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作成:2018/05/20
更新:2018/06/10

ターニングポイント: イリアン Turning Points: Irian



 聖戦後、デヴリン・ストーンの軍縮政策によって、かつてのバトルメック工場はラインを転換し、民間向けにインダストリアルメックを生産していました。
 しかし、野心的なことで知られるイリアン・テクノロジーズ社は密かにバトルメック工場を作り、強襲級のマローダーIIを生産し続けていたのです。
 これを知ったスフィア共和国内の各分離派組織は、工場奪取のため惑星イリアンに主力部隊を送り込みます。その結果、発生したのは、ありとあらゆる勢力による泥仕合でした。



イリアン

 地球外への植民活動の第一波で植民が行われたイリアンは、当初住人たちに価値あるものをほとんど提供できなかった。比較的珍しい気候、単調な地形、植物のほとんどが食べられないことがより合わさって、この温暖な世界を魅力のないものとしていた。例外はイリアンを本拠地と定めた企業群である。これらの中の筆頭、イリアン・テクノロジーズ(イルテック)は、創設から1世紀以内に惑星全土を支配するようになった。2255年以来、イルテックは惑星の事実上の統治者となり、人口の大半の雇用者となった。

 ワード・オブ・ブレイクの聖戦は、かつてない規模でイリアンに紛争をもたらした。イリアンとイリアン社は重要だったにも関わらず、継承権戦争において侵略されたのは29世紀半ばの一度だけだった。ブレイク派の占領は、民衆と特に企業経営陣にとってショックなもので、どれだけ占領軍を支援するかで経営陣は割れた。ブレイク派によるイリアン社の――ひいては惑星の――転覆工作は、3075年、地元の抵抗運動がついにワードを追い出すのに成功するまで続いたが、退却するワード軍は重要な工業地区に数基の核弾頭を投じたのである。

 聖戦後、様々な点で惑星は変わった。この八世紀で初めて、惑星政府と企業は別の面を持った同じ組織ではなくなったのである。スフィア共和国の旗の下、イリアンは荒廃から再建し、新しい世紀に入っていった。長きにわたって続けられてきたイルテックによる締め付けは緩められ、デヴリン・ストーンの経済政策を利用して数十の新しい企業が誕生した。

 その舞台裏では、イルテックの上層部が社をかつての地位に戻そうと懸命に活動していた。数十年に及ぶ贈収賄とえこひいき的な取引によって、惑星政府は名目上独立しながら再び企業の管理を受けるようになったのである。このシステムはヒューズ家の手に落ち、共和国のシステムへの信頼を損なうまでに至った。3133年の後半まで、イルテックの秘密活動の秘密が明かされることはなかった。





戦役

 3133年8月13日の早朝、イリアンの首都ケントウッドの報道機関・情報部が、キリン渓谷の奥深くから発せられた暗号化されていない無線通信を傍受した。地元の保安局はこれを伏せようとしたが、数時間以内に町中の知るところとなり、中心領域中に広まり始めた。

 この通信のメッセージによると、秘密のバトルメック工場がイリアンに隠されており、過去50年にわたるデヴリン・ストーンの軍縮キャンペーンの後でさえも高品質の機体を生産し続けていたというのだ。直後、共和国上院が調査を求め、ダミアン・レッドバーン総統に説明を求めた。これは少なくともイリアンの問題になるだろう。

 9月末までに、オリエント保護領のジェシカ・マーリック総帥はイリアンと工場を占領すると決めた。第3マーリック機兵連隊を派遣した彼女の意思は窮地に立たされた……スフィア共和国の国境艦隊(カペラ国境に向かっていた)が思いがけず姿を現し、上陸の前に侵攻は止まったのである。大声の譴責と逆襲の危機は、オリエントのさらなる冒険主義を未然に防ぐのには充分だった。

 打ち切られた侵攻の10日前、ノースウィンドからの分遣隊が到着した。確実にやってくるであろう強襲の洪水からイリアンを守るため、タラ・キャンベル女伯が送り込んだのである。直後の10月1日、ジェイコブ・バンソンのスカージ連隊分遣隊が上陸して強襲が始まった。しかし、悪天候のために、惑星の航空管制官は降りていく降下船を見失い、キャンベルのハイランダーズは二日かけて捜索を行った。スカージは10月7日の朝、キリン渓谷に向かう輸送コンボイを攻撃し、存在を知らしめた。運良くハイランダーズの1個中隊がコンボイに同行しており、積み荷を奪われる前にスカージを追いやるのに成功した。数で負け、圧倒されたバンソン軍は、降下船に退却して離陸した。ハイランダーズ共和国防衛軍のデナード大佐は引くがままに任せた。

 スカージ相手に成功したにもかかわらず、ハイランダーズがイリアンにいることで、イリアンの共和国常備防衛軍とイルテックの先任守備隊は苛立った。先の三週間、デナード大佐はグリーン大佐、サンダース大佐と繰り返し衝突し、二人の地元大佐はハイランダーズの存在が惑星をより直接的に支配する第一歩だと確信していた。状況に苛立ったマルティネス特使は不承不承ハイランダーズに退去を命じて平和を回復することを選んだ。だが、一週間以内に、マルティネスは別の選択をしていたらと願うことになった。

 ハイランダーズの航宙艦が去ってから24時間以内に、2つの勢力が話に加わった。惑星に近いパイレーツポイントを使ったスティールウルヴズ、スピリットキャッツのそれぞれ1個星団隊が、ほぼ同時にキリン渓谷の西にあるフェルンウッド平原に着陸した。両氏族の競争心は燃え上がり、協力して隠された工場を奪うことなく角を突き合わせた。結果として起きた殴り合いで両陣営に深刻な損害が生まれ、本当の目標に向かう準備をするまでに三週間がかかったのである。ふたつの氏族は平原に防衛陣地を構築し、最初の戦闘で受けたダメージを修理する間に小規模な小競り合いを行った。

 2氏族が注意散漫だったことで、次の来訪者に絶好の機会が与えられた。スティールウルヴズとスピリットキャッツが無分別に殴り合うのを見届けた後、アーロン・サンドヴァル侯爵のソードスォーン支隊は気づかれることなく工場群の東に着陸し、万人の注意が逸れる中で前進した。防衛側が危険に気づくまでに、ソードスォーンは工場の近くまで近づき、イルテックと共和国市民軍は効果的に戦力を配備するのが難しくなっていた。地元守備隊は最終的にサンドヴァル兵を撃退したが、犠牲は大きいものであり、工場と惑星を守るのに初めて懸念を持ち始めたのである。

 1週間もしないうちに、ドラゴンズフューリーがソードスォーンの野営地からひとつ隣の谷に上陸し、騒ぎに加わった。6日間に渡ってクリタ、ダヴィオンに与する分離派の間での小競り合いが続き、ソードスォーンは復讐心と共にフューリーの野営地に降下した。ジョージ・G・ヘアリング大佐にとっては残念なことに、熱意に比べてソードスォーンの技量や幸運は劣っており、守るフューリーはたやすく攻撃を撃退したのである。損害によって工場を占領するだけの戦力を失ったと判断したヘアリング大佐は、渋々ながらイリアンを放棄すると決めて、11月3日、残ったソードスォーンと共に離陸していった。

 イルテック工場への次の強襲は、ソードスォーンが発ってから5日後にやってきた。地元の偵察部隊が、スティールウルフ野営地からの部隊移動を探知し、工場守備隊をパニックに落とし入れた。10月17日のドラゴンズ・フューリー強襲の失敗により戦力を消耗した守備隊は、やってくる氏族の戦士にはかなわないと感じた。イルテック警備隊のサンダース大佐は、猛烈な反対を受けたものの、絶望的なギャンブルを提案した……守備隊は近くに野営していたドラゴンズ・フューリーに連絡し、次の生産の何割かを条件に、工場を守る同盟を持ちかけたのである。フューリーの指揮官、イチロー・ラッシュ大佐は詐術を疑ったが、サンダース大佐は祖先がクリタ出身であり、ドラゴンズ・フューリーと共通の土台を築くためにほとんど忘れられていた文化的伝統に訴えた。時間が押すと、フューリー兵はスティールウルフが進撃する前に防衛戦線を構築するのを助けた。連合した守備隊は攻撃を跳ね返すのに充分だと証明され、氏族軍は戦闘の8時間後に撤退した。

 だが、スティールウルヴスはこの貴重な報償を諦めなかった。攻撃が終わってからわずかに6時間後、彼らは戻ってきて戦力を集中し、薄くなった防衛戦に対して二方面の強襲を行った。再び、イルテック警備隊、イリアン常備防衛軍、ドラゴンズ・フューリー・ブラザーフッド連隊の同盟軍が猛攻に抵抗した。スティールウルヴズは傷を癒やすために後退した。

 11月8日、最初のスティールウルヴズの強襲とほぼ同時刻、イリアンから撤退中のソードスウォーンが衛星プロスペロのイルテック低重力工場で立ち止まった。形だけの防衛部隊から工場を簡単に奪った彼らは、使えるものを剥ぎ取る作業を進めた。好き勝手に略奪できたのは5日間だった。11月13日、突如としてストームハンマーズの支隊が到着し、ソードスォーンの陣地に降下して、ほとんど苦も無く彼らを片付けた。戦いの結果、ソードスォーンは集めた物資の多くを放棄することになった。こうしてストームハンマーズは、8日後に到着することになるイリアンで使える補給物資を得たのである。その場に長くとどまることはなかった。

 惑星降下からわずか数時間後、ストームハンマーズはドラゴンズ・フューリーの強力な正面強襲を受けた。地元イリアン軍に工場の守りを任せたフューリーは、ストームハンマーズが降下地点の確保を完了する前に攻撃を仕掛けたのである。ハンマーズはバランスを崩し、フューリーの強襲を前に安定を取り戻すことが出来なかった。降下船に戻った彼らは離陸し、回復のために離れた場所に移った。ストームハンマーズは主目標を狙おうとすらせず、1週間後にイリアンを離れた。

 ストームハンマーズを負かしてからわずか3日後、ドラゴンズ・フューリーはスティールウルヴズによる新たな強襲に直面した。このとき、氏族の戦士たちはスピリットキャッツ(スティールウルヴズとの戦闘後1ヶ月以上イリアンにいた)と同盟した。キャッツはイリアンこそがリーダー・ケヴ・ロッセの予言した新しい故郷であることの確証を求めた。この時点では自信がなかったものの、スティールウルフのスターコーネル・エッカ・ウォードに協力して工場に挑むべきだと説得されたのである。この強襲は上手く行き、ドラゴンズ・フューリーは準備した陣地から撤退し、イルテック軍、市民軍と合流した。だが、2時間後、どちらの側も優位を取れず、戦いは停滞した。何かが必要だった。

 両陣営は戦闘に集中していたことから、新しいメックが戦場に現れたことに気づく者はほとんどなかった――それは真緑に塗られた所属不明のマローダーである。守備側は即座に正体を見抜いたが、氏族には見当がつかなかった。無線を通じて彼はフューリーのラッシュ大佐にバウンティーハンターだと自己紹介し、氏族軍と戦うことを持ちかけた。ラッシュが承認すると、ハンターはスターコーネル・ワードに忍び寄り始め、ウルフの戦士数名と交戦して通り、ついに獲物と一対一で向かい合った。数分以内にワードは死亡し、ハンターはスピリットキャッツのスターコーネル・セリシア・ドラモンドに視線を向けた。守備側はこれに勇気づけられ、氏族軍を押し返す力を倍増させた。熾烈な戦いはさらに3時間続いたが、最終的には攻撃側が撤退を余儀なくされ、6名の指揮官を傭兵の手で殺された。スティールウルヴズは戦闘の矢面に立ち、戦いを続けるだけの力を失っていた。スターキャプテン・ジグメ・コナーズの指揮の下、彼らはイリアンを離れ、遠くティグレスまで旅立った。スピリットキャッツは、同盟氏族よりは損害が少なかったものの、徴候を気にかけ、同じように出発し、新しい本拠地のリストからイリアンを消し去った。

 氏族の戦士たちが航宙艦に向かうと、工場の守備隊は安堵のため息をついて、過去2ヶ月の戦闘で被ったダメージの修理を開始した。だが、スティールウルヴズとスピリットキャッツが退却した翌日、忘れていた敵が出てきて最後の力試しを行った。10月7日に敗北してから隠れていたジェイコブ・バンソンのスカージ連隊の残存戦力が、ドラゴンズ・フューリーの弱体化した防衛境界線に朝駆けを仕掛けたのである。完全に不意を打たれたフューリーの兵士たちは、工業地区内に後退して集結し、攻勢に出た。おそらく自分たちの力では工場を占領できないことに気づいたスカージは、ここを他の誰にも使わせない決断をして、持てるエネルギーを守備隊への攻撃と同じくらい工場それ自体に費やした。戦闘が進むと、工場の守備隊は攻撃部隊を一人一人追い詰めて、片付けていった。騒ぎが収まるまでに、工業地区の大部分が崩壊し、操業不能となっていた。フューリーは工場を救ったが、再開するまでは長い時間がかかることになる。

 イリアンの工場に大規模な損害与えられ、共和国内の緊張が高まっていることから、RAFの最高司令部は工場を手にしたドラゴンズ・フューリーとは戦わないことを選んだ。その苦労に見合うだけの利益が得られないだろうと推論したのである。惑星政府、管区政府の両方がそれをしきりに勧めたことも、この判断の大きな後押しになった。イリアンの高官たちがイルテックの懐の中にいることに最高司令部が気づいたかどうかは不明だが、同社の取締役会はドラゴンズ・フューリーとの同盟を受け入れる決断を下し、共和国の張り子の虎の軍隊よりも彼らの方が長期的な守備隊にふさわしいと見たのである。フューリーはすぐにクリタ出身のイリアン人を徴募することで兵士を補充し始めた。

 一年以上にわたってこの状況が続いた。だが、3134年の末までに、ラッシュ大佐がそう長くイリアンにとどまらないであろうことが明らかとなった。それからの数ヶ月、ブラザーフッド連隊の小規模な分遣隊が相当数送り出されて、近隣管区にある惑星でドラゴンズ・フューリーの作戦を支援した。3135年、召還命令が出ると、ラッシュ大佐はフューリーのサフェル強襲を支援するべく連隊の大多数を率いて向かい、後には部隊の役立たずで構成された1個大隊程度が残された。これでは不十分と感じたシルマー政務官とマルチネス特使は、サビーネ・ヒューズ上院議員の支援を受けて、二段階の計画に着手した。第一段階は残ったドラゴンズ・フューリーの指揮官に防衛部隊を統合するというものであった。フューリーのアントニオ・ブラッツ中佐は准将に昇進し、惑星市民軍、イルテック警備隊、指揮下のドラゴンズ・フューリーを新たなイリアン惑星防衛軍(IPDF)に統合する責務を負う。第二段階は、イリアンの防衛を強化し、海運業者を守れる傭兵部隊を雇い入れるというものだった。3136年、ガラテアで新たに登録され最初の契約を探していた、アナスタシア・ケレンスキーのウルフハンターズが雇われ、この任務を引き受けた。

 フォートレス・リパブリックによって、放棄された共和国の世界は混乱に落とし入れられた。3136年7月、議員同盟(元共和国上院議員たちに率いられた7つの惑星の寄せ集め)が歩き始めたばかりの自軍を強化するために、イリアンからの軍需物資の輸送を奪おうと動いた。バトルメック1個中隊を輸送コンテナに隠してキリン渓谷宇宙港に忍び込ませた後、議員同盟は惑星中の各陣地に陽動襲撃を仕掛けた。運のいいことに、ウルフハンターズはイリアンの全防衛地点で訓練・戦術教練を増やすプログラムに着手しており、IPDFの1個中隊が専任の守備部隊としてバックアップしていた。この準備に加えて、IPDF、ウルフハンターズがキリンから迅速に駆けつけたことで、議員同盟軍は不注意となり、敗北に結びついたのである。

 陽動襲撃への対処がなされているのと同じころ、宇宙港に隠れたメック中隊が姿を現し、輸送を待っているイルテック・バトルメックス社の在庫とその他の物資を奪い取ろうとした。略奪品を受け取るために議員同盟の輸送降下船が待っていたが、数で劣るウルフハンターズの中核が宇宙港におり、防衛を結集させた。アルファ・アナスタシア・ケレンスキーが突撃を率いて、同盟のメックを切り裂いた。イリアン中で議員同盟軍は惨敗を喫した。得るものを失った指揮官たちは退却命令を出した。








戦闘員 COMBATANT


バンソンズ・レイダース、スカージ
指揮官: メガン・テンクレイ大佐
平均経験: 古参兵
装備レベル: D
注記: 正式に第1バンソンズレイダーズとされているスカージは、イリアンで勝利出来る本物の候補者でなかった。隊員たちはよく訓練されたプロなのだが、気質と兵站から惑星征服よりは小規模な作戦、さらに言えば強奪任務に向いていた。イリアンでの最初の行動はこの傾向を如実に表していたが、補給車列のハイジャックをハイランダーズに邪魔されると、レイダースは望んでいたより少ないものを持って逃げ去った。数週間後、惑星を去る際に、テンクレイ大佐がスカージの一部を隠して残していったのは、誰が工場を手にしようとも腹いせで台無しにする最後の行動であった。


ドラゴンズ・フューリー、ブラザーフッド連隊
指揮官: イチロー・ラッシュ大佐
平均経験: 一般兵
装備レベル: B
注記: カタナ・トーマークが共和国市民とクリタ系居住者から集めたブラザーフッドは、書類上、1個強化連隊の戦力なのだが、実際には任務ごとに変動する。なぜなら、地元のクリタ人パルチザンが戦力を強化するために使われるからだ。イリアンでは、ラッシュ大佐は民衆の間にかなりのシンパを見つけ、人的資源を得たのみならず、惑星の防衛部隊と隠れた工場の周辺について詳しい情報を提供された。イリアンをかけて戦った他の勢力の大半は、このような地元の支援を欠いており、フューリーに最終的な勝利をもたらす重要な役割が果たされたのである。


ハイランダーズ、共和国護衛兵団
指揮官: ディナルト・マーカス大佐
平均経験: 新兵
装備レベル: C
注記: 多くの点でスフィア共和国忠誠派版のブラザーフッド連隊となっている共和国護衛兵団は、あらゆる職種から来た新兵の融合隊で構成されており、隊員たちの多くが共和国への献身以上に大切なものはないという者たちである。マーカス大佐は、共通点のない兵士たちをひとつにまとめるという目を見張る仕事をしてきたが、軍事的な心構えと技能を叩き込むのにはいまだ苦労している。共和国護衛兵団がスカージを撃退した後で惑星を離れた(地元軍の管轄的な妬みによる)ことは、惑星の防衛にとって二重の打撃となった。イリアンから忠誠派の戦力が奪われただけでなく、忠誠派のイリアン人が部隊と共に発つことを選んだのである。


スピリットキャッツ、ピュリファイアー
指揮官: スターコーネル・セシリア・ドラモンド
平均経験: 一般兵
装備レベル: C
注記: イリアンに送られた分派の内で、スピリットキャッツだけがマローダーIIの生産ラインに興味を持っていなかった。代わりに彼らは、生産ラインの存在が新しい本拠地というケヴ・ロッセのヴィジョンを満たす指標になるかを知ろうとしていた。イリアンに到着しても特に攻撃的でなかったピュリファイアーは、戦闘でなく瞑想と黙想に時間を費やした。だが、スティールウルヴズとの戦闘はたびたび熾烈で激しいものとなり、後にまったくありそうにない同盟に結びついたのである。バウンティハンターの手でスターコーネル・ドラモンドが死んだ後、スターキャプテン・ジャシンタ・ロッセがスピリットキャッツを率いて惑星外に脱した。


スティールウルヴズ、クルセイダーズ
指揮官: スターコーネル・エッカー・ワード
平均経験: 古参兵
装備レベル: B
注記: 3133年5月、スティールウルヴズの支配権を勝ち取った後、アナスタシア・ケレンスキーが唯一権力を大々的に行使したのは、一ヶ月後に行い失敗したノースウィンド攻略戦であった。従って、イリアンは新型バトルメックを入手できるのみならず、ケレンスキーにとってはクーデターの成功がまぐれでないことを示す場所になったのである。この目的を達成するため、彼女はイリアン戦役を主力3部隊の中で一番ケレンスキーを支持しているクルセイダー星団隊に任せた。エッカー・ワード(ケレンスキーが不服の審判でスターコーネル・カッシウス・カーンを下した後、直々に彼をスターコーネルにした)はイリアンを勝ち取って新指揮官に役立つところを見せようと決意を固めていた。


ストームハンマーズ、アーコンズシールド
指揮官: ジョス・ヴァンデル大佐
平均経験: エリート
装備レベル: A
注記: ストームハンマー分派は、イリアン戦役の際は誕生してまだ一年以下であり、これが最初の大規模な交戦となった。それまでの作戦行動は、共和国内でライラ派パルチザンを招集するヤセク・ケルスワ=シュタイナーの呼びかけをできるだけ広めるための襲撃に過ぎないものであり、力を誇示する必要があると彼は知っていた。危険を冒したくなかった彼は、隠し工場と出荷物を得るためにアーコンズシールドを送り込んだ。それはシールドの背後にある充分なライラの援助によって、バランスが彼の側にひっくり返されるだろうと考えたからだ。


ソードスォーン、プリンスズメン
指揮官: ジョージ・G・ヘアーリング大佐
平均経験: 新兵
装備レベル: B
注記: サンドヴァル家の家臣だったジョージ・G・ヘアーリングは、元の部隊の一部からプリンスズメンを作る任務を与えられた。連隊員の多くがダヴィオン家への強い忠誠心を抱いていたが、一部は大王家というよりアーロン・サンドヴァル(ダヴィオンに忠誠を誓う)の支持者だった。サンドヴァルの祖父と父に仕えた40年間をもってしても、待ち受ける仕事は難題だったが、ヘアーリング大佐は侯爵の期待に応えられるよう奮闘した。イリアンでの任務はプリンスズメンに最適なタイプの戦いだった。兵士たちの技量や策略よりも、損害を気にしない強引な攻撃こそが重要なものだったのである。


上院議員同盟、第1アライアンスパトリオッツ
指揮官: ラッチェル・デヴォス大佐
平均経験: 一般兵
装備レベル: B
注記: アライアンスパトリオッツは、3135年の上院議員の反乱の後、RAFから離脱した共和国軍によって作られた。寝返った兵士は非バトルメック兵が多かったので、各3個パトリオット連隊はイリアン襲撃の際にはそれぞれメック1個大隊ずつを展開できるのみであった。騎士ラッチェル・デヴォスはデネブ・カイトス出身で、レヴィン総統と対立する上院議員同盟への参加を呼びかけるサブロー・タナカ議員の弁に耳を傾けた。それ以来、彼女は第1パトリオッツを実戦投入可能な戦闘部隊に変えるべく全力を尽くしている。デヴォス大佐は3136年の襲撃の計画で重要な役割を果たし、失敗の責任を全面的に受け入れた。


イリアン共和国常備防衛軍
指揮官: ジョン・グリーン大佐
平均経験: 一般兵
装備レベル: B
注記: イリアン共和国常備防衛軍は、誕生した直後からヒューイ家の影響を強く受けてきた。表面上は、いかなる貴族の影響からも独立していたのだが、指揮官の座はヒューイ家の意向を受けたものである。ジョン・グリーン大佐(サビーネ・ヒューイ上院議員の遠縁の従兄弟)は、軍事的な才覚よりも、コネによって昇進した。
 この市民軍は長い間、より大規模で良い装備を享受するイルテック警備軍の陰で日の目を見なかった。グリーン大佐は部下たちに、彼らが苦難を受けているのは彼らがイリアンで唯一の本物の軍隊だからだという考えを植え付けていった。誇りある兵士たちにとって、ドラゴンズ・フューリーと共に働くのは難しいことであった……とりわけ、元フューリーだった者が、連合IPDF軍の指揮官の座についたときは。


イリアンテクノロジーズ警備隊
指揮官: ヘンリック・サンダース大佐
平均経験: 一般兵
装備レベル: A
注記: イルテック警備隊は惑星市民軍よりもさらにヒューイ家の私的所有物であり、不自由することがなかった。装備が高品質であり、給与支払額が多いことから、サンダース大佐と兵士たちはこの惑星のエリート軍事部隊と考えているが、この自己評価は客観的なものではなかった。それにもかかわらず、彼らは惑星市民軍に傲慢な態度を取っており、共同作戦の際は先任となる。


イリアン惑星防衛軍
指揮官: アントニオ・ブラッツ准将
平均経験: 一般兵
装備レベル: B
注記: イリアン共和国常備防衛軍、イルテック警備隊、残ったドラゴンズフューリー兵が集まって作られたこのIPDFは、苦しみと共に生まれた。元部隊のそれぞれは、他の2部隊よりも自身を優秀だと考えており、部隊が連携して活動をするのを学ぶ上でよくない影響をもたらした。ブラッツ准将は問題を抱えた防衛部隊を強化するため外部に頼らざるを得なくなり、ウルフハンターズを雇い入れる結果となった。傭兵による厳しい訓練と、3136年の上院議員同盟による襲撃から惑星を守ったことによって、ついに三頭の獣は経験を積んだ実戦部隊としてひとつにまとまったのである。


ウルフハンターズ
指揮官: アルファ・アナスタシア・ケレンスキー
平均経験: エリート
装備レベル: A
注記: スティールウルヴズからふさわしくない者たちをすべて追放したアナスタシア・ケレンスキーは、カル・ラディックの分派だったものを過激な新しい傭兵部隊に変えてみせた。ケレンスキーは軍事的な伝統の制限を越える戦術的な柔軟性と個人の独創性を際立たせた部隊を作るため、階級の標準的な装飾と命令系統の手続きを撤廃した。ハンターズの各隊員は戦場でのすべての役割(部隊指揮含む)を果たすべく訓練されることから、部隊は遭遇したどんな状況においても協調と効率を維持できるのである。イリアンでの最初の契約から始めたハンターズは、一緒に働くあらゆる部隊から最高の者たちを徴募する習慣を持つようになった。








獣の取引 ANIMAL DEALS


状況
キリン川渓谷
イリアン
第VII宙域、スフィア共和国
3133年11月25日


 スピリットキャッツのピュリファイアー星団隊は、一ヶ月前の緒戦以来、比較的沈黙を保ち、イリアンが探し求めていた約束の地であるのかを確かめる間、小規模な小競り合いを繰り広げただけだった。彼らのビジョンは不確かなままだったが、スピリットキャッツの戦士たちはせわしなくなり、スティールウルヴズのスターコーネル・ワードが隠し工場への強襲のために同盟を持ちかけると寛容に受け入れたのだった。



 3115年前半、ニューキョートでの無様な「ラムテックの仕事」の後、バウンティハンターは15年にわたって姿を見せなくなった。3051〜3064年にハンターが姿を消して以来、最長の不在期間であった。

 ハンターは3130年、ミザリーに再登場し、長年にわたってダヴィオン軍と不安定な均衡を保っていたクリタ軍の防衛を破壊し始めた。対ドラコの作戦行動は、3131年6月のマローリーリフト、3132年3月のハロウズサンでも続いた。後者の後、バウンティーハンターは重傷を負ったか、あるいは死亡したと信頼できる報告に記されている。

 先月、彼はクエンティンに再び姿を現し、我らに関わることとなった。バウンティハンターの現時点での正体、目的、資源について、局長は追加の支出を認可している。特に彼が、3130〜3132年に使っていた「フランケンメック」のリージョネアではなく、既製品のマローダー9W2を使っていることは、共和国内にMMRP違反者がいるかもしれない証拠になっている。

 ――スフィア共和国諜報局のバウンティハンターに関する報告より、3133年7月19日



結末
 戦闘は氏族戦士有利で始まった。ドラゴンズ・フューリーの守備隊はメートル単位で押し戻され、ついには最終防衛戦線まで後退した。奇妙な緑のマローダーが突如として現れたことは、流れが変わる合図であった。この新参者は一対一の戦いでスターコーネル・エッカー・ワードを下すのに成功し、それから他の氏族指揮官を押し通って進み始めた。この逆転劇に勇気づけられた防衛側は、陣地から躍り出て、スティールウルヴズに手痛い打撃を与えた。謎のマローダーパイロット(守備隊は悪名高いバウンティハンターと知らされた)の手で上位士官6名が地に伏し、残った戦力では戦役を続けられないことから、スティールウルヴズとスピリットキャッツの同盟軍はイリアンから完全に撤退した。




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