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作成:2003/05/26
更新:2003/11/01

サーペント機動部隊



 3059年、新生星間連盟防衛軍は、ブルドッグ作戦によって、中心領域を占領していたスモークジャガー氏族を駆逐しました。しかしそれだけで対氏族戦が終わったわけではありません。中心領域の精鋭部隊が、長い旅路を経て、スモークジャガーの本拠地惑星を攻撃します。
 classicbattletech.comより。







スモークジャガーの殲滅: 最終戦



ハントレスの戦い

 3060年の暮れ、中心領域の機動部隊(暗号名サーペント)がスモークジャガーの本拠地惑星ハントレスを攻撃した。ジャガー守備隊指揮官ルッソー・ハウェルは臨時2個銀河隊で、精鋭中心領域10個連隊の猛攻に立ち向かった。両陣営に甚大な損害が出た。ハウェルは、致死的な新型戦闘マシンを投入する機会があった。プロトメックと呼ばれるこれらの小型メックは、気圏戦闘機パイロットになれなかった者たちが操縦しており、新型の強化画像処理システムを使っている。このEIシステムと、改良型装甲、武器により、プロトメックのパイロットは破壊される前に、サーペント軍に相当のダメージを与えた。とどまるところを見せない戦いの数日後、サーペント機動部隊は最後のジャガー守備隊を破壊した。

 スモークジャガー中心領域駐屯軍の残存兵力が回復と修理のためハントレスに戻ったとき、サーペント機動部隊は戦闘後の休息をとっていた。ギャラクシーコマンダー、ハン・メータ率いるジャガー隊は、本拠地が中心領域の手にあるのを見つけてショックを受け、残忍な逆襲を始めた。2個銀河隊のジャガー隊が容赦なくサーペント部隊(精鋭だが打ちのめされていた)を叩いた。戦闘に入ってから数日後、大族長リンカーン・オシスと彼のボディーガード部隊がハントレスに到着し、逆襲の指揮を執った。両陣営とも60%を超える損害を被っていて、多くのパイロットが死に、数百のメックが戦場のあちこちに横たわっていた。

 ジャガーは残存兵力を使って最後の逆襲を始めた。その戦闘で中心領域はほとんど負けそうになっていた――もし優秀で勇敢なエリダニ軽機隊がいなかったら、である。ELH部隊は戦線を維持したが、甚大な代償を支払った。彼らのリーダー、アリアナ・ウィンストンが戦闘の最後の瞬間に殺されたのである。ウィンストンの死は戦役のターニングポイントとなった。最後の戦いが始まる前に、他の機動部隊を率いていたヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンがハントレスの星系内に到着した。元気な部隊が彼に率いられ、数日以内に素早くジャガーの抵抗軍を追いつめ、殲滅した。中心領域にとって不幸なことに、大族長リンカーン・オシスは一握りの戦士とともにストラナメクティへの脱出に成功していた。





ハントレスの戦い: (3059-3060 A.D.)

 ターカッドで行われた会議の場にて、星間連盟が再結成され、サン=ツー・リャオが第一君主に任命された。この中心領域の指導者は、いくつかの重要な軍事的決定を下した。まず第一に決定されたのは、中心領域が氏族と同等の軍事力をもつことを教えてやるには、氏族がこれまで行ってきたことをやるしかないということだ――氏族を破壊するのである。ここに3つの選択肢があった。3氏族が今でも侵攻派だった。ウルフ氏族、ジェイドファルコン氏族、スモークジャガー氏族である。ノヴァキャット(元は侵攻派)は、最近ドラコ連合の一部となるための下交渉を進めており、考慮から除外された。ウルフ、ジェイドファルコン両氏族は内戦からの回復の途上にあり、氏族から弱い目標と見られるだろう。中心領域が氏族に対抗しうることを証明するのが最終目標なので、弱い敵を倒しただけと非難されるリスクはとらなかった――そしてスモークジャガーだけが残ったのだった。もっとも強力な侵攻派氏族を破壊することで、氏族の中心領域侵攻を弱めるか、最良の場合は終わらせることができると星間連盟は予想していた。個々の氏族は、中心領域を襲うかもしれなかったが、氏族全体による脅威はなくなるだろう。

 計画はすぐにまとめられ、ドラコ連合の基地から、スモークジャガー占領域への強襲が開始された。ノヴァキャットがほとんど戦いもせず世界を手放しているというニュースが計画の助けとなった。しかしながら、軍事指導者たちが、戦略を詳細にし始めていたまさにそのとき、ショッキングなニュースがコムスターより届けられた。あるスモークジャガーのメック戦士がコムスターに亡命し、ジャガー本拠地ハントレスへの道――エクソダスロードを携えてきたのだ。

 星間連盟は直ちにギアをシフトして新たな計画を書き加えた。ハントレスを長駆攻撃し、スモークジャガーの本拠地を、中心領域領と同じように破壊するのである。強襲グループが組み立てられた。部隊は、星間連盟のすべての所属国家の者たちで構成されていた。コードネーム、サーペント機動部隊。総司令官には連邦=共和国のモーガン・ハセク=ダヴィオンが選ばれた。様々なタイプの部隊が含まれており、仲間に政治的な憎悪を抱いていた者もいたのだが、立案者たちはサーペント機動部隊に作戦を実行する能力があると判断した。



サーペント機動部隊 Task Force Serpent:

 コムスターから第2師団。ツカイードで戦った古参兵を多く含む手に負えない部隊だ。しかしながら、コムスターによるもっとも重大な貢献は、4隻の戦艦を提供したことだ。1隻のキャメロン級(継承権戦争の初期にでさえ、貴重だったデザイン)、1隻のローラ級、2隻のエセックス級、これらの戦艦にはスモークジャガー海軍を負かす完全な能力があった。

 連邦=共和国は2個部隊を送った。ひとつは第1カシル槍機兵連隊、ハセク=ダヴィオン元帥が以前に所属していた部隊である。占領域への攻撃(作戦名ブルドッグ作戦)にまだ関与していない部隊のひとつだった。槍機兵連隊はハセク=ダヴィオンと国王(ヴィクター)に熱狂的な忠誠を誓っており、氏族との平和を確実にするために命を捧げる覚悟ができていた。二つ目の部隊は、MI6奇襲部隊の2チームからなっており、「ラビッド・フォックス」とあだ名される特殊部隊だった。フォックスはバトルアーマーを装備して、それが彼らを特に有用にしている。最終的にシュタイナー=ダヴィオン国王は、2隻のフォクス級コルベットを機動部隊に組み入れ、強襲軍の海軍力をさらに増した

 こういった価値ある貢献とは対照的に、カペラ大連邦国はキングストン軍団を送り込んだ。一般兵の連隊で名誉ある部隊かどうかは疑わしかった。第一君主リャオが努力を主張するために形だけの兵士を送ったと、会議の場にいた人々は感じた。もし彼が作戦の価値を本当に認めていれば、武家から1部隊か、より優れた古参の部隊を送っただろう。サン=ツーは、カオス境界域と呼ばれる地帯で軍のほとんどが拘束されていると主張したが、これはあまり説得力がなかった。キャサリン・シュタイナー(氏族に対する攻撃は無用とする第一君主に同調していると見られていた)は、エリートの第11ライラ防衛軍を機動部隊として送り込むことで、うまくその感情を隠した。

 聖アイヴス協定からは古参兵の第2聖アイヴス槍機兵隊が提供された。協定は最初、第1聖アイヴス槍機兵隊(カイ・アラード=リャオの部隊)を送ることを申し出たのだが、中心領域においてカイが目に見える形で存在し続けることがより重要と考えられたのだ。自由ラサルハグ連合もまた古参兵の部隊、第4竜機兵隊を小規模な軍隊から送り込んだ。氏族と戦った経験を持つ竜騎兵隊は、侵攻への復讐を望み、どの氏族に対するものでも気にしなかった。

 ドラコ連合は3個ドラコ精鋭打撃隊(DEST)を送り込んだ。そのすべてがカゲバトルアーマーを装備していた。連合はバトルメックを派遣しなかった。彼らの部隊のほとんどがブルドッグ作戦に関わっていたからである。しかしセオドア・クリタ大統領は、キュウシュウ級フリゲートを送って、機動部隊の海軍派遣団を完成させた。大統領は、ネケカミ(もしくはスピリットキャッツ)のチームを機動部隊に補助として加えた。この戦士たちは封建時代の日本の忍者と多くの共通点を持っていた。クリタはネケカミをハセク=ダヴィオン元帥に引き渡したが、彼らの正体は秘密のままにされた。

 機動部隊の良心として、トーマス・マーリック総帥の〈中心領域騎士団〉が参加し、エリートの〈銀十字団〉の航空大隊が同行した。機動部隊が品位と名誉を忘れ、スモークジャガーを破壊しないように、騎士団は存在するのだった。

 機動部隊には傭兵連隊もまた含まれていた。ノースウィンドハイランダーズのマクロード連隊とその歩兵支援、第1グルカ隊である。ハイランダーズの別部隊として、ロイヤルブラックウォッチもまた参加する。報酬の支払いはされないが、彼らは第一君主の護衛であったかつてのブラックウォッチの精神的な子孫であった。今の世代のブラックウォッチは、第一君主の護衛としての価値があることを、再び、第一君主リャオに証明するために参加するのだ。もう傭兵ではない、再び星間連盟軍となったのだ。

 機動部隊、最後の派遣団もまた傭兵化していた星間連盟軍である。エリダニ軽機隊(アレクサンドル・ケレンスキーととにもエクソダスロードを行くのを拒否した部隊)は、彼らの信条と行動のなかに伝統を保ち続けていた。星間連盟が再興されるとすぐに、軽機隊はその軍の一員となることを申し出て、受理されたのである。連隊の総司令官アリアナ・ウィンストン将軍が、サーペント機動部隊の副司令官に任命された。



辺境へ: Beyond the Periphery:

 機動部隊はまず恒星連邦の世界ディファイアンスへ行き、互いに戦闘訓練し、コムスターのインベーダー銀河隊とも訓練した。スモークジャガーを撃破するのに必要な技術を身につけるのが目的だった。3059年5月1日、サーペント機動部隊はディファイアンスを離れ、使命を開始した。諜報組織は、軍隊の大きさに関して誤解を招きやすいリポート(実数を控えめに見たもの)を流布した。氏族のウォッチ(諜報)工作員が小艦隊の情報を聞き及んでも、その戦力を過小評価するだろう。サーペントのルートは、深辺境、そして最終的にハントレスに達する前に、連邦=共和国と外世界同盟を通ることになる。そのルートは長いもののひとつだった。途中で氏族と接触して本拠地に警報を送られるいかなるリスクをも避けるために、エクソダスロードを曲がるように離れていた。

 機動部隊は、11月16日、深辺境において、何者かと最初の接触をもった。降下船が湖から水を取ろうとしたときに、ならず者のメックから攻撃されたのである。ならず者たちは簡単に撃破されたが、そのうち何人かが捕まえられ、前例のない問題を部隊に持ち込んだのである。彼らをどうすべきなのか? 機動部隊には機密性が求められている。だから彼らを惑星に逃がすのは問題外であった。彼らが見たものを氏族に話せるからだ。囚人を養うための食料や水は充分になく、単純に処刑してしまうのは非人道的であった。結局、ハセク=ダヴィオン元帥は囚人を労働者として船に残す選択を、彼らに与える決断を下した。拒否した者は、リーダーを除いて、居住可能な他の星系の惑星に置き去りにされる。リーダーは軍法会議にかけられ、処刑されるだろう。

 海賊の指導者を処刑したことは、信じられないような反発を産み出し、エリダニ軽機隊と中心領域騎士団が部隊からほとんど断絶してしまった。機動部隊は最終的にこの2部隊と不安定な和解に達したが、緊張した関係が残った。12月15日、機動部隊はゴーストベア小艦隊と予期せぬ遭遇をし、問題は危機の水準に達した。「トラファルガー」などと呼ばれた猛烈な海戦のあと、SLDFはゴーストベアを撃破し、完全なワールウインド級戦艦を手にし、そこに300人の戦士、1000を超える市民がついてきた。囚人の扱いを再び決断せねばならなくなったハセク=ダヴィオン元帥は、このとき、ボンズマンとなることを受け入れた囚人には契約の誓いを与え、その他の者は置き去りにした。軽機隊と騎士団でさえも、この解決法を受け入れ、問題が再び蒸し返されることはなかった。



護衛変更: Changing of the Guard:

 3060年1月3日、モーガン・ハセク=ダヴィオン元帥が部屋で死んでいるのが発見された。それは心臓麻痺のように見えたが、検査の結果、毒が体内から発見され、暗殺者の捜索が始まった。彼の跡を継いだアリアナ・ウィンストン将軍は、アンドリュー・レッドバーン少将を副司令官に任命し、ともにハセク=ダヴィオン暗殺の謎を解くべく立ち上がった。〈インビジブル・トゥルース〉(機動部隊の旗艦)とその降下船の全室が捜索されたが、成果はなかった。しかしながら機動部隊の記録の幸運な発見によって、5名にコムスター入りする以前の記録がないことが明らかになったのだ。そのうちのひとりルーカス・ペンローズは、問いただしに来た護衛を殺し、弾薬ベイに爆弾を仕掛けたとして船を人質にとったと主張した。ウィンストン将軍を人質として連れて行き、ペンローズは中心領域に航宙艦を戻すのを要求した。ウィンストン将軍は、彼が爆弾を仕掛けてなどいないとすぐに判断し、持っていたピストルで暗殺者を撃った。ペンローズがハセク=ダヴィオンを殺害した動機、そして誰のために働いていたのかは謎のまま残った。

 捜査のあいだ、機動部隊はまったく予期していなかったものに出くわした――250年前、アレクサンドル・ケレンスキーによって発された広帯域マイクロ波送信、彼が中心領域を去る理由の声明だった。「ケレンスキーの声」と名付けられた謎のメッセージによって、希望をみなぎらせた者は少数派で、他の者たちは背筋を凍らせた。多くの者たちが、司令官を失ったすぐあとに、遙か昔に死んだ将軍の声を聞いたことの奇妙な一致について考えた。他の者は単に氏族に関する奇妙な出来事のひとつだとみなした。



征服開始: The Conquest Begins:

 侵攻計画の最初の段階は、DEST隊員に依存していた。ジャガー亡命者(トレント)によってもたらされたスモークジャガーの敵味方識別装置(IFF)コードを利用して、戦艦ハルナはハントレスの星系にジャンプし、ブロードソード級降下船(トラファルガーでゴーストベアから奪取したもの)を切り離すことになる。降下船には、DESTチームとカゲバトルアーマーが積まれている。降下船はザボ山の上空に飛び、DEST奇襲部隊員が高々度から降下を行う。ブロードソードは救難信号を出し、DESTチームが傷ついた降下船の破片であるとジャガーに思わせるようにする。その後、船はアビズマル大陸の離れた降下地点に向かう。DESTチームのターゲットはザボ山にある司令センターである。そこでハントレス宇宙防衛システムがコントロールされている。もし破壊出来なければ、機動部隊の艦隊が惑星に辿り着くチャンスはほとんどなかった。この計画は完全に上手くいき、3月5日、サーペント機動部隊の残りが、ハントレス宙域にジャンプした。

 そこで彼らを待っていたのはスモークジャガーの戦艦3隻――2隻のヴィンセントMk42級艦船と、1隻の堂々としたソビエト・ソユーズ級巡洋艦、恐ろしい敵であった。続いて激しい海戦が起こった。SLDFの戦艦数隻は大破し、〈ロストク〉(フォックス級コルベットの1隻)は完全に破壊された。しかしながら、多大な物的被害が出たにも関わらず、SLDFは勝利し、機動部隊の降下船は素早くハントレスへと突っ込んでいった。ハントレス侵攻が始まった。



地上戦: War on the Ground:

 最初の強襲で主要拠点数カ所が狙われた。エリダニ軽機隊はルーテラ市近くに目標がふたつあった。第151連隊と第21連隊は大規模なメック戦士訓練施設を叩き、第71連隊はスモークジャガーの遺伝子保管庫になっているピラミッド建築を奪取する。ラビッド・フォックスは、東の山脈にあるファルコンの巣(ジェイドファルコンの小規模な前哨地点)を監視し続ける。SLDFの立案者たちは、ジェイドファルコンによる介入はないと確信していたが、ラビッド・フォックスはそれを確かめる。騎士団とキングストン軍団は、ニューアンドリュー市近くの訓練基地を割り当てられた。ノースウィンドハイランダーズとロイヤルブラックウォッチはパーン市近郊の工業地帯を攻撃し、第11ライラ防衛軍はバゲラ市近郊の訓練基地が目標となる。第2聖アイヴス槍機兵隊と第4竜機兵隊も訓練基地を目標とするが、それはアビズマル大陸にあった。第1カシル槍機兵連隊(マイヤー市近郊の工業地帯を襲う)とコムガード(DEST奇襲部隊によってダメージを負ったザボの施設を確保する)が残された。

 数部隊の強襲はうまくいった。竜機兵隊と槍機兵隊は彼らの目標となった訓練施設がほとんど放棄されているのを発見し、最小限の損失で訓練教官たちを殲滅した。コムガードも簡単に司令部施設を確保した。(カシル)槍機兵連隊はやや大きな敵に直面し、相当な被害者を出したが、最後には工業地帯を奪取した。エリダニ軽機隊もまたうまくいき、軽い損害を被っただけで、訓練施設と遺伝子保管庫を奪うのに成功した。

 しかしながら、全部隊がこのような楽な戦闘を行ったわけではない。ノースウィンドハイランダーズは、これまでに見たことのなかったプロトメック(バトルメックとよく似ていて、強力なエレメンタルのように戦う)と遭遇し、甚大な損害を負った。猛烈な防御にあったのであるが、彼らはなんとか目標のほとんどを得た。騎士団と軍団もまたプロトメックと遭遇し、その数はハイランダーズが相対したものよりも多かった。熱狂的な敵に直面した彼らは、任務を達成する前に、コムガードによる援軍を要請した。騎士団とライラ防衛軍は50%を超える回復できない損失を被り、軍団にいたってはそれを上回る70%の損失であった。深刻な損失、援軍の見込みなしという状況に直面したブライアン元帥は、軌道上の戦艦に援護射撃を求めるしかなくなった。壊滅的な爆撃でジャガーのメック数機が破壊され、残った兵士たちの士気も衰えていき、彼らは簡単に片づけられることとなった。そのような恐ろしい強襲で、ハントレス侵攻は終わった。



任務完了: Finishing the Job:

 侵攻は終了し、いまサーペント機動部隊は任務の第二段階に取りかかったところだった。すべての兵舎、メックハンガー、戦闘機格納庫、C3センター、軍修理施設、そして戦争に使われるかもしれないすべての建物、倉庫、輸送機関を破壊するのである。基本的にスモークジャガー氏族の戦闘能力を奪うためにできることはすべてやった。民間人の妨害を畏れ、最初、機動部隊は慎重に命令をこなしていたが、スモークジャガーの分解は問題なく進んでいったのだった。

 そのあいだ大氏族長兼スモークジャガー氏族長リンカーン・オシスは、ストラナ・メクティで族長会議を招集した。強襲のことを会議で発表したオシスは、他氏族に助けを求める絶望的な嘆願を行った。中心領域軍はひとつの氏族では止めらないが、全氏族が脅威に立ち向かえば、すぐに止められると主張した。しかし誰も同調しなかった。ウルフ氏族のウラジミール・ワード氏族長と、ジェイドファルコン氏族のマーサ・プライド氏族長は、問題はスモークジャガー単体に関するもので、他氏族には波及しないと提案し、反論の先頭に立った。最終投票の結果は、彼らの方に傾いた。氏族たちは満場一致でスモークジャガー防衛に関わるのを拒否したのである。激怒したオシス族長は、小規模な精鋭部隊とともにハントレスへ向かった。スモークジャガー軍の2個指揮三連星隊とブラックライオン級戦艦ストリーキングミストが含まれていた。



帰還戦争: The War Back Home:

 翻って中心領域では、ブルドッグ作戦が驚異的な成功をおさめていた。スモークジャガーは予想よりも早く世界から押し出されていった。彼らの部隊はほとんどの交戦で激しく痛めつけられた。シュタイナー=ダヴィオン国王は、強襲のタイムテーブルと全作戦を4ヶ月前倒しにした。この時間は、第一波単独で予想されていたコンピュータシミュレーションよりも短かったのである。生き残ったスモークジャガーはハントレスへと逃げ出した。星間連盟が彼らの本拠地を目標としており、シュタイナー=ダヴィオン国王とブルドッグ作戦に参加した部隊の大部分に追跡されていることに、彼らは気がつかなかった。隠密行動をとる必要のなかった両軍は、サーペント機動部隊のルートよりもまっすぐに、そして素早く進んだ。機動部隊は、3つの軍勢がハントレスに近づいていることにまったく気づかないままであった。



征服続行: The Conquest Continues:

 最初の強襲のあいだ、防衛司令官のギャラクシーコマンダー、ルッソー・ハウェルは、なんとか小部隊を撤退させ、ジャングルに隠し、逆襲のときに望みを託した。そのときはすぐにやってきた。食料と補給物資が不足し、ノースウィンド・ハイランダーズの基地を襲撃することとなったのである。ハウェルは彼の部隊から形だけの部隊を送り込み、ハイランダーの降下船を強襲したが、高速部隊は手元に残しておいた。降下船が狙われているとの警報を受けたハイランダーはそのほとんどが基地を放棄して、降下船防衛に急いだ。高速機動攻撃部隊が、このあいだに前進し、必要としていた補給物資をかすめとった。降下船攻撃(陽動以外のなにものでもなかった)は、補給物資が確保されるとすぐに終わり、ギャラクシーコマンダー・ハウェルと部下たちは闇に消えていった。

 3月19日に、中心領域を脱出したジャガー軍(2個銀河隊相当)が、ハントレス星系に到着した。ジャガー輸送隊は素早く降下船を放出し、氏族増援部隊がハントレスへと向かった。彼らが惑星に猛進していたまさにそのとき、熾烈な海戦が始まった。その撤退軍には、2隻のヴィンセントマーク42コルベットと1隻のリベレーター級巡洋艦が含まれていた。これらの艦船は主に対戦闘機兵器で武装していたのだが、機動隊艦隊の船を破壊出来るような火力を持った対艦兵器は積んでいなかった。結局、星間連盟小艦隊は絶望的な勝利をもぎ取り、その火力のほとんどを代償とした。〈インビジブル・トゥルース〉と〈レンジャー〉は損傷を負ったが、戦闘できる状態にあり、その点ではゴーストベアから捕獲した〈ワールウインド〉〈ハルナ〉と同じであった。〈アントリム〉は深刻な損傷を負い、戦場で修理できず、また〈エメラルド〉の損傷は甚大だったので彼らは船を放棄した。この戦闘でのもっとも恐ろしい交戦は、〈スターライト〉の死以外のなにものでもない。コントロールをロックされた〈スターライト〉はスモークジャガーのヴィンセントマーク42に体当たりし、2隻の船はもつれあった。数秒後に、ヴィンセントの弾薬庫が炎上し、すさまじい爆発のなかで戦艦は破壊されたのだった。

 氏族軍が進軍していることを、アライン・バーシック提督から警告されたサーペント地上部隊は、到着に備え準備を始めた。分断占領戦術(彼らが侵攻に使って上手くいったもの)を避けるために、ウィンストン将軍は軍を大きな3グループに分けた。エリダニ軽機隊にコムガードと第2聖アイヴス槍機兵隊が付き、ジャガーの聖地である遺伝子保管庫とルーテラのザボ山を防衛する。第1カシル槍機兵連隊、ノースウィンドハイランダーズ、中心領域騎士団はオシス湖の南西に配置された。この区域は中心領域が不利になったとき、撤退できる場所が豊富にあった。第4竜機兵隊、キングストン軍団、ライラ防衛軍は、アビズマル大陸上のルナーレンジに移送された。他の2部隊が必要としたとき、援軍に駆けつけるためである。

 到着した氏族の降下船は、スターコーネル、ポール・ムーン(援軍のため突進していたスモークジャガー士官)からウィンストン将軍宛のメッセージもまた送ってきた。バッチェルというより、単純な挑戦であった。ルーテラの西の平原で会おうというのである――そしてウィンストン将軍はこれを受けた。戦闘はSLDF軍から北部への間接砲射撃で始まり、その攻撃には強化型スモーク弾の一斉射撃が含まれていた。その一斉射撃は、通常のものより濃密で、プローブや他の電子機器を妨害するポッドが含まれており、それがSLDFに一瞬の有利さを与えた。その後、バーサーカーの怒りに染まったジャガーがSLDF戦線にぶつかった。しかしながら、結局、彼らは撃退され、降下船へと撤退していった。

 思わぬ氏族の援軍も、駐屯していた軍を南から攻撃した。中心領域の害虫を本拠地から追い払おうと、熱狂的な攻撃に継ぐ攻撃を開始したのである。ジャガーハート(ハントレス防衛のためリンカーン・オシスに呼び出されたメック戦士のグループ)に加えて、ブランドン・ハウェル副族長が到着し、スモークジャガー軍は増援を受け取った。氏族長の部隊の到着は数日前のことで、SLDF海軍を避けるためパイレーツポイントにジャンプしていた。ハウェル副族長軍の到着で、南部隊は再結集のためにデュアン湿地へと撤退しなければならなかった。彼らはそこがブッチャーズビルであると観測調査していた。ハイランダーズは多かれ少なかれ完全な状態にあったが、騎士団は1/4の戦力に減らされており、竜機兵隊はだいたい1/3だった。アンドリュー・レッドバーン(南部隊司令官)は、湿地のさらに向こうへの撤退を命じた。



士気向上: A Blow to Morale:

 そのあいだに北部隊は再び攻撃下にあった。SLDF軍の残りを無視したスモークジャガーは、コムガードに守られていた宇宙港に戦力を集中した。軽機隊はジャガーが専念していたのを利用して脆弱な側面を攻撃した。北部隊にとって不幸なことに、スモークジャガーは聖アイヴス槍機兵隊のなかへ直接撤退し、槍機兵隊を押し出した。ジャガーはこの状況を利用し、防衛隊の広範囲な敗走を引き起こした。戦いが終わるまでに、スモークジャガーは首都ルーテラの支配権を取り戻した。

 南部隊にも同じ運命が待ちかまえていた。追撃する氏族のメックが、広範囲な敗走を誘引し、最後には南部隊の半分が、殺されるか、駄目にされるか、バラバラにされた。ロイヤルブラックウォッチは逃亡する兵士たちのためにしんがりの役割を果たし、氏族軍による新たな攻撃を報告した。カシル槍機兵連隊もまた攻撃されており、騎士団だけが援軍となって部隊を救い、ジャガーを後退させた。

 副族長は最終的にルーテラで所在を知らせ、そこでジャガー・デン指揮三連星隊を部隊に加えた。SLDFの偵察兵はすぐ、ウィンストン将軍に副族長の存在を知らせた。ウィンストンは襲撃部隊を使って、まさに夜、奇襲を行うことを決めた。襲撃はSLDFにとって効果の乏しいものとなった。ジャガーは楽に彼らを撃退し、ジャガーファング山脈へと撤退させたのである。その後、オシスは、ハントレス防衛の全指揮をとるために、ルーテラに戻ることを決定した



ジャガーの牙の中へ: Deep Into the Jaguar's Fangs:

 ウィンストン将軍は部下たちを山脈の奥深くに投入し、竜機兵隊と軍団を北部隊の支援に向かわせた。同様に湿地帯へと撤退し続けていた南部隊に対し、ライラ防衛軍を援軍で送った。結局、ジャガーは侵攻軍ベースキャンプを破壊するため秘密の道を通り、SLDF軍の側面を突いた。氏族軍は信じられないようなダメージを引き起こした。DCMSは2人の兵士だけが逃げ出し、聖アイヴス槍機兵隊はまともに動くメックを一機だけ確保できた。残った部隊のうち、最良のものは半分の戦力になっていた。大多数はそれより遙かに恵まれていなかった。スモークジャガーがもうひとつの行動を起こすと、北部隊は熾烈な戦いのなかでほとんど崩壊した。ウィンストン将軍は戦いのなかで死んだ――包囲された軍に増援の一報が届くちょうど数分前のことであった。ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン率いるエリート部隊の分遣隊は、スモークジャガー(プライド以外のすべてはすでにうち砕かれていた)の終焉を意味していた。

 10日後、ハントレスの征服が終わった。サーペント機動部隊はほとんど残らなかった。ほぼすべての部隊が80パーセントの損失を被っていた。サーペント機動部隊の男女にとっての悪夢は終わったのだ。彼らは仕事を上手くやってのけ、いまは休む時間だった。次は、シュタイナー=ダヴィオン国王と彼の部隊の出番だった。



ストラナメクティで: On To Strana Mechty:

 スモークジャガーを撃破したことで自身の価値を証明した中心領域軍は、元々の侵攻に対する拒絶の神判で氏族の全てに挑戦する準備ができていた。もし中心領域が勝ったら、リバイバル作戦への投票はひっくり返され、侵攻は中止されるだろう。しかしながら、これまでに各氏族が奪い取った中心領域の領土は、前の所有者が力で奪い返す必要性を感じない限り、そのままにされる。もし氏族が勝ったら、ツカイードの停戦は覆され、氏族は侵攻を続けてもよい。シュタイナー=ダヴィオン国王はストラナメクティに行き、氏族の各族長に挑戦した。そして氏族は受けたのだ。

 ノヴァキャットがSLDF側に立って戦うことを選んだにもかかわらず、中心領域は、各氏族長の護衛二連星隊と戦うために、SLDFに属している各国家から1個中隊を展開することを決定した。侵攻は侵攻派の問題であるとして、守護派氏族は参加を断った。侵攻派のスモークジャガー、アイスヘリオン、ジェイドファルコン、ブラッドスピリット、ファイアマンドリル、スターアダー、ヘルズホース、ウルフが拒絶の神判で戦うために残された。勝利したどちらの陣営も、さらなる戦いで神判に勝った。ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは、神判の最中に素手の戦闘で大族長リンカーン・オシスを殺し、ノヴァキャットの両氏族長もまた死亡した。騒ぎが収まると、中心領域が神判に勝ち、平和を取り戻した。ポール・マスターズを連絡役として氏族に残し、シュタイナー=ダヴィオン国王は、中心領域への帰路についたのだった……




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