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作成:2004/01/01
更新:2005/07/30

マリア帝国 - Marian Hegemony



 「メックウォリアーRPG」に記述のある蛮王マリウス・オレイリィの小帝国です。他のサプリメントによると、ヨハン・セバスチャン・オレイリィが発見したゲルマニウムは50億コムスタービル(2兆5000億円)相当だったとか。この鉱物資源は、航宙艦の駆動装置を生産するのに必須です。旧星間連盟はゲルマニウム本位制を採用していました。
 classicbattletech.comより。




機密度:コピー不可
発:XII-Rho アンブロス・ケリー司教
宛:VIII-Mu ジャスティン・ブラックフォード司教

ジャスティンへ

 あなたが求めていたレポートを送ります。マリア帝国に関するものとしては、これまでで最高のものでしょう。あなたもご存じのように、私は何年も前に帝国から来ましたが、いまだ内部の政治、軍事組織内にいる老教授たちと話すのは幸福どころではありません。帝国内で費やした時間は割に合いませんでした。このレポートは完璧で客観的なものですが、結局、私が特別にショーンと会って嬉しくなかったといえば、ひどい嘘になるでしょう。

 私がただひとつだけ畏れていることは、ショーンが私をあまりに早く追放したことです――若いユリウスの訓練を完全に終えることができませんでした。彼が帝国を真の力に変えることは疑いませんが、きたるべき嵐のなかで生き残れる力を持っているかはわかりません。少なくとも彼は有能な役者です。何年も前から帝国中の友人や支援者との交際を深めました。このふたつの要素が、彼を政治家、独裁者に変えるのを助けました。しかしながら、数年後、生き残った帝国を再建するなかで、私が彼といた時間が短すぎたかどうかは今のところ不明です。



ノヴァ・ローマ NOVA ROMA

 マリア帝国は、崩壊した貿易会社が蛮王国にかわり、正統な辺境国家にかわった存在である。帝国の起源は、継承権戦争で被害を被った辺境の企業、アルファード貿易社(ATC)が終焉を迎えたところにある。ヨハン・セバスチャン・オレイリィは、大いなる魅力と素晴らしい幸運を持った辺境の出身者だった。星間連盟の貯蔵庫(消滅した会社によって残されたと噂されていたもの)を探していた彼は、その代わりに信じられないような富をもたらすゲルマニウムの埋蔵物を見つけだしたのである。

 彼の途方もない夢を上回るほど裕福になると、辺境での生活の現実が彼を襲った。この信じられない発見物を守る必要性に気づいた彼は、すぐに小規模な傭兵数部隊を雇って、植民地――交易地点になるだけではなく、襲撃者から真の宝を隠す赤いニシン(目くらまし、おとり)になるもの――を建設した。彼は新たな植民地をガイウス・マリウス(古代ローマの執政官に7度なった)にちなんで名付け、中心領域からの戦争難民を受け入れた――彼らは度重なる戦争から逃れ、新たな人生を探していた。自身を多少なりとも歴史の徒と考えていたヨハンは新たな社会を古きローマ共和国になぞらえて組織した。自らが最高司令官(Imperator、皇帝)となり、三段階の社会階級――貴族(上流)、市民(中流、下流)、奴隷が社会を支援する。

 財政でさえ、帝国は小さすぎた。質量ともに防衛隊をひきつけらなかった帝国は、また国を破壊できるような敵の注意も引く必要がなかった。従って、帝国は一世紀以上、蛮王国と大差のないものであった。

 帝国はゲルマニウムの鉱脈を蓄え、成長する経済を円滑に動かすために、近隣の世界と交易路を襲った。第四次継承権戦争と、自由世界同盟内戦、カノープス=アンドゥリエン戦争(カペラ大連邦国に対するもの)の際に、特に襲撃を成功させたあとで、マリウス・オレイリィ最高司令官は市民生活の向上に資金を提供し始めた。彼はまた"Collegium Bellorum Imperium"――帝国士官学校――を創設し、これまで帝国装甲軍が持ち得てこなかったプロフェッショナリズムを育成した。アストロカジー(マリウス暗殺を企てた)の世界を奪い取るという無分別な試みに加えて、マリウスは現実にちょっとした尊敬を帝国と市民にもたらした。

 氏族による中心領域侵攻前の数年もまた、マリウスの息子ショーンの旗振りによって、植民化の努力のなかマリア帝国が拡大する平和の時代となった。ショーンは自身の立場を利用して植民化に資金を振り分け、またギャンブルと同じく多くの情婦を支援するためにも資金を使った。父親が次代の最高司令官として、ショーンの代わりにショーンの6歳の息子ユリウスを指名するのではないかとショーンが確信するに連れて、こういった活動が明らかになり、マリウスは凋落することになった。マリウス・オレイリィは3048年にマリア帝国の植民地世界ヘルクラネウムで、登山中の事故で死んだことに公式にはなっている。ショーンが父の死に関わってるとの強い憶測が飛び交うなか、彼はアルファードに帰還し、ヘルクラネウムを〈マリウスの涙〉と改名し、父のために10日間を喪の期間と定めた。

 その期間が終わると、ショーンは帝国の手綱を握り、自身を皇帝(Caesar)と呼んだ。宣言のなかで、皇帝は帝国の政府を古ローマ帝国の構造とほぼ同じものに再建を進め、「マリア帝国の市民を真の運命に導く」とした。マリウスによる社会の改革で続けられたものもあったが、皇帝は貴族と市民の区分をより明確にするような抑圧的な政策を実行に移した。「我らがローマの祖先の美徳を採用する」とのことである。彼は軍備を1個軍団(Legione)から3個にまで増強した。また軍部内での支持を固め、マリア帝国民の支配権を増すことにエネルギーを注ぎこんだ。ますます独裁の性質を強めていくショーンに抗議した者は、富や力をちらつかされて沈黙したのだった。

 帝国を掌握したショーンは、次に、征服への道を歩み始める。3054年、ロシア連盟への大規模な強襲を前に、私掠部隊と小規模な応援部隊が、ロシア連盟の力を弱めるための襲撃を繰り返した。連盟の征服には、1年あまりを要したが、最終的には帝国がロシア連盟軍を撃破し、統治者のローガン家は潜伏せざるを得なくなったのである。皇帝ショーンは、秩序を回復し、統治を助けるために、第2軍団を配置した。ロシア連盟の人々は帝国の占領に対する強い抵抗を見せており、また皇帝の残忍な刑罰は人々を怒らせるだけで、抵抗は永遠に続くこととなった。



帝国建設 Empire Building

 3058年は、マリア帝国の新たなスタートと、同時にショーン・オレイリィの終わりの始まりとなった。年の後半に、ワード・オブ・ブレイクがやってきてコムスターに取って代わろうとした。ワード・オブ・ブレイクは皇帝が断れないような条件を出してきた。つまり征服の夢を叶えるためのメック、ハイテク兵器、支援である。皇帝はすぐ大規模な徴兵を始め、軍を5個バトルメック軍団にまで拡張した。数年で皇帝は影響力と権力を強め、最終的に3061年の中ごろコムスターを追い出し、公式にワード・オブ・ブレイクと帝国内での通信管理契約を結んだ。

 3057年のなかごろ、アストロカジーの世界――父親が敗北した――でマリア帝国の征服の新ラウンドが始まった。ワード・オブ・ブレイクの「6月6日運動」の助けを借りて、ショーンは惑星上の各都市国家の内輪もめを利用した。カノープスが後ろ盾になっている傭兵部隊アヴァンティ・エンジェルスが折良く介入して、皇帝の手に世界が落ちるのは妨げられた。アルファードへの帰還に際して、ショーンは国がロシア連盟の反乱活動で燃え上がっているのを見た。軍備を拡張していたので、第3軍団を反乱鎮圧の援護に送り込むことはできた。しかしながら、第3軍団をロシア連盟の世界に配置したあとですぐ、ショーン・オレイリィは息子に関する新たな問題に直面した。

 優等で帝国士官学校を卒業したユリウスは、第1マリア軍団の小隊(century)を指揮することとなった。ユリウスはすぐに多くの者と親交を結び、政治的な同盟を作り上げた。それは第1軍団の内部のみならず、元老院の議員やショーンの官僚たちにも及ぶものであった。皇帝の抑圧に反対しているグループがユリウスに惹きつけられ始めた。皇帝ショーンは、息子をいまの地位から取り除くことで自身の身の安全を図った――ユリウスをローディナックスの第2マリア軍団に追いやったのである。皇帝は致命的な誤りをおかしたのだった。軍団の第2大隊司令官に昇進させても、異動の理由を偽ることはできず、のちに起こることの土台となった。

 マリア帝国の王位継承者が、3060年の6月、ローディナックスに到着した。到着に際して、ユリウスは、部隊が度重なるロシア反乱軍の攻撃により疲弊していることに気がついた。ユリウスの部隊は、対マリア反乱軍の隠れ家になっていると疑われた居留地数カ所に、懲罰的な襲撃を仕掛けるべく送り込まれた。ショーンはこの戦役で息子が成長し、また事態から離れるのを望んでいた。そのかわり、ユリウスはマリア帝国による連盟占領を疑問に持ち始めるようになり、父親と衝突することになるのである。



武力による平和 Peace Through Superior Firepower

 何年も前に父が行ったのと同じように、ユリウスは第2軍団内で密かに権力基盤を固め始めた。このときひとつの非常に単純な約束をしていた。ロシア問題の解決である。連盟占領以降、軍団内の士気は常に低い状態に保たれていた。急速に統一されつつある抵抗運動に対処するため、マリアの中核世界から常に新兵が加わってきたにもかかわらずこのような状況だった。一方で、皇帝が厳しく頻繁な報復を命じたために、連盟市民の被害者は着実に増加しつつあった。

 ロシア抵抗運動のリーダーを追いつめ捕らえたあとで、ユリウスは席に着き彼女と交渉を行った。処刑せよとの命令には従わなかった。エレナ(連盟の前指導者デイム・ローレライ・ローガンの娘であると主張する人物)は、帝国の兵士が続々と投入され、市民の犠牲者が増えるなか、光明を見た。市民への報復の停止、帝国政府での発言権、ユリウスの個人的なアドバイザーになるのと引き替えに、エレナ・ローガンはマリア帝国に対する反乱、攻撃をやめると約束した。ローディナックスに到着してから一年以内に、ユリウスは前ロシア連盟を軟化させ、次の行動の準備に移ったのである。3063年の1月、ユリウス・オレイリィは第2マリア軍団と最近到着した第4軍団、第1軍団第1大隊、第3大隊を率いて、ローディナックスを離れた。補助部隊と第2マリア軍団第2大隊だけが守備に残された。ユリウスは連盟にほとんど感心を払っておらず、エレナ・ローガンが約束を裏切ったら、単にローディナックスに戻り、すべての建物をなぎ倒しただろう。ロシア問題を脇においたまま、ユリウスは最終的に注意を父親に向けた。だが、帝国はすべて自分のものだと主張するには、真の勝利者としてアルファードに戻らなければならなかったのである。

 中心領域の基準で見ても大規模な機動部隊を押し立てて、ユリウスはイリュリア伯爵領にまっすぐ向かった。伯爵領の占領には六ヶ月を要した。伯爵領ではアームズ・オブ・トールと傭兵中隊のキャヴァノー機兵隊が守備していただけだった。予想していたより簡単に、少ない犠牲で作戦を終えたのだった。マリア軍は当初、敵軍の闘志と激しい防衛に食い止められた。しかしながらいくらか重大な損失を受けたあとで、軍団は予期せぬ幸運を得た。キャヴァノー機兵隊が、ユリウスの申し出(身代金とマリア帝国装甲軍内での地位と引き替えに戦闘をやめるというもの)を受けたのだ。直後に帝国軍は、トラスジクスとイリュリア・ヘッドを強襲し、歩兵と他の補助軍団を使ってアームズ・オブ・トールを基地の外に釘付けにした。アームズ・オブ・トールは有効なバトルメック戦力を基地から持ち出せなかった。死者は比較的少数で、大量の回収を行った帝国軍団はイリュリアの戦場を離れた。

 伯爵領を手にし、地元の実力者(と第3軍団分隊、完全1個補助軍団)を新領土統治のために残したユリウスは、最後のターゲットに向き直った。皇帝ショーン・オレイリィである。



成果公表 Crowing Achievement

 ユリウスは第2、第3軍団、完全1個補助軍団を先頭に、3063年の下旬、アルファードに到着した。ノヴァ・ローマ市民が拍手喝采するなか、首都の通りに軍団を導いたユリウスは、第2軍団と補助軍団とともに王宮へと向かった。そのあいだ第3軍団は都市の他の部分を守った。

 宮廷の前で元老院議員に迎えられたユリウスと政治家のグループは、議員たちを退職させ、第2軍団の兵士を随行員に選んだ。そのあいだ軍団の残りは、宮廷のまわりを取り囲んだ。宮廷内で、元老員がユリウスにコロナ・グラミネア(草の冠)を授ける念入りな儀式が帝国中に放映された。皇帝の姿はどこにも見えなかった。

 儀式が完全に終わったあと、ユリウスは最後に全市民への演説をぶった。何年も前から計画していたスピーチであった。父の在任中に行われた無数の犯罪(ロシア世界での信じられない出血と、国庫からの資金横領が含まれていた)を引用して、ユリウスはショーンがもう帝国の統治者にふさわしくないと宣言し、自身が国家の指導者であると主張した。集まった元老院議員たちは口々に宣言を肯定した。

 宮廷内で護られ、自身の第1軍団に囲まれていたショーンは、息子は帝国の反逆者になってしまったと返答した。彼は第1軍団に対し、いかなる犠牲を払っても反乱を鎮圧するよう命令した。第1軍団のうち半数以下がショーンの命令を受け入れ、第2軍団に取り囲まれていた彼らは宮廷の外に出るやいなや撃墜された。

 ユリウスは元老院議員と半世紀来の忠実なボディーガードを伴って、謁見の間に進んだ。彼は父に犯罪の証拠を突きつけ、退位するチャンスを与えた。かわりに、皇帝はユリウスに飛びかかった。それは息子に与えた最後のテストのようであった――そしてユリウスはパスしたのである。ユリウスの剣に貫かれたショーンは、3063年8月8日の午後に死んだ。

 翌日、元老院はユリウス・オレイリィをマリア帝国の新たな皇帝として就任させた。その際、ユリウスは軍、社会の刷新を始めた。公式にロシア帝国とイリュリア伯爵領が帝国領に統合されたと宣言し、両国は元老院内での投票権を与えられた。さらに、内政問題のアドバイザーとしてエレナ・ローガンを迎えたあとで、彼女にローディナックスとロザリオを進呈した。両国家の全居住者に、マリア市民権が与えられ、3年の徴兵免除が与えられた。

 ローマ史の熱心な研究者であるユリウスは、マリア社会をさらに「ローマ」化する変更を行った。市民に政府内での発言権を与えるため市民護民官の制度を作った(いまだ市民護民官を選ぶ投票権しか許されていなかったのだが)。



リージョネス・マリアネス Legiones Marianes

 烏合の衆的な傭兵団として不運なスタートを切って以来、マリア帝国装甲軍は大きさと能力を拡大させてきた。今世紀のはじめには、最高司令官マリアの再建によってプロフェッショナリズムを持つに至っていた。しかしながらロシア連盟とイリュリア伯爵領の双方に渡る帝国の拡大で、軍団は自分たちが優れており、また帝国全土を守れないことに気づくかもしれない――特に帝国の富を狙って植民化しようとしたり、内部闘争を利用するコンパス座連邦のような王国に対してはそうだ。



皇帝の軍隊 Caesar's Arms

 リージョネス・マリアネス――マリア帝国装甲軍、もしくは単純にマリア軍団――は主に帝国の防衛に責任を負う。もっとも皇帝は帝国宙域外での行動をよく命じていたのであるが。帝国の兵力は現在、7個バトルメック装備軍団と、その3倍の戦列補助軍団である。その大部分は一世紀以上、同じ構成を維持している。帝国の権力を握った皇帝ユリウスは、ちょっとした、しかし重要な改革を始めた。それは野戦指揮官たちに信用を寄せるものでもある。

 リージョネス・マリアネスでもっとも基礎的な部隊は小隊(century)である。5機のメックか戦車、それか100名の歩兵からなる(歩兵は10名ずつの分隊か"contubernia"に分かれる)。2個小隊が中隊(maniple)を形成し、3個中隊が大隊(cohort)を作り、3個大隊に戦闘・支援部隊が付随して、1個軍団を形成する。

 ロシア連盟の征服後、皇帝は軍団と大隊にラテン語の名称と称号を与えた。それぞれの主な機能とだいたいの実質的戦力を反映させたものである(皇帝親衛隊は例外)。カタフラクティはすべてが重量級−強襲級部隊からなり、惑星強襲に使われる。コミタテンシス部隊(コミタティ)は、高速(主に中軽量級)で、即応軍か、大規模な妨害作戦か、他部隊の即時増強に使われる。リパリエンシス部隊(リパリー)は、本拠地から離れた国境線上に配属される。帝国の中核星系から遠い位置を占める守備隊で、中重量級で構成される。リミタネイもまた守備隊であり、中重量級の分隊で作られる。その人材は帝国の辺境世界から集められる。補助隊は軍団それぞれにつく通常隊である。アラ(航空大隊)は帝国の航空部隊である。


バトルメック隊 BattleMech Forces

 軍団を武装する時期が来た際、バトルメックが帝国の武器に選ばれた。帝国はまだいかなるバトルメック工場をも持っていないが、数年でメック部隊を立派に整えることができた。帝国の初期に、大量のゲルマニウムを売却したことで、継承国家の稼働している工業設備にアクセスできたのである。しかしながら供給がゆっくり減少し始め、海賊行為が帝国の主産業になると、継承国家はもはや帝国にいかなるアクセスをも許さなくなった。そのときまでに、帝国の襲撃作戦は損失を補い始めたのだった。

 今日、仲買の役割を果たすワード・オブ・ブレイクによって、帝国は中心領域国家のような先進技術にアクセスしている(それらは高価なのだが)。結果、中心領域の新型メック数機を配備している一方で、軍団の大多数をアップグレードする余裕ができるまで、いまだ古い型のメックに依存して、軍の屋台骨を支えねばならない。


航空隊 Aerospace Forces

 もし帝国軍に欠けてるものがあるとすれば、それは航空部隊である。今世紀の前半に、皇帝マリウスとショーンは主にバトルメック隊増強に集中した。多くの場合、必要な補助部隊を無視したことで、航空部隊はほとんど軍団の信頼を勝ち得なかった。軍団は効果的な保護を望めなかったのだ。ユリウスの即位でその傾向は変わり始めたが、どのような重大な変更も実施されるまでに文字通り数十年かかるだろう――単純な事実として、人類領域では気圏戦闘機が足りないのだ。


通常兵器隊 Conventional Forces

 バトルメックは選ばれた武器かもしれない。しかし、装甲・歩兵の支援隊なしだと、メック部隊は単なるエサになるだろう。少なくとも1個通常(補助)軍団が、メック軍団それぞれに割り当てられる。補助軍団は帝国の多くの世界を、同じタイプの海賊や襲撃者から守るために生まれ、装備される(かつては彼ら自身がそういうものだった)。補助部隊は新しい兵器と装甲車両をゆっくりと装備しているところだが、ロシア・イリュリア征服での損害補填に費用を使っているので、10年以上かかってしまうかもしれない。


軍事階級 Marian Leadership

 ユリウス・オレイリィが帝国の実権を持つ前から、軍団の階級システムは古代ローマのものとよく似ていた(ただし大きな違いがいくつかあった)。ユリウスが皇帝として最初にやったことのひとつは、軍事組織の調整である。ローマ風の要素をもっと増やし、より重要な兵卒の階級を評価した。

 兵卒として軍団に入隊した新兵には、二等兵(miles)の階級が与えられる。二等兵は帝国軍に最低でも1年仕え、リーダーシップの才を見せた者は伍長(miles probatus)に昇進し、分隊(contubernium)か、作業員を与えられる。傑出したリーダーシップを見せ、帝国に最大の忠誠心を示した者だけが軍曹(miles gregarius)に昇進する。

 帝国では兵卒と士官を区別するが、他のほとんどの軍隊と違い、この区分は実際の訓練や能力でなく、社会的な地位に基づいている。軍団に入隊したすべての貴族は、少尉(legionnaire、最も基本的な士官の階級)の階級を与えられる。市民のうち、戦場で昇進に足る成果を見せた者か、上級士官に評価された者は、マリア軍士官学校卒業者のように、少尉に登用される。中尉(Centurions)が次の階級で、小隊(centuries)を指揮する。大尉(principes)が中隊(maniple)を指揮し、少佐(legatus)が大隊(cohort)を率い、大佐(prefect)が1個完全軍団(legion)を指揮する。

 帝国軍内にいる6名の将軍のうち、4名はアルファードでほとんどの時間を過ごし、大規模な戦役の指揮や、軍隊の維持などの任務を与えられる。残りの2名はロシア、イリュリア管区の軍政長官となり、現地で軍を指揮し、最近征服した領地が安定するのを保証する。

 帝国軍で最高の階級を持つ士官は、最高司令官(Imperator)である。皇帝の刷新で再導入された階級だ。最高司令官は皇帝の右腕であり、マリア軍全体を指揮する。名目上、第I軍団を指揮することにもなっているが、軍団内の先任大佐が日常的な運営を行う。



軍事訓練 Ars Militaria

 マリア帝国において軍事は避けがたい人生の現実である。他のもっと合法的な辺境王国でよりもそうなのだ。遅れた軍隊を増強しようと考えた皇帝ショーン・オレイリィは、頑強な男性を、17歳か、上級教育を終えた段階で徴兵するよう命じた。女性は徴兵されないが、志願入隊可能である。イリュリア戦役で被った損失のために、また広大な領土を守備するために、皇帝ユリウス・オレイリィはこの政策を続けている。

 一般の訓練生は、帝国領内に散在する数十の訓練所に送られ、基礎的な軍事技術を教えられ、一部は専門の技術を訓練する。訓練終了後、新二等兵(miles)たちは、補助軍団のどれかに配属され、少なくとも2年間の兵役を務める。この後、正規補助軍団で4年を過ごすか、本拠地防衛予備補助軍団で8〜12年の任務につくかを選ぶ。これらを終えて、強制兵役は完了するのである。



帝国士官学校 Collegium Bellorum Imperium

 アルファードの帝国士官学校は、カノープス統一政体やタウラス連合の士官学校に近い訓練の水準と質を持っている。しかし、プログラムの期間が短いので、卒業生の平均レベルは他の士官学校より低いのである。皇帝ショーンは統治期間中、士官学校に特別の注意を向け、ワード・オブ・ブレイクの支援を受けて、学校をアップグレードし改良した。ブレイクは数人の教官を派遣し、後に訓練施設をアップグレードした。

 メック戦士養成校という当初の目的を超えて拡大する必要があると考えていたショーン・オレイリィは、学校をさらに拡大し、3059年、アルファード航空士官学校を開設した。航空士官学校は二期目の卒業生を出そうとしているところである。


入学 Enrollment

 帝国での軍事訓練は階級によって別れる。貴族は自動的に帝国軍士官学校に受け入れられ、市民はすべて基礎訓練所に送られる。平民がメック戦士になれることはほとんどない。これは平民が士官学校に入れないことを意味しない――入れるのである。だが、入学するには厳しい試験に合格せねばならず、さらに貴族の推薦(多額の賄賂で得られることが多い)が必要なのだ。一度入学すると、平民は一生を軍に捧げ、軍務で成功を収めたら貴族階級に入れる可能性がある。


課程 Curriculum

 生徒は士官学校で3年を過ごし、軍事史の古典と公認の推薦図書から学ぶ。これは将来の士官たちに、洗練されているが検閲された教育を与えることを意味する。メック戦士と他の地上補助部隊の士官候補生は、次に訓練中隊(maniple)に1年間加入し、軍団で実戦経験を積む。気圏航空候補生たちは、4年目にシミュレーターで練習し、教官との「編隊飛行」と、地上・深宇宙での単独飛行を行う。


校風 Atmosphere

 生徒のほとんどが貴族であるため、この学校の雰囲気は、他の帝国軍事訓練所よりものんびりとしたものである。生徒が甘やかされることはないが、市民は同じようには扱われない。これは士官候補生内での無関心に繋がる。軍団に入ってもこの態度が崩れることはない。


卒業 Graduation

 4年間の訓練を満了した候補生は、帝国装甲軍の少尉(legionnaires)に任命され配属される。名家の生徒か、帝国内の有力者に多額の賄賂を渡したものは、たいてい配備先を好きに選べる。そうでない者は、ロシア、イリュリアを守備する軍団に送られる。軍士官学校の卒業生は最低でも8年間の兵役を義務づけられている。



人物 Personalities


皇帝ユリウス・オレイリィ Caesar Julius O'Reilly

 非常に聡明な若者で、古代史の研究者であるマリア帝国新皇帝は、自分が名目上だけ父の息子であると証明する必要性を感じている。物静かでまじめなユリウスは、心の底から理想主義者であり、帝国を改革する野心的なプログラムに着手し始めた。軍事面の改革はいくらか成功した。しかし、市民護民官の制度を作り市民階級に力を与えたこと、ロシア・イリュリアの世界に権利を与えたことに対し、元老院の一派が反発しているのは確かである。皇帝は熟達した剣士、格闘家で日々の鍛錬を欠かさない。


最高司令官デビッド・グラッディング Imperator David Gladding

 一市民として生まれたデビッド・マッセナは、2歳のとき貴族の養子となった。彼はいつも卑しい生まれであることを教えてこられた。こういう幼いころの扱いが、彼にコンプレックスを植え付け、どんなことをしても一族を継ぎたいと思わせたのである。グラッディングは士官学校を卒業し、すぐ第II軍団大佐(prefect)に昇進した。ライバルの個人的な弱点を見つけて攻撃する不思議な才能のなせる業だった。ユリウスへの支援は、最初は昇進のためだったが、次第に本気になった。

 ユリウスが父にとってかわったとき、若き皇帝はグラッディング大佐をMHAFの最高司令官に昇進させた。反対した有力な将軍たちもいたが意に介さなかった。切れる戦術家で、帝国支配の支持者である、グラッディング大佐は、自身の能力を証明し、戦闘で勝つためにどんなことでもするだろう。


マイケル・アレクサンダー大佐 Prefect Michael Alexander

 この第I軍団の指揮官は兵士たちから愛されており、上官たちから憎まれている。そして元老院から軽蔑されている。粗野で、権威を認めず、横柄なアレクサンダー大佐は、自身が、7度ローマの執政官となった伝説のガイウス・マリウスの再来であると考えている。実際、アレクサンダーは伝説的な男ならそうしたであろう行動をとっている。

 アレクサンダー大佐の昇進は、つまづきや失策と無縁ではなかった。戦闘中の命令拒否で二度降格されている。「敵を探す」よりもっと慎重な戦術を好んだのである。第V軍団の指揮官だったアレクサンダー大佐は、最高司令官デビッド・グラッディングの手によって、名高い第I軍団に異動させられた。元老院に嫌がらせをする絶好の機会と見たのである。






3067年アップデート 3067 UPDATE

 かつて、国際社会から、海賊国家・冗談でしかないと見られていたマリア帝国は、ユリウス・オレイリィ皇帝の指導の下で、評価と若干の尊敬を得るようになった。王国は犯罪者の避難地であり続けているが、これらの人間が犯罪を犯したのは中心領域でだ。オレイリィ皇帝の指図で、デビッド・グラッディング最高司令官等々が、マリアの政治・軍事から真に好ましくない連中――新皇帝の父の下で栄えた者たちを追放した。最近行った戦争で皇帝が望んだものは得られなかったが、この国家は、カノープス統一政体、外世界同盟、タウラス連合と同等の力を持つと証明したのだった。

 以下は、帝国の簡潔なまとめである。情報のほとんどは、帝国の軍事通信を傍受したものに基づいている。加盟国家の諜報組織から以外の情報は、既存の公的な記録、ニュース、星間企業の通信によるものだ。

 ――レイモンド・グリペン少佐 SLDF諜報士官


歴史 HISTORICAL BRIEF

 3064年の前半、オレイリィは惑星ウァレリウスを大規模に植民化し、帝国中から集めた植民者、いわゆる「輝く宝石」を送り込んだ。この世界は居住可能だったものの、明らかに価値のある資源は乏しかった。複数の調査団からの広く公表されたレポートによって、元老院は速やかな植民化を行った。皇帝が応じざるを得ないほど要求は良いものだった。

 もちろん、ウァレリウスがコンパス座連邦の国境に近かったのはたまたまである。植民船がこの新世界に向かう一方で、軍用船が密かに兵站庫を設営し、連邦への侵攻を準備した。驚くべきことに、連邦大統領マッキンタイアは侵攻があると考えていたが、ウァレリウスの秘密基地を見つけるのは遅すぎた。

 3066年の1月、マリア軍団が連邦の世界ブラントレフ、マクシミリアンに降下した。皇帝ユリウスは第一波に4個完全軍団を投入したのだが、やむを得ず、他の部隊を小規模な反乱や海賊の襲撃を抑えるのに使った。にもかかわらず、侵攻の第一撃は輝かしい成功を収め、数週間で両世界を奪い取った。コンパス人が侵攻軍を、解放者であり征服者であると見たのは、痛痒に感じなかった。

 コンパス座の世界を狙う侵攻の第二波を、皇帝ユリウス自身が率いた。これを予期していた連邦防衛軍は、首都を他より遙かに重防御しており、皇帝を妨害した。同時にマッキンタイアは、第IV軍団に擬装した部隊で、マクシミリアンへの後方攻撃を開始し、次にブラントレフへ派遣した。ほとんど自殺的な強襲はマリア軍にたいした損害を与えなかったが、皇帝が増援に使ったかもしれない部隊を拘束したのである。

 だがマッキンタイア大統領はもっと的確な動きに出た。5月にアルファードを強襲したのだ。これを聞き及んだ皇帝ユリウスはコンパス座を離れた。コンパス座の戦力、ブラック・ウォリアーズとマッキンタイア親衛隊では、不可能なはずの攻撃だった。この時点で、軍団は少なくとも8個強化メック大隊に遭遇していた――知られている戦力より4個大隊も多かった。部下たちは健闘したのだが、追加の部隊をマッキンタイア大統領がどこからもってきたのか、皇帝は気にとめなかった。ブラントレフ、マクシミリアンの維持を強化し、それから彼と第I軍団はアルファードに急いで帰還した。

 マリア帝国とコンパス座連邦の戦争は、建前上まだ続いている――マッキンタイアは、皇帝が送った外交使節団を処刑するよう命令した。この戦いは1年以上に及んでいる。皇帝オレイリィは、兵士を帝国内に再配備した。勝ち取ったのは、わずかに連邦の2世界だった。両世界とウァレリウスは、帝国内のイリュリア管区に併合された。


マリア軍団 THE MARIAN LEGIONS

 コンパス座連邦との短い戦争で損害を被った軍団は、隣国が軍備増強していた事実に、無理からぬことだが動揺している。幾度かの襲撃と、内部闘争は、カノープス、自由世界同盟の仕業とわかったが、連邦軍の軍拡の理由は不明だった。分析チームが連邦軍の新型メックからワード・オブ・ブレイクとのつながりを発見して、ようやく理由が判明したのである。軍団は警戒態勢にあり、コンパス人の動向に注視している。その一方で、1個軍団あたり、5個メック大隊(cohorts)に増強した。


第I軍団 I Legio Martina Victrix

 コンパス座連邦への攻撃で、皇帝に従った第I軍団の隊員は、戦場での大きな経験と、それなりの回収物を得た。最終的にコンパス座から撤退したものの、軍団は首都とマッキンタイア大統領の軍司令部を奪取し、打ちのめされたのとはほど遠い状態で世界を離れたのだった。


第II軍団 II Legio Cataphracti

 皇帝の個人的な部隊と考えられている第II軍団は、イリュリア伯爵領戦役からアルファード攻略まで、そのリーダーに続いた。最近では、コンパス座連邦侵攻に参加した。手腕を実証したのだが、最終的に敵の援軍にとどめを刺すことができなかった。第I軍団のように、この部隊は連邦を離れる前に、戦場から大量に品漁りし、ブラック・ウォリアーズ用の新型メックと武器を、ミュール級降下船に積み込んだのだった。


第III軍団 III Legio Limitanei

 ユリウス皇帝は第III軍団に、コンパス座戦役の初陣を飾る名誉を与えた。部隊はマクシミリアンに降下し、すぐさま防衛隊を打ち倒した。その後、連邦傭兵隊の絶え間ない攻撃に足止めされ、IV軍団に化けた部隊から比較的大ダメージを受けた。現在再建中のこの部隊は、連邦の攻撃に備え、国境線上に居続けている。


第IV軍団 IV Legio Comitatensis

 第IV軍団は、連邦戦役の際にマリア帝国防衛を命じられ(イリュリア管区で多くの時間を過ごした)、反乱鎮圧を行い、海賊、盗賊部隊に備えた。この数年で、IV軍団は、海賊狩りと対ゲリラ戦術を得意とするようになった。


第V軍団 V Legio Ripariensis

 第V軍団は、他軍団がコンパス座連邦を強襲していた際に、ロザリオ管区(元ロシア連盟領)を守備していた。第IV軍団と同じように、反乱や正体不明の襲撃に対処せねばならなかった。後に襲撃を行っていた部隊は、コンパス座連邦の支援を行っていたワード・オブ・ブレイクの仕業と判明した。


第VI軍団 VI Legio Ripariensis

 第VI軍団はコンパス座戦役の第一波に参加する名誉を与えられ、第III軍団と同じように、担当した世界を容易く勝ち取った。第IV軍団に装った部隊が3066年の5月、ブラントレフを攻撃した(もっともそのときには、正体を暴いていた)。当時、いくらか戦力低下していた第VI軍団は、敵と味方の双方を驚かせた情熱で逆襲を行った。連邦軍は2週間以内に崩壊したのだった。第VI軍団は、敵から捕獲した装備で再建を果たし、連邦の報復に備え続けている。


モリツリ大隊(決死大隊) Cohors Morituri

 この死の大隊は、ユリウス皇帝が連邦侵攻を率いていた際に、帝国宙域にとどまっていた。後に明らかになったように、この配備は幸運だった。マリアのバトルメック大隊の大半が、帝国コアワード地域に固まっていた際、コンパス軍ブラック・ウォリアーズの1個大隊がアルファードにやってきて、ハイリスクなマリア首都強襲を実行したのである。この策は、犠牲が多かったものの、皇帝が戦役を中断することになった。報告によると、ブラック・ウォリアーズ隊員はアルファードを脱出できなかったようだ。モリツリ大隊のメック戦士たちは、ウォリアーズを引き裂き、三度の交戦で撃破した。わずかな連邦のメック戦士が生き残り、捕らえられ、怪我が元で死ぬ前に、ワード・オブ・ブレイクの関与を示す確かな証拠を出したのだった。




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