indexに戻る
作成:2021/02/07
更新:2021/04/18

マッカロン装甲機兵団 3044 McCarron's Armored Cavalry



 氏族による中心領域侵攻の前、大部隊として有名な傭兵団、マッカロン装甲機兵団が恒星連邦への襲撃を行いました。
 この襲撃には、似た名前の二人の大佐が参加しています。一人は、後にマッカロン装甲機兵団の総司令官となるマーカス・バクスター。そして、ダヴィオンへの個人的な復讐に燃える第2連隊指揮官マーカス・バートンです。
 時は折しも、技術復興期。マーカス・バートン大佐の怨敵は、星間連盟強襲級メック、ディヴァステイターに乗っていたのです。




 INTRODUCTION

 狡猾で老練なアーチボルト・マッカロン指揮する恐るべき戦闘部隊、マッカロン装甲機兵団は、カペラ大連邦国で最高の傭兵部隊として、31世紀前半に輝かしい評価を享受した。マッカロンは、雇い主であるリャオ家のライバル、ダヴィオン家に愛情を抱くことがなかった。マーカス・バートン、マッカロンで最高のメック戦士の一人にして戦略の天才は、ダヴィオンに対する嫌悪を共有した。3015年、アーチー・マッカロンはマーカス・バートンをMAC第2連隊の指揮官に任命し、バートン連隊と名付けた。アーチーはマーカスに、中心領域で最大かつたちの悪い強襲連隊を作るよう命じた。マーカスはそれを実行し、次の30年間でバートン兵による敗北を免れた継承国家は存在していなかった。

 アーチー・マッカロンのダヴィオンに対する遺恨から、MAC最大の襲撃目標は恒星連邦の世界であり続けた。ダヴィオンによるリャオ世界への攻撃に対する報復として、3022年から3024年の間、マッカロンは部隊を率いてダヴィオン宙域を面白半分で飛び回り、ここで攻撃し、そこで盗み、あちこちでダヴィオンの鼻面を殴りつけた。マッカロンによる最初の目標のひとつが、カペラ国境の世界マーレットで、難攻不落のブルゴーニュ要塞が存在していた。バートン連隊は要塞を叩き、MACの辞書には「難攻不落」の言葉がないことを銀河に証明して見せた。第四次継承権戦争が終結した22年後、ダヴィオンは最先端の防衛設備でブルゴーニュを再建・改装し、マーカスとその兵士たちに事実上誘いをかけた。バートンは挑戦に応じた。それは単に新たな軍事的な偉業を達成するためだけではなかった……ひとつの個人的な理由があったのである。最近、レスター・J・オットー中将がマーレットの要塞指揮官に任命されており、バートンはオットー中将に異常なまでの憎しみを抱いていた。40年前、レスター・J・オットーはバートンの父に不名誉を与え、マーカスは復讐を誓っていたのである。彼はすでにチャンスを一度ふいにしており、それを繰り返すことはなかった。彼は全連隊を動かし、正面から全力で挑んだ。



マッカロン装甲機兵団 McCARRON'S ARMORED CAVALRY

 3039年戦争が終わった後の3044年、ハンス・ダヴィオンはマクシミリアン・リャオのカペラ大連邦国国境沿いで防衛を強化する決断を下した。彼はリャオ家が新たな戦役をスタートするのに備えて、既存の基地を新技術で改装することを求めていた。連邦=共和国はすでにドラコ連合から痛打を受けており、復活したロマーノ・リャオの軍隊(アンドゥリエン公国とカノープス統一政体との戦争で成功していた)が攻撃してくる可能性にハンス・ダヴィオンは直面した。また、恐るべきマッカロン装甲機兵団は、装備を星間連盟技術でアップグレードし、7個目の連隊を追加していると噂されていた。

 惑星マーレットのブルゴーニュ要塞は、改良された最初の施設となった。マーカス・バートンはかつてブルゴーニュを破壊したことがあり、ダヴィオンの工兵たちは「バートン耐性」を目標にしていた。彼らは城壁を再建して高くし、砲塔と砲座を改良、再配置した。

 最後に工兵たちは各種タイプのメック用トラップの実験を行った。これらの罠は、敵メックがダメージを与える前に捕らえるか破壊するものであった。マーレットのメック戦力も増強された。第四次継承権戦争の間、マーレット連隊は2個メック大隊と1個戦車大隊を持っていた。戦後、マーレット軍はカペラ境界域市民軍の完全な1個連隊となり、惑星守備隊として追加の1個大隊が肩を並べた。

 マーレットの新たな防衛に関する報告を読んだアーチー・マッカロン(マッカロン装甲機兵団指揮官)は、要塞とメック連隊の力をテストするためマーレット襲撃を決断した。マッカロンはバクスター・ブローラーズこと第6連隊をブルゴーニュ強襲に選び、バートンの仇敵レスター・J・オットーが防衛軍を指揮していることが野戦報告から明らかになると、バートンは戦術・野戦助言役として自ら同行したが、実際には復讐を求めていた。マーレットの偵察兵は、要塞とスタヴァル市駐屯地の双方に大量の部品輸送を見込むとの報告を上げてきた。バクスター・ブローラーズは、スタヴァル宇宙港を攻撃して、出来る限り奪い取ることになった。

 ブルゴーニュの指揮官レスター・J・オットー中将は、2991年、バートンの父トーマス・バートンをダヴィオン軍から辞職させたことがあった。トーマス・バートンとレスター・オットーは共に空席の将官職の候補だった。トーマス・バートンの戦闘記録が自分より上であることを知っていたオットーは、一族の影響力と政治的コネクションを使って昇進を勝ち取った。バートンは次の機会を待つように求められた。

 待てなかったトム・バートンは職を辞した。これに怒ったダヴィオン最高司令部は、トム・バートンのメックと軍事的資産を剥奪するように命じた。バートンがダヴィオンの軍事作戦について知っていたことは保安上のリスクとなる。ダヴィオンのエージェントは彼の動きを監視し、事実上、ダヴィオン宙域を離れるのは不可能となった。トム・バートンは持っているものをすべて売る必要に迫られ、2993年ついにシュタイナー宙域へと脱出した。彼はダヴィオンの裏切りから完全に立ち直ることはなく、打ちひしがれた男として死んだ。彼の息子、マーカスはダヴィオンへの復讐、オットーへの復讐を誓った。

 マーカス・バートンは注意深くプランを実行した。マーレット連隊がバクスター・ブローラーズと交戦しているあいだ、マーカスは麾下の連隊をスタニク橋の反対側に降下させた。オットー中将はこの攻撃を予見出来なかった。彼が知っていたのは遅かれ早かれマーカスが戦うためにやってくることだけだった。だが、スタヴァルでの部品輸送を守る必要があったことから、オットー中将は戦力を集めて旧敵にぶつけることが出来なかったのである。

 MACが星系に到着した際、降下船の数からかなりの軍勢と直面していることをオットー中将は知っていた。彼はマーレットCMM、マーレット特戦隊の第1大隊に都市の駐屯部隊を援護する命令を出した。バクスター・ブローラーズがスタヴァルに降下すると、オットーはバートンが要塞に殺到して挾撃すると見込んだ。

 降下から2日後、バクスター・ブローラーズがスタヴァルを攻撃した。敵軍が分散してないのを見て取ったオットーは、マーレット特戦隊の第2大隊にスタヴァルへの援軍を命じた。3日目、ブローラーズはスタヴァルに送り込まれた戦力すべてと交戦した。オットーはまだ軌道上にいる相当数の降下船に懸念の目を向けたが、一部は略奪品を持ち去るために空であることを知っていた。

 四日目、バクスター・ブローラーズはスタヴァルの外周部を突破し、宇宙港へと移動した。マーレット特戦隊は損失を報告したが、援軍を求めなかった。その日の午後の遅く、スタニク橋の向こうにメックが降下したことを偵察兵が報告した。スタニクの近くに1個連隊丸ごとが上陸したことを知ると、オットー中将は敵軍が川に到着する前に交戦するよう特戦隊の第3大隊に命じ、大隊指揮小隊は橋の防衛を増強した。

 オットーは要塞の守備隊に、ブルゴーニュの固定防衛円内に展開するよう命じた。それからスタヴァルにメッセージを送って、戦闘可能なメックは出来る限り速やかに要塞へと戻るように命令を出した。援軍が到着するまで守備隊が持ちこたえることを望んでいたのである。その夜の最初の戦闘報告は、オットーがすでに疑っていたことを確定させた。スタニック橋を包囲していたのは、マーカス・T・バートン大佐率いるMAC第2連隊、バートン連隊だったのである。







バートン連隊の歴史 3015〜3025年 HISTORY OF BARTON'S REGIMENT 3015-25

 3015年、アーチー・マッカロンは、マーカス・バートンをMAC第2連隊の指揮官とし、部隊名をバートン連隊に改名した。アーチーはマーカスに過去最大のたちが悪い強襲連隊を作るよう命じた。マーカスは成し遂げ、次の30年間、バートンの兵士たちによる敗北を真逃れた継承国家はなかった。

 バートンの最初の任務は、3015年、エルナスのマーリック家という形でやってきた。マーリックはエルナスの弾薬・戦車製造工場に襲撃を繰り返し、生産に深刻な遅延を引き起こしていた。バートン連隊は、マーリックの度重なる攻撃で相当な損害を被ったブラックウィンド槍機兵団を救った。

 マーリックは惑星オーレンセンのゴルンダック要塞を主力補給修理施設として使っていることをバートンは突き止めた。報告によると、2個中隊が惑星の守備を担当しているとのことだった……小規模な傭兵中隊ブラックハーツと第26ライラ防衛軍である。両隊はロバート・S・パターソン将軍の指揮下にあった。

 ゴルンダック要塞が作戦拠点であると知ったバートンは問題を根から断つ決断を下した。彼はオーレンセンに対して激しく素早い攻撃を仕掛け、重い損害を負う前に離脱する計画を立てた。1週間後、バートンは星系にジャンプしたが、完全な警戒態勢にあることに気がついた。

 バートンは戦いから逃げ出したことが一度たりともない。部下の指揮官たちと少し話した後、彼は降下船を切り離してオーレンセンに向かうよう命じた。正体不明の降下船に対する通常の警告をのぞいて、惑星は応じることがなかった。バートン軍が軌道を叩くと、戦闘機がスクランブルを始め、レパードCV1隻が地平線の向こうからやってきた。バートンはまたも計画を変えねばならなかった。空中降下を望んでいたのだが、気圏戦闘機に囲まれているとなると、そのような動きは自殺同然である。バートンは戦闘機と交戦するまで待たざるを得なかった。

 戦闘は1時間強にわたって続き、両陣営が大きな損害を受けた。マーリックの戦闘機は攻撃を打ち切るのを余儀なくされたが、バートンは自軍の1/3を失っていた。一時的な静けさの中で、バートンは降下船を着陸させて、メックを下ろした。それから降下船は軌道上に戻り、戦闘機に出来る限りの修理と再補給を行った。

 地上では素早く戦闘が展開した。バートンはマーリックのメックが進撃してくるのを目撃する前に、かろうじて防衛境界線を構築した。マーリックのメックは大半が軽量級の偵察機で、バートンの戦力を見積もってから自軍の戦線に戻るよう命令を受けていた。彼らは求めていたより多くを受け取った。バートンは高速重メックに前進を命じ、その一方使える戦闘機に機銃掃射させた。マーカス・バートンは自分で戦場を選ぶことを求め、よって残った全戦力に移動を命令した。偵察に送られたマーリックのメック5機のうち、戻ったのは2機だけで、マーリックは敵の戦力を測りかねた。マーリックが確信を持てなかったことは、バートンに計画の時間を与えた。

 マーカスは要塞から半日のところに戦力を上陸させた。周囲の地形――まばらな森と丘――は、マーリックが伏撃を仕掛けるのに最適であった。要塞指揮官は歩兵と戦車を使い、バートンの進撃を緩めるために何度か待ち伏せして、メック全機を最後の防衛線とし要塞に温存した。

 ゴルンダックは本物の要塞ではなく、要塞化された宇宙港で、砲塔を備えた防壁と戦車用陣地いくつかがあった。歩兵、戦車掩蔽壕は、城壁の外周部に位置する。ゴルンダックには間接射撃用に3門の間接砲――スナイパー2門とロングトム1門があった。バートン軍は、待ち伏せで若干の損失を受けたため、またロングトムの砲弾を避けるため、隊伍を乱して城塞に到着した。マーリック軍は直ちに攻撃を仕掛けた。

 5時間にわたり、両軍は城壁を越えて撃ち合った。マーリックは持てるものすべてをMACにぶつけ、バートンは部下たちを推し進めた。バートンのウォーハンマーは左胴を撃ち抜かれ、装甲はほとんど残っていなかったが、突撃を率いて城壁を突破した。ゴルンダックの残存戦力は森に逃げて、孤立した戦車、歩兵を残していった。その日が終わるまでに、バートン連隊は要塞を占拠し、降下船を呼び寄せることが出来た。生存者を点呼したところ、稼働するメックは2個大隊分しかなく、稼働しないメックの半数は回収も修理も出来ないことにバートンは気がついた。

 損害を被ったものの、バートンはリャオに勝者として戻り、マクシミリアンに英雄的な行動を讃えられた。リャオの最高司令部は口にすることこそなかったものの、バートンは動く前に計画を説明するべきだったと感じた。オーレンセンの戦いは、バートンとリャオ軍上層部の間で時折緊張が高まるパターンを確立したのである。

 アーチー・マッカロンは勝利に喜んだものの、マーカスが失ったメックの数には喜べなかった。バートンはメックを何機か鹵獲し、ゴルンダックで多量の部品を見つけていたが、連隊の戦力を充足させるには足りなかったのである。ゴルンダックはバートンが破壊した数多の要塞のひとつで、要塞落としたるバートンの伝説を生み出した。中心領域中の指揮官たちの多くが、バートンは固く守られた施設を攻撃し破壊するのを特に楽しんでいると信じている。



バートン連隊の帰還 BARTON'S REGIMENT RETURNS

 バートンは3016年に連隊の戦力を完全に戻したものの、雇い主であるリャオの命令で分割する羽目になった。ダヴィオンはリャオ世界への襲撃を強化しており、バートン連隊の大隊群は各星系に駐留する必要があったのである。

 3017〜3020年の絶え間ない襲撃の時期に、バートンの全連隊が激しい戦闘を繰り広げた。その最も有名な戦いはネクロモに駐屯していたウェイン・レッカーズが関わったものである。ダヴィオンは惑星上の作戦に関する情報を得るため、ネクロモに傭兵部隊スミッソン・チャイニーズ・バンディットを送り込んだ。バンディットはMACに関する話を聞いていたが、戦ったことはなく、よって何が起きるか考えもしなかった。ネクロモに降下してから、それを知ったのである。

 ネクロモは乾燥した平らな世界で、降下船修理用の巨大な設備を建設するのに理想的であった。だが、大きな施設は守りづらいものである……特に敵が全方角から攻撃可能な時には。レッカーズは早期警戒システムとして使うために歩兵部隊を戦車支援付きで配置し、敵より早くレッカーズのメックが到着できるようにした。

 バンディットは修理場を叩き、出来る限り損害を抑えて占領することを計画していた。彼らは陽動を試み、南方から小規模なメック群を送り込んだ。MACの観測手が小部隊を報告すると、ウェインは交戦のため第3中隊ナイト・オブ・デスを派遣した。

 ちょうど命令を出したときに、西側の観測手から無線が入った。少なくとも1個大隊規模の部隊がやってきたというのだ。ウェインは敵の策略を呪ったが出来ることはなかった。彼はメックを前に出し、部下たちに喚起した。「忘れるな、おまえらのメックを壊していいのは、やっこさんたち2機を落とした時だけだぞ」

 戦闘は数時間にわたって続いた。レッカーズの重メックはついにバンディットの足を止めた。バンディットは回り込もうとしたが、振動爆弾と戦車に突っ込んでしまった。

 ナイト・オブ・デスのメックが南側の戦闘から戻ると、流れはレッカーズの側に傾いた。足止めされるのを望まなかったバンディットは退却した。彼らはネクロモの防衛から何かを学び取り、よって襲撃は完全な敗北とはならなかった。ウェイン少佐はバンディットが去って行くことを確信するまで退却を追撃し、それから部隊に戻るよう命じた。

 3020年までに、バートンはダヴィオンの襲撃を守るのに飽き飽きしていた。彼はいつもの外交的やり方として話せる限りの全員に話しかけた。曰く、襲撃者が襲撃される番が来た――誰もそれをやらないのなら、自分がやる。



悲願 HEART'S DESIRE

 3022年のある日、アーチーはバートンをオフィスに呼んだ。

「なんでしょう?」、バートンは入室して座ると聞いた。

「きみに仕事を用意した」、アーチーは答えて、バートンを見据えた。

「前回、あなたは三週間もシーアンに足止めすると言いました」、バートンは無愛想に答えた。「今回はもう少しまともだといいんですがね」

「今回、私が望んでいるのは、ダヴィオンの要塞を吹っ飛ばすことだ。準備は出来てるんだろうな?」アーチーが答えた。バートンは椅子から立ちあがった。

「いったい何があったんです、アーチー? もちろん仕事はしますが、『我々』ってのはどういう意味です?」

「私も行くということだ。きみと同じくらいダヴィオンを愛しているのでね。楽しみをきみたちに全部やってしまうと思うかね?」

「思いませんよ。アーチー。あなたが計画を立ててるなんて全然知らなかったんです。いや、まったく」

「あったんだよ、マーカス。MACの第一ルールは計画した者が率いるということだ。もし誰かが撃たれるのならば、私が最初になる。後方から指揮する司令官はMACにいない」

「これからもいない」、バートンはうなずき同意した。


 ダヴィオンの攻撃に対処するため、リャオはマッカロン装甲機兵団に自由裁量権を与えたと、アーチーはバートンに説明した。アーチーはダヴィオンの各惑星に連続した報復襲撃を仕掛けると決断した。彼はマーレットのブルゴーニュ要塞攻撃にバートン連隊を選んだ。なぜなら、この要塞はカペラ境界域市民軍の主要再補給基地となっていたからだ。バートンはこの攻撃こそ彼の悲願であると宣言した。

 アーチーはバートンを短い紐でつないでおくことを望んでいた。もしバートンを離したら、ニューアヴァロンへの自殺攻撃になりうるものを計画するだろうことがわかっていたからだ。マーレットを叩くことで、リスクを取らず、死ぬこともなく、ダヴィオンにいくらかの痛みを与えてやるチャンスを友人に与えたのである。

 マーレットを叩く前に、バートン連隊はアーチーによるカシルの第42アヴァロン装甲機兵隊への攻撃を支援した。アーチーはアヴァロン装甲機兵隊のプールヴォ奇襲に対する報復を求めていた。ここでアーチーの親友、ジョーダン・ブラッシュが殺されたのだ。アヴァロン装甲機兵隊は数日間、巧みに追撃戦を繰り広げたが、MACが血を求めていることに気づくと、援軍が来るまで散り散りになった。追跡する時間をかけたくなかったアーチーとバートンは次の目標に移動した。



さらば、ブルゴーニュ GOODBYE, BOURGOGNE

 アーチーはブルゴーニュを攻撃することでダヴィオンの士気を低下させる計画を立てた。この要塞は優に100年以上攻撃されておらず、それが理由で第一目標となった。ブルゴーニュは、ダヴィオン=リャオ国境沿いにある5つの要塞の1つで、主にカペラ境界域市民軍の再補給基地として使われており、惑星の防衛拠点となっていた。

 バートンは要塞の近くに上陸したが、もしダヴィオン軍が攻撃したかったらわざわざやってこなければならないくらいには遠かった。MACがブルゴーニュに向けて進むと、ベルン川に架かる3マイルのスタニック橋に到達した。長く細い橋が意味するところは、バートンのメックが一列で進まねばならず、橋を渡り、向こう岸にいるときに、脆弱な目標となってしまうということだ。

 アーチーとマーカスはMACが渡河を始めると先頭に立った。彼らのメックは何事もなく橋を渡り終えた。アーチーとバートンがスタニック橋の対岸に着くとすぐに、ダヴィオンの1個中隊が砲火を開いた。両メックは大きな損害を負ったが、ダヴィオンの陣地に前進し続けた。

 MACが続々と渡河すると、ダヴィオン軍は後退した。これをしみったれた戦術と呼んで怒ったマーカスは、後退するメックを追いかけて仕留めるよう命じた。アーチーとバートンもこの狩りに加わった。バートンはダヴィオンのクルセイダーを破壊し、第2中隊指揮官を捕虜とした。

 要塞に反応する時間を与えたくなかったバートンは、部下たちに前進を命じた。MACがブルゴーニュから1マイル以内に来ると、ウィルソン・J・ウィンチェスター大佐に率いられたダヴィオンのメックが攻撃を仕掛けた。CMM軍が、歩兵と掩蔽壕に入った戦車からの火力支援を受け、前進するMACと交戦した。戦闘は1日近く続き、両陣営は傷ついたメックを交代で下げて、互いに押し合った。ついにバートン軍がCMMの戦線を突破し、要塞を攻撃した。部隊が分断されてしまうのを恐れたウィンチェスターは撤退を命じた。2日に及ぶ包囲戦で積み重なる損害に懸念を示したアーチーは、バートンに撤退を命令した。珍しく同意しなかったバートンは拒否して述べた。「あのろくでなしを壊すために来て、今それをしようとしているんです。投票しましょう」

 MACの慣習により、両指揮官は残るか引くか投じた。残って仕事を完遂するというのが多数派であった。アーチーはもう1日の直接強襲を許したが、それまでに城壁を破るのに失敗したら、全部隊が降下船に戻るよう命令した。バートンはこれを受けた。

 マーカスは持てるものをすべてブルゴーニュにぶつけ、午後の遅くまでに城壁を破った。最後のCMMとの残虐な戦いの後で、MACは要塞に残ったものを略奪し、後退した。翌朝までに、ブルゴーニュは燻る廃墟となっていた。

 アーチーがダヴィオン宙域を跳ね回るあいだ、バートン連隊はMACの他部隊とともに襲撃を行ったものの、マーレットでの損失があったことから主に支援的な役割を担った。バートンはベイテンカイトスの戦いに加わり、MACの整然とした退却の中で主要人物の一人となった。バートン連隊はまた、3023年にリャオ宙域に戻る前に、ミラ強襲を主導した。

 3025年までに、バートンは中心領域で最も恐れられる強襲連隊のひとつを作り上げていた。アーチーとバートンの両名は、バートンの評価が高まるにつれて、新たな敵が立ちはだかることを知っていた。アーチーはバートンに必要な支援をすべて与えると約束した。バートンの返答は単純で致命的なものだった。「強く叩いてやれば、なんであれ倒れるもんです。ただ二度と起き上がらないことを確実にする必要があるんです」







バートン連隊の歴史 3026〜3050年 HISTORY OF BARTON'S REGIMENT 3026-50

 3023年の後、数年間、バートンとMACの周囲は静かになった。それは主に、アーチーが各連隊の戦力を完全に充足せねばならなかったからである。そのあいだバートンはダヴィオンによる報復襲撃に何度か対処した。

 3027年までにバートンは落ち着きを失った。アーチーはバートンがやるべきことを探さねばならないと知っていた。さもなくば、バートンが自分で見つけてしまうだろう。他の継承国家は、リャオの手に新しい技術が渡らないようにするのに出来ることは何でもしていたので、アーチーは必要な装備と技術を手に入れるため、これまでより頻繁に自由市場(ブラックマーケット)へと足を運んだ。

 こういった自由市場のディーラーの一人、サイモン・キンケイドは、巨額の注文を動かしてシュタイナー家に捕まるリスクを冒すよりも、金を受け取って分散する決断を下した。このごまかしによって、アーチーは数百万Cビル分の必要な物資を手に入れることが出来なかった。彼はキンケイドの首も欲しがった。アーチーはヘスペラスIIにあるキンケイドのディファイアンス工業を訪問し、連隊が行ける限り他の工業地区にも行くようバートンに命じた。バートンはあちこち飛び回るという考えに反対した。なぜなら、降下船に戦利品を積み込むときが一番の隙となり得るからだ。それでもアーチーの計画には合意したのである。

 MACはヘスペラス星系を叩き、一直線に工業地帯へと向かった。彼らが降下地点に引き返して、鹵獲品を積み込んでいたときに、ウッドラフ・パターソン中佐が襲ってきた。中佐はブラックハーツにバートン隊の追撃を命じ、第26ライラ防衛軍で降下船を攻撃する準備を行った。

 ブラックハーツは主に長距離砲撃で攻撃した。バートンは部下に交戦せず応射するよう命令した。バートン軍が集結すると、彼は降下船を下ろすように命令した。バートンの気圏戦闘機はそれを阻むためにやってきた惑星の戦闘機と交戦した。バートンの降下船が上陸し、積み込みを始めた時、パターソンは第26ライラに攻撃を命じた。

 戦闘エリアとなった平原は、小さな丘と木々で分断されていた。ライラ防衛軍が攻撃すると、バートンは袖に隠した切り札を切った……上空防衛に加えてなかった3機のトランスグレッサー戦闘機が機銃掃射を始めたのである。3機の戦闘機が下りてくると、防衛側のメック戦士たちは恐怖の目で見上げた。ライラの戦闘機はトランスグレッサーとの交戦を試みたが成功しなかった。

 最初の掃射の後、パターソン中佐は味方メックに分散して引き返すように命じた。これによって、バートンは防衛境界線を構築し、運んでいた戦利品を落とすチャンスを得た。ブラックハーツもまた遮蔽に散っていった。トランスグレッサーはもう2回通過したが、二度目の最後には、ライラのメックたちが広まりすぎて、効果的に掃射することが出来なかった。この2回目の最後に、ライラのゴリアテのAC/20がコクピットに直撃しトランスグレッサー1機が失われた。バートンはもう1〜2機のメックを倒すためにこれ以上の損害を出すのを求めていなかった。

 ライラは戦場に1ダース近い破壊されたメック、大きな損傷を負ったメックを残していった。バートン側のメックはいくらか大きいのを食らっていたが、大半が稼働状態で残った。今回、バートンがメックをほとんど壊していないことにアーチーは喜び、驚いた。第四次継承権戦争が始まったのに伴い、アーチーとバートンには、バートンの幸運を祝う理由があった。



顎への痛撃 TAKING IT ON THE CHIN

 第四次継承権戦争が始まると、リャオはアーチーの4個連隊に惑星メンケへと向かうよう命じた。彼は連邦=共和国がメンケを攻撃するほど愚かなのか疑っていたが、アーチーは直属の第1連隊ナイトライダーズをバックアップなしで置いておくのを好まなかった。マクシミリアンの精神状態を巡ってリャオ指揮官たちが衝突し、カペラ大連邦国の防衛措置はさらに混乱した。

 バートンはダヴィオンを叩きのめすのを求めていたので、いつものように戦争を楽しみにした。歴史書はバートンが求めるものをすべて手にできなかったとしている。だが、歴史の記述ではよくあるように、著者たちは時折一方に肩入れするものである。記述自体は充分に正確であるダヴィオンの歴史は、すべての作戦行動を網羅するのに失敗している。とりわけ大連邦国の装甲軍に明るい光を投げかけることが出来ていないのだ。

 足りない記述には、バートン連隊と再補給を受けたダヴィオン傭兵クレーターコブラ、スクリーミングイーグルスの間の小競り合いがある。彼らはMACの降下船がサーナを離れるのを妨げようとした。今回、バートンは気圏戦闘機というとっておきの切り札を持っていなかった。戦闘機はすべてダヴィオン軍を忙しくさせるのに使っていたのだ。降下船に乗る時間を稼ぐため、バートンは敵の攻撃を押しとどめる志願者を募った。アーチーは志願したが、バートンと他の指揮官たちはそれをはねつけた。アーチーは抗弁したが、MACはリーダーを失うわけにはいかないので諦めた。

 バートンは完全な1個連隊に近いメックで逆襲を行い、マシンを放棄するのを余儀なくされたメック戦士を守るために、2個大隊の重装甲部隊と歩兵を送り込んだ。戦車は最後の防衛線になる準備を行い、歩兵は素早く振動地雷の地雷原を敷設した。バートンは麾下の部隊を前進させた。

 第5機兵連隊がMACに叩きのめされた後、イーグルとコブラの傭兵連合軍はMACを痛めつけるのを望んでいた。バートン軍が側面に進んでくると、彼らはこれをおびき寄せるための陽動と考えた。ダヴィオン傭兵が前進を続け、戦車の戦線にたどり着きかけたそのとき、戦闘の報告が殺到した。

 バートンの逆襲はコブラとイーグルの指揮官たちに衝撃を与えた……バートン軍は半数だったのだ。もしダヴィオン傭兵がMACの戦車に対処するため戦力を分割したら、降下船もまた攻撃出来るだろうが、バートンのオッズは上がるだろう。もしダヴィオン傭兵が戦力をひとつにまとめたなら、降下船に乗り込む時間が出来る。バートンはダヴィオンのメックを戦場ですべて倒し、1機たりとも逃さないと声高に宣言することで、この問題を解決した。

 数週間にわたってバートンの自慢を聞き、あまりに多くのメック戦士たちが彼らの手で死んだ後、コブラとイーグルの指揮官たちはいかなる犠牲を払おうともマーカス・バートンを殺すと決断していた。両部隊はバートン連隊と交戦し、戦車は後の掃討戦に残した。戦闘は2時間近くにわたって継続し、継承権戦争でも最も残虐なもののひとつとなった。

 最後には、バートンは戦力のおよそ半数を失い、戻ったメックの一部はそのまま部品箱行きであった。イーグルとコブラの連合軍はメックの2/3近くを失った。バートン自身は緒戦でダヴィオンの中軽量級メック相当数を倒していた。さらに、数機の重強襲級メックを撃墜したのである。バートンのメックは戦場を離れた最後の1機の内に入り、両腕を失い、左胴を撃ち抜かれ、前面よりも背面の装甲のほうが多い状態で降下船に戻った。

 連邦=共和国は戦いに勝ったが、MACはまだ立っていた。ダヴィオン軍は残った戦車と交戦しようとしたが、最初の数発を交わした後、後退して援軍を求めた。その間に、MACは残った戦車をすべて降下船に積み込み、離陸した。

 サーナでの損失はアーチーに取って打撃であり、再建の時間が必要なことに気がついた。メンケに戻ったあと、アーチーはロドニー・フィンとサミュエル・クリストバルに、それぞれナイトライダーズとバートン連隊の指揮を一時的に任せた。アーチーは戻ってくるまで、マーカス・バクスターにメンケの一時的な指揮をとらせた。

 アーチー、イアン・マクファーソン、バートンは兵員募集に走り、アーチーは継承国家内でほとんどすべての貿易企業・事務所との関係を築き始めた。アーチーは連邦=共和国になったものと戦ったが、ライラ共和国側においてのみ、仲介を通じて、ダヴィオンの技術を買うことが出来たのである。アーチーはまた、タウラス連合と連絡を取り、新たな貿易関係を通じてメックの供給協定を確保した。

 バートンとマクファーソンは、メック戦士雇用所と、バートンが持つソラリスのコンタクトを使って、募集を始めた。バートンはまたアリーナに戻った。彼の年齢は戦闘技術を鈍らせるものではなく、アリーナで傑出した戦士であるとの評判を再び取り戻した。3032年までに、バートンとイアンは失った人材を補充するのに足るだけ採用し、訓練した。アーチーは利益の上がる恒星間防衛企業MTC社を立ち上げ、MACのために補給物資と新技術を得たのみならず、他の組織に物資とサービスを売却した。この新企業を使って、アーチーはメンケにあるMACの設備を拡大し始めた。



ビジネス復帰 BACK TO BUSINESS

 自由世界同盟のアンドゥリエン軍がリャオ宙域を襲撃した際、単に弱点を探っているのだろうと多くが感じた。アンドゥリエンがベテルギウスを攻撃するまでに、アーチーはすでにバートンとイアンを送り込んでいた。両者の連隊を応援するためである。アーチーはメンケに残り、MTC社と共にビジネスを処理した。指揮に戻ったことを喜んだバートンは、サーナを失った後、MACの意気消沈した心を盛り上げるために、何度か敢闘することを求めていた。バートンの次席指揮官、パトリック・ハートはサーナで戦死し、よってバートンは新たな次席、エレイン・パークスを選び、自身や部下たちが過去に囚われることを拒絶した。

 ベテルギウスで包囲された部隊を救援するため、バートンは自軍を送り込んだ。アンドゥリエンは防衛陣地に立て籠もり、戦闘は激しいものとなった。強襲を続けた2週間後、バートンは突破し、アンドゥリエンを惑星から追いやった。MACの諜報報告は、惑星プリがアンドゥリエンによる侵略の主要再補給展開地点であると特定していた。イアン・マクファーソンとマーカス・バートンは双子の攻撃を決定した。マクファーソンはプリマスを叩いて、アンドゥリエンの補給庫と修理施設を片付け、そのあいだバートンはプリの主要施設を仕留めるのである。



本物の深みの中で IN REAL DEEP

 プリにたどり着いた際にバートンが発見したのは、ベテルギウスで戦ったばかりで修理中の敵部隊と、2個メック大隊からなる惑星守備隊だった。修理施設と再補給地点は広大で守りが堅かった。彼らを倒せたのなら、侵攻の背骨をへし折ることが出来るとバートンは知っていた。

 最初にバートンは補給基地を攻撃し、包囲を支えるのに充分な備蓄を盗み取った。それから、彼は修理施設へと向かった。アンドゥリエンは、かろうじて稼働するメックを使って、地獄のような3週間、バートンを抑え続けた。ついに、メックが尽きて、施設が破壊されるのを恐れたアンドゥリエン人は降伏した。バートンはプリから運べるだけのものを剥ぎ取り、満載状態でベテルギウスへと帰還した。バートンはまた、カノープス統一政体のカノープスIVへの襲撃を統制し、レオ・デーモンズ(第4連隊)に必要な戦闘経験を与えるため、自連隊を任務から外した。

 3037年、アーチーはMACの指揮を再びとり、6個目の連隊を結成した。マーカス・バクスターはそれまでの努力が認められて指揮権を与えられ、悪名高いバールームでの評判から、バクスター・ブローラーズの連隊名が付いた。アーチーはメンケのメック修理施設を拡大し始めた。

 バートンが鹵獲した装備を使って、アーチーは一度に修理出来るメックを増やした。さらに、メックを組み立てるために、修理ラインを拡大した。MTC社はMACに新技術を納品し、テックたちは仕事を始めた。アーチーはMACが新技術を自給自足し、リャオの小さな生産基盤から独立して、メックを製造することを夢見ていた。

 そのあいだ、バートンは退屈した。継承国家間が落ち着いて、戦いを探すのは難しくなった。また、リャオの政治情勢はパラノイア的に変わっていった。たいていの場合、ロマーノ・リャオはメンケを放っておいたが、MACの部隊は他の世界に駐屯して、ロマーノが「国家に対する犯罪」と称するものに対処した恐ろしい話を見聞きしたのである。

 バートンとMACは3039年戦争を歓迎した。連邦=共和国がクリタ家を攻撃した際、アーチーはシュタイナーとダヴィオンの世界に広範囲な襲撃を仕掛けた。他の部隊もダヴィオンの内輪もめを利用したが、最大限に利用したのはMACだった。

 クリタ軍がダヴィオンの世界を攻撃した際、MACはメンケ近くの世界を叩いた。こういった攻撃の大半は、高速の「ひったくって移動する」襲撃であった。アーチーはこれらの世界は補給物資を持っているか、足止めするだけの小規模な援軍を受けていると判断した。バートンはカシル、アルシオーネ、アディックスを襲撃し、それぞれかなりの規模のダヴィオン軍と交戦した。バートンは二度敵を撃破し、スペアパーツの大規模な備蓄をいくつか奪い取った。

 アディックスでは、エリートのダヴィオン近衛隊ともつれ合い、引き分けに持ち込んでから惑星を発った。この襲撃では戦利品を獲ることが出来なかった。MACは自分たちのために戦ったが、もしかしたらクリタを助けることになったのかもしれない……3043年、セオドア・クリタは、支配を求める敵と戦った同胞たるメック戦士への敬意を表して、アーチー・マッカロンに新品のチャージャーを贈ったのである。アーチーはこのチャージャーをバートンに与え、バートンは第3大隊ウェイン・レッカーズの指揮官、マーサ・キタガワに渡した。

 3044年、アーチーはダヴィオンが惑星マーレットなどカペラ国境の防衛を改善していると知った。マーレットは第四次継承権戦争時にダヴィオンがカペラ大連邦国から奪った世界であった。アーチーはダヴィオンを妨害するために、バクスター・ブローラーズを送り込むと決めたが、バートンは同行すると主張した……惑星ブリーフィングでレスター・オットー中将がマーレットの指揮をとっていると知ったのだ。アーチーは両連隊をマーレットに送ることに同意したが、バートンだけが実際に戦うだろうことはわかっていた。戦闘は短いものとなった。上陸から数時間以内に、バートンはスタニック橋を渡り、後に彼が「リング・オブ・デス」と呼ぶものを包囲していた。

 リングを突破した後、バートンは城壁を打ち倒し、守っていたマーレット・カペラ境界域市民軍の連隊指揮小隊と激しく戦った。この戦いの中で、ダヴィオン軍は星間連盟の計画に基づく新型メックを使用した。バートン軍に与えたダメージの量から、後にディバステイターと名付けられるこのメックにはオットー中将が乗っていた。それでもバートンは勝利を手にし、この50年で二度目となるブルゴーニュ要塞の攻略を成し遂げたのである。

 3050年までに、MACはまたもトラブルを探していた。マッカロン装甲機兵団は6個の現役連隊を持ち、メンケに7番目の訓練連隊があった。そのすべてが最新鋭の技術を装備し、使用したくてうずうずしていた。また、MACは母ロマーノよりずっと有能そうな新首相サン=ツー・リャオの治世に期待を抱いた。マーカス・バクスターはアーチー・マッカロンの後継者として育成され、そのあいだアーチーはMTC社の仕事に時間を費やした。

 バートンは、いつものように、次の戦いを楽しみにした。アーチーは嫌がられるのを知っていながら、バートンにさらなる指揮の権限を与え、イアンがMACの指揮官になったときには、第1連隊を指揮できるようにしたのである。











マーカス・バートン Marcus Barton

 マーカスは短い不幸な少年時代を過ごした。2988年、母がエマーソンの襲撃で殺された後、マーカスは私立学校で暮らし、父は任務で遠くにいた。

 2911年、トーマス・バートンは軍を辞した。マーカスは何か恐ろしいことが起きて、生活を崩壊させたとわかっていたが、父がそれを話すまでには長い時間が経っていた。

 マーカスはトップアリーナのメック戦士としてソラリスでスタートした。評判が高まると、傭兵、王家の指揮官たちが入隊を誘った。彼はダヴィオン部隊やダヴィオン宙域で雇用されている傭兵中隊だけを拒否した。

 3007年、アーチー・マッカロンがマーカスを探しに来た。マーカスは街のいかがわしい地域にあるバーでマーカスを見つけた。マーカスは傭兵指揮官たちについてどう感じているか正直なところをアーチーに伝えた。アーチー・マッカロンもその一人であった。アーチーはマーカスを殴り倒した。結果として発生した殴り合いで、両名ともに叩きのめされたが、マーカスは緩い指揮系統と指揮官に感銘を受けてMACに入隊した。

 3010年、バートンは小隊指揮官となり、彼の部隊は強襲小隊に昇格した。3015年、アーチーはバートンを連隊指揮官に昇進させ、部隊名をバートン連隊に改名した。彼はバートンに、中心領域で過去最悪のたちが悪い強襲連隊を作るように命じた。

 連隊指揮官となって以降、バートンはMACで最高の切れ者たちを揃えた戦術士官グループをひとつにまとめた。バートンは足で稼ぎ、新たな状況に対応するため素早く戦術を転換する。彼は定期的に部隊の決断を部下に任せ、幕僚たちを彼と同等と考える。

 大柄で声の大きいバートンは赤いバンダナを巻いた南軍帽をかぶり、背中にフルカラーのMACエンブレムをあしらった黒レザーのベストを着ている。レーザーピストルとナイフの名人としてよく知られていることから、戦いを挑まれることはめったにないが、グループ内で誰かが問題を起こした時は喜んで参加するだろう。

 現在、落ち着きのないバートンは良い目標を探している。彼のスタイルと積極性は、小規模な襲撃では耐えられず、アーチーにもっと大きな目標を探すのを余儀なくさせている。リャオ軍は他王家への大規模な無許可の襲撃について返答せねばならないのを好まないが、バートンは政治を気にしないのである。

 バートンはリャオ家に忠誠を誓っているが、あくまで雇用者として雇用主に対するだけのものである。バートンの積極的で愚直なやり方は連隊内に浸透し、その点から得た評価を誇りに思っている。出会いは荒っぽいものであったものの、アーチーはバートンのリーダーシップを認めている……たとえ修理費にいまだひるむとしてもだ。



ニン=ティ・リャオ Ning-Ti Liao

 実業家ミン・セ・リャオの息子、ニン=ティは王家の遠縁にあたり、四世代以上前の婚姻によってつながっている。一族は、アンダーマックス、レパルス、サックス星系で鉱業・農業企業を運営している。成人したら一族の財産を一部相続することを家族は望んでいたが、ニン=ティはそれを拒絶した。代わりに彼はメック戦士の訓練を受けて、偵察兵として小規模な傭兵中隊に入隊した。

 いくつかの小傭兵団で働いたあと、3035年、彼はアーチー・マッカロンに加わった。重メックの経験に注目したアーチーは、ニン=ティをバートン連隊に配属した。バートンは彼を第1中隊第3小隊に置き、アーチャーを与え、後にマローダーに変更した。

 ニン=ティはカノープス、アンドゥリエンとの戦争で才覚を見せつけた。彼のマローダーはアンドゥリエンのバトルマスターに突撃し、交戦を行った。この戦いは短く残虐なものであった。ニン=ティは左胴と右脚の装甲すべてを失ったが、バトルマスターの胴中央を貫いて、エンジンに命中させた。核融合エンジンの爆発のリスクを避けて、敵メック戦士はハッチから飛び出た。この戦闘の後、バートンはニン=ティを小隊指揮官に昇進させた。

 長年の間、ニン=ティは何度か家族と和解をしようとしたが、家族ははねつけた。MACの隊員として富と名声を得たにも関わらず、古傷は癒やせなかったのである。彼の怒りは戦場での働きに影響した……彼は大きな獲物を探して、より無謀になったのだ。最終的に、バートンがニン=ティを横に置き、今はMACが家族であり、以前のようなメック戦士に戻る必要があると語った。時間はかかったものの、ニン=ティはかつての情熱を取り戻し、3044年、連隊指揮小隊への昇進を果たした。優れたテックとして、彼は自機の修理を長時間行っている。

 戦場の外において、ニン=ティは仲間と一緒にいるか、プレンストンの地所を運営しているのが見られる。隣人や雇用者たちは、彼を公平で正直な男と見ている。彼の地所はほとんどが農地であるが、小規模な採掘もまた行われている。

 時折、バートンとアーチーは、状況に応じてニン=ティのビジネス、外交のスキルを求めることがある。彼の連隊が担当した軍事作戦についてリャオの最高司令部が疑問を持った場合、たいていニン=ティが説明を行う。たまに、MACが必要とする交換部品やその他の物資を得るため、ビジネスのコンタクトを使うことがある。



エレイン"ブレイズ"パークス ELAINE “BLAZE' PARKS

 三十代前半で長身の女性、ブレイズは赤毛で、口笛を吹かれる人物である――少なくともバートン連隊の次席指揮官を示す記章を見るまでは。ブレイズはダヴィオン襲撃戦役後の補充の一人として3025年にMACに入隊した。

 ブレイズはまず最初に、プリ強襲中のアンドゥリエン攻勢でメック戦士としての価値を証明した。最初のメックはサンダーボルトで、主に火力支援として使っていたが、近づくのを厭うことはなかった。プリ戦の後、ブレイズは小隊長に昇進した。より経験のある一部の戦士たちは不満を述べたが、腕で階級を勝ち取ったことを否定する者はなかった。

 3039年戦争の間、いつものダヴィオン宙域に対する無許可襲撃で、弾薬が誘爆し、バートンの次席であるパトリック・ハートが死亡した。二人は親友で、バートンはハートの死を重く受け取った。ブレイズはダヴィオンの援軍を押しとどめ、そのあいだMACの残りは降下船に駆け込んだ。いかに優秀な戦士かを目の当たりにし、そして彼女の素晴らしい支援記録を知っていたバートンは、ブレイズを次席とした。3040年、エレイン"ブレイズ"パークスは正式にバートン連隊の次席指揮官に昇進した。昇進して以来、ブレイズは連隊の補給を良い状態に保ち、バートンはいつも彼女に戦闘報酬を渡して、損害報告をアーチーに持っていってもらっている。

 戦場において、ブレイズはバートンを見事に支援し、側近の中では最大のメック撃墜数を守り続けている。バートンと違って、ブレイズは敵を評価するのに余分な時間を使い、勝利するのにちょっとした策略以上のものを使ったことはない。ブレイズは連隊のメックを良いコンディションに保つのに並々ならぬプライドを抱いており、必要な物資をほぼいつも手に入れている。彼女は人事評価に参加し、連隊内の個人的な問題に対処する。

 次席指揮官となって以来、ブレイズはバートンのことが好きになり、その日の終わりには一緒に時間を過ごすことがよくあった。ブレイズはまたMACの悪名高い課外活動にも参加しており、部外者がノーと言えない時には殴り合いに加わる。バートンのように、彼女はナイフの扱いに長け、手が早い。捨て鉢なときにはストリップショーを始め、だいたい殴り合いを引き起こす。MACにいないときは、一人で立ち去り、個人的なプロジェクトに取り組んでいる。

 ブレイズはロングヘアをそのままなびかせるか、後ろでひとつに結ぶ。階級章の入った黒のレザーベストを着て、ブルーのジーンズを履く。重要な時には強要されてドレスアップする。彼女はアンティークの銃と剣をコレクションしている。



ウィリアム・スタイルズ WILLIAM STYLES

 メンケの孤児であったウィリアムは偵察兵として13歳でMACに入隊した。覚えの早い彼は才能ある助手整備兵となった。18歳で彼はワスプを操縦し、話す全員から戦術の助言を受けた。ウィリーが正式にMACに入隊したのは20歳のことで、バートンの第3小隊に配属された。バートンはワスプの代替機として即座にオストロックを与えた。それは彼が軽メックを嫌っているからで、ウィリアムを好いているからであった。3027年、アーカーの戦いで実力を証明した後、ウィリアムは第2中隊の攻撃小隊に昇進した。バートンはウィリアムに鹵獲したドラゴンを与えた。新しいメックが初めてトラブルを引き起こした。オストロックならば敵メックの背後を取って、必要な時は逃げることが出来た。鈍足で長射程のドラゴンは敵が撃つ最初のターゲットとなってしまったのである。ウィリアムはそれから数度の戦闘でだらしないところを見せたが、マーカスと一緒に働いた後、戦術が向上した。3029年までに、彼はドラゴンの性能を最大限に引き出し、サーナでの激しい戦いに間に合ったのである。サーナでの最後の戦いは、バートン小隊への昇進をもたらした。この戦いの中で、ウィリアムはMACの降下船の防衛を志願した。バートンの次席が倒された後、ウィリアムはバートンの支援に乗り出し、自機より大きいメックと戦った。不利に臆することなく、ウィリアムはドラゴンが破壊されるまで戦ったのだった。

 メンケに戻ったあと、バートンはウィリアムを自分の指揮小隊に昇進させ、自ら宣誓を行った。ウィリアムは新しい配置と新しいウォーハンマーが気に入った。バートンの教えと、ドラゴンでの経験によって、ウィリアムはタフなメック戦士に成長した。戦場の外では、一人でいる。コンピューターが彼を魅了し、頻繁に新しいコンピューターゲームを購入している。助けが必要な時にはテックとしても働き、ブレイズのために走り回る。バートンはウィリアムが使い走りをすることに反対しているが、意見を受け入れるのに充分なほど敬意を抱いている。ウィリアムは自身やプロジェクトに注目されるのを嫌っており、彼を悩ます間抜けな人々に悪ふざけを仕掛けることで知られている。










ディヴァステイター DVS-2 DEVASTATOR
重量: 100 トン
シャーシ: スターリーグXU
パワープラント: ヴィラー300XL
巡航速度: 32.4 キロメートル/時
最高速度: 54 キロメートル/時
ジャンプジェット: なし
 ジャンプ能力: なし
装甲板: デュラレックス・ヘビー
武装:
 ポーランド・メインモデルA・ガウスライフル 2門
 ドーネルPPC 2門
 インテック中口径レーザー 4門
製造元: ノース=ストーム・バトルメック
 主要工場: ロクスリー
通信システム: ジョンストン・ワイドバンド
照準・追尾システム: レンダー・ピンポイント-HY






タイプ: ディヴァステイター
                            装備重量
内部中枢:                       10
エンジン:         300XL            9.5
    歩行:         3
    走行:         5
    ジャンプ:       0
放熱器:           14(28)            4
ジャイロ:                        3
操縦機器:                        3
装甲板:           296            18.5


        内部中枢    装甲
頭部:      3         9
胴中央:    31        47
胴中央(背面):          12
左/右胴:    21        30
左/右胴(背面):         10
左/右腕:    17        34
左/右脚:    21        40

武器・装備       配置    装備欄数    重量
ガウスライフル     左腕      7      15
弾薬(ガウス)16    左腕      2       2
ガウスライフル     右腕      7      15
弾薬(ガウス)16    右腕      2       2
PPC           左胴      3       7
PPC           右胴      3       7
中口径レーザー     左胴      1       1
中口径レーザー     右胴      1       1
中口径レーザー     頭部      1       1
中口径レーザー    胴中央(背面)   1       1




概要
 ディヴァステイターは復活した星間連盟機である。3023年、ハンス・ダヴィオンがタカシ・クリタを騙そうとして大失敗した際に、惑星ホフの星間連盟施設でダヴィオン軍が発見した開発計画であった。残念ながら、ダヴィオンは効率のいい高性能放熱器、ガウスライフル、エクストラライトエンジンの技術を持っておらず、この機種を使うことが出来なかった。グレイデス軍団のメモリーコアを解読しデータを入手して、第四次継承権戦争後にプロトタイプのディヴァステイター製造の研究が始まった。

 ケレンスキー将軍は、試作バトルメックのタイタンにあった欠点を改修すべく、独自の仕様で設計を行った。ケレンスキーが求めたのは、弾薬の誘爆やエネルギー兵器の熱でメックが破壊されるリスクなしに長距離で莫大なダメージを出すマシンであった。このディヴァステイターは近距離で戦う必要もあった。

 アマリス内戦の混乱によりディヴァステイター原型機の開発は遅れたが、一定数のプロトタイプが届いて地球強襲に間に合った。継承継戦争時にこのメックが存在したという記録はない。残ったプロトタイプはすべてエグゾダスで旅立ったと考えられる。



性能
 両腕に搭載された巨大なガウスライフルがすさまじい火力を生み出す。ガウスライフルの弾倉はふたつあり、ラッキーショット一発で装弾機構が壊れることはない。弾倉を支援するのが、左右の胴にある2門のPPCである。この組み合わせにより、540メートルからの一斉射で軽量級メックの大半を破壊するか行動不能とし、中量級メックに大打撃を与えることが可能である。

 中距離、近距離では、前面の中口径レーザー3門を使う。背面の中口径レーザー1門が背後からの脅威をカバーする。近づきすぎた敵は、バトルフィストと対面することになる。定格300のエクストラライトエンジンがこの破壊の権化に出力を与える。14基の高性能放熱器が冷却を行い、18.5トンのデュレックスヘビー装甲が身を守る。

 歩行速度毎時32.4km、走行速度毎時54kmとまずまずの機動性を持つディヴァステイターは、出来たら対面したくないマシンである。長距離砲撃を主眼に設計されているのだが、その巨体と副砲を鑑みると近距離でも同じく危険である。



戦史
 ブルゴーニュの戦い以前に発生したディヴァステイター唯一の実戦記録はホフで発見された。アマリス内戦終盤の地球攻略戦時に、第146親衛バトルメック連隊のピーター・セントアイヴス中尉は、アルバータ平原で第17アマリス竜機兵団の中重量級メック4機に取り囲まれた。セントアイヴス中尉は敵の方を向いて、後退し、ガウスライフルとPPCを撃った。2分以内に彼はアマリスのメック3機を破壊し、守勢から攻勢に移った。残った敵メックは降伏した。










壁にもう一蹴り



状況1: ブルゴーニュ要塞、3044年5月14日1600時
 城壁のセンサー範囲内に入ると、バートン大佐は麾下部隊の速度を落とした。神経ヘルメットの下で笑う。「それで、奴らは再建した」と自分自身に言う。「いいだろう。面白くなりそうだ」バートンは城壁をスキャンした。発見した弱いポイントは頑丈であろう。ダヴィオンは教訓から学んだのだ。それは前回の訪問時にバートンが教えてやったものだった。

 このあと、バートンが城壁を始末し、連邦=共和国からこの要塞を取り上げたら、バートンとオットー中将は過去と家族についてやりとりするはずだ。非常に短いやりとりになるだろう。

 「ビッグママからウォールバスターズへ」、バートンは吠えた。「聞け、坊やたち、こんな感じだ。打撃小隊は左へ。砲塔の砲手を忙しくさせろ。その間に俺の小隊が通路をまっすぐ行く。質問は?」

 「ひとつだけ、サー」コニーが答えた。打撃小隊長である。

 「何かあるのか、ストライク・ワン?」バートンは尋ねる。

 「将軍を捕まえたら、どうしたらいいんです?」

 「キャンディーをやって、奴の上に座るんだ」バートンが答える。

 「メックで? メックなしで?」コニーが答える。指揮チャンネルが笑いで包まれる。

 「静かにしろ、危険人物諸君」ブツブツとバートン。「俺が行くまで将軍にさわるんじゃない。わかったか?」、即座に笑いは収まった。「さあ、ケツを上げて、あの壁を蹴り倒してやるんだ」バートンは唸ってメックのフットペダルを踏み、壁に向かって歩き始めた。

 部隊が隊形を組むと、バートンは戦闘ボードをチェックした。ボードはグリーンを表示し、完動状態にあることを知らせる。バートンはPPCに火を入れ、射程に入りつつある砲塔へとクロスヘアを下げた。クロスヘアはロックオンの信号を発した。操縦席の右アームレストにある砲撃スイッチをぐっと押しこむ。メックのレーザーから空色のビームが3条放たれ、砲塔へと吸い込まれる。

 バートンはクロスヘアをもう一度城壁にあわせる。金色に脈動すると、3門のPPCを解き放つ。人工の稲妻に叩かれ、城壁はさらに穿たれる。10メートルの穴を開けてやった。戦場の周辺を確認して、バートンは笑った。4機の敵メックが炎上し、味方の損害はなかった。

 バートンはメックを歩かせ、いまだ燻ってる穴に向けた。瓦礫を見上げ、感心する。この壁は普通のメック部隊なら跳ね返すだろうが、しかしバートン連隊はまったくもって普通ではない。バートンは左のアームレストにあるジョイスティックを後ろに入れた。左腕の先端にあるバトルフィストが、メックの左側に動く。フィストが左胴の横まで来ると、バートンはジョイスティックを前に倒した。腕が突き出され、フィストが壁に叩き込まれる。メックが振動。バートンはもう三回殴り、壁が崩れ始めると後ろに下がった。

 「……アンド・ザ・ウォール・カムズ・タンブリング・ダウン♪」バートンは20世紀のロック曲を歌う。煙が晴れるとバートンは壁に120メートルの穴を見た。

 「ビッグママからウォールバスターズへ。後に続け!」バートンは吠えて、穴を通る。



結末
 壁が落ちると、オットー中将を捕まえる冒険の最後の障害が取り除かれた。第2中隊と肩を並べ、バートンは要塞へと急いだ。










オットー最期の戦い



状況1: ブルゴーニュ要塞内周、3044年5月14日1637時
 要塞の入り口を守る2km幅の城塞群は、MACの激しい攻撃で崩れ落ちた。連隊が切り込んでいく速度は、マーカス・バートンすら驚かせるものであった。内壁を突破すると、MACは停止したが、ごく短時間であった。部隊は指揮官の復讐心が乗り移ったかのごとく動いた。いまや、対象が手の届くところにあった。

 MACの気圏戦闘機がついにマーレットの防空を打ち破り、城塞の上層を倒壊させた。マーカス・バートンは指揮小隊と第1大隊のサンダーボルトと共に瓦礫の前の練兵場を行進した。バートンの声が、メックの外部スピーカーから轟いた。

「オットー、ここに来い! 前線に出ない腰抜けめ! もう城壁の後ろには隠れられないぞ」

 レスター・J・オットー中将は死が目の前にあると知っていた。新型のディヴァステイターは安心感を与えてはくれなかった……おのれの棺桶の中に座っているに過ぎなかったからである。それでも、彼は兵士であり、巣にはまったアナグマのように死んでいくのを拒否した。もし逝かねばならぬというのなら、マーカス・バートンも道連れにする。



防御側
 防御側は要塞司令官のレスター・J・オットー中将と、シナリオ7〜13で生き残ったマーレット特戦隊のメックである。

 レスター・J・オットー中将(砲術1、操縦2)ディヴァステイター



攻撃側
 攻撃側はマッカロン装甲機兵団のバートン連隊である。

指揮小隊
 マーカス・バートン(砲術0、操縦1)オウサム
 ウィリアム・スタイルス(砲術3、操縦4)ウォーハンマー6R
 エレイン"ブレイズ"パークス(砲術1、操縦2)アーチャー
 ニン=ティ・リャオ(砲術2、操縦3)ゼウス6S
 メック戦士(砲術2、操縦3)サンダーボルト5S



勝利条件
 敵を破壊せよ。



結末
 バートンはブラスターを手にディヴァステイターの残骸へとゆっくり歩いて行った。動くものはなかったが、やがてコクピットのハッチがきしみながら開く音が聞こえた。這い出ようとしたオットーは、ブラスターの二連バレルに対面した。

 オットーはどすんと座席に戻った。「それで、きみはとうとうやり遂げたわけだ」。そう言うと、ゆっくり手を横に下ろす。「なんで私を殺して、終わらせないのかね?」

 「それを考えないとでも思ったか?」バートンは答えた。「だが、おまえに死は生ぬるい。俺はおまえを叩きのめしただけじゃあない。おまえの要塞を吹き飛ばして、メックを破壊し、麾下部隊を壊滅させた。おまえは生涯それを忘れることなく生きるんだ」

 オットーはレーザーピストルを手で探った……勝ち誇っているバートンが気づかないことを望んで。

 「父はおまえの不正を忘れることなく生きねばならなかった。だからこれはおあいこだな。仕返ししてやった。父は復讐を達成し、俺は新しいおもちゃを手に入れる。どうもありがとう、レスター」

 遠くからバートンの部下たちが見ていた。バートンはきびすを返してディヴァステイターから遠ざかり、急に振り向いてブラスターを2発、コクピットに撃ち込んだ。この日から、バートンとオットーの間に何が起きたかを知るのはアーチー・マッカロンだけとなった。あえて聞こうとする者は誰もいなかった。




indexに戻る
inserted by FC2 system