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作成:2004/11/03
更新:2005/11/15

ファイアマンドリル氏族 Clan Fire Mandrill



 独特の派閥を持つ……要するに内輪の争いが多い氏族です。この派閥、Kindraa、kindrasc(kindred associationの略)を、「親類族」「親族団」と訳しました。






背景 Background

そしてニコラス・ケレンスキーは、我らファイアマンドリルに命じた……我々は国家の違いを捨て去り、いま氏族の、家族の道を見つめている。汝らの名を、家名を誇れよ。

 ファイアマンドリルは、3家の創設一族に歴史をさかのぼることができる。セインツ家、ペイン家、ファラディ家である。こういったブラッドネーム間の不和が、氏族のなかでさえもユニークな組織を作りだしている。

 ファイアマンドリルは元々、ノーマン・セインツ氏族長と、ローラ・ペイン副氏族長に率いられていた。クロンダイク作戦の際、セインツ氏族長はペイン副氏族長に先陣降下の権利をかけて挑戦した。セインツ氏族長の隊は、我を忘れて戦った……ペイン副氏族長の隊も同様に素晴らしい戦いぶりを見せたのではあるが。この2氏族長は反乱のあいだ無数の勝利を得た。しかしこの両者の間に深い亀裂が生まれたのである。


親類族 Kindraa

 その後の数年間、両氏族長の違いは氏族内に広がっていった。それぞれのブラッドネームハウスは、遺伝子プールから「より劣った」遺伝子を取り除くために戦った。ブラッドヘリテージをかけた所有の神判は、ゼルブリゲン(1対1)が遵守されていた一方で、しばしば残酷なものとなった。同じ三連星隊、星団隊のメンバーがブラッドヘリテージの権利をかけて戦った例もあった。

 こういったブラッドハウス同士の争いによって、結局、「親族連合」と呼ばれるものが産み出された。これらの連合(すぐ親族団と呼ばれるようになった)は、相互発展、生存のために、資源を分かち始めた。たとえ、ある戦士が他氏族に捕らえられ、その氏族に入ることを受け入れた場合でも、戦士の忠誠心はまず親族団に向いているのである。多くの氏族(とくにマンドリルのボンズマンを吸収しようとする氏族)は、ファイアマンドリルが自分たちの生き方から外れるのに頭を悩ましている。これまでに幾人かの氏族長がこの派閥組織を解体しようと試みたが、ブラッドネームを囲む政治活動に支援を生み出せなかった。

 ウルフ氏族によるウィドウメーカー氏族吸収のあとに、ファイアマンドリルの歴史における次のターニングポイントがやってきた。ウルフが新たに勝ち取った領地を襲撃するのに、セインツ親族団は2個星団隊を送った。闘志溢れる戦いで小規模な領土を得た。これをファイアマンドリルのものするよりはと、自分たちのものにすると彼らは主張したのである。

 セインツ族(いまや自分たちをそう呼んでいた)は、ライバルの親類会の戦士を追い出し、独自の星団隊を形成しだした。セインツの子たちがこの親類族に集うと、氏族内の権力バランスは揺れた。バランスを是正するために、ペイン族の創設が発表された。ペインの戦士が、キーとなる遺伝子資産をかけて所有の神判を数多く戦う一方で、ファラディ・ブラッドネーム一族は、他の4親族団と結託し、ファラディ族を作った。

 ファイアマンドリルの騒ぎは、数ヶ月間、比較的見過ごされがちだった。他氏族は、ウルフ氏族が急に力を付けたことにより強い懸念を示しており、ファイアマンドリルの根本的改革を事実上無視したのである。バーロック氏族が最初に気づき、族長会議の場に持ち込んだ。バーロックはファラディ族を叩くことで、マンドリルの弱さを証明しようとした。バーロックは戦闘で負けただけでなく、マティラ=キャロル族に攻撃され、ダグダの飛び地の多くを失ったのだった。他の親類族も似たような襲撃を行い、バーロックは押し返され、領地を守るしかなくなった。

 ついにファイアマンドリルは、大きさと質が異なる14の親類族に別れたのである。1年以内に、小規模な2親類族が、内部の吸収の神判で、吸収された。


黄金世紀 Golden Century

 黄金世紀のあいだ、ファイアマンドリルは半孤立的な政策を維持した。ほとんど孤立し続けており、つきあうのは商業氏族シーフォックス(後のダイアモンドシャーク)と、さらに孤立していたブラッドスピリットだった。

 孤立してはいても、他の氏族に後れを取ることはなかった。ウルフ(ダグダに飛び地を持っていた)は、遺伝子資産を襲撃して、親類族を落胆させた……バーロックは資産をいくつか失ったのだが。

 オムニメックが開発されると、素早く数親類族がコヨーテ氏族を襲撃し、メック3機の技術情報を入手した。この氏族はすぐにオムニメックを自分たちで生産した。

 ファイアマンドリルは他の氏族とはつきあわないのだが、ブラッドスピリットとの強い関係を作った。マンドリル氏族は、惑星フォスターの一部、重要でない遺伝子資産と引き替えに、ブラッドスピリットへオムニメック技術を与えるとした。先制バッチェルがなされ、ブラッドスピリット氏族は最高の戦士たちを、マンドリルのより劣る戦士たちに向けて送り出した。最終的に、両氏族は名誉を持って必要なものを手に入れたのだった。

 スマイス=ジュエル族(オムニメック生産能力の多くを所有する)は、ブラッドスピリットとの関係、それに優れたメック隊を用い、影響力を拡大した。2870年、ペイン族はスマイス=ジュエル族と組み、ヘルズホース氏族に襲撃をかけた。エレメンタル戦士の遺伝子資産と新型のバトルアーマースーツを狙ったものだった。だが、スマイス=ジュエル族は、ペイン族のほうがより大規模な軍隊を送り込むとの考えを、ヘルズホース氏族長に持たせたのである。続いて起きた戦闘で、ペイン族軍はひどく打ちのめされ、目的を達成せず撤退した。スマイス=ジュエル族は容易に敵をうち倒し、遺伝子とエレメンタルバトルアーマーを獲得したのだった。


親類族の喪失 Loss of a Kindraa

 ヘルズホースはファイアマンドリルに対する殲滅の審判を要求し、氏族長会議で却下された。ホースの復讐のチャンスは2年後にやってきた。2872年、ヘルズホースはコヨーテ氏族と組んで、スマイス=ジュエル族を破壊しようとした。ホース/コヨーテ軍はフォスターに到着し、スマイス=ジュエルの重要な遺産に対する所有の神判を宣言した。スマイス=ジュエルの2個前線星団隊と1個守備星団隊に対し、連合氏族は3個前線星団隊を送り込んだ。

 フォスターの戦いは26時間続いた。スターコーネル・ウィリアム・スマイスは素晴らしい防衛作戦を率いて、ホースの副司令官を殺し、第666強襲星団隊をほぼ破壊した。だが、ホース/コヨーテ連合軍は、スマイス隊の側面を突き、完全に破壊した。スターキャプテン・トーマス・ジュエル(マンドリルの上級士官)は、粉砕された軍を結集し、撤退しようと試みた。ペイン族がその動きを阻み、撤退は止まった。スマイス=ジュエル軍は続いて、コヨーテ隊に側面から押しつぶされた。

 戦いが終わったとき、スマイス=ジュエル族はもう存在していなかった。ヘルズホーストコヨーテは最上の遺伝子資産を取ったが、残ったものは他の親類族に吸収された。コヨーテがスマイス=ジュエルの飛び地領土を得る一方で、ホースはかなりの回収を果たした。加えて侮辱するために、捕らえたスマイス=ジュエルの戦士を解放した。ボンズマンにするのを拒否したのである。


派閥 Factions

 スマイス=ジュエル族の崩壊は、親族団のシステムの欠点をあらわにした。全体として、ファイアマンドリルは力を持っていたが、個々の氏族は破壊されたスマイス=ジュエルのように集中した攻撃には弱かった。彼らは氏族長により権力を与えることで問題を解決した。それに続く拒絶の神判は憎悪がもたらしたというより表面上のものであった。

 次の世紀に、ファイアマンドリルは再建され、他の氏族から孤立したままでいた。遺伝子をかけた所有の神判はあったが、大規模な強襲は見られなかった。セインツ族(いまもっとも力を持つ親類族になっていた)が、侵攻派に傾いたのはこのときである。ペイン族は断固として守護派をサポートした。ファラディ=タナガ族は立場をはっきりさせず、セインツ族とペイン族の紛争に対して中立でいた。この親類族は、ペインがトップの地位から陥落すると、新たな名声を得さえした。

 セインツ族は、中心領域を占領するという、大きな栄誉を勝ち取るチャンスを得た。誇り高きペイン氏族は、セインツに強襲を行った。この2親類族は互いに激しく打ち合ったが、決着はつかなかった。ファラディ=タナガ族が最終的に、侵攻軍に加わるための入札に参加した。5親類族からの部隊が、力を見せつけるチャンスを熱望し、第二ラウンドに入った。

 ファイアマンドリルは侵攻軍の地位を勝ち取ろうとしたが、最終的に失敗した。各星団隊はともに戦うようにできておらず、長い内部闘争で力を落としていたのだ。唯一の慰めは、ライバルたちも粉砕された部隊とともに本拠地に帰っていったことである。


侵攻 Invasion

 侵攻氏族が中心領域で広い領土を得る一方、ファイアマンドリルは衰退していった。〈ヘリオンの怒り〉によって、飛び地領土のいくらかと価値ある資源を失った。ヴィクトリア・タナガ氏族長は親類族が連携しての応戦を提案したが、親類族は、どの軍を送り、誰が率いるのかを決められなかった。最終的に計画は崩壊し、タナガはその地位を退いた。ファラディ=タナガ族は国境線を封鎖し、内部の争いが終わるまでじっとすることにした。

 バーロック氏族がファイアマンドリルの不幸を追い打ちした。ダグダにおいて各親類族を叩き、前世紀に失った領土を取り戻したのである。この大失態のあとで、すべての親類族は国境線を閉ざし、セインツ族から氏族長を、ペイン族から副氏族長を選んだ。

 3050年の残った期間を使って、マンドリルはゆっくり自軍を再建した。古いライバル関係は残ったが、いま協力態勢が必要なことに全員が同意した。生き残り、新たな侵攻があったら参加するためだった。

 3059年にスモークジャガーが陥落すると、多くを獲得する機会が訪れた。ジャガーを襲撃することに加えて、スターアダーがバーロック氏族を吸収する前に、いくらかの領土を確保できたのだった。ウルフとジェイドファルコンによる収穫の神判では、数個星隊の戦士が奪われた。こういったボンズマンはすでにファルコンの階層内でちょっとした問題を引き起こしている。ファイアマンドリルが力を取り戻しているとのサインである。


一氏族の死 Death of a Clan

 中心領域とハントレスでスモークジャガーが敗北すると、氏族は前代未聞の中心領域によるストラナメクティ侵攻に直面した。星間連盟防衛軍はすぐ侵攻に対する拒絶の神判で氏族に挑戦した。もし氏族が勝ったら侵攻は続く。守護派氏族は神判に関わるのを拒否し、残った侵攻派8氏族がSLDFと対決した。スモークジャガーには2個二連星隊が残されていただけだったので、全侵攻派氏族は2個二連星隊を戦闘に投入することに決めた。

 ファイアマンドリル氏族長はセインツ族、ファラディ=タナガ族、ペイン族から兵士を選び、カペラ大連邦国の紅色槍機兵隊(レッドランサーズ)と戦った。親類族間の争いによって部隊の連携はほぼ崩壊し、赤色槍機兵隊は無慈悲にそこを突いた。赤色槍機兵隊はマンドリルのメックのほとんどを破壊し、その後すべての回収を要求した。マンドリルの敗北は、侵攻中止の運命を後押ししたのだった。


セインツ族 Kindraa Sainze

 もっとも大規模でもっとも強い親類族であるセインツ族は、メック戦士の遺伝子資産を多く持っている。残りは航空兵とエレメンタルで均等に分けられる。またセインツ族は、親類族成立初期の数年間に獲得した重要でないブラッドネームをも持っている。だが、長年に渡って、他親類族の遺伝子材料(遺伝子資産よりも)を狙い、多くの所有の神判を行った。

 セインツ族の戦士はセップク(もしくは儀式的な自殺)の長い伝統を持つ。〈脱出〉を生き延びた中心領域の伝統の一つである。他氏族にボンズマンとして捕らえられたセインツ人がそれを受け入れることはない。よってその遺伝子資産は死んでしまうのだった。セップクは名誉ある死と考えられるので、その戦士のDNAが未来のシブコから排除される必要はない。


ファラディ=タナガ族 Kindraa Faraday-Tanaga

 この親類族はファラディブラッドネーム一族(後にタナガ)が統治しているのだが、元々は、5つの特権的なブラッドネームから構成されていた。ファラディは強力な総合ブラッドネームだ。といっても他と比べるとパイロットはあまりよくない。タナガはメック戦士のブラッドネームで、いまだにこの親類族が独占している。有力でない二つのブラッドネームは、この親類族と他氏族で部分的に共有されている。三つ目の有力でないブラッドネームは、スモークジャガー氏族とのみ共有されており、最近の出来事と照らし合わせ、独占しているとすぐ考えられるようになるかもしれない。

 ファイアマンドリルは政治を軍事で解決するのを好むが、ファラディとタナガのブラッドネーム一族は、何度も政治を使ってきた。常に成功した氏族長だった彼らは、ファイアマンドリルの外で起こることを分析し、処理してきた。ファラディ=タナガ族はまた親類族のなかで最高の科学者階級を産み出した。彼らは他の氏族から所有の神判で奪った標本を利用して、配合を選ぶのを楽しむ。ただし科学者たちは鉄の子宮から生まれた戦士ではない。


ペイン族 Kindraa Payne

 この親類族(すべてメック戦士)は、ペイン・ブラッドネームから作られたが、ジュエルやグラントといった他の一族の強力なブラッドヘリテージも所持している。この唯一の遺伝子資産はファイアマンドリル氏族のなかにのみあると考えられている――不運にも――ファラディブラッドネームに所属しているのであるが。

 本物の守護派であるのだが、ペイン族は創設以来、ファイアマンドリルの指導者の一員としての地位を保っている。だが、遺伝子プールの枯渇に苦しんでいるので、すぐに変化があるかもしれない。ペインブラッドネームはいまだに尊敬されている一方で、近親交配の効果が表れており、戦士の能力に影響が出るかもしれない。今のところ、ペインブラッドネームはファイアマンドリルで最高のものだ。


マティラ=キャロル族 Kindraa Mattila-Carrol

 強大な親類族のひとつであるマティラ=キャロル族は、現在、トップ3のペイン族と取って代わろうとしている。マティラの遺伝子資産は、メック戦士とエレメンタルに集中しており、その一方で、キャロルの遺伝子資産はメック戦士と航空パイロットに焦点をあわせている。このふたつが常に力をあわせてメック戦士を産み出し、戦場での技術は主にマティラから、直感と戦術の才はキャロルの血から得ている。キャロルの血統は、氏族初期に混ざったケレンスキーのDNAを継いでいる(ウルフ氏族を除いて唯一)。もっともケレンスキーのブラッドネームを獲得する権利はない。

 マティラ=キャロル族は、侵攻派と守護派の論争が起きたとき、陣営を変えた。ツカイードの停戦以後、熱心な侵攻派で居続けている。


ベイル=グラント族 Kindraa Beyl-Grant

 ヘルズホースとコヨーテが1世紀以上前にスマイス=ジュエル族を叩いて以来、グラントは独占的なブラッドネームでなくなったのだが、この親類族はメック戦士のブラッドネームが優勢なままである。ベイルブラッドネームはファイアマンドリルとこの親類族で独占している。この親類族における多くのブラッドヘリテージと同じように、ベイルは航空兵の血統である。

 航空宇宙資産に偏っていることから、ベイル=グラント族は2隻のファイアマンドリル戦艦の指揮を託されている。この親類族は守護派的な姿勢に傾いており、侵攻派的なミック=クリース族がバランスとして機能している。


クライン族 Kindraa Kline

 この親類族は1ダースのブラッドネームからなる。クラインブラッドネーム(ファイアマンドリルが独占)は他の親類族と共有されている。だが、親類族中を支配するのに充分強い血統を持つのはクライン族だけだ。

 その大きさにもかかわらず、クラインは他の氏族から二線級と考えられている。生まれついての守護派であるクライン族は、他の親類族と一緒に働くのに熱心である。より強い親類族に吸収されるのを防ぐために同盟する必要があるのだと陰口をたたかれることもある。


ミック=クリース(グーレ)族 Kindraa Mick-Kreese (Goulet)

 この親類族は航空宇宙資産に傾倒している。またミック血統は氏族の最高のエレメンタルで、ほとんどがこの親類族に集中している。クリースブラッドネームは航空兵のほとんどを供給し、最高の主力艦司令官を送り出している。ときに、グーレエレメンタルの血統が力をつけてきている。最近、マティラ=キャロル族から戦士と遺伝子材料を獲得したのであるが、このブラッドネームが再興する日がくるかもしれない。

 ミック=クリース族は熱心な侵攻派である。二隻の戦艦をコントロールしている。




ファイアマンドリル氏族軍 Touman

セインツ族
  第3セインツ儀仗戦闘星団隊
  第53強襲隊
  第7セインツ儀仗打撃星団隊
  第14セインツリアガード戦闘星団隊
  第19セインツリアガード打撃星団隊

ファラディ=タナガ族
  第1戦闘星団隊
  第3戦闘星団隊
  第16強襲隊
  第12支援隊

ペイン族
  第1戦闘ペイン隊
  第1打撃ペイン隊
  第2戦闘ペイン隊

マティラ=キャロル族
  第61ファイアストーム
  第71ファイアストーム
  第202ファイアブランド
  第301ファイアブランド

ベイル=グラント族
  第42戦闘隊
  第87マンドリル空挺隊
  第17補助隊
  第31補助隊

クライン族
  親類族指揮星団隊
  第21前衛隊(戦闘)
  第27前衛隊(強襲)
  第31前衛隊(打撃)
  第42前衛隊(戦闘)

ミック=クリース(グーレ)族
  第4エレメンタル強襲隊
  第11戦闘隊
  第23空中強襲隊
  第42前衛隊(戦闘)






3067年アップデート

 我らが宇宙は変わった。

 それを親類族は認めないだろう。それを我が血族の戦士たちは認めないだろう。だが証拠があるのだ。数氏族が殲滅された。数氏族が追放された。数氏族が吸収された。本拠地世界の権力は移り変わり、すべてを変えてしまうほどの勢いを持つ危険性がある。最後には、我らが創設者ニコラス・ケレンスキーのビジョンを捨て去ってしまうかもしれない。毒蛇が胸の中に巣くったかのように、こういう変化が、数世紀に渡って続いた、我らの生活、戦い、死のすべてを害するかもしれない。そう、我らが宇宙は変わってしまったのだ――常にもっとも独特な氏族であり、変わらぬ事を好むファイアマンドリルでさえも。

 だが、我らは流れをせき止めないだろう。紛争と変化は、我らのなかにあり続けている。どんなに望んでも、それは拒めない。ファイアマンドリルはけして迷わず、考え込まないが、挑戦の前には雄叫びを上げ、牙を未来に向けて飛びかかる。どちらに飛びかかるのか? 我らが決める問題である。

――カサンドラ・ファラデー、ローアマスター


炎上する橋 BURNING BRIDGES

 アマンダ・キャロル族長は、5年間の大部分を費やして、強力な親類族のあいだに小さな橋を架けた。彼女の指導下で、ペイン、セインツ族さえもが、協調の精神を抱き、古きライバル関係を捨て去った。だが、3066年の初めに、キャロル族長の努力はほとんど無に帰した。ベイル=グラント族――守護派の影響力を増したがっていた――が、副族長の座を巡って、セインツ族に挑戦を布告したのである。クライン族がベイル=グラント族の神判を支持すると、セインツはファラディ=タナガ族とミック=クリース族を味方に付けようとした。両者は曖昧に応じた。ファラディ=タナガは、セインツ族が得た力を濫用するだろうと長年信じていた。ミック=クリース族は平和を求めようとした。「族長の5年間に渡る仕事を、個人の目的のために投げ捨てる」のを妨げようと、親類族の要塞を戦艦で封鎖さえしたのである。

 味方が少ないことに怒ったセインツ族は、3個星団隊でベイル=グラント族を叩き、もう少しで全滅させるところだった。ファラディ=タナガ族とペイン族が、ベイル=グラントの死と事実上の吸収を防ぐために連合軍を作ると、セインツの兵士たちは引き返した。邪魔をされたセインツ族は、クライン族に対する「借りを返す攻撃」に着手した。というのも、クラインはベイル=グラントの計画を早いうちから支援していたのだ。この戦いは長く続いたが、スケールは小さなもので、ペイン族の次のような行動がなければ、セインツの怒りを収めるに充分なものだったかもしれない。ペイン族はベイル=グラントと同盟を組み、二つの衰退した一族から、強力な親類族を作り上げた。

 セインツ族は得られたかもしれないものが政治によって遠ざかっていったと見て、クライン族に新たな怒りを向けた。助けが必要になったクラインは、近隣のミック=クリース族を頼り、それからブラッドスピリット氏族のイルチ(ilChi、大使、使者)に調停を求めた。クライン族は和平のために重要な資源をあきらめねばならなかった。サマンサ・クラインが主張したように、事実上、クライン族はペイン族に代価を支払ったのである。

 船頭の多すぎる親類族同盟は崩壊した。アマンダ・キャロルは氏族長としての信任票を得られなくなった。その地位を守ろうとすらせず、辞任して、ファイアマンドリル氏族長の座を空位のものとした。


新氏族長 A New Khan

 新氏族長を選ぶ、配置と神判が、残ったこの年に荒れ狂った。一度ならず、セインツ族が指導者のギャレット・セインツを、副族長から氏族長に昇進させようとすると、他の親類族がこれを食い止めるべく、パワーバランスをひっくり返す。全親類族は欲求不満を募らせた……ファラディ=タナガを除いて。彼らは、ローアマスター、カサンドラ・ファラデーの導きに沿って、慎重に動いたのだった。

 挑戦は3067年をすべて食い尽くしそうだった……そして運命が介入した。ブラッドスピリット氏族とともに動いていたミック=クリース族が、3067年、スターアダー氏族に対する強襲を支援した。ブラッドスピリット氏族との同盟で他の親類族が成功していると見たクライン族は、戦いに参加して、近年失った損害を取り戻そうとした。その結果は災害であり、クラインはひどく傷ついた。クラインの最高の戦士たちからなる1個星団隊以上が、スターアダー氏族に破壊されたのだった。スターアダー氏族に攻め込まれる証拠があるなかで、クラインはミック=クリースからの最後通牒を受け取った。自分たちに加わるか、スターアダーのボンズマンになるかというものだ。

 ミック=クリース=クラインの創設によって、ファイアマンドリル氏族のパワーバランスは大きく崩れ、もしブラッドスピリットが同盟者のミック=クリース=クラインとセインツ族に、政治的支援、軍事的支援(新型クリムゾンラングール・バトルメック含む)を与えなかったら、新たな戦いの局面に突入していたかもしれない。ブラッドスピリットは喜んで大盤振る舞いした。なぜなら、同盟国ファイアマンドリルを強く信頼していたからだ。

 結末は、ガレット・セインツの氏族長昇進と、サマンサ・クラインの驚くべき副氏族長就任だった。これは、氏族の上層部を守護派で固めるという、当初のベイル=グラントの挑戦が成功したかのように見えた。ただし、サマンサ・クラインはいまや所属親類族中で存在感を示さねばならなかった。クライン族は、強固な侵攻派のアンドリュー・クリースが動かしていたのである。もし、ペインとベイル=グラントがどこからか助けを得られれば、ファイアマンドリルの権力は移り変わることになるだろう。



氏族軍 TOUMAN

 クライン族の吸収と、ペイン、ベイル=グラントの政治同盟を除いて、ファイアマンドリル軍内での最大の変化といえば、いくつかのブラッドネーム連合が装甲部隊を増やしたことだ。マティラ=キャロル族とペイン=ベイル=グラントは、この大部分を済ませたところである。


セインツ族 Kindraa Sainze

 最近、他の親類族を攻撃して弱体化したのだが、セインツはいまだ3個の完全に作戦可能な前線星団隊を配備している。第53強襲星団隊は、全体的に酷い損害を被り、3個三連星隊にまで減少している。だが、第14リアガード戦闘星団隊は、作戦中にボンズマンを捕らえ、6個三連星隊にまで膨張した。もっとも、明白に守護派的心情を持ってる幾人かは、身代金と交換に返されるか、それとも単純に追放されそうである。


ペイン=ベイル=グラント族 Kindraa Payne-Beyl-Grant

 この自称最初の"大親類族"は、ローレル・ペインの指導下で、明らかに長年のライバル、セインツ族を挑発している。セインツ族は怒っていたとしても、3親類族同盟に挑戦するほど愚かではない。いまのところは。

 親類族指揮部隊は、メックと戦闘機の1個三連超新星隊である。第1打撃ペイン星団隊は、最近、1個三連星隊を、バトルメック/車両の混合部隊にした。古きベイル=グラント族には、第87マンドリル空挺隊と、第17補助星団隊、第31補助星団隊が残されている。この大親類族は、ファイアマンドリルの戦艦7隻のうち、3隻もまた管理している。キャラック級〈ファイアホールド(元ホーラー)〉、ローラIII級〈アナテマ〉、ソヴィエツキー・ソユーズ級戦艦〈リーバー〉である。


ファラディ=タナガ族 Kindraa Faraday-Tanaga

 侵攻派、守護派親類族の両方から、中立でいることを長らく嘲笑されているのだが、ファラディ=タナガ族は注意深くこの政策を支持し続けており、ファイアマンドリルの融合を取り戻す最大の希望となっている。親類族指導者(氏族ローアマスターでもある)カサンドラ・ファラデーは、最近、ブラッドスピリットとともに行動し、彼らが持つ深い協調の精神をマンドリルに注入する方法を探している。

 カサンドラ・ファラデーの未来を"見る"力は、ゴリアテ・スコーピオン氏族の興味を引いている。といってもマンドリルは、まだなにも返答をしていない。

 ファラディ=タナガ族は、ヴィンセントマーク42級〈ファイアテンダー〉を管理している。第12支援星団隊は1個車両三連星隊が付属するように修正された。この普段は頭が固い親類族にとっては大きな変化である。


ミック=クリース=クライン族 Kindraa Mick-Kreese-Kline

 大親類族と呼ぶまでにはいたらないが、ミック=クリースとクラインの合併は、第2の目立った勢力圏を作ることとなった。ブラッドスピリット氏族との結びつきを強め、親類族副官のサマンサ・クラインが副族長に昇進するなかで、ミック=クリース=クライン族は目立った軍事的、政治的力を自在に操っている。侵攻派であり、力を増したペイン=ベイル=グラントとのバランスを取ることから、セインツ族はこの新たな巨人を歓迎しさえしている。

 2隻の戦艦――ポチョムキン級〈ジャングル・ヒート(元ファイアイーター)〉と、ローラIII級〈リアクター〉――を管理にしていることに加え、この氏族は2個前線星団隊と、5個の強力な二線級星団隊を配備している。クライン族は、第31前衛星団隊と、第21前衛星団隊のほとんどを、スターアダー氏族との戦いで失ったのだが、残った兵士と装備は他の予備星団隊に分配され、それぞれを5個完全三連星隊に増強した。


マティラ=キャロル族 Kindraa Matilla-Carrol

 以前の地位と影響力から落ちぶれつつあるマティラ族は、孤立主義を採用して、開いていたドアの多くを閉じた。この氏族はまた、二線級星団隊を戦闘可能な状態に置くための強化プログラムを開始した。ペイン=ベイル=グラント族、ミック=クリース=クライン族と張り合いたがっている、他の親類族に掠奪されるのを畏れたのだ。

 このプログラムの一部は、マティラ=キャロルのTO&Eに装甲部隊を取り入れることを意味していた。第71ファイアストーム星団隊、第202、第301ファイアブランド星団隊は、つい最近、強襲級車両の1個二連星隊を得た。この部隊と交換されたバトルメック/エレメンタル二連星隊は、現在、新たに作られた突撃星団隊、第1ファイアアサルトの核となるべく派遣された。マティラ=キャロル族はまた、ローラIII級〈レイジ〉を管理している。




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