indexに戻る
作成:2020/04/26
更新:2020/06/21

外世界同盟 Outworlds Alliance



 外世界同盟は辺境の大国のひとつ。中心領域マップの右側、ドラコ連合と恒星連邦の外にあります。
 戦争嫌いの平和主義で知られていますが、気圏戦闘機のパイロットは氏族戦士に匹敵するほどの技量を持っています(全部隊エリート!)。
 後に、航空宇宙氏族であるスノウレイヴン氏族と合併し、レイヴン同盟となりました。




歴史概要 3063 Historical Overview

 かつては辺境の大国の中で最も発展しておらず、影響力の乏しかった外世界同盟は、近年策定されたロングロード計画の成功で、経済的な復興を始めた。この計画の中で、小さいが重要な部分は、同盟地上軍の拡大と改善であり、平和志向の強いこの国を劇的に変革させた。



偶然の始まり An accidental Beginning

 現存する他の国家とは違って、外世界同盟は政治権力が続くことを意図していなかった。2413年、中心領域の戦火に青ざめたジュリアス・サンチアゴ・アヴェラー提督(海軍士官)は、僻地のアルフェラツでの引退を決意し、残った余生を使って権力者の戦争指向を非難する著作を執筆する計画を立てた。こういった小冊子は、アヴェラーの人生をまさに思いもしなかった方向に変えた。アヴェラー哲学の読者たちは、オムニスと呼ばれる学派を結成し、生活を維持するのに使う以外の技術をすべて拒否した。オムニスの会員とその他の過激派たちはアルフェラツのアヴェラー邸に大勢で押しかけ始めた。追い払ったにもかかわらず、隠遁生活に近いアヴェラーの小規模な居留地は政治的・社会的な反体制派の避難地となったのである。

 アヴェラーの支持者の数が増え続けると(すぐに数万に達した)、彼らはアヴェラー邸周辺のごった返した地を離れ始めた。一部はアルフェラツの離れた地域に移動したが、大多数は近くの世界に植民した。それから数年が経ち、アヴェラーは結論に達した――彼の教えに従うために生活を捨て集まった人々は、自分たちの無政府状態に苦しんでいた。解決するために、アヴェラーはおのれが一番嫌っていたことをした……望まぬ支持者たちの面倒を見るために政府を作ったのである。2417年、同盟憲章が批准され、新たな国家、外世界同盟の政府の基礎が形作られた。アヴァラーが宇宙から身を引き、戦争を非難したことは、新しい政府の創設という驚きべき結果をもたらしたのである。

 同盟憲章の結果はかろうじて機能する政府であり、権力の大半を一人の統治者ではなく人民の手に残した。これはジュリアス・アヴェラーが求めていたことと完全に一致していた一方、その後の数世紀、この新しい国家にハンディキャップを貸したのである。外世界同盟は辺境勢力としてようやく端緒についたばかりであり、行き先にはまだ長い道のりが待ち構えている。現在の議長大統領ミッチェル・アヴェラーはそれに気づいており、改革プログラムに「ロングロード」と名付けた。



星間連盟加盟 Enter the Star League

 農業国の外世界同盟は一世紀以上にわたって平和裏に過ごし、ゆっくりと拡大し、志願兵によって盗賊活動から市民を守った――常備軍は好戦的すぎると宣言されたのである。この平和は星間連盟が結成されて辺境に目を向けるまで続いた。2572年、外世界同盟はドラコ連合兵、地球帝国兵からなる星間連盟の「守備隊」を受け入れざるを得なかった……表向きは盗賊から外世界同盟を守るためだった。平和主義の同盟には不平を述べる以外に出来ることはほとんどなかった。帝国兵はサンティアゴにあると噂されていたバトルメックを慎重に捜索したのだが、ドラコの第17ゲイルダン正規隊は首都サンティアゴシティのビル群を破壊し、商業を崩壊させた。

 これは民衆を怒らせた。彼らは通り過ぎるバトルメックにものを投げつけるというゲームを始めた。2572年12月14日、一人のメック戦士が怒りを爆発させ、石を投げつけた子供に冷却剤を浴びせかけた。近くにいた市民たちが暴動を起こし、メックを攻撃した。このパイロットは発砲し、27名の市民が死んだ。サンティアゴの虐殺と呼ばれるこの事件によって、辺境中の数十の世界で反星間連盟暴動が発生し、再統合戦争をあおり立てる大きな要因になった。

 2575年、星間連盟は最後通牒であるポルックス宣言を出したものの、辺境勢力の反応はかんばしいものではなかった。これが辺境への攻撃に必要だった口実を与え、再統合戦争が始まった。外世界同盟はどうにか紛争を避けたが、2581年、星間連盟とドラコの補助戦力が国境を越える準備を始めた。当時の議長、グリゴリ・アヴェラーは、思わぬ場所に助けを求めるという死に物狂いの行動に出た。彼は国王の息子を通じてダヴィオン家に近づき、公然とした秘密の助けと引き換えに、12の同盟国境世界の「保護権」を持ちかけたのである。ダヴィオンはこれを受け、麾下の近衛隊から3個連隊を「ピトケアン軍団」の名前で派遣し、同盟内での星間連盟の活動に干渉した。

 ピトケアン軍団は外世界同盟の兵士を訓練し、星間連盟軍と交戦した……遭遇した各部隊に相当な損害を与え、それから別のところを攻撃するためどこかに消えていった。彼らはダヴィオン家からの再補給を受け、侵略者に対して絶え間ない脅威であることを証明した。同時に恒星連邦はそれらの世界を占領し始め、星間連盟に別の問題を引き起こした。占領した惑星の多くが再補給地点になる予定だったのである。多くの場合、ダヴィオン家はドラコ兵の上陸すら拒否し、たとえ上陸しても事務処理と官僚主義に縛り付けたのである。

 2582年、ブディゲンでピトケアン軍団に敗北を喫した後、第4ラサルハグ旅団は狂乱状態に陥り、ビルを破壊して市民を虐殺した。星間連盟の残虐な指揮官、フォーロー少将は旅団の敗北に同じやり方で応じた。少なくとも12の世界で、彼は市民の10パーセントを殺すよう命じて、同盟へのメッセージとした。激怒した外世界人は募兵センターに大勢で詰めかけ、ピトケアン軍団に訓練された後、星間連盟軍の強敵となった。2585年、戦闘が拘泥すると、同盟と星間連盟はケルベロス平和条約に調印し、同盟は星間連盟の監督下で自治を許された。同盟にとっての戦争は終わった。

 再統合戦争後、同盟は星間連盟の先進技術を使って成長した。ダヴィオンとクリタの指導者を互いにぶつかりあわせることで、外世界人は星間連盟崩壊後も継承権戦争にほとんど関与せずに済んだが、2800年代に常備軍が創設された。だが、指導力の不足が原因で、アヴェラーのリーダーシップへの不満が高まり始めた。



不満とコムスター Discontent and ComStar

 3015年、ニール・アヴェラーが議長に就任したのに伴い、同盟の状況は悪化し始めた。ニールは渋々ながら議長になった人物で、同盟を上手に統治しようとしたものの、単純にその能力がなかった。各惑星は同盟からの離脱を真剣に考え始めた。彼が行った本当の援助は、ドラコ連合、恒星連邦との取り引き、コムスターの受け入れだけであった。コムスターは識字率を上げるために学校を創設し始め、各世界でHPG基地を建設することで市民の雇用を創出した。これは同盟との関係を永続的なものにするコムスターの試みであり、同盟内でコムスターの評価が高まり、記録的な数の市民が入信し始めたという形で成功した。これは今日まで続いている……ワード・オブ・ブレイク教団に入りたがる同盟市民はほとんどいないのである。

 ニールは恒星連邦との教育交換プログラムで識字率増加にさらなる貢献をした。このプログラムで、大勢のダヴィオン人教師と教育専門家が同盟にやってきたのである。これを実現させたのはニールの妻、レベッカ・デサンダースだった。彼女はダヴィオン家との関係が深い恒星連邦の外交官で、プログラムのためにコネを使った使ったのである。

 コムスターの尽力とダヴィオン人教師の取り組みによって、同盟の識字率は向上し、星間連盟の水準にまで回復した。それでも、同盟を成長させる貿易交渉と計画は大半が失敗に終わり、市民たちはニールが無能な議長であるとの印象を持ったのである。コムスターからの援助は同盟の傷に包帯を巻いたが癒やすことは出来なかった。実際、HPGが提供する通信の増加によって、ニール・アヴェラーの辞職を求める声が以前より容易に至る所まで広まっていった。

 氏族侵攻が始まると、ダヴィオン家、クリタ家からのわずかな援助は干上がった。これは海賊の活動が大幅低下したことで埋め合わされた……海賊たちは継承王家が混乱しているのにつけ込み、金持ちの中心領域国家を襲撃したのである。よって、同盟の見通しは悪いままである一方、存在をやめはしなかった。ツカイードの停戦の後でさえも、ダヴィオンとクリタは同盟内での経済活動について考えなかった。氏族が占領域に居座るように見えたからである。



新しい時代 A New Era

 3056年3月、ニール・アヴェラーは息子が後を継ぐ時が来たと宣言し、引退した。ミッチェルはすぐに顧問たちと共に籠もり、新しい計画と共に姿を現した。彼はロングロード・プログラムと呼んだ政府の取り組み、貿易パッケージを開始した。同盟の政府は入り組んでいるので、プログラムの実施は緩やかなものだったが、想像よりもずっと早く効果が出始めたのである。同盟の経済は好調と言えるレベルまで回復した。軍拡命令も良い結果を収め、同盟の地上軍は航空宇宙軍と同じ規模にまで拡大した。

 ミッチェルは父が成功させた二つの事業を拡大させた。一つ目はダヴィオンとの取り引きで、同盟宙域内での採掘を許可するのと引き換えに、利益を分配し同盟人労働者を使うというものだった。ミッチェルは、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンが氏族宙域に向かう前に拡大の交渉を行った。先ごろ連邦共和国で王位が変わったが、この協定への影響はなく、両国がかなりの利益を得ている。

 二つ目はクリタとの協定で、同盟宙域内に複数の気圏戦闘機工場を建設する許可を与えるのと引き換えに、生産される機体の一定数を受け取り、市民の雇用を拡大するというものだった。従って、現在、外世界同盟はドラコ連合から航空宇宙関連の星間連盟技術を受け取っている。親善のために、連合は同盟が所有する気圏戦闘機工場への資金援助を行った。この合意は外世界同盟人の現実主義的な視点を示している――過去にクリタ兵による残虐行為があったにも関わらず、同盟は連合の提供する支援とビジネスを必要としており、生き残るために過去の相違を進んで脇に置きたがっているのだ。

 ミッチェルはカノープス=タウラス連合同盟の後、この辺境の2大国と会談を持った。この結果、同盟はタウラス連合から軍事援助といくらかの星間連盟技術を得た。見返りとなったのは、同盟市民が辺境の植民地地区で働く許可を出すというものである。技術援助はかなり遅れたものの、ミッチェルは最終的に2辺境国の首脳に圧力をかけて約束を守らせ、3062年には断片的な情報が届き始めた。これまでのところ、届いた情報は軍事的なものではなかったが、同盟にはちょうどよいものであった。進歩した技術・医療は、外世界人が兵器よりも使うだろうものだからだ。

 ミシェルに対する唯一本物の敵は、バリゴラ惑星議会議長にして分離主義運動主導者、バルナバス・ファードである。分離主義者は外世界同盟がひとつの国家として存在するべきでないと感じている。彼らは外世界同盟を解散し、成功するか失敗するかを居住惑星の手に委ねることを提唱している。ロングロード計画の成功が分離主義者の声を幾分小さくさせているが、議長の足を引っ張り続けている。







組織 Organization

 他の軍隊とは組織が違う同盟軍事兵団は、創設されて以来、長年にわたり無計画に発展してきた。他の軍隊では上位の士官たちがこなすような任務を、軍事評議会と他の政治グループが担当する。結論として、同盟の政治構造を理解するには、いかにAMCが機能するかを理解する必要がある。



政治的集団 Political Knots

 同盟の政府は市民の声によって立っている。同盟の政府機関で外交と内政を担当する最高議会は、同盟内の居住世界10個につき1名の代表で構成されている。代表は各惑星議会から選出された候補書たちから控訴院によって選出される。最高議会の長たる議会議長は、常にアヴェラー家の誰かであり、同盟の公式な指導者に近い存在だ。執行議会に提出された議題は全会一致でのみ可決され、そうでなければ制定されずに終わる。新しい法案の成立は、長く困難な道となる。

 加えて、各世界には惑星議会があり、住人1万人につき1人が選出される。代議士は毎年一般投票で選ばれ、惑星を統治するのに必要な法律を通す権限を持つ。このため、彼らは多くの分野で最高議会に名目上従うだけである。同様に、各惑星には住人5000人ごとに5名からなる控訴院がいくつかある。これらの法廷は行政指令でさえも違憲だと宣告する権限を持ち、その法廷の管轄内で無効となる。これが意味するところは、旅行者たちが各エリアの法律を事前に確認するのが必須ということである。惑星と惑星だけでなく、同じ惑星の別の場所ですら法律が違っているかもしれないのだ。

 複雑な同盟政府の最後の部分は、軍事評議会である。2800年代半ば、常備軍が必要と結論づけられた際、同盟憲章に加えられた組織だ。この時まで、防衛組織は志願兵団のみに制限されており、同盟内に軍事組織はほぼ存在していなかった。評議会は4名の委員からなり、同盟の地域主星から選ばれ、控訴院の代表の承認を受ける。彼らは軍の組織と配置を評価する責任を持ち、軍事独裁者の登場を防ぐために、最高議会の軍事力使用に関する拒否権を持っている。拒否権の唯一の例外は、最高議会が宣言した同盟全体にまたがる緊急事態の際である。



兵団の構造 Structure of the Corps

 同盟軍事兵団は3つの部門に分かれている。中心領域の軍隊が通常こなす任務は、同盟では政治グループの担当なので、それ以上の細分化は必要ないのである。AMCの名義上の長は議長であるが、彼の補佐官と副司令官が問題を取り扱う。現補佐官のモーリス・アヴェラー上級委員長はミッチェル・アヴェラーのまたいとこであり、アヴェラー近衛隊の元指揮官である。

 AMCへの入隊は各惑星で行われるくじ引きで決められる。くじで選ばれた場合、健康な市民には4年間の兵役義務がある。志願兵もまた歓迎され、長期勤務を選んだ市民はそれが可能である。士官階級は管理職を意味することが多く、任期は最低5年間である。士官への昇進は指揮官か惑星議会の推薦を必要とし、軍事評議会の承認を受けねばならない。



同盟航空宇宙軍 Alliance Aerospace Arm

 普通の軍隊と違って、AMCで最も重要なのは同盟航空宇宙軍(AAA)だと考えられている。AMCの創設時、市民たちは航空宇宙戦力を大量導入することに投票した。気圏戦闘機を購入し、維持するのは、バトルメックよりも安くつくという勘違いがあったのである。これが現在のAAAの基礎となっている。AAAには同盟の最初の防衛線を務める責任がある。航空宇宙軍は長いことAMCの予算の大部分を受け取っており、最近になってようやく地上防衛軍が同じくらいの予算を付けられ始めたくらいだ。

 兵団内の通常兵力、メック戦士たちとは違い、AAAのパイロットたちは最高の訓練を受け、高い技術を持つことで知られている。実際、他の辺境国は航空宇宙戦力の練度を上げるために、AAAの隊員を借りる許可を求めることがよくあるのだ。退役した隊員たちは中心領域、辺境の軍事学校で高い需要がある。再統合戦争での大量破壊の記憶から、同盟市民の大半はバトルメックを「中心領域の憎むべき道具」と見なしている。彼らは他国のメック戦士が受けているような敬意と賞賛を、気圏戦闘機パイロットに向けている。

 地上部隊より気圏戦闘機を好むのを反映して、両部隊の関係は奇妙なものとなっている。通常のドクトリンとは違って、AAAの部隊にほとんどの任務が与えられる。普通とは逆に地上防衛軍の部隊は支援のために付けられる。これは防衛では上手く回るが、攻勢の際には戦略的に劣った組織となる。このやり方は攻撃されない限り平和を求める同盟の考え方に適合している。

 AAAは5個航空団からなり、各航空団は3個連隊(それぞれ3個航空中隊と1個指揮中隊)で構成される。伝統的な編制である航空団(wing)と連隊(regiment)が逆になっているという点で、同盟が通常と違っているのは特筆せねばならないだろう。これは計算された決定であるようで、軍事通信を傍受するかもしれない敵軍を混乱させる意図があるのかもしれない。各航空団は60機の戦闘機を持ち、全AAAの名目上の戦力は現役戦闘機300機となる。辺境国家の数字としては驚異的なものだ。

 機体の一部は回収品だが、大半は機齢一世代分であり、そのうち20パーセントがクリタ家から入手した星間連盟技術を使っている。就役中の戦闘機の多くがクリタ製だが、ダヴィオン製も相当数がある。

 航宙艦と降下船(2隻の極めて貴重なヴェンジャンス級含む)からなる比較的小規模な艦隊が、大量の戦闘機に輸送力を提供する。これらの艦船はAAAに加えて同盟機械化兵団の輸送も行う。

 現在のAAAの長はポール・マーフィー委員長である。かつては銀行家だった人物で、盗賊から同盟を守るためAMCに入隊し、キャリアを築いてきた。金融業界での経験は予算の問題を処理する際に計り知れない助けをもたらし、柔らかい物腰と空を飛ぶ才能で部下からの大きな人気を集めている。



同盟地上防衛軍 Alliance Ground Defense Arm

 つい最近まで、同盟地上防衛軍(AGDA)は、ほとんど予算も支援も受けていなかった。装備不足を強いられ、兵団の恥部として冷笑されてきたのである。ミッチェル・アヴェラーのロングロード計画の下でこれは変わり始めている。

 プログラムでAGDAの装備と訓練が改善されたのみならず、戦力の拡大が実施された。AGDAの主力部門である同盟機械化兵団は、プログラムが始まった時には3個連隊の規模だった。現在では、バトルメック、車両、歩兵の完全な5個連隊に成長している。プログラム名から第1、第2ロングロード軍団と名付けられた新規2個連隊は傭兵部隊を中心に立ち上げられた。

 同盟憲章は同盟宙域での傭兵の起用を明白に禁止しているのだが、ミッチェル・アヴェラーは一時的に制限を停止する法案を推し進めた。彼は、永久にAMCの一部となるのを厭わない、出来うる限り最良の部隊を求めて、小規模な傭兵団をいくつか雇い、それから仕事ぶりを評価した。雇用された中から、バンマーズ・バンチ、サーモ・ポリス、シンプソンズ・シスターズだけが選ばれた。前者の2個部隊が第1ロングロード軍団となり、シンプソンズ・シスターズが第2の基盤となった。以来、傭兵制限は元に戻っている。

 機械化兵団よりも数の面で大規模なAGDAの他部門は惑星市民軍である。同盟内のすべての惑星は、オムニスの故郷であるダンテをのぞいて、2〜4個大隊の現役市民軍部隊を擁している……多くの世界には相当数の予備部隊もある。彼らは車両と歩兵のみからなる民兵市民軍で、郷土防衛だけに運用を厳しく制限されている。その仕事は惑星を守ることではなく、援軍が来るまで侵略者を食い止めることである。

 AGDAが面している最大の問題は、ほとんどすべての部隊に見られる士気の低下である。兵士たちがAGDAに入隊した理由は、AAAの高いテスト基準に見合わなかったからなのだ。気圏戦闘機パイロットに比べて地上部隊は劣っており、哲学的な意味で野蛮であるとの見解が部隊内に広まっているのだ。これが高いレベルの自虐をもたらし、AGDA全体の能力を低下させている。議長は各地上部隊に心理学者を配置し始めたが、これまでのところほとんど変化は見られていない。

 ルミコ・ニッタ上級委員長はAGDAの長として奇妙な存在である。女性であるのみならず、ドラコ連合で生まれたからである。子供のころ、家族が連合の気圏戦闘機工場を動かすために外世界同盟に移住し、市民となったのである。最初は歩兵として、後に戦車兵として機械化兵団で20年過ごした後、ルミコは地上戦に精通するようになっていた。さらに重要なのは、航空・地上任務の統制をとって、すべてを円滑に進めるすべを知っていることである。



同盟業務軍 Alliance Service Arm

 AMCを構成する三部署の最後は、補給業務、訓練、研究、諜報など非戦闘員のすべてを内包する同盟業務軍(ASA)である。ロングロードプログラムに起因する改革によって、現在、ASAの予算の大半を受け取っているのは医療兵団である。民間医師の負担を軽減するため、医療兵団は駐屯している世界で市民の医療も行う。

 ASAは輸送用に、航宙艦3隻、降下船7隻からなる自前の小艦隊を保有している。AAAの艦隊が各部隊の補給物資を輸送するのだが、ASAに関わるその他すべてはこれらの船で移動する。

 ASAの長は、恒星連邦生まれの医師で、有名なNAIS大学で学位取得したヴァシリー・デミル委員長である。彼はASAの有望な人員数名を後援してNAISに送り込み、彼らが持ち帰った情報と訓練は計り知れない助けとなっている。







AMCの階級制度 AMC Rank System

 既存の軍隊とは違って、同盟軍事兵団には8つの階級しかない――4つが下士官兵で、4つが士官である。軍事評議会、議長、補佐官が職務を執り行うことから、通常の軍隊で見られる上級士官の階級は必要なくなっている。



下士官兵階級 Enlisted Ranks

防衛官 Defender
 AMCの徴集兵は、兵種にかかわらず「国家の防衛官」の肩書きを与えられる――通常の軍隊とは違って、気圏戦闘機パイロットもまたこの階級から始まり、自動的に士官階級を与えられることはない。この階級は新生星間連盟システムでいう二等兵とほぼ同じである。

護民官 Protector
 少なくとも1年間勤務し、問題を起こさなかった兵は護民官に昇進する。公式には「祖国の護民官」である。これは星間連盟でいう伍長に相当する。

保護官 Guardian
 保護官、より正確には「国家の保護官」は、AMCで最低2年間勤務し、問題を起こさなかった者である。保護官は星間連盟の軍曹に相当する。

指導官 Preceptor
 指導官は最低3年間現役で勤務し、問題を起こさなかった者に与えられる。この階級は星間連盟の曹長に相当するが、規模の小さいAMCにおいて指導官が務める役割は限定的である。



士官階級 Officer Ranks

主任 Supervisor
 AMCにおける最初の士官階級である主任は、主に歩兵小隊、車両小隊、バトルメック小隊、気圏戦闘機小隊を指揮する。星間連盟の中尉が大まかにいって主任に相当するものである。

班長 Section Leader
 通常、班長はバトルメック、車両、歩兵中隊、あるいは気圏戦闘機の航空中隊を指揮する。彼らは前線で敵と遭遇する可能性の最も高い士官であり、星間連盟の大尉におおよそ匹敵する。

理事 Director
 戦場では計画幕僚や上級野戦指揮官を務める理事は、通常、歩兵、車両、バトルメック大隊、あるいは気圏戦闘機1個連隊を指揮する。理事は星間連盟の少佐に相当する。

委員長 Chairman
 この階級の士官は、AMC内でいくつかの役割を果たしている。よく上級幕僚、戦略専門家になる彼らは、バトルメック、車両、歩兵1個連隊、または気圏戦闘機1個航空団の指揮も行う。委員長は星間連盟の大佐に似た存在である。
 委員長はふたつの名誉階級をのぞいてAMCで最高の階級である。議長は単純にAMCの長を務めるものとして知られている。彼の補佐官は、委員長たちの中での地位を示すために上級委員長として扱われる。







勲章 Awards

 同盟市民が強い平和主義的心情を持っていることは、AMCの兵士に与えられる表彰にも影響を与えている。AMCが兵士に授与する勲章は2つしかない。戦闘中の行動に叙勲を与えることは兵士たちに間違ったメッセージを与えると有権者たちが長きにわたって感じていたからである。このため、2つの勲章は殺した人数や特定の紛争への参加ではなく、自己犠牲か人命救助に与えられるのである。

 しかしながら、AAAのパイロットたちは独自の賞典を持っている――5機以上の撃墜を記録したパイロットに与えられるエースの称号だ。モノとして与えられるわけではないのだが、この称号を帯びる者は少なからぬ名声を得られる――実際に過去2世紀のAAA委員長ほぼ全員がエースであった。



ピトケアン星章 Pitcairn Star

 ピトケアン星章は、エリアス・ピトケアン大佐を由来としている。ピトケアン大佐は再統合戦争中にピトケアン軍団を率いて勇敢な突破を仕掛け、同盟に安寧をもたらした人物である。軍事評議会によって選考されるピトケアン星章は、どの部隊所属であろうと民間人を守るため大きな困難に挑んだ隊員に授与される。同盟は絶え間なく海賊の攻撃を受けていることから、毎年10名以上に授与されている。その大半が死後受勲である。



ガルーチ十字章 Gallucci Cross

 この勲章はAAAのパイロットのみに与えられ、授与者は毎年1名のみである。AMC最初のエース、エド・ガルーチ指導官にちなんで名付けられたガルーチ十字章は、その年に最も腕を上げたAAAパイロットに与えられる。勝者はAAAのエースたち全員の投票によって決められる……書類上は軍事評議会が十字章を与えるのだが、彼らはいつもエースたちの選出に従うのである。十字章には評価と昇給の両方が付いてくる。







養成校 Academies

 哲学を中心に作られた国家として、同盟では創設直後に各種の学校が多数作られた。再統合戦争の荒廃がそれを大きく変え、星間連盟時代に再建された高等教育機関はわずかであった。継承権戦争の数世紀にその大半は放棄されるか閉鎖され、識字率は着実に低下していった。

 3000年までに、アルフェラツ大学と少数の小規模な民間教育機関だけが残された。ロングロード・プログラムの一環として、状況は変わり始め、新しい大学の開講のために資金が拠出され、コムスター局員が非常勤講師を務め、同盟で最高の頭脳たちが肩を並べた。現時点において、これらの学校で軍事技能を教える計画は動いていない。そのような訓練が受けられる場所は、惑星市民軍とAGDAが使っている訓練キャンプ、アルフェラツ大学の技術訓練、コロンビア養成校だけである。



訓練キャンプ Training Camps

 ダンテをのぞき、すべての惑星に存在するこれらのキャンプは、地上軍の兵士に基礎訓練を行っている。歩兵、戦車兵、戦車整備兵向けの訓練はどのキャンプにもあるが、メック戦士の基礎技能と技術についてはアルフェラツ、ルーシャン、ドニエプル、フェリスのキャンプでのみ行われている。この4つのキャンプは公式には気圏戦闘機パイロットも訓練しているが、現在、パイロット候補生の全員がコロンビア養成校に入学している。



コロンビア養成校 Columbia Academy

 ラモーラで放棄された養成校の灰から作られたコロンビア養成校(CA)は、核融合エンジンを使った最初の宇宙船からその名を取られている。本校は、ロングロード・プログラムの最初の成果として3057年に作られ、AAAの気圏戦闘機パイロット全員、技術者、航宙艦・降下船の乗組員に訓練を施している。

 トリシア・ラセク委員長がCAの指揮官で、軍事評議会の下に直接ついている。



入学 Enrollment

 CAへの入学で求められるのは、志願者が肉体・精神的に健康なこと、同盟市民であること、故郷の惑星議会かAAAの士官から推薦を受けていることである。友好国の出身で軍事評議会の許可を受けいる国外の生徒も時折受け入れられている。現在の友好国は、タウラス連合、カノープス統一政体、恒星連邦、ドラコ連合、コムスター(国家ではないが)である。



カリキュラム Curriculum

 一年目、数学と科学(養成校で教授される各分野の基礎をなす)が全生徒に叩き込まれる。一年目を大過なく修了すると、生徒たちは専門とする分野を選ぶことが出来るが、クラスの空き、成績、教師の推薦を元に制限がかけられる。CAの上級課程は、気圏戦闘機パイロット、気圏戦闘機技術者、航宙艦・降下船乗組員操縦士などである。



校風 Atmosphere

 CAには陽気な雰囲気があり、学生たちのお気に入りの娯楽は悪ふざけである。しかし学習において、生徒たちは極めて真剣であり、すべての分野で競争は激しい(通常は友好的なものであるが)。生徒たちの多くが自己中心的になり、同盟のパイロットやテックたちは卒業したら特権が与えられると感じている。たいていの場合、彼らは間違っている。



卒業 Graduation

 CAの教育期間は生徒の選んだ分野によって異なる。卒業に際して、AMCへの入隊は必須であり、最低4年間勤務する。最高の生徒をのぞき、全卒業生が自動的に士官階級を与えられるわけではない――AMCに士官候補生学校はないのだ。誰もが戦場で昇進することを期待されている。卒業生はAAAに配属されるだろうが、ポストがなければ空きが出るまで数ヶ月間、AMCでペーパーワークにいそしむことになるかもしれない。



アルフェラツ大学 University of Alpheratz

 再統合戦争と継承権戦争を生き延びた唯一の大型総合大学であるアルフェラツ大学(UA)は、何百年もの伝統を受け継いでいる。最近まで、本校は哲学学校であり、数学と科学の基礎だけを教えていた。これは3042年に変わった。ネイル・アヴェラーがさらなる科学、技術訓練などコースの拡大をこの国営大学に命じたのである。UAはコースを減らすことなく、拡大し、新しい学部のために新しい校舎が建てられた。

 現在の学長は、哲学者にして化学者のコナー・ブランド博士である。彼の一族は開校以来のUA生である。



入学 Enrollment

 UAへの入学には同盟の市民権と授業料が必要だが、貧しい生徒を助けるために国営の学資ローンプログラムがいくつか存在する。惑星議会の多くも、自惑星の有望な生徒のために資金を出している。



カリキュラム Curriculum

 UAは主流の哲学だけでなく、科学技術の各分野の教育を提供している。生徒たちは選んだ専門分野に集中する前に、1年間の基礎過程を受講する必要がある。



校風 Atmosphere

 UAにおいて、議論の起こらぬ日はまれである。哲学の生徒たちは激論を戦わせるが、意見の相違が殴り合いに発展することはほとんどない。技術系の生徒たちは自分に籠もる傾向があり、他の生徒たちから語るまでもない「新参者」と見られている。教員たちはこういった偏見を拭い去ろうとしているが、それでも続いていくと見られる。



卒業 Graduation

 学生の選んだ分野によって卒業までの時間は異なるが、平均は3年から4年である。UAには非常に多くの就職斡旋プログラムがあり、卒業生が新しいスキルで生計を立てるのを保証するため、賢明な取り組みが行われている。







人物 Personalities

 おびだたしい数の惑星議会が存在し、同盟を埋め尽くすような信じがたい層の官僚機構があることから、その時点で誰が本当に重要かを判断するのは難しい。だが、ここに上げた3名は、常に影響力を持っていると見られ、従って書き記す価値がある。



ミッチェル・アヴェラー議長 President Mitchell Avellar

 外世界同盟の改革者にして、救世主であるらしいミッチェルは同盟で最年少の大統領となった――父が退位した時にはわずか21歳だった。現在でも28歳である彼は、外国人やあるいは政府内のメンバーからも低く見られることがよくある。実際には、ミッチェルは抜け目のない政治家にして愛国者であり、同盟が生き延びるためなら必要なことはなんでもする。実用主義的であり、我らが結社の真実よりもコムスターの不敬を好み、決断に感情を交えることはめったにない。

 ミッチェルは天才レベルの知能を持ち、同盟の歴史と惑星ごとの人民が望むものの違いを知り抜いている。こういった要素が、いくらか社交的でないこと、比較的経験に欠けることを打ち消す助けとなっている。同盟市民の人気を得るために、ミッチェルは成功した気圏戦闘機パイロットになり、同盟全体に利益を生み出し始めた。

 ミッチェルが策定したロングロード・プログラムと、その大々的な成功によって、同盟の市民は彼を強く支持している。無能で不適格なリーダーの後、同盟はようやく強い人物をトップに迎え、民衆は大いに喜んだのである。ミッチェルが議長になってからのわずか数年で、彼は父が成し遂げたものを越えており、残りの人生をそのやり方で続けるものと見られる。



モーリス・アヴェラー上級委員長 Senior Chairman Maurice Avellar

 議長の父方のまたいとこであるマリスは、長い間尊敬される軍事指導者を輩出してきたアヴェラー一族の最新版である。彼はアヴェラー防衛軍連隊の指揮官として軍のキャリアを始めた――これは父の名がもたらした情実人事の面がある。部隊の兵士たちは彼から遠ざかった。彼の下についたら、「パパっ子」の政治家にみな殺されてしまうと信じたのである。モーリスは部下を率いるのにふさわしいと証明するのを最優先事項にし、彼らとともに暮らし、野戦演習に参加した。ここで彼は兵士たちの信頼を勝ち取った。戦術・戦略の才能が輝き、蛇蝎のごとく嫌っていた者たちさえも感心したのである。

 さらにアヴェラー防衛軍の指揮を続けた数年後、いとこのミッチェルが議長となり、モーリスはAMC次席指揮官に指名された。再び、彼は縁故主義で得たように見える地位にふさわしいことを証明せねばならなかった。最大の敵はAAA指揮官のポール・マーフィー委員長で、歩兵にAMCの指揮を任せるのは大きな間違いだと感じていた。最終的にモーリスはマーフィーの信頼を勝ち取り、以来、両名は肩を並べて働いている。

 ベテランの地上兵として、モーリスはAGDAが直面している問題に気づいており、それを出来る限り解決することに優先順位を置いている。彼はいとこが発案したロンドロード・プログラムの軍事面に強い影響力を持ち、AGDAが拡大した唯一の理由はモーリスにある。彼が現在主眼に置いてるのは地上部隊に浸透した低い士気である。士気向上の望みをかけて、彼は自らAGDA各部隊への訪問を始めた。これはいくらかの効果があったが、モーリスが望んだほどではなく、他の手法を探すのを余儀なくされている。



カルビン・グレイグ司教 Precentor Kalvin Greig

 同盟の惑星ラモーラで生まれたカルヴィンはコムスターで読書を学び、年齢に達したらすぐコムスターに入信する決意を固めた。生まれ持った才能によって彼はコムガード入りし、先天的な偏見によって気圏戦闘機パイロットとなった。彼はパイロットとしてツカイードの戦いまで10年以上勤務した。ウルフ氏族戦闘機との交戦中、カルヴィンはコクピットへの命中弾を受け、地上へと急降下した。目を覚ますと、彼はコムスターの病院におり、神経への損傷を受けていたことからもう二度と飛ぶことは出来なくなった。

 カルヴィンは飛べなければ戦う意味がないと判断し、コムガードの他部署には行かなかった。従って、外交部門へと異動した。戦士にしては奇妙な選択に思えたが、カルヴィンは外交を戦闘の一種と見なし、得意とすることがすぐにも明らかになった。カオス境界域での何度かの成功の後、カルヴィンは司教に昇進して、3061年、駐同盟首席外交官としてアルフェラッツ勤務となった。

 変貌を遂げた同盟に素早く対応したカルヴィンは、コムスターと同盟人との関係を強くし続け、両者の友好関係が続くことを確かにしたのである。かつてパイロットであったことから尊敬され、AAAの上層部に複数人の友人を得た。このコネクションによって、同盟での軍事的な状況を把握することが可能となっている。たいてい彼は戦闘が発生してから数日以内にその知らせを受ける――時折は議長が聞きさえする前に。明敏で人好きのするカルヴィンは我が教団が同盟内で遭遇するかもしれない最大の問題の一つとなっている。




indexに戻る
inserted by FC2 system