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作成:2011/03/29
更新:2012/08/06

スターコープス調査報告書 3076 The StarCorps Dossiers



 "Masters and Minions: The StarCorps Dossiers"はスターコープス社の情報部が調べ上げたという体裁の調査報告書で、3076年時点での各勢力の概略、重要人物、企業、惑星、軍隊についてまとめられています。聖戦の少し遅れた中間決算的なソースブックといえるでしょう。











ドラコ連合





アキラ・トーマーク Akira Tormark

階級/地位:ISF大尉(ムスコサン・ノ・リュウ)
生年月日:3050年(3076年時点で26歳)

 ワードの聖戦中、保護領国境沿いに配備されたISFの献身的な工作員、トーマークは、ハーンドンの極秘作戦を成功させ、一躍、ISF、O5P上層部の目を引くこととなった。作戦の目的は不明だが、ジェラール長官の命令によりトーマークはDESTの上級指揮官に昇進し、物議を醸したようだ。

 トーマークは数少ない「サンズ・オブ・ザ・ドラゴン」の一員で、このISFの秘密組織に入っていることを否定していない。このような騒々しさは、間違いなく、目立つ一人に注意を引きつけ、その影で他のメンバーが極秘で活動することを可能にする大きな計画の一環である。

 興味深いことに、O5Pの現場活動部門でもトーマークの名前が静かにささやかれているという。新尼僧院長の命令の下、ISFとO5Pの関係が再構築されているというのに、協力体制はこじれ続けている一方で、いくつかの名前が両組織の本部で急にあらわれたかのように見える。トーマークの名前に並ぶのは、トーマークの作戦の多くで重要な役割を果たしたトーマス・アレクサンダーである。

 ミソギ戦争を遂行している現在でさえも、両諜報部の間で影の戦争が行われている可能性がある。ヤミロ尼僧院長の下で広がった亀裂は容易に修復されるようてものではないのだ。もしそのような紛争が起きているのなら、両陣営が人材を求める可能性は高い。トーマークはその一人で、彼の忠誠の向く先が竜の諜報コミュニティの風向きを決定することになるかもしれない。





アルバート・ベントン Albert Benton

階級/地位:大尉/ソレンソン・セイバーズ指揮官
生年月日:2997年(3076年時点で79歳)

 ドラゴンの最も名高い部隊の指揮官の一人であるアルバート・ベントンは、ストーン合同軍の指揮官で最も謙虚かつ気取らない人間の一人である。ルシエンでの残忍な戦いを離れると言う彼の決断は、連合の元帥たちにとって障害となったが、大統領がこの動きを承認したことで公の批判は消滅し、ベントンはスポットライトから身を引くことが出来たのだった。

 技量を持った有能な士官であるベントンは、3060年代にベア=連合戦争を終わらせるクールシュヴァルの神判に招待された数少ない指揮官という名誉を得た。卓越した勝利と、それ以降の信じられないような戦歴により、ベントンの部隊はドミニオン軍のストーン連絡士官となったのだった。ベントンがドミニオン軍と作戦するとき、氏族は保護領宙域への無慈悲な突進の中で、彼の戦術的、戦略的卓見を歓迎する。

 氏族について中心領域の報道陣に代弁した時、ベントンは引退して優秀な部下に部隊を任せることを示唆している。ワードがルシエンで始めた戦争を終わらせるのが彼の目的であり、死をのぞいては何人も彼を押しとどめないであろう。

 ベントンは、ぼろぼろのブラックホーク=クを使い続けることについて、セイバーズの仲間たちから温情のこもった応援をもらっている。ドミニオンはこの「明らかに劣ったマシン」の代わりに、本物のノヴァを提供しようとしているが、ベントンに礼儀正しく拒否されている。その代わり、ドミニオンは「クールシュヴァルの誉れ」の一人に対し供給できる最高の氏族技術を使って、射程を最大にしている。





イヴェット・ソレンソン Evette Sorenson

階級/地位:第1〈光の剣〉中尉
生年月日:3051年(3076年時点で25歳)

 ダニエル・ソレンソンとジュリー・イセサキの娘であるイヴェットは、父の話を聞いて育ったためにメック戦士になりたがった。双子の兄、イヴァンはスポーツの道を進んだが――最近、ミノワのオーサカ・ライトニングと契約した――彼女はバトルメックと戦史の複雑さを学ぶことで忙しかった。サン=ツァン・メック戦士養成校を上位で卒業した彼女は、第1〈光の剣〉連隊のサカモト大佐の指揮小隊に所属することとなった。疑いようもなく、彼女の名前はこのような権威ある地位につくのを助けた。

 父の断固たる決意は、彼女に受け継がれ、そして彼女は父の名前と評判に応えようと絶えず努力し続けている。この決意は、3076年、第1〈光の剣〉がストーンのタスクフォースの一員としてアル=ナイルにいたときに、戦いの流れを変えるのを助けた。負傷した大佐が後退した時、彼女はキロッヒ・パスに断固として立ちふさがり、重要な瞬間にワードの側面攻撃を押しとどめ、リュウケン=ロクがブレイク派の後方を叩き、ワードの全側面の背後を破るのを可能としたのである。

 イヴェットは冷たく、よそよそしい外見の下に沸騰する憤怒を隠している。3076年3月、ワード・オブ・ブレイク軍のイセサキ攻撃で母が死んだことが激怒の炎をかきたてたのは確実である。彼女は父親の改造型ハタモトに乗り、戦場でその怒りを解き放つ。





ノヴァキャット氏族軍 Clan Nova Cat Touman

 聖戦の初期、ノヴァキャットは連合をほとんど支援しなかった。第二星間連盟崩壊後に引きこもった彼らはつい最近になって表に出てきて、行き当たりばったりに攻撃を仕掛けている。ワードの陣地への散発的な攻撃はブレイク派の襲撃への報復というだけでなく、ビジョンで見たある男に加わるため4個銀河隊が出ていったのを隠すためだったということが少しずつ明らかになってきている。その男とはデヴリン・ストーンである。

 残った2個銀河隊のうち、クシーは3072年、ルシエンに腰を落ち着けていた第42シャドウ師団への報復攻撃の際に事実上壊滅した。オミクロン銀河隊は氏族長の命令により連合内の氏族領土に散らばったままである。惑星の守備隊が行方不明になり、ストーンの護衛として恒星間ヴィッドに現れる機会が増えるたびに、ノヴァキャットの怒りは募っていった。もう一つのセオドアの妥協によって、放棄されたと人々が感じたことから、ブラックドラゴンのシンパが飛躍的に増大し、オミクロンは民間人を不安にさせる事件に巻き込まれるようになり、ついには守られた飛び地領土に残ることを選んだ。

 彼らがストーンとの拒絶の神判に破れ、ラムダ銀河隊と、シグマ銀河隊のうち半数が帰還すると、問題は落ち着いた。(ドラコ)連合への支援を保証するために氏族軍の半数を本拠地に送ることを余儀なくされたキャットは名誉とともに神判を戦ったが、ストーンとラメントの指揮小隊にはかなわなかったのだった。

 シグマの半数は、壊滅したクシーに取って代わるためにローアマスター・ミノル・ノヴァキャットの命令ですぐさま再配置された。ミノルは氏族長たちがストーンの旗の下で勝利し戻ってくるか――あるいは死ぬまで、連合内にあるノヴァキャットの「特別保留地世界」を支配することになる。










恒星連邦





ロス・マッキノン Ross McKinnon

階級/地位:大尉/フォックスティース指揮官
生年月日:3015年(3076年時点で61歳)

 マッキノン家は何世紀にもわたって恒星連邦の軍指導者、愛国者として仕えてきた。イアンの息子で著名なフォックスティースの現指揮官、ロス・マッキノンは、近年、注意を外部に向け、連合の部隊とともに活動しさえした。叔父をDCMS反乱軍と戦った浪人戦争で亡くし、初陣を3039年戦争で果たしたことを考えると、これは大きな変化であり、なにより奇妙なのは、これがクリタ家の一員からの粘り強い要請によりなされたことである。だが、チャンドラセカール・クリタが死ぬと、マッキノンは第7南十字星部隊での任務に戻るよりも、デヴリン・ストーンに加わることを選んだのである。

 いとこであるディヴィッド(ストーンに近い同胞で、パラディンの指揮官)のアドバイスと、チャンディ・クリタが残したメッセージに耳を傾けたロスは3076年の前半にストーンと会い、彼を支援すると誓った。フォックスティースはすぐに仕事に取りかかり、ストーン連合軍による全面強襲に先立ち保護領国境の向こう側に降下して、ブレイク軍を混乱させ、弱体化させる襲撃隊の役割を果たした。最初に彼らが攻撃したのはタウンで、惑星を発つ前にハウエル大陸の再教育キャンプを連続して解放した。

 国境沿いで幾度か襲撃を仕掛けた後、マッキノンは解き放たれ、新たな任務を携えて保護領深くに突入するよう命じられた。ブレイク派を内から弱めるために、地元の反乱組織を訓練するのである。この任務はストーン軍の主力部隊から離れるのを必要とされたが、ブレイク派キャンプの内情に吐き気を覚え、ここ数ヶ月の体験でさらなる決意を固めていたマッキノンはこのチャンスに飛びついた。最後の通信はティグレスからのもので、たった一言であった。「向かう」。





恒星連邦の主要世界

ニューシルティス
貴族指導者: アンジェラ・ハセク女公爵
恒星型(再充填時間): K5IV(197時間)
星系内の位置: 4番目
ジャンプポイントからの行程: 4.12日
惑星数: 1(ヴァーニー・スター)
地表の重力: 1.0
大気圧: 通常(呼吸可能)
赤道面の気温: 35度
海洋面積: 50パーセント
原始生命の種類: 植物
再充填ステーション: 天頂
HPG等級: A
人口: 2億5465万4000人
社会・産業水準: A-A-B-A-D

 ニューシルティスは、22世紀、地球同盟による探検活動の絶頂期に発見された。しかしながら、永続的に氷河期の中にとらわれているように見えたことから、2260年代まで植民化されることはなく、それも狭い赤道周辺の鉱山を目当てに行われただけだった。しかしながら、容易な採掘は長く続かず、そして大規模な金属会社が露天掘りしようと入ってくるまでに、ハセク一族がニューシルティスの権力の座についていた。彼らは故郷の(大部分が極地だが)傷つきやすい生態系を利益目的の企業に破壊させはせず、採鉱から精製、生産に至るまでほぼすべてに対する規制を行い、採掘済みの赤道地帯を惑星住民の需要を(かろうじて)満たせるような農業地帯に転換させた。これはこの世界の生存能力と、ハセク一族の長期的な金融支払い能力を保証したのである。

 軍事、政治の主星であり、大規模な軍事産業があることから、カペラ大連邦国は継承権戦争の間、何度もこの世界を目標とした。過去、強力な軍事的防衛力と惑星の極地的環境が、すべての攻撃軍を文字通り全員凍り付かせてきた。過去の失敗から学んだカペラ装甲軍は、ニューシルティス北半球の極寒の中で戦う準備を行い、3068年9月の侵攻においてこの傾向を逆転させた。この地区は、ジョージ・ハセクによる至高の正義作戦の圧倒的攻勢ドクトリンのせいで、すでに守りが薄く、援軍を急がせていたというのにカペラ軍に勝つには不十分だった。6ヶ月の戦闘で、首都サソーは荒廃し、ティスコワ大学はほぼ壊滅した。第4ドネガル防衛軍とジョンストン工業の企業防衛軍は、ジョンストンの工場施設への打撃を防ぐ以上のものがあった。戦闘が長引いた後で、カペラの侵攻軍はついに退却した……サン=ツーは自軍をワード・オブ・ブレイクに向けたのだ。ニューシルティスは完全に生き残った。まったくもって完全に。その代償は大きいもので、ニューシルティス境界域市民軍とヴァンガード軍団が戦闘部隊として終わっていた。10万人近い民間人がこの攻撃で死に、多くが戦闘で破壊された家から放り出された。

 このすべてが3076年10月に起きたことからすると見劣りがする。タウラスによるブルセット包囲に応じて、アンジェラ・ハセク女公爵はブルセットを爆撃していたタウラス戦艦〈ヴェンデッタ〉を破壊すべく、FSS〈ニューシルティス〉を送り込んだ。ニューアヴァロンから守りを固める命令が出ていたなかで、この動きによってニューシルティスの防衛は最小限の機動海軍によるものとなり、チャンスを待っていたタウラスの深襲撃を招いたのである。核兵器と、パンプールで試みられた降下船による衝突攻撃の、両方を用いた彼らは、地上の気圏戦闘機部隊が反応する前にニューシルティスを叩いた。核攻撃は惑星の赤道地帯を荒廃させ、この世界の限られた農業生産能力を喪失させ、200万人以上を殺した。「ケーヴ」にはレパード級降下船が直撃し、カペラ境界域指揮所の入り口が崩落して、掘り返されるまでの数ヶ月、外部から遮断された。恒星連邦の逆襲を逃れ得たタウラス人はいなかったが、この電撃的攻撃で、カペラの侵攻が与えた打撃よりも多くが一日で与えられたのである。

 カペラの侵攻で深刻な損害を免れたニューシルティス造船所は、タウラスの攻撃において同じ幸運を得られなかった。TCS〈ヴェンデッタ〉を追っていたフォックス級〈ニューシルティス〉が不在で、メデューサ傭兵艦隊がフィルグローブを守る中、L4造船所周囲の防衛力は、タウラスのティグレス・ガンボートの自殺核攻撃を止めるには不十分だった。結果、造船所には致命的な打撃が与えられ、〈ヴェンデッタ〉撃沈に失敗した〈ニューシルティス〉の修理に大きな遅れが出たのだった。天頂にある航宙艦修理ドックはさらに不運であった。カペラとタウラスの攻撃で施設の90パーセント以上が破壊されたのである。






ギャラックス:ひとつの世界の死

 地球のタイタン造船所をのぞきおそらく中心領域最大の海軍用生産施設があるギャラックスは、恒星連邦を脅して服従させようというワードの攻撃の最初の被害者となった。フェド=ボーイング・メガプレックスへのドラマチックな攻撃はよく知られているが、攻撃後の数週間、数ヶ月になにが起きたのかは最近になってようやく明らかになった。第6南十字星部隊による猛烈な守りが、メガプレックスを破壊した核攻撃から惑星を救ったと信じられている。2機のワード・オブ・ブレイク戦闘機だけがギャラックスの軌道上にたどり着き、双方ともに素早く破壊され、機体と爆弾が燃えながら大気圏上層部に落ちていった。

 しかしながら、ワードが載せていた致命的な弾頭は核兵器ではなく生物兵器だったのである。大気圏外で戦闘機を撃墜したことは、生物兵器の拡散を小さくしたが、止めることはできなかった。ワードの攻撃から一ヶ月以内に人口の20パーセントが死亡した。たとえ抜本的な対策がなされたとしても、ウィルスがギャラックスの動植物と結びつき、惑星の生けるすべてを病のキャリアに変えたことから、その分散を遅くする役には立たなかった。第6南十字星部隊の生存者は救世主から獄吏へと変わり、次の数年間、惑星の強制隔離を実行し、生存者たちが惑星を離れるのを妨げたのだった。






恒星連邦の剣:AFFSの主要軍事部隊


アヴァロン装甲機兵隊

現役部隊:第17アヴァロン装甲機兵隊、第42アヴァロン装甲機兵隊、第1臨時アヴァロン装甲機兵隊、第2臨時アヴァロン装甲機兵隊

 連邦共和国内戦で忠誠心をひき裂かれた装甲機兵隊旅団は、聖戦のはじめに重い打撃を受けた。指揮官のウィリアム・ウォーターズがニューアヴァロンに閉じこめられたことから、旅団は団結と方向性を失い、生き残った部隊は麻痺した。第20アヴァロン装甲機兵隊だけが大規模な攻勢作戦に参加し、カペラ大連邦国の逆襲で大規模な打撃を受けた。生存者たちは第22に組み入れられた。第29がワード・オブ・ブレイクの核攻撃で破壊されたことは、装甲機兵隊の地球への怒りをかき立てた。残った2個旅団が重要な世界を守るなかで、装甲機兵隊はAFFSの新軍事ドクトリンで再建された最初の部隊のひとつとなった。それは、メック部隊を強化大隊に削減し、装甲部隊を1個連隊半の統合連隊とする一方で、バトルアーマー装備の歩兵の割合を増やすというものだ。こうすることで装甲機兵隊はふたつの部隊を作ることが可能となった。臨時部隊とされているが、旧連隊の名前を背負っている。

 ウォーターズ元帥の最高司令部に対するロビー活動は成功し、第42、第1臨時、第2臨時はワード国境に移った。そこで彼らは保護領宙域への深襲撃を仕掛けるという積極的な防衛任務についている。


ダヴィオン近衛隊

現役部隊:ダヴィオン強襲近衛隊、ダヴィオン重近衛隊、第1ダヴィオン近衛隊、第2ダヴィオン近衛隊

 ニューアヴァロン包囲戦は、ダヴィオン旅団の2個部隊を完全に殲滅し、残った3個に壊滅的打撃を与え、誇りある旅団を終わらせる結果になるところだった。栄光と象徴性だけが第1ダヴィオン近衛隊を解散から救い、装甲部隊とバトルアーマーを強化した守備的な戦闘隊形に再編された。対称的に、強襲、重近衛隊は戦闘能力を失わず再建するのに費用を惜しまれることがなかった。両部隊は多数の新型バトルスーツとC3搭載の装甲車両を装備している。双方ともに重部隊であるが、新型リージョネア・バトルメックの初期生産分を受け取り、騎兵打撃部隊として使っている。第2ダヴィオン近衛隊はニューアヴァロン包囲戦に参加しなかったが、ワード・オブ・ブレイクを憎む彼らなりの理由を持っている。アンゴルの表現で六ヶ月におよぶ戦役を行ったあと、第2はついにブレイク派の侵攻軍に世界を明け渡さざるを得なくなった。第2は遠くまで逃げることはなかった――前指揮官ウィリアム・コサックス提督の遺産である大規模な気圏戦闘機軍を使って、減少した部隊を完全に移動させるために追加の輸送船を徴発したのである。HPG通信を避けて、信頼性で劣るが安全なファクステクノロジーを使った第2は機動力を保ち続け、ニューアヴァロン包囲の間の数年間、ワードを繰り返し叩き続けた。最近になって休養と修理のため後退し、重近衛隊が彼らの妨害任務を引き継いだ。

 ジョナサン・ダヴィオンがAFFS指揮官の座にのぼったのに伴い、近衛隊内で数名の人事異動があった。ディクソン・ジブラーが大元帥に昇進し、強襲近衛隊の指揮を続けながら、全連隊の指揮をとることになった。軽近衛隊の気圏戦闘機指揮官、アテナ・ダヴィオン=ロスは、部隊の崩壊を生き残り、重近衛隊でジョン・ダヴィオンの主席副官の一人となった。その後、ダヴィオン元帥の昇進に伴い、重近衛隊の指揮権を与えられた。


南十字星部隊

現役部隊:第1南十字星部隊、第2南十字星部隊、第4南十字星部隊、第5南十字星部隊、南7十字星部隊

 ケレンスキーのエグゾダスに参加せず残ったSLDF兵士から作られた南十字星部隊は、南十字星境界域の管理区ごとに一個のRCTを持つ。連邦共和国内戦ではじめて南十字星部隊のRCTが完全に現役を外されることとなった……連合のプロセルピナへの逆襲で第8が大打撃を受けたのである。もし聖戦が起きてなかったら、第8南十字星部隊は、第4、第5ダヴィオン近衛隊の次という、早い再建がなされていただろう。聖戦はこれらの計画を白紙に戻しただけでなく、旅団の戦力をさらに減少させた。1個メック連隊がスノウレイヴンに破壊されるか捕らえられた後、第3の通常部隊は第2、第7に組み入れられた。内戦からの再建の最中だった第6はギャラックスでワードの生物攻撃を受けた。厳格な軍事的手続きと、保管されていたレーションが、隊員の半数の命を救った。しかしながら、残った人数は大きく減ることとなる……5年にわたるギャラックスの隔離実行で自殺がその原因の第一となった。第6の代わりに1個自由気圏戦闘機連隊が隔離監視についた後、3075年の後半、残った隊員たちは第7南十字星部隊に組み入れられた。

 恒星連邦の敵から大打撃を受けたにもかかわらず、彼らは摂政女王の防衛的な政策を完全に支持し、南十字星境界域の防衛予算積み増しを世論に訴え、境界域内の多数の援助、救援任務に参加している。


シルティス機兵連隊

現役部隊:第5シルティス機兵連隊、第6シルティス機兵連隊、第8シルティス機兵連隊、シルティス・アヴェンジャーズ

 活動可能なことは、シルティス機兵連隊にとって贅沢品である。ジョージ・ハセクの剣の先端として、彼らはカペラに対する戦闘のただ中にいた。幸運とその名前が、部隊を1個連隊のみにすることから救ったすべてである。第8は古流の思考法と呼ばれるもののおかげで、唯一全滅を逃れることが出来た。惑星リャオへの妨害襲撃から戻ったこのメック連隊は、ニューシルティスを守るべく、直接この世界に向かった。ワードがジェノアを叩いた時、第8の通常部隊だけがこの世界を守っており、メックの支援がなかったにもかかわらず頑強な抵抗を繰り広げた。この防衛は核攻撃による最高司令部壊滅を招き、それ以来、第8の通常部隊との通信は途絶えている。第5はハセク戦争に対するカペラの逆襲でほぼ壊滅し、書類上でのみ活動中である。これによって、第6が旅団の中で唯一真に活動しているRCTとなった。彼らは大連邦国のニューシルティス侵攻失敗からの回収品で大きく再建されたのである。

 AFFS最高司令官の部隊編成変更命令に抵抗したナサニアル・ハセク(カペラ境界域指揮官)は、既存の完全な編成に再建しようとした。ワード、タウラスと戦うためにより小規模な機動部隊が必要とされたことから、ハセクはダヴィオン大元帥と似たようなアプローチをとらざるを得なくなった。シルティス・アヴェンジャーズの創設(メックを第8から、通常部隊を第6から)は、ニューアヴァロンからの命令に完全に屈服することなく、AFFSの新しいやり方を承認した。噂によると、近いうちにさらなる部隊分割が起こりそうである。


フィルトヴェルト市民軍

 最初はフィルトヴェルト養成校訓練大隊の装備を使って作られた市民軍は、開始時から装備が劣っていた。これは、21の世界による惑星守備隊の正式化後もほとんど変わることがなかった。最近まで市民軍には2個大隊分の古い見捨てられたバトルメックしかなかった。分離したこの小国家内に大規模な工場がなかったことから、市民軍は地元で生産された装備に頼るしかなかった。工場のなかで最もましなのは、ブロークンホイールのクイックセル子会社とカル=ボーイングのフィルトヴェルト工場(最近リッパーVTOLを生産するために再編)などである。フィルトヴェルト市民軍の劣悪な状況は、(フィルトヴェルト)同盟が私掠許可証発行を政策とした原因の一つかもしれない。雇われた私掠(海賊)グループは彼らより遙かに装備がよいのだ。

 市民軍の結成から、第1旅団は装甲部隊と大規模な歩兵隊を追加して、訓練大隊の規模を超えている。3073年、市民軍は傭兵を経由して購入したと思われる中心領域通常型バトルスーツの2個大隊を披露した。3075年末、市民軍は、ガーマン・ドゥセット将軍とマラグロッタ境界域市民軍の1/3が離脱してきたおかげで、人数と装備の点で大規模な強化を見た。これは市民軍のバトルメック戦力を大きく強化したが、連合政府からの私掠許可証で活動している多数の私掠グループと比べて劣るものである。防衛は出来る一方で、市民軍は侵攻軍としては驚異的ではない。










カペラ大連邦国





マーカス・バクスター Marcus Baxter

階級/地位:メンケ、ミッチェル男爵、マッカロン装甲機兵団指揮官
生年月日:2987年(3076年時点で89歳)

 マーカス・バクスターは半世紀にわたってマッカロン装甲機兵団(MAC)に士官として勤め、悪名高い部隊指揮官アーロン"ビッグマック"マッカロンの側近であった。彼は友人にして師匠とともに最高の時期と最悪の時期をくぐり抜けた。3050年、ビッグマックが死に、それがMACそれ自身の死につながるかと思えたとき、部隊が救済を求めたのがバクスター大佐であった。彼の広い肩幅と落ち着いた指揮は、部隊が生き残るのに必要な基礎だったのである。

 最終的にバクスターはサン=ツーの寛大な提案を受け入れ、公式にCCAFに加入する決断を行った。MACは紛争地帯に素早く効率的に展開する能力を持った独立即応部隊となった。MACは3057年のマーリック/リャオ攻勢で大規模な戦闘に参加し、聖アイヴスに対する戦争でもそれを繰り返した。

 恒星連邦軍の侵攻はMACを限界にまで引き延ばした。ワード・オブ・ブレイクが聖戦をカペラ大連邦国に持ち込むまでに回復する時間はなく、MACはすべての主要戦役に放り込まれた。少なからぬ資源が限界に達するまで、彼らは少しずつ摩耗していった。マーカス・バクスターの手堅い手腕と知恵なくしては、MACは全体が飲み込まれていたかもしれない。

 バクスターの現在の関心は、国家の生き残りというよりはMACそれ自体で、部隊を本拠地であるメンケとミッチェルに退却させた。戦闘能力を維持するためには、再補給と募兵の時間が必要だったのである。そうするために、バクスターはアウトリーチでの戦闘後、ちりぢりになったウルフ竜機兵団の隊員に連絡を取ろうと考えた。両部隊は憎みあっているのだが、バクスターは彼らの苦境に感情移入している。なぜなら、竜機兵団のような名高い部隊は、もっと栄光ある終わりを迎えるべきだと考えているからである。加えて、MACは聖アイヴス共和区からも募兵を行っている。バクスターはこのちょっとしたやり方が聖アイヴス市民に大連邦国の一部であると感じさせ、国家のさらなる統一につながると信じているのである。










ライラ同盟





(放浪)ウルフ氏族

 旅行者、遊牧民、難民、義理の親戚。社会にはいつも(時折は勝手に)入り込んだグループがいる。(放浪)ウルフ氏族は、中心領域を侵攻する氏族から中心領域を守るとピーター・シュタイナーに忠誠を誓ったにも関わらず、まだ真の故郷を見つけられていない。確かに彼らはアークロイヤルと駐屯している場所に住んでいるが、それらの惑星でいまだ部外者である。攻勢で3072年を始めたウルフはターカッド解放を助けた。大軍を提供したわけではないのだが、増しつつあった政治的影響力をさらに増やしたのである。

 放浪ウルフが最初の核攻撃を退けた後、ワード・オブ・ブレイクは放浪ウルフとケルハウンド、ウルフ竜機兵団の生き残りを終わらせる決断をした。第2、第38師団が第43シャドウ師団と共にアークロイヤルに向かい、そこにFWL艦隊から奪われた3隻の戦艦が護衛した(アルマゲドン級〈エネアス〉〈トロイ〉、イージス級〈オリンパス〉)。侵攻軍は3072年3月22日、アークロイヤル星系にたどり着き、核武装したポケット戦艦の前衛部隊を送り込んだ。ウルフ海軍は敵艦隊の分断に動いたが、交戦を余儀なくされ、地上部隊の一部がアークロイヤルに上陸するのを許してしまった。ブレイク軍は人里離れたジャングルにあった重要と思われる防衛地点に降り立ったが、そこはキャサリン・シュタイナー=ダヴィオン用に建設された刑務所と判明し、空っぽであった。

 宇宙で海戦が荒れ狂う中、地上部隊は衝突した。第38、第43師団が前進し、緊急に集められた前哨を押し通った。シャドウ師団はメック工場の外部で激しい抵抗に遭遇したが、ウルフの矢面に立ったのは第38師団だった。フェラン・ケルとランナ・ケレンスキーが彼らの側面につっこんだのである。ウルフに包囲されたブレイク派は消滅した。ケルハウンドに足止めされ、第38の支援を失った第43は、第2が確保した降下地点に引き返した。第2は前進するウルフとケルハウンド軍を押しとどめようとしたが、速度低下させただけだった。しんがりとなったシャドウ師団を見捨てて、第2は生き残ったわずかな第43とともに惑星から退却した。宇宙ではウルフがポケット戦艦を一掃し、逃したのは〈エネアス〉と少数の地上部隊だけだったが、彼らもまた戦艦を2隻失ったのだった。

 翌年はウルフにとってそれほど優しいものではなかった。アークロイヤル会議はブレイク派と戦う戦略を練り、同盟を作るのみならず、ウルフの力と受容を見せつけるチャンスであった。フリッツ・ドナーが知らず知らずのうちにこれらの計画を台無しにした。ウルフは爆発で次席司令官マルコ・ホールを失っただけでなく、ドナーに仕掛けられた爆発物を発見できず、面目を失ったのである。これによってゲストたちは犠牲となった。ウルフは医療援助によって数名を救ったが、あまりに大勢が死亡したのだった。

 物理的な復旧は、精神の癒しよりも容易なものであった。ケル一族とウルフ工場の間で、失われた装備が補充されたが、一部は氏族戦士が使っていたものより技術で劣っていた。新兵がブレイク派との戦闘でうがたれた小さな穴を埋め、ダリル・ケレンスキーがマルコ・ホールの代わりに昇進した。ウルフは怒りをブレイク派に向けることで、罪滅ぼししようとしているようだ。

 彼らにとって最大の挑戦は、彼ら自身の永久的な本拠地を得ることにあるだろう。彼らは補給を得るための資金をケル公爵を通した同盟に頼っている。もし彼らが自分たちの土地を得るために、ウルフ、ファルコン領に切り込めば、同盟はそれらの世界をライラの伝統的な領地だとして要求するだろう。現在、彼らはライラに腰を落ち着けているが、いまだ真の本拠地を探している。おそらく彼らはそれを同盟で見つけることになるだろう。もしくは、安住の地を探そうと再び移動するかもしれない。






ダニエル・ブリューアー Daniel Brewer

階級/地位:ヘスペラスII公爵
生年月日:3035年(3076年時点で41歳)

 ダニエル・ブリューアーがディファイアンス工業を失ったはじめての公爵として記憶されるのか、それとも歴史がより礼儀正しく彼を評価するかは、いまだ不確かである。しかし、地元のメディアはふたつの派閥に分かれ、緊張を高めている――一方は彼をワードに屈しなかった男として栄光を与えようとし、もう一方ははじめてヘスペラスIIを失った男として磔にしようとしているのだ。

 3068年に襲撃を受け、内戦の打撃から回復したばかりの防衛が弱められると、ブリューアー公爵はさらなる兵士を要求したが、同盟はすべての戦線での戦いに忙しかったので、無視される結果に終わった。3070年に災厄が訪れ、ワード・オブ・ブレイクがヘスペラスIIを征服すべく第40シャドウ師団とともに戻ってきたとき、ブリューアー公爵は亡命するよりも故郷に残ったほうが出来ることがあるとして、逃亡せずヘスペラスIIに残ることを素早く決断した。

 ワードは惑星占領中、彼を自宅軟禁とし、おおむね孤立させた。彼は折に触れてヘスペラス市民におとなしく占領を受け入れることをアピールし、その一方で、アダム・シュタイナー、後にはデヴリン・ストーンとコンタクトをとり続けることに成功した……もしかしたら「ブラックボックス」を使ったのかもしれない。彼は解放の際に重傷を負い、回復にはいましばらくの時間を要した。

 デヴリン・ストーン合同軍によってヘスペラスIIが奪還されて以来、ブリューアー公爵は同盟のため惑星の生産能力を取り戻すべく努力を続けている。最初の報告によると、設備のダメージはごくわずかであったが、多量のブービートラップ、コンピュータウィルス、その他の罠が仕掛けられていることが明らかになった。物資の生産量は常に低く、状況は日増しに悪くなっている。





アキラ・ブラヘ Akira Brahe

階級/地位:中佐/ケルハウンド指揮官
生年月日:3001年(3076年時点で75歳)

 アキラ・ブラヘはほぼ最悪期に陥ったケルハウンドを指揮している。彼は連邦共和国内戦後の3067年に、人生二度分の流血を見てきたとして、すでに戦闘任務から身を引いていた。彼は新兵を訓練することでケルハウンドを助ける道を選んだ。3069年、ファルコンがグレイスランドを攻撃した時、彼はそこにおり、ダニエル・アラードとタマン・マルサスの残忍な戦いを目の当たりにした。アラードが倒れると、アキラは指揮を執り、アラードの遺体を生存者たちの大半とともに、帰還させた。

 ブラヘ中佐はケルハウンドを強化するという最優先項目に取りかかり、中心領域が聖戦で炎上していたにも関わらず、ターカッド奪還の時には再建を成し遂げていたのである。それから数年間、ブラヘはライラ同盟内で起きたすべての大きな戦いに部下たちを送り込んだ。ブラヘはデヴリン・ストーンと会い、彼とモーガン・ケルはワード・オブ・ブレイクに対する戦争への全面的な支援を約束した。

 アキラ・ブラヘが指揮を執ってからの数年、彼はターカッドからニューエクスフォード、ヘスペラスII、そこからさらに遠くまで、数多くの戦場に姿を現した。この絶え間ない戦いは彼を痛めつけた。情報筋が確認したところによると、アキラ・ブラヘはオッカム血液病という非常に珍しい病にかかり、24ヶ月〜36ヶ月以内に死ぬだろうという。アキラは長期にわたり第2ケルハウンド連隊の指揮官であったスコット・ブラッドリーJr.に部隊指揮の座を譲ると言われている。

 アキラと妻のユキコは四人の子供をもうけ、長男のヨリナガ・ブラヘは、最近、ケルハウンド第2連隊の大尉に昇進した。他の子供たちもおそるべき戦士となり、その多くは父の連隊で戦っている。レズリー・ブラヘ(孫娘)はデヴリン・ストーンに近しいアドバイザーである。





トーマス・ホガース Thomas Hogarth

階級/地位:准将
生年月日:3007年(3076年時点で69歳)

 暗く、陰鬱なギャラリーで生まれたトーマスは、シュタイナー家との細いつながりを持った一族の一人であった。これらのコネと大規模な鉱業からの富は、ホガースが3023年に名門のナーゲルリンク養成校に入学するのを確実としたのである。

 27年のクラスを中の下以下で卒業したホガースは、それにも関わらずイワン・ペトロフ(第22スカイア特戦隊指揮官)の参謀の座を確保し、その後、3038年、第7ドネガル防衛軍に異動となった。カーヴィル侵攻の際に、強襲中隊のひとつを率いていたホガースは、アイアンシティの込み入った通りで方向感覚を喪失してしまった。絶望に陥った彼の部隊がカーヴィル市民軍の機動司令本部に遭遇し、殲滅したのはまったくの偶然であった――これは都市の陥落を早めた。

 その戦歴とコネクションを持ってして、ホガースは3045年にフリーロ・タマリンド境界域市民軍の指揮権を与えられた。徹底的に戦争の英雄を演じたホガースは都会的なウィットとコネクションを使って、フリーロの上級階級に受け入れられた。彼はイシス・シュタイナー(フリーロ女公爵)と友人になり、テレジアンの邸宅を頻繁に訪れるようになった。キャサリン・シュタイナー=ダヴィオンが廃位した後、LAAFはトーマスをディファイアンス工業の連絡士官とした。この動きは、カエサル・シュタイナーによってなされたものである。彼は母とホガースの近いつながりを、深い疑惑の目で見ていたのである。

 もう一度軍事的な成功が転がり込んできたのは3074年の4月のことである。ホガースはフリーロにあるディファイアンス工業の工場を攻撃したブレイク派をくい止めたのである。准将に昇進した彼は合同軍とともにワード・オブ・ブレイクと戦うLAAF部隊に配属された。

 LAAFの官僚的な迷路を抜けるエキスパートであるホガースは、長年にわたってディファイアンス工業と近しい関係を築いている。残念ながら、この官僚的才覚は、戦術的、戦略的卓越に結びついていない。敵を出し抜くために、彼は典型的な「社交界将軍」を演じている。





シュタイナーの拳:LAAF主要部隊




ライラ防衛軍

 ライラ防衛軍はシュタイナー軍の中核である。最高の人材がこのエリート部隊に選ばれ、最高の指揮官たちだけが指揮するのを許される。国家に忠誠を誓う者のみが隊列に加わることが出来る。同盟にとっては不幸なことに、防衛軍は可能なのよりも多い戦闘に参加した。

 ライラ防衛軍のうち、第10――全中心領域で最エリート部隊のひとつ――は、最悪を被った。ワード・オブ・ブレイクに包囲されたニューアヴァロンに足止めされたこの部隊はダヴィオン近衛隊とともに数ヶ月戦ったが、1年間近くの絶え間ない戦闘の後、生き残ったのはバラバラになった少数だけで、部隊を解散せねばならなかった。

 ターカッド解放の急先鋒に立ったのは第3ライラ防衛軍でてある。砲身を白熱させた彼らはトライアドの残骸に急襲を仕掛け、道中にいたすべてのブレイク派を抹殺した。自分たちと敵の生命を省みない無慈悲な戦いにより、彼らはアダム・シュタイナーから新たな部隊のニックネーム"アヴェンジング・ゴースト"を賜ったのだった。

 ドネガルにおいては、第6ライラ防衛軍が勝利を得た。力に頼った彼らはワード・オブ・ブレイク部隊の戦線を破り、素早く首都を奪取するのを可能とした。その過程で守備側は崩壊し、数千の生命が救われたのだった。

 他の全ライラ防衛軍部隊も戦闘に関わった。一部はワード・オブ・ブレイクから本拠地を守って核の炎で抹殺された。他は聖戦の勃発期のジェイドファルコン、マーリック軍との戦闘に身を捧げた。彼らはすべて敵に大きな代償を支払わせた――しかし、この誇り高く強力だったシュタイナー軍の戦力を再建するには長い時間がかかることだろう。




スカイア特戦隊

 元々、スカイア特戦隊はスカイア連邦の軍隊であった。そして、現在にいたるまで、彼らはスカイア島との深い結びつきを持ち続け、国家主席よりも、ポリマ公爵――ロバート・ケルスワ=シュタイナー――の言葉に耳を傾けることがよくあった。なので、聖戦の勃発期に特戦隊が自由世界同盟に対する無許可の攻撃の急先鋒になったのは驚くべきことではない。最初の勝利は、FWLMが本気で応じる余裕が出来た時に無に帰した。スカイア防衛軍、第4、第17、第22特戦隊は撤退せねばならなくなり、守勢に回っていることに気がついた。

 ワード・オブ・ブレイクが地球を守るためライラ同盟全域の世界を征服しはじめ、スカイア島に押し入った時、特戦隊は故郷を守るのに忙しくなった。しばしば数と質で劣っていた特戦隊は勝ち目のないあまりに多くの交戦を戦った。彼らの損失はすさまじいもので、再建のため前線から外された。

 再建された後、第22特戦隊はカレドニアに送られ、ワード・オブ・ブレイクに占領されていたヘスペラスII襲撃の命令を待った。彼らにとっては不幸なことに、アポリオン司教はこの準備と惑星攻撃のことを聞き及んだ。ドミニ司教と第52シャドウ師団は宇宙での熾烈な戦闘の後に惑星降下し、防衛部隊の真上に大胆な戦闘降下を仕掛けた。これが特戦隊にとっての終わりになった。エリートのマネイドミニは慈悲を与えず、敵をひき裂いた。激しく短い戦闘で、特戦隊は消滅し、攻撃を生き残った兵士たちは一握りだった。部隊は解散し、すべての生存者は精神的な治療を受けている。

 現時点で、50%以下の損傷率のスカイア特戦隊部隊は存在せず、再建の途上にある。彼らが前線に戻るまでもう半年かかるかもしれない。




ドネガル防衛軍

 ドネガル防衛軍は他のシュタイナー部隊と違って国家主席への忠誠を示す。よって、連邦共和国内戦が始まった時、彼らは全員がキャサリン・シュタイナー=ダヴィオンの側に立って、大きな被害を出した。再建が終わる前に聖戦が始まり、ドネガル防衛軍は再び戦争のただ中にいた。

 第5ドネガル防衛軍にとって戦争は始まる前に終わってしまった。ニューアヴァロンに上陸するまでにすでに崩壊していたこの部隊は、ワード・オブ・ブレイクが最初の強襲をはじめた時には、10パーセント以下の戦闘能力に落ち込んでいた。数週間以内に、第5はほとんど一掃され、戦闘部隊して存在するのをやめていた。

 第2、第7ドネガル防衛軍は自由世界同盟への攻撃に加わり、短い成功の後で守勢に立たされた。打ちのめされ、痛めつけられた彼らはライラ領域に退却し、前進するFWLM部隊の大軍勢と、後にワード・オブ・ブレイクをくい止めようとした――どちらのケースもそれほどの幸運はなかった。

 マッカロン装甲機兵団がカシルに来たとき、第8ドネガル防衛軍はいまだそこにおり、ほぼ壊滅した。カシルが後にワード・オブ・ブレイクの強襲を受けた時、再建された――しかしいまだ戦力低下した――部隊は素早く立ちふさがり、多大な犠牲を支払った。彼らへの罰は短く残忍なものだった……ワードは全部隊を片づけるために戦術核兵器を投入したのである。

 再建の努力を払った後で、第7ドネガルはワード・オブ・ブレイクからコベントリを解放する攻撃で多大な成功を収めた。戦役はわずか四日で終わり、防衛軍はわずかな損害を被った。そのとき以来、彼らはワードによるさらなる攻撃を予測して、この世界を守っている。

 第2、第7防衛軍は、現時点で旅団に残された唯一の部隊であるが、アダム・シュタイナーは戦争が終わったらドネガル防衛軍を再建する計画を発表している。




アークトゥルス防衛軍

 アークトゥルス防衛軍は輝かしい歴史をほこり、ライラ共和国それ自体と同じくらい古いものである。アークトゥルスがライラ共和国の首都だった時に創設された防衛軍は、共和国が関わったほぼすべての主要戦役を戦った。

 聖戦はいくつかのアークトゥルス防衛軍部隊にとって成功とともに始まった。彼らのうちの一部、たとえば第15は自由世界同盟の世界を占領するのに忙しく、その一方で第25は優れた氏族兵器の餌食になり、撤退するか全滅するかという状況に陥った。聖戦の混乱の中で、防衛軍は同盟を守る作業に忙殺された。第11アークトゥルス防衛軍はワードが来たときいまだターカッドにおり、数年の戦闘で大半が消滅した。

 第20アークトゥルス防衛軍はターカッドを解放することになった攻勢に大きく関わった。この戦役は成功し、ターカッドは再び解放され、第20は休息と再生のためアトコンガに送られた。彼らにとっては不幸なことに、ワード・オブ・ブレイクは報復に乗り出し、彼らの後を追ってシャドウ師団を送ったのである。第50シャドウが退却した後で、第20はほぼ掃討され、75パーセント以上の装備が失われ、人員の半分が死んだのだった。アークトゥルス防衛軍の古参兵でも、サイバー強化されたマネイドミニにはかなわなかったのだ。

 新国家主席、アダム・シュタイナーはアークトゥルス防衛軍に多大な信頼を寄せ、ワード・オブ・ブレイクに占領された惑星の防衛を調べる素早い襲撃に彼らを使っている。ワード・オブ・ブレイク保護領に対する近年の攻勢で、アークトゥルス防衛軍はシュタイナー部隊が関わるすべての攻撃に加わっている。来るべき地球解放にもアークトゥルス防衛軍が関わるのはほぼ確実であろうが、それがいつになるのかはいまだ不明瞭である。




放浪ウルフ

 アークロイヤルに優れた防衛陣地を持つことから、この氏族軍はファルコン、ウルフ、ブレイク派との戦闘で追った損害を素早く修理することが出来た。戦闘とたゆまぬ訓練が彼らの腕を磨き続けた。放浪ウルフで最大の問題は団結心と目的意識である。14個星団分の兵士を持つウルフは、ファルコンと侵攻派ウルフにとって大きな脅威とはならない。しかしながら、彼らはアークロイヤル周辺の防衛を助けているので、どちらの氏族も無視することは出来ない。ケル氏族長は1個訓練星団隊を軍に加え、公式にアルファ銀河隊所属としたが、三連星隊に分割した。これにより、未熟な戦士たちがより熟練した戦友たちとともに戦闘に臨み、氏族の作戦行動の中心となったのみならず、部隊として活動し、腕を磨いたのである。これらの若き兵士たちは卒業して上級部隊に移るまで、二線級装備、あるいは中心領域装備すら使用する。

 アルファ銀河隊はいまだこの氏族戦闘部隊の中心である。最も経験を積んだ戦士たちと最高の装備を持っているが、氏族やブレイク派の脅威から中心領域を守るのに人員や装備を失うのをいとうことはない。ケル氏族長はいまだ氏族長としての任務を果たしながら、アルファの指揮を執り続けているが、ランナ・ケレンスキーが多大な力を貸している。ベータはアルファと同じ経験と能力を持つが、より予備部隊的な役割を負っている。ケレンスキー副氏族長が直々に指揮するこの銀河隊は、被った損害を埋めるために中心領域製マシンの使用を余儀なくされている。唯一の二線級銀河隊であるオメガを甘く見るべきではない。ウルフ氏族軍で最悪の装備であるオメガはいまだエリート戦士たちが所属し、領土に入ってきた間抜けな敵軍を切り刻むことが出来る。ウルフの宇宙戦力はアークロイヤルでブレイク派の攻撃を受けたが故に、〈ワーウルフ〉、〈フルムーン〉の二隻に減少している。










ゴーストベア氏族





ベアズクロウ: ドミニオンの主要軍事部隊


ゴーストベア氏族

 中心領域の氏族で最大の氏族軍のひとつを展開するゴーストベア氏族は、中心領域に移住したことのマイナス面を感じた……すぐさま損失を補填できるようなハードウェアを欠いているのが示されたのだ。

 ほとんどの氏族のように、ゴーストベア氏族軍はバトルメック中心になっている……もっとも、新しいオムニメックの着実な補給を欠いていることで打撃を受けているのだが。特にブレイク派のバトルメックを回収したがらないことから(ブレイク派と同等の狂信によって最後のリベットの一本にいたるまでが破壊される)、多くはニ線級の機体に交換されている。回収されたものは一般にラサルハグ王家軍かソラーマ部隊に回される……前線の兵士が使うには汚されすぎていると考えられているのだ。ワード・オブ・ブレイクとの戦闘での損害は上昇し、1ダース以上の世界をめぐるブレイク派への構成でほぼ2個銀河隊の兵士が完全に失われた。

 ゴーストベアは最も大量のバトルアーマーを使う氏族の一つであり、エレメンタルによる銀河隊を作りさえしている。ドラコ連合との伝統的な戦闘において、これらクロー星団隊群は立派に戦ったが、近年、熱狂的なブレイク派のマネイドミニ・サイボーグを相手に、クローは残忍な接近戦で敵と対等であることに気づいた。その結果、クロー星団隊群のうちは半分が消滅したのだった。

 ゴーストベア海軍の戦力は、ノヴァキャットとの報復の神判で大打撃を受けたが、アルシャイン造船所の勤勉な働きによって再び回復するのに成功している。3隻のリヴァイアサンII戦艦がゴーストベア海軍の中核をなす。各リヴァイアサンに航空宇宙戦力を配備するため、前線、ニ線級部隊が引きぬかれ、気圏戦闘機、降下船のみで構成されるヴァルキリー星団隊に再編されている。これまでのところ、ゴーストベア海軍は聖戦によって戦艦を失っておらず、聖戦の影響は最小限である。


王家軍

 王家軍はその創設以来、困難な時代を過ごしてきた。まずローニン戦争の際に試練を受けた彼らは続いてリバイバル作戦でボロボロにされた。痛めつけられ、戦力低下した6個連隊にまで減少し、ツカイードの停戦にのみ救われた王家軍は、再建に時間を要した。聖戦の到来により王家軍の一部は再び粉砕され、ゴーストベアドミニオンに急速に吸収された。

 3072年以来、王家軍のバトルメック部隊は、マルグレーテ・ミヌイット将軍とラグナー・マグヌッソン副氏族長の指導の下、ゆっくりと再編中である。王家軍を効率的にゴーストベア氏族軍に取り込むため、これらの部隊はまず大隊に分割され、それからそれぞれが星団隊に再組織される。新しい部隊名は、氏族侵攻の際に失われた王家軍部隊からとられる。これが達成されたら、単独での撃墜記録のない王家軍のメック戦士は、メック戦士の身分を維持するために氏族のテストの儀式を受けさせられる。この過程に対する憤慨は、3076年の後半、表立った反乱を引き起こし、ゴーストベア・ドミニオンは反乱に対処するため地元のラサルハグ部隊を派遣せねばならなくなった。残忍な戦いにおいて、第1ティール強襲星団隊は、兵を引くのを拒否した第2自由兵団を切り裂いた。それ以来、緊張は高いままであるが、第1ラサルハグ・ベアーズとギュンツブルク・イーグルスの存在が部隊を整列させている。

 王家軍部隊は伝統的にライラ、コムスター、ドラコ連合の機体が中心であるが、ゴーストベア・ドミニオンが自由ラサルハグ共和国を併合して以来、多数のニ線級氏族メックが見られる。この1年間、ワード・オブ・ブレイクとの戦いで回収を行ったことから、ブレイク派のマシンが増えている。氏族の戦士たちはこれらの使用を拒否しているからである。

 王家軍の装甲部隊はこれまでのところ星団隊に再編されておらず、通常の大隊、連隊の編成を保っている。同じく、気圏戦闘機軍も古い部隊の名称を使っている。例外はヴァルキリー星団隊のひとつに編入され、リバイアサンII級戦艦GBS〈ラサルハグ〉の儀仗兵を務めているエリートパイロットたちである。










ウルフ氏族


牙はどこから?

 侵攻以来最大の占領域を保持しているにも関わらず、ウルフ氏族は皮肉なことによかれと思った計画が裏目に出たために、大規模な生産能力を欠いているように見える。

 過去、彼らは見事に確立された貿易網と、本拠地からの物資流入を用い、さらには移動生産地で補うことによって、氏族の哲学である柔軟性、効率性、資源の有効的な利用に適合した、首尾一貫したきめ細かく調節された支援システムを得たのである。加えてこれは中心領域にある優れた氏族技術の工場を減らし、中心領域人の手に落ちるのを防いだ。

 歴史はウルフ氏族が間違っていたことを認めた。突然として本拠地世界からの輸送は止まり、中心領域は混乱に投げ込まれた。しばしの間、商人階級が他の中心領域氏族と契約することで急場をしのごうとしたが、聖戦が猛威をふるうに従い、それは不可能となっていった。戦闘マシンにつけられた値札は高騰し、恒星間の貿易は事実上停止した。そしてワード氏族長によるまったく友好的でない近隣国への態度は残ったリソースの大半をシャットアウトしたのである。

 これらの兆候があったにもかかわらず、氏族の上層部が下位階級人から示されたワーストケースのシナリオを受け入れるには時間がかかりすぎたのである。そのシナリオとは、ウルフ氏族軍の備蓄は3070年代半ばまでに底をつくというものだ。最初になくなるものはバトルメックになるであろう。

 行動が続いた。ヴラッド・ワード氏族長はついに、中心領域での氏族機生産の禁を解き、大規模な工業プログラムに着手した。作業員たちが占領域に集まり、既存の中心領域の工場を改装し、モスボールされた設備を稼働させた。彼らの努力にもかかわらず、ゴーストベア、ホースに対する損失、ブレイク派のタマラー攻撃は、大規模な工場地帯を作るという計画にさらなる打撃を与えた。

 このとき、ワード氏族長の経済プログラムがどれだけ有効かは不明だった――現在も不明である。これまでのところ、特定された大規模な生産施設はヴェンガルデン工場群と臨時の各移動生産拠点のみであり、ウルフ氏族軍のために氏族記述の交換部品と新型メック生産に向けられている。

 情報ソースの混乱を招いている主な理由は「W-7施設」という工場の名称である。ヴェンガルデンで作られた装備にのみつけられると長年思われていたこのマークは、サンコブラと新型のツンドラウルフに見られるものだった。両バトルメックは惑星外のタマラーとトゥーンで組み立てられている。さらに、氏族本拠地のトランキルにも「W-7施設」はあるのだ。

 従って、「W-7施設」はウルフ氏族のバトルメック工場全体の名称であり、現在、少なくとも三つの異なった生産施設が稼働していると考えるのが確実である。他の恐ろしい可能性――ひとつのW-7移動工場がみっつの惑星の間を移動し、現在の生産数を維持している――はなさそうである。

 いまだ不明なのは、ウルフ氏族がその生産品をいつ、どのように公開市場に出すかということである。(望まずとも)現在は中心領域の一部であることから、物資の交易なくして彼らが現在の地位と強さを保てることはまずなさそうにない。










ジェイドファルコン氏族





ブライアン・プライド BRIAN PRYDE

階級/地位:ローアマスター/ウォッチ長
生年月日:3037年(3076年時点で39歳)

 リスターとはいえないブライアンは、キャリアの中であらゆる機会や昇進のために戦ってきた。最初にマンノウォーでテストアウトした彼は、確実だが地味な戦士であった。彼が最初に注目を引きつけたのはブラッドライトの神判のときである。ここで彼は参加権を得るためにグランドメレーに入った。この中で彼は戦いと戦いの隙間に身を置き、たった1機の撃墜で神判に進出した。残りの神判も似たようなスタイルで通し、その極みと言えるのが、ゴートパスで天然ガスのパイプラインを爆発させ、敵のメックを蒸発させたことだった。彼はどうにかブラッドネームを勝ち取ったが、敬意を獲得することはできず、不名誉な任務から不名誉な任務へと回された。だが、彼はひとりの男に目を付けられたのだ――ケール・ペールシャー(ファルコンのローアマスター)である。

 他の指導者たちが、優れたパイロット、戦術家を探していた一方で、ペールシャーは氏族を生き残らせるためなら何でもする者(たとえそれが個人の名誉を犠牲にするのを意味していたとしても)を求めていたのである。ローアマスターはプライドを庇護下に置いた。表向きはローアマスターに仕えるためだったが、実際はローアマスターがプライドを後継者として見ていたのである。ペールシャーが辺境のどこかで死んだ後、プライドはローアマスターの地位を容易に勝ち取ったことから、氏族長はそれに同意していたようだ。

 プライドがペールシャーに取って代わって以来、ローアマスターとしての仕事の場以外で彼が見られることはほとんどない――彼と氏族がそう望んでいるように。舞台裏で活動する彼は、間違いなく敵の活動を監視し続け、民間階級を取り締まることで事実上ブレイク派の攻撃と破壊活動を抹殺したようだ。プライドは自身のスパイ技術を磨く一方、戦場で静かにしていることはなかった。ジュピターからアルファ銀河隊を指揮する彼は、見事なパイロットとなっている。休暇中、プライドはコーケン・プレジャーピットの残ったカジノで招かれざる客となっている。彼のダイス運はほとんど超人的である。





ダイアン・アヌ DIANE ANU

階級/地位:ギャラクシーコマンダー、エプシロン銀河隊
生年月日:3025年(3076年時点で51歳)

 戦士たちの多くは専門分野のすべてを知っていると主張するが、ダイアン・アヌほど徹底的に追求している者は少ない。戦士としての技量を磨き、戦術と戦略を学ぶだけでは満足しなかった彼女は、整備の基礎から、粉々になったエンジンをどう再建するかまでを学ぶことに時間を費やした。幅広い技術と、戦略家、パイロットとしての生来の才能を組み合わせた彼女は、すぐにスターコーネルに昇進したが、普通の氏族戦士よりも敵を作ることなくそれを達成した。彼女の技術的な芸当は、指揮下の第5戦闘星団隊に優位を与え、マシンを限界まで追い込み、武器を調整するのに貢献した一方で、アヌは強みを保ち続けるために他の技術を使うことを強いられたのだった。

 昇進してエプシロンを指揮した彼女は、アイスヘリオンの侵攻を押し戻すのに尽力した。ファルコンの伝統によって保守的であるにも関わらず、彼女は敵を出来るところから攻撃し、手を緩めないのが最上であると考えた。ヘリオンは機動戦を好んでいるのだが(あるいはそうだったから)、彼女の部隊はヘリオンを叩き、目的を達成し、それから前進した。ヘリオンはたいてい後退して、再結集したのだが、ファルコンがもうそこにいないのを見つけるだけだった。時折、ヘリオンはファルコンの側面、補給車列を攻撃することができたが、たいていの場合、ヘリオンの主力部隊は後退することとなり、他の部隊は孤立し無駄となった。ヴァンターの勝利後、彼女は銀河隊と海軍支援の残りを本拠地に戻して戦うことを求めた。プライド氏族長は退けたが、アヌはヘリオンは永遠に葬られるべきだとしてこの考えを静かに推し進めた。アヌという星はクリーズ氏族長の下でものぼり続けているが、本拠地に戻るのを許可されるほどに充分ではなかった。地球へ向かう新たな強襲のなかで、アヌは確かに最前線にいる。





クイン・ケレンスキー QUINN KERENSKY

階級/地位:ギャラクシーコマンダー、ガンマ銀河隊
生年月日:3048年(3076年時点で28歳)

 有望なウルフのシブコの病弱な子供、クインは階級の神判までをなんとか切り抜けた。階級の神判において、ラインバッカーを近距離まで移動させた彼女は、キックで敵のヴァルチャーの膝を破壊してから腕を引き抜き、次の敵であるマッドキャットに向かった。氏族らしくないやり方を注意されたのだが、格闘攻撃の使用は続いた(もっとも、批判の一部は戦った相手の負け惜しみだった)。彼女はブラッドライトの神判で後援されたが、その行動が原因で険しい道となり、準決勝で左目を失った……素手による格闘戦でエレメンタルにえぐり取られたのである。彼女はどうにか生き残ったが、あまりに多くの伝統主義者を怒らせ、よって彼女を求めるファルコンの所有の神判で低い入札の熱意がこもらぬ防衛がなされるのを見る羽目になったのだった。

 最初、ファルコンの上官は彼女の怒りを利用して、ウルフ氏族を襲撃させ、敵を動揺させた。プライド氏族長は彼女の攻撃目標を変えることが出来、よってコベントリでブレイク派の抵抗を砕くことが可能となった。比類なきパイロットにして優れた砲手であるクインは、自身が有能なリーダーであることもまた示している。部下たちは彼女に従い、メックのすべての部分を武器のように扱っているが、年老いた伝統主義者たちは「下品な中心領域人の格闘攻撃」と怒っている。クインは成功によって批判を黙らせるという、いつものケレンスキー流のやり方を通している。クリーズ氏族長がアミーリア・カラザに代えて彼女を昇進させたのはケレンスキーにとって挑戦になるだろう。気楽なコクピットから政治の場に引き出されることになったのだ。ケレンスキーは自身の遺伝子資産を獲得してファルコンのために使うことをいまだ切望しているが、戦場での機会を得るために政治の場で勝たなければならないことを理解している。





ジェイドファルコン占領域の企業


オリベッティ・ウェポンリー

 かつては共和国防衛産業の有望な企業であったオリベッティは、現在、ジェイドファルコン占領域の優良資産となっている。近代的な設備を高く評価したファルコンは、軽量級オムニメック、ファイアファルコンとブラックラナーを作り始めた。この工場からはローカストIIC、スピリット、ピニオンも出荷されている。本拠地までの補給線の長さと、本拠地の不安定さが重なって、軍の再建がさらに難しい任務となっていることから、オリベッティは元CEOダニエル(ファルコン商人階級)の下でさらに拡大した。最初に追加されたのはファルコンの伝統的な機種、ソアとロキであった。これら重メックは人気であったが、強襲級、中量級のところにいまだ埋めるべき穴が開いていた。ターキナは驚きでないが、旧式のブラックホークを作り始めるというダニエルの選択は、ダイアナ・プライドの人気と同じく、ファルコン氏族軍でのこの機種の有用性、あるいは氏族長が乗っていることに理由がありそうである。

 ファルコンは侵攻直後に奪取した惑星を信頼してなかったことから、ズデーテンに研究開発施設は作られていなかった。このことはブレイク派が攻撃を仕掛けたときに福音となった……彼らは主に科学者たちを狙ったからである。占領域内全域で施設の周囲は警戒厳重であるが、保管の甘いマイアマー筋繊維がスターコーネルを殺すまで労働者たちの保安は重要でなかった。それ以来、ダニエルと部下たちはオリベッティに追加のリソースを送り、安全性と生産性を高めた。一部の商人たちは、オリベッティを主オムニメック工場にしていることについて「すべての卵をひとつの巣に入れている」とダニエルを批判している。しかしながら、資源集約的な部品の生産には進んだ工場が必要で、その工場は氏族指導部からのおびただしい支援を持ってのみ建造が可能なのである。これはズデーテンをより能率的にするのみならず、同盟にとって良い目標としている。オリベッティ一族は生まれながらの権利のためにそれを推進している。


レッドデビル工業

 ファルコンのパンドラ占領は、レッドデビル工業にとって他の企業ほど良いものではなかった。近年、(ライラ)同盟によってアップグレードされた彼らのバトルマスター生産ラインはフル回転となり、第二線級部隊のメックを生産するためにほぼ24時間近い操業を行っている。労働者たちは疲労困憊の瀬戸際に立たされ、ストライキ、暴動、サボタージュが3070年代にレッドデビルを襲った。労働争議は当初、激しい対応を引き起こしたが、3071年に300人以上が虐殺された時に、ファルコンの指導部は譲歩し、労働者たちにいくらかの譲歩を与えた。

 工場と所在地を信用していなかったファルコンは施設をアップグレードせず、製品を第二線級部隊の強化に使っている。商人長ダニエルの新しい指導の下、そのほかのラインは機械が交換され、高性能なタイプのライフルマン、コンドル、センチピードが主に生産されている。この工場は小火器と間接砲を生産し続けているが、これらは主に市民軍部隊に配備されている。レッドデビルの第二線級装備は欠点であると思われるが、有用かもしれない資金をもたらしている。ファルコンは氏族の装備を中心領域に販売したりしないが、軍人と商人が貿易相手との合意に達せば、中心領域品質の装備を中心領域に売るのをためらったりはしない。このような合意には大々的な研究と討論を必要とするが、思考の範囲外というわけではないのである――特に近くのトワイクロスにいるダイアモンドシャークの支援が得られるので。


ジェイドファルコン移動生産拠点

 中心領域侵攻の最初の数波の後、ジェイドファルコンは前進する部隊に追いつく製造工場が必要だと気がついた。工場を建設するのは予想より簡単でなく、3060年代後半までそれを完成させることが出来なかった。停戦であったことから、イーグルクラフトグループと名付けられた工場はアイスヘリオンの侵攻までアイアンホールドに残され、占領域での戦闘を補佐するために移動した。ソア、ウラー、グリフィンIICを提供するイーグルクラフトグループは、固定型工場ほどの生産能力を持っていないが、その機動性により生産された物資を迅速に前線へと届けることが可能だった。

 ヘリオンの敗北の後、移動拠点は占領域内に分散した。これはオリベッティを失う危険性をどうにか相殺する一方で、輸送時間とコストを最小化した。移動工場のもうひとつの利点――そして工場の完成が遅れた第一の理由――は、異なった機種を作るために再編成するのが比較的容易なことである。ズデーテンに大規模なソアのラインがあることから、イーグルクラフトグループはソアの生産を減らし、ニッチを穴埋めするために生産を多角化した。これによって、氏族軍はいくらかの多様性を得続けることが可能となり、そのあいだ、オリベッティが標準的な機種を生産した。

 設営と解体に少なくとも一ヶ月を必要とするこの設備は、軍事の観点でなく工場という基準から見ると、驚くべき機動性を持つ。第二次産業が確立していたらこれらの施設はより早く、より効率的となる。よって、熟考の上、移動が決断される。工場の一覧を作ろうとしたが、未知の理由により、工場の多くは秘密の場所に移され、現時点でほとんどなにも生産されていない。これは定期的なシャッフルかもしれないが、なんらかの計画によるものかもしれず、もしかしたら新たな攻勢の可能性すらある。





ファルコンの鉤爪:主要軍事部隊

 占領域と本拠地の両方で受けた大打撃は、ファルコンを3個前線銀河隊、7個二線級銀河隊のみとした。本拠地にどの部隊が残っているかは要約できない。ファルコン最高司令部をのぞいては、だれにもわからないのである。サマンサ・クリーズがついにデルタ銀河隊から身を引いて、その一方で、アルファ銀河隊が名簿に加わった。上級士官は不足している……アイスヘリオンとの戦闘と、ブレイク派のヘッドハンティングで、数多くの戦士たちが本来の経歴と能力より早く昇進することとなり、近隣のホースやウルフと比べて氏族軍の指揮系統ははるかに若くなっている。

 クリーズ氏族長はターキナ親衛隊の指揮をとった。この部隊は、新しいメックとバトルアーマーを受け取り、ほぼ完全な戦力にある。彼女と一緒に何人か新顔が来たが、中核はマーサ指揮下の時と同じである。〈ライトニング・ストライク〉はサマーセットの激しい海戦に巻き込まれ、破壊された。イヴシラー強襲の際に、イージス級〈ジャニス・ヘイゼン〉がヘリオンの気圏戦闘機によって破壊された。コベントリの戦いで、イージス級〈レッド・タロン〉は航行不能となり、後に損害があまりに大きいことが判明して自沈処分となった。ファルコンはその補償として捕獲したブレイク派のニューグランス級ヤードシップを求めていたが、デヴリン・ストーンは後にこの船を別のところに配備した。

 アメリア・イザカとダイアナが死んだのに伴い、クイン・ケレンスキーが部隊を安定させるのを期待されてガンマ銀河隊の指揮を受け継いだ。二、三名の伝統主義者から昇進に反対されているケレンスキーは、連続した戦闘ですり減らされた部隊の再建が出来ることを示さねばならないだろう。デルタ銀河隊はブハーリン副氏族長の手に落ちた。彼は10年間近く部隊を運営してきた一方で、まだ再建できていない。この部隊はヘリオンとの戦闘で戦士の約半数を失ったのだ。

 前線銀河隊の地位を手に入れたエプシロン銀河隊は、ダイアナ・アヌが新たな戦士たちを選ぶときに、さらなる自主自立を獲得するだろう。クリーズ氏族長はすでに新型メック受け取りの順番をターキナ親衛隊、デルタ、エプシロンとしている。その一方、新しく作られたアルファ銀河隊は最低で、ソラーマ星団隊、PGCと同じ状態にあり、人員、物資が来る望みは薄い。その状況にもかかわらず、アルファはどの二線級銀河隊よりも忙しくなることが予想されている。

 真新しい指揮系統を持つ別の部隊がロー銀河隊だ。ドーカス・ヘルマーが、ヘリオンとの戦いで死んだリザベット・ダンフォースに取って代わった。この戦いで試された部隊はズデーテン防衛を任され、ブレイク派の襲撃をはねのけるという見事な仕事をやってのけた。イオタ銀河隊もまた新しい指導者の下についているが、ローのような栄光を受けていない。マー・ヘルマーは不名誉を被ったグラン・ニュークレイに取って代わったが、彼自身もアイスヘリオンに対するまずい戦いで不名誉を被っており、テンプル・クリーズが部隊の再生を任されている。

 カッパ銀河隊はよく戦っているが、前線部隊の穴を埋めるために士官の多くを連れて行かれてしまった。ラムダもまた鍛えられた戦士を引き抜かれたが、カッパと違って怒ってはいない。中心領域に着いたら前線部隊に格上げされるのではないかとも言われていたが、そうはならなかった。ウルフの攻撃から世界を守るのに失敗したことは、ジョエル・サストゥス(銀河隊指揮官)の未来を疑わしいものにしている。

 オメガ、ミューはヘリオン侵攻の初期に重い打撃を被り、回復は遅々としたものである。辺境国境線での戦いが終わると、両部隊はそこに再配備され、ほとんど偏執病的なまでなほどの警戒状態にある。次の侵攻はどのようなものであれ、壊滅的なものとなるだろう……両部隊は半分以下の戦力なのだ。

 ブレイクと海賊の襲撃を受け、ファルコンの指導部は伝統的な氏族軍を補う地元市民軍を承認した。限定的な規模のこれら部隊は襲撃をためらわせ、自然災害、人のもたらす災厄に対する援助を行うことを目的としている。武装は中心領域レベルの車両と小火器に制限される。メック、バトルアーマー、気圏戦闘機は許されない。暴動と抵抗が少ない世界だけがこれらの部隊の創設を許され、すべての志願者は長期間の素行調査を必要とされる。










ヘルズホース氏族





ジェームズ・コブ James Cobb

階級/地位:氏族長
生年月日:2999年(3076年時点で77歳)

 一見したところ、ヘルズホース氏族長は印象的な人物である。力強いコブのブラッドラインのエレメンタルである彼を見た者は、まず警戒するだろう。氏族長は最近滅多に笑うことがなく、(氏族人らしく)長年顔をしかめてきたことで、その表情が顔に刻まれている。

 しかしながら、ストレスは明白だ。3/4以上の人民を移動させた氏族長として、コブは苦心して同じことをした他の氏族の失敗から多くを学んだ。ゴーストベアと違って、ホースは本拠地世界から大量の装備と生産設備を移すことはできなかった。コブはその代わりにできるだけ多くの人民を移動することを選んだ。戦闘が終わったほんの数時間後、征服されたウルフの世界はホースの民間人で溢れることになった。これは移住の信じられないほどの緊急性を示している。だが、なぜ彼がこれほど急いで移動を行ったかは不明である。

 そのいかめしい外見にもかかわらず、コブ氏族長は物腰の柔らかい男である。彼が知的で機略に長けていることは、苦労して勝ち取った世界に入植するのに必要な途方もない計画によって示されている。コブ氏族長はこれまで何度か各部門の長たちと非公開の会合を持っている。近年、各階級からの意見が採用されたことからわかるように、彼は助言を重んじている。放浪ウルフ(氏族社会では放棄された氏族)とのつながりと一時的な同盟は、しきたりを厳格に守るよりも氏族のニーズに沿った行動が必要だという氏族長の知性の柔軟性を示している。

 しかしながら、この氏族長が平和的な魂の持ち主だと思う者は、コブが他の氏族戦士たちと同じように無慈悲であることを思い出すべきである。彼がアイスヘリオンを裏切ったこと――ここのところ、噂でなく事実であることがわかりつつある――は、彼がヘルズホースを守るためならなんでもやることを示している。それがたとえ都合の良い同盟相手を裏切ることになったとしてでもある。





ヘルズホース占領域の企業

スヴェーデンボリ重工業 Swedenborg Heavy Industries

 自由ラサルハグ同盟創設後、キルヒバッハにメック工場を作る計画を持っていたスヴェーデンボリ重工業は、新しい工場と他の共和国防衛産業に部品を供給するため弾薬兵器の工場を建設し、その間に残りの工場施設群を作った。ウルフ氏族は一部完成していたこの工場を奪取し、生産した部品をゴーストベアの電子部品と交換した。だが、ウルフはプロジェクトを完遂する資源を欠いており、この工場はキルヒバッハがヘルズホースの手に落ちる前に、最小限の氏族技術アップグレードを受けただけだった。

 ヘルズホースは共和国が始めたプロジェクトを再開し、既存の弾薬兵器のラインを拡大し、装甲、エンジン、電子装備、エネルギー兵器の工場を操業状態にした。これらの部品を使って、ホースは数機種の生産ラインを確立した――これにより、ターニャ・ドローレル副氏族長は素早く氏族の装甲部隊を定数に戻したのである。またこの施設は中心領域でのバトルアーマーの主要供給源となった。

 メックの生産まではまだ数年を要するが、この工場はプロトメックの限定生産を開始している。一般的になりつつあるこの戦闘ユニットの生産に必要な珍しい物資を生産するために、いくつかの軌道工場が作られ極低重力環境を提供した。

 エステルスンド近くの海岸に居を構えるこの工場群は、氏族スタイルの公共宿泊施設に囲まれている。労働力の大部分は氏族本拠地から来た科学者階級、労働者階級であるが、地元民が徐々に統合されつつある。テムチン・アミロのウォッチは、ホースのもっとも重要な生産地点のひとつをパルチザンの破壊活動から守るためにかなりの要員を置いている。これらの活動の頻度は減りつつあり、中心領域との関係を正常化しようというジェームズ・コブ氏族長の努力が実際の影響力を持ち始めていることを示唆している。



生産拠点#3 Manufacturing Site #3

 氏族による中心領域侵攻が始まったその時期、ゴートン・キングスレー・スロープ・エンタープライズゼス社のニューオスロ工場はサタライスに移転された。その後、ウルフ氏族がこの世界を奪い取り、自由ラサルハグの重要な生産施設を救う計画は失敗に終わった。ゴーストベアがサタライスを奪うと、ウルフは事実上、中心領域の飛び地領に兵器生産能力を欠くことになったのである。ニューオスロの空になった工場に戻ったヴラッド・ワード氏族長は生産拠点#3を創設した。ニ線級の中軽量バトルメックの生産に制限されていたのだが、この施設はウルフにとって極めて重要であった。自然、ウルフとヘルズホース氏族の間でニューオスロが重要な争いの種となり、ドローレル副氏族長はこの世界を奪うために最高の2個銀河隊を使った。ホースが本拠地から持ってきた機動工場が稼働するまで、拠点#3が新しい中心領域領土におけるバトルメックの主要供給源となった。彼らの管理の下、ホースは操業を拡大し、重量級バトルメックを生産できるようにした――新型のバリウスなどである。

 製造施設の限界に直面したホースは、数機種の中軽量級オムニメック――目立つのは旧式のノヴァ――を固定武装で生産するよう変更した(氏族製オムニメックとの違いから、シャークはこれをブラックホークと呼んだ)。オムニメックを生産するために拠点#3をアップグレード中であるが、最も楽観的な見積でも、設備交換は3077年半ばまでに完了する予定はない。

 この生産施設は、旧ゴートン・キングスレー・スロープ・エンタープライズゼスの工場跡地に作られている。機能の中心は、巨大な太陽炉の周辺に位置している。この建造物は、自由ラサルハグ共和国が移転するにはコストがかかりすぎると考えたものだ。巨大な鏡はラサルハグ兵の撤退で損傷を負ったが、拠点#3が作られたとき容易に修理された。






ヘルズホースの主要世界

スターズ・エンド(ノヴォ・クレシィディアス)
恒星型(再充填時間): K5V(206時間)
星系内の位置: 2番目
ジャンプポイントからの行程: 2.45日
惑星数: 0(環状小惑星帯)
地表の重力: 0.03以下(環状小惑星帯)、0.75(ノヴォ・クレシィディアス)
大気圧: 真空
赤道面の気温: -270.15度
海洋面積: 0パーセント(環状小惑星帯)、15パーセント(ノヴォ・クレシィディアス)
原始生命の種類: なし
再充填ステーション: なし
HPG等級: A(氏族)
人口: 5万5000人
社会・産業水準: A-B-D-C-F

 スターズエンドの小惑星帯(ベルト)は、直径約60光年の空白宙域の境界に近い星系内に位置する。ここはニューシレジア採鉱植民地で第一君主サイモン・キャメロンが暗殺されたの星系として有名である――この事件が最終的に第一星間連盟の解散と、血塗られた継承権戦争に結びついた。この星系は、再統合戦争後、復権した辺境世界共和国当主の迫害を避けるために逃げてきた難民が入植した。

 2世紀近く、彼らはランタンとゲルマニウムの豊富な埋蔵量を享受し、その間、ライラ共和国と辺境世界共和国はどちらがこの星系を支配するのか争った。星間連盟が崩壊したまさにそのとき、ベルトは枯渇するようになった。離れることができた者は、中心領域に逃げるか、辺境のさらに深くへと入った。この星系はライラ、連合国境で活動する海賊の避難地となった。スペアパーツ(特に航宙艦用)の供給が滞るようになると、ベルトの海賊たちは彼らの生活が、故障した装備を修理、交換する技術的知識に依存していると気づくようになった。ベルトパイレーツの頭たち7名はなにかに合意することが滅多になかったが、船を稼働状態に保ち続けることは共通の利益だと認識していた。従って、ベルトの渦巻く岩石は、航宙艦、降下船を製造し、修理できる腕前を持った技術者たちにとっての避難地となったのである。ベルトの内部に隠されているのは、航宙艦と部品の多数を製造できる能力を持ったゼロGドックとハンガーである。継承権戦争の時期、ドラコ連合とライラ共和国の双方がスターズエンドにある海賊の造船所のサービスを利用した。

 氏族侵攻の初期、ベルトパイレーツはウルフ氏族の前進する部隊と衝突した。一連の容易な勝利の後、海賊は脅威でないと軽んじたウルフはこの星系を通過し、豊かな中心領域へと向かった。これは失敗だったと判明した。侵攻氏族の手で痛めつけられた海賊と傭兵部隊の一部が加わったベルトパイレーツは復讐心とともに逆襲を行った。氏族占領域に駐屯している部隊を脅かすだけの戦力はなかったのだが、彼らの襲撃はいらだつようなもので、氏族の戦士たちのプライドはそう長くこれを許容しなかったのである。ウルフ氏族のウルリック・ケレンスキー氏族長(氏族全体の大氏族長)は、この問題に対処するため数個ゾラーマ星団隊を派遣した。これによりベルトパイレーツは一時的に活動を縮小させたが、その一方で、ウルフはベルトの中に入り込み、海賊を根絶するのには失敗したのである。その後、モーガン・フレッチャー2世とスージー・モーグレイン=ライアンの同盟によって作られた可能性のあるニューベルトパイレーツに対処するため、ヴラッド・ワード氏族長は1個銀河隊全体を送り込んだ。またもウルフは隠された基地を根絶するのに失敗したが、海賊が被った大きな損害は、フレッチャーとモーグレイン=ライアンの間に生まれた溝は決定的なものとなったのである。

 ヘルズホース氏族とアイスヘリオン氏族の戦闘の間、ニューベルトパイレーツは再び攻撃を行った。このとき、ホースは注意をヘリオンとウルフに向けていたが、ニューベルトパイレーツのことを忘れたわけではなかった。小惑星帯の奥に隠された稼働する造船所からの噂によると、3074年の前半、ジェームズ・コブはこの問題を永遠に終わらせるため、ベータ銀河隊を派遣した。過去、海賊たちは入念に設置された防衛用機雷と隠し砲台に頼り、これらの防衛装置は戦闘機と降下船に対し繰り返しその価値を証明した。しかし、氏族のエレメンタルとバトルアーマーに対してはそれほど有効ではなかったのである。圧力にさらされたスージー・モーグレイン=ライアンはこの瞬間、逃亡することを選び、ベルトの防衛を決定的に弱体化させた。

 突如としてベルトの防衛が崩壊すると、ヘルズホース兵は大挙して流入し、貴重な造船施設を損害無しで確保することができた。原始的で限られた能力しかないのだが、本拠地から切り離されたこの氏族にとって、これらの造船施設は絶対的に重要なものだったのだ。





怒れる騎手たち

 中心領域でのバトルメック生産能力を拡大するというホースの試みは一連の被害で妨げられており、戦闘で失われた分をかろうじて補うことができる程度である。中心領域に入る戦役に備え、ジェームズ・コブ氏族長は、重要な戦争物資と輸送能力を確保するため、ダイアモンドシャーク、スノウレイヴン、スターアダーと取り引きした。トカーシャ・メックワークス・アルファは既存の部隊を再武装し、新しい数個銀河隊を立ち上げて、ホース氏族軍を強化する計画に不可欠だった。アルファ、ベータ、デルタ、シータ、そして新カッパ銀河隊は中心領域に移動し、本拠地の保護領を守るため、エプシロン、ゼータ銀河隊がイータ、イオタ銀河隊に加わった。

 反感が高まるウルフとの激しい戦い、ジェイドファルコンとの衝突、対アイスヘリオン戦役で、中心領域に回された兵士たちの技量は高まったが、戦闘での損失はホース前線星団隊の戦力を弱体化させた。光明の一つはオメガ銀河隊の創設である。捕らえられたウルフの戦士たち(守護派であることから辺境の二線級任務に追いやられていた)を中心に作られたこの新銀河隊はロドリゴで良い戦果を残し、2個星団隊分の捕らえられたアイスヘリオンの戦士たちでさらに強化されている。

 本拠地世界にいた銀河隊はさらに悪い状態にある。エプシロン、ゼータは中心領域に逃げる下層階級の輸送船を守るため後衛任務を戦い、逃れることは難しかった。イータ、イオタ銀河隊の損害はあまりに大きかったために解散され、生存者たちは他の打撃を受けた星団隊を強化するために異動となった。

 これらの結果、ヘルズホース氏族軍の構成はいくらか変更となった。損害により、ホースは星団隊の平均戦力を引き下げねばならなくなり、多くが三連星隊の変わりに二連星隊を展開してる。減少した火力を補うために、ドローレル副氏族長は、追加のバトルアーマー、プロトメック、装甲車星隊で星団隊を強化しはじめている。メックよりも短期間、低価格で作れるこれらの代替装備は、ヘルズホースが持つ限られた生産能力を最大限に発揮させている。

 だが、装備の損失は、歴戦の戦士たちの損失に比べたら取り戻しやすいものである。中心領域への移住という激変は、ホースから有望なシブコの多くを奪い取った。最初の中心領域生まれのシブコは3090年に卒業する予定で、本拠地からの性急な出発により、中心領域に移住した最初のシブコとの間には5年分のギャップがある。このギャップを埋めるため、また氏族と中心領域社会の統合を深めるため、ホースは中心領域の人民のうち有望なものを戦車兵、歩兵とする限定的なプログラムをはじめている。

 本拠地世界からの最後の退却で、ヘルズホースの降下船と航宙艦の多くが犠牲になった。加えて、〈スレイプニール〉、〈マウント・オリンパス〉、〈ゴールデン・クライスデール〉、〈ゴールドナイト〉も失われている。〈パックハンター〉をアイスヘリオンから捕獲したことはいくらかの補填となった。この船は修理と重要な造船所の防衛増強のためにスターズ・エンドに送られた。

 ヘルズホースの航空宇宙戦力が強かったことはなく、地上軍の脇役であり続けている。この状況における良い点は、装備が不足しているホースが航空兵の遺伝子タイプを拡大しつつあるプロトメック部隊に送り込めるということだ。ホースはまた商船が致命的に欠けており、この穴を埋めるためにスノウレイヴンと数個小艦隊分の航宙艦を取り引きした。残念ながらこの取り引きで、多量の鉱物資源と生産物資が失われたのである。










ダイアモンドシャーク氏族





ダイアモンドシャーク領の企業


トレルシェア重工業

 かつては景気の良かったバトルメック工場、トワイクロスのトレルシェア重工業(THI)は、31世紀に数度の浮き沈みを体験した。3012年にこの会社が金融不祥事に見舞われると、厳しい制裁が科され、長年、生産はストップした。しかしながら、氏族侵攻までには、BLR-1Gバトルマスター、STK-3Fストーカー、RFL-3Nライフルマンのような機種を再び出荷していたのである。

 侵攻の際にTHIの施設が破壊されると、ジェイドファルコンはこの惑星を無価値と判断し、占領域の首都ズデーテンのような他の世界の工場に目を向けた。

 だが、ダイアモンドシャークがこの世界を奪うと、彼らはすぐに古い施設を再始動し、新しい機種と古い機種の両方を生み出しはじめた。一機目は再設計されたフェニックスホークIICで、その後すぐにいわゆるクランミディアムバトルアーマーやそのほかのバトルメックが続いた。

 トワイクロスにあるトレルシェアの製造施設は、ダイアモンドシャークの産業基盤で最も重要なもののひとつとなった。過去5年で輸出は増大し、その大半はバトルメック製造施設を失ってしまったウルフ氏族に向けられた。ここ3年で新しい生産ラインが開かれ、噂によると新型クリムゾンホークのラインが含まれているという。

 イタビアナとトロントハイムの工場の多くが氏族技術を生産するなか、THIは中心領域装備を生産する最大の場となり、従って大王家向けに販売される物資の主要供給元となっている。輸送商船団がほぼ絶え間なく惑星を行き来し、工場の操業はノンストップとなっている。

 中心領域のバトルメックと氏族改修機に加え、トレルシェアはシャークで最大のバトルアーマー生産数を誇る。ハージェルにそっくりな有機化合物がヨナリーチにあることで、トワイクロスは理想的な生産地になっているのだ。


シャーク移動生産拠点

 中心領域の他氏族と同じように、ダイアモンドシャークは占領地に設置できるいくつかの移動生産工場を持ってきている。だが、他氏族とちがって、シャークは少なくとも戦艦の一隻を、真の移動工場にしたようだ。

 惑星上にある最大の移動生産拠点は、イタビアナのインダストリプレックスCである。これはシャークの主要オムニメック生産地点で、バトルアーマーの生産もかなりのものがある。ここで最初に生産されたのは、クランミディアムバトルアーマーで、シャークがイタビアナを得る取引の一環としてノヴァキャットから受け取ったものである。

 インダストリプレックスCはまたシャークの主要研究開発施設としても機能している。恒星連邦のロータリーオートキャノンをコピーするという科学者長ジュディー・ブランドの努力が成功したことを、スターコープスの工作員は確認した。この兵器は各シャーク部隊に出荷されはじめた。

 だが、ダイアモンドシャークの最も革新的なプロジェクトは、完全なバトルメックを戦艦の上に設置したことである。3070年以前に、彼らは小規模な工場を数隻に載せていたが、これらの実験の到達点は、当時の副氏族長アンガス・ラボフと商人長ロレンツォによるプロジェクトであった。ポチョムキン級〈ポセイドン〉のカーゴベイいくつかを排除し、内部を改装した彼らは、真の移動バトルメック生産拠点を作り上げた。工場を動かす労働者と商人の家を造るために、〈ポセイドン〉にミュール級数隻を永久に取り付けることが必要になった。現在、〈ポセイドン〉は、大規模な商船艦隊の中核をなし、ソリティア、ウォーハンマーIICなどのバトルメック数機種を生産している。

 このプロジェクトの成功で、シャークは戦艦工場を増やすことが予想されるが、これまでのところ確認されていない。










スノウレイヴン氏族/外世界同盟





レイヴンの刃: レイヴンと外世界軍の主要部隊


スノウレイヴン氏族軍

 マッケナ氏族長とスノウレイヴン指揮海軍星隊(アルベルト・クロウ副氏族長指揮下)の存在によって、現在、外世界同盟が事実上スノウレイヴン氏族軍の本拠地になっていることは一般に受け入れられるようになっている。しかしながら、氏族にとって外部に見せている姿が真実であることがめったにないのは覚えておく価値があるだろう。

 外世界同盟にいるスノウレイヴン艦隊の数量は思案すべきことのひとつである。ラモーラの宇宙ドックでスウィフトウィング海軍星隊が破壊され、ストームクロウ海軍星隊がゲイルダン事件で失われた後でも、およそ20隻のスノウレイヴン氏族戦艦が観測されており(船を頻繁かつランダムに入れ替えていると思われることから、その実数は不明である。正確な評価を妨げるための措置であることは疑いようもない)、そのうち2個海軍星隊がゴーストベア氏族に貸し出されている。過去の概算では、スノウレイヴン海軍は40隻から45隻であるとされていた。これら最小限のデータから推測される限り、現在、スノウレイヴン艦隊の半分が外世界同盟国境内にいるとみられる。これは同盟関係を発展させるという氏族の約束を示すジェスチャーなのかもしれない。もしくは――外世界同盟内の諸派閥が言うところでは――外世界同盟がのぞむより早く連合をまとめるために武力を見せているのだという。三番目の可能性、地元のアナリストが考えていないものは、外世界宙域が他のところで行われているスノウレイヴン戦役の退却地点になっているということだ。

 スノウレイヴンの艦船のうち5隻がポチョムキン――そのうち1隻は民間人を満載して到着したと伝えられる――で、かなりの輸送力を持っていることは重要かもしれない。特筆すべきは、コンカラー級空母/巡洋艦一番艦の〈コンカラー〉と、堂々たるソヴィエトスキー・ソユーズ〈ストームクロウ〉(かろうじてまだ機能しているキャトル・ベル造船所での修理・改修を終えたばかり)であるが、他は未確認のままである。艦隊の残りは、2隻のイージス級重巡洋艦をのぞいて、護衛と襲撃任務に向いた高速で重装甲の駆逐艦とコルベットからなる。

 彼らがまだ手の内をすべて見せていない――あるいはなにも存在しない――という最も有力な証拠は地上軍と気圏戦闘機軍である。氏族の戦力の見積りを福音とみなすのは賢明ではないが、最も信頼できる諜報によるとスノウレイヴン氏族軍はメック/諸兵科連合、気圏戦闘機の22個から26個星団隊であるとされる。[編集注:星団隊の編成は、おそろしく曖昧で流動的である]。これらのうち、13個(もしくは約半数)が外世界宙域で目撃されており、そのうち4個――第6、第7レイヴン正規隊、第5レイヴン予備隊――が、戦力低下しており、とても作戦可能とは言うことができない。第5ウィング星団隊の2個三連星隊は、スウィフトウィング海軍星隊とともにラモーラ上空で破壊された。一方、残った2個がダンテとキャトル・ベルのスノウレイヴン要塞を守っている。第4、第9ウィング星団隊の分隊がかなりの数、同盟中に展開しているのが目撃されており、完全な戦力に近いのを示している。

 他に、確実に識別されており、戦力充足率が完全に近いのは、第1レイヴンファランクス、第9、第97レイヴン打撃星団隊、第5レイヴン急襲星団隊、第100戦闘星団隊、第3レイヴン予備隊、第12守備星団隊である。

 よって、スノウレイヴン氏族軍の半分が外世界同盟にいることは、氏族と国家が作った連合への密接な参加を表している一方で、軍事力の少なくとも半分(それに技術、経済の不明な分量)がどこにいるか説明されていないことを忘れるべきではない。


同盟軍部隊

 外世界同盟の軍隊は、国家と同じくらい速やかに発展したりはしなかった。同盟軍部(AMC)は、元々、海賊の襲撃から所属世界を守るために作られており――非暴力と個人の自由という原則に基づく文化であるがゆえに――予算は最小限に抑えられている。AMCの士官たちは、非軍事的な役職である監督員、班長、局長、議長につく――それぞれ伝統的な軍隊でいうところの中尉から大佐にあたる。将軍はいない……軍事評価委員会がすべての命令を決定するのである。彼らは従軍章などの伝統的な軍の勲章を帯びず、命を投げ出したことに対して(通常は死後に)叙勲するのみである。AMCが滅多に近隣の尊敬を集めなかったのは、驚くべきことではない。

 同盟地上防衛軍(AGDA)に関していうと、これは特にあてはまる。AGDAの支援は、物理的な攻撃力を軽蔑するこの国を反映している。個々の兵士たちは装備一式を支給されるが、補給部が近隣国家から放出品を購入するという習慣から、それら物資の品質は予想できないものである。中心領域人にとって想像しにくいのは、この軽視がメック戦士にまで及んでいることである。バトルメックのパイロットは、落第した気圏戦闘機パイロット候補生であると一般に思われており――たいていは事実である。よって彼らは、もっと上手くやれなかった二流の人間に過ぎないと考えられている。

 軍隊が目標を奪い保持することではなく、襲撃者を追い出すことを念頭に置いていることから、地上軍は国家の経済を不必要に衰退させるものだとみなされている。AGDA士官向けの正式な軍士官学校は存在しない――組織と管理に関する教育は、市民軍訓練キャンプでの通常兵士訓練に付け加えられている。

 約20年前、モーリス・アヴェラー上級議長はAGDAを真の軍隊にするプログラムを開始した。しかし、現在の熟練度と準備状況は、ダンテのブレイク派――それとスノウレイヴン氏族からの少しの助けによる仕事である。テロリストの残虐さに衝撃を受けた同盟地上軍は、勇敢さと教えられていない凶暴さによって逆襲を行い、これが敵を立ちすくませ、同盟相手に強い印象を与えた。ラモーラとダンテの戦役で密接に連携したスノウレイヴンは、戦略的、戦術的に重要な指導を行った。今日、AGDAの訓練キャンプは、軍事活動のあらゆる段階において実践的な教えを提供している。補給部は経済性よりも品質と有効性に基づく購入の決定を行っている。この再武装プロセスはゆっくりとであるが、10年以内に、AGDAはこの地域の軍隊に肩を並べることになるだろう。

 AGDAと違って、同盟航空宇宙軍(AAA)は常に外世界同盟のエリートとして尊敬されていた。諸世界の守り手を自負するAAAのパイロットたちは数に勝る敵を打ち勝つことが可能である――頻繁にそうしてきた。AAAの優秀さに関する数々の統計と戦闘記録が存在する一方で、以下のことにまさる証明はない……氏族航空宇宙船の達人を自称するスノウレイヴンの戦士階級が、AAAのパイロットたちに敬意を払わなかったことはないのである。

 内部ではダンテのテロリスト、外部ではドラコ軍と連邦軍に痛めつけられたAMCは急速に再建中である。あるいは、再建は良いことかもしれない……なぜなら、実戦で鍛えられ、民衆からのかつてない支持を受けたこの新しい軍隊は、同盟の歴史上、最もタフで最もプロフェッショナルになっているからだ。4個航空大隊(伝統的な連隊に相当する)に組織されるAMCは、およそ176機の戦闘機と8個諸兵科連合大隊を持ち、ここには54機のバトルメックが含まれる。外世界同盟の平等主義を守るために、これらの戦力は4個大隊に平等に分配されている。[編集注:これは正確なのだろうか? 歴史的にメック軽視の同盟でも少なすぎるようにみえる!]










カノープス統一政体

 カノープス人は苦しみを知っている。たとえば、サービス産業と鉱業を中心にする彼らが第一星間連盟加入を拒否したとき、反応は生やさしいものではなかった。カノープス人は出来る限り戦ったのだが、SLDFがカノープスの貧弱な軍隊をひき裂くのは難しいことではなかったのである。カノープス人は侵略者にとって占領のコストを高いものとしたが、このような戦術は遅延作戦として機能するのみである。もし助けが来ないのなら、遅延作戦は避けられないものの到来をわずかに遅らせることだけを意味するのである。カノープス人を救う者は現れず、よって統一政体は星間連盟に最小限の貢献をした。彼らの国庫のために利益を生んだのである。

 だが、最終的に、独立運動が辺境中に広まったとき、カノープス人は望まぬ拘束から解き放たれようと、独立をかけて戦った。アマリスの支援を受けたカノープスは最初に星間連盟を拒んだ時より遙かに優れた戦闘部隊を所有していた。それにも関わらず、彼らにはケレンスキー軍に立ち向かえる力はなかったのである。カノープス人は長く激しく戦ったが、彼らはついには同じ結果をたどった。死、破壊、事実上の奴隷化である。だが、この時には、予期せぬ救援がやってきた。



断固たる前進

 地球帝国の陥落後、継承武王たちは互いの監視に明け暮れることとなり、帝国の死体をついばんだ。カノープスは回復し、歩みをはじめたが、注意散漫となった敵たちはカノープスの無防備な世界を容易な目標として見るだけだった。統一政体は2813年に大連邦国との短く無意味な戦いを持ったのみで、第一次継承権戦争の恐怖を逃れえた。しかしながら、統一政体が依存していたハイテク工場の多くが中心領域にあり、よって核攻撃を受けてクレーターと化し、統一政体にとって重要だった水処理装置、テラフォーミング装備、航宙艦が失われたのである。そして、海賊たちが統一政体の工場を略奪しはじめた。

 二世紀後、カノープスは中心領域との同盟によって状況を改善しようとした。アンドゥリエン公国との合併の試みが無惨な失敗に終わった後、彼らはタウラスとカペラという望ましい同盟相手を見つけた。協調した他二国家はダヴィオンの侵攻から互いを守ることが出来、その一方で、統一政体は貿易と支援のパイプとして使われることになった。これは統一政体に利益をもたらした……他の二国は生産基盤を拡大する手助けをし、増大する旅行者が成長するこの国に資金をもたらした。すべてが上手くいっていた……聖戦が勃発するまでは。

 ブレイクの強襲に対する備えがなく、優れた部隊の多くが大連邦国を守っていた中で、カノープス人はまたも苦しみを感じることになったのである。長官と軍上層部は逮捕された。首都が征服され、中核の世界が占領され、後継者は外国で攻撃に晒された――すべては前例のない混乱をもたらしたのである。再建が重くのしかかり、同盟国が同程度かさらにひどい打撃を受ける中で、統一政体は自分で苦境を脱せねばならなかった。



流血と盲目

 ブラックアウトの原因をたどれる者はいないが、それはカノープスから始まり、すぐに他の中核世界に広がっていった。メッセージは航宙艦によって送られたが、この小国家には航宙艦をメッセージ輸送船として使うだけのリソースがなかった。その後すぐブレイク派はカノープス自体を奇襲した。パイレーツポイントを使った第34師団はジストルダウンフィールド宇宙港の近くに上陸した。気圏戦闘機が上空で戦闘する下、第34師団はクリムゾンに進んでいった。レイヴンサー・アイアンハンズが侵略者を迎撃し、クリムゾンの周辺で迎え撃った。そこには掩蔽壕があり、数で劣る防衛隊を支援できた。アイアンハンドは第34を短時間とどめるのに成功し、メックと戦闘車両は敵と互角に戦ったが、レイヴンサー歩兵護衛隊は1/3が宮殿でVIPを守っていたために、ブレイク派の歩兵に完敗した。

 戦闘と血の海に沈んだアイアンハンドは離脱することができなかった。数名の脱出したメック戦士のみが、死と捕虜を逃れることができたのである。ブレイク派はそれからクリムゾンの宮殿に進み、全域を閉鎖した。惑星を確保したと信じ込んだ第34は一部を周辺世界に派遣し、残りがカノープスの工業地区に回された。不気味な静けさがカノープスを包んだ……そして数ヶ月後にゲリラ攻撃が始まった。一部は車両から降りた歩兵と兵士たちを狙い、第1胸甲機兵隊は装甲化された目標に向かった。

 抵抗活動が熟達したリーダーシップの下にあるのは明らかだったので、ブレイク派の高官たちは奪取した最高司令部の人員を尋問しようとしたが、彼らが行方不明になっているのを発見するに終わった。第34が窮地に陥ると、第41シャドウ師団が3071年4月、状況を改善するために派遣された。到着すると、彼らは最高司令部の幕僚たちを隠れ家から追い出すべくクリムゾンに火を放った。それには失敗したが、少なくとも数名を殺すのには成功した。死亡者の中にはカノープス総帥が含まれていたのである。そして、抵抗運動は組織されてないものとなり、ブレイク派の目に作戦は成功したと映った。残った胸甲機兵隊を捕まえた後、彼らは惑星を離れ、第34によるメグレス、ロイヤルフォックス、アドハールウィン、ボーガンズリフト、ファナーディール、ガリス、アーリードーン征服を支援した。また他の主要世界を襲撃し、部隊をベースとリンデンマールに釘付けとした。

 クリムゾンが攻撃を受けたという一報がラミリー奇襲部隊の耳に届き、彼らはカノープス強襲に着手した。第34師団の一部とウリエル・ブラインディングファイア(第41シャドウ師団)のレベルIIIと交戦した奇襲部隊は崩壊し、わずかに数個小隊のみが虐殺を逃れ反乱軍に加わった。だがこの攻撃は捕らわれた指揮スタッフを逃がし、ブレイク軍に打撃を与えていたのである。



追跡

 統一政体の中核をしっかりと手にした第41は、自由世界同盟内のアスプロピルゴスにある基地へと後退し、そのあいだ第34は兵士の一部をデトロイトに派遣した。両者は予期せぬ驚きに見舞われることとなる。デトロイトの防衛軍は容易に陣地から釣り出されず、ブレイク派が都市を破壊するのを見守った。その後、カノープス、カペラ兵が到着し、ブレイクを追い出した。しかしながら、これは第41を襲うことになったものとは比べものにならなかった。

 第41師団はアスプロピルゴスの安全な隠れ家で統一政体の長い戦役からの再建を行っていた。彼らは気づかなかったが、MIM(カノープス統一政体情報部)がシャドウ師団の追跡に成功し、ナオミ・セントレラに彼らの所在を伝えていたのである。第2マッカロン装甲機兵団、イジョーリ家、第1カノープス軽機兵隊、第2胸甲機兵隊からなる連合部隊が結成され、アスプロピルゴスに向かった。その一方、エボン・マジェストレイト(漆黒の執行者、カノープス特殊部隊)がこの世界に浸透し、ブレイク防衛軍に関する情報を集めた。

 7月11日に同盟軍は惑星上に降下した。攻撃側は第41の基地に前進し、ウリエルの諸兵科連合部隊が彼らを待ちかまえた。攻撃側は停止し、ブレイク派と長距離射撃を交わした。歩兵で有利なことを活かしたかったウリエルは部隊を進めた。マネイ・ドミニ歩兵が戦いに加わったそのとき、エボン・マジェストレイトが姿を現し、敵との交戦を開始した。サイバー兵士がサイバー兵士と戦う状況が生まれたのである。カペラの触媒弾頭の力を借り、エボン・マジェストレイトの大半を犠牲にして、第41の歩兵はほぼ一掃された。ウリエルは残った部隊とともに退却し、自分たちの基地を燃料気化爆弾で吹き飛ばし、イジョーリ家と胸甲機兵隊に大打撃を与えた。軽機兵隊と第2マッカロンはウリエルを追跡し、戦果を残したが、再補給のために他部隊とともに大連邦国に戻らねばならなかった。



不安定な足場

 援軍を遮断したサン=ツーは3075年にもうひとつのタスクフォースを組み、ブレイク派の統一政体に対する脅威を永遠に終わらせることにした。大連邦国の主なカノープス部隊と支援するカペラ部隊(紅色槍機兵隊含む)からなる彼らはナオミに従い、アンドゥリエン公国を通ってカノープスに向かった。ファナーディールでエボン・マジェストレイト率いる地元のタスクフォースと合流した彼らはカノープスへと前進した。食糧不足だった第34では統合された部隊にはかなわなかった。短い抵抗の後、ブレイク派は他の占領したカノープスの惑星にいる部隊と合流するために退却した。

 民衆は政府を支持し続けているが、その多くが損失に痛みを感じている。攻撃的な性格でないカノープス人は元の生活に戻ることを望んでいるだけである……おそらくは以前よりは少し安全な生活を。他国への侵略、大帝国の建設に興味を持たない統一政体の人々は、ただ人生を楽しみたいだけなのだ。もし、ただ一つ彼らが変更を望んでいるとしたら、それはどう見られているかである。彼らは個人の自由と楽しみについて徹底的にリベラルな視点を持っているが、その多くが毎晩娼館で過ごすよりも、週に45時間働き、家族の元に帰るのを好むのである。










コムスター





エリーゼ・マクタガート Elise MacTaggart

階級/地位:ROM司教
生年月日:3033年(3076年時点で43歳)

 3052年のコムガードによる氏族に対する英雄的な戦いに触発され、コムスターに入信したマクタガートは、コムガードに配属されなかったことに失望した。しかし、彼女の機転の良さと鋭い分析眼は、ROMの長であるヴィクトリア・パードゥの注意を引いたのである。情報分析官として働いたエリーゼは、コムガードの一員として戦えなくても、少なくとも彼らを助けることは出来るという事実によって、いくらか慰められた。

 ワード・オブ・ブレイクが地球を奪取した時、エリーゼは敵の工作員の手をかろうじて逃れ、重要な情報アーカイブを持ちだすのに成功した。その後、彼女はブルドッグ、サーペント作戦の計画段階において、フォヒト軍司教、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンの近くで働いた。

 エリーゼ・マクタガートには、コムスターの崩壊した情報部門を拾い集めるという困難な仕事が与えられた。ROMは(ブレイクとの)分派以来、痛みを負っていた。コムスターのブレイク信奉者で最も狂信的な者たちを抱えていたこの組織は、ワード・オブ・ブレイクへの離脱で最も打撃を受けた部門となったのである。さらにひどいことに、ワード・オブ・ブレイク・シンパの多くが組織内に残り、コムスターに害なしていた。最も悪名高いのは、防諜部門の長、ミッチェル・エリンガムだろう。影の槍機兵隊を地球に浸透させ、ブレイク派が地球を占領できるようにしたのは、誰ならぬエリンガムだったのである。さらにエリンガムの裏切りは、ヴィクトリア・パードゥ彼女自身がブレイクシンパであるという事実を隠していた。パードゥによる偽情報が、ケースホワイトにおけるコムガードの災害的な損失に関わっているのは間違いない。

 上司の正体が判明すると、マクタガートは戦慄した。そして、パードゥが彼女を抜擢したのは、その実力からでなく、コムスターの有効性を殺ぐためではないかとの疑いに苦しんでいる。だが、マクタガートは鋼鉄の意志とブレイク派のすべてへの憎しみによって、職務を遂行している。





アラン・ベレシック Alain Beresick

階級/地位:海軍司教
生年月日:3011年(3076年時点で65歳)

 ドラコ連合に生まれたアランは宇宙への愛に目覚め、海軍でのキャリアを目指すべくコムスターに入信した。彼はすぐに昇進し、3047年、航宙艦〈ダイレクト・コミュニケーション〉の船長となった。氏族侵攻の際、アランは辛抱強く船員たちを働かせ、アナスタシウス・フォヒトの注意を引いた。3053年、ベレシックはコムスターの秘密基地、ルイテン68-28基地に異動となり、いつもの能率をもってして、〈インビジブル・トゥルース〉を〈スター・ソード〉の部品で共食い整備するのを監督した。

 この再生されたキャメロン級巡洋艦の指揮官に任命されたベレシックと、その船員たちは、3058年にもう一度テストされることとなった。ワード・オブ・ブレイクが地球を強襲した際に、コムスターの戦艦を忙しくさせるため、エセックス級駆逐艦WoBS〈デリバランス〉を派遣したのだ。アランと船員たちは攻撃を撃退し、この200年の海戦で勝利した数少ない中心領域人の一人となったのだ。

 再編された星間連盟がタスクフォース・サーペントの海軍部隊を組織した時、アランはリストのトップにおり、彼の任命は幸運なものとなった。技術的に優れていたにもかかわらず、氏族の戦艦を使った実戦経験はベレシック指揮下の艦隊と直面した時に悲惨なほど不十分であると判明した。氏族本拠地から戻ったアラン・ベレシックが中心領域で最も偉大な海軍指揮官であることに異論はなかった――よって、海軍司教の座についたのは必然だったのである。

 3067年、〈インビジブル・トゥルース〉に乗ってターカッドを脱したベレシックと軍司教はブレイク派の追跡を交わし、よってケースホワイトに参加できるタイミングで地球に達することはできなかったのである。最高の指揮官を欠いていたコムガード艦隊は、続いて起きた戦闘で失敗したのだった。





ガーレン・コックス Galen Cox

階級/地位:ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン特別副官
生年月日:3020年(3076年時点で56歳)

 国境の世界アレクサンドリアの農家に生まれたガーレンは、3039年にクリタの襲撃で両親が殺されるまで、家族の農場で働いているのに満足しているかのように見えた。家族の復讐に突き動かされたガーレンは軍に入った。バトルメック操縦の天賦の才を持っていたことから、タマラー戦争学校でメック戦士訓練プログラムに選抜された――3042年に卒業したガーレンは、3039年のドラコ連合に対する戦役で被った多数の穴を埋めるために、新設された連邦共和国装甲軍に入隊した。

 ガーレンは第12ドネガル防衛軍に配属され、ライドに駐屯した。ここで彼はクリタ兵と交戦するチャンスに恵まれ、すぐに中隊指揮官に昇進した。ナーゲルリンクを卒業したヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンが第12の大隊指揮官になるという話を聞いた時、ガーレンは連邦=共和国後継者の「子守役」に志願した。ガーレンがヴィクターの補佐役を務めて以来、ふたりの男のあいだで本物の友情が生まれた。

 3056年のソラリスVIIでの爆弾攻撃をかろうじて生き残ったガーレンは偽の身分を使うことにした。上手く変装した彼はジェラルド・クランストンとなり、諜報アドバイザー、星間連盟防衛軍情報部のコムスター連絡士官としてヴィクターに仕えた。連邦共和国内戦の後、ガーレンはクランストンの身分を捨て去り、第二星間連盟の終焉後、シュタイナー=ダヴィオン軍司教の副官として公式にコムスターに加わった。

 中肉中背で金髪のガーレンはジェラルド・クランストンになりすますため、あごひげをあきらめた。





コムガード:主要軍事部隊

 地球を手にしたことにより、コムスターは星間連盟防衛軍が放棄していった装備の巨大な倉庫を手にした。中心領域に平和な面を見せたがったコムスターはこれらの武器を隠した。ドラコ連合大統領、フガイ・クリタとの緊張した対立の後、首位者ホリングズ・ヨークは常備軍を創設する計画を明かした。2933年、8個師団を用意したコムスターガード市民軍(コムガードの名で知られることになる)は、次の一世紀間で拡大を重ねた。3052年、ツカイードで氏族との歴史的な戦いを繰り広げる前の最盛期には、コムガードは各6個師団の完全な12個軍(40個諸兵科連合連隊を超える戦力)を展開することができた。第四時継承権戦争後、コムガードは影から出てきてたが、コムスターのHPG基地を守るために中心領域中に分散し、真の戦力を隠し続けた……氏族侵攻まで。

 大規模な作戦は未経験だったのだが、コムガードは(アナスタシウス・フォヒトの下で大々的な訓練を受けていたおかげで)侵攻に対し勝利を収めた。もっとも損害はすさまじいものだったのだが。損害は40パーセントに達し、回復の努力は新たに作られたワード・オブ・ブレイクへの離脱で妨げられた。各軍の6個師団は4個師団にまで減らされた。3058年、地球を失ったことで、この人類の揺りかごにある生産力を使えなくなり、ガードを以前の戦力に再建する試みが妨げられた。ケースホワイトの惨状と、カオス境界域内外でブレイク軍とぶつかったことにより、ガードの戦力はさらに損なわれた――首位者シャリラー・モリが実はドラコ連合のエージェントだったと明らかにされると、さらに離脱が相次いだ。

 コムガードの戦列がぼろぼろになると、ダヴィオン軍司教は兵士たちをよりコンパクトな部隊にまとめた。古い12個軍は解散し、6個師団の6個軍に再編された。理論上、各軍は中心領域の各勢力にひとつずつ配備され、6個目は小勢力と辺境をカバーする。政治的な現実により、カペラと自由世界同盟の軍(第4、第5)はライラ、恒星連邦方面に配備される。

 再構成により、コムガードの性質には変化が生じた。この変化の理由の一部は、第一の敵であるブレイク軍の部隊編成によるものだが、主な理由はコムガードが兵士への補給を行う産業基盤を欠いていることから来ている。編成の主眼は、フォヒトにより導入され、ツカイードの勝利の立役者となった諸兵科連合に置かれ続けている。だが、通常歩兵は縮小され、バトルアーマーにとって変わった。比較的低価格で素早く生産できるバトルアーマーは、減りつつある兵士を拡大し、生存性を強化した。通常装甲車両(特に自走間接砲)は、ガードの一新されたTO&Eで主要な位置を占めている。今回もまた、コストと入手可能性が、この決断に重要な役割を果たした。

 ケースホワイトの災厄はコムガードの戦艦艦隊にとって壊滅的な打撃となった。中心領域で最大の海軍戦力を所有していたガードは、わずか5隻にまで減少している。旗艦〈インヴィジブル・トゥルース〉と〈ボルドー〉はガードの残った海軍戦力である。その一方で、生き残った3隻のファスレーン級ヤードシップ(〈ガラモーガン〉、〈ドーバー〉、〈プリマス〉)は、コムスターの大規模な航宙艦艦隊を運営し続ける任務にとって重要である。

 兵站は資金不足以外の理由でコムガードにとって大きな頭痛の種となった。コムスターが恒星連邦、ライラ同盟、ドラコ連合での恒星間通信を独占していることから、資金面では現在の三倍の戦力でも賄うことができる。ワード・オブ・ブレイクが中心領域の軍事/産業施設を壊滅させたので、各国は残った工場からの出荷物を入念に管理している。コムスターと同盟している国家でさえも、コムスターに装備(特にバトルメック)を販売するのをためらっている。ダイアモンドシャーク(素早く取引のチャンスを嗅ぎとった)が減少の一部を補っているが、コムガードは戦場での回収に大きく頼っている。その結果、彼らのバトルメック部隊は、古い星間連盟機種、捕獲した氏族二線級の機体、回収したワード・オブ・ブレイク装備の寄せ集めである。










ワード・オブ・ブレイク





「ザ・マスター」 “The Master”

階級/地位:ワード・オブ・ブレイクの指導者と噂される
生年月日:不明

 ワード・オブ・ブレイクの真の指導者とされるこの謎の人物についてよく知る者はいない。近年、この「マスター」がトーマス・マーリックに他ならないとの噂が多数あがっている。状況証拠はたくさんあるのだが――最も大きいものは、前総帥トーマス・マーリックが影武者であったとの暴露であるが――決定的な証拠は存在しない。教団内の選ばれた数名のみがこの男に会ったことがある。このマスターが実在の人物ではなく、ワードが聖戦の恐怖を決定づけるために作り上げた操り人形である可能性も否定できない。

 それにも関わらず、近年、ほとんどの情報部が、マスターの正体がトーマス・マーリックであるとの推測を前提に運営されている。しかしながら、この推測はこれまでのところ推測でしかない。この男の過去、動機、知的能力は誰も知らない――まったく誰も知らないのだ。彼は名前があるのに幽霊なのだ。この幽霊がどこに住んでいるのか不明だが、多くは地球を本拠地にしていると推測している。

 確かであるのは、ワードが口にする「移行」がマスターから来ていることである。第一、第二、第三移行について繰り返し言及されているが、ワードのある種の予言であることはさておき、本当の意味を知っているものは誰もいないのである。一般的な予想では、移行が第二星間連盟内の権力移行を指すとされている。第三移行の失敗――3067年12月の星間連盟崩壊による――が聖戦の引き金になったとされる。マスターの恨みによるものである可能性が高い。

 だが、この一般的な推測は、保護領での最近の諜報からかけ離れたものではない。ブレイク派の多く、シャドウ師団の大半は、いまだ第三移行を来るべき出来事として捉えている。これらの移行が実際にはなんであるのか、謎のままである。もしこれが判明したのなら、聖戦の終わらせ方――そして意味――がわかるだろう。





アレクサンダー・ケルノフ Alexander Kernoff

階級/地位:ROM司教
生年月日:3012年(3076年時点で64歳)

 ワードの危険なROM組織のなぞめいたスパイマスターであるケルノフは、ストーン合同軍と他の諜報組織に対し、本物の確かな危機であり続けている。最近、保護領とワード軍の内戦で妨害を受けたにもかかわらず、ROMはワード・オブ・ブレイクへの諜報上の脅威を阻害し、排除する任務を着実にこなしている。

 聖戦の初期に行方不明になったと考えられていた彼は、後にダモクレスの報告によって、ニューアヴァロン包囲戦の序盤に参加したことが判明した。最初の海戦で重傷を負った彼は瀕死で地球星系に戻り、回復までに2年以上を費やした。それ以来、ケルノフは病院のベッドからROMを運営している。負傷しているにもかかわらず、聖戦を進めるための巨大な諜報という絵を描くタッチは失っていないのだ。

 地球にいる時間は、政敵であるキャメロン・サン=ジャメとの深いつながりを保った。イデオロギー上の違いにもかかわらず、二人の男は聖戦初期の新しい目標を攻撃するため深く連携したのである。ROMの幅広いリソースとワード・オブ・ブレイク市民軍の力を組み合わせることによって、健康的な敬意と賞賛が両者の間に生まれたようだ。

 近年、ROMの活動はますます増える攻撃と直面する市民軍と保護領軍の支援に移っている。この攻撃はアポリオン指揮下のシャドウ師団によるものと疑われている。こういったパラダイムシフト(熟達したアナリストだけが発見できる小さな変化)は、ROMがもしかしたらアポリオンとマスターに立ち向かっていることを意味するかもしれない。これは純粋な推測であるが、現在ある証拠に適合する最高の説である。





ルシファー Lucifer

階級/地位:不明
生年月日:不明(3076年時点で20代後半と推定)

 地球で行われていたコムスターの抵抗運動とのコンタクトがとれなくなる前のこと、ヒルトンヘッドに重要な新参者があった。軍司教から「ルシファー」と呼ばれていたこの新司教は明らかに肉体と顔の左側面を大きく改造したマネイドミニだった。しかしながら、ルシファー司教は軍司教の命令のみを聞いているようで、ワード・オブ・ブレイクのサイボーグ兵士たちが持っているような落ち着き、機械的なよそよそしさを持っていない。彼は無慈悲で、少なくとも二名のアルザス司教指揮下にあるテラセク(地球保安隊)隊員を自ら「スパイの疑い」で処刑しており、惑星防衛に関することでアルザスに何度か挑戦している。

 彼の態度は奇妙である……「マスターの意志に仕える」というより、利己的な行動に見えるのだ。また、彼は「イヴ」とだけ呼ばれる女性の補佐を常に連れている。ふたりは別行動することが珍しく、強い関係にある雰囲気であるが、それはロマンチックなものではなさそうだ。

 地球でのルシファー司教の役割は不明である。彼はアズラエル司教といかなる連絡もとっておらず、事実上、このマネイドミニ司令官を避けている。ルシファーはこの大陸のブライアン城塞を巡るのに時間の大半を費やしているようで、軍司教以外の命令を聞かないようだ。

 アナリストたちのとある推測では、ルシファーはラヴァーナ司教だという。武家ラクシャサの元指揮官で、シーアンで死んだとされる人物だ。これが事実なら、当然、ラヴァーナは大規模なサイバー手術を受けたことであろう……ルシファーはラヴァーナと同じ改造――最も目立つのは羽根とかぎ爪をつけていないのだ。しかしながら、両者の顔面の70パーセントが一致し、身長と体型も同じであるが、同一人物であるという充分な証拠は存在しない。










小勢力





深辺境の秘密 Deeper Secrets

 深辺境に秘密の勢力がいるとの噂は古くから存在する。インターステラー・エクスペディションズはしばしばこの勢力と遭遇し、またここ4年、ウマイヤ、ハンザ軍が行方不明になったとの報告があがっている。これらの勢力との直接的な接触はなく、確かな証拠もほんとどない。いわゆる「ミネソタトライブ」の残存勢力でないかとされることもあれば、ステファン・アマリスの秘密訓練施設の生き残りとされることもある。





デヴリン・ストーン Devlin Stone

階級/地位:同盟合同軍指導者
生年月日:3043年(3076年時点で33歳)

 ストーンが最初に姿を現した時、彼は完全に正体不明で、彼に関する噂が数限りなく作られた。彼が突如としてスポットライトを浴びたことは多くの人にとって衝撃的だった。彼は高貴な生まれでなく、元戦争の英雄でなく、少数のアドバイザー集団以外にとっては完全な謎であり続けた。

 この男はヴィクター・ダヴィオンやその他の中心領域指導者たちに紹介された後、厳しい調査を受けたが、その結果、ほとんど情報は浮上しなかった。彼の信用は、デビッド・リーア(ソラリスチャンピオン、カイ・アラード=リャオの息子)によってなされており、またキタリー管区内の惑星知事たち、ベル・リー将軍、尊敬されているAFFS市民軍指揮官、傭兵からの揺るぎない支援を得ている。

 3073年に小規模な軍隊のリーダーとして姿を現して以降、ワードの地球周辺の強固な防衛網を突破するのに成功している男について、企業と軍の情報部が大騒ぎで情報を探し求めた。

 RBMU105収容所のデーターベース・メインコアはストーン解放の際に解放されたのだが、人員リストの大部分は確保された。ストーンの身体的特徴とおおよそ一致するのは少なくとも四名である。ゲイ=フーの建設現場監督、ジェームズ・ペールヴュー。キタリー惑星市民軍メック小隊指揮官、クリストファー・シェルダン。チコノフにいたAFFSの事務アシスタント、ソール・ミラー。シーアンの輸送船長、ジャーン・パウェル。ストーンがこれら四名の囚人のうち一人であるか、残念ながらその他であるかは不明である。ここの再教育キャンプは、周辺宙域で最初に作られたもののひとつで、聖戦初期にワードが得た多数の望ましくない捕虜を捨てるゴミ箱であるように見える。

 RBMU105には、「デヴリン・ストーン」が投獄されたという記録はない。RBMUの完全な記録が発見されない限り、ストーンの名前は十中八九偽名ということになる。ストーンは過去に関するいかなる質問にも答えるのを拒否し、彼の背景のさらなる調査を不可能としている。彼は「中心領域の市民」であることを断固として主張し、いかなる特定の王家、派閥、軍隊、宗派にも属さないとしている。そのような姿勢は多くをいらだたせた……特に彼の正体を知りたがる者たちを。政治家は現在の言動よりも、背景と過去を問われるものなのである。ストーンのようなカリスマ的な男が事実上背景を持たないことで、通常の政治家たちは彼を攻撃目標とした。

 ストーンの過去と正体がどうであれ、彼は優秀な戦術・戦略司令官であることを実証している。時折、PTSDの症状を示すことがあるのだが、彼は味方とかつての敵をともに戦わせることが可能である。戦域指揮官たちが小さな問題と避けられない偏見を解決できると信じているのだ。

 もしストーンがこの合同軍を彼自身が率いているのなら、最後の弾丸が発射された段階で、個人崇拝が終わってしまったであろうことは疑うべくもない。だが、彼は、戦時中にも民間と企業を改革したがっている「ヤングガン」(セオドア・レッドバーン、レスリー・ブラーエ、リン・ムリカミ、そしてどこにでも顔を出すデヴィッド・リーア)と一緒にいることから、ワードを破った後で中心領域の古い秩序を壊すことは可能である。そのような脅威が軽く扱われることはないであろう。そして、権力を求めるライバルたちは彼の信頼を殺ごうと、ストーンの決断の多くを詳細に分析し続けるだろう。





ベル・リー Belle Lee

階級/地位:司令官、同盟合同軍
生年月日:3041年(3076年時点で35歳)

 フォーティマイルに生まれ控えめな両親に育てられたリーは養成校の入学試験で高得点をマークし、ニューアヴァロンの名門NAISに入学するための惑星奨学金を勝ち取った。彼女は何度かかんしゃくを起こし、素晴らしい戦略家でありながら、トラブルメーカーでもあるとの評判を得た。やがて最下位近くでクラスを卒業し、士官としてニューシルティス惑星市民軍に配属された。

 任期が連邦共和国内戦中に切れると、彼女は恒星連邦を分裂の危機に追いやる政治的分裂にうんざりしたようで除隊した。彼女は腕を保つために地元の傭兵隊と契約し、得られた金は少額でもフォーティマイルの家族に送った。

 短い傭兵生活のどこかの時点でリーはワードによる恒星連邦への多数の深襲撃(故郷の近くへのもの)で捕らえられた。何が起きたにせよ――彼女は過去について話すのを拒否している、おそらくはストーンからの命令で――彼女はキタリーのRBMU105に行き着いた。そこで彼女はデヴリン・ストーン率いる収容所の小反乱軍に加わり、ワードの打破を助けた。生存者の中核が、ストーンに忠誠を誓い、扇動者リーに率いられるストーンズラメントを形成した。

 リーの激情はストーンの初期の注目の際に、数多くの誤報に結びついた。彼女はメディアに遠慮することがなく、政治的な論争においてはなおさらであった。その結果、重い左クロスパンチを食らった者たちが波紋を生み出すような報告を作りだし、保護領強襲のためストーンに送られた多国籍軍の間に不信感を作り出した。しかしながら、リーは挫折することなく、刃向かう者の人生を悪夢に変えることにそのエネルギーを向けたのだった。

 噂がどうであれ、リーは戦術の天才である。ストーン合同軍の成功に捧げる彼女の献身は、ストーン自身に匹敵するものである。彼女は配備された各部隊の強みを他の部隊の弱点と重ね合わせ、容赦のないハンマーのように敵を叩く軍事部隊を作り上げる達人である。また司令官に仕える者たちは、彼女が部下とワードから解放し続けている市民に対し哀れみ深いことを知っている。





賞金稼ぎ The Bounty Hunter

階級/地位:独立傭兵
生年月日:不明

 各情報部の間で広く知られているのは、賞金稼ぎが特定の人間ではなく、ペルソナ(仮面)であるということだ。賞金稼ぎの正体を暴こうとする試みは必ず失敗に終わる。現在、情報組織の多くが、賞金稼ぎのセキュリティ突破を、本気のスパイ活動というよりゲームと捉えている。賞金稼ぎは数年間、チャンドラセカール・クリタとの長期契約で働いていたようだ――普段は中立のこの傭兵としては珍しい動きである。この傭兵は幾度か、アークトゥルスとイセサキにあるクリタの保有地にいるのが目撃されている。イリアン企業保安部とSAFE工作員からの噂によると、彼は逃亡したヴィクトリア・パードゥを捕まえた張本人だという(パードゥはチャンディの手を通してストーンにわたった)。

 チャンドラセカールのために数年間働いていたにもかかわらず、上位の情報提供者たちは、賞金稼ぎがチャンディの死に関わっているとしている。確かな証拠はないのだが、賞金稼ぎは聖戦の両陣営で活動しているかもしれないという状況証拠が存在する。近頃、賞金稼ぎはチームのメンバーを全員殺され、本当に一人となっている。

 賞金稼ぎの専門家を自称する一部のアナリストによると、賞金稼ぎはスーツを別の人物に渡したという。ボディランゲージ、戦闘技術、他の小さな部分に見られる小さな違いは、賞金稼ぎが新しい人物であるのを示唆しているように見える。最も明白であるのは、クリタの死後、賞金稼ぎが公の場でも戦場でも話をしないということである……以前は短い皮肉と名句で知られていたのだ。新しい人物に変わったのか、あるいは単にのどを負傷したのか、やり方を変えたのか、真実は誰も知らない。

 賞金稼ぎはいまだ法外な額を要求している。契約の大部分は保護領世界沿いのワード・オブ・ブレイクに対する華々しい暗殺と救出である。雇用主は不明だが、噂はイリアン社の反乱軍から、アースワークス社、シュタイナー国家主席、デヴリン・ストーン自身にまで及ぶ。賞金稼ぎはもちろんのことなにも語っていない。





ウォルフガング・ハンセン Wolfgang Hansen

階級/地位:大佐/ハンセン荒くれ機兵団指揮官
生年月日:3013年(3076年時点で63歳)

 タウラス侵攻軍の手で部隊の一族郎党とともに家族の大半を失ったウォルフガング"ウルフ"ハンセン大佐は人が変わった。ハンセンは陰鬱な血塗られた指揮官となり、同じ志を持った部下たちを率いた。部外者の多くは、彼ら連帯した集団の正気を疑うようになった。荒くれ機兵団が雇用主候補にとって債務となるか、財産となるか、熟考されている。

 ハンセンは何十年も前に成人して以来、指揮と戦闘の訓練を怠らず、大規模で優れた装備のタウラス連合に対して、比較的成功した残忍な報復と捨て鉢の戦役を率いた。国境の戦線を守りながら、タウラスの追跡部隊を恒星連邦国境から遠ざけてタウラス連合の中心部に戻すため、部隊を複数のタスクフォースに分割したハンセンは、複数の工場に火をかけ、タウラス軍に寄与していたインフラ・人員を抹殺した。マクロードランド、ピナードのような各星系から、そのほかのグロスバッハのような重要でない星系まで、ハンセンはタウラスのすべてを焼き尽くし、その間、ブルセットとハイアライトにいた他の部隊はタウラス侵攻軍を待ち伏せして殲滅した。

 減少していく人員を補充するのに従来の方式はとれなかったのだが、それにもかかわらずハンセンは部隊を活動状態に保った。恒星連邦の企業から借りた「パレード作戦」の兵士たちを使い、恒星連邦と連合から捨てられたと感じていた兵士たちを口説いたのである。後者で最も有名なのは、ピナードの元ロングウッド蒼衣隊傭兵部隊である。

 現在、強化された(ブレイク)保護領への戦いに回されたハンセンと彼の部隊は、血の誓いとともにどれだけ地獄の奥底深くまで来たのかに気づきつつある。





ルーカス・ベケット LUCAS BECKETT

階級/地位:騎士団長、ランディス・ブラザーフッド
生年月日:3034年(3076年時点で42歳)

 クラウドコブラ氏族以外で珍しいクロイスター信奉者のひとり、ルーカスはスモークジャガー氏族で厳しい教育に耐えていた。それにもかかわらず、あるいはこれがあったからか、彼は優れた戦士となり、ブルドッグ作戦が始まるわずか数ヶ月前にブラッドネームを得た。部隊から引き離されたベケットはアルベイロで数ヶ月間ゲリラ戦を行い、ついに彼の氏族が終焉を迎えたことと、他氏族が中心領域侵攻軍を撃退するのに失敗したことを知った。争いに倦んだ彼は部下のカーソンとともに惑星を発った。

 ランディスに到着したふたりは、忠誠心が確かなものとなると、ブラザーフッドに案内された。ベケットとカーソンがどこでブラザーフッドのことを知り、なぜここを選んだのかは明かしていないが、ベケットがジョシアン(キリスト教的要素を持つクロイスター)で受けた教育は決断の上でいくらかの役割を果たしたに違いない。優れたメックと訓練がフリュー騎士団長(当時)に示された。この時点でベケットは軍事的な勇敢さに見合った政治的な洞察力を得始めた。数年以内に彼はフリューに取って代わり、その周辺環境の抜け目ない研究者となった。彼の指導の下、ブラザーフッドはこの地域に影響力を伸ばそうとするワードの試みを跳ね返し、ランディス周囲の海賊の活動を減らした。倫理性を欠いていたのだが、ベケットの下でブラザーフッドは敵と同じレベルにまで身を落とすことはなかったのである。

 この自制心は辺境でブラザーフッドのイメージを向上させる助けとなった。交易は増加し、ランディスは重要なハブとなった。ランディスの視線をフリューに向けることによって、ベケットはライバルのエネルギーをよそに向けさせ、その間に本拠地の生活水準を向上させた。ベケットはジャガーでの教育のたまものである、即時実行後の長期計画会議と情報収集を好む。近年、ベケットは元氏族戦士の雇用を強化している。これらの中で最も知られているのは、元コヨーテのブラザー・ニーリースだ。多数の元スモークジャガーがランディスにたどり着いている一方で、彼らの名はブラザーフッドの名簿には載せられていない。惑星の立ち入り禁止地区で三番目の大隊が作られ訓練されているとの噂があるが、なにも確認はされていない。





ジョヴァンニ・エストレル・ア・デ・ラ・サングレ Giovanni Estrell a de la Sangre

階級/地位:CEO、ヴィコア工業
生年月日:3001年(3076年時点で75歳)

 成り上がりであるヴィコア工業の当主について多くを知っているものはいない。彼が新バトルメック製造業者のリーダーとして突如現れたことは、驚きによって迎えられた。旧式で時代遅れな数機種のライセンスと仕様を取り引きした彼の「再設計」機種は、競合業者、バイヤー、そしてパイロットたちから様々な反応を引き起こした。

 既存の情報は、赤貧から富豪に成り上がった典型的なストーリーを示している。マーリックの後進的な世界でジョヴァンニ・サンガーとして宇宙鉱山夫の一族に生まれた彼は、傭兵となるためにソラリスVIIに逃亡し、ジャスティン・アラードがチャンピオンとなった時に幸運をつかみ、帰国して両親から会社を買い取った。その時から、ジョヴァンニは名前を変え、製造業帝国を作り上げた。

 ヴィコアは公的なレベルでは典型的な中立の恒星間製造業者に見える。機体を再生するというギャンブルから、聖戦前に大勢の企業アナリストが「抜け目がない」と呼んでいたその顧客リストは、ワードが行動に出たときに攻撃を受けた。ヴィコアの機体を買っている2/3がワード・オブ・ブレイクとその味方であったことから、すぐに疑惑の目で見られることとなったのである。戦争が荒れ狂っていたそのときでさえ、サングレはビジネスを中立に保ち続け、どの陣営の肩を持つこともなかった。兵器市場における真の「戦争の支配者」であったサングレはヴィコアを全宇宙トップ20内のコングロマリットにすることを望んだ。

 だが、その夢は潰えるかもしれない。この2年で、証拠が表に出されるようになった――まさしく、有名な「ダモクレス」によって。それによると、ヴィコアの二番手以降の買い手の多くが、ワード・オブ・ブレイクの購入担当のフロント企業にならないことが明らかとされた。この複雑な欺瞞は解きほぐされた時に、ヴィコアがワード・オブ・ブレイク保護両軍のための大規模供給業者であったことを示すかもしれない。このような商取引は厳密には合法化もしれないが、世論の審判はその秘密主義、偽り、不正操作からヴィコアにとって不利に働くことだろう。現時点でヴィコアはいくつかの有名な証券取引市場で取引停止となっており、ドネガル証券取引所は「ライラの経済的な法律に触れる行為」をしたとして捜査の途中である。






独立組織


インターステラー・エクスペディションズ(IE)
企業本社: アー
現在のプロジェクト: オデッサ、バーロウズ・フォーリー、マイカV、オスカー、イズリントン、カハマルカ

 中心領域で最高の考古学者団体、インターステラー・エクスペディションズは、普通なら現在の事件に関わる名前ではない。だが、IEが失われた世界、ジャーディン(ワード・オブ・ブレイクの「隠された世界」と思われる)を発見したことで、彼らはニュースを飾ることになり、最高経営責任者ライナー・ウッデンはデヴリン・ストーンを支援し続けることになった。

 IEの支援ネットワークの多くは中心領域中に及び、追加の物資・乗客輸送を行っている。いくつかの大学、企業警備会社内の推測によると、IEはその一方で極秘の活動を怒っているという。静かな噂、荒々しい警備、目録に載ってない秘密の積荷、謎の積み降ろしは、IEがストーンの極秘作戦のフロントとして活動しているという各地のネットワークフォーラムの書き込み、陰謀論に油を注いでいる。

 奇妙な輸送活動の噂にも関わらず、IEのプロジェクトリストに欠けはない。事実、この団体は3073年に過去最大の活動を行っており、保護領近くのライラ世界とアンチスピンワード国境において幾度かの発掘を行った。IEの発掘はグリーンゴーストの驚異があることから厳重に守られているが、3071年のイザーバにおけるニーラバップ大学キャンプ大虐殺以来、攻撃は行われていない。

 チャンドラセカール・クリタの遺産から多額の寄付を受け取って以来、IEの財産は著しく増加している。この寄付により、ウッデンは新しい航宙艦3隻を購入し、ディーロンでの再充電中に失った分を埋め合わせることができた。最近、ゴーストベア氏族の支援要員と一緒にいるのが目撃されたことは、ドミニオンが新しい地区で考古学的プロジェクトを始めることかもしれないことを示しており、IEの企業的威信と公募増資を増している。


ヴェンジャンス・インコーポレーテッド
企業本社: トルトゥーガ・プライム

 ヴェンジャンス・インコーポレーテッドを企業と呼ぶのは、氏族を平和主義者と呼ぶようなものである。このごたまぜになったジャンクヤード、ワークショップ、産廃処理場の巨獣は、トルトゥーガ・プライムの宇宙港の周囲に点在しており、組織化されたバトルメック工場と似ても似つかない。

 それでもどうにかこの蒸気機関のモンスターは、ブリガンドと呼ばれる規格化された機体を大量生産と呼べる分だけ生産している。そして彼らはそれを公開市場に出している。

 規格化されたメック一機種を組み立てられるくらい、長く海賊をともに働かせているのがなんであろうと、それは一般市民の想像を超えるものだろう。トルトゥーガ・プライムで組織化された仕事を行わせた最初の原動力は悪名高いレディ・デス・トレヴァリンだろうが(ヴェンジャンス・インコーポレーテッドの名前は抽選で決められた)、今でも行わせているのがなんであるかは謎のままである。ちょっとしたワード・オブ・ブレイクの支援があると思われるが、彼らの基礎計画が破綻し、全前線で圧力をうけていることから、ローブを纏った驚異はすでに興味を失っている。

 おそらくヴェンジャンス・インコーポレーテッドは全盛期から倉庫の中身を使い果たしている。すぐに彼らはやれる中で最善の手法に戻るかもしれない……互換性のないシステムをつなぎあわせ、ジャンクの塊を溶接し、その上に名前を描くのである。

 しかしながら、長年の疑問は残る……再びそうしたらどうなるのか? 海賊たちは長年、若干の現代的技術を保有していた――もっと出来ることがあるのだろうか? 辺境の国境沿いで海賊の活動が目立つ中、ヴェンジャンスに注視し続けるのは賢いと言えるだろう。攻撃を警戒するか――あるいは良い取引(保証なし)を行うかである。


コーテリ The Coterie

 中心領域のいくつかの惑星で災害救助を提供する慈善団体として始まったコーテリは、最近、海賊の攻撃から惑星を守ることに範囲を広げた。

 この防衛は大部分が個別、または小隊規模で雇用された傭兵によって実行される。コーテリは落ちぶれた部隊か、雇用主により直営店化された部隊に主眼を置いているようだ。時折、彼らは既存の契約を買い上げるが、たいがいは単に部隊が早めに契約を終えることを推奨する。MRBCへの契約違反の訴えは無意味である……なぜなら、部隊はコーテリに組み入れられる前に解散してしまうからだ。

 この傭兵横取りはスターコープスを含む企業に対して行われている。傭兵の逃亡に対し財政的な保証を執行する伝統的な手法、組織に頼ることが出来ないことから、コーテリと交渉し、スターコープスと主要子会社から横取りしないようにするべきとの議論がある。

 注意すべきはコーテリの攻勢作戦は海賊狩りに焦点をあわせていることである。これによってたいていはリム共和区エリアで幾度かワード・オブ・ブレイクとぶつかっている。コーテリを無力化するのは、ワードの優先課題ではないようだ。

 コーテリの宗教政策は中道的で世俗的だが、狂信者を創りだすのに成功し、それが部隊内の衝突を減らす一方で士気と服従を増している。中心領域の公的教育の状況を考えると、この慣習はより迷信深い大勢の候補者を惹きつけるだろう。


傭兵評価・雇用委員会

 かつて強大だった組織の残骸であるMRBCはすべての傭兵の調停者としての役割を失った。3052年にウルフ竜機兵団によって創設されたこの独立組織は傭兵の契約を独占する団体となった。20年近くにわたって、どの雇用主も傭兵隊もMRBCの関与なくしては公正な契約を得ることはできなかった――そして契約金の数パーセントがMRBCの管理運営費用に回された。

 劣った雇用所は常に存在してきたが、それらはアウトリーチと比較され、クズのような傭兵の拠点とされた。MRBCは現存するすべての傭兵隊に対し質のランキングを決定し、これが傭兵の仕事に対する熱意を上げた。なぜなら、高いランキングは高額の支払いとさらなる契約を意味したからである。そういった日々は過ぎ去ったようだ。ワード・オブ・ブレイクがアウトリーチを燃えかすに変えたとき、MRBCは破壊された。彼らはガラテアに支店を作っていたのだが、ここもまた上手くいかなかった。

 残ったMRBCはもう傭兵の署名を監視する終わりなき任務を完遂できない。聖戦における傭兵市場の流動性は巨大なMRBCを置き去りにした。真の基地を持たない彼らは中立の視点に立って交渉を行う場を欠いた。無味乾燥としたサプリメンタルアップデートを出版したのだが、傭兵部隊の大規模な喪失と、新部隊の誕生により、竜機兵団評価値や部隊分析は数ヶ月古いせいぜい時代遅れのものになったのである。概して、MRBCの没落は雇用主にとって恩恵となった……契約の乱用のチェックがなされなくなったからである。コムスターがMRBC時代の以前のような契約の監視者としての役割を果たさなければ、傭兵が20年に渡って享受してきたよき時代は終わりを告げ、国家、企業双方の雇用主がその利益に飛びついていただろう。






小勢力の主要世界

コンパス座 Circinus
貴族指導者: カルヴァン・マッキンタイア大統領
恒星型(再充填時間): G5IV(186時間)
星系内の位置: 4番目
ジャンプポイントからの行程: 7.48日
惑星数: 2(ブロンコ、ラックス)
地表の重力: 0.98
大気圧: 通常(呼吸可能)
赤道面の気温: 45度
海洋面積: 50パーセント
原始生命の種類: は虫類
再充填ステーション: なし
HPG等級: A
人口: 2307万0000人
社会・産業水準: D-C-B-C-B

 水晶、宝石、放射性物質の豊富な乾いた惑星、コンパス座はコンパス座連合の首都である。元自由世界の傭兵と継承権戦争から逃げ出してきたライラの農民が作ったコンパス座は、現代的な辺境世界を発展させるに足る産業を持っていなかった。生き残るため海賊行為と農業に頼っていた彼らには、この世界に大規模な製造設備を建設するという選択肢がなかった。そうする代わりに、連邦の歴代大統領は、悪名高いブラックウォリアーズが使っている惑星北部大陸の秘密訓練施設を拡張した。

 3067年、父の急死後にカルヴァン・マッキンタイアが大統領職を継ぐと、連邦の運勢は大きく変わった。ワード・オブ・ブレイクからかなりの支援を受けたマッキンタイアは、教育と軽工業に主眼を置いたインフラ開発の緊急プログラムに着手した。最初の実利的な改善の一つは、改名された惑星首都ザカリア(元の名前はクレイボーン)に設置されたワード・オブ・ブレイクのHPGステーションである。この都市は、中心領域の基準からすると小さいのだが、ここ数年で成長し、人口は三倍となった。これらの新参者の大部分がワード・オブ・ブレイクの元教団員で、惑星の技術的ルネッサンスの要因となっている。

 この首都は戦いに巻き込まれたことがなかったわけではない(マリア軍が3060年代の半ばに強襲した)一方で、マッキンタイアはワード・オブ・ブレイクの支援を得てマッキンタイア親衛隊の施設を拡大した。この追加された要塞は、主にザカリアの中心にある連邦中央議会ビルの周囲に作られているが、完成するのは3077年半ばの予定である。さらに、ブレイク派がこの世界に関わり続けていることを考えると、多数の募兵センターを作り、ブラックウォリアーの北部秘密施設で訓練を実行しているのは当然である。

 現在のコンパス座向け募集ポスターを飾っているのは、第25師団のサリアナ・プライアー司教である。連邦の世界アンドリオン出身であるプライアーはコンパス座の砂漠から地球の訓練場に向かう小規模な幹部候補生団に入った。プライアーの師団は、コンパス座人のみで構成された部隊として連邦内で知られるようになっている。このブレイク派部隊はソラリスVII奪取を任され、その過程で連邦中で大きな名声を得るようになった。

 ブレイク軍の流入は、ザカリア内外で活動していた多数の犯罪組織を追い出すという追加の効果をもたらした。ブレイク派、およびマッキンタイアの教育キャンペーンが撲滅できなかったもののひとつが、コンパス座人の野蛮なスポーツ好きである。大衆の機嫌をとるためか、あるいは彼もそれを好きなのか、マッキンタイア大統領はC.J.マッキンタイア・アリーナの建設を命じた。4万人収容のスタジアムはファンが見たがっているほぼどのようなスポーツでも開催可能である。

 最近、北部の砂漠の境にある小居留地と連絡が取れなくなっているが、その直前に大規模な軍隊が到着したとの目撃報告がある。平均的なコンパス座人はカルヴァンが父の王宮に入って以来、ブラックウォリアーズを目撃しておらず、彼らが帰還したというのが一般的な推測である。他の噂によると、この部隊は傭兵で、マッキンタイア大統領はブラントレフとマクシミリアンをマリア帝国から取り戻すために編成しているのだという。より可能性が高そうなのは、ライラの世界コーンケンとポールズボを奪うのに使った部隊であることだ。これらの部隊は3076年にタマリンド=ブエナの共同作戦で撃退されたのである。

 もうひとつ注意すべきは、ワード・オブ・ブレイクがコンパス座の天底ジャンプポイントに再生された再充填ステーションを作り始めたことである。これは彼らにとって利益になるのと同時に、辺境でコンパス座の立ち位置を強化することになる。





小勢力の軍隊


ハンザ警備隊

 スノウ総帥がHSF(ハンザ警備隊)の長に任命されて以来、この軍隊は全般的な質・訓練の向上を遂げている。彼らの主要任務は交易を行う貿易船団を守ることだが、HSFはウマイヤの襲撃や氏族の侵入とすら戦わねばならなくなった。

 ハンザがヌエバ・カスティーリャ領域に介入していたことが明らかになると、RDF4、RDF6は、小規模なウマイヤ分遣隊によるほとんど絶え間ない襲撃と戦わねばならなくなった。深刻な損害を受けたわけではないのだが、繰り返される襲撃は両RDFの兵士たちを損耗させ、スノウ総帥は彼らを戦闘地帯からローテーションさせた。

 HSFの分水嶺は3073年だった。大隊規模のアイスヘリオン氏族分遣隊が補給のためにハンザの世界、アントワープを襲撃しようと試みたのだ。敵の高度な技術にはかなわなかったにも関わらず、イルザ・ヘイキ総帥のRDF2は氏族侵攻軍に直面しただけではなく、彼らをこの世界から追い払った。(RDF2は深刻な損害を被ったが、この事実はハンザのセールストークには出てこない)。このとき以来、スノウ総帥は、知られている氏族領域への襲撃の支持を得ようと評議会に対する声をますます上げている。

 このさらなる氏族の攻勢によって、RDFから元氏族の戦士たちが追放された。これらの中で最も有名だったのは、RDF5でエロイーズ・グラッディ総帥の代理を務めていたスモークジャガー、エーメ少佐である。エーメはハンザの世界を日常的に襲撃し始めた氏族グループのひとつを率いていると考えられている。

 追記030277: スノウはRDF1とRDF3に対し、チェインレーン・アイルズを強襲して、ダイアモンドシャーク氏族を排除するように命じた。この襲撃の結果はまだ確定していない。


コンパス座連邦の軍隊

 襲撃と完全な海賊行為に基づいていたこの国の軍隊は、ブラックウォリアーズがおそらくは出奔したのに伴い、マッキンタイア親衛隊の役割が増加した。カルヴァン・マッキンタイアが大統領府に入ってからウォリアーズが消息不明という状況において、マッキンタイア近衛隊は補給を連邦の予算から獲得するという手法をとらざるを得なくなった。近衛隊はまたウォリアーズの訓練施設を使い、この星に配備された数個傭兵隊、ブレイク派部隊を招いて、連携と戦闘技術を磨くための野戦演習を行っている。

 聖戦の間、近衛隊の運勢は幸不幸混ぜたものである。彼らの戦力はワード・オブ・ブレイクが供給した新たな物資とメックによって大きくふくらんだ。次に、サリアナ・プライアー司教がコンパス座住人にワード・オブ・ブレイクの正規市民軍への志願を呼びかけたために、隊員が大きく減少した。以降、近衛隊の戦力数はゆっくりと回復している。現在、拡大された近衛隊は、およそ3個メック連隊、2個通常旅団であると推測される。

 近衛隊の最初の攻勢作戦は、ライラの世界、コーンケンとポールズボの占領であった。近衛隊の隊員たちはその命令に見事応えた一方で、フォトン・ブレット=マーリック元帥が、タマリンド=シュタイナー共同タスクフォースを率いてこの世界を奪還した時に、得たものを守ることが出来なかった。戦闘の報告によると、ブレイク部隊もこの戦役で戦ったが、近衛隊の敗走を妨げることはできなかったようだ。


ストーン合同軍

 元々はキタリーのRBMU105の生存者によって作られ、新設されたキタリー管区内にいた壊滅した部隊の鍛えられた古参兵で拡大されたデヴリン・ストーンの軍隊は、約2個大隊の中核からなる。報道陣の一部は、各正規部隊のすべてがリー将軍の誤称「ストーン軍」に所属するとしているが、現実とは異なる。いま、中心領域各地からの寄せ集め兵士たちは、保護領の中心を守るブレイク軍を撃退するために、新しい指導者の下で(多くの場合はいやいやながら)ともに働かねばならない。

 第1大隊、ストーン・ラメントは、その力と弱みからリー将軍が特別に選んだ鍛えられたパイロットと乗組員からなる。ラメントは関わった戦闘の重要な地点にいる傾向がある。損耗率は高くなるが、リーとその部隊が戦闘でその役割を果たしていないとは誰も言えないのである。

 彼女の成功とラメントが解放の最中に寡黙であることから、この部隊はストーンに配備された部隊の中でいくらかの功名を得ている。多くの士官、メック戦士たちが、ストーン・ラメント内の空いた席に入るため、上官たちに陳情して、申し込みの機会を求めている。

 第2大隊は大部分が支援部隊である。「ストーン・スチュワート」とあだ名される部隊には、メックが数機のみで、大半が偵察用の高速車両、そこに間接砲中隊と気圏戦闘機大隊の半分(地上支援任務用に特別に訓練されている)、回収チーム、バトルアーマー歩兵中隊(スターシーズ傭兵部隊の生き残りと噂される)がつく。スチュワートは専門家の混合した集団で、リーは外科医のメスのように各部を切り裂く。

 もう1個大隊が存在するとの噂があるが、この部隊に関する確実な証拠はない。いくつかの作戦区域の外縁部に現れる謎の艦隊、敵後方のある位置に飛び出してくる神秘的な「ブラックソルジャー」、その他の奇妙な戦場の逸話はあちこちで見受けられるが、現時点ではその大半が戦いに疲れた兵士たちの想像の産物であると証明されている。




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