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作成:2005/01/07
更新:2006/12/15

自由世界同盟 Free Worlds League



 多数の小国家から構成される自由世界同盟について、誕生から崩壊した現在(3134年)まで。ツーリング・スターズより。







第33回:孵化する運命 - 自由世界同盟の誕生

 独立を愛する心で連合しているが、互いに分裂している。経済と社会は強大だが、悪夢のようにもつれる官僚政治と紛争によって抑え込まれている。こういったものが自由世界同盟を形作っているとよく言われる。この国家は対照性の研究材料になってきた。創設から崩壊に至るまで、そして現在でさえも、この王国がどうやって誕生できたのか、加盟国同士に大きな違いがあるなかでどう始まったのかが、歴史書の全巻で推測されている。学者たちはほぼ8世紀間(ほとんどの期間が絶えざる戦役に蝕まれてきた)も、国家が存続してきたことに驚嘆している。同盟の崩壊後でさえも、専門家たちはかつてのプライドが残っていることに驚嘆し(絶望的なまでに争いばかりの王国だったが)、気まぐれな子孫たちの多数が今日でさえも国家の再興をいつか成し遂げるべく活動していることに驚かされている。

 他の継承国家と同じように、同盟の創設は地球同盟の緩やかな終焉とともに始まっている。植民地世界が次々と独立を宣言するなかで、地球同盟の力はさらに衰えていき、結局、内政重視の政策に変更することとなった。若い植民地への援助をうち切ったのである。続く混沌のなかで、貧しい世界は海賊行為と襲撃の犠牲者となり、力を減退させ、駆け出しの政府を弱体化させた。生き残るために、同盟が作られた。いずれドラコ連合となるゲイルダン同盟や、ライラ共和国を作り出すスカイア連邦、タマラー協定、ドネガル保護領の経済勢力などである。だがこういった同盟国ができる前に、自由世界同盟を結成することになるマーリック共和国、レグルス侯国、オリエント連邦が現れていたのだった。

 マーリック共和国(鉱物の豊かな世界マーリックを中心としていた)は、たったひとつの世界として始まり、同じ名前の一族によって統治されていた。チャールズ・マーリック(統治者であり、多数の指導者を輩出した一族の出身)は、2238年に地球同盟からの独立を宣言した。彼の統治下において、新名マーリック共和国は、すさまじい生産能力に支えられ、強力な中央政府の下に結びついた。マーリックは軍隊もまた立ち上げた。軍隊は結局、さらなる世界を旗下に集める助けとして、優れた外交手腕とともに使われたのだった。2771年までに、マーリック共和国――ひとつの世界から拡大していったのちに名付けられた――は、合計12個の世界を統治し、地球同盟宙域の国境から60光年離れていた。

 ほぼ同時期に、レグルス侯国が、リムワードにあった地球植民地間の貿易契約連合として作られ始めていた。裕福なセラジ家(この地域で最も開発されていた5つの世界が力の源になっていた)に支配される侯国は、準国家――2270年までに17個の世界からなる企業政治同盟になっていった。

 オリエント連邦は、そのあいだ、オリエントに近い世界の外交ネットワークを核として結成された。オリエントは2241年にトーマス・アリソンが(地球)同盟からの独立を宣言していた。多民族が集まっている――ほとんどが東欧人であるマーリック共和国や、インド、パキスタン系が占めるレグルス侯国とは対照的に――連邦は、自由と同様に科学・芸術の進化にも心を砕いていた。

 これら三つの連邦国家は、独自の政治組織文化の下で成長した。マーリック共和国は強力な中央政府を持った軍事国家である。侯国は裕福な一族の寡頭政治体制である。また連邦は議会制民主主義によって統治されていた。しかし、違いがあったがために、これら3同盟国は自身の成長を、地球同盟の避けられぬ衰退と同様に、自身の安定を脅かすものと見ていた。アリソン(優れた洞察力を持ち合わせていた)が、ニューデロスの特使ジョージ・ハンフリー卿とともに、初めて同盟を持ちかけた。


 地球同盟の最盛期に開発された植民地間の大きな違いを考えると、自由世界同盟を創設したときにレグルス、オリエント、マーリックが遭遇したような問題に、他の大国が遭遇しなかったのはやや驚きである。言語(あらゆる文化の中核要素)がマーリック条約の焦点となった。最近勝ち取った独立と、統治している様々な民衆に気を遣って、共和国、侯国、連邦の指導者たちは、実質的な仕事量と同じくらい、言語と用語について議論を交わした。結局、英語(指導者3名全員が話せる唯一の言語)が選ばれた……民衆の大部分は、通常、この言葉を使えないのではあるが。
――ショーナ・ヴェリジ著『混乱した国家、政治と(元)自由世界同盟』(共和国プレス、3099年)より


 新国家の公式言語から政府の様式についてまで、数年間討議した後で、2271年、マーリック条約は最終的に――あるいは奇跡的に――署名され、今日の学者が継承国家と呼ぶ最初の自由世界同盟が作られた。この国の指針は、マーリック共和国の軍事力、レグルス侯国の経済力、そして雑多で独立的な統率力を持ったオリエント連邦の外交技術から得られる相互利益である。マーリック条約は3王国に自治を与え、指導者たちは議会政治のなかで活躍することになる。緊急時のみの称号として、総帥の地位が作られた。危機の間、選ばれたひとりの軍事的指導者に、同盟軍の全権限を与えるのである。同様に、経済的繁栄を促進するインセンティブが政府内に組み込まれた。議会における代表の影響力は、惑星の人口でなく、経済力(国家の税額)に比例する。この事実は――一時的に――マーリック、オリエント、レグルスの支配を保証していたのである。真の権力は、中央の指導者でなく、議会の大臣(MPs)に与えられたが、たいていは結集力のある政府に帰着したのだった。

 手に負えず、変化に応えるのが遅いのだが、自由世界同盟は結成後、はるかに繁栄し成長した。相互保護のために近隣の世界と小規模な連合国が結局は同盟に参加し、その一方で他の国家は併合されていった。征服された国家のひとつがスチュワート共和国……6個の世界からなる軍事独裁政府である。マーリック共和国はこの国を重大な脅威とみなし、議会の宣戦布告を勝ち取り、2293年に強襲した。この危機は同盟最初の総帥ジュリアーノ・マーリックを選ぶに足るほど重大であり、同盟の運命(数世紀間、動く方向を決める)を本質的に変更するお膳立てをした。


 マーリックは自然と同盟最初の総帥に選ばれた。マーリック家が加盟国で最も軍事的な経験を持っているからだが、徹底的なこの地位の権力は、最も予期しない最も遠い結果をもたらしたと私は考えている。最初は、確かに、同盟がスチュワート共和国を吸収し、たった一週間で完了した。だが、ちょうど20年後にふたたび総帥が必要とされた。地球帝国が出現すると、ジュリアーノ・マーリックが同盟の危機を救うためにまたやってきたのだ。勝てない戦いをするよりも(地球同盟装甲軍は軍事的天才のジェームズ・マッケナ提督によって再編されていた。帝国軍は同盟軍より優れていた)、マーリックは総帥としての幅広い権限を使って帝国との対話を行い、同盟を好況に導く貿易の道を切り開いたのである。同盟の大臣たちはこの解答にまったく反対しなかった……前例のない軍事と政治の共同作業だったというのに。あらゆる意志・目的のために、総帥は有事において国家の指導に関するすべての権限を持つことができたのだ。

 当然、この初期の例は、決議288号に結びつき、自由世界議会の権力を事実上停止する長い道に入ったのである。

――ケビン・デュエリ著『皮肉な政治ガイド 第三版』(ダーク・スカイア・プレス、3090年)より







第34回:鷲の飛行 - マーリック家の勃興と没落

 2398年、アンドゥリエンの世界が、隣国のカペラ大連邦国軍による強襲を受け、戦争の時代の幕開けとなった。時が進むに連れ、同盟――それに中心領域の残り――は、少なくとも星間連盟の誕生まで、ほぼ絶えざる強襲で自身の国境線を追い求めることになる。これはまた自由世界同盟の素晴らしき日々の終わりをも意味していた。長引く戦いの費用で国庫は枯渇していったのである。しかしそれ以上に、総帥の長期就任が、マーリック家と同盟議会の政治的党争に結びついたのである。

 ピーター・マーリック(アンドゥリエン危機を扱うために2396年に任命)は、リャオ家に強襲された世界をなんとか取り返しただけでなく、同盟の大兵力をライラ共和国に向け、自由世界市民のヒーローとして人気の波に乗った。議会(総帥の手綱を締めようとしていた)がマーリックに、ライラと休戦するよう命令を出したとき、彼はそれを無視して征服を続け、2418年に戦いを終えるまでに共和国の世界をいくつか手に入れていたのだった。議会は戦時特権法案(政府が総帥を監督し、権限を広範囲に制限する)によって反撃した。ちょうど2年後にライラとの戦闘が再開したとき、マーリックはその地位に戻りたがらなかった。

 ヨセフ・スチュアート(スチュアート共和国)が次の戦闘指導者となったのだが、冴えない戦果しか残せず、2420年代に5つの世界を失った。スチュワートの災害的なまでの失敗を考え(同盟はマーリックの下で軍事的成功にならされていた)、議会はピーター・マーリックの息子テレンスに総帥職に就くよう依頼した。だが、戦時特権法案がある限り気が進まないようだった。政治的な行き詰まりが、テレンスの要求を押し通し、総帥を議会のコントロールから解放したのである。

 その後、マーリック家は、星間連盟時代にはほとんど権力拡大しようとしなかった(軍事と政治の結合を除く)。この地位が星間連盟議会において自由世界国家の長であるとされた時代のことである。


 星間連盟に加入する取引はおそらくマーリック一族最大の成功のひとつである。長きに渡ったアンドゥリエン地方の紛争――リャオはこの領土を奪い取ろうと三度目の戦役を行っていた――を終わらせる、地球帝国からの支援を受け取っただけでなく、戦争のない時期でさえも総帥の地位を保証する確約を得たのだ。当然、法律上、マーリック家がその地位を常に確保するわけでなかった一方で、自由世界の歴史上、マーリックが常に最高の軍事戦略家・指導者であった事実は、マーリックが星間連盟の一員として自由世界同盟の軍事的王座につくことを保証したのである。

――ケビン・デュエリ著『皮肉な政治ガイド 第三版』(ダーク・スカイア・プレス、3090年)より


 星間連盟の崩壊後に、もちろん、継承権戦争が勃発した。もう同盟の中央政府であるとの認識されていなかったマーリック家は、宇宙で突如戦争が噴出していなかったら、事実上の治世を終えていたかもしれない。ケレンスキー軍が未知の世界に出発すると、ケニオン・マーリック(総帥だった)は有名な――あるいは悪名高い――決議288号を可決するよう、混乱する議会を説得したのである。この決議は「危機の続くあいだ」総帥に全面的な裁量権を与えるものだった。奇妙なことに、「危機」の定義に疑問を呈した議員はほとんどいなかった。数世紀に渡る総帥の政治への口出しにならされていたのだ。決議は通過し、法的に際限のない支配権が総帥の職務に与えられた。従って、マーリック一族は支配を保証されたのである。マーリックの後継者――一族のでていった祖先と友人によって選ばれる――は決議288号を持ち出して前任者より指揮を引き継つぐことになる。

 数世紀に及ぶ継承権戦争を通じて、総帥に対する挑戦は繰り返されたものの、マーリック家は自由世界同盟の手綱を握り続けた。だがこの手綱はせいぜいが弱いものだった。29世紀の半ばと31世紀の初めまでに、多くの同盟に属する小国家――アンドゥリエン公国、オルロフ公国、国境保護国のような――が、なんとか本拠地防衛法案を通過させ、総帥の望みに反して、兵士の3/4をその地方国家から招集できるようになったのである。

 このバルカン化(小国分裂化)は最終的に3014年のマーリック内戦に結びついた。アントン・マーリック(ヤノス総帥の弟)が、相当数の地域公爵に支援されて反乱を起こしたのだ。アンドゥリエンとレグルスのように中立を宣言した大国もあった一方で、マーリック兄弟は王国中にまたがる残酷な戦争を行った。それは始まったのと同じくらい素早く終わったのだが、同盟の構成国のあいだに禍根を残したのである。


 仲の良い友人たちがひとつの部屋にいるとして欲しい。人気のある者が突如、他の者を非難し始めたとする。なにか恐ろしいこと……窃盗、レイプ、殺人などをしたとしてだ。他の者たちがどちらか一方につき、憎まれ口を叩き、舌禍を交わし、血が流れる様を想像して欲しい。次に外部の者たちがやってきて、最初に非難した者を糾弾し、他の者たちをショックに与えたとする。おそらく嫌疑は晴れる。その場には、不和が初めからあったのではないかとの疑いだけが残る。隠されていた嫉妬と恨みが、最も人気のある友人に向かい、声になってしまったのだ。「悪かった」「許してくれ」では関係を修復できない。この友情はもう元に戻らないだろう。

 まるで高校生だが、このようなことが自由世界同盟で起きたのだ。ウルフ竜機兵団がアントン・マーリックを殺し、効果的に内戦を終わらせた後でのことだ。突如、マーリック家は誰が友人であり、誰が敵であるかを知った。いまいましいことに前者はごく少数で、後者が多すぎた。実際に、ライラ共和国と恒星連邦の連合による脅威がなければ、別の内戦(アントンの反乱より大規模なもの)によって同盟が消滅していたかもしれない。

――ショーナ・ヴェリジ著『混乱した国家、政治と(元)自由世界同盟』(共和国プレス、3099年)より


 実際のところ、同盟の分断化は第四次継承権戦争のすぐ後に始まった。アンドゥリエン公国が同盟からの離脱を宣言して、辺境の隣国であるカノープス統一政体とともに、カペラ大連邦国への戦役を開始したのだ。ヤノス・マーリック(同盟の老いた指導者)は、3030年の「緊急法案」提出で反応した。公式には同盟地方国家の権限を「緊急時にだけ」縮小するものである。決議288号を真似たこの法律は、アンドゥリエン危機に対処するだけでなく、より小さな怒れる地方国家をターゲットとし、総帥に権力を集約するものだった。この危機は、戦略会議でヤノスが暗殺されたとき頂点に達し、結局――明らかに――数ヶ月後、息子トーマスの帰還によって終わったのである。

 むろん、トーマス・マーリックは闇の時代にコムスターが王座に据えた詐欺師であることを歴史は知っているが、その詐欺師は同盟の歴史上、もっとも有能な指導者になったことを証明した。彼は、「合併に関する追加条項」のために、「緊急法案」を撤廃した。この法律は、総帥の拒否権と引き替えに、地方国家に自治権と権力を与えるものだった。「マーリックのドアマット(踏みつけにされる)」であることに疲れていた地方国家の信頼を勝ち取ったのだ。ほぼ専制的な政府と軍当局とともに、トーマスはアンドゥリエン戦争に勝利し、裏切った地方国家を新たなより強力な中央権力の支配下に置いたのである。

 その後、偽トーマス・マーリックは中央政府の力を強めただけでなく、同盟の軍事・産業基盤を再建した。だが、氏族侵攻の始まる3048年までに、同盟の運命を変える大きな機会はなかった。他の継承君主たちと取引するなかで、トーマス・マーリックは(氏族に)包囲された中心領域のために同盟の優れた軍事産業・製造業を提供した。またシュタイナー=ダヴィオン同盟に対する安全を確保するため、カペラ大連邦国と緊密な同盟を結んだ。だが、ほぼ同時期に、彼はまたワード・オブ・ブレイク(コムスターの分派で、いずれ彼の王国を焼き尽くすことになる)のホスト役を務めたのだ。

 従って、自由世界同盟は中心領域における最も強力かつ尊敬される力を持つにいたったが、その一方で同時に恐怖の種子をまいていたのである。






第35回:王国の墓碑銘

 3060年代の半ばまでに、自由世界同盟に降りかかる難題は、歴史の中に消えていったかに見えた。マーリック内戦も追憶でしかなくなっていた。正統な王国の後継者である(とみなが考えていた)トーマス・マーリックはアトレウスの玉座につき、総帥職の権力を復活させ、その一方でコムスターの分派(ワード・オブ・ブレイク)は成長し、彼を亡命司教にしようとロビー活動していた。サン=ツー・リャオとの同盟(かつては連邦=共和国の野心に対して身体を支える松葉杖だった)は、シュタイナーとダヴィオンの同盟が崩壊すると、もはや重要でなくなったように見えた。そして氏族の差し迫った脅威によって、侵攻が終わったあとでさえも、中心領域中の王国が同盟の兵器輸出に依存していた。総帥が、自慢の中心領域騎士団とともに、中心領域に平和をもたらすべく専念し、名誉ある戦いぶりを見せると、みなが総帥を称賛して、伝統的な内部争いの脅威でさえも忘れられた追憶になっていった(少なくとも表面上は)。

 外部でのんきに見ていた者は、混乱する3060年代に同盟が顕著な安定を見せたことに妬みさえ抱いた。氏族戦争、第一次ドミニオン/連合戦争、聖アイヴス/カペラ紛争、連邦=共和国内戦、それに伴う戦争が見られたときに、同盟はまったく政治的・軍事的脅威に直面しなかった。だが王国の中枢部では、政治、狂信、憎しみ、絶望といった時限爆弾が時を刻んでいたのだ。ブレイク派はおそらく聖戦の開始を計画していなかったという証拠がいくつか残っているのだが、彼らは内部にさえ秘密にして動き続けた。暗闇と邪悪のしばしの同盟は、新生星間連盟に計り知れないほどの栄光をもたらしたはずだった。

 ワードにとっては不幸だったことに、中心領域の指導者たちが、新生星間連盟がまがい物であると認めたとき(カペラ首相のサン=ツー・リャオを除く。すでに撤退を宣言していた)、彼らの預言された昇華は唐突に終わったのだ。彼らの同盟は、戦争を防ぐよりむしろ、実質的に最近の戦争で所属国家の多くを叩きのめしていた。戦争は新SLDFへの義務を果たすために行われた。この組織はもう有用な目的のためには機能しなかったのだ。従って、誇り高き星間連盟を復活させる試みは放棄されたのである。

 この後のことは、中心領域中の学童がむろん知っている……


 彼らが言うところの先制攻撃はアウトリーチに行われた。ワードは(ウルフ)竜機兵団が脅威であると、(カオス)境界域で戦ったあとに心から信じていたのである。だが、11月28日が終わる前に、ニューアヴァロン、ターカッド、ルシエンの空が、都市に向かう降下船の熱煙とともに炎上していた。どこからともなく現れた戦艦が軌道対地表砲撃の奔流を浴びせ、地上に向かう降下船を援護した。

 多くの人たちが聖戦をアマリス危機や第一次継承権戦争に結びつけている。なぜならブレイク派は、核兵器、生化学物質の使用を躊躇せず、余裕がない世界の必要な生命維持システムでさえも破壊したからだ。だが、特記すべきひとつの重要な違いがある。ワードの目的は征服でなく、テロと破壊だったのだ。アウトリーチは不毛の地にされ、奪取はされなかった。アヴァロン市は立て続けに打撃を受け、単なる戦場のゴーストタウンとなり果てた。ターカッドは破壊された原子炉の放射能雲によって汚染された。ワードの兵士たちは、軍を拘束し、混乱をまき散らすためだけに、これらの地域の一部に長くとどまった。

 もっともアトレウスはそれよりさらに悪かったかもしれない。かつて自由世界同盟軍最高の兵士とされていた者たちによって、破壊がもたらされたのだ。ブレイク派工作員と結託して、議会と総帥の司令センターが破壊され――中心領域騎士団の多くが殺された――同盟海軍の半数以上がその手で首都を爆撃で塵に変えた。強襲が始まる前に、「トーマス・マーリック」が偽物であると公表された。アンドゥリエン危機の時期にコムスターが彼を玉座につけたのである。皮肉にも攻撃軍の最重要目標(偽トーマス・マーリック自身)は強襲から生き残った。議会大臣が決議288号の撤廃(やその他)を議論し続けていたときでさえも隠れ続けていたのだ。

 アトレウス破壊は始まったばかりだった……

――ショーナ・ヴェリジ著『混乱した国家、政治と(元)自由世界同盟』(共和国プレス、3099年)より


 ワードの工作員はあらゆるレベルで自由世界同盟に浸透していた。15年にわたる不自然な信頼がそれを許したのだ。同盟の部隊と戦艦の多くがブレイク派の手に落ち、元々優れていた武器庫に追加された。トーマス・マーリック――もしくはトーマス・マーリックになるとみなが信じていた者――は、これらの行動にぞっとし、ブレイク派と敵対した。ブレイク派は王国に聖戦の嵐を持ち込んだだけであった。狂信者たちとその仲間が3068年にアトレウスを強襲したとき、この攻撃は決定的なものとなった。というのも、同盟の政治的中枢ともっとも信頼できる貴族軍(第1中心領域騎士団)を一掃した以上のことをなしたからだ。マーリック家内の信頼もまたうち砕いたのである。

 続いて起きたことは必然であった。確固たるリーダーシップを奪われ、裏切られた同盟の国家群は内向きになり、大慌てで聖戦から身を守る防衛方法を探し求めたのである。これらのうちでもっとも大きな6つが、レグルス、マーリック、オリエント、アンドゥリエン、タマリンド、レスノヴォの世界を中心としていた。そしてそのほとんどが歴史的な国境線の下に独立国家として再生を主張する一方で、そのすべてが小世界・同盟を取り巻いて成長し、今日に至るまで存在する6ヶ国を形作ることになる。ワードに対して彼らはともに立ちむかったが、以前のようにはうまく連携できなかった。実際に、トーマス・マーリック(3080年からトーマス・ハラス)は戦後、自らにオリエントでの亡命・追放の一種を課し、妻シェリー・ハラスの監督下にあった。聖戦の残りの期間を通して、彼の行動は、分裂した同盟とデヴリン・ストーン連合への諜報支援に終始した。彼の政治的影響力・達成はすべて、偽総帥としての敗北になるのだ。

 そのあいだにワード・オブ・ブレイクが捕食行動を行い、分断された地方国は協調してブレイク派の脅威に立ち向かうよりも、もっと心配するべきことができた。マーリック軍に変装したブレイク派兵士がライラ同盟のスカイア地方を強襲し、報復をうながしたのだ。スチュアート共和国とタマリンド公国が占領された。同時に、カペラ国境でオリエントとアンドゥリエンに似たような効果をもたらすためにあらゆる努力が払われた。通信網――粉砕された同盟中で深刻な通信障害が出ていた――によって、混乱した指揮系統は完全に闇の中に消えていった。健在であった第2騎士団(アトレウスへの最初の逆襲における最後の抵抗は伝説的だった)を含む忠誠派軍はあらゆる前線で勇敢に戦ったが、ブレイク派が単純にすべての点で有利だった。

 勝利によって最終的に同盟の大部分が取り戻されることになる。このとき、ストーン同盟の戦士たちと市民たちは進んで攻め手と同じレベルの野蛮さに訴えた。たとえばギブソン(かつてワードの中心地だった)は、3078年、自由レグルス軍が行った集中核爆撃によって「殺菌」されたのである。この行動(戦争における最も残酷な行為のひとつ)は、効果的に自由世界同盟内のワードを粉砕しただけでなく、国家を棺桶送りにする最後の釘を打つことにもなった。当面の危機は去り、議場は破壊され、偽物がすべての信頼を奪ったなかで、同盟の地方国家はそれぞれ異なる道へと進んでいった。彼らは若干の外交的連携を保っているのだが(そのほとんどは分裂してない隣国への防衛に関するもの)、同盟領土に広がる保有者のいない世界と小同盟を獲得するために競うことになる。

 そして、マーリック家の団結と、自由世界同盟をもたらした統一は消滅した。それに続く数年間で、お互いと隣国(ライラ、カペラ、辺境、共和国)に対する小戦争が、かつては経済的・政治的に強力だった動乱の宙域に顕在化したのだった。6大国とどこにも所属していない80の世界が、日々、なんとか生き残っている。

 だが、失われし市民たちはまだ希望を持っている。自由世界同盟が蘇らないと全員が信じているわけではないのだ。一部の者たちにとって、鷲がフェニックスとなり灰の中から復活するのは時間の問題に過ぎないのだった。






第36回:同盟の遺産――マーリック=スチュアート、レグルス

データ表:マーリック=スチュアート共和国 The Marik-Stewart Commonwealth
創設年:3082年(2238年、マーリック共和国として)
首都(都市、世界):ドーマス、マーリック
国家シンボル:金の円盤と紫の長方形の前にある黒い鷲と旗
位置(地球からの):地球のリムワード−アンチスピンワード、内側
総(居住)星系数:31
人口概算(3130年):912億人
政府:議会制民主主義(現在、軍法の下に運用)
統治者:アンソン・マーリック総帥
主な言語:英語(公用語)、スロバキア語、チェコ語、ルーマニア語
主な宗教:ユダヤ、イスラム、キリスト(正教会)
貨幣単位:イーグル(1イーグル=0.52コムスタービル)


 ドーマス(マーリックとマーリック=スチュアート共和国の首都)は、大規模なスプロール地区である。異国風のタワービル、ドーム、突き出たビルの地平線が、昼の太陽光でオレンジ色にきらめく。恒星の近くを周回するマーリックは、熱い、乾いた世界であるが、鉱石が豊富で、工業が発達している。(スフィア)共和国の設立以降、数十年かけてこの世界は再建されてきた。よって、のんきな観光客がスプロールの大都市で見るものは歴史的に驚くべきものが多い。彼らは自由世界同盟が生まれたこの世界で時間旅行を楽しむ。そして、変化したすべてと引き替えに、マーリックには同じまま残っているものが数多く存在する。ドーマスとマルケントの政府・軍事指揮ビルはまったく質実剛健としている。他国家の大宮殿とはまったく違うものだ。旅行者の人気をもっとも集めるのは、バーリングラッド・ホバードロームで毎年行われるレースである。地元の人たちは、ソラリスVIIのホバー・ダービー・レースに触発されたものであると誇っている。


 元自由世界同盟加盟国のなかで最大、かつ同盟の元首都アトレウスを持つマーリック=スチュアート共和国は、現実に元のマーリック共和国とスチュワート共和区の融合である。隣接する星系と小同盟が、ワード・オブ・ブレイクの聖戦後に併合されるか、自ら加わった。かつてはマーリック家による自由世界同盟支配の根元で、総帥の権力の中枢だった。今日、元同盟諸国のなかでもっとも手に負えない国家のひとつであり、消滅した同盟の生き写しである。

 オーガスティンのアリス・ルーセ女公(3067年、決議288号と総帥の地位の撤廃を求めた事実上の人物)は、皮肉なことに同盟が最終的に崩壊した3078年、この王国の最初の総帥になった。だが、この国家で内輪争いが始まったときでさえも、戦う代わりに彼女は自身の世界とその他のいくつかを初期のスフィア共和国に割譲したのである。コリン・マーリックが3082年、総帥職を要求し、この打ちのめされた国家を率いた。軍事力で主権を守り、(スフィア)共和国、カペラ、ライラや、元同盟国のオリエント、レグルスにさえも立ち向かった。

 名目上、マーリック=スチュアート共和国は議会スタイルの民主主義であると主張しているが、3082年に国家が独立して以来、総帥が玉座に着き、危機の国家を統率している。それは古きマーリック家の伝統を不気味にも思い出させるのである。民主的基盤が共和国内の大国に参政権を与えている。彼らの多くはマーリックの指導力にいらだちを隠せていない。というのも今日、シュタイナー家とスフィア共和国が保有権を主張している世界(失われた祖先の世界)を、マーリックは取り戻そうとしないからだ。他の政治勢力もまた、レグルスやオリエントへの軍事行動を求めている。彼らの多くは、以前より強力で連帯した自由世界同盟の再建に目を向けているのだ。声高で目立つこういった政治勢力と、「危機の期間だけ」続いている規則は、多くの対立と冷え込んだ外交関係を産み出したのだが、中央政府とそれを守る軍事力を産み出したのである。

 しかしながら、マーリック=スチュアート共和国の市民は、もっと国際的である。元同盟でもっとも工業化された世界と、貿易――敵対する隣国とでさえも取り引きする――による繁栄を保持する共和国は、元同盟国でもっとも裕福なのである(他の大国と肩を並べている)。自由世界同盟の内部に位置していた共和国は、継承権戦争でほとんど被害を受けず、それが産業・文化の力を育てた。元のマーリック共和国出身者の多くが、元同盟国のなかで、芸術、文学、エンタティメントに対する最大のパトロンなのだ。そして国家が政争にさらされているにもかかわらず、市民の多くは相当に好意的で信頼できる。隣国のマスメディアが報道するように好戦的ではない。



データ表:レグルス領 The Regulan Fiefs
創設年:3086年(2243年、レグルス侯国として)
首都(都市、世界):チュニス、レグルス
国家シンボル:レグルスの世界のうしろにいる青鷲
位置(地球からの):地球のリムワード−アンチスピンワード、中央
総(居住)星系数:27
人口概算(3130年):180億人
政府:立憲君主制(現在、戒厳令下で運用)
統治者:レスター・キャメロン=ジョーンズ総帥
主な言語:英語(公用語)、ヒンズー語、アルドゥー語、モンゴル語
主な宗教:ヒンズー、イスラム、キリスト(ギリシャ正教会)
貨幣単位:ルピー(1ルピー=0.58コムスタービル)


 レグルス(レグルス領の首都)は、熱い白黄色巨星を周回する暖かい世界である。自由世界同盟領土の商業中心地として数世紀のあいだ富が蓄積されたこの世界は、マーリックのようによく開発されもしている。巨大な農業施設と大規模な都市が、温暖・熱帯の風景に点在している。なかでも群を抜いて大きいのは首都で港湾都市のチェニスである。500万のレグルス人が住むチェニスは貿易・政治の中枢であるのと同様に芸術品である。ここの建築様式は古代東インド、中東、アジア様式であり、惑星を創設したセラ王朝時代の文化的影響を繁栄している。


 かつては自由世界同盟の三大創設国家で二番目に力を持っていたレグルス侯国は、マーリック家の台頭とともに政治的影響力の弱体化を体験した。この弱体化は、創設セラジ家の名誉を汚していっただけだった。総帥追放を努力をしたあとで、彼らは2550年代に同盟から離脱した。表だって反抗することはほとんどないのだが――3030年代にアンドゥリエンが短期間独立したときでさえ彼らとの同盟を拒否した――レグルスの指導力は総帥への権力集中に反対してきた。実際に、アンドゥリエン事件後、レグルスが同盟の参加国でもっとも分離独立主義的であると、歴史家の多数が見なすようになっている……比較的暴力には訴えていないのではあるが。

 そしてまた皮肉にも、独立のため長き政治闘争を同盟内で繰り広げていたのに、レグルス人は専制政治を採用している。(現在の統治者キャメロン=ジョーンズ一族によってレグルス自身が独裁政治に変更した)。この指導者はこれまでに総帥の地位に就く動きを見せたことさえある。なにがレグルスの野心を語っているのだろうか? ライバルのオリエント保護国やマーリック=スチュアート共和国と同じように、レグルス人もまた、聖戦の戦火の中に失われていった同盟をいつか再生し、繁栄を取り戻したいと夢見ているのであろう。

 内部に位置している王国(継承権戦争の戦いで多くが生き残った)であるレグルス領は、聖戦前の経済安定期に好況の果実を楽しんだ……政治的影響力を失ったのであるが。生まれつき働き者であるレグルス人は、すべての事柄(特にビジネスと政治)で成功に邁進する。彼らは国家(現在戦争でもほとんど傷ついていない)を産み出した。その一方で、同時に、隣国に挑戦する充分に力強い装甲軍を立ち上げたのである。

 そして挑戦はたしかにレグルス人の特質なのである。同盟が崩壊してすぐにレグルスは、他に先んじて、隣国のレグルス自由州とギブソン公国の確保に動いた。3086年にレグルス領であると再宣言した王国は、現在、マーリック=スチュアート共和国とオリエント保護国のあいだにくさびを打ち込む形で存在する。その一方で、共和国のリムワード=アンチスピンワード方面国境を、現実的に抑えている。軍隊は、マーリック=スチュアート、オリエント、アンドゥリエン、あるいはリム共和区とでさえも衝突した。二度、これら隣国の世界を捕獲したレグルス人は、アトレウス(以前の同盟政府の中心)すらも強襲した。

 まだレグルス人は自身の国家を好戦的とは見ていないが、同盟の遺産の単なる生き残りであるとしているか、おそらく現実的な救済の器であるとさえもしている。ここにはプライドがある。レグルス人がギブソンの地表とともにワード・オブ・ブレイクによる恐怖の時代を抹殺したとき以来、成長してきたプライドだ。このプライドが人々に語るのは、彼らがいつか(おそらくすぐに)隣人たちを啓蒙し、崩壊した自由世界を以前より強くより良く再建するということだ。






第37回:同盟の遺産――オリエント、アンドゥリエン

データ表:オリエント保護国 Oriente Protectorate
創設年:3086年(2241年、オリエント連邦として)
首都(都市、世界):アムール、オリエント
国家シンボル:紫と黒の円盤の前の銀鷲
位置(地球からの):地球のリムワード、カペラ大連邦国のアンチスピンワード、中央
総(居住)星系数:29
人口概算(3130年):855億人
政府:代議共和制(現在、軍法の下に運用)
統治者:ジェシカ・マーリック総帥
主な言語:英語、ギリシャ語(双方ともに公用語)、中国語
主な宗教:キリスト(正教会)、イスラム
貨幣単位:ドラクマ(1ドラクマ=0.31コムスタービル)


 アムール(オリエントとオリエント保護国の首都)は時を超えたかのごとき美しい都市である。現実的にアムラリアス山脈の麓を囲む森林を切り開いた――そして一部では雪を頂く範囲まで到達している――この都市は現代的な新古典主義建築(地球の古代ギリシャの様式から続く)の一例である。都市の摩天楼(高層階は惑星の白黄色巨星が放つ太陽光線を反射して輝く)は、威厳ある円柱建築とその他の疑似ギリシャ的なデザインを特徴としている。ストリートでさえもそうだ。アムールは商業の大都市である。500万の人口はほとんどがビジネスと貿易に従事している。ここでは交通が途切れることはない。ビジネスマン、旅行者、貿易商、政府首脳たちは絶えず次のアポイントメントに向かっているのだ。


 オリエント保護国は、当初、オリエント連邦として2241年に創設された(後にオリエント公国として歴史に登場する)。自由世界同盟の三番目の創設国であり、現在では二番目に大きい。仲間の創設国と同じようにオリエントは人口豊かで繁栄している。その創設者は政治と外交のセンスに恵まれていた。だがこの外交能力は、常に隣国カペラ領域からの襲撃と侵攻をいつも防いできたわけではない。実際にオリエント人が自由世界同盟の結成を最初に申し出たのである。地球の復活と、現在進行しているカペラ方面での戦争を阻止するために強い同盟を探し求めていたのだ。

 マーリック家の台頭とともに、オリエントは「忠実なる野党」として知られるようになった。彼らの常に実利的な指導力は、長きにわたって総帥の職務を幅広く支援してきただけでなく、マーリックの横暴に対抗しようとする議会でそれをなだめる発言をよくしてきたのである。同時にオリエントは商業と技術の中心地となってきた。連邦=共和国創設後のカペラ方面が比較的平和であるあいだ、オリエント市民は経済・産業の繁栄の時代を体験した。その一方で、オリエントの商人たちはその商品と技術の専門知識を中心領域中に輸出したのである。

 同盟崩壊に続く混乱のなかで、レグルス軍は隣国に対して何度も攻撃を仕掛けた。対象は主にオリエントである。なぜならハラス家が偽トーマス・マーリックの逃亡を受け入れたからだ。突如敵対的になった隣国との戦いで守勢に追い込まれたオリエント公国は、3080年にクリストファー・ハラスが死んだ後、トーマス・マーリックの偽物と妻シェリル・ハラスの共同統治の下に結集した。自由世界の玉座を喜んで手放すことを表明するために、偽トーマスは妻の名字を選んで横領した名前を捨てたのだが、この変化はレグルス人を鎮めなかった。彼らは詐欺師とその保護者に、数十年間に及ぶ詐欺の罪を償わせようとしたのである。

 しばらくするとレグルス人は撃退されたが、3084年に彼らはオリエントに注意を戻した。マーリック=スチュアート共和国軍に太刀打ちできなかったときのことである。このような戦いが、同世紀のあいだずっと続き、つい最近の3120年代まで荒れ狂った。同盟の3大創設国すべてが、分裂した国家の支配と権利回復を巡って争ったのである。そのあいだ、オリエントは保護国への併合を余儀なくされ、オルロフ公国と合併した。またレグルスの野心に対抗し、カペラの攻撃から身を守るために、小さな2共和国を吸収した。

 政治的にオリエントの地位は今日でさえも不安定なままである。偽トーマス・マーリック(ハラス)の娘であるジェシカ・マーリックは、マーリックの名を帯びて以来、当人が紛争の中心となっている。彼女がマーリックの名を不当に盗んだと、みなが考えている。この名を主張する論拠は、真に同盟の総帥であるべき男に名誉を与えるためだった。本物のトーマス・マーリックは狂人で、新生同盟の下で名誉に値しないと、彼女は引用している。だが、大部分の者は、このような動きを、分裂した同盟諸国のすべてにマーリックの覇権を復活させる野望をむき出しにしたと見ている。




データ表:アンドゥリエン公国 The Duchy of Andurien
創設年:2791年
首都(都市、世界):ジョジョケン、アンドゥリエン
国家シンボル:紫の城の頂に止まる銀の鷲、黒地
位置(地球からの):地球のリムワード、カペラ大連邦国のアンチスピンワード、外側
総(居住)星系数:25
人口概算(3130年):712億人
政府:世襲制寡頭政治
統治者:アリ・ハンフリーズ女公
主な言語:英語(公用語)、イタリア語、標準中国語(マンダリン)
主な宗教:カソリック、儒教、
貨幣単位:アンドゥリエン・ドル(1ドル=0.47コムスタービル)


 数千に及ぶ外来種の鮮やかな色に驚かされるジョジョケンの植物園は、この首都(地球型惑星アンドゥリエンとアンドゥリエン公国全体の首都)の誇りである。ジョジョケン植物園は来園者に、都市の通りでは見つからない美と静寂を提供する。都市は画一的な建物と慢性的な交通渋滞で埋め尽くされている。元同盟の創設世界と同じように、アンドゥリエンは約600万人が住み、貿易と政府の中心になっている、にぎやかな大都市である。だが騒々しい都市とは対照的に、植物園の反対側にはハンフリーズの宮殿がそびえている。ハンフリーズはアンドゥリエンの世襲統治者――拡大解釈すれば公国全体の統治者である。


 アンドゥリエンは長期に渡って戦場になってきた。2791年に公国が創設される前でさえも、自由世界同盟とカペラ大連邦国の軍隊によって頻繁に争われてきた。そのような理由から、多くのアンドゥリエン人が外国人には目立って用心深く、特に支配しようとする者は軽蔑する。同盟の一員である間を通して、アンドゥリエン市民はこれを占領でしかないと考え、いらだった。彼らの指導者は疑いようもなく総帥と最も対立しており、分離主義的感情は深まる一方だった。

 3030年代、キャサリン・ハンフリーズ女公が最終的にこの傾向通りに行動した。脱退とカノープス統一政体との同盟を宣言し、カペラ大連邦国との戦争を始めたのである。アンドゥリエン危機はマーリック内戦後の31世紀における自由世界同盟に最大の挑戦をもたらした。反乱国を再奪取するため兵士を送らざるをえなかった。だが、テロリストがマーリック一族の会議場に爆弾を仕掛け、旧コムスターによる邪悪な計画への扉を開いた。トーマス・マーリック(総帥の後継者)を影武者にすり替えたのである。アンドゥリエンが大連邦国侵攻を無惨に終えたあとで、偽トーマス・マーリックはアンドゥリエン再統合戦役を成功させた。

 だが、敗北し、軍事力をはぎとられても、アンドゥリエン人は独立をあきらめず、聖戦が終わる数年間にチャンスをつかんだ。多くの同盟諸国とは違い、アンドゥリエンは同盟再興を考えてはいない。代わりに彼らは、モシロ、アーキペラゴといった同盟でも最小の近隣世界吸収に乗り出した。カペラやオリエント保護国に対する緩衝地帯を確保するためである。

 典型的なアンドゥリエン人は今日まで猛烈な独立心を保っており、マーリック=スチュアート共和国、スチュワート領、オリエント保護国による自由世界同盟の再生を絶対防がねばならないと信じている。同じく、カペラ人、カノープス人にも対抗せねばならない。市民と自由の間に割ってはいるものがあってはならず、公爵自身から下級階層の工員までが、なんとか勝ち取った独立を保つためには、どのような手段に訴えても構わないと思っている。






第38回:同盟の遺産――タリマンド=アビー、リム

データ表:タリマンド=アビー公国 Duchy of Tamarind-Abbey
創設年:3078年
首都(都市、世界):ザンジバル、タマリンド
国家シンボル:紫の鷲の抽象画、両翼に5つの星、緑地を背景に人の手が尾を握っている。鷲のかぎ爪はトウモロコシの茎をつかんでいる。
位置(地球からの):地球のアンチスピンワード、外側
総(居住)星系数:26
人口概算(3130年):750億人
政府:軍事政権
統治者:フォンテイン・マーリック公爵
主な言語:英語(公用語)、スペイン語
主な宗教:キリスト(カソリック)、ユダヤ
貨幣単位:ペソ(1ドラクマ=0.48コムスタービル)


 ザンジバルは文明のオアシスである。まるで、かつては緑茂る森林だった不毛地帯から突如広がったかのように見える。ザンジバル川にまたがるこの都市は、遠くから見るとサイクロンを上下逆さまにしたかのように見える。ビルが中央に近づくにつれて高くなっているのだ。だが、最も高い建物は実際にはアンテナに過ぎない。惑星の中央通信ハブの一部である……実用的であるのと同時にまるで彫刻のようなのだが。ストリートは交通が緩やかで、あちこちで市場が開かれている。しかし、各市場では、タマリンドの民兵たちがちらほらと見られる。彼らの任務には、この大都市の取り締まりが含まれている。住人のほとんどはそう考えていないが、よそ者は戒厳令下にあることの明白な証だと気づくのである。


 タリマンド=アビー公国は現実的に、タマリンド公国、アビー郡、その間に散在していた独立世界の融合体である。主要な加盟国(タマリンド含む)は議会制民主主義を採用しているのだが、全体としての国家は政治同盟というより軍事同盟で、現在、軍の戒厳令下にある。軍事独裁政権下にある、政治的に自由な世界のミックスが、公国を自由世界同盟のミニチュアとした。

 タマリンド=アビー同盟の目標は、辺境への存在感を維持し、特にライラの脅威に対するものでしかない。かつて同盟が崩壊するなか、ライラ軍が辺境に押し寄せた。これは元同盟の惑星を「安定化させる」ためのもので、惑星の多くは数世紀前にシュタイナーの旗をなびかせていた。この脅威に対応するため、タマリンドとアビーの同盟が明白に必要となった。かつて忠実な同盟加入国がライラ共和国に飲み込まれるのはまずかった。

 皮肉なことに、タマリンド=アビーの軍事指導者フォンテイン・マーリック公爵は、マーリック家の遺産を最も強行に主張するひとりなのである。ヤノスの下から二番目の子どもであるテレーゼ・ブレット=マーリック(末っ子は本物のトーマス・マーリック)の直系であるフォンテイン公爵は、前任者であるプロトン・ブレット=マーリックに習い、ブレットの姓を外して、マーリックの姓を使った。公爵はまた父と同じく総帥権を求めた。もっとも、この王国の外部にいる者――とくにマーリック家の者は――は、それを認識しようとはしないのだが。テレーゼ・ブレット=マーリックはヤノス・マーリックに勘当されていたのだ。

 今日、指導者がそれを熱望しているにもかかわらず、タマリンド=アビー公国は、レグルス、マーリック=スチュアート、オリエントの戦いと距離を置いている。だが、この王国はライラの攻撃的態度に対抗するため、マーリック=スチュアートと一時的な防衛協約を結んでいる。辺境の前線に沿って、公国は活発に拡大もしている。マリア帝国の脅威に対抗するためだ。この辺境の帝国主義的王国は3092年に元同盟世界を3つ奪っている。

 公国の市民は勤勉で生産的である。侵略者から自由を守るのに力を割く。だが、同様に自由世界同盟が復活することもまた熱望しており、元同盟国に再結集を呼びかけた、公爵の要求に賛成する政治集会は、数年前のバラバラな集まりから、公国市民内の大規模な政治的活動にまで達したのである




データ表:リム共和区 The Rim Commonality
創設年:2681年
首都(都市、世界):ズレトヴォ、レスノヴォ
国家シンボル:赤地に黄色の日輪、中央に鷲のシルエット
位置(地球からの):地球のリムワード=アンチスピンワード、外側
総(居住)星系数:15
人口概算(3130年):396億人
政府:封建独裁制(民主的傾向がある)
統治者:マイケル・センダー首相
主な言語:英語、ギリシャ語、マケドニア語、アラブ語
主な宗教:キリスト(正教会)、イスラム
貨幣単位:ディナール(1ディナール=0.31コムスタービル)


 ズレトヴォ(レスノヴォ首都)にはリム共和区の政府が位置しており、明らかに惑星最大の人口密集地帯で、角張った平凡なビルと屋根が尖った一軒家のスプロールに300万人以上が住んでいるということだ。だが、南部の空港の降下船はこの星でぬきんでて印象的な建物である。レスノヴォの巨星が暮れゆくなか、地平線にそびえている。しかしながら、地域経済の中心として金が入ってくるにもかかわらず、都市の大部分は地元の警察ですらほとんどパトロールしないスラムになっている。数世紀に及ぶ経済的窮乏と辺境からの襲撃は、結局、一夜にして消え去りはしなかったのだ。


 長きにわたって、レスノヴォと他のリム共和区の世界は、レグルス公国の一部であり、その後の2681年、マーリック家が押し進めた国民投票によって同盟国家から分離した。これは敵の力を抑えるために行われた政治キャンペーンの一環であった。それ以来、共和国と公国は実り多き貿易関係を楽しんでいる……もっとも、脱退して以来、その経済はレグルス時代の残骸に過ぎなくなっているのだが。

 だが、マーリック支配に反する起源と歴史を共有しているにもかかわらず、リム共和区は自由世界同盟時代の晩年と聖戦が降りかかったときには成長したのである。突如、全周囲を攻撃的な隣人に囲まれた共和区は、軍事行動のリスクを犯すよりもむしろ生き残るために、用心深いアプローチを試みた。アストロカジーの世界(長く海賊の避難地になっていた)は武力によらず、政治的手法で吸収された。他の受け入れ候補国は同盟政府の崩壊に続く内乱のうずにのみこまれていた。

 レグルスはその一方で友人・同盟国としての輝きをいくらか失った。かつてはリムの失われた親であると見なされていたレグルスの指導者は、外交よりも軍事行動を求め、すぐにレグルス自由州と元ギブソン公国を確保することができた。だが、彼らの目がリムに向くまでに、彼らは突如レグルスを親切でないなにかとして見ている人々に直面したのである。

 レグルスに対する絶えざる戦い(中間にあった独立世界を巡るもの)のなかで、そしてマリア・カノープスの襲撃者に対する防衛作戦のなかで、リムの軍事力は自身を保つ能力があると証明した(少なくとも当面のあいだは)。その一方で、平和的領土拡大政策は続いている。それは交易と資源を増加させているだけでなく、軍事力が常に正しいとは限らないことを身をもって証明している。

 自由世界同盟辺境地域の文化が混ざり合い、そこにアストロカジーが加わったことで、リム共和区の奇妙な文化が創り出された。世界のほとんどが民主的か無政府主義的であり、経済は物々交換か自由企業体制であり、多すぎるほどのサブカルチャーが互いの違いを見せつけている。防衛の必要性から相互受け入れした政治的・社会的思想のるつぼであり、民主主義の装飾(機能していなくても)を取り入れた独裁者によって統治されている。だが多くのリム市民は、自国を誇りに思っている。なぜなら、生き残る能力を持っており、隣国からの莫大な援助なしで繁栄し、暴力を必要としていないからだ。














自由世界同盟軍


保護領防衛団 PROTECTORATE GUARD

 連邦=共和国から国境保護領が解放されたことは、保護領防衛団とFWLMのあいだに出来ていた亀裂を大いに修復した。防衛団の部隊は30年近く故郷から亡命し、厳しい国境チェックの必要性から、家族や友人たちとの結びつきはひどく薄いものとなってしまっていた。部隊の士気は大きく低下した……3057年のゲレイロ作戦まで、総帥が本拠地を奪回するのを拒み、彼らを辛抱強く待たせていたときには、特にそうなっていた。それからの10年、防衛団は保護領世界との関係を復活させるのに尽力し、軍事再建法案があるにも関わらず(そしてFWLMからの多少の支援の下)、これらの惑星から新兵を集めるのに主眼を置いている。結果として、保護領防衛団の40パーセント前後が地元の入隊者で占められ、三番目の連隊――赤鉄衛団が3065年から実戦配備されている。

 だが防衛団の幸運は、二人の指揮官の長き不和に再び火を付けた。鋼鉄衛団の世襲指揮官ストラウド家と、保護領防衛団全体の指揮官ブライス=マーリック将軍である。ストラウド一族が主張するところによると、部外者はこの再統一の時代にふさわしくないとし、ブライス=マーリック将軍の能力と、この状況に対する過敏さ無視している。FWLMはブライス=マーリック異動に関する二度の請願を拒否している。防衛団内で将軍の権威が衰えていない一方、この亀裂は赤鉄衛団に問題を起こしている。隊員がストラウド派とブライス=マーリック派に分裂しているのだ。[長年の関係のおかげで、ストラウド一族は我らの提案を喜んで聞くと判明し、計画の理想的な協力者となるかもしれない。鉄衛団は我らの影響外にあるが、ここ最近の騒ぎの後で、鋼鉄衛団と赤鉄衛団は我らの都合のいい位置にいる。-C]


鉄衛団 Iron Guard

 保護領軍最古の鉄衛団は、総帥に固い忠誠を誓っており、軍事再編法案とその後の変化を心から受け入れた。ゲレイロ作戦での損耗はすぐに回復し、その後の平和な10年間で、この防衛団のメックと戦車は現代の標準レベルになった……もっともバトルアーマーとアップグレードされた気圏戦闘機はほとんどないのだが。ストラウド一族とブライス=マーリックの舌戦は、この連隊にほとんど影響を与えなかったが、シュタイナー家に対する憎悪――と連邦=共和国内戦の混乱につけ込むという嘆願――は、FWLMにいくらかの懸念を起こさせ、リャオ国境への配置換えとぼろぼろになった鉄衛団のゾスマ帰還に結びついた。


鋼鉄衛団 Steel Guard

 元は傭兵だった鋼鉄衛団は、アスンシオンでハーロック襲撃隊から被った損害が完全に回復していない。この惑星で、ザイオン救援に向かおうとした保護領の部隊を、カペラが拘束し、痛めつけたのである。ザイオンの件が解決したのと、ゾスマへの撤退で、さらにリャオ軍から攻撃を受けることはなくなった。ストラウド大佐はコメントを残していないが、部隊内の噂によると、鋼鉄衛団の再建が遅れているのは、ストラウド家の不忠への制裁として、FWLMが部隊の補給を厳しく制限しているからだという。我らの記録に、そのような妨害の存在は記されていない……ストラウド大佐の怠慢、あるいはストラウド家の者の干渉によるものと考えられる。[我が結社と鋼鉄衛団の秘密の関係は、この10年でかなり進展している。この同盟関係は、我らのパイロット数名が航空大隊で飛行するところから、戦車兵、メック戦士まで拡大している。この基幹人員的役割は減少したが、鋼鉄衛団とブレイク市民軍のつながりは強いまである。-C]


赤鉄衛団 Haematite Guard

 3年前には配備されていなかった、保護領防衛団の新部隊、赤鉄衛団は、保護領軍内でもっとも若く経験不足の兵士たちで構成されている。この連隊の装備は良いものである。新型機とフィールドアップグレードキットで強化された旧型機の組み合わせで、大半は姉妹連隊で不要になった品である。赤鉄衛団はまだアイデンティティを確立しておらず、未熟な兵士たちの間で頻発する口論で有名になっている。それぞれブライス=マーリック派、ストラウド派に分かれている、鉄衛団連隊、鋼鉄衛団連隊と違って、赤鉄衛団はどちらの派閥にも属さず、従って説得の対象となっている。鉄衛団のメンカリネン配備と、鋼鉄衛団のゾスマ帰還で、ストラウド家に有利な状況であるように見える。










アルバート・マーリック:小さな巨人

 自由世界史上、最も重要なリーダーの一人、"偉大"なアルバートは、最上級の演説家にして戦術家であった。といっても、小柄であることから戦場に出ることはなかった。キャロウェイVIのライジングスターコングロマリットで働いた12年で、彼はビジネスに精通し、一方でマーリック一族の天性が、軍事的才能を保証したのである。熱心な画家、美術収集家である彼は、文化の後援者の一人となり、彫刻、絵画から、バレー、太鼓まですべてに興味を持った。アルバートは多才であったが、このような様々な関心を抱いている他の人間たちと違って、いくつかを極めていた。

 2511年、アルバートは総帥権を継ぎ、同盟中にまたがる政治と統治という新たなる段階に押し出された。しかし彼のビジネス感覚と生まれ持った演説の能力は、彼が望んだ通りに行うのをほぼ可能としたのである。彼の低く澄んだ声は人々を魅了した。自分で演説の原稿を書くことはなかった――多くの政治家のように、スタッフに頼った――が、人の心を奪う即興の演説をぶつことができたのである。会議、面会に臨む際には、参加者たちのことを出来るだけ調べるのを務めとした。ゲストの最新のゴルフスコアや、子どものコンサートの成果を調べる彼の能力は、親密になる個人的な手段となったのである。彼はまた、素晴らしい言語能力を持っていた。ネイティブである英語に加えて、ヒンズー語、日本語、ドイツ語を流ちょうに話し、ウルドゥー語、マンダリン、フランス語もかなりのものであった。これが彼に、外国人との外交折衝をスムーズに行わせたのである。アルバートが、友人のイアン・キャメロンとともに星間連盟の秘密の考案者となったのは、おそらく驚くべきことではない。星間連盟を実現させるには、まさに彼の多才さが必要だったのである。だが、彼が日常的に中心的な役割を果たしたと認識されていたのは、自由世界だけである。同盟創設直後の彼の死は大きな悲劇であり、大王家の全指導者たちが、惑星マーリックで行われた葬儀に参列したのだった。

――ジャレッド・カーン著『偉大なるマーリックたち(2巻)』オリエント




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