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作成:2020/02/02
更新:2020/03/29

カノープス統一政体 Magistracy of Canopus



 カノープス統一政体は、中心領域の「南西」、自由世界同盟と国境を接する辺境国家です。
 タウラス連合に次ぐ辺境の大国ですが、好戦的な性質を持たず、サーカスの巡業と女性指導者で知られています。
 氏族侵攻以降は、カペラ大連邦国との関係を強化し、王家同士の婚姻関係を持つに至りました。




家母長制の歴史 3063 History Of The Matriarchs

 「かの者は星間連盟への加入にどんな『特典』を用意しているのか? すでに買えないものを用意できるのか?」
――クリスターリャ・セントレラ総統、2576年10月7日

 この言葉は統一政体が星間連盟への加入を拒否したことをはっきりと示しているが、いかなるものにでも価格が付くという一般的な見解(特にカノープスの貴族と総統自身の見方)を表している。この見方とそれに伴うすべては、統一政体自体の創設からほとんどなにも変わらないままである。

 コサンドラ・セントレラが2530年にカノープス統一政体を作った。自由世界同盟防衛軍の大尉だった彼女は、無能な上司が処分されないと感じて逃げ出した。早く成長しないと、近くのマーリック家、リャオ家につぶされると知っていた彼女は、自由世界同盟やカペラ大連邦国内の反体制指導者たちとコンタクトを取った。何度かの交渉によって、追加の惑星を得た。カノープスIVに上陸してからわずか20年後、コサンドラは36個の星系からなる国家を統治していた。数十年がたち、また別の総統が統治するようになると、彼らは拡大を続け、コサンドラが築いた国を安定させた。

 フローラル・セントレラ総統が権力の座につくと、改革、立法を実施し、それが現在の統一政体を形作った。政治的・社会的自由を義務づける憲章が制定されたことで、統一政体は何でもありの娯楽産業を公式に是認した。麻薬から性行為、剣闘士のアリーナ、稀少で珍しい動物の狩猟まで、統一政体はすべてを提供した。これは莫大な金を生み出し、賢明にも娯楽産業に再投資された。こうしてカノープスのエンターテインメントビジネスは既知宙域で最も儲かるものとなったのである。



ピュロスの星間連盟 A Pyrrhic Star League

 フローラル・セントレラはこの「娯楽を通しての中立スタンス」ですべての紛争から逃れられると信じたが、星間連盟やイアン・キャメロンの支配下に入らない世界に対する誇大妄想が計算に入ってなかったのである。星間連盟は「諸君の利益のために」加入するよう辺境国家に断固として迫ったものの、辺境側は拒否した。星間連盟が4ヶ国に対する戦争を進めると、SLDF第7軍団とマーリック12個連隊が2577年にカノープス統一政体に対する戦争を始め、1年以内に終わると信じた。

 だが、自信満々の星間連盟は辺境の人々が大王家を見捨てたまさにその理由を忘れていた。自由という理想への献身と、人類が支配する領域の外辺で生まれた人々のたくましさによって、辺境は星間連盟にピュロスの勝利を振る舞った。それを達成するのに20年以上の時間と数百万の人命が必要とされたのだった。

 再統一戦争が終わると、アンドゥリエンのメリッサ・ハンフリーズが統一政体の軍政府長官に任命された。ハンフリーズは統一政体の復興に星間連盟の資金を大量投入し、慈悲に満ちた統治を示した――ハンフリーズは星間連盟の理想を本気で信じていたのである。ハンフリーズから統治権を取り戻した後、統一政体は全人類と一緒に黄金時代を享受した。星間連盟は万人に前代未聞の富と成果をもたらしたのである。

 2722年、星間連盟の議会君主たちが連盟の理想を無視するか忘れることを選ぶと、この時代は終わった。彼らは自国の経済と軍隊を強化するために不平等な税制を押しつけることで、辺境国家をいたぶる法律を起草し始めたのである。再び奴隷化されるのを拒否して、全辺境が猛反対するのは時間の問題であった。その瞬間は2765年の悪名高いニューファンデンベルクの反乱で発生し、辺境全体まで野火のように燃え広がり、1年が経過するまでに星間連盟防衛軍50個師団以上が全滅するに及ぶ大火に拡大したのである。

 2766年、SLDFは大規模な報復攻撃の準備を行い、それは実行されることがなかった……リチャード・キャメロンとキャメロン一族全員が簒奪者ステファン・アマリスに殺害されたのである。統一政体とその他の辺境国は安堵のため息を漏らした……ケレンスキー将軍の大軍はアマリス危機に対処すべく本国へと向かい、星間連盟の断末魔が始まった。



継承権戦争 Wars of Succession

 第一君主の称号を巡って中心領域の大王家が終わりなき数世紀の戦争を始めると、辺境国家もまた被害を被ったが、国境の内側で戦闘が起きることはほとんどなかった。前例のない規模で戦争が起こった。交易路、補給路、通信線は断絶し、辺境は数世紀前のように自力で生きるか死ぬかを求められるようになったのである。これは多大な困難をもたらした……特にほとんど消滅したエンタテインメントに巨額の投資をしていた統一政体にとっては。それでも、辺境の民は生き延びて、再び繁栄し始めた。数世紀間はめられていたくびきを投げ捨てた彼らはまた自分の運命を築き始めたのだ。

 2813年のタウラス連合など、何度か領土への侵攻に対処せねばならなかったのだが、大王家が情け容赦のない攻撃を互いに仕掛けるあいだ、統一政体は比較的平穏を保ったのである。それも3030年までのことで、第四次継承権戦争が終わった後、統一政体は初めて中心領域の勢力に対し大規模な侵攻を試みた。

 カペラ大連邦国はダヴィオン家の猛攻の前によろめき、半数以上の世界を失っていたことから、カイアラ・セントレラは積年の怨敵を討ち滅ぼし、自国を大きく飛躍させるチャンスが来たと信じた。常に反抗的であった自由世界同盟のアンドゥリエン公国と同盟し、2ヶ国は攻勢に打って出て最初は大きな成功を収めた。だが、統一政体は星間連盟が五世紀前に学んだことを経験した――祖国の防衛こそが最も残虐な戦闘になり得るのである。背水の陣となったカペラ大連邦国は飛びかかってカノープス=アンドゥリエン軍を容赦なく領地から叩き出し、カイアラが廃位されるに至る土台を作ったのである。



新たな時代 A New Era

 現在の総統、カイアラの娘エマ・セントレラは、カノープス=アンドゥリエン戦争が終結した直後に権力の座についた。失敗と娘(最初から戦争に激しく反対していた)の人気への嫉妬で憤慨したカイアラ、3039年に娘の暗殺を命じた。暗殺者は失敗した。軍と民の両方から得た支持を利用して、エマは3040年5月に母を退位させ、自らその地位に就いた。

 エマの治世が始まったとき、これまでと違う方向に国のコースが変わったことに、ほとんど誰も気づかなかった。彼女がアンドゥリエン公国再征服中の自由世界同盟との関係を改善すると、誰もがすぐ才能の一端を感じ取った。次に彼女は、創設時に統一政体を裕福にし安定させた産業に個人資産の大半を注ぎ込んだ。娯楽産業である。プレジャーサーカスと安寧の復活によって、すぐさま統一政体の経済に金が直接流入し始めた。3050年までに、中心領域が氏族の侵攻を受けたことから、統一政体はかつてのような経済大国となり、エマの計画の次の段階を始めることが出来たのである。

 6年に及ぶ注意深い交渉と、得意技となる裏口での政治交渉で、統一政体は3056年にタウラス条約を締結した。彼女がなした最大の勝利のひとつであるこの条約で、辺境の二大大国が相互防衛、自由貿易、文化・科学的交流の正式な同盟を結んだのである。これには共同での植民計画が含まれていた。これらの前進によって、統一政体は成長し、軍事力を高めた。

 この時点でエマは統一政体史上最高の総統の一人と賞賛することが出来たかもしれないが、それで終わりではなかった。さらに欲望の大きさを実証してみせた総統は、歴史上初めて中心領域のある勢力と同盟を結んだ。カペラ大連邦国である。この同盟に反対する者たちは指摘した……いずれカノープスの子供たちがカペラの世界に赴いて、聖アイヴス協定に対する侵略を助けることになるだろう。しかし、金と資源が統一政体にあふれ始めたため、歯に歯を着せぬ声は小さくなっていった。ジェフリー・カルデロンの死後、歴史的な三国同盟が調印され、カノープス統一政体、タウラス連合、カペラ大連邦国が同盟を結び、中心領域の一部大王家に匹敵する規模となったのである。

 カノープス統一政体は現在、かつてない繁栄と国力上昇の黄金時代を迎えている。これが高い崖の前に立っているだけなのか、新たな高みに至る坂なのかは、まだわからない。だが、エマ・セントレラは過去最高の有能で影響力のある総統であるところを見せており、その行動はこの偉大な国の民衆を利するのみである。







統一政体装甲軍 Magistracy Armed Forces

 広大な辺境に存在するその他の大規模な軍事組織と同じように、MAFは統一政体を守るため遙かに巨大な軍隊と5世紀間に及ぶ紛争で奮闘を続けてきた。近年の三国同盟のおかげで、MAFは辺境で最大の軍隊であるという独自のポジションを占めるようになった。以下の段落でMAFと各部門の職務について詳しく説明する。



指揮系統 Command Structure

 何世紀にもわたり、統一政体装甲軍は小規模なことから合理化された指揮が可能であり、各部門の間で区別はほとんどない。三国同盟はMAFの各部署がタウラス連合、カペラ大連邦国の同部署と共に働くことを求めた。これとMAFが全体的に成長したことで、合理化された組織は拡大した。だが、この拡大は徐々に進むものであり、半千年紀にわたって動いてきた軍隊が一夜で根本から変化するべきではないという認識の下で実行に移されている。



統一政体司令本部 Magestrix Command Center

 MAFのまさに中枢である統一政体司令本部(MCC)は防衛構想に加えて戦略計画のすべてを担当している。司令部は総統の直接麾下にある。元々、MCCは3名の上級大佐と2名の海軍大佐からなっていた。現在では、以下の士官たちがMCCを構成する。ハジ・ドル上級将軍、統一政体親衛隊のヴェルニス・アルコバル将軍、シュヴァル猟機兵隊のシンシア・エバンス将軍、カノープス機兵連隊のサンドラ・アウプリッツ将軍、カノープス・ハイランダーズのオスカー・ロング将軍、ラヴェンシール胸甲機兵団のマヴィス・クーパー将軍、ジェームス・スミシントン提督、カーラ・ボエテシア提督(共同で統一政体海軍を指揮している)。三国同盟の条項の一環として、エリオット・ナイト准将(MAF附きの大使で、統一政体内でのカペラの軍事作戦すべてを統制する)は、直接MCC所属となっている。この取り決めはMCCのメンバーの間でかなりの不平不満をもたらした。



統一政体陸軍 Magistracy Army

 MAFの全地域部隊(メック、歩兵、装甲)は、統一政体陸軍の監督下にある。過去には部門間の違いはほとんど強調されていなかったが、MAFが成長していることから、これらの違いはより顕著になっている。ハジ・ドール上級将軍が統一政体陸軍、ひいては全MAFを直接指揮している。



バトルメック戦力 BattleMech Assets

 2349年に地球帝国が開発して以来、その後の半千年紀に誕生したほぼすべての勢力でバトルメックが中核となっている。統一政体でもそれに違いはない。他の辺境国家と同じように、MAFはバトルメックを黄金より価値があるかのように扱っている。MAFのハンマーであるメックはそれにも関わらずたいがい予備に回される。そのあいだもっと安くて入手可能な車両と歩兵がぞんざいに投入されて敵にすりつぶされ、それからMAFのメック部隊が解き放たれるのだ。無駄は多いが、こうしてMAFは辺境で二番目に大きなメック部隊を数世紀間保っているのである。

 さらに重要なことに、技術ルネッサンスが中心領域を覆い尽くし、統一政体は中心領域の勢力と直接のつながりを持っていたことから、MAFはそれら新技術の多くを受け入れてきた。これによって、技術をこれまでになかったレベルにまで――少なくとも軍事分野では――高めることが可能となったのである。MAFの全部隊が新技術でアップグレードされたわけではないのだが、統一政体に配備されているメックの25%以上が新型機になるかアップグレードを受けた。

 MAFのバトルメックは標準的な組織編制に従っている。各連隊は指揮小隊を持ち、指揮中隊が各戦闘編隊の将軍の個人部隊として活動する。



装甲戦力 Armor Assets

 MAFの全連隊には少なくとも1個の支援装甲大隊が恒久的に附属する。これら車両の多くは、数百年を生き延び、間に合わせの修理がされた旧式である。それに加えて、統一政体親衛隊やシュヴァル猟機兵隊などいくつかの上級部隊は、近ごろ新型車両による2番目の大隊を受領した。重LRMキャリアー、軽SRMキャリアー、さらには大連邦国ご自慢のレギュレーター・ホバー戦車までもがある。



歩兵戦力 Infantry Assets

 MAFの歴史上、歩兵部隊は幅広い構成、規模、任務を持っている。歩兵中隊は30〜50名の規模にある。中隊は120〜180名である。カペラ大連邦国や他の中心領域勢力が使っている、より標準的な形に添ってMAF歩兵戦力を組織するのに多大な労力がかけられた。

 極めてまれであるが、バトルアーマーがカペラ大連邦国から高額で調達され、統一政体装甲軍の中に現れ始めている。MAFの航空宇宙戦力と同じように、バトルアーマーは統一政体陸軍の特殊部門にまとめられ、ドル上級将軍の直接指揮下に入る。作戦に投入する正統な理由があるときに、各小隊は一時的に適当な部隊に配属される。



統一政体海軍 Magistracy Navy

 他の辺境の軍事組織と同じように、統一政体の海軍は極めて小規模で、すべての海軍戦力をひとつの組織にまとめる必要がある。恒久的に降下船を所持する連隊は存在せず、まして航宙艦があるはずもない。140隻以下の降下船と航宙艦(もう70隻ばかりの商船をいつでも徴用出来る)を持つ統一政体海軍は、カノープスの国境を守るべく無理強いされ続けている。ジェームス・スミシントン提督、カーラ・ボエテシア提督が共同で統一政体海軍を指揮している。



気圏戦闘機 Aerospace Fighters

 統一政体装甲軍に配備されている気圏戦闘機は100機を越える程度で、その大半が中軽量機である。戦闘機が不足しているため、作戦指揮は海軍を中心にすることが許可されており、各機体は必要に応じて2個カノープス艦隊のどちらかに配置されるか、正規連隊に直接付けられる。このルールの唯一の例外である統一政体親衛隊には、航空小隊が永続的に所属している。現在、MAFは辺境で最大の正規地上軍を築いたことから、ドル上級将軍が気圏戦闘機戦力を次の拡大候補にすることは間違いない。



降下船と航宙艦 DropShips and JumpShips

 ふたつに分かれた艦隊(それぞれ2個戦隊の2個小艦隊からなる)は特定の役割を果たしている。カノープス戦闘艦隊は、まっさきに侵略の対象となる可能性が高く、大規模な兵士の移動が必要とされるだろう目標の防衛を担当している。カノープス予備艦隊は常にカノープスIVに駐留し、カノープス宙域への侵入に対する素早い配備が可能となっている。



戦艦 WarShips

 最近総統は戦艦プログラムを実行可能かどうか3062年時点での見通しに関する報告をMCCから受け取った。一年以上後に委員会の出した調査結果はMCCのものと一致した――現時点と近い将来において、外部からの大規模な資金なしに戦艦プログラムは非現実的である。カペラ大連邦国がこのような技術と資金を提供してくれそうな唯一の存在であった。残念ながらカペラ大連邦国はワード・オブ・ブレイク、自由世界同盟との契約で戦艦の債務を負っている。このような状況で、支援を受けられる可能性は無視できるほど小さい。



市民防衛軍団 Militia Defense Corps

 MAF内で最新の軍団である市民軍防衛大隊群は、もともと統一政体陸軍内の一部門であった。ドル上級将軍の指示の下、分離された市民軍は独自の軍団となり、MCCの直接指揮下に入った。市民軍防衛軍団は約12個市民軍大隊で構成されるが、兵力数は年によって変動する。予備役からなる市民軍大隊群は、前線部隊が保証されない国境世界の大半で、最後のそして最初の防衛線となる。最低限の訓練で通常の装甲、歩兵隊のみを配備する通常大隊群は、正規部隊に立ち向かう望みを持たないが、援軍が到着するまで敵を足止めするチャンスはあるのである。この市民軍大隊群には二番目に重要な任務がある――市民たちは大隊に配備されることで兵役の義務を果たすのである。ここで有望な者たちはMAFに常勤で加入する機会を与えられ、養成校に入校するか、前線部隊に回されるか、あるいは最優秀な者にはカノープス軍事大学に入るチャンスを与えられる。カラ・ダミオン将軍が市民軍防衛軍団を指揮している。



統一政体医療軍団 Magistracy Medical Corps

 MAFの誇りである統一政体医療軍団は、この分野において強大な中心領域王家の持つご自慢の軍隊すらも上回っている。カノープスの戦士全員に救う価値があると固く信じている医療軍団は、宇宙のあらゆる軍隊の中で最良という当然の評価を得ている。

 医療軍団は才能豊かで献身的な兵士たちが揃っているものの、素晴らしい成功の一部はMCCによる多額の資金に理由がある。この資金によって、MAFの戦闘員7名につきおよそ1名の医療専門家を用意することが可能になった。中心領域内外の軍隊では約1対20が普通なのである。ヴァージル・ルイス将軍が統一政体医療軍団を指揮している。



統一政体支援軍団 Magistracy Support Corps

 何でも屋である統一政体支援軍団は、全MAFの事務、需品、補給、人事関連の職務を任されている。この軍団は上級士官訓練は当然として、全新兵の訓練に責務を負う。傭兵の契約、配置、組織もまたこの軍団の職域である。

 支援軍団最後の職務はR&D(研究開発)である。彼らは新技術の取得において、カペラ大連邦国研究開発部、タウラス連合の防衛省と協働している――主に大連邦国から取得している。彼らはまた新技術の開発をとりまとめ、いまやデトロイトの生産ラインから出荷が始まっている。カーラ・ジャコバイト将軍が統一政体支援師団を指揮している。



統一政体同盟連絡部 Magistracy Alliance Liaison

 MAFで最も新しい組織ではないのだが――それは市民軍防衛軍団である――統一政体同盟連絡部(MAL)は最も小さい組織である。それにも関わらずMAFで最も重要な組織に成長するかもしれず、カノープス統一政体全体に影響を与える可能性がある。

 三国同盟に調印した後、統一政体、タウラス連合の部隊がカペラ大連邦国内にローテーションし始め、互いを往き来するようになった。これが大連合国兵の辺境世界駐屯につながると、MCCに同盟全軍の移動を管理する専門の部署が必要なことは明白となった。連絡部はカノープス国境の内外で同盟全部隊の配置、移動、作戦行動を監視する委員会として機能する。

 MALは同盟の各軍事調整官から報告を受け取る……カノープス統一政体からカペラ大連合国への軍事調整官ナオミ・セントレラ少佐と、タウラス連合への軍事調整官サリア・スラヴァク少佐である。セントレラ少佐は王位後継者であるというユニークなポジションであることから、指揮系統は常に監視されているわけでなく、重要な任務を任されている新部署にストレスを与えている。義務ではないのだが、タウラス連合の軍事調整官ウィリアム・ヘイズ大佐も、この部署を通して定期的な状況報告を上げている。現在の統一政体同盟連絡部指揮官は、ジョルデット・ガルバンストン将軍である。



統一政体情報省 Magistracy Intelligence Ministry

 統一政体情報省(MIM)は、書類上はMAFの一部門であるが、独立しており、総統に直接応えている。総統はMAF再編に関するドル上級将軍の提案をほとんどすべて受け入れているが、MIMを彼女の下以外に置くというものは拒否して、またも手強いリーダーであることを証明した。

 元々は小規模だが優秀な諜報部だったMIMは、この20年間で花を開かせ、辺境の他組織を遙かにしのぐ強力な相手となったのである。この数年で、MIMはいくつかの面で中心領域の情報部を凌駕するまでにもなった。57年にMIMのエージェントがライラ同盟とドラコ連合の両方で活動していた(ROMはまったくの偶然で出くわした)という事実は、MIMの洞察力が深くなっていることの充分な証拠となっている。この20年で予算が増えたことが成長の要因の一部であると説明出来るが、外部からの助けを借りたかどうかは依然として疑問が残されている。我々は、この可能性を確認、否定する情報をつかめないでいる。

 いずれにしても、ROMは辺境で活動を続ける間、MIMが極めて危険であると考えるべきである。MIMはすでに、失われた仲間たちとの紛争で空いた穴を利用しているかもしれない。ジェニ・エリオットが現在のMIM指揮官である。







MAF階級規則 MAF Ranking Conventions

 ここ数年の変更をのぞき、統一政体装甲軍の階級規則は創設のころから変わっていない。



下士官兵階級 Enlisted Ranks

 MAFの創設から下士官兵の階級は変わらぬままで、既知宙域のあらゆる軍隊で見られるシステムを使っている。

志願兵 Volunteer
 カノープス統一政体は、全市民が3年間軍に勤務するのを要求されるという点で比較的ユニークである――貴族階級は代役を雇うことで内々に兵役を免除される。

初等兵 First Ranker
 基礎訓練中に懲戒処分を受けない限り、志願兵は卒業に際し自動的に初等兵に昇進する。ここから、初等兵たちは彼らが向いた専門分野を探すために上級訓練へと送られる。軍隊にとどまる意欲、希望、野心を持っていない限り、それ以上昇進することはない。

伍長 Lance Corporal
 他の軍隊でいう軍曹にほぼ相当する伍長は、交戦で1個分隊かそれ以上を指揮することを求められる。さらに重要なのは、MAFに残る気概を見せた初等兵たちの野戦教官になることである。

上級伍長 Star Corporal
 各種の指導者的役割をこなす上級伍長は、下士官階級の中核である。彼らは上級士官の不在時に指揮をとることを求められる。概して、MAFの上級伍長は完全な1個小隊を率いる。

軍曹 Command Sergeant
 たいてい上級士官の幕僚を務める軍曹は、上級曹長やその他の上級下士官に似た存在である。

上級軍曹 Banner Sergeant
 現在は上級幕僚と野戦指揮をこなしているのだが、上級軍曹の起源は部隊の連隊旗手であったところから来ている――部隊の礼装時には、いまだこの名誉が見受けられる。



士官階級 Officer Ranks

 統一政体装甲軍の士官階級は、中心領域内外の軍隊の中でもユニークなものである。普通は公式に与えられるところを、彼らは購入するのである。異様である一方、この伝統は四世紀にわたって変わっておらず、どのような形でもMAFを阻害してないように見える。重要なのは、少佐以上の階級は、総統の承認を必要とすることだ。伝統的に、承認は素通しである。だが、無能者やふさわしくない者たちの昇進を阻止するために、総統は拒否権の行使を余儀なくされることがよくある。MAFの規模が拡大していることから、彼らが見かけほどに知的であればMAF士官団の個人的な精査が続くと推測出来るだろう。

 部隊の性質上、通例として統一政体親衛隊やシュヴァル猟機兵隊の階級は、他のMAF連隊よりも10000〜15000コムスタービル高い値段が付いている。

中尉 Ensign
 MAFにおいて、中尉に決まった数の兵士が配されることは珍しい。代わりに、状況と経験によって、中尉は10名から100名の部隊を指揮することになる。中尉はカノープスの陸軍と海軍の両方に存在する。この階級は通常、10000〜25000コムスタービルが必要とされる。

大尉 Commander
 大尉は中隊と時には大隊を率いる。だが、MAFが拡大し、新しい階級が作られたのに伴い、この習慣はほとんど終わっている。海軍では大尉は部門長を務める。大尉は職務に応じて16000〜35000コムスタービルを階級に支払う。

少佐 Major
 つい最近まで、統一政体装甲軍の少佐たちはほとんどが名誉少佐として雇われ、連隊を指揮する一方で、大尉たちが大隊を率い、大佐たちが全連隊指揮官の座にあった。こういった日々は過ぎ去った。この10年でMAFの規模が大きく拡大したことから、士官団は成長せねばならなかった。そのため、いまの少佐は大隊規模の部隊を指揮するのみである。カノープス海軍では、少佐は代将艦長(comcapt)であり、艦1隻を指揮する。再編の前、代将艦長は小艦隊を指揮していた。この地位には、24000〜45000コムスタービルの値札がついている。

中佐 Force Major
 他の軍隊の中佐と同等であるこの階級は、佐官が新しい軍隊序列の中で大きな威信と影響力を持つことを示すために作られた。カノープス海軍に同等の階級は存在しない。

大佐 Colonel
 再編の前の少佐たちが意図していたより大きな管轄権を持っていたのと同じく、大佐たちもまた単に連隊を指揮するだけでなく、統一政体親衛隊やカノープス機兵連隊のような部隊の全体を指揮していた。今日の大佐は、連隊、大規模部隊、MAF官僚部門の一部門を指揮するのみである。カノープス海軍では、大佐は海軍少将(rearad)の名で知られており、3〜6隻の艦艇を指揮する。大佐は階級に33000から50000コムスタービル以上を支払う。

将軍 General
 MCCが作った3つの新しい階級の二番目である将軍はMAFの5個部隊それぞれを指揮している……統一政体親衛隊、シュヴァル猟機兵隊、カノープス機兵連隊、カノープス・ハイランダーズ、ラヴェンシール胸甲機兵団。海軍では提督の階級名となる2名はカノープス海軍艦隊全体を指揮している。この7名の将官全員が、上級将軍とともに、統一政体指揮司令部(MCC)の幕僚となっている。MAF内には各軍団の部門長の将軍がいるが、MCCにその席はない。将軍の地位を購入するには、60000〜75000コムスタービルが必要とされる。加えて、総統は全士官の拒否権を持っているのだが、将軍の階級を求める個人はMIMによる綿密な調査の対象となる。

上級将軍 Senior General
 MAFの新しい階級で三番目にして最後である上級将軍は統一政体装甲軍の最上級司令官であり、総統に直接仕える。他の軍隊の同輩とは違って、上級将軍は総統が身罷った際にいかなる継承権をも持たない。この上級将軍の地位は購入不可能であり、総統から与えられるものである。MCCによる投票が全会一致に達したら、総統の任命を覆すことが出来る。







戦闘編隊 Combat Formations

 中心領域の軍隊と同じように、MAFを構成する連隊の大多数は、より大きな組織に属している。だが、通常の指揮系統から外れて行動するダヴィオン近衛旅団のような類似の組織とはちがって、MAFの戦闘編隊は常に固く手綱を握られている。MAFが拡大したのに伴い、戦闘編隊指揮官にますます多くの権限が委譲されているが、その権限の行使をためらう将軍はいない。


統一政体親衛隊 Magistracy Royal Guards

 再統合戦争の初期に潰滅した諸部隊から作られた統一政体親衛隊(現在はラヴェンシール・アイアンハンド、第1、第2カノープス胸甲機兵団を持つ)は、カノープス国の安全弁として重要な役割を果たしてきた。何世紀にもわたって2個連隊を配備してきたのだが、この30年の繁栄により、3番目の連隊の立ち上げが可能となった。


シュヴァル猟機兵隊 Chasseurs a Cheval

 MAFの先任旅団であるシュヴァル猟機兵隊は、カノープスIVを守るという明白な目的のために、統一政体誕生の1年後、2531年に作られた。元々は4個「軽機兵」連隊からなっていたこの部隊は、長いあいだ星間連盟の連隊戦闘団が自分たちの真似に過ぎないと述べてきた。だとしても、猟機兵隊は再統合戦争で2個連隊を失った。この10年でやっと、統一政体は1個連隊を再建する予算を得た。シュヴァル猟機兵隊はMAFの先任部隊である。統一政体は第4カノープス軽機隊を再建する前に、新しい数個連隊を立ち上げていることから、いくらかの緊張をもたらしている。シュヴァル猟機兵隊は、第1、第2、第3カノープス軽機連隊を擁している。


カノープス機兵連隊 Canopian Fusiliers

 再統合戦争で全滅したこの部隊は、アマリス危機の際に再建され、それから第1、第2、第3カノープス機兵連隊を持つまでに成長した。各連隊は他のカノープス部隊よりも実戦経験があるのだが、猟機兵隊ほど上位でなく、親衛隊ほど有名でもない。機兵連隊はMAFの最精鋭となったが、地位が低いことから補給と補充が常に不足している。


統一政体ハイランダーズ Magistracy Highlanders

 統一政体ハイランダーズ(第1、第2連隊を持つ)は、MCCが作った二番目に新しい戦闘編隊である。3059年6月後半、公式に発足したこの部隊は、MAFのどの戦闘編隊よりもMAF内で不和と異議を引き起こした。秘密裏に傭兵から作られたハイランダーズは、MAFの中で騒動の中心となった。

 もともとは再統合戦争終結時に辺境世界共和国からの難民を中核に作られたカノープス・ハイランダーズは、統一政体に最も長く使えている傭兵部隊となった。長年にわたり見事な貢献を果たしてきたことから、戦力増強を支援するエマ・セントレラの秘密計画に選ばれたのは自然なことであった。

 マリア帝国による襲撃が増えつつあり、またタウラス連合と同等の軍事力を持つ必要があったことから、エマは3057年前半にオスカー・ロング大佐と連絡をとり、カノープス・ハイランダーズを秘密裏に増強する話を持ちかけた。これはカノープス・ハイランダーズのMAF編入へとつながることになる。

 ロングの逆提案は、3個大隊を密かに3個連隊へと拡大するというもので、3059年6月、新しい2個連隊はMAFの統一政体ハイランダーズとなった。これにより、傭兵のカノープス・ハイランダーズはカノープスで最新の技術を持つ1個連隊にアップグレードされ、統一政体の守備に専念する。総統はこの計画を受諾した。CCAFにカペラ旅団を作るというサン=ツー・リャオ首相の計画に似通ったものであった。

 総統とMAFは統一政体ハイランダーズに非常に満足しているものの、完全に受け入れられたわけではなかった。三国同盟の他国とMAF内の部隊は、この動きが示した不信に不満を抱いている。シュヴァル猟機兵隊は特に「成り上がりの傭兵部隊」への贔屓に見えるものに不満を口にしている。これが何らかの持続する損害を与える国家になるかは不明である。これによって、統一政体は辺境で最大の軍事力を持つに至った――辺境諸国がこの事実をすぐに忘れるということはなさそうである。


ラヴェンシール胸甲機兵団 Raventhir Cuirassiers

 この戦闘編隊は、かつてラヴェンシール・フットメンの名前で知られていた(名門ラヴェンシール一族に敬意を表したもの)――3056年後半に創設された時は歩兵のみの部隊であった。3063年前半、この部隊は公式にラヴェンシール胸甲機兵団の名を授けられ、第1、第2ラヴェンシール胸甲機兵団連隊を持った。公式の改名セレモニーで、総統はこの名前を三国同盟と胸甲機兵団への祝賀であると宣言した。胸甲機兵団は統一政体機士隊と共に、タウラスの連合胸甲機兵団とカペラの第7大連邦国予備機兵隊それぞれの姉妹連隊となっている。

 こうした努力を払ったにもかかわらず、総統は統一政体ハイランダーズの創設で生まれた緊張を解くことは出来なかった。現在、多くが、ラヴェンシール・フットメンをハイランダーズから注意をそらす策謀と見ている。エマがこれら「姉妹」連隊に誠実かは時が経てばわかるだろう。ともかくとして、両連隊は新たな任務を極めて深刻に捉えている。







養成校 Academies

 エマ・セントレラが総統となるまで、統一政体の国内に一流の戦闘学校は存在しなかった。すべての世界に地域養成校があって、装甲車両から気圏戦闘機、航宙艦からメック戦士、技術者から士官に至るまで、すべての専門分野の教育を求められた。それは完全に不可能な任務だった。統一政体の市民が常備軍を軽蔑していたことから、政府はそのような金食い虫に出資する必要性を感じていなかった。各世界が自前の養成校で訓練、人員配置、支援することに頼っていたのである。MAFは士気が高く、愛する統一政体のために喜んでかなりの犠牲を払ったが、軍内の全般的な訓練不足を補うことは出来なかった。

 エマが権力の座にのぼってすべてが変わった。彼女はすぐに気がついたのである……マリア帝国のような強欲な隣人がいては、もう統一政体の伝説的な娯楽産業と商業の誘惑だけに頼ってはいけないと。そのため、彼女はいくつかの法律を作って、統一政体の国費を地域養成校に注ぎ込みはじめ、施設の拡大と改修が可能となったのである。







カノープス軍事学院 Canopian Institute of War

 総統は連邦養成校に資金拠出をはじめると同時に、大規模な訓練所を開校する計画に着手した。それは名門のサン=ツァン・メック戦士養成校を真似て、カノープスIVにカノープス軍事学院(CIW)を作るというものだった。最高の施設と訓練を提供するのに加えて、本校はMAF全体の士気を向上させた。士気は高いのだが、MAFは何百年と守ってきた政府の多くから必要悪と思われていることが身に染みている。CIWの発足に伴い、MAFはこの数世紀で初めて受け入れられたと感じたのである。

入学 Enrollment

 CIWへの入学許可はふたつの要因で決まる。勤務実績と学歴(優勢順位は低い)である。本校はあまりに新しすぎるので、新学期が近づくと、MAF内の大佐たち全員に要請が出される……年齢や勤務年数を問わず、上官に入学の申請をした、最も優秀な人材の名簿を送れというものだ。最初の2年はこのやり方で生徒が決まり、そのうち5パーセントは市民軍防衛大隊からやってきた。地域養成校の改革が進んでるとのMCCによる広範囲な評価を受けて、卒業生のトップ1パーセントがCIWの入試を受ける許可を与えられた。1パーセントのうち半数が、ふるい落とすために実施された厳しい入学試験に合格した。毎年、地域養成校からの志願者と合格者の割合が増えている。階級とは違って、本校への入学許可は売買されない。

 3062年から、タウラス連合の選ばれた生徒がCIWへの入学を許可されている。

カリキュラム Curriculum

 CIWのカリキュラムと訓練はサン=ツァン・メック戦士養成校(SZMA)を真似ており、違うのはコースの大半が長いことである。

 基礎訓練は6ヶ月である。SZMAほど厳しいものではないが、それでも新入生たちにかつてのMAFとは違うショックを与えるように設計されている。さらに重要なのは、このような過酷さによって10年選手の古参戦士がCIWでは地域校卒業生とたいして変わりないと気づくことにある。

 基礎訓練のあと、現在、ふたつのMOS(4年制)が提供されている。メック戦士と気圏戦闘機パイロットである。装甲歩兵MOSは開校時にカリキュラムに含まれていなかった。なぜなら、そのときMAFはバトルアーマーを持っていなかったからだ。最近バトルアーマーがMAFの名簿に加わったことで、カリキュラムへの追加が考慮されているところである。またSZMAのようにCIWは大学にしかないような広範囲なコースを提供している。

 元々はMAFの人員だけが教員になっていたのだが、3062年、CCAFの退役軍人数名が選ばれたコースでの教育を始めている。3063年時点で、希望者全員が望んだコースに入れないことから、枠の拡大が求められている。

校風 Atmosphere

 厳しさの点ではSZMAと大違いなのだが、CIWの生徒の多くが、辺境で最高の学校(一部の中心領域校を上回り始めている)に入学する権利を得たことに気づいている。苛烈さと、地域校卒業生、MAF古参兵の間で発生するしごき行為が組み合わされて、大勢がCIWから脱落している。3062年の古参兵退学率が、地域校卒業生の脱落率よりも大きかったことは、地域校が進歩していることの証明となっている。

卒業 Graduation

 CIWのスクールカラーは、金色、銀色、ラベンダーである。卒業生の全員にハーフケープ(表地が銀色で裏地がラベンダー、金色で縁取りされる)が授与され、礼装として着用する。戦場において、卒業生たちは己と周囲に危険をさらさない実用的な形でスクールカラー3色の着用を許可される。

 統一政体親衛隊、シュヴァル猟機兵隊、カノープス機兵連隊は各クラスから卒業生を選抜することを許される。3062年の最初のクラスから選ばれたのは少数なのだが、聖アイヴスでの第3カノープス機兵連隊の活躍ぶりは目を見張るもので、全3個戦闘隊列が3063年のクラスから大勢を引き抜いた。







人物 Personalities

 例外なく、以下の人物たちの運勢は、統一政体と本質的に絡み合っている。この辺境国家と一緒に運勢が上下するのだ。


エマ・セントレラ Emma Centrella

 54歳のエマ・セントレラは美と魅力の大半を保っており、それが辺境国家のリーダーでも随一の外交能力を助けている。知性が高く、国家の利益に身を捧げてきた総統は、サン=ツー・リャオの最も価値ある仲間に数えられる。母カイアラ・セントレラとの嵐のような関係で、エマは政治ゲームと宮廷陰謀劇を学んだ。こういった手腕をもってして、3039年のカイアラ・セントレラによる暗殺を阻止し得たのである。3040年までに、エマはカノープスの玉座を不安定な母親から奪い取るのに充分な権力基盤を作り上げた。それ以来、彼女は統一政体をかつてない繁栄と影響力の増大に導いた。これはタウラス連合との歴史的な同盟によって実証されている。タウラスとリャオ家との同盟が、彼女の十八番である大胆なギャンブルの好例である。

 総帥は長女の死を冷静に受け止めたようだ。他の辺境統治者とは違って、エマは氏族による脅威を理解しており、なにかをなそうとしていた。彼女はダナイの死について星間連盟、中心領域を非難していないようだが、代わりにナオミ・セントレラを後継者として育成することに勢力を傾けている。


ナオミ・セントレラ Naomi Centrella

 最近24歳の誕生日をシーアンで祝ったナオミ・セントレラは、カノープス統一政体の後継者候補になるなど思ってもいなかった。スポットライトを浴びて以来、ナオミは年齢にふさわしくない落ち着きと優雅さで自らを保ってきた。母親の魅力と外交能力に恵まれたナオミ・セントレラは後継者にふさわしい人物であるようだ。

 死んだ姉よりもメック戦士としての腕は劣ると見なされているものの、ナオミはこの数年間、軍事指導者として相当な能力を見せている。現在、彼女はカペラ宙域に駐留するMAF部隊の総司令官を務めており、あらゆる面で仕事を見事にこなしている。

 彼女はサン=ツーに個人的な好感を抱いているようで、すぐにもイシス・マーリックに取って代わるだろうという噂が飛びかかっている。これがどれだけ信用出来るかは定かでないが、このごろ二人は長い時間を過ごすようになっている。ナオミ・セントレラのサン=ツーに対する気持ちは本物であるようだ……逆がどうであるかは不明である。サン=ツーとナオミの関係についてエマ総統がどう反応するのか衆目を集めるところである。


エルデ・セントレラ Erde Centrella

 エルデは、エマが夫のニコラス・ラミリーに命名を許した唯一の娘である。ラミリーが名前に込めたのは、ドイツ系の祖先とのつながりと、かなわぬことがわかっている夢であった。「エルデ」とはドイツ語で地球のことなのだ。

 長女のように軍事的でもなければ、ナオミのように政治的に洗練されてもいないのだが、エルデは常に深い知性と人々への愛を示し、それが活動的で楽しいことの好きな性格につながっている。15歳で医療学校に入学したのは、愛情深さが要因である。3060年の卒業時点で18歳だった彼女は、新植民地区での植民活動に従事していたMAFの医療軍団に加わった。

 王座に近づくことは予想されていないので、エマはエルデ(と妹二人に)ダナイ、ナオミに与えなかった自由を許している。3061年前半にダナイの死を知った時点で、エルデを総統の後継順位2位にするしかなかったのだが、エルデをカノープスに呼び戻したのはタウラス連合国境近くの新植民地区への海賊攻撃で負傷してからだった。

 それ以来、万一悲劇がナオミを襲った場合に備えて、エルデは総統として育成されている。統一政体ではいつものことであるが、彼女の父親がだれかについて調べられることはなかった。


ハッジ・ドル Hadji Doru

 ハッジ・ドルの高い力量と揺るがぬ忠誠は、過去40年近い軍役で数多の難しい決断をもたらしてきた。その有能さによってタウラス近衛隊(タウラス連合)の元帥となった彼は何年も忠実に勤務し、それから国家と保護官の間で選択を迫られた。彼はタウラス連合全体の利益を選んで、3055年、トーマス・カルデロンを権力の座から排除するのを助けた。だが、いずれかの政治グループがジェフリー・カルデロンと戦うために彼を使うのを防ぐために、彼は辞職して航宙艦に乗り、中心領域へと向かったのだった。

 辺境の人々の中で、彼の名前は歴史の中へと消えていった……3059年、ブルドッグ作戦の際にダナイ・セントレラが彼と出会うまでは。そう長く軍隊生活を捨てることは出来ないとわかっていた彼は、第2ドネガル防衛軍RCTに入隊を申請し受け入れられていた。この部隊はウォルコットで作戦の第4波を終わらせ、スモークジャガーの残党を掃討するために辺境へ移動する準備中だった。ここで彼女はドルと遭遇し、第2RCTを辞めて胸甲機兵団に入隊するよう説得した。

 ストラナメクティへの6ヶ月の旅の間、ダナイはドルのような軍事精神が死活的に必要なことに気づき、その事実を彼に納得させようとした。彼女の主張は胸に響き、ダナイを尊敬するようになったが、ジャガーの手で彼女が死ぬまでは固持を続けていたのである。祖国のために自らを犠牲にする意思に敬服したドルは、カノープスへと向かう決意を固め、どうなろうとも受け入れる覚悟をした。カノープスに着くと、彼はダナイが自費でドルのために大佐の階級を購入していたことを知った。1年に及ぶ注意深い交渉の後で、ドルはMAFの歴史上初の上級将軍となったのである。















カノープス統一政体 Magistracy of Canopus 3075



指導者: ナオミ・セントレラ=リャオ
政府: 君主制(母権制)
首都、主星: クリムゾン、カノープスIV
主要言語: 英語(公用語)、スペイン語、ギリシャ語、ルーマニア語、中国語(マンダリン)
主要宗教: 仏教、キリスト教、魔女宗、ユダヤ教
居住星系: 44
創世年: 2530年
通貨: ドル


ナオミ・セントレラ=リャオ Naomi Centrella-Liao
称号/階級: カノープス総帥、3071年〜
生年: 3023年(3075年時点で52歳)

 ナオミ・セントレラは母の後を継いで総帥になる見込みはなかったのだが、姉のダナイが氏族本拠地で死んだことですべてが変わった。母の魅力と外交本能を受け継ぐナオミは、年齢に似合わぬ落ち着きと優雅さを身につけ、すぐにふさわしい後継者として受け入れられた。

 カペラに貸し出された統一政体軍指揮官を務める間、彼女はサン=ツー・リャオと知り合い、関係を進展させた。聖戦の間に結婚し、母が死亡すると、両国は接近したが、ナオミは民を見捨てて大連邦国の一部となることはなかった。彼女はまた、祖国と同盟国にとってそれがいいと感じた時は、夫を怒らせるのを恐れることはなかった。結婚から生まれた二人の子供(娘イルザと息子ダオシェン)は、王朝の持続性を保証し、統一政体がカペラの操り人形になってしまうという恐怖をやわらげた。


ラヴェンシール・アイアンハンド Raventhir’s Iron Hand

 元々は統一政体近衛隊の名だったアイアンハンドは、何世紀にもわたって総帥の宮殿の守護者を務めてきた。部隊は26世紀後半の星間連盟侵攻初期に創設され、侵略者と激しく戦った。統一政体が星間連盟の一員だった際に解散した近衛隊は、ジャニナ・セントレラが独立を宣言すると再建された。

 アイアンハンドは聖戦で活躍せず、ブレイク派侵攻軍相手のカノープスIV防衛戦で潰滅した。生存者の多くは、損害を負った第1胸甲機兵団の再建に使われた。


第1カノープス胸甲機兵団 First Canopian Cuirassiers

 再統合戦争時に統一政体親衛隊の第2連隊として創設された第1胸甲機兵団は、海賊と戦い、国境世界への襲撃と戦うのに存在の大半を費やしてきた。聖戦までに、彼らは氏族技術を配備する唯一の氏族部隊となっており、それが任務をいくらか楽なものとした。

 統一政体において、親衛隊ほど聖戦の損害が多かった部隊は他にない。カノープスに駐留していた第1カノープス胸甲機兵団の1個大隊は、第41シャドウ師団に追い詰められた。残りはファナーディールで叩きつぶされたが、残存戦力の半分がどうにか占領を生き延びた。第1には再建のためラヴェンシール・アイアンハンドの中核戦士がいるのだが、仮にも再建するというのなら一からやり直さねばならないだろう。部隊は最優先でデトロイトとドゥニアンシャーから物資を受け取ると思われる。


第2カノープス胸甲機兵団 Second Canopian Cuirassiers

 第2胸甲機兵団は、アンドゥリエン公国との同盟の結果として、ほんの数十年前に創設された。3031年、将来の総帥であるエマ・セントレラの指揮の下、第2はカペラ大連邦国への侵攻の先鋒に立った。30年後、新しい同盟の一環として、部隊はカペラの世界に駐屯し、エマ・セントレラがパートナーシップを真剣に考えていることの証拠として、残っていた悪感情の大半を消し去った。

 聖戦が勃発した際には、第2はまだ大連邦国での任務についており、同盟国と肩を並べてワード・オブ・ブレイクと戦った。感謝の気持ちとして、カペラは胸甲機兵団の受けた損害を完全に補充し、カノープス宙域に戻った部隊は統一政体から最後のブレイク派を根絶する努力の中心にいる。


デトロイト統合メックワークス Detroit Consolidated MechWorks

 三国同盟は、関わる全国家に戦争機材を供給するため、条約から利益を受ける関係者全員に協力を求めた。地理的には統一政体が生産拠点として理想的だったが、政治的にはどこの国にも公式に属していない新植民地が望ましかった。最も進んだ産業基盤を持つデトロイトに、新しいメック工廠が与えられた。大連邦国、統一政体、連合が、工場建設のために資金、物資、労働者を供給した。完成すると工場は三ヶ国向けにメックを生産し始めた。

 ライバル他社が成り上がり者の信用を落とそうともくろんだものの、デトロイトで生産された商品の品質は三ヶ国で最高のものであった。品質が高かったことから、新しい設計図がデトロイトに送られて、新型車両のタマルレーン・ストライクスレッドやダナイ間接砲支援車両など、6つ以上の生産ラインを持つまでに拡大した。


マジェスティ金属工業 Majesty Metals and Manufacturing

 1世紀以上にわたって、マジェスティ金属工業は統一政体における唯一の兵器製造会社であった(個人武器のぞく)。この国で最古の企業のひとつであるマジェスティ金属工業は、カノープスの豊富な金属資源を狙って2550年に創業した。継承権戦争が進むと、マジェスティ社は31世紀まで生き延びた唯一の兵器製造業者となった。防衛産業の屋台骨として、マジェスティ社は上手くやってきたが、酷使されていた工場施設に利益のほとんどを還元せねばならず、この国には技術全般が欠けていたことから整備の延期に苦しんだ。マジェスティ社は主に軽量級メックを生産する決断を下し、それはMAFの編制に繁栄されている。


マインドスター・エンタープライズ Mindstar Enterprises

 半ダース以上の世界に施設を持つコングロマリット、マインドスター社は国の内外に政治的圧力をかけることのできる商業の巨人である。この企業は、音楽から消臭剤、トースター、携帯式通信機器に至るまで、幅広い商品を提供している。新規分野に参入する際は非常に攻撃的で、合法的な消費者保護のぎりぎりまで攻める。マインドスター社は兵器を製造していないものの、軍隊から完全に離れているわけではない。MSC社はMAFの隊員向けに個人用の補給物資を供給するひとつ以上の契約を結んでいるのみならず、制服とジャンプスーツも提供しているのだ。加えて、マインドスター社がすべての事業から支払う多額の税金が、統一政体の予算を支えている。




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