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作成:2003/06/05
更新:2004/10/27

所有戦争 Wars of Possession



 3060年、新生SLDFのハントレス強襲と大拒絶で、スモークジャガーは最後の一兵まで滅びました(若干の残党は残っていますが)。残された領地を巡って、今度は他の氏族同士が争いを始めます。
 classicbattletech.com、その他より。






 ノヴァキャットが氏族宙域からの撤退を準備する一方で、他の氏族はスモークジャガーの遺産に対する所有の神判を行った。吸収の権利を主張した氏族はなく、また神判を戦えるジャガー軍がないなかで、挑戦は政治的、法律的に身動きが取れなくなり、結局、苦々しい軍事的衝突が引き起こされた。これらの挑戦はほとんどが確定せず、第二の神判が新たな所有者に対して現在進行中である。神判の成功が新たな拒絶の神判をもたらし、この神判のサイクルは終わりそうにない。始まってから二年を経た現在でさえも、氏族世界のいくつかで神判が猛威を振るっている。

 ファイアマンドリルとアイスヘリオンは、アトレウスのスモークジャガーの資産を巡る神判に束縛されたままで、同じようにウルフとジェイドファルコンがエデンで、アイスヘリオン、コヨーテがロンデルホルムでそうなっている。キルケでは、スノウレイヴンがウルフと対決した(ノヴァキャットの領土がさらなる報奨となっている)。砲火が交わされることなくトランキルの世界がウルフの手に落ちると、キリンでも大規模な交戦を予期していたヘルズホースの戦士たちが失望することになった。ヴィントン(ジャガーとダイアモンドシャーク氏族のあいだで長らく争われていた)は、すぐこの商業氏族の手に落ちた。ホメロス(クラウドコブラ氏族の本拠地)では、この氏族とスティールヴァイパーがジャガーの飛び地で衝突した。だが、スティールヴァイパーは強力なコブラ軍に立ち向かえなかった。コブラがスノウレイヴン軍の上陸を許可すると、状況は変化していった……レイヴンはすぐさま長年の敵ヴァイパーによって得られた利得に挑戦したのである。この時点で、ジャガーの資産の所有権はあまり重要でなくなった。3061年の暮れに中心領域から到着した兵士たちが、この問題を最終的に解決した。

 ゴーストベアが中心領域への移住を発表すると族長会議は揺れた……とくにここ数年、他の氏族が極秘でベアを支援していたことが明らかになってからは。出発したゴーストベアは、アルカディアとストラナメクティの飛び地を除き、ふたつの同盟氏族スノーレイヴンとダイアモンドシャークに、残ったわずかな資産を譲渡した。両軍はすでに警戒態勢にあり、他氏族の反対を押し切って、素早く新たな所有物を占領した。ヘルズホース氏族(ゴーストベアの長年の敵)はベアの元首都に移動し、スノウレイヴンが防備を整える前に、なんとか数ヶ所を確保した。ホースの作戦行動がレイヴンに対するものでないとわかるまでに、このふたつの氏族は何度か神判を行った。すでに防衛線が伸びきっていたレイヴンは、資産の分配に同意し、流血を避けた。

 トカーシャでは、ベアは保有地をダイアモンドシャークに与えた。ゴーストベア氏族長はジェイドファルコンが動くことを考慮に入れていなかった。この世界で何かが起きていると気づいたファルコンは、第2ファルコン軽装隊をマーシャルからトカーシャに移した。ヨルゲンソン氏族長がベアの計画を発表すると、ファルコンは植民地の奪取に動いた。このときゴリアテスコーピオンも行動していた。ダイアモンドシャークはガンマ銀河隊の兵士をトカーシャに上陸させ、すぐに陣地を構築した。だが惑星の保持は代償をともなうことが明らかとなった。兵士を失ったあとで、シャークは撤退を選び、ゴーストベアから得たパクソンに集中することに決めた。ファルコンがトカーシャにいたとしても、ヘルズホースが仇敵であるゴーストベアの飛び地に向かう妨げにはならなかった。トカーシャにおけるホース、ファルコン、ゴリアテスコーピオンの戦いは、3060年の後半に収まっていったが、3061年夏に再燃した。現在、ファルコンとスコーピオンは、それぞれ64%と23%、惑星を保持しており、ホースは13%得ている。

 SLDFがハントレスより撤退し、力の空白が生まれた。ほぼすべての氏族がプロトメック技術の獲得を目指し、スモークジャガーの元首都を襲撃したのだが、この世界を得ることを真剣に目指したのは5氏族だけであった。ジェイドファルコンはジャガープライム大陸のほぼ半分を占領し、ニューアンドリュー市とバゲラ市を獲得した。ファイアマンドリルのマティラ=キャロル族は、パーン市とその一帯を占領し、その一方でスターアダーはマイヤー市近辺を獲得した。この2氏族のあいだでまだ衝突が起きている。残った2氏族は、惑星の環境が悪い地域を少し得た。ゴリアテスコーピオンがアビズマル大陸の支配権を持ち、アイスヘリオンがウォーリア半島山道を占領した。SLDFの飛び地領土―――ルーテラ市と100キロメートル以内のすべての地域――は、氏族の襲撃を逃れた。

 数氏族は一ヶ月の撤退デッドラインが終わる前に、ノヴァキャット(裏切り者と見なされていた)に向かった。ノヴァキャットにはゴーストベアのような準備時間がなく、一夜にして市民を撤退させるのは不可能だった。彼らは選択に迫られた。すぐ中心領域に撤退し市民階級をあきらめるか、遅延作戦によって元のデッドラインを超えて出来るだけ多くの市民が逃げる時間を稼ぐか、である。彼らは後者を選んだ。それがおそらく氏族宙域に残った戦士の死を意味するであろうことを知っていた。

 バーセラ(ノヴァキャット首都惑星)において、ノヴァキャットが放棄されてほとんどすぐに、アイスヘリオンとジェイドファルコンが、ノヴァキャット防衛隊を攻撃した。しかしながら、助けは予期せぬところからやってきた――ダイヤモンドシャークである。常に利益を見込んでて動くシャークは、ノヴァキャット撤兵に支援を申し出て、契約の元に艦船と兵員を提供したのである。この同盟により侵攻派の強襲は遅らされたが、止まることはなかった。望みのない状況をかんがみて、キャットは残った資産のほとんどをシャークに譲り、撤退した。彼らはどうにか人口の10%を助け出した。彼らが出発しても、問題は解決しなかった。残った3氏族は現状を受け入れず、シャーク、ヘリオン、ファルコン間の神判は続いている。

 ベアクロウにおいて、ノヴァキャットはスノウレイヴンと接触した。彼らはゴーストベアの領土を占領していた。レイヴンの大規模な海軍のサポートと引き替えに、キャットはベアクロウの飛び地とキルケの領土を譲ることに同意した。しかしながら、彼らはヘルズホースを考慮に入れていなかった。ホースは長い間、ゴーストベアと争っており、そのことがベアクロウを支配する挑戦に向かわせ、(ベアクロウで)足場を確保すると、彼らはノヴァキャットの飛び地に向かい、簡単な三種類の戦いを試みた。小規模な神判が数ヶ月続き、ノヴァキャットが最終的に撤退する9月まで、ホースは惑星のほぼ1/3を保持していた。

 キルケにおいてのみ、ノヴァキャットは邪魔されずに撤退する機会を得られた。スノウレイヴン氏族は前スモークジャガーの資産を統合しようとすでに動き出していた。この行動がウルフとのあいだに衝突を産み出した。この戦闘は、ノヴァキャットの動きからウルフを効果的に妨げた。そのあいだレイヴン艦隊は、他氏族が介在するのを阻止した。煙が晴れると、世界はだいたい70:30でレイヴンとウルフに分割されていた。しかしながら、ワード族長は「成り上がりの腐肉漁り」に対する挑戦を続ける兆候を示している。

 ブリムでは、ノヴァキャットは単独でスターアダーとクラウドコブラに立ち向かった。攻撃した氏族は驚くほど寛大で、戦役初期での残酷なぶつかり合いのあと、ノヴァキャットに撤退を許した。市民人口の5%だけが撤収できたにもかかわらず、残った人々は新しい主人から良い扱いを保証された。その寛大さには理由がなかったわけではない。そうすることによって、他の氏族が介入してくる前にブリムを支配しようとしたのだ。だが、コヨーテ氏族が――馬鹿げたことに――介入しようと試みたのである。士気をくじかれたノヴァキャット軍が目標を守っていたりはしなかった。かわりに、彼らはスターアダーのなかにまっすぐに突っ込んでいった。スターアダーはそのようなやり方が間違っているのをコヨーテに教えるのに大きな喜びを得た。クラウドコブラ氏族が騒ぎに加わったとき、コヨーテは勝てないことと撤退できないことに気がついた。

 ゲートキーパーでの戦いは同様に血塗られたものとなった。ジェイドファルコン第53戦闘星団隊がノヴァキャット防衛隊と交戦した。ファルコンはキャットをデズグラとして扱い、数的優勢の効果を利用した。本来なら、キャットは戦いながら撤退したのだろうが、そうすると、人口の集中する一帯をファルコンに譲ることになってしまう。キャットは立ち止まって戦った。そして死んだ。ブリムでは逃げ延びた者はほとんどいなかった。

 ダイアモンドシャークとノヴァキャットはデリオス上の施設に到着し、科学、軍事設備の多くを撤退させることができた。彼らの飛び地をシャークに与えるのが交換条件だった。これまでのところ、ダイアモンドシャークの飛び地保有に挑戦した氏族はないが、このまま平穏では済みそうにない。すでにこの世界上に領土を保有するコヨーテ氏族が、準備をしているのが明らかになっている。

 ホアードでは、状況はすぐ混沌とした。アイスヘリオン、スターアダー、ウルフ、ヘルズホースがノヴァキャットの資産を競い合い、結果的にキャットは混沌を利点とした。攻撃者たちが求める多くのエリアが重複するなかで、ノヴァキャットに挑戦するための神判が、数多く、彼らのあいだで戦われた。ウルフ氏族とヘルズホース氏族は、世界上での基地を持っていなかったので足場を築くために戦い、もっとも大きな損害を出した。ウルフとの契約下で働いていたスターコーネル・ダグラス・ミッチェル(ヘルズホース氏族スティールホース星団隊司令官)は、強襲に驚いたに違いない。だが、10月中旬までに、彼の氏族は惑星と略奪品の10パーセントを支配していた。ノヴァキャット戦士のほとんどがホアードでの戦いで死んだにもかかわらず、民間人の1/4は撤退することができた。


狩人を狩る HUNTING THE HUNTER

 スティールヴァイパーは所有戦争に最小限しか参加せず、氏族長たちを驚かせた。その理由は3061年の4月に明らかとなった。ヴァイパーは大拒絶以降、兵士と物資を密かに中心領域に動かしており、4月1日、ジェイドファルコン占領域の13世界に大規模な強襲を開始した。すぐにこれらの惑星の支配権を得て、5月16日、第二のより用心深い強襲を行った。これは残ったファルコンの世界を孤立させるように見えた。

 比較的よく計画され実行されたにもかかわらず、作戦は完璧からはほど遠かった。予期せずマーサ・プライド氏族長と大軍が到着し、思わぬ脅威となったのだが、ヴァイパーは数的優位で結局は勝てるだろうと考えた。だが、彼らは占領域のコアワード一帯を防備が薄いままにしてしまったのである。ファルコンの援軍がヴァイパーの守備隊を蹂躙した。さらにウルフ氏族と協調したことで、ファルコンはスピンワード側面からヴァイパー領の奥深くを叩き、不意を打ったのである。

 敵軍の突然の到着に驚いたヴァイパー軍は、すぐに圧倒され、守勢にまわらざるを得なくなった。2週間以内に、ファルコンは重要な数世界を解放し、ヴァイパーの領土に戦場を移した。もっとも重要な戦いはウォルドルフで起き、両氏族が数個銀河隊を並べた。両陣営はゼルブリゲン(1対1の戦い)を放棄し、流血の乱闘が起きた。ヴァイパーの猛烈な強襲がファルコン軍を分断した。ヴァイパーはすぐに小規模な方(ファルコンガードと氏族長の不正規部隊を含む)を取り囲んだ。この選択はヴァイパーの没落を証明することとなる。

 ヴァイパーのペリガード・ザールマン氏族長は、ジェイドファルコンが氏族の名誉を汚したとして、復讐することを決めた……ファルコンガードのなかにブラッドネームを持ったフリーボーンの戦士がいたのだ。ザールマンは、無慈悲にダイアナ・プライドを追い立て、結局、デーモンビーチで居場所を突き止めた。ヴァイパーが数で勝っていたにもかかわらず、スターコマンダー・プライドはヴァイパーの氏族長を撃墜し、残ったヴァイパーのプライドを粉砕した。ザールマンには自軍が優勢でないとわかっていた。マーサ・プライド氏族長がヘジラを申し出たとき、ヴァイパーは不承不承受け入れたのである。彼らの撤退はファルコンの世界のみならず、中心領域からのものとなった。

 ファルコンが占領域を統合すると、ヴァイパーは氏族の本拠地に帰っていった。敗北したのだが、全滅からはほど遠かった。3062年の1月半ばに氏族宙域に到着すると、この大規模で、断固として戦い、怒れる軍隊は、その勇敢さを証明した……短く残忍な戦役でスノウレイヴンをホーマーから追い出したのだ。そのときからヴァイパーは氏族宙域保有地の統合に専念している。軍を利用し、他氏族を犠牲にして、氏族宙域での領土を拡大しそうである。スターアダーだけが戦場でヴァイパーとまともに勝負できる望みがある。従って、所有戦争はそうすぐには終わりそうにない。


新秩序 NEW ORDER

 所有戦争の規模と猛烈さが中心領域にさらなる衝撃を与えたかもしれないにせよ、SLDFの強襲は氏族に見えざる深い跡を残していた。氏族の優勢を揺るがしたのである。SLDFは一氏族の首星であるハントレスを奪い、最も優れた侵攻派氏族を撃破した。侵攻派の教義――氏族の任務は中心領域を侵略し「野蛮人」から救うこと――は決定的に否決された。だが侵攻派はいまだ力の源を保っている。氏族の指導者たちは領地の報道機関を操作して、最近起こったできごとをなんでもなかったかのようにし、市民階級の大規模な反乱を防ぐことができた。

 ヴィクター王子は否定の声明を出したものの、多くの氏族人は、SLDFの強襲を彼らの生き方への挑戦と見た。ゴーストベアやノヴァキャットを引きつけた汚染を避けるために、氏族は孤立すべきと信じている。その他の者は、長い亡命から帰還して、SLDFが申し出ている強い結束をすべきだと主張している。いまのところ、特定の意見が優勢を占めてはいない。討論の継続に本腰が入ったかのように見える。長い議論のなかで、守護派と侵攻派の分割に変わる新しい哲学が生まれるかもしれない。進展を待つ必要がある。

 確実に数氏族は大拒絶の結果から新たな道を探した。ヴラッド・ワードはツカイードの停戦の条件を受け入れているものの、大拒絶には縛られないとすでに発表している。ファルコンも、占領域のライラ同盟国境で、弱点に攻撃を仕掛けそうである。起きうるライラ同盟と連邦=共和国の内戦が勃発したら、ライラの世界の多くが被害を被るだろう。だが、この侵攻氏族は、他の氏族が中心領域に来ないようにし続けるだろう――最近、ヘルズホース氏族が到着し、予想よりそれが難しいとわかったのだが。他氏族の外交と交易を止めるのは難しいかもしれないが、いかなる植民化と占領をも妨げるに足る戦力は持っている。どんな場合でも、SLDFの報復の脅威は鎌首をもたげている。

 おそらく氏族は静かな期間を過ごすだろう。これが内戦に結びつくと心配する者もいる……最近、氏族宙域で猛威を振るっている神判がそのきざしかもしれない。そのような結果にならないことを我らは望んでいるが、外部の脅威が消えた場合には、内部の抗争が高まる(しばしば猛烈に)ことを歴史は示唆している。

 たしかに氏族が一夜で変わることはないだろう。彼らが取る道はいまのところ不明である。




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