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作成:2010/04/03
更新:2023/03/19

インターステラー・プレイヤー Interstellar Players



 星間連盟崩壊以降、宇宙を動かしてきたのは、継承国家であり氏族たちでした。しかし、中心領域(と辺境)には、コムスターをはじめとする力を持った企業、非政府組織、秘密結社、個人が存在し、独自の目的を追求しています。
 そんな"Interstellar Players"(宇宙を動かす者たち)のうち一部を紹介します。











シックス・オブ・ジューン SIXTH OF JUNE


シックス・オブ・ジューン:謎を暴く
文:サンドラ・レインズ

編集注悲しむべきことに、サンドラ・レインズはこの記事をまとめた直後に失踪した。足取りはつかめていない。彼女の追憶に敬意を払い、この最後の報告を公表する。

 その歴史の始まりから、人類は暗殺、諜報、反乱の誘発など悪逆非道な手段によって敵と味方の情報を得ようとしてきた。秘密組織が作られては消え去り、闇の世界にその名を残してきた。一部は、テンプル騎士団、イルミナティ、ブラックドラゴンのように、所属する社会の構造を変えてきた。シックス・オブ・ジューン(6月6日)はそのような組織のひとつで、諜報の専門家たちから最も謎めいた組織のひとつであるとされている。

 過去二年にわたって秘密裏に活動してきた私はシックス・オブ・ジューンの謎を解こうと努力してきた。この報告書の情報から、なぜ彼らが調査を妨害しようとしたのかがうかがえるだろう。さらに、彼らがどれだけ真に邪悪かがわかるだろう。


分裂と再編:歴史概要

 ツカイードの戦いで氏族を破った後、フォヒト軍司教とシャリラー・モリはコムスターの新首位者として、コムスターの聖なる結社を一掃し、再編した。それに応じて、元アトレウス司教デモーナ・アジズが地球のコムスター本部から脱出し、自由世界同盟に移動した。アジズはついてきた者たちを「ブレイクの言葉に忠実なる者」と呼び、首位者モリとフォヒト軍司教をクーデターで乗っ取ったと非難した。自由世界同盟のトップ、トーマス・マーリック総帥はアジズと首位者モリの改革を許容できなかった元コムスター教団員に避難地を与えた。

 調査中に、共通の友人が元コムスターの諜報工作員を紹介してくれた。ダモクレスの名前で知られる最近"引退"した司教は積極的にいくつかの質問に答えてくれた。彼の返答は特にシックス・オブ・ジューンに関しては率直であった。彼は何か悲惨なことが起きる前に、この情報を公にするべきだと考えたようだった。彼の最近のプロジェクト・フェニックスに関する仕事がその証明になった。

 我々はカオス境界域シェラタンのセーフハウスで面談を行った。彼の「友人たち」に囲まれた私は、コムスターの諜報組織から「引退」したのが一人でなかったのを容易に伺うことが出来た。ダモクレスに会った時、彼は堂々としていた。会話中、長年に渡る極秘作戦の習慣から、彼は周囲をスキャンし続けていた。


記録したインタビューの書き起こし
サンドラ:お会いしてくれてありがとうございます。
ダモクレス:どういたしまして。興味を引かれたことを認めなければならないな。
サンドラ:共通の友人が言うにはあなたは[シックス]に関する専門家だと。
ダモクレス:ああ、彼らと戦うのならそうならねばならないんだ。
サンドラ:シックス・オブ・ジューンについて聞く前にお聞きしますが、コムスターの分裂前に第一系列の中で何が起きたのでしょうか?
ダモクレス:あたりまえのことだが私はそこにいなかった……その時は氏族占領域での特殊任務についていたんだ。でも、何があったかの未編集の録音と書き起こしを調査したんだよ。フォヒトはウォータリーがたくらんだスコーピオン作戦の件で激怒していた。彼女の行動でコムガードのツカイードでの勝利が失われかけたんだ。教団内のだれかが王家君主に密告したために、陰謀は失敗に終わった。現在までそれが誰かは分かっていない。フォヒトはウォータリーのスコーピオンへの共謀を明らかにした後で、引退を強要した。
サンドラ:引退させたのですか? 殺したのですか?
ダモクレス:それは単なる噂だよ。彼女は直後に動脈瘤で死んだんだ。
サンドラ:本当ですか。
ダモクレス:そうだ。
サンドラ:オーケー、ではデモーナ・アジズについて教えてください。
ダモクレス:自らの壮大すぎる夢想に踊らされた権力狂いの自分勝手な売女さ。
サンドラ:なんですって?
ダモクレス:失礼。ふさわしくない発言だった。
サンドラ:理解できます。私はツカイードにいて何が起きたかを覚えています。
ダモクレス:君については調べてある、サンドラ。きみの業績とその他の所属は知っている。だからこの場に来たんだよ。我々は同じ立場にあると考える。
サンドラ:ありがとうございます。
ダモクレス:いや。
サンドラ:デモーナ・アジズが第一系列の議場から飛び出した時、コムスターの分裂につながると思った人はいなかったのですか?
ダモクレス:いいや、誰もこれから起きることなんてわからなかった。モリとフォヒトはアジズを急進的な狂信者と考えていた。彼女がどれだけ仲間を集められるのかわかっていなかったので、こんな問題を引き起こすとは思わなかったんだ。
サンドラ:でも、彼女は忠実な手下を引き連れていた。
ダモクレス:正確ではないな。彼女はこの二世紀で作られてきたコムスターの忠士たちを操るのに熟達していたんだ――コンラッド・トヤマが始めたブレイクの言葉とされるものへの忠誠心を利用したのだよ。
サンドラ:でも、最終的には同じことです。そうでしょう?
ダモクレス:その通りだな。
サンドラ:なぜ首位者は彼らの大量離脱を許したのですか?
ダモクレス:改革を受容できない不満分子を追い出せると考えたのだよ。問題は80パーセント以上のROM工作員がアジズに加わってROMを機能不全にしたことだ。
サンドラ:あなたはROMかその他の組織のメンバーだったのですか?
ダモクレス:ああ……そうだ。私はブレイクズレイス(コムガード特殊部隊)でROMだった。
サンドラ:シックス・オブ・ジューン運動に気づいたのはいつですか?
ダモクレス:我らの情報源はこの運動に文字通り出くわした。情報を集めた我らはこの連中がワード・オブ・ブレイク内の非常に危険な一派だと気がついた。小規模なのだが、奴等はその他の派閥より急進的だった。権力狂いでコンラッド・トヤマの教えに心酔していた奴らはワード・オブ・ブレイクを支配しようとしていた。奴等は目的を達成するためならどんなことでも出来るだろう。奴等はたしかに我らにいくらかの問題を引き起こしている。私のチームは奴らと何度も交戦してきた。オデュセウス作戦でもだ。
サンドラ:彼らの目標は?
ダモクレス:継承国家を破壊し、王家君主たちを暗殺することだ。
サンドラ:待ってください……継承国家を破壊し、王家君主たちを殺すですって? どうやってですか?
ダモクレス:見当もつかないが、奴らはまずブレイク派のリーダーたちの暗殺から始めたようだ。
サンドラ:誰ですか?
ダモクレス:トレント・アリアンがその一人。もう一人がクラウス・ヘティク。そして忌避派(Shunners)の連中。
サンドラ:そうして(キャメロン)サン=ジャメはブレイク派の軍司教となったのですか?
ダモクレス:そのようだ。
サンドラ:クラウス・ヘティクとは?
ダモクレス:国外派(Expatriates)のトップだった。
サンドラ:暗殺されたのですか?
ダモクレス:いいや、処刑されたのだ。
サンドラ:なぜです?
ダモクレス:彼はヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンが軍司教になったあとで教団を離れブレイク派に加わった。アレクサンダー・ケルノフは彼がコムスターROMの工作員であることを暴露したのだ。ケルノフが――ブレイク派のROM司教だが、クラウス・ヘティクの裏切りを証明したのだそうだ。
サンドラ:ケルノフは知っています。報告によると、彼は対諜報戦で最高の一人だとか。
ダモクレス:その通りだ。彼は非常に危険で、だからサン=ジャメがROMの運営を任せた。噂ではマスターが直々にケルノフを選んだとか。
サンドラ:マスター?
ダモクレス:そう。おそらくシックス・オブ・ジューンの指導者がそう呼ばれている。
サンドラ:マスターが誰かご存じなのですか?
ダモクレス:いや、まったく。だが予想はできる。
サンドラ:カーリー・リャオ?
ダモクレス:なぜそう思う?
サンドラ:私が得た情報によるとサン=ジャメは彼女に関わりがあると。
ダモクレス:そうかもしれない。カーリーとキャメロンは秘密の会合を持っていて、最近はハイスパイアで行われた。
サンドラ:会合の結果についてわかりますか?
ダモクレス:正確には。だが彼らのカオス境界域での行動が増加しており、カペラの利益になっていることに留意している。
サンドラ:シックス・オブ・ジューンが真に危険なのはどういうところだと思いますか?
ダモクレス:非常に危険で、行動の予想が付かず、目標を達するためにはどのような手段でもとるところだ。
サンドラ:たとえば?
ダモクレス:もし彼らが大量破壊兵器を手に入れればそれを使うだろう。
サンドラ:使ったのですか?
ダモクレス:現時点では確かなことは言えない。
サンドラ:ウェイに貯蔵されていたUrbStryc-Aが痕跡を残さず消えたことはご存じですか?
ダモクレス:ああ。自由世界諜報部のコンタクトがそれを伝えてくれた。
サンドラ:カペラ=聖アイヴス戦争のブラックメイ毒ガス攻撃にシックス・オブ・ジューンが関わっていたのは本当ですか? その代わりに、カーリー・リャオがデモーナ・アジズを殺したと。
ダモクレス:そのように聞いている。
サンドラ:どんな話ですか?
ダモクレス:ニューデトロイト事件の後、サン=ジャメがカーリーにサン=ツーをそそのかす情報を与えた。引き替えに首相が直々にアジズを殺した。
サンドラ:待ってください。サン=ツー・リャオが殺したとされているのですか?
ダモクレス:彼が引き金を引いたという確かな証拠がある。
サンドラ:シックス・オブ・ジューンとヴィコア社の関係はどうでしょうか?
ダモクレス:ない。
サンドラ:ない?
ダモクレス:私の知っている限りでは。私はダグ・ケッセルリンク司教がシックス・オブ・ジューンの一員だと突き止めた。カトリーナ・シュタイナー=ダヴィオンが彼らと関わっていたことを示唆する証拠すら発見した。彼女はライラの技術をブレイク派に提供する署名をしていたのだ。
サンドラ:驚くべき情報です。ケッセルリンクとは何者なのですか? シックス・オブ・ジューンは連邦共和国内戦でカトリーナを支援していたのですか?
ダモクレス:ケッセルリンクはターカッドの(コムガード)第66師団を指揮していて、ターカッドの戦いでノンディ・シュタイナー将軍を直接支援した。そう、シックス・オブ・ジューンがカトリーナを支援したのだ。彼らはジェローム・マークス司教指揮する最高の特殊作戦チームを送り込んだ。彼とライト・オブ・マンカインド(ワード・オブ・ブレイク特殊部隊)は、恒星連邦での作戦を担当していた。アーサー・シュタイナー=ダヴィオンを殺したとされる爆弾を仕掛けたのが彼らと言われている。
サンドラ:殺したとされるとはどういう意味ですか? アーサーはロビンソンで死にました。
ダモクレス:そうかもしれない。だが、プロジェクト・フェニックスの最中に集めた証拠は別の可能性を示唆している。残念ながら、確証は得られなかった。
サンドラ:なぜです?
ダモクレス:確かなことは言えない。切り札にするためか、ほかの理由があるのだろう。
サンドラ:ヴィクターは知っているのですか?
ダモクレス:知っている。彼は私の報告を読んだ。
サンドラ:反応はどうでしたか?
ダモクレス:無関心であるように見えた。
サンドラ:ふむ……オーケー、質問を変えます。ブラッディハンドというものについて何か知っていませんか?
ダモクレス:どこでそれを聞いた? 失礼、警告の言葉と受け取ってくれ、ミズ・レインズ。忘れたほうがいい。
サンドラ:なぜそのようなことを言うのです?
ダモクレス:ラテン語で彼らの名をマネイ・ドミニという。おおざっぱに訳すと、「ブラッディハンド」か「ハンズ・オブ・マスター」となる。奴らは殺しを好む狂った異常者どもで、マスターにのみ従う。
サンドラ:それは――
ダモクレス:この音はなんだ? ハマー、見てこい。
ハマー:了解
ダモクレス:話は終わりだ。シュライク、ジャベリンと一緒に行ってくれ。彼らは君を船まで安全に送り届けるだろう。ハマー、チームを展開しろ。

 ダモクレスの「友人たち」はすぐに私をコテージの裏手から森に隠されていたホバー車両に急がせた。私たちが立ち去った後、レーザーと砲弾の音が聞こえた。私たちが追撃を受けることはなかったが、惑星を脱した後でさえ、誰かに監視されているという感覚を振り払うことが出来なかった。離陸する前にダモクレスはまた会おうと行ってくれた。どうしたものか、私はその言葉を疑っていない。





HPG COMM TRANSMISSION A-473B78-0988


サンドラへ

 このメッセージがあなたに届くことを願っています。こちらの状況がどれほど悪いものかあなたには信じられないことでしょう。ROMのロー/オミクロンとミュー/サイ(防諜部門)の工作員が不信心者を探そうとあちこち飛び回っています。私は彼らのネットワークを破壊しましたが、まだツキは失われていませんでした。求められた情報を得るため、私は出来る限りのありとあらゆる手管を使いました。心配しないでください。痕跡を消すために充分なワームとゴーストを残していきました。彼らはなにが起きたかを理解しようとするだけで、何ヶ月もかかることでしょう。

 マスターについて調べるなかで、私はいくつかの興味深い結果とふたつの可能性に突き当たりました。ジェローム・マークス司教とカーリー・リャオです。私はケルノフに目をつけたのですが、彼はROM運営で忙殺されているので可能性を除外しました。トヤマ派のリーダーではありますが、彼は究極的にはサン=ジャメの下についているのです。

 ライト・オブ・マンカインド(ブレイク特殊部隊)の一員であるジェローム・マークス司教が繰り返し俎上にのぼりました。彼は尊敬と権力を自在に操るちょっとした戦略の天才であるようです。カトリーナ・シュタイナー=ダヴィオンによるメリッサ、ハンス・ダヴィオン、アーサー・シュタイナー=ダヴィオン暗殺の陰謀を手助けしたとの証拠があります。彼のコードネームは「処刑人」でした。おそらく彼は爆発で重傷を負い、生きるために大々的なサイバネティクス移植が必要になったのでしょう。聞いたところでは、彼はサイバー移植によって正気を失ったのだとか。現在はどこかの閉鎖病棟に閉じこめられ、ハイテク玩具の実験をしているそうです。

 そしてカーリー・リャオ。伝えられるところによると、カーリーのサギー教団は中心領域に信者の広大なネットワークを有しており、シックス・オブ・ジューンはそこからえり抜きの新人を集めているとのことです。一部の証拠では、カーリーの助けによってサン=ジャメがマスキロフカを危機にさらし、CCAFへの浸透を行ったとされています(武家のいくつか、デスコマンドの一部、聖アイヴス部隊にさえも)。彼女がハイスパイアに独自の特殊部隊を持ち、サン=ジャメのために活動しているという兆候さえもあります(私が発見できたその部隊の名はシボリヤ・ラオフー――シベリアンタイガー)。さらに指揮統制はハイスパイアから行われているとのことです。サン=ジャメが頻繁にカーリーと接触しているともされています。サン=ジャメは全王家と辺境国家の最新版フィールドマニュアルを所有しているとのことです。最後になりますが、カーリーとサン=ジャメの関係はあるじと下僕のものであるように見えます。カーリーからサン=ジャメへのすべてのメッセージには「我が忠実なるキャメロン」とあるのです。

 私はマネイ・ドミニの情報を発見することにもどうにか成功しました。彼らの名はラテン語で「ハンズ・オブ・マスター」を指します。シックスのサブカルトであるらしいこの組織は、大部分がシックス・オブ・ジューンの正規信者、サギー、一部の元氏族人で構成されています――氏族の大半は分離したスモークジャガー、追放されたノヴァキャットの幻想を打ち砕かれた者たちです。おそらくその他の侵攻氏族からも少数が加わっています(その多くがエレメンタルで、メック戦士は少数)。地球に住むチャンスと現在の状況に復讐できることが動機になったのでしょう。ショッキングなことに、これらの名誉を失った氏族人たちは取引の一部としてサイバー強化を受け入れているそうです! しかしながら、移植は精神異常を含む不快な副作用があるでしょう。マネイ・ドミニはカオス境界域でウルフネットとその他の諜報工作員を殲滅する役割を請け負っているようです。

 あなたが興味を持つかもしれないその他のものについても発見しました。これは歴史を否定し、なぜコムスター(現ワード・オブ・ブレイク)がダヴィオン家とシュタイナー家を憎んでいるかの説明になっています。私はジュネーヴの古い資料ビルでこの日記(ハンニ・シュミット大佐によるもの)を発見しました(ユニティシティが開放された後で発見され、その後「失われた」のでしょう)。シュミットはリチャード・キャメロンが殺された時の、親衛ブラックウォッチ最後の指揮官でした。この日記はキャメロンの死とその後の出来事について非常に詳細に書かれています。これはなぜ古きコムスターとワード・オブ・ブレイクが連邦共和国に関わったのか明らかにするでしょう。

 サンドラ、これは恐ろしいものです。気を付けてください。彼らがあなたを見つけたら生き残れないかもしれません……

敬具

…[氏名削除]…



結論と新事実

 悲しむべくことに、この手紙を送った後、このコンタクトは行方不明になった。彼が地下に潜って逃亡したことを望む……しかし私にはそれを確認する方法がない。彼の手紙はカーリー・リャオがマスターであるとほぼ確認している。

 この日記にはいくつかのショッキングな新事実が書かれている。私は遙か昔に死んだ兵士の言葉を読んで恐怖を覚えた。それは親衛ブラックウォッチ最後の指揮官のものだったのである。シュミット大佐の日記は我らが知っている2766年12月27日の出来事と矛盾している。歴史によると、キャメロン一族の血統はこの日に死に絶えたことになっている。だが、シュミット大佐によると、リチャードの双子――アマンダ、イアン・リチャード――が生きのこったということなのである。リチャードと妻エリーゼは一人の子供しかもうけてないということになっていた。だが、シュミットは自ら双子を助けたと語っている。だれの子供が王の間で死亡したのか? なぜ一人だけだったのか? アマリスは双子が死んだことを知り、それを隠そうとしたのだろうか? もしくはコムスターが隠したのか? データは事実上この日から存在せず、陰謀論に信憑性を与えている。

 シュミットはどのようにこれをやってのけたのか? 大佐がその命をかけた大胆な作戦によって、子供は双方とも運命の日の混乱のさなか神隠しにあった。イアン・マッキントッシュ少佐とその小隊が子供たちを惑星外に逃す時間を稼ぐために、シュミットと部隊はゴースト平原で死に絶えた。シュミットが第4アマリス竜機兵団を抑えているあいだ、マッキントッシュはピュージェット湾の隠し基地に向かい、コロッサス級降下船アビスに乗って惑星を離れたようである。レーガン宇宙防衛システムがこの輸送船を月の裏側まで護衛し、そこに戦艦が隠れて待っていた。この船――ブラックライオン級〈トリピッツ〉――が彼らを太陽系の外に連れて行った。シュミットの日記はその後の予定を語っている。

 私の最初の反応はこの日記を疑うことだった。結局の所、これがユニティシティ(星間連盟首都)解放後に見つかったとはいえ、なぜキャメロンの子供の安全のため破棄されなかったのだろうか? それとも少なくとも彼らを追うために使われたのだろうか? しかしながら、長い調査活動のなかで、事実は小説より奇なりであることがわかっていた。簒奪の失敗とエクゾダスに続く事件の混乱の中で、このような日記が失われてしまったことを私は容易く理解した。私はこの件に関するさらなる情報を求め続けている。もしこの日記が事実なら、結果は驚くべきものである……キャメロンの血統は他の王家と混じったのだろうか? だが、300年経ったいま、先行きは暗いものである。

 カーリー・リャオに関して、[氏名削除]から受け取ったものよりさらに具体的なものが必要である。良くないとは思いながら、私はモルデカイに最後のコンタクトを取った。彼は来てくれたが、その命を代償とするかもしれない。彼はカペラの最新フィールドマニュアルと共にキャメロン・サン=ジャメに送られた手紙を渡してくれた。この手紙は連邦共和国内戦にシックス・オブ・ジューンが関わったのを決定的に実証している。

 これはカーリー・リャオがマスターであるという否定できない証拠を提供している。加えて、シックス・オブ・ジューンは連邦共和国内戦の混乱を利用して、カオス境界域内での秘密作戦を行った――他にはカペラのチコノフ征服を支援した。5つの世界が彼らの支配下に入り、さらに3つが影響下に入ると、ワード・オブ・ブレイクはこの地域に小さな国家を設立し、これら8つの世界(と地球)を守るのに必要とされているより遙かに大きな戦力を終結した。

 この調査で証拠が集まったのに伴い、私はカーリー・リャオが地球周辺の世界を征服する戦争を始め、もしかしたら汎地球=カペラ=自由世界帝国のようなものを作るかもしれないという結論を下した。そのような連合は中心領域で最も強力な国家を作ることだろう。カーリー軍の大部分はシックス・オブ・ジューンのブレイク市民軍が占め、これを復興したカペラ、自由世界軍が支援すると思われる。もし彼女がこれを成功させたら、カーリーは自身をこの帝国の女帝とするだろう。

 これが止められる見込みは薄い。シュタイナー、ダヴィオン、クリタの軍隊は戦争で痛めつけられ、ばらばらになっていることから、カーリーに対抗できないだろう。特にシックスの同盟相手であるマリア帝国、コンパス座連合、タウラス連邦がカーリーの征服を支援するために独自の攻勢に着手するならそうなるだろう。さらに悪いことに、王家の情報局と軍隊は何が起きているかに気づいておらず、国境の外のことより内部の問題に目を向けているのである。コムスターでさえも氏族と、中立の評価の再建に注視しているようだ。

 ダモクレスの警告は実を結んだようだ。近年の戦争で中心領域は茫然自失となり、そのあいだ危険な嵐が今にもやってきそうになっている。氏族の脅威がほぼ終結し、すべての前線が静かになる中で、王家は最悪の時期を脱したと信じて緊張を解きつつある。来るべき災厄の兆候はここにあるが、氏族への注目と内部の争いが彼らの目を曇らせているのだ。

 INN、サンドラ・レインズ。





ハンニ・シュミット大佐の日記から抜粋


2766年12月12日
 時間の問題だ。我らが愛する星間君主の死によって発生した暗雲は、ケレンスキー将軍とSLDFの主力が辺境国家の反乱と戦うために出発した後で、私は辺境世界共和国から来た自称「アマリス卿」が信頼できないことを若きリチャード卿と何度も離そうとしているのだが、彼は耳を傾けようとしない。この蛇使い以外誰の話も聞かないのだ。私は再びキャリアの絶頂であるこの職務について考えた。我が人生においてこれほどの名誉が与えられることは他にないであろう。だが、もうそうではなかった――この15年間、状況がゆっくりと悪化していくのを目撃してきたからそう言うのではない。私は何が起きたのか目撃する唯一の人間なのだろうか? それとも対処できる唯一の人間なのか? 私は時折、200年におよぶ平和と啓蒙が好戦的な人間への対処法を失わせてしまったのではないかと考えてしまう。それまでの5000年あまりにわたる戦争で、我らは腕を広げるより振り上げることを教え込まれた。キャメロン家によるカリスマ的な統率力のみが、相手の喉を狙いあう状況から強欲的な中心領域国家を守ったのである。同じくらい私の心を悩ませているのは、人生をかけて守ると誓った人物の弱さを許していることである。いつの日か、馬鹿なリチャード卿のような無能者が星間連盟の玉座に座ってしまうだろう。どのような地獄が待っているのだろうか? 今日、もう一度あの蛇遣いについて話そうとしたとき傷つけられる事態が発生した。このとき、私は成功するという希望を持っていた。私は部下の士官たちと有力貴族たち――全員が辺境世界共和国の兵士が地球に増えつつあることを懸念していた――を加わるように説得した。しかし彼は我らを嘲笑した。我々全員をだ。彼は我らの恐怖を馬鹿にし、アマリスにその名が汚されたことを伝えると言った。我らが主は我らを部屋から追い出した。

 寒い夜だ。彼の良いように進んでしまうだろことを肌で感じる。この文章が見つかったら責任を取らされることは分かっていた。あの蛇遣いは私の称号を剥奪し、処刑するのがお好みだろうか? だが私はどうにか苦悩を紛らわさねばならなかったのである。長年にわたりあの蛇遣いが馬鹿なリチャードに危害を加えようとしているのは分かっていたが、公然とした行動は私が妨げた……我が主が私を拒絶してからさらにそうなっている。よって、私は行動に移ることにした。一年以上かけた計画が彼の命を救うだろう。すべてが失敗したとしても、イアンが彼を連れて――両方を連れて――安全なところに行くはずだ。

 神よ、我を赦したまえ。


2766年12月21日
 今日は静かだった。静かすぎる……巨大な嵐の前のように。最後のピースが収まった。私は準備を行うようにマッキントッシュ少佐に命じた。危機の兆候が見られた時点で、彼は主を確保し、脱出ゾーンに向かうことになる。
 骨が痛い。それは単純に疲労のためだろうか? それともこのぼんやりとした恐怖による重みのためだろうか?


2766年12月27日
 ああ、ついにこの日がやってきた! 暗雲がついに嵐となり、あの蛇遣いが仮面を脱ぎ去った。彼が星間連盟を打倒しようとしたとき、私の恐怖のすべてが現実のものとなった。もし、計画がすべて上手くいけば、イアンはすでに影武者とすり替えられ、安全にアビスへと向かっていることだろう。彼がこれを成功させたのか、まだ私は知らない。通信するつもりはない……連絡を取ろうとすれば、この注意深く策定された計画の全てが崩壊するだろう。私は、蛇どもの注意を引きつけるためブラックウォッチの大部分をゴースト平原に移し、イアンが地球から帝国内のどこか安全なところに行けるようにした。もしそれが無理なら、彼はダヴィオン家かシュタイナー家の「友人」のところに落ち延びるだろう。

 私は主を裏切った。私は2名の罪なき子を犠牲とした。蛇は確実に彼らを殺すだろう。私は羊のようになにも知らぬ部下たちを虐殺の場に導く。すでに失われたかもしれない希望である。少なくとも骨の痛みはどこかに消え失せた。これが最後の日記になるだろうことはわかっている。

 神よ、我を救いたまえ。














インターステラー・エクスペディションズ Interstellar Expeditions


ゲームマスターセクション

 インターステラー・エクスペディションズ(恒星間探検隊)は、その名の通りのものである。プロとアマチュアの人類学者、考古学者、社会学者、歴史家、研究者、その他の似たような研究分野の学者の寄せ集めで、はるか昔に失われ、放棄された人類の居住地と、その他の人類が宇宙に出てからの歴史の証拠を発見するのにエネルギーとリソースを注ぎ込んでいる。IEは考古学的な発掘作業を計画、監督、実行できる人員を訓練している。これには、遠征前の事前調査と、発見したものや情報の研究が含まれている。

 人類領域で見うけられる大学や博物館の似たようなグループとはいくつかの点で異なっている。まず第一にIEは中心領域と辺境で約400年にわたって存在している恒星間組織である(主要な惑星の多くに、二つ以上のIE組織が本拠を置いている)。二番目に、さほど重要でないのは、IEが営利目的組織ということである。彼らは、発掘を行いたいが人員と兵站能力を欠いている団体にそのサービスを提供する。

 それ以上に、IEは中心領域でもっとも有名な――あるいは悪名高い――謎のいくつかを解こうとしている。それほど公にはなっていないのだが、この目的はIEについての情報を詳しく調べた者ならだれでも知っている。しかしながら、IEがなぜそれを求めるかは公開されていない。実際、この組織の大多数が、なぜIEが謎の解明を求めるのかを知らない。知っているのは、IEの源流となった団体のひとつ、相互探検ネットワーク(MEN)が、自由時間をミネソタトライブの研究に身を捧げた者たちによって結成されたことだけである。

 組織内のわずかな関係者だけが真実を知っている。それでも、組織内の異なる団体が独自の目標を追い続けている。



インターステラー・エクスペディションズの目的

 IEの第一の目標は利益をあげることにある。活動に寄付してくれる者はいるのだが、最も額の多い収入源は外部に雇われることであり、二番目は発掘物や情報をコレクターや学者に売ることから来ている。よって、IEはビジネスを助けるプロのマーケティング、連絡担当者を持っている。

 IE内には、独自の目的と方法論を持った相当数の専門的なサブグループが存在する。これらのなかで最も知られているのが、ミネソタトライブの起源と運命を追い求めるMENである。この目的は、大勢のアマチュア(人類学、考古学、社会学などの学位を持たない者たち)と、少数の専門家、学者を引きつけている。このため、IEはミネソタトライブに関する情報源となっている(以下の「知られている事実」を参照)。この調査の一環として、IEは長年に渡り、人類宙域に住む人々の想像力をかきたてるような重要なその他の重要な秘密を調査するために、多大な資源を割いている。

 もうひとつのまったく有名でない目的も、IEの元になった三つのグループが合併する前から存在する。ミレニアム財団は、地球からの大脱出と、ステファン・アマリスの占領後に失われた宗教的遺物と関連するものの再発見に身を捧げた組織である。最終的に、パドリック教団の分派がその仕事を助けるために財団に加わった。パドリック教団の聖職者たちもまた特定の失われた聖遺物を探し求めている。IEの数グループがこの仕事を続けており、人類の全宗教が残したイコンとアーティファクトを探している。

 そして、IEには見聞きしたことの異なった解釈を追い求める者たちがいる。IE内のごく少数派は科学や宗教では説明のつかないものに非現実的な解決策を求める。彼らは積極的に不可思議な減少を探し出し、すべてを超自然的な存在か、人ならざる知性体と結びつけようとする。この分野に属する人員はIEのうち1%以下だが、必要なときにはかなりのリソースを使うことができる。



知られている事実

 各隊員による二世紀以上の調査により、インターステラー・エクスペディションズはミネソタトライブとその他の調査対象についてかなり多く突き止めている。そのうちの一部が以下のものである。


ミネソタトライブ
 IEが最も長きに渡って調査し、膨大な資源をつぎ込んできた謎である。

・IEはウルバリーン氏族のことを知っており、ミネソタトライブがウルバリーンではないかとほぼ確信している。

・彼らは中心領域襲撃の際にトライブが訪れた数十の星系を発見しており(最も有名なのは、クヌートスタッド、ナイコングズ、ミッチャル、ベリゴラ、ヘルガジル、マッコーラ、クーパーランド、バイシップ)、トライブに関する大規模で多彩な品々を所有している(記章、衣服と制服、個人装備から、トライブの活動に関するビッド録画、残していったスクラップとゴミ、未確認の組織サンプル、トライブの隊員と思われる遺体まで。遺体の埋葬方式は、この時代のものでも、現在の氏族のものでもなかった)。

・彼らはエリスの地のコアワードから恒星連邦国境まで、トライブが使った数十の星系のルートをたどった。彼らはタウラス連合のリムワードでトライブの痕跡を"見失った"。彼らは現在の氏族占領域から200光年離れたコアワード方面には行っていない(行ったわずかな探検隊は消息不明となっている)。

・IEの担当者がバビロン宗教会議に2度参加し、この機会を利用して氏族宙域にコンタクトを作ろうとしている。これまでのところ、捜索に加わった氏族人はいないが、一部はトライブがウルバリーン氏族の生き残りであるとわかったらいったい何が起きるのかそれとなく脅しをかけている(特にゴーストベアは敵意に満ちるだろう)。IEがトライブの「アーティファクト(遺物)」を持ってると知る氏族人はいまのところ存在しない(IEはなんとしてもこの秘密を護るだろう)。

・マクイヴディ・フォーリーの世界はいまだ謎のまま残っている。この惑星に入植したのがミネソタトライブであるとの証拠がいくつかあるが、直接的なつながりは発見されていない。これらの入植者たちは一世紀以上前にトライブと別れ、かつての文化的なルーツは失われている。


辺境世界共和国
 それ自体、謎はないものの、辺境世界共和国にまつわる話は、不正確で、欺瞞に満ち、矛盾しているように見える。

・いくつかの理由から、IEのチームはライラ辺境で多大な時間を費やし、かつて辺境世界共和国に属していたいくつかの星系を発見した。そのうちの一部はいまでも人が居住している。これらの星系は通常の星図に載っていないが、IEはこれまで訪れた全星系の完全なカタログを持っている。

・IEは少なくともふたつの"隠された"アマリス軍前哨基地に遭遇した。使用可能な技術は遙か以前にはぎ取られていたが、価値ある情報が残っていた。さらなる隠し施設の発見につながるかもしれない情報が含まれている。

・辺境世界共和国の市民に何が起きたかは現在にいたってもわかっていない。IE内の一部は様々な可能性を探求し続けている。ミネソタトライブと失われたアマリスの人民を繋げようとしている者さえいる。

・コアワード方面の辺境と同じく、アンチスピンワードの深辺境にもいくつかの社会が存在する。IEは、ソサエティ・オブ・聖アンドレアス、サモエード植民地連合、アクスム・プロヴィデンスに遭遇している。これまでのところ、IEはこれらの地域に関する知識を秘密にしており、数十年に渡り、各自に対する情報を収拾している。


グリーンゴースト
 その活動を通して、IEはいわゆるグリーンゴーストと何度もぶつかってきた。正確に言うと、両陣営は似たような史跡に目を向けていたようである。IEはこの海賊に多大な注意を向けてきた。この数年、IEは彼らに関する情報と引き替えにかなりの資産を失っている(官僚のコンタクト、私立探偵、多額の賄賂に使っている)。

・ゴーストは(特に宗教的な性質を持つ)歴史的に重要な場所に襲撃を仕掛けてきた。彼らはアーティファクト、書物、データ保存装置、建造物の一部(窓、彫像、そして壁や床から石や木)さえも持っていく。

・襲撃には根拠や理由がないように見えるが、価値のありそうな史跡を教えてくれる高位の情報源がいると思われる。

・一部の者は、グリーンゴーストがある家系の2200年代〜2300年代からの系譜についてか、あるいはおそらく宗教団体の痕跡を追っていると推測している。

・ゴーストは資金豊富で、優秀な装備を持つ。彼らは氏族のやり方では戦わないが、メックを含む若干の氏族装備を持つ。星間連盟製の装備も持つが、その出所は不明なままである。これまでのところ、彼らは一度も戦闘で負けていないようである。

・この集団は数隻の降下船と航宙艦を持っている。全艦、整備状況がよく、それは継承国家が最高の整備と同程度である。

・この集団は、第7南十字星部隊が大量の損失を出したあとにあらわれた。関連性は認められていないが、この集団のバトルメックの大多数がAFFCのRCTで標準的に使われているものである。しかしながら、ゴーストは第7南十字星部隊が活動していた宙域にはあらわれていない。


謎の敵
 ミネソタトライブの真実を追い求めるというIEの探検(あるいは他の任務)に対し、だれが、あるいは何が敵対しているのか、だれにもわかっていない。

・この「敵」はカオス境界域や自由世界同盟にたどることができるのだが、これらの地域(ワード・オブ・ブレイク含む)につながる明白な証拠はあがっていない。

・IEは中心領域のすべての国家と辺境の大部分で干渉を経験している。

・この干渉は通常、IEによる活動に限定され、ミネソタトライブに関する証拠を見つけるかもしれない遠征、既知宇宙の外にある社会を見つかるかもしれない遠征に対するものである。

・妨害はたいてい官僚による邪魔であるが、IEは海賊の攻撃に平均より多く遭遇している。加えて、IEのオフィスは毎年、何度も強盗の被害に遭い、価値の無さそうな物品を失っている。













ヤルンフォルク The JàrnFòlk


CONTACT REPORT ESC-COL-67-4-7

ファーストコンタクト: 3066年3月30日

報告の性質: コンタクトの延長。最初のコンタクトから12ヶ月以上

社会構造: 派閥争い(大家族単位)。ヤルンフォルクは、強力なリーダーシップと大家族を基盤にした血族的な社会秩序に従う。現在、9つの「名門一族」がヤルンフォルクの社会を支配し、その地位を誇りとし、抜かりなく守っている。一族の中には階層が存在し、下位の一族はヒエラルキーを遵守し、他の一族より上であることを証明しようとする。このような勢力争いはダイナミックな社会秩序を生み出す。ヤルンフォルクの言葉は、家族の関係を説明する数多のニュアンスを含んでいる――例えば、"morfar"は「母の父」、"faster"は「母の姉妹」などで、母系か父系かをはっきりと区別する。同じ血族のメンバーは血の繋がりがあるかどうかに関わらず、ソスケンデ(兄弟)と呼び合う。個人と血族の名誉がヤルンフォルクのよって立つ中心になっている。侮辱(故意かどうか問わず)や攻撃は決闘(たいていは最初に血を流したものが勝ち、よく死ぬまで続く)か、確執につながる。場合によっては何世代にも渡って確執が続くこともあるのだ。認可を受けた決闘や指名された復讐以外の紛争(血の抗争とヤルンフォルクでは呼ばれる)は禁止されており、略式裁判にかけられる。

政府の所在地: 中央政府は存在しない。政府は一族を基盤とする。

国家指導者: 存在せず。一族の指導者は、マティアス・エッセンドロップ(ヤンセン家)、エリン・ショルデン(ショルデン家)、ハンス・グズムンドソン(グズムンドソン家)、ヤコブ・ハンセン(クランダー家)、マイケン・ペデルスドティエ(ホゥ家)、ジョン・イェスペルセン(イェスペルセン家)、ジェニック・ハストラップ(ハストラップ家)、トール・トルバルド(トルバルド家)、アリス・ジェームス(ジェームス家)。

主要言語: デンマーク語や古ノルド語など、古代スカンジナビア語複数のハイブリッド。各惑星は独特だがわかりやすい方言を持つ。例えばヤルンフォルクは、トロンハイムでは Jàrnfòlk と綴られ発音されるものが、アルボーグでは Jernfòlk となる。宇宙艦の航海士たちは標準英語をしゃべるが、どれだけ流暢化は人によって違いが大きい。

およその規模: 4つの世界で人口265万人。ハマー、トロンハイム、アルボーグ、ホフン。

経済状況: 農業が主体。ヤルンフォルクの各惑星は一部のハイテク産業も維持しているが、宝石細工など小規模な工芸に限られる。小火器(実弾兵器のみ)は芸術の一種として扱われ、ヤルンフォルク内でステータスシンボルとなっている。貿易は主にヤルンフォルク星団内の4つの世界間で行われるが、航宙艦の船員たちは近隣の星系に旅して地元民と取引する。こういった一族が支配する貿易船団(全艦が一族独自のモチーフで派手に装飾されている)は、最高の状態で維持される(どうやっているかは不明)。こうした"sælgeflåde"(貿易船団)で勤務するのはヤルンフォルク社会で最高の名誉の一つとされている。

常備軍: なし。だが、支配家内の貴族たちはそれぞれ、高度に訓練されたボディガードを維持している。

交流と同盟: ヤルンフォルクは氏族と接触したことがあり、ただ一度の遭遇で、氏族はヤルンフォルクの船を奪い取った。これはトロンハイムのヘイエルダル家にとって痛恨事だった(ヘイエルダル家はその後に没落し、ジェームス家の台頭を許したが、氏族はヘイエルダル家の古ノルド的な装飾をヤルンフォルクの記章だと認識し続けている)。もっと幅広い交流(特にハンザとの)が示唆されているが、確かな証拠は今のところほとんど存在しない。

歴史: ヤルンフォルクは2504年7月16日(温暖なアルボーグに初めて上陸した日)を、「国家」誕生の日としているが、植民者の祖先たちは少なくとも19年前にドラコ連合のラサルハグ侵食を逃れ、中心領域を発っている。長年にわたり、放浪する冒険商人として生計を立ててきた植民者たちは、出身地である古代スカンジナビアの伝統を保存し、クリタ家が偽日本帝国を建設したのと同じやり方で、疑似スカンジナビア文化を作り上げようとした。内輪もめと荒っぽいライフスタイルによって数を抑えられていたヤルンフォルク(遠く離れた故郷から数世代かけて旅してきた航宙艦、"ヤルンスキブ(鉄の船)"から来ている)は4つの植民地から拡大することはなかったが、船は遠くまで幅広く貿易を行った。ヤルンフォルク社会は宇宙脱出時代の初期に結成され、統治一族は9隻の艦船の士官・参謀から、下位一族は船員から来ている。この時代(すでに9世紀以上前)に培われた絆と見解は、ヤルンフォルク文化の中心であり続けている。植民者は星間連盟や継承国家と実質的なコンタクトを持たなかったが、コロンバスからの記録によると、貿易船団とコロンバスのSLDF探検家たちがなんらかの取引を行ったことが示唆されている。だが、コロンバスの守備隊に降り掛かった悲劇的事件にヤルンフォルクが何らかの形で関わっているという証拠は存在しない。ヤルンフォルクのサーガによると、極めて軍事的なグループが辺境の奥深くにあるとされているものの、氏族やまだ発見されてない別の存在を指し示しているのかは不明である。




ブラッド・シンプル: ヨナス・ヴェラノフ侍祭の日誌 BLOOD SIMPLE: THE JOURNAL OF ADEPT JONAS VERANOV

 3067年4月9日: ヤルンフォルクと最初のコンタクトを果たしてから1年が経った。この10年の前例に習い、コロンバスで各一族と探査局の取引が仲介された。この取引は大半が経済的なものであったが、連絡官1名を派遣する条項が含まれていた。それが私だ。コロンバスにいた中で、北欧語の経験があったただ一人だった――少なくとも、テディ・Kが資金を引き上げ、スウェーデニーズ話者が全員家路を急いでからは。探査局の言語データベースを駆使して翻訳を補助したとしても、この任務は挑戦になりそうだ。到着まで2日。準備が充分か、そうでないかは、そのときにわかるだろう。

 3067年4月17日: 言語学についてはこれくらいにしておく。アルボーグにいるショルデン家の分家に身を置いている。デンマーク語をしゃべるアルボーグ人の中では私の基礎的なスウェーデニーズはまるで役に立たない。オーケー、大げさかもしれない。コミュニケーションは出来るのだが、発音がまるで違うのでまったく新しい言語のようだ。筆記はほぼ正確だが、面倒で時間がかかる。ショルデン血族の「お偉方」とほとんど会うことはない。主に護衛である3人と話している。私が理解している限り、このショルデンの護衛たち(軍事ギルドからライセンスを交付されたボディガード)がついているということは、私がヤルンフォルクの社会でちょっとした重要人物であることを示している。それでも、彼らがボディガードでなく看守だと感じざるを得ないのである。リーダーのニールズはよそよそしい巨体で、毅然としていながら、おしゃべりである。副官のニーナは妖精のように愛らしいエルフで、謎めいた笑みを浮かべ、分かりづらい方言でおどけたコメントをする。私は恋に落ちていたかもしれない……冷酷に人を殺すところを見てなければ。いずれにてしも、彼女はニールズよりもタフで、柔らかい外面の中に鋼鉄の芯を隠している。このチームの三人目、頻繁に姿を消すミッケルは幽霊である。思うに彼の専門は情報だが、「静かに消す」達人のような印象もある。言い換えると暗殺だ。

 3067年5月12日: 本日、ショルデンの当主、レディ・エリンに面会する機会に恵まれた。年老いた女家長を想像していたので、彼女の若さにいささか驚かされた……せいぜいが20代後半から30代前半であった。もちろん、女性に年齢を聞くことはない――特にこのような地位にある女性には。その気質と決意の強さは疑いようもない。彼女が話すのは、なまりこそあるものの明白で流暢な星間連盟標準英語であった。現地の言葉に四苦八苦していた私からすると好ましい変化である。「上陸時にあった不快な件を謝罪する、ヴェラノフ大使」(妖精ニーナが撃ち殺した男について言っている)。「あれは、我々が中心領域から孤立したままでいることを望む狂信者による認可されてない攻撃なのだよ。貴君の護衛が状況を収められたことを喜ばしく思う。扇動屋どもは……落胆しておる」

 私はうなずいた。ミッケルが消えたのと暗殺に関する話は急に意味をなした。確かにやる気をなくした。

 「一族は書類の提出に細心の注意を払っている」彼女は続けた。どんな意味かと尋ねると、レディ・エリンは説明した。「報復のだよ。貴君の命を奪う契約だ」。私は顔を青くしたに違いない。レディが意地の悪い笑みを浮かべたからだ。「我らの社会では、ある程度、地位を示すものにもなっている。重要な人間ほど制裁を受けやすいのだ。殺したいと思うほど貴君に価値があると考える連中がいるということだ。殺しの前に書類を提出するのは政治だ――宣言なしにやった場合だけ殺人になる」

 すばらしい。

 3067年6月19日: 「今日は何人だ?」、朝食に向かう途中、 守衛所を通り過ぎるとき、ミッケルにいつもの質問を投げかける。

 「一人だけだな」ミッケルはニヤリと笑う。「あんたに対する興味が薄れたようだぜ」

 4月、5月と「提出」は増えていたが、護衛チームが軽率な契約を「非推奨」にすると、目に見えて減っていった。何度かの実地演習の後、提出の多くが私の命を狙うことなく取り下げられた。強情な奴らが何人か残った――狂ってるか、有力なやつらだ。ショルデンのような後援者がいることを考えると、報復を宣言するのは力を持つ者か、地位を気にかけない者(ヤルンフォルク社会では精神異常とされる)だけで、私の重要性が明らかになるに連れて、そういった者たちも次第に減っていった。外部の世界との取引にチャンスを見出す者もいれば、単純に無視する者もいた。それにしても今宵の祭典(夏至祭。ヤルンフォルクでは社交の一大イベント)は大きな挑戦となる。朝食時、ニーナが姿を表し、いつもの笑顔でベルベットの箱を持ってきた。ニーナは一礼すると、箱を私に手渡し、ニヤニヤしたまま戻っていった。私は注意して箱を上げた。中に入っていたのは、緩衝材に包まれた小さな拳銃であった。複雑な模様が刻まれ、骨が埋め込まれている。ゴージャスで殺傷能力を持つ代物であった。

 「そいつが必要だとニーナは考えてるようだな」ニールズは素っ気なく言った。

 「身を守るため?」

 「身分の象徴として」、彼の声にはユーモアが混じっていたかもしれない。「少なくとも彼女のものではないな。まだ」ニールズは爆笑した。そんな彼を見るのは初めてで、恐ろしいくらいだった。間違いなく、私は何かを見落としている。

 3067年6月20日: 一晩で何が変わったというのか。血、汗、涙。興奮と恐怖が同じくらい。祭りに向かうあいだ、私はニールズに彼らが習ってる格闘技について聞いた。「ポズナイ・セビア」が答えだった。一瞬その言葉が頭に入って来なかった。スカンジナビア語ではなく、カオス境界域で慣れ親しんだロシア語だったのだ。「汝の道を知れ」、もっと通りのいい名前だとシステマ。支持者はチコノフなど中心領域に少し残っている。そして、ワード・オブ・ブレイクが併合した後、これを採用した。練習生は己を知ることに加えて、味方を自分の身体の延長かのように知らねばならないとニールズは説明した。例えば、彼はニーナとミッケルの所在、疲労の段階、戦闘態勢について知っている。チームはひとつの結束した存在として動き、一人は常に私のそばにいて(たいていはニールズだがたまにニーナ)、一人は行く手を確保し、一人は背後を守る(ほぼミッケルの専任)。有名人やらなんやらと立ち話する際、ニールズとニーナは私の両脇に付き、ミッケルは群衆に紛れている。状況が変わったら、一時的に影から姿を表すのである。ハンセン家の一人と話していたとき、ミッケルはこのトリックを使った。彼のターゲットはナイフを抜いて、一歩前に出た。私の近接護衛チーム(ニールズとニーナ)が襲撃犯を倒しそうだったが、ミッケルはそのチャンスを与えなかった。暗殺者が武器を抜いて突き立てると、ミッケルが妨害して、逆襲した。襲撃犯は床に落ちる前に死んでいた……首が折れていたのだ。一瞬の静寂の後、各護衛たちが主人を守るためにわかに動いた。会談が再開され、また騒がしくなった。

 ミッケルが死体をあらためた。「契約者?」ニールズが訪ねた。

 「ネィ。スカレット(Skåret)だ」ミッケルは素っ気なく答えた。理解できなかった。カット? どういう意味なんだ?

 ミッケルは私が困惑しているのを見て取った。「血族を持たぬ者」彼は冷たく答えた。「追放者」

 3067年6月22日: ヤルンフォルク社会に対する様々な罪状により一族から追放された者たちの話が、夜から翌日にかけて少しずつ出てきた。追放者たちは家から追い出されて、厳しい奥地での生活を余儀なくされる。彼らは自由に扱ってよい――復讐の申請と血の確執は適用されない――長く生き延びるものはほとんどないない。一部はその後他の一族に受け入れられ stedsøskende (義理の兄弟)となる。そうならなかった者たちは保護を受けず、4つの植民世界と遥か彼方のスヴァルトゥールハヴェット(宇宙の海)でフリーランサーとして働き、法を制限される。

 「どこのことだ?」ニールズに訪ねた。「ハンザ?」

 彼はうなずく。「肥え太った商人の暗殺者、護衛として」と、吐き捨てる。

 「中心領域の?」

 「おそらく。説明不要の極めて直接的な殺人を志向する。爆弾もライフルも使わない。常に手の届く長さだ。この距離だけが名誉ある殺しになる。やつらは追放者かも知れないが、まだ俺たちのやり方に従っている」

 「そうしなかったら?」私は質問をした。

 「やつらは死ぬ」ニールズはそう回答した。

 3067年6月22日: 今日ニーナが別の箱をくれた。今回持ってきたのは黒いスナブノーズ拳銃だった。「あなたは信頼できる。自分自身は出来ないけど」そう彼女は言った。

 なんだこれは? 罪の告白か? いつも横にいるニールズを見ると、やっこさんはため息を付いた。

 「カタブツの中心領域人め」彼はつぶやいた。「キスするか、消えるように言え。あんたはプロポーズされたんだ」

 なんてこった。





指名手配


From: HSF司令部、リューベック
To: 全ハンザ艦艇へ
Date: 3067年6月27日

緊急

 商人評議会の惑星代表、ジャレド・レイノルズ代理が暗殺された事件で、3人の容疑者が逃亡中である。レイノルズ代理はリューベック株式取引所を出た際に殺害された。襲撃者は拳銃で武装した3人のガンマンだった。連携して動いた2人は代理の護衛2人を片付け、3人目はレイノルズ代理を攻撃した。被害者3人全員は、医療チームによってその場で死亡が確認された。

 襲撃者は住人の服を着ていたが、彼らの発声とドイツ語(まだ確認されていない)から、ハンザ同盟や属国の出身ではないことが示されている。優れた戦闘技術は氏族を示唆しているが、結びつける証拠はない。中心領域か未知のグループが疑われる。

 証券取引所周辺を徹底的に捜査したものの、殺人犯は発見されず、地下に戻ったか世界から脱したものと考えられる。全ハンザ艦艇並びにHSF隊員はそのようなグループの情報,特に襲撃犯3名に注意せよ。[監視カメラ画像同封]






SECURE COMMUNIQUE


From: パドレイグ・オ・バオイル司教
To: ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオン軍司教
Date: 3067年10月27日

ヴィクター

 我々はハンザ同盟の通常のシギントから以下のメッセージを拾い上げましたが、解読してDRUMネットワークに置くのに少し時間がかかりました。表面上単なる殺人犯の指名手配に見えますが、気にかかるところがあります。詳細を理解するのに少し手間取りました――この手口をハンザやヌエバ・カスティーリャ内の操り人形によるものと考えていたのです。ヴェラノフのヤルンフォルクに関する投稿を見て、私は考えを改めて、記録を漁り始めました。我々はこの手口を以前に見たことがあります。至近距離で、護衛された人物を殺す。62年、ニューサマルカンドの暗殺、59年のソラリス、49年のソラリス。驚きではありません。あなたは追放されたヤルンフォルクの工作員によるものと考えるかもしれませんが、私はふたつの興味深い解釈にたどり着きました。第一に上記の事件で報告されてる3名の暗殺者たちは、ヴェラノフの護衛隊にとてもよく似ており、おそらく同じ訓練を受け、同じ技術を持っています。こんな「プロフェッショナル」たちが本当に道を誤ったのでしょうか? それともヤルンフォルクの何者かが彼らの技術を雇ったのでしょうか?

 第二に、もっと興味深いのは、大昔の29世紀に遡る中心領域中の類似事件に触れられていることです。部外者たち(あるいはその一部)は2世紀にも渡って、スパイとして、破壊工作員として働いてきたということでしょうか? もしそうなら、どうしてROMはそれに気づかなかったのでしょうか? あるいはわかっていたのにその情報が第一回路に伝わらなかったのでしょうか? 究極の使い捨て極秘活動チームたるヤルンフォルクの暗殺者たちは、誰の目からも完全に逃れて、既存の対テロ、保安部門をすべて回避したというのでしょうか?

 星間連盟評議会に向かうあなたを応援するのは楽しいことです。

 ――パディ



ゲームマスターセクション

 文化としてのヤルンフォルクはバトルテック内ではまだ探究されておらず、インターステラー・プレイヤーズはその社会をわずかに垣間見るのみである。世界に対する重要性は示唆的なもの――探査局に対する新たなアイディアであるが、名誉社会であるヤルンフォルクから離脱した者たちがハンザ同盟やその向こうで傭兵として活動していることはヤルンフォルクの上層部でよく知られている。こういった工作員たちは、主に植民地から追放されたはぐれものたちだが、軍事ギルドの志願者も一定数存在する。後者の多くは、こういった「外国」での契約を、ヤルンフォルク植民地での本物の仕事の練習とみなしている。

 「ギルド暗殺者」の作戦には隠された目的があるのだろうか? 公式にはそうでないが、契約の幅広さ(コムスターが気づくもっと前から中心領域で活動していたことが示唆されている)は探査局を不安にさせている。誰がヤルンフォルクと非公式のフリーランス活動について知っているかは不明なままである。氏族はウルフ竜機兵団を通して確実に知っているが、中心領域勢力の誰が知っていて、フリーランサーと取引するコネクションを持っているのだろうか? 過去に企業や政府が雇ったことがあるのだろうか? こういった情報を暴くことは、一回のアドベンチャーや継続的キャンペーンの中心になりうる。


ヤルンフォルクの使い方 How to Use the JrnFlk

 ヤルンフォルクは主役や悪役として用意にキャンペーンに出せるし、背景設定として使うこともできる。ヤルンフォルクの4つの世界に赴くキャラクターは、氏族のような異質な社会にいることに気づくだろう(そしておそらくもっと危険な社会である。ちょっとした社交上の失策が血塗られた対立につながる可能性がある)。もっとありそうなのは、深辺境で貿易船団と遭遇することである(もしくは中心領域の外辺部で。現在では公的な接触が確立されている)。最も危険なのは、ヤルンフォルクが契約殺人する現場に居合わせたり、さもなくば目標になることである。政治メインのキャンペーンでは、ヤルンフォルクの雇われたヒットマンを探すことになるかもしれない。

 こういった攻撃が、フリーランス契約を受けたギルド暗殺者によるものでも、スカレットの追放者によるものでも、そのやり方とテクニックはほとんど無関係である。だが、前者はギルドのルールに従う(ヤルンフォルク内で報復を行う、無関係のものを巻き怖ない、素早く効率的に任務を実行する、など)。スカレットは対象的に、ほぼ常に警告せず攻撃し、目撃者の抹殺をためらったりはしない。慈悲を見せるのは珍しく、目標に痛みを与えることもあり、ときには致命傷を与えるのをやめて、犠牲者が数時間、数日間、数週間苦しむようにする。




新たな管理の下で UNDER NEW MANAGEMENT: THE JÀRNFÒLK

COUNCIL REPORT 45-2-11-3ge::LOR
ATTACHED:::ESC-COL-67-4-7

 評議会の参考にするため、コロンバス・ステーションの残骸で発見した探査局の報告を添付する。その調査結果は95%正しいと判断した。これはまとめられた報告をアップデートしたものである。

 ヤルンフォルクにとって、中心領域の紛争と辺境での氏族の戦争は、大きな池に浮かんだ小さなさざなみでしかない。9の一族(今では8)が現状を維持し、星系から星系を飛び回って貿易したり、文明らしきことを行った。

 3073年、ヤルンフォルクで激動が起きた……イェスペルセン家の暴力的騒乱である。ジョン家長はマグダ・トルバルドと突然結婚し、息子のピーター、マグナスと対立した。イェスペルセン家とトルバルド家と合併するという約束は世代間に溝を作った。マグナスの手でジョンが死んだのは合法であった――しかしマグダの死はそうではない。マグナスが父の寝室に突入したとき、婚約者と花嫁付添人は銃撃戦に巻き込まれたのである。

 複雑な法的手続きを経て、ピーターは弟の犯罪に連座せず免罪となり、死の烙印を引き寄せることになった。トルバルド家はマグダと姉妹の殺人に対して完全な正義を求めた。怒り狂った息子、ハビエルが爆弾のスイッチを押して、ホフンにあるイェスペルセン家の地所を半分吹き飛ばし、兄弟と一族の数人を抹殺した。生き残った一族で最年長のケネス・イェスペルセン(10歳)は一族による贖罪の一環として結婚しトルバルド家に入った。イェスペルセン家の貿易艦隊は、ホフンの領地とともに、トルバルド家に吸収された。

 [上記の多くは、結婚と家族という低レベルな理想にまつわるものであるため、氏族戦士に混乱をもたらすかもしれないことは理解している。しかしながら、このような情報は、戦士たちがヤルンフォルクの貿易団に出くわした場合に備え、背景的な情報として重要である。内部政治と家族関係は政治的な地雷になりうる。そして状況の把握に失敗したら、氏族から不必要なリソースを吸い上げるような対立につながるかもしれない。-ロレンゾ]

 軍事的には、ヤルンフォルクは大きく変わっていない。クランダー家の貿易艦隊はコロンバス・ステーションからいくらかの重装備とバトルメック数機を回収し、我がウォッチはハンザまで後を辿った。3083年、ウォッチがリバイバル作戦の中間地点沿いで任務を行い、ショルデン家、トルバルド家の防衛艦隊が廃墟を漁っているのを観測している。バザールとワークでは、ウォッチ星隊が挑戦すると、ヤルンフォルクはすぐに回収作業を諦めた。これを見ると、トリニティ、キンブレイス、グウィシアンの前哨基地でも同じ作業が行われていると考えられる。

 加えて、ハンザ同盟にいるウォッチの工作員たちは、ヤルンフォルクのスカレット(追放者)のパラメーターに合致するボディガードが増えていることに気づいている。現時点ではハンザ同盟とぶつかる計画はないが、氏族の戦士たちとウォッチの工作員たちはハンザと関わるときには、この危険の可能性があることに注意せねばならない。

 ――商人長ロレンゾ













隠されし世界 THE HIDDEN



ブルックリン・スティーブンスのバラッド

 ユージュアル・ソースズを通して記録を調査したところ(もちろん、我々の正気というフィルターを通した)、ワード・オブ・ブレイクは聖戦が始まる直前の数週間、ライラ、自由世界宙域で小規模で奇妙な人間狩りを行っていたことが明らかになった。彼らの「謎の標的」は、ブルックリン・マリー・スティーブンス博士、ライラ生まれの傭兵にして、元インターステラー・エクスペディションズの雇用者であった。

 スティーブンスはホロビッドでよく見られるような、活動的な学者の一人である――ターカッド大学で星間連盟史と考古学の学位を取り、型破りなことに軍事教育を受け、これが彼女を殴り合いと発掘現場の両方で等しく有能としたのである。IEと良く言って「喧嘩別れ」した後、スティーブンス博士とスタッフたちは、エクスプローラ級航宙艦、長距離シャトル3隻、インダストリアルメック4機、少なくとも2個の「ブラックボックス」ユニット(IEが持つ独自通信網の秘密部分を担当する)と共に高飛びするのに成功した。なぜ、IEがこのような「辞職」に対し訴訟を起こさなかった(あるいは殺し屋を送り込まなかった)かは想像をかきたてるが、ある任務のためスティーブンスと逃げたスタッフたちを雇うには都合が良かったのである……惑星ジャーディンを突き止める(そして存在を実証する)のだ。

 アマンダ・ホリフィールドという名の怪しい忘れられた宇宙生物学者の怪しい忘れられた報告を手にしたスティーブンスは、仰天することに独自の報告を携えて戻ったのみならず、ジャーディンの住人一名を連れていたのである。これは彼女のキャリアで最高の瞬間であった。

 そしてそれは処刑実行命令になった。

 ワード・オブ・ブレイクの人狩りはスティーブンス、彼女の家族、スタッフを目標とした。彼らはドネガルのターカッド大学で夫のタイラー・スティーブンス教授を探し出した。彼らはスカイア近くで彼女の古い船を吹き飛ばし、彼女をマーリック宙域奥深くまで追いかけた。そこで偽トーマス・マーリックが彼女を救うことに成功したのである(たとえ短期間であっても)。

 だが、スティーブンスの大いなる勝利が破滅につながったかもしれない一方で、彼女は中心領域で情報を操る者たちの半数を赤面させるような遺産を残した(もっと早く見つかっていれば、人命を救うことすら出来ただろう)。はるか昔に失われた世界、ジャーディンを見つけだしたのみならず、それを運営する秘密陰謀組織と、少なくともよっつの「隠されし世界」が存在する証拠を残したのだ。この証拠を考えると、スティーブンスの発見したものは、これら5つの世界とステファン・アマリスの末裔のつながりをほぼ確実に立証ししている――このつながりが本当なら、ワード・オブ・ブレイクと歴史上最悪の人物の後継者が手を結んで活動していることになる。



スティーブンスの要因

 聖戦の始まる直前に話は巻き戻る。小傭兵チーム(非合法作戦の専門家一名と大勢の元インターステラー・エクスペディションが在籍していた)の指揮官である、怒れるブルックリン・スティーブンス博士は、ローリック星系に到着し、ヘンリー・クロフト博士(現在は故人で、元IEの雇用主)との会合を持った。スティーブンスと副指揮官(正体不明の若い女性で、「はっきりしたポリネシア系の特徴を持つ」)は裏切られたと詰め寄り、ワード・オブ・ブレイク工作員に狙われたと主張した。最後の警告を受けたスティーブンス、スタッフ、正体不明の仲間は立ち去り、ターカッドにまっすぐ向かった。

 おそらく、彼らは逃走しながら、助けてくれる仲間を捜し求めた。(いくつかのヒントがこの年に書かれた2、3の歴史書にあらわれた!)それが素晴らしい逃走劇だったのか、単なる死にものぐるいだったのかはわからないが、この移動は偽トーマス・マーリックの注意を引くのに成功した。中心領域が新たな戦争に突入していたにもかかわらず、彼は数名の騎士を「特別任務」でライラ宙域に派遣した。

 彼らが戻ることはなかった。

 100近くの地元ニュースネットの不完全な報告が、その後を語っている。風変わりな武器を装備した黒ずくめの男たちが、ブレイク派による攻撃の際にドネガルを叩いたのである。不可解にも、戦闘機が不必要な攻撃を仕掛け、チェクワ大学を核兵器で倒壊させた。ライラ同盟内のサーチエンジンは、「ジャーディン」「ガブリエル」「IE」「辺境世界共和国」といったキーワードで埋め尽くされた。

 そしてホワイトアウトがやってきて、すべてのニュースがストップした。

 通信が戻ったとき、検索は終了しており、スティーブンスの記述に一致するブレイク派の指名手配は脚注に過ぎないものとなっていた。数週間後、ネスター星系の救難艇が、内側から破壊されたと思われるエクスプローラー級航宙艦の残骸に出くわした。

 その間、一連の「事故」と公然たる攻撃が、インターステラー・エクスペディションを苦しめ、それはヘンリー・クロフト博士(IEの一部門の長でスティーブンスを最初に雇った)の死で頂点に達した。

 もちろん、全国境で戦争が始まったことで――自由世界同盟、ライラ同盟国境は最も激しいもののひとつ――わざわざこのことを追求する者はなかった。




ゲームマスターセクション

 残忍な継承権戦争で失われたものと長らく片づけられてきた多くの世界が、この数世紀で中心領域の星図から外されてきた。大部分は戦争の略奪の犠牲となり、さらに多くが無視されるか、貿易の混乱の結果として飢えることになった。その他の世界は、自然災害に屈服し、数十年におよぶ衰退で放棄された。しかし、一部――ごくごく一部――は、謎の支配者たちの手によって、秘密主義とパラノイアのベールの向こう側に隠されたかもしれない。

 異常な手段によって宇宙から切り離されたこれらの隠されし世界は、崩壊した辺境世界共和国、地球帝国の懸命な難民から、コムスターの急進派(今や中心領域の戦争を操りすらしている)まで、中心領域とは異質な文化の根拠地となっているかもしれない。全力をかけて秘密を守り、外部から監視を行う秘密組織の支援を受けている可能性のある隠されし世界は、中心領域でもっとも外国人嫌いかもしれず、忘れられようと務めており、野蛮の国家の目から逃れようとしている。

 継承権戦争で失われた多くの中心領域世界の運命は謎に包まれているが、ジャーディンのような一部はさらに謎が多いものとなっている。隠されし世界に住む人々の気質(そして行方不明になってからの数世紀、影で何をやっていたのか)はゲームマスターに開示される。しかしながら、聖戦の開始により、中心領域の情報局――SAFEのオリエント支局、残ったコムスターROM、ドラコ連合のオーダーオブファイブピラーズ、ウルフ竜機兵団ウルフネットの破壊された残骸――は、急遽としてとらえどころのない隠されし惑星について学ぼうとしている。

 3073年時点で、中心領域が集められた情報を総合すると、隠されし世界についていくつかの重要な事実が判明している(ただし現在までこれら詳細のすべてを知る情報部はない)。これらの事実は、公式の情報ソースから得られたもののみならず、コムスターの消滅した探査局、独立宇宙探検グループから得られたもので、以下の通りである。


 「ザ・ファイブ」: ブルックリン・スティーブンスとそのスタッフ(以下のブルックリン・スティーブンスを参照)の記事によると、ワード・オブ・ブレイクは5つの隠されし世界を中心領域に(各継承国家にひとつずつ)維持しており、このすべてが星間連盟が崩壊した直後に地図から消された。これら世界の性質、人口、活動は不明だが、おそらくそのすべてが固く守られており、人口密度は低いと考えられている。
 いまだ不明なのは、コムスターに知られることなくどうやってワードがこれらの世界を継承したかである。

 ガブリエル遺跡: ガブリエル遺跡――造船所、艦船修理施設と思われ、ウルフネットによりワード・オブ・ブレイクの突如として増殖した戦艦支援の出所とされている――は、地球解放作戦時のガブリエル前哨基地であると考えられており、ライラのドネガル保護領内、地球から200〜250光年の間に所在すると信じられている。
 さらにLIC(ライラ情報部)の分析担当者は、LCS〈インビンシブル〉がこれらの施設で修理されたと信じており、2835年、ヘスペラスIIからの最後の航海の時に「誘拐」された可能性があるとしている。

 ジャーディン: 聖戦が始まるわずか数週間前、自立的なコンピュータウィルスがドブレス情報サービスの恒星間学術ネットワークをハックして、いくつかの歴史アーカイブに感染し、自由世界同盟宙域ジャーディンの座標を埋め込んだ。この「感染」の発信源はいくつかのコンピュータノードで、ドネガルのチェクワ大学がそのひとつである。聖戦が始まった直後、似たような「感染」がジャーディンの位置をいくつかの歴史自由世界同盟地図に記した。
 追跡調査により、この位置は本物であることが確認されたが、偽トーマス・マーリックの送り込んだ偵察部隊はこの世界で価値のあるものを見つけることができなかった。ハッキングの実行犯は特定されなかったが、手口の一部がロキの使うサイバー諜報テクニックに似通っている。

 ブルックリン・スティーブンスと反逆の騎士たち: 聖戦が開始した前後の時期、ワード・オブ・ブレイクはブルックリン・スティーブンス(ジャーディンを探すためインターステラー・エクスペディションが雇った傭兵探検家)の捜索に着手した。これは成功したようなのだが、彼女が発見したものは、偽トーマス・マーリックの興味を引き、彼は生きのこった騎士数名を救出のため派遣したのだった。伝えられるところによると、マネイ・ドミニの工作員が自由世界宙域でスティーブンスと救世主になったかもしれない者たちに追いつき殺したとされているが、その前に彼女は偽マーリックの部下に発見したもの(最低でもあと4つの隠された世界が存在するという情報含む)を伝えていたという。
 スティーブンスと家族の追跡は、とうやらマネイ・ドミニ司教アポリオンを派遣するほど重要なものであったらしい。ケースホワイトの直前、ドネガルで彼の姿が何度か目撃されている。噂によると彼はジャーディン出身であり、自ら惑星の破壊に手を下したかもしれないということだ。

 RWR前哨基地#27: ブレイク派による「モンキーウォーフェア」の結果として、しばしのあいだ、探査局の地図にあらわれたいわゆるRWR前哨基地#27は、実際に、ステファン・アマリスが秘密部隊を訓練していた辺境世界共和国(RWR)の衛星地区であった。全部で8つの居住可能な星系で構成されており、少なくとも二カ所の造船所と、旧地球帝国の重要地点を模した疑似都市を持つ大陸サイズの訓練場多数が存在するとの証拠がある。メック中隊群が入っていたと考えられている倉庫が惑星上に点在し、激しい核生化学兵器爆撃の痕跡が残されている。
 コムスターはこの世界の記録が第一次継承権戦争後のある時にどう失われたのか説明することができず、またこの世界が近年まで使われていたのかどうか判断できないでいるが、コムスターが派遣できたわずかな調査隊は多数の自動防衛装置――大半が時の流れと自然の力によって機能低下している――を報告している。

 ムンド・ヌーブラ: 永遠に続く嵐と雲の不毛な世界、ムンド・ヌーブラ――EC3057-J83Aとの番号が付けられていた――は、チェインレイン・アイルズからアンチスピンワードにジャンプ数回のところにあるぎりぎり居住可能な岩の塊である。ブレイク派の超兵器と言われているものに関する最近の諜報報告によると、LICはこの世界の地表が大規模な小惑星のシャワーで穴だらけになっているのを発見したという。星系内に目立った小惑星帯がないというのにだ。この世界がおそらくワード・オブ・ブレイクの試験場となっていたのは、かなりの驚きをもって迎えられたが、ファイブのうちのひとつとは考えられていない。

 「ステファン・アマリス7世」: ステファン・アマリス7世の名を使い、3055年、新しい戦争を引き起こすためにあちこちの王家を襲撃した自称「スターロード(星間君主)」について、コムスターは関係を否定している。だが、アリス・ルーセ=マーリック抵抗軍が最近入手した断片的なドキュメントによると、「アマリス」ともう一人の元コムスター侍祭と思われる人物につながりが見つかったという。このアリセンダー・ギルンは、3057年から3058年、いわゆるシリウス・ホールドを短期間統治していた間、シリウスとプロキオンの市民を恐怖に陥れた。(コムスターは処刑されたこの人物との関わりをやはり否定している)

 「深辺境の向こう」: 隠されし世界ではなさそうだが、アンチスピンワード遠方の国家群がはるか昔に崩壊した辺境世界共和国との関係があるかもしれないとの噂は中心領域の情報部に広く確認されている。インターステラー・エクスペディションが最初に確認したこれらの小国家群は、ソサエティ・オブ・セントアンドレアス、サモエード植民地組合、アクスム・プロヴィデンスなどである(IEはこれらの深辺境国家について口を閉ざしており、さらなる国がある可能性がある)。それぞれわずか数個の世界からなる小国家と信じられているが、中心領域からはるか遠くのところに所在しており――ハンザ同盟と同じくらい遠くにある――その間には多くの死んだ世界が横たわっていることから、彼らはそれぞれとの定期的なコンタクトを取っているだけで、今日まで中心領域の出来事にはほとんど気づいていない。

 コムスターの隠し施設: コムスターが統治する他の「隠されし世界」に関しては、特に教団の大半を世俗化した分離と再編以来、散発的に言及がなれている。そのうち一部――ロス2458、ルイテン68-28――などは軍事基地であると考えられており、数世紀にわたってコムスターの軍事力をひそかに増強するのに使われていた。コムスターは地球を支配するのと同時に、これらの秘密を公の目から隠していた。他のアルファ・ハイドリ、トレントウォッシュII、トリシャ――あらゆる証拠から見てライラ=連合国境地帯から8〜10回のジャンプのところにあるが、星図には載ってない――は、探査局が発見した世界であるようで、中心領域から来た海賊や他の難民が住んでいたと噂される。
 ロス、ルイテンなどはどこかの時点でワード・オブ・ブレイクに奪われたと考えられているが(コムスターでさえもいつどのようにこれらが失われたのかはっきりと確認できていない)。一方、旧探査局が見つけたような辺境世界は、ほとんど戦略的な価値のない遠方の放棄された世界であると考えられ、さまよう放浪者たち、行き当たりばったりの海賊の本拠地となっているか、起源不明の廃墟になっていると思われる。他の世界は、釈放するには危険すぎ、殺すには影響力がありすぎる者を追放するための忘れられた「流刑地」であるかもしれない。













タニテ THE TANITES



 ここにもうひとつ、一部の氏族の話によく出るが氏族本拠地の地図には見られない面白い周辺グループの話がある。氏族流の蛮王国、ヤルンフォークに対するケレンスキーの反応とも言われているが、このワールドネットフォーラムのスレッドでは思考の参考になる説が紹介されている。

――スターリング




<FOrUmID816.9877.22.766.42/氏族社会>
SUBJECT: タニテ文明




Hokum6652 | Posted: 17:23:33.01; 20073061T

 この最初のファイルはサーペント作戦で捕らえられた氏族戦士のインタビューです。

>>rec072252t073060.ts110415t023061<<

 「リバイバル作戦中、我らは二度、航宙艦の再充電をタニス星系に求めたが、拒否された。作戦中、別氏族の航宙艦の1隻が星系内に入り、再充電ステーションを使うための所有の神判を呼びかけた。この船と、乗せられていた兵士たちは二度と姿を現すことはなかった……

 「ジャガーソード星団隊のスターキャプテンとして、捕らえたクラウドコブラとスターアダーの戦士の多くを尋問する機会があった。全員がタニス星系について知っていたが、これらの世界に行ったことがあると認めたのはわずかな上級戦士だけだった。それぞれが話したのは、少数の炭坑夫と小規模な守備隊がいるだけの不毛の惑星である。催眠尋問でさえも秘密を破ることは出来なかったが、バイオモニターによると彼らはうそを付いていた……。このような状況下で彼らがどのようにそうできたかは不明だが、上官は彼らが我ら氏族を汚染することを許さず、不特定の犯罪で処刑するよう指示した。

 「私がジャガーソード星団隊の指揮官になったとき、リンカーン・オシス大氏族長は公式に我が星団隊を名簿から削除し、よって誰にも気づかれることなく、クラウドコブラとその信用ならない仲間の隠された秘密を暴く極秘任務につくことが出来た。科学者階級がこの隠された星系で違法な遺伝子実験を行い、おぞましいミュータントの軍隊を作っているとの噂を彼は教えてくれた。暗黒階級もこれに荷担しており、襲撃で捕らえた民間人と戦士だけでなく、かなりの秘密技術と指導を与えているようだ。リンカーン・オシスとこれについて直接話していないが、氏族は強力な未知の軍隊に浸透されたと彼が考えていることを私は信じている。

 「我らは調査に着手する機会がなかった。この未知の軍隊は我らの任務について聞き及び、秘密を暴かれる前に我らが氏族の破壊を指示したのだ」


>>endrec<<



Hokum6652 | Posted: 17:35:12.51; 20073061T

 以下の情報は、深辺境で長年活動し、連邦共和国に捕まった密輸業者のものです。彼は数年をライラの監督下で過ごし、そのあいだ彼らに情報を提供していた。最終的に彼はマリア帝国に送られ、追い払われました。彼は辺境でさえ「疑わしい」と考えられる状況で殺されました。

>>begin Transcript:

 「俺は貨物コンテナを深辺境に輸送して生計を立てていた。あいつらはあらゆるところから来たが、積み荷を仕入れるのは必ずコーケン(のお楽しみ場所)だった。そこから俺達は数百光年を移動して、植民化されていないパルサー星系で落ち合った。そうすれば誰にも気づかれないと俺は考えた。念のため、航宙艦2隻を使った。俺達の取引相手はいつも違ったが、あいつらは金を持っていて、少なくとも貴金属があったので、あいつらに積み荷を与えた。あいつらは外見も話し方も普通だったから、俺はあいつらについて深く考えなかった。あいつらはあいつらのしたいようにし、俺達もそうした。

 「ある時、パルサーから3、4ジャンプのところで船のドライブが壊れた。忌々しいシールが吹っ飛んだんだ。〈マルコム〉は宇宙で動かなくなったが、他の船は良い状態だった。だから、俺達は最低限の船員だけを後に残し、〈ニーナ〉で合流地点に向かった。損することになるか、追い払われるのを予想していた。驚かなかったとは言えないね。

 「あいつらは俺達と一緒に壊れた船のところまで来て、修理し始めた。あいつらがどこから来たかは知らないが、本物だった。ブーツでさえもこれまで見たものより良かった。あいつらの修理で、船は壊れる前の状態より良くなった。新しいシール、古いがらくたのカタライザは交換され、きっちりと修理された。

 「だが、あいつらは、それまで見た誰より奇妙だった。俺は確認のため仲間に尋ねた記憶がある。あいつらは「タニス・ハイドック」について話し続けていた。奴らの言葉。「タニス・ハイドック」だ。そこでなら何でも直せるという。なんと、〈マルコム〉のドライブを直すより早く、新しいジャンプドライブを作れるという。だが首の太い奴らがすぐにあいつらを黙らせた。あいつらは本拠地について話していたことは間違いない。だが、そんなところこれまで聞いたこともないんだ」


>>end Transcript.



Hokum6652 | Posted: 20:45:18.88; 20073061T

 最後に、この情報はイヴァン・リーアからのものです。彼は膨大な極秘情報を公の目に晒してくれた。以下の情報は、連邦=共和国諜報局のアウトポスト221に配属されていたロキ時代のものである。

>>SCRAM/DEC87F1027AF//Start<<

 私は氏族侵攻の初期をアウトポスト221で八ヶ月費やした。我が軍が共和国の「左」側で捕まえた数名の氏族人たち――ほとんどがファルコン――は彼らの装備とともに、我らの小さな基地に連れてこられた。どれだけ氏族人がタフで屈しないか聞いたことがあるだろう。実際には二時間だった。彼らは痛みや五行戯詩の繰り返しには耐えられるかもしれないが、最大出力での大脳調査には耐えられないのである。

 そこにいるあいだ、たくさんの興味深い情報を発見した。くそっ、我々はペンタゴンワールドの位置を、氏族の「亡命者」がリークする10年前に突き止めていたんだ。同僚たちとのブレインストーミングでその話題が出たが、我々は信じられないとして却下してしまった。彼はとにかく偶然として作り話をでっち上げていた。それが明らかになると、我らは大衆にあまりに高い信憑性を与えた。

 もちろん、我らはでたらめな嘘を聞いた。その大半は、訓練を終えたばかりの氏族人と、その支援をする民間人からのものだ。タニテの話は最大のほら話であったが、私は長年にわたってこの途方もない話を証明するのに十分な証拠を見た。

 この話はウルバリーン氏族の追放とミネソタトライブの謎から始まる。ウルバリーンは中心領域を完全に一周し、アウトポスト221のような地図から消された元辺境世界共和国の星系に入植した。タニテの話のように、これもまた捕虜の尋問から得られた情報である。彼らが発見したのはアマリスが隠した工業世界であった。奴隷の民衆が工場を動かす一方で、アマリス竜機兵団の秘密警察が公開処刑とテロ戦術で「平和」を保っていた。共和国が陥落すると、アマリス兵は全虜囚を処刑し、持てるものはすべて持って、出来る限りのものを壊し、それから逃げ出した。

 「ミネソタトライブ」の大部分は中心領域の周辺を旅した一方で、別の小グループが秘密裏にこの世界へとたどり着き、自分たちのものとした。戻ってきた大規模なグループは流民の大部分を伴っていおり、死活されていたマンパワーを加え、この世界を再建した。同時期、彼らはケレンスキーの技術を使ってクローン軍隊を作り上げ、星間連盟時代最先端の技術で装備させた。

 少しずつ数を増していった一方で、彼らはスパイ船を氏族宙域に送り込んだ。彼らはついに氏族反乱軍、いわゆる暗黒階級とコンタクトをとった。暗黒階級はいまだ揺籃期にあり、主に襲撃で生計を立てていた。ウルバリーンは彼らに氏族と戦うのに必要な組織と支援を与えたが、他に作戦基地が必要であった。それがタニス星系に入った理由である。

 タニスは数十年前から知られていたが、氏族内戦に先立つ大冒険の際に正確な報告は失われた。ウルバリーンの航法士がこの星系を見つけたのは、航宙艦の航法コンピューターの事故によるものである。彼らは中心領域の近くに活動拠点を持っていたが、2000光年離れていた。彼らはタニス星系を確立する短期集中計画を始め、クローンチェンバーを持ち込み、都市と工場を作り上げた。10年以内に彼らは100万以上の「市民」を持つにいたった。この大部分がクローンチェンバーから生まれ、使われていた遺伝子はスノウレイヴンから盗んだものだった(核攻撃する前に。話によっては追跡を交わすためにそうしたとされ、また事故だったとも言われる)。

 これらのクローンは二級市民となり、自然分娩で生まれた「エリート」に指導され――他の氏族のやり方を見ると皮肉である――ウルバリーンがののしった氏族社会と大差ないカーストに分類され(もうひとつの皮肉)、最小限の教育を与えられた。

 ウルバリーンは大規模な軍隊を作り上げた一方で、氏族内のスパイが政治的な動きと技術革新を彼らに伝え続けた。ウルバリーンはケレンスキーの「氏族の生き方」を破壊し、平和の思想の下で中心領域をまとめ上げることになっていたが、そうするにはまだ装備が絶望的に足りなかったのである。転換点は隠されしタニス星系を発見した氏族遠征隊という形でやってきた。この遠征隊はウルバリーンにはかなわず、数ヶ月かけて洗脳され、外科手術されたクローンに交換された。

 このちょっとした幸運により、バーロック、クラウドコブラの戦士、科学者たちがこの世界を「訪れ」、それから「駐屯」するに従い、数十人、そして数百人の入れ替えが可能となったのである。外部の人間から見ると、これらの氏族が、旧星間連盟時代に植民した人々のいる小星系を支配しているように見えた。現実には、ウルバリーンがこれらの氏族を計画的に内側から占領していたのである。ウルバリーンは彼らを使って、暗黒階級のうち、協調しなかったグループ、他の好ましくない注目を引きつけたグループを殲滅した。すぐに、彼らはスターアダーに浸透し、完全に支配した。

 入れ替わった偽物たちが3氏族の軍を乗っ取る一方で、他のエージェントたちは科学者階級に浸透し、ついに全氏族に達した。最初の彼らの目標は氏族の技術発達を盗み取ることで、ウルバリーンは発達のペースを守るのみならず、多くの場合は大きく発達させることさえ可能となった。アマリスが数世紀前に建設していた先進的な研究所のおかげである。

 30世紀に彼らはさらに狡猾な陰謀を企てた。潜入した科学者たちを使って巧妙に氏族の遺伝子プールを入れ替え、強力な血統を弱体化させ、全遺伝子ライブラリに傷を付けた。

 直後にすべてが台無しになるところであった。同盟関係にない暗黒階級のグループが氏族文明を本気で攻撃し始め、氏族人の怒りが彼らに降りかかった。ウルバリーンはすべてを統制しようとしたが、それが失敗に終わると、バーロックとクラウドコブラに攻撃を命じ、非同盟暗黒階級を跡形もなく殲滅した。この動きと、元バーロックの一部が隠蔽に関与しその過程で抹殺されたという作り話によって、氏族の残りは安堵し、平和が保たれた。

 世紀の変わり目に、中心領域の状況がウルバリーンを動かした。彼らのエージェントは議論を呼び起こし始め、多くの氏族人たちが侵攻を支持するようになった。ある程度の時間がかかったが、彼らは3048年、ついに侵攻を始めた。

 後は歴史とほぼ同じである。彼らはこれまでよりも熱心に活動せねばならず、彼らが望むよりも遙かに表に出るようになった。彼らの行動は注意を引き、あともう少しですべてが台無しになるところだった。この時までに、彼らは3氏族の主要人物だけを浸透させた者に入れ替えていた。彼らは氏族内の誰をも支配できたわけではなかった。たとえば前途有望なバーロックの戦士などがそうである。リスター、そう彼らは呼ばれていた。リスターたちは何か悪いことが起きていることに気づき、氏族流のやり方で氏族の指揮権を勝ち取った――指導者を殺したのである。問題は彼らが氏族人だったことである……それは根本的に純真なことを意味する。彼らは氏族内の一掃を望み、部外者に助けを求めはせず、自分たちで自身で問題を解決しようとした。そして彼らは吸収された。ウルバリーンはスターアダーとクラウドコブラをバーロックにけしかけ、おまけにブラッドスピリットが争いに加わるよう拍車をかけた。生じた騒ぎはあらゆる反対を消滅させ、アダーとコブラのほぼすべてを偽物にすり替え始めることが出来たのである。「吸収」以来、全スターアダーとクラウドコブラの部隊はそれぞれタニス星系にローテーションするか、人員と装備をローテーションさせている。

 乗っ取りはほとんど完璧だった。氏族戦争はすでに始まっており、ウルバリーンは頂点に立つつもりである。そして聖戦と氏族戦争が終わった時、彼らは計画の最終段階に着手するだろう。彼らは50個師団をもって氏族本拠地に強襲をかける準備をしており、さらに200個師団以上が中心領域を掃討して、文明の痕跡を破壊し、生存者たちに自分たちのやり方を押しつける構えである。

 私は警告した。


>>SCRAM/REC///Stop<<



BendR74 | Posted: 14:00:33.12; 21073061T

 情報をありがとう。我々はタニスかウルバリーン本拠地の地図を持っているだろうか? 少なくともこれらの世界に関する情報を持っているだろうか? これまで隠されし世界、失われた世界に関して聞いたことがあったが、確かな証拠を見たのは始めてだ。



Steug | Posted: 16:07:22.68; 21073061T

 イヴァン、身の危険を顧みず、情報を提供してくれて感謝する。これからもロキ時代の情報を頼むよ。奴らのことを皆に知らせねばならない。



SHAEPR | Posted: 19:45:29.85; 21073061T

 <管理人によって削除されました>



NameRedacted | Posted: 09:12:53.00; 22073061T

 同感。ウィット抜きにしてもイヴァンの言うことは素晴らしい。



Kommandant^Kreuk | Posted: 01:16:20.09; 23073061T

 祖父はライラ共和国の秘密作戦基地を設営し修理する業者とともに働いていた。彼は死の直前までそれを語ることはなく、末期ガンにむしばまれたことを知った後でさえもそうだった。父は多くを語らなかったが、サイト221に関する話を少ししてくれた。妹の誕生日なのでこの数字はよく覚えている。父は小惑星に基地を作る手伝いをし、5年から10年ごとに、施設拡張のため呼び戻された。死ぬ前に最後にいたのは10ヶ月だった。父はそこで見るべきでないものを見て、そのため殺されたのだという。イヴァン、連絡してくれ。確認してもらいたい証拠がいくつかある。



K8uy1l09s | Posted: 14:54:07.73; 30073061T

 変な情報を見た記憶がある。聖戦前に星間連盟が出した最後のフィールドマニュアルには、コブラとスターアダーがタニスにかなりの兵士を置いていることが書かれている。何かを隠してない限り、ひとつの惑星にあんな多くの兵力はいらないだろう。



ML8730tty | Posted: 14:54:07.73; 30073061T

 科学者たちについて聞いたことがあるけど、確かそれはファルコンについてだった。これらは全部ひとつの話だろうか? そうだとしてもどうやったら証明できるだろうか?



SkeptyKryttyr | Posted: 06:06:52.00; 06063062T

 イヴァンの口から出るたわごとを信じるくらいなら、町の酔っぱらいの言うとこを信じたほうがましだ。やつは生まれついてのほら吹きで、作り話の常習犯だ。話を信じる前に、ちょっと頭を使って考えてみてくれ。


ゲームマスターセクション

 タニテ文明は氏族人にとっても謎である。氏族本拠地の外れにあるこの小星系について知られている具体的な事実はほとんどない。推測が中心領域の陰謀好きと氏族内で飛び交っているが、これまでのところ、本気で質問した者も、この星系の権利をかけてクラウドコブラ氏族、スターアダー氏族に対し挑戦した者もない。

 知られていることは、この2氏族がきわめて厳重にタニス星系を守っていることだ。彼らは少なくとも1個完全戦艦星隊をパトロールさせて侵略者に備え、少なくとも2個銀河隊の兵士たちが地上にいる。兵士や船をタニテワールドに降下させるのに成功した氏族はいない。あらかじめ許可された交通プランがない船がこの星系を離れたことはない。クラウドコブラ氏族かスターアダー氏族の所有の神判で捕獲されるからだ。













新バトルメック:ランペイジ RMP-5G Rampage


ランペイジ RMP-5G Rampage
重量: 85 トン
シャーシ: スタンフイッチ850
パワープラント: AMC340ピットバン
巡航速度: 43 キロメートル/時
最高速度: 64 キロメートル/時、86 キロメートル/時(MASC使用時)
ジャンプジェット: なし
 ジャンプ能力: なし
装甲板: パンツァースラブ・タイプ9
武装:
 マクスウェルDT中口径レーザー 2門
 ルバリンLB 10-Xオートキャノン 1門
 バズソー・アンチミサイルシステム 1門
 ジッポーマークX対人火炎放射器 1門
 ジャクソンダートLRM-10ミサイルラック 1門
 マークリンミニSRM-2ミサイルラック 2門
 トローネルXIII大口径パルスレーザー 1門
製造元: ウィーゲル造兵廠需品社
 主要工場: クァンジョン・ニ(2767年破壊)
通信システム: トランスコム・アルファ
照準・追尾システム: KBCスターサイト・モデル3




概要
 辺境世界共和国の標準正規重メックとして設計されたランペイジはその役割を十分に果たしていた。アマリスが地球帝国を奪取すると、彼はついに優れた星間連盟技術を入手できるようになった。少なくともSLDFの一部と戦うことになるのを知っていた彼は帝国の技術者にランペイジの近代改修を行わせた。技術者たちは単純な強襲メックとするよりも火力と速度を強化し、星間連盟が戦うことになる高速強襲部隊を生産した。



性能
 再設計されたランペイジはそのサイズのわりに高速に作られてる。一部の設計士たちは最高速度を80kmにまであげようとしたが、全体の設計を軽くするか、実験仕様のエクストラライトエンジンを使うかで議論した。より経済的な妥協案として、彼らはXLエンジンをMASCシステムで強化することを選び、ランペイジは短時間のダッシュでほぼ90kmにまで達することが可能になった。その一方、メックの火力を増すために、設計士たちはLB10-Xオートキャノンを1門と、アルテミス強化型のLRM-10を搭載し、重く正確な打撃のために3門のストリーク2パックと大口径パルスレーザーを組み合わせた。さらに近接火力を高めるために、ランペイジは中口径レーザー2門と火炎放射器1門で武装を仕上げる一方、防衛手段としてアンチミサイルシステムを追加している。



配備
 ランペイジはエリートの共和国防衛軍に配備されたが、一部(旧式が大半)は反乱を起こしていた辺境国家にも送られた。アマリスは彼らに対する支援を続けようとしたのである。ランペイジは、高速打撃部隊や、中量級部隊向けの重支援など、スピードについていくことができる部隊に配備された。重中量級を使ってランペイジの裏をかけると考えた敵は、凄まじい火力に直面することになったのである。



派生型
 辺境世界共和国で数十年生産されたランペイジ-2Gは5Gより25パーセント低速である。また、ストリークランチャーとアルテミスIV管制システムを搭載していない。通常型オートキャノンは2トン分の弾薬を持っているが、LRMも同様である。5Gにあるアンチミサイルシステムの代わりに、2Gはマシンガン1門と1トン分の弾薬を積み、パルスレーザーは大口径レーザーである。この旧型は5Gより10基多い放熱器を載せているが、これらの通常型放熱器では5Gの発熱管理システムのような効率性を欠いているのである。

 もうひとつの先祖である4Gは限られた数が生産された。この派生型はメックからすべてのミサイル、中口径レーザー1門、放熱器3基、半トンの装甲(大半が足から)を取り外し、代わりに強力なガウスライフルを載せている。



悪名高いメック戦士

ベルナルド"オーガ"クリッチリー大尉: ランペイジを受け取った非共和国人による傭兵のひとり、グリーンヘブン・ゲシュタポの大尉、クリッチリーは不衛生なことと残虐なことから「オーガ」とのあだ名を得ている。システィーナ礼拝堂にスプレーで自身の肖像画を書いたあと、クリッチリーは抗議活動に苛立たされることとなった。ゲシュタポは最初の激発を自制したが、次の抗議活動はゲシュタポの無慈悲さを表した。そのうちのひとつとして、クリッチリーはヨハネ・パウロ二世広場でハンガーストライキをする僧侶750名を妨害し、ランペイジ1機で600名以上を殺した。地球解放の際、クリッチリーとランペイジはどこかに消え失せた……彼もマシンもそれ以来目撃されていない。

イヴァン"レンジャー"チェホフ: ゲリラ化したSLDF軍を追い詰める能力から「レンジャー」の名で知られるイヴァンは、優れた追跡者というだけでなく、戦場でも恐るべき敵である。ランペイジの優れたスピードを利用する彼が好む戦術は、できるだけ早く最も有利な位置に入り、それから敵の一側面に火力の本流を浴びせることだ――それから同じ位置を保ち、傷めつけた側面をたたき続けるのである。このやり方でチェホフは25機以上の敵を倒した。しかし、SLDFにとって危険だった一方で、チェホフは地元民の間違った扱い方に反対しており、そしてニューアースで捕虜となった。戦後、彼は戦争犯罪で無罪になった数少ない共和国士官のうちのひとりとなったが、ニューアースで引退した直後、地元民にリンチされたのだった。





タイプ: ランペイジ
技術ベース: 中心領域
重量: 85トン
戦闘価値: 1842
価格(Cビル): 23,069,439

                            装備重量
内部中枢:                       4.5
エンジン:         340XL             13.5
    歩行:         4
    走行:        6[8]
    ジャンプ:       0
放熱器:          13[26]            3
ジャイロ:                        4
操縦機器:                        3
装甲板:           256             16


        内部中枢    装甲
頭部:      3         9
胴中央:    27        40
胴中央(背面):          13
左/右胴:    18        26
左/右胴(背面):          9
左/右腕:    14        27
左/右脚:    18        35

武器・装備         配置    装備欄数    重量
LB 10-X ACレーザー     右腕       6      11
弾薬(LB-X)20       右胴      2       2
LRM10            左腕       2       5
アルテミスIV        左腕       1       1
弾薬(LRM)12        左胴      1       1
アンチミサイルシステム   右胴      1      0.5
弾薬(AMS)12        右胴      1       1
中口径レーザー       右胴       1       1
MASC            右胴      4       4
中口径レーザー       左胴       1       1
3 ストリークSRM2      左胴      3      4.5
弾薬(ストリーク)25    左胴      1       1
火炎放射器         左胴      1       1
大口径パルスレーザー    胴中央      2       7














ワード追跡 Hunting the Word 3095


地下に潜る

 生き残ったワード・オブ・ブレイクの情報提供者を探すため、インターステラー・エクスペディションズから報告書作成の依頼を受けた。私の経歴は、ワード・オブ・ブレイクのROMアナリストを20年、スフィア共和国情報部の雇用者として10年というものである。この仕事は、IE法務部との保留契約に基づき、FSSコンサルティング・グループを通して仲介されたものである。

 以下の報告と同封した文章は、十数名のやる気に溢れたスタッフ、リサーチアシスタント、アソシエイトの努力を結実したものである。また、IEの記録保管スペシャリスト、同封した現場報告の著者たちから、かなりの支援を受けた。ここに書かれているすべては、全員の努力によるものである。

 ――アンネリーズ・シュバイツァー・ヤスジロー、FSSコンサルティング・グループ、3095年11月10日





コンサルタント


 フロスト、シン、シェルマルケ・コンサルティンググループは、3082年4月、元諜報部員3名によって創設された。オグデン・フロストは、恩赦を受けたワード・オブ・ブレイクROMの最上位局員の一人である。サヴィンダー・シンは、キャメロン=ジョーンズの粛正実行を手助けしたレグルスの元SAFE工作員である。ジョセフィーン・シェルマルケは、有名な一匹狼のスパイ、ダモクレスとつながりがあった元コムスターROM諜報員である。

 どうやってこれら失業したスパイたちが手を組んだのかは固い秘密のままであるが、彼らは共和国内で最も優秀な戦略予測機関を創設した。この控えめな機関のクライアントは、惑星政府、武器メーカー、エンターテインメント企業などがあり、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンまでもがいるとされている。FSSは意図的に注目を避けているが、これらの事情通たちは結果を約束している。

 これにより、陰謀論者たちからは邪悪の集団だと言われるようになった。そのひとつによると、フロストはいわゆるイルミナティの一部であるROM工作員秘密結社につながるとされる。より慎重な批判は、フロストのような元ブレイク派が共和国の機関に不当な影響力を持っていることに触れている。これまでのように、これらの非難はあてこすりと決めつけに落ち着くものである。

 ――ロンドン・レビュー・オブ・インテリジェンス、「公開プロフィール、FSSコンサルティング・グループ、LLC」、3095年第四四半期



ワード追跡

 IEがワード・オブ・ブレイクに注目するようになったのは、聖戦中のことである。ライナー・ウッデンCEOはガブリエル遺跡再発見の中でチャンドラセカール・クリタと協力し、またデヴリン・ストーン合同軍の背後にIEを投じた。ストーンに対する企業支援は、IE航宙艦艦隊による兵站支援、傭兵、諜報の協力という形を取った。IEは特に噂されているワードの隠されし世界の拠点を発見することに目を向け、探検と研究に注視した。

 隠されし世界を突き止める努力は、新生共和国との長期契約の一部として、聖戦後も続いた。多くの点で、これはウッデンのCEOとしての任期中、組織を支配した。伝統的なプロジェクトは優先順位が低くなり、平等評議会(Council of Peers)からの不平は無視されるか、ブレイク派の脅威を思い出せとのぶっきらぼうな返答を受け取った。3084年9月、ワード・オブ・ブレイクに協力した評議員のディヴィッド・スタイルスが逮捕されたことで、さらなる公の批判には終止符が打たれた。

 IEはウッデンの死によって改革という遺産を打ち立てる一方、優先順位を再評価する機会を得た。この報告の目的は、それらか過去の成果を要約し、将来の前身のために予想を打ち出して、平等評議会を助けることである。これは、聖戦後のワード・オブ・ブレイクの事実に関する最もまとまった情報源かもしれない(共和国情報部の最も機密性が高いファイルを除く)。


ゲームマスターセクション

 ここで議論されている世界の大半は、遠く離れていることと世に知られていないことから、道を誤ったブレイク派を追うハンターたちにとって第一の目標となっている。だが、これらの世界には、白髪交じりの頑固なブレイク信徒たちによる連隊群が、ワードの再び浮上する日を待っているわけではない。

 コロンバスは、よく知られているにしても、ブレイク派の残存勢力の有用な本拠地であるが、ワード・オブ・ブレイクは聖戦の初期に、惑星の施設、装備、艦船をすべて破壊した。周囲の星系にあった(ジャンプ2回の半径)DRUMネットワークHPGやケイソン衛星さえも残骸と化した……それはあたかもワードがこの地域のコムスターの探検能力を損なおうとしたかのように。これはもちろん、キャンペーンの理想的なフックとなるだろう……ワードがそこまでして隠そうとしたものは、探検用の前衛基地からジャンプ2回以内にあるのだろうか? あるいは、ワードは火力をコロンバスの一ヶ所、よく知られた基地に向けたのだが、惑星は星間連盟が1世紀以上、コムスターが数十年にわたって使ってきた。彼らはコロンバスに何かを残したのだろうか? ワードの爆撃は、強固な軍事施設の下、深くにある掩蔽壕まで届いたのだろうか?

 ロス248は、中心領域の最初の隠されし世界のひとつである。地球帝国が艦隊基地として開発し、ほぼ地図から外されたこの世界は、自ら孤立した植民地(テレリブル)もまた隠していた。ワードを追うハンターのキャンペーンは、ほぼ確実にテレリブルのふたつの風変わりな惑星で、少数の人口の中に元ワードを発見することになるだろうが、住人は全体的にブレイク主義をまったく受け入れないか、あるいは支持しなかった。一方で、ロス248はキャラクターの出身地になるかもしれない独特の環境を提供する……空気のない極寒の世界は、宇宙民族を作るのに理想的であり、テレリブルは地球を基盤とする国家群に宇宙飛行士を供給してきた長い歴史を持つ。

 LBF-3は400キロメートルの凍てつく氷球である。ここには、あらゆる種類のブレイク派の倉庫も秘密の施設も隠せるが、慎み深く埋め込まれているのは北極点の「宇宙ステーション」である。LBF-3はプレイヤー・キャラクターに少なくとも2つの機会を与える……中心領域(もしかしたらそれ以上)の電子情報を集めてきた350年の歴史を持つことと、コロンビア(コロンバスではない)のような隠された世界を特定するのに使われてきたことである。ここは、何らかの価値あるデータ(光速度の遅延によりおそらくは数十年前に発信されたもの)や未確認のファイブをあきらかにするための、特殊な環境でのスパイゲームをやれる場所である。

 アウトポスト27――あるいはコアワード連合――は、かなりローテクの深辺境国家である。コムスターとワードは両方ともここを大規模な隠し国家にしようとしたが、中心領域による3度の探検の結果、失敗したことが示唆されている。それでも8つの世界のうち6つは人口が少なく、ステファン・アマリスが人の住めない大陸に作った偽都市に定住する一方で、中央政府が連合の治安を守る能力は限られたものである。ブレイク派の抵抗勢力は、ここでよく見つかった。同時に、連合には限られた航宙艦能力しかなく、地元民は故郷の停滞とゆっくとりとした衰退から逃れ、いつの日か他の人類宙域に行くことを望んでいる。もしそうなら、彼らはユニークなキャラクターとなるだろう。原始的だが、技術的を知らないわけではない彼らは、2780年以来中心領域を揺るがす事件に気づいておらず、貴族的爵位と氏族階級を混同して使うだろう。なぜなら彼らの社会にはそのような概念は存在しないからだ。


失われた大義の亡命者

 ワード・オブ・ブレイクは、前身のコムスターと同じように、巨大化した企業帝国であり、ひとつになった哲学的結社である。関係団体は単純にワードから遠ざかり、以前のように活動を続けている。ワードに直接雇われていた低級のブレイク人員は、デヴリン・ストーンによる恩赦の恩恵を受けた。継承国家出身のブレイク信徒は、母国よりも共和国のほうが受け入れられることに気づき、多数が移住した。

 この比較的平和なパターンの例外は、もちろんのことカペラ大連邦国である。ワード・オブ・ブレイクが3068年のシーアン爆撃を行ったことがあきらかになると、大連邦国宙域内でブレイク信徒に対する大規模なプログラムが実施された。生存者たちは再教育キャンプに入れられ、「カペラの価値を植え付ける」精神的な拷問を受けた。[弁解のように聞こえるかもしれないが、ワードはシーアン攻撃に関わっていない。おそらくサン=ツーが自身で計略を巡らし、加害者を適宜変更した。最初はダヴィオン、それから我々である。-OF]

 全体的に、このような下級の人員に情報的な価値はほとんどなく、また戦争犯罪への関与はなく、よって権力者からの興味を持たれていない。


戦利品

 ワードの先進兵器の背後にいた技術者と科学者は、もうひとつの問題であった。いわゆる聖戦のあいだ、ワード・オブ・ブレイクは新技術をあらわにし、王家に対する大きな優位を得た。中心領域の各勢力が、敗北者の忠誠心に入札し始めるのは避けられなかった。

 共和国はブレイク派の科学的人材を活用する点で上手を取った。合同軍が地球を確保し、したがって最も重要な設計チームの多くを物理的に拘留した。デヴリン・ストーンは、彼らをどうするか決断するという絶対的な道徳的権威の立場にあった。彼が慈悲を示したことによって、すでにブレイクの主義主張に幻滅を感じていた科学者と技術者たちは共和国に多大な好意を持ったのである。

 共和国の雇用活動には、コードネーム・ステープラーという暗い側面があった。共和国のオファーの背後には、断ったらジュネーヴの法廷に引き出される脅しが存在したのである。渋った元ブレイク信徒たちは、公式の嫌がらせに直面するか、例え戦争犯罪に関わっていないとしても長期間拘禁されたのである。匿名の内部告発者の助けを借りて、ポートランド・クラリオンが3092年にこういった虐待を暴露し、プログラムの終了に結びついた。[誰が助けたのか、我々のうちに知っている者がいる、アンネリーズ。-OF]

 公式の調査は、共和国情報部内の「危険な一派」を非難し、公式の関与を否定した。責任の所在は不確かなままであるが、公平かつ事情通の識者は、ディヴィッド・リーアがこのプログラムに気づいていたことを疑っている。[リーアが知っていることは、ストーンが知っている。しかし、彼らは我らの友人、ヴィクターには秘密を隠していたようだ。-OF]





地球のナショナリズム、脅威か幻か?


 その中核において、地球のナショナリズムはファシズムの種である。それは帝国の栄光と力強さを褒め称え、「外国人」を中傷する一方で、共和国の問題をすべて非難し、地球の権威的指導者を求めている。彼らはワード・オブ・ブレイクと手を結んだ……なぜなら聖戦が地球中心の秩序を中心領域に取り戻すチャンスと見ていたからだが、いまは新しい独立した地球共和国と自らを見なす準備が出来ている。

 マリウス・ヴァーローエンの新地球党は、最初に運動の原則を明らかとした。聖戦中に党が消滅したことで、元保護領の中に無数の地元政党が持ち上がり、地球のシドニーを本拠地とする地球国民党事務局が作られた。この地球軍団(保護領市民軍の組合であり、ブレイク古参兵の組合ですらあった)が地球国粋主義を組織する役割を担った。彼らは青年部の形で暴力を提供し、各惑星にいる他の政党を強力な国家主義者の存在感でもって脅迫するのである。

 先月、事務局が出したマニフェストは、貴族を廃止し、上院議員を無視し、100個前線連隊を創設し、地球共和国を組織する一方で、法令による総帥の統治を求めている。もしこのグループが力と影響力を増すのなら、ワード・オブ・ブレイクに対する勝利は無に帰すだろう。ブレイク信徒の狂信的な軍国主義と全体主義が、単純に新しい装いで再び地球に到来するのである。

 ――チコグラッド・プラウダの社説、23/04/94



ブレイクの剣

 コムスター、そして後のワード・オブ・ブレイクの中核はROMである。ROMは教団の最も深い秘密を守護し、イデオロギーの純度を保ち、王家に対する盾としての役割を果たした。ROMがブレイクの地下組織を作り、指名手配犯を守り、ワードの存続を存続しているのは、驚くべきことではない。これまでで最も恐ろしい諜報機関として、ROMは中心領域の危険な勢力であり続けている。

 むろん、ROMの局員だった者たちが全員、ワードに忠誠を誓い続けているわけではない。マスターのやり過ぎがあきらかになったあと、幻滅した多数の工作員たちが合同軍に加わった(特に地球陥落後)。戦後、ROM諜報員の多くが共和国情報部に入る一方、オグデン・フロストは司教のような者たちが恩赦を求め、その手腕を民間に持っていった。[合同軍内にいるカペラスパイのリストを持っていったことは、私のリハビリをスムーズにした。王家君主のように、ヴィクターは次の戦争に用心深く備えていたのである。-OF]

 中心領域にまたがるテロリスト陰謀団を結成するのに充分なほどのROMメンバーがブレイク派の主義に忠誠を残した。捕まえた局員の尋問と、非常事態計画の分析によって、ROMが惑星レベルでどのように活動しているかが明確となった。工作員たちはセル単位に組織され、他のROM局員については完全に無知なままとなる。通信は完全に一方通行で、トップダウン式に各セルへと渡る。セルは各自の役割だけを知らされて、何の達成に貢献するのかという兆候を与えられない。

 さらに高位のROMは不透明度を増す。各セルに一方通行で命令が渡されることから、彼らを追跡するのはきわめて困難である。雇われた無関係の情報伝達係、地元新聞記事への広告、夜間の謎めいた電話までもが記録に残っている。すべてのケースで、「コントロール」が命令にサインしている。このコントロールというのが、惑星レベルの公式な地位なのか、計画組織なのか、ROM司教の後継者なのか、確認されていない。

 ROM指導部の推測は、証拠の欠如により難しいものとなっている。ライト・オブ・マンカインドの指揮官、ジェローム・マークス司教が、真っ先に上げられる容疑者である。他には、聖戦の終盤にサン=ジャメとケルノフに近づいた謎の人物であるルシファーとイヴが有力である。最も異様な告発は、元司教のフロストに向けられているものである。彼はイルミナティを名乗るアンダーグラウンドのフリーランス諜報シンジゲートとつながっているというのだ。[イルミナティは、単なるユーモアのセンスを持ったプロのネットワークである。私が密かにROMを運営しているという非難に対しては、コメントする価値もない -OF]

 ROMは指名手配されている戦争犯罪者を隠すことに格段の興味を抱いているようだ。指名手配されているブレイク信徒の捜索は、混沌とした元自由世界同盟とコンパス座連邦の残骸に向いているが、多くの戦争犯罪者が共和国内に隠れているとの証拠がある。記録の破壊と戦後の混乱の中で、官僚的な調査に耐えうる偽の身分を作るのは、取るに足らないことであった。共和国のブレイク派追跡を支援するIEの依頼料は、この考察を考慮して再評価されるべきである。

 ROMの長期的な目標に対する確かな証拠は存在しないが、彼らはかつての地球国粋主義者と協力していた。ROMによる地元政府の転覆、共和国への政治的な影響でさえも、可能性から除外することは出来ない。[共和国市民の多くが、ワードのため立派に戦った。彼らはその経験を忘れてはいない。やがて、聖戦の複雑な話は、共和国内で知られるようになるだろう。地球国粋主義者は歴史に先んじたが、追いつくことになるかもしれない。-OF]





マルコ・ルイス財団


 3084年6月6日に創設されたマルコ・ルイス財団は、中心領域で最も著名なブレイク追跡組織である。この組織は、ストーン・リベレーターズの退役兵ネットワークとして始まり、レッドバーン・ウィルスで死んだ最年少の連隊員から名前を取っている。ブレイクの収容所で10年を過ごしたマルコ・ルイスは、3082年に死亡したとき、若干23歳であった。

 財団の著名な工作員は、ローランド・スタンズフィールドとユアン・ゼンリの夫婦チーム、元ラビッドフォックスのマイケル・スティール、元傭兵のセオドア・サダモリ=マーシュ、財団の創設者ジョーダン・ルイス(故マルコ・ルイスの兄弟)などがいる。財団の目立った成果は、ダグラス・ニヴンズ司教、シンシア・シェーチ司教の逮捕や、IE役員のディヴィッド・スタイルズがブレイク派の協力者と暴露したことがある。財団の優先順位が高い目標は、マッドドクターのイヴァン・ゴーレンコ、悪名高い協力者マリウス・ヴァーローエン、ライト・オブ・マンカインド指揮官ジェローム・マークスである。

 その「自警団的なやり方」を公式に総統から否定されている財団は、頻繁に共和国の官僚とぶつかってきた。地方政府は、財団の精力的なアプローチや、正式な認可無しでの幅広い権威奪取を必ずしも喜んでいるわけではない。財団はいくつかの惑星政府がブレイクに味方したと告発しており、それが論戦に結びついて財団のイメージを損なっている。

 ――ロンドン・レビュー・オブ・インテリジェンス、「公開プロフィール、マルコ・ルイス財団」、3095年第四四半期



マネイドミニ

 「マスターの手」たちは、本質的に中心領域から姿を消した。最後に確認されたマスターのサイボーグたちの行動は、すべて3081年後半のものである。アポリオンの後継者、ベリスは最後の遭遇で待ち伏せを行い、コムスターの一匹狼工作員、テンペスト・ストライカーをデビルズロックで殺した。ある無名のマネイドミニが聖騎士評議会に浸透し、同年、処刑され、これまでに裁判を受けた唯一のマネイドミニとなった。[同時期にバレットが予期せぬ死を迎えた。ストーンはカバーストーリーの調査を遅らせようとさえしたのだろうか? -OF]

 諜報業界内での一般的な推測は、マネイドミニがオービダー、タウセンに身を隠したということである。3080〜3081年にのぼったいくつかの証拠によると、ある秘密の集団が彼らを追い詰める任務を受けたという。攻撃の分析によると、この集団とはライト・オブ・マンカインドであるかもしれない。マネイドミニと「生身」のROMが分裂したというこの証拠は、キャメロン・サン=ジャメとアレクサンドル・ケルノフが、地球陥落までに、アポリオン、そしておそらくはマスターと決裂したという兆候にあうものである。元ブレイク信徒たちが示している裏切りと後悔の感覚は、マスターのお気に入りの代理人たちへの報復という暴力的な刃をもたらしたのかもしれない。[マスターは偽りの予言者であり、狂人である。それが支持者たちを異端者とした。もしROMが彼らを惹きつけたのならば、それは単純に任務を実行する。-OF]

 いずれにせよ、中心領域の勢力はサイバー強化人間を探知するテクニックを大いに洗練させ、これまでになくセキュリティに意識を向けている。敵対的な環境に面したマネイドミニは、引き下がって戦力を積み上げることを選んだのかもしれない。彼らの長期的な課題は、彼ら自身のように、さらなる証拠があるまで謎のままだろう。


ゲームマスターセクション

 ワード・オブ・ブレイクは聖戦後、単純に消え去ったのではなかった。信奉者たちの大半は故郷に戻るか、共和国内に新たな故郷を見つけた。組織の下部で活動していた数百万のブレイク信徒を気にかける者はなかった。ワード・オブ・ブレイクの抵抗勢力のうち、誰もが懸念を抱いているのが二つのグループである。ROMとマネイドミニだ。そしてマネイドミニは3081年以来中心領域から姿を消した。

 ROMそれ自身は流動的な陰謀団に姿を変えた。セル構造によって工作員の損失という損害は限定される。転覆工作、テロ活動を、長期間とは言わずとも、数十年にわたって実行可能である。ダミー企業と銀行口座の支援ネットワークは少なくとも限りがあり、ROMは資金を稼ぐため組織暴力に手を出すことだろう。

 ブレイク派の戦争犯罪者を探しているプレイヤーは、ROMの抵抗に遭遇することになりそうである。地球の国粋主義組織につながるブレイクシンパは、ROMと協力するか、独自に活動するかで、ハンターの障害になるかもしれない。もうひとつの障害はイルミナティ、地球の神話的陰謀から名前を採った聖戦後の元諜報工作員ネットワークである。多数の元ブレイク人員が属しており、そのすべてが忠誠心を捨てたわけではないことから、ROM、戦争犯罪者の調査を妨害するかもしれない。













コアワード・レガシー Coreward Legacies


チェインレイン・アイルズ

フレドット
指導者: ゲラルド・マークハム卿
恒星型(再充填時間): M5V(206時間)
星系内の位置: 1番目
ジャンプポイントからの行程: 2.45日
衛星数: 3(リゴレット、ロドルフォ、アンゲレット)
地表の重力: 1.03
大気圧: 汚染されている(呼吸可能)
赤道面の気温: 30度(暖帯)
海洋面積: 55パーセント
再充填ステーション: なし
HPG等級: なし
原始生命の種類: 爬虫類
人口: 39万5000人
社会・産業水準: D-D-F-D-C

 2600年代、共和国の専制から逃げ出したライラ人のグループが植民したフレドットは、単純な農業世界として始まった。有名な23世紀地球のネオオペラ歌手から名付けられたこの惑星の、最初の植民地は、ユーラシア大陸イタリア地方にあった古代エトルリアを規範としていた。フレドットは辺境世界共和国と貿易パートナーシップを結び、2670年、ついには共和国に編入した。

 共和国宙域において、この世界は精度の高いライフルの銃身と精密な小型機械部品を生産する匠の技で有名になった。フレドット人はエリートガンスミスとしての地位を享受し、共和国の軍部と強い関係を持った。いくつかの竜機兵団連隊がここを訓練拠点として使い、ヴェニス山脈の奥深くに広大な地下壕が建設された。

 共和国の失墜でフレドットの経済は崩壊した。連鎖反応で反乱、革命、乗っ取りが発生し、イタリア大陸に点在する都市国家間での内戦につながった。2800年代なかばまでに、3つの機能する国家が残った。この3つの勢力はゆるい政府を結成し、支配権を1世紀ごとにローテーションで交代していった。1ヶ月の権力移譲期間中に、新政府は惑星の衛星を改名することで支配を正統的なものにした。

 絶え間なく暴力の続くアイルズにおいて、フレドットの主要輸出品は強みとなった。フレドットは大量の歩兵装備用交換部品をバイヤー全員に仲介するほか、高度に訓練された歩兵小隊を雇い兵として輸出する。スナイパーたちは恐るべき命中精度と厳しい規律で恐れられている。

 [3084アップデート: 現在権力の座にあるマークハム家が隣国フレンゾの政府高官数名を静かに腐敗させている。フレンゾ・コンソーシアムがフレドットで人気があるライフル3機種の削孔工場を所有していることから、この都市国家を支配することは星系の経済を動かす上で極めて重要である。次のローテーション期間が3097年に来ることから、マークハム家はフレンゾを吸収して権力を固めるか、傀儡国家として支配する準備をしている最中だ。氏族はエトルリアにアプローチし、パワーバランスを中央に戻すよう提言する。-ロレンゾ]



シルスタート
指導者: オヤブン・フレデリック・プロージ
恒星型(再充填時間): A3V(164時間)
星系内の位置: 6番目
ジャンプポイントからの行程: 39.38日
衛星数: 1(ユートピア)
地表の重力: 1.03
大気圧: 通常(薄い)
赤道面の気温: 40度(暖帯)
海洋面積: 86パーセント
再充填ステーション: なし
HPG等級: なし
原始生命の種類: ほ乳類
人口: 42000人
社会・産業水準: D-D-D-D-D

 2639年に植民されたシルスタートは、辺境世界共和国の目立たない世界であった。軍事に貢献するところはほとんどないにも関わらず、ライラ共和国と星間連盟の軍隊がこの世界を数度襲撃した。星間連盟が辺境世界共和国を破壊したとき、SLDFはシルスタートを展開地点として使った。軌道上からの選び抜いた爆撃は、市街地から充分離れたところに位置するSLDFの貯蔵庫いくつかを狙った。不幸にも、星間連盟海軍はあまりに熱心すぎた。惑星で唯一の居住可能大陸で大規模な森林火災が発生し、伐採可能な部分の50パーセント以上が消滅したのだ。

 SLDF艦隊の撤退にともない、シルスタートはゆっくりと無政府状態に陥っていった。惑星の未来と民衆のために、シルスタートの地下世界を支配していた3名のオヤブンが権力を追い求め、計画を立てた。不安定な共和国知事と腐敗した取り巻きを排除したオヤブンたちは、支配権を得て、軍事政権を確立した。権力の奪取はしばしのあいだ惑星崩壊を妨げた。2895年、未知のウィルスが広大なアリシカゲ沼海の深くから姿を現し、記録的な早さで惑星中に広まった。治療法のわからないこのウィルスは、20年で人口の80パーセント以上を抹殺した。

 この惑星は1世紀以上にわたって、人口減少に苦しんでいる。襲撃者のほしがるものがほとんどなかったシルスタートは、アイルズで活発に活動する勢力の多くにとって、単なる再充電ポイントのままであった。3042年、ヴァンヌの海賊団2個が奴隷収容所の人数を増やそうと上陸した。海賊たちは、守るヤクザ・ギャングたちがどれだけやっかいかにすぐ気がついた。上陸したレパード6隻のうち、脱出できたのは1隻だけだった。皮肉にも、拿捕されたレパード5隻は、グリーンスター組に拡大の新しいチャンスを与えた。この強力なヤクザクランは、この数十年間、パランとチェインクラスター内に対する幾度かの悪質な襲撃に関わっている。

[3084アップデート: 初期調査の結果、外小惑星帯にゲルマニウムの大鉱床があることが示されている。シルスタート人は惑星の地表を超えたところに生産能力を持っていない(その意図もない)ことから、不妊治療技術を餌に小惑星帯を得るべきだろう。――ロレンゾ]



ヴァンヌ
指導者: ロード・トーマス・アーサー・ホイガルト=クラウス
恒星型(再充填時間): K0V(191時間)
星系内の位置: 1番目
ジャンプポイントからの行程: 5.48日
衛星数: 1(カルタギア)
地表の重力: .90
大気圧: 通常(薄い)
赤道面の気温: 28度(温暖)
海洋面積: 45パーセント
再充填ステーション: なし
HPG等級: なし
原始生命の種類: 両生類
人口: 52万4000人
社会・産業水準: C-D-D-D-D

 もうひとつの元辺境世界共和国の星系、ヴァンヌは共和国が崩壊した後で、孤立し、崩壊した。2890年にヴォイド・ネーション(現在は消滅)からの海賊が最初にやってきたとき、惑星の地表にはかろうじて10万人が残っているだけだった。ヴォイド人はウビス(50年前に大規模な疫病を被った都市)近くにある旧共和国要塞の位置を特定し、占領した。奥深くで残されたテクノロジーを発見してリッチになったヴォイド人は、苦しむ自国をヴァンヌに移して、残った民衆を素早く征服した。

 ヴァンヌの海賊たちは、ヴォイド人がパラノイアを募らせ、分裂したことで誕生した。マイケル・ホイガルトのバンド・オブ・ブラックは、2910年、ついに第15次ヴァンヌ内戦に勝利し、ヴァンヌ海賊王国を設立した。拠点はヴァンヌ星系内部だけなのだが、この王国は力をつけて、エンパイア・オブ・ザ・スターズ(地元でヴァンヌ城として知られるキャッスルブライアンを狙っていた)による強襲を二度防いだのである。

 2984年、マルグライト・クラウスと麾下の海賊団チュートン・プレーグが、惑星の赤道に沿った熱帯雨林内深くで、隠された共和国の工場(モスボール保存)に出くわした。残された記録によると、この工場は、新しい装甲技術が共和国中に広まったことから、2531年に閉鎖されたという。この施設には、密封された洞窟に保存された旧式メルカバ戦車の大規模な倉庫があった。クラウスの部下たちは車両のいくつかを持ち出し、2985年、権力を奪取するのに使用した。第21次ヴァンヌ内戦は停戦で終わった。マルグライト・クラウスとウィルヘルム・ホイガルトは1年後に結婚し、星系内の残った海賊団の領土を統合した。

 メルカバ工場はスペアパーツ倉庫以上のものとして残り、数十年間、科学基盤となった。3056年、ハイテクの宇宙船に乗った訪問者がこの星系に到着した。[後にゴリアテスコーピオン氏族のシーカーたちと確認された。――ロレンゾ]。ロード・ホイガルト=クラウスは、来訪者を待ち伏せして技術を奪うようなことはなく、交渉を行うという珍しく知性的な行動に出た。この来訪者は工場を稼働させ、市民たちを訓練して整備と操業が続けられるようにした。引き替えに、ホイガルト=クラウスはヴァンヌ城にあった装備を引き渡した。原始的な(そして正体不明だった)星間連盟時代のバトルメック数機が運び出されたが、来訪者のリーダーは感謝の証として旧式のタロンを残していった。[記録によると、このタロンは単にシーカーの降下船に空きがなかったため残されていった。――ロレンゾ]

 メルカバ工場の再稼働に伴い、ヴァンヌはアイルズ内で最有力な国家の一つとなった。毎年、一握りの戦車が生産されるだけなのだが、アイルズ宙域全体からバイヤーを引きつけるのに十分であり、いつの日かこの王国を大金持ちにするかもしれない。

[3084アップデート: 最近やってきた氏族の商人チームがヴァンヌに新しいパーツを供給し、メルカバ工場のアップグレードを持ちかけた。5年前にまとまった新型オートキャノンの供給とあわせて(トロントハイムにある我らの貯蔵施設から持ってきたもの)、改良型のメルカバをわずかに早いスピードで生産している。火力と生産力の増強によって、アイルズには兵器が流入し、各地で緊張が高まることになるかもしれない。商人たちに命じて、アップグレードに関する情報がフレドットのマークハム家に届くようにした。フレドット人がヴァンヌへの襲撃を刺激されるのではないかと期待してのことである。――ロレンゾ]



チェインレイン星団
指導者: ダイヤモンドシャーク氏族
星系数: 7(ターピン、コレル、ブレッケ、エーリン、アルナボグ、ヒルバーグ、ダークミスト)

 近くに固まった7つの星系からなるチェイン星団は、辺境世界共和国の植民化リストに入ってないくらいに目立たないところであった。ここをジャンプセイルへの再充電用の中継地点として使っていた共和国は、基本的な調査以上のことはしなかった。ブレッケ星系――共和国の海図だとRWR-39110――だけが、共和国海軍の興味を大いに引いた。

 共和国は、ブレッケで唯一の惑星の高軌道上に、移動中の戦艦と降下船を修理するための中型造船所を建設した。この工廠は主に、非与圧ベイいくつかと、ひとつの部品工場からなっていた。共和国崩壊後に放棄されたが、2800年代の半ば、エンパイア・オブ・ザ・スターズに占領された。エンパイアはここで統治評議会の運営と、小規模な商戦艦隊のちょっとした整備を行った。

 29世紀の後半から30世紀にかけて、星団の残りが探査された……実行したのは主にエンパイアで、それはアイルズ内で敗北を重ねたからだった。難民たちは各世界で完全に新しいスタートを切ったことから、エンパイアはアイルズの勢力として事実上終わった。工業生産能力がほとんどなく、かろうじて襲撃を成功させる程度の能力しかなかったので、エンパイアは静かに色あせていったのである。

 星団内の7つの星系のうち、アルナボグとコレルは最も植民化の助けとなった。ターピン(放棄された小惑星鉱山がある)と、エーリン(3つの小さな衛星が奴隷商人、海賊、密輸業者の隠れ家となる)は、生命にとって過酷な星系であった。

 [3084アップデート: プレデター銀河隊のギャラクシーコマンダー、レイヴン・ベルティは、3066年、チェイン星団をスウィープ作戦の目標対象に選んだ。次の5年間で、プレデター銀河隊は星団内を移動し、7つの星系すべてを手にした。歴史と化した名ばかりの勢力であるエンパイア・オブ・ザ・スターズは、静かに氏族の労働階級に吸収された。

 アルナボグ、コレル、ヒルバーグで大規模な生産用の飛び地領が作られ、天然資源と長い移動時間という利点が活用された。ブレッケの軌道を巡る老朽化した工場は、長期の再建プロジェクトに投じられ、レイヴンから調達した機動工場で改造された。3080年までに、この施設は元のサイズの5倍の大きさとなり、大半の船を扱う能力を持った。我が氏族は、資源権、軍事生産と引き替えに、ファルコン、ウルフと戦艦の修理をする取引をした。

 同時に、我が氏族はチェイン星団の大部分を占領し、アイルズの残りの部分を緩衝地帯として使用した。氏族評議会は、ウォッチと商人階級に対して、アイルズ内の各種勢力を低強度紛争に置き続ける作戦を承認した。これは氏族を守るためであり、氏族再建の一環である。――ロレンゾ]








バレンズ THE BARRENS

 以下の報告は、バレンズの新国家に関してと、彼らがインターステラー・エクスペディションの活動に影響をおよぼすかについてのものである。この概要と添付された付録は、私自身と同僚のディヴァーズ・ドレッドノーツの士官たちが集めたものであるが、現場での視察、公開情報、極秘の情報収集によるものが含まれる。一般に、インターステラー・エクスペディションはバレンズで安全に活動することができるが、特定の関係者を怒らせないように気をつける必要がある。

 辺境世界共和国の瓦礫から生まれたバレンズは、長年にわたって、崩壊した文明の悪夢となってきた。孤立して、落ちぶれたバレンズの各世界は、海賊のたまり場よりも悪いものとなった。実際、3020年代までに、海賊団は自分たちの原始国家を築いていた。生産的な統治に興味を持たないこういった国々は、自然と生まれた集団というより、収奪しやすいように行き当たりばったりで集まったグループであった。すべてが3049年に変わった。

 バレンズは氏族の衝撃を受けた中心領域でも最初の世界であった。ものの数ヶ月で氏族はバレンズの海賊を一掃した(スターズエンドの小惑星帯に隠れたわずかな例外を除く)。バレンズの住民たちにとっては、残虐な征服者が別の残虐な征服者に変わっただけであった。そして氏族から見ると、住人とはアマリスの市民たちなのである。だが、ケレンスキーが辺境世界共和国を離れて、エグゾダスを実施して以来初めて、バレンズは本物の政府を持った。いまだ無防備で孤立していたが、氏族の防衛に身を委ねることが可能となり、執行される実際の法律を持ったのである。

 残念ながらこれは続かなかった。バレンズは聖戦で事実上影響を受けなかったが、氏族はそうではなかった。資源の集約を迫られた氏族は、3080年代なかばに中心領域へと引っ込んだ。支配者を失ったバレンズの各世界は、できる限りのことをせねばならなかった。ある者は小型版の氏族となった。またある者たちは氏族とその影響を排除した。海賊と襲撃者は弱点を探し回り、その一方で氏族は関心を持ち続けた……占領域に近いバレンズの戦略的位置をよく知っているのである。前世紀はマリア帝国のようなミニ国家が成功した。バレンズがその後をたどれるかどうかは不明である。

 ――チャン・インイン少佐



フォン・ストラング・ワールド VON STRANG’S WORLD

 ストラング男爵は、民衆を虜囚か農奴のように扱い、中心領域からの「避けられぬ」強襲に備えて惑星を武装化した。ジェイドファルコン氏族が惑星を開放した際には、数百年に及ぶ親アマリスのプロパガンダがいくぶんの問題を引き起こしたが、やがて氏族の道が完全に受け入れられるようになった。ヘルズホース氏族が退却したフォン・ストラング・ワールドは、前の支配者たちを真似て、階級制度を維持し、独自の戦士エリート層を生み出した。

 ユニティシティ(3049年まではアマリスシティ)がこの勇ましい社会の中心である。強固に要塞化された城砦は、キャッスルブライアンに似てる以上のものである。フォン・ストラングが残した隠し倉庫が都市に点在し、3070年代の氏族の戦闘による回収品が地方に散らばっている。この軍事的な遺産により、フォン・ストラング・ワールドは単に自衛するのみならず、氏族文化の戦闘部分を支えている。

 ヘルズホース氏族が引き上げた時、一連の軍事的神判が戦士階級を生み出し、最高位のものが即座に氏族前の名字を取り戻した。アンダーソン・ブラッドラインのリチャード氏族長に率いられるフォン・ストラング・ワールドは、バトルメックと通常戦力の1個混成星団隊を使用可能である。残念ながら(あるいは幸運にも)惑星外に出る降下船、航宙艦を持っていない。

 ペンタゴンワールドに触発されて、フォン・ストラング・ワールドは人口増加と科学的な優位が惑星を完全に活用するだろうと望んで、技術、工業のルネッサンスを開始した。これを達成するために、彼らは速やかに人口を増やす繁殖プログラムを創設した。鋼鉄の子宮の技術を持っていないフォン・ストラング・ワールドは、伝統的な手法を用い、繁殖するペアを厳密に守らねばならなかった。加えて、豊富なダイアモンド鉱床が、貿易の主力たるダイアモンドシャーク氏族を引き寄せた。惑星上の仲買人たちは商品を求める神判に悩まされ続けた。引き換えにシャークたちは、航宙艦の使用とハイテクノロジーを提供することで、この原始国家を抑えつけている。

 積極的で好戦的なフォン・ストラング・ワールドの未来は、宇宙の移動手段を手に入れられるかにかかっている。基本的な軍需品以上の生産能力を持っていないことから、戦闘を基本とする文化はすぐにも防衛部隊を消耗させるだろう。これは彼らを扱いやすいものとする。その一方で、惑星外に戦力を動かす能力を得たのなら、近隣の軍隊に対して素晴らしい戦果を出すと予想される。氏族スタイルの所有の神判を受け入れる国はほとんどなく、海賊行為にほかならないことから、フォン・ストラング・ワールドは海賊氏族のようなものに落ち着くかもしれない。


結論
 3049年、この世界を掃討するには、ジェイドファルコンの親衛星団隊が必要であった。しかも、それは氏族のアップデートが起きる前の段階である。現代の傭兵はこれを繰り返すだけの火力を持っていない。これは問題だ……もし彼らが宇宙に出たら、あなたがたと虚空を旅するすべての活動にとって頭痛の種となるだろう。



ラグナロク・ユニオン THE RAGNARÖK UNION

 比較的中心領域に近い、ゴッターデムンルンク、ボタニーベイ、ラストチャンスは、氏族の統治の下で相対的に繁栄した。かつてグレーター・ヴァルキリー領の一部だった、スージー・モーグレイン=ライアンの時代に比べれば、あらゆるものが進歩した。いくつかの氏族の下、新技術と移民たちにより惑星の凍った大地の下に隠された資源の開発が可能となった。フェリスがヘルズホース氏族に反旗を翻すと、これは終わりを告げた。

 よく言ってもギリギリの世界であることから、氏族の撤退は生存の危機を招いた。皮肉にも、グレーター・ヴァルキリー領の生み出した連帯が助けとなった。資源を出し合うことで、3つの世界は生き延びたのである。生きるという目標を胸に、彼らはラグナロク・ユニオンを結成した。統治するのは、氏族占領の間も地位を守るのに成功した狡猾なコンシェルジュ、フー・シャオ・リンであった。フーは繁栄に必要な先進技術を維持するため、ラックホーブやエレウォン(ジェイドファルコン氏族に支配されている)との古い絆を活用して、ラグナロク・ユニオンとの貿易網を確立した。

 軍事に関しては、もっと難しかった。ジェイドファルコン氏族は各世界の併合に無関心で、氏族特有の反応を考えると傭兵を雇って惑星の防衛を任せるのも問題だった。現在までに、ラグナロク・ユニオンはファルコンから1個星団隊分の戦車と市民軍歩兵用の装備を購入するのに成功している。訓練についても問題で、サマーセット軍事学校での訓練ができるよう交渉をしている。ファルコンはラグナロク・ユニオンを言いなりにした上、占領の痛みを負うことなく植民化する利益を享受している。

 ラグナロク・ユニオンの未来は不確かである。軍隊が未整備な彼らは、様々な興味を引き付けている。フォン・ストラング・ワールドは航宙艦を手に入れたら侵攻を行うだろう。ユニオンの世界が凍りついていることは、居住地が集中し、要塞化が容易なことを意味するが、国家になるまで成長するには現在の居留地を超えて拡大し、攻撃にさらされやすくなることが必要とされる。ラグナロク・ユニオンがこのような飛躍を成し遂げるかは不明である。


結論
 ほぼ無害である。インターステラー・エクスペディションの船は、問題なく補給物資と上陸許可を得られるはずである。ファルコンには注意。彼らはおそらく挑戦を望んでいないが、そこに誰がいるかを知っており、ウォッチが興味を持つことになるはずだ。



スターズエンド(ノヴォ・クレシダス) STAR’S END (NOVO CRESSIDAS)

 スターズエンド星系の小惑星帯に守られ、軌道上に稼働する航宙艦造船所を持つノヴォ・クレシダスは、何十年にもわたって、海賊の隠れ家となってきた。氏族は20年かけて海賊という穢れを完全に洗い落とし、占領はせず航宙艦造船所を奪い取った。3080年、ワード・オブ・ブレイクがノヴォ・クレシダスのヨッサラヴァス・ゲルマニウム精製所で核兵器を起爆すると、この施設は1年間放棄された。

 それ以来、スターズエンド〈さいはて〉は、難民と追放者の住居となった。誰もが氏族の撤退に順応出来たわけではなく、多くが継承権戦争時代の恐怖が戻ってくるのを恐れている。ノヴォ・クレシダスでの生活は過酷であるが、少なくとも隠されていて、防衛が可能である。

 当初は、氏族や海賊が住んでいた跡地に小さな自給自足の居留地を作って分散していたが、難民グループは原始的な政府を作るために結集せねばならなかった。各居住地は代表者を評議会に送り込む。議会は持ち込まれた問題について投票を行う。結果は常に受け入れられるとは限らず、居留地間での対立は珍しいことではない。

 軍事的には、スターズエンドはパラドックスである。現在の民衆の多くが難民として航宙艦でたどり着いたことから、航宙艦の多くが星系内に残っている。スターズエンドはバレンズでも最大の艦隊のひとつとなっている。その一方で、彼らは戦士でも兵士でもない。歩兵が主力で、手に入るだけの車両と重火器で補われる。

 これまでのところ、それはたいした問題にはなっていない。海賊はありがたいことに珍しいが、ノヴォ・クレシダスにまつわる基本的な事実は残っている。この惑星には大規模なゲルマニウムの鉱床があり、採掘されるのを待っているのだ。過去、海賊に出来たのなら誰にでもできるだろう。3090年、未確認の降下船がノヴォ・クレシダスに向かっていた間に破壊された。これが襲撃者の小規模だが着実な流入の最初のケースとなった。1年後、別のグループが、ヨッサラヴァス精製所の放射性廃棄物の中で残骸を漁っているのが発見された。危険であるのに気づかなかったのである。彼らは警告しようとすると激しく抵抗し、全員が放射性障害で倒れた。もっと最近には、単純な襲撃があった。最大の恐怖は、襲撃部隊のひとつがその場にとどまり、評議会の外で敵対的な組織になることである。そこから新ベルトパイレーツが作られるのは容易に想像できる。


結論
 何かがやってこようとしている。ここでは金を稼ぐチャンスがたくさんある。手を汚す意志のないものは近づかないほうがいい。そして、もし手に負えないようになったのなら、おそらく氏族が介入し、銃口を突きつけてすべてをリセットしてしまうだろう。



バレンズ共和国 REPUBLIC OF THE BARRENS

 けして豊かではなかったが、いずれバレンズ共和国となる世界群は、氏族の手によって辺境世界共和国以降なくなっていたある程度の安定を与えられていた。フェリスの反乱は平和だった世界にショックを与えたが、もっとひどい事態が待っていた。ヘルズホース氏族が彼らを見捨てたのは、まったくの驚きであった。最後の降下船が3085年にガストレルを離れた時、5つの世界――クレラコール、ドラスクスデン、ガストレル、パウルスプライム、ザ・ロック――は、バレンズの闇の中で孤立し、無防備だということに気がついた。

 何が降りかかるのか、充分以上に知っていた各世界は相互保証を求めて探りを入れた。最後には連合を作るのが唯一の自然な選択肢となった。3086年の間、交渉が続いた。氏族が達成したことに影響を受けていたが、生まれたばかりの共和国のリーダーたちはもっと古い起源にも立ち返った。最終的に彼らは氏族の階級システムを維持したが、特定の階級が他の上に立つことはなかった。各世界の各階級は元老院に代表を送り、元老院がバレンズ共和国として共同で各世界を統治する。

 富も軍事力も持たないバレンズ共和国は平和的なスタンスを採用している。驚くべきことに、支援の要請に応じてくれたのはヘルズホース氏族であった。フェリス共同体やオベロン連邦と違って、バレンズ共和国は反氏族ではない。実際、ホースは共和国のことを側面を守る緩衝国と考えている。氏族の資源は限界に達していたが、発展途上な共和国の軍隊の指導役すら果たし、過去10年で各世界に2個三連星隊の戦車を提供している。ホースの教官たちがバレンズの戦士階級に他の階級より上の存在だと教え込み、クーデターのリスクを大きくするという否定的な側面もあった。

 現在のバレンズ共和国は岐路に立たされている。戦士階級がクーデターの危機をもたらすだけでなく、外部の軍隊もこの新米国家に目をつけている。過去に目を向けたオベロン連邦は、バレンズ共和国に狙いを定め、弱体化させるため海賊の襲撃を後押しした。共和国の攻撃を恐れるフェリス共同体は先制攻撃を目論みて、それがかえって共和国の戦士階級を刺激している。未来は不鮮明であるが、バレンズ共和国が現在の形でこの先10年生き残ることはないだろう。


結論
 今のところ、バレンズ共和国はインターステラー・エクスペディションを歓迎しそうである。状況が明らかになるまでは、定住を避けるべし。



新オベロン連邦 THE NEW OBERON CONFEDERATION

 蛮王国という立場にあるものの、オベロン連邦は3049年時点で立派な国家になる瀬戸際にあった。ヘンドリック・グリムIV世は海賊という起源を超えるヴィジョンを見せて、オベロンVIを工業化し、諸外国と成熟した外交的関係を樹立していた。潜在的なナショナリズムは氏族占領時代を生き抜き、氏族撤退時には再浮上した。

 その原動力になったのはプラシーダから来た馬産家、ベンジャミン・ライトである。彼はヘルズホース氏族の民間管理部門に影響力を持ち、それをてこに完全な支配体制を手に入れた。現在では総督を名乗っており、オベロンVIのグリムフォートから権力を振るっている。

 オベロンVIに医薬品、電子機器、小火器の工場を建設したいわゆる新オベロン連邦は、バレンズの原始国家の中で最大の力を持ち、オベロンVI、プラシーダ、ブラックストーン、シグルド、ビュートホルドを組み入れた。商人は歓迎され、連邦は外部からの資金調達で航宙艦の購入すら可能となった。これは氏族占領域の包囲を目論むライラ共和国、ドラコ連合の代表者たちを引き寄せた。

 新オベロン市民軍はメックを配備するバレンズで唯一の軍隊である。オベロンVIが本拠地の1個エリート三連星隊を持つオベロン親衛隊は、連邦の世界への攻撃に対する即応部隊となっている。5つの世界それぞれが地元の防衛用に装甲・歩兵の1個混成星団隊を維持している。総督は外国の関心を巧みに誘導して、氏族・中心領域の装備と教官を手に入れた。その結果が、装備の優れた折衷案的な戦力である。

 近年、新オベロン連邦はバレンズ共和国に興味を持っているが、それはおそらく歴史的に共和国の世界を支配してきたからだ。同じく、スターズエンドの航宙艦とゲルマニウムも魅力的である。連邦は冒険主義に走る軍事力も輸送力も持っていないが、近隣国を不安定にする私掠許可証を出すのをやめてはいない。


結論
 新オベロン連邦は、注目を浴びている非政府組織を心から歓迎するだろう……たとえそれが、氏族からの独立を強く主張するためであっても。おそらくは事務所を構えるのを許しさえするだろう。だが、彼らを顎で使えるなどと思い込んではならない。戦略的に価値のある本物の国家として、彼らはインターステラー・エクスペディションよりも遥かに影響力のある高位の友人を持っているのだ。





城の王たち
 KINGS OF THE CASTLES

 オベロンシティの中央にそびえるのがグリムフォートの巨体である。オベロン連邦は名目上独立しているかもしれないが、ヘンドリック時代の要塞を改装するのに、ゴーストベア・ドミニオンの助けを喜んで受け入れた。そして、完成した要塞の威容。巨大な砲塔と城壁が、現代のキャッスルブライアンと呼ぶべきものを取り囲んでいる。グリムフォートは地下にまで拡張され、軌道攻撃に耐えられる強度を持つとの噂を考えると、この表現は真実から遠いとはいえない。

 だが、特筆すべきなのは、オベロンVI以外にもあるということだ。各氏族の支援を受けて、ゴッターデムンルンク、ブラックストーン、ザ・ロック、フォン・ストラング・ワールドに似たような要塞が作られるか、あるいは改装された。

 その理由は? 氏族は辺境から撤退したにもかかわらず、これらの戦略的な場所に位置する国家に興味を持ち続けている。とりわけ、氏族のいくつかは、余剰品の軍事兵器をバレンズに売却している――バトルメックや気圏戦闘機技術ではなく、小火器や通常型装甲車両である。これによって、氏族の軍需産業は装備の需要が減少していても、ゆっくりと操業を維持し、技術を保っている。

 いずれにしても、これら要塞がバレンズの新国家を安定させ、海賊、王家、氏族による容易な破滅を妨げている。




フェリス共同体 FERRIS COLLECTIVE

 フェリスこそが、3083年にヘルズホース氏族がバレンズから退却した理由である。氏族が明らかに無関心だったことで、正体不明の陰謀家が暗躍し、剣を突きつけてさらなる資源を要求したのだ。暴力の嵐の後、ホースの反応は予期せぬものであった。分析によると、バレンズの領土が利益を生み出すまでは数十年を要し、そのあいだ脆弱な氏族の資源が吸い取られるとわかった。もし民衆が氏族の存在を望まぬのであれば、撤退して現地人の手に委ねるのは自明の理であった。3086年までにヘルズホースは立ち去った。

 フェリスは氏族が撤退したショックを乗り越え、生き残った唯一の反乱軍指導者、ネッド・ピゴット皇帝の下、壮大な新国号を考案しようとした。不意打ちだったのは、バレンズ共和国の創設である。新たな原始国家があらゆる氏族の注意を引き付ける中で、ピゴット皇帝は攻撃を避けるために惑星の集団による資源が必要だと判断した。戦車と歩兵の1個大隊を引き連れ、彼はフェリスで唯一の航宙艦を出航させ、エーリュシオン・フィールドに向かった。

 エーリュシオン・フィールドは氏族が到着してから事実上なにも変わってなかった。名目上は継承派(Inheritors)が管理し、オベロン連合が保護する自然保護区だが、実態は継承派が惑星の森に隠れ、海賊が惑星の資源を容赦なく搾取した。氏族は、継承派の関与というフィクションを除いて、このお膳立てを続行した。氏族がいなくなると、民衆はふたつに分かれた……狩猟採集民として生きるか、自給自足の農民として生きるかである。エリッサ、マナリンゲイン、ナイセルタでは、ピゴット皇帝が放棄された宇宙港に到着し、惑星がフェリス共同体の「創設メンバー」になったと宣言した。継承派は樹上から呆然と見ていた。

 それ以来、フェリス共同体はエーリュシオン・フィールドを積極的に利用してようとしている。その妨げになっているのが、フェリスの人口の少なさだ。本物の敵、あるいは想像上の敵に囲まれているフェリス共同体は中心領域に積極的な売り込みを図り、挑戦する勇気があるのなら広大な未開拓地を利用可能だとした。距離が遠く、氏族が存在することから、応じるのは望ましくない者たちや自暴自棄な者たちに限られており、ほとんどがエーリュシオン・フィールドに行き着いている。継承派は押されると自然に逃げ込むが、時折、衝動的に押し戻し、共同体の植民者たちによる暴力的な反応を引き起こしている。ドラコ連合とライラ共和国への働きかけは成功し、喜んで余剰品の軍事装備を共同体に売却している。唯一制限となるのは、メックの売却を拒否していることと、共同体の購買力が低いことだ。

 現在までに、フェリス共同体には継承派以外にほとんど危険はない。実のところ、逆は真なりとなっている……彼らの行動が近隣の注意を引くことから、共同体が誇大妄想的になるのは当然なのだ。時間があれば、長期の生き残りを達成するのに必要なだけの大きさに達するかもしれないが、そのためには共同体はもっと外交的になる必要がある。


結論
 ここの者たちはカペラより猜疑心が強い。インターステラー・エクスペディションはここで補給物資を得て、政府との関係を確立しているが、関係は思いつきで変わることが予想される。彼らは積極的な拡大が生き延びる唯一の道であると見ており、必要と考えればIEの資産を躊躇なく押収するだろう。



ヘイヴンズ The Havens

 ポルトスとサンタンダーVは、ゴーストベア・ドミニオンでも常に仲間外れであった。ポルトスはエーリュシオン・フィールドの継承派が植民化した原始世界であり、サンタンダーVは堕落したヘルマー・ヴァラセクが支配する地獄の穴であった。どちらも、ゴーストベア、クリタ人、ラサルハグ人が支配する国にはなじまなかった。ホースが実利的に退却したのを見たドミニオンの氏族長たちは、それが適切な選択肢であるか訝しんだ。ポルトスでは解決法はシンプルであった。ほとんど開発されてないそこは継承派に返された。

 サンタンダーVはもっと難しかった。氏族前の住人(家族と扶養者)はスモークジャガーが殲滅した。新しい住人はほとんど全員が氏族の移民であった。民間人は移住可能である一方、サンタンダーが海賊を惹きつけるであろうドミニオン国境の居住可能な世界であるという事実は変わらなかった。

 最終的にこの世界はポルトスの継承派が管理することになり、ヘイヴンズが作られた。ポルトスに比べると、サンタンダーVは不毛に近いが、世俗化して野心的な継承派が惹き寄せられ、放棄された居住地に移動した。

 政治的指導者というより神秘的指導者であるウィル・ハタルド監督官がヘイヴンズを統治している。タウラスの継承派から離れて、孤立した田園世界に住むエーリュシオンの継承派は、リムワールドのいとこに比べると軍事的ではなかった。タウラス連合のような大国の支援を受けられない彼らは、アーミッシュの文化に似た原始的な狩猟採集部族に近いライフスタイルに久しく退行していた。エーリュシオン・フィールドの本拠地がヘンドリック・グリムの恐怖に支配するなかで、退行はさらに加速していた。

 軍事力は存在しない。ドミニオンのウォッチが住人に取り入ろうとし、監視用の装備を維持し、配備するよう教えている。彼らは戦わないかもしれないが、その追跡スキルにより、彼らとウォッチに気づかれることなく、なにかが起きることはないだろう。

 ヘイヴンズの未来は明るい。ドミニオンはもう統治していない一方で、権益を維持している。眠れる熊の注意を引くのは、愚者のみであろう。両世界にはドミニオンの大使館とHPGが維持されており、互いや外部と通信することを保証している。継承派にとっては、ライフスタイルを平和裏に続行できるのが保証されている。フェリス共同体の兄弟たちを開放するという話も出ているが、現在のところ夢物語でしかない。


結論
 インターステラー・エクスペディションの船は、基本的な物資をこれらの世界で入手可能である。ゴーストベアの大使館は現地の継承派よりも都会的な訪問者を常に喜んで受け入れる(話題がタブーに踏み込まなければ)。


ゲームマスターセクション

 氏族は征服者としてやってきたが、過去30年の氏族による占領は、辺境世界共同体の時代以来、最高のものであった。中心領域の市民は、「氏族が我らに何をしたか?」と尋ねるかもしれないが、バレンズの市民たちは「申し分ない」と答えるかもしれない。「衛星、医薬、教育、ブドウ栽培、社会秩序、灌漑、道路、水浄化システム、公衆衛生、ああそれから平和」。氏族を求めてない地域でさえも、氏族の支配に望郷の念を懐き、現在の統治者を前任者と比べる。同時に、彼らは氏族が来る前のことをおぼろげに覚えている。恐怖と圧政の日々が戻ってこないように、彼らは文字通りなんでもするだろう。

 戦略的に氏族占領域のコアワードに位置するバレンズは、ドラコ連合とライラ共和国の関心を引いている。両国は使節とスパイを送り込み、影響下に置こうとしている。氏族にとって、バレンズは辺境に潜む恐怖とのあいだにある緩衝国家である。影響力を広げようとする全国家の使節がいるかもしれない。彼らはプレイヤーと敵対する可能性がある。同じく、ウォッチやその他諜報員にも注意すべきだ。使節たちよりも武装がよく、寛容ではない。

 バレンズには現代的な都市が存在する一方で、裕福でなく、比較的人口が少ないことを忘れてはならない。地元の当局は比較的容易に統制が可能で、都市でさえも互いに顔なじみという感覚がある。孤立は自立を生み、人里離れた居住地はより独立している。当然、部外者は行方不明になりやすい。継承派はシンプルな生活を目指しているかもしれないが、まるで無害ではなく、問題を処理することで知られている。













エスコーピオン・インペリオ(スコーピオン帝国) ESCORPIÓN IMPERIO


100687

 2800年代の後半、これら比較的平和で孤立した植民世界は、カスティーリャがウマイヤと呼ぶ勢力の侵略を受けた。侵略者たちは地元民がこれまで聞いたこともなかった兵器、巨大な歩行戦争機械を使うことで有名だった。当初、ヌエバ・カスティーリャの9つの世界は強力な敵に蹂躙されたが、カスティーリャ人の不屈の精神と粘り強さに押し戻された。ウマイヤのバトルメックをリバースエンジニアリングすることで、地元民はゆっくりとした逆襲を行い、それが完了するまで200年近くがかかった。不安定な平和が――ワード・オブ・ブレイクの監督下で――確立すると、ウマイヤとカスティーリャ公国の両方が、長引く戦争を行うように操られていたことを知った。犯人はハンザ同盟の商人たちである。

 3070年代の前半、両国は遠くのハンザ同盟と戦うため、危うい同盟を結んだ。ワード・オブ・ブレイクが去った後、ハンザへの襲撃の大半を手がけたのはカリフ国だった。機動性の必要な襲撃よりも地元の防衛を行うのに向いている公国の戦力は近くに残り、予想されていたウマイヤの裏切りから民衆を守るのにも備えた。カリフ国がハンザに逆襲するあいだ、公国は氏族と盗賊軍からの襲撃を数回受けた。これらの攻撃はカスティーリャ人の不安を高めただけだった……特にハンザの商人、技術顧問が3078年に引き上げてからは。ウマイヤ・カリフ国で新しい暴力の噂が生まれたのだ。

 カリフ国にはそのような計画を実行する時間が無かった。3080年、新たな侵略者……ゴリアテスコーピオン氏族が到着したのだ。二ヶ月以内に、氏族は9つの世界すべてを征服し、氏族の銃口下の平和を樹立したのである。スコーピオンの指導部が先頭に立ち、グラダナでの一連の非公開協議によって、試案がまとめられた。ゴーストベアの自由ラサルハグ支配をモデルにしたとおぼしき統合の形式を使ったスコーピオンは、両国家の社会を階層化し、階級システムに吸収し始めた。





短信


 データログ:: 3089年2月14日
 ロバート、これをデータ分析にまで蹴り上げてくれ。ファーシーカー計画に役立つかもしれない。
 ――ハワード


 TRANSMIT::ORIGIN::CORD.B.::>>TO>>CSDRUM/EXC29402::..::..::RCVD/STORE30093087
 RETRIEVED DRUM BATCH 342::..::..::31123087
 MESSAGE READS::


 これを君が読んでいるということは、私がこの報告を送信するのに成功したということだ。そしておそらく私が死んでいるということでもある。

 いいや、メロドラマをやるところじゃない。君は中心領域的な認識に基づき、ヌエバ・カスティーリャの人々が間抜けばかりだと思っているだろう。もしかしたら、それが本当だったこともあるかもしれない。

 もう違う。

 これらの世界の縫い合わせられたグループ内において物事は変わった。大きくだ。この地域に新しい勢力が到着したことで、情勢が完全に変わり、テーブルがひっくり返される恐れがある。

 私が何を言っているのかわからないなら、この報告を読むべきだ。逃げながら作ったものなので、分かりづらいことに関しては前もって謝罪する。片目で背後を見続けながら、これをやるのは簡単ではなかった。

 これを読めば、私がなぜヌエバ・カスティーリャでの現在と未来の計画を無期限に延期すべきだと言っているのか理解できるだろう。

 パートナーと子供たちに愛していると伝えてくれ。それから彼らに生命保険金が入るのを確実とするように。総合的に見て、「死亡・別離」条項に当てはまると考える。

 ――クラウス・シュメッツァー、工作員IE-2589

 補記: レオンで発見された工作員シュメッツァーの死体は、工作員IE-718によって、68パーセント本人であると特定された。 -HW



労働階級

 輸送力が限られていたことから、スコーピオンが使える労働階級人の数には深いギャップが存在した。これを軽減したのが、すべてのカスティーリャ、ウマイヤ民間人を労働階級に入れたことである。専門のテストが1年かけて9つの世界すべてで実施された。3082年半ばまでに、スコーピオンの科学者たちは階級の割り当てを策定し、再編プロセスを開始した。

 氏族人の大半が他に行くことを主張したが、カスティーリャ人の大多数が労働階級に残った。カスティーリャ人の多くはこれを名誉と職業意識に対する侮辱と見なした。この格差は後に生まれる問題の礎となったのである。


支援階級

 新しい階級階層と考えられるこの階級に所属する者たちは、氏族と独特のニーズに応えるため配置された。支援階級の者たちは技術者でも整備士でもないが、補給、調達、管理、救急、その他の似たような役割を果たす。


商人階級

 商人階級に再配置されたカスティーリャ人、ウマイヤ人がごくごく少数だったことから、インペリオで最も小規模な階級となっている。インペリオの範囲外では交易の機会が限られていることから、商人たちは征服した国家の複雑な経済を合理化することを重視している。当面、氏族評議会は出航する商人チームに少なくとも1個星隊のスコーピオン戦士を同行させることを決定した。この決断をもたらしたのは、間違いなく、3081年後半にナバールでウマイヤのテロリストがスコーピオンの降下船を爆破し、商人数名を殺したことだろう。


技術者階級

 ウマイヤ人の多数、特に元兵士たちが、技術者階級に動かされた。カリフ国が配備していた星間連盟バトルメックに熟知していることが、彼らの昇進の理由となった(仲間の戦車兵、歩兵は守備隊階級に入れられた)。地位の逆転は、インペリオの兵舎内で摩擦を生み出し、技術者たちは保安員に守られて野営することを余儀なくされている。

 技術者階級は通常の氏族階級ドクトリンに基づき配置転換されたことから、スコーピオン技術者の多くが戦士として再テストする機会を与えられている。選ばれた者たちのうち半数がインペリオの一流部隊へのテストを行った……残りは地位の変化に対し、禁欲主義的だった。


兵卒階級

 もうひとつの新しい階級層である兵卒階級(氏族戦士からは守備隊階級と適切に呼ばれる)は、ウマイヤ・カリフ国とカスティーリャ公国の兵士たち大半が割り当てられた。戦士階級にテストして入るには充分でないと考えられた彼らは、主に車両と歩兵(バトルアーマー除く)で構成される。これらの兵卒たちは警備、保安部隊に配備され、惑星の防衛命令に応じることとなっている。


科学者階級

 氏族人で最も数が少ないこの階級は、大勢のカスティーリャ人を吸い上げた。この中には、公国の貧弱なメック戦力を生産、整備、改造する任務を負った設計チーム全員が含まれている。


戦士階級

 当然ながら、この階級から降格となった氏族戦士はいなかった。戦士たちは、不承不承ではあったが、階級の神判を通った少数のウマイヤ人、カスティーリャ人を受け入れている。それにも関わらず、氏族評議会は、当面の間、非スコーピオン戦士を純粋な氏族戦士と並べないことで、部隊内の団結のうわべを守っている。


インペリオ指導部

 現在、インペリオは三つの評議会によって統治されている。氏族は氏族長と副氏族長を通して、軍隊と戦士階級を支配する。ローアマスターは国王とカリフに対する連絡役となり、指導を行い、氏族の階級システム、風習、ものの見方を理解させる。一般大衆の多くが、元指導者たちは氏族のマウスピースに過ぎないと信じている。なぜなら、最近の勅令はスコーピオンを支持するものばかりだからだ。


200887

 私はこのいわゆるインペリオのうち、三つの世界を訪れることができた。私が行くところすべてで、根底の流れは同じであった……不確実性だ。氏族はどんなやり方においても、彼ら自身を隠す努力を行わなかった。広い場所にバトルメック1機と戦車2両があるのは珍しいことではない。エレメンタルの集団(巨大なバトルアーマーの外でも中でも)は行き当たりばったりに彷徨っている。屋外でプロトメック数機が走っているのを見るのは珍しいことではない……行き先は不明である。まるで氏族が、武器の存在をあらわにすることによって、必死に「新しい普通」を民衆に押しつけようとしているかのように。

 まるで暴力の脅威が、暴動を鎮めるのに充分であるかのように。

 嘘をつくつもりはない……それはうまく働いている。しかし、ぎりぎりだ。

 正常な一帯が存在し、ここでは時計のようにすべてが運営される。精度の社会だ。ここにいる誰もが、全力を尽くし、やるべきことをやっている。だが、そんな地域はまれである。

 より一般的なのは、正常に見えるが、雰囲気がまったく異なる地域である。ここの空気は名状しがたい……まるでなにかがまったく違っているかのように。ここに足を踏み込んでしまうと、角を曲がるごと、しかめっ面で憎しみのこもったまなざしにぶつかる。それは誰にも向けられていないのだが、不信、幻滅、恐怖の瞳なのだ。

 いくつかの場所では公然とした反乱が起きている。それは厳しく制圧された――とても厳しく。私はナバールでそんな場所に出くわした。このとき氏族はブラウンランドから充分離れた場所に巨大な工場を建設していた。耳にした噂によると、それはバトルメック工場施設群をいくつか作るという壮大な試みであった。警備は厳重だった。この場所には、建設に必要な各階級を収める独自の都市があった。

 どうやらここには反対する者たちも収められていたようだ。時折、破壊工作に関する噂が持ち上がった。氏族はそれを(厳しく)取り締まり、仕事を早く進めたが、反乱軍は最初からやり直した。収集出来た情報によると、計画されていたペースから二年遅れているという。


200887

 カスティーリャ、ウマイヤの社会を統合することだけが、スコーピオンという新しい征服者の直面した問題ではなかった。ヌエバ・カスティーリャにおいて工業は珍しいものである。なぜなら、ウマイヤの侵攻があるまで、カスティーリャ人には重戦争装備は必要なかったからである。既存のバトルメック工場は、中心領域で最も工業化の進んでいない中心領域世界においても原始的なものである。車両の工場はもっと一般的であるが、大半はトン数が少ない車両を作っている。航空宇宙産業はほぼ存在しない。例外はグラナダに3つある基礎レベルの降下船整備施設だ。これらは氏族のためにほとんど使われてはいない。なぜなら(噂によると)氏族は独自の施設を建設する最低限の物資と共に到着したからだ。

 このような大規模な技術的ギャップがあることから、アップグレードのプロセスは耐えがたいほど遅れている。科学者階級、技術者階級、支援階級内のフラストレーションは、障害が立ちふさがるごとに高まっている。氏族評議会は、進歩がないことに対する注意をそらそうとして、二つの新インダストリアル・メック計画の設計と生産を認可した……アラナとレプターである。両モデルはゆっくりと生産中であり、守備階級とオメガ銀河隊に回されている。


150987

 追われている。

 ここしばらく、つけられているのを感じていた。最初はグラナダを離れるフライトの際だ。私はシャトルの前方ラウンジで〈レイ・クン〉とその明白な劣化を目撃した。このマッケナ級戦艦の装甲には、大きな裂け目と穴が空いており、非常にみすぼらしい外見を与えるものだった。修理しようという痕跡がほとんどなかったことは気にしなくていい。後から考えると、ここで船の名前を呼んでしまったことは、私が普通のカスティーリャ人労働者でないという証拠になってしまったようだ。

 それ以来、旅の間、四人の顔をちょくちょく見るようになった。近づくことはなく、常に距離を保っていた。しかし、彼らはそこにいるのだ。私は知りうるすべてを使って彼らを振り切ろうとした。オレステスで教えてもらった旧ブレイクズ・レイスのトリックさえもだ。私の被害妄想は最高潮にあるようだが、後悔するより安全であるほうがいい。

 不幸なことに、私の旅はアラゴンの首都、マドリッドの郊外に到達した。ここにはウマイヤの巨大な倉庫群の他に、市街地という貴重な小さい隠れ場所がある。倉庫は空っぽである。

 私は自分で策定しておいた緊急計画に沿って、データを惑星外に送る準備をしている。うまくいけば、旧探査局のDRUMはまだ動作するだろう。幸運にも、氏族の技術者たちは、10年前にいたワード・オブ・ブレイクの連中ほど賢くはない。ほんの少しだけこれを簡単にしてくれるだろう……

 <::<メッセージ終了>::>


ゲームマスターセクション

 新しく作られたエスコーピオン・インペリオでの人生は、一番いい時期でも激動そのものである。3つの派閥の根底に相互不信があることから、抑制された暴力が日常茶飯事となっている。比較的平和で落ち着いた場所もある一方で、社会の徹底的な激変は、カリフ国と公国の市民を混乱させた。

 新しい階級システムは3つの社会をうまく混ぜ合わせてはいない……特に氏族の社会を。氏族人の多くが変化と受け入れの必要性を受け入れている(特に若い世代)一方で、このような変化をケレンスキーのヴィジョンからの離脱であると見なす者もいた。7つの階級はソサエティの強い影響がある証明だとほのめかす過激派までもがいる。なぜなら、7は反乱科学者たちが好む数字だからだ。

 本質的な不信感は、3つの勢力の結束が求められるすべての箇所で前進を緩めている。氏族の頑固さ、カリフ国のよそよそしい社会、公国の軟弱さは、すべて隣人に対して作用するものである。

 絶え間ない混乱は、ヌエバ・カスティーリャを、隠謀、反乱、情報操作、秘密作戦の餌食としている。ハンザ、コヨーテ氏族、ストーンライオン氏族、クラウドコブラ氏族は、独自の指針を持ってインペリオに侵入し始めたところであり、中心領域の私企業(インターステラー・エクスペディションのような)から来た工作員が独自の目的でうごめいている。ヌエバ・カスティーリャでのキャンペーン、アドベンチャーに関わるキャラクターは、あらゆる事柄に備える必要があり、誰も信用してはならない。













ダーク・エクスパンス THE DARK EXPANSE


ダーク・エクスパンス

 外世界荒野(ニューデルファイ協定とオリオン断層自体も含む)の向こう側に広がるのは、非公式にダーク・エクスパンスの名で知られる地域である。エクスパンスは、アルドリン星雲、ガム星雲、オリオン星雲、それにラムダオリオン星雲、星団いくつかを内包している。オリオン腕とも呼ばれるエクスパンスは、星がないことではなく、植民化されたあとで放棄されたり、破壊されたり、人が生活できないまま残された世界が数百あることから名前がついている。


天文図的概要

 オリオン腕のスピンワード領域は、星雲と塵雲が多く、大規模な星団いくつかの密な星間ネットワークを持っている。この地域での急速な恒星誕生の時代ははるか昔に過ぎ去り、膨大な星々が惑星系を作るのに余りある時間が与えられた。小さく、長寿で、冷えた星系(M、Kスペクトラル級)には、各世界で複雑な生態系が発展するのに充分な時間があった。

 ダーク・エクスパンスで最も輝かしく、最も目立つ要素は、M39散開星団、またの名を「白鳥の目」である。恒星連邦のグレートゴージからおよそ370光年に位置するM39は、約2〜3億歳で、惑星系を形成するのに十二分の時間があったが、ダーク・エクスパンスでも単細胞以上に進化した生命を探すのが難しい地域のひとつなのである。ここにある世界の大半は、人類が居住するのなら相当なテラフォーミングを求められる。

 ヤルンフォルクの領域とほぼ重なってるのが、青と赤に輝く反射星雲、ヴェラ星雲である。60光年以上にまたがるヴェラ星雲はエクスパンス中で宇宙航行の目印としてはっきりと目視することができる。もうひとつの星間ランドマークたるケフェウス座T星(巨大なミラ型変光赤色巨星)は、フィルトヴェルトからおよそ100光年のところに見つけられる。現地では「テューポーン」「悪魔の目」と呼ばれるケフェウス座T星は、地球の太陽系を飲み込むほどに大きく、1光年半の距離から満月に匹敵するほど輝いている。

 インターステラー・エクスペディションズが探索したこの地域の中で最も目立つのはガム星雲である。ドラコ連合の外側国境から約800光年離れたところに中心があるガム星雲は、700光年にわたって膨大な超新星の名残があり、エクスパンス内にあるほとんどの世界で空の巨大な特徴となっている。この超新星は中心から250光年以内にあるすべての世界で生命を滅ぼすほどに強力であり、虚空を残した。かつて相応の生物圏を持っていた惑星は、完全に壊滅するか、まだ大量絶滅の只中にある。IEはまだこの絶滅エリア内部に人類が存在する兆候を発見できていない(我々の観測衛星をのぞく)。ガム星雲中心のヴェラX線放出源の探査は、放射線レベルが高いために不可能である。


夜の灯

 ダーク・エクスパンスは数百万立方パーセクの空間からなる。人類が訪れた無数の星々には、しばしば我々が通った痕跡が残されてる。インターステラー・エクスペディションズがエクスパンスで発見したものを充分に説明すると、小さな図書館を埋め尽くすくらいの本が必要になってしまう。IEが発見したものを要約するために、最も重要なものと、インターステラー・エクスペディションズの新人たちが注意すべき最も危険なものをリストにした。





エンサイクロペディア・ギャラクティカ




STAR: SLSC G0V.11407 (ローバー)
位置: 元外世界同盟の世界マリパのスピンワード50光年

惑星の情報:
星のタイプ(再充填時間): M5V(206時間)
星系内の位置: 第3惑星
ジャンプポイントからの行程: 10.43日
衛星の数: なし
地表重力: 0.98
大気圧: 通常(呼吸可能)
赤道温度: 32度(温帯)
表流水: 79パーセント
進化生命体: 爬虫類
人口(3095年): 0

 インターステラー・エクスペディションズによるダーク・エクスパンス冒険の初期に発見されたこの惑星(ローバーの名で知られるようになる)は、興味深い発見であった。この星系にジャンプした宇宙探査チームは、即座に太陽系中からの通信リクエストに襲われた。通信ピングは星間連盟時代の監視衛星数百基(居住可能惑星用の気象観測衛星から、各惑星や大規模な小惑星帯を周回する科学探査機まで)から放たれたものであった。

 これらの衛星は、カンガ・ジャンプ戦車AL2200トラックナビ戦闘コンピュータで発見された極めて適応力の高いソフトウェアを流用した実験的なネットワークプログラムで調整されていた。IEの航宙艦がハイパースペースから出てくるのを探知すると、衛星たちは300年溜め込んできたデータをすべてダウンロードしようとした。星間連盟消滅後、明らかに忘れ去られていた衛星群は、共通の無線周波数が意味不明な重複データでいっぱいになるまで、犬のようにキャンキャンとしつこく吠えて注意を引いた。

 IEは3ヶ月以上かけて、各衛星からデータをダウンロードし、それからほとんどをシャットダウンした。衛星の適応型知能のプログラムは複雑で、IEのコンピュータ科学者たちはまだソフトウェアを解明しようとしているところだ。



STAR: SLSC M9III.2855 (レストストップ)
位置: 元外世界同盟の世界タウマトゥルゴのスピンワード、コアワード90光年

惑星の情報:
星のタイプ(再充填時間): M9III (210時間)
星系内の位置: なし(天底ジャンプポイントステーション)
ジャンプポイントからの行程: なし
衛星の数: なし
地表重力: なし
大気圧: なし
赤道温度: なし
表流水: なし
進化生命体: なし
人口(3095年): 100〜450人

 赤色巨星の天底点にあるレストストップは、深辺境へと旅するインターステラー・エクスペディションズのチームに人気の中継地点となった。2995年、IEのチームに発見されたレストストップは、いまだ稼働する星間連盟時代の再充填ステーションである。初期の考古学調査によると、このステーションは星間連盟の崩壊後も、盗賊や探検家、あるいはケレンスキーのエグゾダス落伍者に、繰り返し使用されてきたことがわかっている。

 再充電ステーションのコンピュータの情報によると、赤色巨星がこの地域の宇宙で目立っていることから、星間連盟はステーションを建設したようだ。行方不明になった航宙艦は、宇宙航法がお粗末でも、この星で見つけることができる。

 インターステラー・エクスペディションズがレストストップにいることは前世紀に有名になり、両ビジネス(降下船スピンワード・ショウガールなど。内部に巨大なバーと売春宿がある)と、盗めるものを盗もうとする盗賊もまた引き寄せることになった。IEの降下船は自衛に充分な火力を持つ一方で、盗賊の活動は活発化しており、IEがレストストップとスピンワード・ショウガールのサービスを使い続けたいと望むなら、常設の警備隊が必要になるかもしれない。

 惑星系は目立たないもので、3つの世界のうち、居住可能なものは存在しない。最内の世界は大気のない地球型の岩石で、外の2つはガスジャイアントである。両者の間に、ふたつの小惑星帯もまた横たわっている。



STAR: SLSC K2V.9006 (ニューシエラ)
位置: 元外世界同盟の世界ワイニポイントからスピンワード、コアワードに125光年

惑星の情報:
星のタイプ(再充填時間): K2V(193時間)
星系内の位置: 第2惑星
ジャンプポイントからの行程: 4.62日
衛星の数: なし
地表重力: 1.06
大気圧: 通常(呼吸可能)
赤道温度: 20度(寒帯)
表流水: 58パーセント
進化生命体: 哺乳類
人口(3095年): 不明

 3012年、ローバーの電波天文学班が小さなオレンジの主系列星から発信された人工の電磁波を受信し、発見されたニューシエラは、地球の20〜21世紀の戦争が狂気じみていたことの教訓である。軌道上からの観測によると、最盛期のニューシエラには30億人が住んでいた。現存する大型建造物の考古学的画像と軌道上に残った衛星の分析によると、26世紀の後半に地球の北アメリカ南部から来た植民者がこの世界に居住したことが示唆されてる。

 28世紀後半のどこかの時点で、民衆の間で紛争が勃発し、全土にまたがる熱核戦争が巻き起こった。惑星に近づいた最初の観測チームは、原始的なレーザーシステムと核兵器を搭載した殺人衛星の攻撃を受けた。以来、惑星の観測は安全な距離から行われている。IEが探知した無線信号は、山脈の奥深くにある残った居留区のひとつから送られた可能性が高い。これまでのところ、通信しようとしても沈黙が返ってくるか、信号を発したIEの船が地上・宇宙の兵器にロックオンされる結果になっている。

 現在、惑星は大絶滅(コバルト爆弾の大規模な使用で引き起こされた生態系への大規模なダメージによる)から回復する途上にある。初期の戦争の結果である核の冬は、だいぶ前に終わっているが、IEの研究によると、オゾン層の消滅、惑星表土の破壊、海洋生態系の絶滅によって、農業は極めて難しいとされる。生存者がいるとしたら、地下の温室で食料を作っているはずだ。



STAR: SLSC G9IV.1877 (ムライン)
位置: ニューシエラからスピンワード、コアワードに85光年

惑星の情報:
星のタイプ(再充填時間): G9IV(190時間)
星系内の位置: 第5惑星
ジャンプポイントからの行程: 5.82日
衛星の数: なし
地表重力: 0.89
大気圧: 通常(汚染)
赤道温度: 41度(熱帯)
表流水: 77パーセント
進化生命体: 微生物(感染爆発前は鳥類)
人口(3095年): 0

 ニューシエラとほぼ同時期に発見されたこの惑星(インターステラー・エクスペディションズがムラインと命名)は、28世紀の初期に外世界同盟の植民者が移住した豊かな世界であった。ムライン(元の名前はリッチモンドワールド)は現在、単細胞生物以上に複雑な生命の存在しない砂漠である。聖書の伝染病から名付けられたムラインでは、地球のピコルナウイルスに似た独特なウィルス(IEの生物学者が発見)が感染爆発した。同盟の家畜から持ち込まれたムライン・ピコルナウイルスは、現地の生命体のRNA鎖が独特なことから植物をキャリアにすることができた。ウィルスは植物を通じて急激に変異・拡散し、それから空気感染と化して地球出身の生命体すべてに適応した。

 IEの考古学班は惑星の大都市にある図書館でウィルスがいかに早く広まったかの情報を得た。最初の植民者が上陸してからウィルスが地球種に感染するまで10年近くがかかり、それが始まってしまうと最後のニュースまで6ヶ月足らずとなった。そこで語られているのは、残った汚染されてない食料を巡っての飢餓と暴動であった。

 ムライン・ピコルナウイルスは惑星上の全生命体を皆殺しにする程度に猛毒だったが、現在では絶滅している。寄生する宿主を見つけられなかったことから、減少していく地元の植物に感染する以上の変異ができなかったのである。研究者がいまだ活動するウィルスの群生地に出くわすのに備えて生物災害用装備が必要とされる。また大気に残された酸素レベルが低い(酸素を供給する植物がいない)ため呼吸装備も必要である。ムラインへの出入りは厳重に制限され、ムラインでの任務から戻るIEの隊員は6ヶ月の汚染除去検査を受けねばならない。



STAR: SLSC F8IA.0086 (シェイディパームス)
位置: ニューシエラのスピンワード、コアワード85光年

惑星の情報:
星のタイプ(再充填時間): F8Ia(179時間)
星系内の位置: 1
ジャンプポイントからの行程: 12.01日
衛星の数: なし
地表重力: なし
大気圧: なし
赤道温度: なし(なし)
表流水: なし
進化生命体: なし
人口(3095年): 1260人(スノーデン級採掘ステーションを占拠中)

 深辺境のスピンワード地域における最初の大規模な遭遇は、シェイディパームス宇宙ステーションだった。星間連盟期に建設された先進的な天体観測施設であるこの宇宙ステーションは、星系の小惑星中に展開する数百基の可視光・赤外線・X線・ニュートリノ望遠鏡/探知機とつながっている。シェイディパームスと望遠鏡の電源は、星系で最大の黄白超巨星から放たれる膨大な光を太陽パネル、太陽帆で受けて賄っている。

 シェイディパームスは星間連盟が2749年に配備したスノーデン級採掘ステーションを重改造したものだ。大きな与圧ベイは水耕ベイとなり、科学者たちの5年の勤務期間におけるリクリエーションエリアとしても使われる。選鉱区画もまたステーションの複雑なセントラルコンピュータを納めるためにコンバートされた。シェイディパームスは恒星データをいともたやすく処理、分析することが可能で、データは500光年先までの惑星を特定するのに使われた。星間連盟の末期、この施設はダーク・エクスパンスと深辺境リムワード近隣区域の重要な情報を星間連盟に提供した。

 インターステラー・エクスペディションズは3069年、シェイディパームスを「発見」し、いまだ住人がいるのに驚いた。乗員たちは星間連盟崩壊後に見捨てられた科学者たちの子孫ではなかった。3010年、外世界同盟からの小規模な難民グループがこのステーションに迷い込んだ。生命維持装置が稼働中で、水耕ベイから大量の食料が提供されているのを見て、彼らはここで生きることを選んだ。

 IEはコンピュータコアと保存された記録の復旧を試みている。システム全体は最後の科学者が死んだ直後にオーバーロードしていた。コンピュータに収められている情報の量は計り知れないものである。シェイディパームで活動するIEのチームは、「先住民」との協定によってここにいられることを心に留めるべきである。敬意を払うこと。



STAR: SLSC A0V.4900 (人類の記念碑)
位置: ドラコ連合のランドエンドから約500光年以上

 インターステラー・エクスペディションズの雇用者とボランティア全員が、孤独な考古学者や冴えない科学者というわけではない。3076年、レイチェル・ジェモン博士は未来の考古学者たちを巻き込むプロジェクトを提案した。この人類の記念碑プロジェクトは、中心領域中の複数の大学に受け入れられ、資金が拠出された。タイムカプセルが作られ、過去1000年で発見された人類の最も重要な知識が収められた……芸術作品のレプリカ、物語、あるいは人類の遺伝子のコピーすらも。ワード・オブ・ブレイクの聖戦の折も折、ブレイクが成功したときに備えて、カプセルこそが文化の継続を保証する道の一つだと数多の大学が感じたのである。

 宇宙服を着た人類が歓迎の手を広げる20メートルの構造物として作られた人類の記念碑は、特定の地点と時間を狙って宇宙に放出された。正確な距離を測定したジェモン博士は、SLSC A0V.4900(居住可能な惑星のない白色主系列星系)の周回軌道にタイムカプセルを送った。3077年10月30日のことであった。この日付は、人類が初めて月面に着陸した(人類が他の世界に旅した)1969年7月20日に地球の太陽から放たれた光が届くその日だったのである。



STAR: SLSC M6V.15810 (マウナ・ロア)
位置: フィルトヴェルトからスピンワードに450光年

惑星の情報:
星のタイプ(再充填時間): M6IV(207時間)
星系内の位置: 第6惑星
ジャンプポイントからの行程: 2.34日
衛星の数: なし
地表重力: 0.78
大気圧: 高圧(汚染)
赤道温度: 347度(炎熱)
表流水: 68パーセント
進化生命体: なし
人口(3095年): 0

 つい最近、3088年に発見されたここは、星間連盟のテラフォーミング計画に記録が残っていない。星間連盟恒星目録の番号のみがこの星について知られているすべてだが、インターステラー・エクスペディションはこの星系で極めて大規模なテラフォーミングが行われたことを発見した。それはミカ・トライナリーや太陽系でのみ見られるものだった。残念ながら、この惑星は居住可能からほど遠い。

 テラフォーミングに向いているゴルディロックス・ゾーン(生命の繁栄にちょうどいい位置)からかけ離れているこの惑星(IEがマウナ・ロアと命名)には、極軌道に多数の太陽ミラーが周回している。マウナ・ロアのL4、L5ラグランジェポイントには別のミラー配列があり、内側の世界の太陽集光装置からマイクロウェーブ・エネルギーを受信している。この複雑な仕組みの目的は、極めて短い期間(10年以内)で、マウナ・ロアをタイタン並の温度に温めることにあると推測される。

 どのような目的があったにしても、それは放棄されたが、巨大工学省(Department of Mega-Engineering)はシステム全体のシャットダウンを望まなかったか、忘れたか、できなかった。その後、必要以上のエネルギーがマウナ・ロアに注ぎ込まれ、惑星を覆い尽くした。かつて凍っていた地表は、水蒸気の分厚い雲の下で沸騰した。氷が溶けて惑星にかかるストレスが変化し、地表の古い巨大火山が噴火することとなった。この火山こそが惑星の名前の由来であり、夜になると惑星を深いオレンジ色で輝かせる……溶岩が地表に吹き出すからだ。



ゲームマスターセクション

 この人口過少な宙域は、いくつかの点で有名である。第一に、ほぼ居住不可能。人類の天の川銀河への大拡散は、中心領域人の認識とは違って、中心領域の国境で突如として止まることはなかったものの、大人数を遠くの植民地に送るのは難しいことから、人口が指数関数的に減少していく。

 第二に、旅行者のほとんどにとって、この地域はほぼ星図化されていない。標準的な航宙艦の航法データベースは、目視できる銀河の広範囲にある星々の質量、場所、動きをリストにしている――そして航宙艦は近くの星へのジャンプに搭載されたセンサーを使用できる――かもしれないが、データベースには中心領域を超えた星々を周回する惑星は載っておらず、居住できるかどうかについては言うまでもない。人が住むのに適していない断層のなかでは、人類を支えられる世界、ましてや人が住んでいる世界に出くわす前に、数千の星系をさまようことになろう。ケレンスキーのエグゾダスが理想的と言いづらい氏族本拠地に向かったのは、壮大な計画の一端だったのではなく、単に植民する価値のある世界を探すにはスピンワードでなくコアワードに向かうのがベストであるという証拠を古い観測データから発掘したからだと思われる。

 最後は、上記のような状況にもかかわらず、オリオン断層は未踏の可能性に満ちていることだ。この地域に比べたら、人口まばらな僻地の外世界荒野でも大都会のようなものである。エクスパンス内にある数少ない人の住める世界が領有されることはめったにない。獲物がいるところから遠いので、海賊ですらほとんどいない――したがって安全は簡単に確保できる。探検家は失敗した植民地、石器時代に逆戻りした居住地、放棄された艦船を発見するかもしれないが――ごくわずかな例外を除いて――船を建造したり維持できるだけの星間国家は存在しない。こういった居住地は、人類の大半から孤立しているので、分岐した技術を持っているか、バトルメックのようなプレイヤーが楽しんだり利用できる大きな進歩を欠いている。部族間紛争や産業革命時代の戦争をバトルメックでひっくり返そうとするのは、興味深い冒険になるかもしれない。

ダーク・エクスパンス 

 ダーク・エクスパンスはプレイヤーが冒険する未知に溢れ、星間連盟の歴史のいいところと悪いところを見ることができるだろう。シェイディパームスとレストストップは、ゲームマスターが深辺境のキャンペーンの拠点にするのに便利な位置にある(プレイヤーたちがたまの海賊による攻撃や生命維持装置の故障を気にしないのであれば)。

 ダーク・エクスパンスのこういった場所には、ゲームマスターが使えるような疑問がかなりある。なぜローバーの衛星のコンピュータシステムはこんなに複雑なのか? そして誰がプログラムしたのか? 海賊の攻撃を受けてもスピンワード・ショウガールが無事なのはどうしたことか? オーナーは海賊と取引してるのか、それとも海賊は何かを恐れているのか? ニューシエラの核紛争が瞬く間にエスカレートしたのはどういうことだったのか? そして生存者たちはこんなに長く生き延びてるのか、それとも自動化されたコンピュータシステムが戦争を続けてるだけなのか? ムラインでの疫病は本当に終わったのか、あるいは何が起きたのか気づく前に貿易を通して近くの世界に広まったのか? IEが探索し隔離する必要のある世界はあるのか? なぜマウナ・ロアのような中心領域から離れた惑星がテラフォーミング計画に選ばれたのか?













グリーンゴースト THE GREEN GHOSTS


辺境世界共和国の忘れられた子供たち

 ジェームズ、いつもは、あきらかに狂ってる者からとった証言書き写しは信じないのだが、これは我々の興味を引いた。どう思うか、教えてほしい。これを読んだら理解できるだろう。
 ――パトリック




TRANSCRIPT::INTERROGATION OF Y-92G//SESSION 251

[ミッチ・スティーヴンス大尉、LIC]: 「これは74度目の面会である。被験者Y-92G――」
[トレントン・カルーフ]: 「僕の名前はトレントだと言っている!」
[スティーブンス]: 「――被験者Y-92Gは、トーマンズで3068年8月1日に捕らえられた。患者表記、Y-92Gは弱いバートゥッツィー症候群と診断されている。この病気は、12歳前後で感情と精神の成長を止める。現時点で対象の返答は45パーセントの信頼度と考えられる」
[カルーフ]: 「そっちが言ってるのはトーマンズ、こっちが言ってるのはトゥメインズ……」
[スティーブンス]: 「被験者は、グリーンゴーストの名で知られる海賊団のメンバーだったと主張している」
[カルーフ]: 「だった。それがキーワードだ。そうそう。だった」
[スティーブンス]: 「そうだな、トレント、メンバーだった。いまの君は安全だ」
[カルーフ]: [狂ったように笑う]「安全、安全。安全なやつなんているの? あいつらが僕を捕まえに来ると知ってるだろ。あいつらはいつもやってくる。『魂を残すことはない』、そう言ってた。そう言ってた」
[スティーブンス]: 「4年経ってるんだぞ、トレント。もうあいつらはやって来ない。あいつらは君が存在することすら知らない」
[カルーフ]: 「来ない?」
[スティーブンス]: 「ああ、来ない」
[カルーフ]: 「と、君は言う」
[スティーブンス]: 「トレント、また針を使ってほしいのか?」
[カルーフ]: 「針。針があって、あって……」
[スティーブンス]: 「落ち着け、トレント。また質問する、オーケー? 今回は騒ぎを起こさず質問できるだろうか?」
[カルーフ]: 「ああ、謝るよ。あの染みは落とせたかい?」
[スティーブンス]: 「それは気にしなくていい。始めるか?」
[カルーフ]: 「はいはいはい。問題なく。約束するよ」
[スティーブンス]: 「それはいい知らせだな、トレント」[紙をめくる音]「もう一度教えてくれ。きみはどの星系から来た?」
[カルーフ]: 「ガーベンスタッド。ガーベンスタッドから来たんだ。辺境沿いの虚空にあって、暗闇に隠されてる。ガーベンスタッドだ」
[スティーブンス]: 「そこに行ってきたよ、トレント。ガーベンスタッドは数世紀前に死んだ世界だった」
[カルーフ]: 「死んでないよ。穏やかに。静かに。僕たちは星々の静かさが好きだった」
[スティーブンス]: 「すばらしい、すばらしい。記録頼む……Y-92Gの出身について前進はない」[紙をめくる音]「トレント、君はどうやってその世界を出た?」
[カルーフ]: 「彼らに連れて行かれた。緑の卵がやってきて、機械の怪物が出てきて、来るように言われた」
[スティーブンス]: 「バトルメック。君が言ってるのはバトルメックだ」
[カルーフ]: 「巨大ロボット。あいつらは叔父さんの家を踏みつぶした」
[スティーブンス]: [ため息]「そうして、怪物たちは卵に乗ることを強要し、星々に君たちを運んだ」
[カルーフ]: 「そう、そうだ! あいつらは僕たちに音が出る棒の使い方を教えた。ロボットのひとつに乗りたかったけど、グレゴールはそうさせてくれなかった。グレゴールはケチだった。彼が持ってた大きな蜘蛛型ロボットはクールだった」
[スティーブンス]: 「グレゴールはなんでケチなんだ? 君にだけケチだったのか?」
[カルーフ]: 「いやいやいや。あいつはガーベンスタッドの人たち全員を嫌ってた。エンジェルマンたちのことも。あいつが好きなのは、自分の仲間たちだけだった」[囁き声]「サソリ! あいつらは仲間たち用のかっこいい絵を持っていた」
[スティーブンス]: 「エンジェルマン? これまでの話には出ていない」
[カルーフ]: 「そうだっけ? エンジェルマンたちは僕らを守ってくれた。あの人たちはママが教えてくれたような天使じゃあなかった。羽根がなかったんだ。でも、いつも白いローブを着て、青ざめた肌をしていた。ミカル、あの人はいい人だった。暗闇の中でも見える、黄色い目だった」
[スティーブンス]: 「暗闇の中でも見える?」
[カルーフ]: 「スーツの人、具合が悪い」
[スティーブンス]: 「さあ、トレント。ミカルについてもっと教えてくれ」
[カルーフ]: 「あああ、ちょっとした問題が……」
[スティーブンス]: 「行儀良く!」

Transcript 251#2; 記録3072年11月18日



面談付記

 集めることが出来た情報によると、被験者は、3068年のトーマンズ攻撃で唯一生き残ったグリーンゴーストの生存者であった。ゴーストはジェイドファルコン氏族が襲撃を行う直前に到着した。カルーフは建物のがれきの中、ひっくり返ったAPCの下から発見された……他の乗員はすでに死んでいた。

 彼の健康状態は珍しいものであった……バートゥッツィー症候群最後の医療記録は星間連盟までさかのぼるものである。この健康状態は、辺境世界共和国の植民世界いくつかのみで見られるものであり、簡単に治療できるものであるが、不幸にもカルーフの場合は誤診で見過ごされ、病状は永久的なものとなった。

 カルーフの記録――3077年に死ぬまで9年間で100以上の書き起こし――は、ほとんど意味不明である。だが、長年にわたって、多くの点が一致している。彼によると、グリーンゴーストは失われた辺境世界植民者と、ワード・オブ・ブレイク兵士、乗組員に加えて、ゴリアテスコーピオン氏族の戦士、技術者と思われる者たちである。彼らが探しているものを、カルーフは知らなかった……彼は何度も雑用に回された。襲撃のあいだ、彼は衛生兵として働き、戦場にいる死者、負傷者を全員片付ける一方、動作するゴーストの装備に爆薬をしかけていた。

 認められるところは多くない。しかし――カルーフの話を正面から受け付ける限り――少なくとも一部では、ワード・オブ・ブレイクと共に活動しているのが確認されたようだ。

 だが、さらに興味深いのは、失われた辺境世界の植民世界に関する考えである。ひとつあるのなら、もっとあるはずだ。

 いずれにせよ、この宙域をつつく独立探検家たちを得るため、補助金の増額を考慮する余地があるだろう。我々が幸運なら、探検家たちは巣にいるゴーストをつつくだろう。

――パトリック・ウェント局長、3089年3月18日





ワードの分派


 グリーンゴーストの謎に対する最も明白な回答は一つである……ワード・オブ・ブレイクだ。聖戦の一部として、ゴーストは確かにワードに寄与し、正統な質問に対する意地悪な返答となった。年が進むに連れ、この皮肉は最高に理論的な解答のひとつにゆっくりと変化しつつある。ワード・オブ・ブレイクの他にだれがいるというのか?

 ROMは幅広い特殊作戦を準備、実行することで悪名高かった [ジュネーヴにある共和国の記録を検索することで確認できる。最新のエントリー、ROMヘッダー535-2K、922-1D、891-S、730-Tを参照。-RM]。区分化され、まとまったこれらの作戦は、個人、企業、科学的発見、さらには星系全体までをも目標とし、目的を実行するための時間と空間を与えられていた。

 IEはそのような作戦に全勢力を傾ける。我々の各種補助金・探検は、過去の謎に答えを出すこと、将来の研究のため新しい資源分野を見つけること、広大な未知を端渓することに、すべてが向けられる。この三つの枠組みはどれも、ワード・オブ・ブレイクの有名な秘密主義と、科学的知識の支配に真っ向から逆らうものである。

 以下の点を考慮に入れるべきである。

・ゴーストは3065年の前半から、ライラ同盟辺境国境沿いの考古学発掘地点を活発に攻撃している。
・これら発掘地点の90パーセントは、古代の宗教的なものか、科学的重要性のあるものであった。
・影響を受けた発掘地点の72パーセントは、IEの独占契約か第三者契約下にあった。
・すべての遭遇例において、ゴーストが最新技術、一部は氏族製のものを使っていることが記録されている。
・IEがかなりの抵抗を示した地点において、撃墜されたゴーストのマシンには死体が残されていなかった。
・少なくとも3隻のゴースト航宙艦のドライブ信号は、コムスターの「行方不明」になった船と一致する。

 IEと契約しているライラ国境発掘地点の大部分は、元辺境世界共和国の惑星であるか、かつてその国境にあった星系である。我々はたいてい、放棄された地点での考古学的発掘を望む地元の大学、専門の企業からの接触を受ける。それは失われたデータ、歴史的に重要なものを再発見するためである。それらのうち、真に価値あるものを生み出すのは8パーセントのみだが、資金を生み出し続け、少なくとも将来の取り組みに奨励金を与えるのには充分である。

 ワード・オブ・ブレイクが科学知識の蓄積を抑えようとしていたことを考えると [共和国の記録#8173-4-FOCHT225-bを参照]、これらのプロジェクトが彼らの注意を引くことは予想できるものである。聖戦前、公的に職員たちを妨害することは、いくつかの許可、合意に触れるものであった。いくつかの方向に自然のブラインドを下ろすと、そういった政治的な地雷を避けることができる。 [共和国の記録#21-32t55-ASTROKAZY-634nを参照]

 すべての遭遇において、ゴーストはテンプラー・オムニメック、リチウム核融合ジャンプドライブ、C3i通信ネットワークのような最先端の軍事装備を使っていることが記録されている。いくつかの衝突において、氏族装備、たいていは氏族二線級に属する機種が目に付いた。このような物資を「辺境の海賊団」と呼ばれるものに供給できる資源と能力を持った組織は、あったとしても、ごくわずかである。

 最も気がかりなのは、たまにバトルメックやバトルアーマーが破壊されたときに、生物学的な証拠がなかったことである。確かに、遠隔操作や人工知能の可能性は排除することができるだろう。聖戦中、ワード・オブ・ブレイクは「自殺シート」やマネイドミニの自殺装備でパイロットを殺すことで悪名高かった。適切なDNAサンプルなしでは、回収されたゴーストの装備から何かを判断するのは不可能である。

 このような幅広い技術、戦術、安全装置を持って活動する海賊団は存在しない。平均的な海賊は、自身の生存を中心に幅広い目的で幅広い目標を攻撃するものである……食料、戦争物資、奴隷、その他だ。グリーンゴーストの目標 [共和国の記録#9129-3-GREENGHOSTS410-eを参照] は、そういうものではなかった。彼らの存在をたどっていくと、IEに何らかの形で関係している場所にたどり着く……この場所とは、ライラ同盟とファルコンOZの辺境国境に位置する歴史的に重要な地点である(特に宗教的、ロステック的に重要な地点である)。

 3070年代前半、コムスターは工作員を捕まえさせることで、このグループに浸透しようとした。しかしながら、この作戦はすぐに頓挫し、三名の工作員はひとつ離れた星系で死んでいるのが見つかった。彼らの死体は惑星HPGの入り口に残されていたのである。これをブレイクROMの仕業と考えるのは容易である……彼らは50年代、60年代に侵入したコムスター工作員を特定し、追い出すのに多大な成功を収めた。

 グリーンゴーストがブレイクROMとして活動しているとの決定的証拠はない一方で、状況証拠と歴史的証拠は、その方向を強く指し示している。部隊が完全に捕まるか、主要作戦拠点があきらかになるまで、グリーンゴーストがだれであるか――あるいはなんであるか――を確かめるすべは単純に存在しない。

 評価部は以下のように推薦する。逸話的、間接的証拠に基づき、グリーンゴーストは離脱したワード・オブ・ブレイク工作員でないかと考えられる。彼らはスフィア共和国にほとんど脅威を与えていないが、彼らを捕らえ、共和国と同盟国の利益に対する脅威を排除するため、共同タスクフォースを作ることをLICに支援を申し出るべきである。

 ――ロドニー・マクレアリー大尉、SIS、ジュネーヴ、外部脅威評価部、3092年8月8日



状況報告:://グリーンゴースト問題、ナーゲルリンク=フォヒト・タスクフォース
資金提供インターステラー・エクスペディションズ



要約

 率直にいって、この質問は容易に答えられるようなものではない。証拠は不十分で、ライラ国境方面アンチスピンワードに関する知識は、地図にある共和国世界を除いて不足している。それで。

 グリーンゴーストとは何者なのか?

 その質問はゴーストの第一の敵に関わるものである。インターステラー・エクスペディションズは、明白に彼らが憎むべき敵の第一位である。3060年〜3089年のあいだ、310回攻撃された記録を持つIEの発掘現場は、ゴーストの目標のうち42パーセントを占めている。その次の被害者はステラー考古学社の5%である。あきらかにIEは何かをして、この謎めいた敵対者(付録A参照)を怒らせた。

 ゴーストが何者なのかわかったら、「なぜか」という問いに対する答えがあることだろう。そしてその質問は容易に答えられるものではなく、アンチスピンワード辺境国境沿いにある星系のあちこちで、無数の陰謀論と推測を生み出している。

 我々の目的はこの問いに答えを出すことではないが、我々の知る確証を整理するところである。これは将来のシンクタンク開発計画の出発点となってくれることだすを。



目撃

 通常、グリーンゴーストは考古学的な発掘地点か、宗教的聖地、歴史的に保護されていると見なされる場所に出没する。奇妙にも、彼らはそこから何も取っていかないが、時折、特殊走査チーム(付録B、C参照)を派遣するとされている。彼らの目的は、「不法侵入者ども」と呼ぶ者たちを追い出し、占有者に退却を強いるか、抹殺することである。捕虜を取ることは、あったとしてもまれである。



戦力構成

 73パーセント、ゴーストの戦術ドクトリンは通常の中心領域軍事組織に沿ったものである……メック小隊、中隊、歩兵小隊、その他だ。他には氏族的編成(星隊、二連星隊)と、コムガードのもの(レベルI、レベルII)を使うことがある(付録D、E、F参照)。ドクトリンの変化には理由がないように見える。それはゴーストが組織スタイルを敵にあわせることがないからだ。

 諸兵科連合が広く使われているが、バトルメックがゴーストの中核になる傾向がある。バトルアーマー兵は珍しいが存在する。配備されるときは、フェンリル、インフィルトレーター、ピュリファイアーが使われ、たいていは通常の分隊編成で行動する。



支援

 どの記録においても、彼らが間接砲支援を使ったという記述は見受けられない。気圏戦闘機支援は最小限のもので、中軽量級気圏戦闘機の爆撃という形で行われる。ゴーストの降下船は地上で交戦することはなく、場所がある場合は、目標地点と敵の間に展開される。このやり方は、彼らが船を地上と盾と見なし、「託された者たち」を守ることを示している。

 グリーンゴーストは少なくとも5隻の異なった航宙艦を使っている。一例だけだが、武装航宙艦の記録もある――後に分類されたところでは、ペリグリン級戦艦であった。これは古い氏族製で、いわゆる黄金世紀に少数のみが建造された船である。この謎めいた船の諸元は存在しないが、20万トン以下で軽武装である。この船は3070年代前半に深辺境で記録され、以降行方不明である(付録G参照)。



作戦基地

 残念ながら、どこがグリーンゴーストの基地になっているか信頼できる証拠は存在しない。疑わしい場所は存在するが――失われた辺境世界共和国の星系、〈植民の時代〉の植民世界、ワード・オブ・ブレイク訓練施設、中心領域内の隠れ家――これらの説を裏付ける証拠はゼロである。



その他

 ゴーストが部隊内で無線交信を行ったのは、記録の内、10%以下である。これらの通信は、録音されたのだが、いまだ暗号化キーは解けていない。歩兵たちでさえも、通信をするときは、一語か二語の命令を発する以上のことはほとんどない(付録C、H参照)。何度かの交戦で、低レベルの静かなハム音が録音されているが、識別可能な信号は探知されていない。(これにより、ゴーストは集合精神通信のようなものを使っていると信じるものたちが大勢いる。この技術は、一部の大王家軍事シンクタンクが考えた理論でのみ存在するものである)

 過去10年間、ゴーストは単純な緑の塗装と、機体外の番号を使っていた。すべての交戦において、2機以上の機体が、白い蛇が機体の上から下まで絡まるような「指揮官マーク」と呼ばれるもの付けている。戦闘の分析により、これらの指揮官機が戦いの中心にいることがわかっている……残りのゴーストはその周囲を機動するという謎めいた戦術計画をとる。これら指揮官たちは、最初に戦場にたどり着き、最後に脱する(付録B、D、E、I参照)。

 3080年以降、ゴーストの攻撃は頻繁なものではなくなった。多くの機体がシンプルなマーキングを使い続ける一方で、何機かは新しいシンボルを使っている。燃え上がるサンディスクに、ティアドロップの形状と、ゴリアテスコーピオンの紋章に似た挑みかかるサソリである(付録J参照)。これらの機体はたいてい共に動き、よく分割して側面攻撃するか、防衛部隊の後方を狙う。成功することは少ないのだが、これらの「ブラッドディスク」ゴーストは生存者を残すことはなかった――戦死者でさえも、戦場で戦友に破壊されるのである。



結論

 それで、これら事実の融合はどこに結びつくのだろうか? 悲しむべきことに、真実には近くない。ゴーストは強襲においてより好戦的になり、巻き添え被害に対して無頓着となっている。この数年、残虐になっているのだが、彼らが姿を現すこともまた減っている。役員会の多くは、IEの発掘地点と探検チームの防衛契約に出す資金を減らしていいと信じているが、我々はこの件について懸念を示している。資金調達は、当面の間、3070年の水準を維持するべきだろう。ゴーストに攻撃された発掘地点の研究は完成に近づいている……我々の希望は、それを分析することによって、未来のプロジェクトにゴーストの干渉があるかどうか、予算をどう組むか、判断しやすくすることである。

 さらなる情報は、集まり次第、この報告に吸収される。年に四度アップデートを確認されたし。

 ――マイケル・コーコラン、博士、経営学修士、教育学修士、ナーゲルリンク名誉教授

 ――パーシバル・A.・ブラウン、M.INT、医学博士、MMH、軍事研究学部長、フォヒト戦争大学

 オリジナルより抜粋、3090年7月7日


ゲームマスターセクション

 グリーンゴーストは解決されない宇宙の謎のひとつとして残っている。彼らは、学者を食い物にし、インテリへの復讐を求めるブラックリスト傭兵部隊なのか? 彼らは、不浄なる中心領域と戦う、ゴリアテスコーピオン氏族の失われたシーカー部隊なのだろうか? 彼らは、死ぬそのときまで最後の命令を実行する、ワード・オブ・ブレイクの秘密部隊なのだろうか? あるいは、その三つを混ぜたものだろうか? もしかしたら……それとももしかしたら、ゴーストは完全に別のものかもしれない。

 グリーンゴーストの攻撃はすべて、歴史的、宗教的に重要な場所を集中しており、惑星の保安部隊、防衛部隊とぶつかる前に、科学的発掘チーム、不注意な観光客を狙うことがよくある。ゴーストはよく訓練されており、連携した部隊として活動するが、各自が課された「責任」を超えた多大なリスクをとることはほとんどない。指揮官たちは地上部隊のエリートだと考えられており、戦場に最初に到着し、最後に出ることにプライドを抱いている。指揮官が許可を出すか、戦場で死ぬまで、ゴーストの多くは強制撤退の命令に従うのを拒否するだろう。

 グリーンゴーストの攻撃に立ち向かうキャラクターは、強襲が断固とした容赦ないものであることに気づくだろうが、彼らの戦術は融通が利くものである。ゴーストは地形を利点として最大限に活用し、冒涜者と目標の間に降下船を置くのをためらいはしない。もしなんらかの理由(たいていは偶然の巻き添え被害)で目標が害されてしまったなら、ゴーストは罪を罰するためにやった部隊を追いかけるか、攻撃する。

 ゴーストは名誉なく戦い、各王家軍が設定した暗黙のルールに従うこともない。敵が整然と撤退するのならそれを尊重する(裏切りに荷担してない限り)。戦場で撃墜されたゴーストの機体は、自身が回収するか、戦場で処分される。研究・分析できるようなものが残されることはほとんどない。これによって、グリーンゴーストが誰でどこから来たのか確かめるのはきわめて難しくなっている。

 この謎はキャンペーンを回すのに最適だろう。グリーンゴーストは繰り返しやってくる敵であるからだ。




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