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作成:2018/07/29
更新:2023/09/03

スポットライト・オン Spotlight On



 "Spotlight On"シリーズは、あまり有名ではない部隊を解説したpdfオンリーの電子書籍商品です。
 DriveThruRPGのプレビューより一部を紹介します。











クレセントホーク Crescent Hawks


部隊の歴史と詳細

 ケル、アラード、ブラヘ、ブラッドレー、オバノン、ウィルソン。有名なメック戦士一族はケルハウンドにありふれているが、伝説に至るまでの勇敢、狡猾、手腕の代名詞となっているのはある一族のみである。ヤングブラッド家。ヤングブラッド一族に対する議論は、必然的にクレセントホークにつながるはずだ。部隊と家族は同じものと言うことが出来る。ヤングブラッドの家長はよくクレセントホークと呼ばれる。

 31世紀の初期に登場したジェレミア・ヤングブラッドは、可変メックパイロットとしての腕前と、颯爽とした向こう見ずの魅力で頭角を現した。短気で、せっかちで、恐れ知らずのジェレミアは、カトリーナ・シュタイナー国家主席の目に留まり、彼を中心に腕利きの奇襲部隊チームが作られた――オリジナルのクレセントホークである。国家主席にのみ従うホークは、数多くの作戦を実行し、それらはすべて現在に至っても秘密指定となっている。ジェレミアは長年にわたってカトリーナの秘密であり続け、彼の悪戯っぽい笑顔は宮廷に居座ったが、3020年の前後に両者は仲違いした……カトリーナはホークを解散し、噂されている星間連盟の倉庫を探すためジェレミアを何もない惑星チャラIII(パシフィカ)に送り込んだのである。ジェレミアは、ナーゲルリンクのプレップスクールから息子のジェイソンを連れ出し、降下船に乗せて、パシフィカに向かった。

 10年近くがかかったが、ジェレミアは星間連盟の倉庫を暴いた。残念なことに、クリタの(あるいはコムスターの)工作員が密告し、第2〈光の剣〉が大挙してパシフィカを襲撃したのである。ジェレミアは捕らえられ、尋問のためディーロンまで連れて行かれた。18歳になっていたジェイソン・ヤングブラッドは、父の友人で元副指揮官だったレックス・ピアースの力を借りてクレセントホークを再結成し、パシフィカで反乱を成功させた。父を探すジェイソンは、ジェレミアが見つけた倉庫を発見し、父のフェニックスホークLAMを取り戻した。クリタ家を惑星から追い出した後、感謝するカトリーナ・シュタイナーは、新生クレセントホークに倉庫のメックを配備し、ドラコ連合で囚われの身となっている父を救出するようジェイソンに課した。

 第四次継承権戦争緒戦の混乱の中、ジェイソンはディーロンまで移動し、父を連合の捕虜収容所から解放した。収容中にジェレミアが虐待を受けていたことから、ジェイソンはクリタ家に血の確執を誓い、次の20年間、クレセントホークはことあるごとに龍との戦争を実施した。3039年戦争の間、ホークはラサルハグ共和国を横断して、ペシュト、アルシャイン管区のDCMS兵の移動を監視する任務に就いた。テッサロニカとイタビアナに小規模な襲撃を仕掛けたホークは、インフラと補給庫を破壊した。しかしながら、最高の戦果は、イレースのレクサテックLAM工場を襲撃し、一族のフェニックホークを10年間維持できるだけのパーツを持ち去ったことである。工場建物の側面にスプレーされた巨大な鷹の頭部は、誰が恥辱を与えたのかクリタ家に知らしめるものであった。

 連邦=共和国の時代、ジェイソン・ヤングブラッドは、父が若いころに勤務していたケルハウンドと緊密な同盟を結んだ。氏族侵攻までに、ホークはハウンドの一員になっており(名称だけ残った)、シュタイナー家と同じくらいケルハウンドのために作戦を遂行した。3049年、行方不明になったフェラン・ケルをザ・ロックで捜索していた際、ホークは新たな敵に遭遇し、かろうじて逃げ出した。ウルフ氏族である。ウルフから逃げたホークはヴェルダンディでケルハウンドと共に再結集したが、ハウンドが移動すると後に残り、一年近くを奇妙で強力な敵の情報収集に費やした。中心領域の王家君主たちがアウトリーチに集っていたそのとき、クレセントホークはジェイドファルコンとウルフを試験し、調査し、監視した。ジェイソンは氏族の装備と戦闘教義に関する深い洞察を得て、氏族前線に送られた部隊に即席の講義を行い始めた。ハンス・ダヴィオンがハウンドにルシエン行きを懇願したとき、彼はモーガン・ケルと共にいた。もし、モーガンとジェイム・ウルフが大義のために龍への憎悪を脇に置けるのなら、ジェイソン・ヤングブラッドもそうできるはずだった。

 ホークの対氏族の経験はブラック・ルシエンで徹底的に試され、数多の古参ホークが落ちて行った。戦闘の流れによってジェイソンはドラゴンズクロウが保っている戦線まで流され、クレセントホークと龍はつかの間、肩を並べて戦ったのである。戦後、タカシ・クリタその人が、ジェイソン・ヤングブラッドの襟にブシドーブレード勲章をつけた。これはジェイソンとクリタ家の血の宿恨が終わるのを公に終わらせるジェスチャーとなった。ジェイソンは勲章を父に渡し、父はタカシの政治的な抜け目なさを認めて笑った。「やつは敵を消し去った。それに使ったのは、短い言葉と金のわっかだけだ」。それから勲章は、戦争という業務に憎しみは必要ないと言うことを思い起こさせる役割を担っている。今日の敵は明日の敵に――あるいは雇用主になり得るのだ。

 一族のLAMはルシエンで重い損傷を負い、レクサテックの工場がノヴァキャットに破壊されたことから、もう部品は存在しなかった。クレセントホークは公式に解散したが、生存者はケルハウンドに吸収され、伝統は残った。このホークが休眠していた期間中、ハウンドはフェニックスホークの1機に中隊のロゴ(鷹の頭部)を描くことで、クレセントホークを記念したのである。龍に対する怒りを収めたジェイソンは、中心領域の新たな敵と戦うことに全精力を傾けた。パシフィカに戻った彼は、10年以上にわたって、共和国、連合、ラサルハグの兵士たちに対氏族戦術を訓練し、ブルドッグ作戦の際には、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンの顧問を務めさえしたのだ。

 クレセントホークはしばしの眠りについたが、鬨の声が再び彼らを呼び覚ました。ワード・オブ・ブレイクの聖戦の最盛期、チャンドラセカール・クリタはケルハウンドのアキラ・ブラヘ大佐に、偵察・特殊作戦用の戦力を送るよう協力を要請した。選択肢は一つだった。ジェイソン・ヤングブラッドはこのような任務を遂行するには年を取り過ぎたと考えたが、息子のジェレミアII世に聖火を手渡した。ジェレミアは再生したホークをオデッサに率い、ワードが隠していたガブリエル施設群を探り当てた。ホークがデヴリン・ストーンの地球進撃を支援すると、勝利はさらに続いた――例えばトーマス・ホガース将軍のギャクラックス占領では、フェータイル・クレセント・マニューバを用いて、経験不足の保護領市民軍レベルIIIを粉砕したのだった。

 オリエントとの副契約下でエリートたる第47シャドウ師団の支隊とぶつかったジェレミアは、ブレイク派のプーカを1機撃ち落とした。新型のLAMと認識した彼は、ハラス家の回収班の鼻先で、急いで残骸をアークロイヤルの父のところに送った。この行動は、契約の文面上違反には当たらなかったが、オリエント公国との関係は悪化し、ホークはライラ、合同軍の雇用下に戻った。聖戦が終わると、生き残ったホークはケルハウンドの根城に帰還した。マシンを赤と黒にペイントした彼らは、戦争が再び起きて宇宙が必要とするまで待った。ジェレミアが生きているあいだ、それは起きなかった。

 新たなクレセントホークが羽ばたくまで半世紀がかかった。HPGネットワークの崩壊によって戦争が始まったのを感じると、エヴァン・ケル大佐は3136年にホークを再建した。苛烈で誇り高いイゼベル・ヤングブラッド大尉は、この新たな権化を指揮した。最初の任務(ダストボールでのジェイドファルコンの妨害)は、鮮やかな成功を収め、スターコーネル・ルーカー・メータを殺して、一ヶ月近く氏族の作戦を混乱させた。それ以来、ホークはウルフ氏族や自由世界同盟の国々とやりあったが、ファルコンが新たな宿敵となった――特にケルハウンドがほぼ全滅してからは。イゼベルの憎しみはジェイソンのドラコ連合に対する遺恨に似ているとする者もあれば、マルヴィナの狂気の不穏な影だとする者いた。いずれにしても、イゼベル・ヤングブラッドは新世代クレセントホークの代表であり、前に立ち塞がるものにとっては危険な相手であることを証明して見せた。

 死が戦士となった者たちすべてを狙うこの時代において、アイデンティティを忘れることなく保ち続けている者たちがいることを知っておいてもいいだろう。もっと大規模な傭兵部隊、重量のある傭兵部隊は存在するかもしれないが、クレセントホークに匹敵する腕とステータスを持つ部隊はほとんどない。彼らがこの危機を生き延びるかはわからないが、歴史は彼らと共にある。新たな時代が開幕するとき、ホークは再び空に羽ばたくだろう。






伝統と戦術

 多彩な歴史を持つあらゆる部隊と同じように、クレセントホークは長年にわたって独自の伝統を築いてきた。いつも志願兵には事欠くことなく、不適合者を弾くためにいくつかのフィルターが設置されている……ケルハウンドのバッググラウンドがあることはプラスになるが、合格を保証するわけではない。志願したメック戦士は全員、シタデル・チャレンジ、すなわちジェイソン・ヤングブラッドがパシフィカで受けた痛ましい試練の再現に参加せねばならない。もしここで望ましい成果を残せなかったら、不合格通知を手渡される。現在までに、シナリオに勝利したメック戦士は1名のみだが、中には圧倒的な敵に打ち勝つには戦いだけが最適解ではないことを学んでいた者たちもいた。このテストは候補者の適応性、戦術的洞察力、実際性を効果的に審査するが、最後のテストではない。最終的に、ヤングブラッドの賛成のみがクレセントホークを形成する。このような名誉に属する候補者は、20名の内1名だけである。

 往事、ジェイソン・ヤングブラッドは、火力で敵を圧倒するのではなく、相手の裏をかくことで勝つようにホークを訓練した。この原則はきょうまで続いている。メックを輸送コンテナの中に隠したことにせよ、敵戦線の背後に出るために数時間かけて浅い川底を這っていったことにせよ、ホークは力尽くでなく革新的な戦術によって勝利を収めてきたのである。フェータイル・クレセントのような戦術(足の速い部隊が敵の背後から刈り取るように切り込み、同時に支援部隊が敵の側面を叩く)によって、重量に勝る敵を撃破してきた。地形でも、天候でも、敵指揮官の精神状態でも、ホークは利用できるものは何でも利用するのだ。






戦力構成

 クレセントホークの第一の本分は、概して軽機動打撃部隊であり、機動性の高いメック、たいていはライラ産を選ぶことにある。重量級は追加の火力を提供するのみならず、追従するために機動性を持たねばならない。聖戦中にロドニー・クラット中尉が使っていたオウサムは、かつてホークが使ってきた中で最重量であり、機動性を欠いていたことから大きな計画をひとつならず妨害していた。弾薬を使わない派生型が好まれるが、ガウスライフルや大型オートキャノンのパンチ力は居場所を持っている。それでも、ホークは軽装で行動することからパイロットは弾薬を節約するはずだ。戦場において、ホークは可能な限り現地の環境にマッチした塗装をマシンに施す。地形は彼らに取って最大の味方であるからだ。だが、時折、敵を威圧するために、パレード用の灰色と青に黄色のハイライトという配色を使うことがある。こうすると、たいていは友軍と地元民の士気が上がる。伝説が味方にあるときは、勝利は保証されたも同然なのである。

 伝統的に中隊規模の部隊であるホークは、各メック小隊に1個気圏戦闘機小隊を付けることで戦力を強化している。メック部隊とは違って、クリムゾンホークフライトは重戦闘機が主力となっている。その赤い翼の機体は、攻勢作戦におけるとどめの一撃と、状況が悪化した際の支援射撃の両方を行う。地上攻撃の猛練習を積んでいる各パイロットは、地形にかかわらず全速力の状態でメックを射貫くことが出来る。氏族侵攻の際、アヴェリー・カールソン中尉は、着実に敵メックの頭部をスレイヤーのオートキャノンで叩いたことで有名になった――それ以来この偉業に並び立つホークのパイロットはいない。

 聖戦の終わり近くに、ワード・オブ・ブレイクのトランプ級航宙艦を拿捕するまで、ホークは雇い主の供給する輸送船を使っていた。このとき、ジェレミア・ヤングブラッドは、改装された父のフェニックスホークLAMをトランプ級の船体に着陸させ、降伏しなければ艦橋に穴を開けると脅したのだった。クリムゾン・グローリーと改名した航宙艦は、以来、ホークのレパード級降下船3隻を運んでいる。3隻のレパードを使うという柔軟性は、ユニオン級1隻の兵站的利点を上回るものであり、ホークは常にひとまとめにする試みに抵抗するのである。






人物


ジェレミア・ヤングブラッド
 称号/階級: 大尉
 生年: 2981年
 ケルハウンドの伝説的人物なのだが、ジェレミアは依然として謎多き男である。彼はどの養成校の名簿にも載っていないものの、その腕前は比類なきものだった。当てにならない伝聞的証拠によると、彼は辺境にいた時期のカトリーナ・シュタイナーについて知っており、要請を受けて結成したばかりのケルハウンドに加わったという。ケルハウンドが解散した後、カトリーナはジェレミアをターカッドに呼び出し、私的な特殊部隊の指揮をとらせた。噂はタブロイド紙を賑わせているが、二人の関係は確認されたことも否定されたこともない。ディーロンでの苦難のせいで、ジェレミアは何らかの痛手を受けた。神経へのダメージによって、もう二度とバトルメックを操縦することは出来ず、よってホークの指揮をジェイソンに受け渡し、国家主席の護衛としてターカッドに戻った。3055年、ジェレミアは発作を起こして死去し、遺灰はカトリーナの墓の近くに置かれた。ジェレミアは彼女を永遠に守っているのかもしれない。


ジェイソン・ヤングブラッド
 称号/階級: 大尉
 生年: 3010年
 特殊能力: 生まれつきの才能/戦術
 ジェレミア・ヤングブラッドの一人息子、ジェイソンは若いころに父の影を感じていた。子供のころから人と違った考え方をしたジェイソンは、非正統派な戦術のコツをつかんでおり、ドラコ連合と氏族に対して勝利を重ねて来たのである。たとえ、クリタ家への個人的な復讐を目指している時でさえも、ジェイソンは戦闘になだれ込むことはなく、冷静を失うこともない。抜け目のない彼は部外者から冷徹に見られることもあるが、ホークの仲間たちはこの超然とした様が必要から来ていると認識している。なぜなら、友人たちに死んだり捕虜になる可能性のある命令をすると考えただけで、彼の心は締め付けられるからである。ルシエン後の落ち着いた時期、ジェイソンは新人メック戦士たちの訓練と、損傷したフェニックスホークLAMの修繕(再び飛ぶことを望んでいた)に時間を費やした。彼の母親については、マーリックの貴族から、ウルフ氏族の氏族人まで推測が飛び交っている。ジェイソンはこれを鼻で笑い、母については私人であるのみであるとし、正体を明かさないという権利を尊重している。


レックス・ピアース
 称号/階級: 中尉
 生年: 2982年
 二世代のクレセントホーク隊長にとって、友人であり腹心であるレックスは、軽率なジェレミアに冷静さを与え、ジェイソンには経験者の智恵を与えた。ライラの社会的階層において快適でなかったレックスはライラ正規隊に勤務しており、書類上のミスによってカトリーナ・シュタイナーの第10ライラ防衛軍に転属となった。着実な思索家であるレックスは、他人が考えても見なかった方向から物事を見る……彼の注意深い計画と人間に対する洞察によって、ホークは敵を爪にまでおびき寄せることが可能となったのである。ジェイソンがクリタ家に執着するのに狼狽したレックスは3039年後に引退し、ルシエン戦の後まで10年間疎遠になったのだった。


オリヴァー・グレンジェ
 称号/階級: メック戦士軍曹
 生年: 3013年
 グレンジェは連綿と長きにわたって続くメック戦士一族の血を引いていることから、地球時代の祖先は蒸気機関のメックで恐竜と戦っていたなどと笑うことなく真剣極まりない顔で語るのだった。3030年代にジェイソンのホークに参加するまで、タウラス国境のアウトバックで厳しい人生を過ごし、老成したグレンジェは命令に口を挟むことがない……彼はただ任務を実行し、指揮下の不平屋たちをむち打って後ろに並ばせるのである。グレンジェの内面について知る者はほとんどないが、時折(一杯やっている時とされる)、機会を逸してきたことと、ある男爵の娘について感情をあらわにするという。彼が語ってきた限り、その謎めいた少女は「動物と戯れ、雪のように風に乗って漂っていた」ようだが、部下たちは額面通りにこれを受け取っている。それは唇から血が出て鼻が折れるのを避けるためであった。


ジェレミア・ヤングブラッドII世
 称号/階級: 大尉
 生年: 3052年
 祖父のように勇敢で、父のように狡猾なジェレミアは、ホークが聖戦を生きるのに必要とした指揮官であった。ケルハウンドの一員として成長したジェレミアは、いつの日か名前にあったものを求められることになるかもしれないと知っていた。父とアキラ・ブラヘに求められた際、ジェレミアは家族の伝統を汚すことを恐れて拒否するところだったが、母とハウンドの同僚ロドニー・クラットに励まされ、ホークで最もダイナミックな指揮官となったのである。PHX-7Kのコクピットからほとんど向こう見ずに指揮するジェレミアは勝利に飛びつくしかなかった……3075年、カリソンとムフリッドの敗北が彼を落ち着かせるまでは。ムフリッドで部隊の半数を失ったことで、ジェレミアは抑うつ状態に陥ったが、立ち直って、より強くなり、再建されたホークを豪腕で率いた。聖戦が終わるまでに、彼は戦争を充分に体験し、アークロイヤルで隠居した。


ロドニー・クラット
 称号/階級: 中尉
 生年: 3047年
 どのような部隊も四角い釘(不適任者)を持っているものである。長年にわたって、ロドニー・クラット中尉はクレセントホークのそれであった。無愛想で、想像力に欠け、戦術的に平凡で、機械を動かすのが好きなクラットは、典型的なホークというわけではなかった。ジェレミアが指揮官だった時代、彼はジェレミアの荒削りな計画に口を出して、不可能なものをどうにか機能するものへと変えることにベストを尽くした。戦場において、クラットはジェレミアの護衛役を果たそうとしたが、オウサムの動きが重いことと、ジェレミアが素早く戦場を動き回ることによって、この任務は難しくなった。無愛想で真面目なクラットは、彼を悪ふざけの的とする戦友たちと仲違いしてきた。クラットの最大の(一部が言うところでは唯一の)喜びは家族である。妻のマリは彼のチーフテックを努めており、幼い二人の娘(ベビーホークと呼ばれている)は部隊内で溺愛されている。


ダリアン・ブルックス=ホルダー
 称号/階級: 中尉
 生年: 3018年
 氏族侵攻と聖戦の間、ダリアン・ブルックス=ホルダーは航空戦力としてホークに仕え、ルシファーのシートからクリムゾンホークの指揮を行った。彼女は二人のヤングブラッドに仕えた数少ないホークでもある。最初は若き名手としてジェイソンに徴募され、それから長年にわたってケルハウンドで腕を磨いた後、ジェレミアの下についた(3073年、アークトゥルスでのシラー中尉の死後)。匍匐飛行の達人であるダリアンは、立木の限界ギリギリを飛行して目標に接近する。戦闘機の胴体についた擦り傷は、パイロットとメック戦士問わず畏怖を与えるとされる。ジェレミアのホークの「大御所」のようなものとして、彼女は軍事の問題、家庭の問題の両方に助言を与える。空に生き、子供を持たず、ホークこそが彼女の家族なのである。彼女は3077年に戦死した。サマーでホークの降下船を守り、3機のスペクトラル・オムニ戦闘機を破壊して、大破したルシファーをアサルト・トライアンフに体当たりさせたのだった。


チェイリン
 称号/階級: メック戦士
 生年: 3055年
 放浪ウルフの戦士、チェイリンはメック戦士になるという高い望みを持っていたが、階級の神判で平均以下の結果を出して、エポナ・ホバー戦車を操縦することとなった。意気消沈し、自分に幻滅した彼女はすぐに氏族軍から追い出され、新たな情熱を探すべくつかの間アークロイヤルをさまよった。だが、彼女はメック戦士の心を捨て去ることが出来なかった。ヤングブラッドが再建されたクレセントホーク中隊の隊員を募集していると知ると、彼女は自由参加のシタデル・チャレンジに参加して、敵を殲滅し、完全勝利を成し遂げた唯一の参加者となった。放浪ウルフ氏族の元上官ですら感銘を受けたが、ジェイソンとジェレミアはすでに彼女を採用済みであった。ホークになってなお、チェイリンは最初の失敗による苦しみから逃れることができず、すぐに気分を害して他の隊員との口論に及ぶことがよくあった。戦友の大半はこれを「氏族的なやり方」の一例として無視しているが、ロドニー・クラットは特に彼女の悪い態度を憎んでいる。


イゼベル・ヤングブラッド
 称号/階級: 大尉
 生年: 3112年
 こんにちのホークの指揮官、ジェレミアII世の孫娘であるこの若き扇動者は、ケルハウンドでの勤務で戦闘に加わるのと同じ分だけ、規律問題での保護観察を受けてきた。ヤングブラッドの名前は彼女にうぬぼれを染みこませ、それが上官たちを悪い道に誘った……特に戦場で彼女の能力がこの強がりをバックアップした場合は。エヴァン・ケル大佐はイゼベルに再結成されたホークの指揮を渡した。はたしてこれは、成功してリーダーシップ能力を鍛えるか、失敗して無謀な精神を打破するかのチャンスであった。新しいホークはファルコンの怒りを買ったが、イゼベルは意思の力を持ってして部隊を引きずっていった。彼女が指揮しているのは、これまでで最も鍛えられたクレセントホークである。残された最後のヤングブラッドとして、彼女は名前を受け継ぐことが出来るのかを心配している。恋人はみな死んだことから、イゼベルは家族の遺産を残すために氏族の科学者に頼っているとされている。


デヴィルジャック・キャラハン
 称号/階級: 偵察兵/なし
 生年: 3101年
 ホークがたとえどこに行こうとも、デヴィルジャックには知り合いがいる。あるいは、知り合いの知り合いがいる。この浪費家の戦士は3130年にアークロイヤルでキャリアを絶たれ、放浪ウルフ商人の間違った人物たちに関わることとなった。だが、彼には知り合いがいた。投獄される代わりに、彼はケルハウンドのメックベイの管理人として「地域奉仕活動」を課されるよう画策するのに成功した。ここでイゼベル・ヤングブラッドという運命が彼に舞い降りた。偵察兵として、デヴィルジャックはホークの主力に先駆けて各世界を訪れて、情報、補給物資、任務を手伝ってくれる潜在的な味方を探し回った。その過程で彼のポケットが潤うことになれば……それはそれでいいのである。ホークの通常の軍事組織外にいるデヴィルジャックは、イゼベルにとって「存在しない人材」であり、彼の野心が上手くいった後、時折、刑務所に放りこんでいる。「そこでなら身の安全を図れる」というのが彼女の言い分だった。


アライズ・ゴーゴリ
 称号/階級: メック戦士
 生年: 3118年
 特殊能力: 第六感
 アライズは何が起きるかわかると自身で語っている。3歳の時に、彼女は列車の事故で母親が死ぬと予言し、父親は彼女を孤児院に入れた。大人も子供もこの奇妙で陰鬱な子供を避けた。アライズは悲しみを避けるためシミュレーターにこもった。シミュレーターでの信じがたい才能はリクルーターの目を引き、スカイアのサングラモア養成校に入るよう説得された。不器用だが疑いようもなく腕の立つアライズは、サングラモアで友人を作らず、シミュレーターでいじめを黙らせるか、不自然に怪我を予言して生徒たちを不安がらせた。退学した彼女はアークロイヤルをさまよい、イゼベル・ヤングブラッドに出会い心酔した。イゼベルは望んでない妹かペットとして彼女を扱った。アライズのメックには呪物、お守りが鈴なりになっている。それは彼女が唯一知っている価値のあるものだった。物静かで塞ぎ込んでいる彼女は、たとえ戦闘がなくても、傷ついているかのように見える。


ポローニアス・アラード
 称号/階級: 中尉
 生年: 3115年
 ホークに所属しているもう一人の有名な一族、アラードはかけられる期待をほとんど気にしていない。彼は望むままに振るまい、歴史と伝統は唾棄すべきものである。噂によると、ポローニアスはウルフ氏族スターキャプテンとの対決でスカージを勝ち取ったとされる。その詳細はいささかいかがわしいものである。尋ねられると、彼はぎこちない笑みを返すのみである。不真面目な返答は彼のトレードマークである。だれもポローニアス・アラードからまともな答えをもらうことはできないのだ。戦争は彼が真剣に応じる唯一の事柄である。一度メックのシートに座るとポローニアスの軽薄さは消え去り、よりアラードらしくなる。彼は大胆な攻撃を好み、それが敵のバランスを崩し、崩壊するまで叩き続ける。ポローニアスはヘルズホース氏族に対する個人的な憎しみを抱いている。それはかつてふったとある女性の死に関わりがあるからだ。この女性は彼のコクピットに座っている写真が残っているが、名前については言おうとしていない。








地獄を見る Going Through Hell

 惑星キエフは、オリエントの国境の外にあるのだが、オリエント公国との相互防衛協定を結んでいた。3076年、第47シャドウ師団の支隊が惑星上で目撃されると、トーマス・ハラス(当時はトーマス・マーリックの名を使っていた)は調査のために第3オリエント機兵連隊の1個大隊を派遣し、クレセントホークを支援に付けた。マネイドミニは最初交戦したがらなかったが、ブレイク派の降下船を破壊した後で、ジェレミア・ヤングブラッド大尉は第3オリエント機兵連隊を説得し、ブレイク軍をホークの待ち構えるヘルホーム渓谷に追い込むことが出来ると確信させた。

ヘルホーム渓谷
キエフ、自由世界同盟
3078年2月27日


 「オリエント機兵連隊の前衛が、こちらの落伍者と交戦しています。引き返して戦うべきでしょうか?」
 「いいや。渓谷に入れば持ちこたえられる。数は問題にならない」
 「誰かが同じことを考えたようです。尾根に誰かが移動しています」
 「そうだろう。マキシム侍祭、ジャンプして周囲に気を配れ。気をつけろ」
 「コンタクト! メックが頂上にいます! オリエント機兵連隊ではありません……傭兵のようです」
 「マキシム、ここに下がれ。マキシム?」
 「マキシムはやられました、司教!」
 「やられた? 誰か確認できるか?」
 「撃墜を確認しました。Pホークが彼女を崖から突き落として、オウサムの射界に入れました。いやウォーハンマー? ウォーハンマーだと思います」
 「ブレイクは地獄に落ちた。アポリオンが我らに勝利をもたらさん。誰か上に行け」
 「傭兵たちが頂にいます、サー。上がるたびに、連中が待ち構えていて落とされます」
 「それで奴らの重量級が渓谷にいて、撃つのを待っているというのか? いいだろう。ゾンビを渓谷に送れ。下から奴らを片付けるのだ」
 *くぐもった音*
 「うわっ、地雷だ! ザウリエル、ゾンビに掃討させろ」
 「もうゾンビはいません、司教。インフェルノミサイルが――」
 「敵です! 敵戦闘機が北東から!」
 「やつらは何でも持ってるのか? 呪われよ、やつらは単なる生身だ! 引き裂いてやる!」
 *爆発音*
 「司教? 司教……?」

 ――キエフのヘルホーム渓谷の尾根でアマチュア無線家が受信した通信


結末
 マネイドミニはクレセントホークをひどく過小評価し、その代償を支払った。ホークは30パーセントの損害を被ったが、小規模なブレイクのグループを殲滅し、その過程でプーカLAMを回収した。地雷が危険だとして、ホークは一時的にオリエント機兵連隊を渓谷に入れず、この時間を使って降下船にLAMの残骸を引っ張っていった。オリエントの亡命総帥はこれを知ると怒ったが、ホークはそれ以上の回収を要求しなかったので、契約に違反はしていなかった。













ストーン・トラッカーズ STONE’S TRACKERS






部隊の歴史と詳細

“Ultra Honorem”(絶対なる名誉)――ストーン・トラッカーズの非公式モットー。

 ストーン・トラッカーズの名で知られる恐るべき精鋭ジャンプ歩兵大隊のルーツは、共和国が生まれる10年以上前、聖戦の暗部で「汚い」任務をこなしてきた極秘のノヴァキャット氏族部隊にまで遡ることができる。最終的に、ストーン合同軍のほぼすべての同盟国から隊員を集めたトラッカーズは、任務を達成するために必要なことなら何でもするという信念によって、個々の違いを克服したのだった。

 3060年代前半、ノヴァキャット氏族とゴーストベア氏族の戦争の後、メック戦士・エリヤはリスターにして、実用的なまでに効率的な残虐さを持つとの評価を得た。ロッセイのブラッドネームを賭けたブラッドライトの神判の決勝において、エリヤは降下船のホールの中で遙かに巨体なエレメンタルと素手での交戦を行った。小さい方の戦士は敵に単純な罠を仕掛けた……大気圧力システムの部品と仕掛け線を使って、大腿部にパイプを突き刺し、大腿動脈切断でエレメンタルを殺したのである。この戦術は上手く行ったが、氏族の戦士たちから激しい批判をもたらした。

 エリヤ・ロッセイはブラッドネームを巡る戦いで刻まれた烙印にショックを受けなかった。この新しい評価を受け入れたのである。ノヴァキャットには中心領域で生き残るのに必要となるであろう効果的な特殊部隊がないと信じていたロッセイは、実行中のドラコ連合との交換プログラムの一環としてDESTコマンドーとのクロストレーニングを請願した。氏族文化の中でメック戦士の突出した役割を放棄したために避けられることとなり、仲間の戦士たちの軽蔑を受けたことで、彼はさらにかたくなとなった。エリヤはメックの内外での特殊部隊作戦をマスターし、DEST教官たちの高い評価を得た。

 第二星間連盟が崩壊し、聖戦が勃発した後、ノヴァキャットがイレース管区に撤退すると、エリヤ・ロッセイはついに長年恐れていたタイプの紛争がやってきたことに気がついた。エリヤは他に居場所がないことからノヴァキャット・ウォッチに放りこまれた一介のスターコマンダーに過ぎなかったが、氏族の伝統的な部隊では実行できない任務をこなす極秘作戦部隊を作るよう、サンティン・ウェスト氏族長に直接アピールした。ブレイク派が大量破壊兵器やテロ戦術を巧妙に使用していることを考えると、氏族の主流的な名誉からはデズグラと見なされるような任務を喜んで実行する戦士のグループが必要だと主張したのである。ウェストは躊躇しつつも受け入れたが、もし部隊の活動が白日の下にさらされたら放棄されることになるとこの頑固な新スターキャプテンに念を押した。新しい部隊が公式のTO&Eに載せられることはないと知っていたエリヤ・ロッセイは、ずうずうしくも第212ノヴァキャット・ヘッドハンター二連星隊と名付けることで氏族長をからかった。

 新しい部隊の隊員募集はさらに難しいと判明した。エリヤ・ロッセイはすでにノヴァキャットのはみ出し者であり、敵を下す能力を持ちながら個人の栄光より氏族の名誉を優先させる実利主義的な戦士を探すのは簡単なことではなかった。さらに、ロッセイは氏族の厳格な戦い方と、DESTの非正統的な戦術を混ぜることを構想していた。ロッセイはこのヘッドハンター部隊を、メック、エレメンタル、多数の通常ジャンプ歩兵(中心領域で長きにわたって絶大な効果をもたらしてきた)からなる超新星隊とする計画を立てた。新しく生まれた部隊は、物資の面では恵まれていた。ウェストの支援を受けて、WGT-4NCワイト・デズグラを限定生産し、第212が必要としていた柔軟性の高いヘッドハンティングメックが与えられたのである。

 3071年10月、ノヴァキャットがデヴリン・ストーンに忠誠を捧げるべく野営地を去ると、ここにいまだ戦力不足の第212も加わり、ブレイク派の脅威との戦いを望んだ。当初、ストーンは懐疑的だったが、ロッセイの部下たちはキタリー宙域を確立する上で重要な役割を果たした。第212はスピカでワード・オブ・ブレイクの統治を不安定化させる助けをした。精鋭による狙撃と待ち伏せで、肉体強化されたブレイク派の工作員を大胆に狙い、それは彼らのトレードマークになった。3073年、ホヒロ・クリタがノヴァキャットの半分を連合に戻すよう求めた後、ストーンは彼らを残すように取り計らった。

 第212はSCOUR作戦開始時にストーンのそばにおり、定期的に自殺に近い任務を――時には自殺に他ならない任務をこなした。戦士たちの道徳的柔軟性が繰り返し試された……狩りを成功させるには、どれだけの民間被害が受け入れられるか戦場で判断する必要がよくあったのである。これを示す有名な実例がある。ガラテア侵攻を支援するために1個小隊が展開し、上手く逃げ延びていたブレイク派指揮官を市中で暗殺するという判断がなされた。この女は心拍数に応じて起爆する「デッドマン」爆薬を仕込んでいたにもかかわらずである。爆発によって二十余名の生命が失われた。

 第212は奪還に成功した惑星の掃討をよく担当した。メック部隊が保護領市民軍を片付ける間、ヘッドハンターズの歩兵とエレメンタルは民衆に隠れたり惑星外に逃げようとするブレイクの指導者たちを探していった。後者の任務は可能であればブレイクの強硬派を見つけることも含んでいた。第212の好む戦術は、下級のブレイク派工作員を特定し、合同軍を支援したとの偽情報を広めることだった。裏切ったとされる部下に対処するため、ブレイク派の指導者が姿を現すと、ヘッドハンターズが動いて、価値の高い目標を排除するのである。おとりに使われた人物が生き残ることは滅多になかった。

 隊員の消耗率は上昇し、戦死者が出るたびにロッセイは苦しんだ。彼は戦士たちを家族同然と見なしていたのである。聖戦によって元のノヴァキャット隊員のほとんどが死亡し、新兵たちが志願するか、合同軍のリーダーたちによって配属された。これら補充人員は、すでに聖戦の最悪に晒されていた第212の戦術の価値に疑問を持つ必要はなかった。だが、彼らはロッセイや残った氏族戦士とよくぶつかり、多くが名目上は氏族とされていた部隊への配属で悪戦苦闘した。これら補充人員のおかげで、第212は超新星隊の定数を超えることが出来たが、メック部隊はロッセイの願いに反してたびたび別の任務に分遣されたのだった。

 氏族と中心領域の隊員の間で着地点を探すべくまだ奮闘していた第212は、3077年5月、サビクに上陸し、一年前から行われていた解放作戦を終わらせようとした。当初この世界は慎重に計画されたヘッドハンター攻撃で平定された。ゴーストベア軍はブレイク市民軍の上層部を惑星の大都市モフェストスに追いやり、第212が市民軍指揮官を待ち伏せし、殺害した。生き残ったワード・オブ・ブレイク軍の大部分は民間人の中に消え去り、数ヶ月後、暴動を先導し、ゲリラ戦を行うことで逆襲した。合同軍の守備隊(ドラコ連合軍指揮)はブレイク派を根絶しようとしたが、成功したのはロッセイと第212がワードに対する秘密作戦に乗り出してからだった。

 生き残ったワード兵にとって、サビクでの第212の活動は失敗の代償を思い起こさせるものだった。残虐な戦いがモフェストス中に広がり、都市を砂嵐から守っていた脆弱な環境システムが大規模なダメージを受け、惑星HPGが破壊された。ドラコ連合の守備隊は第212に自由を与え、精鋭たちはたびたび夜間の襲撃を行い、都市を掃除した。狂信的な逆襲によって、第212の隊員たちは日常的に爆殺、誘拐され、無残な死体が民間人の前に晒された。

 ロッセイの部下たちのプロフェッショナリズムと残酷な決意が勝利し、3078年が始まるまでに、惑星上のブレイク軍は抹殺された。第212が降下船に乗ってサビクを発ってから数日後、伝染性の神経病が惑星で大流行した。大昔に根絶されたはずのダウニング・ポルツ病と特定されたこの大流行は、3万人以上の命を奪った。惑星のHPGが損傷していたため、第212がこれを知ったのは2ヶ月後だった。降下船リソルヴ内の通夜で、ロッセイはストーンを支持し、いかなる犠牲を払おうとも地球奪還を成功させるとの誓いを新たにした。

 共和国創設後、ノヴァキャット氏族の一部が共和国に加わり、新たに誕生したRAF最高司令部は第212を得たことを特に喜んだ。第212の寄贈は各所の必要を満たしていた。ノヴァキャットはこのような部隊を作ったと否定できる。共和国は実戦で証明済みの恐るべき極秘作戦部隊を得る。隊員たちは新しい目標を得る……ストーンと共和国指導部が自分たちでやるには目立ちすぎる成果を手にし続けることが出来る。敵を追いかけることで生まれたばかりの国家の守護に身を捧げる下級隊員の一人が新しいあだ名を考案し、最終的に非公式な部隊名となった……ストーン・トラッカーズである。ストーン旅団はこれについて聞いていなかったが、聖戦での堅実な戦果を見ていたことから、反対した上級士官はいなかった。

 共和国軍が形成されると、第212のバトルメックはついに部隊から分離され、部隊はエリヤ・ロッセイ現少佐の指揮の下、第212特殊作戦大隊として再建された。ロッセイはバトルメック部隊がなくなるのを嫌がったが、上官たちは必要な諸兵科支援をすべて提供すると約束した。完全な歩兵部隊になるという変化によって、少佐はメックを手放さなければならなかったが、「万一のため」シミュレーターの訓練にかなりの時間を使った。氏族部隊としての痕跡もまた、各部隊から歴戦の古参兵たちを配属することで消された。これによって、多様性はあるが一体化したRAFを作るというストーンの計画が保たれたのである。

 ストーン・トラッカーズはヴィンドーランダ作戦の先陣を務め、チコノフに最初に降下した部隊のひとつとなった。彼らが受けた命令は、カペラの武家の作戦を出来る限り妨害せよという大まかなものだった。チャンスがあったときはどんな目標でも狙ったのだが、トラッカーズは主にダイ=ダ=チ家に集中した。ロッセイはダイ=ダ=チをトラッカーズの闇を映す存在と見ていたのである。この武家は残虐な戦士の集団で、勝利のためには民間の目標に必要以上の大規模なダメージを与えることがよくあった――ロッセイを外科用メスとすると、ダイ=ダ=チはハンマーだった。トラッカーズは作戦を成功させ、ダイ=ダ=チをいらだたせた。橋に爆薬を仕掛けていた武家の工兵をトラッカーズの各狙撃小隊が仕留めるというケースが二度あり、さらに際だった例としては、トラッカーズのある一等兵が武家の哨戒線を抜けて野営地に入り込むのに成功し、メン=シェンをいじって翌朝出力を上げたら核融合エンジンが破滅的な故障を引き起こすようにした。

 共和国初期の黄金期は、トラッカーズにとって恩恵ではなかった。部隊はRAFの特殊部隊の中でベストに入っていたが、ロッセイは実戦の不足で愛する自部隊が精鋭としての力を失うことを心配した。みすぼらしいが機能的な聖戦期の制服は共和国のきれいな青にとって変わり、新兵の一部は極秘であるトラッカーズへの配置を公に自慢しさえしたのである。RAFの他部隊と同じように、聖戦経験者の多くが共和国初期に退役した。自身も戦いの機微を失ったと気がついたロッセイは3096年それに加わった。イレース行きの降下船に乗る前に、彼は部隊の残った士官たち(後継者で義娘のアイコ・ウエダ含む)に、勝利を達成するためには喜んで何でもする戦士たちというヴィジョンを続けるように課した。その点でアイコ・ウエダと部下たちは可能な限りの最も危険な任務を探し、第V、第VI宙域の征服した星系でカペラシンパを追いかける活動、ブレイク派の活動が明らかになるたび隠れ家に忍び寄る活動のふたつを行った。それでもウエダは技能に値しない任務をこなしすぎて、鋭さを失ったと信じており、若い兵士たちは目立たない部隊にしては情熱を持ち過ぎていた。

 カペラ・クルセイドは部隊が死活的に必要としていた経験を提供した。兵士たちが本格的な戦争に対する準備が出来ているか個人的な懸念があったにも関わらず、ウエダはマグヌス作戦でストーン旅団に同行するという請願に成功した。攻勢の最初の数週間、部隊は軽い行動をしたのみで、その後の3112年10月、RAFの最精鋭と共にサーナに降下した。ここで彼らはかつてない機会に遭遇することになる。カペラ大連邦国の後継者、ダオシェン・リャオを狙うのである(RAFが上陸する前に惑星を脱出出来なかった)。

 サーナでトラッカーは第1聖アイヴス・イェニチェリの破滅を招き、かつての栄光を取り戻した。ストーン旅団の連隊群がイェニチェリと共和区知事近衛隊に圧力をかけていた間、トラッカーズはイェニチェリに対する残虐なヘッドハンティング作戦を行い、士官、補給車列、後方群を繰り返し目標にして、混乱を振りまいた。記念すべきは、トラッカーズのある偵察狙撃小隊が即席の士官会議中にイェニチェリ少校の暗殺に成功したことである。厳格な訓練によって、カペラ戦士たちは逃げ出さず、次席士官に目を向けた――直後、この士官は死亡したのだった。

 RAFが、テンゴ航空宇宙工廠・ルー=サン家の残存戦力・ダオシェン・リャオへの最後の攻撃のために結集していたそのとき、ウエダ少佐はストーン・リベレーターズの側面強襲に参加する権利を与えられた。トラッカーズはかつてのようには戦わず、ウエダと士官たちが機動伏撃や罠を巧みに組織化し、守るルー=サンを撃破した。ストーン・リベレーターズのジェローム・エドワーズ大佐がダオシェンに降伏を呼びかけた時、ストーン・トラッカーズはその場におり、イマーラ家の勇敢な戦闘降下の矢面に立った。トラッカーズは、アイコ・ウエダが戦死するなど深刻な損失を出し、RAFの戦線後方に退却した。その隙に、武家イマーラがカペラの後継者を惑星外にエスコートしたのだった。

 トラッカーズはカペラ・クルセイドの後、再建するには損害が大きすぎるリストに入れられ、公式に解散した。RAF特殊作戦部隊の多くは、生き残った隊員たちが他部隊に注意深く配置されたと信じている。それは、来たるべき暗黒に備え、彼らが持つ鋭さの何らかをRAFのエリートに伝えるためである。






人物


エリヤ・ロッセイ
 称号/階級: 指揮官、第212ノヴァキャット・ヘッドハンター二連星隊(ストーン・トラッカーズ)、スターキャプテン(3071年)、少佐(3081年)
 生年: 3042年
 ブラッドネームの神判の結果として、望ましくない任務を任されたエリヤは、評判を喜んで受け入れて、ノヴァキャット・ウォッチへの配属を受諾し、ドラコ連合特殊部隊とクロストレーニングする交換プログラムに加わった。氏族評議員の一員として、ロッセイは大勢の似たような中傷された戦士たちと友になり、極秘作戦部隊を作るという着想を得た。聖戦の勃発によって、サンティン・ウェスト氏族長はロッセイの提案を受け入れ、第212ノヴァキャット・ヘッドハンター二連星隊は瞬く間にいかなる代償を払おうとも結果を出すという評価を得た。部隊の初期メンバーが犠牲になると、ロッセイは損失を個人的に受け取り、内証的になっていった……結果として、戦争の後半に補充された非氏族の兵士たちからはよそよそしく冷淡と見られるようになった。エリヤは部隊が拡大されるたびに大声で反対した。特に、共和国の創設期に、メック戦力をよそに移して、部隊を専門の歩兵大隊に変換・拡大した時には反対した。20年以上におよぶ戦争で傷つき、部隊が再建で水増しされていると感じたロッセイは、3096年に引退してイレースに引っ込んだ。


アイコ・ウエダ
 称号/階級: 中尉(3085年)、少佐(3110年)
 生年: 3056年
 ブレイク派がイレースを襲撃し、家族を皆殺しにした時、若干16歳だったウエダは、ロッセイの目に留まった……ノヴァキャットが隣人の復旧を助けていた時のことである。少女の中に現実的な生存者のメンタリティを感じ取ったエリヤは、怒りに満ちた彼女の保護者となった。書類上はボンズウーマンとなったウエダは、すぐに戦士階級に受け入れられた。ロッセイの横で軽率さを抑えたウエダは、SCOUR作戦の間に1個歩兵小隊を率い、ヘッドハンターズの中心領域補充兵からは冷酷との評価を得て、氏族戦士からは個人として完璧との評価を得た。RAFの中で素早く昇進した彼女は、義父が引退した後、後を継ぐ唯一の実際的な選択肢だった。義父と同じように、彼女は例外的に長期にわたってトラッカーズの指揮官の座にあった。彼女は氏族と中心領域の隊員をまとまった戦闘部隊にする最後の段階を監督し、その一方、価値の低い目標相手に酷使されることと戦い続けた。3112年のマグナス作戦における、サーナの戦いの最終局面で、ウエダ少佐は部下たちの多くと共に戦死したのだった。


ジャイデヴ"ジャイ"パティル
 称号/階級: 中尉
 生年: 3050年
 第二世代の歩兵であるパティルは、コムガードの兵士としてツカイードで戦死した母親の足跡をたどり、名誉を引き継ぐべく、少年時代より激しい訓練を行ってきた。〈インヴィジブル・トゥルース〉の地上部隊に勤務していたパティルは、ケース・ホワイトにおける幸運な生存者の一人であり、極端な偏見を持ってして聖戦をブレイク派の残虐と戦うことに費やし、それが上官の注意を引いた。ノヴァキャットの秘密作戦部隊の話を聞くと、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン軍司教は、ジャイと他数名を第212に顧問として送り込んだ。パティルは氏族部隊に溶け込むのに苦労し、何度も仲間とぶつかった……戦場での活躍で、ロッセイ少佐の賞賛を受け、小隊指揮官に昇進したにもかかわらずだ。最初のストーン・トラッカーズのTO&Eに入ったが、パティルはRAF内で別の職を探そうとしているのを隠そうとはしなかった。彼がチャンスを得ることはなかった……3084年に辺境でマネイドミニ目撃の噂を調査している時に、彼の小隊は姿を消したのである。


ミラ
 称号/階級: 軍曹(3085年)、中尉(3110年)
 生年: 3058年
 トゥルーボーンのエレメンタルであるミラは、比較的小柄だったにもかかわらず、ブラッドネームを勝ち取るのを夢見ていた。ポイントコマンダーの地位を達成した彼女は、3077年にティグレスを解放した部隊の中にいた。ミラのポイントは、汚い爆弾が合同軍を破壊した際に、降下船にたどり着きかけていた。仲間のエレメンタルたちは爆風の中に囚われるか、壊れた装甲の隙間から侵入した化学物質に晒されたが、彼女は生き残った。怒り狂ったミラは、加害者と特定されたカペラ人ゲリラを追い詰め、引き裂いた。この若き戦士の決意に感銘を受けたロッセイは、彼女を自部隊に転属させた。伝統に熱心なこのエレメンタルは、新しい戦友の大半をデズグラと考え、当初は共に働くのに苦労した。栄光と名誉を望む彼女は共和国で新たな人生を見いだし、他のいくつかの部隊で立派に勤め上げた。キャリアの終わりにさしかかった3110年、彼女は非戦闘員の資格でトラッカーズに帰還し、親友であるウエダ少佐の個人的なボディガードとして本部分隊で勤務した。


ファラ・アル・アワバ
 称号/階級: 軍曹
 生年: 3062年
 3062年、惑星ダビーで双子の弟サイードの数分前に生まれたファラは、有名なアーカブ軍団に入隊して、アザミの遺産を遂行することを望んでいた――10歳の時にアザミがドラコの支配下から独立すると、この夢はさらに膨らむこととなる。カモフラージュと待ち伏せの技術をマスターすべく弟と共に訓練を積んだファラは、誰も予想してない方向から奇襲と強襲をかけるエキスパートに成長した。ダビーがスフィア共和国に加入すると、アーカブ軍団に入隊するという夢は潰えたが、故郷への忠誠心は残り、RAFへの加入を選んだ。悲劇は、3085年、ガン=シンでの最初の任務中、カペラのパルチザンが兄弟のトラッカーズ小隊を攻撃した時に起きた。大きく劣勢だったファラは、迫る敵の側面に迂回し、最後の単独奇襲攻撃を仕掛け、これにより弟と分隊は離脱し、脱出することが出来た。この過程でファラの生命が代償となったのだった。


サイード・アル・アワバ
 称号/階級: 伍長(3085年)、大尉(3110年)
 生年: 3062年
 双子の兄、ファラより数分遅く生まれたサイードは、すぐに弟扱いされ、情熱的な兄の信奉者となった。兄が子供時代の遊びを、アーカブ軍団で栄光あるキャリアを積むためのトレーニングと見ていた一方、サイードはそれとして見ていた……単なる遊びである。無能に見えることで絶えずファラに説教されていたサイードは、それにも関わらず、兄と一緒にRAFに入隊した。兵士たちの中でサイードは親しみやすく、楽しむことが好きな双子との評価を得た。そんな明るさはガン=シンで兄と共に死に、誰よりも努力することで兄の犠牲に報いると強く誓ったのだ。兄の死んだ部隊の外への異動・昇進をすべて断ってきたサイードは、共和国の最初の20年間、トラッカーズの腕を維持するのを助ける上で大きな役割を果たした。3106年、彼はサイス中隊の指揮を強要されたが、役職につきものの「ペーパーワーク」に忍耐を傾けることはなく、第X宙域でも危険な環境での数日にわたる危険な屋外訓練を好んでいる。


ドリアン・コザー
 称号/階級: 特技兵
 生年: 3091年
 共和国の黄金期に地球で生まれたコザーの生家は、裕福で、ストーンの夢の熱心な信者であり、これは一人息子にも受け継がれた。両親の承認を得て、ドリアンは年齢を偽ってRAFに入隊した――早い段階で事実が暴かれたが、基礎訓練と偵察学校での成績が抜群であったことに影響はなかった。積極性に幾度も言及されたコザーは、十字軍戦士にして熱狂者との評価を確立し、共和国を完全に受け入れない者たちに異を唱え、現在の政策に疑問を持った同僚にたてつくことすらあったのである。サイード・アル・アワバは彼をトラッカーズの爆破・破壊工作の専門家に選んだ――アル・アワバはコザーが部隊の失った焦点を取り戻す助けとなり、昇進していくと信じている。


エステバン・デ・ラ・ロサ
 称号/階級: 大尉
 生年: 3078年
 比較的最近、カペラクルセイドの前に第10ハスタティ歩兵旅団から転属となったデ・ラ・ロサは、トラッカーズに不和を呼ぶ人物と証明された。ニューアース生まれの彼は、鍛えられた特殊部隊員であったが、RAF特殊部隊部門で昇進するために、新しい地位を足がかりにするという望みを隠すことはなかったのである。彼とウエダ少佐は、カペラ・クルセイドまでの短い準備期間中、部隊の配置について繰り返しぶつかった。デ・ラ・ロサは、成功か失敗かがはっきりとする演習任務を好んだその一方で、ウエダはこのような決まり切った活動によって、決まり切った技能のトラッカーズが作られ、難しい目標を追うのに必要なエリートの能力が犠牲になると信じていた。両者の議論が決着することはなかった。ウエダはサーナで戦死し、デ・ラ・ロサ(残ったトラッカーズの再先任士官)はサングラモア養成校の教官に昇進したのだった。


ガゼル・シャルボンヌ
 称号/階級: 中尉
 生年: 3086年
 シャルボンヌは地球での特殊部隊合同演習において名を上げた。演習中に、彼女は部隊から離れ、ストーン・トラッカーズ本部の数メートルにまで迫るのに成功したのである。彼女は見つからずに、エステバン・デ・ラ・ロサ大尉に一撃を見舞い、彼の分隊の隊員に「射殺」されたのだった。デ・ラ・ロサは不機嫌だったが、シャルボンヌに潜入の達人の才を見た。ウエダ少佐はこの若きケベック人兵士を庇護下に置き、後継者候補の一人として育成した。それはエリヤ・ロッセイが彼女にしたことに似ていた。小隊指揮官に昇進した後、シャルボンヌはデ・ラ・ロサとロマンチックな関係に陥った。シャルボンヌ中尉は、単に師の情報を引き出すための関係なのではないかと恐れたが、トラッカーズが消滅する前に真実を知ることは出来なかったのだった。


エダン
 称号/階級: 上等兵
 生年: 3093年
 トラッカーズの氏族部隊としてのルーツに先祖返りしたエダンは、ウルフ氏族から共和国に加わったスラダク・ブラッドラインの子孫である。階級の神判の直後、第IV宙域で氏族強硬派にアプローチされたエダンは、彼らの提案をはねのけ、RAFに入隊した。疑いようもなく才能豊かなエレメンタルのエダンは、ミラ中尉によってストーン・トラッカーズに徴募された。年長のエレメンタルであるミラ中尉は、エダンを新兵たちの規範とし、氏族のひさむきさと勝利への執念(平和の数十年のあと共和国生まれの若者たちに欠けているもの)を植え付けることを望んでいた。エダンはサーナでの武家イマーラによる強襲を生き残った数少ないトラッカーズの一人であり、RAFでの長いキャリアの中で遺産の守護者となった。













第1マーリック・プロテクターズ First Marik Protectors






部隊の歴史と詳細

 聖戦は数百万の家族を引き裂いたが、中でも傷が深かったのは自由世界同盟だった。同盟は最大規模の継承国家ではなく、とりたてて栄光に満ちていないが、それでも中心領域最古の国家であり、多様な国民たちは共通の利益のため長いこと意見の相違に耐えてきた。聖戦中でさえも、同盟を終わらせたのは戦争によるストレスではなく、信頼が失われたことだった。ブレイクの走狗たちは与えられた仕事を果たした――有名なのは偽トーマス・マーリックを潜り込ませ、それから正体を暴いた――のだが、結局のところ同盟の地殻に入っていたひびを利用したにすぎない。3079年1月28日を最後に議事堂の扉が閉められると、世界の多くが暗闇に一人で残された。この空隙にやってきたのが、第10マーリック国民軍のヨシオ・カワムラであった。カワムラは祖国の人々を守るためにFWLMに入隊し、その人々は国家が消滅しても残った。暗闇の中で助けを呼ぶ声にカワムラは応えた。

 カワムラによるマーリック・プロテクターズの種は3077年に植えられた……このときカエサル・オレイリィが聖戦後の混乱に乗じて、自由世界同盟の世界をマリアンに併合すると脅したのである。反旗を翻したリム共和区に向かっていたカワムラ(当時第10マーリック国民軍の少佐)は悪魔の選択に直面した。命令どおりに道を違えた自由世界市民を目標にするか、それとも外部の驚異から同胞を守るかである。名誉が任務に優先した。カワムラは上官を追放し、コリン・マーリックと同盟の政治に背を向け、第10国民軍をケンドールに向けた。戦争という最悪を農業世界にもたらした、短いが血塗られた戦役を通して、カワムラは自国民の生命を守るのに身を捧げるという中心領域でも比類なき部隊を作り上げた。

 地域的な忠誠心が呼び起こされると、中央の支援を受けられない第10マーリック国民軍は崩壊し始めた。残ったのは指揮官の掲げた理想に従う者たちであった。核となる古参兵たちと、志を同じくする他の分裂した部隊を融合させ、ケンドールの豊かな資源を使ったカワムラ大佐は、自由世界同盟の旗の下にいた独立世界を守る強力な疑似傭兵団を作り上げた。荒廃し、海賊を惹き寄せる宙域では、契約に事欠くことはなかった。傭兵市場が混乱するなかで、マーリック・プロテクターズは、コインによって忠誠心を変えるかもしれない報酬戦士の信頼できる代役であった。

 同盟の中央政府は消滅し、連隊の旗は変わったが、カワムラ大佐は第10マーリック国民軍の団結心を保ち続けた。士官はほとんど残らず、彼らを踏み石として使って、一流の部隊へと移っていった。残った者たちは、アトリアン軽機兵隊、竜機兵団と同じくらいの誇りを抱いていた。指揮官の個人部隊であるアルファ中隊は、この任務に人生を捧げる者たちで構成される。カワムラは、中隊を招集した際に、伝統と名声に従うことを思い出させた。第10が伝統から大きく離れているのは、戦場での役割である。前衛、突撃部隊として有名だった第10は同盟による数多の重要な強襲作戦で先陣を務めてきた。マーリック・プロテクターズは正反対に防衛作戦を得意とする。

 3082年後半、サックヴィルへの襲撃が繰り返され、惑星政府は外部への助けを懇願した。タマリンドはサックヴィルが見返りを約束していないと感じて拒絶した。カワムラ大佐はすぐさまサックヴィルの懇願に応じ、タマリンドのブレット=マーリック女公に対して厳しい非難を送りさえした。1個諸兵科連合大隊とともに到着したカワムラは、惑星政府が用意したファンファーレもパレードも拒否し、防衛の準備を行った。サックヴィルの頭痛の種になっていたのは、主に元コンパス座の海賊グループであった。彼らの攻撃はあまりに多く、予想不可能になっており、地元の賭博場は日時と目標にオッズをつけていたくらいだった。カワムラは自らベットして、準備した。

 海賊団(リンカーン・ロッティング・コープスの名前で知られる落ちぶれた集団)はタイフィールド市の外部にボロボロの大隊を上陸させ、いつもの強奪作戦のため倉庫地区に進んだ。掛け金を回収するためにカワムラ大佐は、急いで空にした倉庫いくつかに第1の装甲・歩兵部隊を配置した。海賊たちが最初のドアを開けると、デモリッシャー戦車からの砲弾に出迎えられた。プロテクターの歩兵たちは遮蔽から射撃を開始し、装甲中隊の残りが姿を表してコープスのメックに立ち向かった。カワムラ大佐は海賊の退却を妨害するためにメック中隊を動かし、そのあいだメック戦士サディー・バナーはレイスを駆って砲火の下を突っ切り、海賊のミュール降下船の大口に飛び込んで、ほぼ完全な形で拿捕した。生き残った海賊たちは、残りの降下船に見捨てられると、地下に潜った。サックヴィルの統治議会はカワムラ大佐を名誉市民とし、プロテクターズに多額のボーナスを支払った。この資金で新しいホバー戦車中隊を戦力に加えることができたのである。リンカーン・ロッティング・コープスはマーリック=シュタイナー国境沿いを荒らし続けたが、稀になった襲撃は範囲を小さく狭めた。

 マーリック・プロテクターズの敵は常に辺境から来ると決まっているわけではない。プロテクターがレンコンでレグルスの権益を妨害したことに怒ったタイタス・キャメロン=ジョーンズ国王は、3083年、第8レグルス機兵連隊をケンドールに送り込んで、鼻持ちならないカワムラがもう鼻を突っ込んでこないよう教えてやろうとした。3077年のマリアの侵攻が繰り返されるのに備え、数年かけて惑星の防衛を強化していた第1プロテクターズの2個中隊はケンドール市民軍と一緒にレグルスを地獄に突き落とした。ケンドール麦の肥沃な畑には、掩蔽壕がグラウンドホッグの巣穴のように点在し、偽の穀物サイロにはミサイル砲台が隠され、低空飛行する通常型戦闘機が迷い込んだターゲットを狙い撃ちするために待ち構えた。レグルスはレイクランド市にある第1の司令部施設に向けて少しだけ前進し、悲惨な二日間でノンストップの攻撃を受けて撤退した。操縦士ウィンストン・スカグネッティのメックバスターによる最後の一撃がグリーソン少佐のテンペストを貫通し、レグルス指揮官に屈辱の帰還を強いたのだった。

 プロテクターズは時折、攻勢の契約を受けるが、それはFWL以外の世界に対するものである。マリア帝国第IV軍団からの絶え間ない攻撃に苦しんでいた世界ラハティは、第IV軍団の本拠地トロンハイマルへの懲罰襲撃のため、3084年に第1プロテクターズを雇用した。カワムラ大佐は、マリア帝国を刺激したくなかったが、ラハティの窮地に同情し、第IV軍団の鼻面を叩くため、いささか評判の悪い傭兵中隊ハボック・インクと下請け契約を結んだ。雇った傭兵たちが酔っ払った状態で到着すると、カワムラ大佐は難色を示し、計画を撤回しようとしたが、フィオナ・サン・マルコス中尉が別案を提示した。メック中隊をハボックのものに塗装し直し、彼らの輸送船を使った彼女は、トロンハイマルへの電撃的な襲撃を実施し、第IV軍団を痛めつけ、ラフティからの攻撃であるという明白な証拠を残したのだった。

 最初、この欺瞞工作に落ち着かなかったカワムラは好みを脇に置いて、来るべきマリアの報復に備えて第1プロテクターズを隠蔽した要塞に配置した。第IV軍団は期待を裏切らず、ラフティを破壊すべく大挙して押しかけた。最初、マリアの新型ラヴェジャーがプロテクターの戦線を切り裂き、後方を守っていた非装甲歩兵を襲ったが、ドリス・カルフーン大尉がコピス・スーツ1個中隊を空中降下させ、マリア軍を煙と血の雲の中に後退させた。

 重装甲中隊に待ち伏せされ、丸裸となったマリアのバトルメックは、間接砲撃によって重い損害を被った。マリアの気圏戦闘機は地上軍を救援するため機銃掃射に乗り出したものの、パルチザン対空戦車の対空砲火に面しただけだった。アルベリヒ・ヴィノグラード大佐は罠にかかったことに気づき、撤退の命令を出した。第IV軍団が見せた緊密な連携と砲火の下での整然とした退却に感銘を受けたカワムラ大佐は降下船への帰還を許した。ヴィノグラード大佐との短い会談で、カワムラはラフティと帝国のデタントを確立し、二人の間には敬意が生まれたのだった。その後の第1プロテクターズと第IV軍団第3コホートとの遭遇は、流血の少ないほとんど友好的で儀式的な一件として終わったのだった。

 第1マーリック・プロテクターズの商売は繁盛している。それはいいことであり、悪いことでもあった。カワムラの兵士たちは日毎に磨かれていったが、燃え尽き症候群と心的外傷後ストレスで苦しむ者もまた増えた。駐屯任務はたいてい怠惰な兵士が夢見る任務だが、襲撃のはびこる宙域では誰も休むことなどできない。第1は離職率が高く、特に勤務が1年以上に及ぶ歩兵旅団ではそうだった。マーリック・プロテクターズは見捨てられた世界の市民たちにひとつの希望を提示するために存在する……闇が迫るとき輝く光がそこにある。平和を破る者たちを叩く槌と金床になり、辺境の悪に対する盾となるのだ。プロテクターズ、その後ろにいれば安息を得られるだろう。



装備と戦術

 プロテクターズを結成した際にカワムラ大佐がとった最初の行動は、ケンドールのカリ・ヤマATC、ブルックス社と長期契約を結び、適正価格で補給を維持できるように保証することだった。プロテクターズのメック部隊はカリ・ヤマのハーキュリーズとオリオンが占めてる。その結果、防御に向いた重部隊となり、ブルックスのペガサス・ガレオンと相性抜群である。各大隊は、1個砲兵隊と、偵察・観測用に少なくとも1個のVTOL、高速ホバークラフト小隊を配備する。非装甲歩兵がプロテクターズの戦闘部隊の大半を構成し、カワムラが確保した最良の野戦装備を使っている。各中隊はアキレウス・バトルアーマー1個分隊と、強襲用にロンギヌスかファランクス・スーツ1個分隊を配備する。

 プロテクターズは恒星連邦の軽戦闘団と似た形で組織される。装甲・歩兵戦力はたいてい中隊レベルで組み込まれ、増強した気圏戦闘機1個大隊がエアカバーを提供する。各部隊は任務にあわせてさらに細かく分割できる。バトルアーマー中隊が部隊を率いて、支援に戦車・メック1個小隊がつくのも珍しいことではない。中尉以上の士官たちは必要ならば独立して行動し、指揮を取ることを期待される。戦場では大きな自由裁量が与えられる。指揮官たちは地に足をつけて地元の地形を把握し、それに沿った計画を立案する。

 中佐全員が防衛領域内にある各世界の基本的な地理を知ることを求められる。移動時間は、天候パターンや市街地の位置など、守ることになる区域について知るために使われる。人口密集地帯では戦闘を避けるよう常に気が払われる……もし都市が目標になりそうなら、損害を最小限に抑えるため避難措置が取られる。カワムラ大佐はプロテクターズという部隊の呼称を真剣に受け取っている。もし死がやってくるのならば、彼らの責務はその前に立ちはだかることであり、自らの命を捧げることである。このやり方で、民間人が一人でも助かるのならば、犠牲は正当化されるのだ。



制服と慣習

 マーリック国民軍の精神は第1プロテクターズの中に流れており、それは慣習にはっきりと表れている。制服は自由世界同盟の栄光の日々と変わらぬシンプルなオリーブグリーンのジャンプスーツで、左の胸に戦士の名前が印刷されている。部隊の装備には第10国民軍の槌と鉄床の紋章が印されているが、伝統的なマーリックの紫はチャコールグレイに変わり、赤のアクセントの代わりに鉄の縁取りがある。この暗い雰囲気は同盟が死んだことの暗示、あるいは単にトマス・ハラスの名前で知られるようになった男がマーリックを裏切ったことの暗示かもしれない。これについてカワムラ大佐は何も語らない。

 部隊の士気は模範的な勤務に対する評価と報酬によって維持されている。月次の職務チェックリスト(装備の整備、整頓、制服の体裁など単純な課題も含まれる)が中隊レベルで継続されている。月末に最高点だった兵士は追加で有給休暇1日を得る。作戦ごとに従軍記章が製作され、惑星旗がデザインに組み込まれる。古参の戦士は礼装に従軍記章を詰め込むのに苦労するようになる。類まれな勇敢さで他者を守るために自らをリスクにさらした戦士には、ケンドール・ブラッドストーン(ケンドールだけで見つかる真紅のガーネットをティアドロップにしたもの)が授与される。あまりに名誉であるため、兵士たちは戦場であっても誇りとともに着用する。






人物


ヨシオ・カワムラ
 称号/階級: 大佐
 生年: 3021年
 第四次継承権戦争の後、シュタイナーの統治下で生きるよりはと元連合の世界ヨリイから逃げ出した両親を持つ若きヨシオは、自由世界同盟の自由と父が強要するブシドーという相反する信条のあいだで成長した。軍に勤務することをほとんど宿命づけられていたカワムラは、ストイックなプロフェッショナリズムとメック戦士としての技能で、名誉ある第10マーリック国民軍に配属された。シンディ・メイヤーズの指揮下で、彼は長年苛立っていたが、マーリック・プロテクターズの結成で部隊を指揮することの難しさを新たに認識し、かつて嫌っていた女性を尊敬するようになった。女性に対する偏見は近年緩和されたが、指揮下にある男女に最大のプロフェッショナリズムを求め続けている。
 スペシャル・アビリティ: カワムラ大佐が戦場にいるとき、プロテクターズはすべての士気チェックに+1の修正を受ける。プロテクターズが防衛側となるシナリオでは、カワムラが戦死するか無力化されるまで、強制退却の対象にならない。


アーレン・マンダレイ
 称号/階級: 少佐
 生年: 3041年
 マンダレイはヨシオ・カワムラの側近を20年近く務めた。かつて野心的だった彼は時を経て自分の指揮上の欠点を認識するようになり、自ら副指揮官の座から降りた。一人の優秀な士官として仕えることに満足しているマンダレイは、カワムラの命令、反応、さらには機嫌までも予測し、卒なく任務をこなしている。疎遠な家族と過ごすためこれまでに二度退役しようとしたが、後任がいないとして二度ともカワムラに慰留された。最近、ラヴォア中尉を後継者として育成しているが、カワムラの偏見を熟知していることから見ると興味深い選択である。残念ながら、彼はラヴォアとロマンチックな関係になり、退役して別居中の妻と子のもとに帰るかは疑わしい。


ケリス・ラヴォア
 称号/階級: 大尉
 生年: 3048年
 ラヴォア一族はマーリック国民軍に仕えてきた長く多彩な歴史を持っている。芸術への情熱を持っていたのに、両親と兄弟が全員軍人であったことから、若きケリスは入隊せざるを得ないというプレッシャーを感じていた。赤ん坊の頃に耳の感染症を治療せず、内耳にダメージがあったことから、バトルメックの操縦は出来ず、装甲部隊に所属することになった。それは単に家族が満足するまで勤務するためだけのものであった。聖戦で予想外に従軍期間が伸びた上に、入学を希望していたアトレウスの演劇学校が破壊され、夢を失った彼女は辛辣で陰気な性格になった。装甲旅団の装甲中隊指揮官への昇進は彼女にとっても驚きであった。彼女のペガサス(クレシダと命名)は彼女が演じることのなかった有名な芝居の台詞で装飾されている。


エルジー・ユーバンク
 称号/階級: 中尉
 生年: 3057年
 議会が自由世界同盟を解散したときに、アリソン・メック戦士養成校を卒業したエルジーは、仕えるべき国を失って深いうつ状態に陥った。アルコールの倦怠と酩酊を終わらせたのは、カワムラ大佐によるマーリック・プロテクターズ結成の発表であった。エルジーは破滅の道を外れ、再び理想に準ずることを選んだ。その情熱と指導力に感銘を受けたカワムラ大佐(偏見で悪名高い)が彼女を雇ったのは、元上官の面影を彼女に感じたからかもしれない。エルジーは抜きん出た結果を残し続け、瞬く間に昇進していった。噂に寄ると、席が空き次第、次の中隊指揮官になるとされている。
 スペシャル・アビリティ: 移動フェイズの最後で、エルジーは周囲3ヘクス以内の友軍ユニットが使わなかった歩行移動ポイントを「貯蓄」してもよい。次の移動フェイズで、エルジーは周囲3ヘクス以内の友軍ユニット(いくつでも)にこのMPを配分できる。配分できるMPは元の歩行MPの2倍までである。配分されたMPを使うユニットは、攻撃側移動修正において歩行扱いとなる。


マイケル・ムーアクロフト
 称号/階級: メック戦士
 生年: 3066年
 マリア帝国からの移住者であるムーアクロフトは、3077年、第II軍団のケンドール襲撃の際に置き去りにされた。宇宙政治に興味を持たぬ若き助整兵にすぎないムーアクロフトは、敵意をほとんど理解できなかった。ケンドールの軍事法廷は、若く、生来人を楽しませるのが好きな彼に恩赦を与えた。成人したムーアクロフトは帝国との関わりを全て断って、ケンドールの市民となった。テックとしてプロテターズの一員となった彼は、バトルメック操縦の才覚を見せて、即席の見習いプログラムに入れられた。鈍重なマシンからも機動性を引き出す彼の技量に感心したマンダレイ少佐は、打撃任務用にレイスを与えた。プロテクターズで最年少メック戦士のムーアクロフトは、悪ふざけの対象になり、不快な任務を押し付けられている。カワムラ大佐はこのしごきを良しとしてないが、未来の任務に向けて彼を鍛えるかもしれないと認識している。
 スペシャル・アビリティ: ムーアクロフトは「生まれつきの優美さ(Natural Grace)」のスペシャル・パイロット・アビリティを持っている。


レイス
 称号/階級:
 生年: 3033年
 アイアンホールドの目立たないシブコで生まれたレイスは、ソラーマとして冷遇されるのを潔しとせず氏族を捨てたジェイドファルコンである。氏族水準でかろうじて適格とされる彼の腕前ではスターコマンダー以上に上がることが出来ず、たった1年で若い戦士に負けてその座を失った。それにも関わらず、リバイバル作戦、拒絶戦争、コベントリ戦役を生き残ったレイスは、ジェイドファルコンが浪費した貴重な経験を獲得した。3067年、ソラリスを訪れた際に、彼は静かに戦友たちのもとから去り、誰からも気にされなかった。ハンツメン・ステイブルで短期間仕事をして、自由世界同盟のリクルーターの目に止まり、カワムラ大佐と面会した。カワムラはレイスの経験に敬意を払い、このような優れた戦士にふさわしい役割を与えた――戦争を知る老軍曹である。遺産にも栄光にももう拘泥していないレイスは、病院ではなくコクピットで死ぬだろうことに満足している。


ジェレミー・バルバロッサ
 称号/階級: メック戦士
 生年: 3055年
 元傭兵のバルバロッサは司法取引の一環としてプロテクターズに入隊した。彼の落ちぶれた部隊は、惑星ホームにおけるタマリンド=アビーの権益を妨害するためレグルスに送り込まれた。無様に失敗し、生き残った傭兵たちが降下船に戻っていくそのとき、バルバロッサは味方に襲いかかって惑星上の第1プロテクターズに位置を晒し、ストーカーとともに離脱すると持ちかけた。彼は良心の呵責を感じており、プロテクターズに勤めることで過去の罪を贖いたいと主張した。信用できないが、新しい強襲メックを惜しんだマンダレイ少佐は5年間メックをプロテクターズの所有とする条件で彼を受け入れた。第1プロテクターズの兵士の中でも信頼度最低とされるバルバロッサは、単独での任務を任されることはなく、独自の判断での行動を許されることもまずない。「友を近くに、敵はもっと近くに」の故事に習い、カワムラ大佐は彼を指揮中隊に配置した。
 スペシャル・アビリティ: プロテクターズが75%を超える損害を被ったら2D6ロールする。結果が2か3で、バルバロッサが動ける状態なら、戦場から撤退する。結果が12なら味方を撃って、惑星からの脱出を条件に敵軍に加わろうとする。


フィオナ・サン・マルコス
 称号/階級: 中尉
 生年: 3042年
 フィオナはかつて中心領域騎士団に志願したが、若い頃に時間を無駄遣いしていたので不合格となった。ギャング関連の犯罪に手を染めていたのははるか昔の話だが、過去から逃れることはできない。彼女は、ほぼいつも防衛任務についている(特に激しい内戦に苦しむ世界で)。ウェストオーバーでは、惑星政府を腐敗させ、宇宙での拡大を目論む大物ディリンガム一家の打倒を助けた。彼女は観念してこのような任務を受けている……カワムラはプロテクターズでこれ以上の適役はいないと知っているのだ。それでも、彼女はより伝統的な戦闘任務を望んでいる。


リリス・ウィーヴァー
 称号/階級: メック戦士
 生年: 3044年
 かつての議会議長リ・ウィーヴァーの娘であるリリスは父と同じくトーマス・マーリックの熱烈な支持者である。よく似た理想を持つトーマスの正体が実は偽物であると暴かれ、リリスは怒り狂ったが、やがて名前よりも行動であると受け入れるようになった。彼女はオリエントまでトーマスについていくことはなく、プロテクターズ結成の際、カワムラ大佐の下に残ることを選んだ。5人兄弟中の3人目であるリリスは、常に無視されていると感じており、注目されることに飢えている。成果を出すことに全身全霊であることから、カワムラの指揮小隊の一員に選ばれ、昇進の声が何度かかっても固辞し続けている。
 スペシャル・アビリティ: リリスの一族はいまだボーワンの世界で大きな権力を持ち続けている。ボーワンに配備された場合、支援を得るのに必要なすべてのロールに+2の修正がある。物資は20パーセントの割引で購入できる。


ジョナサン・ブラック
 称号/階級: 伍長
 生年: 3061年
 ケンドール出身のブラックは、3077年のマリア侵攻で家族の大半を失った。父と長兄は防衛戦で殺され、母と弟妹たちは侵略者から逃げながらも市民軍の手による核攻撃で消滅した。家族9人のうち、生き残ったのはジョナサンと妹1人だけだった。帝国への激しい憎しみにとらわれたジョナサンは、マリア人を殺すためにプロテクターズに入隊した。戦場ではホークモス・ガンシップから敵をスナイプするのを楽しみ、敵機が落ちてから接近してパイロットを確実に仕留める。ブラックは心の内をうまく隠しているので、カワムラ大佐はこの残忍さを無視している。
 スペシャル・アビリティ: マリア軍と対面した際、ブラックは常に相手が死ぬまで撃とうとする。マークスマンの能力を持ち、マリアのバトルメックの頭部を目標にする。少佐以上の友軍士官がいない限り、ブラックは脱出したマリアのメック戦士と戦車兵を狙う。













アンエンディング・フェイス Unending Faith


部隊の歴史と詳細

 タスクフォース・シックル、マーレットがワード・オブ・ブレイクの手から地球を開放し、聖戦を終わらせると、それはコムガードにとっても終わりの始まりの引き金となった。SCOUR作戦はデヴリン・ストーンのスフィア共和国を生み出して終結した。新たな宇宙国家が作られ、自由ラサルハグ共和国から追い出されると、コムスターは本拠地を失ったボロボロの軍隊とともに残された。新生共和国の多くが戦時中の貢献を見てコムガードを尊敬した一方、聖戦が起きたのはコムスター(ひいてはコムガード)の責任だと思う者はもっと多かった。だが、必要が奇妙な同床関係を生み出した。国家建設の重圧と聖戦の荒廃が組み合わされて、共和国とコムスターは両者が存続するための取引を強いられたのだ。

 この合意の中核となる条項は、コムスターが軍隊であるコムガードを解散せねばならないというものだった。コムスターの警備は、民間警備かコムスターを受け入れる国の軍隊が担当する。もう二度とコムスターが戦争を起こせるだけの軍隊を配備することはない。ストーンはいまだ燻る聖戦の炎(教派分裂の際にコムガードからの離脱者がワード・オブ・ブレイクを軍事化させたと思い起こさせるもの)を指してコムスターに受諾するよう圧力をかけた。デヴリン・ストーンにとって、コムガードの解散は交渉不可能なポイントであり、あからさまな脅しが込められた……コムガードを解散しなければ、話は終わりだ。

 生き残ったコムガードの古参兵士たちは解散のニュースを聞いて複雑な思いを抱いた。全員が聖戦中のワードに対する成果に誇りを抱いており、多くが拡大するRAFに転籍したが、コムガードの強制処分に怒りを抱いた者もいた。聖戦中の行動の結果、コムガードは新生コムスターのために働く権利を得たと、隊員たちの多くが信じていた。コムスター局員の多くがコムガードに同情的であった。残念ながら、コムガードは聖戦前に戻ることはできなかった。

 コムガード解散の直後、幻滅していたがいまだ忠誠を持ち続けている隊員たちと、元コムスターの局員たちが、不確かな未来と信じているもののためにコムガードを保存するという達成が困難な課題に取り組み始めた。コムガード忠誠派たちはストーンに関するものを憎み、いつの日か共和国がコムスターに牙を剥くことを恐れた。秘密裏に彼らは旧コムガード、ワード・オブ・ブレイク市民軍の物資や、放棄された装備を備蓄した。その他の補給物資は、コムスター伝統の記録改ざん技術を使って、共和国の軍需物資償還プログラムの再利用チームから回収し、溶鉱炉からすくい上げた。数年のうちに、コムガード忠誠派はスフィア共和国内外から数千トンの戦争物資を溜め込んだ。同時期、退役したコムガード隊員の小規模なグループが、非公式なコムガードクラブや退役軍人組織を設立した。こういったゆるやかに連帯した古参兵のグループが、未来のアンエンディング・フェイスIII-ベータの始まりとなった。しかし、コムガードの精神を生き永らえさせる取り組みは連携したものではなく、世紀が変わるまでに成果はなくなっていた……コムスターと元コムガードの退役軍人たちが新しい生活を始める一方で聖戦の痛みの記憶は薄れていったからだ。

 似たような時期に、コムスターの中に小規模だが成長する社会運動が芽吹いていた。やがて「ブレスドオーダー」の名前で知られるようになるこの運動は、コムスターをフォヒトの改革前に戻そうとする願望に基づくものだった。ブレスドオーダーは、コムスターがブレイク派のドクトリンを放棄して全コムスターのため「純粋な信仰に戻る」のを求めたときに、大切な何かを失ったと信じていた。新しいブレイク派の信仰は、ブレスドオーダーとコムガード忠誠派の大雑把なゴールを素早く調整して共通の目標に向かわせる役割を果たすのに最適であった。ブレスドオーダーの誕生に伴い、コムガード運動は真のリーダーシップと宗教的献身を見いだし、それが忠誠派を存続させる活動を活気づかせ、統一された教義への融合がなされた。

 3100年代前半、ブレスドオーダーはコムガードの退役軍人組織を訓練所に転換し、元隊員の子供や孫、その他の有望な志願者が腕を磨けるようにした。企業年金とチャリティ基金から資金を捻出して訓練用装備と「教育」「歴史保存」目的のソフトウェアを準備し、高度なホロ訓練設備(共和国の大学から盗んだり、ブラックマーケットで買ったもの)の隠れ蓑にした。3112年までに、ブレスドオーダーは未来のコムガード兵士たちを民間警備業者に集めて、実戦の経験を与えた。後年、ブレスドオーダーは流用された資金、ペーパーカンパニー、その他のフロント企業を使って、警備業者の人事権に影響力を行使し、合法的な傭兵市場から軍事ハードウェアを購入した。

 最終的にマルコム・ブールがブレスドオーダーのリーダーとなった。ブールは再生したコムガードがオーダーの未来を実現すると心の底から信じており、最初の行動もそれを反映したものだった……第1師団を再結成し、アンエンディング・フェイスIIIを作るのだ。この第1レベルIIIの名前は、共和国の粛清を生き残り、コムガードの精神を生きながらえさせた者たちの信心深さに敬意を払ったものである。

 著しく戦力不足の新レベルIIIは、HPG技術者、輸送パイロット、銀行家、各種技術者で構成され、公に活動できるものではなかった。2年かけて、ブールはその地位を使い、レベルIIIの大半をオデッサ(ブールが基地局長だった)に配置転換し、それから異動となったカフにまた配置転換し、ついにはエプシロン・エリダニでアルファ基地を発見した。

 ブレスドオーダーがアルファ基地を改装すると、アンエンディング・フェイスは警備としての職務を見事に果たした。レベルIIIはオーダーが運営するフロント企業(鉱山会社)の民間警備に扮する間、3年でシェイマス基地周辺を突破しようとするそれぞれ3方向からの試みを静かに防いできた。4度目の攻撃に対してはフェイスの最初の指揮官、レイシー・グロズダ准司教が部隊を率いた……3129年、襲撃者と思しき一団が密かにエプシロン・エリダニに浸透して基地の300km以内に入り、血塗られた戦いが勃発したのである。

 アルファ基地の存在を知らなかったと思しきペブル・コート・ジェスターズは、成長するこの地域の経済を妨害するという明確な目的のため地元の鉱山会社に雇われた傭兵で、入念に設置された罠に突っ込んだ。ステルス技術と地形に対する知識を使って戦力を隠したグロズダは、ジェスターズが山脈深くに入ると、レベルIIIを襲撃部隊の進路(おそらく脱出ルートでもある)に配置した。傭兵たちが射程に入ると、フェイスはC3iで連携した砲撃を開始した。数分以内に傭兵の指揮官たちは集中射撃で撃破された。傭兵の名誉のために言っておくと、彼らは素早く再結集し、反撃を開始した。

 先任侍祭含むコムガード隊員たちが撃墜された。戦力的にも戦術的にも有利だったにも関わらず、経験豊かなジェスターズは事実上退路を絶たれたことで積極的になった。傭兵たちは徐々にコムガードを押し始めた。集中砲撃によってジェスターズが突破したかに見えたとき、グロズダのエクスカリバーが傭兵と退路の間に立ちふさがった。単独で1個中隊近いメックに直面したグロズダは、雄々しく砲撃を開始したが、約1個中隊分の火力で圧倒された。指揮官の捨て身の行動を見たコムガード兵たちは狂乱して、陣地から飛び出て血塗られた至近距離の殴り合いに突入した。両陣営の命をかけた戦いは、戦塵と、降り注ぐ岩と、爆発によって視界が数メートルまで狭まった。15分後、煙が晴れると、フェイスは状況を確認した。傭兵は全滅したが、フェイスは重い損害を被り、勇敢な指揮官もその一部であった。一帯をきれいにしたあとで、ボロボロのレベルIIIは足を引きずって基地に戻った。

 ブールはこの状況でベストを尽くした。第1師団はアルファ基地から回収した物資のおかげで指数関数的に拡大していたが、コムガードで最も経験豊かなのはアンエンディング・フェイスの古参兵たちであった。ブールはアンエンディング・フェイスの知識を拡散するのが師団にとって最良であると判断した。残ったレベルIIIは一部解散し、生存者たちは流入する新兵を訓練するためブレスドオーダーが支配する民間警備会社や傭兵中隊に分散した。フロンクリーチなど遠方で活動したフェイスの兵士たちは師団の拡大を牽引し、師団は3136年までに定数不足の2個レベルIIIから6個強化レベルIIIまで成長したのだった。



部隊詳細

 アンエンディング・フェイスIIIベータの侍祭と助祭たちは卓越した守り手である。アンエンディング・フェイスIIIベータが防衛側となるとき、プレイヤーは強化陣地を作成してもよく、陣地は塹壕扱いとなる。これにかかる時間は半分で、経験ある工兵を必要としない。部隊はユニットの半分(切り上げ)を、「隠れたユニット」のルールが禁止している地形に伏せてもよい。通常は「隠れたユニット」が許されてないシナリオでも可能である。

 元のコムガードと違って、再生した第1師団(アンエンディング・フェイスIII含む)の兵士たちは、企業警備や一般の会社員に化けるのに多大な時間を割いてきた。侍祭、助祭それぞれは、各種の独特な戦闘スキル、非戦闘スキルから利益を得るだろう。レベルIIIの全隊員は、もうひとつの身分(Alternate ID)、この生命尽きるまで(In for Life)、-5TPの暗い秘密(Dark Secret)の特徴を持つが、特殊パイロット能力(Special Pilot Ability)をとってもよい。ブレスドオーダーは隊員たちの大半にできる限りクロストレーニングをさせるよう留意した。技術上、レベルIIIの半数以上が、屋外での複雑な機器とソフトウェアの修理に熟達している。機器を修理する際、アンエンディング・フェイスIIIはすべての修理、部分修理、回収に-1のスキル修正を得られる。修理にかかる時間(分)は半分となる。

 第1師団とアンエンディング・フェイスIIIベータの階級は、元のコムガード、ワード・オブ・ブレイク市民軍の制度を組み合わせたものである。第1師団はコムガードの階級を使っているが、隊員たちはそれぞれの階級や地位で過ごした年数に重きをおいている。従って、充分な経験を持つ者たちは、階級以上に敬意を払われる。これが意味するところは、侍祭XVIIが古参の准司教と同等の敬意を持って扱われるということである。師団が身を潜めていた都合上、3137年までアンエンディング・フェイスIIIの全隊員が、軍事階級と職務上の役職を持っていた。ワイアットで第1師団が公に姿を表したあと、偽の役職は捨てられた。第1師団の階級と伝統が作られると、非公式な肩書である上級助祭はレベルII指揮官として採用された。

 3140年のルイテン68-28の戦闘以前、アンエンディング・フェイスIIIはレベルIII全体としての戦闘経験がほとんどなかった。各レベルIIはペナルティ無しだが、全レベルIIIが一緒に戦うときは、イニシアティブに-1のペナルティがある。ルイテン68-28の後、レベルIIIはチームとして活動する相応の経験を積んだので、このペナルティは消滅する。

 3130年以前、レベルIIIは6個レベルII以下で活動しており、連携することはめったになかった。実用的な理由から、個々のレベルIIの連携は、全体の数よりも重要とされた。だが、各レベルIIはいくらか強化されており、書類上より大きな戦力を持っている。第1師団とブレスドオーダーが施設と活動を拡大するに連れて、新しいレベルIIが追加されていったが、レベルIIを戦力強化するという習慣は残った。ワイアットで新生コムガードが登場したあと、ブールがオーダーを統合すると、第1師団は正規の規模にまで膨らみ、アンエンディング・フェイスIIIと第1師団は初めて完全な戦力になった。これは師団よりはるかに小さい戦力と考えていたRAFにとって大きな驚きだった。アンエンディング・フェイスIIIは、ワード・オブ・ブレイクに由来する聖歌隊編成(バトルメック1個レベルIIとバトルアーマー1個レベルIIをひとつの攻撃編成としたもの)を使っている。この編成は、聖戦時にブレイク派がガラテアで開発したもので、アンエンディング・フェイスIIIは専門のヘッドハンター部隊を作るためアレンジして流用した。

 アンエンディング・フェイスIIIは聖歌隊(Choir)を使う第1師団で唯一の部隊である。コムガードは兵種を組み合わせるので、各レベルIIはバトルメックとバトルスーツ歩兵、戦闘車両を含む。

 間接砲、輸送船、気圏戦闘機は、必要に応じて師団司令部が配置する。コムガードの伝統に沿わない部分は、師団の気圏戦闘機を師団規模の部隊に統合しているところである。その歴史上、アンエンディング・フェイスIIIは秘密の輸送任務に、ミュールや改装されたユニオン級など一般的な民間降下船を使っていた。ワイアットとその後、レベルIIIはドゥアト級降下船数隻を運用している。






人物


ジェイコブ・ケニオン
 称号/階級: 准司教、第1師団副指揮官
 生年: 3095年(3140年時点で45歳)
 ジェイコブ・ケニオンはふたつの職業を持つ一族の出身者である……酪農かコムスターだ。地球のアメリカ行政区、アイオワ地区出身のケニオンはコムスターに入信した19人目の一族である。コムガードにいた祖父と曽祖父の話を聞いて育ったケニオンは自然とブレスドオーダーにリクルートされた。商業学校を出たケニオンは、民間警備のフロント企業、チャイム・プロテクティブ・サービスに入社し、軍事経験を得て、中心領域を知った。彼は数年間任務から任務を飛び回り、行動力があるという評判を得た。3129年のアピアン=カーティス襲撃で、彼はピースメーカー警備メックを使って小さな貯水ダムを破壊し、20人の入植者の生命を救った。辺境から帰還したあと、その献身性、リーダーシップ能力、実務経験から、フアン・フレダリコ准司教の下で上級侍祭の地位に就任し、3135年にはあとを継いだ。3136年までにケニオンは実質的に第1師団を運営することになり、アンエンディング・フェイスIIIの実務は次席であるイナ・フィンレイ上級侍祭に託された。
 スペシャル・アビリティ: ジェイコブ・ケニオンは古参兵のメック戦士である。特殊パイロット能力の、複数目標(Multi-Tasker)、間接攻撃(Oblique Attacker)、戦術の天才(Tactical Genius)を持つ。ケニオンがアンエンディング・フェイスIIIとともに戦場にいるとき、1ターン目のイニシアティブは自動的に勝利する。ケニオンはレベルIIIの間接砲の統制と指揮に尋常ならざる才覚を持ち、ECMの激しい干渉があっても問題としない。+5TP分の生まれつきの才能(間接砲)を持ち、間接砲の観測手を務める際、砲術技能0として扱う。


イナ・フィンレイ
 称号/階級: 上級侍祭
 生年: 3095年(3140年時点で45歳)
 イナ・フィンレイはベネットIIIが死の惑星となり放棄される直前に生まれた古参兵メック戦士である。フィンレイと家族が脱出する前に、故郷の毒に満ちた死の雲が幼かった彼女の肺を侵した。苦しい死を迎える運命にあった彼女を救ったのは、コムスター運営の慈善団体が提供した医療であった。ボン=ノーマンHPG基地の警備で働いたあと、3127年、フィンレイはブレスドオーダーにリクルートされ、一員となった。身体障害がありながらも生まれついての才能を持つフィンレイは吸入器を手にしている姿がよく見られる。行動がゆっくりしている(呼吸がゆっくりしているのが理由の一端)フィンレイは鋭い分析的志向を持ち、第1師団の管理部門を指揮するのに最適な候補者となっている。
 特別ルール: フィンレイ上級侍祭は-3TPのハンディキャップ(肺)と、+3TPの忍耐強さを持つ。これは子供の頃にベネットIIIで肺を病んだ結果である。


ラチー・グロズダ
 称号/階級: 准司教、アンエンディング・フェイスIII-ベータ指揮官
 生年: 3077年(3129年時点で52歳)
 ラチー・グロズダはコムスター第79師団の退役者二人の間に生まれた。両親はコムガードを解散するという軍司教の決断に不満を持つ少数の元隊員であった。二人は、その後ブレスドオーダーになるものの結成を助け、ラチーにコムスターに対する強い義務の感覚を植え付けた。再結成された第1師団の創設士官である、狂信的なラチーは、ブールの熱烈な支持者の一人である。レベルIIIの戦術と組織の大半は、創設期にラチーが作って叩き込んだものである。ワードで不評だった聖歌隊編成を使うという物議を醸す決断は、グロズダの恒久的な決断のひとつだった。オーダー内部からの反対があったにもかかわらず、聖歌隊は3129年のエプシロン・エリダニへの襲撃で確固たる地位を築いたのだった。


パトリシア・ハーウェル
 称号/階級: 侍祭
 生年: 3109年(3140年時点で31歳)
 七世代続いてコムスターという一族に生まれたパトリシアは、当然のごとくブレスドオーダーと第1師団の一員になった。パトリシアの兄、タッカーは極空間理論の学識分野で天才となり、パトリシア当人はもっと隠密、軍事的な方面の学習に進んだ。ワード・オブ・ブレイクの教えに狂信的だったパトリシアは自然と似たような信仰を持つ人々に近づいていった。大学卒業直後に、オーダーの勧誘を受けたパトリシアは、数年間、第1師団で秘密の訓練を受け、ブールの護衛任務に配置転換された。ブールはパトリシアに優秀な真の信仰とコムスターで最も才気走った一人との直接的なつながりを見た……彼女の兄である。HPGのブラックアウトが中心領域を襲うと、パトリシアはワイアットからタッカーを誘拐する企みを支援し、タッカーに協力させるというオーダーの試みで重要な役割を果たしたのだった。


タマ・グローバー
 称号/階級: 侍祭
 生年: 3102年(3140年時点で38歳)
 元傭兵のタマ・グローバーは古参兵のメック戦士で、悪名高きブロードストリート・バリーズのダニエル・グローバーを祖父に持つ。アカマーで幼いころに孤児となったタマは3124年に惑星市民軍から叩き出され、フィルトヴェルト連合行きの船に乗った。ここで彼女はレイピア・フロンティア・セキュリティに入社した――ブレスドオーダーと関わりのある民間警備業者である。冷徹なプロフェッショナルであるタマは、紛争を収めるために精密攻撃的な流血を選ぶ傾向がある。マラルンの水争いで、タマは雇い主の貿易商と地元商人の大規模な銃撃戦を防いでみせた……怒った商人のキャラヴァンまるごとひとつを見せしめにしたのである。おかげで交易の残りはスムーズに進んだ。レイピア社で働いているあいだに、タマはコムガードに勧誘され、すぐに人生に不足していた信仰を見いだしたのだった。
 特別ルール: グローバー侍祭は特殊パイロット能力の「フィストファイア(Fist Fire)」と「格闘の専門家(Melee Specialist)」を持っている。彼女は歩兵、通常車両との戦闘に秀でている。建物や車両の中にいる歩兵を直撃攻撃してもよい。歩兵の分散による命中目標値修正(例、バトルスーツ分隊相手には+1)を無視し、通常歩兵が開けた地形にいるときはオートキャノンとパルスレーザーのダメージを二倍にする。


ペトル・ボイド
 称号/階級: 侍祭
 生年: 3114年(3140年時点で26歳)
 ピーター・ボイドはレベルIIIでも最年少の部類に入る一般兵のメック戦士である。大連邦国予備機兵隊のメック戦士と共和国商人の息子であるペトルは、両親の祖国どちらにも馴染むことができなかった。生まれつきの才能を持つメック戦士だったにもかかわらず、カペラ大連邦国は養成校への入学を拒絶した。代わりに父親が時間の許す限り伝授した。コロディッツで父が死ぬと、ペトルは大連邦国を捨てて共和国に向かった。ここで、別居していたが狂信的な母がペトルをコムスターと引合せ、タウラス連合に向かう貿易使節団に同行させた。貿易使節団はブレスドオーダーが物資獲得のために使っていたフロントで、ペトルはすぐオーダーに勧誘され、レベルIIIに配置されたのだった。


アミット・イッセル
 称号/階級: 侍祭
 生年: 3111年(3140年時点で29歳)
 もうひとりの新人、イッセルはオーダーの信仰とともに育った大勢の新世代兵士の一人である。5世代目のコムスター信者であるイッセルは、コムガードに入隊した最初の一族だ。彼は第1師団と戦友たちに大きな誇りを抱いており、ワード・オブ・ブレイクに対する熱狂は周囲に影響を与え、熱心な説教師のようなものになっている。非番の日には、愛機のアイゼンファウスト「ライチェス・ワード」の足元で即席の説教を行う。冷却スーツかシンプルなローブを着て、『ワード・オブ・ブレイク』の書を握りしめたイッセルは、何時間も信心深く語り続ける。近年、彼の説教はジェローム・ブレイクが予言した迫りくる破滅に注目している。これを切り抜けられるのはブレスドオーダーだけなのだ。レベルIIIの古参たちは彼の強い信念に敬意を払っているが、HPGネットワークの崩壊後、その信仰が暗いものになっていくことに懸念を示している。
 特別ルール: イッセル侍祭が部隊にいるとき、その舞台は士気ロールに+2の修正を得る。若く、経験を欠いているにもかかわらず、イッセル侍祭の情熱的な信仰は所属するレベルIIでリーダーシップを生み出す。レベルIIに関係する場合、リーダーシップ技能が+3される。













クリムゾン・シーカー星隊 Crimson Seeker Star


部隊の歴史と詳細

 典型的なシーカー部隊(戦士2人から三連星隊規模まで)は、特定のクエストのために組織されるものである。氏族の指揮官たちが神判で戦力を落として入札するように、シーカーはできる限り少ない資源でクエストを達成するように戦力を再編する。各部隊は新しく再編されるが、シーカーたちの多くはクエストに繰り返し起用される。ゴリアテスコーピオン史上最も有名なシーカー、レン・ポザヴァッツは26歳でスターコマンダーとしてブラッドネームを獲得し、その戦闘能力と頻繁なクエストの成功によってシーカーとそれ以外からの支持を勝ち取った。ブラッドネームを得てから1年以内に、彼は副氏族長の座に駆け上がり、それからの50年という未曾有の在位期間を務めた。

 ポザヴァッツの個人シーカー部隊(クリムゾン・シーカー星隊と命名)はシーカーにとって最高の出世コースであった。シーカーたちの多くが――重要な遺物を数多く見つけた者たちでさえも、クリムゾン・シーカー星隊に選ばれるために副氏族長の気を引こうとする。副氏族長としての特権を使って、ポザヴァッツは他のシーカーたちが探したが発見できなかった遺物を目標にした。彼のヴィジョンは、遺物を探していた他のシーカーたちよりももっと狭いエリアにクリムゾン・シーカー星隊を導いた。狡猾さ、星隊員の腕、氏族の戦闘ルールを少し捻じ曲げることによって、ポザヴァッツは名誉ある戦闘かあるいは独創的な手法で遺物を探し当てることができた。独自の戦略で他の戦士より多くの遺物を回収し、名誉と栄光がクリムゾン・シーカー星隊にもたらされた。戦士たちの一部は戦闘で敗北したり、自分のクエストに出発したり、他部隊での地位を獲得した一方、クリムゾン・シーカー星隊はゴリアテスコーピオンの歴史上、最長のシーカー組織であり続けた。

 クリムゾン・シーカー星隊の名称はシーカーたちのシンボル的な色から来ている。クリムゾンはガンマ銀河隊(シーカーが回収した遺物を保存する九柱女神殿の守護者)の塗装と制服に長らく使われているものなのだ。ポザヴァッツ副氏族長は星隊をシーカーとして目立たせながらも、星隊員の供給源であるガンマ銀河隊とは別にすることを望んでいた。真紅を制服の基調とし、ハイライトの色は銀河隊が使っている金ではなく銀をハイライトの色に選んだ。通常、ハービンジャーはメックを制服と同じように塗装する。これは戦場でクリムゾン・シーカー星隊の隊員たちを識別し、ハービンジャーの技量を誇示するためである。

 3015年のストラナメクティで、シーカー星隊はバーロック氏族領内への通行権を勝ち取り、最初の氏族戦士800人に入るための資格神判のホロレコーディング一式を回収した。3023年、キルケのスノウレイヴン氏族飛び地領へのクエストで、ラベルが間違っている下級階層の蔵書を発見した。これは注釈がつけられた星間連盟時代のガンスリンガープログラム訓練教本で、偉祖父アレクサンドル・ケレンスキーが持っていたものである。3037年、ブラッドスピリットと戦ったクリムゾン・シーカー星隊は、車両の1個二連星隊を撃破し、ニコラス・ケレンスキーが理想的な氏族星団隊の構成と組織について解説したホロレコーディングを入手した。この戦いで得たアイソーラには、2758年から継続的に運用されているロイヤル仕様のフューリー戦車があった。この時期にクリムゾン・シーカー星隊が達成したクエストの規模と幅広さは、レン・ポサヴァッツの成果に匹敵するもので、その後数十年のスコーピオンを理解する手助けになるだろう。

 リバイバル作戦の神判の後、氏族は侵攻に備えて再組織を行い、氏族本拠地に混沌が広がった。神判の結果を巡って、他の氏族が熾烈に争うなか、スコーピオンのシーカーたちは混乱を利用して、かつては守りの硬かった場所への立ち入りを勝ち取った。クリムゾン・シーカー星隊を筆頭に、急増するシーカーの活動で、長く求められていた遺物が多数手に入った。3049年、侵攻氏族が出発してからわずかに数週間後、ポサヴァッツ副氏族長とクリムゾン・シーカー星隊は、フランクリン・オシスの父、シマス・オシスが獲得した辺境世界共和国の儀式用ダガーを勝ち取った。これはフランクリン・オシスが、兄を殺したスモークジャガーを仕留めたのと同じダガーであり、スコーピオンが奪ったことでスモークジャガー氏族との遺恨が発生した。

 知られているレン・ポサヴァッツの最後のヴィジョンのひとつは、戦士たちの波が中心領域の世界に押し寄せるというものである。波は岩に当たって砕けて、勢いを失う。二番目の波が進むと、5匹のサソリが波に乗って中心領域に向かうのをポサヴァッツは見る。波に襲われた各惑星では、地表が耕すようにかき回され、あとにはキラキラと輝く宝石が残されていた。宝石を集めたサソリは、大きく、強くなる。まもなくサソリはさらに大きく、強くなり、他のサソリも加わって、流れを変えて、中心領域の各地に散らばっていく。レオ・シャワーズ大氏族長が死んで、氏族侵攻が止まると、ポサヴァッツ副氏族長は自分のヴィジョンの意味を知った。

 ウルリック・ケレンスキー大氏族長が予備氏族の始動を宣言すると、ポサヴァッツは侵攻の再開時にクリムゾンシーカー星隊を同行させる権利をかけてスティールヴァイパーに挑戦した。領土を求めることはできないが、スコーピオンはヴァイパーと自由に旅することができる。残念ながら、ポサヴァッツとクリムゾンシーカー星隊は、ツカイードの戦いの折り、デビルズバスで行方不明になり、末路は不明である。名門部隊とゴリアテスコーピオンで最長の任期を務めた副氏族長を失ったことで、シーカー運動とスコーピオン全体の士気に大きなダメージがあった。

 数ヶ月後、レン・ポサヴァッツのブラッドネームを勝ち取ったスターコマンダー・レベッカを祝う式典の場で、ローアマスター・キリエ・ベン=シモンがクリムゾン・スター星隊の再結成を発表した。指揮するのは副氏族長でもローアマスターでもなく、最も腕の立つ成功したシーカーとされた。再結成されたクリムゾンシーカー(スターコーネル・ジラール・ルクレール指揮)は、ポサヴァッツ副氏族長の前例に習い、腕利きのシーカーだけを起用し、他のシーカーが勝ち取るのに失敗した遺物だけを求める。失われた副氏族長の名誉を守り、おのれの名誉を熱望する大勢の戦士たちが、クリムゾン・シーカー星隊の座を求め、シーカーに加わった。星隊の最初のクエストは、スターアダー氏族の飛び地領に赴き、フェリシティ・ルクレールのホプライト(クロンダイク作戦で乗っていたもの)の残骸を勝ち取ることだった。

 拒絶戦争、バーロックの吸収、スモークジャガーの殲滅、ノヴァキャット追放、ゴーストベアの本拠地脱出、そのすべてが動乱を引き起こし、シーカーたちが成長する機会をもたらした。クリムゾン・シーカー星隊は、新しい挑戦それぞれを切り抜けるのに成功した。ゴリアテスコーピオンがアビズマル大陸とハントレス上の巨大工場の所有権を争ったとき、クリムゾン・シーカー星隊は勝利に重要な役割を果たした。星隊の戦士たちは、抜きん出て、数多のエリート戦士たちを下し、工場近くの忘れられた星間連盟ブライアンキャッスルを得るのを確実にしたのだった。バビロンでは、スターキャプテン・モリガン・マドセンがクリムゾン・シーカー星隊と第8スコーピオン竜機兵団の大規模部隊を率いて、アイスヘリオンからモローのダガーを勝ち取った。3067年前半、星隊はハントレスで星間連盟戦車1個中隊の入ったブライアンキャッシュを発見した。ここには、アマリス竜機兵団に属していたゼファー"アロー"と、地球開放を生き延びたゼファー数両が含まれていた。

 エグゾダスの準備をしていた際、SLDFは過去就役した戦闘艦全種類の設計と建造に使われた設計図・その他の書類を集めて持ってきた。これらの書類は、なぜその設計が選ばれたのか、いかに戦闘艦を戦闘計画に適応させるのか、SLDF海軍の戦術と教義に関するその他の見識を詳細に書き表していた。シーカー運動が始まって以来、シーカーたちはこれらのプランを求めていたが、スノウレイヴン氏族はルウムの海軍工廠に厳重に保管していた。3068年後半、海軍指揮官とクリムゾン・シーカー星隊のアーチボルト・ベン=シモンは、スコーピオンのローアマスターと氏族長を説得して、工廠をかけた所有の神判を宣言した。

 スノウレイヴン領へのクエストで収集した、船・乗組員の詳細なプロフィールを活用したアーチボルトは、戦闘中に艦隊司令官を支援した。ゴリアテスコーピオンは海軍工廠の所有権をかけて、勝ち取り、遺物と解体出来た分だけの重要な部品多数を手にしてロッシェルへと戻った。レイヴンが共謀だと主張したのは、スターアダーとの神判で工廠を守るのに成功した直後に、スコーピオンが到着したことだった。レイヴンには防衛を固める時間がなかったのである。

 氏族がリーヴィング戦争に落ちていくと、クリムゾン・シーカー星隊は古い成功パターンを踏襲した。星隊は、それまで固く守られていたが今は手薄の遺物と場所を目標にしたのだ。幾度かクリムゾン・シーカー星隊は、ルウム海軍工廠占領のように、大規模な部隊に加わって遺物に近い軍事目標を狙った。3071年前半、2個星団隊を率い、忘れられた辺境世界の前哨地点を探すクエストのあいだ、星隊はヘリオンの侵攻艦隊を発見した。この情報をジェイドファルコンと取引し、星間連盟時代の航宙艦スター・オブ・ウォリアーズと新品のジュピター1個三連星隊分を得た。3071年後半、星隊はグラントステーション征服でミュー銀河隊に加わり、スティールヴァイパーとウルフを破って、オリオンIIC1個星隊分を手に入れた。3071年末、グラントステーションでクリムゾンシーカー星隊は第14スコーピオン擲弾兵隊とファイアマンドリルのマティラ=キャロル親類族に加わり、コヨーテ氏族の飛び地領を奪い取った。戦利品を山分けしたスコーピオンは、コヨートゥルとルーパスの開発から新型兵器のプロトタイプと設計ノートを得た。

 3073年末までに、ゴリアテスコーピオンはリーヴィング戦争で大打撃を受けたが、この氏族にとっての最悪期に、クリムゾン・シーカー星隊は重要性と名声を獲得し始めることになった。数多の飛び地領が失われ、あるいは放棄され、ローアマスター・キリエ・ベン=シモンが戦死した。後任には、クリムゾン・シーカー星隊の指揮官だったこともあるギャラクシー・コマンダー・コリン・ヨウが選ばれた。3074年、新任の副氏族長コナー・ルードに率いられた戦力(クリムゾン・シーカー星隊とその他スコーピオン軍含む)は、ヌエバ・カスティーリャ中の世界を叩いた。長年にわたりシーカーたちが取り戻してきた星間連盟メック、戦車を使って、スコーピオン軍は秘密の襲撃を実施し、カスティーリャ世界の状況を集めて、侵攻に備えた。

 6年後、スコーピオンがついにヌエバ・カスティーリャを侵略したとき、偵察情報は貴重なものであると証明され、スコーピオンが素早く支配を確立するのを助けた。侵攻氏族がどのように新しい領域を統治してきたかを知っていたスコーピオンはゴーストベアのやり方にならった。コリン・ヨウ氏族長とコナー・ルード副氏族長は新しい世界で協調して働くことを選び、新国家をエスコーピオン・インペリオと呼びすらしたのである。この新国家で、シーカーたち、特にクリムゾン・シーカー星隊の役割は変化した。シーカーたちはいまだクエストに身を投じたが、インペリオの資源は限られていたので、クエストは一緒に資源を探せる地域に限られた。

 長期に渡りクエストに成功してきたクリムゾン・シーカー星隊は、クエストでより大きな自由裁量権が与えられた。これは星隊の名声を高めるばかりであった。なぜなら、戦士の価値を決めるだろう任務を実施する数少ない部隊だからだ。クリムゾン・シーカー星隊の枠を巡る競争はブラッドライトの神判と同じぐらい熾烈になるので、クリムゾン・シーカー星隊への加入を熱望する戦士たちは、戦闘技能を磨き、歴史知識を学ぶのが見られる。

 クリムゾン・シーカー星隊の隊員たちは、クエストを完了するために「型破りな発想」を奨励される。遺物を探す神判の最中はいつでも、高度なセンサーを持った偵察兵が少なくとも1人存在する。通常、偵察兵は遺物か遺物がありそうな場所を捜索し、敵を偵察することはない。星隊員たちは卓越したマークスマンシップを用いて敵機を行動不能にするか、押し留め、そのあいだに偵察兵が遺物を探す。遺物が見つかったら、星隊はマークスマンシップによって戦闘を素早く終わらせる。遺物が見つからなかったら、クリムゾン・シーカー星隊はヒジュラを求め、それ以上の時間と資源を浪費することなく戦闘を終わらせようとする。戦士たちは、クリムゾン・シーカー星隊に加入する際に、通例、高い地位を剥奪され、同じく独立したシーカーとして所有する使用人と配下の権利を手放さねばならない。ローアマスターは星隊の使用人と配下を各自の功績に沿って選ぶが、クリムゾン・シーカー星隊志望者は、自己よりも前に氏族を選ばねばならないのだ。

 3079年の国家創設直後から、星隊とインペリオとの連絡は事実上断たれている。噂に寄ると、グリーンゴーストの哨戒に突っ込んだか、ダイアモンドシャーク氏族軍とぶつかったとされる。通信が途絶えたのは、このような衝突が原因である可能性が高い。最後の報告によると、クリムゾン・シーカー星隊は中心領域から離れたところでクエストを実行しており、おそらくは失われた星間連盟か、探査局の遠征隊、新しい本拠地の生存に役立つ資源を探していたものと思われる。






人物


レン・ポサヴァッツ
 称号/階級: 副氏族長
 生年: 2973年
 ゴリアテスコーピオン氏族の歴史上、在職期間が最も長い副氏族長、レン・ポサヴァッツは1機撃墜で階級の神判を通過した。幸先の良くないスタートだったが、あらゆる状況を利用して、見る間に昇進を重ねた。シーカー運動に加わったのもその一環で、限定的な所有の神判で守りが固すぎる遺物を得るのを得意とした。スモークジャガーとの戦闘での戦傷がもとでマリアム・ポサヴァッツが死んだ時、レンは27歳であった。スターコーネル・レンはマリアム・ポサヴァッツのブラッドネームをかけたブラッドライトの神判に勝ったのみならず、副氏族長に選ばれた。

 半世紀以上にわたって、レン・ポサヴァッツは氏族とシーカーたちを共通の目的へと着実に導いていった。スコーピオンがウルフ竜機兵団を訓練する権利を獲得し、シーカーが勝ち取った遺物を氏族の名誉のため使用することになると、少数のシーカーたちが竜機兵団に加わることが許された。スティールヴァイパーに同行してツカイードで敗北したのだが、ポサヴァッツとクリムゾンシーカー星隊は多数の潜在的な遺物をカタログ化し、以降のシーカーたちを動かす刺激となった。最初のクリムゾンシーカー星隊とその後継は、氏族の生存に永続的なインパクトを与えることになる。
 スペシャル・アビリティ: ポサヴァッツ副氏族長は特殊パイロット能力のスナイパーを持っている。


アーチボルト・ベン=シモン
 称号/階級: スターキャプテン
 生年: 3041年
 手練れで成功者の気圏戦闘機パイロット、アーチボルト・ベン=シモンは26歳でついに第14スコーピオン軽機兵隊打撃三連星隊指揮官の地位にのぼった。星団隊のドッグファイトの専門家にしてシーカー参加者として、アーチボルトは他氏族の気圏戦闘機パイロットたち(大半がスノウレイヴン)と何度も決闘した。3068年前半、彼はクリムゾンシーカー星隊に加わり、戦闘経験とスノウレイヴンの艦船と戦術に関する知識を使って、ルウムの造船所占領を成功させたのである。

 遺物を回収した栄光や、目を引く生ける紋章にばかり興味を持つ一部のシーカーとは違って、アーチボルトはシーカーの本物の道に従っている……ネクロシアのヴィジョンに従い、星間連盟の遺物を探すのだ。それが氏族の名声と力を高めることになる。彼は星間連盟の生ける名残――ハントレスのエリダニ軽機隊――を氏族に引き入れることについても長らく考えていた。中心領域との連絡が途切れる直前、軽機隊のバークレイ大佐との話し合いを始めるようスヴォーロフ氏族長を説き伏せ、それが軽機隊の生き残りの吸収に繋がったのだった。


ネルラン
 称号/階級: スターコマンダー
 生年: 3037年
 シーカーとしての初期に、ネルランは数多のブライアンキャッシュを探り当て、大量の旧式メック(ただし歴史的価値なし)を発見した。落胆するネルランはネクロシアを大量服用し、はっきりとした導きのヴィジョンを得ようと望んだ。この計画はうまくいったが、大量服用の神経的副作用で回復に6ヶ月を要することになる。ダグダで彼はシリアルナンバー E6A-0001 のエンペラーを発見した。親衛SLDF師団向けに作られた最初の6A型エンペラーである。

 時代を経て重要性を失っていたエンペラー(損傷あり)はハンガークイーンに格下げされ、第二エグゾダスの前には部品取りに使われていた。ブライアンキャッシュにあった別の損傷したメックのパーツを使って、ネルランとティンカーたちはこのメックを新しい仕様で再建した。回収した遺物を手にしたネランは、スターコマンダーの地位に挑戦する機会を与えられた。敵のサモナーを巧みに下したネランは、このエンペラーが自分のメックになると確信した。オムニメックの受け取りを何度も拒否してるにもかかわらず、ネルランの戦闘能力はとどまるところを知らず、クリムゾン・シーカー星隊の地位に結びついたのだった。
 スペシャル・アビリティ: スターコマンダー・ネランは特殊パイロット能力の「人間TRO」を持っている。


ティラ・マイヤーズ
 称号/階級: ポイントコマンダー
 生年: 3046年
 ティラ・マイヤーズはメック戦士としてスターキャプテンの階級に昇進し、ブラッドネームを勝ち取った。ブラッドライトの神判の決勝戦で、彼女は体が大きく腕力のあるメック戦士相手とナイフで対決した。終盤にティラは一撃を防ぎながら、敵のナイフを対等の環の外に弾き飛ばした。応じて、敵は突進し彼女をベアハッグで締め上げた。これで脊椎が損傷し、負ける瀬戸際に追いやられたのである。ティラは腕を抜くのに成功し、内蔵をえぐって、とどめを刺される前に肺に穴を開けた。

 負傷からの回復中、彼女はトワイクロスの砂漠を探し回るヴィジョンを見た。ヴィジョンの実現を切望し、脊椎手術とリハビリの時間を惜しんだティラは、車両戦闘の再訓練を選んだ。氏族への貢献が認められ、ミトラス軽戦車の武装変更の許可が出た一方、技術者たちはティラのために手動操縦装置を追加した。結果として生まれた機種は見事に機能し、派生型として通常生産されることになった。その忍耐力、戦闘技術、センサー技術、トワイクロスで回収した遺物によって、ティラは新任ローアマスター・コリン・ヨウの注目を集め、クリムゾンシーカー星隊の一員にならないか誘われたのだった。

 ティラは、剣、ナイフ、刃物類のコレクションをしている。中でも貴重なのは、アーロン・ドシェヴィラーのポケットナイフと、ポサヴァッツ副氏族長がスモークジャガーから奪ったダガーの手製レプリカである。
 スペシャル・アビリティ: ポイントコマンダー・ティラ・マイヤーズは特殊パイロット能力の「鷹の目」を持っている。


ジャン=ジラール・ルクレール
 称号/階級: スターコーネル
 生年: 3014年
 再建されたクリムゾンシーカー星隊の指揮に選ばれたジャン=ジラール・ルクレールは、クリムゾンシーカー星隊に二度選抜された最初のスコーピオンとなった。ルクレールの二度目の配置は数ヶ月で終わった……身も凍るようなヴィジョンを見たのである。火山が噴火し、全中心領域、氏族世界、辺境――人類居住宙域のすべてに、死と破壊がもたらされるというものだった。ローアマスター・キリエ・ベン=シモンの承認を受けて、彼はコアワード方面の辺境に向かい、この武器庫を探した。3053年後半、彼はハイデルブルク星系のある月で隠し基地を発見した。隠されていた基地を特定し、隠していた火山を掘り進むのに、6年を要した。

 ルクレールがこの元辺境世界共和国の基地に入ってからわずか数週間後、まだ中身の目録を作っていた時点で、ワード・オブ・ブレイクの航宙艦が星系に到着した。ブレイク派はルクレールの守られていない航宙艦を破壊し、レベルII分のメックを降下させた。ルクレール、配下のメック戦士2名、降下船は、ブレイク派を撃破することができた。生き残ったのは、ルクレールと損傷した降下船だけだった。降下船には倉庫から持ち出された核弾頭数基が積み込まれており、離陸してワード・オブ・ブレイクの航宙艦を破壊した。ルクレールはゴリアテスコーピオンの使用人たちともう6年生き延びた。モリガン・マドセンが彼を発見し、戦闘で倒すまでに、彼は正気を失っており、マドセンが大量破壊兵器を使ってヴィジョンの恐ろしい予言を実現しようとしていると思い込んでいたのだった。


モリガン・マドセン
 称号/階級: スターキャプテン
 生年: 3031年
 歴史の専門家として、モリガン・マドセンは当然のごとくシーカーの一員となった。ヴィジョンによって導かれた最初のクエストで、6年前にスターコーネル・ジャン=ジラール・ルクレールが発見したのと同じ月にたどり着くことになる。ローアマスター・ベン=シモンは、必要な資源を節約するため、モリガンに氏族内での所有の神判を許していなかった。代わりにマドセンはハントレスの星間連盟大使館に駐留するコムスター軍に挑戦した。

 元辺境世界共和国の基地を発見した際、1人のスパイがワード・オブ・ブレイク軍に場所を伝達した。基地を探すなかで、モリガンはティンバーウルフに乗っていたスターコーネル・ルクレールを発見した。ルクレールはモリガンが残った大量破壊兵器を使って新星間連盟の第一君主になろうとしていると信じ込んでいた。モリガンが精神錯乱したスターコーネルを止めたあと、1隻の航宙艦が星系に到着した……降下船3隻はワード・オブ・ブレイク1個レベルIIIを積んでいた。大量破壊兵器と多数のメックをブレイク派の手に渡したくなかったモリガンは残った核弾頭を使って断層を開き、降下船を溶岩に沈めた。辺境世界メックの装甲板1枚を持って帰還しただけなのだが、その活躍とクエストの成功によってクリムゾンシーカー星隊の指揮官になったのだった。


エリザベス・ベン=シモン
 称号/階級: ポイントコマンダー
 生年: 3058年
 エリザベスは氏族でも数少ないブラッドネームを持ったプロトメックパイロットの一人である。エレメンタル、装甲、プロットメック各1個星隊からなる混合三連星隊を指揮していた彼女は、ダグダの飛び地領に残ったソサエティのセルを掃討する任務を与えられた。降下船が上陸する際、エリザベスは忘れられたソサエティのセルを探し当てるヴィジョンを得た。ソサエティの基地を守るプロトメック1個トレイを発見した彼女は、指揮ポイントを率いてソサエティ軍にぶつかった。トリトン3を駆って直々に敵4機を仕留めるそのあいだに、ポイントの部下たちが仕事を終わらせた。

 ソサエティ基地に残されていたもののなかには、セルのリーダーが残したノート、グレートエグゾダス期の科学者たちから受け継がれた遺物、そしてミノタウロスZ型1機とスペアパーツがあった。ミノタウロスをアイソーラとしたことで、ローアマスターの注意を引き、エリザベスはクリムゾンシーカー星隊内での地位を得た。エリザベスが集めた個人的なコレクションは、戦死したクリムゾンシーカー星隊隊員の制服である。それぞれの遺物は最後の状態で保管され、亡き戦士の聖骨箱代わりとして着用者の完全なコデックスを収めたチップが縫い付けられている。


カイル・ディヌール
 称号/階級: メック戦士
 生年: 3026年
 カイルは守備部隊の若きシーカーで、階級を持たず、ブラッドネームを持たず、未来を変えることになるヴィジョンを受けたときにはほとんどクエストをしていなかった。ヴィジョンは丘の中腹にドアがあるというもので、開けてみると値段をつけらないアーティファクトで満たされた多数の部屋がある博物館になっており、それぞれが星間連盟の制服を着た兵士1名に守られていた。瞑想で見たヴィジョンは、彼をストラナメクティのブラッドスピリット領にある小さな倉庫に導いた。3048年、カイルは倉庫の中身を賭けた熾烈な所有の神判を行い、インキュバスでストッピングホークCに乗った古参兵のブラッドネーム持ちスターキャプテンを下した。高速での一撃離脱を繰り返してジャイロを作動不能とし、このメックをアイソーラとして手に入れたのである。

 倉庫の中身には、ライラ共和国とドラコ連合の国境世界中にある星間連盟基地、前哨地点の地図があった。直後にディヌール血統の重要でないブラッドヘリテージが空いた。発見したものの価値と、ゴリアテスコーピオンで最初のストッピングホーク鹵獲を引き合いに出して、カイルはブラッドライトの神判に選ばれ、勝利した。ポサヴァッツ副氏族長は見る間に出世するカイルに目をつけ、侵攻派氏族がリバイバル作戦に出発する直前、彼をクリムゾンシーカー星隊に再配置したのだった。







ナカヤマ・ブラッド NAKAYAMA’S BLOOD


部隊の歴史と詳細

 連邦共和国内戦が勃発する前、新設の第46ディーロン正規隊に異動となった士官団の中に、ハロルド・ナカヤマ中佐がいた。彼は第2大隊指揮官にして、新連隊の副指揮官であった。才能あるメック戦士たちをひとつにするため、日々、訓練が繰り返された。

 ジェームズ・サンドヴァル公爵のドラコ境界域が、内戦でかつての仲間たちと戦うよりはとドラコ連合に侵攻したとき、第46は侵攻軍の進路に投じられた連隊のひとつとなった。団結心を正しく形成する時間が足りなかったことは重要ではなかった。ディーロン正規隊のメック戦士、戦闘機パイロット、戦車兵、兵士たちは、ダヴィオンの古いライバル、特に連合を憎むドラコ境界域の部隊と戦う準備ができていた。

 第46は他の部隊とともにアシオに配備された。ここで連隊は第1ロビンソン特戦隊と遭遇した。エリートの特戦隊は、第46を凌駕しており、よってナカヤマの旧部隊である第45ディーロン正規隊が戦う責務の大半を背負った。第3大隊が特戦隊第2大隊の側面に機動するという馬鹿げた試みでほぼ壊滅したあと、第46は支援的な地位に甘んじた。戦友が被った屈辱でナカヤマは苛立った……不名誉の汚点が連隊全体に広がったのごとく感じられたのである。

 ロビンソン特戦隊の後方区域を攻撃する機会を得ると、ナカヤマは飛びついた。彼は指揮中隊を率いてイスカリオット外周の破壊された住宅地に入った。ここから特戦隊の司令部、降下船、野戦病院、補給庫、修理施設までは短い道のりであった。第2大隊はたどり着くことができなかった。ナカヤマ指揮下の足が速い第3中隊は、道の先を偵察するために廃墟へと入った。彼らの信号が途絶えると、敵が瓦礫の中で活動していることは明白となった。彼の鈍足な指揮中隊は第2中隊の後を追った。敵の戦闘機が破滅的な爆撃で第2中隊と小隊の指揮官たちを殺し、ディーロン正規隊を呆然とさせた。特戦隊の戦闘機は攻撃中に重い損害を被ったが、第2中隊は敗走した。戦力の半数が失われ、生存者たちは戦える状態になかった。

 ナカヤマは適切な戦術ドクトリンを採用し、前進する前に砲撃でこの地域を飽和させるべきだったが、彼の血はたぎっていた。無謀にも、そしておそらくは愚かにも、彼は中隊を率いて廃墟に向かい、瓦礫の中に潜む者たちに復讐を求めた。進む内に緊張感は高まった。メック戦士リツケ・セントキがオー・バケモノからアローIVミサイルを発射するあいだ、中隊の残りがゆっくりと前進した。効果があったのは一斉射のみであった。

 ミサイルが叩いたのは敵のバトルメックではなかった。4色に塗装された氏族エレメンタルが隠れていた廃墟の建物から飛び出してきた。バトルアーマーの戦士たちは、メック戦士ノリオ・オダヤカナのモーラーに致命的で効果的な攻撃を仕掛けた。そして敵メックが姿を表した。敵の全てが4色パターンで、小隊ごとに別々の色を使っていた。ナカヤマは、それがロビンソン特戦隊を支援する傭兵、ホルト・ヒルトッパーズであると認識した。ヒルトッパーズはDEST兵1個分隊を始末するために建物を倒壊させた。

 ナカヤマのメック部隊は包囲されかけたが、友軍の前線に戻る経路は開かれていた。彼が再集結のために退却命令を考えていたとき、敵のアックスマンが廃墟のアパート群から歩み出て、何気なくジュンイチ・フメツのグランドドラゴンのコクピットを叩き割った。友人であり副指揮官が馬鹿にされたかのごとく殺されたのを見て、激しい怒りがナカヤマの戦術訓練を上回った。

 ナカヤマは敵に突撃し、戦友たちがすぐ後ろに続いた。両軍が激突すると、殴り合いに砲撃が加わった。両軍のメックが撃墜されていたそのときに、赤と黒のナイトスターがナカヤマに迫った。静かな通信で届いたのは、敵指揮官からの挑戦であった。ナカヤマは即座に受けた……指揮官を殺せば、敵を撃破して、混乱した退却に追い込めるかもしれないと知っていたのである。

 ナカヤマのタイショーとナイトスターの決闘は素早く残虐なものだった。ナカヤマは迅速に決闘を終わらせようとしたが、ナイトスターの頭部への速射はギリギリで外れた。敵の指揮官がガウスライフルの弾頭とPPCボルトを思うがままに振るうと、ナカヤマは滅多打ちにされた。コクピット内でアラームが鳴り響き、戦友たちが無線で呼びかけてくる。敵の気圏戦闘機が第46の援軍を遮ってから、退却の許可を求めたのである。ナカヤマは考えられないことをした……決闘を放棄したのだ。その不名誉は彼を永遠に苦しめることになるだろうが、頭にひらめいた指揮訓練が名誉の感覚を上回った。彼は中隊の生存者たちに、先に本部区域へ戻るよう命令した。彼は一斉射でナイトスターをよろめかせ、決闘から離脱したが、この有利を利用することはできず、同時に部下たちの安全な退路を確保できなかった。

 ナカヤマは基地へと戻る長い行程のあいだ、不名誉の重荷を背負い続けた。敵は有利な立場だったにも関わらず第2大隊を行くに任せた。あとから知ったところでは、ヒルトッパーズはアシオで特戦隊の非戦闘員を守る唯一の部隊であった。ナカヤマのタイショーはかろうじて旅から戻り、ボロボロになった第46の生存者たち(この時点でかろうじて1個大隊)の指揮官になった……連隊の指揮幕僚はラビッドフォックスの暗殺者たちに殺されていたのである。戦えるものがほとんどいなかった第46は、第45に編入された。ナカヤマは、第46の生き残りで構成される第3大隊の指揮官であった。ナカヤマは大隊の全員を集め、アシオで傭兵たちに付けられた汚点を消し去ると公に血の復讐を誓った。刀を抜くと、手のひらを切り、血液を新しいアクマの装甲に塗り、誓いを固めたのである。

 元第46の仲間たちもまた、ナカヤマが名誉を失ったことに苦しんでいた。第2大隊から来た者たちは同じ血の誓いを立てた。彼らは連隊の他部隊からナカヤマ・ブラッドと呼ばれるようになった。アシオへのひたむきな思いは、大勢の敵傭兵たちの死に結びついた。ナカヤマの戦術は、傭兵に直面すると野蛮に堕した。彼と部下たちは倒れた敵を狙い、パイロットとメック戦士と戦車兵を殺し、雇われ兵士からの回収を拒絶する。

 サンドヴァル公爵の兵士たちがアシオから去った後、ナカヤマはまだ傭兵の血に飢えていた。第45がプロセルピナに送られると、ナカヤマ・ブラッドはこの飢えを癒やすことができなくなった。代わりに彼らは野蛮さを第8南十字部隊に向けた。第8の陣地に戦闘降下して、オルレアンを侵略者から開放したあと、ナカヤマ自身が市内で最後の一発を放った。南十字部隊は都市から逃げ出し、すぐにドラコ連合軍に囲まれた。第45を繰り返し押し込んで、ついにはナカヤマの陣地から遠く離れた戦線を突破した。南十字星部隊が旋回して第45を撃破する前に、ナカヤマはシン・ヨダマ少将の第1〈光の剣〉と肩を並べて、包囲突破を粉砕したのだった。

 プロセルピナの勝利は、ナカヤマの鋭い洞察力を示したが、彼は劣った指揮官(第8南十字星部隊を封じ込めるのに失敗した)の下で働くことを拒絶した。彼は血の復讐を誓った者たちを集め、連合にはびこる傭兵を根絶する専門の独立中隊を結成した。第45の指揮官は、ナカヤマの敵意を解消するためにこれを承認した。だが、ナカヤマ・ブラッドは失敗するどころか成功を収めた。彼らの情け容赦ない攻撃は、国境沿いで追い回された敵傭兵を心胆寒からしめた。戦闘経験を求める熱心な志願者たちがいたため、損害はいつでも容易に回復された。

 ワード・オブ・ブレイクの聖戦は、ドラコ連合にとって破滅の時間であったが、ナカヤマ・ブラッドにとっては狩りの時期であった。ブレイク派は傭兵に頼り切りだったので、ナカヤマ・ブラッドは占領された領土中からターゲットを選ぶことができた。注目に当たる交戦は、3068年のディーロン、ナカヤマ・ブラッドが管区主星を争う戦闘に加わろうとしたときに起きたハンニバル・ハーミットに対するものであった。数で劣っていたものの、ナカヤマは休むことなく待ち伏せを仕掛け、ハーミットに対する直接強襲さえした。ナカヤマ・ブラッドはすぐに戦力を削られスクラップ同然となり、傭兵との最後の戦いで捕らえられた。ナカヤマは重症を負い、セップクを果たす前に捕まった。左脚を失ってなお、憎しみの炎が消えることはなかった。ブレイク派の虜囚となった不名誉を、すべての傭兵への貸しに付け加えた。

 ディーロンがようやく開放されると、ナカヤマは部隊を再開し、すぐにナカヤマ・ブラッドを再建する一方、新しい義足に順応した。彼の第一の目的は、ハンニバル・ハーミットを含むディーロンを汚した者たちを抹殺することであった。ナカヤマ・ブラッドは生命と物資を費やし、辺境まで本拠地世界を占領した者たちを追跡した。ハーミット最期の地となったのはミカ・マジョリティ、ふさわしいことに元ドラコ連合の流刑植民地であった。

 ナカヤマの傭兵に対する確固たる憎悪は、聖戦後にこだましたドラコ連合の古い感情を思い起こさせるものである。ディーロンがスフィア共和国に割譲され、ディーロン正規隊がニューサマルカンド軍事管区に移管された際、ナカヤマは丁重に「拒否」し、ナカヤマ・ブラッドをディーロン正規隊で唯一現役の部隊として残した。このスタンスについて尋ねられると、ナカヤマは射すくめるような目で見つめてこういった、「ディーロンはいずれ連合に戻るだろう。我々がこんな簡単に国境を移動させてしまうのならば、忠誠心とはなんなんだろうか? そこに真実がないのだとしたら、兄弟や姉妹たちからどんな歓迎を受けるのだろうか? みんな肩をすくめて、背中を見せて、忘れてしまうのだろうか?」。聖戦後に傭兵に対する不信感が広まって、傭兵は連合内で数を大きく減らした。だが、傭兵が連合にとって脅威になるならどこでもナカヤマ・ブラッドがそこにいるだろう。



部隊詳細

 ナカヤマ・ブラッドは第45ディーロン正規隊の制服と配色を使っている。他の第45とは違い、ナカヤマ・ブラッドはカモフラージュは使用せず、常にパレード用の塗装を使う。ただし金色の代わりに赤で縁取る。通常通り、クリタの紋章とディーロン管区の記章が描かれるが、第45のイエバエのシンボルは血の雫に変えられる。血の誓いを象徴するのが、全メックの胴体あちこちにある血の手形風の塗装である。メック戦士たちは、キルマークとしてメックの腕に血の雫を描く。傭兵以外の撃墜は記録されない。

 ナカヤマ・ブラッドの隊員たちは全員が、戦場で出会ったすべての傭兵を抹殺するという血の誓いを立てている。傭兵への憎しみがあまりに強すぎるので、ナカヤマ・ブラッドのメック戦士全員が、傭兵と戦う時に+1の操縦スキルロール修正が入るが、格闘と短距離兵器の攻撃に-1の命中修正を得る。

 ナカヤマ・ブラッドのメック戦士たちは、戦闘において「劣った部隊」からの支援を拒絶する。これは諸兵科連合の排除につながり、戦闘時の柔軟性を大きく制限している。この禁止処置は気圏戦闘機には適用されず、彼らはメック戦士から同胞として扱われる。車両や歩兵が開始時の部隊に入っている場合(護衛される車列含む)、-4のイニシアティブ修正が入る。

 部隊のメック戦士全員が、一回の戦闘ごとに一度の個人的な決闘の挑戦を受けるよう厳格な命令を受けている。また、傭兵でない者がナカヤマ・ブラッドの隊員を殺した場合は、挑戦を求められる。隊員が戦死したらすぐ、最も近くにいて決闘中でないブラッドのメック戦士が挑戦せねばならない。同距離に2人のメック戦士がいたら、両方が挑戦して、もし敵が受けるのならどちらにするか選ばせる。もし、敵が決闘を拒絶する(あるいは敵が傭兵である)場合、射程と射界にいるナカヤマ・ブラッドの全隊員が敵を破壊するまで目標にし続ける。決闘で敵を撃墜するのに失敗したメック戦士は、降格や屈辱よりもセップクを求めることがよくある。通常、敵と直面して臆病から失敗したものだけが処罰され、時として部隊から除名となる。例外は、たとえば敵の仲間が乱入し、死が避けられないものとなった場合などである。

 こういった誓いにより、部隊は個人の集まりではなく、団結したものとなっている。だが、氏族とは違って、決闘中でない限り敵に集中射撃してもよい(特に傭兵に対しては)。よって、3個小隊以上が同じ戦いに参加する際は、-1のイニシアティブ修正がある。

 ナカヤマ・ブラッドが傭兵部隊相手に攻撃側となったとき、部隊は+2のイニシアティブ修正を得る。傭兵と戦うとき、攻撃側でも防衛側でも、ナカヤマ・ブラッドは「喧嘩屋(Brawlers)」のスペシャル・コマンド・アビリティを持つ。各メック戦士は傭兵との戦闘時に、特殊パイロット能力の「士気を下げる(Demoralizer)」と「ブラッドストーカー(Blood Stalker)」もまた持つ。戦う敵に傭兵が含まれる際、撤退強制はけして発動しない。






人物


ハロルド"ブラッド・オース"ナカヤマ
 称号/階級: 大佐、ナカヤマ・ブラッド指揮官
 生年: 3030年
 ハロルド・ナカヤマはディーロンの生まれである。彼は3048年にディーロン・ディストリクト・ギムナジウムを卒業し、第24ディーロン正規隊に配属された。氏族侵攻後、ナカヤマは第45ディーロン正規隊を作るために第24を離れ、数年後、第46結成のために異動した。ナカヤマはキャリアを新連隊の創設に使ってしまうのではないかと恐れた。その後、ジェームズ・サンドヴァルがアシオに侵攻し、ナカヤマはついに戦う価値のある敵を持った。アシオ争奪戦でホルト・ヒルトッパーズに屈辱を被った後、ナカヤマは猪突猛進のメック戦士から残虐な殺し屋となった。第46が壊滅して第45に統合された後、ナカヤマは第3大隊指揮中隊を傭兵を追い詰めて殺すのに特化した独立部隊に変えた。聖戦は大きな犠牲を生み出した……ディーロン防衛戦で左脚を失ったのである。彼の技量と反傭兵感情は、ブレイク派の囚人キャンプの数年で幾分失われた。しかしながら、彼は少数の生存者からナカヤマ・ブラッドを再生し、誓った任務を続けた。スフィア共和国へのディーロン割譲は、ナカヤマに精神的な打撃を与えた。彼の気分を上げるのは傭兵を殺す機会だけである。
 スペシャル・アビリティ: ナカヤマ大佐は傭兵がいる場合、特殊パイロット能力の「ブラッドストーカー」を使わねばならず、傭兵でない敵は無視する。敵軍に傭兵が含まれる場合は、特殊パイロット能力「鋼鉄の意志」を持つ。


ザールソン・ナカムラ
 称号/階級: 大尉
 生年: 3045年
 ザールソン・ナカムラは、聖戦の前にナカヤマ・ブラッドに加わった。父のカタパルトを操縦するその腕は並外れており、ケンサイ・カミ卒業生と間違われるほどである。第45ディーロン正規隊への配属は控えめに言っても嵐を呼ぶもので、上官と衝突した。ナカヤマ・ブラッドへの加入を提案されると、ナカムラは即座に飛びついた。祖父がリヨンでケルハウンドに殺されたことから、部隊に入る前から彼は傭兵を憎んでいた。ハンニバル・ハーミットに敗北したあと、捕虜とならなかったナカヤマ・ブラッドの数少ない一人が彼である。彼はブレイク派占領軍へのゲリラ攻撃に参加し、捕まっている戦友たちを開放しようと戦って、その過程でカタパルトを失った。彼は聖戦の初期をどうにか生き残った、星間連盟時代の旧式ランスロットに乗っている。ナカヤマ・ブラッドで最も長く勤務するメック戦士の一人として、彼は大尉の階級に達し、いまではナカヤマ大佐の副官を務めている。


ウルラス・スヴェンセン
 称号/階級: 少佐
 生年: 3028年
 脱落した元DEST候補生のウルラス・スヴェンセンはナカヤマ・ブラッドの創設メンバーである。士官たちの生命の多くを奪ったプロセルピナ争奪戦のあと、彼はすぐ中尉に昇進した。ブレイク派は彼のハタモト=ヒを鹵獲したが、彼自身は魔の手を逃れた。ブレイク派は彼のメックをブレイク技術でアップグレードして実戦に投入した。スヴェンソンは抵抗活動に加わり、占領軍に対するゲリラ攻撃を実施した。暴動を鎮めようとするハタモト=ヒを目撃したスヴェンソンは基地まで後を追いかけていった。夜がふけると、彼はDESTの訓練で培った浸透技術を活用し、ブレイク派のメック戦士と対決した。この戦いでスヴェンソンは右目を失ったが、ハタモト=ヒに乗って基地を離れたのだった。解放後、ナカヤマはスヴェンソンを少佐に昇進させ、部隊の副指揮官とした。スヴェンソンの義眼は、龍に対する犠牲を思わせ続けるものである。
 スペシャル・アビリティ: スヴェンセン少佐の義眼は、強化視覚能力を持っている。夜戦時には目標修正を無視し、煙、雨、霧、雪のペナルティを1軽減する。また、義眼は特殊パイロット能力「イーグルアイ」「スナイパー」を与えてくれる。


シェイン・マイケルズ
 称号/階級: カシラ
 生年: 3055年
 シェイン・マイケルズ(第8ディーロン正規隊)は、ディーロン解放後に部隊が再結成された後、ナカヤマ・ブラッドに加わった。ゴーストベア氏族のアルファ銀河隊の戦士たちは、マイケルズの非凡な技術に畏怖の念を抱いている。彼は第8で最年少の一人だったが、彼の腕に並ぶものはいなかった。どんな状況でもピンポイントの精度を出して注目を集め、ほとんどきまりが悪いかのように見えた。マイケルズは再建中のナカヤマ・ブラッドへの異動許可申請を出した。第8指揮官はこのような戦士を失うのを厭ったが、マイケルズの目はそれ以外の返事を求めていなかった。マイケルズは訓練任務でほとんど役立たずである。なぜなら、対戦相手が彼のメックの装甲をひっかく以上のことをする前に、排除してしまうからである。
 スペシャル・アビリティ: メック戦士マイケルズは、特殊パイロット能力「マークスマン」「レンジマスター(超長距離)」「スナイパー」を持つ。また彼は、1ターンに1回、すべての移動が行われる前にPPCを一回射撃可能である。発熱は通常通りで、ダメージは即座に入る。このPPCは同じターンに撃ってはならない。


ドレブ・ムチコ
 称号/階級: 大尉
 生年: 3040年
 ドレブ・ムチコはサン=ツァンメック戦士養成校を20歳で卒業し、その時点ですでに第46ディーロン正規隊の新たな戦友たちよりも腕がよかった。アシオでの決闘があったにも関わらず、彼女はナカヤマ中佐を尊敬しており、彼に加わって血の誓いをした最初の隊員になった。ディーロンでの虜囚生活も見事なストイシズムで乗り切った。戦いの日々は彼女に悪影響を与えていない。ムチコは血の誓いに熱心に従っているが、戦いそのものにはほとんど飽きるようになっている。挑戦のためだけに、ノ=ダチの剣だけで戦うよう自らに課している。その飛び抜けた技量は、志を同じくするバトルメック格闘戦のエキスパートたちからの注目を集めている。彼女の小隊のメックすべてが、近接武器を携行しており、できる限り早く格闘戦に移行する。
 スペシャル・アビリティ: ムチコ大尉はエリートのメック戦士である。彼女は、特殊パイロット能力「回避(Dodge)」「格闘の達人(Melee Master)」「格闘の専門家(Melee Specialist)」を持つ。敵ユニットと近接してターンを始めた場合、どちらがイニシアティブを得たとしても、特殊パイロット能力「戦闘洞察(Combat Intuition)」を得る。そのターンで移動を終えたユニットと格闘戦に入った場合、歩行MPの2倍での走行が可能で、発熱は3点となる。


ステン・ルイス
 称号/階級: シュジン
 生年: 3060年
 ステン・ルイスはナカヤマ・ブラッドの最年少隊員である。彼は養成校ではなく、試験場システムでメック戦士になった。彼は射撃戦よりも格闘戦を好むところを見せており、それは主に照準が苦手なのを打開するためである。よって、ブレイク派からの回収品であるハチェット装備のブラックナイトを割り当てられた。経験不足から、駐屯任務に回される可能性があったが、ムチコ大尉は小隊用に格闘戦の専門家をもう一人求めていた。ルイスは反傭兵感情を戦友たちと共有せずに血の誓いをした。なぜそこまで傭兵を憎むのか理解していないものの、ブレイク軍には大勢の傭兵がいたことから戦いに困ることはなかった。メイヨ小隊の同僚たちと同じように、彼は砲撃を控えて、至近距離に近づこうとする。そうして、近接武器を活用するのである。


イサック・スロン
 称号/階級: 中尉
 生年: 3048年
 イサック・スロンは新たな仲間に秘密を隠している。彼はブレイク派に捕まっているときにナカヤマに出会った。収容所の誰もがナカヤマの傭兵嫌いを知っていたことから、スロンは過去を隠した……ブレイク派によるフォート・ウィンストン攻撃を生き延びた第21打撃連隊の隊員だったのだ。彼は防衛戦で深い傷が残っており、攻撃の前から知っていた第3ディーロン正規隊の身分を偽った。収容所が開放されると、ナカヤマはスロンに小隊指揮官にならないかと持ちかけた。傭兵がブレイク派を助けていたことから、スロンは迷わず血の誓いを立て、傭兵を憎むようになった。彼はISFが秘密を暴くのではないかと常に恐怖を抱いているが、部隊の独立性が不安をいくらか和らげている。不意に秘密が漏れることがないように、彼はアルコールや薬物に手を出すことはない。スロンはあらゆる敵に見境なく身を投じて、誤魔化しを過剰に補っている。


ラース・エドキスト
 称号/階級: シュジン
 生年: 3044年
 ラース・エドキストはプロセルピナの出身で、ナカヤマの部隊が故郷のオルレアンを開放したときにそこにいた。ナカヤマ・ブラッドが壊滅したと聞いて、エドキストは打ちのめされ、聖戦を無気力に戦った。ディーロンが開放され、「オルレアンの英雄」ことナカヤマがブレイク派の強制収容所という地獄を生き延びたとのニュースが出た際、彼は市民軍部隊にいた。エドキストは市民軍をやめて、ディーロンに移動し、どんな形でも協力すると申し出た。ナカヤマは若きメック戦士を歓迎し、ディーロン中に散乱するブレイク派の装備の山から回収されたペルセウスを任せた。エドキストはナカヤマ・ブラッドの他隊員よりも腕の面で劣っているが、部隊の一員になるという熱意は誰にも負けることがなかった。エドキストは崇拝するナカヤマの評価を得ようと、疲労困憊するまで訓練している。




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