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作成:2020/06/28
更新:2020/08/23

ネクロモ・ナイトメア NECROMO NIGHTMARE



 聖戦のさなかの3071年、曾有の悲劇がカペラの惑星ネクロモを襲います。突如として押し寄せた小惑星が地表に降り注ぎ、惑星を潰滅させたのです。
 もちろんこれは偶然の自然現象などではありませんでした。ワード・オブ・ブレイク教団が軌道上からの小惑星爆撃を行ったのです。しかし、話はそれだけで終わりません。このアドベンチャーに参加したプレイヤーは思いも寄らぬ事実を知ることになります……。
 "BattleTech Adventures: Necromo Nightmare"は2013年のハロウィンに無料配布されたRPG用シナリオです。アメリカでハロウィンと言えばもちろんホラー。ネクロモ・ナイトメアには、なんとアレが出てきます……
 バトルテックらしからぬネタでありますが、ジョークシナリオではなく、公式であるようです。




ネクロモ NECROMO

貴族統治者: タン・ウー・セン卿
星のタイプ: M5V(206時間)
星系内の位置: 第10惑星
ジャンプポイントからの行程: 2.45日
衛星の数: 1(アコーナ)
地表重力: 1.03
大気圧: 低い(呼吸可能)
赤道温度: 39度(乾燥)
表流水: 12パーセント
補給ステーション: 天頂、天底
コムスター施設: B
進化生命体: 哺乳類
人口: 150万人
社会産業レベル: A-A-D-B-F

 星間連盟の時代、ネクロモ――不毛の荒廃世界――は小規模な工業・交易ハブで、無秩序に広がる航空宇宙サービス産業と防衛施設があり、大連邦国のカペラ共和区、聖アイヴス共和区をつなぐ軍事・交易経路として機能していた。しかし、星間連盟の崩壊とその後の継承権戦争で、海運業は恒星連邦による数多の襲撃と侵攻のターゲットとなった。

 第三次継承権戦争が終わるまでに、惑星には降下船修理施設と5000名の定住者以外に何も残っていなかった。この従僕、市民たちは全員が惑星上の施設に雇用されており、農産物の輸入に大きく依存していた。労働者たちは巡回警備、勤務後の大がかりな報告、24時間監視など最高レベルのセキュリティ下に置かれており、外部との通信が制限すらされていた。この時点では、惑星HPGがなかったことから、制限は簡単であった。その結果、トップシークレットの海軍工場、研究所があるというものから、政治的反体制派を閉じ込める巨大収容所があるというものまで、ここで何が行われているのか数多の噂と説が出回った。

 3050年代後半までに、カペラは自由世界同盟(ひいてはワード・オブ・ブレイク)と同盟を結び、HPG基地を建設して、さらなる労働者と民間人が流入した。もちろん、より劇的だったのは、大連邦国の戦艦建造の中核をなす軌道工場施設、アリス記念造船所が3058年にお目見えされたことである。その発展により、次の10年間でネクロモの人口は150万人にまで爆発したのである。惑星の経済とインフラはこれまでよりさらに航空宇宙産業と強く結びついたままであったが、マスキロフカやその他の大連邦国政府機関が最高機密の施設を隠しているとの噂は根強かった。



アリス記念造船所 The Aris Memorial Yards

 ネクロモの主要産業は――実際にこの惑星唯一の存在意義と呼ばれるものは――アリス記念造船所である。大連邦国の各企業から供給を受けている(筆頭はカペラのラシュプール=オーウェンズ社が生産する戦艦用の惑星間移動ドライブ)その一方、この軌道工場の最重要部分はネクロモのL4トロヤ群と唯一の月アコーナに据えられている。

 自由世界同盟とワード・オブ・ブレイクからの多大な支援を受けて建設、拡大されたとはいえ、アリス造船所は地元民の誇りとなっており、地上から肉眼で視認することが出来る。満月ならアコーナの施設さえ見えるのだ。そのため、惑星首都ランディングプレイスの娯楽施設および政府庁舎は、「カペラ工学の驚異」がよく見えるように天窓か透明な屋根を備えている。

 アリス造船所の主要製品は、大連邦国中で生産される部品を使い、カペラ海軍向けに建造されるフェン・ホアン級巡洋艦である。加えて、ネクロモの造船所と地上施設は、降下船の船体と通常の航宙艦を修理、改装、建造する伝統的な役割も続けている。無論のこと、ネクロモは国家の重要世界となっており、その理由からマスキロフカ、CCAF、大連邦国海軍のすべてが星系内に大量配置されている。



ランディングプレイス Landingplace

 ランディングプレイスはネクロモ唯一の都市で、歴史的に極めて少ない住人しかいない。赤道のすぐ南、グレート・シーの北端に位置するこの都市には、惑星定住者の85パーセント以上が居住している。都市の内部には内壁が立っており、この世界が植民地時代にドーム型開拓地だったことを表している。大気は今日よりもさらに薄かったのだ。

 グレート・シーの河川から生まれた森が、ランディングプレイスとグレート・シー盆地全体を覆い、山脈と広大な丘陵地帯がこの地域全体を取り囲む。ランディングプレイスから森を通って道が延び、川沿いに散らばる小さい集落とつながっている。

 工業を中心に建設され、数十年にわたり政府の厳格な統制下にあったことから、ランディングプレイスは極めて秩序正しく区画整理された都市である。張り巡らされた大量輸送システムが都市内と町村を結ぶ交通手段になる一方、個人の輸送手段は燃料電池か核融合モーターを使う車輪式の自動車に制限されている。これは薄い大気に対する「不必要な負担」を避けるためとされる。

 工場と修理施設は古いドーム3つの周りにリングのように建てられている。いまドーム内にあるのは、政府地区、商業地区、社会サービス地区である。政府地区には惑星HPG、首都庁舎、警察本部、軍諜報司令部、鉄道中央駅がある。商業地区には、惑星の大手銀行、ショッピングセンター、レストランがある。社会サービス地区には、スポーツイベント・コンサート用の中央スタジアム、地元の商業大学、ネクロモ最大の病院がある。工業地帯の向こう側には、住宅街(いくつかはこの15年に作られたもの)と海岸線の近くに農業地区がある。ここでは、惑星の漁業と農業の大半が行われている。







ニュースの中のネクロモ NECROMO IN THE NEWS


死の沈黙 Deathly Silent

[セーガン管制]「ニューセーガンへようこそ、ダイナスティ・サン。貴艦は再充填の順番待ちです」

[ダイナスティ・サン]「ありがとう、管制。あー、ステーションの責任者はいるかな? セキュアなチャンネル40-2から船長にコンタクトしてもらいたい」

[管制]「了解した。いま切り替えている。セキュアライン・トランスミッション・プロトコル開始中」

[イン]「こちらデュヴァリス・イン港湾長。助けが必要ですか?」

[チョー]「イン港湾長、こちらチョー船長です。大連邦国商人コード・アラート15に基づき、ネクロモに関して伝達すべき情報があります」

[イン]「準備中……録音開始。いいですよ、チョー船長。言ってください」

[チョー]「こちら、ダイナスティー・サンのエヴァン・チョー船長。現在、アルマザ経由でゲイ=フに向けて航行中。最後の通過地点は、ネクロモの天底点。ネクロモからの通信も、このジャンプポイントでの通行も記録されてなかった」

[イン]「市民チョー……侮辱するつもりはないが、関係のある情報とは言いがたい……」

[チョー]「違う、あなたはわかってない。何も記録できなかったんだ! なにも、なし。惑星から何も来なかった。HPGが死んでいただけじゃない、無線、ビーコン、放送の類いもなかった。まるでこの世界が……なくなったみたいだった。ネクロモみたいな造船所のある星系はいつもバックグランドノイズでハミングしてるみたいなもんだ。それが惑星から何もなかった。まるで……墓場の上に浮かんでいるように感じた」

 ――国有商船ダイナスティー・サンからの通信傍受。ニューセーガン天頂再充填ポイント、3071年8月28日




渡航勧告: ネクロモ Travel Advisory: Necromo

(3071年9月1日)
シーアン[シーアン・ヘッドライン・リポート] - 以下の緊急渡航勧告は、商業貿易省から大連邦国の全従僕・市民に対するものである!

 マスキロフカ局の命令により、そして天賢たるカペラ大連邦国首相の権威の下、ネクロモ星系は即座の完全な検疫下に置かれる。ネクロモの兄弟姉妹に対して、不確定だが恐ろしい規模の不実な攻撃が行われたことを知るべし。我らが栄光の国の戦士たちが犠牲への報復を行い、不当な攻撃を行った罪深き一党を追い詰めることだろう。

 この攻撃の性質、臆病なテロリストについて完全な調査が進行中である。完了するまで、ネクロモへの許可なき移動は、敵対的であると判断され、警告なしで攻撃される可能性がある。





天帝は君たちを望む THE CELESTIAL THRONE NEEDS YOU

 3072年1月5日

 立派な戦士諸君

 君たちの力が再び必要となった。参加を強く勧める。

 最近、大連邦国内で起きた出来事により、きみたちの部隊の技術とプロ的な慎重さにふさわしい危機が発生した。この任務は通常の二倍の報酬が認可されており、一部は前払いされ、残りは成功後に支払われる。

 この作戦では、トップレベルの技術支援が提供され、野戦連絡役(必要に応じて作戦の情報を開示することが許可されている)が同行する。今回、連絡役が部隊の決定に介入することはない。安心されたし。

 その性質上、任務は短いもので、目的地への往き来に必要な輸送は大連邦国によって提供される(君たちがこのオプションを破棄しない限り)。

 本書において作戦に関するこれ以上の情報は開示できないが、もし興味があれば――それを真剣に望む――通常の回線で応答されたし。条件について交渉するため最速で打ち合わせをアレンジする。

 大連邦国のために!

 ――傭兵雇用局パヴロ・ゴランスキー副局長代理




ワード・オブ・ブレイク: 我らが全員が直面するモンスター Word of Blake: The Monsters We All Face

(3072年1月5日)
ガラテア[マークネット] - ターカッド、3068年: 惑星爆撃によって放射性の雲が発生し、ライラ政府とブレーメン大陸の1/3が実質的に殲滅された。

 アウトリーチ、3068年: 軌道上からの核砲撃で惑星全土が爆撃された。

 ルシエン、3068年: 核兵器が龍の主星で最大のメック工場を吹き飛ばし、数千人以上が死亡した。

 アルタイル、ヨリ、3068年: 核兵器と化学物質で10億人以上が死亡した。

 アトレウス、3068年: 神経ガス攻撃で数千人が死亡。

 ゲイルダン、3069年: 一年の内に惑星全土が死に絶える。

 アラリオン、ギャラックス、3069年: さらに2つの惑星が核兵器と現代医療の通用しない疫病で消滅。

 カシル、3069年: 核兵器と神経ガスが投入される。迎撃された降下船の残骸の中からさらに汚らわしい何かの証拠が発見される。

 カンスーへの化学兵器。スローカムへの軌道砲撃。カンスーへの火炎爆撃。ミッチェル。ワサット。タマラー。

 このリストは恐ろしいほどに印象深いもので、数少ない例外を除き(そんなものがあるとしたら)、すべてがひとつの集団によってなされた。ワード・オブ・ブレイクである。

 ここに一定のパターンはなく、敵前線指揮官への警告になるような統一された予告文はないようだ。一部のケースでは、ブレイク派は無差別な死を与えると脅迫し、敵が降伏するまで砲撃を待った。またあるケースでは、必要もないのに先制攻撃が行われた。彼らはターカッドとゲイルダンでは核兵器の使用を強く否定しているが、実際はアウトリーチで起きたことを楽しんでいる。専門家によると、アラリオンとギャラックスに投入された生物兵器は、生態系全体を破壊するか汚染するように作られており、一方、アトレウスで使われた化学物質は一般的な神経ガスである。

 そして、彼らの中には、比べると狂信者たちを正気に見せてしまうような悪夢の狂人たちがいる。マネイドミニ、自称「マスターの手」である。この狂人たちは人体を大量の武器や部品と交換しており、それならバトルアーマーを着た方がまだ意味がある。彼らは士気や名誉を持たずに戦い、人類のためにそうしていると公言している。

 これらふたつの要素を組み合わせると、我々は人類の歴史で見られる争いとは違う、聖なる戦争の中にいるのが理解出来る。ワード・オブ・ブレイクは領土征服のために戦争しているのではない。彼らは我らを打ちのめしてよりよい世界にすることが、ある種の思し召しだと考えているのである。

 そして、この神聖なる冒険の中で、人命は支払うに足る正しい犠牲であるとモンスターたちは考えているのである。







重要参考人 PERSONS OF INTEREST



プレイヤーのグループ THE PLAYERS' GROUP

 このアドベンチャー用のプレイヤーは、繊細な、あるいは極秘の任務を扱うことで評判を得た小規模な傭兵か、カノープス、カペラの部隊が理想である。過去、彼らはカペラとカノープスの雇用主のために何度かこのような任務を達成しており、よって大連邦国は重要な任務を任せるに足ると心から信頼を感じている。

 このアドベンチャーはチームが仕事をオファーされるところから始める……「ハイリスクな目標襲撃で、天帝は超高額の報酬をはずむ意思がある」。プレイヤーに差し向けられたのは、過去のコンタクトの一人で、パヴロ・ゴランスキーという名前の中級カペラ官僚である。新しい連絡役、ナッダ・ジェロッドがプレイヤーに同行し、部隊の決定に干渉しないことを約束する。彼女は単なる監視役であり、任務に重要な技術情報を提供するためにいる――ただし情報の提供はプレイヤーが必要とする時だけである。トラックの解決には、たいていいくつかの方法があるので、既存のプレイヤーグループの幅広さがこのキャンペーンに向いているかもしれない。

 このアドベンチャー用に新しいグループを立ち上げるなら、以下のガイドラインが助けになるだろう。

 もしGMが望むなら、キャンペーンには少なくとも1個バトルメック、車両小隊が用意されるべきであるが、全体で中隊規模になる部隊の下に「独立部隊」が必要で、それは機体の外で活動できる能力を持った作戦員にするべきである。最初のトラックではオールメック部隊は役立たずか不必要に火力過剰なのだが、最後には大いに有用となる。従ってメック戦士専門のプレイヤーキャラクターは、充分な「バックアップ」スキルがない限り、すべてのトラックに参加することは難しくなるかもしれない。

 複数の要素をカバーする最高のガイドラインとしてスキルフィールドを使い、広範囲なスキルを得るのがいいだろう。グループが多様性を持てば、問題解決するのにまた別の方法を探せるかもしれない。しかしながら、大連邦国は専門の偵察兵や技術要員を何人か持つ戦士に主な関心を示している。



市民ナッダ・ジェロッド博士 CITIZEN DOCTOR NADDA JERROD
階級/職務: マスキロフカの特別技術コンサルタント
生年: 3039年(3072年時点で33歳)

 ナッダ・ジェロッドはカペラ共和国のゲイファーで生まれ育ったのだが、ふたつの博士号を取得している……ひとつはカペラの学術振興大学で心理学を、もうひとつはシーアン大学でコンピュータエンジニアリングを。彼女はカペラの科学ジャーナルで先進人工論理と電子セキュリティの論文をいくつか発表しており、3060年代の後半にはフィルミール・コマーシャル社(民間市場向けに電子機器を生産し、CCAF向けにレーザー兵器を作っていることで名を知られる星間コングロマリット)の研究部長を務めた。

 3069年までにマスキロフカはジェロッドの成果に関心を持ち、数多の特別プロジェクト(マスキロフカのものと、CCAFとの協働のもの)を支援するために彼女をリクルートした。ナッダ・ジェロッドはCCAFの隊員でも、マスキロフカの諜報員でもないが、大連邦国への忠誠心は疑いようもないものである。

 3070年、ジェロッド博士はネクロモの秘密施設――シンプルに「アバディーン前哨地」と呼ばれていた――で進む特別な極秘プロジェクトに配属され、シーアンにビジネスで呼び戻されるまで6ヶ月そこで過ごした。なので彼女はネクロモに特別な愛着を抱いておらず、単なる勤務地として見ているが、通信断絶した際に同僚何人かが惑星上にいたことを知っており、彼らと特別プロジェクト(「現代科学の勝利」と呼んでいる)が危機にさらされることを懸念している。

 ジェロッドは、最小限の格闘技、小火器、軍事関連の訓練しか積んでいない非戦闘員として、部隊の決定に干渉することはないが、ネクロモでの彼女と同僚たちの成果がなんであれ危機にさらさられる可能性がある場合はなんとしても守ろうとする。従って彼女はどんな時でも降下船内の安全なところから指示と情報を伝えることを好む。



ポルターガイスト・アデプト・タウ・エリカ・ラバン POLTERGEIST ADEPT TAU ELIKA LABAN
階級/職務: 第48シャドウ師団ポルターガイスト・アデプト・タウ
生年: およそ3042年(3072年時点で役30歳)

 アデプト・ラバンは外見で簡単にマネイドミニの工作員とわかる。呼吸フィルターが喉を覆い、「サテュロスの脚」(恐るべき足の速さを生み出す)が背中にあるからだ。従って、彼が右手の義肢をローブの内側に入れたり、黒い手袋とジャケットの長い袖で隠していることは幾分奇妙に思える。

 多くのマネイドミニのように、ラバンは狂信者中の狂信者である。隠されし世界のジャーディンで生まれた彼は、ドミニ「第一世代」の一人だ。従って彼はドミニの指導者、アポリオン司教に似た来歴と背景を持つが、同じくらい大出世したわけではなかった。彼はドミニによく見られる控えめだが化け物じみた雰囲気をまとい、肉体強化していない「生身ども」を何気なく無視する一方、壮大な計画の中で自分が重要だと主張したりもしない。彼は武器で切り刻むのと同じように、交渉し、会談し、冗談を言うことすらあり、最大限の効果を生み出すようにいつもオプションを計算しているようだ。

 ポルターガイスト級として、彼は特殊工作員であり、埋め込んだインプラントは個人戦闘と危険な環境下での偵察に理想的なものである。これによって、彼はネクロモでの作戦の地上フェーズ(生物兵器が投入され、秘密施設で生存者を捕まえる)に最適となっている。攻撃の後、取り残された部隊が苦しんでいた際、彼のインプラントの組み合わせは特に思いがけぬ幸運であったことが証明された。

 ワード教団に身を捧げているにもかかわらず、プレイヤーがラバンと遭遇した際のネクロモの状況は、彼にとって極めて異常で克服できないものであることから、プレイヤーと共に活動する気になるかもしれない。彼は協力を実用的な理由で正当化するだろう。生き延びれば脱出し、上司への報告が出来るかもしれないからだ。もちろんこれは、戦術的な有効性が失われた瞬間に裏切るかもしれないことを意味している。



ダンカン・ステパノフ大尉 CAPTAIN DUNCAN STEPANOV
階級/職務: 大尉、チャームドライフ傭兵中隊指揮官
生年: 3033年(3072年時点で39歳)

 ステパノフについて、あるいは彼の傭兵団チャームドライフについて聞かされていないのだが、プレイヤーは到着した直後に救難信号を通して彼に会うかもしれない。ステパノフはアバディーン前哨地(ネクロモにあるカペラの秘密施設)から発せられた事前に録画されたとおぼしきビデオ映像に姿を現す。この映像は粗く、途切れ途切れで奇妙に見える。

 カペラ人か傭兵の背景を持つプレイヤーは、INTの能力値チェックに成功したら、ステパノフとチャームドライフについて思い出す。傭兵中隊規模の小さい部隊(大連邦国に仕えてきた長いがそれほど重要でない歴史を持つ)を率いるまっとうな古参兵レベルの指揮官である。プレイヤーのグループのように、チャームドライフは偵察、スパイ工作、軽襲撃のような独立任務を専門としている。

 ステパノフ自身は部隊をしっかりと運営しており、いかなる犠牲を払っても彼と雇用主の秘密を守るという個人的なポリシーを厳守している。彼はマスクのエージェントだったことがあり、傭兵へと身を転じたか、あるいは傭兵の身分を隠れ蓑に実際は国の仕事を行っているなどと考える者たちさえいるくらいだ。彼の親しみやすい態度は話す相手を安心させるものだが、会話が「制限されている」情報へと近づくと急に話題を変えることで知られている。話をそらすときに使うのはたいてい元妻の言動についてであるが、一部はステパノフに結婚経験はない、あるいは特定を困難にするためにでっち上げていると考えている。

 アドベンチャーの時点で、ステパノフと彼のチームは実際には死んでいるが、彼の映像は救難信号を送信し続けており、ネクロモに取り残されて孤立無援の彼の部隊を助け、技術支援を提供するかもしれない誰かに向けて呼びかけている。



市民キャロル・リン・ヨハンセン博士 CITIZEN DOCTOR CAROL LYNNE JOHANSEN
階級/職務: アバディーン前哨地プロジェクト部長
生年: 3030年(3072年時点で42歳)

 ネクロモの極秘施設アバディーン前哨地で行われている軍事コンピュータ計画の責任者である、キャロル・リン・ヨハンセン博士は、プレイヤーの連絡役であるジェロッド博士の同僚であった。従ってジェロッド博士はこのキャラクターについて一番語ることが出来る。加えて、主に録音済みビデオのログに登場し、その声はアバディーン前哨地をコントロールするコンピューターで使われているもののようだ。

 ジェロッドのように、ヨハンセンが持つコンピューターと心理学の専門知識は、後に"ザ・ブロークン"と呼ばれる適応型人工指令知能の開発に最適であった。だが、ジェロッドの主眼は流動的に移り変わる戦場でリソースを温存して適切に使うシステムを考案することだったところ、ヨハンセンの担当はより「心理戦」的なものが含まれている。敵のバランスを崩すために、彼女が呼ぶところの「人類の誰もが持つ共感」を装って、ミスディレクションに導くのである。

 ジェロッドがネクロモにいたころ、ヨハンセンはこのプロジェクトを国境の世界に残すという大連邦国の決定に明白な懸念を示していた。ネクロモは5年前に襲撃されており、ましてや戦争状態が続く中である。ダヴィオンによる二度目の攻撃――あるいはもっとひどいワード・オブ・ブレイクによる惑星侵攻を恐れるヨハンセンはプロジェクト全体をもっと安全な内地の世界に移すか、さもなくば敵国が最重要の研究成果を入手出来ないように数多の安全装置を仕掛けることを提唱した。提案の中で物議を醸したのは、AIそれ自体を緊急防衛プロトコルとして起動するというものだった。未完成の状態ということを考えると危険な手段であった。







アドベンチャー・トラック ADVENTURE TRACKS



タッチダウン TOUCHDOWN



ミッション・ブリーフィング Mission Briefing

 航宙艦が到着した非通常のジャンプポイントはネクロモのすぐ間近で、地表に渦巻く暗雲が見えるほどだった。船の乗組員たち――そして君たち――は行動に備えて緊張しているが、しばらくは問題なく進んだ。

 惑星から信号が探知されることはなかった。軌道上の人工衛星は地上からの指示を受けず、沈黙と共に漂った。降下船が移動すると大気中をうずまく黒と灰の縞模様がはっきりとし、地上の風景を垣間見ることさえも出来なかった。

 さらに近づくと、ボーンホワイトの円盤のようなアコーナが昇ってくる。この小さな月の真下には、巨大なアリス記念造船所がある……はずだったが、船のスコープは漂う金属製のデブリ帯を映すだけだった――ネクロモの赤い太陽からの光を受けて、かすかにきらめく死んだ残骸の雲であった。

 軌道上に生命反応がないことに冷酷な満足を得た船長はデブリ帯の真下に着陸するため降下船の進路を変え、まだ見ぬネクロモの地表に進んだ。そこに惑星で唯一の大都市、ランディングプレイスがあるはずだった。

 調査のため送り込まれた音信不通のカペラ基地は、ランディングプレイスから数百キロメートル離れたところにある。だが、ジェロッド博士は隠し施設から近すぎないところに着陸するよう船長に説明する。なぜなら、基地は上空を守る強力な防衛を備えているからだ。これらの自動防衛――悪くすると敵がコントロールしている可能性すらある――は、あまりに近く降下するとやってくる船を容易に追尾して砲撃するかもしれない。君のチームは地上から近づく必要があるだろう。

 降下船が軌道平面の下に入っても何らかの信号はなく、眼下の黒い惑星に生命の徴候はなかった。

 アラームが鳴った。着陸に備えてベルトを着ける時だった。



抵抗 Opposition

 ワード・オブ・ブレイクの攻撃を受けていると疑われていたその間、惑星からの通信がなかったことから、ネクロモで遭遇する脅威の性質はほとんど分かっていないが、パーティーの降下船船長リチャード・グリシャノフの語るところでは、通信が交わされていないということは軍事部隊がいないことを強く示唆しているとのことだった。

 促された場合、グリシャノフ船長は、任務前の一週間以内に観測航宙艦が星系を通過し、星系内で活動の痕跡を発見していないこと、そしてマスキロフカによる分析では活動中の軍隊が存在しないことをプレイヤーたちに語る。マスクはネクロモが占領されているのではなく死んだのだと固く信じているようだ。

 それにも関わらず、グリシャノフもジェロッドも武装せずに行くことを薦めない。なぜなら、アバディーン前哨地の自動防衛が生きているかもしれないと考えているからだ。ジェロッドが語るところでは、前哨地には守備隊がいる(潰滅したと予想される)が、侵入者を自動的に狙う地雷と固定砲台がこの区域にあるかもしれないということだった。



任務達成条件 Mission Success Conditions

 アバディーン前哨地点の正面入り口を突破すれば、任務成功とされる。次にプレイヤーはどう進めばいいのかジェロッド博士に聞くために降下船に連絡を取らねばならない。



 Enemy

 降下船から出発したプレイヤーのチームは、どのような移動手段(徒歩、車両、バトルメック)を選んだにせよ、抵抗に遭遇することはない。だが、船から10kmの焼け焦げた森を通過している時に、武装していない市民の群れに邪魔されることになる。彼らはある地元の病気に感染している。市民たちは即座に――そしてあまりに無分別に――パーティーを攻撃し、会話を試みても無視する。

 もしプレイヤーが徒歩で移動しているのなら、ゾンビ化市民、ゾンビ化兵士テンプレートを巻末のキャラクター表から使用する。「ゾンビたち」は、プレイヤーが森に侵入してゾンビが隠れられるような障害物の15メートル以内に近づいたら姿を現す可能性がある。もしトータルウォーフェアを使っているのなら、ゾンビたちは1D6-1個通常歩兵小隊として登場し、2D6名の兵士はすでに排除されており、射撃ダメージは存在しない。

 プレイヤーたちがゾンビの第一波を撃退すると、GMは戦闘ラウンドごとに2D6を振り、そこから経過した戦闘ターン数を引く。修正したロールが0以下になると、プレイヤーたちは降下船のジェロッド博士から降下船が「モンスター」に襲われているとの必死な救援要請を受ける。このメッセージは背後の銃撃戦の音で途切れる。



現地の状況 Local Conditions

 通常、この地域の地形はさほど険しくなく、なだらかな丘と散らばった森がある。空気は通常より薄いが、天候は穏やかで視界は良い。しかしながら、パーティーの到着した時点で、ワード・オブ・ブレイクによる隕石爆撃がこの地域の地形を火葬場に変え、完全に焼き尽くした。従って植物は炭化しているが、まだ残っている可能性がある。



困難 Difficulty

 地形を通ってアバディーン前哨地まで移動するのは、プレイヤーたちが愚かにもゾンビと乱戦にならない限り簡単なことである。だが、ゾンビによって負傷したパーティーメンバーや、適切な生命維持装置なしに大気を吸い込むことを余儀なくされたメンバーは、ネクロモ病に罹患するリスクがある。

 もし、プレイヤーが降下船に引き返すなら、船内に入り込んだゾンビをデッキごとに排除し、コントロールを確保するため少なくともブリッジと機関室を確保する必要がある。ゾンビの「接舷切り込み要員」は焼け落ちた森でプレイヤーが遭遇したのと同じタイプかもしれないが、船内には1〜2団がいるだけである。



結末 Aftermath

 プレイヤーが十分に早く降下船まで戻ったのなら(ゲームマスターが判断する)、ジェロッド博士とネクロモを脱するのに充分な船員を救えるかもしれない。戦闘の後、船医はゾンビの被害者(とゾンビ)の死体を調べて、治療のほとんどに意味のない奇妙な惑星外の伝染病を特定するかもしれない。この病気が開発されたものか、兵器化された惑星外の伝染病の変異体であることは、すぐにも推測出来る。またそれは空気感染するかもしれない。生き残ったキャラクターは大量の予防接種を受け、環境防護なしに外に出ないよう警告される。

 降下船のコントロールを取り戻したら、パーティーは退却を試みるか、タイミングを見てもう一度基地へ行くかを考慮することになる。

 プレイヤーが1時間以内に降下船に戻らなかったら、船は失われ(破壊される可能性すらある)、プレイヤーはネクロモに取り残されることになる。この時点で唯一残された現実的なオプションは、アバディーン前哨地に入って、カペラが別のチームを送ってくれることに望みをかけるのみである。あるいは、この死んだ世界で他の生存者を探すことが出来る。







普段は見かけない何かがそこに… THERE'S SOMETHING YOU DON'T SEE EVERY DAY…



ミッション・ブリーフィング Mission Briefing

 任務は単純な目標襲撃からわずか2時間で悪夢のようなものに成り果てた。

 もしパーティーが降下船を確保していなかったら、状況は本当に最悪である。屋外に放り出され、黒焦げた世界で、何か……が地元民を恐ろしい人肉食らいに変えてしまった。船に戻る希望は失われ、この地区でわかっている唯一のシェルターは最高機密の軍事施設である。稼働している防衛システムがもしかしたら撃ってくるかもしれないし、そうでないかもしれない。おまけに、説得して一緒に行動していなかったら、パーティーはガイドなしになるのだ。

 パーティーが降下船を確保して、離陸しないことを選んだら、最初の任務が完全な形で残っており、もう一度アバディーン前哨地に入らなければならない……徒歩で入らねばならず、あたりには「ゾンビ」がうようよしていることを知っているのにだ。

 いずれにしても、新しい問題が発生する。バーサークしたネクロモ人生存者よりも大きくて底意地の悪い何かがセンサーに引っかかったのだ。焼け野原から音を立ててやってくるのは金属製のミニメック。傷だらけで、血にまみれ……ワード・オブ・ブレイクのロゴをつけている!



抵抗 Opposition

 もしプレイヤーが屋外に徒歩でいるのなら、ワード・オブ・ブレイクのプロトメック1機が突撃してくる。

 プレイヤーが車両かメックの類いにいるのなら(降下船含む)、プロトメック数機が近づいてくる。

 これらボロボロに見えるマシンは、射撃することなくまっすぐ突っ込んでくる。実際、彼らは接近することしか考えてないようだ。これまでにプレイヤーが目撃したり伝え聞いたプロトメックとは違って、これらのマシンはまるでハイテクの類人猿のように四本脚で移動しているように見える。さらに奇妙なことに、外部スピーカーから動物のような唸り声を上げて、君たちに突っ込んでくる。



任務達成条件 Mission Success Conditions

 プロトメックの攻撃に耐え、状況を改善させること。もしプレイヤーが徒歩ならば、ネクロモ人の波と同じ症状を示しているように見える数トンのマシンは、もちろんのこと少しばかり難しい挑戦になるだろう。



 Enemies

 最初の敵は、プロトメックのリストから選択する。プレイヤーが徒歩で屋外にいる場合は1機だけを選ぶ。車両やメックにいるか、降下船に隠れている場合、GMは1D6+2でロールし、その数のプロトメックで攻撃する。

 状況に関係なく、最後のプロトメックが撃墜される前に(あるいは直後に)、プレイヤーたちは別の戦力がやってくるのを探知する。カモフラージュ用のローブに身を包み、ロケット・グレネードランチャーを装備した歩兵の一団である。これらの武器を使ってプロトメックを攻撃し、助けに来たことを示してみせる。

 だが、近くに来ると、プレイヤーはその兵士たちがワード・オブ・ブレイクのブロード・ソードのロゴを付けていることに気づく。彼らのリーダー(背の高い褐色の男)が子鹿のような機械の脚で歩み出る。

 ワード・オブ・ブレイクのマネイドミニ兵士たち(多くてもパーティーメンバーの半数。プレイヤーがメックに乗ってる場合は部隊の半数のメック)は警戒を解かず、「生身」の存在に幾分馬鹿にしたところを見せる。しかし「マスターの手、アデプト・エリカ・ラバンなり」と自己紹介した彼らのリーダーは交渉を求める。ネクロモに足止めされ、幾人かがすでに罹患していることを説明した彼は、この惑星に長くいるほど野生化していくのを確信していると率直に述べて、感染という共通の脅威と戦うため停戦を求める。

 付記: ラバンは、プレイヤーがラバンのチームに脅威を与えておらず、どうにか脱出出来るかもしれないと感じている限り、プレイヤーたちと協力することを望んでいる。もしプレイヤーが降下船を失っていたら、中に別の脱出手段があるかもしれないとして、ラバンは協力してアバディーン前哨地の自動防衛に挑むことを提案するだろう。もしプレイヤーが降下船を持っていたら、彼は脱出と引き換えに部下の引き渡しをするか、任務達成の手伝いすら申し出る。だが、プレイヤーがラバンを(あるいはマネイドミニの生存者チームを)攻撃するならば、ドミニは直ちに反撃に転じる。

 プレイヤーがドミニを攻撃する場合、彼らワード・オブ・ブレイクのサイバー兵士は自爆インプラントを埋め込んでおり、心臓が止まったら作動することを覚えておくのが重要である。これらの爆薬はクラスD対人爆薬と同じダメージを与える。



結末 Aftermath

 しかしながら、プロトメックの危機を解決し、ラバンに対処すると、パーティーの生き残りは新しい通信を受信する。それはアバディーン基地から来ているようだ。発信者の声は奇妙で、どうにか切り貼りしたかのようで、センテンスごとにトーンが変わる。

 「こちら、チャームド・ライフのダンカン・ステパノフ大尉」

 「この基地の防備は固いが、メックの強襲に主眼を置いている」

 「内部で降下船を発見したが……故障しているように見える」

 「部品が見つければ、降下船を使って脱出出来るかもしれない」

 「何か使えるものがこのあたりにあるに違いない……」

 「そこに誰かいないか? 誰か聞いていないか? 我々は足止めされている!」

 これらのメッセージは、実際には、故ダンカン・ステパノフ大尉の傍受された通信からの抜粋である。彼の傭兵部隊チャームド・ライフは、プレイヤーより前に、同じ任務でネクロモへと送り込まれた。基地内にいる者たちは、自分たちの声を使うことを恐れ(あるいは不可能で)、助けを求めるのにステパノフ大尉の声を利用した。

 声は上記のような断片を送信し続ける。そうする理由の大半は、ステパノフがチームメイトを呼び寄せ、助けを呼び、知らない誰かに状況を説明しようとしていることから来ている。録音したものであることから、メッセージが直接プレイヤーのグループに気づくことはなく、対応する適切なメッセージがある場合を除いて質問の大半を無視する。概して、メッセージの返答はキーワードに反応する。例えば「降下船」のような言葉が、施設内に降下船があるというフレーズのトリガーになる。

 これはすべて次のトラックに直接つながる。







入ってこい!(警備に注意!) COME RIGHT IN! (MIND THE GUARDS!)



ミッション・ブリーフィング Mission Briefing

 あなたたちが到着する前に送り込まれたと主張するその声は、アバディーン前哨地の闇の中から呼びかけてくる。言い分は疑わしいかもしれない。ああ、少なくとも先に誰かが送り込まれていたことを平気でマスキロフカが黙っていたのと同じくらいには疑わしいのだ。

 だが、今の状況で本当にこれを無視出来るだろうか?



抵抗 Opposition

 カペラ大連邦国のマークを付けたバトルメック(だが連隊章はない)がパーティーと目的地のあいだに立ちはだかり、プレイヤーが近寄ると近くの丘に設置された砲塔が動くのを戦闘センサーが検出する。

 これらのマシンは呼びかけに反応せず、車両サイズのユニットが1キロメートル以内に入ると、動き始める(だが基地から500メートルの向こうには行きたくないように見える)。カペラのメックが動くと、まるでパイロットが酔っ払っているかあるいはおかしくなったかのように、ガタガタとしていることにプレイヤーは気づくかもしれない。

 だが、もしプレイヤーが徒歩で近づくのなら、これらのマシンはほとんど反応しないように見えるだろう。施設の入り口は強化されており、金庫室のようなドアが入る際の挑戦となるのみである。



任務達成条件 Mission Success Conditions

 メッセージが信じられるものならば、アバディーン前哨地の中にネクロモから脱出出来る手段があるかもしれない。内部にはプレイヤーの最初の任務目標(最高機密のカペラ製データコア)があるので、中に入る理由が複数ある。

 実際のところ、そうすることはパーティーの車両やメックを守ることよりも遙かに好ましいかもしれない――特に降下船が蹂躙されてしまった場合は。中に降下船がなくても、確かにカペラ軍事施設の内部は外の灰に覆われた焼け野原よりは守りやすいだろう。



 Enemies

 プレイヤーが基地に近づくと、無人バトルメックの一団が防衛に並ぶ。どうやら、プレイヤーチームの見過ごしていた受動早期警戒システムが作動したようだ。推奨される無人機は一般的な3050年型マシンでこの本の巻末に掲載されている。リモコン式地雷原や重兵器砲塔など固定防衛と組み合わされた無人機は、あらゆる車両部隊と交戦するが、その一方で徒歩で近づく者は事実上無視する。

 実際、これらのマシンは施設の中から助けを求めているのと同じ知性に指揮されている。それは問題を修正するオペレーターなしで故障してしまった適応型プログラムである。このプロトタイプ人工知能は、数週間前に到着した前の調査チームの名前と録画を使っており、プレイヤーがアバディーン前哨地の中に入ることを望んでいるが、メック、車両、その他の重火器は持ち込んで欲しくないと思っている。従って、自動化された防衛は、通常の徒歩での接近や、マシンからベイルアウトされたパイロット、戦車兵を事実上無視するだろう。

 付記: 説得力があるように見えるかもしれないが、AIには本当の意味で自己認識も自意識も存在していない。助けを呼ぶのにデジタル化された自分の声では正体がわかってしまうと信じて、傭兵指揮官の通信の断片をつなぎあわせているのである。よって、助けを求める通信はどうにも途切れ途切れになり、プレイヤーの質問には応じられなくなっている。これをプレイする際に、GMはプレイヤーの質問に直接返答するのを避けて、用意したフレーズを繰り返すようにするべきである。ダンカン・ステパノフ大尉という決めておいた名前以外を使ってはならない。プレイヤー・キャラクターがINTチェックに成功したら、通信の何かが「おかしい」ことにすぐ気がつき、誰かが通信のためにオーディオトラックをいじっている可能性の高いことがわかる。



結末 Aftermath

 ドアが開くと(あるいは崩落すると)、広大な玄関口でライトがちらつき、通路が奥に続いているのが見える。これはキャラクターをアバディーン前哨地の内部に招くアクセストンネルの入り口である。内部では赤い警告灯も点滅し、基地が何らかの警戒状態にあることを教えてくれる。

 この時点では、プレイヤーが他に進むべき場所はない。もしラバンのドミニ生存者たちとまだ一緒にいるのなら、同盟について考え直すいい機会かもしれない。なぜなら、ラバンと仲間たちがプレイヤーはもう必要ないと判断した場合、基地内部の狭さは彼らに味方するのみだからである。







怪物の腹の中 IN THE BELLY OF THE BEAST



ミッション・ブリーフィング Mission Briefing

 君たちがドアを開けると、アバディーン前哨地は大歓迎しているかのようだったが、玄関口から最初の通路に入ると、内部が食肉処理場と化しているのを目撃することになる。死体が散乱している。白衣に身を包んだものもあれば、CCAFの制服を着ているのもあり、腐敗の段階は様々だ。死者の間にはいくつか小火器(大半は拳銃かニードラー)が転がっている。しかし、死体の大半は非武装で、一部は顔が血まみれになっている。外の伝染病は明白にここまで入り込んでいるのだ。

 すぐに君たちは死因が別にもあることがわかる。支援火器の弾痕と焦げ跡が通路の壁に残り、数人の職員は激しい射撃を受けた痕跡があった。通路を下っていくと三脚に据えられた軽機関銃を見る。ただ置かれているだけで銃口は下を向いているが、モーションセンサーの赤いライトが鈍く光っている。

 館内放送で新しい声――女性的でプロフェッショナルだがかすかなマンダリンのアクセントがある――が突如として標準英語で話し出す。

 「天帝陛下のゲストさん、アバディーン前哨地へようこそ。みなさんの安全のために内部の防衛装置を解除していますが、不正な改ざんに備えていつでも起動できるようになっております。滞在が楽しいものになることを望んでおります。新生!」



装備 Assets

 前のトラックが終了した時点で持っていたものはすべて残されている。加えて、プレイヤーが今聞いた姿の見えない声はプロトタイプの人工知能のものである。求められたら、AIは自己紹介し、非公式の名称「ザ・ブロークン」を使う。

 ザ・ブロークンは我こそカペラの倫理アーキテクチュアの勝利であり、施設内部の防衛を指揮していると説明する……多かれ少なかれ。AIはアバディーンに残された数少ないまだ生きている防衛装置を通して、指令センターの中枢まで案内したいと打ち明ける。そこで、緊急脱出プロトコルに従い「即座の出発のためにドライブを修理する」ための技術支援が求められている。

 ザ・ブロークンはこの取り組みを助ける意思があるかプレイヤーに尋ねる。もし肯定すれば、コンピューターはアバディーン内の曲がりくねった通路をガイドして、大規模な広間に案内する。閉じられた巨大なハッチの下にK-1級降下艇があるのだ。ザ・ブロークンが説明するには、最近セキュリティプロトコルが変更されたのに従い、プライマリコアが基本防衛ネットワークに接続される前にシャトル内の内部カーゴベイに移されたとのことだった。さらに船の自己診断コンピュータとフライトシステムは、ドライブの部品が足りないか損傷しており、発進ベイハッチが閉じていることから離陸できないと報告していることを伝える。AIはプレイヤーにこれらの問題を解決することを求める。そうすれば脱出プロトコルを実行できるのだが、「施設内のどこかにあるフェイルセーフを作動させてしまう」かもしれないとして、コアを改ざんしないように注意する。

 プレイヤーが協力する限り、「すべて上手くいく」とザ・ブロークンは保証する。



戦術分析 Tactical Analysis

 プレイヤーが施設内に入ると、廊下のつながる箇所やいくつかの部屋などに数多の無人対人砲塔があるのを目撃することになる。大半は非アクティブであるが、ひとつかふたつは警告もなしに突如として起動し、パスコードの求めに即答しない限りは射撃を始める(パスコードはたいていマンダリンで発行される。使われている音声は施設のAIのものではない)。

 プレイヤーたちが施設中枢のドロップシャトルにたどり着くと、「ザ・ブロークン」と自称するAIのコアを発見し、脱出プロトコル発動のため「ブロークン」の船のシステムをいくつか修理することを求められる。船には自動航行機能があり、AIにつながっているのを見たプレイヤーたちは、船を修理するか、AIを切断するか、修理を拒否するかもしれない。ただし、後者のふたつの選択肢は、ブロークンが即座に敵に回る。アバディーン前哨地の自爆を含む相当数の対人プロトコルが起動するだろう。



任務達成条件 Mission Success Conditions

 AIのコアを確保すれば、プレイヤーは送り込まれた任務を完了できる。もちろん、ネクロモを脱出して待ち受けている航宙艦にたどり着かなければ、それはすべて無意味である。もし、AIの助けを借りて、これを達成出来れば恐るべき成果であるが、AIを信じるかどうかは別の問題である。結局のところ、AIはプレイヤーを中に誘い込むために、別の誰かになりすましていたのである。



 Enemies

 もしラバンがプレイヤーとともに活動しているのなら、彼と彼のチームはプレイヤーを殺して、アバディーンのAIを我が物にする最短の機会をうかがっている。この裏切りはなさそうにみえるが、プレイヤーのチームのひとりがそれを指摘した瞬間に引き起こされる可能性がある。あるいは、プレイヤーがドロップシャトルのドライブを修理し終えたらそうするかもしれない(ラバンのチームは必要なスキルを持っていない)。

 そして、構内には数多の対人銃座があり、(ブロークンの言い分に反して)すべてがアクティブでプレイヤーと即座に交戦する準備が出来ている(外の無人メックと砲塔についても同じである)。AIが裏切られたと信じた瞬間に、これらの銃座は交戦を開始するだろう。それは、プレイヤーが助けを拒否したとき(もしくは要請に対して単純に「拒否」という単語を使ったとき。AIの基本プログラムは反抗と見なす)、誰かが基地の防衛・AIとの接続を破壊するか改ざんしようとしたとき、ドロップシャトルを修理する前に基地を離れようとしたときなどである。

 技術/電子ロールに大成功すれば、ブロークンを接続から切り離し、脅威を無効化して、コアを確保するという当初の任務を達成出来るが、そうすると基地全体が自爆シークエンスに入り、プレイヤーたちは対処せねばならない。

 最後に、ゾンビ化した基地のスタッフ、衛兵が施設中の閉じた部屋に潜み、プレイヤーたちが道を間違えるのを待ち構えているかもしれない。同じく、プレイヤーが到着したときに正面ドアを開けておいたままにしたら、さらなるゾンビたちが新鮮な獲物を求めて外部の防衛をくぐり抜けてくるかもしれない。



結末 Aftermath

 作り手によって「ザ・ブロークン」と名付けられた人工知能は、ドロップシャトル内に鎮座し、つかまる可能性がある場合は宇宙へと打ち上げられるようになっている。宇宙に出ると、マスキロフカだけが知る周波数で定期的にスクランブル化された救援信号を発する。アバディーン前哨地は打ち上げが実施されると、フェイルセーフシステムが作動する……施設の基礎に組み込まれた自爆用爆薬に点火するのだ。自爆シークエンスはブロークンのドロップシャトルが打ち上げられるか、破壊されたと基地のセンサーが記録した瞬間に実行される。

 プレイヤーがブロークンのドロップシャトルの修理を成し遂げたなら、AIは「自分」の声(プロジェクト部長ヨハンセンのもの)で「国家への奉仕」に感謝し、打ち上げシークエンスに入ったことを伝えて下船を促す。点火の前に船から下りて施設から出るまでには3分以下しかない。まだ発進ベイのドアが閉じている場合、ドロップシャトルは打ち上げを中止するが、エンジンから瞬間的に炎を吹き出す。ベイのドアが閉まっているということは加熱したエンジンの排気を封じ込めるシールドが下りていることもまた意味する……生じた炎の波は船の発進チャンバーにつながるすべての通路を舐めていき、基地の自爆シークエンスのトリガーになるかもしれない。

 もし、プレイヤーがドロップシャトル内にとどまり、ベイドアが開いているのなら、一緒に宇宙へと打ち上げられるのだが、船はAIだけを守るように設定されているので、船の生命維持システムが起動することはなく、酸素供給と温度は急速にゼロへと向かい、人間を窒息するに任せる。適切な技術スキルを持ったプレイヤーはこれを無効化して、生命維持装置を起動し、星系内の大連邦国所属航宙艦に合流を呼びかける理論的可能性があるものの、(GMの裁量により)航宙艦がマスキロフカの正規のコードを持っておらず、ブロークンは友軍と考えないかもしれない。ザ・ブロークンは不正規な呼びかけを無視して、恒星間のどこかに設定された合流ポイントへの航行を行う――この旅は数年かそれ以上がかかる。

 創造的な奇跡によって、プレイヤーたちがブロークンの打ち上げと基地の崩壊から生き残ったのなら、彼らはネクロモに取り残されるか、宇宙を漂って、助けを待つことになる。どちらのケースでもGMは最終的に救出されるか、死して残されることを考えねばならない。







デブリーフィング DEBRIEFING

 ネクロモとの通信が断絶したことから、そこで何が起きたのか知る唯一の方法は、上陸、調査、脱出したチームが見たものを語ることだけであった。もちろん、この冒険が進むにつれ、我らが勇敢なる英雄たちの成功確率は低くなっていくが、誰かがやり遂げるチャンスは常にある。

 そうなるまで、マスキロフカは小規模なチームを送り続ける。大きなチームを送ることは、惑星にとてもとても重要なものがあることを国家の敵に伝えてしまうことを知っているのである。すでに見てきたように、プレイヤーたちは最初に送り込まれたチームではなく、失敗したのなら最後にもならない。彼らを輸送した国家保有の航宙艦は、もし地上チームから連絡が途絶えたら、ドライブへの充電が完了し次第、戻って報告するように指示されている。プレイヤーには惑星上で1週間程度活動する時間が与えられており、次のチームは一ヶ月かそこらでネクロモに展開出来るだろうことを意味している。

 最終的な分析では、このアドベンチャーが終わるであろう3つの道がある。任務中断(調査することなく失敗)、打ち上げ失敗(ネクロモに取り残される)、任務成功(本当に? やつらはインチキしたに違いない)。これらの結末について以下に記す。



中止! 中止! Abort! Abort!

 グループがアバディーン前哨地に入るという目標を達成することなく逃げた場合、カペラ政府は非常に不快な思いをする。目撃した恐怖を語ることで深刻な報復から逃れられるかもしれないが、マスキロフカは彼らが任務を放棄して、カペラの機密技術を後に残し、敵組織が回収する可能性があるという事実を見逃したりはしない。

 少なくともマスクは契約を解除して、プレイヤーたちを追い払い、裏切りの可能性ありとして監視し続ける。あるいは戻って仕事を終えるよう要求するかもしれない。

 最悪の場合、失敗したチームは逮捕され、国家への反逆者として処刑される可能性がある。



打ち上げ失敗 Failure to Launch

 何らかの理由でネクロモからの脱出した場合、このグループが生き残れるチャンスは日を追うごとに急降下していく。小惑星攻撃と疫病で荒廃したネクロモでは、人が生きていくことは出来ず、プレイヤーたちの物資が尽きるのは時間の問題である。さらに悪いことに、ネクロモ病は基本的に空気感染することから、プレイヤーが感染して、「ゾンビ化」し、殺し合いでチーム全滅するのはほぼ確実である。

 狡猾なプレイヤーはシェルターを探すか作るかして生存時間を長く出来るかもしれないが、食料等の減少によって意味がなくなる。もしキャラクターたちがこのシナリオで倒れた場合、送り込んだ大連邦国に運命を伝える手段はない。ゲームマスターは新しいパーティーでアドベンチャーを再開し、前任者の痕跡に遭遇しさえすることも可能である。

 あるいは、寛大なゲームマスターは、カペラ政府が送り込んだ次のチームが到着するまで、プレイヤーたちを生かしておくかもしれない。この場合、プレイヤーたちは地元の生存者の役割に成り下がり、新参者たちの救援が来るまでゾンビ化した民衆を食い止めることになる。



大成功! Huge Success!

 我らがヒーローたちが、ゾンビ、マネイドミニのプロトメック、無人メックに遭遇してやり過ごしたのみならず、打ち勝って、どうにか惑星を脱出するというまずあり得ない出来事が起きた場合、語るべき話がたくさんあるだろう――そしてマスキロフカは間違いなくそのすべてを聞きたがる。

 調査のあとで惑星の脱出に成功したプレイヤーたちは、求められたデータコアを持っているかもしれないし持っていないかもしれない。コアなしで成功するためには、コアの状況を説明する必要がある。破壊されたのか、残されたのか、敵組織に奪われたのか、なんなのか?(プレイヤーたちがだましていないか確認するため、マスクはデブリーフィングの最中に降下船と私物を捜索する。証言に反して国家の秘密が発見された場合、悲劇がチームに振り返る)。またプレイヤーたちは災害がどういうものか特定し、惑星の状況と今後の邪魔になるかもしれない驚異について詳しい情報を提供せねばならない。プレイヤーがマスクに対して誠実で充分な情報を提供したら、大連邦国は後金を支払って生かしておきさえするかもしれない――もちろんネクロモで見たことを誰にも話すなとのお決まりの警告と共に。

 もしプレイヤーがコアとすべてと共に脱出したのなら、大喜びの大連邦国は感謝を示し、支払いを行い、上記と同じ警告をした後で解放するだろう。近い将来に新しい任務で他の面倒な地域に送りさえするかもしれない。いまや彼らは極めて危険な非通常の環境下で能力を実証したのみならず、勝利をもぎ取るくらいにすさまじく優秀であることが判明したのである。この場合、しかしながら、プレイヤーたちはすぐにも成功を呪うことになるかもしれない……なぜならこの後に任されるのは自殺任務と変わらないものだからだ。

 いずれにしても、チームは大連邦国が安心出来る水準を超えて知りすぎてしまった。傭兵が作戦を成功させて戻ってくるたびに処刑するのは悪い習慣であり、よってマスキロフカは最初はそうしそうにないが、プレイヤーたちは任務の後で数ヶ月か数年監視されていたことに気づくことになる。そして、人工知能の画期的な研究が表沙汰になると大連邦国が恐れを抱いた暁には、他の傭兵団、賞金稼ぎ、暗殺者たちが解き放たれるという可能性は否定出来ないのだ。



その他の結果 Other Outcomes

 ネクロモに残されたワード・オブ・ブレイクの生存者たちもまた上官に報告するために脱出の機会をうかがっている。互いに戦わなかった場合、プレイヤーの助けを借りてそれを達成するかもしれない。プレイヤーたちとドミニが実際にそれを成し遂げたのなら、ラバンは珍しくも誠実な男であることを証明し、プレイヤーたちに逃げることを許して大連邦国に見たものを伝えることが出来るかもしれない。これは未来のアドベンチャーに興味深い新機軸を生み出すだろう。プレイヤーは全中心領域の敵と協力した。それに気づいた者たちは彼らに深い疑いの目を向けるだろう。真実を知った者たちは、チームをワードと戦う新任務に送り出すか、ネクロモで何が起きたのか聞き出そうとするかもしれない。後者の場合、偏執病のマスキロフカがプレイヤーを黙らせるために猟犬を放ち、国家の秘密を守ることになりそうである。

 もうひとつの可能性は、プレイヤーたちがブロークンの操縦する逃走用ドロップシャトルに閉じ込められるというものである。この結末は多くの点でネクロモからの脱出失敗と同じくらいに悲惨なものである。なぜなら、この船は航宙艦に向かう必要がなく、「スローボート」になりあらかじめプログラムされた目標地点に向けて恒星間宇宙を渡るのを目指すからである。AIが行方不明になり航行中であることに気づかぬ大連邦国はすぐに探すことはなく、プレイヤーたちは自動パイロットの船に閉じ込められる――船は酸素も食料も必要とせず、従ってどちらも積んでいないかもしれない。これは、数十年か数世紀後、狂ったコンピュータプログラムが動かす船の中で、プレイヤーの死体が発見されるかもしれないことを意味している。

 また一つの可能性は、アドベンチャー後にプレイヤーたちがワード・オブ・ブレイクかカペラ当局に拘束され、どこかのキャンプに放りこまれるというものである。繰り返しになるが、この結果はブレイクと協力したか、あるいは任務に成功しても大連邦国が二心を疑う何かをしてしまった結果である。「刑務所脱走」アドベンチャーが次の一章になる可能性が高そうだ。

 次が本物のワイルドカードである。エボン・マジェストレートだ。度を超えて秘密主義(同盟相手の大連邦国にさえも)である、このカノープス統一政体情報省のエリート部門は、聖戦の直前まで完全に秘密を保っていた。カノープス宙域を越えたどこかにあるであろう未知の施設、そして隠された目標と手法(マスキロフカにさえ謎のまま)を持つエボン・マジェストレートは、サイバー強化された独自の工作員を使うことで知られる、驚くべきほどに万能で、資金豊富な組織である。任務の後で彼らはプレイヤーたちに興味を持ち、ワード・オブ・ブレイクの活動、技術、研究に関する情報収集活動を拡大するかもしれない――あるいは味方のカペラに対するものを。このアングルはプレイヤーを中心領域の外縁部に連れ出したり、対立する超エリート情報機関同士のまったく新しいレベルの陰謀を探る冒険の舞台を設定することになる。

 ネクロモでは、プレイヤーはたくさんの恐るべき超兵器が悪夢のようなシナリオと組み合わされるのを目撃する。このうちひとつが、未来のシナリオで焦点になるかもしれない。もし、誰かが感染力の強いネクロモ病について知り、どこかで感染を広げようとしたら? もし、ワードがストックを持っており、ばらまくのを待っていたとしたら? もし、プレイヤーたちがキャリアだったり、あるいはもう安全と考えたあとでなぜか病気にかかったとしたら? もし、AIが他のシステムに自分をコピーするよう設計されていたとしたら? ブレイク派のプロトメックに関してはどうか? それは最初のプロトメックだったのか、それとも技術的な行き止まりで発展の余地がないのか?







ゲームマスターズ・ソースブック GAMEMASTER'S SOURCEBOOK



ネクロモ病 THE NECROMIC PLAGUE

 このワード・オブ・ブレイクの試験的生物兵器はネクロモの大気に適応するよう迅速に改造され、空気感染で惑星の住民を罹患させ、地下水を汚染する(従って生き残った食物連鎖は感染する)ように作られた。弱毒化した海綿状脳症である(牛がかかるこの病気はかつて「狂牛病」の名で知られていた)。

 今回、ワードの科学者たちはどうやら計算か拡散戦略を間違えたようで、不注意にも自軍の兵士と生き残ったネクロモ住人に感染させてしまい、分散した兵士たちへの感染拡大を防ごうとしたが限られた成功を収めたのみであった。



ゾンビ化 ZOMBIFICATION

 キャラクターがネクロモ病で発作を起こすまでに至ったら、担当プレイヤーはキャラクターシートをGMに渡さねばならない。それはキャラクターが「ゾンビ化」したからだ。もちろんのこと、伝説に出てくるゾンビとは違って、感染者は動く死体ではないのだが、病気からくる狂気に犯され(過剰な代謝)、残った高次脳機能は飽くなき血の渇望に支配される。これによって引き起こされる脳への大きな損傷は、罹患した犠牲者が症状を治せたとしても、永久的な緊張病か昏睡状態に陥らせる。

 ゾンビ化したキャラクターは、発作を起こしたあと、動かしたり、起こそうとしたりなど、何らかの形で介入しない限り、起き上がることはない。うるさい音や近くの振動で目を覚ますこともあるだろう。これが意味するところは、ゾンビ化したキャラクターを悲劇から救う最高の方法は、発作で崩れ落ちた際、行動に移ることである。もちろん最初に誰かがゾンビ化の犠牲になった時はこのことを知らないはずで、一見して「死んでいる」死体が通りかかった誰かに飛びつくという形で状況を説明することになるかもしれない。

 ゾンビ化したキャラクターは高次脳機能をすべて失い、INT、WILは3にまで下がるが、BOD、STR、RFLを元の倍にする。肉と血を求め、原始レベルで活動するゾンビ化キャラクターは、事実上野生生物となり、戦闘中のすべての行動をクリーチャーとして扱う。



ゾンビと技術 Zombies and Technology

 「ゾンビ化」によって野生化したキャラクターは、たいていの場合、技術的な道具を操る能力を失う。キャラクターは近接武器を振るったり、ドアを破ったり、ものを投げることは出来るだろうが、射程武器(小火器含む)をどんな精度でも扱うことは出来ない。車両の操縦は、一般に必要とされる複雑な高次脳機能が病気で失われていることから、まったく不可能である。

 少なくともほとんどの被害者には。

 キャラクターたちがネクロモに進出した時点で、この病気は蔓延していたが、罹患した多数の被害者と犠牲者の中には一定数のマネイドミニ工作員がいた。これにより、プレイヤーが遭遇するかもしれないさらなる脅威がふたつ生まれた。感染したマネイドミニ歩兵とプロトメックである。

 感染したマネイドミニ兵士: サイバーで強化されたドミニ歩兵(その多くが人工義肢を装着し、接近戦武器・強化センサーで武装している)は、攻撃と追跡にこれらを使用する。増強された腕力、速度、感覚を野性的な性質と組み合わせたゾンビたちは、真に恐るべき殺人マシンとなる。さらに悪いことに、バイタルがフラットになったときに起爆する自殺爆薬がまだ生きており、感染した兵士たちは全力で手近な犠牲者たちに近づこうとする歩く爆弾に成り果てている。

 感染したドミニ歩兵は各タイプの非装甲歩兵だけでなく、野生化したときにスーツを着ていた一部バトルアーマー兵も含まれている。プレイヤーが到着するまでに、大半は飢え死にするか、自爆するか、ダメージとバッテリ切れでシャットダウンするかしてたが、少数があらゆる困難を乗り越えて生き延び、廃墟に潜んで近づいてきた獲物に飛びかかる力を残しているかもしれない。非装甲の同胞と同じように、バトルアーマー兵士たちは接近戦のみを行い、バトルスーツの中では満たすことの出来ない血の渇望と絶望的な飢餓に突き動かされる。

 感染したマネイドミニ・プロトメック: ネクロモを攻撃したワード・オブ・ブレイク攻撃部隊には、少数の実験的ハイブリッドプロトメックが含まれていた。鹵獲した氏族シャーシを使っているのだが、ワードのVDNI技術を通して手足のない特殊なドミニ兵士が操縦し、生命維持装置による栄養素の静脈注射とリサイクルされた生体物質(多くを考えないのが賢明である)で長期間生存する。これによってワードはまたひとつの効果的な――怪物的であっても――人と機械の融合を生み出し、ネクロモの作戦を試験に選んだ。どうしたわけか、ドミニ歩兵に蔓延しているのと同じ脳症に罹患してしまったプロトメックの戦士たちは、プレイヤーたちとの遭遇時には、血への渇望で正気を失っている。

 生命維持装置がまだ彼らを支えているのだが、本当に飢えを満たすことは出来ない。なぜなら、その巨大な金属の「身体」は、何かを消費する手段を持ち合わせていないからだ。プロトメックに接続された直結式神経インタフェースの性質上、プロトメックの行動や動作はパイロットの影響を受け、多くが(人型なのに)四本足で歩き、外部スピーカーで支離滅裂に唸り声を上げ、通りかかった暖かい肉を捕まえ、殺し、「食べる」――たいていは血みどろの結末に至る――ところにまで退化してしまっている。繰り返しになるが感染した戦士たちは、搭載された兵器や照準システムを効果的に用いるのに必要な高次機能を失ってしまっているので、事実上、すべての感染ドミニプロトメックは接近戦だけを行う。




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