indexに戻る
作成:2013/11/03
更新:2014/04/10

トータル・カオス - Total Chaos



 "TOTAL CHAOS"は、傭兵になって聖戦を戦う「カオス・キャンペーン」シナリオ集です。シナリオの多くが"Jihad Hot Spots"シリーズからの再掲ですが、単なる転載ではなくテキストが一新されています。シナリオに加えて、聖戦の重要な戦闘について触れられています。
 サンプル傭兵部隊として、ギャノン・キャノンズ、カンバーランド・ミサイラーズ、グランディン・クルセイダーズが登場します。公式にはこれらの部隊がシナリオ(歴史)に関わったという扱いになるようです。







ギャノン・キャノンズ GANNON’S CANNONS

 3064年のこと、ギャノン"キャノン"デラー大尉は、単なる失機者メック戦士であった。グレイヴ・ウォーカーズの隊員だった彼は、ファルコン侵攻を生き延びてアークロイヤルにたどり着いた少数のうちに入っていた。

 デラーはグレイヴ・ウォーカーズを退職し、メカニック、バーテンダーとして働いて、アークロイヤル戦闘訓練プログラム(ARCTP)に入学する金を稼ぐ一方で、体型を保ち、耳を開き続けた。

 彼はバーで働いていたときに、カールトン機士団の指揮官、フィロ・カールトン大尉と出会った。何度かの非公式な会談の後、カールトンはデラーの知識と経験に感銘を受け、機士団支援部門の職を提示するに至った。ちょうど機士団のビジネス・マネージャーが引退するところで、代わりが必要だったのだ。デラーはこれを受けた。

 デラーは2年にわたって機士団のビジネス面に携わった。兵站、財政、人事のすべてを受け持ち、部隊の支払い能力を保ち続けた。すぐにも彼は鋭い交渉者にして管理者であるとの評価を得た。

 2年後、カールトンはデラーにBLR-1Gバトルマスター、中尉の階級、機士団の指揮小隊内の地位を与えたのである。


厳しい試練
 3067年前半、モーガン・ケル公爵は、カトリーナ派の第3ドネガル防衛軍をカムブレスで足止めするために小規模な傭兵部隊をいくつか雇った。第3ドネガル防衛軍がターカッドに移動したら、戦闘はノンディ・シュタイナーの側に傾くことになる。ケルからの任務は第3ドネガル防衛軍を拘束し、動けなくすることだった。

 2月3日、傭兵団群はカムブレスを攻撃し、重要地点から貴重な資源と補給を奪い取った。第3ドネガル防衛軍は素早く反応し、惑星上で獲物を追いかけた。ケルの計画はうまく働いた。

 状況が悪化したのは、傭兵部隊のひとつであるドートマン・デビルズがこの状況を利用し、身勝手に稼ごうとしたときである。彼らは都市を襲撃し、抵抗をすべて粉砕した。これを隠すために、デビルズは他の傭兵部隊のふりをした。襲撃を知った第3ドネガル防衛軍は、すべての傭兵団を海賊として扱い始めた。

 2月8日、ドートマン・デビルズはウェストフィールドを攻撃した。カールトン機士団は都市の近くにおり、民間からの救難信号を拾った。彼らは応じ、デビルズが街を略奪しているのを発見した。デビルズは機士団を攻撃し、ウェストフィールドを戦場に変えた。カールトン機士団の副指揮官は戦闘の初期に死亡し、カールトンが重傷を負うと、デラー中尉は自身が指揮官であることに気がついた。彼はすぐに逆襲を命令し、デビルズをウェストフィールドから追い出した。デビルズが民間人を盾にしていなかったら、機士団はデビルズのほとんどを撃墜することができたろう。脱出した少数のデビルズは、数日後、第3ドネガルに殲滅されるだけだった。

 第3ドネガルの哨戒部隊は、ウェストフィールドの廃墟でカールトン機士団を発見し、別の海賊団であるとした。機士団の降伏が哨戒部隊指揮官に受け入れられる前に、さらに数名が殺されるか負傷した。


死と再生
 カムブレス襲撃は最終的に成功を収め、第3ドネガルのターカッド支援を妨害した。生き残った機士団はドートマン・デビルズの犯罪に関わったとして告発され、3067年3月9日、裁判にかけられた。カールトンはまだ病院にいたことから、デラーは機士団の最先任士官として法廷に立った。検察官は機士団に罪を着せようとしたが、デラーと機士団の弁護団は抜け目なく弁護を行った。

 ピーター・シュタイナー=ダヴィオンが国家主席となり、ライラ同盟中に大規模な恩赦を宣言した際、審議はまだ継続中だった。検事は渋々ながら機士団への告訴を取り下げ、釈放したが、報道によって機士団のイメージは損なわれたままだった。

 アークロイヤルに帰還すると、機士団はブラックリストに載せられていることを知った。重傷を負っていたカールトンは決断を下し、部隊を解散することとなった。彼は引退を発表し、デラーに残った機士団を指揮するように頼んだ。デラーは部隊の改名を選び、アウトリーチに移動した。

 カールトン機士団は3067年3月30日にアークロイヤルを離れた。ギャノン・キャノンズは3067年8月12日にアウトリーチに上陸した。


最初の任務
 キャノンズ(メックと車両、それぞれ1個小隊ずつ)が、小規模で安価な傭兵隊を探す雇用主の注意を引きつけるまでそう長くはかからなかった。やってきたのは、極秘任務のために最高の報酬を提示したウェイン・ワコー大佐と、高額のトラブルシューター契約を持ってきたインターステラー・エクスペディションズだった。用心深く考えた後、デラーはIEの契約を選んだ。

 キャノンの最初の任務は、アウトリーチからジャンプ2回のワード・オブ・ブレイクが支配するケイドで発生した。首都の降下港にあるカロン工業の倉庫に対する報復攻撃だ。この地域を偵察した後、キャノンズは動き、小規模な保安軍を片付けて、倉庫を破壊した。

 キャノンズがリバティの天頂点にたどり着いたとき、ワコーがアウトリーチで竜機兵団に対する戦争をしかけたとのニュースが届いた。IEの契約連絡員は、アウトリーチに戻ろうとするのは自殺行為に等しいとした。アウトリーチを基地として使えないとなると、キャノンズは未来が不確かなものであることに気がついたのだった。


編成
 キャノンズはアルファ、ベータの2個小隊からなる。アルファは重強襲級メックで構成され、デラーのアップグレードされたバトルマスターが中核となる。ベータは重戦車2両とホバー戦車2両を展開し、たいてい防衛的機動に使われる。幸運なことに、現在、キャノンズは整備を行うのに充分な技術スタッフを持っている。

 キャノンズは小規模な襲撃作戦に特化している。デラーは計画をフレキシブルにし続け、必要に応じてバックアップのオプションいくつかを用意している。守勢の際は、ベータ小隊がホバーかアルファ小隊を使って敵を罠に導き、効果的な待ち伏せをしかけることが可能である。


ギャノン"キャノン"デラー大尉、指揮官
 ギャノン"キャノン"デラーは、ライラの準男爵であるカイル叔父に引き取られた。デラーの父親ウィリアム(ワード・オブ・ブレイク侍祭)は、トルトゥーガ・プライムの連絡員に任命されたとき、息子を兄弟の手に残していった。若きデラーは白血病にかかっていたので、息子を辺境の原始的な地域に連れて行くよりも、ライラ同盟の貴族の手に残していったほうが、治療のためによいとわかっていたのである。ギャノンの病状(十代の前半で回復に向かった)は、彼にすべての障害を克服するという決意を与えた。彼は祖母のウォーハンマーと共にライラ同盟を離れ、数年間、傭兵として働いてからグレイヴ・ウォーカーズに入隊し、大尉の地位にのぼった。後にウォーハンマーを失ったことは大打撃となったが、デラーはアークロイヤル戦闘訓練プログラムを利用して学習し、ついにはカールトン機士団での地位を得た。

 表面上、デラーは読書とメックの模型を組み立てることだけが趣味の物静かな人物である。その下には、鋭い精神と最高を目指す決意を秘めている。デラーはアルコールやそのほかの悪癖を避けており、曇りなき精神と研ぎ澄まされた肉体を保つことを選んだ。彼は部下からの尊敬を集めており、部隊の全隊員(その家族含む)と定期的に話し合いを持っている。最近、新参者のアマンダ・ウルフを部隊の副指揮官に任命したことで、一部の者は眉を動かし、噂の種になったが、これまでのところ不満は出ていない。

 戦場において、デラーは目標地点について研究できるだけ研究し、部隊の作戦に最適な地形を選び取る。ARCTPでの訓練のおかげで、彼は平均以上のメック戦士であり、必要なときに必要な一撃を見舞う腕前でよく知られている。


アマンダ・ウルフ中尉、副指揮官
 フリーボーンとして生まれたアマンダの両親は、放浪ウルフ氏族の技術者である。厳しい体罰と意思の力を持って、彼女は第2ウルフガード星団隊のスターコマンダーの地位に昇進した。数ヶ月後、彼女は階級の神判で敗北した。それから一ヶ月、共同演習の後、彼女は交換プログラムで高名なウルフ竜機兵団に転属となった。

 1年以内に、アマンダは(ウルフ竜機兵団の)本拠地防衛軍に配属された。非番のある夜、彼女はテンプタウンのバーでワコー特戦隊の2名に重傷を負わせ、竜機兵団から放り出された。職を失い、行くところもない彼女は、新たな戦いを求めてワコー特戦隊員でいっぱいの部屋に向かい、そこでギャノン・デラーが割って入り、状況を緩和させた。数杯のビールを飲みながら彼女の身の上を聞いたデラーは、キャノンズ内での仕事を持ちかけた。

 入隊後一ヶ月以内に、副指揮官に任命されると、彼女は衝撃を受けた。この人事は部隊内に緊張を生み出し、それは彼女が克服せねばならないものだった。キャノンズの隊員たちは彼女に対し「傍観」の態度をとり、当面の間は大尉の判断を信じることにした。






カンバーランド・ミサイラーズ CUMBERLAND’S MISSILIERS

 カンバーランド・ミサイラーズ傭兵部隊は、数十年の間、偉大な部隊の域に達するか達しないかのところで活動している。このあらゆるミサイル兵器のスペシャリストたちは、氏族侵攻以来、すべての大規模な紛争に関わっている。他の傭兵部隊に比べ、相対的に評判を欠いていることから、いつも二番目として扱われてきた。しかし、連邦共和国内戦でいくらかの悪名高さを獲得した。

 内戦中、ミサイラーズ指揮官のロジャー・カンバーランドは、マツイダの降下地点で第17アヴァロン装甲機兵隊の降下船を守れとの命令を拒否した。そうする代わりに、カンバーランドはメック小隊と装甲小隊を率いて、近くの都市イイダに入り、センサーで大規模な敵軍がアヴァロン装甲機兵隊の背後に移動していくのを探知した。機動力のある機体を観測手として送り込んだミサイラーズは、敵軍に激しいミサイルの弾幕を浴びせた。第7ゴースト連隊(惑星上にいるとは思われていなかった部隊)のメック2機が行動不能となり、もう2機が破壊された。彼らが守ったのは装甲機兵隊のうちごく一部だけだったが、カンバーランドは賞賛され、ボーナスとして回収可能なメック2機を授与された。内戦で彼らが目立つことはなかったが、評判があがったことによって、インターステラー・エクスペディションズからの接触を受けることとなった。

 連邦共和国内戦が終了し、若干の戦力拡大をしてから、カンバーランドは相当な改革を行った。隊員に今や制服の着用が求められているが、普段は通常の軍事儀礼よりものんびりしている。最近、カンバーランドは、敵部隊の新型、もしくは正体不明のミサイル兵器を捕獲した者にボーナスを出し始めた。他の成果ボーナスは、一人で敵を倒したり、特に難しい一撃を決めたことなどで与えられる。これらボーナスによる内部競争で、部隊全体の腕前は向上している。

 ミサイル戦闘は、3060年以来、部隊の主眼となっている。それはカンバーランドが、落ちぶれたが凄腕のエンジニアをチーフ技術者として雇い、繰り返される練習がミサイル戦闘に対する積年の集中を強化したときのことである。新加入の技術者たちは、部隊全体の支援基盤を増加させ、故障、損傷した機体で戦わずに済むのを確実にした。ミサイラーズの達人技術者たちは、長年かけてミサイル兵器のセンサーと制御システムをいじり倒し、ミサイル砲撃の有効性と命中精度を劇的に向上させてのけた。ミサイラーズはどの技術ベースであろうとミサイルと類似兵器に熟達している。それは、原始的なロケットランチャーから、氏族の先進戦術ミサイルシステム(ATM)に至るまで、さらにはブラックマーケットで入手した実験段階のミサイル兵器さえもである。技術者たちは、ミサイル攻撃に対する部隊の防御力をあげるような段階まで、ミサイル兵器の全モデルについて研究し尽くしている。

 チーフ技術者、ジェイク・グリッゼル(NAIS卒業生)は、部隊のミサイル兵器の精度報告にプライドを持っている。彼は常に、テクニカルリードアウト、調査報告、ミサイル兵器の進化に関するその他文章を調べている(質問の雨によって、防衛産業の数社は彼に「出禁」命令を与えている)。それにも関わらず、彼の執念は、部隊のミサイル技術が最先端であることを保ち、ミサイラーズの優位を維持し続けている。

 ミュゼット・ブレイディ中尉は、最初はカンバーランドの息子が副指揮官の地位についたことに苛立ったが、部隊のバトルメック戦力の代理指揮官であり続けている。仲間のメック戦士たちとは違って、彼女はコクピットにいるときと同じくらい、技術者としても熟練している。指揮座席にいないときは、部隊のバトルメックに身体を突っ込んでいるのがよく見られる。

 ミサイラーズには2名の気圏戦闘機パイロットがいる。ミッチ"クレーター"マクグラディとトミー"テイルスピン"クーパーは、ミサイラーズでの勤務中に何度も戦闘機を失っている。なぜなら、激しい戦闘中に戦友を見捨てるのを拒絶したからだ。彼らの戦闘機は常に手に入る中で最も重量があり、装甲の厚いものである。彼らは戦場の上で道草を食いすぎて、大打撃を受けるか、燃料が尽きて、緊急着陸を余儀なくされることがよくある。彼らの航空ミサイル支援は芸術の一種だが、グリッゼルはパイロットが基地に安全に戻る能力を持ってないことで、貴重な仕事が失われるのを喜んでいるわけではない。

 ミサイラーズ唯一の輸送船は、古くてぼろぼろのユニオン級降下船、ギャップ・ブレーカーである。そのひどい外見は、機能と一致していない。搭載されたミサイルシステムは近代型のユニオンのスペックにアップグレードされているが、他のベイの大半はそうなっていない。この降下船はミサイラーズの折衷的な部隊編成にあわせて改装されている。ふたつの戦闘機ベイは残された一方で、4つのメックハンガーは戦車ベイに変更されているが、部隊には2両の戦車しかない。航宙艦はないので、IEは1隻を契約の間提供している。これは交渉の切り札であった。


ロジャー・カンバーランド大尉、指揮官
 公式の記録は、カンバーランドがカシル槍機兵隊で勤務していたという主張に反している。だが、彼の故郷がカンバーランドであることから、傭兵業界の多くは、過去の法律的問題を避けるために、名前を変えたと疑っている。過去の奇行にもかかわらず、彼は3048年にカンバーランド市民軍の幼なじみと共にミサイラーズを結成して以来、部隊を指揮している。

 カンバーランドはけんかっ早い大酒飲みとして知られている。彼の鼻は中心領域中のバーで何度も殴り合いをした証拠を見せている。彼は拘留されたり、負けたときでさえも、謝罪せず、恨みを残すこともない。3060年に息子が入隊して以来、カンバーランドは望ましくない活動を大幅に縮小している。その結果、彼の顔色、言葉遣い、精神状態は顕著に改善されている。彼はもう幕僚会議で失敗することはなく、必要に応じて彼らを扱うことができる。

 彼がマツイダの上陸地点の外に出たとき、部下たちは彼が再び酔っ払っているかもしれないと心配したが、彼の正確な砲撃、当を得た命令、撃ち返されることなく敵を叩ける位置に部隊を配置したことは、それまで部隊に欠けていたものを示したのである……リーダーシップだ。カンバーランドが生まれ変わったことは、部隊に活気を与え、士気と任務の業績を向上させている。

 カンバーランドはマツイダで回収したヴァイキングに乗っている。部隊のミサイル搭載機と同じように、このメックのシステムは技術者たちの手によって改造され、性能アップしている。


ロジャー・ゴダード中尉
 ロジャー "ジュニア"ゴダードはカンバーランド大尉の息子である。しかし、故郷であるカンバーランドの社会的な信条に従い、母親の名字を受け継いでいる。幸運なことに彼は母親の血を引いているようで、父を苦しめた若気の至りをまったく示していない。非番の際は時折、酒とたばこをたしなむが、対処可能な量に制限している。

 ゴダードは父と違ってメック戦士ではない。彼はミサイラーズの戦車を指揮している。他の隊員と同じく、ヘビーLRMキャリアーのミサイル兵器で信じがたいほどの命中精度をたたき出す。彼はグリッゼルに兵器をいじるのを許可している一方で、他のシステムに自分の時間を使っている。環境シーリング、CASE、新型エンジンを搭載することによって、車両の標準的スペックを強化し、結果、数々の敵を驚かせてきた。






グランディン・クルセイダーズ GRANDIN’S CRUSADERS

 グランディン・クルセイダーズはジャン=ポール・グランディン(ホーテンス男爵)の私兵集団として始まった。2995年の革命後に亡命したのがきっかけである。恒星連邦政府が新しい民主主義による統治を承認した速度から、ダヴィオン家が男爵の排除に関わっていたことに疑いの余地はない。引き留められず、追い立てられたグランディン家はヴォークリューズに移住し、権力に返り咲く準備を始めた。ジャン=ポールはアウトバックを拠点にするダヴィオン戦士結社とのコネクションを使って、チャンスがあれば元領土に侵攻する武装家臣団を作り上げた。

 新たに生まれた「ホーテンスのセイント・ルイス貴族騎士団」は、政治的な腕力を供給するためジャン=ポールに貸し出された。ヴォークリューズまでグランディンに同行した忠誠ある一族にとって騎士団に仕えるのは慣習となったが、本拠地を取り戻すチャンスは少しずつ失われていった。結局、亡命コミュニティはヴォークリューズに取り込まれ、グランディンのホーテンス支配の記憶は消えていった。グランディンはかたくなに「愛国的反抗」の一部として仕え続けたが、私兵を率いるよりも、南十字星境界域内のビジネスベンチャーに専念することがより利益になると気がついた。

 3062年、男爵の後継者であるピエール・グランディンがサクハラ軍学校から帰還すると、騎士団に変化の時が訪れた。彼はほぼ儀仗兵である中隊の指揮権を与えられ、すぐに法人契約の濁った世界に飛び込んでいった。連邦共和国内戦が始まったのに伴い、小規模な否認可能である傭兵オペレーターの市場は爆発し、ピエールは完全にこれを利用した。彼は良心のとがめを見せず、カトリーナ派、ヴィクター派の両方のために働き、アウトバックでの目標襲撃で、「裏切りを罰する」「敵に資源を渡さない」として重要な経済資産を破壊した。

 ピエールはすぐにアウトバックの三文芝居に飽き飽きし、一族からの反対を押し切って、舞台を荒ぶるカオス境界域に移した。同時期、彼はAFFCの逃亡者を大量に徴募し始めた。このとき、忠誠心の行き場や過去の態度についてはまったく考慮に入れなかった。この新兵流入はグランディン支持者の影響力を弱め、部隊の性質をより一般的な傭兵組織へと変化させた。ピエールは部隊を「グランディン・クルセイダーズ」として市場に出し、企業ブローカーとの交渉において運用上の柔軟性を強調した。

 部隊が受けた新契約の典型例は、3065年1月、ホールでの作戦行動である。地球を拠点に活動する採掘企業向けに、キノック島のウラン鉱山で産出物を確保することであった。クルセイダーズは鉱夫とその家族が住むチャタムの街に乱入し、戒厳令を敷いた。街が閉鎖されると、彼は建物を掃討し、反企業「扇動家」リストに載っている者たちを追い詰め、バラノフ皇帝に引き渡した。ウェイランド鉱物社が鉱山を取り返すために傭兵を雇うと、クルセイダーズはそれを待ち伏せし、歩兵の多彩なスキルを使って、メックのみで構成された部隊を倒した。

 AMCが非公式にワード・オブ・ブレイクとの戦争を始め、カオス境界域に紛争が急増すると、似たような任務が多数提示された。クルセイダーズは同じ熱意でもって両陣営に仕え、その計算された中立性で繁盛した。怪しげなAFFC脱走兵を公に雇うというグランディンのやり方は、"マッドジャック"カニングハムやカテリーナ・クロイツァーのような多彩な人材を引きつけ、部隊を強化した一方で、アウトバックの起源からさらに離れていった。3065年5月、ピエールは形式的なヴォークリューズへの訪問すらせずホーテンス男爵の地位を名目上受け継いだが、父の投資ファンドからの資金流入を使ってて部隊のメックをアップグレードした。

 3066年2月、クルセイダーズの方針を巡る対立は、副指揮官であるピエールのいとこ、ジェンナの離脱によって終わった。新男爵に代わって、ジェンナが代理としてヴォークリューズの忠誠派コミュニティを管理するという人事は、単に彼女を排除して、より従順なヒラリー・フレッチャーを使うということを意味していた。第5連邦共和国RCT歩兵旅団の元中尉であるフレッチャーは、最新のAFFC訓練・指導ドクトリンを携えてやってきた。クルセイダーズの歩兵中隊を再組織する彼女の努力は実を結び、より効果的で統合された部隊が生まれたが、彼女の揺るぎない忠誠心こそがその地位を真に確実なものとしているのである。

 3067年の大半をクルセイダーズはリバティで活動した。最初は惑星市民軍いくつかの訓練部隊として、後にはインターステラー・エクスペディションズの拠点警護であった。クルセイダーズの現在の契約は終わろうとしており、グランディン男爵はアスカイという名の新しい傭兵ブローカーとコンタクトを取っているところである。


組織と能力
 3067年時点で、グランディン・クルセイダーズは、1個メック小隊、1個装甲小隊(定数割れ)、気圏戦闘機1機、1個歩兵中隊(5個小隊)である。

 メック小隊は、「ホーテンスのセイント・ルイス貴族騎士団」だったクルセイダーズのアイデンティティの残り香である。ピエールは騎士団の君主指揮官として部隊を指揮し、他のメック戦士3名はすべて騎士である。これまでのところ、グランディンは封建的忠誠心のある者たちで小隊を組織し、歩兵中隊のより手に負えない面々に対する抑止力としている。メック4機すべてが近代技術でアップグレードされている。唯一の気圏戦闘機はメック小隊と共に運用され、偵察と脅威が少ないときの近接航空支援を提供する。

 歩兵中隊と装甲車両3両は共に活動し、グランディンのメックのハンマーに対する金床となる。名目上は、騎士軍曹(従者)の下につく武装歩兵として騎士団の一員になっているのだが、歩兵たちの大半は、脱走兵か、グランディンに忠誠を誓った元連邦共和国兵士である。各5個小隊は、"マッドジャック"カニングハムの対メック訓練やカテリーナ・クロイツァーの奇襲部隊作戦のような専門を持っており、隊員たちは中隊内をローテーションして、クロストレーニングで追加の専門を身につけるのである。騎士と見なされるヒラリー・フレッチャーは、戦術部隊として中隊を指揮しており、多彩でいかがわしい者たちの寄せ集めに対処することで、よく限界を超えるストレスを受けている。


ピエール・グランディンIII世、指揮官
 ピエール・グランディンIII世・男爵は、魅力的で、エレガントで、教養を持ち、ウィットに富み、博識な人物である。同時に彼は社会病質者であり、他人を自分のための道具としか見ることができない。サクハラでは、彼は怠惰な生徒だったが、かなりのメック操縦の才能を示した。一族のエンフォーサー"バイアード"で腕をさらに磨いている。彼はクルセイダーズを指揮することで刺激を求め、無謀、短気になりがちである。彼は完全に手中に入れた者たち以外には暗黒面を注意深く隠している。周囲の人間を操る彼の能力は、新しくなった傭兵部隊クルセイダーズを無傷のままで保つのを助け、有効な部隊として運用している。


ヒラリー・フレッチャー、副指揮官
 ヒラリー・フレッチャーは、ニューアースの気楽な中間階級の家庭に反抗し、18歳でAFFCに入隊した。部隊内での実績は、幹部候補生学校から招待を受けるのにふさわしいものであった。任官した後、彼女は第5連邦共和国RCTの新任小隊指揮官として配属された。連邦共和国内戦が勃発する直前の話である。核兵器の使用で、RCTが両陣営からブラックリストに入れられた後、賞金稼ぎ、戦争犯罪調査官から逃れた彼女は、故郷に戻るのを妨害された。エプシロン・エリダニでグランディンと偶然出会ったことは、彼女をクルセイダーズという避難所に導いたのである。






アウトリーチ

侵攻 3072年12月
解放 3074年9月

参加部隊
 合同軍
   第12アトリアン竜機兵団、第11機械化機兵隊、第7ドネガル防衛軍
 ウルフ竜機兵団
   アルファ連隊、ベータ連隊、エプシロン連隊、ガンマ連隊、ゼータ大隊、ウルフスパイダー大隊、本拠地防衛軍
   傭兵
     ブロードソード軍団(後にワード・オブ・ブレイク)、バトルマジック、第2ディズマル・ディシンヘリテッド、デビル旅団
 ワード・オブ・ブレイク
   第1師団、第4師団
   傭兵/不正規軍
     ブロードソード軍団、ワナメーカーズ・ウィドウメーカーズ、ワコー特戦隊、スミッソン・チャイニーズ・バンディッツ、タイガーシャーク、第51パンツァー・イェーガー

 聖戦でアウトリーチよりひどい被害を受けた世界はほとんどない。ブレイク派は自分たちの利益のために、アウトリーチで少数の芳しくない傭兵部隊を雇った。これらの傭兵たちは出番を待つと、ブレイク派の指揮の下、ウルフ竜機兵団への奇襲をしかけた。「グーンどもにしかける」のを待てなかった雇われ兵士たちは、早まってしまった。50年前にわたり竜機兵団への憎悪を募らせてきたウェイン・ワコー大佐は自らを抑えきれなかったのだ。

 アウトリーチでブレイク派に雇われた4グループの実質的指揮官だった彼は、怒りに負けて、攻撃の命令を下した。3067年10月15日、彼のワコー特戦隊は、スミッソン・チャイニーズ・バンディッツ、第51パンツァー・イェーガー、タイガーシャークと共に、ハーレフ・シティを攻撃した。若干の小部隊を戦力につけた彼らは、4個連隊を上回るほどだった。ウルフ竜機兵団はこの言われなき強襲におとなしく直面しなかった。

 竜機兵団の数個連隊は惑星上にいなかったが、戦闘で鍛えられたベータ連隊、エプシロン連隊、ゼータ大隊、ウルフスパイダー大隊が、アウトリーチの本拠地防衛軍を増強した。竜機兵団はバトルマジックとブロードソード軍団からの支援を受けることも出来た。しかし、ブロードソードは元コムガードで構成された部隊であった。彼らが元の組織から離脱したことは、大規模なごまかしに過ぎないことが後で判明したのである。

 第一次ハーレフ戦は両陣営のあいだで首都が揺れ動くのを見た。突然の攻撃で竜機兵団と同盟部隊はほぼ完全に都市から押し出された。どちらの陣営も支配を断言できず、戦いは手詰まりに達した。これが終わったのは10月18日、ジェイム・ウルフとウェイン・ワコーがハーレフシティの通りで遭遇したときのことである。この対決は、モーガン・ケルとヨリナガ・クリタの有名な戦いほど壮大ではなかったが、その結末はより重要なものであった。名誉ある一騎打ちを行う代わりに、この二人のメック戦士は死ぬまで戦うことを決意した。最後には、両名がそれを達成した。ワコーのバトルマスターが最初に墜ちた。残ったワコー特戦隊はウルフの陣地に群がった。マシンガンの流れ弾が竜機兵団指揮官のコクピットを貫き、ウルフの腿に突き刺さり、大腿動脈を切断した。後でバトルROMを調査したところ、ウルフはコクピット内で出血多量となる前に、5機の特戦隊メックを撃墜していた。

 ウルフの死体が発見されると、竜機兵団はこれまでに使われなかった命令を下されることを余儀なくされた。「コンディション・フィレル」である。

 この永続的な命令――竜機兵団司令部が20年前に用意したもの――は、戦闘における最上級指揮官の死を条件にしている。惑星上にいるすべての竜機兵団員は、即座に射程内にいるすべての非竜機兵団を攻撃した。慈悲は与えられず、中立の部隊でさえも十字砲火を浴びた。たった一度の撤退の機会を拒否したら、悪意むき出しで排除されることになる。この計画された残虐性は、28時間以内にハーレフシティの争奪戦を終わらせた。最終的に竜機兵団は戦力の半数以上を失った。ワコー特戦隊と第51パンツァー・イェーガーは、双方共に、抑制されない激しい怒りによって殲滅された。

 調査によって、攻撃の背後にはブレイク派の関与があると判明した。ガンマ連隊と第2ディズマル・ディシンヘリテッドがぼろぼろの勝者を支援するために到着すると、火星のブレイク派への報復襲撃が準備された。この襲撃には、アウトリーチで生き残った竜機兵団の戦力の大半が加わった。

 この計画不足の地球星系侵攻で、ベータ連隊、ゼータ大隊、本拠地防衛軍1個大隊、ディシンヘリテッド、リンドン大隊が一掃された。ブレイク派は報復として、戦艦と降下船数十隻を送り込んだ。この艦隊は12月20日に到着した。竜機兵団の戦艦と軌道ステーションを破壊した後、ブレイク派は地表に動いた。

 竜機兵団のメーヴ・ウルフ将軍は、即座に応じた。ブレイク派が降下したそのとき、彼女は星系内に到着した。イージス級旗艦〈アレクサンダー〉は、戦闘に加わり、前進するワードの降下船数隻を破壊し、アルファ連隊の2個大隊を上陸させた。しかしながら、ブレイク艦隊の複合した火力は、〈アレクサンダー〉を撤退に追い込んだ。大きな損害を負ったウルフ艦は星系の端にしばし潜み、竜機兵団本拠地をかけた戦いを支援することが出来なかった。

 第1、第4師団からの部隊が、ワードの侵攻を残虐的な情け容赦なさで実行した。彼らが戦った部隊は、以前の戦いで傷ついていたので、惑星は陥落するかに見えた。アルファ連隊の到着が防衛側を生き返らせた。竜機兵団側に流れが傾いたとき、味方だったはずの部隊、ブロードソード軍団が正体を現した。彼らの裏切りにより、ウルフスパイダー大隊がほぼ完全に一掃されたのである。

 12月28日、シンイチ・ヨシズミ司教は、特別な命令を実行し、戦いを侵攻側に傾ける決断を下した。ワードはすさまじい弾幕で地球を砲撃した。ブレイク戦艦は、ロムルスとレムスの小大陸を荒廃させた。守りようのない攻撃で、防衛側は完全に崩壊した。念入りに作られた虐殺を見た〈アレキサンダー〉の艦長は、生き残ったわずかな竜機兵団を退却させるために犠牲的な突撃を行った。竜機兵団が死に行く世界を離れてアークロイヤルに向かうと、ブレイク派は少数の生き残りに対する支配を統合した。

 鉄の拳(猛烈な圧政)が星系を押さえつけられていたにもかかわらず、小規模な抵抗セルがいるとの噂がアークロイヤルに届いた。竜機兵団に促され、放浪ウルフ氏族が救援部隊を送り、3068年3月20日に到着した。放浪ウルフは封鎖を解くことが出来なかったが、2個中隊分の兵士とかなりの民間人を脱出させるための戦力を滑り込ませることができた。

 エルソン・ノヴァキャット(3050年代に竜機兵団内戦で反乱軍を率いた人物)がブレイクに対するゲリラ戦の急先鋒に立ち、解放された元ゼータ大隊指揮官、タラ・ルーカス(数少ない火星遠征の生き残り)がチームを率いた。3070年3月にノヴァキャットが戦死すると、ルーカスが抵抗軍の指揮を継いだ。1ヶ月後、ステイシー・チャーチ指揮下の再生したブラックウィドウ中隊が、ハーレフシティの廃墟の外側に不時着した。彼女は抵抗軍とリンクし、死活されていた補給と人員を提供した。

 聖戦が進むと、ブレイク派は戦力を拡大する保護領の別世界に配置し直した。彼らは新たに雇ったワナメーカーズ・ウィドウメーカーズをアウトリーチに置いた。最初からウィドウメーカーズは無慈悲な抵抗軍の戦士たち(ランダムに攻撃を繰り返した)と対決した。抵抗軍はアルゴシャン海を横断して、ウィドウメーカーズを両大陸で叩き、捕虜解放のため収容所を強襲するなどした。

 3071年12月の絶え間ない作戦は、両陣営に犠牲をもたらした。タラ・ルーカスは戦闘で重傷を負い、ステイシー・チャーチが抵抗軍の指揮を継いだ。彼らはすぐ、さらに多くの竜機兵団民間人を解放し、ユニオン級降下船を捕獲した。3072年1月、チャーチと竜機兵団の一部が勇敢な脱出を行って、ワードのオパクス・ヴェナトーリが彼らを追い詰めるために到着する直前にアウトリーチを離れた。保護領をまたにかける逃走劇で、ブラックウィドウがこのエリートマネイドミニ部隊から逃れ続けると、アウトリーチは怪我から回復した(しかし不安定な)タラ・ルーカス指揮下の小規模な抵抗戦士の手に残された。「四騎士」の名前で知られるセルを率いた彼女は、占領軍に恐怖を与えた。

 死んだと思われていたルーカスによる容赦のないゲリラ戦は、ワナメーカーズ・ウィドウメーカーズの士気を崩壊させた(特に雇い主が傭兵をほとんど無視するようになってからは)。アウトリーチは、士気と物資の両方の面で消耗戦になった。保護領内の重要な世界ではなかった一方、SCOUR作戦で保護領が合同軍の手に落ち始めると、アウトリーチはシンボル的に重要となったのだ。

 アリス・ルーセ=マーリックは、3077年11月、合同軍タスクフォースを率いてアウトリーチに到着した。戦うことなく上陸した彼らは、ウィドウメーカーズによる哀れな抵抗に遭遇した。マーリック軍は傭兵を圧倒し、二週間以内に大半を捕らえた。傭兵としてのウィドウメーカーズは解散し、残ったわずかな隊員たちは地球陥落後、惑星当局に引き渡された。

 核攻撃で重度の放射性汚染されたために住むには適さなくなっているこの世界は、地表の再建がほとんどなされていない。ドーム都市が地下に造られ、コミュニティが育まれている。再建のための資金は共和国の補助金に大きく依存している。しかし、竜機兵団が戻ってくることはなかった。

――『ウルフ・アンド・ブレード』アークロイヤル出版、3099年刊行








別の日に、別のCビル
状況
ハーレフ、アウトリーチ
カオス境界域
3067年10月15日


 15/10/67: あの狂った老人、ウェイン・ワコーはついに復讐に乗り出したようだ。我々が他の契約を結ぶのをインターステラー・エクスペディションズの保持契約が妨げないのはどれだけ幸運であることか。カーヴァーV(成り上がりの農夫たちが世界の名前を変えようと知ったことではない)での労働契約の後、いくらかの実戦と栄光を得るチャンスを探していた。自称革命軍に加わるほど私は間抜けではない。もし現在までに彼らが竜機兵団を撃破できていないのなら、もう無理だろう。そして竜機兵団を完全に殺すことができないなら――ああ、タカシはミスを犯し、後悔した。

 だが、私はブラックウェル社代表のパニックと恐怖をそれはそれは楽しんだ。単純で良い契約をとったものだ。なので、私はカトリーナを連れて、わがままな副社長を救出してやった。ヒラリーとジャックを残すことで、IEの資産を守り、まだ小切手を集め続けるようにした。

 ――ピエール・グランディン


結末

 ピエール・グランディンと彼のメック小隊は、ハーレフ・マーカンタイル・ビルディング近くの交差点で第51ダークパンツァーイェーガーの小規模な戦闘グループを迎撃した。クルセイダーズの奇襲部隊小隊は、前進してくる敵傭兵隊に関する完全で詳細な報告を提供し、待ち伏せを実現させた。クロイツァーはビルを吹き飛ばして、パンツァーイェーガー分隊の先導隊の上に崩し、戦力を五分五分とした。クルセイダーズはがれきから這い出してくるイェーガーズに容赦のない攻撃を加え、敵を追い払うまでに3機のメック撃墜を記録した。

 待ち伏せが続く間、クロイツァーの1個分隊はブラックウェル工業副社長デーモン・ギヨームをビルから徴発した民間のセダンまでエスコートした。同行した奇襲部隊は、この企業幹部を何事もなく安全なブラックウェル社の拠点に移した。クロイツァー中尉は再結集した敵傭兵の目をそらすためにギヨームのホバーリムジンを運転して、追撃するイェーガーを一連の罠に導いた。反乱傭兵であるイェーガーは、実りなき一時間の追撃の末に撤退し、他の場所で戦っている友軍を支援しに向かった。

 この日の残り、クルセイダーズはハーレフ周辺部にあるIEの資産を保護し、また暴れ回るテンプタウンの傭兵部隊から守っているとして周囲の企業から金品をゆすり取った。コンディション・フィーレルを生き残ったのは、殺気だったベータ連隊に対して即座に降伏したからである。グランディン男爵は竜機兵団の手荒いを扱いも、MRBCが中立部隊への攻撃を制裁しなかったことも忘れることがなかった。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年






ニューアヴァロン

侵攻 3072年12月
解放 3074年9月

参加部隊
 合同軍
   第1ダヴィオン近衛隊、第3ダヴィオン近衛隊、第5ドネガル防衛軍、ダヴィオン軽近衛隊、ダヴィオン重近衛隊、ダヴィオン強襲近衛隊、第2NAIS候補生隊、第3NAIS候補生隊、第5連邦共和国RCT、第10ライラ防衛軍
   傭兵
     ニューアヴァロン機士団、第12ヴェガ特戦隊ベータ連隊
 ワード・オブ・ブレイク
   第31師団、第36師団、第44シャドウ師団
   傭兵
     ブロンソン群団

 3067年10月15日、ワード・オブ・ブレイクの雇った傭兵がアウトリーチを攻撃したことが実質的なブレイク派の聖戦の始まりであり、それに続くのが第二星間連盟解散直後のターカッド、ニューアヴァロン攻撃である。12月5日、ブレイク戦艦の1個艦隊がニューアヴァロン星系の外辺部にジャンプした。ブレイク艦隊は恒星連邦に気づかれず潜み、恒星連邦主星ニューアヴァロンの防衛部隊に対して自らの存在をあきらかにする命令を待った。第二星間連盟の崩壊後、ブレイク艦隊が受けた命令は、ダヴィオンに過ちを見せつけてやることに変わった。ニューアヴァロンのAFFS軍がブレイク戦艦(エセックス級〈ディバイン・フォーギブネス〉、リガ級〈レッド・エンジェル〉、イージス級〈ヘラルド・オブ・ジャスティス〉)を探知すると、その反応はターカッドでのおとなしい返答以上のものとなった。

 フォックス級戦艦〈ブライスランド〉と〈アントリム〉は、ブレイク戦艦の前進を止めようとした。これは不可能な任務だと証明された。侵略軍の強力な砲火にやられつつあった恒星連邦の戦艦は、〈ヘラルド・オブ・ジャスティス〉に攻撃をしかけ、自殺突撃で大破させた。突如として敵艦隊が到着したことは防衛部隊にショックを与えた一方、ニューアヴァロン側があまりに残虐な防衛を行ったことで、ブレイク派の側もそうすることになった。単純に「警告射撃」を撃ち込んで、ダヴィオンに無謀を悟らせる代わりに、ワードは第一次ニューアヴァロン戦を開戦したのである。ブレイク地上軍がニューアヴァロンに到着すると、戦艦が惑星の地表を連打した。

 防衛部隊はワードの第31師団に対し善戦したが、軌道爆撃で第2NAIS候補生部隊とニューアヴァロン機士団傭兵連隊が壊滅した。これによって、ワード第31師団は、第1ダヴィオン近衛隊RCT、第5ドネガル防衛軍、第10ライラ防衛軍の残存戦力(連邦共和国内戦以来惑星上に残っていた)と直面した。戦闘が進み、数週間経つと、2個のライラ部隊は消滅するまで粉砕された。

 奇襲だったにもかかわらず、ブレイク地上軍は、アヴァロンシティを守る実戦で鍛え上げられた内戦経験者に打ち勝つことが出来なかった。12月終わりまでに、第31師団は惑星からの離脱を余儀なくされた。〈ヘラルド・オブ・ジャスティス〉は軌道上で自沈処分となったが、〈ディバイン・フォーギブネス〉と〈レッド・エンジェル〉はワード・オブ・ブレイクに宇宙優勢を与え、第一次ニューアヴァロン戦を膠着状態とした。AFFSは最初の地上戦に勝利した一方、第5ドネガルは完全に破壊され、第10ライラ、第2NAIS、ニューアヴァロン機士団のわずかな生存者たちは、第1ダヴィオン近衛隊を増強する臨時部隊を形成した。彼らが援軍を呼ぶと、第3ダヴィオン近衛隊、ダヴィオン軽近衛隊、ダヴィオン重近衛隊、ダヴィオン強襲近衛隊、第12ヴェガ特戦隊ベータ連隊が送り込まれた。この救援部隊より先にブレイク派側の援軍が到着した。

 スーパージャンプ航宙艦を使って、ワードの第36師団が3068年2月の第二週に惑星降下した。この攻撃を増強するため、第31師団が軌道上から地表に戻った。第一次戦でAFFSが粘り強く守り、成功したことから、第二次戦では数で勝てないものを達成するために、初戦から核兵器が投入された。アヴァロンシティのほとんどががれきと化したのに加え、戦術核弾頭の正確な使用によって第1ダヴィオン近衛隊が崩壊した。ニューアヴァロンの支配権が危機に瀕していたそのとき、ダヴィオンの援軍5個連隊が星系内にたどり着いた。軽近衛隊にとって上陸作戦は災厄となった……ブレイク戦艦2隻が宇宙で彼らの降下船を捕捉し、破壊したのである。ワードのポケット戦艦もまた第3近衛隊に同じことをし、大気圏突入中に戦力の半数を片付けた。ダヴィオン5個部隊のすべては、それぞれ星系内の違う場所に到着し、違う方向から惑星ニューアヴァロンに近づき、ブレイクの封鎖によってすべての部隊が阻まれないようにしていた。

 ヴェガ特戦隊、第3近衛隊、重近衛隊、強襲近衛隊が、ぼろぼろになった第1近衛隊の残りを救援すると、第二次ニューアヴァロンの戦いは、もう一度防衛側に傾いた。次の2年にわたる残虐な戦闘で、アヴァロンシティは完全に廃墟と化した。ブレイク派による都市外辺部への物資襲撃はさらなる民間被害を出した。惑星のHPGネットワークは破壊され、アルビオン大陸の大半で大規模なインフラへの被害が発生した。現時点で、正式な民間被害の算定は存在しないが、概算では数百万の死者が出たとされる。防衛側は勝利に次ぐ勝利にゆっくりと気力を奮い起こした。ブレイク派の地上軍は逃亡し、3069年3月に惑星から撤退した。第31、第36師団は、防衛部隊を相手に深刻な損害を出していた。一方、生き残ったダヴィオン5個戦闘部隊のうち、戦闘前の戦力の50パーセントを保っていた部隊は存在しなかった。第二次ニューアヴァロン戦は第一次戦のように終わった――防衛側が惑星を支配したが、ブレイク派が軌道優勢を維持して、膠着状態となったのである。11月、3隻目の戦艦が加えられ、この封鎖を強化した。

 次の3年間は包囲された防衛側にとって休息のようなものであった。襲撃とたまの爆撃を除いて、AFFSは地表を完全に支配していた。

 3072年11月、ブレイク派は戦艦に追加の航空宇宙戦力と武装を再補給した。第5連邦共和国RCTが到着したことは、包囲側になんらかの希望を抱かせた。12月8日、第5RCTは惑星降下中に、核兵器を使って〈レッド・エンジェル〉とポケット戦艦1隻を破壊した。この事件によってニューアヴァロンは再び脚光を浴びることになり、ブレイク派は新しい地上軍を送り出した。第44シャドウ師団が12月20日、傭兵のブロンソン群団と共に到着した。第三次ニューアヴァロン戦が始まるのは直後である。

 3073年1月、防衛側は新たに開発されたバトルメック、リージョネアをこのとき始めて配備した。このデビューは休養充分の侵攻軍にはほとんど効果がないものだった。ワード軍はフォックス・デン(山中のAFFS要塞)への強襲で大勝利を収め、2月4日、ジャクソン・ダヴィオン最高司令官を殺し、この司令本部を手中にしたのである。攻撃中、第44の指揮官、アヴィトゥ司教は重傷を負い、ニューアヴァロンから後送された。恒星連邦の愛される司令官が死んだことで、AFFSの士気は崩壊し、第三次戦の勝利は明らかにブレイク派のものだった――彼らはいまや惑星と周辺宇宙の両方を支配しているのだ。

 次の一年半、第三次戦を生き残ったダヴィオン兵は、最善を尽くして持ちこたえ、占領軍に対し、実行可能な武装抵抗を行った。AFFS海軍によって複数の星系で禁輸措置がなされていることから補給が減少すると、ブレイク派が惑星上の襲撃者に対して持ちこたえるのは不可能であると思われた。軍司教キャメロン・サン=ジャメは、ディヴィッド・ザッカー司教が指揮している全ブレイク軍に惑星を離れるよう命令した。突然の撤退は、AFFSの防衛軍に驚きを与えた。占領軍は自ら撤退を始めたので、新たな攻撃はほとんど重要ではなかった。

 恒星連邦に対する屈辱の表れか、あるいは負傷したことのささやかな復讐の手段として、アヴィトゥ司教はダヴィオン山に核弾頭をいくつかしかけた。3074年9月27日、ワードは爆破スイッチを押し、同時に焦土攻撃を行った。ダヴィオン山頭頂部が崩壊したのに加え、ダヴィオン宮殿と残ったNAIS施設、近くのアケルナル・バトルメックス社の工場が火炎爆撃された。撤退時にブレイク軍はわずかな損害を出したが、後に残したのはかつてアヴァロンシティだった広大な残骸だった。ぼろぼろの防衛軍は究極のピュロスの勝利(損害が多すぎる勝利)を得たのである。

 イヴォンヌ・シュタイナー=ダヴィオンとタンクレッド・サンドヴァルは、3075年1月10日、再びニューアヴァロンの地表に足を踏み入れた。首都の廃墟で厳粛な視察を行った後、イヴォンヌは鼓舞するような演説を行い、生存者たちの士気を上げた。彼女はアヴァロン市の再建プログラムを発表したが、再建場所は廃墟でなくその近くでであった。再建されたダヴィオン宮殿と、アヴァロンシティの竣工式典が3079年10月12日に行われた。キャメロット・サミットの際に、MIIO長官、コール・ウィリアムスが暗殺されたことはニューアヴァロンにおけるブレイク派最後の行動となった。MIIOによる徹底的な調査で、ワードによるスリーパーエージェントの小規模なネットワークが発見され、素早く処理された。こうして女王=摂政と配偶者の安全が確保されたのである。

――『闇に包囲されるなかで』、ロビンソン境界域シンジケートプレス、3084年






ターカッド

侵攻 3067年12月
解放 3072年1月

参加部隊
 合同軍
   ケルハウンド第1連隊、第13ウルフガード星団隊
 合同軍
   第1親衛隊、第2親衛隊、第3親衛隊、第24ライラ防衛軍、第3ライラ防衛軍、第11アークトゥルス防衛軍RCT、第20アークトゥルス防衛軍RCT
 ワード・オブ・ブレイク
   第37師団、第40シャドウ師団
   傭兵
     ロウブロウ

 ターカッドは聖戦が公に始まった場所である。ワードに乗っ取られたLCS〈インヴィンシブル〉が怒りの砲撃を行ったそのとき、中心領域は14年におよぶ紛争に投げ込まれ、第一星間連盟の崩壊のように文明の形が変わることとなったのである。バートラム・ハービーズの良著『12月の砲声』は、聖戦の最初の一ヶ月について、他のいかなるサマリーよりも遙かに上手く詳説している。聖戦の最初の数週間を理解したい者はこの大著を読むべきだろう。最初の爆撃、ターカッド占領、ターカッド人による迅速な抵抗の組織の説明は、ライラ国家の意思と気力に関する深い洞察を提供してくれる。

 次の4年間は、過酷なゲリラ戦がライラの主星を覆い尽くした。ワードが惑星の生き残った生産設備を支配していたことと、補充兵が絶え間なく流入したことによって、この世界を手にし続けるのが可能となった。しかし、ピーター・シュタイナー=ダヴィオンと、数多の小抵抗組織は、軍事的な支援を欠いていたわりに目を見張る防衛を行ったのである。

 ワードの締め付けのカギとなるのが、〈インヴィンシブル〉であった。後にライラ市民への「贈り物」になる予定だったとわかるこの船は、ワードの征服のためのハンマーとなった。〈ブレイク・ソード〉、〈ブレイク・デリバランス〉、〈スチュワート・ディフェンダー〉が3068年に撤退してからも、ブレイクの海上封鎖は情け容赦ないほどまでに効果的であり続けた。3069年にコベントリから行われた救援と逆襲の試みは、補給を行うのに充分なほどターカッドに近づくことができなかった。

 〈インヴィンシブル〉は集合した抵抗軍にとっても効果的だった。目標を与えられると、この戦闘巡洋艦の艦載レーザー、PPCは、どんな目標でも素早くくすぶる残骸に変えることが可能なのである。国家主席を運んでいると思われたルフテンベルク輸送車が素早く破壊され、最終的にマコ谷が崩落したのがその証拠である。

 ライラの抵抗軍は不活発ではなかった。民衆からの支援と、この世界に関する深い理解を使った散発的な抵抗は、ワードを悩ませ続けた。彼らの有効性は、その数を遙かに上回るものだった。その一例として、致命的な待ち伏せにより、マッキンゼー司教のレベルIIを駆逐したことがある。これにより、キシモト司教が指揮をとるまで、ワードを混乱させたのだった。それでも、有効だったにもかかわらず、この抵抗がワード占領軍をターカッドから追い出す真のチャンスはなかったのである。

 3072年1月になって、アダム・シュタイナー将軍(国家主席代理)が、ターカッドを解放するための全面強襲をしかけることができた。外交力と少なからぬ幸運をもってして、シュタイナーは、第3ライラ防衛軍、第20アークトゥルス防衛軍RCT、ケルハウンド第1連隊を招集し、ウルフ竜機兵団、グレイヴウォーカーズ、放浪ウルフ第13ウルフガード星団隊を支援につけた。形式だけのジェイドファルコン1個新星隊が、シュタイナーとマーサ・プライド氏族長の秘密の停戦を受けて加えられた。タスクフォースに彼らが加わったことで、ファルコンははじめてワード・オブ・ブレイクを真に目撃した。

 シュタイナー将軍が遭遇した最初の任務は、ワード・オブ・ブレイク海軍の封鎖を突破することだった。かなりの降下船、気圏戦闘機戦力をバックアップにしたシュタイナーは、姉妹艦である〈フリージア〉〈ユグドラシル〉と、フォックス級〈イアン・マッキストン〉を持っていた。かつてライラのプライドのシンボルだったものへの砲撃を船員に命じるのは難しいことだった……たとえそれがワード・オブ・ブレイクの手にあってもだ。

 2隻のミョルニール級戦艦は、ライラの本当の攻撃を守るために〈インヴィンシブル〉に突き進んだ。戦闘機の集団に混ざって、20隻以上の強襲シャトルが200名の海兵を〈インヴィンシブル〉に運んだ。海戦が荒れ狂うなかで、海兵たちは熱狂的なブレイク派とデッキからデッキへの戦闘を行った。彼らは3/4を失ったのだが、海兵は最終的に勝利をつかみ、〈インヴィンシブル〉はもう一度ライラの旗を翻して飛ぶことになったのである。

 〈フリージア〉と〈ユグドラシル〉が〈インヴィンシブル〉を運ぶ一方、強襲軍の大半がターカッドの反対側に接近した。〈イアン・マッキストン〉が強襲軍を護衛したのだが、ワード・オブ・ブレイクのポケット戦艦が襲いかかった。これらの通常型から転換されたユニオン、レパード、ミュール級降下船は、〈イアン・マッキストン〉の火力にかなわなかった。このフォックス級は素早くワードの船を追い払ったが、核弾頭を積んだ大量のミサイルから身を守ることはできなかった。古の強襲の習慣のみが、ライラのリーダーシップが失われるのを妨げた……ワードのミサイルが〈イアン・マッキストン〉を破壊したとき、シュタイナー将軍はオーバーロード降下船に残っていたのである。

 宇宙を支配下においたシュタイナーは、ターカッドを解放するための作戦を始めた。この任務のために大規模な訓練を行っていた第3ライラ防衛軍は、この攻撃の先陣に立って、ターカッド・シティの外周部に軌道降下した。大規模な降下地点(軌道爆撃、砲撃の目標になりやすい)を作ることはなかった。その目的は、ワード・オブ・ブレイクを混乱させ、第3に集中させることである。ライラ軍の残りは、長引く混乱の中で上陸することができた。ジェイドファルコン氏族、スターコマンダー・タラ・ヘルマーの新星隊とともに、第3は見事にこの任務を実行し、防衛側のワードに身をなげうった。

 戦役は危うい出だしとなった。第20アークトゥルス防衛軍"ピーターズ・プライド"が、ピーター・シュタイナー=ダヴィオンの居場所に関する報告を調査するために、定められた作戦区域を拡大したのだ。第20アークトゥルスは、国家主席に身を捧げているにもかかわらず、命令違反によって最も重要な戦いに参加できなかった。軍法会議の危機が彼らを戦場に戻した――そしてそれはピーター・シュタイナー=ダヴィオンを同盟側の安全な地点にエスコートした後だったのである。

 一時的に第20アークトゥルスを失ったにもかかわらず、ワード・オブ・ブレイク第37師団への強襲は残虐的なまでの効率で進んだ。第3ライラはワードを探す任務を託され、ワードを待っていたウルフガードの砲口に追い込んだ――この単純な計画は効果的な結果をもたらした。ターカッドのワード支配が急速に衰えていくと、ケルハウンドとウルフ竜機兵団が絶え間なく、ブレイク派の集合と後退の試みを妨げた。第37師団の敗北は全面的な潰走につながり、3072年1月末に、2個レベルIII以下がターカッドから後退した。

 アダム・シュタイナー将軍がすべての生存者たちに崩壊した首都に集まるよう呼びかけると、1個諸兵科大隊規模の各種正規部隊、企業兵士、傭兵、地元のレジスタンス戦士のみが呼びかけに応じたのだった。長き5年と、約1000万人の死をもって、荒廃したターカッドとピーター・シュタイナー=ダヴィオンはついに解放されたのだ。

――『鉄の拳、鋼鉄の背骨』、ドネガル・プレス・ユナイテッド、3097年






ルシエン

侵攻 3067年12月
解放 3074年12月

参加部隊
 ゴーストベア氏族
   アルファ銀河隊、オメガ銀河隊、ロー銀河隊
 ノヴァキャット氏族
   クシー銀河隊
 ドラコ連合
   第1ゲンヨウシャ、第2〈光の剣〉、オトモ、イザナギ・ウォリアーズ、ソレンソン・セイバーズ
 黒龍会
   第2〈光の剣〉、第6ベンジャミン正規隊、第40ベンジャミン正規隊
   傭兵
     サザン・スナイパーズ(後にワード・オブ・ブレイク雇用)
 ワード・オブ・ブレイク
   第9師団、第32師団、第42シャドウ師団
   傭兵
     サザン・スナイパーズ

 ルシエンは聖戦の序盤にすぐワード・オブ・ブレイクの照準に入ったわけではなかった。ドラコ連合の首都で初弾を放ったのは、内部勢力である。ブラック・ドラゴン・ソサエティ(BDS)、またの名を黒龍会は、長年にわたって軍部を汚染していた。軍事の管領、セオドア・クリタが3030年代に始めた改革は、DCMS内の伝統的な勢力を落ち着かなくさせた。長年にわたる陰湿な努力によって、ブラックドラゴンは味方する数多の指揮官たちを勝ち取り、この指揮官たちは部下を引き込んで、事実上、諸連隊の全体がドラゴンと対立することになったのだ。第二次星間連盟解散後、セオドア大統領がルシエンに戻る前に、ブラックドラゴンはクーデターを開始した。

 クーデターはまったく思いもかけないことだった。HPGが真っ先に通信不能となり、ルシエンがドラコ連合から切り離され、ルシエンにいた忠誠派たちは状況を伝えて助けを呼ぶことができなかった。噂がディーロンに届いた一方、セオドア・クリタ含めだれもルシエンが通信断絶した理由に思い至らなかった。大統領が発生したパニックを沈め、噂される反乱を鎮圧するために故郷へと向かっていたとき、黒龍会はインペリアルシティへの攻撃に着手した。自慢の第2〈光の剣〉――かつては最も熱狂的で恐れられていたDCMS部隊――内部にいた裏切り者たちと、傭兵のサザン・スナイパーズが、忠誠派のオトモ、イザナギ・ウォリアーズ、その他を圧倒した。この戦いはDCMSサムライの途方もない力を見せつけた……どちらの陣営も1インチたりとも譲らなかったのである。生き残って捕まった者たちが少なかったことは、たとえ大統領不在でも防衛側の決意がどういうものだったのかを示している。だが、最終的にブラックドラゴンが首都の支配権を勝ち取った。第1ゲンヨウシャのおかげで、防衛していた忠誠派の相当数が脱出し、後に惑星が解放されるまで裏切り者を相手にドラゴンへの奉仕を続けることになった。

 通信途絶の思わぬ副産物は、外部の情報が入ってこなかったことである。反乱軍はワード・オブ・ブレイクの聖戦による闇を聞くことがなかった。彼らはワードがルシエン星系内に入ってきたことに気づきもしなかった。表向き、ブレイク派の動機は、連合の正統政府に対する善意であったが、やり方は正しいとは言えなかった。

 ワード・オブ・ブレイク艦隊がルシエンに移動した。アリス・フォン司教は、ドラコ連合を第二星間連盟の忠実なる支持者と見て、支援しようとした。そうしたら、DCMSは聖戦において彼らの仲間となるであろうと考えたのだ。意図を伝え、どちらに味方をするか宣告することなく、この艦隊は積極的な強襲を行った。力を誇示することで、戦闘を終わらせ、いくらかの平和と秩序をもたらすことを意図していた。フォン司教の計画は裏目に出た……彼らの好戦的な姿勢は、DCMSとブラックドラゴンの両方から敵意を買ったのである。どちらも互いを一時的な仲間としてすら見ることはなかった一方で、ワード・オブ・ブレイクを全力でもって戦うべき敵として認識した。

 失敗に気づいたフォン司教は、状況を是正するために外交を試みた。忠誠派DCMSとの停戦がなったことで、ブレイク派はルシエン・アーマーワークス社の工場に向かった。ブラックドラゴンの工作員は、上層部にいる裏切り者から得た保安コードを使って、巨大工場群の地下トンネルに入り込み、核弾頭3発を起爆させた。この攻撃で工場は破壊され、ワード・オブ・ブレイクに責任が押しつけられた。フォン司教は核兵器を持ってきていないことを証明しようとしたが、連合市民によく見られる外国人嫌いは克服するには大きすぎる問題だった。どちらの側も無実だという嘆願を受け入れなかった。ブレイク派への抵抗は火に油が注がれた。

 同時期、大統領は発作を起こし、昏睡状態に陥った。ホヒロ・クリタは父の称号を受け継ぐのを拒否し、後にディーロンでワードに捕まった。連合が分裂するなかで、ペシュト軍事管区のキヨモリ・ミナモト元帥が軍事の管領の地位を引き継ぎ、一時的にドラコ連合の首都をニューサマルカンドに移した。こうして政府の運営が継続する一方、ルシエンの解放は優先度が下がったのである。

 ワード第9師団、両連合軍の戦いは手詰まりに達した。二年にわたり、どの陣営もこの世界を間然に支配することができなかったが、ブレイク派は重要な領土の大半と、残ったわずかな工場を手中にした。第6ベンジャミン正規隊、第40ベンジャミン正規隊の裏切り者たちがブラックドラゴンの援軍に駆けつけたが、状況を打破することはできなかった。3071年前半、ワード・オブ・ブレイクの第42シャドウ師団、ベリアルズ・エンジェル・オブ・カオスがやってきた。彼らはペシュト征服という棺桶に最後の釘を打ち込んだところだった。ペシュトで彼らが化学・核兵器を使用したということは、ルシエンにとって似たような恐怖をもたらした。幸運にもベリアル兵は第9の支援を託されており、宣撫活動を乗っ取ることがなかった。

 ルシエンでは戦艦が不要だったことから、第42師団はドラコ連合に対して心理戦をしかけた。ベリアル司教は、ノヴァキャットを攻撃しながら、ドラコ連合海軍をさらに分割させるため、3072年5月、戦艦に対しイレースへの海軍強襲を命じた。ノヴァキャットの戦艦を破壊し、首都を核攻撃したあと、襲撃隊はルシエンに帰還した。彼らはノヴァキャット・ウォッチを過小評価していた……クシー銀河隊が報復を実行するため、一ヶ月後、ルシエンに到着した。

 ワード・オブ・ブレイク艦隊と、ルシエンの再プログラミングされた戦闘衛星システムは、ノヴァキャットの到着を歓待した。ノヴァキャット氏族はワード・オブ・ブレイクの戦艦2隻を破壊したが、交戦で自軍の1隻が犠牲となり、艦隊の残りは大打撃を受けた。クシー銀河隊はワードの封鎖をすり抜けて上陸し、DCMSとブラックドラゴンの両方を無視した。第42シャドウ師団に関する情報がなかったことは、かなりの戦術的・戦略的ミスにつながった。彼らは自軍の戦士たちが倒したという敵の数を過大評価したので、ノヴァキャットはベリアル司教がしかけた見事な罠に何度も引っかかった。ノヴァキャットは3週間以内に75パーセントの損失を出し、ルシエンから撤退した。

 3073年、傭兵のサザン・スナイパーズは戦闘で疲弊し、戦えなくなったため、ルシエンから移動した。ワード・オブ・ブレイクは、2月、第32師団をローテーションさせた。浸透、狙撃、対ゲリラ技術で有名な第32師団は、連合忠誠派とブラックドラゴンに大きな損害を与えた。

 3073年と3074年の残りは、行き詰まりで過ぎていった。輸出入品の不足はこの世界をゆっくりと窒息させた……疾病、栄養不良、飢饉が民衆の間で拡がり、重い被害を出した。ワードが空と宇宙を支配していたので、ワード兵士を支援する者は物資と支援を得られた。

 ゆっくりと国民の胃袋を勝ち取ったにもかかわらず、ワードは忠誠派に対しても、黒龍会に対しても、決定的な一撃を与えることが出来なかった。ブラックドラゴン軍は奇襲攻撃を行って、ワードが支配するインペリアルシティ周辺でブレイク派を悩ませたが、占領軍に深刻な打撃を与えたのは生き残ったDCMSだった。連合軍のサムライたちは黒龍会への手を緩めることなく、自己犠牲的な攻撃を実行し、ワードの士気と戦闘継続能力を弱めようとした。弾薬庫破壊、輸送トラック待ち伏せ、宿舎で睡眠中の兵士暗殺を行うあいだ、自己犠牲的な手法によって多くが倒れていった。

 3074年12月、ゴーストベア氏族の到着ですべてが結実した。ドミニオンはまず、軌道上のブレイク軍を抹殺して、ルシエン上空を確保した。ベアは3個銀河隊、アルファ、ロー、オメガをルシエンに上陸させ、惑星上の誰にも通信を行わなかった。ベアはただひたすら発見したワード・オブ・ブレイクを皆殺しにすることに心血を注いだ。この残虐性はルシエンにおけるブレイクの存在を終わらせた。屈辱からブラックドラゴンがドミニオン軍を攻撃すると、オメガ銀河隊は単独で第6ベンジャミン、第40ディーロンを破壊した。

 ワードの占領が突如として終わったことで、この打ちのめされた世界は忠誠派の手に残された。降伏したわずかなブラックドラゴンはただちに処刑された。第2〈光の剣〉、第6ベンジャミン、第40ディーロンは後にDCMSの名簿から外された。聖戦が収まると、ルシエンは再びドラコ連合首都として認識されるようになったが、荒廃から復興するまで数十年かかりそうだった。

――ホワイト・ドーヴス著『ブラック・サムライ』ニューサマルカンド・プリンターズ、3091年






スカイア

襲撃 3068年2月、3068年10月、3074年7月 <

参加部隊
 合同軍
   (放浪)ウルフ氏族ベータ銀河隊、ウルフ氏族デルタ銀河隊、ストーン・ラメント
 ドラコ連合
   第1スカイア猟兵隊、第4スカイア特戦隊RCT、第17スカイア特戦隊、第22スカイア特戦隊、スカイア防衛軍
 ワード・オブ・ブレイク
   第3師団、第18師団、ライト・オブ・マンカインド(特殊部隊)

 スカイアは侵攻に対し断固たる市民が故郷を守った教科書的実例である。ブレイク派が人的資源でかなりの優位に立っていたにもかかわらず、征服に失敗した主要星系のひとつなのだ。ワード・オブ・ブレイクは三度強襲を行ったが、スカイアを奪おうとしたのはその内で2回だけだった。

 聖戦は3068年2月、スカイアにやってきた。ワードは自由世界のシリウス槍機兵団に化けて、イーグル級〈パーシヴァル〉の完熟航行を攻撃の機会とした。この「槍機兵団」は2月4日に上陸し、退却するまでの2日間、防衛スカイア側と交戦した。強襲を受けて、ロバート・ケルスワ=シュタイナー公爵は自由世界同盟との戦争を宣言した。一ヶ月後、ボラン地方全体が彼の十字軍に加わり、スカイア軍の多くが攻撃のため自由世界同盟に向かった。

 9月、損傷を負ったミョルニール級LAS〈フリージア〉が、再補給のためにスカイアに錨を下ろした。1ヶ月後、ブレイク派のタスクフォース(ポケット戦艦数隻含む)がスカイアを攻撃したが、大きな打撃を与えることなく、〈フリージア〉に追い払われた。それから数年間、スカイアは聖戦の破壊を逃れた。

 3073年半ば、ワードはスカイアに注意を戻した。大規模な侵攻に備えて、軍司教サン=ジャメはスカイア周辺の防衛状況を探るよう情報部に命じた。ワードの攻撃が差し迫っていることが、ストーンの合同軍にリークされた。3073年10月、ストーンはスカイアの戦力強化を提案した。彼自身がウルフ、放浪ウルフ、コムスター軍からなる多国籍軍を率いるというものである。3074年前半、ツカイードとスカイアが航宙艦のコマンド・サーキットで結ばれた。約3個連隊が3月21日に到着した。

 スカイア侵攻は6月27に始まった。ワードの第3、第18師団が、傭兵2個連隊、戦艦4隻、多数の核兵器に支援されて、パイレーツポイントに到着したのだ。

 当初、ワードは守る海軍を逃れ、スカイアに地上部隊を降下させた。一ヶ月以内に戦闘は行き詰まり、ストーン合同軍は首都ニューグラスゴーの周辺に突き通せぬ盾を形成した。合同軍の戦艦はブレイク派を軌道から追い出すために動き、ワードがWMD数発を使って報復すると、致命的な結果が引き起こされた。放浪ウルフのキャメロン級旗艦〈ウルリック・ケレンスキー〉、ウルフ氏族のテキサス級〈ニコラス・ケレンスキー〉が核攻撃の前に沈んだ。

 応じてケルスワ=シュタイナー公爵はライラの核を解き放つ命令をもう少しで与えるところだったが、デヴリン・ストーンはそのような行動に出たら、ワード軍よりもスカイアそのものにより大きな被害が出ることを納得させた。翌日、ストーンは直々に大隊を率い、第3師団の機動司令本部を襲い、スカイア侵攻の総司令官であるカレン司教を捕まえた。カレンを失ったことで侵攻軍の士気は崩壊し、撤退を行った。スカイアの戦いは合同軍にとって大きな勝利となった。侵攻に参加したワード・オブ・ブレイク2個師団のうち、2個レベルIIIだけが脱出し、ブレイク派は星系を発つ前に複数の降下船、その他の海軍戦力を失った。ニューグラスゴー周辺の地域は戦闘で大きな損害を出したが、スカイアの工業と民衆の大半は比較的無傷で生き残った。

 ワード・オブ・ブレイク保護領が陥落した後、新たに結成されたスフィア共和国はスカイアに参加を懇願した。自由スカイア分離派は、もう一度スカイア島の独立をロビー活動した。問題が解決したのは、ストーンがライラ同盟に、有利な貿易条件と、ヘスペラスII、ソラリスVIIなど重要な世界はライラ領のままにすると持ちかけたときのことである。これら協定の重要な部分は、たとえライラ市民がスカイア居住を通して共和国の市民権を持っていても、ライラ当局が起訴できるという二重裁判権を所有することである。

――『アセンション: スカイア解放』共和国教育プレス、3098年






ディーロン

侵攻 3068年2月
解放 3077年12月

参加部隊
 ゴーストベア氏族
   アルファ銀河隊、ベータ銀河隊、オメガ銀河隊、ロー銀河隊
 ドラコ連合
   第8ディーロン正規隊、第2ディーロン正規隊、第10ゴースト連隊、第3ディーロン正規隊
   傭兵
     エリダニ軽機隊(第21打撃連隊、第19機兵隊)、ゴースト・オブ・ブラックウォッチ
 ワード・オブ・ブレイク
   第2師団、第3師団、第8師団、第14師団、第19師団、第23師団、保護領市民軍(リバティ、フレッチャー、アカマー、アスタ、ミルトン)、ヴェナトーリ(特殊部隊)
   傭兵
     バー・ブラックコブラ、ハンニバル・ハーミット

 ディーロンが最初にブレイクの剣の被害を受けたのは、3068年2月、ワード・オブ・ブレイク第8師団と傭兵ハンニバル・ハーミットが上陸したときのことである。ブレイク軍は、やってくる友軍のために降下地点を設営していたときに、数で負けていることを知った。第3ディーロンが予想していたより分散していたことに気づいたワードは、DCMSに目を向ける前に、ディーロン要塞外辺部にあるエリダニ軽機隊のフォート・ウィンストンを殲滅することに集中した。賢明にも戦術・戦略核兵器を使ったことで、ヴォルテナにいた第3ディーロンの大多数が壊滅した。

 アレックス・ウィニングハム司教XIVの指揮下で、ブレイク第8師団は、一ヶ月以内にシャンユ山とディーロン要塞の両方を確保し、DCMSの指揮統制能力の大半を奪い取った。残ったディーロン正規隊は幾度か勇敢な対決を敢行したが、3月末までに、ウィニングハムの容赦ない強襲に負かされてしまった。後になって到着した第10ゴースト連隊は、ブレイク派の流れを止める役にはほとんど立たなかった。ゴースト連隊はバー・ブラックコブラを圧倒したのだが、ディバー・シティの外側で指揮系統に対する致命的な一撃を受けた。この戦いは、日中のあいだディバー・シティの外辺部で弱まっては盛り返し、両陣営が弾薬を使い果たし始めて撤退したときにようやく収まった。

 第10ゴーストはコブラに壊滅的打撃を与えたにもかかわらず、傭兵を始末する前に、ジェラルド・ヒョーゴ大佐からイズナッキ宇宙港を守る命令を受けた。コブラは第10ゴーストの手を逃れ、状況を知らされると、突進して宇宙港を奪い取った。従って、ドラコ連合軍は補給を受けるための最後のリンクを使えなくなり、さらなる援軍から切り離されたままとなった。

 この惑星における大規模な抵抗が沈められると、ウィニングハム司教は星系内の重工業の大半を奪い取った。ブレイク派は第一星間連盟時代のディーロン要塞で長い間封印されていた部分をアンロックし、惑星政府を自らに統合し始めた。次の2年間、ドラコ連合の抵抗運動はあるひとつの大きな成功を収めただけだった。親衛ブラックウォッチの生き残りとDESTが、ホヒロ・クリタ卿(3068年前半に捕まっていた)の救出をどうにか成し遂げたのである。

 いたるところで自らを犠牲にしたように見えた逃亡者たちは、ホヒロ・クリタを乗せたウルバリーンへの射線上に何度も身を投げ出し、待っていたユニオン降下船への合流を成功させた。最初にいた35名のうち、この降下船インサイドアウトに乗り込めたのは10名以下だった。

 逃亡の成功に励まされた、第3ディーロンの打ちのめされている生き残りは、古い測量記録に記されていた古代SLDFの倉庫から何度も火砲基地を作り上げようとした。繰り返される失敗で生き残った最後の7名(ヒョーゴ大佐含む)は、3071年後半、チベットシティで降伏した。

 次の数年間、ディーロンは保護領の一大工業地としての地位を確立し、ブレイク軍のために戦争物資を大量生産した。この星系は、ドラコ連合深くに襲撃をかける展開地点ともなった。実施したのは、近くの重要な生産地点を守備する小規模傭兵部隊である。3071年、ブレイクの第19師団が、ウィニングハム司教と第8師団の救援としてやってきた。レイチェル・イェーガー司教XIの下で、ディーロンは75光年以内にあるすべてのブレイク派の活動の中心ハブとなった。

 ROM(保護領の諜報ネットワーク)は、3074年半ばにDCMSの報復攻撃があるとの噂を聞きつけた。第14師団が到着してこの星系の防衛を強化し、指揮権はメアリー・シュタール司教XXに移った。攻撃が実施されない一方で、ワードはシャンユ山とディーロン要塞周辺の防衛区域と、重要な工業区域、火砲基地のアップグレードを行った。

 3075年、連続した抵抗軍の爆破攻撃が惑星の沈黙を破った。反乱セルは捕虜収容所の脱走者少数、浸透したISF工作員、断固たる市民で構成されていた。最初の攻撃で、マンダルゴビにあるワカザシ・エンタープライズの製造センターふたつが崩壊した。反乱軍はそれからディバー・シティの新保護領政府地区を破壊した。シュタール司教は厳しい夜間外出禁止令を出し、検問所を増加させ、疑わしい者は誰でも拘禁してもいいとの許可を保護領政府に出した。この強引なやり口は反乱軍の攻撃を減らしたが、レジスタンスに入る市民を増やし始めた。

 3076年後半、新たにゴーストベア・ドミニオンの軍事的進出がディーロンを捉えるだろうという諜報の報告がなされた。保護領当局は第23師団で惑星の防衛を強化した。3077年前半、5個保護領市民軍と2個前線師団からなる追加の防衛が、ディーロンの歴史上なかったレベルの軍隊をもたらした――22個レベルIIIと重軌道支援という驚くべき戦力である。

 3077年10月、ゴーストベア・ドミニオンのアルファ、ベータ、オメガ、ロー銀河隊が、DCMSの第2、第8ディーロン正規隊と共に到着した。ケイル・シュルツ=タナカ大佐に指揮されるドラコ連合軍が、解放軍の先陣に立つという名誉を与えられた。ヘンティー・タワーズの区域に素早く動いた第2ディーロンは、どうにか小規模な兵器工場2カ所を奪還するのに成功し、それからLAW-KT2(ルシエンアーマーワークス工場)の強化ブレイク陣地に突っ込んだ。この部隊は大規模な損害を出したが、施設を突破した。そしてワードが工場を内側から爆破したとき、指揮系統全体が崩壊したのだった。

 ゴーストベアのベータ銀河隊(ローアマスター、ローリー・ツェン指揮下)は、オリヴェット近くに着陸した。この都市はマテアオ大陸の中心火砲基地としての役割を果たすことになっていたようだ。ワード・オブ・ブレイクに一切の慈悲を見せないというベアの評判を知っていた、シュタール司教は、この地域から民間人を脱出させるよう命令を下した。フレッチャー保護領市民軍が険しいチロエ山道を使って5日間持ちこたえるあいだ、ブレイクの支援サービスがオリヴェットからできる限り民間人を逃がした。第23師団から絶対に必要だった援軍をいくらか得られたにもかかわらず、ベータ銀河隊の連合した力(若干の降下船支援付き)は防衛軍を蹂躙し、谷の中に溢れ、一日以内にほとんど空っぽの都市を奪ったのである。

 DCMSとドミニオンの希薄な同盟は、10月後半フォート・クロスの外部でテストされることになった。氏族長からの永続的な命令を受けていたギャラクシー・コマンダー・マイケル・ホーキンスは、第8ディーロンが拘禁している300名近いブレイク派捕虜を殺そうとした。DCMS(情報源たる捕虜との関係を育めという命令を最高司令部から受けていた)は氏族の命令を認めるのを拒否し、短い戦闘が続いた。

 ドラコ連合軍、ドミニオン軍は残忍に戦い、どちらの指揮官も自信が正しいことを信じており、頑として引き下がることを拒否した。ブレイク第23師団のメックが突如として現れたことだけが、両者を協力させた……合同軍はブレイク派を叩いた後で、囚人を脱出させることができた。ドミニオン軍が建物、基地、隣接する都市を倒壊させる前に、少なくとも40名の捕虜を脱出させた。この事件は広報活動にとっての悪夢となり、長年にわたって反氏族の材料となった。

 シャンユ山へと続く山道の狭い範囲内で一ヶ月近く戦った後、第8ディーロンの大半はディーロン要塞のふたつあるゲートのひとつにたどり着いた。二日にわたる絶え間ない強襲で、第8は山のような壁を破った。それからDCMS兵は、ゴーストベアのアルファ銀河隊が穴を通って突進する間、ブレイク派の集中的な逆襲からゲートを守った。広い場所に出ると、アルファ銀河隊の戦士たちは断続的な間接砲射撃の餌食となった。ぼろぼろになった第8の残存戦力は、やってくるアスタ保護領市民軍に突撃し、アレサ・カブリンスキー氏族長とベアの戦士たちが下方の砲兵陣地を蹂躙する時間を稼いだ。間接砲の陣地が破壊され、第2ディーロン、オメガ銀河隊が到着すると、ブレイク派のメインゲート・コントロールは崩壊した。

 3ヶ月におよぶ山岳施設強襲のあいだ、ブレイク派は惑星の他の場所で焦土戦術を行った。軍事生産センターは何度も破壊工作の対象となり、重要な星間連盟時代の部品が破壊され、数カ所で有害廃棄物や高濃度放射線がばらまかれた。しかしながら、この戦いのあいだ、ワードは民間産業への大規模な被害を避けた。重要でないインフラ・施設への損害の大半は、オメガ、ロー銀河隊が、リバティ、アカマー、ミルトン保護領市民軍を追っていた際に、民間地区の内外で激しく野蛮な戦闘を行ったために引き起こされたものである。

 ディーロンでの最も小さな戦いが、SCOUR作戦で最大のターニングポイントとなった。ドミニオンのあるウォッチ諜報チームが、惑星北部の氷山で奇妙な交信と表示を見つけたのである。センサーのデータの一部は、ドミニオン情報部のマネイドミニと一致した……ローアマスター・ツェンはロー銀河隊の一部を調査に送った。ウォッチの連続した成功により、ヴァプラ司教が星系から脱出しようとしていたそのときに密輸業者の降下船から発見されたのである。この高位のドミニ工作員(ワードのセレスティアルシリーズ・オムニメックを設計したことで名高い)は、激しい交渉の末、ディヴィッド・リーアに引き渡された。

 この戦役が終わるまでに、解放軍は60パーセントの人的、物的損害を被ったが、ブレイク派占領軍は90パーセント近く掃討されたのである。しかし、最も恐ろしい打撃を受けたのが、ディーロン人だった。4つの大都市が炎上するか破壊され、鉱山と工業区域のいくつかは修理できる範囲を超えて廃墟となり、ひとつの大陸全体が核と有害物質で汚染され、民間の死者は1000万を遙かに超えるものだった。ディーロンは苦境にあり、救援と再建を死活的に必要としていた。ISFとDCMSの資源は、他の場所での平定と救援に使われており、3079年以降まで再建のプロセスが開始することはなかったのである。

――『ディーロン: 戦術と研究』サン=ツァン兵学校プレス、3092年








悪魔からの逃走
状況
スケールズ・オブ・ザ・ドラゴネット山脈、パール管区
ディーロン、ドラコ連合
3068年4月8日


 神に誓って言う。カテリーナがまたあんな目で男爵を見たら、このシュテルンナハト拳銃を食わせてやる。あの女は私たちの間に割り込もうとした。以前、あの女のファイルを見たことがある。あの女はポップコーンのように男たちの間を駆け抜けていった。中には女も何人かいた。グランディン男爵を餌食にさせてなるものか。彼は純粋に想われる価値があり、想いを捧げる価値のある存在だ。

 それからもう一人、撃ち殺したいのは、例の忌々しいクリタ士官である。ディーロンに行く唯一の方法は、第5連隊と一緒に行くことだった。IEの代表者と弁舌巧みなドラコ野郎のあいだで、男爵はただ圧倒されてしまった。騙されたのだ。

 だが、彼はいつも何が最善であるかを知っている。ニューアヴァロンに戻ったときでさえも。彼が言うには、ドラコ野郎はこの件でIEに大きな借りがあるという。そしてIEは我々に大きな借りを作ることだろう。彼が正しいと確信している。

 ――ヒラリー・フレッチャー


結末

 重傷を負ったISF長官、ニンユ・ケライ=インドラハラの脱出を助けるため、IEはグランディン・クルセイダーズをDCMSに貸し出した。クルセイダーズはスケールズ・オブ・ザ・ドラゴネット山脈に降り立った。ここでケライ=インドラハラの輸送車列は、秘密の道を通って安全な降下港に向かっていた。この道はDCMSが期待していたほど秘密ではなかったことがすぐあきらかになった。WoBM第8師団の分隊が追撃しているのが発見され、クルセイダーズが防衛を組織する時間はほとんど残されてなかった。

 グランディンはメック部隊を率いて一連の足止めを行い、歩兵たちが狭い道に陣取る時間を稼いだ。支援するカゲ・バトルアーマー1個分隊が決定的であったと証明された……道を押し通ろうとする襲撃隊をとどめるのに充分な火力を与えたのだ。輸送車列が充分な距離を保つと、クルセイダーズは整然と退却した。輸送車列が降下港に達するまで、彼らはブレイク派が軽い小競り合いをするに任せた。ここで彼らはケライ=インドラハラの護りをDCMSに引き継ぎ、自らもディーロンから脱した。

 ワードはターゲットが逃げるのに納得しなかった。ケライ=インドラハラを載せて惑星から脱するコンドル級降下船を迎撃しようとしたのだ。グランディンの降下船、トーナントは割って入り、IEの連絡担当者もまた男爵にそうするよう奨励した。ブレイク派の戦闘機を追い払ったあと、クルセイダーズはDCMSを助けるために再び「志願した」ことで表彰され、好きな軍需装備を選ぶという褒賞を与えられた。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








金のガチョウ
状況
ウェイハイウェイ外部
チンタオ、カペラ大連邦国
3068年6月28日


 20/06/68: ハセクは度胸があるし、私はハセクに勇気を与えるだろう。もしハセクがこの戦役をうまくやってのけるなら、国王になれるかもしれない。そう願っている。恒星連邦はビジョンを持って統治する誰かを求めている。

 この戦役で我々が担当する部分は相当に確実なものである。我々はアイリシアン槍機兵隊に同行し、チンタオ襲撃を助けた。

 興味深いことに、IE役員会のミスター・スタイルズが我々を送り込んだときに、至高の正義作戦について知っていた。彼らは古きコムスターのような手の長さを持っているようだ。

 多くの隠された思惑のように。我々は回り道をして、コンピュータ・コアを入手するためシュー=リン・ネットワーク社を略奪することになっている。ミスター・スタイルズはこれを報復と呼んだが、我々の質問を受け付けていないことは明白だった。それならそれでいい。カペラ人を殺すために二倍の支払いを受け取っている。コアに入ってるのが、エキゾチックなカノープスのポルノだろうと、アレクサンドル・ケレンスキーのボルシチのレシピだろうと、私の知ったことではない。

 ――ピエール・グランディン


結末

 アイリシアン槍機兵隊はジョージ・ハセクの命令を心にとめ、発見したすべてのカペラ軍を撃破していった。クルセイダーズは彼らに同行し、初期の強襲で無視した郷土防衛軍、市民軍部隊を抹殺する掃討部隊の役割を果たした。グランディンは、「ゲリラを追い詰める」ためにウェイハイウェイの都市を叩くと説明して、槍機兵隊の司令部を納得させた。民間企業であるシュー=リン・ネットワーキング社はこれまでのところ損害を逃れていたが、その企業保安部隊はグランディンが槍機兵隊に報告したゲリラ部隊に合致するものであった。

 フレッチャーの歩兵中隊は市街戦のなかで再びその価値を証明した……火砲基地として使うために企業本社ビルの建物いくつかを奪いとったのである。地元の市民軍は密集した建物を撃つのを嫌がり、シュー=リン社の傭兵がクルセイダーズを生き埋めにするのを妨げた。ピエールは守る敵の2個部隊を分断し、徹底的に破壊した。本社ビルへの突入自体は、クロイツァー小隊のエリート奇襲部隊にとって単純な任務であり、エディー・ヴァルガス(元MIIOで情報戦の専門家)の存在によって、コアのセキュリティ突破は容易に可能となった。

 グランディンはすぐにコアをディヴィッド・スタイルズに渡した。この男は、IEの同輩評議会の影響力ある一員にして、役員会の一員である。コアに入っていたファイルは、大量破壊兵器に関するSLDFの研究だった。これには生物化学兵器が含まれていた。このデータはすぐに、スタイルズの好意でワード・オブ・ブレイクに向かうこととなった。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年






アルゴット

侵攻 3069年10月
解放 3077年2月

参加部隊
 カペラ大連邦国ゴーストベア氏族
   アンバーマール・ハイランダーズ、デヴォン装甲歩兵隊、イマーラ家
 恒星連邦ドラコ連合
   アルゴット市民軍、第1ダヴィオン近衛隊
 ワード・オブ・ブレイク
   第19師団
   傭兵
     カーソン反逆隊、ハンニガン・モンスターズ、カスペロフ騎士団

 きれいな空気、豊かな緑、住人の長寿命という牧歌的な世界、アルゴットは元々チコノフ連合に属していた。チコノフ連合はカペラ大連邦国の一員となり、アルゴットは長らくカペラの手に残った……第三次継承権戦争で恒星連邦がアルゴットの防衛軍を圧倒するまでは。襲撃、強襲でこの惑星の生態系を破壊したくなかった大連邦国は、チャンスが来るのを待った。第四次継承権戦争の電撃戦で領土の半分を奪い取られ、アルゴットからさらに遠く離れたカペラは、惑星を奪還するという希望を打ち砕かれた。

 3069年10月、ワード・オブ・ブレイク市民軍第19師団の3個レベルIIIが、カペラの記章をつけて惑星に降下した。ワードの気圏戦闘機部隊は、カッソル市外辺部のAFFS施設を火炎爆撃し、アルゴット駐屯部隊の大半を抹殺した。地上のワード強襲部隊は、アルゴット唯一の大陸でアルゴット市民軍の残りを掃討し、この世界を新ワード・オブ・ブレイク保護領の下においた。

 軍事的な保護を奪われたのだが、アルゴットの市民は、生態系の保護を考えない侵略者に故郷を明け渡すよりも、ゲリラ戦でワードの占領に抵抗することを選んだ。第19師団は、近くの数十都市と工業地区に真水を供給するオーチバ湖に毒を放つことで応じた。死亡者数は100万人におよんだが、この化学攻撃はさらに民衆を怒らせただけだったのである。結果として起きた破壊活動の泥沼と市民の不安により、軍司教キャメロン・サン=ジャメは第19師団をよそに移し、反乱に対処するため、ワードが資金を出した傭兵駐屯部隊――ハンニガン・モンスターズ――に任さざるを得なくなった。

 SCOUR作戦の間、合同軍がブレイク市民軍をワード保護領中で混乱させたことから、カペラ大連邦国はついにアルゴットへと視線を向け、アルゴットをカペラの領地に戻そうとした。3077年2月14日、イマーラ家がカッソル外部の砂漠でブレイク傭兵駐屯部隊の大半と直面するあいだ、アンバーマール・ハイランダーズとデヴォン装甲歩兵隊が傭兵の側面を突いて、作戦基地として使っていた元AFFS施設を蹂躙した。

 地上で戦闘が進む間、2月24日、アルゴットをワード・オブ・ブレイクから解放するために、合同軍が星系のジャンプポイントに到着した。第1ダヴィオン近衛隊の航空宇宙部隊は、カペラの海軍戦力とぶつかった。合同軍がカペラの戦闘機だと気づく前に、両陣営はいくらかの損害を受けた。合同軍指揮官デヴリン・ストーンは、恒星連邦に撤退して、カペラがブレイク派の脅威と戦うに任せるよう助言した。

 CCAF兵は迅速に掃討作戦を完了し、惑星の生態系にほとんど打撃を与えることもなかった。この50年以上ではじめて、アルゴットはカペラの旗の下に戻ったのである。

――『遺産の奪還』聖アイヴス・プレス、3089年








解放
状況
ニューワイアット、ロムルス
アウトリーチ、ブレイク保護領
3069年10月15日


 ワード・オブ・ブレイクは、タラ・ルーカス少佐をアウトリーチ都市群でパレードさせ、ウルフ竜機兵団を侮辱することを選んだ。彼女はマーズの災厄の一部かもしれないが、仲間を士気崩壊に使われるのは不名誉なことである。ワードは代償を支払わねばならない。だが、まず、タラ・ルーカスを解放するのが先だ。敵に捕らわれた者は、そんな仕打ちを受けるべきでない。部隊に吸収するか、もちろん役に立たないのなら従属させるべきなのだ。タラ・ルーカスは氏族の基準では年老いているかもしれないが、ここは中心領域である。彼女はまだ何年も仕事が出来る。彼女は占領軍と戦うための有用な戦力となるだろう。

――エルソン・ノヴァキャット少佐の日誌、3069年10月12日


結末
 この戦いは完全な成功に終わった。完全にワード・オブ・ブレイク占領軍の不意を打ってやったのだ。我が軍は、タラ・ルーカス少佐とのあいだに立ちはだかった者たちを虐殺した。彼女を見張るのが仕事だった護衛は、ちょっとした面倒でしかなかった。我々は立ちはだかった勇敢な者たちを文字通り切り裂き、名誉ある任務を遂行した。

 残念ながら、タラ・ルーカスが役に立ってくれるという事前の評価は、早まっていて、間違っていた。ワード・オブ・ブレイクは、火星とアウトリーチの両方で肉体的、精神的な拷問を与えたようなのだ。彼女は戦闘の疲労に屈したように見える……シェルショックとも呼ばれる状態だ。彼女は自身に引きこもって、ほとんど緊張型分裂病である。我々は彼女が回復し、占領軍との戦争に参加することを期待して、彼女を安静な状態に置いた。

 ワード・オブ・ブレイクの拷問は、彼女が戦争のトロフィーかなにかに過ぎないと考えていることを示しており、ブレイクの不名誉を倍増させるものである。解放の際に我々が殺したブレイク派たちは幸運だった。ワード・オブ・ブレイクが海賊やその他のデズグラより良い取り扱いをなされることはない。このような者たちと戦うときにどのような取り扱いがなされるのか、教育してやるつもりである。

――エルソン・ノヴァキャット少佐の日誌、3069年10月16日








生ける死者ども
状況
HPG施設AA-2、タガス・メトロポリス
タリッサ、自由世界同盟
3069年12月8日


 4/12/69: ようやく降下船トーナントに帰り着いたあと、魅力的な任務を探せなかったのは残念だが、この契約の条件は断るには良すぎるものだった。我々は、他の傭兵が到着するまで一ヶ月ここにいるだけでいい。少なくとも新しい気圏戦闘機を統合する時間にはなる。そしてガズニ司教が地元の議会を操るのを見物するのは有益であった。

 唯一の欠点は、ヒラリーが私につきまとう時間があるということだ。彼女の心酔をあしらうのは、ますます面倒になりつつある。幸い、理由はわからないが、彼女は問題を積極的に進めたがってはいない。馬鹿な女だ。なにかを求めるのなら、耐えねばならないのに。

 自由世界同盟が引き裂かれるのを見て、幾分かの満足を得た。これが民主主義の行き着く先である。弱き者と価値なき者が強き者の邪魔をして、システムは崩壊する。我々が正しかったのだ。

 ――ピエール・グランディン


結末

 11月、タリッサに入った際、クルセイダーズはイブラヒム・ガズニ司教から直接のオファーを受け取った。ブレイクには惑星HPG防衛に雇える傭兵がおらず、12月までのスケジュールの穴を埋められる部隊に高額を保障した。グランディンは口座の残高を増やすために、このオファーを受ける決断を下した一方で、別の新しい契約を探した。ガズニもクルセイダーズも戦いに直面することは予期していなかった。

 傭兵同盟軍(AMC)の生き残りには、また別のアイディアがあった。第3ディズマル・ディシンヘリテッドとバートン旅団(ホールでの敗北後、両者はひとつの部隊となっていた)は、タリッサの傭兵不足について聞き及び、12月前半、ホールを襲撃した。タガスにあるHPG施設真上への戦闘降下は、ほとんど警告もなく行われた。残忍な市街戦で、クルセイダーズが数でまさる相手に生き残るための戦いを続ける一方、惑星市民軍は移動した。

 クルセイダーズの新型バトルアーマーが奮戦の流れを変えた。このスーツは巨大都市の狭い空間に適しており、ディズマル・ディシンヘリテッドはそれに対処するための諸兵科連合支援を欠いていた。クルセイダーズのマッド・ジャック・カニンガム率いる集団攻撃で、ディシンヘリテッドの指揮官、ジョン・マーリック=ジョーンズが倒され、混乱に拍車がかかった。到着した市民軍の援軍が残った傭兵を都市から一掃し、またひとつのAMC部隊が殲滅された。グランディンは回収品による寛大な支払いを受け、メックに大きな損害を受けたにもかかわらず、新しい利益を得たのだった。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








蟻塚をかき回す
状況
マイティスピン山
エイヴォン、ドラコ連合
3069年12月25日


 (ウルフネット報告書30700218/109-Betaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 ドラコ連合司令部内のだれかが我らに好印象を抱いたようだ。ドラコ小部隊群の支援と、ノヴァキャットとの反侵攻訓練のために我々を求めたのである。高額を提示されたデラー大尉に断るつもりは毛頭なかったが、大尉と私は事実のすべてを知らされていないだろうことについて話し合った。中心領域全体はバスケットの中の地獄に放り込まれている。ドラコは小部隊戦術に取り組んでいるのだろうか? どうして怪しくないと言えるだろうか?

 とにかく、我々はこの任務が単純なものであるとした。1個DESTチームがエイヴォンにいた。おそらく我々は惑星上にこっそり侵入し、キャットの鼻先前でこのチームを引き上げさせるものだと思われた。これはおそらく訓練演習だが、大尉の第六感に頼らずともすべてが説明されてないことはわかるのだ。


結末
 日誌、記録番号965

 私は正しかった――これは訓練任務ではなかった。

 我々が直面したのは二線級ノヴァキャット部隊ではなく、第1ノヴァキャットガードだったのだ。加えて、ノヴァキャットは新型の軽メックを持っていた……その機体はスティンガー、ワスプと同じ速度・ジャンプ力を持ち、火力ときたらそれ以上、PPCが照準用レーザーに見えてしまうような化け物レーザーを数門載せていた。奴らがそれを効果的に使えなかったことを天の神に感謝する。

 我々はシグナルに従って移動し、カゲ・スーツのDEST分隊を発見した……キャットが我々を発見したのと同時だった。キャットは押し通ろうとしたが、我々が立ちふさがり、押しとどめた。DEST分隊が我らの背後に達すると、我々は撤退を始めたが、別のキャットが背後から現れた! 数分間、我々は氏族のサンドイッチに挟まれた肉となった。それからアマンダと彼女の小隊が第1キャットを連打し、私が殴りつけた。ついにキャットが後退し、我々は脱した。

 我々はキャットのメック5機を倒し(そのうち1機は例の新型)、4機を痛めつけた。我々は1機も失わなかったが、自機を含め数機が手のかかる状態となった。DEST分隊は銃撃され、2名のみが脱出ポイントに到達した。

 だが……任務達成である。連合は全額を払った上にボーナスまで追加した。収支はとんとんだったが、我々は先に進むと思う。

 ――ギャノン・デラー








カチ、カチ、ドカン
状況
ナグ・ヘッド平原
ドネガル、ライラ同盟
3070年4月19日


 LICは好きじゃない。スパイ野郎が私の正体を知っているという目で見るのが好きじゃない。まるで私を裁こうとしているかのように。やつらは気がついているのか? 男爵が断ったら、賞金稼ぎかロキを送り込んでくるつもりだったのか?

 男爵は断らなかった。もちろん、断らなかった。男爵は私を気にかけすぎなくらいだった。時々、あまりに忘れっぽくなるとしても。

 しかし、彼らは未来にどんな望みを抱いているのか?

 同盟に戻るのはいいことだと思っていたが、できる限り早くここから立ち去るのを望んでいる。もしかしたら、男爵もそう思ってるかもしれない。我々は辺境に逃げるべきだ。そこに大金が待っている。我々が海賊を撃退する限り、歓迎してくれる田舎惑星があるだろう。

 そのVIPを早く見つけられることを望む。

 ――ヒラリー・フレッチャー


結末

 使える部隊がなかったことから、LICはドネガル浸透の際に、傭兵のバックアップを使わざるを得なくなった。IE内の協力者がクルセイダーズを推薦した。ライラはあらゆる分野で打撃を受けていたが、金に困ることだけはなかった。高額の支払いと成果ボーナスは、グランディンを引き寄せるのに充分であった。

 目標は、ナグ・ヘッド平原の荒野でブレイクの追撃を逃れていたVIPの輸送車列であった。クルセイダーズは逃走車両として使われていたゴブリンの近くに上陸し、このVIPがコムプレス社のCEO、ラス・カークランドであるのを知った。グランディンは、ブレイク派のハンター・キラー・チームが追いついたときに、LIC連絡官との激しい口論を行っていた。

 マネイドミニはグランディンの外周を歯牙にもかけず押し通った。傭兵の車両戦力はドミニをとどめようとして、ほぼ全滅した。グランディンはかろうじてメック部隊を潰走させずに保った。部隊の新バトルアーマー小隊(フレッチャーが指揮し、LICの人員に補佐されていた)が自殺的に立ちふさがったことによって、彼は中隊を結集することができたのである。集中砲火を浴びせて、どうにか敵のメックを一機ずつ倒すことができたが、ドミニは全部隊に大きな損害を与えていた。

 LICは惑星の状況に関する情報を得たので、任務は成功と判定された。マネイドミニの戦闘能力に関する情報は、クルセイダーズにボーナスをもたらした。これはサイボーグに与えられた損害を相殺するものだったのである。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年






テラ・ファーマ

保護領化 3067年12月
解放 3077年11月

参加部隊
 合同軍
   ブラックウィドウ中隊、リュウケン=ロク、ストーン・ラメント
 ワード・オブ・ブレイク
   テラ・ファーマ保護領市民軍、オパクス・ヴェナトーリ(特殊部隊)

 ゲレイロ作戦はテラ・ファーマを、隣人と隣人がリャオとダヴィオンの名の下に戦う内戦へとたたき落とした。後にブレイク派の技術者が紛争で破壊されたインフラを回復させたことから、ワードによる政治的な提案は地元住人にとって受け入れやすいものとなった。自治の約束は、3068年8月、惑星がブレイク保護領に加入したことで封じられた。

 ブレイク派から手荒に扱われることはなかったにも関わらず、聖戦の残虐さは惑星をすぐに分裂させた。ワードと戦うためダヴィオン=リャオの遺恨は脇に置かれ、3070年までにパルチザンがルサルシア市内で復活した。第七奇襲部隊(ウルフ竜機兵団)の生存者が抵抗軍を組織し、保護領内の他の場所にいる反ブレイク軍と連絡を取った。

 3073年4月、ブラックウィドウ中隊とオパクス・ヴェナトーリが決定的でない衝突をしたことは、地球の注意を惹いた。ウィドウは元々、抵抗軍に補給し、タービン山脈のワークキャンプ攻撃のチャンスをつかむためにやってきた。対パルチザン作戦のため惑星にいたオパクス・ヴェナトーリは、ウィドウを迎撃するため離脱した。この衝突の結末は不透明なものだった。ウィドウは撤退したが、その存在はブレイク最高司令部を警戒させた。

 テラ・ファーマ保護領市民軍は、ゲリラの危機に対処するべく規模拡大する前に、忠誠心を注意深く吟味された。急進的な新地球党が新しい人材を供給し、指導者のマリウス・ヴェルロウェンが指揮官として任命された。ヴェルロウェンは野蛮な鎮圧戦に乗りだし、パルチザンを倒すために人質を取り、集団報復を行った。

 3076年前半までに、保護領市民軍はレジスタンスをオケーノグの森で孤立させた。だが、猶予は短かった。合同軍のエージェントがキタリー・マニフェストとブレイクが逆転されたとのニュースを密かに持ち込んだ。レジスタンスは3076年3月に全面的な暴動を起こし、保護領市民軍は当然の残虐さで鎮圧した。この虐殺は都市でのゲリラ戦を煽った。

 闘争は、3078年2月まで続いた。このとき合同軍がテラ・ファーマ解放にやってきたのである。エリートのリュウケン=ロクは侵攻の先陣を切り、分散した保護領市民軍を圧倒した。新地球党は裁判に直面するよりも、自殺的な最期で首都アセルリッツを破壊した。この最後の戦いの後、ヴェルロウェンは行方不明となっている。彼は現在、戦争犯罪者のリストに載っている。

 ――『テールズ・オブ・ジハード』リパブリック・エデュケーション・プレス、3092年








ファイナル・スタンド
状況
フォービドゥン・シティ廃墟
シーアン、カペラ大連邦国
3070年9月19日


 さあ、いよいよだ! 本日、リャオ宮殿の廃墟に攻勢をかける。男爵はローブ野郎どもがそれをやってのけると考えている。終わったら、我が隊は退出して、部隊再建する。それがどうしても必要だった。

 地獄であった。ブレイク派とカペラ人は絶えずこの地域を砲撃していた。5日前、チンガウがジャックを押しつぶしたあとで、私が第3小隊を引き継がねばならなかった。くたくたになっている。なぜキャピーどもはビッチのカトリーナを代わりに踏みつぶさなかったのか? どうしたらジャックの代わりを見つけられるのかわからない。

 男爵はベイリンで大打撃を受けた各部隊から生存者を集められると考えている。だが、その大半はメック戦士、戦車兵たちなのである。歩兵中隊が重要なままであり続けるように処置せねばならない。そうすれば彼にとって有用でいられる。もしかしたら、もっとバトルアーマーが必要だろうか?

 ――ヒラリー・フレッチャー


攻撃側
 攻撃側は、ワード・オブ・ブレイクの第17、第24師団、ドラゴンブレス傭兵部隊の分隊からなる。


防御側
 防御側は、第3カノープス機兵連隊、紅色槍機兵隊、デスコマンドの分隊からなる。


結末

 天宮への強襲は、激しい砲撃と共に始まり、フォービドゥン・シティの広大な一帯をがれきに変えた。ワード第24師団は残骸と狂信的なカペラ市民軍の荒波を通って、天宮へと向かった。ワードは装備不十分な歩兵の群れと遭遇し、情け容赦のかけらもなく大規模に火炎放射器を使ってすべての抵抗を掃討した。

 カペラの狂信者たちはほとんど脅威にならなかったのだが、タロン・ザーン戦略調整官がカノープス機兵連隊と紅色槍機兵隊から援軍を呼ぶだけの時間を稼いでのけた。ワードの強襲は、フォービドゥン・シティ内の通りいくつかに沿って行われた、激しい一進一退の戦いとなった。ワード・オブ・ブレイクが数で大きくまさっていたが、予備部隊が次々と投げ込まれるに連れ、カペラの抵抗を押しつぶして進むのは、残忍で退屈な作業であると判明した。

 グランディン・クルセイダーズは西から首都に入る道をふさぐよう命じられた。クルセイダーズは戦闘に加わろうと急ぐ小規模なカペラ部隊を迎撃し、市街戦という最悪を回避したのである。

 第24師団が戦線を突破したまさにその瞬間、デスコマンドの予備と武家イマーラが立ち向かった。第24師団はこの戦いに勝ったかもしれない……ブラックウィンド槍機兵団が突如として到着しなければ。自殺的な強襲を行った槍機兵団は全面的に崩壊し、指揮官のワーナー・ドールズが死亡したのだが、ブレイク派を阻止すると同時にリャオ首相が乗ったエンペラーかもしれないそのメックを守ったのである。天宮を占領するチャンスの潰えたワードは直後に退却を開始した。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








グリム・デス
状況
降下船移動中、パイレーツ・ポイントK-E7
シェラタン、カオス境界域
3070年11月29日


 カンバーランドの計画は何にも劣らぬものだ。やつらをあちこちで叩き、苛立たせ、引き寄せる。持てるすべてで、やつらを袋だたきにする。それから地獄のように逃げ出す。降下船に乗って、離陸する。どこか新しい落ち着ける場所を探して、このプロセスを繰り返す。もし、我々が幸運なら、生き残れるだろう。そうでないなら、すくなくとも私は死ぬだろう。

 ――ミュゼット・ブレイディ中尉の日記、3070年11月29日

 グリム・デターミネーションを倒すのに雇われた傭兵が我々だけでないことを神に感謝する。恒星連邦の後援者たちは、我々だけでは人手不足であるのを知っていたようだ。父が言うには、我々は端から入って、少しずつ中心に向かって浸食し、両断するのだという。ろくでもなく聞こえるが、それが仕事なのだ。実行しにいこう。

 ――ロジャート・ゴダード中尉の日記、3070年11月29日


グリム・デターミネーション
 名高い過去を持つ問題だらけのグリム・デターミネーションは、シェラタンで数年にわたって絶え間ないテロ攻撃を受けた。グリム・デターミネーションは一般兵の部隊である。


結末
 私がどれだけ愚かなのをかわかってしまうよりも泥酔していたほうがまだマシだ。我々と他の傭兵を雇ったのが恒星連邦の忠誠派でないとのニュースが通信機に飛び込んできた。それはくそったれたワード・オブ・ブレイクだったのだ。グリム・デターミネーションはブレイク派がシェラタンを支配するのを妨げていたすべてだった。そして我々は畜生どもがこの世界を奪うのを助けた。困難だったはずだが、ブレイク派はこの数年間テロリストを後援していたようだ。爆破と暗殺がデターミネーションの士気をほとんど奪っていた。

 彼らは打ちのめされていたので、早い段階で降伏した。我々はこの数年のグリム・デターミネーションについてのすべてを知っていた。ああ、ジュニアは戦闘を行っていたから、ニュースヴィッドに出てないあいだの連中について知らなかった。我らのように、デターミネーションはほとんどの期間をAFFSに雇われていた。彼らがハッチを開けて条件を尋ねたことは私を深く傷つけた。神よ、我を救いたまえ、彼らの士気低下は感染するものだったようだ。私が彼らに説明できたのは、契約で求められていたのは部隊を破壊することであって、彼らを全員殺すことではなかったことだ。手短に話すと、ミサイラーズの規模は三倍近くなった。我々は後方を叩いたので、降下船と大量の補給物資も得た。傭兵の人生、そうなのだろう。

 ――ロジャー・カンバーランド大佐の日記、3070年12月5日








バランスを崩す
状況
侵入進路
エンゼスフレッド、ライラ同盟
3071年3月10日


 グリム・デターミネーションの生存者を吸収したときに入手した航宙艦で、我々はガラテアに向かった。あまりに忙しすぎた。我々はまともな契約を得ようとさえしなかった。なぜなら、航宙艦を長いあいだ無防備にすることは、まったく良くない見通しをもたらすからだ。我々は最初に来た実現可能な契約をとった。我々はVIPでない人物たちをリムコレクションに運んでいるところだった。とびきり魅力的な仕事とは言えないが、近年、辺境は海賊の攻撃を受けており、到着したら手を貸せるかもしれない。

 辺境までのルートにエンゼスフレッドがあり、ここで補給を受けることになっていた。助けを聞いたのはこのときである。人が増えたので、我々は仕事を求めていた。それに新人たちがどう働くかを見るのもいいだろう。ドライブの再充電時間があるので、乗客たちが遅刻することもない。

 ――ロジャー・カンバーランド大佐の日記、3071年3月5日


結末
 グリム・デターミネーションがもうないのは悲しむべきことである。人生を費やした部隊が死んだことに、どう対処したらいいのだろうか? 弾圧的なデモクラシー・ナウの馬鹿どもを片付けてやればいいのだ。このいわゆる民主人民軍は、我らより地上軍の数が多かったが、航空支援を持っていなかった。グリム・デターミネーションの戦闘機が、ミサイラーズの無謀な戦闘機乗り二人に続き、後にはクレーターが残された。古き良きアン・ドブス(現在は、マクグレイディ大尉指揮下の中尉)は、3度の通過でメック2機を片付けた。ミサイラーズに持って来られたのは、最後の航空中隊だけだったが、少なくとも、家を見つけることができた。ミサイラーズに問題はない。カンバーランド大尉は、ミサイラーズの記章とセットで古い記章をつけることさえ許してくれた。ラインハルト一族からの報酬を得たカンバーランドは、我々と一緒に来た失機者に新しいメックを数機買うつもりだと言った。

 ――アンセル・ハールハー中尉の日記、3071年3月6日

 グリム・デターミネーションの戦車乗りたちは仕事の仕方を心得ている。ここで貴族たちを救った時のようにシェラタンでも巧妙にやっていたら、我々にチャンスはなかったことだろう。1個中隊の戦車を指揮しているのは奇妙なことだった。戦闘機、戦車、追加のメックを持つ我々は、書類上、諸兵科連合大隊である。父にかかってるプレッシャーは、ほんの一部を指揮している私よりはるかに大きいのではないだろうか。

 ――ロジャー・ゴダード大尉の日記、3071年3月6日








ナハトブリッツ
状況
長期保存施設、インターナショナル・ゾーン
ソラリスVII、ライラ同盟
3071年8月17日


(ウルフネット報告書30720109/155-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 SHDLと三ヶ月働いたが、彼らに対する評価は変わってない……彼らは混乱している。信頼できるステイブルが若干ある一方、大半のステイブル(そして戦士たち)はブレイク派を倒すために手を組むことよりも、現在のランキングを気にかけている。SHDL内部での破壊工作と裏切りは、ISFの集会よりも頻繁なのである。若干のブレイク派潜入工作員を加えた彼らは、両陣営に対するゲームを行い、すべての状況は狂気に満ちている。

 それにも関わらず、我々は三ヶ月間、IZを確保している。キャノンズとふたつのステイブルは、ブレイク派は敵であることを覚えている少数派である。だが、ブレイク派が戦力強化し、攻撃の準備をしているという噂は根強い。もしそれが起きたのなら、それを止められるのは我々しかいない。


結末

 日誌、記録番号1631

 ソラリスの状況を差す頭字語がある……FUBAR(何もかも全部ひどい)。いわゆるSHDLはグループとしてどうしようもない。彼らはソラリスを守ることより現在のランキングを気にしているのだ。全員がランキングに取り憑かれており、ウォブリーズを行動に走らせた。私はこんな連中を信頼することはない……選択肢があるのなら。

 愚かしさの一例は倉庫である。倉庫を捕獲してから三ヶ月が経ち、2個大隊分の充分な装備がまだ残っているのだが、SHDLはそれを奪い合っているのだ! 部下たちは倉庫の中身を巡る争いを何度か止めたことがある。そんなことのためにこんなところにいるんじゃない!

 SHDLが内輪で争う一方、ウォブリーズはIZへの再度の強襲のために準備を行った。抜け目ないステイブル・マスターたちと脅威について話し合い、倉庫の中身をすべて外に移動することに同意した。移動が終わるまで倉庫を守るのと引き替えに、持ち出した装備の1パーセントを我々が受け取ることにも合意した。

 SHDLが装備の移動を始める二時間前に、ウォブリーズはIZを急襲し、道中にあったすべてを倒壊させた。我々は倉庫の二つを失ったが、ウォブリーズに高い代価を支払わせた。最終的に、逃げられたのは少数だけだった。

 SHDLが運搬するあいだ、我々は戦場の回収品を集めた。回収品と守られた装備の取り分で、我々はすべてうまくやり遂げた。

 今回は。

 ――ギャノン・デラー








弾圧
状況
マクレディ
メルセデス、ライラ同盟
3071年8月28日


 23/08/71: 辺鄙な惑星の辺鄙なところにある農産物加工工場を吹き飛ばす契約を得た。しかし、支払いは怪しいほどよかった。カトリーナがちょっとした調査を行ったところ、この工場はカルバン・シュトラウス……滑稽なデモクラシー・ナウ運動の扇動政治家が所有していることが明らかになった。我々に金を出してるのは、ライバルの扇動家リンドン・アシュリーか、懸念する貴族だろう。後者であることを望む。先見の明があるだれかがいるということになるからだ。だが、それは問題ではない。

 そういえば、ブロークン・ホイール・ブラザーフッドにいる友人経由で、ジェナから興味深いニュースを受け取った。彼らは自然の秩序(ダヴィオンのスカートの後ろに隠れている身分の低いクズどもが乱したもの)を回復するため、行動に移る準備をしているようだ。どのように進展するか楽しみにしている。

 ――ピエール・グランディン


結末

 「農業工場」は弾薬工場であった。それが判明したのは、クルセイダーズが襲撃を始めた後である。

 装備の優れた工場警備隊は、対空砲座のネットワークに支援されており、掘り返すのは難題であった。最終的に、バトルメックに援護された装甲歩兵が急襲し、各砲台を無効化した。指揮本部を確保した後、ヒラリー・フレッチャーは目標の正体について警告を行った。グランディンの見せた反応は、出来るだけ早く残った警備隊を完全に排除するというものだった。

 工場が確保されると、クルセイダーズは弾薬を略奪した。余った分はブラックマーケットで売り払うつもりだった。持てるだけ持ち出したあと、バクスター中尉指揮下の工兵たちは、出来るだけ徹底的に工場を破壊するべく工場の爆薬を使って、後にいぶるクレーターを残したのだった。グランディンは嘘に対する厳しい非難と共に、画像をブローカーに転送した。

 数週間以内に破壊された工場の画像はアラリオン州に行き渡り、「市民軍の不在が『海賊』の跳梁を許し、経済インフラの破壊につながっている」と非難するリンドン・アシュリーのマニフェストにつながった。アシュリー率いるデモクラシー・ナウ急進派の支持が増えると、カルバン・シュトラウスの財産は減少することになった。デモクラシー・ナウの名目上のリーダーであったカルバン・シュトラウスは、工場の破壊により多額の収入を失い、リンドン・アシュリーの挑戦を受け流すのに使える資源を減らしたのだった。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年






ドネガル

侵攻 3068年3月
解放 3072年2月

参加部隊
 コムスター
   第116師団
 ライラ同盟
   ドネガル猟兵隊、第6ライラ防衛軍
 (放浪)ウルフ氏族
   アルファ銀河隊
 ワード・オブ・ブレイク
   第2師団、第18師団、第31師団、第50シャドウ師団

 3068年3月17日は、ドネガルにとって長く忘れられない日になるだろう。どこからか現れたワード・オブ・ブレイクの戦艦隊が、ライラ宙域を破壊する第二波に着手したのである。ライラ同盟がかろうじてターカッドの損失に対処している最中に、ドネガル、コベントリ、ヘスペラスIIへの協調した攻撃が行われたことは、ライラの指揮系統を一刀両断にすると同時に、軍需工場の大半を無力化することが明確に意図されていた。ドネガルでは、地上にブーツをつけることなく目的が達成された。ワードが必要としたのは〈ブレイク・リデンプション〉だけだったのである。このヴィンセント級コルベットは戦うことなく惑星の上に現れ、戦艦級兵器と数発の核兵器と正確な射撃術を披露した。二日以内に、ナシャン・ディバーシフィードとロッキード/CBMの広大な工場施設群はがれきに変わった。すべての大都市は主要なインフラと――おそらくは嫌がらせで――ランドマークを奪われた。ドネガル猟兵隊戦闘機大隊の激しい抵抗にもかかわらず、〈ブレイク・リデンプション〉は、絶え間ない集中砲火を放って市民の士気を破壊し、それから砲門を閉じて惑星を周回し、待った。

 約一ヶ月後、LAAFは1隻の戦艦を持ってきて、封鎖を終わらせようとした。約2年にわたって、〈イアン・マッキストン〉は、ライラ艦隊におけるドネガルの希望のビーコンだった。〈イアン・マッキストン〉が最大限の努力を払ったにもかかわらず、〈ブレイク・リデンプション〉をこの星系から追い出すことはできなかった。

 3070年2月、ワードは第2師団をドネガルに降下させた。ライラは知らないことだが、前年、数個レベルIIが惑星中の戦略地点に輸送され、隠されていた。第2師団が到着すると、隠れたブレイク軍が現れ、防衛軍を驚かせた。最後の手段として、〈イアン・マッキストン〉は救援軍を惑星に護衛しようとしたが、失敗した上に大破した。ドネガルは一週間持ちこたえ、降伏した。ライラの同盟軍が効果的な救援任務を実施するまでには、さらに2年の月日がかかった。

 ブレイク派は破壊されなかった生産能力――有名な軌道上の「ブリキ缶」含む――を、ブレイク派の戦争向けに転換した。3070年後半、ワードはエルンスト・リーガン司教の第18師団を派遣し、指揮をとらせた。せっかちで軍事指導以外は無能な男である司教には、反抗的な市民で満ちた惑星を統治するのが困難であった。強制労働、収容所、大量処刑は、落ち着きのない民衆を脅すことが出来なかった。〈ブレイク・リデンプション〉がなかったら、すぐにも公然とした反乱が起きていたかもしれない。たいしたことではないが、ドネガル市民は社会不安を続行し、司教が増援の訴えを急がせたことにプライドを持っていた。

 リーガンの望みは、3072年前半にかなえられた。ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンの救援作戦が行われるわずか数週間前に、第50シャドウ師団がドネガルに送り込まれたのである。遅れが出て、破棄され、さらに遅れたヴィクター軍司教のドネガル救援計画は、ワード・オブ・ブレイクROMにリークされた。ひっきりなしの遅れでヴィクターは忍耐を失い、タスクフォースに作戦決行を命じた。

 コムスター、LAAF、放浪ウルフ氏族は三週間にわたって肩を並べて戦い、ゆっくりとワード・オブ・ブレイク師団を塹壕から追い払い、軌道と地上の両方で退却する彼らを叩いた。どういうことか、第50シャドウ師団はコムガードと氏族軍を主な目標とした。この視野の狭さで、ワードは優位の大半を失い、解放者側を有利にしたのである。後から見ると、彼らが敗北したのは、この偏った交戦パターンが原因である。もし第50がマネイドミニ兵・軌道支援・優れた装備を理にかなった方法で使っていたら、結果は決定的に異なったものになっていたかもしれない。

 2月14日、シュタイナー=ダヴィオンはドネガルが解放されたと宣言した――敵軍が焦土戦術を実行しながら逃げていたことを考えると、これはいささか時期尚早である。しかし、敵がドネガルにいたとしても、結果は明白だった……ライラの同盟軍は事実上星系を解放したのである。

 ドネガルが占領から復旧するまでには年月を要した。数百万人が殺され、十億人が家を失い、数千人が追放されたのである。都市のうち半数以上が慢性の市民サービス喪失問題に苦しんだ……健康と福祉は20年にわたって大きく低下した。やがて、ひどい経済不況は好転したが、ブレイク派への消えない怒りは残った。

 3076年ドネガルの首都でサミットが開かれ、デヴリン・ストーンがやってくると民衆の苦しみがいくらか伝わった。SCOUR作戦中に厳重なサミットが開かれた場所は、3085年に史跡として指定された。

――『決意と共に』ドネガル・プレス社、3094年






ガラテア

侵攻 3072年10月
解放 3076年1月

参加部隊
 合同軍
   コムガード第1軍、第4軍、第1スカイア猟兵隊、ウルフ氏族デルタ銀河隊、ストーン・ラメント
   傭兵
     聖キャメロン騎士団、トゥース・オブ・ユミル、バトルコープス軍団
 ワード・オブ・ブレイク
   第11師団、第47シャドウ師団
   傭兵/不正規軍
     バラード装甲機兵団、グレイゴースト、マーズ胸甲機兵隊

 ワードのガラテア侵略は、素早く、残忍で、すさまじく効果的であった。この世界は伝統的に堅い守りがしかれていなかった一方で、短期滞在の傭兵が大勢いることはガラテアを難しい目標にしていた。よって、ワード・オブ・ブレイクはこの世界を征服するために、第11師団、第47シャドウ師団、傭兵混成1個連隊などの大群を揃えた。

 長らく消息不明だったノースウィンド・ハイランダーズを騙ったブレイク第11師団は、強引なガラポートへの上陸を成功させ、ワード傭兵隊のための安全な降下地点を確保した。第47シャドウ師団によるガラテアシティへの自殺的な直接降下は、組織的な抵抗の試みを妨害した。事前の情報を得て活動したマネイドミニたちは、主要傭兵部隊、決定的な防衛地点を素早く攻撃した。ヘッドハンティング攻撃によって第11師団と支援傭兵隊はガラポートから前進し、数日で首都の大半を奪うことができた。数週間におよぶ粘り強い抵抗を追いやったあとで、ワードはガラテアを手に入れた。だが、この世界を完全に支配するのは、占領の期間を通して、不可能だったのである。

 3075年、デヴリン・ストーンは、スカイア地方を安定させる一貫として、ガラテアを解放の目標とした。ガラテアに自由を取り戻すことは、前進する道を作ることと、「傭兵たちの星」を再生して成長するストーン合同軍を支援させること、両方にとって重要だった。

 最初の強襲は、コムスター第1軍の第79師団、第103師団と、支援する第1スカイア猟兵隊に割り当てられた。4個を超える合同軍の諸兵科連合連隊と、ワードに対する地元のレジスタンス運動は、駐屯するブレイク第11師団と支援傭兵を払いのけるのに充分だと考えられた。

 11月2日に始まった合同軍の強襲はきわめて有望なものだった。ガラポートは最初の12時間で確保され、最初の1週間のうちに、ワードから首都を奪い返した。めざましい成功を収めたことから、ガラテアにはすぐライラの旗が翻るだろうことを予期して、ストーンは航空宇宙戦力の大半をこの強襲からはぎ取った。ワードが最初の侵攻で学んだ教訓をコムガードも学ぶことになった……ガラテア・シティを支配することは、ガラテアを支配するのとは別のことなのだ。

 惑星市民の大半は首都から100km以内に住んでいる一方で、残りはかつての中心領域最大の星間連盟訓練センターにいた。巨大なSLDFの訓練用に、掩蔽壕、演習場、地下通路、そのほかの名残が、この世界には残されていた。この環境は、ブレイク侵攻の生存者たちがゲリラ戦を行うのに理想的だった。

 ブレイク派はこの不利を資産へと変えた。首都から追い出されたワードの防衛軍は地方に移動した。ブレイク軍の大半は、星間連盟の要塞パフォスとピグマリオンに入った。ここから第11は一撃離脱戦術を始め、同時にマネイドミニの兵士が残忍なテロリズムを画策した。11月半ば、このようなマネイドミニの攻撃によって、合同軍タスクフォースの指揮官、スティーヴン・キマーリー司教が死亡した。ストーンとモーガン・ケル大公は脅威に気づき、アークロイヤルとヘスペラスIIから援軍を派遣した。これらの戦力によって、ルーイザ・ドラガ司教は攻勢を取り戻すことが出来た。

 ドラガは第79師団と援軍の大半をピグマリオンの第103師団に加わらせた。火力を強化してもなお、合同軍がワードの防衛を破るのに3日を要した。この突破によって、第103が要塞に流入し、ブレイク派を総崩れにした。合同軍が主力を倒すと、パフォスの防衛軍は脱出して、砂漠の奥深くに隠された降下船へと逃げていった。

――『消えゆく光: ガラテアの失われる役割』、リパブリックプレス、3096年








グレイヴ・ジャスティス
状況
ターカッドシティ
ターカッド、ライラ同盟
3072年1月24日


 合同軍の大多数は、撤退していくワードから遠く離れたところにいた。よって、ケルハウンドが立ちふさがり、逃げるワードを食い止める鋼鉄の壁を形成することになった。突破し撤退しようとするワードの火力を受けるハウンドは、グレイヴ・ウォーカーズを投入した。ワードの突破を止めるため、この傭兵団はあちこち移動を繰り返した。ターカッド戦のあいだほぼ予備となっていたグレイヴ・ウォーカーズは、ワード・オブ・ブレイクが潰走を始めたとき、良い状態にあった。数個小傭兵部隊が組み込まれていてなお、ウォーカーズは、ウルフ竜機兵団の吠える狼の紋章をまとった不安定な部隊よりも遙かに良いと考えられた。

――『祖国奪還』、ターカッド大学プレス、3083年


結末
 聖戦を絶え間ない訓練に費やしたグレイヴ・ウォーカーズは戦闘に加わる準備ができており、単なる「もうひとつのケルハウンド二軍」ではないことを証明した。諸兵科連合の経験を持ち、数十の元所属部隊の戦術をシームレスに統合しているウォーカーズは、この任務に適任だった。ケルハウンドをすり抜けようとしたロウブロウのごく一部だけが、どうにかグレイヴ・ウォーカーズから逃れるのに成功した。

 命令への忠実さと、占領時の英雄的な行為によって、ウォーカーズはエリート傭兵の地位を得て、ケルハウンドの影から脱したのである。

――『祖国奪還』、ターカッド大学プレス、3083年






ベンジャミン

侵攻 3068年4月
解放 3072年12月

参加部隊
 ノヴァキャット氏族
   タウ銀河隊
 ドラコ連合
   第6ゴースト、第2ベンジャミン正規隊、第15ベンジャミン正規隊
 恒星連邦
   第2ロビンソン特戦隊、サクハラ養成校訓練大隊
   傭兵
     ベイオウルフ特戦隊、ドネル奇襲部隊、ピョートル私兵隊、第227ディヴィッド・ハンターズ
 ワード・オブ・ブレイク
   第28師団、第45シャドウ師団

 3068年4月は、ドラコ連合のベンジャミン軍事管区主星が聖戦に関わった最初の年である。ディーロンからISF長官ニンユ・ケライ=インドラハラが安全を求めてベンジャミンに逃げてきた。ディーロンで受けた傷から回復する時間を与えられ、すべてが順調なように見えた。しかし、12月、裏切り者の恒星連邦軍が、ドラコ連合中に拡がった混乱を利用して、ベンジャミンに侵攻した。

 ドラコ境界域軍にしても、AFFSの強襲はきわめて残酷だった。サクハラ訓練大隊は意識的に民間被害を減らそうとした。第2ロビンソン特戦隊は戦闘中にモラルを持たず、病院、学校、家屋を致死的な効率性で目標とした。死人の中にはISF長官自身が含まれていた。このとき唯一のDCMS守備隊だった第6ゴーストは勇敢に戦ったが、第2ロビンソン相手に保つことが出来なかった。12月に入って一週間以内に、第6は事実上壊滅し、わずかな生き残りは地下に潜り、抵抗の極秘作戦に従事した。これによりAFFS軍はベンジャミンを完全に支配できなかった。

 3069年2月の第一週、第2、第15ベンジャミン正規隊がついに管区首都に帰還し、占領軍から解放しようとした。これらベンジャミン正規隊はAFFS軍を掃討することなく、どちらの側も準備していなかった戦闘に巻き込まれた。2月20日、ワード・オブ・ブレイク軍が到着し、バランスを再び傾けたのである。

 AFFS軍のようにブレイク派は目標を選ばなかった。目的は連合の指揮系統にさらなる打撃を与えることだったのだが、喜んで惑星上のAFFSドラコ境界域軍を片付けた。ワードの力強い強行偵察はDCMS軍とAFFS軍の両方を粉砕した。ドラコ境界域兵が退却したとき、ブレイク派の航空宇宙戦力が宇宙で待ち構えていた。ポケット戦艦は退却するAFFS兵の一部を破壊した……逃げおおせたのは30パーセント以下の戦力だった。

 ブレイク派はすぐに襲撃を終え、2個ベンジャミン正規連隊が首都に残された。しかし、3072年5月、ワードは戻ってきた。第28師団、第45シャドウ師団は、農業を支援する軌道上の人工太陽多数を破壊することで征服を始めた。彼らは残忍な効率性で強襲を実行し、ポケット戦艦からの軌道砲撃で地上軍を支援した。すぐに抵抗活動が始まったが、オーサカ野戦演習場からの訓練されていない民間人はほとんど脅威にならなかった。

 11月、封鎖突破の試みは不運に終わった。DCA(ドラコ連合海軍)は参加した戦艦3隻のすべてを失ったが、ブレイク派戦艦群を抹殺するのに成功し、それから残ったポケット戦艦に襲いかかった。この任務は犠牲が大きかったが、一ヶ月後にノヴァキャットが上陸する道を切り開き、キャットは地上のブレイク軍を撃破した。第6ゴーストの戦術を真似た第45シャドウ師団の生き残りは、地下に戻り、ゲリラ戦を展開した。連合は再び管区主星を支配したが、戦力は崩壊していた。

 第45シャドウ師団のテロリストは3079年に根絶された。

――『一掃されて』、ベンジャミン惑星プレス、3098年








鋼の意思
状況
ターカッド宇宙港、ターカッド・シティ
ターカッド、ライラ同盟
3072年1月26日


 第37師団の脱出を妨害するため、ケルハウンドは助けを求めてきた。どれほど我らが喜んだことか。これは単に元グリムの隊員たちが求めていた報復というわけではなかった。ブレイクの糞どもが我が隊の戦車兵を殺したことで、いまだ私のはらわたは煮えくりかえっている。やつらは行動不能になった戦車の乗員をわざわざ殺したのだ。

 この廃墟の中にまだブレイクの破壊工作チームがいるかもしれないので、降下船の守りが必要だった。志願者を募ると、負傷者までもが戦いに戻りたがったが、ベッドにいるよう命令しておいた。ジュニアと戦車隊を後に残してLZ(降下地点)の監視をさせ、戦闘機に前方の降下船を攻撃させることにする。中隊分のメックしか連れて行けないが、神に誓ってブレイクの戦線に大穴を開けて、死者たちの復讐をしてやるつもりだ。

 ――ロジャー・カンバーランド大佐の日記、3072年1月26日


結末
 聖戦で最初の真に輝かしい瞬間だった。ターカッドが解放されたのだ。ピーター・シュタイナー=ダヴィオンが占領を生き延びたのが確実となると、アダム・シュタイナーはすぐに国家主席の称号をピーターに戻した。5年間の地獄。これをなしたのは、ダヴィオンのほうの血でなければならない。アダム・シュタイナーが恥じる必要はない。私はアダムに従い続け、前線で指揮する彼がどのようにして忌々しいブレイク派の臆病者から主星を取り戻すのかを見ていた。

 我々はかなりうまくやった。回復できない損害はなかったが、廃墟に隠された地雷原で1個小隊を失ってしまった。すぐに戦闘状態に戻せるとグリッゼルは言っているが、運用可能な機体が枯渇しているのを考えると、それは朗報だろう。

 ――ロジャー・カンバーランド大佐の日記、3072年1月26日

 あなたに捧げる、父よ。きっと我々のことを多いに誇ってくれることだろう。我々はあのクズどもを宇宙まで追いかけ、残されたしんがりを叩きつぶした。グリム・デターミネーションがなくなったことを恨むであろうことは分かっているが、ミサイラーズは同じ魂を持っている。あなたはきっと、彼らを好きになるだろう。

 ――アンセル・ハールハー中尉の日記、3072年1月26日

 コンラッドに会ったら、首を絞めてやらにゃならない。あいつはいったい何を考えているんだ? なんでスピカ駐屯の契約を結んでしまったんだ? 勝利を祝う時間すらない。ちきしょう。この戦争中、降下船の中にずっといたってのに。

 ――ミュゼット・ブレイディ大尉の日記、3072年1月26日








クリーン・スウィープ
状況
バンソン・ベイン、リラック・アイランド
アルテアズ・チョイス、タウラス連合
3072年6月12日


 (ウルフネット報告書30721125/45-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 ソラリスを離れてすぐ、古い友達からメッセージを受け取った。ミスター・アスカイだ。彼は高額の報酬と、降下船にいっぱいの恒星連邦製装備を提示した……もし我々が任務を受けるというのなら。依頼主が言うには、目標は現在の場所から数ヶ月離れたタウラス連合のアルテアズ・チョイスということだ。この少佐さんは任務に全力を尽くしているようだ……私が考えるに。彼はタウラスを好いておらず、アスカイが我々に目の前にぶら下げた装備をすべて持って行くことに異存を示さなかった。彼を責めることは出来ない。ソラリスにいた間に我らの戦力は半分になっており、銀行口座には使える金が貯まっていた。それはさておいても、しばらく中心領域から席を外すというのは良い考えかもしれない。

 この装備のシリアルナンバーを記録し、次の報告で送付する。これらのハードウェアが盗まれたものでも私は驚かない。


クリーンキル傭兵部隊
 最近クリーンキルが内紛を起こしたことから、この傭兵団とアルテアズ・チョイス政府との関係は薄氷のものとなっている。金をかける価値があることをどうしても証明したがっていることから、彼らは少なくとも60%の損失を受けるまで戦場から撤退することがない。

 クリーンキルは、シャーナ・リッチマン少佐と3人の大尉に率いられる。この指揮小隊は通常、重強襲バトルメック・車両の組み合わせからなっている。


結末
 日誌、記録番号1985

 アスカイにだまされた。

 我々の目標はクリーンキル傭兵部隊で、我々はAFFSの記章をつけて行動した。我々は首都の南、遠いところに上陸し、北へ向けて移動し始め、クリーンキルをこちらに引き寄せた。首都から30クリックのところで、我々は互いを発見した。我々の仕事は、彼らを忙しくさせることで、できる限り大きい打撃を与えた。

 厄介な戦いになった。我々は技術面で優位があったが、クリーンキルの連中は地形を知っており、常に間接砲を我らに向かって撃ちまくり、譲るまいと断固たる決意をしていた。クリーンキルの損害が50%以上になるまで、我々は互いに殴り合った。クリーンキルは戦闘退却を行った……リッチマン少佐のバンシーが左脚を失うまで。その後は素早く後退した。

 低い爆発音が聞こえてきたとき、我々は残されたクリーンキルの隊員たち(立腹しているリッチマン少佐含む)を駆り集めるのをやめた。アマンダは、北に煙を上げる大規模な戦列がいると、すぐに言った。電子戦担当のスパークスが次に、あれは別のAFFS部隊――首都を攻撃する本物のAFFS部隊だと言った。それから誰かが化学兵器を起爆させた。

 私はすぐキャノン全隊員を転進させ、降下船へと急いだ。我々が軌道上にあがったころには、ニュースが「ダヴィオンの悪魔」についてがなり立て、我々全員の首なし死体を求めた。

 馬鹿げた話に足を踏み入れてしまったようだ。

 ――ギャノン・デラー








ライト・マシーン
状況
スカイタワー・シティ、ブダ・ウェポン・セクター
ルシエン、ドラコ連合
3074年3月14日


 (ウルフネット報告書30740719/37-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 4ヶ月の無益な捜索の後、我々はついにヒデオシ・ヤミカの正確な居場所を突き止めた。

 ヤミカの技術研究チームは、スカイタワー・シティ(ブダ・ウェポン・セクター内)に向かったのだ。ここは最近まで黒龍会が支配していた。不幸にも、ワードもヤミカを探しており、我々よりも優れた諜報ゲームをしていた。急いで行かないと、ブレイク派が先にヤミカたちを捕まえてしまうだろう。

 我々はブレイク派が黒龍会にリークするとは思っていなかった。我々がたどり着く前に、黒龍会はスカイタワー・シティを取り戻そうと攻撃をしかけた。我々が到着すると、ふたつの連合派閥の戦いはすでに本格的なものとなっており、ブレイク派はちょうど戦場にたどり着いたところだった。我々はブダの研究チームをかけたサイボーグとのレースの中にいた。


結末
 日誌、記録番号2682

 失敗した。

 ごまかしようがない。キャノンズの半分が死ぬか負傷し、修理には数ヶ月がかかる。この5年ではじめてキャノンズは任務に失敗したのだ。

 マネイドミニとシャドウ師団については聞いていたが、戦闘で直面するまで、あのクリーチャーどものことを理解できるはずがない。

 そう、クリーチャーだ。あいつらはもう人間でなく、鋼と肉の化け物に過ぎない。やつらのメックは外見と移動の仕方が悪魔に似ていた。彼らは進路にいたすべてをなぎ倒した――黒龍会、サムライ、そして我々。

 我々はヤミカのチームがいる建物にたどり着いたが、彼らを脱出させる前に、マネイドミニが攻撃してきた。2分以内に第1中隊は戦力の1/3を失った。第2中隊が敵の側面を突こうとしたが、サイボーグに切り刻まれた。アマンダはペネトレーターからの緊急脱出を強いられ、すんでのところでウォブリーズのバトルアーマー分隊の手を逃れた。

 我々はできる限り長く持ちこたえた。我々は化け物どもをいくつか倒したが、止めることはできなかった。悪魔型のバトルアーマー数個分隊が建物に群がり、ヤミカのチームを捕まえた。MDたちはヤミカのチームをホバークラフトに乗せるだけ長く持ちこたえた。ホバークラフトが出発すると、マネイドミニは退却し、迎撃するチャンスを与えることはなかった。追跡できなかった。

 さて、ブダにどうして失敗したのか説明せねばならない。今後どのクライアントに対しても同じことを繰り返すつもりはない。

 ――ギャノン・デラー






シーアン

襲撃 3070年9月
襲撃 3074年1月

参加部隊
 カペラ大連邦国自由世界同盟軍
   デスコマンド(特殊部隊)紅色槍機兵隊、第3カノープス機兵連隊、イマーラ家、ホワイトタイガー家
 ワード・オブ・ブレイク
   第8師団、第17師団、第24師団、ラクシャサ家
   傭兵
     ドラゴン・ブレス

 聖戦中の二度のシーアン争奪戦を振り返ると、それが数週間や数日ですらなく、4年近く離れていたことを忘れそうになる。ワードの強襲は「首を落とせば、胴体が死ぬ」というドクトリンを追求したものだった。指揮系統が中央集権的であることと、国家がサン=ツー首相にほぼ全面的に頼っていることを考えると、それは確かに戦略的な決断であった。しかしながら、このまっとうな戦略は残忍な市街戦に遭遇し、狂信的な熱意がワード・オブ・ブレイクの専有物でないことを証明したのである。サン=ツー・リャオ首相は、3070年1月に、事実上、ワード・オブ・ブレイクとの戦争を宣言したが、同年の9月までワード・オブ・ブレイクが大連邦国とシーアンに戦争をもたらすことはなかった。ブレイク最高司令部は、これまで多くの者たちがやってきたように(そしてやり続けているように)、サン=ツー首相を侮るという同じ間違いをしでかした。サン=ツーの中立同盟放棄に対する準備が出来てなかったワードは、シーアン強襲の大規模な戦力を集結するのに数ヶ月を要した。

 軍司教キャメロン・サン=ジャメの計画は情け容赦ないほどに単純だった。蛇の首を落とし、それから中央集権的な指揮系統に依存する国家の破片を掃討するのである。彼のシーアン攻撃計画は迅速にして最大限の戦力を持って実行され、カペラ大連邦国という国家をいかにも粉砕しそうなものであった……成功したのならば。サン=ツーの王宮とフォービドゥン・シティが軌道上から爆撃されたあと、首相が死んだと思われたことはすさまじい混乱をもたらした。アナリストたちは彼が「奇跡的に」復活することがなかったら、タロン・ザーンとナオミ・セントレラが諍いを起こし、小貴族たちが地方での権力闘争を起こしたものと信じている。ワードにとっては残念なことに、彼らはシーアン防衛軍の狂信を大いに過小評価していたのである。

 最小限の抵抗を予期していたワードは、ニューアヴァロンで航空優勢を得たのと同じように、ブラックライオン級〈レイズ・オブ・エンライトメント〉とヴィンセントMk39級〈ブレード・オブ・ディヴァイニティ〉がシーアンの宇宙を支配するだろうと自信を持っていた。サン=ツーが艦隊の半数をシーアンに呼び戻してなかったら、侵攻艦隊が軌道についてシステマチックにシーアンの地上防衛を解体していったことは間違いない。そうはならず、ワードは宇宙で激しい抵抗に遭遇し、カペラ戦艦に排除される前に、素早く地上部隊を配備することを余儀なくされた。

 ワードの第17、第24師団とドラゴン・ブレスを中心とする支援傭兵隊は、3070年9月に到着した。手強い軌道抵抗に遭遇したワードは、フォービドゥン・シティ周辺の人口密集地帯に素早く組織化された戦闘降下を直接せねばならなかった。もし、第17師団指揮官、ジョージ・サンダース司教が素早く戦力を結集しフォービドゥン・シティを叩いていたら、この戦闘に勝利し、カペラ大連邦国という脅威を排除できていただろう。

 ナオミ・セントレラと第3カノープス機兵連隊に遭遇したのだが、最初の降下は高い成功を収めた。上陸した戦力を集めた後、サンダース司教はドラゴン・ブレスとその他の傭兵に、ブレイク軍をフォービドゥン・シティから釣り出そうとするカノープス機兵連隊を混乱させるよう指示を出した。傭兵はある程度の成功を収めたが、70パーセント近い犠牲を払った。エリートのカノープス機兵連隊に対処できていなかった傭兵たちは、デスコマンドが突如として側面に現れると、大打撃を受けながら、急いで撤退していった。

 傭兵が任務を達成しようとしていたあいだ、第17、第24師団は、フォービドゥン・シティの中心に突っ込んでいった。書類上、ワードは数の力で決定的勝利を達成できるはず団だ。だが、定量化出来なかったのは、カペラ人の信念の強さである。紅色槍機兵団が頑強な防衛を示し、貴重な時間を生命、土地と交換した。それによってカノープス機兵連隊は紅色槍機兵団の陣地に乗り入れることが出来た。戦闘が都市の中心部に近づいていくと、ナオミ・セントレラのカタフラクトと首相のエンペラーが横に並んで戦っている姿を見ることができた。カノープス機兵連隊が防衛に力を貸したものの、ブレイクの強襲は前進を続け、短い間、防衛側を破り、首都の中心を確保したかのように見えた。

 予期せず、ブラックウィンド槍機兵隊が現れ、その指揮官が首相が乗ってるとされたメックを英雄的な自己犠牲で救った。激しい戦闘の中で、ブラックウィンドの登場は、防衛側に活を入れ、ブレイクの前進を崩壊させた。ワードは待っていた降下船に引き返した。

 第二次シーアン戦はワード・オブ・ブレイクの狡猾さと計画性を含めたものになった。だが、災厄的な失敗が、古い格言「リャオに手を出すな」を単純に証明したのである。3073年のうちに、ワード軍はカーリー・リャオ(サン=ツーの妹)の助けを借りて、第8師団と第24師団の過半数をシーアンに密輸入させた。偽トーマス・マーリック(後のトーマス・ハラス)が停戦を掲げて到着したとき、ワード軍の半数はすでにシーアンにいた。第24のレベルIIがROMの命令でハラスを暗殺しようとすると、この作戦はもう少しで露見するところだった。それを妨げたのは、幸運と、捕まるを潔しとせず自殺した暗殺者の狂信だったのである。

 3074年1月7日、ワードはフォービドゥン・シティの四方八方から現れた。第24師団は天宮に突撃を仕掛け、この施設群を奪い取ろうとした。カペラ、カノープスの着実な防衛により、前進が鈍らされそうになると、マーカス・ハント司教は秘密の予備選力を呼び出した。隠れ家から駆けつけてきたカーリー・リャオのサギー「武家」は、天宮の門前で起きている残忍な戦闘に加わった。ハント司教が最初の犠牲者となった……カーリーは軍司教を裏切ったのである。武家ラクシャーサが防衛戦線を突破しようとするあいだ、姉妹部隊の武家ホワイトタイガーは戦線の後方からラクシャサに襲いかかった。続く混乱は残忍な四つどもえの戦いを生み出した。

 もし第8師団が退却路の確保を命じられていなかったら、ワード軍がこの災禍から逃れ得たかは疑わしい。第24師団とラクシャサ家のごく一部だけが、大混乱を生き残った。第二次シーアン戦は完全に始まる前に終わったのである。カーリー・リャオと寝台を共にするという軍司教の選択は、最終的にシーアンでの残忍な敗北に結びついたのみならず、間違いなく聖戦の重大な転機となった。この時点から、ワードはリャオ、ダヴィオン宙域で守勢に回ったのである。

――『天の災厄』、ポズナン共和国出版、3099年








筒型花火
状況
ノヴァ・メディオラナム
トラスジクス、マリア帝国
3074年3月20日


 再び、辺境まで足を伸ばした。今のところ、この契約に良いところはない。そしてアスカイはローブ野郎であるか、やつらのために働いていることがはっきりとした。しかし、少なくとも、サイボーグにぶつかることはなさそうである。

 良い面は、私がサルベージしたハーキュリーズをうまく操っていると、ピエールが思ってくれたことである。彼の指揮小隊に入ることを求められたのだ。常にそばにいるよう言われた。歩兵中隊の指揮をあきらめたくないのだが、バクスターは私よりもスーツ(バトルアーマー)向きなのである。付け加えると、彼は信頼できる。クロイツァーやリーと違って。私はまだ管理の責務を負っており、メック戦士を務めながら貢献することができる。

 ふさわしい騎士として。ピエールはなにを考えているのだろう? 私にわかるのは――ああ、明白だ。我々はこの戦争を生き抜かねばならない。

 ――ヒラリー・フレッチャー


結末

 クルセイダーズは単純な目標襲撃任務を約束され、それを受けた。名前が変わった首都の外に降り立ったクルセイダーズは、イリュリアの抵抗を阻止する目的で第IV軍団が作った非常線を突破した。準備が出来てなかったマリア軍は、臨時本部に後退し、占領任務のために派遣されていた部隊から援軍を引き出した。グランディンのバトルアーマーが到着したマリアのメックを待ち伏せし、比較的経験に欠けるという敵の弱点を突いた。

 マリア軍が装甲歩兵に直面してもがいていたことから、グランディンは第IV軍団の本部を強襲する自由を手にした。戦術的奇襲を達成するために、占領されたビル群を押し通ると、グランディンと彼の騎士たちはマリア軍の指揮所を吹き飛ばした。抵抗を行ったごく少数の警備兵たちは、グランディンのメック部隊を脅かす機会もなく、無慈悲に撃ち倒されていった。本部を完全に破壊し、この地域のマリア軍が殲滅されたのを確実にすると、グランディンは離脱して、歩兵、装甲部隊と一緒に残った第IV軍団を叩いた。

 難しい戦術的状況に直面したマリア人たちは再編成のために退却し、グランディンを解放した。目的を達成した男爵には残る理由がなかった。降下船トーナントが離陸すると、コンパス座の降下船数隻が軌道上に姿を現した。コンパス座連邦がマリア帝国の反抗的なイリュリア州に手を出したことは、今後数年間にわたってマリアの注意を引くことになる。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年






イリアン

保護領加入 3069年6月
解放 3075年12月8日

参加部隊
 自由世界同盟軍
   第13マーリック国民軍
   傭兵/不正規軍
     ヘビーヘル・レイザーズ、イリアン企業保安群、イリアン・パルチザン同盟
 ワード・オブ・ブレイク
   第49シャドウ師団、イリアン保護領市民軍
   傭兵/不正規軍
     ヘビーヘル・レイザーズ、レッドフィールド反逆隊

 部外者にとっては、いつイリアンの世界が終わり、いつイリアン・テクノロジーズ(イルテック)・コングロマリットが始まったのか、判断が難しいままにある。時間をかけて一連の契約が編み込まれ、民間政府と営利企業がひとつのものとして合併したのである。結果、イルテックは単なる一企業が支配する以上のものを支配した……それはイリアンを中心とする不明瞭で非公式の商業地域の中核となったのである。法的には、民衆はこの星系ではなく、企業に拘束されることとなる。実際には「カムラン対自由世界」の判例は、イリアンに適応されない。この法律はイリアンを自由世界同盟の政治的な加盟国家ではなく企業体として見なすものであった。従って、敵対的な政治的策略からこのコングロマリットから守られることとなる。より重要なのは、イルテックがちょっとした駆け引きをするのを防がないことである。

 悪徳企業として、イリアンは最高値を付けた相手に商品を売るのを喜んだ。3060年代後半、それはワード・オブ・ブレイクだった。聖戦が始まると、彼らの関係は近いものとなった……イリアンは分裂した王家よりも、自由世界同盟内の新勢力に賭けるのが賢明であると気づいたのだ。ちょっとした市民の不安については、惑星の安全と有望な市場展望を引き替えにするには、小さな代償であった。3069年6月、イリアンは公式に、アトレウスと「偽」トーマス・マーリックに反対した。

 イリアンにとっては不幸なことに、ワードはガキ大将となった。イリアンの指導部は将来をどうするかで割れ、ワードは優柔不断から利益を得た。イリアンとイルテック全体が、利益供与された忠実な日和見主義者と、ブレイクの操り人形の高官たちに事実上支配された。反乱セルがイルテック中に出現し、企業内の部門と子会社内でその活動を調整し始めた。ワード・オブ・ブレイクはイリアン保護領市民軍に白紙の委任状を与えることで応じた。紛争中、市民軍はほぼ距離を置き、イリアン保安隊とヘビーヘル・レイザーズに手荒い反応を取るよう命じた。

 イリアンは地球周辺を守るサン=ジャメの「マジノ線」にとって重要な世界だった。強化要塞、防衛システムが作られるごとに、惑星は不安定となっていった。公然とワードに抵抗する市民は増加していった。工場ゲートのバリケード、インドラン公園の航空防衛塔、毎日のマグレブ駅でのセキュリティ・チェックは、かつて特権階級的だった民衆を苛立たせ始めた。

 3074年1月18日、タイタス・キャメロン=ジョーンズ国王指揮下のレグルス遠征軍がパイレーツポイントに出現し、惑星の機動防衛を突破して、キリースへと惑星降下した。レグルス軍は第49シャドウ師団を追い詰め撃破することに主眼を置いていた。上陸後にレグルス軍が気がついたのは、いかに諜報報告が間違っていたかということだった……第49はどこにもいなかったのである(最も数ヶ月後にこの部隊はやってくることになるのだが)。よって、タイタスは核兵器を使うことを控えて、通常の手順を選んだ。レグルス軍はイリアン保護領市民軍を、略奪し、燃やし、痛めつけた。

 レグルスがなしたことは、イリアンのレジスタンスが求めていたことだった。レグルスの襲撃に伴い、自称イリアン・パルチザン同盟(IPL)は、ブレイクの脅威に対し、一人ではないことに気づいたのである。役員たちや惑星の高官たちが個人的に反乱軍に与することを宣言し、IPLの資源と人員は飛躍的に成長した。

 ブルーインでは、重武装したゲリラ隊が奇襲で大陸の首都を奪い、公然とした反乱が宣言された。ワードの最高司令部は、第49師団をイリアンに送り込むことで応じ、なんとしても平和と価値ある工場を維持するように命じた。

 ダンタリオン司教は即座に大きくなる反乱活動を取り締まり、最終的には、ワードが1人を罰するごとに、10人のイリアン人が反乱軍の下に走った。レジスタンス活動は、補給車列への公然とした強襲から、組み立てラインへの密かな破壊工作まで、考え得るすべての戦線で行われた。

 3074年の冬、訓練中に数名が悲劇的な死を迎えた後、反乱は最初の頂点に達した。ヘビーヘル・レイザーズのハーシェル大尉の(破壊工作された)オートキャノンが突如として火を噴き、ワード・オブ・ブレイク視察団の一人を殺した。この誤射兵器は、弾薬を撃ち尽くす前に、テントをいくつかなぎ倒し、ハーシェルのラクシャサを破壊し、彼自身を殺した。ブレイクの調査官は「不良」弾薬を追跡して、ブルーイン海港近くの生産施設にたどり着いた。ヘビーヘル・レイザーズ駐屯部隊は工場の中庭に向かうよう命令され、謝罪を要求した。拒否した者は即座に射殺される。不正規裁判の途中で、混乱が幕を開けた。反乱兵士たちが地下のアクセストンネルから這い出て、砲火を開いたのである。同時に、ヘル・レイザーズの約2/3が仲間たちに銃口を向け、ワード・オブ・ブレイクに対するいかなる責務からも自由であることを宣言した。大混乱が続いた……反乱軍が離脱した傭兵たちの逃亡を支援したために、弾薬工場は破壊された。契約を破らなかったヘル・レイザーズは生き残るためにイリアン保安隊と戦った。

 治安活動が強化され、家宅捜索、チェックポイントでの身分確認が日常となった。加えて、保護領市民軍と第49シャドウ師団の間の緊張が高まり、反乱軍は喜んでこの状況を利用した。小競り合いが多発したが、どちらの側も決定的な一撃を見舞うことが出来なかった。

 3075年12月5日、IPLの偵察隊がイリアン保護領市民軍の全陣地と地域司令本部をすべて調べ上げた。同時期、イリアン企業保安隊は自動防衛システムをすべて手中にし、主要施設の大半をロックダウンに追い込んだ。それからすべての地獄が解放された。反乱軍が群れをなして隠れ家から飛び出し、キリン川に公然と押しかけた一方、慎重にしかけられた爆発物とそれまで知られてなかった気圏戦闘機中隊の支援を受けて、再武装したヘビーヘル・レイザーズが第49シャドウ師団を引き受けた。

 恒星間ニュースネットワークと地元メディア局は、番組をレジスタンスのプロパガンダに切り替え、都市の通りでワードに反抗するよう民衆を扇動した(業界関係者は通信ネットワークがハッキングされたと後で言ったが)。

 小規模に分割した市民軍部隊は連携した防衛を行えなかった。反乱を食い止めるのに十分ではなかったが、ブレイク指揮官が焦土戦術で後退をするだけの時間を稼いだ。12月8日、ワードは惑星上の重要な工業地区に数発の核弾頭を撃ち込んだあとで、イリアンから撤退した。

 20年たって、まだ疑問は長引いている。イルテックの指導部が独自のゲームでワード・オブ・ブレイクの裏を完全にかいた可能性はないのだろうか? 専門家の多くは、イルテックの役員会が利益と将来性拡大のため単純にワードとゲームを行い、収益性と工業力を最大化するのに便利だった看板を使ったと推理している。だが、陰謀家たちによると、より邪悪な計画が企まれていたとのことである。イリアン政府が政府の自治を求めて、イルテックだけでなくワード・オブ・ブレイクと戦ったのだ。この説は、イリアンとイルテックが聖戦前よりも別々の存在になっていることを考えると、多少の説得力がある。惑星外の資産が破滅的に失われたことで、イルテックは財産を減らしたが、成長のための広大な機会が開けた。本拠地での権力強化のために、自らを傷つけるというのは、誇大妄想以外のなにものでもない。

――『イリアンの支配者: 権力の腐敗』、アトレウス・プレス、3097年








シャドウズを黙らせる
状況
エリー軍事防衛境界線、ウェンディゴ
アトレウス、自由世界同盟
3075年4月23日


 17/04/75 アスカイに感謝し始めている。やつはマーリック共和国の待機契約を探してきてくれたのだ。総帥への忠誠心を強化する任務をいくつかの世界で済ました後、アトレウスでリラックスすることができた。アトレウスはニューアヴァロンやターカッドよりいいところだった……金が支払われる限りは。そして支払いは最高だったのだ。

 しかし、ここは自由世界同盟である。よって、自然と内戦に巻き込まれることとなった。

 まあ、もしかしたら、ポール・マーリックが我らの参加を望んだのかもしれないが、自由世界同盟の超エリート準軍事大隊とやりあうのは、我々がサインした契約を遙かに超えたものであった。ポール・マーリックはダークシャドウズを誘い出してもらいたいだけなのだと言ったが、シャドウズが感づけば、我々をひどく痛めつけるものと思われる。

 もし、この任務を引き受けなかったら、マネイドミニに皆殺しにされるだろう。

 ――ピエール・グランディン


結末

 SAFE(自由世界同盟情報部)のダークシャドウズ大隊は、イーグル・コープス解散後、ウェンディゴ防衛に従事していた。ダークシャドウズはワード・オブ・ブレイクの度を超えた行為に対し批判を強めており、ポール・マーリックは彼らの忠義を疑いつつあった。部隊指揮官アン=マリー・マコーマックがたいして正体を隠す気もなく批判意見をネットに投稿すると、ポール・マーリックは怒り狂い、状況を永遠に解決する気になったのである。

 ウェンディゴに展開して、ダークシャドウズ大隊を誘い出すよう、マーリックはクルセイダーズに命じた。ダークシャドウズ側が聞かされたのは、エリー要塞の防衛をテストするために傭兵が来るという話である。マコーマック大佐は、武装解除するためにクルセイダーズが来ると密かに警報を出した。傭兵の存在が確認されるとすぐにマコーマックは大隊を月の無酸素でクレーターだらけの地表に出した。グランディンに話をする時間さえ与えなかったダークシャドウズは、クルセイダーズを引き裂き、大慌ての退却に追いやった。

 両陣営がエリー要塞の射程範囲から完全に離れると、第49シャドウ師団が月面に姿を現した。このマネイドミニたちは、自殺的な勢いでダークシャドウズに強襲を仕掛け、短く熾烈な戦いでシャドウズを殲滅した。ダンタリオン司教は見下すように「残ったものを持っていけ」と許可を出したが、パイロットの遺体を片付けるのは禁止した。直後にFWLN(自由世界同盟海軍)の海兵がエリーのコントロールを奪い取り、事件の詳細はワードがアトレウスから追い出されるまで機密扱いとなった。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








死神きたる
状況
コーンシティ、セクター4
ガラテア、ライラ同盟
3076年1月2日


 (ウルフネット報告書30760623/19-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 ストーンはとうとう我々に気づいたようだ。

 以前の報告書で触れた通り、我々は3075年の大半を短期の駐屯任務で過ごし、この時間を使って、ギャノン・キャノンズを再建、強化した。ストーンが我々を雇ったのは、疲弊していないのと、メックのウェイトが重量級・強襲級であるからだ。

 ストーンが誰であろうと、馬鹿ではないようだ。雇われる前に、ブレイク派のスパイでないことを確認するため、背後関係のチェックを通過せねばならなかった。彼らは我々の過去に弱点や穴を発見しなかったが、それでも緊張状態に置かれた。

 ストーンは我々を必要としていた。なぜなら、ブレイク派をガラテアから追い出すのに問題を抱えていたからだ。彼は我々のような部隊を集団で雇い、攻勢能力を強化するためにコムガードをいくらか追加し、それからガラテアに送った。

 我々は大混乱の中に戻っていった。


結末
 日誌、記録番号2987

 ストーンとの最初の任務。ストーンの部下たちは、我らを雇う前に、数週間かけて我々がウォブリーズでないことを確認した。

 「ブロードソード浣腸」の後、我々はガラテアを叩くことを熱望した。侵入は熱いものだった。

 ワードは立ちふさがったが、キャノンは去年を無駄にしてないところを見せつけた。第1、第3中隊がウォブリーズにぶつかり、アマンダと第2中隊が側面から彼らを叩いた。ルシエンと違って、ウォブリーズの側面は崩壊し、それからバラバラになった。アマンダの新しいガンスリンガーは完璧に動作し、ワードのメック4機を撃墜してのけたのである。

 ストーンの潜入工作員は掩蔽壕のコンピュータからすごいデータをいくつか得るのに成功した。補給庫の位置、通信コード、戦力組成、作戦区域などだ。我々はこのデータを使ってウォブリーズを数週間にわたって叩き、ガラテアから生存者を追い出した。

 ウォブリーズがいなくなると、ガラテアはビジネスを再開した。

 ――ギャノン・デラー








我々は友達だ
状況
インターステラー・ボタニック・ガーデンズ、アトレウス・シティ
アトレウス、自由世界同盟
3076年4月6日


 我々は中心領域騎士団を殺している。

 理解できない。ここでなにをしているのか? なぜこんなことをしているのか?

 ピエールは自分がなにをしているか知るべきだ。彼らは同志であるメック戦士の騎士なのだ! 彼らは騎士道を体現している。それが騎士団の信奉するものであり、グランディン男爵が支配するにあたって使うべきものである。こんなことをするなんて正しいはずがない。ここで行われているのは、不当なものである。彼の精神に反するものだ。我々はワードのポーンであったが、そうしなければならないからそうしていただけだ。これは違う。

 我々はどこで間違ったのだろうか?

 クロイツァーのビッチのせいだ。あの女は処刑部隊を率いている。ブレイク派に近づくよう、ピエールをそそのかした。殺人と堕落の中で、あの女は元気になるようだ。あの女は私の婚約者と称号と未来を盗み、血の海に沈めようとしている。

 それを許すことは出来ない。

 ――ヒラリー・フレッチャー


結末

 中心領域騎士団はすぐにこの攻撃が失敗であると気づき、シェリル・ハラスを救出できないと悟ったが、アトレウス・シティ内で蜂起した。突如として騎士団の生き残りが現れたことは、第8自由世界軍団にとって完全な不意打ちとなった。

 深刻な損害が未然に防がれたのは、マーリック総帥の近衛連隊である第2軍団が素早い反応したからだ。第2軍団は方向転換し、ほぼ躊躇なく反乱軍に逆襲を行った。騎士団は、この数年の支援なきゲリラ戦でぼろぼろになっていたが、すさまじい腕前を持ってして戦った。圧倒的な数と火力を持ってのみ、騎士団を制圧することができた。

 生き残った騎士団、最後の場となったのは、由緒ある自由世界技術博物館だった。だれも逃すなというブレイクからの圧力を受けていた第2軍団は、砲撃を要請し、施設をがれきとした。ブレイク派と傭兵はがれきの中を進み、わずかな生存者を引きずり出して、即座に撃ち殺した。これらの処刑にグランディン・クルセイダーズが関与したことから、コリン・マーリック総帥は、空しい抗議として、待機契約を破棄した。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








スラッガーズ・パラダイス
状況
タンザニア・プライリー
リオ、ドラコ連合
3076年7月3日


 日誌、記録番号3160

 ストーンは野心的になっている。

 保護領世界のいくつかを同時に叩くことを望んでいるのだが、継承国家から借りている部隊に問題を抱えていた。ウォブリーズは悪い奴らかもしれないが、もし大王家がブレイク派と戦うために互いの違いを脇に置けないのなら、それは問題となるだろう。

 幸いにも、ストーンは政治について懸念を示す必要のない傭兵部隊を持っている。しかし、傭兵は広く分散しているので、ストーンの部下からキャノンズをこの作戦のために分割できないか尋ねられた。

 我々は同意した。第1、第4中隊はリオを攻撃する合同軍に加わり、その一方でアマンダの第2、第3中隊がヴァン・ディーメンIVを叩くことになる。アマンダ・ウルフ大尉は、私の監視なしに独立部隊の指揮を経験する時期に来ていた。彼女は優れた副指揮官だ。優れたリーダーであることを証明する時期なのだ。

 ――ギャノン・デラー


結末

(ウルフネット報告書30761002/37-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 そこにいなかったので、リオでなにがあったのか直接報告することはできない。私はディーメン攻撃を任され、部隊に戻ったあとでこの情報を得たのである。

 ストーンのタスクフォースは上陸し、地元の保護領市民軍とブルーブレイザーズを名乗る傭兵部隊とぶつかった(ニューアヴァロン機士団のブルーブレイザーズ大隊とは無関係)。ダヴィオンとシュタイナー軍に支援されたキャノンズは、左側面を叩き、敵を後退させ、他の保護領戦線を下がらせた。ワード兵は合同軍の封鎖に阻まれるまでそれを続けた。全方位を囲まれた防衛側は、連続した砲撃、爆撃によって損害を出したあと、降伏した。

 だが、合同軍には亀裂があった。各派閥はいまだ敵よりも互いを気にしていた。デブリーフィングの最中、デラー少佐はLAAF、AFFS指揮官の口論が殴り合いに発展したのを目撃したという。傭兵とストーンの部下たちが割って入ったが、その前に双方の隊員たちが殴り合っていた。少佐は激怒した……「プロらしくない態度」としてその場で双方を叱り飛ばしたのである。少佐はニューアヴァロンが包囲されたとき境界域の公爵たちがなにもしなかったことにいまだ怒っているが、彼の怒りは故郷に限定されているわけではないようだ。








混乱の荒波
状況
アレッサンドロ・シティ
ニュー・キョート、ライラ同盟
3076年9月19日


 12/09/76: 困難な道のりだったが、ついにクルセイダーズは定数通りの1個大隊になった言える。まだ車両中隊の戦力を充足させる必要はあるし、気圏戦闘機2機を加えることはさらに重要である。しかし、各種契約の目的に沿った戦力まであと少しだ。

 今やっている任務のように。ニュー・キョートでの駐屯任務は、ブレイク保護領から近いというのに静かなものであった。これは僥倖である。なぜなら、大隊を統合するのは挑戦的であるとわかったからだ。騎士団としての機能を強化するために、ヴォークリューズから新兵を呼び寄せて、忠誠を守らせないとならないかもしれない。だが、この規模まで達したことで、しばらくは安定した成長を出来そうだ。

 ああ、ヒラリーがカテリーナについてごちゃごちゃ言うのを黙らせることが出来たのなら。古参の士官を失いたくないし、くだらない嫉妬からそうなってしまうなんて馬鹿げている。

 ――ピエール・グランディン


結末

 ニュー・キョートは、3076年9月、もうひとつの悲劇に揺れた……ワード・オブ・ブレイク第2師団の分隊が都市ヨネイを攻撃したのである。ブレイク派はニュー・キョート大学を破壊したのに加え、惑星インフラの重要な一角を壊滅するべく、巨大なアレッサンドロ水力発電ダムに向かった。充分な休みをとったクルセイダーズはブレイク派を追撃し、ダムにたどり着く前にレベルIIIの主力と交戦した。

 夕闇に包まれた苦闘のなかで、傭兵たちはブレイク派襲撃部隊をエンリッチ内海のほうに押しやった。ワード兵の一部が突破に成功し、ダムの強度を崩壊させるに足る充分なダメージを与えた。流れ出た海水は古い川に沿って溢れ、すべてを押し流していった。ブレイク軍の大半は押し流されたが、クルセイダーズは高所に間に合い、難を逃れた。洪水と水位の上昇で、都市部がほぼ水没した。

 その後、クルセイダーズは生き残ったブレイク軍を追い詰め、救援活動において地元の救急チームを支援した。ニュー・キョートの地元政府はこの災害に激怒したが、グランディンは契約の細部を引き合いに出し、あらゆる非難を退けた。LAAFの連絡士官は彼の解釈に同意せざるを得なく、ブレイクだけが非難の対象として残された。捕虜数名が政府に引き渡され、裁判の結果、処刑された。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








分水嶺
状況
プレインズ・オブ・サン
カポラ、ワード・オブ・ブレイク保護領
3076年12月3日


 日誌、記録番号3311

 3年ぶりにだれと会ったと思う? 旧友のミスター・アスカイが新しい契約と一緒にやってきた! どうやって我々の居場所を突き止めたんだろう。彼の情報ネットワークは、ROMやウルフネットやMIIOやその他情報組織に匹敵しているに違いない。

 私はまだ彼を信用していない。

 そして今回もまた素直な契約ではなかった。ワードの傭兵、デリラ・ガントレットは、下された命令が気にくわなかったようで、契約を放棄したようだった。フェアなことに、アスカイはどちらと戦うのかの選択権をくれた。ガントレットを助けてもいいし、契約違反でガントレットを罰し、傭兵の仁義を見せつけてやってもいいのだ。どちらにするのか、カポラに行くまで考えることができる。

 この契約を受けたが、次にあの糞野郎と会うときは殺してやることになるんじゃないかと思う。

 ――ギャノン・デラー


結末

(ウルフネット報告書30770214/112-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 大隊のうち一部の者たちが、ブレイクから逃げようとしている傭兵部隊を追い詰めたがっていないことは分かっていた。しかし、ジャンプの際、どちらにするのかデラー少佐は黙ったままだった。

 カポラに接近中、少佐はブレイク保護領の指揮官たちに、逃げ出したデリラ・ガントレットを始末するために雇われたことを伝えた。指揮官たちは大いに喜んで、首都から150キロメートルの場所に我が隊を案内した。

 我々は配置について、戦場へと向かっていった。少佐は第3中隊に後方を守らせ、第4中隊に降下船を守らせた。それ以上、彼は何も言わなかった。

 我々は尾根の頂にたどり着き、眼下の戦いを見た。保護領市民軍がガントレットを圧倒しており、ガントレットは不利であった。我が隊がとどめを刺すには絶好のタイミングのように見えた。

 少佐は数秒間それを見つめてから、一般回線を開いた。「ここに我々の選択をあきらかにする。だいぶ前に決断はしていた。攻撃せよ」。それと共に、彼は丘を駆け下り、PPCを持ち上げて、砲撃した。保護領市民軍のシカダが脚をやられて倒れた。キャノンズの部下たちが続き、保護領市民軍の側面を叩いた。少佐が、ガントレットの生き残りに対し、我が隊の降下船まで向かうよう命令を出すのを聞いた。その間、我々は援護を行った。

 もし、疑わしいところがあったのだとしたら、それは消え去っただろう。現在、我々はワードとの戦いに与している。






ヨリイ

侵攻 3068年6月
解放 3077年9月

参加部隊
 合同軍
   ストーン・ラメント、ケルハウンド第1連隊
 ゴーストベア氏族
   カッパ銀河隊
 ドラコ連合
   第3夜行兵団
 ワード・オブ・ブレイク
   第4師団、第14師団

 星間連盟時代の鉱業・産業の重要でない中心地、ヨリイはアマリス占領の虐待と継承権戦争の破壊を辛抱強く生き抜いた。これらの挫折があったにもかかわらず、民衆はどうにかレンガをひとつひとつ積み上げて再建に成功した。連邦共和国内戦が終わるまでに、ヨリイの民衆は、この数世紀で初めて繁栄と経済成長を感じ始めたのである。

 産業的、金融的損失になれていた市民は、ワード・オブ・ブレイクが3068年6月にもたらしたような種類の恐怖には備えていなかった。ワードの第14市民軍(正体をごまかして行動していた)が第3夜行兵団の分隊を引き裂いた一方、ブレイクのROM工作員は惑星中の貯水池に化学物質を投じた。この物質は数百万人を殺し、それから広大な農地の灌漑システムに入り込み、作物を汚染した。惑星の役人たちが汚染された農地を焼き払う前に、汚染された食材でさらに数百万人が死亡した。その後起きた飢饉でさらに死亡者が出た。

 第3夜行兵団が全滅し、誰が攻撃を行ったのかで民衆が混乱すると、ワード・オブ・ブレイクはヨリイを保護下に置いた。3076年後半、デヴリン・ストーンが地球までの惑星を奪還するために、合同軍を率いてくるまで、この惑星はブレイク保護領の領土であり続けた。ブレイク守備隊からの抵抗を予期していたストーン・ラメントとケルハウンド第1連隊は、小規模なグループによる形式的な防衛に遭遇した。絶望的なまでに数で劣るメック戦士たちは、名誉ある決闘を求めた。ストーンはすぐにこれらのワード兵に見えたものが、実際にはブレイク派の再教育キャンプから解放されたばかりのスモークジャガー氏族戦争捕虜であると知った。これらのジャガー戦士たちは、ツカイードの戦い、ブルドッグ作戦、タスクフォース・サーペントの際、DCMS軍に捕らえられた者たちのようであった。さらなる証拠が示唆するところによると、ワードがジャガーの捕虜たちを解放したのは、ストーンに皆殺しにされることを望んだからのようだった。ストーンは彼らを殺さず、受け入れた。

 次の目標に向かう前に、ストーンはライラの志願者からなる通常守備隊を残していった。3077年3月、ワードの第4市民軍が守備隊全体を圧倒し、皆殺しにした。ヨリイは9月までブレイクの手に残った。ワード軍は合同軍の守備隊に補給を運んできた、ゴーストベアの商人輸送船団を待ち伏せし、破壊した。この臆病な事件に怒ったベアは、惑星中にはびこるワード・オブ・ブレイクの巣をすべて根絶するために、全カッパ銀河隊を送り込んだ。捕虜としてとられたブレイク信徒はいなかった。

 脅威はなくなったが、ワードは占領を思い出させるものを残していった。現在まで、汚染された広大な農地が手つかずのまま残されているのだ。5年ごとに共和国の農学者が土壌を再調査している……それは汚染されたままである。

 ――『ヨリイの歴史: 3060〜3090』共和国大学プレス、3097年








ゴースト・タイガー
状況
キャンプOWL-4外辺部
ヨリイ、ワード・オブ・ブレイク保護領
3077年1月20日


 話がうますぎて本当とは思えない。ミスター・アスカイのコンタクトを通してこの契約が来たから賭けてみようと思う。入手した情報によると、ブレイク派は保護領市民軍のほとんどを惑星の外に動かし、形ばかりの兵力だけを店番に残していった。たいした計画はしていない。敵の数が少ないのなら、持てる全てを持って連中を叩いてやれるだろうし、途中で任務を諦める必要もない。問題は、四ヶ所のうちどこにワードが隠れているのかわからないということだ。つまり、部隊を4つに分割して、それぞれの目標に送り込まないとならない。うまいくいけば、それでもまだ我々が数でまさっているだろう。そうでなくとも、無線を使うだけで再展開が可能になるはずだ。

 ――ロジャー・カンバーランド大佐の日記、3077年6月20日


結末
 スモークジャガー? 冗談だろ。

 ――ロジャー・ゴダード大尉の日記、3077年6月20日

 氏族と戦った経験がなければ、ゼルブリゲンとはなにか知ることはなかっただろう。もしかしたら、その時期の報告を思い出すべきだったのかもしれないが、氏族たちはここ数年間、一対一の決闘というやり方をほとんど諦めたのではなかったか? くそ、激しい戦いの中で、わかっていたのにそれを認識できなかった。だが、20年近く投獄されていた氏族人たちがまだ名誉を保っているなんて考えるだろうか? 感銘を受けたと認めざるを得ない。

 ――ミュゼット・ブレイディ大尉の日記、3077年6月20日

 デヴリン・ストーンと面会できたのは興味深かった。これほど多くの人たちが彼の旗の下に集っているのか、理由がわかる。どうにかしてストーンは我々とジャガーの撃ち合いをやめさせた。ああ、彼はどうにかして戦っているのがブレイク派ではないと知ったのだ。文句を言うつもりはないが、どうやってすべてを知ったのか知りたいものだ。

 とにかく、我が隊の損害は最小限のものであった。実際にジャガーと交戦したのは、ミサイラーズのうちごく一部だったからだ。向こうも同じだと言えないのは残念なことである。「戦場の霧」に覆われていたのは確かだが、同じ敵を持っていても友人にはなれなかっただろうことが私にはわかっている。少なくとも、任務は達成した。ヨリイは解放されたのだ。

 ――ロジャー・ゴダード大尉の日記、3077年6月20日






ハロランV

侵攻 3067年10月
解放 3078年9月

参加部隊
 カペラ大連邦国
   第6大連邦国予備機兵団、ローレル軍団、ロックハート鉄騎軍、第5マッカロン装甲機兵団
 恒星連邦
   第1恒星連邦装甲機兵団
 ワード・オブ・ブレイク
   ハロランV保護領市民軍、第48シャドウ師団、

 目を引くところのない荒涼とした世界、ハロランVは超高純度の銅の大規模な鉱床がある地球帝国の世界として記憶されていた。ハロランVの唯一の価値ある商品は氷であるが、星間連盟と安価な浄水装置が台頭すると貿易は終了した。よって、この平凡な世界は、地球帝国の一部でなかったら、継承権戦争の最悪期であろうと、戦場になることはなかっただろう。

 聖戦は最初、白ローブでなく、中国刀を身につけてやってきた。ジョージ・ハセク公爵の侵攻に対する報復で、カペラの第6大連邦国予備機兵団(CRC)が、3067年10月、攻撃を加えたのである。ちょうど到着したばかりの第1恒星連邦装甲機兵団を驚かせた第6CRCは、確固とした橋頭堡を確立した。大連邦国軍が首尾良くこの星系を奪おうとしていたそのとき、ワード・オブ・ブレイクの小艦隊が戦艦を使って両部隊を爆撃した。ダヴィオン、リャオ両軍はこの世界と確実な全滅から逃れた。

 ハロランVは歴史上はじめてその戦略的な重要性を見込まれて、ワード・オブ・ブレイクによる「マジノ線」防衛計画の一部となった。ワードはハロランの市民軍を強化し、拡大し、洗練されたSDS用の地上艦載級ミサイル発射施設を建設し、ポケット戦艦1個航空宇宙中隊を駐屯させ、惑星の周囲にキャスパーIISDSドローンネットワークを配備した。

 デヴリン・ストーン合同軍は3076年にこの星系を偵察し、大きく変わった世界を発見した。かなりの宇宙防衛戦力と限られた戦略価値から見て、合同軍の計画担当者たちは最初の数波でこの世界を迂回することを選んだ。保護領との補給路を寸断し、地球奪取後に奪還することを望んだのである。

 それを知らなかったカペラ大連邦国は、ストーンがSCOUR作戦を始めたときに、ハロランVに移動した。フェン・ファン級〈フランコ・マーテル〉の支援を受けたこの侵攻は、3077年2月11日に始まった。ロックハート鉄騎軍とローレル軍団の支援を受けた第5マッカロン装甲機兵団は、保護領市民軍を上回ることが出来ると予期していた。キャスパーIISDSネットワークが稼働していることに気づかなかった〈フランコ・マーテル〉は、直接、軌道上に移動していった。接近すると、〈フランコ・マーテル〉は艦載級、通常型の兵器の猛砲撃を受けた。地上部隊を展開することは出来たのだが、〈フランコ・マーテル〉は崩壊し、総員が失われた。

 カペラ軍は旗艦を破壊した世界を確保するため、復讐心と共に移動した。4月上旬までに保護領市民軍は総崩れとなった。目前に見えた勝利は、第48シャドウ師団の到着で遠く離れていった。この激しい逆襲は長引く紛争に変わり、ワードが折れるまで残忍な18ヶ月が続いた。残されたのは、大連邦国の崩壊した2個部隊と、破壊された世界と、勝利であった。

 本質以外はすべてを見る大連邦国は、この世界の防衛が強化されていたという情報を流さなかったとして、ストーンを非難したのだった。

――『憎悪の根: リャオの侵略戦争』、ニューシルティス出版、3096年






マーカス

併合 3067年8月
解放 3077年8月

参加部隊
 合同軍
   第3ライラ防衛軍、(放浪)ウルフ氏族ベータ銀河隊、マルレット南十字星境界域市民軍、第20マーリック国民軍、コムガード第4軍
   傭兵軍
     ケルハウンド第1連隊
 ワード・オブ・ブレイク
   傭兵軍
     キャンド・ヒート、クリフトン特戦隊、フューリーズ、ステルシータイガース

 当初、マーカスは聖戦の恐怖を避けたかのように見えたが、そうではなかったことが証明された。聖戦が始まる前に、この世界はワード・オブ・ブレイク保護領に静かに加わったのだが、保護領は平和なままではなかったのである。ケルハウンドの強行偵察部隊が、3077年6月、マーカスに戦争がやってきたことを知らせた。この傭兵部隊は来たるべき侵攻に先駆けて、この星系を調査したのである。

 それから一ヶ月以内に、合同軍の強襲部隊が到着した。自由世界グループIVが持てるすべてを使ってマーカスを叩いた。5月にタリッサ征服を終え、ハウンドが集めた情報を使う第3ライラ防衛軍が強襲の先陣となった。ライラ防衛軍(放浪ウルフのベータ銀河隊、マルレット南十字星境界域市民軍が支援する)と戦うのは、マーカス保護領市民軍だったがチャンスはなかった。マーカスの支配はわずか二週間後に確実なものとなった。合同軍にとっては不幸なことに、惑星の民間部門が大打撃を受け、最悪の損害は農業加工センターが偶発的に破壊されてしまったことだった。輸出用の食料数百万トンが失われた。労働者たちの生命が失われただけでなく、惑星経済の主柱である農業貿易もまた破壊されてしまったのである。

 しかし、ワードはそう簡単に星系をゆだねなかったのである。8月上旬、ブレイク派は逆襲をしかけた。ブレイク師団、保護領師団ではなく、戦闘で鍛え上げられた傭兵部隊によるタスクフォースが到着し、彼らは民間の巻き添え被害になんら懸念を示さなかった。

 傭兵団と海賊団は迅速な攻撃に秀でており、防衛部隊の陽動に成功した。彼らはまた第20マーリック国民軍(通常市民軍が到着するまで、一時的に惑星の守備を任されていた)も孤立させた。襲撃部隊は首都、ゾティコス内で第20マーリックを罠にかけた。第20は立派に戦ったが、数と市街戦の腕で劣っていた。脱出してコムガード第4軍に合流できたのはごく少数だった。ゾティコスは廃墟となった。

 海賊と傭兵は合同軍タスクフォースの一部の進路を変えてマーカスに引き返させることに成功し、ワーリン大陸の貴重なウラニウム鉱山を獲得した。アリス・ルーセ=マーリックは資源が使われるのを許さなかった。コムガードは二度ブレイクの傭兵を追い払おうとしたが、果たせなかった。コムガードが撤退すると、2個ブレイクズ・レイス特殊部隊が鉱山ネットワークの大半を破壊した……計算の上でトンネルと縦穴を崩壊させ、数世紀にわたる仕事を根こそぎにしたが、資源がワードの手に渡ることはなくなったのだった。

 地球陥落のニュースが届くまで、マーカスは保護領の支配下にあり続けた。傭兵たちの多くは、雇用主が崩壊すると逃げることを選んだ。残った者たちは、断固とした革命運動(後にコムスターが後援したと判明)に耐えられなかった。ブレイク派のうち一部は捕らえられたが、処刑を行っても地元民と新政府が慰められることはなかったのである。

――『地球後』、リパブリック・パブリック・トラスト、3091年








戦争の猟犬たち
状況
カラマーク
マーカス、ブレイク保護領
3077年6月12日


 グループIVは来月にマーカスを叩く予定だった。防衛の状況を偵察する任務が我らに回ってきた。我が隊は完全な僻地の荒野に施設を発見した。連隊の他部隊が数都市の防衛を探るあいだ、我が隊はこの施設を調査しにいった。防衛側は補給物資をどこかに保管せねばならなかったのだろうか? この惑星で行われている農業を考えると、農作物を手に入れる良いチャンスなのかもしれない。やはりなにかを感じる……

 ――アキラ・ブラヘ大佐の日誌、3077年6月12日


結末
 ここを疑ったのは正しかった。建物三棟に収められた穀物の下に、隠された武器庫があったのだ。1個中隊分の保護領市民軍が待ち構えているのも見つけた。やつらは我々が低空飛行したことに気づいたようで、歓迎の準備を整えていた。だが、我々にかなう者などなかったのである。連中は我が隊を単なる襲撃部隊のようなものと考えたか、ケルハウンドであることに気づかなかったのだろう。もし連中が我らを倒したかったら、我ら以上の戦力が必要だったろう。いまや我が軍は連中の戦力を減らし、補給物資を奪い、偵察を完了した。だいたいにおいて、いい仕事だった。

 とにかく、他のチームからの報告で防衛側が特定された。単なる保護領市民軍で、現在、我らの到着時より戦力低下している。ケルハウンドは問題なくマーカスを合同軍のために得るだろう。

 ――アキラ・ブラヘ大佐の日誌、3077年6月12日








流血と憤怒
状況
ジョージタウン、パンジャブ区
マーカス、ワード・オブ・ブレイク保護領
3077年8月8日


 16/08/77: アスカイにまた会えたなら、撃ち殺してやる。やつは全部知っていた! スタイルズはやつとも働いているに違いない。これは階級の脅迫だ。身分の低いクズども。この手で馬鹿な害虫どもを殺してやる!

 だから、我々はワード・オブ・ブレイクと最後まで一緒にいる。それが条件だ。アスカイは、我々が生き残ったら、契約記録を消去すると約束した。合同軍に押しつぶされたり、ワードの残虐行為に巻き込まれたりを避けるのは、我々自身の問題だ。

 我々はあのカスのローブを信頼することすらできる。やつはおそらく何度も地獄に落ちたサイボーグだ。スタイルズやカテリーナやカニンガムに耳を傾けてはいけないことはわかっていた。これはすべてやつらの失敗だ! サン=ジャメはマーカスを叩くよう命じた。少なくとも今回は惑星強襲を率いている。我が軍の車両にもうひとつペイントするだけの時間がある。

 ――ピエール・グランディン


結末

 3077年8月、ワード・オブ・ブレイクはSCOUR作戦では珍しい逆襲に乗りだし、マーカスを奪還するため傭兵部隊と買収した海賊からなるタスクフォースを送り込んだ。ブレイクの最高司令部はこの惑星のウラニウム鉱山に価値を見いだしており、アリス・ルーセ=マーリックの自由世界グループが特に脆弱であると見ていた。参加部隊中、最大かつ最も経験豊な戦力として、グランディン・クルセイダーズに作戦全体の責任が与えられた。

 上陸地点は首都ゾティコスの外部だった。クルセイダーズは守る第20マーリック国民軍を釣り出すために、部隊の半数を先導させた。グランディンは第2師団の1個レベルIIIの記章を付けており、マーリックの防衛軍は大規模な襲撃と思い込んだ。ブレイク派の傭兵が防衛陣地を整えていたそのとき、タスクフォースの残り半分が都市に直接降下し、マーリック国民軍を後方から攻撃した。ふたつの傭兵グループの間に捕らえられた第20マーリックは死にものぐるいで脱出し、首都は倒壊した。

 機会を得た海賊団いくつかが都市の廃墟で略奪を行った。元々反抗的だった上に、指揮権から離れたことで、グランディンは怒り狂った。グランディンは残りの傭兵を回収権で買収し、二度目の戦闘に着手するという対応に出た。反乱海賊はすでに分散しており、従って容易にグランディンのタスクフォースの餌食となった。グランディンはこの世界を到着したブレイクの援軍に惑星を明け渡した。ワード軍司教は後に、信頼できない部隊を粛正したことでグランディンを賞賛した。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年






地球―到着

タイタン 3078年7月
ルナ 3078年8月
火星 3078年11月

参加部隊―ルナ
 合同軍
   ジェイドファルコン・アルファ銀河隊、ウルフ氏族・デルタ銀河隊、ドラコ精鋭打撃部隊(特殊部隊)
   傭兵軍
     スターシーズ
 ワード・オブ・ブレイク
   ライト・オブ・マンカインド(特殊部隊)、テラセク(地球保安軍)

参加部隊―火星
 合同軍
   ノヴァキャット・アルファ銀河隊、(放浪)ウルフ氏族・アルファ氏族、ヘルズホース氏族・第11機械化機兵隊、ストーン・リベレーターズ、第7ドネガル防衛軍
   傭兵軍
     スターシーズ
 ワード・オブ・ブレイク
   ライト・オブ・マンカインド(特殊部隊)、テラセク(地球保安軍)

 地球星系を解放するために合同軍が到着したのは聖戦末期のことであるが、実のところ、聖戦で最初の戦場のひとつになったところでもある。3067年12月7日、ウルフ竜機兵団はワード・オブ・ブレイクに対し、アウトリーチへの攻撃を後援したのは許されないことを示そうとしたのだ。性急に実行されたフィーレル作戦は竜機兵団にとって短命に終わった。竜機兵団と傭兵合同軍の戦友たちは、ブレイクのドローン戦艦、降下船、小船艇による秘密艦隊を発見した。AMCによる火星攻撃は完全な失敗に終わった……竜機兵団部隊は宇宙でほとんどが殲滅されたのである。上陸と猛攻を生き残ったごく少数は捕虜として捕られた。このうち一人がゼータ大隊のタラ・ルーカスである。

 コムスターは3068年3月9日にケース・ホワイトを発動した。ワードとの交戦は、この100年で最大の海軍戦となった。コムスター艦隊は古式ゆかしい星間連盟の惑星強襲を計画し、ワードの大規模なキャスパー戦隊に敢然と立ち向かった。最初の接敵の際、ドローン船第1大隊は輸送船に集中した。コムスター軍は攻撃部隊を分散し始め、コムガード戦艦に乗船していたブレイクのスリーパー・エージェントが自船に対する破壊活動を行い、行動不能とした(これらの船は後にサルベージされ、ブレイク艦隊に組み入れられた)。これによって強襲軍内に大規模な混乱が生まれ、ドローンが全面的な交戦を行ったときには戦線は崩されていた。コムガード艦隊の大半が崩壊するなかで、彼らは3個師団分の降下船を守るのにどうにか成功した。降下船はエストニアとラトヴィアに上陸し、その他は北アメリカ、中央アメリカに降下した。これらのコムガード軍は、一連の血なまぐさい砲撃戦で、第3、第10師団、第51シャドウ師団、テラセク数個部隊など、地元のブレイク軍と交戦した。歴史的な都市であるタリンとリガはこの紛争で破壊された。

 宇宙では、コムスター艦隊は打ち砕かれた。ワードは6隻の戦艦を失ったが、半ダースそこらのドローン艦隊が残った。コムガード輸送船のすべてが破壊されるか、惑星降下したわけではない……一定数の船がブレイク派に降伏し、乗員と客員は地球と火星の再教育キャンプに入れられた。

 地球星系の安全はその後10年間、確保された。

 合同軍は、3078年7月20日、地球星系の防衛状況を調査するために帰還した。偵察部隊はカイパー・ベルトにジャンプし、ワードを愛さない(あるいはそう思われた)ベルターズのグループにコンタクトをとった。この集団が防衛状況を監視したとき(タイタン軌道上のキャスパーIIシステム含む)、ベルターズ内のスパイが監視されているとブレイクに警告を発した。これによって海軍司教グレゴリー・ズウィックは合同軍艦隊が到着するまで準備を行う時間を与えられた。

 地球星系強襲は、星系外周部での暴力的な宇宙戦から始まった。コムスター提督アラン・ベレシックは星系の中より外の方が守りが薄いことを知っていたが、合同軍は星系内の惑星・衛星を攻撃する前に脅威をすべて排除する必要があった。ベレシックは艦隊を率いて、タイタン造船所にジャンプした。キャスパーIIシステムと艦載級砲塔多数、ポケット戦艦、強襲船、ワード・オブ・ブレイク戦艦のほかに、帝国は元コムスターの戦艦3隻と戦わねばならなかった。戦艦6隻を失った後、合同軍艦隊は戦闘に勝った。ブレイク派の船すべてとタイタン造船所の60パーセントが破壊された。いまやストーンのために道が開かれ、合同軍の侵攻艦隊が到着したが、ベレシック提督の仕事が終わったわけではなかった。

 8月17日に到着することになっている合同軍を支援するため、コムスターのベレシックは再充電の終わった艦隊を地球近くにジャンプさせた。ブレイク軍ズウィック司教の計画は、合同軍の計画をスタートから混乱させた。地球のパイレーツポイント近くに撒かれたハイパージャンプ機雷が合同軍の戦艦2隻を始末し、砲撃が始まる前に戦線から取り除いたのである。ズウィックは合同軍のショックを利用し、大胆な攻撃をしかけた。キャスパーIIドローンに側面を守られたズウィックの艦隊は恐るべきもので、合同軍の地球進撃を停止させた。もつれあうふたつの艦隊は完全なる混沌を生み出した。それから合同軍の航宙艦が星系内に到着した。航宙艦数百隻が実体化し、直ちに降下船と戦闘機を切り離すと、混乱はますます強まった。

 ブレイク艦隊の終わりを告げる予兆となったのは、ズウィックのファラガット級〈ライテス・ジャスティス〉が、ベレシックの旗艦によるミサイル集中攻撃で大破したことだった。この船、キャメロン級〈インヴィンシブル・トゥルース〉もまた、キャスパーII司令船に戦闘能力を奪われた。この二人の元友人にして戦友は、互いの旗艦が至近距離で持てる武器のすべてを互いに放ったとき、死亡した(のちに〈インヴィンシブル・トゥルース〉は復旧したが、この破滅的な衝突を生き残った者はいなかった)。これは海戦の流れを合同軍の側に傾けた。戦闘が荒れ狂うなかで、残ったブレイク派は降伏を拒否した。リヴァイアサンII級CGB〈ラサルハグ〉がブレイク派の戦線を突破し、地球への突進の先頭に立った。ゴーストベア戦艦がすさまじい守りを提供したにもかかわらず、キャスパーII、戦闘機、地上防衛は惑星降下しようとした合同軍の船に大きな損害を強いた。無傷で降下した部隊はなかった。軌道侵入でリュウケン・ニ、第5ライラ防衛軍、第6コムガード軍が最悪の損害を出し、戦友の2/3以上を失った。

 デヴリン・ストーンとベル・リーは侵攻のため部隊を二つに分割した。ストーンは南北アメリカ大陸の部隊を指揮する一方、リーはユーラシアとアフリカを担当した(オーストラリアと南極大陸は初期段階では無視されたが、後にリーはシドニーに移動した)。この二人の指導者は、恐るべきキャッスルブライアン、レーガンSDS司令センター、できる限りの支援インフラを破壊することで、ブレイク派の抵抗を破壊しようとした。

 地球だけがブレイク派軍のいる世界ではなかった。宇宙での戦闘がいまだ続くなかで、ルナ強襲が始まった。これは合同軍で最初の征服成功だったので、後にアナリストたちは簡単な任務だったと考えた。生存者たちはそうでないことを語っている。

 ルナ強襲は、強襲降下船が数波に分かれて各種のルナ設備を破壊したことで始まった。防衛軍は1個レベルII気圏戦闘機を持っていたのみで、すぐやってきた強襲軍に粉砕された。微々たる抵抗が排除されると、地球の月を征服するため、降下船が歩兵のみで構成された部隊を流し込んだ。ルナ強襲はマルセル・ウェブ少佐とスターシーズ(エリートの6個装甲歩兵分隊)に率いられた。8個DEST分隊と、ウルフ氏族、ジェイドファルコン氏族から、6個星隊ずつがそれに同行した。分かれた合同軍部隊は、複数の入り口から入ったが、楽なところはなかった。ルナ支援基地に入るため壁を破壊した後、合同軍の歩兵は狭いトンネルと窮屈な通路で血なまぐさい闘争を行った。ブレイク防衛軍はできる限りのことを行った……準備された防御陣地、即興の防御陣地から交戦し、待ち伏せ地点に後退した。この強襲は血塗られた激闘となった。両者の違いは、合同軍の優れたバトルアーマーにあった。ルナはわずか数時間で陥落したのだが、合同軍はこれを栄光と考えなかった。生き残って捕まったブレイク派はほんのわずかだったが、合同軍の歩兵はこの悪夢的な交戦で50パーセント以上の被害を出していたのである。ルナは地球解放軍が大地にブーツをつけたのとほぼ同時に陥落した。

 地球奪還作戦はヨーロッパとアジアで成功していた一方、アフリカ(後にオーストラリア)でぐらついた。火星にあるブレイクROM本部を気にかけたデヴリン・ストーンは、アンドリュー・レッドバーンにレッドプラネットを確保するよう命じた。11月14日、レッドバーンに、ストーン・リベレーターズ、第7ドネガル防衛軍と、政治的な問題で地球強襲を拒否した氏族軍の一部が加わった(地球にたどり着いた氏族が大氏族となるが、火星に到達した場合は考えていなかった)。従って、ノヴァキャット、放浪ウルフがアルファ銀河隊を送り、ヘルズホースが第11機械化機兵隊を送った。

 合同軍は火星作戦で敵の強力な航空戦力に直面し、レッドバーンは通常でない強襲計画を実行せざるを得なかった。上陸して、前線作戦基地に戦力を集めるのではなく、彼は戦力を三つに分けた……放浪ウルフとノヴァキャット、ドネガル防衛軍とヘルズホース、ストーン・リベレーターズだ。各タスクフォースは、ROM本部があることで知られるコーリョの入り口を強襲するために、クリーゼ平原に下ろされた。作戦を通して、ブレイク戦闘機5個大隊、ポケット戦艦、その他の小型船艇がレッドバーン軍を繰り返し効果的に機銃掃射した。

 3グループがドーム都市に押し入ると、住人は彼らを解放軍でなく侵攻軍として扱った。レッドバーン軍は残ったブレイク防衛軍の殲滅と、都市に残る民間人と住居の確保のバランスをとった。中心領域軍が民間被害を抑えた一方、氏族軍は止まることがなかった。彼らの無神経な損害無視は、地元民に驚異的な損害を出して火を注ぎ、都市降伏後の何年にも渡ってくすぶった。コーリョと火星の残りはすぐに平定され、大半が無事なまま残ったが、他の火星都市はそうならなかった。最悪の被害はプーロのエアロドーム住人1万2000人が全員死んだことだった……ジェイドファルコンのアルファ銀河隊がドームを密閉し、浄化された空気の大部分を押し流し、それからドームを破壊したのである。これによって火星におけるブレイク派最後の抵抗が終わったのだが、ストーン司令部はこの凶行を隠蔽しようとした……3084年にセンセーショナルな記事が出るまで公表されなかったのである。

 12月16日、ローレンス・スティーヴンソン准司教(火星で生き残った最高位のブレイク派)は公式に降伏した。

――『地球のストーン: 征服と征服者』ナーゲルリンク軍事出版、3098年








暴君に死を
状況
スクウェア・ホール・パーク、ネリスタウン
リバティ、保護領(紛争中)
3078年4月1日


 21/03/78: 聖母よ、ヒラリーは正気じゃない。彼女はそれを長く隠し続ける程度には安定していた。長年、私のことを騙していた。いま表に出ているものは、私が軽く受け入れられる範囲を超えている。

 少なくとも、あれらの遺体を始末するのは簡単だった。夜中、ちょっと浅瀬に旅行すると、魚は大量の食事を取ることになった。クロイツァーは友人たちと共に脱走したと他の連中は信じている。彼女の代わりを探すのは、しかし、カニンガムの穴を埋めるより難しいだろう。

 ブレイク信徒の古参兵を使うときは慎重にしているが、一方で、彼らは、まさにいま死活的に必要な兵士の手っ取り早い供給源となっている。脱出するあいだ、バクスターは古星間連盟の自動砲台復旧を成し遂げた。合同軍が来たら、「リャオ首相」の好意には驚かされることだろう。

 ――ピエール・グランディン


結末

 グランディン・クルセイダーズは、3078年3月、惑星がリャオ派の蜂起によって解放された直後に到着した。惑星のHPG施設が破壊されたことから、クルセイダーズはカペラが契約した部隊に偽装し、戦闘を避けることができた。彼らは抵抗軍に歓迎された。中にはグランディンが10年前に訓練した市民軍の隊員もいた。古参兵数名が失踪したあとに混乱があったので、クルセイダーズには静かな時間が必要だった。

 合同軍がブレイク保護領を前進していることは、リバティーがすぐにも攻撃に晒されることを意味していた。惑星の新しい政府から支援を受けたグランディンの工兵たちは、首都周辺のSLDF要塞いくつかを復旧させた。基地として、傭兵はかつて地球帝国CAAN師団群の司令本部があったパリス・アイランドを占領した。

 スチュワート郷土防衛軍とコムガード第5軍が、ストーンのためにこの惑星を奪い取ろうとしたとき、グランディンの努力は報われた。クルセイダーズは、自動砲台多数とリャオ派市民の支援に増強され、多層的な防衛を実施した。絶え間ないゲリラ攻撃は補給問題を引き起こし、パリス・アイランドに突入しようとする合同軍を混乱させた。

 停戦が持ち出され、クルセイダーズの退却について交渉するため、リン・ムラカミが派遣された。グランディン男爵は、首相の名においてこの世界を合同軍に引き渡した。ストーンと合同軍は、カペラがクルセイダーズについて否認したことを、本物の抗議というより政治的な策略であると受け取った。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








昼の終わり
状況
チャペル・オブ・ザ・サン、シンガポール
地球、ワード・オブ・ブレイク保護領
3078年10月17日


 夢がかなったかのようだ! 彼に厳格な態度でのぞむのは好きでなかったが、本当に報われた。式は美しかった。かつてどれだけの人が中国の紫禁城で結婚したのだろうか? 皇帝と女帝。そしていま、グランディン男爵と、グランディン男爵夫人。

 彼は記録しないことを望んでいたが、この日を忘れないようにしないとならなかった。いまやそれは私の小さな秘密である。故郷に戻ったら、ピエールを驚かせてやることにしよう。

 だが、今のところ、我々は戦闘の中にいる。少なくとも、マケッソン司教はいい人であるようだ。彼の言うところが真実であるなら、合同軍の兵士たちは暴虐である。あのホガースは本物の化け物のようだ。もしかしたら、ワードはそれほど悪くないのかもしれない。ストーンがあんな連中と一緒にやってきたのだとしたら、愛しいピエールがストーンについて言っていることが正しいのかもしれない。

 ――ヒラリー・グランディン


結末

 10月前半、シンガポールの降伏後、第2ダヴィオン近衛隊が退却したことで、この都市の防衛は大幅な人手不足に陥った。大打撃を受けた第5自由世界防衛軍とコムガード第1軍がキャッスルブライアンの守備を任された。テラセクの生き残った者たちは、バタム島に集結して、都市のブレイク派管理者ジャーヴィス・マケッソンと連絡を取り続けた。

 チャンスと見たマケッソンは、援軍を手配するため上役に連絡した。グランディン・クルセイダーズは求めに応えて送られた使い捨ての機動部隊であった。クルセイダーズはテラセクの生存者と合流し、ワードの第19師団に化けた。10月17日、攻撃が始まる前に、マネイドミニの小規模なグループが加わった。

 ブレイク軍はバタムまで通っている地下鉄を使ってシンガポールに侵入した。生き残ったゲリラセルによるテロリスト自動車爆弾は、合同軍を混乱に落とし、クルセイダーズがキャッスルブライアンを強襲する道を切り開いた。この要塞の防衛は、ブレイク派がコンピュータ・コアに破壊工作を施したことから、連携が崩壊しており、疲れ果てた第5防衛軍は攻撃に対処するには分散しすぎていた。ホガース将軍の指揮小隊に対するマケッソンの攻撃は混乱に拍車をかけた。

 クルセイダーズは要求に応じて要塞を奪ったが、同行したマネイドミニの一人がコンピュータ・コアに自爆コードを打ち込んだ。クルセイダーズは急いで脱出し、核爆発による完全な破壊をかろうじて避けた。この破壊は、ホガースに対する攻撃を妨害し、シンガポール内での数百万の死につながった。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








ファイナル・カウントダウン
状況
シルダリア川、バイコヌール
地球、ブレイク保護領
3078年11月18日


 18/11/78: 取引を行った。合同軍を足止めして、降下船が離陸するだけの時間を稼げば、ワードが逃げるのに必要な気圏戦闘機支援を提供してくれることになった。重要人物の全員を逃がすことが出来れば、インセンティブ・ボーナスを出してくれることにさえなった。

 本当に重要なのだろう。そのうち一人はとくに。それを隠そうとしているようだが。しかし、どれだけ多くのマネイドミニが彼を取り巻いていることか。アズラエルではなく、アポリオンでもない。彼はマスターなのだろうか? どこか見覚えがある。同じ特徴がある。いくつかの理由から、ハンス・ダヴィオンを思わせるのだ。もっともフォックスの子供たちは全員が知られているし、私生児がいるとの噂を信じてはいない。

 が、無益な推測は充分だ。私の運命は、人類発祥の地にある。どれほどそれがふさわしいことか。

 ――ピエール・グランディン


結末

 ブレイク派を地球から逃がすため、いにしえのバイコヌール宇宙基地が、10月前半、急いで復旧された。グリーンランドやデビルズタワーの施設は、ユーラシアにいた者たちが移動するのは難しく、すでに輸送能力が限界に近づいていた。合同軍の諜報部は、すぐに新しい施設を察知し、閉鎖するために計画が作られた。ヨーロッパ解放の後、大規模な合同軍がウラルを越えて攻撃するため、まとめられた。

 第37師団は避けられぬ運命を遅らせるためにベストを尽くしたが、劣勢となり数でも負けていた。サン=ジャメ軍司教はクルセイダーズに支援を任せ、もし最後の脱出のために敵を足止めできたなら、ワードの仕事からの解放と、逃亡の支援を与えると約束した。グランディンは、第51シャドウ師団のマネイドミニ数名という形で支援を受け取った。ドミニはすでに高い地位にあるVIPを守っていた。

 第1南十字星部隊と第23アークトゥルス防衛軍は、11月18日、バイコヌールに対して力強い調査を行い、クルセイダーズに遭遇した。クルセイダーズはシルダリア川沿いに後退し、機動防衛を実施して、合同軍の指揮部隊をマネイドミニによる待ち伏せに引き寄せた。生じた損失と混乱によって、合同軍は撤退し、ワードが最後の打ち上げを完了する充分な時間が生み出されたのだった。

 バイコヌールは、2日後、バトルコープス傭兵部隊の前に陥落した。グランディン・クルセイダーズは、同日、重戦闘機の支援の下に地球を脱した。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年






ニューアース

侵攻 3068年10月
解放 3079年4月

参加部隊
 合同軍
   ゴーストベア氏族クシー銀河隊・オミクロン銀河隊、ジェイドファルコン氏族アルファ銀河隊、ウルフ氏族デルタ銀河隊、コムガード第1軍
   傭兵軍
     デビル旅団
 ワード・オブ・ブレイク
   第10師団、第12師団、第50シャドウ師団、ニューアース保護領市民軍

 かつては美しい国立公園、自然保護区、そのほかの自然の驚異で知られていたニューアースは、ワード・オブ・ブレイクに最初に占領された世界のひとつとして、長年の占領による傷を負っている。3068年10月、ワードは惑星を戦術核で踏み荒らし、インフラと工業プラントを破壊し、地元の守備隊を一掃した。侵攻時の犠牲者は最大で25万人におよんだ。生き残った民衆はブレイク派の銃口の下で数年間過ごした。

 ニューアースでの生活状況は、保護領内の他世界よりも良かったが、市民の自由は停止された。多くの抵抗グループが生まれようとしたが、ワードはそれを発見し掃討するのがきわめて上手かった。ついにニューアースが解放されたとき、10年におよぶ占領の間、ブレイク派は450におよぶ抵抗グループを特定し排除していたと推定された。

 3072年はワード・オブ・ブレイクの計画と戦略の変更によって明けた。サン=ジャメ戦司教は、勝ち取った保護領を守るために防衛的な戦略(「マジノ線」防衛として知られる)を発動した。地球を取り囲むすべての世界を要塞化するのが計画の中枢であった。ニューアースSDSとそれに付随する防衛装置の検察は3月1日に始まり、ちょうど1年後に終わった。ニューアースは、艦載級据え付け兵器、核兵器、ポケット戦艦、キャスパー・ドローン戦闘機3個航空大隊に守られることとなった。安全の感覚が大衆の不満を大きく和らげた。ワードに対する抵抗は大幅に減じた。

 3076年7月後半、ワードの防衛を測るため、コムガード第1軍を先陣に予備重襲撃が行われた。コムガードはブレイクの第10師団による激しい抵抗に遭遇し、ニューアース貿易会社(NETC)の工場近くで交戦を行った。二日におよぶ残虐な戦いで、最初はブレイク派の撃退が焦点となったが、後にはNETCを破壊することに変わった。ブレイクの第12師団の一部がコムガードの後方に近づくと、襲撃部隊は素早く後退した。12月のデビル旅団による再攻撃は、目標であるNETC本部の破壊に失敗した。

 ロバート・ケルスワ=シュタイナー公爵は、3078年2月、ニューアースを奪還するために、本気の攻勢をしかけた。4個銀河隊(ウルフ氏族とジェイドファルコン氏族からそれぞれ1個、ゴーストベア・ドミニオンから2個)がブレイク兵と交戦した。ドミニオン兵は氏族の仲間の支援、連携を拒み、完全に異なったやり方で活動した。3氏族はニューアースの戦いを名誉獲得競争のようなものと見たのだ。

 トラブルの兆候は、氏族たちがニューアースの機動防衛と交戦したときに来た。核ミサイルを積んだドローン戦闘機が戦艦3隻を破壊した――イージス級〈フロスト・ファルコン〉、ヴォルガ級〈ウルシン・ボートマン〉、ヴィンセント・Mk42〈ハニン〉である。ワードは〈フロスト・ファルコン〉の舷側射撃でイーグル級〈パーシヴァル〉を失っただけだった。軌道防衛の激しい抵抗に関わらず、氏族は兵士の大半を地表に下ろすことが出来た。

 ドミニオン軍は激しく攻撃した。一週間にわたる戦闘の後、第12師団はひどい損害を負ったが、完全に撃破される前に第50シャドウ師団が到着した。シャドウ師団の激しい強襲は、ゴーストベア氏族のクシー銀河隊の大半を破壊し尽くした。バランスがブレイク側に傾くと、両ウルフ、ファルコン指揮官は、一時的な撤退が必要だとドミニオンに確信させた。氏族の軌道支援が輸送を提供するために星系の防衛を片付けるのに3週間がかかった。第50シャドウ師団は激しく攻勢をかけ、上陸した降下船の1/4を破壊した。ブレイク派の前進を遅らせるため、共同で死にものぐるいの防衛が行われた。

 4個銀河隊の損害は非常に大きいものだった。ドミニオン指導部からの強いプレッシャーがあったものの、ケルスワ=シュタイナー公爵は(ストーンの指示を受けて)それ以上の攻撃を拒絶した。合同軍はニューアースを迂回したが、地球陥落後の3079年4月に戻った。それまでにニューアース保護領市民軍のみが惑星を守るために残っていた。クシー、オミクロン銀河隊との短時間の激しい遭遇によって、市民軍は降伏が賢明であるとすぐに確信した。

 ニューアースがついに解放されると、この世界の生態系は重大な(しかし究極的には回復可能な)損害を受けていた。最初の侵攻時にワードが気まぐれに核兵器を使用したことで、人口密集地帯の多くが居住不可能となっていた。3086年、共和国の科学者たちは、高度な除染技術をもってしても、少なくとも1世紀はニューアースが放射線に晒された荒野のままであると見積もった。風景に残る傷跡は、ワードとその蛮行を思い出させるものとして残るだろう。

 ――『遺産と悲嘆』、ジュネーブ大学、3095年








ヘビーメタル
状況
ベース・ガリー、グレートスピン山脈
ニューホーム、ワード・オブ・ブレイク保護領(紛争中)
3079年3月18日


 この契約を得られて、とても安心している。残った核の捜索を手伝うというのが、我らに出来る数少ないことであった。愛しいピエールを少し説得せねばならなかったが、ほどなくわかってくれた。シンガポールのちょっとした償いが必要だった。そして、もし合同軍と契約できるのなら、我らの記録を作り直す助けとなろう。

 ピエールは、私が直々に捜索を行うのが重要であると考えた。

 地球周辺から脱するのにもいいだろう。我々はピエールのいとこからヴォークリューズに帰還する招待を受け取った。フィルトヴェルト連合はいくらかの援助を使えることになるだろう。我々は装甲車両の大半を放棄せねばならなかったが、まだかなりの戦力を保っている。合同軍のために海賊を狩ることで、新しい民衆の敬愛を勝ち取れるだろう。

 いまのところ、すべてうまくいっている。

 ――ヒラリー・グランディン


結末

 ニューホームは3078年後半に平定を宣言されたにもかかわらず、新年になっても保護領市民軍の生存者たちが合同軍の支配に抵抗し続けた。これら「はぐれ」部隊と、生き残ったブレイク部隊の問題に対処するため、合同軍は地球陥落後、短期間の雇用を行った。IEによる証明保障を持つグランディン・クルセイダーズには、このような鎮圧契約の需要があった。

 クルセイダーズは、隠された核生物兵器の捜索を支援するため、ニューホームに連れてこられた。彼らが任された地域には、かなりの反乱保護領市民軍がいるグレート・スピン山脈があった。グランディン男爵はシステマチックなやり方を選び、バトルアーマー隊が草の根をかきわけているあいだ、ブレイク派の反応に備えて、自分のメック部隊を予備地点に残した。歩兵による捜索は、男爵の新妻にして部隊の副指揮官、ヒラリー・グランディンによって直々に実行された。

 小さな農業開拓地を調査しているあいだ、バトルアーマー中隊の分隊が、保護領市民軍の一団に遭遇した。市民軍は戦おうとせず、傭兵部隊が築いた警戒線を突破しようとした。経験豊かな装甲歩兵は、通信が断絶したにもかかわらず、グランディンのメックが到着するまで市民軍を足止めした。捕獲された捕虜数名によって、ブレイク派の大量破壊兵器がこの世界にないことが確認され、ゲリラ活動に対する貴重な情報が提供された。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








メインフレーム
状況
オアンフー、フォーマルハウト
地球保護領
3079年4月12日


(ウルフネット報告書30790510/17-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 聖戦を通し、合同軍でトップの工作員の一人が、「ダモクレス」というコードネームの人物である。いまや地球は陥落し、ブレイク最後の拠点を掃討し、戦争犯罪で指名手配されている者たちを追い詰める任務を与えられた。この仕事において醜いが必要な部分である。

 ダモクレスからの情報で我々はフォーマルハウトに移動した。オアンフーと呼ばれる町にブレイク派が匿われていた。たとえ町を倒壊させることになっても、我々は踏み込んで、ブレイクを根絶せねばならない。ダモクレスはブレイク派のリーダーを生かしたまま捕らえることを望んだが、いくつかの理由から地元民たちは死を求めていた。どうも、このブレイク派たちは武装しており、危険なようだ。合同軍はそれを気にかけず、少佐もそうだった。うまく捕まえるつもりだが、スパイの言うことに首を差し出すつもりはない。


オルソン特戦隊
 聖戦初期にカペラ大連邦国から違法離脱して以来、オルソン特戦隊は買収され、ワード・オブ・ブレイクのマネイドミニに「強化」されていた。傭兵を監視する任務を与えられたマネイドミニのメック戦士数名は、傭兵を使ってカペラ軍を悩ませ、罠にかけた。結果、特戦隊は戦場から引かず、無力化されない限り、死ぬまで戦う。もしマネイドミニが操縦するマシンが無力化されるか行動不能となったのなら、捕まるのを避けるため、反応炉をオーバーロードさせるか、その他の方法でマシンを破壊し自殺する(しかし、特戦隊は単純に降伏する)。この親ブレイク派傭兵団は、できるかぎり多くの民間巻き添え被害を引き起こす。


結末

 日誌、記録番号4202

 聖戦は傭兵業界に数十年におよぶ衝撃を与えた。傭兵団の多くが破壊された――キャノンズ隊員の1/3は聖戦開始時に他の傭兵部隊にいた。ある傭兵はウォーブリーズのために戦い、ある傭兵はウォーブリーズと戦い、ある傭兵は無法者となった。

 そしてここにオルソン特戦隊がいる……

 オルソン特戦隊は、かつて巧妙な連隊だった。66年に大打撃を受けたあと、彼らは68年に脱走し、ウォーブリーズの支払いに与した。MRBCは各隊員に5万コムスタービルの賞金をかけたので、オアンフーは良いボーナスになると考えた。

 この考えはまずかった……特戦隊の1/3が、マネイドミニ専用のセレスティアル級メックに乗っているのを目撃したのだ。私はキャノンの全メックに対し、一番大きいセレスティアルどもに集中砲撃し、ホバー戦車に残りを妨害するよう命じた。「支援」してくれるはずだったDCMSの市民軍は、我々が特戦隊を追い詰めるまで出てこなかった。

 20分の戦闘後、セレスティアル全機が倒され、サイバー野郎共が最後の一人にいたるまで死亡したのを個人的に確認した。脱出した特戦隊員はおらず、降伏したのは6名だけだった。

 合同軍の情報チームが話をしてくれたが、ひどいものだった。ワードは特戦隊を買収し、「強化」し、人と機械のねじくれた融合物にしてしまったのだ。それから彼らは数名の「番人」を置いて、汚い仕事をやらせるために送り出したのである。

 ――ギャノン・デラー






ニューホーム

併合 3068年8月
解放 3079年11月

参加部隊
 合同軍
   ノヴァキャット氏族シグマ銀河隊、第8ディーロン正規隊、第2恒星連邦装甲機兵団、リュウケン=ロク、ストーン・ラメント、ストーン・スチュワート
   傭兵軍
     バトルコープス軍団、第1ケルハウンド連隊
 不正規軍
   アヴァンティ・エンジェルス
 ワード・オブ・ブレイク
   ニューホーム保護領市民軍、第3シリウス槍機兵隊、第43シャドウ師団、第45シャドウ師団、第47シャドウ師団、第50シャドウ師団
   傭兵軍
     ブランク・コヨーテ

 ウィリアム・ブレイン司教の注意深い外交によって、ニューホームはブレイク保護領に加わるという道をたどった。バー・ブラック・コブラがこの惑星から出発してしまうと、聖戦の勃発によって惑星に反対運動が生まれた。ワードは、3068年、ブランクコヨーテを派遣した。この傭兵部隊は例のない残虐さで反戦抗議活動を鎮圧していった。彼らの強権的な対応は一時的に秩序を取り戻したが、長きにわたり続く強力な抵抗を生み出したのである。

 コヨーテの残忍な弾圧から生まれたこの小規模な抵抗運動は、シニーズ男爵とアヴァンティ・エンジェルスからの支援を受けた。エンジェルスは3069年の大半を抵抗セルいくつかの訓練に費やし、市民軍の鼻先で兵器と重装備を密輸入した。

 コムスターとアリス・ルーセ=マーリックの抵抗軍に支援された地元のパルチザンは、3072年11月、ブレイク派政府を打倒した。ブレイク労働キャンプのいくつかが解放され、多くの政治犯が抵抗運動に加わった。救出された者の中には、ブラックウォリアー元指揮官、フリッツ・ドナーがいた……後にアークロイヤル会議で知らず知らずのうちに人間爆弾として使われた人物である。3073年1月、保護領市民軍が首都フィンドラーを奪還すると、惑星の一時的な自由は終わった。

 3075年6月6日、ニューホーム保護領市民軍(反乱軍シンパだらけだった)は、ライラ軍に化けた第50シャドウ師団による攻撃を受けた。彼らの慎重で段階的な虐殺は、市民軍内の信用できない者たちを粛正したが、この世界の防衛を弱体化させることにもなった。この損害が完全に取り戻される前の3078年3月、デヴリン・ストーンがストーン・ラメント、リュウケン=ロク、第2恒星連邦装甲機兵団、ノヴァキャット氏族シグマ銀河隊、バトルコープス軍団を率いてニューホームに降り立った。第43シャドウ師団が戦力低下した保護領市民軍を強化していたが、ワード軍はストーン強襲軍に太刀打ちできなかった。

 この星系全体がブレイク派の罠と発覚したのは、4月23日のこと。第45シャドウ師団、第47シャドウ師団が、近くのパイレーツポイントに到着したのである。フィンドラー近くの星間連盟要塞の遺跡に立てこもったストーン・ラメントは、第43、第45シャドウ師団の断固たる強襲に対し9日間持ちこたえた。そこで第47シャドウ師団がこの陣地の側面を突こうとしたのである。WBS〈ライオネス〉からの断続的な砲撃を受けながら、エセックス級〈シャロン〉は身を挺して機動を行い、指揮統制デッキを失う前に、第47シャドウ師団へのピンポイントの軌道砲撃を浴びせた。この突然の戦術的な転換によって、ストーンは強力な逆襲を行うことが可能となった。狩人は狩られることとなった……ストーン・ラメントが惑星中でシャドウ師団群を追い回したのである。第47は生き残らず、第43、第47のわずかな生き残りは、砲撃を受けながらもニューホームから離陸していった。

 しかし、ニューホームでの抵抗は、シャドウ師団が撤退しても終わらなかった。保護領市民軍と第43シャドウ師団の生き残りが峻険なスピナ山脈に後退したのである。合同軍の傭兵部隊がほぼ3079年を費やして、ワード最後の核兵器備蓄を確保するという任務の間に、これらの抵抗を撃破した。

 ――『死の一週間』、チコノフ戦争大学プレス、3096年刊行






ナンキン

占領 3071年6月
併合 3077年9月

参加部隊
 合同軍
   第5ライラ防衛軍、ノヴァキャット氏族デルタ銀河隊、第17ベンジャミン正規隊
 カペラ大連邦国
   アンバーマール・ハイランダーズ、フジタ家
   傭兵軍
     デルファイ・グレーテストヒッツ、装甲機兵団
 ワード・オブ・ブレイク
   第17師団、ナンキン保護領市民軍

 ナンキンは3071年6月、ワード・オブ・ブレイクに占領された。ブレイク派航宙艦の1隻目が実体化する前に、ROM統制の蜂起がカロンタウンを占領したのである。ワードの第17師団が一週間後に到着し、惑星市民軍を掃討した。3071年8月12日、アンソン・ジェイケル公爵が処刑されると、ナンキンの残った防衛軍は士気崩壊し、反ブレイクの地下抵抗運動を中止した。

 忠誠心を見せるべく、新しい売国政府はカロンタウンにあるメック工場の生産を増やすため、カロン工業の地元経営幹部と共に働いた。厳しい扱いを受けた労働者たちはサボタージュを行い、目標には届かなかったのだが、ナンキンはブレイク派にとって重要な資産として残ったのである。

 この惑星の価値は、合同軍とリャオ家の対立を引き起こした。恒星連邦グループIIIとカペラのフジタ家率いるタスクフォースの両方が、3077年9月30日、ナンキン星系にジャンプした。合同軍は協力を提案したが、カペラは敵対的な反応を示しただけだった。愚かなことに、リャオの降下船は、合同軍より早く惑星の地表に着こうとして、2.5Gで進んだ。

 カペラ兵士は疲労困憊で降下船を下り、すぐにナンキン保護領市民軍の強襲を受けた。フジタ家が全滅を免れたのは、ナンキン市民軍がカペラの降下船を強襲したがらなかったからである。合同軍は支援を呼びかけたが、またも返事はなかった。

 翌日、合同軍の上陸はスムーズにいった。ノヴァキャット氏族デルタ銀河隊と第17ベンジャミン正規隊はカペラ軍の周囲のブレイク戦線を破った。保護領市民軍は彼らと対面するために方向転換したが、第5ライラ防衛軍に叩かれるだけに終わった。保護領市民軍はバラバラに崩壊し、合同軍は最善を尽くしたが、一部は地方に落ち延びた。

 カペラ軍を救った後、それまで沈黙していたカペラ軍からの無線がつながり、合同軍に惑星から出るよう命じた。合同軍は大規模なブレイク部隊が逃走中であることを武家に伝え、さらなる支援を申し出た。フジタ家は通信を止めた。交渉を続ける代わりに、狂信的なカペラ人は第5ライラ防衛軍の陣地に戦術核兵器を撃ち込んだ。合同軍は事態を悪化させるよりも退却することを選んだが、カペラの好戦性と外国人嫌いは来たるべき衝突の兆候を示していた。

 3080年代前半、ナンキンの民衆は、ストーンの新生共和国で大きく分断された。5年にわたり、ナンキンが大連邦国と共和国のあいだで何度も揺れ動くと、各企業は私有財産を守るために動いた。カロン工業がダヴィオン家のために事態を動かしているとの証拠が明るみに出ると、企業の広報部は悪夢を見たのである。これはしかし、戦場から法廷へと動き、また戻る、一連の企業紛争の第一弾だったのである。

 ――『大連邦国の種子』、アカマー出版局、3092年








ジンクス
状況
"カロンタウン"、ヤン=クー
ナンキン、地球保護領
3080年1月30日


 28/01/80: ヒラリーはますますパラノイアになりつつある。彼女はニューホームでの通信断絶がリーの責任だという証拠を「つなぎあわせ」、士官たちの前で彼を撃ち殺した。なにが起きたのか黙っておくように言い含めるのは簡単ではなかったが、やらなければならなかった。

 危なすぎて今の彼女を故郷に連れて帰ることはできない。いや、もしかしたらずっとそうだったのかもしれない。くそっ、あのときクロイツァーをヒラリーと交代させておくべきだったのに。クロイツァーも狂った女だが、もっと扱いやすかった。ヒラリーは狂気を隠していた。手遅れになるまで。ふざけるな!

 少なくとも今回の任務は単純なものだ。手ぶらのカロン社パルチザンたちに物資を護送するというだけ。連中は兵器がなくなってしまうというトラブルに直面していた。犯人はブレイク派かもしれないし、合同軍かもしれないし、他の企業かもしれなかった。問題はそこではない……トラブルがあるのなら撃ってしまえばいい。

 ――ピエール・グランディン


結末

 カロン工業は、騒乱の惑星ナンキンに武器を運ぶためクルセイダーズを雇い入れた。クルセイダーズはこの地域で長い活動記録を持ち、他社向けに似たような任務を達成していたので、カロン社のニーズによくマッチしていた。任務に就くために到着した直後、彼らは多数のAPCをクライアントに輸送するよう求められた。

 最初は何事もなく進んだ。APCの最初の一団がカロンタウン宇宙港を通過したときに、最初の攻撃が行われた。地元傭兵部隊アウン・チンディッツの分隊が都市の外辺部から現れ、車両をハイジャックしようとしたのだ。この攻撃にあわせて、チンディッツは2機の気圏戦闘機による奇襲を加えた……クルセイダースは予想も準備もしていなかった。グランディンがメックからの集中砲撃で戦闘機を退けるあいだ、部隊の残りは必死に輸送隊を守った。

 何度かの航空攻撃の後、市民軍の航空機がスクランブルして傭兵の戦闘機を追い払い、グランディンは逆襲に着手した。先頭に立った彼は生き残った騎士たちの支援を受けて、チンディッツ指揮小隊への攻撃を行い、敵軍指揮官を撤退させたのである。チンディッツの兵士たちもそれに続き、APCを降下船アヴァリスに届けるのが可能となった。この降下船は海賊に奪われたと後に報告されたが、カロンは渋々契約を尊重した。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年








スノウジョブ(巧みな嘘)
状況
トン・シ補給庫
ナンキン、地球保護領
3080年3月5日


 バルガスならやってくれるとわかっていた! 彼は片田舎の補給庫でアヴァリスを発見した。軌道上に上がってすらいなかったのだ。あのカロンの代理人どもは我々を騙すつもりだったのだろう。だれであろうと、私と愛しいピエールを騙すことなどできない。ここを経つ前に、大きな間違いだったことを教えてやる。

 今、あの降下船を奪うための計画を練っているところだ。奪い取って、あのパルチザンに取り戻してやれば、故郷に帰る以上の金を得ることができるだろう。ピエールは、私を妻として、男爵夫人として、紹介することになる! なんて素晴らしいことだろう。

 ここのところ、状況は本当に良くなっているように思える。私たちは聖戦を生き延び、騎士団から不満分子を排除することが出来た。不満分子どもを愛しい人から遠ざけてやれば、ピエールは常に正しいことをなせるだろう。

 ――ヒラリー・グランディン


結末

 グランディン・クルセイダーズは、独自の判断で海賊の倉庫に強襲を行った。ユニオン降下船アヴァリスは合同軍の裏切り者と反リャオ・パルチザンの雑多な集団に支援されていた。この攻撃は奇襲となり、倉庫につながる入り口への守りを突破した。しかし、アヴァリスが自然と防衛拠点になり、その継続的な砲撃に防御側は奮い立った。

 アヴァリスの破壊的な火力は強襲側を叩きのめしたが、クルセイダーズは防衛を突破するだけの充分な戦力を持っていた。ヒラリー・グランディンのハーキュリーズが破壊されても突撃が止まることはなかったが、グランディン男爵はヒステリックに笑い続けて一時的に指揮が不可能となった……妻が生きていると知らされるまで。ヒラン・パンチッタ中尉率いる装甲歩兵が降下船に乱入し、撤退を強制した。

 船の積み荷目録にあった証拠から、「海賊」の襲撃は、カロン工業の一部門が企図した(社内の他部門は知らない)慎重に考えられた取引であったと判明した。さらなる調査で暗号とメッセージが見つかり、ダヴィオンの関与が確認された……ナンキンに混乱の種をまき、カロン工業を弱体化させるための隠謀だったのである。

 降下船と情報を売り払ったことで、クルセイダーズは多額の資金を得た。グランディン男爵夫人の主張により、彼らはその金をヴォークリューズへの移動に使用した。フィルトヴェルト、亡命政府の両方がクルセイダーズを熱烈に歓迎した。ヒラリーはトリヴィッドの取材に対し、これよりうれしいことはないと述べた。グランディン男爵はノーコメントだった。

 ――『ピエール・グランディン・ストーリー』、ガラテア・プレス・リミテッド、3089年






ルイテン68-28

襲撃 3078年6月
併合 3080年12月

参加部隊
 合同軍
   ストーン・ラメント指揮中隊
 コムスター
   第2軍、第3軍
 ワード・オブ・ブレイク
   第46、第48、第49シャドウ師団

 ニューホーム戦役が徐々に静まる間、コムスターのROM諜報員は、かつて放棄されたと信じられていたルイテン68-28がブレイク派の秘密展開拠点として使われていることを知った。マネイドミニ司教アポリオンと彼の第52シャドウ師団がこの星系に駐屯していると情報部門は示唆した。ダモクレスによって確認されたこの情報はデヴリン・ストーンの手に渡った。ストーンはすぐにタスクフォースをまとめ、ブレイク派で最も卑劣な指揮官を抹殺するために出発した。

 ラメントの指揮中隊を率いるストーンは、3078年6月2日、コムガードの第2軍、第3軍と共に到着した。コムガードは薄いブレイクの航空宇宙防衛を突破し、ステーション23のすぐ外に降り立った。橋頭堡を築いたストーンは注意深くこの大規模な軍事施設に近づき、すぐさま砲火を浴びた。コムガードの第77師団は、施設の自動防衛網を突破し、ブレイクが綿密に張り巡らした策略に気づいた。ワードは通信機と偽の識別信号を施設に詰め込み、ステーション23が完全な人員で運営され、大規模な防衛部隊を持っているかのように偽ったのである。

 ルイテン68-28は餌であり、ストーンはワードの罠のただ中に突っ込んだのだ。

 コムガードが混乱を収拾すると、第46シャドウ師団(コムガードのダンテ級〈ボルドー〉を待ち伏せし、ストーンに連絡する前に撃沈した)が第77師団の真上に降下した。この奇襲の前に、第77師団は崩壊した。シャドウ師団は素早くステーション23を奪還し、自動防衛装置と周囲の隠しシステムを再起動した。これにより、近づくコムガード第85師団が壊滅した。ストーンが指揮統制を再構築しようとすると、第48、第49シャドウ師団が軌道工場近くの隠れ家から姿を現し、ストーンがいるところのただ中に降下した。

 ストーンはどうにかコムガードの大半を、トヤマ高地近くの遮蔽へと退却させたが、第323師団が犠牲となった。降下船を失ったことにより、ストーン軍は補給と物資が不足した。ダンテライオン司教の第49シャドウ師団は粘り強く追撃を行い、ストーンが険しい山脈の奥深くに入っていくあいだ、落伍者たちを飲み込んでいった。航空優勢を得たのに伴い、ブレイクのリンモン司教は旗下の第48シャドウ師団の大半を高地の東側面に移動させ、ストーン唯一の逃げ道に立ちふさがった。この部隊、リンモン・ラヴィジャーズは、ダンタリオン司教のハンマーに対する金床となったのである。

 コムガードのシャロン・タン司教と旗下の第214師団は西に進路をとり、危険を冒して灼熱の荒野をいくらか進み、それから南を向いた。放棄した合同軍指揮所への過酷な進軍で師団の半分が脱落した。タン司教と生存者たちは、驚く第46シャドウ師団に襲いかかり、奪われた降下船のうち数隻を取り返した。このうち1隻は改造型エクスカリバー級であった。タン司教はこのポケット戦艦を飛ばして、第48シャドウ師団の陣地中央に数発の戦術核ミサイルを撃ち込んだ。ストーンはこの混乱を利用して、山脈から脱した。生き残ったコムガードはダンタリオン軍に追われながら、脱出ポイントに向かった。

 コムガード第3軍の残存兵力は、向き直ってダンテライオンのドミニ兵と交戦し、足止めを行った。コムガードの生き残りが脱出手順に入ると、第46シャドウ師団の数個レベルIIIが到着した。ブレイク指揮官のイポス司教と第46シャドウ師団は、大急ぎで構築されたコムガードの境界線を蹂躙し、ハリー・ウルリッヒ司教を殺したあとで、ストーンと彼の指揮小隊と交戦した。撃ち合いで負傷したストーンは、イポス司教のアークエンジェルを破壊し、合同軍を叱咤激励した。コムガード第82師団による自殺的な逆襲で、第46シャドウ師団の強襲は潰され、第3軍の生存者が通る道を開けた。タン司教はダンタリオン兵にもう一度戦術核攻撃をしかけたが、爆風にコムガードの一部がとらえられた……タン司教の降下船もである。攻撃を鈍らされると、ブレイク派は再編成のために停止した。ストーン侵攻軍は、待っている降下船に急ぎ、残ったわずかな船に乗り込むため、装備を放棄していった。ストーンと共に脱出したのは、到着したときの10パーセント以下の兵士だった。残った2個レベルIIは地球解放後に第999師団を結成することになる。

 デヴリン・ストーンは、3080年12月、数隻の戦艦と共にルイテン68-28に戻った。ワード軍はおらず空になっていたが、ストーンはコムスターROMの情報を使って主惑星に対する軌道核攻撃を命じた。残ったわずかな軌道施設は機能が評価された……いくつかはモスボールされ、残りは解体され残骸は軌道上に漂った。それ以来、スフィア共和国は行方不明のマネイドミニが戻ってきた場合に備え、この星系を監視している。

――『ストーンの極秘任務』、スモールワールドプレス社、3099年刊行






デビルズ・ロック

解放 3081年10月

参加部隊
 スフィア共和国
   共和国自由兵団、ストーン・レヴナンツ、ストーン・トラッカーズ
  傭兵軍
    ガノン・キャノンズ
 ワード・オブ・ブレイク
   第49シャドウ師団、オパクス(特殊部隊)

 デビルズロックは聖戦の脚注でしかなかった。実際、聖戦が本質的に終了して歴史書の文章になってしまうまではそうだった。ベリス司教を死にものぐるいで追撃したストーン・トラッカーズの全滅がまったく触れられてないのである。

 地球から近いにもかかわらず、デビルズ・ロックは目立たない世界である。自然のランドマークはほぼ存在しないのだが、密集する都市のいくつかは、数十年にわたって恒星間交易の主催者となってきた。洗練され、緩やかに広がる宇宙港が、これら都市の中枢であり、ホイールのスポークのような設計になっている。都市のほとんどが交易を中心にしているが、合法的な商売だけが唯一の商品というわけではない。きわめて組織的な犯罪集団が、過去60年にわたり、惑星所有権の移動に抵抗してきた。違法と遵法の両方の避難地であるデビルズ・ロックは道徳的な中立、惑星政府が傾けることを拒否したバランスに苦しんでおり、よって、商人一族と犯罪一家のあいだには希薄なパートナー関係が存在する。この繊細な状態は、3081年にほとんど崩壊した。

 高額な料金を求める我らの情報ブローカーが提供した報告によると、正体不明だが装備の優れた戦力が、首都シャロン外部の荒野に即席の基地を設置しているとのことだった。この報告は、スフィア共和国が追っていた一人のマネイドミニ、有名なベリスについて触れていた。

 共和国の軍事情報省は、追跡のために3個特殊作戦部隊を送り込んだ。諜報員ダモクレスが「地下モノレール」のようなもの(生き残ったマネイドミニを一時的な隠れ家に送り込む)があるのを確認すると、全3個部隊が地上に降り立った。

 この離れた地域への上陸は探知された。無許可で着陸がなされたという話はワードのもとに渡り、彼らは一連の致死的な待ち伏せをしかけた。

 ストーン・トラッカーズが野営しているとおぼしき一帯(「冥界の門」と呼ばれている地域)に近づくと、ブレイク派のオムニメックとバトルスーツが隠れ家から姿を現し、トラッカーズを取り囲んだ。罠が発動すると、このような事態に備えてトラッカーズに続いていたストーン・レヴナンツが、戦いの場に突っ込んだ。深い裂け目の中での密集した戦いは、共和国軍にとって難しいものであった……誤射を避けるために目標を二度チェックせねばならなかったのである。サイバネティクスで強化していたブレイク派には、そのような制限がなかった。彼らは格闘戦で敵を倒すのを楽しんでいるかのように見えた。

 レヴナンツは包囲された氏族人部隊(トラッカーズ)と合流するために激しく戦い、75パーセント近い損害を出したあとで合流した。両部隊は裂け目の入り口に撤退し、支援する傭兵部隊、共和国自由兵団に連絡を取った。救援隊の先陣を切ったのは、工作員ダモクレスだった。このコムスター工作員は、半壊したアークエンジェル率いる第49シャドウ師団が近づいてくるのを見ると飛びかかった。彼は一緒に前進するよう傭兵部隊に命令し、やってくるブレイク派に突っ込んでいった。砲撃戦が渦巻く中、3体のアスラ・バトルスーツが、ダモクレスが乗るクロケットのコクピットにしがみつき、彼を火葬にした。

 ダモクレスが死ぬと、ブレイク派は退却した。秩序正しく撤退したので、第49シャドウ師団の損害はほとんどなかった。それからワードは小規模な部隊に分裂し、地形に溶け込んでいった。惑星から脱出するすべての降下船の調査をしたが、だれも捕まらず、情報もなかった。第49シャドウ師団とベリスはどこかに消え失せ、それ以来、消息不明である。

――『冥界での悪魔狩り』、フォヒト軍事大学プレス・シンジケート、3095年








ストーム・シャドウ
状況
サンクリドット市
ブライアント、スフィア共和国
3081年9月16日


(ウルフネット報告書30811014/04-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 スフィア共和国のために働くので忙しかった。我々は保護領の元指導者やブレイク指揮官たちを追い回し、死んでいるか生きているかにかかわらず、捕まえては引き渡していった。安定した仕事だった。

 ストーンの上層部は我々に注目したようだ……最高の(しかしきわめて危険な)任務を与えられたのである。MDオパクス・ヴェナトーリの指揮官であり、生き残ったマネイドミニで最高位と噂されているベリス司教がブライアントで目撃された。我々はベリスと剣を交えたことはないが、ワード・オブ・ブレイクで最も悪名高い特殊部隊を指揮するこの大量殺人鬼については精通していた。

 我々はベリスを追跡しているところである。彼を捕らえられれば、生死は本当に問われないことになっている。もし、デラー少佐が意地を通すのなら、彼は死ぬことになろう。そしてルシエン、フォーマルハウトでMDと戦った者たちは、その決断に同意しないはずがない。


結末

 日誌、記録番号4560

 ベリスは見つからなかったが、MDをいくらか発見した。

 ベリスはサンクリドット市にいると思われた。ブライアント極地の人口密集地帯の南にある、寂れた都市のひとつである。アマンダにキャノンズの大半を率いて、都市の降下港を確保する命令を出す一方、残りをブレイクズ・レイスのチームと一緒に都市を捜索させた。ブライアントの都市の大半は閑散としていた……なぜなら惑星上を厳しい嵐が駆け巡るからだ。ものの数時間で次の嵐がやってくるので、スケジュールはタイトだった。

 突如として、ウォーブリーズが現れた。レイスは彼らが第49シャドウ師団、ダンタリオン・ダージとIDした。命令なしに、部下たちは重サイバー・ウォーブリーズを攻撃し、コムガードは側面に回った。戦闘が始まってから数分後、損傷したAPCが突如としてウォーブリーズの背後に現れ、我々の戦線に向かい始めた。それから、レイスの連絡士官が金切り声をあげ、そのAPCと乗っているダモクレスを守るように言った。ウォーブリーズはAPCを見るなり、撃ち始めた。MDを押し続けるあいだ、レイス隊員の一部が走り、APCの逃走を援護した。

 最終的に生き残ったウォーブリーズはいなかった。第49がブライアントでダモクレスを探していたというのに、彼は生き残った――そしてダモクレスはベリス司教がいる場所について確かな証拠があると言ったのだ。

 追跡は進行中である。

 ――ギャノン・デラー








スクラップの鉄くず
状況
冥界の門
デビルズ・ロック、スフィア共和国
3081年10月31日


 日誌、記録番号4584

 ダモクレスはベリスの居場所に関する確実な証拠があると主張している。見たところ、この男は取り憑かれてしまっているようだ。しかし、ストーンの部下たちは彼を信頼しており、我々の支払いを持つのは彼でもある。よって、我々はここデビルズ・ロックにおり、他の信頼されている傭兵部隊、共和国保安部隊と一緒に、ベリスを探し回っている。共和国はこのサイバー殺人鬼を裁判にかけることを臨んでいる。もし私が判決を下すとしたら、このSOBを撃って、どこか辺境の人が住まない世界の深いところに埋めることだろう。私が判決を下すのではないのだが。

 もしベリスがこの惑星上にいるのなら、一人ではないだろう。強化された大勢のフリークスに囲まれてるはずだ。もしベリスがマネイドミニの最先任指揮官であるなら、MDのボディガードたちを連れているだろう。

 ひどいことになりそうだ。それは分かっている。

 ――ギャノン・デラー


結末

(ウルフネット報告書30820101/09-Alphaより抜粋。工作員ラムロッド記録)

 ベリスを捕まえる作戦は災厄となった。ベリスとMDの大規模な部隊は、我々を激しく叩いた……デラー少佐の計画がなければ、我々は全滅していたことだろう。ダモクレスは我々と一緒にいたが、ベリスによって自殺的なまでの怒りをかきたてられ、ベリス司教は単純に彼を始末した。彼らは目的を達成したたようで、我々のことなど眼中にないかのように折良く撤退した。彼らがどうやって共和国の封鎖を突破したのかは知らないが、それをやってのけ、パイレーツポイントの航宙艦で脱出した。

 これはウルフネットへの最後の報告である。ここに辞任を通告する。14年にわたって、私はギャノン・キャノンズの隊員でありつづけ、ここが私の故郷であり、私のトロースキンとなった。私の未来はキャノンの大尉にして副指揮官である。いまやここが私の居場所で、その他のところにいる自分を想像できない。

 ――アマンダ・ウルフ大尉








地獄の門
状況
冥界の門
デビルズ・ロック、スフィア共和国
3081年10月31日


 単なる幸運だった。我が隊が降下船ギャップブレイカーでデビルズ・ロックに向かい始めるとすぐに、傭兵と共和国保安部のいわゆる特殊作戦群から緊急救援の要請を受け取った。ベリス司教と第49シャドウ師団を追い詰めたが、捕まえるには助けが必要なのだと、連中は言い訳がましく説明した。私はシャドウ師団のような奴らが本当に大嫌いだった。古いコンバットベルトにもう一つの穴を開けるときが来たようだ。

 ――ロジャー・カンバーランド大佐の日記、3081年10月28日


 降下船は惑星に向かったが、地上で待っていた奴らにとっては遅すぎたのかもしれない。ブレイク派が地上部隊を潰走させ、エージェント・ダモクレスを殺したとの連絡が届いたのだ。ブレイク派はデビルズ・ロックの砂漠に散らばっているという。追跡するのは我々の仕事だ。

 ――ミュゼット・ブレイディ少佐の日記、3081年10月28日


結末

 我が隊はかろうじて逃げるブレイク派を捉えた。ブレイク派は我らが助けたかった共和国軍をシステマチックに破壊しているところだった。マクグレイディとクーパーは、逃げるクズどもを捕捉し続けていたので、追撃を行うことができた。我が隊にとって、これまでで最も容易な任務だったとは言えない。

 奴らはどうにか少しの距離を稼ぐと、分散した。監視を続けていた戦闘機さえも、第49が分かれるごとにしばしば行方を見失ったのである。逃げるメックの半数を倒すことが出来たかもしれないが、ベリス司教がいたという証拠を見つける事が出来なかった。恥ずべき事である。奴を殺していたら、中心領域を少しは安心させてやることが出来たのに。

 ――ロジャー・カンバーランド大佐の日記、3081年10月31日


 ああ、あれは楽しかった。ブレイクの殺人鬼どもを砂漠で追いかけたのだ。契約があったなら、もっと良かったかもしれない。父は仕事の分の報酬を少し得られるかもしれないと言ったが、それはとても見合うものではないだろう。サルベージも使うことができないようだ。メックがバラバラになるまで、あのクズどもは戦ったのだ。

 ――ロジャー・ゴダード少佐の日記、3081年10月31日


 ベイビー、故郷に帰るぜ。

 ――ミッチ・マクグレイディ少佐の日記、3081年10月31日


 全員を倒すことはできなかったが、連中が傭兵と人類をどう扱っていたのかを考えると、傭兵ごときに追い回されるのはまったくふさわしい末路だ。

 ――ミュゼット・ブレイディ少佐の日記、3081年10月31日




indexに戻る
inserted by FC2 system