indexに戻る
作成:2012/03/09
更新:2014/06/21

フィスト・アンド・ファルコン



 "STARTER: FIST AND FALCON"は、3071年のジェイドファルコン氏族によるライラ侵攻をテーマにした初心者向けのシナリオ集です。
 決戦の舞台となったのは、氏族国境線に近いライラの世界、グレートX。歴史上、この戦いは引き分けに終わり、ファルコンのライラ侵攻は止まりました。グレートXは、その後しばらくのあいだ、両者が共有する世界となっています。
 プレイヤーたちが操ることになるのは、それぞれライラのメック中隊(第25アークトゥルス防衛軍RCT所属)と、ジェイドファルコン氏族の二連星隊(第1ファルコン打撃星団隊所属)です。









略史

 聖戦が三年目に入ると、ライラ共和国とジェイドファルコンの国境は戦火にまみれた。ターカッドが失われたにもかかわらず、ライラ同盟装甲軍は、ファルコン、ワード・オブ・ブレイクの両国境で、できる限り戦線を維持した。3070年、ファルコンはデイアからソーリン・フリーダム地区市民軍(FTM)と傭兵の聖キャメロン騎士団を押し出し、グレートXに退却するのを余儀なくさせた。グレートXではムクランガで敗北した第25アークトゥルス防衛軍が来たるべき猛攻を待っていた。ルドルフ・ガイガー准将(第25アークトゥルス指揮官)が大慌ての準備を命じる一方、傭兵とFTMは再組織しようとしたが、3071年1月、ジェイドファルコンが到着した。

 ギャラクシー・コマンダー・リー・ニュークレイに率いられたファルコン、デルタ銀河隊の4個星団隊はグレートXに上陸し、スポット周辺のLAAF強力な防衛戦線に跳ね返された。上陸によってジャイルファルコン・ソラーマ星団隊が犠牲となった。ソラーマたちはファルコン軍主力のため降下地点を確保するのに、多くを支払ったのである。即座に第1ファルコン打撃星団隊、第8ファルコンタロン、第4ファルコン竜機兵団が突進したが、キューラン・ウルフハウンズ(第25アークトゥルス防衛軍RCT)とアーチャー・アヴェンジャーズ(ソーリンFTM)の残存戦力の防衛戦線が強固すぎた。ギャラクシー・コマンダー・リー・ニュークレイが兵士を下げる命令を出すと、戦いは一年にわたる攻勢と受け流しの連続に落ち着いた。

 4個星団隊のすべてがイーズ大陸に上陸したのだが、ジェイドファルコンとLAAFの両方が小規模な分遣隊をグレートXにある他の2大陸、バスティオン、ウッドホルムに送った。ファルコンは第1ファルコン打撃星団隊の1個二連星隊をバスティオンに送り、第4竜機兵団の1個三連星隊をウッドホルムに送った。防衛側に兵士を送らせざるを得なくさせて、ファルコンが突破できるくらいLAAFの戦線を弱体化させるためである。しかしながら、ガイガー准将と幕僚たちは策略に引っかからないくらい用心深く、ファルコンを封じ込めるのに充分なだけの戦力を他の大陸に送り、主力をスポット周辺に置いたままにした。計略が失敗すると、ファルコンは散発的な探査襲撃で戦線の弱点を探ることに終始した。





細部の敗北?

 戦力を分散することに関して、歴史家たちの大多数はすぐに古代の軍事格言を引用するかもしれないが、戦争の歴史は戦力の分割が必要なだけでなく、それによって決定的な勝利を得た例で満ちている。3071年のグレートX紛争で、散発的な小部隊作戦が行われたことは勝利の例に含まれるとは言えないが、戦力の分散が戦闘の結果を決める上で大きな役割を果たせることを証明した。

 予想よりも遙かに強い防衛に面したファルコンは、グレートXの他の大陸に小規模な襲撃部隊を送り込んだ。LAAFが大規模な部隊を送り込んで、スポット周辺の防衛戦を弱めることを狙ってである。敵後方の襲撃は古来からの戦術であり、バスティオン大陸に大規模な貯蔵施設(放棄されていたが)が存在し、ウッドホルム大陸に重要な鉱山企業があったことは、メンツを潰すことなくファルコンが攻撃できることを意味した。

 ライラの反応(1個メック中隊と支援する装甲・機械化歩兵の1個混成連隊)は、ファルコンが期待していたより小さいものだった。シュタイナーが「大きなハンマー」的な解決を好むことに気づいていたギャラクシー・コマンダー・ニュークレイは、少なくともメック1個大隊を送ることを予想していた。小さい反応は彼の強襲計画にけちをつけた。

 ウッドホルム大陸とバスティオン大陸の小規模な戦闘は、小部隊が関わるというよりさらに個人的なものだったのである。

――『レッスン』より、アーチボルド・ニューサム准将(退役)著、ドネガル大学プレス出版、3074年出版






戦線を押す

 最初の氏族侵攻以降、ライラが見せてきた単に「金属の長い壁」を集めればいいという慢心は、数多の交戦によって氏族強襲の凶暴性と火力にはかなわないと判明した。しかし、スポット周囲の第25アークトゥルス防衛軍とソーリンFTMは、兵士を動かす特殊な道がある一連の要塞を建設するのに成功していた。このシステムを使ってライラは、防衛戦線沿いのジェイドファルコンの攻撃を鈍らせるために素早く戦力を集中させることができたのである。これはギャラクシー・コマンダー・リー・ニュークレイを苛立たせただけでなく、スターコーネル、スターキャプテンたちもそうしたのである。3月までに、ギャラクシーコマンダーはスターコーネルたちの要求に応じ、星団隊戦力での弱点調査を許可した。

 ライラ側では、ガイガー准将と幕僚、それに生き残ったアヴェンジャーズの士官と、デューイ大佐、部下の傭兵たちが、氏族の前進をグレートXで止める決意をしていた。それぞれモルゲス、デイア、ムクランガから追い出された彼らは、グレートXをファルコンの死体で埋め尽くすつもりだった。ライラ軍にとっては幸運なことに、住民たちも同じことを考えており、スポット内に安全な後方地帯を与えた。ライラ軍はここからファルコンの強襲に対応し、時折、ファルコンの陣地に突撃と襲撃を行った。

 第4ファルコン竜機兵団の1個三連星隊は、戦線最北部への最初の襲撃を行った。攻撃目標は、中隊規模の陣地だった。そこにいたのは、第25アークトゥルス防衛軍の中隊と交代している最中の聖キャメロン騎士団中隊だった。先陣となった星隊が戦線に突っ込んだとき、そこにはまだ騎士団の1個小隊がいてすぐに撃破されてしまい、戦線に一時的な穴が開いた。三連星隊の残りが突進し、混乱した騎士団とウルフハウンドを撃退して、竜機兵団の残りに移動するよう呼びかけた。ソーリンFTM即応大隊の激しい逆襲が、どうにかこの穴を埋め、生き残ったファルコンの2個星隊を戦線に戻した。攻撃を行った第4竜機兵団三連星隊のうち、スターコマンダー・エノク率いるオムニメック7機だけがファルコン戦線に戻ったが、13機以上のライラ側メックを破壊するのに成功していたのである。このような戦闘が次の六ヶ月繰り返され、両陣営が死亡した戦士のところに新しいメックとパイロットを補充するための小規模な秘密再補給任務を成し遂げた。





葉の中のファルコン

 ウッドホルムに送られた聖キャメロン騎士団の中隊は、メックを失うことなくデイアを脱した数少ない中隊の1個だった。この団結は、デューイ大佐が彼らをウッドホルム大陸に送ることを決めた大きな要素のひとつだったが、後から考えると他の中隊のほうがよかったかもしれない。この中隊(ロンダ・エジソン大尉指揮)が生き残ったのは、いかなる敵とも戦わなかったからなのである……彼らの平均メックサイズは45トンで、打撃中隊として訓練を受けており、戦線に立って戦うためにあるのではなかった。この中隊のメック戦士に通常市民軍と共同して戦ったものはなく、すぐハモンド大佐(メックを支援するグレートX市民軍の指揮官)に間違ったやり方を押しつけた。

 送り込まれた第4ファルコン竜機兵団の三連星隊は平均65トンであり、グレートX市民軍には必要な大規模な兵站が存在しなかった。スターキャプテン・サンガは階級の神判でスターコマンダーの地位を勝ち取り、三連星隊を指揮するまでに戦士4名を下していた……彼のウッドホルム戦役は急がず、整然とした壊滅的なものだった。エジソン大尉指揮下の兵士たちは彼らのドクトリンの中で最善を尽くしたが、ファルコンの優れた装甲と火力を圧倒することはできず、サンガがディガー渓谷で騎士団の1個小隊を罠にかけて殲滅するのに成功すると、エジソン大尉は自分の中に閉じこもって滅多に出てくることがなくなった。彼女の中隊はアヴェンジャーズと交代になり、スポットの戦線に戻って助けを求めることが可能になったのだが、直後に彼女は騎士団から除隊させられた。

 アヴェンジャーズは騎士団のような移動・攻撃戦術を行わなかった……彼らは単純にウッドホルムをかけた所有の神判を若きスターキャプテンに挑戦し、入札を破って、ファルコンを打ち砕いた。

――『仕事に向かない道具: 間違った配置の実例集』、エディス・ペイン大佐(退役)著、ドネガル大学プレス刊行、3076年


 8月前半、ウッドホルム大陸で、第4ファルコン竜機兵団から派遣された三連星隊が、聖キャメロン騎士団を罠にかけるのに成功し、メック4機と支援する中量級2個装甲中隊を破壊した。デューイ大佐が抗議したにも関わらず、ガイガー准将は騎士団を呼び戻し、ソーリンFTMの2個中隊と交代させた(グレートX市民軍1個装甲連隊の支援付き)。降下船ではなく大型輸送船を使って移動が行われ、ファルコンの強襲を阻止するために、3個航空大隊近い気圏戦闘機、通常型戦闘機が援護した。

 バスティオン大陸の戦いは、長引く戦いというよりも、短く激しい交戦となった。5月から8月にかけて、第1ファルコン打撃二連星隊は放棄された倉庫から倉庫へと移動し、神判のための補給物資を探すか防衛部隊を下すかしたが、ギョーム大尉の中隊(第25アークトゥルス)は距離対時間のゲームを行い、ジェイドファルコンを監視するために市民軍の補助部隊を使った。9月までに、二連星隊は2機の稼働するオムニメックにまで減少し、素早く撤退した。ライラ軍はメック8機、戦車19両を失い、歩兵100名以上が殺された。残存戦力は防衛戦を守るため潜水艇でスポットへと撤退した。

 第4ファルコン竜機兵団と第8ファルコンタロンがスポット周辺の戦線を突破できなかったことは、ギャラクシーコマンダー・ニュークレイの忍耐をすり減らし始めた。10月、彼は第1ファルコン打撃星団隊に戦線から下がることを命じ、戦力回復のためファルコンの貧弱な兵站の優先権を与えた。第4竜機兵団はスポットに対する連続した襲撃を戦線全域で仕掛け、ライラが援軍に走り回らねばならないようにした。当然、ライラはどんなファルコンの攻勢も無視するわけにはいかなかった……そのほとんどが陽動であると気づいた後さえも。攻撃が実施されるまでそれがフェイントかどうか知る方法はなく、あらゆる警戒が防衛軍の戦力と準備をむしばんでいった。11月下旬までにガイガー准将の忍耐が尽きた……彼は戦闘隊(1個機甲連隊と、聖キャメロン騎士団1個大隊を中心に作られた)を解き放ったのである。この部隊は船に乗り、海岸線沿いに南下して、ファルコンの後方から攻撃した。この動きを隠すために、スポット戦線のライラ軍は防御を捨てて攻撃に出る準備を行っているかのように振るまった。3071年11月の最終週までに、騎士団デューイ大佐のメックはファルコン防衛の後方を叩き、小都市ベリーのファルコン降下地点を脅かした。





紳士のゲーム

 3071年、グレートXのバスティオン大陸での、ジェイドファルコン=ライラ同盟の紛争は、他の作戦行動とは違った色彩を帯びていた。ライラのバトルメック部隊、第25アークトゥルス防衛軍第三大隊のC中隊は最近加わったばかりだった。この中隊は、先のジェイドファルコンによる攻撃で敗北し生き残った者たちと、アークトゥルスからの補充兵による半中隊分のメック戦士で編成され、1名の新任指揮官と共に前線に送られた。彼らは新大尉の戦術を認識し適応したチームとして戦う経験を欠いていた。

 対する第1ファルコン打撃星団隊の二連星隊は、多くの面で彼らと似ていた――前の戦いの損失を補充して新たに組織された二連星隊なのであるが、ブラッドネームを持たない若きファルコンのリスターに率いられていた。モルゲス戦後に部隊を勝ち取ったこのスターキャプテンは、自分の力を証明したがり、二連星隊を激しく押した。ライラが大々的に戦いたがらなかったことは、彼の怒りに燃料を注ぐのみであった。これによって、彼は戦力を分割し、各星隊が互いに攻撃を行えるようにした。

 バスティオン大陸でのライラの成功の鍵となったのは、ギョーム大尉の穏やかな資質であり、部隊につけられた2個機甲大隊が提供する優れた偵察能力だった。決定的な交戦を行うのを避けたことで、その日が来る前に新部隊を訓練する時間が与えられた。だが、一連の決定的な交戦のときがやってくると、メック戦士たちは恐ろしい損害を出したにもかかわらず見事な戦果を残したのである。

――エステバン・エンリケス著『鍛えられた鋼: 聖戦に作られた兵士たち』より、オーストラリア・シビック・プレス、3077年






突進

 騎士団率いる戦闘隊に対して休息中の第1ファルコン星団隊を使わざるを得なくなったギャラクシーコマンダー・ニュークレイは、12月後半、最後の攻撃を決断した。彼はジャイルファルコン銀河隊の残った3個星団隊を長い縦列に整列させ、スポット防衛戦の非常に狭い箇所を、損失を考慮せず攻撃するように命令した。行動に移る前に、二週間かけて損傷を負ったマシンをできる限り修理した。

 スポットでは、ファルコンが動くのとほぼ同時に、ガイガー准将のスパイがファルコンの移動について報告していた。ガイガーは連隊群に対しひとつの部隊として整列するよう命じた……戦線後方にある大隊、中隊規模の塹壕に分散させたのではなかった。第25アークトゥルス防衛軍は戦線の中心を保つこととなり、ソーリンFTMはファルコンが迂回しないように側面に拡がった。聖キャメロン騎士団の2個大隊は都市の中央近くに機動予備として残り、戦線に移動するか、港で待つ輸送船艦隊に後退して以前と同じ後方への襲撃を繰り返す準備を行った。

 3072年1月2日の夜明け一時間前、第8ファルコンタロンが先陣に立ち、ファルコンの攻撃が始まった。第8タロンの2個三連星隊が第25アークトゥルスの戦線にぶつかり、オムニメックが至近距離でハイパワーの戦闘を行った。エレメンタル1個三連星隊(残った3個ファルコン星団隊すべてから支援に付いた)が彼らと共に送られた……激戦を利用して、ライラの戦線をすり抜け、ガイガー准将の司令本部にヘッドハンター攻撃をしかけることを望んだのである。キューラン・ウルフハウンズがそれまでのように拡がって配備されていたらこれは成功していたかもしれないが、第8タロンの三連星隊群は、比較的疲弊していないアークトゥルス第1大隊の牙に沈み、そのあいだ、第2大隊、第3大隊(それぞれ1個通常装甲連隊が同行する)がファルコンの側面に進んだ。夕方までに第8タロンはほとんど包囲され、アーチャー・アヴェンジャーズは側面の第4ファルコン竜機兵団と小競り合いを行った。

 夜のうちに、両陣営が再編成のために離脱しようとしたが、そうはならず夜間戦闘陣地に落ち着いた。聖キャメロン騎士団は夜通し強行軍を行い、防衛線の南を通って移動し、ファルコンの背後に出るためにソーリンFTMの前衛の背後に拡がった。第1ファルコン打撃星団隊は第4ファルコン竜機兵団との距離を縮めたが、第8タロンに助けを送ることはほとんどできなかった。

 朝、キューラン・ウルフハウンズは1キロメートルかそこらファルコンを前進させ、それから足止めし、ファルコンのメックをキルゾーンに引き寄せようとした。正午までに、第8ファルコン・タロンの生き残り(かろうじて2個三連星隊規模)は、全力で交戦し、第4ファルコン竜機兵団が救援のために動いた。ギャラクシーコマンダー・ニュークレイが第1打撃星団隊を出撃させる準備を行っていたとき、聖キャメロン騎士団が前進するファルコンの南側面に出没し、第8タロンと第4竜機兵団をほぼ完全に分断した。その瞬間、第8タロンは完全に切り離され、第4竜機兵団は生き残るために戦った。損失を問わない第25アークトゥルスの総攻撃が始まり、戦線北部の偵察星隊群からアヴェンジャーズの調査が活発になっているとの報告が届くと、ギャラクシーコマンダー・ニュークレイは惑星から出発する時が来たと悟った。第1ファルコン打撃星団隊が西に進路を取り、ベリーの降下地点に向かう一方、第4竜機兵団は前進するシュタイナー兵を押しとどめた。

 日暮れまでに、第1打撃星団隊はベリーにたどり着き、降下船に乗り込むあいだ、ファルコンの貧弱な戦闘機星隊群が脱出するため空の道を切り開いた。よって、第1打撃星団隊は脱出することが出来た。騎士団とアヴェンジャーズは、第4竜機兵団を破壊するために、ベリーへの長い撤退中に追い立てた――ライラ兵が離脱するまでに、1個星隊以下が都市の外部にたどり着いた。第8ファルコン・タロンのうち、メック戦士12名とエレメンタル19名が生き残り捕まった。このうち半分以上がボンズレフ(名誉の自殺)を選んだ。ファルコンの降下船が空に上がり、アークトゥルス防衛軍と聖キャメロン騎士団の気圏戦闘機を押し返したとき、地上で生き残ったライラ兵たちはモルゲス、デイア、ムクランガでの敗北を少しだけ取り返せたことを知ったのである。





宿怨

 グレートXの戦いを特徴付けるのは、その長さ(1年以上)と、3072年に起きたスポット周辺での最後の戦いにつながった数多の小部隊戦闘での残虐性である。関わった各部隊(両陣営)は、3070年、互いに激しい交戦を行っていた。聖キャメロン騎士団の隊員たちにとって、遭遇したオムニメックに乗っている戦士たちは、モルゲスとデイアで戦友と友人を殺した者たちなのである。氏族の戦士たちはライラのバトルメックを発見した……それは以前の交戦から逃げた機体で、いまやは修理して再び撃ってきたのである。兵士たちが個人レベルで戦闘に加わったことは、大規模な交戦を台無しにし、小隊対星隊の戦闘や、より小規模な戦闘をさらに手が負えないものとしたのである。

 例として、第4ファルコン竜機兵団のスターキャプテン・フローラと、聖キャメロン騎士団のベニート・プリチャード軍曹の話を上げよう。モルゲスとデイアでこのふたりは互いに戦い、戦況の変化で引き離されるまで機体が破壊される寸前になっていた……グレートXのウッドホルムで二人が遭遇したとき、邪魔が入ることはなかったのである。フローラはプリチャードのぼろぼろになったクリントを破壊すると、彼をボンズマンとするためにペリグリンから出て、殴り合いを始めた。この戦いでプリチャードはフローラを殺すことに成功したが、見ていたファルコン・エレメンタルが火炎放射器でプリチャードの息の根を止めたのだった。

――ジョアニータ・ロドリゲス著『瞳の中の鮮血: 個人的な戦い』より、ドネガル大学プレス、3075年






キューラン・ウルフハウンズ THE KEWRAN WOLFHOUNDS

部隊: C中隊、第3大隊、第25アークトゥルス防衛軍RCT
別名: キューラン・ウルフハウンズ
所属: ライラ同盟
名目戦力: 3個バトルメック小隊



部隊編成

指揮小隊
 マイケル・ギョーム大尉(BLR-4S バトルマスター)
 トリシア・キャノン(BTZ-3F ブリッツリーク)
 エーリッヒ・フォン・シードゥ(DV-1S デルヴィッシュ)
 ハンス・オストガード(GAL-1GLS ギャロウグラス)
鉄床小隊
 ナディーヌ・フォン・リッデンノール中尉(マッドキャットMkII)
 バレット・コール(AS7-K アトラス)
 クリスティーヌ・ワトキンス(EMP-6A エンペラー)
 アーサー・クウィブル(RFL-8D ライフルマン)
打撃小隊
 レジナルド・ホフマン少尉(BGS-1T バーゲスト)
 ヴィクトリア・アーネスティン(NXS2-A ネクサスII)
 ジャスパー・ローレンス(WLF-2 ウルフハウンド)
 クリストフ・セムズ(THE-N ソーン)






キューラン・ウルフハウンズの人員

マイケル・ギョーム MICHAEL GUILLAUME

階級/地位: 大尉、C中隊指揮官
生誕年: 3045年(26歳、3071年時点)
所属: ライラ同盟
故郷惑星: アデレイド
メック: BLR-4S バトルマスター
 メック操縦技能: 4
 メック砲術技能: 3

 マイケル・ギョームは、グレートXに到着するわずか一ヶ月前に中尉から大尉に昇進し、まだ手探りで最初の中隊を運営している。第14ドネガル防衛軍の元小隊指揮官だった彼は、いまだアークトゥルス防衛軍の文化に馴染んでいる最中であり、その仕事は、ウルフハウンズがムクランガでジェイドファルコンに敗れたことに長引く憤慨をいだいているため、いっそう難しい物となっている。新しく作られたC中隊(第3大隊)の指揮を任されたギョーム大尉はすぐに出頭した。

 問題は彼の経歴によって悪化した。部下のメック戦士の数名は(ライラ)同盟中心部出身の小貴族であり、アデレイドのような奥地から来た田舎者の命令を聞くのにとりたてて興味を持たなかったのである。彼のアクセントは、各小隊と中隊の技術支援の中で静かなジョークの種となった――たいてい、大尉は無視した。それもジェイドファルコンがグレートXの軌道上にたどり着く二日前のことであった。彼は問題を我が手に収め、フォン・リッデンノール中尉からのシミュレーターでの挑戦を受けたのである。簡潔に言えば、4分間の交戦でギョーム大尉のバトルマスターは中尉のマッドキャットMkIIをスクラップに変えた。この戦闘のROM(封印されたものと思われる)は、すぐさま中隊をめぐり、不平の声はすぐに消えたのだった。

 まさに今、ジェイドファルコンが軌道上にいることから、若き大尉は静かに恐怖を隠した。ジェイドファルコンは第14ドネガル防衛軍(アダム・シュタイナー総司令官の個人部隊)にとって慣れしたんだ敵であり、マイケルはかつて彼らと戦ったことがあった。彼が心配していたのは、試されていない中隊を率いて戦闘に向かうという責任である。ほとんどなんの準備も時間もなかったのだ。上官は、彼らが迫り来るファルコンに混乱したものとして、訓練時間要請の嘆願を聞き流した。第14ドネガル防衛軍時代の大尉は、中隊が家族のようになるまで延々と訓練した。ギョームの新中隊は、いじめっこと理解不足の同衾者でできた新しい孤児院のようだった。

 一人の士官、指揮官として、ギョームはアダム・シュタイナーの例を心に止めた。最高司令官に任命されるまで、彼はメックに乗って第14ドネガル防衛軍を前線から率いた。すべての大尉が戦闘中に中隊を前線から指揮することを期待されているのだが、ギョームはこの理想をすべての面で適用した。彼は、パトロールから戦闘、医療テント訪問まで、どのような新しい任務でも最初に中隊の先陣に立つ。彼は、部下のメック戦士たちが彼の率いるところに喜んで付いてくることが重要だと知っている。なのでギョームはパイロットたちの信頼と尊敬を得るチャンスを逃さない。

 ギョームが操縦するバトルマスターは、ファルコンがパンドラを奪う前に、最後に生産された機体のひとつで、アークトゥルスの修理ドックで-4S型に改装された。彼はキャリアを通してこの機体を操縦しており、第14ドネガル防衛軍で中尉だった時期に、3機のオムニメックを撃墜している。彼は特に巨大なガウスライフルを得意としており、他のメック戦士たちが夢見ることすら無い距離から命中を記録するのである。




トリシア・キャノン TRICIA CANNON

階級/地位: 軍曹、指揮小隊
生誕年: 3042年(29歳、3071年時点)
所属: ライラ同盟
故郷惑星: スカイア
メック: BZT-3F ブリッツリーク
 メック操縦技能: 4
 メック砲術技能: 4

 トリシア・キャノン軍曹は、スカイアの実家から出奔し、アークトゥルスの二流軍事学校に入学した後、軍でのキャリアのすべてを第25アークトゥルス防衛軍RCTで費やした。彼女は着実なメック戦士であり、優れた小隊指導者である。彼女の指揮能力は、ムクランガからキューラン・ウルフハウンズが撤退した際、上官である中尉がジェイドファルコンに殺された時に証明される機会を得た。士官としての任務は、C中隊に配属されたときに終わった。これは彼女のキャリアを蔑ろにするものだったかもしれない。トリシア・キャノンは指揮をしたいと思っていないので小さな問題なのだが。彼女はメック戦士軍曹として9年を過ごし、その役割に大変満足している。

 非番時のトリシアは、友誼に篤いもの静かな女性である。小隊以外の人間とは、それがたとえ中隊の人間でも、つきあいがない。この傾向はC中隊創設以来問題となっている。大尉は忙し過ぎ、フォン・シードゥはお高く止まり過ぎ、オストガードは無口過ぎるのだ。よって、トリシアは打撃小隊のヴィクトリア・アーネスティン(同じく小隊内で親交を失っていた)に近づいた。ふたりの女性はゆっくりと友人関係を結んでいるが、ジェイドファルコンの対応に忙殺されているため、その機会は制限されている。

 戦いにおいて、キャノン軍曹は熟達したメック戦士である。彼女のブリッツリークは、特にライラ同盟装甲軍でありふれている鈍重な強襲メックと比べたときは、敏捷なマシンだが、そのウルトラオートキャノンは打撃力がある。キャノンの好む戦術は、重量を持った小隊の味方が敵の注意を惹きつけているうちに背後に回りこみ、脆弱な背面の装甲に強烈な砲撃を浴びせ、それから敵の射程外に逃げるというもののである。彼女はギョーム大尉と彼のバトルマスターとともにこの戦術を改良した――大尉の人並み外れたガウスライフル射撃は、キャノンが背後に滑りこみ、破壊を振りまくのを容易にするのである。

 トリシア・キャノンが操縦するブリッツリークは、彼女に配備される前に地味な戦績を持っていた。工場から出荷されて最初はライラ防衛軍に回されたが、戦士たちは全員、重量があって装甲の厚いメックを求めており、ブリッツリークの強みを知ろうともしなかった。だが、トリシアに配備されると、技術者たちはこのメックの移動システムの整備が必要なことに気がついた。キャノン軍曹は常に最大限に(時折はそれを超えて)この機体を走らせるのである。




エーリッヒ・フォン・シードゥ ERICH VON SEEDOW

階級/地位: 軍曹、指揮小隊
生誕年: 3051年(20歳、3071年時点)
所属: ライラ同盟
故郷惑星: ギャラリー
メック: DV-1S デルヴィッシュ
 メック操縦技能: 5
 メック砲術技能: 4

 惑星ギャラリーのフォン・シードゥ家は、この世界のシュタイナー家(元最高司令官でライラ摂政のノンディ・シュタイナーはギャラリー公爵だった)と近い関係にあったが、最近のビジネスの失敗でほとんど破産してしまった。エーリッヒ・フォン・シードゥは一族の最年少であり、コベントリ軍養成校を卒業したばかりで、最初の実戦配備として第25アークトゥルスに配属された。彼はライラ同盟(そしてそれ以前のライラ共和国)の社交界将軍のイメージを生み出した貴族の典型である。退廃的で、よそよそしく、尊大なフォン・シードゥは、一族の転落がなかったかのように振る舞っている。

 ギャラリーで育ったエーリッヒは、シュタイナー一族の軍事的栄光とフォン・シードゥがいかに軍に仕えてきたかを教え込まれた。第10次ヘスペラスII戦では、フォン・シードゥ家の一人がカトリーナ・シュタイナーと共に戦った。第四次継承権戦争では、フォン・シードゥ家の一人がドロミニIVで第10ライラ防衛軍と共に死亡した。氏族侵攻では、フォン・シードゥ家の一人がタマラーで英雄的に死亡した。エーリッヒ家の子供たちはメック戦士として入隊することを目指す。そして、彼がターカッドのナーゲルリンクではなくCMAに追いやられたのは、ひとえに兄が一族の財産をうまく扱えなかったからである。彼はそんな話を聞きたがる者(あるいは逃げられなかった者)を喜ばせるのを好む。

 その態度にもかかわらず、彼はコベントリ軍養成校で教育を受けた。彼はミサイル兵器の才能と、敵の動きそうなところを判断する頭脳を持った、自信ある有能なメック戦である。人事記録には、彼が士官に昇進し次第、大隊作戦幕僚へと昇進させるのに備えて監視を行うという注意事項があるが、彼はそれに気づいていない。

 彼は精神を制御するのに(大部分)成功しているが、C中隊への着任はほとんど脱走の前触れとなっている。家族の財産がなくなったことから、彼は期待していたようなメックを得ることが出来ず、LAAFが供給するものを受け入れざるを得なくなっている。そして提供されたのは、ライラ共和国それ自体よりも古そうな、手入れされずガタガタになった骨董品のDV-1Sデルヴィッシュであり、彼を激怒させることになった。彼が幼少期に聞いていたのは、ゼウス、バンシー、アトラスといった強襲メックの話ばかりだった。50トンのプリミティブ支援メックを使わざるを得ないのは最高の侮蔑である。彼はしばしば鉄床小隊のメックベイ出入り口に立ち、フォン・リッデンノールのマッドキャットMkIIやバレット・コールのアトラスを惚れ惚れと眺めている姿が目撃されている。




ハンス・オストガード HANS OSTGAARD

階級/地位: 軍曹、指揮小隊
生誕年: 3037年(34歳、3071年時点)
所属: ライラ同盟
故郷惑星: エニウェア
メック: GAL-1GLS ギャロウグラス
 メック操縦技能: 5
 メック砲術技能: 4

 ハンス・オストガードは、氏族侵攻の初期にジェイドファルコンの手に落ちたエニウェア出身である。そのとき、彼はエニウェアにおり、脱出できたのは3066年、アークロイヤル防衛戦線と契約した傭兵隊が襲撃をしかけたときのことである。当時、ハンスは都市ライトゼアで活動するエニウェア抵抗グループのメンバーだった。傭兵がこの都市を叩き、宿営していたジェイドファルコンの軽メック星隊を破ると、すぐ救出を求める市民たちに囲まれた。もし難民と新しい情報と共にアークロイヤルに帰還すれば、モーガン・ケル大公が気前よくなることを想像した傭兵たちはそれに同意した。ハンスは市民を乗せた輸送トラック(大半が子供と若い母親)を傭兵の降下地点まで警護するのに志願した。

 その途中で、輸送隊は調査のためにVTOLで派遣されたエレメンタル星隊に攻撃された。ハンス(レジスタンス唯一のメック・シミュレーターを使う経験不足の訓練生だった)は、ガントラックに改装した平荷トラックの砲手となった。傭兵たちはエレメンタルを倒し、脱出するのに成功したが、ハンスはドアガンの弾薬が爆発したときに負傷した。彼はアークロイヤルに脱出し、回復するとすぐLAAFに入れられた。第25アークトゥルスに付けられた戦車連隊のひとつで1年を過ごしたあと、ハンスはメック訓練に入れられ、3070年、ムクランガからグレートXへの移動の際にギャロウグラスを支給された。C中隊は彼の最初のメック部隊であるが、氏族と戦うのが初めてというわけではない。少ない回数の訓練のあいだ、彼はギョーム大尉と隊員の言うことを注意深く聞いている……エニウェアでの傭兵との経験は、いかにバトルメックが強力――そしていかにもろい――かを示した。なので彼はできる限りのすべてを学ぼうとしているのだ。

 ハンスのギャロウグラスは3069年に契約不履行した傭兵からLAAFに渡ったもので、補充用メックとしてキューラン・ウルフハウンズに送られた。ハンスはこの強力なメックが好きになり、PPCを使って乱射することを学んだ。彼は近距離での待ち伏せの達人となり、よく都市の地形で訓練している。敵を攻撃してから、ジャンプジェットを使って離脱し、その間にヒートシンクが熱を冷やすのである。最近、彼は小隊仲間のフォン・シードゥを避けている。この人物は強襲メックを入手するのに失敗し、ハンスのギャロウグラスを正しき道への一歩として見ているのである。




ナディーヌ・フォン・リッデンノール中尉 NADINE VON RIDDENOUR

階級/地位: 中尉、C中隊副指揮官、鉄床小隊指揮官
生誕年: 3041年(30歳、3071年時点)
所属: ライラ同盟
故郷惑星: ギャリソン
メック: マッドキャットMkII
 メック操縦技能: 4
 メック砲術技能: 2

 ナディーヌ・フォン・リッデンノール中尉の一族は、200年にわたってライラ装甲軍に仕えてきた。最初のイドリス・リッデンノール大佐(ギャリソンの領地とフォンの名前をもたらした人物)は、クリタのメック隊列への突撃を指揮し、戦闘中に死亡した戦車兵だった。その後のフォン・リッデンノールたちは、イドリスと子孫たちの軍事的栄光を聞かされて育った。ナーゲルリンクでのナディーヌの成績と、キューラン・ウルフハウンズでの最初の任期は、一族の伝統を保つものだった。ムクランガで彼女は自身の手で3機のジェイドファルコン重メック3機を撃墜し、また彼女の小隊は損失を受けたにもかかわらず1個星隊以上を破壊した。グレートXでの再組織の際、彼女が大尉に昇進してC中隊の責を負うと予想された。マイケル・ギョームが大尉に任命され、彼女が副指揮官にされたことは、彼女の胸でくすぶっていた競争心に火を付けた。

 小隊指揮官としてのフォン・リッデンノールは厳しいリーダーであり、部下の失敗に言い訳を聞くことはない。彼女は中隊で最も重量のある小隊を率いていることによく気づいており、一族の「ライラ」の伝統をより遵守しようとしている。彼女のやり方は、攻撃であり、常に攻撃であり、敵をライラの鋼の重量と凶暴性で粉砕することである。この態度は、中尉をアイドル視するワトキンス軍曹となじむものであるが、コール軍曹は聞く耳持たずであり、クウィブル軍曹からははっきりと嘲笑されている。クウィブル軍曹はナディーヌが「時代遅れで証明されてない」戦術と手法を受け入れているのを好んで皮肉る。彼が小隊から追い出されないのは、ひとえにライフルマンの腕前によるものである。

 ナディーヌのマッドキャットMkIIは、聖戦の勃発前に、ライラ装甲軍がダイアモンドシャークから購入した少数の氏族メックの1機である。3067年、アークトゥルス防衛軍の各RCT内で行われた一連のシミュレーター決闘で、彼女は大尉2名、中尉1名を下し、このメックを操縦する権利を勝ち取った。このメックは彼女によくあうものである……ナディーヌは敵を叩くハンマーのようにガウスライフルを使い、それからガウスライフルが穿ったかもしれない急所を突くためにミサイル射撃を浴びせるのである。氏族製のマシンを支援するのに必要な兵站は、キューラン・ウルフハウンズのさらなる負担となっているが、彼らはこの負担を喜んで引き受けている……マッドキャットMkIIは見逃すことができない強力なメックなのである。












パースイング・ペレグリンズ THE PURSUING PEREGRINES

部隊: ブラボー二連星隊隊、第1ファルコン打撃星団隊、デルタ銀河隊
別名: パースイング・ペレグリンズ
所属: ジェイドファルコン氏族
名目戦力: 2個バトルメック星隊



部隊編成

アルファ・ビーク
 スターキャプテン・イングリード(ノヴァキャットA)
 メック戦士・ヘイズ(インキュバス)
 メック戦士・デニス(グレンデル・プライム)
 メック戦士・アレン(アイスフェレットH)
 メック戦士・カレン・マルサス(ヘリオン・プライム)
ブラボービーク
 スターコマンダー・ニコラ・フォン・ジャンクモン(コディアック)
 メック戦士・リンダース(ティンバーウルフH)
 メック戦士・クインテロ(シャドウキャットC)
 メック戦士・ミカエラ(クーガーA)
 メック戦士・エドワード(ジェンナーIIC)




イングリード INGRIED

階級/地位: スターキャプテン、ブラボー二連星隊指揮官
生誕年: 3049年(22歳、3071年時点)
所属: ジェイドファルコン
所属: ジェイドファルコン
故郷惑星: アイアンホールド
メック: ノヴァキャットA
 メック操縦技能: 2
 メック砲術技能: 2

 氏族がリバイバル作戦に出発したちょうどその時に孵化したシブコで生まれたリスターの一人、イングリードはファルコナー(教官)たちから中心領域での侵攻派の栄光に関する壮大な物語を聞かされて育った。すべての授業が、ファルコンが大氏族となり、新星間連盟の支配者となることを前提に行われた。影響を受けやすいすべての子供達と同じように、イングリードは教師たちの言う事を信じた――よって、中心領域の星間連盟防衛軍が氏族宙域にたどり着いて大拒絶を求めたときに世界がひっくり返り、氏族の敗北によって心底衝撃を与えられたのである。彼はファルコナーが語ったことを疑い始め、物事の真偽について自分で決断することにした。

 精神的傾向がどうであれ、彼はシブコの中で最も危険なメック戦士の一人となった。彼は階級の神判でスターキャプテンの地位を得た……参加者が流れ弾で神判を乱戦に変えたそのあとでさえもだ。彼はデルタ銀河隊のエリー星団隊に配属され、3064年の(ライラ)侵攻と、再び国境を飛び越えた聖戦勃発直後の戦間期に、前線に身をおいた。3066年、彼は所有の神判でゴーストベアの戦士から、彼が現在操縦しているノヴァキャットを捕獲して有名になり、ギャラクシー・コマンダー・ユーヴィン・ブハーリンの注意を引いた。ブハーリンがモルゲスで負傷し、死亡したと考えられたとき、新ギャラクシーコマンダー・リー・ニュークレイは、この若き戦士を第1ファルコン打撃に転属させ、彼を中心に新しい二連星隊を作った。

 二連星隊指揮官として、イングリードは配下のメック戦士たちからの相当な不満に対処せねばならなかった。スターコマンダー・ニコラ・フォン・ジャンクモンは、すでに一度、二連星隊の指揮権をかけて彼に挑戦しているが、敗北に対していまだ苛立ちを持ち続けている。本来ならイングリードに喜んで従うべき若いファルコン戦士の何人かは、フォン・ジャンクモンやカレン・マルサスのような年かさでブラッドネームを持った戦士たちに惹きつけられた。彼らはただ、イングリードの態度がいかに「非ジェイドファルコン」的であるかについて話すことに時間を浪費していたのである。鬱積が規律に影響しない限り、イングリードはなにもしないだろう……結局のところ、彼の態度はかなり非ジェイドファルコンなのである。彼のやり方が正しいかどうか、二連星隊の実績が決めることになるだろう。戦士たちが手に負えなくとも、そうでなくとも、彼は自らの二連星隊を輝かせるつもりである。

 イングリードのノヴァキャット(オムニメック)はジェイドファルコンでは珍しく、また悪名高いものである。ジェイドファルコンは放棄されたノヴァキャットを氏族の裏切り者とみなしているにも関わらず、彼はこの機体を戦利品として獲得した。本機は強力なオムニメックであり、彼の戦闘スタイルによくあっている。彼はその由来をほとんど気にしていない。彼はアルファ仕様を好む。なぜなら、的確な精度を持ち――レーザーだらけのマシンとしては驚くべきことに――熱負荷を完全に制御しているからである。彼は神判で二度、敵の射程に入る前に、敵メックを無力化し、自らを守っている。




ヘイズ HAYES

階級/地位: メック戦士、アルファビーク
生誕年: 3048年(23歳、3071年時点)
所属: ジェイドファルコン
故郷惑星: アイアンホールド
メック: インキュバス
 メック操縦技能: 4
 メック砲術技能: 3

 身長かろうじて180センチメートルなのだが、メック戦士ヘイズは才能豊かな格闘家であり、挑戦を受けたときは素手での戦いを好む。相手はほぼ確実に彼の小柄さを見くびるので、それが彼にとってのアドバンテージになるのである。彼のファルコナーたちは、好きなように素手の戦いをやらせただけでなく、熟達したメック戦士に育てあげた。ヘイズは彼らを失望させなかった。彼が高機動のインキュバスを選んだのは、もうひとつの小さなジョークである。というのも、インキュバスは細身で高起動であることから、戦場で最も長身に見えるメックのひとつなのである。そのコクピックからヘイズのような男が出てくることを予想する者はほとんどいないのだ。

 ヘイズはモルゲスで第4ファルコン竜機兵団に所属した後、第1ファルコン打撃星団隊のブラボー二連星隊に配属された。モルゲスでの作戦中、彼の星隊は三連星隊から切り離され、合流するには戦力の大きいライラ部隊を回避せねばならなかった。モルゲスの荒野から戻ったのはヘイズが一番最後だったが、その前に2機のより重量があるライラメック2機を仕留めていた。彼はインキュバスの強力な大口径パルスレーザーと優れた機動力を使い、敵の中量級メック群を射程に収め続け、削っていったのだ。各コデックスを吟味したスターキャプテン・イングリードは、この戦闘記録を見て、すぐヘイズとインキュバスを自分の二連星隊に求めた。ヘイズがアルファビークに配置されたのは、彼に対するイングリードの深い敬意と、スターコマンダー・ニコラ・フォン・ジャンクモンの二線級軽バトルテック軽視の両方を反映している。

 ヘイズにとって、前線星団隊の一員となり、彼の非正統的な戦術を理解し受け入れてくれる士官の下で勤務するのは喜ばしいことである。彼は芯までジェイドファルコンであり、ゼルブリゲンの儀式を可能な限り選ぶが、相手もまた同じ名誉ある扱いを返す責任があると信じている。モルゲスでは2機のライラメックがヘイズの軽量で1機のみのメックを攻撃し、自らが名誉なき戦士であることを明らかとした。よって、ヘイズもまた同じように彼らを取り扱ったのである。この観点を完全に受け入れているスターキャプテン・イングリードは、敵がヘイズを――ひいては全星隊を、過小評価し続けるよう奨励している。

 ヘイズは第1ファルコン打撃星団隊に異動となったときにオムニメックを提示されたが、アイアンホールドの階級の神判から乗っているインキュバスを使い続けている。この決断は、モルゲスでの第25アークトゥルス防衛軍歩兵連隊との小競り合いでうまく働いた。彼はインキュバスの対歩兵マシンガンを使って、彼のメックと星隊員を敵の工兵から遠ざけ続けたのである。彼はメックの大口径パルスレーザーを命中させる達人だが、その精度は2門のER中口径レーザーを使うときに落ちてしまう――ヘイズはふたつの射撃モードを素早く切り替えられないようだ。




デニス DENISE

階級/地位: メック戦士、アルファ・ビーク
生誕年: 3052年(19歳、3071年時点)
所属: ジェイドファルコン
故郷惑星: アイアンホールド
メック: グレンデル・プライム
 メック操縦技能: 4
 メック砲術技能: 3

 デニスはこの二連星隊で唯一のフリーボーン・メック戦士であり、トゥルーボーンの戦士たちは彼女にそれを忘れさせることはない。彼女はわずか19歳だが、すでに二連星隊のだれより多くの不平の神判を戦っている(カレン・マルサス除く)。メック戦士ヘイズに素手で挑むという馬鹿げた挑戦(3日間、降下船で病床についた)を除いて、すべての神判に勝利したことは、彼女が前線二連星隊に仕えるに足ることを証明しているが、まだフリーボーンに対する軽率な差別に憤慨している。

 外部から見ると、デニスの技量は驚くべきものである……彼女は幼年期シブコに入ることなく、17歳で戦士階級のテストを受けた。生まれたときから戦士として訓練しているトゥルーボーンのジェイドファルコン戦士に対抗できるという事実は、信じがたいほどのバトルメック操縦の先天的才能をあきらかにしている。第1ファルコン打撃星団隊での彼女の地位は一種の試験である――モルゲスでの絶望的な損失だけが、ジャイルファルコン・ソラーマから兵士を受け入れることを余儀なくしたのであり、喜んで受け入れた士官はスターキャプテン・イングリードのみだった。イングリードはデニスがどう生まれかを気にかけていない――唯一気にかけるのは、どう戦うかである。

 デニスは短気で無分別である。彼女が戦闘中に見せる戦術は――素手でもバトルメックでも――攻撃する前に叫ばないことが優秀さの現れと考えていることを示している。中心領域の敵と戦うとき、この戦術はいくらかの価値を見いだされるかもしれない……なぜなら、ライラのメック乗りの多くは、ジェイドファルコンが静止して挑戦を行うのを見守るものだからだ。彼女は戦術やチームワークに敬意を払わない――ジェイドファルコンのトゥルーボーンたちと同じ――のだが、自分の価値を証明するか、そう出来ないなら一人で失敗することを好んでいる。この態度はジェイドファルコン戦士のフリーボーンにとって驚くべきものではない……中心領域の専門家たちは、彼女ができる限り最も個人主義的な戦士になることで、「トゥルーボーンを超える」のを目指しているとしている。イングリードはすでに彼女の支配を諦め、彼女を敵の陣形を崩すための突撃兵として使っている。

 デニスが操縦しているグレンデル・オムニメックは、今は亡きスモークジャガーから獲得したマシンである。彼女はこのメックをかけてローカストIICで戦い、トゥルーボーンのスターコマンダーを破るのに成功した。敵は彼女を長射程のところに拘束し、大口径レーザーで狙撃しようとしたが、デニスは対等の環内の自然の障害物を使って近距離に近づき、ミサイルを浴びせて素早くグレンデルを無力化したのだ。パイロットのスターコマンダーは生き残ることなく、デニスはオムニメックを持ったフリーボーン戦士として第1ファルコン打撃星団隊に到着したのだった。彼女はグレンデルの基本仕様を好み、ほかの仕様を避ける。




アレン ALLEN

階級/地位: メック戦士、アルファ・ビーク
生誕年: 3051年(20歳、3071年時点)
所属: ジェイドファルコン
故郷惑星: アイアンホールド
メック: アイスフェレットH
 メック操縦技能: 4
 メック砲術技能: 3

 メック戦士アレンは、ぱっとしないが、着実で有能なジェイドファルコン戦士である。初対面の者たちの大半は、彼を馬鹿者と勘違いするが、それは単純にアレンが非常に無口な男だからである。ジェスチャーで済まされるとき、彼が話すことはないが、彼の礼儀正しさは二連星隊、星団隊内で咎められないものである。アレンがなんであれ敵意を見せるのは、戦闘の時のみである。ここで彼は技術と速度を持ってアイスフェレットを振り回し、初めて見た者たちを驚かせるのだ。アレンが階級の神判を生き残ると思ったファルコナー(訓練教官)はほとんどいなかったが、彼は敵のひとりを負かしてから神判を終えて、ファルコナーたちを驚かせたのだった。なぜ戦闘を続けなかったかと訪ねれると、アレンは答えた「これ以上は無駄だ……目標は戦士の階級である」。ブラボー・ビークのメック戦士クインテロは、アレンを「肩をすくめる者」と読んでいる。

 戦場にいないとき、アレンは練習と読書に時間を使っている。彼の体格は非常に独特である――彼は筋力トレーニングを好み、自由時間に星隊基地周辺をハイキングする。彼は熟練したアウトドアマンであり登山者であるが、上官たちは彼が数週間一人で荒野を彷徨うのを嫌っている――ジェイドファルコン戦士たちは常に戦闘の準備をするものだからだ。だが、いくらかの気まぐれや技術によって、アレンが出動に遅刻したことはない。たとえばデイアでは、聖キャメロン騎士団の襲撃で警報が鳴る文字通り10分前に、彼は星隊の野営地に戻ったのだ。

 デイアで彼はアイスフェレットのA仕様に乗っていたが、グレートX戦役では、ER大口径レーザー1門と2門の(命中精度が低くても)強力なヘビー中口径レーザーを積んだH仕様にしている。このヘビー中口径レーザーは、彼に大きな火力を与え、大口径レーザーはERPPCすら上回る射程を与える。アレンは降下船のシミュレーターで一般的なライラ同盟のバトルメックに対しこの仕様が通用するかどうかテストを行った。アイスフェレットの速度を使って、彼はより重いメックの側面、薄い背面装甲に手痛い攻撃を見舞い、それからその速度で応射から逃れるのである。彼はいくらかの成功を収めてきたが、命中精度を欠いていることと、6連短距離ミサイルシステムが、彼にちょっとした不満を与えている。彼としては異例なことに、アイスフェレットより軽量(かつ高速)なインキュバスで似たような戦術を使うメック戦士ヘイズに意見を求めている。ヘイズは彼にいくらかの助言を行っているが、ミサイルランチャーの問題は残っている。




カレン・マルサス CALLEN MALTHUS

階級/地位: メック戦士、アルファ・ビーク
生誕年: 3032年(39歳、3071年時点)
所属: ジェイドファルコン
故郷惑星: アイアンホールド
メック: ヘリオン・プライム
 メック操縦技能: 3
 メック砲術技能: 2

 カレン・マルサスは長年の間、ベータ・ビークで最年長の戦士であった。40歳近い(必死にソラーマ星団隊への転属と戦っている)彼は、抜け目なく経験豊かな戦士で、若い星隊仲間に我慢することはない。これによって、彼は中心領域にメック戦士として配備されるだけの元手と好意を集めた。そして彼はチャンスを無駄にするつもりはなかった。

 カレン・マルサスはスターコマンダーの階級を得て階級の神判を突破し、リスターになるはずだったのだが、リバイバル作戦で前線星団隊に入れられることなく本拠地の守備を任されたことが彼の昇進を妨害した。彼が第305強襲星団隊三連星隊指揮官の地位をかけてある戦士に挑戦すべく準備していたとき、トワイクロスの災厄が起きて、マルサスのブラッドハウス全体が名声を汚された。ティムール・マルサスの副氏族長降格と、3054年のマルサス・ブラッドネーム獲得は、ほとんどアンチクライマックスのように見えた。マーサ・プライドが氏族長となるまでに、カレンはほとんど自分の運命を諦めており、ただコベントリで若い星団隊群に経験を積ませる必要があったことだけが、彼をついに占領域へと連れていったのである。

 中心領域に移動すると、カレンの影響力は以前のようにかすかなものとして残った。ブラッドネームを持っているにもかかわらず、彼はスターコマンダーより高い階級を得ることが出来ず、第8ファルコンへの転属と階級の降下は、いずれソラーマ星団隊に行かされることをほとんど隠してはいなかった。第8でカレンは若い戦士と同じ価値があることを証明することに全精力を傾けた。高い階級のテストをすることはできなかったのだが、星団隊の若い戦士によるすべての神判を下し、最終的に第1ファルコン打撃星団隊への転属を勝ち取った……モルゲス、デイア戦後、ギャラクシーコマンダー・ニュークレイが、銀河隊のフラッグシップ星団隊の再建をしようと必死だったときのことである。

 カレンのヘリオンは、コベントリに来る直前、本拠地での不服の神判でアイスヘリオンの戦士からアイソーラとして奪ったものである。このアイスヘリオン戦士はカレンの年齢を侮辱し、カレンの神判を受けた。「老人」に負ける屈辱をさらに増すため、カレンは老朽化した二線級のコマンドゥIICを使い、ヘリオンを勝利の褒賞とした。中心領域の敵はこのメックに遭遇したことがほぼなかったので、ヘリオンは非常に役立っている。




indexに戻る
inserted by FC2 system