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作成:2013/10/05
作成:2013/10/21

リーヴィング戦争・付記 The Wars of Reaving Supplemental



 "The Wars of Reaving Supplemental"は、氏族宙域で起きたリーヴィング戦争に関する補足説明です。時代設定は3090年。これ以降、氏族宙域に関する情報は存在していません。
 この時期の氏族は、侵攻派、守護派の代わりに、バスティオン(要塞派)、アグレッサー(攻撃派)というものに分かれています。前者はいつか中心領域侵攻の日が来るまで氏族を中心領域の汚れから守るというもの。後者は積極的に中心領域に侵攻して、どんな手段を使っても徹底的に攻撃するというものです。バスティオンが多数派ですが、リーヴィングを知らない若い戦士がアグレッサーとして中心領域侵攻を求めているようです。











ソサエティ

 科学者階級内部の秘密結社であるソサエティは、偉祖父の夢の腐敗の頂点であることが証明された。ソサエティの裏切りのいしずえとなったのは、我々の遺伝子崇拝と完璧の追求によって与えられた権力である。彼らのエゴは、3071年12月に大氏族長が行った血統のリーヴィング宣言を侮辱することとなった。ソサエティは氏族に関するすべてをひっくり返すために燃え上がったのだ。

 下位階級システムによって運営されるソサエティは、氏族の技術的進歩の大半を害した。今日の戦士にとって、唯一、見るべき価値があるものは、短い戦争のあいだ彼らが配備していた強力な兵器……トゥルーボーン戦士が持つ生来の戦闘能力に匹敵するべく製造されたものである。我々はソサエティの主張と目標を憎悪するが、優れた兵器を賞賛するのは戦士にとって自然なことだ。

 かつてのシブコたちがリバイバルから学んだように、新しいシブキンたちもリーヴィングから学ぶことだろう。



組織

 ソサエティの戦力はふたつの主なグループからなる。最大のものは、コヨーテ氏族の堕落した科学者たちである。コヨーテの戦力はたいてい通常の氏族ドクトリン、指揮系統で活動した。堕落したコヨーテたちは長い戦役の中でソサエティのアドバイザーたちを若干起用したが、大半は氏族部隊として保たれた。

 より小規模な氏族戦力は、プライム・システムと呼ばれるもので活動指定した。最小のソサエティ戦力は、「アン」と呼ばれ、ひとつのユニットを示している。1個アンは、バトルメック1機、バトルアーマー兵3名、歩兵小隊3個、プロトメック3機、気圏戦闘機3機、車両7両のいずれかである。この小規模編成は、厳密な範囲を持たせた特殊な任務以外で使われることは滅多になく、多くの場合、破壊工作か暗殺を実行する。

 一般的な編成の多くは、3個アンからなる1個"トレイ"である。1個"セプト"は7個アンで構成され、セプト指揮官とその下につく2個トレイで作られる。セプトを超える大規模な編成は確認されていない。

 通常、ソサエティは特定の任務に1、2個セプトを配備する。より一般的なのは、1個セプトないし最大4個の独立トレイが、堕落したコヨーテ軍を増強するというものである。これらのソサエティ・セプトはチャンスがあるときに攻撃を加えるか、コヨーテ指揮官が指示したところを強化する。彼らは氏族の戦士と直接働くことはなく、帯同するのみである。

 コヨーテでないソサエティの「戦士」たちは、各氏族のシブコ落第生から来ている。階級の神判を通った者は少数で、現役の戦士として仕えていた者はほとんどいない。プロトメックのパイロット(各種の航空宇宙フェノタイプから来ている)は、実戦を経験していない者、身体障害者、落伍者たちである。

 スモークジャガーのプロトメック・プロジェクトが3050年代に始まると、少数のソサエティ・セルが、有力な気圏戦闘機血統のいくつかを混ぜ合わせる実験を行い、アイアンホールドの人里離れたシブコ施設でパイロットたちを生み出した。リーヴィング戦役に参加したプロトメック・パイロットの平均年齢は17歳で、終戦時には多くが20歳前後となっていた。

 ソサエティ軍内でバトルアーマー部隊は貴重である。ソサエティのトレイ歩兵の多くは、エレメンタル・フェノタイプいくつかからなる。これらのトレイは戦闘においてバーサーカー・スタイルをとり、変異ウィルス処置がエレメンタル血統に同化しやすいことを示している。通常、これらの歩兵トレイは奪取した飛び地領の確保と、最初の防衛線に使われる。

 より数が多い車両トレイは、ソサエティの火力の大半を形成する。装備の多くは、ペンタゴンやそのほかの氏族世界にある各ブライアンキャッシュ、火砲基地にしまわれていた星間連盟時代の年代物である。通常、搭乗員たちは戦争と戦術の初歩だけを知っている下層階級の徴募兵である。中心領域の訓練校生よりも経験に欠ける搭乗員たちは、戦闘技術を欠いているが、数によってそれを十二分に補っている。1個車両アンは、1〜2両の重車両を中心に、中軽量級機種をそろえた構成である。車両の1個セプト全体が見られるのはあまりないことである。大概はアンかトレイで運用され、状況が許せば、歩兵、バトルメック、プロトメック・トレイと統合される。





盗賊階級 Bandit Caste

 暗黒階級内でも、より軍事的な盗賊たちは、バーロック氏族の再建とソサエティの登場のあと、直接的な脅威となった。かつては熱心なシブコと年老いたソラーマが戦う相手と考えられていた盗賊たちは、リーヴィングのあいだ、武装したワイルドカードとなった。

 これらグループの大半は氏族に近い部隊編成を使い続け、数個星隊か時折は星団隊規模の戦力で活動した。いくつかのより危険なグループのみが大きな編成を持っている。有名なのはジャガーで、暗黒階級とその人材による2個星団隊を指揮していた。

 盗賊グループが他の部隊と連携して動くことはまれである。バーロック氏族はその例外だ。この復活した(違法な)氏族は、通常、盗賊軍を弾よけ程度のものとして使った。このように、盗賊グループは、戦場の回収品や、氏族飛び地領から盗んだスクラップのような、寄せ集めの戦闘資材を配備した。コヨーテ氏族とソサエティが反乱を起こした後、放浪する盗賊たちは氏族装備を簡単に入手できるようになった。物資の流入によりいくつかのグループは自信を抱くようになり、氏族宇宙中で襲撃と捕獲が増える結果となった。氏族宙域ではじめて、盗賊軍が公に活動するようになったのだ。氏族を包む混沌に導かれ、彼らは機会があるごとに大手を振って攻撃を行った。盗賊指導者たちの多くは、3072年から3075年までを、自らの敵討ちと個人的な怨恨を晴らすために使った。

 突如として装備と物資が流入したにもかかわらず、盗賊たちは数多の戦闘で敗北する側にまわった。技術が強化されたことで勝ち目が上がった戦いもあったが、たいていの場合、勝利はより規律と統制が取れている氏族戦士に与えられたのである。

 スティールヴァイパー氏族の崩壊後、残った氏族はその目を暗黒階級に向けた。掃討作戦とハンターキラー任務は3080年後半、一般的なものとなった。武装した盗賊は氏族宇宙にほとんど残らなかった。ケレンスキー星団の隙間に入り込んだ者たちはどうにか生き延びている。見つかったら、瞬く間に殲滅されることは確実だ。

 以下は、この20年で活動した盗賊グループ4つの簡単な説明である。これらのスラットに栄光を与えるためではなく、氏族の影なる敵というものがどういうものかを見せるためである。





ジャガー Jaguar

 行方不明だったロッソー・ハウエルと後に判明したジャガーは、20年近くにわたって、氏族宙域の外縁を獲物としていた。スモークジャガー氏族にいた際、冷酷な指揮官だったハウエルは、サディスティックな獣性に身を任せ(堕落したアルコール中毒にも促され)、暴力と武力によって盗賊軍を率いた。ジャガーによる盗賊団は、元ジャガーの戦士と技術者を中心としており、3079年にゲントで終焉を迎えるまでに2個星団隊近い規模に成長していた。

 彼らの主力はブラックライオン級戦艦〈ストリーキング・ミスト〉である。修理されていなかったにも関わらず、盗賊たちに輸送と住居を提供した。ジャガーはまた、ウィドウメーカー氏族の商人階級貯蔵庫から盗んだ2隻のトランプ級航宙艦を使っていた。惑星への移動は、5隻の降下船と数隻の小船舶によってなされる。2機のビジゴス戦闘機が唯一の武装された護衛となる……両機は3073年のタニスでクラウドコブラの強襲により失われた。

 ジャガーの地上軍は、ジャガー自身のオムニメック指揮星隊と2個バトルメック星隊を中心にしている。残った戦力は、長年のブライアンキャッシュへの襲撃で得られた星間連盟時代の車両と3個エレメンタルポイントである。この集団の装備は、常に修理不足の状態にあり、かき集められた損傷のある部品ででっち上げられている。3072年、ソサエティはジャガーに2個セプト分のオステオン、セプティシミア・オムニメックを与えた。ジャガーがスタチャに連れてきた大勢の奴隷と引き替えである。

 通常のジャガー盗賊団の戦術は、地元の地形を大規模に使ったごまかしと欺瞞を含むものである。襲撃の数週間前に盗賊団が惑星に忍びより、待ち伏せポイント、後退ポイントを作り上げるのは珍しくない。襲撃は、計画から外れ、不測の事態に陥ったとき、ほとんどいつも災害に終わる。なぜなら計画は通常の氏族戦士(それに個別の氏族ドクトリン)がどのように反応するかを前提に組み立てられているからだ。想像力のある戦士は容易く盗賊の襲撃を狂わせることができるのだ。





ピアース Pierce

 この盗賊グループは、氏族の飛び地領に対して、いかなる大事件も暴力も起こしていないことが記録されている。実際に、ウォッチの大半は、このグループが存在することに気づいていなかった。3079年後半、ヘルゲートで活動するクラウドコブラ氏族のウォッチが彼らの活動に出くわし、一掃した。

 15名以下の盗賊たちは、ピアースという元科学者に率いられていた。かつてコヨーテ氏族の階級リーダーだったピアースは手の込んだ密輸ネットワークの黒幕となった。このグループは血液サンプル、肉体組織、臓器の売買を行っていた。これらの素材は、ヘルゲート、キリン、ルウム、タマロン、アルビオンの少なくとも5つのソサエティ・セルにとって魅惑的な商品であった。このネットワークは、リーヴィングの嵐によって引き裂かれるまでは数百を数えていた。ピアースは残されていたものをサルベージし、ヘルゲートに後退して、惑星の危険な環境と微々たる人口を利用して身を隠した。

 3077年、ピアースは活動を再開した。このグループは壊れたハンター級航宙艦を使って、離れたラグランジュポイントに入り、それからドロップシャトルを使って惑星の軌道上の運行パターンの中に入り込んだ。盗賊は上陸し、目標となる場所を捜索し――たいていは遺伝子研究所か、場合によっては血統礼拝堂、貯蔵庫――それから各種の遺伝子サンプル、臓器、死体さえも盗んでいく。リーヴィングの前、これらの組織は、パーツ、補給物資、奴隷と交換された。戦後、マーケットはほとんど干上がった……ピアースは3075年後のいつか、ヘルゲートの小規模なソサエティ遺伝子研究所とコネクションを確立した。この盗賊グループは、研究所にいたところを捕らえられ、クラウドコブラ氏族に抹殺された。ピアースは生き延びて尋問を受けたが、三日後、ついに複数箇所の内臓損傷に屈したのだった。





スラット The Surats

 適切な名前を持つこの盗賊グループは、小規模な飛び地領や、ケレンスキー星団とハンザ同盟の間にあるへんぴな深辺境の世界を獲物にすることで有名である。1世紀以上前に結成されたこのグループはネットワーク、奴隷売買、たまに軍事装備の倉庫として運営される。スラットは、たいてい海賊活動で得られた数隻の航宙艦を使用している(少なくとも2隻は3012年にダイアモンドシャークの商人倉庫から盗まれたものである)。

 スラットの軍事力の大半は、ぼろぼろの降下船数隻、小船舶数隻と、星間連盟貯蔵庫や小植民世界の戦場から漁りとった旧式の車両である。スラットは氏族軍との正面からの対決を避け、労働者階級や商人階級の輸送船を襲うか、氏族領域外辺部の小集団を襲うなど、飛び地領を餌食にすることが多い。スラットが集めた奴隷は、まとめられ、タニスに送られる。この奴隷たちは食料、薬品、スペアパーツのような基礎的な補給物資と交換される。一回の輸送に、30〜50名の奴隷が含まれるのが普通である。

 スラットは〈プリンツ・オイゲン〉から解放されたコンモドゥス・バン=ホーテンとコネクションを持った。バン=ホーテンが〈プリンツ・オイゲン〉を与えられると、スラットの多くが、このぼろぼろの戦艦と随行艦の船員となることを選んだ。その大部分が、3074年、クラウドコブラとスターアダーのタニス侵攻で死んだ。スラットのネットワーク解体は時間がかかったが、ストーライオン氏族、クラウドコブラ氏族、ゴリアテスコーピオン氏族の共同作業によって達成された。ペンタゴンワールドから150光年離れたところにある最後のスラット基地は3078年に破壊された。





ブラック・モブ Black Mob

 統一された戦力というより、かろうじて稼働する宇宙船による貧弱なネットワークである、ブラック・モブは、通常、暗黒階級輸送船の船員となり船長となっている。この集団は旧星間連盟の犯罪組織をモデルとしており、ほとんどのメンバーは独立して活動し、ブラック・モブにのみ忠誠を誓う。バーロックの再誕まで、ブラック・モブによる連携した襲撃はほとんどなかった。

 モブは少しでも宇宙への適正があるなら、だれでも仲間に入れる傾向がある。コブラ、ダイアモンドシャーク、コヨーテ、ウルフ、ゴーストベア、スノウレイヴン、ファイアマンドリルの気圏戦闘機フェノタイプの脱落者たちが、モブに居場所を見つけ、小型の星系内航行船から、バン=ホーテンの〈プリンツ・オイゲン〉まで、船舶の船員となっている。独立した気風と、広範囲にわたって旅をすることから、ブラック・モブはブラックマーケットと暗黒階級のニュースの信頼できるパイプとなっている。

 モブの指導部(もし10名の船長による委員会をそう呼ぶことができるなら)は、3072年、蘇ったバーロックに味方した。モブの大半は、後のリーヴィングによる浄化のなかで死んでいった。彼らが新たに獲得した航宙艦(それに戦艦数隻)がターゲットになったのである。タニス星系陥落以後、残ったわずかな船は目撃され次第に破壊されている。モブの生き残りがスペースレーンを行き交っていることは確実だが、もはや氏族宙域には存在しない……コブラとアダーの両ウォッチは、彼らが深辺境に逃げ込み、ハンザ同盟の近くでの海賊行為に移ったかもしれないと考えている。










クラウドコブラ氏族

 元々スコーピオンの本拠地だったロッシェを得てから数年かけて、クラウドコブラは惑星を改造してきた。この星系はいまやコブラの主要要塞であり、軍事物資と通常生産物のほぼ3/4を生産している。ケレンスキー星団で最大のプロトメック生産者であるコブラは、駆け出しの商業勢力として動き始めた。アダーのプロトメック、コヨーテのゲルマニウムと鉱物資源、コブラの気圏戦闘機と降下船の取引はすでに4年経過している。

 このような強力な貿易協定は、3088年、ストーンライオンの積極的な侵攻を引き起こし、ベアクロウの飛び地領すべてが奪われた。ライオンはサイ銀河隊の大半を入札し、惑星の厳しい地形数カ所で行われた一連の神判によって、コブラのオミクロン銀河隊を鮮やかに破った。ブリムストーンもまたアイソーラとなった。

 ライオンの見事な戦闘に感銘を受けたホリーラン・カルダーン氏族長は、ライオンが近年の戦争で放棄された飛び地領を洗浄し修繕するための資源を求めると、静かに支援した。労働者=科学者の共同作戦が、3089年、マーシャルのふたつの施設で再開した。彼らの成功によって、両氏族はミストリンクス・オムニメックとブロードソード級降下船の部品を限られた数量だけ得られるようになった。両氏族の科学者は、ストラト・ドミンゴのハージェル供給レベル維持に責任を持っている。ダイアモンドシャークが氏族宙域を逃れたあと、これは重要なものとなっている。


スターアダー氏族との関係 Clan Star Adder

 本拠宙域で最も強力な氏族、スターアダーと名目的な同盟関係にある一方で、コブラはスターアダーの政策から離れつつある。両アダー氏族長たちは、この挑戦を受け入れており、昨年、両者の間で何度か激しい所有の神判が行われた。3089年末、両氏族は、星間連盟時代の軍事オリンピックを彷彿させる、海軍コンテストを毎年行うことに合意した。ストラナメクティで行われた最初のコンテストは、コブラの〈カタクリズム〉が優勝の栄誉を得た。直後、アダーはスターアドミラル・ブレンダン・スヴォーロフを求めて、所有の神判を宣言した。彼がアダーに勝利したことで、コブラ内におけるリスターとしての地位が固まった。26歳の彼が次の氏族長になるという噂が出回っている。


コヨーテ氏族との関係 Clan Coyote

 コブラ指導部が、破滅的なリーヴィングを始めたコヨーテをいまだに非難していることは、秘密というわけではない。この紛争でコブラが利益を得たというのに、だ。原則的に、氏族長たちは族長会議の場でコヨーテに反対している。それにも関わらず、下層階級がコヨーテと取引することを制限はしていない。










コヨーテ氏族

 遺伝子系統、生産能力、政治的資源の深刻な不足に見舞われているコヨーテは、この15年間、ストイックに名誉の重荷を背負ってきた。瀕死だった3075年から三世代を経たいま、コヨーテはまだ弱いままだが、生き返ったことの兆候を示し始めている。

 科学研究チームと重工場をかけてコヨーテは激しい神判を行った。コヨーテに対する不信が続いていることから、他の3氏族は科学者関連の神判を意地悪く守った。結果、コヨーテは、使える血統が汚染から自由になったと宣言するのが最後となった……マクタイとジェリコがついにクリアされたのは、3089年後半だった。それまでの間に、コヨーテは大量のオムニメックとバトルアーマーを備蓄し、キリン造船所用の追加資源を得るため、交渉用の装備を商人に供給した。

 コヨーテは氏族内で輸送力が深刻に不足していることに注意した最初の氏族であった。持続的な侵攻を実行するためには、大量に航宙艦と降下船が必要だった――これらの資源は、リーヴィング戦争で致命的なレベルにまで低下していた。コヨーテは新しい船台を航宙艦造船に使い、キリンの地表に大規模な降下船工場を建設するため、充分な資源を神判で獲得した。数年後、コヨーテはケレンスキー宙域に少しずつ浸透し始めた輸送船の主な供給源となっている。

 3088年、コヨーテはエスコーピオン・インペリオ(スコーピオン帝国)のナバラを叩いた。この強襲は、当初はインペリオの防衛を測るための襲撃だったが、帝国軍がコヨーテ降下船の半数を捕獲すると、すぐ泥沼に入り込んだ。ナバラ荒野を通って2週間後、コヨーテは首都に対する大胆な攻撃に着手した。スターコーネル・ヨルゲス・ドリューズヴィッチはこの混乱を使って、降下船を取り戻し、撤退した。


習慣 Customs

 リーヴィング戦争の生存者たちを再生させるため、コヨーテ氏族評議会は全戦士に対し、新しい地位を得た直後に単独での霊的交感を行うよう命じた。集団での交感もまた奨励されている一方で、自分を省みるのが新たな時代においては重要であると、氏族長たちは感じたのである。

 同時に、コヨーテ評議会はスターコマンダー以上の戦士たち全員に『狩り』の実施を求めた。この狩りはキリンにおいてのみ行われる。キリンに生息するコヨーテは、タマロン種やストラナメクティ種よりも大型で凶暴なのだ。この難敵を狩ることは、新しい戦士の指導者を群れから引き離し、より高潔で、より洞察力を持たせる助けになるだろう。狩りに成功した者たちは、スターコマンダーより高い階級の候補としてマークされることになる。そして、失敗したのなら、それ以上の昇進は見送られる。

 3068年、ウィンソンの遺伝子血統が潔白となった後で、コヨーテ氏族評議会は、ウィンソンの血統を持つすべての戦士(父系でも母系でも)に対し、装備に金の縁取り、礼装に金モールをつけてもいいという許可を出した。その戦士が最後の創設者の遺伝子を引いていることを喚起させる名誉なのだ。最近、コヨーテ評議会は、ウィンソンの遺産を継ぐ他氏族の戦士が同じことをしてもかまわないと決めた。ちょっとしたことでしかないのだが、この動きは他3氏族との名誉あるつながりを保つ助けとなるのだろう。










スターアダー氏族

 ケレンスキー世界を支配するスターアダー氏族は、自らを導き手にして、氏族のすべてを守る者と考えている。表面上、そのような認識は真実である。しかし水面下では、アダーは不満に満ちている。若い世代は強制的な無活動に憤慨し、年上の戦士たちに戦闘を求めつつある。このいかがわしい不服の審判は、氏族評議会が厳格に取り締まったにもかかわらず噴出した。それが頂点に達したのは、3088年のこと。ホアードのカフェテリアでのいさかいをきっかけに、第1134ゲートキーパー星団隊の戦士たち数名が、第471スターアダーガードの1個星隊に対し、無許可の不服の審判を実行したのである。

 アダー氏族長たちは、これらの不満を持った戦士たちを何もない宇宙へのパトロールに送るのを渋った。20年前にユプシロン銀河隊が裏切ったからだ。そうする代わりに、氏族評議会は、武装したタスクフォースを偵察隊として遠くにあるハンザ同盟に送り込むことを選んだ。この作戦は、氏族の好戦的な戦士たちに初陣のチャンスを与え、同盟の防衛状況を評価することになるのだ。ワイアット・タラスコ副氏族長は氏族の前線兵力を再編成し、3088年の半ば、1個全海軍星隊と、ガンマ、エプシロン銀河隊の大多数を出発させた。

 タラスコの作戦は、かろうじて成功した。タスクフォースの大半が3089年後半に帰還したのである……第42アダー機士隊、第69竜機兵星団隊、〈ペガサス〉をのぞいて。引き替えに、アダーはハンザ国境沿いに、今後の長期的な侵攻のステージングエリアに役立つ世界を4つ発見した。

 タラスコ副氏族長は攻撃的な戦士たちに血の味を与えた一方で、バナチェック氏族長はより経験を積んだ戦士たちを別の目標に向けた……新しい遺伝子の獲得である。アダー、ライオンの科学者指導部は、ファイアマンドリル氏族が持っていた血統遺産の大半が汚されてないと確認した。族長会議が遺産をかけた神判を許可すると、アダーはいくつかのブラッドネームに挑戦した。3090年始めまでに、アダーはキャロル、ファラデー、クリーズなど、合計10のマンドリル・ブラッドネームを獲得した。


政治的現実 Political Realities

 最大の氏族であることは、政治的な場で最大のターゲットになることもまた意味している。バナチェック氏族長は政治の舞台でもうまくアダーを導き、目立たないようにして、重要なときにのみ相当な影響力を行使した。この数年間、氏族長の意識は、新たな視点、バスティオンを形作ることにある。守護派のイデオロギーを反転させたバナチェックは、「氏族は孤立と最大限の暴力を使って、中心領域の害毒から身を守らねばならない」というこの教義を信奉し続けている。3086年、スダ・ベイでクラウドコブラの戦艦〈ダマスカス〉を破壊したことは、氏族がバスティオンの理想に準じるという究極の一例である。

 バスティオンという教義が高まると共に、アグレッサーという形で対立候補が現れた。とくにアダーの若い戦士たちのあいだで流行っているアグレッサーは、暴力的な接触と敵の支配によって氏族の道を守ることを支持している。少数派なのだが、アグレッサーはコブラとアダーに反対する戦士たちの中で、ちょっとした勢いを持っている。










ストーンライオン氏族

 デルヴィラー氏族長による10年計画の半ばにあるストーンライオンは、氏族宙域のなかで着実に力と影響力を得つつある。いまだ批判的な者からスターアダー氏族の政治的なコマと考えられているライオンは、最初の15年間をアダーの影の中で過ごした。かつてのヘルズホース氏族とはまったく違う存在として、できるだけ早く自己を確立する必要を認識していたデルヴィラーは、氏族宙域中で各種の資源と物資をめぐる一連の神判を行った。残った氏族にとって、ライオンはいたるところにいて、すべてに関わっているように見えた。

 3088年までに、ライオンは強力な資源のネットワークを確立した。氏族宙域で一番商人階級が少ないライオンは、より規模の大きいコヨーテの商人といくつかの取引を行った。その結果が、両者を繁栄させ、相当な量の戦争物資を積み上げた提携関係である。デルヴィラー氏族長はこれをスターアダー氏族との取引材料として使った。

 彼らの存在が、故スタニスロフ・ンブタの政治的狡猾さに拠っていることを認識しているストーンライオン指導部は、依然として非常に重要な案件についてはアダーに従っている。だが、この10年、デルヴィラー氏族長はストーンライオンの政治的資本をゆっくりと強化している。そのように、ライオンは族長会議の場で地歩を固めており、いまや単なるアダーの操り人形でなく、独自の勢力と見られている。

 両者の間での神判は珍しいものである。最大の衝突は3087年に起きた。ダグダでの所有の神判で、ライオンのホーアン副氏族長が旗下の第31ガードを率い、アダーのタラスコ副氏族長と旗下のクェーサー親衛隊と戦ったのである。両氏族長は神判を、数個星隊がそれぞれの相手と戦うという、一連の小規模な競技に分割することに同意した。1週間後、ライオンはこの惑星にあるアダー飛び地領の半分を得た。ホーアン副氏族長は負傷したのだが、スターコーネル・カーティス・ホーカーによる地位を求める挑戦を阻むのに成功したのだった。


習慣と信条 Customs and Beliefs

 軍の戦力と資源集約に加えて、ストーンライオン氏族は元のイメージを完全に否定することなく振り払うことに成功した。なくなったのは、ブランディングの儀式や、ホースの装飾である。残った唯一の習慣は氏族軍にある……数個星団隊が部隊の識別信号を使い続けているのだ。

 3086年、氏族評議会は新しい儀式、「清めの道(Cleansing Path)」を承認した。清めの道はブラッドネーム保有者だけが実施可能である。清めの道で戦士が最初にするのは、それにふさわしい谷(できたらトカーシャのどこか)に赴くことだ。星隊から選んだ戦士4名(ブラッドネーム持ちである必要はない)を共に連れる参加者は、石を積んで儀式小屋を作り上げる。それが終わると、戦士は中で最低50時間の瞑想と浄化を行う。このとき口にするのは水だけだ。外に出ると、選ばれた戦士たちが、棘のついた細いイラクサの枝で裸の戦士を打つ。これはトカーシャのストーンライオンにしっぽで叩かれることを表現している。責め苦を行う全員を殴り倒した後で、この儀式は終了する。浄化された戦士は治療を受ける……傷の位置は、戦士がどれだけ真剣に過去を浄化したかを表すものである。

 打たれているあいだ、倒れることなく、声も出さなかった戦士は追加の名誉を与えられる。痛みと暴力に耐えたその者は、制服に金モールを受け取り、マシンにモールをペイントしてもよい。中でも特に耐えた者は、金モールに赤い糸を入れ、氏族への最大の献身を示すのである。

 デルヴィラー氏族長は、氏族の暴力的な起源を忘れないために清めの道を作り上げた。この儀式を最初に行ったのは氏族長であり、120時間近く儀式小屋の中に残った。この偉業は他の追随を許さないものである。打たれた傷の大半は胴体にあり、身体を隠さなかったことを示している。

 清めの道はスターキャプテンより上の階級に進んだすべての戦士に求められる。ブラッドネーム持ち戦士の3/4以上が清めの道を実行しており、ストーンライオン氏族と指導者の理想に対する献身のサインとなっている。










ハンザ同盟

 3070年代にはほとんど無視されていたハンザ同盟は、再び氏族ウォッチのセンサー範囲内に入った。3076年以前に、汚染されし氏族たちはほぼすべての情報部員を同盟内から引き上げさせたが、若干のダイアモンドシャーク工作員と商人が3081年に確認、抹殺された。我々は中心領域の各勢力がこの地域で諜報活動を行っていることを知っている。よって、3088年、我らのタスクフォースが到着したとき、ハンザの外部に解放されている世界3つを避けた。代わりに向かったのが、スピンワード辺境沿いのコルトレイク、デンデルモンデ、クノックヘイスト、イクセルである。ここ数十年の諜報活動で得た情報では、これらの世界が資源に富み、将来の作戦のため持続的な橋頭堡を築くのに最適な地点ということになっていた。

 全体的に見て、タスクフォースの任務は成功した。イクセルの軌道上で〈ペガサス〉が戦闘機の大群に沈められたのは打撃だったが、氏族の過失ではない。スターアドミラル・トーマス・コロンボは、手遅れになるまで、同盟の戦闘機がもたらす脅威を認識できなかったのである。不幸にも、このヴィンセントMk42と船員が代償を支払うこととなった。

 地域防衛隊(RDF)にはバトルメックと近代的な技術が少なかったにもかかわらず、技術の不足を数で補う以上のことをしてのけた。タラスコ副氏族長は報告書の中で、交戦の序盤はリバイバル作戦の戦闘報告に不気味なほど似通っていると述べている。幸運にも、我らが戦士たちは挑戦に対する準備ができている以上の状態にあり、立ち向かう旧式の車両と戦闘機を粉砕した。

 4つの世界を数ヶ月にわたって観測した後(RDFによる二度の反撃を撃退した後)、我がタスクフォースは氏族宙域に戻った。科学者階級、商人階級の両方が、4つの星系と惑星の詳細な観測データを与えられた。工場、製油所、飛び地領、守備陣地にふさわしい場所を探す計画が進んでいる。侵攻軍がやってくるまでに、詳細な長期作戦用のガイドを用意せねばならない。このような大規模な計画は、成功と氏族の未来を確保するために重要である。


状況

 ハンザ同盟は、現在、政治的に崩壊した状況にある。ヌエバ・カスティーリャを巻き込む数年前の事件によって、ハンザでは一連の反乱と権力闘争が続行中である。我々は、これら活動の大半が、インペリオのウォーリーダー、コナー・ルードによる秘密作戦によるものでないかと見ている。

 他の氏族ウォッチに対し、同盟の主要世界いくつかで独自の活動を行うことを推奨する。主な懸念は、もちろんのこと、中心領域の工作員、戦力とコンタクトをとっているかどうかである。そのような活動において、氏族の潔癖を保つために、究極的な措置をとることを推奨する。

 商人長ポルックスは、氏族評議会に対し、商人階級の者を同盟への作戦チームに参加させるよう提案している。評議会は、現在、この件について議論しているが、承認される可能性が高い。商人の専門知識を加えることはきわめて有益であろう。重要な情報は下層階級のルートを通して収集できるかもしれず、将来の失敗を避けるためにすべての道を検討するべきだろう。










エスコーピオン・インペリオ(スコーピオン帝国)

 ゴリアテスコーピオン氏族の生き残りがはびこる、元ヌエバ・カスティーリャの世界は、異議、疑念、歪められた氏族の名誉の混ざった大釜となっている。統合の提案は期待したほどうまくいってないが、住人たちの強欲な性質は公然とした暴力を最小限にまで抑えている――3088年にコヨーテ氏族が到着するまでは。

 コヨーテのナバラ襲撃は失敗に終わったが、二つ目の作戦には成功しており、予期していなかった結果をもたらした。首都への強襲のあいだ、氏族は数名のウォッチ工作員を潜入させたのだ。意義と対立の種をまく任務を与えられたコヨーテの工作員たちは、協力者たちにウマイヤが名無し氏族の系譜を引いていると耳打ちし始めた。この噂作戦は広まり、インペリオの氏族戦士の耳に届き、最後にはウォーリーダーたちにまで達したのである。

 長い疑いと名無し氏族に対する憎しみは、ウマイヤと元士族戦士のあいだの関係を悪いものとし始めた。少なくともふたつの星系で、無認可の遺伝子調査が大規模な暴力に結びついた。ウマイヤ市民数百名の死は、インペリオ、カスティーリャ兵、ウマイヤ兵のあいだで何度かの衝突を生み出した。


状況

 インペリオの繊細なバランスは、コヨーテ・ウォッチの作戦成功で著しく損なわれた。暴力は抑えられているが、ウマイヤの不信と疑念は膨らむ一方である。シーカー・グループのひとつが問題の真実を探る任務を与えられたが、これまでのところほとんど前進はしていない。ウマイヤ人たちは労働者階級たちよりさえも低い地位に追いやられていることから、暴力的な反乱が始まるまでは時間の問題だろう。

 コブラとライオンはインペリオ内での受動的な諜報活動を開始した。不和が再び爆発したら、両氏族は優位を得ることになるだろう。カスティーリャの世界と人口を加えることは、我々の長期侵攻計画に対し歓迎するべき資源を与えるだろう。










氏族の戦略と戦術

 かつて氏族同士の戦争は、常に戦略と精度を示すものであった。リーヴィングは氏族が理想とする教義と原則を変えた。我々の目的と、創設者の道への献身を再定義するには時間がかかるので、各氏族がいかに戦争の名誉を遂行するかに焦点をあてる。

 以下は、各氏族の戦闘教義が、破滅的なリーヴィング以降に、どう変わったかである。各氏族のアプローチを知ることは、入札のプロセスを支配する重要な要素であり、戦士と氏族に偉大なる名誉を勝ち取らせることになるだろう。


クラウドコブラ氏族
 頻繁にゼルブリゲンを受け入れてきたにもかかわらず、リーヴィングでクラウドコブラ氏族の地上軍は手ひどくたたきのめされた。同じく激しく戦いで、コブラの手には他氏族より少ないメック工場が残され、生産できない機種の補給物資と交換部品を交換するために取引・神判を余儀なくされている。特にコブラのメック軍は、生産可能な機種を好んでいるが、まだ少数の他機種を配備している。

 もっと上手く戦力を使うため、カルダーン氏族長は再編成を行い、各銀河隊に最低1個の、メック、バトルアーマー/プロトメック、気圏戦闘機からなる星団隊を配備した。気圏戦闘機戦力と工場が多いことから、コブラはよくセーフコンを拒絶し、宇宙空間か飛び地領上空で上陸をかけた神判を宣言する。この戦術によって、ひとつの世界(もしくは共有世界の大陸)に数個星団隊の地上戦力を置くだけで済むのである。


コヨーテ氏族
 ソサエティの離脱と浄化の神判で氏族軍が崩壊したことから、コヨーテは大規模な領地を確保するために小規模な飛び地領の多くを(工場さえも)手放した。結果、一般的なオムニメックの多くを入手できなくなった。幸運にも、新たに獲得した生産拠点によって、不足のいくらかを補うことができた。プロトメック・プログラムを放棄したコヨーテは、プロトメック工場を他氏族に引き渡し、科学者グループ、追加シブコ、そのほかの物資を得た。

 氏族軍が小規模なことから、コヨーテは他の氏族より多い割合でオムニメックを配備する一方、未来のシブコのために余ったメックを備蓄している。コヨーテはいまだ主力に大型で鈍足のメックを使うのを好んでいる。不幸にも、もうプロトメック(偵察、妨害任務によく使われる)を使ってないことから、高速で機動力のある軽メックと気圏戦闘機を偵察任務に使う。


スターアダー氏族
 リーヴィングの前に最も強い氏族のひとつだったことから、スターアダー氏族は最大の氏族軍、海軍、領土を持つことになった。新しいバスティオン哲学と共に、スターアダーは喜んで「氏族の道の守護者」としての役割に足を踏み入れた。自身を氏族の名誉のモデルと考えるアダーは、厳密にゼルブリゲンに準拠して戦うことがよくある。例外は氏族でない敵と戦うときである。戦士たちの大半は、氏族相手にデズグラ戦術を使うよりも、名誉を保ったまま敗北するだろう。

 氏族の掟を厳格に適用する上で、アダーのメックの大半が、敵に素早くダメージを与えて片付けることのできるような、各種の兵器を搭載している。スターアダーの指導部(そして戦士の大多数)は、速度と火力を併せ持った重強襲級マシンを好む。唯一の例外は軽メックで、火力に重点を置くことが多い。


ストーンライオン氏族
 初期のストーンライオン氏族は、自前の工場をほとんど持っておらず、主にスターアダーとヘルズホースのマシンを混ぜて使っていた。デルヴィラー氏族長の再建プログラムの下で、ライオンは機会があるならいつでもどこでもメックを入手し、よってそのメック戦力は各機種の混成となった。未来を確保するために、ストーンライオン氏族は追加の工場飛び地を確保した。使える資源はほとんどなかったので、デルヴィラー氏族長は商人、科学者、星団隊指揮官たちに、生存性、火力、低生産コストを最大限に持つオムニについて考えるよう命じた。エクストラライトエンジンの代わりに通常型の核融合エンジンを使うべきだとストーンライオンは決定した。商人階級はこの計画なら強い氏族との不必要な神判を避ける助けになるとほのめかした。

 この推薦に従い、ストーンライオンはキングフィッシャー、ストッピングホーク、ブラッドカイトを生産可能な工場を探し求め、捕獲した。さらに、これらの機種と似たメックに対する所有の神判を行い、生産ラインが最適な生産を行うまでの間に合わせとして使った。この中で驚くべき動きとして、ストーンライオンはほぼ破壊されていたストラナメクティのセプテシミア工場を手にした。いくらかの研究と討論の後、ライオンは工場の一部を再建し、回収したセプテシミアを修理するのに使う部品と物資を生産した。工場全体を再建する計画が進められている。族長会議はこのマシンを氏族軍で使う許可を出した。

 ほとんどの場合、ストーンライオンは機動部隊を好む。これによって、軽い敵を追いかける力と、重量のある重い敵とどの距離で戦うかの選択肢が与えられるのである。ヘルズホースのように、ストーンライオンは諸兵科連合戦術を好み、多用する。ノヴァCEWSシステムが選ばれた車両ポイントに搭載することが可能となったなら、ライオンの二線級戦力がより危険になるであろうことをアナリストは予想している。





流血の道具

 リーヴィングが終結し、有害な科学者階級が氏族から粛正された後で必然的にあがった問題は、ソサエティが使っていた兵器や物資をどうするかについてだった。氏族人の多くが、ソサエティの技術を一方的に抹消することを求めた……氏族内にいつまでもぬぐえぬ烙印が残されていたからだ。従って、族長会議は、回収したすべてのソサエティ技術の使用を一時的に禁止することに投票で決めた。

 この問題は、3081年3月に再び持ち出された……ワイアット・タラスコ副氏族長が再考の動議を提案したのである。論戦は白熱したものとなり、氏族の戦争ドクトリンの根底と、ソサエティ装備の持つ理論的な不安定性について、議論が駆け巡った。各氏族は発見された装備をすべて提示した。最大のものは、ストーンライオンが奪ったストラナメクティ北極奥地のセプテシミア工場だ。

 一連の議論の後、族長会議はこれに関する投票を行った。氏族で最高位の統治機構がこのような世俗的な問題で投票を行うのは珍しいが、氏族長たちの多くは未来の世代に関わることだと認識していた。そうして、残ったセファラス・オムニメックを破壊し、部品取りのために解体することが決まった(確認されていたセファラスの工場ふたつは、リーヴィング中に破壊されていた)。残ったわずかなオステオンは残され、ストラナメクティの倉庫に戻された。この安全な場所で、リバースエンジニアリングのために、ごく限られた各氏族の戦士・科学者階級所属者にのみ開示されることとなる。この機種は確かな性能を持つ一方で、資源集約的な技術と、CWESの広範囲の統合によって、ただちに改造するのは難しくなっていた。なので、オステオンは、現在、氏族軍に存在しない。

 セプテシミアは、逆に、氏族軍で広く受け入れられている。だが、受け入れられている型は、違法な技術を積んでいない。ソサエティはこのオムニメックの工場に、新しい製造技術を導入していた。全4氏族の科学者たちは、この機構を理解、複製するため、着実に仕事を進めている。来年、ブレイクスルーがあることが予期されている。

 [最近、セプテシミア(敗血症)の名前を変えることについて白熱した議論があった。名称変更の理由については議論の余地がない(人気のある改名候補はヴォイド、コデックス)一方で、デルヴィラー氏族長は説得力のある意見を出している。「セプテシミアの名前と外見を使い続けることは、我らがくぐり抜けたあの試練を常に思い起こさせることになるだろう」と語る。「これは未来の世代が決める問題ではない。我らは氏族として、これを重要でないこととして扱うべきではない。さしあたり、忘れ得ぬものとして――そして警告として残されるべきだ」デルヴィラー氏族長の動議は5対3で通った。-JR]

 プロトメック(一部からは求められ、一部からは毛嫌いされている戦術兵器)は、問題として残った。全4氏族がボガードを一方的に避けているが、ソサエティの研究所からもたらされたプロトメック技術と機種の大半はいくらか受け入れられているのである。3095年時点で、コヨーテはまだプロトメックの配備を禁止しており、指導者たちはいま問題を蒸し返したくないことを認めている。

 混沌としたリーヴィングの最中に登場した新型兵器システムのうち、ノヴァCEWSだけがオムニメック、バトルメックへの搭載、研究が禁止されている。回収されたこのシステムのうちほとんどをストーンライオンが神判で勝ち取った。これを製造しようとする氏族はない。最近、ストーンライオンは、このシステムを二線級、ソラーマ車両に組み込み実験するという許可を族長会議から受けた。族長会議の出したひとつの条件は、非氏族の敵に対してのみ使うというものである。

 遺伝子病、変異ウィルス処置、そのほかのソサエティ兵器使用のすべては、族長会議によって禁止された。リーヴィングの後に発見されたデータはすぐさま削除、破壊された。これらを所有している者は、即座に殲滅の神判が下される。




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