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作成:2003/06/27
更新:2019/04/21

自由ラサルハグ共和国



 中心領域でもっとも若い国家である自由ラサルハグ共和国は、第四次継承権戦争終結の数年後に誕生しました。ドラコ連合とライラ共和国のあいだに位置しています。その領土は、ちょうど氏族の侵攻ルートにあたり、3050年以降、ほぼ全土を氏族に占領されました。メックウォリアー:ダークエイジの時代には、ゴーストベア氏族領と併合し、ラサルハグ・ドミニオンとなっています。
 北欧の文化を受け継いでおり、スウェーデン語が公用語。3050年当時の国家代表は選定公ハーコン・マグヌッソン。その息子が、ゴーストベア氏族のラグナーです。
 classicbattletech.comより。




アップデート



氏族来襲 The Clans Arrive

 10年以上の平和が続いた。これは選定公が規定通り共和国を手中に収めるのに充分な時間であった。彼は、王立軍の指揮をクリスチャン・マンスドッターに委任し、政治に専念した。しかしながら彼は軍事力の強化を許さなかった。隣人の怒りを買うことを畏れたのである。3050年の3月に、ウルフ氏族とゴーストベア氏族が辺境沿いの世界を攻撃したとき、これが致命的な間違いだったと明らかになった。質、量で圧倒された王立軍の勇者たちは、氏族の猛攻を食い止めることができず、世界は次々に敵の手に落ちていった。その中にはラサルハグの首都惑星も含まれていた。

 惑星ラサルハグが攻略され、選定公は、第1竜機兵団(ドラコン)の航空大隊だけに守られ、逃げ出さねばならなかった。マンスドッターは惑星に残り、防衛の指揮をとった。敗北を喫した将軍は地下に潜ることとなる。1年以上あとに、彼はウルフ軍の手により捕らえられたが、マンスドッターの副司令官ネルス・ラスムッセンが円滑にゲリラ軍を率いた。

 ウルフ氏族軍は、ラドスタットにおいて、世界陥落後、ふたたび第1竜機兵団と遭遇した。選定公と護衛は、(ラドスタット)星系内にジャンプし、氏族の戦艦が待ちかまえているのを見つけたのだ。ジャンプエンジンが再充電する時間を稼ぐため、またマグヌッソンが逃げる時間を稼ぐため、竜機兵団は攻撃を始めた。ティラ・ミラボーグ大尉(戦争の英雄であるトール・ミラボーグの娘)は、最後の強襲を率いた。彼女のシロネ戦闘機はひどいダメージを受けてしまい、ミラボーグはこの機を戦艦の艦橋に突っ込ませた。艦橋に氏族の大族長がいたことが後に判明した。彼の死によって、氏族は新しい指導者を選ぶために、攻勢を中断した。勇敢な女性の最後の行動により、人々は1年間の猶予を得たのである。



息継ぎ Pausing for Breath

 この年のあいだ、中心領域の指導者たちは、傭兵部隊ウルフ竜機兵団とともに、アウトリーチで会合をもった。そこで、彼らは竜機兵団が遙か昔に氏族から来たことを知らされた。だが、竜機兵団は中心領域が氏族と戦うのを助ける準備をしていたのだ。訓練は1年間を要した。

 3051年の11月、ウルフ氏族は攻勢を再開した。ゴーストベアはそれから一ヶ月後に戻ってきて、新たに虐殺を始めた。悪いニュースが、翌年の1月、マグヌッソンの元に届いた。彼の一人息子ラグナーが、サタライス防衛の際に、捕らえられたというのである。報告は共和国を震撼させ、一時的に人々は希望を失った。

 同じく届いた報告によると、ウルフはマンスドッター将軍に、陥落した世界を統治をするようオファーを出したという。それらの世界で平和を樹立するのが交換条件であった。マンスドッターは断って、投獄された。マンスドッターは傭兵を嫌っていたにもかかわらず、ウルフ竜機兵団の特殊部隊――第7奇襲部隊――が、氏族に関する知識を使い、将軍を救出する任務に志願した。竜機兵団は、ラサルハグ上のウルフ防衛陣の後方に降下船を滑り込ませ、数機のケストレルVTOL(エレメンタルが搭載されていた)を射出した。彼らはマンスドッターを警護していたエレメンタルを圧倒し、当人をこの世界から運び出した。彼はすぐラサルハグ軍の指揮に戻り、竜機兵団から新たな技術を教えられたのだが、ラサルハグ軍は氏族に押し込まれることとなったのである。



コムスター入り Enter ComStar

 3052年の2月、コムスターの首位者ミンド・ウォータリーは提案を携えて、選定公と将軍に接近した。コムスター戦司教は、地球を賭けて、全氏族と代理戦争をしようと計画していた。そして戦いの舞台として、ツカイードと呼ばれる農業惑星を求めていたのである。マグヌッソンとマンスドッターは了承して、コムスターの助けを得ながら、市民の撤収を始めた。その運命の5月、ラサルハグの未来はコムガードの驚くべき勝利によって書き換えられたのだった。2年足らずで、共和国は84の世界からわずか7つにまで減り、206個連隊の王立軍は26個までになっていた。もしツカイードの停戦が終わったあとでも防衛を望むのなら、マグヌッソンはコムスターに、共和国への軍隊駐屯を認めなければならなかったのだった。そのコムスターは氏族から地球を守る基地を探していた。

 ワード・オブ・ブレイクに地球を奪われたあとで、コムスターは全軍を自由ラサルハグに配置した。大拒絶後、共和国の市民たちは戻りつつあり、状況は変わるかもしれないが、確かにツカイードはコムガードによって、完全に守られている。コムスターが残った共和国を吸収しつつあると心配する市民もいる。この観点から、何度か怒りのデモが起き、HPGステーションが破壊された。深刻ではないが、もし継続が認められれば、問題は悪くなっていくだろう。

 王立軍の規模は、新星間連盟によるスモークジャガー保有地侵攻で、さらに縮小した。第3竜機兵団は、中心領域領土の奪還を手伝ったが、比較的その活動は小規模だった。しかしすべての王立軍が幸運とは限らなかった。共和国は第4竜機兵団をハントレスに送り、そこで彼らは解散せねばならないほどの損害を被ったのである。



新リーダー A New Leader

 3061年11月、セオドア・クリタが星間連盟第一君主に選出された直後、ハーコン・マグヌッソンは選定公の座を辞した。マグヌッソンは、氏族の脅威に対抗するために、10年を2期という制限を越えて選定公でいたが、大拒絶後、彼が支配し続ける正当性はなくなった。共和国はすぐに新たな選挙を実施し、驚く結果がもたらされた。候補に挙がっていなかったにもかかわらず、また法的に被選挙人資格がなかったにもかかわらず、93%という信じられないような共和国議会の得票で、囚われのラグナー・マグヌッソンが選ばれたのである! 彼は捕まってから、ウルフ氏族でスターキャプテンの地位に昇進して、その後、ゴーストベア氏族に捕らえられた。議会・国会の緊急会合で、彼が選定公であると決定された。そしてもし彼が帰ってくるのなら、彼が戻るまでの摂政を選ぶ別の選挙を行った。

 二度目の選挙の勝者は、マンスドッター将軍であった。彼は最高司令官という軍事階級を非常に好んでいたのだが、議会は彼に選定公摂政という称号を授け、ラグナーが戻り地位を要求するまで、選定公としてのすべての権力を与えた。マンスドッターは軍の増強と、第1ティール連隊の復活に集中し、輸出入において目に見えるシンボルを作り出した……ドラコ連合よりも、ライラ同盟と多くの取り引きをしたのだ。しかしながら、政治上、最高司令官のもっとも有名な動きは「傭兵制限」と、傭兵に関わる規制を撤廃したことである。浪人戦争の影響によって制定された制限では、傭兵が共和国市民と混じりトラブルを引き起こさないことを保証するため、傭兵は都市それぞれの重要防護地区でのみ行動を制限されていた。マンスドッターが単に共和国外部の人気を得るために制限撤廃を行ったのか、それとも彼を救ったウルフ竜機兵団への感謝のために撤廃したのか、政治評論家のあいだで活発に議論が行われている。









スターコーネル・ラグナー Star Colonel Ragnar

 選定公ハーコン=マグヌッソンの息子、ラグナー・マグヌッソンは、ウルフ氏族による惑星ユトレヒト襲撃の際に、ボンズマンとなった。彼はラサルハグ的な心と意志の中に、鋭い洞察力を秘めていた。捕まってから、彼は突出した早さで戦士の地位を取り戻してみせた。メック戦士としての卓越した技術と、年に似合わぬ賢さが、この助けとなった。彼はウルリック・ケレンスキー、フェラン・ケル、アナスタシウス・フォヒト、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンのアドバイザーを勤めている。彼はいまゴーストベアの族長に仕えている。捕虜としたラサルハグの人々を監視するアドバイザーであり、またアルファ銀河隊第1ラサルハグベアー星団隊のスターコーネルである。

 スターコーネルラグナーは、ウルフ氏族による中心領域侵攻の初期に捕縛された。不断の努力と尋常でない能力により、彼は戦士になり、スターキャプテンの地位についた。拒絶戦争のあと彼は放浪ウルフ氏族に同行した。コベントリで中心領域がジェイドファルコン氏族に勝利し、彼の氏族に関する洞察力は不可欠だと立証された。

 3060年の終わりごろ、ケル族長は彼の第4ウルフガードを、元ドラコ連合領ユトレヒトに派遣し、到着したばかりのゴーストベア氏族の「箱船」に挑戦した。船内には、組み立て式の建物と装備が納めてあり、ウルフ氏族が必要としていた完全な複合工場施設を含んでいた。ゴーストベアは挑戦を受け入れ、部隊の展開を許した。スターコーネル、ランナ・ケレンスキーが攻撃の主力となり、スターキャプテンラグナーは側面攻撃をしかけた。第3ベアガードのエリート三連星隊が猛烈な抵抗を見せた。激しい戦いのあと、ラグナーの三連星隊は破壊された。ゴーストベア氏族のスターコーネル、サラ・デルヴィラーはラグナーをボンズマンとした。

 ラサルハグの元王子は、心と意志の中の洞察力を使って、ゴーストベア氏族がラサルハグ市民と氏族のルールをすりあわせようとしている努力を助けるべきである。









3067年アップデート

機密度:コピー不可
発:アレクサンダー・ケルノフROM司教
宛:キャメロン・サン=ジャメ戦司教

 兄弟よ。第三段階の狂ったような準備のあいだに、自由ラサルハグ共和国は忘れられがちである。氏族侵攻でほぼ破壊された彼らは、ウルフ氏族が地球に向かう道の徐行帯にすぎないと考えられている。だが、過小評価すべきではないのだ。元兄弟たちに牛耳られている共和国は、我らを葬り去るべく、襲いかかってくるかもしれない。この今は小さい国家の圧力を心にとめ、必要になったときは押しつぶし、粉砕せねばならない。



獣たちの影で IN THE SHADOW OF THE BEASTS

 この20年間、独立心溢れる自由ラサルハグの民衆は、絶望のなかで生きてきた。氏族侵攻の初期に、若き国家は食らいつくされてしまった。その一方で彼らは自由をコムガードのツカイードでの勝利に預けたのである。この大規模な戦いで、彼らが救われることはなかったが、氏族が地球を得ることもなかった。ツカイード停戦の終結は、いずれ処刑人の斧のように振り下ろされることになる。逃げられる者たちは、氏族戦線から遠く離れた世界に逃げていった。残された市民のあいだで鬱病が蔓延り、自殺率がおどろく増加した。コムスターの援助で社会の完全な崩壊は避けられたが、そのような援助が必要だったこと自体が、誇り高きラサルハグ人を傷つけたのである。



地獄からの脱出 OUT FROM UNDER

 大拒絶がすべてを変えた。

 氏族の脅威は残っている(とくにウルフ)のだが、もはや止まらない大軍勢ではなくなったのだ。ラサルハグ市民の活力が蘇り、自殺率は通常の水準まで低下した。そして共和国から逃げた人々が戻り始めた。クリスチャン・マンスドッター(選定公摂政)の指導下で、氏族侵攻以来初めて、経済が実質的に成長した。

 王立軍の実績は、ウルフ領域への大胆な襲撃に着手することで、この新たな信用を反映した。第4機兵隊(Kavalleri)が3063年にアルテンマルクトへの攻撃を行った。迫るウルフのアルファ銀河隊分隊から逃げる前に、地元ゲリラ勢力への再補給を行ったのである。ジェフリー・チジェク大佐(Overste)は、注意深く占領域の奥深くに進入し、高慢なウルフ氏族長の不意を打った。惑星ディオストを奪取した第4隊は、地元の抵抗勢力にコンタクトを取り、守備隊に手痛い敗北を与えた。このままディオストを保持し続けるのは現実的でなかった。激怒したウルフは、必ずや援軍を送り、チジェク大佐が前進を続けるのと、生き残ったウルフ守備隊を殲滅するのを妨げるだろう。目的を達成した第4機兵隊は、英雄として帰還した。

 憎むべきウルフを効果的に叩いて信用は上がったのだが、共和国の市民はコムガードの支援継続を軽視するようになった。伝統的な傭兵部隊への反感が、コムスターの防衛隊にも向けられている。こういう感情は、氏族占領域の近くでちょっとした騒ぎが起きると、すぐに消えてしまうのだが、停戦ラインを超えての攻撃がなければ、必然的に大きくなってくるだろう。首位者モリと第一司教ギャビン・ドゥは状況を落ち着かせるために奮闘している。我らはこの不安定な状況を過小評価すべきではない。



第一君主 FIRST LORD

 3064年の後半に、クリスチャン・マンスドッターが星間連盟の第一君主に選出されたことが、自由ラサルハグ共和国の気運をさらに高めた。妥協的な候補者と考えられていたが、投票で選んだ指導者が第一君主に選出されたという計り知れない名誉は、共和国と星間連盟が対等になった(単なる協力国ではない)合図となったのだ。第一君主マンスドッターは、その地位を使って、氏族戦争ですべてを失った人たちに対する援助プログラムを作り上げた。共和国は明らかにこのプログラムで恩恵を被ったが、おどろくほど多くの連合、ライラ市民が同じように援助を必要としていたのである。とくに、両氏族前線に新たな危機が迫ってからはそうだった。

 最初、ゴーストベア戦争(対ドラコ連合)には、いささか心配させられたが、これは連合とゴーストベア氏族の内輪の戦いだとすぐにわかった。他方で、ジェイドファルコンによるライラ同盟侵攻は、共和国をパニックに陥れた。ウルフ氏族が連邦=共和国内戦を利用して、地球に突進していくのではないかと、誰もが恐れた。だがゴーストベア氏族がウルフ占領域を奪い取るなかで、ウルフ氏族長ヴラッド・ワードはすぐにそういう意図を捨て去ったのである。



ウルフ狩り HUNTING THE WOLF

 何年も第3竜機兵団(Drakons)は、氏族を襲撃すべきだと論議してきた。結局、3065年の7月に彼らは解き放たれた。このときウルフは、ジェイドファルコンとゴーストベア相手に忙殺されていた。第4機兵隊が成功させたような深打撃を与える絶好の機会であった。

 不幸なことに、ジョアン・ダールシュトロム大佐は兵士を任務外で引き連れ、スターコーネル・マルコス・ラディックと第37打撃星団隊を狩りに出かけた。メミンゲン侵攻の際に残虐行為を行った者たちと戦いたがっていた第3竜機兵団は、憎むべきスターコーネルとその部隊が激動の氏族政治のなかで生き残れなかったことを、断固として受け入れなかった。情報が不足し、支援がないなかで行動したダールシュトロムの狂戦士たちは、ウルフ氏族領に乱入し、緊張感のある追いかけっこを演じたのである。ヴラッド・ワード氏族長は、敵が理論的に取るであろうルートに部隊を配置したのだが、別の方向で暴れ回るのを見るだけとなった。

 だが、竜機兵団の幸運は続かず、最終的にトゥーンの戦いの早い時期に、ダールシュトロム大佐のアックスマンが撃墜された。指揮権がゴードン・ヨルゲンソン中佐の手に渡った。彼は素晴らしい戦いを実行し、ぼろぼろになった第3竜機兵団をラサルハグ宙域に撤退させたのだった。



ベアの必需品 BEAR NECESSITIES

 このあいだに、第2自由兵団(Freemen)はゴーストベア領域の調査を行ったが、第1ラサルハグベア星団隊に突っ込んでいくこととなった。ウィーバー大佐は賢明にも選定公と戦うのを避けて、退却した。ラサルハグの選定公は、ベアにボンズマンとして捕らえられ、指揮官の階級に上っていたのである。この撤退の直後、ゴーストベアがウルフから惑星ラサルハグを奪取したとのニュースが伝わった。スターコーネル・ラグナー・マグヌッソン――選定公その人――が侵攻軍(もしくは解放軍)の先頭に立っていたのである。この驚かされるニュースは、共和国創設時に見られたような祝賀ムードを自然発生させた。

 これらふたつの事件は、ゴーストベアとの密な連携を求める草の根運動を活発化させた。支持者たちは、共和国内のコムガードに深い怒りを感じたのである。






第3竜機兵団 3rd Dracons

 トゥーンからの巧みな退却後に昇進したゴードン・ヨルゲンソン大佐は、ぼろぼろになった連隊の再建と、生き残った向こう見ずたちをコントロールするという任務に直面した。部隊は現在、2個大隊を展開する能力がある。ヨルゲンソン大佐は第2大隊を分割する予定である。これは新年に再建される戦力の核となるであろう。竜機兵団が命令を無視し、ウルフ氏族領に乱入したあとで、部隊の忠誠度は"信頼できる"に下げられた。

 ホリー・ヴァルキリー気圏航空大隊は、新型のハスカール・オムニ戦闘機の配備を繰り返し拒否した。シロネのみの使用を好んだのである。やや古びた装備はヴァルキリー隊を書類上弱く見せているが、1個航空小隊に戦闘機4機を採用しており(通常は2機)、それを考慮に入れるべきである。トゥーンでは地上支援任務を行い、地上部隊がウルフ氏族の罠から逃げる時間を稼いだ。



第2自由兵団 2nd Freemen

 クリスチャン・マンスドッターは、選定公ラグナー・マグヌッソンの星団隊と戦わなかったレット・ウィーバーの決断を是認した。おもしろいことに、ティール歩兵支援戦車(氏族製新型車両)、そして部隊の新マスコット・カドルズとともに、自由兵団はゴーストベアの調査から舞い戻ったのである。この遊び好きで優しいゴーストベアの小熊は、自由兵団の士官たちに甘やかされたが、500キログラムの体重(成長が早い)が問題となるかもしれない。もっと重要な拾得物は、第一司教ギャビン・ドゥから受け取った1個レベルI部隊分のピュリファイアー・バトルアーマーである。明らかにコムスターは共和国の機嫌を取ろうとしている。



第3軽機兵隊 3rd Hussars

 第3軽機兵隊はグルミウムクリエーションズ・バトルメック工場の防衛を任されている。部隊に重量級・強襲級メックが多いことから、この任務には適していた。オルセン大佐は第3大隊を追加せず、部隊を2個強化大隊に再組織した。各中隊にはメック6機(主に地元で生産されているバイキング)からなる火力小隊を含んでいる。他の小隊は、間接射撃用の観測を広範囲に訓練している。TAGを搭載している部隊もあり、自由世界同盟製の準誘導LRMの限定的な供給を受けている。軽機兵隊航空大隊はハスカール・オムニ戦闘機で、ゆっくりと通常の二倍の規模になりつつある。



第2機兵隊 2nd Kavalleri

 第2機兵隊は隠密行動、待ち伏せの達人であり続けている。比較的、脆弱なバトルメック大隊を補う技量にも長けている。ジャック・コスロー大佐(第2歩兵隊指揮官)はドラコ連合からカゲ・バトルアーマーを入手するのに、あともう少しのところで失敗した。ゴーストベア戦闘が終わるまで、ドラコからはどんなスーツも得られる望みはなかったのである。コスローはそれから戦術を変更し、新型アーマーを開発するために、コムスター、SLDF、共和国と協定を結んだ。プロジェクトの詳細は明らかになっていないが、新型軽バトルアーマーは実地テストの最終段階にあり、3069年の前半には就役可能である。



第4機兵隊 4th Kavalleri

 以前は信頼性と経験が欠けていた第4機兵隊は、厳しい鍛錬で前者を作り上げ、ウルフ氏族占領域への攻撃で後者を得た。10年以上前に易々と共和国を切り開いた敵に立ち向かえたという事実は、氏族が主導権を失い、技術的優位も失いつつあることを示している。第4機兵隊は損害を補充し、前回学んだ教訓を実践する機会がないことにいらだっている。



第1ティール連隊 1st Tyr

 自由ラサルハグ共和国の心臓・精神として、第1ティール連隊には、人員にせよ、装備にせよ、足りないものはない。バトルメック戦力は完全2個大隊まで増加しており、それ以上の拡大を妨げているのは、最高のメック戦士しか受け入れないというハンセン・マンスドッター大佐の決断である。部隊の経験レベルが希釈化してしまうのを避けるための措置だ。第1連隊はハスカール・オムニ戦闘機の生産ライン近辺に駐屯している。このことで第1オレステス槍機兵隊は完全1個航空大隊に拡大できた。といっても他の前線航空大隊に見られるような強化部隊組織は採用していない。

 部隊は最近、ライラ同盟から1個中隊分の旧型中心領域バトルアーマーを得た。第2オレステス機械化歩兵隊の一員となったバトルアーマー隊は、よく第一君主マンスドッターの護衛として配備される。第1ティール連隊はこの任務をロイヤル・ブラックウォッチと分担するのが気に入らない。部隊が傭兵だったことを忘れられないのである。










ゴーストベア 3067

 ゴーストベアはどのような逆境にあろうとも、常に辛抱強く目的を達してきた。我らは、団結、忍耐、知恵、家族という力を手にしている。これらの設立原理が、我らを我らが氏族とし、また我らを結びつけ、最強のものとしている。

 この五年で我らの価値が実証され、我らが創設者の精神に忠実なままでいることに対する報いとなった。戦いで我らの力にかなう者はほとんどなく、我らの成功に値する者はさらに少ない。新たな時代に入ると、我らが家族は成長し続けたが、いつも辛抱強くあらねばならなかった。弱者だけが自己満足を成長させるのだ。

――サンドラ・ツェン、ローアマスター、ゴーストベア氏族



概要

 中心領域帰還の呼びかけがあったとき、我らは、偉祖父の「秘められし希望の教理」を信じる侵攻派であった。我らは氏族長を失いながらも、侵攻の権利を勝ち取り、新たなリーダーシップの下、リバイバル作戦に参加した。ほとんど補給物資を持っていかなかったという誤りは、中心領域防衛部隊のねばり強さを過小評価した時に悪化した。これらの代償は我らに重くのしかかったが、さらなる指導者の変更で新たな道が開けたのである。彼は大胆な方角を指し示し、我らが氏族を約束の地へと導いた。

 予想通り、中心領域への完全移住と守護派への鞍替え――ツカイード戦でのコムスター勝利後、我らが自己を再発見した結果――は、他氏族を驚愕させた。移動を手伝ってくれたダイアモンドシャークとスノウレイヴンだけが、強い反発を引き起こさなかった。それにも関わらず、すべての批判と攻撃(口頭によるもの、その他)は、我らが全氏族の設立以来の願望を達したことに対する激しい嫉妬に過ぎないのを隠す事ができなかった。ゴーストベアは定住のため故郷に戻ったのである。

 始まりの時から社会に根付いている家族意識を持って、我らはやってきた。この団結の精神は、特に元自由ラサルハグ共和国、元ドラコ連合との調和の感覚を促進し続けている。彼らの産業、商業、文化的バイタリティと、我らの軍事力、氏族的効率の組み合わせは、両者を共に強いものとし、新ドミニオンが今後長い間考慮に値する存在であることを保証している。ここ数年で、我らに挑戦する勇気のあった全ての隣人たちが、真の故郷に足を踏み入れた。

 3062年、(ドラコ)連合の3個連隊が、大胆で自殺的な強襲を首都アルシャインに仕掛けた。数週間以内に、我らは独自の侵攻に着手し、龍に罰を与えるべく、国境を超えて襲いかかった(この中には、放棄されしノヴァキャットの飛び地領土が含まれている)。DCMSは勇敢に戦ったが、我らはいくつかの世界を得た……ノヴァキャットと連合の逆襲により、完勝と呼べるものはほとんどなかった。ほぼ同時期、ヘルズホース氏族のマラヴァイ・フレッチャー族長が、おそらくウルフ氏族のヴラッド・ワードにそそのかされ、彼らの小規模な占領域から我らの弱い側面を攻撃した。クールシュベルで行われたセオドア・クリタ大統領との神判によって、両陣営が最小限の損害で紛争から手を引くのが可能となり、ホースとウルフの日和見主義への報復が出来るよう我らは解放されたのである。

 我らが氏族が、度重なる激しい戦いから身を休めていたまさにその時、憎々しい新たな敵手が我らに挑戦した。アルシャイン上空の悲惨な事変の中で、放棄されしノヴァキャットの海軍が攻撃を行ったのである。彼らの申し立てによると、一部完成した〈ラサルハグ〉を所有の神判の戦利品にしたいとのことだった。乱戦の結果、両海軍は壊滅した。当面のところ、我らは再建に謀殺されているが、すぐにもノヴァキャットは自分たちが何をしでかしたかに気付くこととなろう。

 ベアの戦力は、近年の紛争から回復し続けているところだ。我が氏族の力と、中心領域住民の産業的、文化的な力を融合させる努力を通して、我らは他氏族が夢見るようなレベルの支援を得た。既知宙域のいかなる大国にも匹敵するものである。


海軍戦力

 ゴーストベア氏族は現在以下の戦艦を配備している。キャラック級〈デン・マザー〉〈ユグドラシル〉、ボルガ級〈アーサイン・ボートマン〉、リヴァイアサン級〈グレートベア〉〈リヴァイアサン〉。予備になっているのが、ナイトロード級〈ウルサ・マヨル〉で、現在修理中である。リヴァイアサン級〈ラサルハグ〉は造船中であるが、完成期日は不明となっている。



アルファ銀河隊 Alpha Galaxy (The Golden Bears)

 アルファ銀河隊は、第1、第3ベアガードがアイドルウィンド、ガルシュテットを叩くなど、連合戦争で激しい戦いを繰り広げた。ホースの思慮に欠ける側面攻撃を煽動したウルフ氏族への報復攻撃の中で、ラサルハグを奪い取る名誉は、第50星団隊と第1ラサルハグ・ベアにもたらされた。この勝利の詩的な正当性(スターコーネル・ラグナーが参加していた。連合戦争中に元同胞の襲撃を堂々と撃退したことへの報奨)は、ラサルハグ大衆の支持をつかむ役割をおおいに果たした。



ベータ銀河隊 Beta Galaxy (Night Howlers)

 ベータ銀河隊は連合戦争においてデュマリング、ナージャでの作戦行動に参加し、その一方、第12ベア機士隊がムーランのノヴァキャットを叩き、龍を手助け出来ないようにした。ベータの第304強襲星団隊(ノヴァキャットによる残忍なマウレ深攻撃で大損害を負っていた)は、連合戦争終結後、第2ベア正規隊と共にウルフ氏族からギュンツブルクを奪った。



デルタ銀河隊 Delta Galaxy (The Blitzrieg)

 デルタ銀河隊はここ最近の紛争における最も激しい戦いのいくつかに参加した。カノウィト、キーセンでの連合軍に対する主攻撃を行い、その一方で、ゼータ、タウ、ロー銀河隊の支援を受け、ラブリア、イタバイアナでノヴァキャットと交戦している。デルタの第73星団隊と銀河隊指揮三連星隊は、ホースをケンプテンから追い出すために帰還し、この勝利に続いてフォアアールベルクを得た。



ロー銀河隊 Rho Galaxy (Bear Essentials)

 ローは、イタバイアナ、カリパラでノヴァキャットと戦い、大打撃を受けた。ドミニオンに戻るとすぐ、第18戦闘星団隊の狂信的な戦士たち(今なお、3048年、ナイルスでの敗北を取り戻したがっていた)は、エンガディーンの対ホース報復攻撃の先頭に立つ権利を請願し、勝ち取った。だが、この欲望が満たされる事はなかった……士気をくじかれたホースはすでにエンガディーンから逃げ去っていたのだ。失われた名誉を回復するため、第283戦闘星団隊は、第1ラサルハグ・ベアのラサルハグ獲得を支援し、フレッチャー氏族長をそそのかしたウルフに罰を与えた。



オメガ銀河隊 Omega Galaxy (The Raging ears)

 オメガ銀河隊は、シャイラー、マイレンで連合兵と戦い、ヤマロフカのノヴァキャット攻撃を率いた。皮肉にも、我が氏族に戦争をもたらしたアルシャイン・アヴェンジャーズの生き残りは、キャットによって倒されていた。第10胸甲機兵隊は、ベアが上陸する前に行われたこれを、放棄されし氏族によるごまかしだと感じ、どう猛に攻撃を加えた。しかしながら、ゼータ銀河隊(ノヴァキャット)の残存兵力は、戦いが始まる前に戦場を離れ、惑星から出ていき、第10をおおいに悔しがらせた。いらだつ胸甲機兵隊は、ノヴァキャットの他の世界に向かい、ゼルブリゲンでなく中心領域の戦術を用い、いくらかの名誉を欠いたが、連合戦争で最も素早く残忍な勝利を得た。



ゼータ銀河隊 Zeta Galaxy (Claws of the Ghost)

 ゼータ銀河隊の第1クロウは、ムーランでの対ノヴァキャット戦で、ベータの第12機士隊を支援し、その一方、第3クロウはプレドリッツでヘルズホース氏族の憤怒に直面した。両部隊、特に第3はよく戦い、首都のニューデンバー攻防戦でホースの狂える氏族長を無効化し、素早く侵攻を終わらせたことで称賛された。しかしながら、両クロウは重い損害を被り、新兵の補充を待っている。



シータ銀河隊 Theta Galaxy

 二線級の防衛的な銀河隊なのだが、シータはクールシュベル(連合戦争での唯一の戦果)強襲に参加した。連合と我らが氏族の間で取引が成立し、一度の神判で紛争のすべてを決着することになった。我らの勝利に伴い、戦利品となったクールシュベルを除いて、両陣営は戦いで奪った全世界を返還しあった。



カッパ銀河隊 Kappa Galaxy

 連合戦争時、カッパ銀河隊の第63PGCはゴイトにあり、ヘルズホース氏族のガンマ銀河隊による攻撃を受けた。この守備星団隊は戦闘でひどく痛めつけられ、ヨルゲンソン氏族長は部隊の解散を選択し、他の損害を負った部隊の補充に使った。



クシー銀河隊 Xi Galaxy

 連合戦争での、クシー銀河隊唯一の攻撃的な役割は、第5ベア正規隊のリッチモンド攻撃である。残念ながら第5の勝利は、連合兵による本拠地世界コンスタンス侵略という代償をともなうものだった。コンスタンス奪還を強いられたクシーの勝利はすぐに無意味なものとなった。



オミクロン銀河隊 Omicron Galaxy

 オミクロン銀河隊の第6ベア正規隊は、連合戦争中にニークヴァーンを攻撃し、密集した強襲メックが敵を蹴散らした。生き残った防衛隊が地下に潜り、ゲリラ戦を始めると、戦いは泥沼化したのだった。



パイ銀河隊 Pi Galaxy

 パイ銀河隊は近年の紛争で守備的な役割を果たしたのだが、連合戦争中のスーリー、ポルトス、イェゼルスコ襲撃で、各星団隊は軽損害〜重損害を被った。



シグマ銀河隊 Sigma Galaxy

 シグマ銀河隊の第7ベア正規隊は、ヤマロフカ強襲で第10胸甲機兵隊を支援した。ノヴァキャットの防衛隊は勇敢に戦ったが、最後には負けを認めざるを得なくなった。戦争中、連合軍はドミニオンに対する大胆な深攻撃を行い、ラストフロンティアの第21ファランクスと第12PGCを叩き、両部隊に深手を追わせた。



タウ銀河隊 Tau Galaxy

 守備隊とされているのだが、タウ銀河隊は連合戦争と、ホース、ウルフへの報復攻撃で、多くの活動を行った。最初の神判は、ノヴァキャットからイタバイアナを、連合からキアムバを奪うのを助けるもので、その後、ホースをゴイトから追い出すため、銀河隊は帰還した。タウはまた、シュタンツァッハ(ホース領)強襲を率い、ウルフからギュンツブルクを奪い取るのを助けた。










ツーリングスターズ 3133




第24回:共に生きる――現在のラサルハグ・ドミニオン

データ表:ラサルハグ・ドミニオン
創設年:3060年
首都(都市、世界):アースガルド、ラサルハグ
国家シンボル:白い吠える熊の頭部、背景に暗い青の三角形
位置(地球からの):コアワード、ウルフ氏族占領域とドラコ連合の間
総(居住)星系数:71
人口概算(3130年):2800億人
政府:共和国(氏族戦士階級スタイル)
統治者:ヤルマール・ミラボーグ国王
主な言語:英語とスウェーデン語(公用語)、スウェーデニーズ、日本語、ドイツ語
主な宗教:キリスト教(ルーテル教会、準公式)、神道、無神論、ネオ・ノース
貨幣単位:ベア=クローナ(1ベア=クローナ=2.83コムスタービル)

 アルシャインの首都、シルヴァーデールは高層ビル、集合住宅、商業地区、屋外型モールに取り囲まれた巨大なアルシャイン宇宙港周辺からなるメトロポリスである。昼間は、暖かい白黄の太陽光線が都市の純白な通りを照らし出し、空を紫に染めるもやによって幾分妨げられる。夜は蛍光灯とネオンライトが繁華街を照らし出し、人の往き来は昼間よりも少し減るのみである。だが、雑踏と喧噪にもかかわらず、シルヴァーデールはラサルハグ・ドミニオンで最も清潔かつ静かな都市なのである。犯罪はほとんど発生せず、モノレールは定刻通りに走り、朝のラッシュアワーでも秩序の調和が見られる――しかし、ドミニオン行政首都の氏族人民に期待されるのはこの程度なのだろうか?

 宇宙港にはおよそ150機からなる完全な1個星団隊が駐機しており、ゴーストベアの降下船2隻がこれを常にバックアップする。攻撃部隊がやってきたら、上陸のチャンスを得る前に、戦力を失うだろう。加えて、歩兵(エレメンタル、通常歩兵の両方)、装甲車両、時折はバトルメックによる定期巡回が平和と秩序を保証する。

 都市の中心には、ラサルハグ・ドミニオンの標準規格で装飾された巨大な議事堂がある。アルシャイン政府の中枢にしてドミニオン議会の本拠地であり、日夜、エリートの装甲歩兵によって守られ、政治指導者や議員たちの安全を保証している。

 かつてラサルハグ・ドミニオンの中心だったドミニオン議事堂の存在は、ゴーストベア氏族がこの惑星から領地を支配していた日々の名残である。だが、3060年代の惑星ラサルハグ再占領とラサルハグ共和国の残った世界の吸収から始まり、行政府は移動していった。これは地元の民衆を新たな氏族の人民として統合するのを反映したものだ。しかし、ゴーストベア氏族の遺伝子貯蔵庫多数が存在し、消滅したアルシャイン軍事管区の地域主星だったというふたつの重要な意味で、この世界には敬意を払う必要があるだろう。よって、第二次連合=ドミニオン戦争の後、政府統合の最終段階において、新ドミニオン評議会がここで開かれたことにショックを受けた者はほとんどいなかったのである。

 ゴーストベア・ドミニオンは正式にラサルハグ・ドミニオン――氏族と中心領域を均等に混ぜたもの――となり、3103年にはラグナー・マグヌッソン副氏族長が国王に選ばれた。ゴーストベアの副氏族長とドミニオンの最高指導者というふたつの称号を持つ最初にして唯一の国王、マグヌッソンは指揮系統をはっきりさせるのを促進するために氏族の称号を放棄した。アレサ・カブリンスキー(マグヌッソンの元上官で、半統合されたゴーストベア氏族の指導者)は新たな秩序の下で即座に彼の部下となり、次席となり、ドミニオン防衛部隊の総司令官となった。同じ年、同数の民間人、トゥルーボーン戦士、フリーボーン戦士からなる新たな評議会が開催され、同じ選挙ブロックを形成し、氏族長と国王の両方を監視した。この折衷案的な政府は、ベアと中心領域の仲間に同等の発言権を与え、40年以上にわたって互いの間に結ばれた絆を強固なものとしたのである。



 ベアにとって、それは信念の飛躍であった。トゥルーボーン戦士と軍事化された下位階級は氏族のやり方を続けるのだが(神聖なる繁殖プログラム含む。制限のない民間セクターに技術流出するのを防ぐため、戦士=技術者と戦士=科学者が管理する)、かつて統治していた人民に対する最高権限を手放したのである。氏族はかつてのようにすべての軍事的な問題を取り仕切るが、自分たちのイニシアチブで処理することはできない。もちろんのこと、氏族感情への配慮として、選帝王は軍事経験が必要とされる。これは民間人でも可能である。なぜなら、神判を通って氏族の軍人となった地元生まれ戦士が流入した直後、氏族は戦士階級の退役制度を追加したからである。これは、誰が統治を行おうとも、ゴーストベアの考え方を知っていることと、民間階級の必要性を体現することを保証した。

 氏族の民間人は、時間の経過とともに階級の制限から解放され、すでに中心領域の生活の全面的な自由を享受しており、もしかしたらこれが権力を簡単に手放したことの理由のひとつになっているのかもしれない。だが、民間人の発言権を確実にするため、彼らもまた氏族評議会で犠牲を払った。氏族というものは柔軟性に欠けることで長年知られていたことから、これは驚くべき行動であった。評議会が民間人と軍隊の討論で泥沼化することなくコンセンサスに達することを確実にするため、三番目の権力ブロック――フリーボーン戦士――が追加された。三者の議席数は権限によってバランスがとられ、特定のブロックが圧倒的な投票力を持たないようにしてある。

 現在の氏族評議会は民間人によって「希釈化」されているが、奇妙なことに、討論のルールとして拒絶の神判などの氏族の習慣が民間人と軍人の両方から積極的に受け入れられている。地元のラサルハグ人でさえ、軽率な政策に対する軍事作戦の脅威が悪い政治への優れた抑止策担っていることに気づいたようなのだ。民間人の投票者は代理人を立てるか、「無血神判」で個人的な敗北のリスクを取るかを選ぶ条項があることから、氏族の風習は統合された政府の下で解釈を生き延びることが出来たのだった。

 氏族長や国王を排除する権限を持ち、指導者たちの決断を却下すら出来るドミニオン評議会は、ふたつの集団にとって妙手といえるかもしれない。ラサルハグ人の信念をかつての征服者のものと混ぜ合わせ、機能する政治・社会構造を作り上げるのである。これはこんにちに至ってもなお成功し続けている。時に問題が出るのは確かだが、最大のハードルは、3103年、ラサルハグの寒い日に克服済みである。それは少しの信頼をもたらしたのだ。

 ――アンネ・オスカー博士『フォールン・ライズ: テール・オブ・ラサルハグ』コムスタープレス刊、3120年




 そして、団結……すべての氏族が約束した理想をもってして、ゴーストベアはついにラサルハグ・ドミニオンを誕生させたのである。政治的にはラサルハグの民主主義と氏族戦士の野心によって統治されるドミニオンの人民たちは、出身にかかわらず、彼らの声が聞き届けられることに安堵出来る。その一方で、戦士たちはいまだに訓練を行い、神判を実施して、ドミニオン防衛軍の刃を研ぎ続ける。社会に階級は存在せず(トゥルーボーンのぞく)、ケレンスキーのヴィジョンへの崇敬が、龍の旗の下にあった時代(ほとんど忘れ去られている)には禁止されていたルーテル教会の信仰と並び立っている。大胆な実験であるが、これまでのところは機能しているようで、文化面は中心領域人と氏族人の両方にとって相容れないものかもしれないが、ラサルハグ・ドミニオンが持つ団結と自由への傾倒の強さが否定されるものではない。ふたつの集団が持つふたつの目標が、ひとつの共通する運命にまとめられたのだ。



 「友人よ、同志よ、ラサルハグの仲間たちよ、きょう、我らは平和、信頼、繁栄の新しい時代を迎えた。これは我らのためのものであり、我らに従うかもしれない者たちのものである。我らは共に立ち、氏族と中心領域はふたつのとどまることのない精神のあかしとしてひとつに融合した。これをもたらしたのは、善戦を繰り広げ巧みに入札された神判の炎である」

 「我らが全員倒れるその日まで、我らが今日築き上げたものを共に保とうではないか。ラサルハグ・ドミニオンはこの日生まれる。隣人を見よ。征服者と問題を見るのはもうやめだ。今日、我らは共に自由である」

「セイラ!」

 ――ラグナー・マグヌッソン国王、新しく創設されたドミニオン評議会の就任演説、3103年






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