が壊滅した。これによって、我らは地球陥落までこの隠し基地を短い期間放棄せざるを得なくなったのだった。以降、この3個師団は3079年に姿を現し、オリエント公国を荒廃させ、再びどこかへ消えた。第46、第48の一部はコンパス座で倒れたが、すべての部隊が確認されたわけではない。第49師団はコンパス座が殲滅されたときにアンドリオンで示威活動をしており、救援に駆けつけるには遅すぎたのだが、その航空宇宙戦力はコンパス座の軌道上で目撃され、それから脱出した。

 それ以来、これら師団の一部は、3081年後半のベリスによるデビルズロックでの待ち伏せに参加し、それから逃げ失せた。第50師団はワード・オブ・ブレイク師団のため陽動を担当し、SCOUR作戦の折りにブレイク保護領でいくつかの部隊を叩いた。彼らが最後に戦ったのはニューアースである。彼らは我が軍の氏族部隊の後方に上陸し、手ひどく我が軍を痛めつけて撤退させ、従ってシャドウは脱出する時間を与えられたのだった。

 初期の諜報では、全シャドウ師団はワード・オブ・ブレイクが改革前のコムスターから引き継いだ秘密基地「隠されし5つの世界」で立ち上げられたとされていた。このうち、ジャーディンがすべてのマネイドミニの本拠地であると見られている。戦争に遅れて新しい第53、54師団が登場したことで、シャドウ師団とマネイドミニ兵を訓練し、装備する能力をもった基地があるという疑惑が生まれた。我らはギブソンかコンパス座で開発されたのでないかと疑っているのだが、ルイテンの工場が破壊されたというのにシャドウ師団の装備が豊富だったこともまた、他に元コムスターの施設があることを示唆している。我らは調査を開始したところだ。


ワード・オブ・ブレイク市民軍師団

 ワード・オブ・ブレイクのより一般的な正規部隊は、もちろんのこと市民軍師団なのだが、彼らはブレイク保護領を確立する上で重要な役割を果たした。これらの部隊はニューアヴァロン、ターカッド、ルシエンのような重要な目標に対する攻撃部隊としても活動した。地球のブレイク司令部から集められた情報と、捕らえられた指揮官・高官の取り調べによって、全WoBM師団の配置をほぼ確定できている。行方不明となったと考えられていた一部の部隊は、損害を負った部隊に吸収されていると判明した。また、この発見によって、ワード・オブ・ブレイクが正規市民軍のための余分な工場、訓練施設を作ったのではないかという懸念は解決された。

 SCOUR作戦中、ワード・オブ・ブレイク市民軍師団による頑強な抵抗に遭遇したのは、二度であった。ディーロンと地球だ。ディーロンでは、ワード・オブ・ブレイクはゴーストベア氏族軍を封じ込めようとした。そうするために、彼らは戦艦数隻と5個保護領市民軍師団(アカマー、アスタ、フレッチャー、リバティ、ミルトン)、5個完全WoBM師団(第2、3、14、19、23)を持ってきた。これは失敗し、ゴーストベアは押し通って他の世界いくつかでワードを叩いたのだが、ディーロンはブレイク軍が数個市民軍を組み合わせて合同軍と戦った数少ない保護領世界なのである。もうひとつの、部隊を集中させた戦いは、当然、地球防衛戦であった。第51シャドウ師団、テラセクと共に、14個市民軍師団が分厚い防衛部隊を形成した。

 逃走中なのは損害を負った第3、10、12、30師団だけなので、通常WoBM師団による驚異は非常に高いとはいえないかもしれないが、彼らを逮捕し、職務中に関わった犯罪に対する裁判にかける――もしくは、いまだ逃走中とされている行方不明のシャドウ師団、ブレイク部隊との共謀を防ぐのは、最優先課題である。


保護領市民軍

 ブレイク保護領内の防衛力を上げるために、ワードは保護領の民衆からなる地元市民軍を立ち上げ、訓練するプログラムに着手した。これら保護領師団群は主にそれぞれの本拠地の防衛を支援するのに使われるが、SCOUR作戦中、部隊の多くが合同軍に対する逆襲の援軍となるため鍵となる地域へ移動させられた。地元の防衛に比重を置き、特殊な兵器、指向性を持たない保護領市民軍の指揮官、兵士たちは、たいていが地元の愛国者たちであった。彼らは純粋に母星を守るという唯一の機会をとらえたのである。ワード・オブ・ブレイクは「地元の愛国心」というこの感覚を最大限に活用して、多量のハイテク装備なしで管理できる、信頼の置ける防衛戦線を確保したのである。

 我が合同軍が前進するにつれ、保護領市民軍は崩壊していった。元保護領の世界いくつかでいくらかの抵抗軍が残ったが、ワード・オブ・ブレイクが崩壊したことと、我が軍の特使によるほぼ平和的な手段によって、これらの驚異は撲滅されていったのだった。我々はこれら古参兵たちの多くを我が軍の地元市民軍に組み込むことさえ考えている――もちろん、慎重な審査の後で。


海軍戦力

 シャドウ師団を上回るワード・オブ・ブレイク最大の戦力は、その大規模な海軍である。ガブリエル遺跡(オデッサ星系内、我らが発見した二番目の「隠されし世界」)から回収された艦船群を中心に作られ、ワードが捕獲したすべての船がこの艦隊を強化している。ワードの宇宙艦隊の最大部分は、なんといっても自由世界同盟から来ている。戦争の初期に、ブレイク派はFWLN(自由世界同盟海軍)のほぼ半分を奪い取り、総帥に忠誠を誓っていた同盟軍の1/4を破壊するのに成功した。

 驚くべきことに、ワードは艦隊を細切れで使うことに満足していたようで、重要な目標に対して集中的に投入することはなかった。大王家、氏族の傷ついた艦隊に直接挑戦しないこの戦略は、ブレイクのこの戦争に関する最大の失敗のひとつとなった。なぜなら、ワード・オブ・ブレイク艦隊の船を一度に1隻ずつ破壊することが可能となったからだ。市民軍師団と同じように、ワードはSCOUR作戦中、二度の大規模な作戦に艦隊を集中して投入したのみだった。従って、ディーロンとワードの最後の地である地球が、ケースホワイト以外では最大の艦隊運用となった。我らにとっては幸運にも、ワード・オブ・ブレイク指導部内の対立と、全体の戦略計画を欠いているらしかったことから、合同軍に対して有効な手段で艦隊を配備するのが不可能となったのである。

 行方不明となっているワード・オブ・ブレイクの戦艦は若干数である――このうちの大半は3079年、オリエント公国に対する短期の攻勢の際、最後に目撃された。ガブリエルからの2隻――WBS〈ヴィジラント・ガーディアン〉(ソヴィエトスキー・ソユーズ級)と、WBS〈ブレード・オブ・ディヴィニティ〉(ヴィンセントMk. 39級)――がこの群れを率い、それに続くのがマーリックの船――FWS〈コリンス〉(セラ級)、FWS〈ヒッポリュテー〉(アガメムノン級)、WFS〈オピリオーネ〉(ゼチェティーヌII級)である。これらの艦船(シャドウ師団と共に活動している)は現在の大王家が現在集められる海軍に匹敵するものである。

 我が海軍の活動可能な戦艦が3隻のみであることから、これらワード・オブ・ブレイクの船は、もし彼らが戻ってくるのだとしたら、どの星に現れたとしても重大な脅威となるものである。完全な戦艦の製造ができないことから、我々はポケット戦艦の製造に頼っている。だが、率直に言えば、少なくとも最も重要な星々を守るのに充分なだけのポケット戦艦を供給するまで長い時間がかかるだろう。


傭兵戦力

 ワード・オブ・ブレイクが配備した最も残虐な兵士たちは、実のところ聖戦の以前、最中に各雇用世界で雇われた傭兵部隊であった。たいていは落ちぶれた部隊(評判が悪く、良心を欠いていた)から選ばれたこれらの傭兵たちは、評判のいい雇用主に仕えることができなかったので、ワードが必要としていた少なくとも儲かりそうな任務を与えられた。ウルフ竜機兵団を強襲し、ジェイム・ウルフを殺したような攻撃は氷山の一角である。ブレイク保護領の世界で、傭兵の攻撃は民間人と抵抗グループを狙い、ワードの支配に従わないものを探し出すため罪のない人々を誘拐し、拷問した。

 有名な傭兵部隊のいくつかは、SCOUR作戦とその直後に、追い詰められ、破壊されたが、これらの部隊の一部がいまだ逃走中で、襲撃を行い、問題を引き起こしている。これらの分散した部隊と戦士たちの首にかけられた賞金が増えたことから、捕縛の手を逃れるため多くがすでに中心領域中に散らばり、逃げながら海賊として生活している。そうでない者たちは、我らが考えるところではすでに解散し、民衆の中に隠れようとしている。彼らがどうしようとも、共和国の内外にいる情報提供者たちが、これらの逃亡者たちを探し出し、司直の手にかけるべく働いている。


ライト・オブ・マンカインド、ROM

 逃亡しているワード部隊の中で最も危険な存在なのは、シャドウ師団と戦艦かもしれないが、半ダースのシャドウ師団であっても、一度に複数の場所に姿を現すことはできない。ライト・オブ・マンカインドは違う。このワード・オブ・ブレイクROMの特殊作戦部門は、繰り返し幅広い目標を攻撃する能力を見せつけ、3080年の悪名高い「血塗られた祝典」攻撃(中心領域の全域で複数の目標が一斉に攻撃された)でそれが発揮された。単なる銃器、暗殺から、工場での数発の核爆発まであらゆる兵器を使用したLOMの攻撃は、本部が廃墟となってもワードが致命的な作戦を行えることを示している。ライトとワード・オブ・ブレイクROMの生き残りを狩るのは最優先課題となっているが、太陽系とギブソン星系の主要ROM本部が破壊されたことと、野戦指揮官たちの極秘作戦における順応性を考えると、この任務は数年、あるいは数十年かかるかもしれない。その一方、我らの最高のモールハンター(スパイ狩り)たちと情報提供者たちが共和国内の重要な世界に派遣され、元保護領内で活動するセルを追跡しようとしている。これまでのところほとんど成果はなく、この1年大規模な連携攻撃はない一方で、我々はブレイク派によるテロのリスクが高いと考えることができるのみである。彼らは非常に我慢強いところを見せており、次の数ヶ月が共和国の安定性にとってきわめて重要なことから、ワードのエージェントたちが我らを倒すために持てる力の中でなんでもやることが予想される。







秘密超兵器




マキナ・ドミニ
開発開始時期: 3061年(ワード・オブ・ブレイク)
プロトタイプ開発・生産: 3074年頃(ワード・オブ・ブレイク)
状況: 戦闘可能なプロトタイプが限定数配備済み

 マネイドミニの背後にある根源的哲学は、ワード・オブ・ブレイクの外にいる者のみならず、内部の者にとっても理解しづらいものであった。多数の報告書を繰り返し研究することなしには、選ばれし「マスターの手」の哲学をおおざっぱにでも要約することはできなかった。彼らは生物学的側面を弱さの表れとし、強さを妨害していると考えている。機械による肉体強化は究極の目的であり、進化のステップと考えられる。

 我々が知る限り、この哲学の権化はマネイドミニの恐るべき歩兵戦力の中でのみ見られる。メック戦士の強化は比較的ゆるやかなものである。

 だが、ギブソンが壊滅する前に地下活動から得られた断片的な報告によると、ワードは問題を新しいレベルに持って行く方法を見つけたようだ。新型バトルメック、"ゲシュタルト"が、地元の抵抗軍を処理するのに特化されたハンターキラーの権化として登場したのである。抵抗軍はどうにかゲシュタルトの1機を撃墜するのに成功し、メック戦士は脱出した。最初は頭部全体が脱出システムになっているかのように見えたのだが、反乱軍はすぐに装甲歩兵からの銃撃に直面した。反乱軍はこの予想外のパワーアーマーも片付けることができたが、それは相当な犠牲を払ってのことだった。報告はこのブレイク派アーマーの詳細をいくつか記述しており、それまでのドミニ・メック戦士に見られていたものより先進的な独特の操縦システムを明らかにしている。

 この機体のメック戦士はPA(L)に接続する特殊なVDNIを使う。メックの頭部にある特殊な「ゆりかご」に座るのである。このシステムは、事実上、スーツにコクピット操縦システムを与えている。メック戦士は通常通りにVDNIを通して操縦の指示をする一方で、メルはVDNIからのデータを理解し、スーツからの生体フィードバックを管理する。この複雑な機構は伝統的なVDNIシステムよりも優れており、メックのDIコンピュータとジャイロの機能の大半を必要なくしさえするようだ。直結脳神経インタフェースを使用してのみ稼働するこのインターフェース・スーツ機構によって、ワード・オブ・ブレイクはジャイロなしのメックを生み出すことが可能となり、優れた操作能力を保ちながらトン数と内部空間を節約したのである。

 マキナ・ドミニの導入が、コスト、耐久性、ペイロード上の利点を持つことは明白だが、追加のボーナスは、インターフェース・スーツを戦闘可能なシステムにし、脱出したメック戦士の生存性を大幅に上昇させ、パイロットが死んだり捕らえられたりするのを避けることである。マネイドミニには多額の資産が投じられているので、戦場での損失を埋めるのが難しい軍隊にとって、これは魅力的な要素である。




〈エリニュエス〉
開発開始時期: 3065年頃(ワード・オブ・ブレイク)
プロトタイプ開発・生産: 3066年頃
状況: 配備済み、現在地不明

 我々の推測によると、〈エリニュエス〉は元々採掘用に開発された改造型ニューグランジ級ヤードシップで、第二星間連盟諜報部がこれを初めて目撃したのは3066年前半の深辺境でのことだった。この船は全長に匹敵するきわめて巨大な兵器を搭載していると、複数のソースで報告されている。この兵器は静止した宇宙船、宇宙ステーションを一発で消滅させるのに充分な弾丸を発射できるという。だが、不穏当な二次的報告は小惑星を発射する能力が示唆されており、それを念頭において我々は以下の警告(黙読のみ)を我が軍に出すものとする。我々はまだこの無法船を確認も捕獲もしていない。





エリニュエス

 >>報告開始
諜報警告 #0000798: WBS〈エリニュエス〉、ニューグランジ級ヤードシップ(武装)
配布先: スフィア共和国海軍(RSN)の海軍大佐以上、共和国装甲軍(RAF)の旅団指揮官以上
日時: 3081年12月6日
区分: アルファ・プライオリティ - 最高機密

 暗号を解かれたWoBのファイルで、2隻目のニューグランジ級ヤードシップの存在が確認された。この2隻目のヤードシップは攻勢作戦のために重改造されているとなっているが、どう改造されているかは不明である。WBS〈エリニュエス〉とされるこの船名は、ギリシャ神話の復讐の女神のものである。これもまたこの船がもう一隻のWBS〈ブレイクズ・マーシー〉(現在は〈マーシー〉と改名され、オニール造船所の再建を助け続けている)よりも武装が優れていることの証拠となる。

 〈ブレイクズ・マーシー〉だけがワードのニューグランジ級ではないと合同軍の諜報部は疑っていたのだが、これまでは確認されていなかった。WoBのファスレーン級すべてが確認され、〈マーシー〉はコベントリ星系にいたものと確認されているなかで、もう一隻の「スーパーシップ」に関する報告は無視するには多すぎたのだ。

 現在のところ、RAF諜報部は、これら「スーパーシップ」目撃例のすべてを直接〈エリニュエス〉に結びつける準備はしていない。これら報告の多くは、幻想との境界線上にあり、真剣に考慮するに値しない。たとえば、たとえばアーカブが破壊されたのは明らかに小惑星の仕業であり、巨大兵器の砲撃によるものではない。こういった報告は脇に置いて、それでもなお共和国軍内で増加する警告を正当化するに足るデータが集まっている。改造してないニューグランス級でさえも、地球をのぞくすべての星系に恐ろしい脅威を与えるだけの充分な装甲と火力を持っている(そして地球でさえも、損害を受けたら少なくとも10年分再建を阻むであろう)。

 RAFの地上部隊司令官も同じくこの船を警戒する必要がある。1個大隊分のバトルメック、50機以上の気圏戦闘機と小船舶、50万トン分の積み荷を持つ〈エリニュエス〉は、ほとんどの共和国星系に驚異を与えられる惑星強襲軍を容易に輸送可能なのだ。

 〈エリニュエス〉に関する目撃談、情報は、即時にRAF情報部に報告すること(ニューグランジ級のセンサー、データ概略はこの報告に付記されている)。報告書のコピーをすべての管区司令官に送付すること。

 注意: この報告が漏れないようにすることは必須である。ワード・オブ・ブレイクの惑星抹殺兵器に関する噂は広まり続けている。この報告は、過度のパニックを引き起こすのみならず、ワードに我らが秘密の戦艦について知ってると教えてしまうかもしれない。

 >>報告終了





スーパーヘビー・バトルメック
開発開始時期: 2777年(辺境世界共和国)
プロトタイプ開発・生産: 3077年頃(ワード・オブ・ブレイク)
状況: 戦闘可能なプロトタイプが限定数配備済み

 (ライラ同盟に限らず)多くの考えるところでは、バトルメックを生産するのは規模の問題である。もし、よいバトルメックが必要なら、大型のものを作ればいい。この考え方には、いくらかの真実がある……大型のバトルメックはたいていスピードを犠牲にしているものの、装甲と火力を持っているからだ。地上速度が代償となることは、100トンを超えるメックの開発が妨げられている主因であるが、純粋な技術的問題もまた生産を難しくしている。それまでの試み(最も有名なのはアマリス・フォーリー)は、必要な技術がなかったときに行われたものである。

 ワード・オブ・ブレイクはこの数年で達成された技術的ブレイクスルーを用いたようだ。過去の失敗を克服するために、興味深い新型マイアマー/TSMハイブリッド間接を使って、これらの技術的障壁の大半を超えていった。彼らはまたスーピーヘビーバトルメック用の大型内部構造を利用した。メックが自立し続けるためには、ヘビーデューティー・ジャイロもまた必要だった。構造的な要求は過大なものであるが、スーパーヘビー・バトルメックの利点は、通常のメックに比べて内部スペースが比較的余裕を持つことにある。フレームが巨大(通常のメックより相当に幅広くて背が高い)だからである。

 "オメガ"の名称で最終的に作られたバトルメックは、なんらかのニッチな機能性を持っていたようだ。通常のメックより耐久力が高いことで有名な"オメガ"は、通常のメックが持てるよりも大量の兵装システムを搭載したときに、その真価を発揮する。ブレイク派たちはこの"オメガ"にたどり着く前に、いくつかの武装仕様を開発していた。そのうち1機種は、4門の氏族製HAG-40キャノンを装備していたと噂される。

 成功したようだが、スーパーヘビーメックの本質的な問題は残されている。速度で劣ることから、足の速い機体の大半は攻撃の際にスーパーヘビーを避けることができる。また、敵の砲撃、空爆に対してもかなり脆弱である。接近戦では、限られた機動性がきわめて不利であると証明されている。これらすべての脆弱性が、ワードによって地球に配備された少数の"オメガ"を破壊するために利用された。

 ワードはこれらの問題を緩和するために三脚、四脚の機種を視野に入れていたようだが、時速50キロ、またはジャンプジェットなくしては、どの軍隊もワードのメック設計に関する改革を真似ることはなさそうである。




スペクトラルLAM
開発開始時期: 3075年(ワード・オブ・ブレイク)
プロトタイプ開発・生産: 3076年頃(ワード・オブ・ブレイク)
状況: 限定数配備済み

 ランド・エア・メック(LAM)は長い間、軍事技術における興味深い地位を示してきた。最初、SLDF向けに地球帝国が開発したこれらの変形バトルメックは、偵察部隊、軽打撃チーム、そして地上、上空で刻々と必要な条件の変わる戦闘部隊のための支援部隊に優れた機動性と柔軟性を提供してきた。LAMはメック仕様でも戦闘機仕様でも降下船によって迅速に展開可能である。

 残念ながら、LAM変形システム固有の制限がたくさんあることから、似たようなトン数の戦闘機やメックと同じ役割を果たすことはできない。さらに、星間連盟の時代においてさえも、核融合エンジン、内部中枢、兵器システムの進化が、LAMの数少ない優位を奪っていった。それに加えて、高価で高度なパイロット訓練と整備が必要とされるLAMは、星間連盟が滅亡してからの数年間、少数派であり続けた――3050年、イレースにあった中心領域最後のLAM工場が破壊されると、戦闘可能状態にあるLAMの現役機は急速に減速し、聖戦までには事実上、絶滅していた。

 従って、ワード・オブ・ブレイクの支配が終わりつつあった時期、地球とギブソンでLAMが目撃されると、戦士たちの多くが驚いたのである。両世界で、これまで目撃されてなかったLAM(ワードのスペクトラル・オムニ戦闘機シリーズに似ていることからスペクトラルLAMと名付けられた)少数機が、合同軍、レグルス軍と交戦を行った。他方、第一星間連盟による旧式LAMのノスタルジックなファンたちは、この柔軟性の高い戦闘ユニットが復活するまでこれほど長い時間がかかったことに疑問を示している。

 後で分かったことだが、損傷し捕獲されたスペクトラルLAMの分析によると、ワード・オブ・ブレイクが星間連盟製のLAMと同じ厳しい制限を被っていたことがすぐにも判明した。小型で効率的な氏族技術を使ってもなお、ワードのスペクトラルLAMは、同じ重量の近代的バトルメック、気圏戦闘機に真に匹敵する戦闘能力を欠いているのである。その理由の大半は、エクストラライトエンジンやエンドースティール構造のような、重量軽減装備を使えないことによる。地球侵攻とレグルスのギブソン抹殺で、スペクトラルLAMを生産する工場が破壊されると、生き残ったごくわずかな機体は、その祖先たちと同じように博物館に向かうことになりそうだ。それは死にゆく種族の断末魔である。










中心領域バトルアーマー


"マキナ・ドミニ"インターフェース・アーマー “MACHINA DOMINI”INTERFACE ARMOR

 ワード・オブ・ブレイクによる「マキナ・ドミニ」計画のプロトタイプ・パワーアーマーは、ついぞふさわしい名称を得ることがなかった。回収されたわずかなサンプルとデータによって知られていることは、このアーマーが本質的には重改造されたPA(L)スーツであり、バイオ・フィードバックと神経インパルス技術を使ってスーツのみでなくバトルメックそのものを操縦可能としていることだ。これは独特のコントロールシステムと、特別に設計されたメックのインタフェース・コクピットによって可能となった。

 車両用直結神経インタフェース(VDNI)インプラント(ワード・オブ・ブレイクの狂信的なマネイドミニたちが使ってきたもの)に依存しているのが明らかなこのインタフェース・アーマーは、どうしたことか兵士のモーター制御レベルを大きく向上させ、バトルメックのDIコンピュータの機能の大半を遂行し、ジャイロの必要性すらなくすのである(元々のVDNIシステムですらできなかったことである)。トン数とスペースをわずかに減らすこと以外の真の利点は完全には理解されていない。しかし、このインターフェースは、ギブソンが粉砕されたときにマネイドミニが取り組んでいた大規模なプロジェクトの最初のフェーズだった可能性がある。

 操縦システムとして使う以外にも、インタフェース・アーマーはこのサイズに載せられる上限の防御力を持ち、"ファイアドレイク"サポート・ニードラーと軽対人兵器用のマウントを持っている。この能力によって、パイロットは通常歩兵にとって危険な敵となり、その防護力と火力は脱出した平均的なメック戦士を大きく上回る――しかし、これらのスーツがサイバー強化されたマネイドミニ向けであることを考えると、メック戦士が対歩兵戦力として「掛け持ち」を果たすことを意味しているのかもしれない。


タイプ: M-Dインターフェース・アーマー
製造元: ワード・オブ・ブレイク
    主工場: ギブソン
装備レーティング: F/X-X-F/D

技術ベース: 中心領域(実験)
シャーシタイプ: 人型
重量等級: パワーアーマー(ライト)
最大重量: 400 kg
バトルバリュー: 10
集団攻撃 /脚部攻撃/機械化/AP: 可/可/可/可
付記: VDNIなしでの運用不可能。以下の機種別特徴を持つ。プロトタイプ、整備困難、3081年使用終了。

装備                       装備欄数    重量
シャーシ:                                  80 kg
移動システム:
    地上 MP:        4                      50 kg
    ジャンプ MP:    1                       0 kg
マニピュレーター:
    左腕:     装甲グローブ            0 kg
    右腕:     装甲グローブ                  0 kg
装甲:             通常型                  100 kg
    装甲値:   2 + 1 (兵士)


武器・装備                配置    (能力)   重量
ファイアドレイク・サポート・ニードラー   右腕           1           5 kg
対歩兵武器搭載装置              左腕           1           5 kg
バトルメック・神経インタフェース・ユニット 胴体           2         100 kg











D2X-G “ゲシュタルト” D2X-G “GESTALT”
重量: 45 トン
シャーシ: D2プロトタイプ
パワープラント: ヘルメス315XL
巡航速度: 75 キロメートル/時
最高速度: 118 キロメートル/時
ジャンプジェット: ローリングス55
 ジャンプ能力: 180
装甲板: ディヴァイン・スペクトラC・ヘビーフェロファイバー(ヴォイド・シグネチャ・システム付)
武装:
 ブラッケンブルク"ディヴァイン・レイス"ヘビーPPC(PPCキャパシター付) 1門
 シプラン・M3-XR・長射程中口径レーザー 2門
製造元: ギブソン・フェデレーテッド・バトルメックス
 主要工場: ギブソン
通信システム: マスターズボイス・セル-アルファ(エンジェルECM付き)
照準・追尾システム: マスターズサイト・1-オメガ




概要
 D2X-Gは、ギブソンの工場が3078年にレグルス軍によって破壊される前に生産された、最初の(そして唯一の)"マキナ・ドミニ"バトルメックである。そのユニークな操縦インタフェースからギブソンのレジスタンスに「ゲシュタルト」とのコードネームをつけられたこの機体は、象徴的なセレスティアル・シリーズを補うインタフェース機能を持ったメックとして計画されたのか、モジュラー技術を後で改造する計画だったのか、不明である。

 まだプロトタイプの段階だったのだが、「ゲシュタルト」はギブソンで広範囲な実地試験が行われ、ギブソンで再発した反乱と何度か戦った。これらの作戦のあいだ、「ゲシュタルト」は高速偵察、追撃、阻止攻撃から、伏撃戦術まで、様々な任務に向いていることが明らかとなった。ヴォイド・シグネチャ・システムとエンジェルECMシステムの組み合わせが活用されたのである。地元の反乱部隊に撃墜された「ゲシュタルト」は確認されていないが、幾度かの交戦中にインタフェース・スーツの性能が示された。メック戦士がマシンの外に出て、より目標に近づこうとしたときである。レグルス軍がギブソンを爆撃する前に、マネイドミニは十数機の「ゲシュタルト」を外に出すことができた。

 これらの機体はマスターの側近のみが用い、少なくとも1個レベルII分がブレイク地上軍の一部としてディアマンティーナでレグルス軍と戦った。コンパス座でマスターが死に、マネイドミニが消えたことで、もう中心領域で「ゲシュタルト」とそのほかの「マキナ・ドミニ」の証拠は目撃されていない。





タイプ: "ゲシュタルト"
技術ベース: 中心領域(実験)
重量: 45トン
戦闘価値: 2545

                          装備重量
内部中枢:                       4.5
エンジン:        315XL             11
    歩行:         7
    走行:        11
    ジャンプ:       6
放熱器:          10(20)            0
ジャイロ(なし):                    0
操縦機器:                        4
装甲板(ヘビーフェロ):  148             7.5



       内部中枢    装甲
頭部:      3         9
胴中央:    14        17
胴中央(背面):          10
左/右胴:    11        14
左/右胴(背面):          8
左/右腕:     7        14
左/右脚:    11        20

武器・装備           配置    装備欄数    重量
ヘビーPPC            右腕      4      10
PPCキャパシター         右腕      1       1
エンジェルECMスート      胴中央      2       2
2 ER中口径レーザー       左腕      2       2
ヴォイド・シグネチャ・システム  *       7       0
ジャンプジェット        右胴      3      1.5
ジャンプジェット        左胴      3      1.5
付記: ヴォイド・シグネチャは頭部をのぞくすべての装備欄を1消費する。この機体はバトルメック・神経インタフェース・ユニットを装備したバトルスーツ使用時にのみ操縦できる。以下の機種別特徴を持つ。プロトタイプ、整備困難、3081年使用終了。










SHP-X4 “オメガ” SHP-X4 “OMEGA”
重量: 150 トン
シャーシ: スーパーヘビー・テンプレート・エンドースティール
パワープラント: 300ヴィラーXL
巡航速度: 21 キロメートル/時
最高速度: 32 キロメートル/時
装甲板: アルディス・プレート(CASE II付き)
武装:
 M-7 ガウスライフル 3門
 インペレーター・コードレッド・LB 10-Xオートキャノン 2門
製造元: スコーベル・メックワークス
 主要工場: 地球
通信システム: スコーベル・ウェーブVIコム(強化C3付き)
照準・追尾システム: ファルコン12bウォッチャー




概要
 150トンにおよぶ途方もない装甲と武器を持つSHP-X4"オメガ"は、これまで作られたなかで最初のスーパーヘビー・バトルメックである。地球帝国で最初のバトルメックが開発されて以来、似たようなコンセプトが試みられてきたが、大半が残念な結末をたどった。このうちのひとつが、後に氏族製のベヒモス/ベイン強襲メックの基礎になったスーパーヘビー・バトルメック、いわゆる「アマリス・フォーリー(アマリスのばかげた計画)」である。

 配備されたときにまだプロトタイプだったのだが、同盟軍が地球を進行した際にロシアのスコーベル・メックワークスで30機近いSHP-X4が生産された。その外見と部品から判断すると、これらのメックはキングクラブやヴァンキッシャーのような星間連盟、ブレイク派の旧式マシンが元になっている。

 オメガに使われている部品の大半(特に装甲、兵器、コクピットシステム)は、ありふれたものであるが、その下のシャーシと筋繊維は強化されていることが、回収された残骸から判断できる。これはワードがいかに過去のスーパーヘビー・メックの開発失敗を克服したのか示すものである。強化フレームに相当する骨格の構造、巨大な間接、通常より大型のマイアマー・システム、高性能ハイブリッドファイバーによる強化を持ってして、ワードは過去の実験を終わらせてきたハードルを越えたのである。結果としてできあがったフレームは、通常サイズのメックにはまったくふさわしくないものである一方、キングクラブ1.5倍の全長がある。

 エクストラライト300ヴィラーをエンジンにする、この大型胴体の"オメガ"は、実戦において鈍足かつ扱いにくいことが判明したが、その厚い装甲と、3門のガウスライフル、2門のLB-Xはこの機体を致命的な防衛機とし、地上の敵機を叩くのみならず、低高度での対空砲としての役割を果たすことすらできる。大量のドローン、機動防衛プラットフォーム、LAMなど、予想外の防衛戦力と組み合わされた"オメガ"は、地球争奪戦において同盟軍を複数の戦線で窮地に陥れたのである。

 生産された"オメガ"の大半は、キャメロン・サン=ジャメ最後の地となったデビルズピーク付近に配置されたが、ヒルトンヘッド・アイランドとカイロでも目撃されている。これらの機体はすべて破壊され、戦闘後に実数が確認されている。スコーベルのスーパーヘビー生産部門もまた、侵攻の最後の日々に破壊されたのだった。





タイプ: "オメガ"
技術ベース: 中心領域(実験)
重量: 150トン
戦闘価値: 3001

                          装備重量
内部中枢:     スーパーヘビーエンドー       15
エンジン:        300XL             9.5
    歩行:         2
    走行:         3
    ジャンプ:       0
放熱器:          10              0
ジャイロ:                        6
操縦機器:                        4
装甲板:          432             27



        内部中枢    装甲
頭部:      4        12
胴中央:    45        60
胴中央(背面):          20
左/右胴:    32        45
左/右胴(背面):         19
左/右腕:    25        44
左/右脚:    32        62

武器・装備       配置    装備欄数    重量
LB10-X AC        右腕      3      11
弾薬(LB-X)20     右腕      1       2
CASE II         右腕      1       1
ガウスライフル     右胴      4      15
弾薬(ガウス)32    右胴      2       4
CASE II         右胴      1       1
ガウスライフル     胴中央      4      15
弾薬(ガウス)16    胴中央      1       2
強化C3コンピューター  胴中央      1      2.5
CASE II        胴中央      1       1
ガウスライフル     左胴      4      15
弾薬(ガウス)32    左胴      2       4
CASE II         左胴      1       1
LB10-X AC        左腕      3      11
弾薬(LB-X)20     左腕      1       2
CASE II         左腕      1       1




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