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作成:2003/06/14
更新:2004/07/06

拒絶戦争 The Refusal War



 氏族は、ふたつの派閥にわかれています。ウルフ氏族、ゴーストベア氏族に代表される守護派。ジェイドファルコン氏族、スモークジャガー氏族に代表される侵攻派です。
 ウルフ氏族は中心領域に侵攻していながら、守護派の中心的存在です。氏族全体を仕切る大族長ウルリック・ケレンスキー、ウルフ竜機兵団で名を馳せたナターシャ・ケレンスキー族長、そして中心領域出身であるフェラン・ワード副族長、すべて守護派の代表者です。しかし全員が全員、守護派なわけではありません。当時のウルフ氏族内では、若手のメック戦士ヴラッド(ウラジミール)を始め、侵攻派が勢力を伸ばしていました。
 ウルリック・ケレンスキーは心配していました。いずれウルフ氏族は守護派と侵攻派に分裂してしまうのではないかと。そこで一計を案じます。ウルフ内の侵攻派と、侵攻派最大勢力ジェイドファルコン氏族を衝突させ、侵攻派全体の勢いを殺そうと。
 classicbattletech.comより。






拒絶戦争(3057年秋)

 3057年の夏、侵攻派はウルリックに疑惑をかけ、(停戦)条約を撤廃させようとする試みをまだ続けていた。ウルフ内の侵攻派勢力は大族長に一連の非難を浴びせ、ウルリックを侵攻派の人物にすげ替えることを望んでいた。大族長として、非難に答えるのに良心が咎めることはなかったが、侵攻派ウルフの勢力を弱めるためにそれを行った。彼は狡猾な罠にかかった。休戦の残り十年間、氏族の戦士が中心領域と戦う権利を取り上げることによって、氏族を滅亡に追い込もうと画策しているのだと、侵攻派は彼を糾弾したのである。ウルリックはウルフ氏族評議会で非難と戦い勝つことができたが、何年も告発が彼につきまとうことがわかっていた。それゆえ彼は非難を族長会議に持ち込むことに決めた――おそらくそこで負けてしまうこともわかっていた。その結果が拒絶戦争である。

 族長会議は、ウルリックに対する非難を受け入れた。有罪19票、無罪15票と僅差であった。非難を受けたときから計画を練っていた通り、ウルリックは評決に対して拒絶の神判を要求した。しかしながらこの神判は、単なる一対一、あるいは星隊対星隊といったものを越えていた。ナターシャ・ケレンスキーとフェラン・ワード(ウルフ氏族長として仕えていた)に支援されたウルリックは、全ウルフ氏族を侵攻派氏族――彼の「名誉」を失墜させようとしていたジェイドファルコン氏族に入札した。この動きによって、彼は神判に勝利することを望み、その過程で最強の侵攻派のひとつを粉砕するとこを望んでいた。

 予期されていた通り、ファルコンは族長会議のために戦った。続いて起こった戦闘は、彼らの占領域内で猛威を振るった。ウルフは限界まで自分たちを駆り立て、交戦したほとんどのファルコン部隊を粉砕した。しかしながら、彼らの勇気によっても、彼らが被った甚大な損害を補うことはできなかったのである。勝利の望みが薄くなったことに気がついたウルリックは、フェラン・ワード族長に命令を下し、ウルフ氏族の資産の代表的な部分を中心領域に脱出させた。ファルコンの追撃隊とモルゲスで戦っていたとき、ナターシャとウルリックに率いられていた攻撃隊は苦境に陥っていた。ナターシャ・ケレンスキー(高名なブラックウイドウ)はトワイクロスのグレートガッシュにて、決闘で死んだ。しばらくたたないうちに、ウルリックはヴォータンでファルコンの裏切り行為により殺された。大族長と両氏族長の死、もしくは脱出により、ファルコンは勝利を宣言した。ウルフはファルコン氏族軍を見る影もないほどに減少させ、続いて起こったファルコン指導者による残ったウルフを吸収する試みで、この両氏族長が死んだ。ウラジミール・ワード(前スターキャプテン)は、「侵攻派」ウルフを復活させ、その功績により氏族長に選ばれた。



ウルリック・ケレンスキー大族長 ilKhan Ulric Kerensky

 侵攻におけるウルフ氏族の成功のカギは、ウルリック・ケレンスキー大族長の心中にある。彼は氏族長、ウルフ氏族精鋭アルファ銀河隊の司令官として侵攻を始めた。彼は比類なきことに11年にわたってこの地位を保持している。戦闘に飢えたエリート戦士が集う軍隊のなかで、まれな存在である。彼は、政治的な出来事を動かし、人々を計画に押し込めるという驚異的な能力を見せた。ウルリックの行く手を遮るものはない。 彼のもっとも強大な敵でさえ、彼が例外的な指導者・戦士だという事実を否定することができない。スモークジャガーのレオシャワー大族長の死に続いて、彼は侵攻の残りを担当する大族長に選ばれた。守護派的信条を見せるウルリックは、ツカイード条約の立案者であった。彼は、氏族が戦闘スタイルをコムガードに適応できないことと、また目的のためにともに戦わないことがわかっていた。彼が氏族の伝統を没落させたのだ。



ナターシャ・ケレンスキー族長 Khan Natasha Kerensky

 ナターシャ・ケレンスキー(ブラックウイドウとして知られる)は、中心領域において伝説をうち立てた。彼女はウルフ竜機兵団の高名なブラックウイドウ中隊の指導者であった。齢を重ねたにもかかわらず、レオ・シャワー大族長が死んだあとでウルフ氏族へと帰還した。テストを受けておらず、地位もなかった。階級の神判で前代未聞の四人抜きをやってのけ、スターコーネルの地位を得た。彼女とその星団隊(第13ウルフガード)は、侵攻、ツカイードの戦い、拒絶戦争のあいだ信じられないような活躍をみせた。驚異的な技量を持っていたにもかかわらず、トワイクロスの戦いが最後のものとなった。ナターシャ・ケレンスキーは、3057年12月7日に撃墜された。ファルコンガードのスターコマンダージョアンナとの決闘でのことだった。残った星団隊は放浪ウルフ氏族に仕えている。



フェラン・ケル族長 Khan Phelan Kell

 フェラン・ケル族長(著名な傭兵モーガン・ケル大佐の息子)は、ウルフ氏族によるリバイバル作戦の最初の戦闘で捕らえられボンズマンとなった。彼は戦士としてのテストを受け、スターキャプテンの地位を獲得し、フェラン・ウルフとして知られるようになった。中心領域への侵攻のあいだ、フェラン・ウルフは氏族の歴史のなかで、戦闘することなしに世界を攻略した唯一の戦士となった。キリラ・ワードの支持を受けたフェラン・ウルフは、彼女が死んだあとで、ワードのブラッドネームを争い勝ち取った。その後、彼は下級族長(副族長)の地位に選出された。それは、ツカイードでガース・ラディックが死に、ポストに空きができたあとでのことだった。ジェイドファルコン氏族との拒絶戦争後、放浪ウルフ氏族のブラッドネーム保有者は全員がブラッドネームを剥奪された。物事を予言する能力をもう一度発揮したウルリック・ケレンスキーは、大族長の最後の仕事としてケルのブラッドネームを作り、フェランに授けた。ウルリック、ナターシャ・ケレンスキーがジェイドファルコンの裏切り的な行動によって撃墜された現在、フェラン・ケル族長が放浪ウルフ氏族の指揮をとっている。



ウラジミール(ヴラッド)・ワード族長 Khan Vladimir Ward

 ウルフのウラジミール・ワード族長は危険な敵である。彼は氏族侵攻の最初の戦闘時で、フェラン・ケルを捕まえた戦士だった。そのことがあって以来、ヴラッドは、フェランが同等の存在であることを認めず、苦々しい戦いが始まった。ヴラッド族長は密かに調査を進め、ウルリック・ケレンスキー大族長の反逆と虐殺を非難した。ウルリックとの戦いのあとで、ヴラッドは侵攻派の信条かウルフ氏族への忠誠心かを選ばなければならなくなった。ヴォータンにおいて、ウルリックが裏切り的行為で殺されたのを見たあと、ヴラッドはジェイドファルコン氏族長ヴァンダーヴァン・チストゥに不服の神判を申し立てた。この勝利により、ヴラッドはワードのブラッドネームを得て(フェラン族長から奪った)、ジェイドウルフ氏族の指揮をとっている。ウラジミール・ワード族長は現在、ジェイドウルフ氏族が、再びウルフ氏族になったと宣言している。





拒絶戦争



非難 Accusations

 ツカイードの停戦後の数年間、氏族内において緊張が高まり続けていた。いわゆる侵攻派からの停戦の破棄と中心領域侵攻の再開を求める声が増す一方で、守護派は中心領域勢力との協同を続けた。紛争は氏族と氏族を対立させ、各氏族内の戦士と戦士を対立させた。氏族内で新しい世代のメック戦士が誕生し、彼らは緊張にさらなる油を注いだ。こういった新しい戦士たちのほとんどは、中心領域侵攻の間に発育し、地球をかけた戦いで勝利する栄光を夢見ていた。しかしながら停戦が未来を打ち砕き、若い選手の欲求不満を募らせ、苦々しい気持ちにさせたのである。これはもっともなことだが、彼らの多くが侵攻の再開を要求する侵攻派の熱心な支援者になったのである。このような感情は、ウルフ氏族の若い面々のあいだで顕著であった。なぜならツカイードでの被害が少なかったことで、新たな戦士たちにブラッドネームがほとんど開かれず、また現実に栄光と昇進を勝ち取る機会をなくしていたのである。その結果、ウルフ内に多数の「至上主義者」が出現した。こういった戦士たちは氏族に熱心な忠誠を捧げ続けたが、守護派のウルフ氏族長にあからさまな敵意を向けた。

 ウルフ氏族内の侵攻派は、こういった高まりつつある感情を、慎重に見定めていた。それは、守護派の指導者から支配権をもぎ取る機会と、大氏族長に中心領域侵攻を再開させる機会を与えてくれるものであった。3057年6月10日、彼らは動いた。ウルフ侵攻派のローアマスター・ダーク・ケインズが、公式に大族長ウルリック・ケレンスキーを反逆で非難したのだ。この告発は、若きウルフ至上主義者の指導者スターキャプテン・ヴラッドの内部調査によって扇動されていた。告発によると、ウルリック大族長はコムスターの指導者と結託し、ツカイードでの氏族軍敗北を巧みに計画、実行したとのことだった。敗北はツカイードの停戦をもたらし、中心領域は軍を再建するのが可能となり、侵攻が始まる前に防衛を整えることができる。

 加えて、大族長を告発した者は、ウルリックが、中心領域の工作員――彼のボンズマンであり、後に敵となったフェラン・ワード――をウルフ氏族副族長の地位に昇進させたと主張したのである。フェランは中心領域の防衛に関する内部情報を大族長に提供し、それでウルフは侵攻に成功したのだと彼らは主張した。見返りとして、大族長はフェランにブラッドネームを得るチャンスを与え、族長となる入札で支援したのである。

 告発の公聴会としてウルフ氏族評議会が行われたとき、ウルリック大族長は根拠がないものとして告発を公然と非難した。以前、コムスターとの共謀で告発されたことがあると、彼は説明した。そして族長会議は彼の嫌疑を晴らしたのである。フェラン族長への告発については、フェランが戦いで捕らえられたボンズマン(その場にいた多くの者と同じく)であることを、大族長は指摘した。さらにフェランが氏族の伝統に則り、戦闘による神判でブラッドネームを勝ち取り、副族長の地位に昇進したことは、族長会議で承認されているのである。氏族評議会が告発を却下するのが確信的となったとき、ローアマスター・ケインズが第三の告発に答えるよう挑戦した――それは氏族の遺伝子資産を破壊するために陰謀をたくらんだというものだった。

 この驚くべき告発に、不審のささやきがもたらされた。遺伝子の破壊は、氏族、氏族人がなしうる単一でもっとも恐るべき犯罪である。かつて氏族史上、このような告発があったとき、一氏族の完全な殲滅に結びついている。大族長はしばし無言になり、フェラン氏族長がすぐローアマスターに説明するか拒絶の神判に直面するかを要求した。爆弾を投げ込んだことで、目の前の決定的な敗北が勝利に変わったのを見たローアマスターはなめらかに答えた。

「停戦によって、演習と時々の襲撃でしか戦争を知らない戦士が三世代生まれるだろう。停戦が終わったときには、我らの部隊は、試されていない、試練を体験していない、経験不足の戦士たちで満たされるだろう。上層部は若者を戦いの場に導き、ウルリックが意図するよう、死んでいくだろう。彼らは滅び、彼らとともに氏族も滅ぶだろう」

 大族長が次に取った行動は、支援者、対立者、全評議会を呆然とさせた。告発を族長会議へ送るようローアマスターに命令し、一ヶ月後の公聴会で返答することを約束した。あとで考えてみると、ウルリックはふたつの理由からこの行動をとったことが明白である。まず、この件を族長会議に送り込むことで告発がウルフ氏族を分裂させないよう保証した。第二に、貴重な時間を稼いだのだろう。いずれにしても告発が族長会議の場(侵攻派の敵がまだ動揺していた)までもたらされるであろうことを知っていた大族長は、自身の計画を立ち上げ実行に移すことに一ヶ月の猶予を利用した。



告発への回答 Answering the Charges

 3057年8月8日、族長会議が惑星タマラーで開かれた。大族長ウルリック・ケレンスキーへの告発に対する公聴会のためである。集まった氏族長たちは告発のことを知っており、彼らのほとんどはすでにどちらへ投票するか決めていた。

 ジェイドファルコン氏族のエリアス・クリッチェル氏族長は検察側になる権利を主張した。侵攻派氏族でもっとも過激なジェイドファルコンは、占領した世界を充分に支配しており、ツカイードの停戦が崩壊した場合、すぐ軍を地球に向けて動かせるよう準備していた。他の氏族が中心領域の襲撃や、惑星での暴動と戦う一方で、ファルコンは次の戦いのため惑星クォレルに弾薬と装備を備蓄していた。戦士たちが、もめ事ばかりの連邦=共和国を切り裂き、地球を1年以内に奪取するとファルコン氏族長は信じており、ジェイドファルコン氏族が大氏族になるのを保証されている。このすべてを実行するために、ウルリック・ケレンスキーが有罪でありツカイードの停戦が否認されることを、ジェイドファルコン氏族長は必要としていた。

 この目標を追求するなかで、クリッチェル氏族長は有罪を立証する――だが不正確な――ポートレイトを描いた……ウルリック、戦司教アナスタシウス・フォヒト、そして二人のウルフ氏族長が、堕落した星間連盟を再興し、連邦=共和国のヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンを第一君主にするという、邪悪な陰謀をたくらんだものとしたのだ。彼は、氏族(ウルフ氏族の侵攻派を含む)がウルリックによって裏切られたと主張した。ウルリックは氏族と氏族全体の生き方を破壊しようとしたのだ。族長会議員のうち数人はクリッチェルの大ざっぱな推測を信じた。そしてフェラン・ワード氏族長による否定は無駄だったのである。19人の氏族長が裏切りを有罪と宣言した。15人が無罪とした。会議は彼から大氏族長の地位を剥奪し、スターコーネルの地位に落とした。応えて、ウルリックはジェイドファルコン氏族に対して拒絶の神判を求めた。

 この反応はファルコンの予想に入っていなかった。彼らは重大な政治的勝利を勝ち取り、ウルリックは評決について争わないと仮定していた。ファルコンは中心領域侵攻の再開を控え、戦士とバトルメックを氏族内の争いで浪費するのはごめんこうむりたかったのである。しかしながら、戦いに対する最初の抵抗は霧散した……負けるのが怖くて神判を避けているのでないかとウルリックがあてこすったのである。これによってファルコンは怒りつつウルフとの対決を受け入れた。この苦い紛争は拒絶戦争として知られるようになる。



大侵攻 The Great Crusade

 族長会議が延期されたあと、ウルリック・ケレンスキーは、ウルフ氏族長ナターシャ・ケレンスキー、フェラン・ワードとともにタマラーの司令部に退いた。ひとつの戦いで敗北したものの、彼らは拒絶の神判では勝つつもりだった。ジェイドファルコンを破る戦略を練っていたとき、ウルリックは腹案を明らかにした。侵攻派の力を殺ぐため神判を使うというものだ。その一方で、守護派(ウルフ氏族最良の真のメンバーであると考えていた)は長期間生き残ることを保証されるのである。

 裏切りの告発が彼に向けられたときから、氏族の侵攻派が彼を有罪にし、ツカイードの停戦を破棄することをウルリックは知っていた。侵攻派の猛攻から中心領域を守る唯一の方法は、内戦によって最も強い氏族の戦力を浪費させ、侵攻派の力を破壊することだった。せいぜいジェイドファルコンは被害甚大な勝利を収めることができただけである。中心領域侵攻の先陣に立つという彼らの希望はウルフ氏族によって打ち砕かれるのである。他の侵攻氏族(占領世界での反乱に悩まされ、ジェイドファルコンのような軍事的慧眼に欠けていた)は、中心領域にほとんど損害を与えられないだろう。ジェイドファルコンとウルフ氏族の侵攻派が事実上破壊されることによって、侵攻派勢力の中核が引き裂かれ、中心領域が守られることをウルリックは望んでいた。そのために氏族は作られたと彼らは信じていたのだ。

 ウルフ氏族の長期の生き残りを確保するため、ウルリックはフェラン副族長に命令した……守護派勢力を率い、ウルフ氏族の遺伝子遺産と装備の1/3を持って、中心領域の安全地帯に行けというものだ。もし拒絶の神判がウルフ氏族の残りとジェイドファルコン氏族を破壊して終わったら、フェランがウルフ氏族を再興し、名誉ある遺産を保存し続けるのである。ふたりの指導者(ウルリック・ケレンスキー大族長、ナターシャ・ケレンスキー族長)に深い敬意を払っていた彼はその隣で戦いたかったのだが、自らの役目を受け入れた。彼の隊は初期の戦いに加わり、それから比較的安全なアークロイヤルにあるケルハウンドの要塞に向かう。ウルリックはまたウルフ氏族を生存させる極秘の計画を練り上げた。スターキャプテン・ヴラッド(ウルフ至上主義者で、素晴らしい戦士)に対し、拒絶戦争で生き残ったウルフ侵攻派の保護を託したのである。フェランが殺され、運んでいったものとともに部隊が破壊されたなら、ヴラッドがウルフ氏族を再建し、もう一度ケレンスキーの子供たちで空いた場所を埋めるのである。

 それぞれの役割のため、ナターシャとウルリックはジェイドファルコンに対する二方面強襲を計画した。それは部隊の分割を強いるものだった。ウルリックは世界から世界へと飛び回りジェイドファルコン隊と物資を消耗させるのを意図した。ヴォータンにあるファルコン要塞への最後の強襲が、成功の最大のチャンスと考えていたからである。それはヴォータンでジェイドファルコン氏族長と充分なファルコンの戦士を殺し、中心領域侵攻の再開を効果的に妨げることを意味していた。

 計画は実行に移された。ウルフとジェイドファルコンは最初の戦いの準備を始めた。それは彼らの最終的な命運を決めるものとなるだろう。



コルマー、ジェイドファルコン占領域、3057年9月24日 Colmar, Jade Falcon Occupation Zone, 24 September 3057

 エリアス・クリッチェル(ジェイドファルコン氏族長)は怒りながら歩き回っていた。タマラーにおけるウルフ氏族との会合では、彼が予期していた結果を引き出せなかった。最初に彼は、ウルフ氏族の戦士が待ちかまえるガントレットを通らせられた。それからウルフ氏族長ナターシャ・ケレンスキーはクリッチェルにさらなる屈辱を与え、激怒させた……裏切り者ウルリック・ケレンスキーとバッチェルをさせたのである。伝統に従い、氏族の族長たちは、同階級の者たちとだけ戦闘の期間について話しあう。けして低い階級の者とはしないのである。この習慣は重要な戦いへの入札をするとき、もっとも厳正に守られる。そして氏族人にとって拒絶戦争ほど重要な戦いはほかになかった。彼、ジェイドファルコンのエリアス・クリッチェル氏族長は、たかがスター・コーネルと交渉していることに気がついたのである。

 しかしながら、クリッチェルに真にショックを与えたのは、ウルフが神判に選んだ戦場であった。コルマー(これは予測していた)、ドムペール、ズデーテン、ズーテルメール、及び他のファルコン占領域の世界にて、ジェイドファルコンと戦うと、ウルリックは宣言した。さらにまたウルフは全兵力を入札したのである。

「ウルリックと、あのはみ出し者連中はあなたを怒らせる方法を探していました。そうして我らはミスを犯し、ウルフに神判で勝利を主張する機会を与えてしまったのです」。ヴァンダーヴァン・チストゥ副族長はクリッチェルに言った。「反逆者どもの計画は裏目に出るでしょう――わたしはそれを確信しております。我らはこの拒絶の神判を吸収の神判とします。ウルフの銀河隊群を叩いたあとで、やつらの持つ財産すべてを得て、ジェイドファルコンがもっとも偉大で強力な氏族となるのです!」

「きみに任せよう、チストゥ副族長、我らの戦略を展開するのだ」。クリッチェルは言った。「そして我らは反逆者のウルフを撃破し、わたしは大氏族長に選ばれる。我らは地球に向けて行進するのだ」

 ウルフとジェイドファルコンの激しい敵愾心が、コルマーの戦いでの猛烈な戦闘に火を注いだ。ひとつの戦いが、拒絶戦争全体のトーンを決めることとなった。

 マーラカー谷で最初の一発が放たれた。枯れた川底を隠れるのに利用した第352強襲星団隊は、ブライト湖にあるジェイドファルコンの陣地を目指して谷を行軍した。谷の壁が急だったが故に、ファルコンの気圏戦闘機はウルフメック縦列に対し、正面から機銃掃射せざるを得なくなった。結果、戦闘機はほとんど効果を上げられず、ウルフメックからの砲撃を嫌ってすぐに散っていった。

 逃げ去る戦闘機は第12ファルコン正規星団隊のバトルメックを残していった。隊が南の稜線に姿を現したとき、戦闘機の支援はなかったのである。ファルコンが急斜面を降りて射程に入ると、彼らはひとかたまりになって、第352隊のいい的となった。

 塵がはれると、第12ファルコン正規隊は全滅していた。第12隊のうち10%の人員のみが生き残り、そのうち気圏戦闘機は6機のみだった。比較すると、第352隊は17%の死傷者を出しただけだった。不幸なことに、ファルコンはなんとか352隊の半分の戦闘機とエレメンタル、2/3のメックを破壊していた。ウルフは生存者からボンズマンを取らなかったが、戦場の回収をすべて得た。戦いは熾烈なものとなり、第352隊のメックの多くがもう戦闘で使えなくなった。しかしようやくウルフの子犬たちは経験を積んだのである。

 戦いの後、残った第352隊はウルフスパイダー隊に組み入れられ、コルマーの首都ドーレンに向かった。そこでナターシャ・ケレンスキー族長のエレメンタル隊は惑星の武器庫を開き、民衆を武装させた。コルマー星系はジェイドファルコンの手から自由になったと彼女は宣言し、集まった群衆に語った……彼らの不満をジェイドファルコン氏族長個人に取らせると。



ズデーテン、ジェイドファルコン占領域、3057年9月27日 Sudeten, Jade Falcon Occupation Zone, 27 September 3057

 エリアス・クリッチェルはブリーフィングルーム内を歩き回った。コルマーでウルフが勝利したというニュースは彼を心の底から揺さぶった。目の前のホログラフィックディスプレイに、ズデーテンの戦闘の模様が表示されると、彼は罵った。ウルリックはちょうど二日前にドムペールを叩いていた。そして今週中にズーテルメールを攻撃する用意をしているように見えた。クリッチェルの額に汗が浮かび始めた。ウルフは、ファルコン隊をリボンのように切り裂いた。すぐにヴォータンにやってきて、クリッチェル氏族長と相まみえることになるだろう。

「クリッチェル氏族長、医者をお呼びしたほうがよろしいでしょうか?」チストゥ副族長は尋ねた。

「必要ない、副族長、医者はいらない」。クリッチェルは言った。「わたしが欲しいのは答えだ。なぜ君の計画はうまくいってないのだ? なぜウルフどもは、我らがいないかのように、部隊を切り刻んでいるのだ? 答えろ、チストゥ副族長、いますぐ答えを出せ!」

「落ち着いてください、クリッチェル族長。すべては計画通りです」。チストゥは返答した。「ウルフどもが勝利を収めたといっても、それはたかが守備隊に対してのもの。わたしは二線級部隊とソラーマ部隊を連中の行く手に置き続けるつもりです。こうなると、ナターシャとウルリックは、我らを弱めるのに、無駄に一線級部隊を費やさねばなりません。ウルフどもが骨になるまで少しずつ皮をはいでやります。そして奴らは我らの一線級部隊に直面し、ファルコンの真の怒りを味わうことになるのです。楽ができますよ、クリッチェル族長。ウルフに危害を加えられるおそれはありません。ヴォータンに奴らは来られないのです」

 すべてのウルフ軍がファルコンを攻撃しているというはったりを効果的にするため、フェラン副族長とデルタ銀河隊は、中心領域にジャンプする前に、最低でも一星系はジェイドファルコン占領域を攻撃する必要があった。その星系とはズデーテンであった。

 ウルフの前進を遅らせるため、ファルコンは惑星上の守備隊を強化していた。よってフェラン氏族長の軍隊は、草の生い茂った戦場で、ほぼ二倍の戦力に直面することとなった。

 フェラン氏族長は、軍勢をふたつにわけることによって、この不利な点を補った。軽量で高速なメックはファルコンの防衛軍を待ち伏せした。そこはダラゴス大陸にあるズデーテン西部の平原の、草と木に覆われた丘陵だった。残ったウルフのメックは守備隊を悩ませ、罠を設置するまでの時間を稼ぐため、ウェブスターの港町に向かった。都市の100キロメートル外まで部隊が到着すると、フェラン氏族長は降下船から気圏航空機支援を呼び寄せた。戦闘のほとんどは、ウェブスター・マグナレール駅(ちょうど都市のぎりぎり外)の周囲で行われた。

 ウェブスターにおいてファルコン守備隊と交戦したあとで、フェラン氏族長はダラゴス平原への撤退を命じた。ウルフ気圏戦闘機による支援の下で、フェラン氏族長のメックは、追撃してくるファルコン防衛隊に砲撃を続け、平原につく前にファルコン重量級・強襲級メックの多くを破壊した。生き残ったファルコン部隊がダラゴス草原の頂上に達したとき、彼らは15マイル離れた降下船に必死に逃げようとしている崩壊した軍隊のようなものを見た。

 突如、ウルフのメックが木に覆われた丘の隠れた場所から現れたとき、ファルコンは敵メックに囲まれているのに気がついた。ウルフ気圏戦闘機は罠にかかったファルコンに残った爆弾を落とした。爆撃に打ちのめされたファルコンのメックは、新たなウルフのバトルメックの容易なターゲットとなった。

 ついに、フェラン氏族長軍は、ファルコンに対する素晴らしい勝利を記録したのである。フェラン・ワード氏族長と部下たちは約100機のファルコンメックを倒すか捕獲した。それは惑星上にあるほぼすべてであった。85%のファルコンメック戦士は殺され、残りは負傷していた。その一方で、ウルフの損害はわずかに35機であった。

 ウルフ艦隊に帰還したあとで、フェラン氏族長は遠い戦場での戦闘に加われるよう、ナターシャ・ケレンスキー氏族長を説得しようと試みた(勝利を使って主張を補強した)。彼の抗議にもかかわらず、フェラン氏族長がウルリックの最初の計画に従い、デルタ銀河隊を率いて中心領域に行くことに、ナターシャ氏族長はこだわった。3057年10月5日、フェラン氏族長の航宙艦〈ワーウルフ〉は非常に特殊な荷を積んで氏族宙域を離れた――完全な遺伝子資産と、ウルフ氏族の未来である。



ズーテルメール、ジェイドファルコン占領域、3057年9月30日 Zoetermeer, Jade Falcon Occupation Zone, 30 September 3057

「侵攻派はもしかしたら君たちの哲学的な同胞かもしれない。しかし彼らはウルフでない。きみたちは中心領域を憎んでいる……我らがそう教えたからだ。彼らは我らより下の存在であると伝えられているが、ほとんどの前線で彼らは我々に対応し、いま氏族のほとんどに匹敵している。彼らを再度強襲する前に、おそらく彼らの戦争の仕方を学ぶ必要がある。敗北のリスクを抑えるために……ちょうどいまのファルコン、きみたちの精神的な指導者のように、だ」
――スターコーネル・ウルリック・ケレンスキー、ズーテルメールに降下する前に第11ウルフ正規隊への演説で

 「ブラボー星団隊が、西側面で抵抗軍と交戦しています、スターキャプテン」。ヴラッドはティンバーウルフの戦術ディスプレイをスキャンして、薄気味悪く笑った。臆病者のように、ジェイドファルコンは、ネルソン宇宙港近くにある倉庫の狭い通路に消えていった。貧弱な建造物が、ウルフの激怒から守ってくれると信じているらしい。ヴラッドと部下たちはそうでないと教えてやるつもりだった。

 あたかもこの考えを証明するかのように、ヴラッドは逃げていくジェイドファルコンのメックに照準をあわせ、そのマシンが大規模な倉庫の効果が疑わしいシェルターにたどりついた瞬間、パルスレーザーを背中に発射した。敵メックは振動、崩壊し、建物の壁をなぎ倒した。大気中に巨大な火球がひらめいた。死んだメックの爆発が、建物内の可燃物に引火したのだ。ヴラッドの笑みが消え去った。罵り、彼はティンバーウルフを敵に向け、コムリンクに吠えた。「偵察隊、007-9aに行け。すべてのファルコン部隊と交戦せよ。だが敵を追って倉庫内に入るな。繰り返す、追うな。もしやつらが我らを叩きたいなら、ウルフたちよ、奴らはこっちに来なければならないのだ」

 3057年9月30日、スターコーネル・ウルリック・ケレンスキーは、新たに作ったタウ銀河隊を率いて、惑星ズーテルメールのジェイドファルコンを強襲した。タウ銀河隊にいる若く影響されやすい戦士のすべてが侵攻派に傾倒していたが、またウルフであった。それゆえに氏族の名誉と伝統に縛られており、侵攻派の仲間であるジェイドファルコン氏族と戦って死ぬまで前大氏族長に従う。スターキャプテン・ウラジミール(ヴラッド、猛烈な侵攻派、ウルリックの副司令として選ばれた)は、他の若いウルフたちとともに、ウルリックの命令の正当性に挑戦したが、無駄であった。ウルリックはスターコーネルの権限範囲内でウルフ侵攻派を部下にし、守護派的心情を持つ戦士をフェラン・ワードの部隊に移した。侵攻派を侵攻派にぶつけることによって、ジェイドファルコンの敵だけでなく、ウルリックは氏族内の全侵攻派運動を潰すことを望んでいたのだ。

 ウルリックはうまく最初の目標を選んだ。ジェイドファルコンがズーテルメール軌道上の化学工業施設のひとつを、降下船パーツ用の小規模な工場に換装したのを、拒絶戦争が始まる二週間前に発見していたのである。軌道修理施設が、停戦ラインのごく近くにあったために、ファルコンは氏族本拠地から降下船パーツを交換するのに長い間待つ必要なく、中心領域深くに攻撃できたのだ。ファルコン第10臨時守備隊が、中心領域襲撃隊から工場を守るよう配置されており、海辺の都市サリューンのネルソン宇宙港に大半が駐留していた。1個メック星隊と2個戦闘機星隊が軌道工場を守るのに残っていた。ウルリックが計画した戦略により、工場と第10臨時守備隊の両方を破壊することになるだろう。

 ズーテルメール強襲の入札が始まる前に、ウルリックはスターコモドア・ラディックに、ウルフが入札し惑星で戦ってから、軌道施設の防衛軍に入札するよう命令した。ファルコン軍のほとんどがウルフと戦うなか、軌道施設を守っていた兵士たちには援軍がなかった。そしてラディックの部下に簡単にやられてしまったのである。

 エレメンタル3名の命を奪ったフェロスティールグライダーが、メック戦士ボザルス・ヴァイパーを罠にかけた。そのメック戦士は半分潰れたコクピットのなかで失神したが、ボザルスは幸運だった。彼は炎による最初の試練を生き抜き、すぐふたたびバトルメックに乗れるようになるだろう。第11ウルフ正規隊の1/3はそううまくいかなかった。

 ウルフは勝利したのだが、めまいがするほどの代償を支払った。第11正規隊は40パーセント以上のメックを失い、第21戦闘星団隊は32パーセントの被害、第4打撃星団隊は兵士の39パーセントを失った。部隊の70パーセントを使える水準まで部隊を戻すのに、技術者による少なくとも2週間の不眠不休の仕事が必要となるだろう。南方大陸におけるスターコーネル・ウルリック・ケレンスキーの勝利は、それほどの代償を支払わなかった。第2ウルフ機兵隊は15パーセントの装備、3パーセントの死傷者しか出さなかったのだ。

 軌道施設強襲は、もうひとつのウルフの勝利となった。スターコモドア・ラディックによる入札は、完全に第10隊司令官に対する奇襲となった。彼は最初の入札に施設を含めていなかった。ウルフの目標が自身の第10隊だけと信じていたからだ。このミスによって、ファルコン司令官は施設に援軍を送るチャンスを失った。そしてラディック軍は、守っていた3個ファルコン星隊を素早く圧倒したのである。



ベーカー3、ジェイドファルコン占領域、3057年10月9日 Baker 3, Jade Falcon Occupation Zone, 9 October 3057

 スターコーネル・ラモン・センダーが乗るガーゴイルのコクピットの外で、ベーカー3の温泉に温められた水が泡だったのだが、彼は気づかなかった。ほかのことがらが彼の心を占めていたのだ――メックの中で熱が上昇するかのように。固い泥の層と石灰によって足場は不安定で、第341強襲星団隊がベーカー川に沿って行軍するほどに石化した木のねじくれた枝が根深いマングローブを分断した。センダーは熱表示を再度確認した。コンピュータの描く実線が、緑から黄色を通り、ちょうど赤のところに達した。彼は心を落ち着けた。どっちにしろ、いますぐ問題になることがらはない。

 センダーは左を向いた。ナターシャ・ケレンスキー族長のダイアーウルフが、彼のガーゴイルに遅れずついてくる。センダーは手助けできなかったが、メックのコクピットでひとり笑い、川面を切り裂いた。沸騰する川(ひげ面に笑みをもたらしたもの)から意識が離れたわけではなかった。それは戦闘の予感と血管を通って運ばれるアドレナリンだった。遠方にファルコン司令部の通信アンテナを発見したのだ。興奮のなかで、彼はファルコンのキットフォックスをほとんど取り逃してしまうところだった。第341強襲星団隊が川から姿を現すと、そのキットフォックスは旋回し、立ち止まって見つめた。メックの熱い鋼鉄の肌が蒸気の雲を作った。考えなしに、センダーはガーゴイルの右腕を振り上げた。メックの腕から青い閃光が輝き、キットフォックスの頭部が爆発した。センダーはナターシャへの通信チャンネルを開いた。「お察しの通り、奴は警報を発しました」

 ナターシャ・ケレンスキーはウィドウメーカー(ダイアーウルフ、ケレンスキーバージョン)のオートキャノンを撃って、スターコーネルの懸念に答えた。ファルコンのアダーがちょうど群生した木のあいだから姿をあらわしたのである。劣化ウラン弾が敵メックの胴体に吸い込まれ、マイアマー筋繊維を切り裂き、内部中枢と核融合エンジンをねじれさせ黒こげにし、きれいに背中に穴を開け、それからアダーの30メートル後ろのオーク樹をこっぱみじんにした。「奴らは向かってくればいい」ナターシャ族長は言った。「全員に地獄がどれだけ寒いか教えてやる」

 何年にもわたって、ベーカー3の温泉と豊かな森林は、この地域に来る商人のための人気ある保養地であった。多くの人たちを喜ばせる地形は、ナターシャ・ケレンスキー族長の斬新な戦闘計画によって、ジェイドファルコンのジェイドエリー星団隊に対する死の呪文となったのである。

 ウルフ第341強襲星団隊は、ファルコン司令部の南60マイルの地点に上陸した。ベーカー3南方大陸ローバーの端である。紫色のイレブミク海を背後に、ウルフは分裂した。隊の半数は、ローバーの密林に入り、ジェイドファルコンの哨戒隊を捜索、破壊する。その一方、残ったウルフのメックは、ベーカー川(温泉が水を温めていた)に入り、川底をゆっくり行軍し始めた。川の煮えたぎる水が、メックの赤外線によるシルエットを隠すなかで、ナターシャ氏族長は、ファルコンを出し抜き、奇襲することを望んでいた。

 ベーカー3の戦いは、ウルフによるもうひとつの思いがけない勝利をもたらした。最終的にウルフ軍は21%の損失を出しただけで、一方のジェイドファルコンは80%を失った。ウルフにとっては不幸なことに、撃墜されたバトルメックのすべてのメック戦士が殺さていた。

 ファルコンにとって、戦いは始まったときから負けていたように見えた。スターコーネル・ブハーリンは、ローバーの森にいるウルフのメックを破壊するため、ファルコン第305強襲星団隊から哨戒隊を大量に送り込んだのだが、捜索に成功しなかった。ウルフは効果的な一撃離脱戦術を採用していたのである。森の深い木々によってファルコンはウルフを照準する能力を厳しく制限され、第305隊のメック――ほとんどが実弾兵器を装備していた――は、弾薬不足に陥っているのに気がついたのである。フラストレーションが募るなか、ブハーリンはウルフのメックを追って、気圏戦闘機とさらなるバトルメックを送り込んだ。彼の軍は大陸に渡って広がり、司令部は悲惨なまでに防護が薄かったのである。

 そのとき、2番目のウルフ軍がベーカー川沿いの各地点から出現し、ファルコン司令部と第305隊の防護されてない側面を叩いた。この日、50機のファルコンオムニメックと27機の戦闘機がウルフによって破壊された。ファルコンエレメンタルの2個ポイントがなんとか撤収用の降下地点に戻っただけだった。



デヴィン、ジェイドファルコン占領域、3057年10月17日 Devin, Jade Falcon Occupation Zone, 17 October 3057

「なぜウルフがまた攻撃してくると考えるのですか? キャノピーから出て見てください。ちょうどいま、エレメンタルが奴らのメック戦士をボンズマンとして使うために取り囲んでいる。我らは勝ったのです、スターキャプテン。司令部に戻ってスターコーネル・ホイトに勝利を報告しましょう」

 スターキャプテン・マシュー・フォン・ジャンクモンは、渦巻く砂嵐に目星をつけた。ウルフがファルコンのチャーリー三連星隊に対し多くのバトルメックを失ったのは事実であるが、何かが間違っていると感じていた。戦闘は当初熾烈なものであった。そのときウルフは戦闘のやり方を忘れているように見えた。メックのうち数機は実際に戦場から逃げていった。そう、何かが完全に間違っていた。

「スターコマンダー・トレバー、星隊を率いて北へ行き、敵メックを警戒せよ。いかなる敵とも戦う前に警報を出せ」フォン・ジャンクモンは命令した。

「命令に従います、スターキャプテン、しかしあなたはここが危険と過大評価しています。友軍は、我らと似たような勝利を達成したと、私は確信しています」

 フォン・ジャンクモンが反抗的なトレバーを叱責しようとしたそのとき、輝くオレンジの爆発がスクリーンを一杯にした。彼はすぐレーダー表示を一瞥したが、似たような意味のない画面を見ただけだった。電磁嵐で満たされていたのだ。目を上げると、ちょうどウルフオムニメックの戦列が、周囲を取り巻く吹き荒れる砂のなかから現れた。フォン・ジャンクモンは右ジョイスティックの赤いボタンを親指で素早く押した。すべての武器を一度に発射すると、熱の波がコクピットに押し寄せ、警告音がかなきり声を上げた。猛攻撃のなか、目の前のティンバーウルフはよろめきへばったが、フォン・ジャンクモンの熱計算によると、彼のメックは4分間武器を撃てなくなっていた。

 マシンのスロットルを前に倒し、メックを北に回して、走行させた。人工の青い雷光が左の腕を焼き、右胴背面に穴を開けた。そしてスターキャプテンは本能的にコントロールを左に向けた。飛来したLRM群がコクピットを超えて光った。接近していたティンバーウルフ(傷つき、煙をあげていた)を見るため、彼は回頭した。もう一度、赤いボタンを押した。二条の青いカーブがメックの胴に吸い込まれ、何も見えなくなるような爆発を誘引した。

 ナターシャ・ケレンスキー氏族長がデヴィン星系についたとき、彼女はトータルでの損害がこれまでのところちょうどメック・装備32パーセント以下、人員8パーセント以下であると報告したのだが、この数字は戦役での真の犠牲を反映したものではなかった。深刻な負傷者の多くは、フェラン・ワード副氏族長とともに中心領域に送られており、そして戦場でのサルベージによってまともに動くメックを確保していただけに過ぎなかったのである。さらに、この一ヶ月の戦闘によって、経験豊かな部隊の多くが非常に疲弊していた。

 まだ、数個星団隊は作戦参加しておらず、争いに加わる不安が残っていた。デヴィンの戦いは戦闘と死の機会を存分に提供することになる。ファルコンはこの惑星に第2ファルコンイェーガーと第1打撃星団隊を駐屯させていた。双方とも実戦で試された古参兵部隊である。天候までもがメック戦士に挑戦したようだった。激しい電子嵐と強風が砂漠の惑星を荒らし回り、センサーをほとんど無効にした。ウルフの航宙艦がデヴィン星系に入ってすぐあと、故障した帆が攻撃を三日遅らせた。ウルフに対する不吉な前兆となったようにみえた。

 突き刺さるように砂が顔に吹き寄せ、スターコマンダー・トレバーは目覚めた。研磨するような砂に目は固く閉ざされる。ニューロヘルメットの外側にそれを感じたのだった。表示プレートは壊れていた。それから彼は頭をバトルメックの計器に叩きつけたことを思い出した。顎にまで手を下ろし、頭の重いそれを外し、取り去った。砂が水のように横顔に流れ、メック戦士は目を覚まさなかったら砂に埋もれていたかもしれないことに気がついた。

 足の感覚がなくなっていた。そのような死が望ましいものであるかどうかスターコマンダーは考えた。傷病兵は戦場で多く使われることはなかったし、氏族社会ではそのような不幸な連中を下層階級に移動させるものだった。一瞬の後、メック戦士は深い息を吐き、砂から目を保護し、下を見た。コクピットの下半分が砂で覆われていた。美しい黒い砂だった。

 20分かけて砂をかきだすと、彼の血液は再び足を循環し始めた。そしてスターコマンダーは、司令用座席の束縛から自由になったのだった。彼が倒れたメックから這い出ると、チャーリー三連星隊の残りに何が起きたのかを目の当たりにした。ねじくれて黒焦げたバトルメックとエレメンタルが、オーツァン平原に散らばっていた。30メートル向こうに、くすぶる残骸が倒れていた。彼はそれがスターキャプテン・フォン・ジャンクモンのウォーホークであることを確認した。残骸の端に、トレバーはスターキャプテンの焼けて水ぶくれができた遺体を発見した。遭難信号のスイッチを入れ、トレバーは北へ向けて歩き始めた。

 ファルコン軍に合流すると、彼はデヴィンの戦いに勝ったことを知った。ウルフは47パーセントのメック・装備と、22パーセントの人員を失っていた。トレバーはほとんど勝利の味を感じなかった。



イヴシラー、ジェイドファルコン占領域、3057年10月17日 Evciler, Jade Falcon Occupation Zone, 17 October 3057

 重い湿った雪が、スターコマンダー・トーマス隊のすべてのメックの頭と肩を覆っていた。数時間がたつと、彼と部下のメック戦士はエネルギー兵器を使って、氷にメックが隠れられる深い穴を穿った。ブリザードが仕事の残りを果たし、ファルコンバトルメックをすべての鋭い目から隠し去った。

 集中した状態を保つため、トーマスはメックのコクピットスクリーンに映った氷の複雑なパターンを観察した。ウルフの先遣隊がその陣地から5時間の位置にあるとの報告が入ると、彼は三連星隊の連中と7時間話し続けた。悪天候下で1時間遅れることは予想されたが、2時間がたつと、退屈と疑念のあいだでゆれていることに彼は気がついた。フラストレーションを募らせ、彼は唇を噛んだ。敵が現れるのを切実に望んでいた。この作戦での成功は彼にブラッドネームを得るチャンスを保証するだろう。この機会を得るために、必要なら地獄が凍るまで待つつもりだった。

 突然、赤い光が通信パネルに生命を灯らせた。トーマスは通信スイッチを叩いた。「こちら、スターコマンダー・トーマス」

 返答によって、トーマスの退屈は、かがり火のそばの雪のように氷解していった。「スターコマンダー、1機のメックを探知しました。現在、3キロメートル南、我が陣地に時速108キロメートルで近づいています。目視で確認はしておりませんし、磁気探知機はマシンの識別できません」

 ブリザードのなかでバトルメックが高速で移動するということは、メック戦士が優れているか、狂っていることを意味した。もっとあり得る可能性は、それがウルフ氏族軍本隊の偵察機ということだ。エンジンを起動し、敵と交戦せよと、トーマスは命令を下した。

 連続したウルフ氏族の勝利に怒ったヴァンダーヴァン・チストゥは、イヴシラーの世界をウルリック・ケレンスキーとタウ銀河隊の墓地にすることを決めた。ウルフ氏族軍と相対させるため、チストゥは、第73打撃星団隊、第6臨時強襲守備隊、第51守備隊、第9守備隊を展開した。そのような圧倒的な戦力が、もしウルフの破壊に成功しなかったとしても、少なくとも相当な出血を強いるだろう。

 メシアンの南極大陸は白夜の真っ最中であり、薄暗く寒々とした地形をチストゥ副族長は自軍に優位に使った。戦闘の準備をするなかで、チストゥはすべてのメックとエレメンタルを、薄汚れた青白に塗装することを命じた。こうすればウルフは視認がほとんど不可能になるだろう。弾薬債補給の問題を避けるため、チストゥは全部隊にエネルギー兵器の仕様を使うよう命じた。長距離、短距離ミサイルを補助とするのみである。最後に、前進してくるメックを罠にかけるため、塹壕を掘り、そこにこもるよう命令した。このとき、チストゥには勝ち運がなかった。

 ウルフ氏族は、幽霊のような夜明けの光が支配するイヴシラーの南方大陸に降下した。影のある地形が戦士たちの目を惑わし、南極の強い磁界がバトルメックの電子装備のほとんどを無効化した。ホログラフィックの赤外線ディスプレイでさえも、ウルフのメック戦士が獲物を探すのを助けなかった……氷と水の中を通る、火山と間欠泉の絶え間ない噴火が、赤外線センサーを混乱させたのである。そのような敵対的な環境下にあって、ウルフは幸運を祈るしかできなかった。

 ジェイドファルコンによるシーモア断層での待ち伏せは、ウルフへの奇襲となった。隠れたファルコンのメックが、混乱したウルフに全方位から砲火を浴びせ、メック数機を犠牲にした。だが勝利はファルコンの手から逃げていった……彼らが隠れた浅い穴が、立っていた部分の氷を脆弱にしていたのである。兵器の炎の熱が氷と雪を溶かし、割れるまでに弱め、その下の川にファルコン側メック数機を落とした。ファルコンの突然の混乱は、ウルフ軍に回復と逆襲の時間を与えた。ウルフ側メック戦士の数人は、穴のそばの氷を撃ちはじめ、さらなるファルコン側バトルメックとエレメンタルを凍る川に沈めた。まだ南方に撤退している最中であったファルコン側メック星隊は、第1ウルフ機兵隊の生き残ったメックによって追撃された。

 20分間の白熱した戦いののちに、戦闘は終わった。ジェイドファルコンの2個星隊とエレメンタル4ポイントが、凍った風景に散乱した。ウルフは8機のメックを待ち伏せで失ったが、ジェイドファルコンの不運は犠牲を大きくした。氷に落ちたジェイドファルコンの部隊が再び這い上ってくることはなかった。このことについてあるウルフのメック戦士は、死より恐ろしいとコメントを述べている。



トワイクロス、スティールヴァイパー占領域、3057年12月7日 Twycross, Steel Viper Occupation Zone, 7 December 3057

 スターコーネル・ラヴィル・プライドは、いかなる基準から見ても醜い男であった。短く刈られた髪が、彼の異様に大きな頭部の見苦しい出っ張りをきわだたせ、また高いほお骨がくぼみを作り、そこに小さな黒い目があった。スターコーネルが大きく笑うと、人類が持ってないはずの余分の歯があらわになるが、もっとも印象を与える要素は、ラヴィル・プライドのやつれた気味悪い身体にある。分厚い青緑の静脈が彼の長く筋張った肌の下でふくらみ、それはあたかも強い風なら彼を地面に転せるかのように見える。黒髪の房が、彼の薄く白い皮を覆い、冷却ベストのすべての穴から突き出ている。けれども、その病的な外見にもかかわらず、このファルコンガード司令官は、内的な強さを持っており、彼の氏族内において狡猾さで並ぶ者はいない。

 トワイクロスにおけるファルコンの勝利を確実なものとするため、プライドは力と狡猾さのすべてを使うことを決めた。この惑星には、全ジェイドファルコンが恥辱にまみれた特別な土地があり、そのことはファルコンガードの特別な不名誉であり続けている。元々のファルコンガードの戦士たちは、中心領域のひとりの兵士によって、この砂の惑星で負かされたのだ。彼ら固有の傲慢と、栄光への渇望が、危険を無視させ、この地で死に包容されることとなったのである。ラヴィル・プライドは死を畏れていなかったが、またそれを望んでもいなかった。彼はウルフ氏族軍と交戦し破壊するよう命令されており、まさにそれをやってのけるつもりだった。彼の軍は敵の助命を認めないかわりに、自分たちもそれを期待していなかった。ウルフの主力はトワイクロスの砂をなめ、ファルコンガードは不名誉を最後に返上するだろう。

 予期されていたように、デニズリでの戦闘は、ナターシャ・ケレンスキーの軍に重大な被害をもたらした。ウルフ氏族長は部下を非人間的に近いペースで動かしており、彼らは疲労を見せ始めていた。ブラックウィドウは、最終的なゴール――できるだけ多くのファルコン部隊を破壊する、を少しでも早く達成するため、次の目標を選んだ。トワイクロス(ファルコンが最も恥ずべき敗北を被った地)を目標にしたことによって、ファルコンのチストゥ副族長が前線部隊を大規模に戦いに投入するよう突っついたのである。

 しかしながら、チストゥは彼女の計画の被害者に成り下がるのを拒絶した。老いたウルフ氏族長に尊大さを見せるべく、彼は第5タロン、第6臨時守備隊、第18ファルコン正規隊――すべて経験に乏しい守備部隊――をトワイクロスに配備した。チストゥはナターシャにさらなる恥辱を与えることを求めた……敵を辱めることを求め、兵のリストにファルコンガードを加えたのである。彼らが単に存在することは、恥辱に煮えたぎっていることをケレンスキー氏族長に見せている。また、前任者たちの恥ずべき敗北は、ファルコンガードの大いなる成功に拍車をかけるかもしれなかった。

 トワイクロスの戦いは、カーテン平原で始まった。猛烈な風が赤い砂を運び、ファルコンとウルフのメックは接近戦を強いられた。ウルフは平原のグレートガッシュ(巨大な割れ目)の前でダイアモンド隊形を組んだ。第341星団隊が隊形の前に立ち、第3戦闘星団隊と第352強襲星団隊が横に並び、ナターシャ族長の第13ウルフガードが後方を形成した。

 ファルコン第6臨時守備星団隊がウルフを叩いたとき、第341隊は指示通り素早く後退した。その機動は追撃する第6守備隊をダイヤモンドに引き込み、第3戦闘星団隊と第352隊は敵の側面に砲火を浴びせ始め、不意を打たれたファルコンをほぼ殲滅した。しかしながら、第5タロンと第18正規隊はもっと用心深く近づいた。これらの部隊が第341隊と交戦すると、ファルコンガードが攻撃を援護するため前進した。激しい戦いが続き、両陣営に広範囲の損害が出た。それから第341隊は戦いから離脱し、グレートガッシュに入っていった。すぐに第3戦闘星団隊と第352隊が続いた。その一方で、第13ウルフガードはゆっくりと退却し、ガッシュの口に立ちふさがった。

 ナターシャ族長はガッシュにファルコンを引き込むことを望んでいた。第11戦闘星団隊をガッシュの両側面に駐留させており、ファルコンのメックが谷の中に入ってきたら待ち伏せする計画だった。しかしながら、ファルコンは誘惑に乗らなかった。この時点で、ナターシャ族長はウルフ部隊にトワイクロスからの撤収を命じ、ファルコン司令官に1対1の挑戦をするために残った。

 そうして3057年12月7日、ウルフ氏族のナターシャ・ケレンスキー氏族長、悪名高きブラックウィドウは、トワイクロスの血のように赤い砂のなかで死んだ。



ヴォータン、ジェイドファルコン占領域、3057年12月10日 Wotan, Jade Falcon Occupation Zone, 10 December 3057

 降下船〈ロボ・ニグロ〉の航行中に、ウルリック・ケレンスキーは、ジェイドファルコンのチストゥ副族長へバッチェルを行った。「我らの到着は奇襲になったろう、ヴァンダーヴァン・チストゥ。おそらく、貴君は惑星を今すぐ譲り、敗北の恥辱から自身を救うべきである」

 少しの間、チストゥは黙ってホログラフィック・ディスプレイを眺めていた。ファルコン副族長はわずかに表情を動かしたが、ウルリックは驚愕――おそらくは恐怖――を、チストゥの凍てつくような灰色の瞳の奥に見つけたと思った。そして突然、副族長の自信は戻ってきたように見えた。

 「おまえの脅しには中身がない、ご老人よ」チストゥは答えた。「死んだブラックウィドウの哀れな残兵でさえも、ヴォータンの我が軍にはかなわない。おまえは幾分やっかいだったが、これまでだ」

 ウルリックは笑った。「惑星陥落から5時間だ、副族長。こっちにはバトルメックの完全1個銀河隊があり、このすべてをファルコン全員を殺すために使うつもりだ。わたしの入札に応じられるかな? それともわたしは、貴君がかき集める部隊と戦うのに、大幅な削減をしないとならないのかな?」

 「おまえの軍と同数で戦うつもりだ、ウルリック」チストゥはうなった。「おまえが死ぬとき、顔に恐怖が浮かぶのを見たいものだ――対等の環での戦闘を挑戦する!」

 ウルリックは眉をつり上げ、ちょっと驚かされた。「そうするなら、ヴァン。貴君の挑戦を受けよう」

 「副族長のヴァンダーヴァン・チストゥに演説するつもりか、スターコーネルが!」チストゥは、ウルリックのホログラフィック映像に叫んだ。「わたしは二世代分、おまえの遺伝子より優れている、わたしはファルコンで、おまえより階級が上だ。わたしが挑戦するのは、おまえの薄汚れた遺伝子が、我らが創設者の名から削除されるのを、確実にするためだ。おまえと、おまえの同類は憎悪の対象だ、ウルリック・ケレンスキー。わたしはおまえが死ぬのを見ることになるだろう」

 「とある賢き女性が、わたしに秘密を教えてくれたことがある」ウルリックは答えた。「老いと経験はいかなる場合も、若さと無知をうち破ると彼女は言っていた。この言葉の意味を確かめてみないか、クアイフ?」

 野蛮なジェスチャーとともに、チストゥは通信回路を切った。ウルリックの鋭い目がないところで、彼は椅子に腰掛け、薄気味悪く笑った。ウルリックに怒っているところを見せ、金切り声を上げた。それこそウルフ司令官が見たいものだった。このパフォーマンスを信じるくらいウルフが間抜けであれば、裏切り者のウルフは手痛い対価を払うことになるだろう。



ボリエールタウン - ヴォータン、パート1 Borealtown - Wotan, Part 1

 3057年12月10日、スターコーネル・ウルリック・ケレンスキーとタウ戦闘団は、バトラー星系に入った。多くのウルフ士官――それに間違いなくファルコン士官――は驚かされた。攻撃隊がそれからヴォータンにジャンプしたのである。そこにはファルコン氏族長が総司令部を作っていた。

 ウルフ氏族戦闘団の前衛隊がヴォータン星系に辿り着いてから1時間後、ナターシャ・ケレンスキー隊の残存兵力が彼らに加わった。両軍の複合戦力によって、スターコーネル・ウルリック・ケレンスキーは、1個銀河隊以上の一線級メック(航空機、エレメンタル支援付き)を得たのだった。

 ファルコンはおよそ同数の部隊を展開した。これらの隊はヴォータン首都ボリエールタウンの強化陣地につき、ウルフの攻撃隊を待ちかまえた。

 ボリエールタウンの戦いは、ウルフ氏族とジェイドファルコン氏族の双方にとって、この拒絶戦争でもっとも代償の大きい戦いのひとつになった。両陣営ともだいたい同兵数であったのだが、ファルコン守備隊は、これまでの戦いでウルフと交戦した二線級、守備部隊でなく、元気な一線級隊からなっていた。その上、ファルコンはボリエールタウンの外と中の両方に、多数の要塞を作っていた。誇り高きファルコンのメック戦士たちは、戦争の初期の戦いでウルフがジェイドファルコンに与えた恥ずべき損害に復讐するのを熱望していた。加えて、ファルコン司令官は、ジェイドファルコン占領域の総司令部を守るよう定められていた。

 だが、戦いに疲弊したウルフの攻撃部隊もまた、高いモチベーションを持っていた。この戦いがウルフの近い未来の要になることを、彼らの多くが感じ取っており、それに応じて戦ったのである。

 最終的にファルコンはボリエールタウンを守り通したが、どちらの陣営も真の勝利を主張できなかった。熾烈な市街戦で、両陣営は80パーセントを超える損害を被り、そして戦った多くの部隊は再建不可能だったのである。

 このような破滅的な損害を被ったにもかかわらず、もっとも重要な戦闘はごく小規模であった。戦闘が猛威を振るっていたまさにそのとき、スターコーネル・ウルリック・ケレンスキーは、ウルフオムニメックの1個星隊だけを率い、ヴァンダーヴァン・チストゥ(ジェイドファルコン氏族副族長)を探すため都市の中心部へ入っていったのである。



最後の対決 - ヴォータン、パート2 Final Showdown - Wotan, Part 2

 ヴァンダーヴァン・チストゥ副族長は、ウルリックと部下の星隊が進んでくるとの報告を、偵察隊から聞いた。すべてはうまくいっていた。ウルリックは罠にはまるかに見え、いまチストゥの計画を妨げるものはなかった。彼はちょうど1時間前のクリッチェル族長との会話を思い返した。挑戦は間違いだとクリッチェルは考えていた。もしチストゥが破れたら、ウルフは拒絶の神判に勝ち、戦ってきたファルコンのすべては無に帰してしまう、と老いたファルコン氏族長は言った。族長議会はウルフを大氏族長にさえ選ぶかもしれないとクリッチェルはわめいた。いつものようにチストゥは年上の氏族長をなだめた。そして、あらゆる予防線をはっているのでウルリックが勝つことはないと保証した。

 ウルリックの星隊が行政区に入ったとの報告を受けると、チストゥは頭から考えを振り払った。すぐに通信コンソール左のボタンを叩き、エクシキューショナーの計器群の上にある小さなモニタースクリーンに意識を集中させた。市街戦ではありふれた戦闘の光景がモニターに映し出されていた。メックが街路とビルの内外を駆け抜け、通った道を瓦礫に変えた。彼はウルフの星隊が画面に入ってきたのを夢中で見た。ウルリックは氏族が創出したなかで優れたメック戦士――おそらく最高のひとりであるが、予防策はとられている。予防策はファルコンの勝利を保証する。

 そう、すぐに拒絶戦争は終わり、ジェイドファルコンのヴァンダーヴァン・チストゥは最終的な勝利者になる。ウルリック・ケレンスキー、ウルフ氏族の指導者、守護派の指導者、ツカイードの停戦の立て役者を彼が殺す。ケレンスキーが得てきた偉大なすべてが、ヴァンダーヴァン・チストゥの手に落ち、副氏族長が氏族を地球へと導く。

 ウルフのオムニ戦闘機が降下船から発進してボリエールタウンに向かうと、都市に生命がもたらされたように見えた。ルビー、エメラルド、サファイア色のビームが空を彩り、すぐに爆音が夜を揺すった。数分以内に、暗い都市の街路に、輝くオレンジの炎が小さな点が現れた。そこを戦闘機の爆弾が叩いたのである。暗い都市の外のうねるような丘に、ウルフ降下船の群れが着陸し、積荷のメックを吐き出した。

 数分以内に、ウルフオムニメックは都市にたどり着き、誰もいないビルに隠れたファルコンのメック、狭い通りを突進するメックをとことんたたきのめした。混乱のさなかに、ウルフメックの星隊が一回転し、ボリエールタウンへ進んだ。

 都市の中心部に入っても、このメックの集団はほとんど抵抗にあわなかった。この区域は都市のもっとも高い地点に作られており、かつては繁栄していた大都市を臨むことができたが、メック戦士たちは注意を払っていなかった。それから彼らがビルの環の中に入り、ジェイドファルコンのエクスキューショナー単機と遭遇した。餌食を見つけたのだ。

 ウルリック・ケレンスキーとのバッチェルのパフォーマンスをしたあとで、チストゥは待ち伏せの用意をした。まず最初に、ボリエールタウンに駐屯していた星団隊からオムニメックの2個星隊を引き抜いた。それからテックにミサイル仕様に替えさせた。このメック隊は、行政区(二人のメック戦士が決闘を計画していたところ)から3ブロック離れた広場に陣取った。すぐにウルリックとウルフのメックが現れた。チストゥは隠れたメック星隊にウルリックの位置の測定データを与えた。ウルフがチストゥの裏切りに気づく前に、隠れたメックはLRMミサイルをウルリックのガーゴイルに放ち、このメックと近くのウルフメックを破壊した。それからチストゥは残ったウルフのメックを片づけた。



モルゲス、ジェイドファルコン占領域、3057年12月13日 Morges, Jade Falcon Occupation Zone, 13 December 3057

「戦争は参加した誰もが本当の勝利を得られない。戦争とは単に再配列に過ぎず、両陣営から明日の約束を奪い取る。戦争に勝利するために、その人は人間性の一部を失わねばならない。その人が戦争に勝ったあと、もう人間性は残されていない。誰かを殺すごとに、それはひとかけらずつ失われていったのだ」
――ケルハウンド・レオン・ジェームズ少佐の個人的な日記より抜粋

 ウルフハウンドのなかで、ウルフ氏族のフェラン・ワード副族長は、アイスグリフ山道に早朝の光が差し込むのを見ていた。吹きすさぶ風がメックを打ち、雪と氷の雲が吹きつけたが、ナイフのような寒さがコクピットに入ることはなかった。すぐに日が昇り、雪に覆われた大地を照らすだろう。ジェイドファルコンはそう遠くないうちに着陸し、それから戦闘に加わるにちがいない。

 フェランの通信チャンネルを通し、がなり声が音を立てた。「こちら、ジェイドファルコン氏族のスターコーネル・エンジェルライン・マトロフ。フェラン・ワードと呼ばれるフリーバースにメッセージを持ってきた」

 フェランはスイッチを入れて答えた。「正気に返ったか、スターコーネル? 戦うことなく撤退することに決めたか? そのような知恵は慈悲を受けるに値する。貴君と部下たちがこの星系から離れることを許可しよう……もちろんメックはなしでだ」

 「でかい口だな、フリーバス。だがほとんど無意味だ。わたしは反逆者スターコーネル・ウルリック・ケレンスキーの死を通告する名誉を得た。ヴォータンの対等の環で、我らがヴァンダーヴァン・チストゥの手にかかって死んだのだ」

 突然のことにフェランは返事ができなかった。沈黙ののちに、マトロフの満足げな声が続いた。「反逆者の死の後、我が軍はウルフ隊と司令部隊を破壊した。わずかなウルフの戦士たちが完全な敗北から逃げ出したが、おまえの援軍にやってくることはならないだろう。おまえとウルフは敗北したのだ、フェラン。ブラックウィドウもグレイウルフもなしに、おまえもやつらのように死ぬのだ」

 ナターシャとウルリック。両者が死んだ。自分だけが残された。フェランは目を閉じ、心中を占める悲しみを追い出した。彼は突然、マトロフの顔に浮かぶ反抗的な態度を笑ってやりたくなった。彼女は自身が持ってきた爆弾が、フェランと部下たちを破壊するのを期待している。その代わりに、ウルリックの犠牲を知ったことが、正反対の効果をもたらした。座席で無意識のうちに背筋を伸ばし、フェランは彼ができる唯一の返答をした。

 「間違えてばかりだな、老女よ」彼は行った。「我らはウルリックとナターシャの魂を尊敬している。彼らが去った後でもだ。それほどに彼らは我らを信用している。ここで我らが貴君を破壊するのを保証するために、彼らは喜んで死を賭けたのだ。もう一度言う、貴君は我らを過小評価している――貴君らの銀河隊は愚行の代価を払うだろう」



最初の接触 - モルゲス、パート1 Initial Contact - Morges, Part 1

 3057年12月5日、ジェイドファルコンのオミクロン、ペリグリン銀河隊は、残ったウルフ氏族の戦士を根絶するため、モルゲス星系に到着した。予期していたウルフ2個銀河隊でなく、ウルフ1個銀河隊とケルハウンド2個連隊(中心領域の高名な傭兵部隊)に直面したことに、彼らは驚いた。フェラン氏族長はまた第16戦闘星団隊を入札し、モルゲスの南極大陸を戦闘の部隊に選んだ。

 「薄汚いフリーバースのギャング」と戦わねばならないことに怒っていたスターコーネル・エンジェルライン・マトロフは、全兵力を入札した。5個前線級星団隊、5個守備星団隊、それに1個ソラーマ部隊でさえもある。ジェイドファルコンは12月13日にモルゲス、フェラン族長の要塞と強固な諸兵科連合の歯の中へと降下した。アイスグリフ山道の凍てつく地形が最初の舞台となり、多くの衝突が起きた。そしてそれはウルフ氏族、ジェイドファルコン氏族の運命を決めることとなった。

 ケルハウンドはアイスグリフ山道でファルコンを打ち砕いた。傭兵たちの奮闘によって、ファルコンは第4タロン星団隊を完全に犠牲としたのだった。熾烈な戦闘の最中に、ファルコンのメック戦士数名がメックから脱出した。彼らは中心領域の敵からのレーザー砲火の弾幕に捉えられただけだった。もう一度、ハウンドはジェイドファルコンが中心領域のメック戦士を見下していたことを見せつけたのだった。



ブロークン・ホープ(かなわぬ希望) - モルゲス、パート2 Broken Hope - Morges, Part 2

 フェラン・ワード氏族長は、ノヴァの第2モニターに表示された地図を一瞥した。地図によると、彼と第4ウルフガードは、実際上、ジェイドファルコンの先頭にいた……荒れ狂うブリザードで外はなにも見えなかったのだが。風速70キロメートルの冷気がメックを打ち、凍てついた空気に雪と氷の雲に放り込んだ。ファルコンがウルフのメックの位置を発見するのは難しいことを知っていたので、いくらか慰めになった。

 「全部隊、磁気反応スキャン開始」フェランは部下に命令した。「それにおぼえておけ、我らはクールに仕事をできる。この天候下で、いつもより熱く動き回れる。敵を発見したとき、撃ち続けられる」

 突如、フェランのMRIスキャナーが、前方におぼろげな人型の形をとらえた。ターゲティングコンピュータが、目標をヘルハウンドと識別した。フェランはクロスヘアをあわせ撃った。ファルコン側メックの左胴を覆う装甲が消滅した。彼はにやりと笑い、次の射撃の準備をした。少々の幸運とともに、ファルコンの弾薬とスペアパーツの山がすぐにウルフ氏族の手に落ちた。

 アイスグリフ山道での敗北の後、ジェイドファルコンはウルフ氏族とさらに激しく戦うようになった。衝突の長い数日の後、第4ファルコン軽装隊、第89打撃星団隊、ペリグリン・エリー星団隊の一丸となった奮闘が、ウルフの第279、第16戦闘星団隊を、カールソン断層の陣地から追い出した。ウルフ軍を抹殺しようと、ファルコンは最大限の破壊力を用いるため、エネルギー兵器のかわりに実弾兵器の仕様に切り替えた。この決定はウルフ軍に状況を変えるチャンスを与えた。

 包囲されたウルフのメックは、吹き荒れるブリザードのなかを通り、第二戦線の守備陣地へじりじりと引き返していった。そうすることによって、ファルコンにできる限りの弾薬を浪費させた。よってファルコンたちはブロークン・ホープにある降下地点の基地へ再補給に戻らねばならなかった。スターコーネル・エンジェルライン・マトロフが結成した補給輸送隊を、ケルハウンドが、ブロークン・ホープとカールソン断層のあいだで迎撃したとき、フェラン氏族長と第4ウルフガードは行動に移った。彼らはブロークン・ホープを奪取し、ファルコンの補給線を分断するために急いだ。成功したら、ファルコン部隊は他のウルフ軍にとっての容易な目標となるはずだった。ペリグリン銀河隊の1個守備星団隊だけが道に立ちふさがった。

 ブロークン・ホープへのウルフの強襲は、ジェイドファルコン防衛隊を驚かせた。彼らはよく戦ったものの、二線級ファルコン守備隊はウルフの攻撃軍に太刀打ちできなかった。すぐに守備司令官はそれに気づき、スターコーネル・マトロフに救援を要請した。

 スターコーネルは、ファルコン軽装隊と第4打撃星団隊を救援のため急送し、それから現在の位置であるカールソン断層からとって返し、ブロークン・ホープの港(補給廠から6キロメートルの地点)で再結集するよう命令した。部下たちが火力で劣っていることに気づくと、エンジェルライン・マトロフは凍った港湾部を最後の場所に決めた。マトロフはウルフがファルコンをモルゲスから追い出すかもしれないことを知っていたが、勝利に高値をつけることを決めたのである。



最後の戦い - モルゲス、パート3 Final Battle - Morges, Part 3

 あの寒い朝、ブロークン・ホープでなにが起きたかについて、わたしは特に誇ったりはしない。わたしが思うに、我らのパイロット、メック戦士、司令官たちも誇ったりはしていないだろう。そして我らの誰も勝利に幸福を表現しなかった――戦士たちの死を祝えなかったのだ。たしかにウルフ氏族への脅威は取り除かれた。だが、勝利に伴ういつもの高揚感はその日現れなかった。かわりに疲労の感覚、喪失の感覚が我らの勝利を覆っているように見えた。

 戦いの結果は、我が軍が集結したうねるような風にさらされた丘から遠く離れた、ブロークン・ホープ港の東20キロメートルで現れた。氷と雪が、ジェイドファルコンの巨大な降下船の船体に降り積もっていた。そしてフェラン氏族長は打ちのめされた軍隊が撤退する意志がないことに気づかされたに違いない。モルゲスの凍った忘れられた荒野で、ファルコンがウルフ氏族の運命を決めると決心したことに気づいたに違いない。なぜ彼がその命令を下したのかをわたしは信じている。
――ウルフ氏族パイロット・ヴィクトールの日記から抜粋

 オーストラレークティカの凍てついた荒れ地における、10日間の戦いは、ジェイドファルコンとウルフの双方に多大な犠牲をもたらした。ファルコンの2個銀河隊が惑星に降下した――5個前線級星団隊、4個守備星団隊である。いま3個前線級星団隊と2個ファルコン守備星団隊だけが戦闘に参加していた。加えて、厳しい弾薬不足が、ファルコン2個星団隊の戦闘継続能力を効果的に奪い取っていたが、戦闘はウルフ軍をもまた相当に弱めていたのである。数個メック星隊が破壊されるか、行動不能にされ、3個エレメンタルポイントが同様に死んでいた。ケルハウンドはバトルメック5個小隊を失っていた。

 そういった損失にもかかわらず、両陣営とも互いを完全に殲滅できる能力を持ち合わせており、またどちらも戦闘から身を引くことはできなかった。ファルコン軍は残った部隊を余すことなく用いていた――戦場でウルフを破壊するジェイドファルコンの唯一の希望だったのである。ウルフの賭金もまた同様に高かった。フェラン族長軍はウルフ氏族の遺伝子資産を運んでおり、敗北はこの氏族の永久的な終末を意味した。

 両司令官は、戦いがどちらかの軍を殲滅するであろうことに、そして双方ともそれができるであろうことに気がついた。しばらく後、不穏な静けさが戦場を覆った。あたかも両司令官が戦闘の再開をためらったかのようだった。それから気圏戦闘機の咆吼が静寂を破った。

 ウルフ氏族のメック戦士たちは丘の上の強化陣地から見ていた。ウルフの気圏戦闘機は厳寒の大気を切り裂いて群がった。ミサイル、レーザー、PPCを使い、戦闘機は眼下のファルコン軍に死の雨を降らせた。メックを守るため降下船からファルコンの戦闘機が次々と発進したが、ほとんどすぐに彼らはケルハウンド戦闘機の中へと突っ込んでいった。数分以内に、大量の戦闘機がブロークン・ホープの上空を覆い尽くした。荒れ狂い突き刺すPPCとレーザービーム、線を引く曳光弾のなかで、ひねり、ターンした。ファルコンの戦闘機が傭兵の戦闘機を破壊しようと無駄な努力をすると、ウルフの戦闘機大隊は機銃掃射を続け、ファルコン司令部をあらわにし、それから丘の稜線に消えていった。そして目標にさらなるダメージをあたえるべく引き返してきた。すぐに蒸気、煙、炎の巨大な雲と砲弾の破片が空を覆い、黒い霧が作られ、ファルコンの陣地を見えにくくさせた。通信チャンネルは、戦闘機パイロットの簡潔な命令と、傷つき死んでいったメック戦士の叫びで満たされた。

 最後のファルコンの気圏戦闘機が撃墜されたとき、ウルフの戦闘機は猛攻撃を終え、フェラン氏族長はウルフメック隊とケルハウンドを率い、ファルコンの陣地に向かった。そこで彼らは圧倒的に破壊された風景を見た。黒く歪んだメックが地面に散乱し、そこかしこで小さな炎が燃えており、凍えて縮こまるファルコンメック戦士の小規模な集団を引きつけている。

 終わった。ジェイドファルコンはウルフに破壊されるためにやってきて、すでに破壊された。拒絶戦争と呼ばれる残酷な戦役は終了し、ウルフ氏族が勝利をおさめた。




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