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作成:2020/08/30
更新:2020/12/20

恒星連邦 Federated Suns



 恒星連邦は中心領域で最大の版図を持つ、最強の継承国家です。王家たるダヴィオン家は元々ガスコーニュ地方に住んでいたフランス人で16世紀にスコットランドへと渡ったという経緯を持ちます。
 隣接するドラコ連合、カペラ大連邦国との国境線沿いを治めるのが、サンドヴァル家(ドラコ境界域)とハセク家(カペラ境界域)で、その当主たちがダヴィオン家に忠実であるか、あるいは野心的であるかは、中心領域の歴史に大きな影響を及ぼしてきました。
 恒星連邦は第四次継承権戦争で大きな勝利を収め、ライラ共和国と合併し、中心領域に覇を唱えるに至りましたが、内戦によって分裂し、大きな痛手を負っています。
 旧classicbattletech.comより、連邦=共和国内戦の直前、3062年時点の恒星連邦を紹介します。




 神の摂理が我らを導くと信じ、我ら、ニューアヴァロンの自治市民は、この日、この協定を定め、承認する。この惑星の人民は未来永劫法の下に平等であり、正義が弱者を治め、強者を治め、自由が剣となり、希望が最強の盾となる。

 ――ニューアヴァロン協定(2239年)より抜粋



 とある高名な恒星連邦の歴史家は、かつて祖国を「専制の宇宙に築かれた自由のとりで」と表現した。このフレーズは同胞たる市民たち大半の見方を要約している――啓発されているが包囲されている、他国の暴君がなんとしても消したがっている自由の灯火、である。恒星連邦の平均的な市民が中心領域の諸国(あるいはもっと自由と思われる辺境数カ国)よりも大きな個人的権利を持っていることは事実である。誰でも公に政府を批判し、自分で選んだ信仰を持ち、政治団体を結成し、地元政府に公正なあつかいを訴えることが可能である。これらの権利、その他の権利は、七世紀にわたる政治的変革で憲法に組み込まれた「六つの自由(Six Liberties)」に基づき、恒星連邦市民全員に保証される。それでも、これらの自由はまっとうな生活を保障するものではない。裕福なニューアヴァロン市の市民たちは、バックスリーや砂漠の惑星ケサイのような貧しい僻地の厳しい現実をほとんど知らず、関心を示さないことがよくある。自由と快適を手にした彼らは、恒星連邦の誰しもが同じように繁栄していると思いこむか、亀裂に落ちてしまった者は本人に責任があると信じている。

 ふたつの世界が、富者と貧者の違いを如実に示している。私が3026年に外世界同盟を出てから居住しているニューシルティスは、裕福な世界に入る。大部分が氷と雪に閉じ込められているのだが、赤道近くの暖かい地域には、小さいながらも発展した都市がいくつか存在する。その首都(雪の北部大陸防衛のため建設された)は活気のある学園都市であり、行政の中心地である。ニューシルティスの繁栄は、23世紀の後半にゴールドラッシュを引き起こした大量の稀少金属にある。この鉱物はニューシルティスをハセク家への高額な贈り物にした。ハセクの卓越と資源の慎重な管理により、ニューシルティスはカペラ境界域の理想的な主星となり、それはこんにちまで続いている。民衆はコスモポリタンで、裕福か、裕福になる最中であり、希望に満ち、エネルギッシュで、ダヴィオン政府に熱烈な忠誠を誓い、それが生活を保障する。

 かつて刑務所惑星であったことで悪名高いケサイIVは、これとおおきく違っている。土地の生活は存在せず、居留地はごく少数で遠く離れている。ケサイの熱い砂の中にある最大の居住地は、星間連盟時代に建設された巨大なSLDF基地と補給庫にある。過去三世紀間で価値あるものの大半を剥ぎ取られた巨大施設は、いまや事実上のゴーストタウンであり、砂に覆われ、大昔に死んだ兵士たちの足音が響いている。空っぽであろうとなかろうと、軍隊がこれら施設の周囲を固く守っている――それがケサイ民とダヴィオン統治者の事実上唯一の接点である。政府の気を引くほどの価値がないケサイは、投資や注目のようなものを受けることがほぼなかった。地元民は出来る限りのものをかき集め、惑星唯一の海の近くで小規模な灌漑を行い、古代星間連盟基地近くのAFFC野営地から物資を盗み取る。少量をくすねる程度であれば、地元の部隊指揮官たちは目をつぶる傾向がある。しかしながら、兵士と地元民の間には敬意というものが欠けている。同情している兵士でさえ、「砂漠のネズミたち」を哀れむのみであり、一方の地元民たちは軍隊を傲慢な侵入者でカモと見なしている。書類上、両者ともに恒星連邦の平等な市民である。実際には、両者のあいだには1キロメートルの砂嵐よりも大きな亀裂があるように見える。

 自由があること――かけがえのない善――は、恒星連邦が自身の正統性に絶対的な自信を持つ理由となっている。同時にこの感覚は我らの最大の強みであり、弱みになっている。それは弱い人々を傷つけるかもしれない歴史的衰退期を生き延びる勇気を国家に与えている。ダヴィオン国の市民たちは、楽観主義者ではないにしても、運命が良い方向に導くと信じているのである。彼らは多くの点でそのような運命を達成している……数世紀にわたり、この国は自由の輪が広まる生命力と希望のシンボルとなっているのである。だが、楽観主義と自負はたやすく傲慢に結びつくものだ。特に無秩序に広がる軍事機構に利用される場合には。この組み合わせが連邦共和国を破滅に導き、現在我らの領土の末端で燃え上がる内戦を避けられ得ぬものにしている。連邦共和国が内戦に傾くにつれて、ダヴィオン市民の大半は「こっちの側」が勝つことに自信を示している。だがそれが何を意味するのか語れる者はほとんどいない。恒星連邦とライラが合併してから35年が経ち、だれが「こっちの側」とわかるのだろう? そして征服によって合併を維持するというのなら、何が犠牲になるのだろう? 我が同胞たる市民たちはこれらの問いに答えてはくれない。だが、さらにやっかいなのは、それを尋ねる者さえいないことだ。

 ――アナスタシア・マーカス、サソー大学(ニューシルティス)、恒星連邦史名誉教授





起源と歴史 Origins and History

 恒星連邦とは、ほぼその嚆矢より軍事力であった。戦争が領地を広げ、たびたび経済を拡大させ、結束の緩い人々を他のどんな手段よりもまとめてきたのである。このような軍事国家としては珍しいことに、軍事的功績の栄光は、大きな個人的自由や民主的地方政府と共存している。先見の明を持った建国の父の遺産である民主的傾向は、恒星連邦の歴史を通し、重要な場面において軍事拡大主義の貴重なカウンターバランスとなってきた。





最初のダヴィオンたち The First Davions

 恒星連邦の三代目までの統治者、ルシアン、チャールズ、レイナード・ダヴィオンは、それぞれまったく異なったやり方で恒星連邦を形作ってきた。夢想家であるルシアン、計画家であるチャールズ、兵士であるレイナードが国を作り、高い理想と現実的な政治がひとつの究極的な目的のために絶妙なバランスを保ったのである。それはダヴィオン家のリーダーシップの下で、恒星連邦を健全に継続させるというものだ。





国家の夢: ルシアン・ダヴィオン Dream of a Nation: Lucien Davion

 ルシアン・ダヴィオンが2317年に恒星連邦を建国した。帝国を作るという個人的な欲望ではなく、単純に今持っているものを失うという恐怖からそうしたのである。2314年、数十年に渡る腐敗の重みで地球同盟が崩壊すると、ジェームズ・マッケナ提督の下で新しく活力にあふれる地球帝国が取って代わった。マッケナは地球の植民地を取り戻す決意を固めており、植民地も同じく抵抗の決意を固めた。ルシアン・ダヴィオンが抵抗活動から生まれた最初の政治連合――南十字星協定を作った。それはいずれ台頭してくる星間帝国のひな形となるものであった。

 ルシアン・ダヴィオンは後の恒星連邦主星、ニューアヴァロンの生まれである。23世紀に西ヨーロッパから移住した者が大半であるニューアヴァロンは、2237年、地球同盟に反旗を翻した。このとき、人類植民宙域にまたがる激動によって、地球がまだ忠実だった植民世界に食料と資源を不合理に要求したのである。新しい負担割り当ては、後に穀物暴動と呼ばれる反乱をニューアヴァロンで引き起こした。包囲された地球同盟から充分な軍事支援を受けられなかったエミール・ヴァーネイ総督はニューアヴァロンから逃げ出し、副総督が暴徒に降伏した。ヴァーネイ総督が援軍を求めて地球にたどり着くまでに、彼をその座につけた拡大党は、敗勢の戦いのさなかにあった。拡大党は兵士を送る状態になく、よってニューアヴァロンは地球同盟のくびきから解放されたのである。

 独立してからの慌ただしい時期に、ニューアヴァロンの市民は完全な大衆民主主義の実験を行った。全成人はコンピューターシステムを通してすべての議題について投票し、よって多数派を説得できた者に権力が委ねられた。発足した政府の名目上のリーダーである首相は、法的には1年の任期を務めることになる。独裁を防ぐ目的を持ったこの取り決めは混乱をもたらした。独立してから最初の10年間で、ニューアヴァロンの工業地区何カ所かにいる一部の実業家が実質的に投票を牛耳り、莫大な富を蓄積した。2248年までに、小競り合いする産業の巨人たちは私兵部隊を創設した――表向きは警備のためであったが、別の使い方もされたのである。ニューアヴァロンの10回目の選挙が近づくと、いわゆる主席一族たちはあらゆる手段を使って権力を乗っ取ろうとした。ヨルゲンソン一族の装甲部隊が小規模な惑星市民軍を敗走させた後、他の主席一族は中央当局に抑えられることなく、権力を追い求めた。

 生き残った市民軍の士官、アダム・ダヴィオンとネイサン・デュヴァル(共に主席一族の子弟)は、内戦が愛する世界を破滅に導くと認識した。彼らは乱戦に飛び込むことなく、戦力を集めて、戦闘を終わらせる戦役に乗り出した。7年に及ぶ戦闘が張り詰めた交渉で中断された後、第二次ニューアヴァロン協定が結ばれ、ついに紛争は終わった。この公文書と付随する憲法は、本質的に惑星の民主主義を主席一族が支配する寡頭制に置き換えるものであった。首相の任期は終身制となり、大衆投票は完全に払いのけられた。この新封建システムは戦争に倦んだニューアヴァロンの市民にとって救いとして現れた。7年に及ぶ悪夢の後、彼らは安定を約束する政府の創設を望んでいたのである。

 ダヴィオン大佐の長男、ルシアンは新封建主義の特権をすべて受け継いだだけでなく、故郷の民主的な過去について知悉していた。歴史書の熱心な読者であるルシアンは、ニューアヴァロン独立第一世代の平等主義的理想を本心から賞賛していたのである。マーティン・デュヴァル首相の信頼出来る大臣として、ルシアンは金と権力という避けられぬ政治的現実、日々の行政の必要性を理想と融合させる道を模索した。地球宙域で事件が発生し、故郷の自由を保障するため、ニューアヴァロンの外に目を向けるのを余儀なくされた時、彼が作った近隣惑星との連合体は同じ理想主義と過酷な現実のバランスを取ったのである。ダヴィオンの南十字星協定は、相互の貿易と防衛に特化した緩やかな連合を構想し、参加惑星には完全な自治を与えた。中央集権は2つの分野に制限されている。連邦にまたがる防衛と、参加惑星内ので紛争を処理する最高評議会である。

 2316年までに、地球帝国が急成長すると、ルシアン・ダヴィオンがすぐ行動に移らねばならないことは明白となった。彼はこの10年以内にニューアヴァロンの首相となっており、ニューアヴァロンの商船隊は南十字星宙域の世界にとってお馴染みで歓迎されるものとなっていた。ルシアンはこういった交易のコンタクトを使い、必要な時には職務上の権威と組み合わせて、南十字星境界域の世界に同盟を持ちかけた。聞く耳を持つ者がいたのは、彼が高潔であると評判が高かったからであり、同じく帝国が力を増していくことへの恐怖もあった。地球政府は遠くの宙域と大きな戦争を起こす力をまだ持っていなかったが、経済制裁や小規模な攻撃で個別の惑星を奪い取るには充分な能力があった。同盟だけが南十字星の世界の自由を保障できたのである。近隣惑星への外遊において、ルシアンはこの点を繰り返し指摘した。2327年末、彼はニューアヴァロンでサミットを開催し、23の世界のリーダーたちを集めた。3人をのぞく全員が南十字星協定に調印し、恒星連邦が誕生した。

 新たに生まれた連邦のリーダーたちは、信頼の象徴として彼らを結びつけた男、ルシアン・ダヴィオンを大統領に選んだ。15年間の在職期間仲、ルシアンは惑星間の紛争調停を精力的に行い、大統領職とダヴィオンの名前が事実上同じものであると民衆の心に植え付けた。裁判における彼の揺るぎない公平性は、名前と職務に誠実な振る舞いの評判を与え、ダヴィオンが王家たる権力にまで上り詰めるのを著しく楽にするのである。





総司令官: チャールズ・ダヴィオン Commander in Chief: Charles Davion

 ルシアンが2332年に大統領を辞職した後、末弟のチャールズ・ダヴィオンが後を継いだ。三ヶ月後にルシアンが死亡したのに際し、チャールズはニューアヴァロンの首相にもなった。ふたつの権力基盤を持ち、ダヴィオンという名前の権威を持つチャールズは短い任期を使って、恒星連邦の権力を(ダヴィオン家の手に収まる形で)中央集権化した。それはジュリアンが夢にも思わない手段を持ってしてであった。

 チャールズの最も重要な行動は、恒星連邦軍の抜本的な改革であった。リムワード境界域(今日のカペラ境界域)でほとんど絶え間なく国境紛争が勃発していたことから、チャールズは新兵の募集方法を根本から変える時が来たと正しく判断した。恒星連邦は創設以来、外的・内的な脅威が発生すると、遠征軍を立ち上げることで、それぞれの危機に対処してきた。その際には所属世界が人員、物資、輸送を提供した……終わると、遠征軍は解散した。2318年に離脱した2つの惑星の占領は言うまでもなく、急造の恒星連邦軍が国境世界いくつかへの侵攻をはねのけるのに失敗したことは、このやり方が不適切だという証明であった。結果、チャールズ・ダヴィオンはこのシステムを連邦平和維持軍(FPF)に置き換えた……恒久的に恒星連邦全体に奉仕する、各世界から提供された少数精鋭の軍事部隊である。FPFは恒星連邦最初の常備軍であり、やがて中心領域最強の軍事力へと至るものの中核であった。

 激しい訓練により、部隊の故郷よりも恒星連邦への忠誠心が強調された。ダヴィオン一族への忠誠心はあからさまな同質化の一部ではなかったが、ニューアヴァロン出身の親ダヴィオン市民たちが不自然にFPFの士官の中に存在した。同じく、急成長する軍事、商業の官僚部門(ニューアヴァロンにあるFPFの恒久的施設、首相官邸の近くに作られた)の主要ポストもまたダヴィオン派に支配された。2340年にチャールズの甥、レイナード・ダヴィオンが首相の地位を継ぐまでに、ダヴィオンは両部門を事実上確保して、一族は連邦全体の宗主権を握る途上にあったのである。





最初の狐: レイナード・ダヴィオン The First Fox: Reynard Davion

 外交官であり、理想化であり、実力者であるレイナード・ダヴィオンは、何を置いてもまず第一に兵士であった。カペラ前線で長引く戦争のベテランであるレイナードは、20年に及ぶ紛争を終わらせ、祖国に出来る限りの利益をもたらす決意をしていた。彼は新恒星連邦軍の力を見せつけることからはじめた。レイナード直々の指揮下で、FPF1個予備タスクフォースが敵チコノフ大連合の国境を突破し、チコノフ軍の補給線を寸断して、惑星ミラ、メサルティムを混乱に落とし入れた。攻撃の予想外の激しさにチコノフ兵は圧倒され、FPFに最初の意味ある勝利がもたらされたのである。この力強い立場から、レイナード・ダヴィオンは最も強力な――それゆえ最も危険な――紛争中の隣人、カペラ帝国との平和条約の交渉をもった。2345年、両者は相互不可侵条約、アカラ協定に調印した。六ヶ月後、彼らは恒星連邦のミラ、メサルティム、アルマク支配を承認するアルマク合意に署名した。二番目の条約は、恒星連邦にとって初の重要な軍事的征服を記録し、同じく数世紀にわたってより致命的となるカペラ国家とのライバル関係の始まりになったのである。

 恒星連邦の次なる大規模な領地拡大は、またもカペラ人を犠牲にするもので、2357年に始まった……レイナードがサーナ至高国(当時カペラの支配する宙域の一つ)の惑星ベルを占領するために兵士を派遣したのである。この作戦行動は、サーナの世界チェスタートン、ハイスパイア割譲を要求したことと組み合わされて、カペラ政府を一変させた。カペラの新首相セルク・トゥカスは、共通の敵ダヴィオンに対してカペラ各国家を一時的に団結させることで、この軍事的冒険主義に応じた。2363年前半、トゥカスはアカラ協定、アルマク合意を公式に破棄し、割譲したカペラ世界すべての返還を求めて、軍を動員した。応じてレイナード・ダヴィオンは宣戦布告した。国境紛争のこの段階は2371年、レイナードが死亡して、FPFで最も有能な指揮官のひとりが失われるまで続いた。レイナードの息子エティエンは、大統領と首相の座を継いでからわずか3ヶ月後に、カペラ人(カペラ大連邦国として再編された)との休戦協定を結んだ。

 2360年代の国境戦争により、恒星連邦は初期の国境紛争でカペラ相手に失った世界をすべて取り戻したのみならず、惑星いくつかを奪い取った。その後の数十年間、断続的に経済的・政治的逆境に陥ったにもかかわらず、恒星連邦は敵国に対して領土を失うことはなかった。チャールズ・ダヴィオンが作り、レイナードが戦闘で鍛え上げたその軍隊は、24世紀のあいだ複数回国境を守り、拡大させ、その後の歴史で繰り返される征服と軍事による国内復興のパターンを作ったのである。





民主制と独裁 Democracy and Dictatorship

 その初期から、恒星連邦は軍事力と外交により成長した。初期の征服についてはレイナード・ダヴィオンの成功した戦役がよく知られているものの、夢想家ルシアンですらあるときには軍隊に頼った。2316年に彼が訪問した数多の南十字星境界域世界の中にマスキーゴンがあった。周囲の惑星いくつかを支配する独裁者の世界である。マスキーゴンの司令官は一年間ためらった後、恒星連邦に加入したが、傘下の世界すべてがそれに従うことはなかった。マスキーゴンが所有する世界の民衆たちは手荒い扱いを受けていたことから、司令官にも統治も好感を抱かなかったのである。マスキーゴンが恒星連邦同盟に加わる意思があることを発表すると、エマーソン、ベテンカイトスは同行を拒否した。彼らはマスキーゴンの支配を離れることを選び、カペラ系の勢力であるチェスタートン貿易同盟に加わった。ルシアン・ダヴィオンは3年間かけて、2つの「反乱」世界を強制的に併合しようとし、成功することはなかった。

 エマーソンとベテンカイトスの戦役はカペラとの数十年に及ぶ国境戦争の扉を開き、2346〜2357年の短い和平で中断した。長く続く国境紛争の初期に、恒星連邦は目を覆うような敗北を喫したのみならず、国を軍事強国へと変えるきっかけを得た。国境紛争で劣勢であるというプレッシャーなくしては、チャールズ・ダヴィオンが南十字星協定を改定して常備軍を起こすことはなかったろう。恒星連邦に忠誠を誓う訓練の行き届いた常備軍なくしては、レイナード・ダヴィオンが失った惑星をすべて取り戻し、さらにはいくつかの世界も加えるという見事な軍事的偉業をなすことはなかったろう。

 その中で、チャールズとレイナードはFPFの恐るべき遂行能力のみならず、恒星連邦政府官僚部門大部分の支配権をダヴィオン家に与えたのである。特定の一族が覇権を握ったにもかかわらず、恒星連邦は軍事独裁に成り下がることを免れ得た。国の指導部を事実上の個人崇拝にすり替えたドラコ連合やカペラ大連邦国の統治者たちとは違って、ダヴィオンは軍部、政治、経済の重要部分を一族で支配することによって、発展する星間帝国の権力を維持したのである。全般に彼らは責任をよく果たしたので、市民たちは反対する理由を持たなかった。むしろ、政府を巧みに動かす秘訣を持っていることが、政治的に教化する必要なしに、市民たちの心に正統性を植え付けたのである。

 また、恒星連邦は、国家創設者の故郷であるニューアヴァロンの政治文化を一部採用している。ニューアヴァロンは平等主義的民主主義として始まり、内戦に陥り、次に新封建主義的社会政治秩序を取り入れた。民衆が主権を持ち、裕福な貴族に統治されるという緊張が、恒星連邦をうまく動かしてきた。この若き国家がチャールズ・ダヴィオンやレイナード・ダヴィオンのようなカリスマ的で、政治的才能にあふれた大物に統治され続けていたことを考えると、民衆たちはかつての民主的伝統を捨て去ることになったかもしれない。だが、レイナード・ダヴィオンに続く数人の統治者たちが専制の危険性をまざまざと思い出させたのである。





狂人と暴君 The Madman and the Tyrants

 レイナードの長男、エティエン・ダヴィオンは喝采のなか2317年に即位した。レイナードと同じく、エティエンは叙勲された兵士であった。彼はまた危険なほど不安定であったが、就任するまでそれに気づく者はほとんどいなかった。最初の数ヶ月で、彼はカペラとの和平を結び、膨張するドラコ連合に外交使節団を派遣し、惑星3つを恒星連邦に加えた。だがハネムーン期間は長く続かなかった。不機嫌になりやすいエティエンはトップに立つ重圧の中で症状を悪化させ始めた。怒りの噴出が逆上へと変わり、エティエンの矛先になった不幸なターゲットは怪我を負うか、殺されることさえあった。権力を継いでからわずか2年以内に、エティエンの気分の上下は判断力に危険なほどの影響与え、最高評議会は紛争を処理する裁判委員会を立ち上げた。紛争処理は大統領が管轄するはずのものだった。

 エティエンが個人の快楽に耽ったり、鬱状態に陥ったりするに連れて、日々の政務はダヴィオンの支配する官僚部門へと徐々に委譲されていった。最高評議会は大統領の狂気の下で事実上麻痺した。南十字星協定は、大統領が指名した代理人の認可なしで新しい業務を執行するのを禁止しており、エティエンが代理人を指名することはめったになかった。

 彼の乱行は最終的にひとつの反応を引き起こした。就任7年目の後半に、3つの暗殺計画が生まれた。3つ目が幼なじみで長年の親友であった人物によって実行に移され、誰も想像だにしなかった方法で成功した。いずれ誰か近い者が牙を剥くと知って病んでいたエティエンは、暗殺者になるはずだった者のダガーで自分を刺して死に至ったのである。

 エティエンの弟ポール、妹のマリーの下で、比較的平穏な20年間が続いた。だが、エティエンの双子の息子が権力の座についたときに、国はほとんど回復していなかったのである。2399年、エドムンド・ダヴィオンが恒星連邦の大統領になった。意志薄弱で憂鬱な彼は、野心的な母マリオン・マイケルズ=ダヴィオンと、双子の弟エドワードにたやすく操られた。マイケルズ=ダヴィオンは自ら政府の改革を推し進め、最高評議会の権限を奪い取り、大統領の権限を強化した。2410年に母が死ぬと、エドワードが双子の兄を説得し、自らの「改革」を遂行した。次の5年間、エドムンド・ダヴィオンは一連の法案を通過させ、ダヴィオン家を事実上法の外に置いた。名目上はそうなってなかったが、これが二人のダヴィオンを絶対君主にしたのである。

 エドムンドが2415年に死亡し、エドワードが名実ともに恒星連邦の統治者となった。野心を阻む者のないエドワードは恒星連邦を自分の私的な玩具とした。エドワードの気まぐれで、無意味な民間プロジェクト、新税、複雑な規制が大統領府から出された。さらに彼は、秘密警察のネットワークへの出資を増加させた。それはエドムンドが死ぬ前から始まっていたもので、エドワードが権力の座につくと大きく拡大された。骨抜きになった最高評議会は彼を止める手段を持たず、軍部は逆らわないことを選んだ。秘密警察を恐れていたことに加えて、FPF士官の多くがダヴィオン忠誠派だった――一部はエドワードに個人的な忠誠を誓っており、大半は他にふさわしい候補を見つけられなかった。後者は公然とした反乱が国家を混乱に陥らせるだけに終わるのを危惧した。そこで彼らは、唯一の後継者候補――エドワードのいとこ、サイモン・ダヴィオンが統治に必要な経験を積むのをひたすら待った。

 2417年までにエドワードは最高評議会に解散を促した。専制にうんざりしていた、議員数名が取り得る唯一の方法で彼を逃れようと決心した。彼らは最高評議会の慣習的な三ヶ月の休会中に恒星連邦から離脱する策謀、いわゆノーベンバー・コンスピラシーを組織した。陰謀家たちに忠誠を誓う部隊がニューアヴァロン星系を封鎖し、そのあいだ政治家たちが新しい秩序を宣言するのである。これが成功したら、恒星連邦は引き裂かれることになる。だが、陰謀家たちは計画を放り投げた。実行に移すわずか3日前に、サイモン・ダヴィオンがニューアヴァロンに帰還したのである。

 39歳で、立派な軍歴を持つサイモン・ダヴィオンは、長い間いとこエドワードの暗殺リストのターゲットに入っていた。エドワードは息子に後を継がせるため、すでに一人のダヴィオン継承者を斬っていた。サイモンも危険であったことから、エドワードは彼を殺そうとした。だが、とあるシンパの指揮官がサイモンに危機が迫っていることを警告し、よってサイモンはエドワードの手の届かないところで2年間慎重に身を潜めたのである。ニューアヴァロンへの帰還は計算されたギャンブルであった。不満を抱くFPF士官、惑星政府のあいだで静かに支持基盤を作ったサイモンは、ニューアヴァロンに上陸し、国民の熱狂的な歓迎を受けた。民衆と最高評議会から大きな支持を受けたことで、エドワードは最初の数時間でサイモンに対して動くのを妨げられた。翌朝の評議会までには、すべてが遅すぎたのである。

 次に起きたことが計画されていたのか、あるいは誰がそれを知っていたのかについて、歴史の記録は曖昧なままである。だが、誰が計画や時刻について知っていようと事実は変わらない。エドワード・ダヴィオンが議場に現れ、大統領護衛隊が横に並ぶと、サイモンは近くにいた護衛のホルスターから銃を抜き、エドワードに向けて5発撃った。死体が床に崩れ落ちると、サイモンは武器を投げ捨て、最高評議会の慈悲に身を委ねた。彼は裁判を求めて、判決に従うことを約束した。評議会は型どおりにサイモンを逮捕し、世紀の裁判を開始した。彼は民衆の英雄となった。破滅的な内戦を免れる唯一の手段として、暴君を殺した愛国者なのである。最終的な判決は正統的な殺人であった。純粋な動機……国全体の利益のため行動に出たことから執行猶予が付く。彼は国家を導いて、傷を癒やし、力を回復し、その過程で国を永遠に変えた。





サイモン・ダヴィオンと現代の恒星連邦 Simon Davion and the Modern Federated Suns

 エドワードが暗殺されて、混乱の数週間が過ぎた後、サイモン・ダヴィオンは待たなかった。エドワードの死で差し迫った分離の危機は免れたが、後には派閥主義が残された。年若い息子のアーサーを大統領に据えようとするエドワード支持者(仲間内から摂政を選ぶ)、同じく熱烈なサイモン支持者、ダヴィオンの権力を永遠に終わらせようとする最高評議会議員の間で、恒星連邦は危機の瀬戸際にあった。サイモンは自宅軟禁中の時間を使って洗練された政治的妥協案を考案した。それは中央集権と地方自治のバランスを新しいレベルで保ったものだった。

 サイモンの計画は、国家を5つの境界域(複数の星系からなる大規模な行政管区)に分割し、最高評議会は各惑星の公会になるというものだった。それまでは大統領が担当していた連邦全体の職務は、新しい5管区のひとつ南十字星境界域のリーダーに託される。管区のリーダーたちは本質的に平等であり、最高評議会は権力を監視する中央の権威となる。

 数週間が経ち、サイモンは評議員たちの中でかなりの支持を取り付けた。その大半は憎きエドワードが成敗されたことを喜んでいた。ドラマチックな裁判が事実上の無罪で終わるまでに、サイモンは妥協案を実現化するのに足る充分な数の味方を説得し終えていた。最高評議会の支持を受けて、サイモンは大統領制を廃止し、地方自治の連結化されたシステムを立ち上げ、それが最終的に現代の恒星連邦の世襲貴族制となった。最も高い権威を持つのが、カペラ境界域、地球境界域、ドラコ境界域、南十字星境界域、外縁境界域の君主(Prince)たちである。この下には人口規模によって定められた下位の区分があった……公爵、辺境伯、伯爵、男爵。その点から見ると、最高評議会は各惑星政府から選ばれた代表、任命された代表の集まりではなくなっていた。評議員たちは出身世界の文字通り統治者となり、公爵か侯爵の貴族称号を与えられる。評議会の主な権限は各種管区の貴族位任命を管理することであった。地域貴族の地位を剥奪することも可能で、境界域の君主であっても、ふさわしくないと判断されればそうなる。南十字星境界域の君主は、大統領の任務を引き継ぐことから、恒星連邦国王(First Prince)の称号を帯びる。

 サイモンは彼自身と一族が新しい政府で特別な役割を持つことをあえて強調しなかったが、最高議会が彼を南十字星境界域の君主に選んでも誰も驚かなかった。狂ったエティエンと息子たちに汚されたダヴィオンの家名は、その名に籠もった魔力を完全には失っておらず、そしてサイモンの輝かしい政治、軍事的な実績は疑念を払拭するのに充分だったのである。支持者たちは彼を2412年にアレス条約(文明的に戦争を遂行するための有名な規則)に署名した先見の明がある外交官として歓迎した。彼はまたカペラ国境戦役の経験者であり、叙勲と昇進を推薦されている。サイモンの手にある最後のカードは、皮肉にも、法廷に立つことになった殺人そのものであった。国家のために自身の生命と未来を危険にさらしたサイモンは、死んだ暴君の反対側に立っていることを自ら証明して見せたのである。こういった有利の組み合わせに対して、他の候補は国王になるチャンスを与えられなかった。2418年、サイモン・ダヴィオンは公式に新しい地位に昇格し、それから40年間恒星連邦に君臨するのである。

 サイモンの治世において、恒星連邦は地球帝国に軍事的敗北を喫するが、サイモン・ダヴィオンは祖国に最新鋭の戦争マシンをもたらし、それが直ちに領土と軍事的栄光を取り戻す原動力となった。2457年、サイモンはライラ共和国政府に莫大な支払いを行い、バトルメックの技術を取得した。それは2年前にライラが地球帝国から盗み取ったものであった。戦場の王で武装した恒星連邦は大きな挫折を味わうことなく、次の1世紀間にいくつかの軍事的勝利を重ね、そして星間連盟の創設が200年近くにわたり大規模な戦争を終わらせた。





国王と星間連盟 The Prince and the Star League

 次の偉大な恒星連邦指導者は、破滅的な内戦の後に権力を引き継ぎ、軍事に王座を支えられた。アレクサンダー・ダヴィオン国王は幼少期に統治を開始し、摂政の一人の虜囚として数ヶ月を過ごした。囚われの身から抜けだし、沼だらけの僻地惑星に身を潜め、ついには兵を起こして、王座を勝ち取った。長い治世を通して、アレクサンダーは崩壊した恒星連邦を再建し、軍事力をよみがえらせ、有利な立場から星間連盟へと導いた。

 2457年から2524年のあいだ、恒星連邦はカペラ大連邦国、ドラコ連合との小規模な国境戦争で勝利を収めた。もっと大きな脅威は2515年に地球帝国という形でやってきた。惑星ロビンソンへの襲撃が、地球境界域君主とその家族全員を抹殺したのである。才能豊かな軍事指導者として知られ、最高評議会から尊敬されているニコライ・ロストフ将軍が地球境界域の新たな君主として任命され、素晴らしい戦略により数年間帝国の進撃を足止めした。ロストフ将軍は、5歳で王座を継いだ幼い国王アレクサンダーの5人の摂政の一人でもあった。摂政内の2派閥の政治的な戦いが熾烈になっていたもののロストフの指揮能力と軍内での人気によってアレクサンダーの未成年期に恒星連邦が軍事的な失態を被ることはなかった。

 緊張は2523年に頂天に達し、摂政カサンドラ・ダヴィオンと夫のディヴィッド・ヴァーネイが17歳の国王を誘拐して、ヴァーネイの姪シンシアと結婚させた。ヴァーネイ一族の本拠地ニューシルティスで事実上の自宅軟禁に置かれたアレクサンダーと若き妻は脱出のプランを練った。そのあいだ残った摂政、ローラ・ダヴィオンが自分の計画を動かそうとしていた。「護衛」と称する降下船とバトルメックの支援を受けたローラは2524年にニューアヴァロンに上陸した。彼女はアレクサンダーが誘拐されたことを公表して最高評議会を驚かせ、ヴァーネイ家を国家の敵であると主張し、評議会の後援を受けて宣戦布告した。応じて、ヴァーネイはローラのニューアヴァロン占領を裏切りであると宣言し、新しい市民軍を結成して「反逆者」ダヴィオンの軍と国王の名において戦うと発表した。ディヴィッド・ヴァーネイは、アレクサンダーがとらわれの身になっているとの話を打ち消すために、カペラ境界域の世界(ヴァーネイ市民軍を立ち上げた地域)での周遊を慎重に計画した。アレクサンダーとシンシアはこの宣伝行為を利用して、ヴァーネイの手から逃れようと画策した。

 国王は僻地の惑星ナホーニで18ヶ月間身を隠し、その間にダヴィオン内戦の緒戦が彼の周囲で荒れ狂った。早い段階でロストフ将軍が戦死して正規軍の士気への打撃となり、ヴァーネイ派は素早くそれを利用した。2527年までに、序盤戦は膠着状態に陥った。同年、アレクサンダー国王は彼とダヴィオン家と国家を裏切った摂政たちに最初の一発をお見舞いした。ナホーニで彼は第1ニューアヴァロン竜機兵団と合流した。この軽装甲部隊は、故郷がローラ・ダヴィオンに支配されていたことから、名目上彼女に忠誠を誓っていた。紛争で死んだと両陣営が主張していた国王が姿を現すと、士気崩壊した竜機兵団は復活した。2週間後、ヴァーネイ市民軍の2個師団がナホーニに上陸すると、竜機兵団とアレクサンダーは熾烈なゲリラ戦を行い勝利を収めた――極めて長く続く内戦の中で最初の勝利であった。

 ダヴィオンの跡継ぎが登場したことで、両陣営の部隊いくつかが彼に加わった。こういった初期の重要な忠誠派にデミトリ・ロストフがいた。愛されていた故ロストフ将軍の才能豊かな息子である。デミトリ−が国王を選んだという話は南十字星境界域中に広まり、正規軍の部隊が続々とローラ・ダヴィオンから若き国王に鞍替えした。2528年までに、アレクサンダーは叔母を南十字星境界域から完全に追い出した。5年後、アレクサンダー軍はドラコ境界域の惑星タンクレディで残ったローラ・ダヴィオン派を撃破した。ローラは裁判にかけられるよりも自殺することを選び、アレクサンダーは残った敵カサンドラ・ダヴィオン=ヴァーネイに対する戦役を終わらせる余裕を与えられた。さらに4年に及ぶ熾烈な戦闘の後、2537年、アレクサンダーとデミトリ・ロストフはついにヴァーネイ軍を打ち負かした。カサンドラ・ヴァーネイはカペラ大連邦国に逃げ込み、それ以降消息不明であった。ダヴィオン内戦は終わった。いまアレクサンダーの仕事は平和を築くことであった。

 国王が最初にやったことのひとつが、最高評議会と境界域君主の権力を削減することだった。アレクサンダーの政府改革は、他の貴族が王座を脅かすに足る境界域単位の権力基盤を築き上げるのを妨害することで、国王を恒星連邦の最高統治者にした。アレクサンダーは力強い議論、説得、そして時折は渋る者たちに軍事行動をちらつかせることで、これらの動議とその他の権力統合案を強引に通した。国王も貴族たちも彼が軍事によって王座についたことを忘れておらず、軍は終生アレクサンダーに固い忠誠を誓ったのである。幸いにも、アレクサンダーが軍というカードを切るのを必要とされることはめったになかった。脅しは充分に足りており、国王は大きく増した政治的な力を崩壊した国家の再建に向けることが出来た。

 次の30年間、国王は恒星連邦軍を主として守勢に回し、そのあいだ経済の回復に集中した。繁栄のために必要な大衆の信頼を取り戻す一環として、言論の自由、集会の権利、抗議の権利など、民主的自由が市民の間で奨励された。軍事改革について、アレクサンダーは政府の刷新よりも慎重に事を進めた。概して、彼の改革は地域や惑星への忠誠を最小限にして、恒星連邦全体に結びつけるものであった。各世界は自前の部隊を立ち上げ、訓練し続けたが、アレクサンダーは外の世界との統合を強調し、そのような部隊のほとんどを出身世界ではない地域に配置した。加えて、彼は境界域の境界線を引き直し、数も5つから3つに減らした。さらに軍事機構の名称を変更して、国家への忠誠を強調するために、恒星連邦装甲軍(AFFS)と呼んだ。最も重要なことは、ダヴィオンの王位継承者が少なくとも5年間軍事部隊で勤務することを必須要素とし、ダヴィオン軍と政治的権力のつながりを強化したことである。

 2567年、恒星連邦は星間連盟に加盟し、戦場での最大のライバル、ドラコ連合をのぞいて最後に加盟した国となった。この軍事的国家にとって、説得材料となったのは、ドラコ連合が恒星連邦の世界に動いたら、星間連盟兵を使って先制攻撃を行うというイアン・キャメロンの約束であった。20年に及んだ再統合戦争(星間連盟初期に辺境と戦った)は恒星連邦の経済を完全に回復させた。戦時の好況によって、領地を寸土たりとも失うことなく、大規模な戦争が国家を繁栄させた最初の例となったのである。それは最後にもならなかった。





継承権戦争 Succession Wars

 星間連盟の時代、征服よりも植民が恒星連邦を大きく拡大させ、750の新しい世界が領土に加わった。星間連盟条約が大規模な戦争を禁止していたことから、恒星連邦の経済的水源は純粋な軍事生産からもっと広範囲な研究と開発へと徐々にシフトしていった。再統合戦争終結から星間連盟崩壊までに蓄えた専門技術は、来たるべき凶悪な戦争の数世紀に大きな利益となったのである。星間連盟時代で唯一の大規模な軍事交戦はダヴィオン継承戦争で、薄く引き延ばされたダヴィオン軍は無様な戦いぶりを見せ、星間連盟防衛軍(SLDF)が介入するまでにほとんど敗北していた。軍事力をプライドとするこの国にとって、敗北寸前だったことは特に屈辱的だった。リチャード・ダヴィオン国王は、2735年に準備法案を可決することで対応した。この名人芸的な法案は、軍需物資を備蓄し、即座に国中に展開可能な大規模な市民軍を作ることで、星間連盟加盟国に課された軍隊の戦力制限を慎重にすり抜けるものだった。

 16年後、第一君主サイモン・キャメロンが突然死亡すると、星間連盟は8歳の少年の手に残された。実際に統治するのは、連盟加入国それぞれの統治者からなる摂政評議会であった。君主たちは過去数十年の大部分を些細ないさかいや極秘の軍事力増強に費やしており、危機が起きるのは必然であった。それは2766年、辺境世界共和国のステファン・アマリスがリチャード・キャメロン第一君主を暗殺し、自らが星間連盟最高君主であると宣言するという形でやってきた。議会君主たちは簒奪者が打倒されるのを見たいという願望の下に団結したが、互いから身を守るのに集中しすぎて、SLDFに有効な軍事的援助を与えることが出来なかった。2779年にアレクサンドル・ケレンスキー将軍とSLDF兵たちがアマリス軍を下した時、彼らが守った星間連盟は名前だけの存在になり果てていた。議会君主たちは自軍を展開して好機を待った。それぞれが第一君主の称号と権力を得る最適な時を図っていたのである。

 ダヴィオン家と恒星連邦もまた例外ではなかった。キャメロン家は地球帝国を統治していた……アマリスの手で彼らが死ぬと帝国は指導者不在となり、各惑星は奪われるのを待っていた。かつての同僚たちと同じように、恒星連邦は地球近くの係争地でいくつかの惑星を争った。だが、星間連盟末期の経済的混乱は恒星連邦の軍事力を弱体化させていた。地域への忠誠心もまた平和だった星間連盟期に再び鎌首をもたげ、AFFSが統制の取れた戦闘部隊として活動する能力を抑えていた。タウン争奪戦で恒星連邦が大きな対価を支払ったのはこういった弱みがあったからである。タウンは恒星連邦と地球のあいだにあったので、極めて重要な世界だった。

 タウン守備のためにAFFSの2個部隊から分遣隊が派遣されたが、すぐにカペラ大連邦国とドラコ連合の襲撃部隊に直面した。どちらの敵と先に戦うのか決めかねたAFFS軍がうろたえる間に、両敵軍は軍事物資の貴重な出荷品とともに脱出した。数ヶ月後、より大規模なドラコ軍がタウンを強襲し、防衛側の混乱を利用して勝利を得た。援軍は惑星、駐屯部隊を救うのに遅すぎた。タウンはドラコ連合の手に落ち、AFFSは傷をなめるしかなかった。

 ジョン・ダヴィオンはこのような大敗をもう二度と繰り返さないという決意を固めた……それが近い将来だろうと遠い将来だろうと。彼も仲間の統治者たちも力が求められる時に妥協するタイプではなく、そして国王はこの先数十年に及ぶ戦闘――数世紀に及ぶ可能性もある――に国が直面していることを知っていた。切り抜けて勝利すると決断したジョン国王は即座に国家規模の軍事化プログラムに着手した。それはAFFSを強化し、恒星連邦を経済的低迷から抜け出させるという、両方の目的を持ったものだった。またも戦争は恒星連邦の救世主となった。その後の第三次までの継承権戦争を通して、恒星連邦は低迷する経済を回復させ、国内の不満を和らげる方法として、幾度も戦争に傾いた。そういった紛争のたび、国家は最終的に貧しくなり、打ちのめされていったのだが、次の戦争は一時的に困難を解消し、最終的な勝利という偽りの約束をしたのである。





同盟と征服 Alliance and Conquest

 最後の継承権戦争である第四次継承権戦争は、恒星連邦が戦争による好況と不況のサイクルから離れる起点となった。第三次継承権戦争までと違って、恒星連邦は強力な経済力と軍事力という立ち位置から第四次継承権戦争を開始した。ハンス・ダヴィオン国王とメリッサ・シュタイナー(ライラ共和国の次期国家主席)の結婚によって、2つの強大な国家が公式に同盟し、恒星連邦は成長するライラの経済にアクセス可能となった。だが、大戦と共に同盟が生まれたことは間違いであり、最終的に連邦=共和国の破滅に結びつくのである。

 ライラ国と恒星連邦は似たような理想を多く共有していたものの、両国の民主的伝統と重複する民族的遺伝子は不信感を和らげなかった。せいぜい彼らは互いを敵の中で重要じゃない方と見なす程度であった。中心領域の反対側に位置する二つの国は国境を接しておらず、争うことはめったになかった。だが、ライラ人は恒星連邦の軍事力を警戒の目で見ていた。同じく恒星連邦市民もライラの経済力を乗っ取りの手段なのではないかと恐れていた。ひとえに、連邦=共和国を生み出す条約にサインしたハンス・ダヴィオンとカトリーナ・シュタイナー国家主席の個人的カリスマが、平和的な同盟という大胆な実験に加わるよう両国民の大半を丸め込んだのである。だが、両国の相互不信の根底にある歴史と思想は顧みられることがなかった。それはいつ割れるともしれない亀裂として残ったのだ。

 ハンスとメリッサが結婚するその前にもう、新郎は野心的な計画を実行に移していた。カペラ大連邦国国境沿いでの軍事演習は、ハンスが必要としていた侵攻軍が配置につくための偽装になった。マクシミリアン・リャオ首相の指示が一貫性を失っていく中で、大連邦国は経済的・軍事的に不利な立場となっていた。ハンス国王にとって、700年の仇敵足るカペラを征服するチャンスはこのときをのぞいて他になかった。3028年に地球で執り行われた結婚式において、ハンスは新妻にカペラ大連邦国を贈ると宣言した。彼の言葉は大規模な進行の合図となり、恒星連邦兵がライラの資金援助を受けて急先鋒に立った。

 この戦争は、領土獲得という面で見事な成功を収めた。3030年に戦争が終わるまでに、恒星連邦=ライラ共和国の同盟軍はカペラ大連邦国の半分を占領し、同じくライラ部隊がドラコ連合の世界53個を奪っていた。だが、戦争を行い得たものを維持するためのコストに、ライラ人の多くが尻込みした。経済力を吸い取られたことに、軍事的に優れた恒星連邦部隊が主導権を取ったことが相まって、生まれたばかりの同盟に反対する者たちは、ライラの資金が無分別な「外国」軍の冒険に浪費されたと簡単に言い立てることが出来た。





氏族戦争とその後 Clan War and Aftermath

 もし戦いが第四次継承権戦争で終わっていたのなら、ふたつの国は古くさい不信感を克服できたかもしれない。3039年戦争(ダヴィオンが指揮したドラコ連合への失敗に終わった攻勢)は反対派にいくらかの燃料を注いだが、ライラが惑星を失うことはなく、経済に深刻な影響を与えることなく直ちに終結した。氏族戦争は別の問題であった。3049年から3052年にかけて行われた氏族の猛攻において、ライラ側が氏族の進撃路に直接位置していたのである。恐るべき侵略者を前に次々と世界が陥落するなか、恒星連邦ご自慢の軍事力は何もしていないかのように見えた。平均的なライラ人の見方では、両国と両軍を合併する上で、高名なダヴィオンの戦闘能力が手に入るのは良い点であるはずだった。だが、AFFCのダヴィオン部隊と指揮官たちは、ライラ領土への強襲を止めるにあたり、ライラ歩兵の不平と同じくらい役立たずであるように見えた。一部のライラ人たちは、ライラを犠牲にして恒星連邦を救うための陰謀だと影でささやき始めた。そうでない者たちも、ライラのリソースが大部分ダヴィオンの支配下にある無能な軍隊に流れ続けるのに憤慨した。

 一方、恒星連邦の市民たちはライラの経済支援を当然のものであると見なす傾向があった。最悪の場合、彼らはライラの貢献を「金だけ」とし、「我らが」戦う兵士たちの勇気と技量に比べると価値がないものとして扱った。ライラ人の兵士と士官たちが氏族前線で戦い死んでいったという事実は、都合良くカーペットの下に隠されて無視されたのである。自分たちを中心領域唯一の軍事超大国であると見るのになれていたダヴィオン市民たちは、成功したAFFCの戦役を自分たちのおかげであると見なし、失敗はライラの軍事的無能さのせいだと非難した。

 3052年に氏族戦争の最初の段階が終わるまでに、連合国家のうちライラ側はダヴィオン側よりも遙かに大きな被害を受けていた。ジェイドファルコン氏族が44のライラ世界を奪う一方で、恒星連邦は無傷なままであった。もうひとつの損害はライラの経済であった。大量の惑星が失われたことと、圧倒的に優れた敵と戦う純粋な費用によって、激しい咆吼だった経済が弱々しいささやきにまで鈍化したのである。ますます手に負えない超大国をまとめることが出来たのは、3052年にハンス・ダヴィオンが死んだ後、一人で両国の統治者となったメリッサ・シュタイナーが、ライラとダヴィオン市民たちの大半から計り知れない敬意を受け取っていたからであった。だが、3055年、国家主席=女王は公式の式典の場で暗殺者の爆弾に斃れた。メリッサが殺された後、連邦=共和国が解散するのは、時間の問題であった。

 ここで、ほとんどの人が誤解している専門的観点について指摘するべきであろう。両国の同盟条約は3032年に調印された。ライラとダヴィオンの経済は第四次継承権戦争の後に融合し始め、3042年に軍隊の合併が完了したものの、ハンス、メリッサの子供が玉座につくまで連邦=共和国は公式に存在しなかった。氏族侵攻までに、両国の市民の大半は自分を連邦=共和国の市民だと考えていた。だが、同盟条約の規定によれば、3055年にハンスとメリッサの長男、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンが国家主席=国王として母の後を継ぐまで、連邦=共和国は公式に誕生しなかったのである。

 外交官というより兵士であるヴィクターは、シュタイナーよりもダヴィオン的に見えた――執務の大半をニューアヴァロンで行うという彼の判断はこの見方を助長した。反連邦=共和国分子はこの状況を素早く利用した。ライアン・シュタイナー公爵率いるライラ分離主義運動、スカイア分離派は、シュタイナー=ダヴィオンの血統全体を打倒するために、次の2年間、噂をばら撒き、不和の種を蒔いた。彼らはヴィクターが母の死を企んだと非難し、ダヴィオンのルーツを強調して、尽きることのない野心を満たすためにライラ国を干上がらせる冷酷な軍事冒険主義者であるとレッテルを貼った。この効果的な中傷キャンペーンを受けて、ヴィクターは妹キャサリンをライラ側の摂政とし、連邦=共和国の協同統治者の地位に昇格させた。

 ライラ人民の中で人気があり、シュタイナーの背景を公に意識しているキャサリンは、素晴らしい選択であるかのように見えた。だが、ヴィクターへの忠誠心は、スキャンダル屋のしつこい猛攻の中ですでに失われ始めていた。あらゆる種類の告発から兄を守ろうとすることが、反ヴィクターの噂に油を注ぐだけに終わった。ライラ人たちは兄を守りすぎていると確信するようになったのである。

 3057年、自由世界同盟の病弱な後継者、ジョシュア・マーリックが死亡すると、緊張は最悪の状態にまで達した。3051年の氏族侵攻最盛期に、ハンス・ダヴィオン国王は高名なニューアヴァロン科学大学でジョシュアの白血病を治療すると約束し、トーマス・マーリック総帥から貴重な戦争物資を強要していた。ジョシュアの死はマーリックからの軍事的パイプラインを危機にさらした……自由世界同盟は氏族前線から遠く離れており、ヴィクターは総帥に対する唯一のカードを失うなどとても承服できなかったのである。彼はまたカペラのサン=ツー・リャオ首相(残った唯一のマーリック後継者と婚約していた)が、2つの国で権力を握り、中心領域を壊滅的な内戦に陥らせるのではないかと恐怖していた。運命的な思慮に欠ける決断を下したヴィクターはジョシュアを影武者にすり替えた。トーマス・マーリックは数ヶ月後にこの欺瞞を知り、連邦=共和国を攻撃することで応じた。自由世界同盟兵が連邦=共和国のサーナ境界域に侵入すると、キャサリンは公にヴィクターを批判し、ライラの中立を宣言した。それからわずか数日後、彼女はライラの連邦=共和国からの独立を宣言し、ライラ同盟と改名した。

 ダヴィオン市民の大半は国王に従い、分裂を認めるのを拒否した。だが、キャサリンの行動は、ライラが信用出来ないという長年の疑念を目覚めさせた。恒星連邦を拠点とする企業は、ライラのビジネスパートナーとの接触を大きく減らされてしまった。AFFC部隊のライラ兵士たちは、恒星連邦の兵士と指揮官から忠誠心を疑われた。連邦=共和国の最盛期に恒星連邦側に移住したライラの一般人は新たな故郷で敵国人となった。後者の多くがライラ宙域に戻り、彼らが受けた差別の話は両陣営の関係を悪化させるのみであった。カトリーナ国家主席が3061年に連邦=共和国全体の権力を握ると、恒星連邦側市民の多くが静かに反抗を始めた。市民の抗議活動は迅速に鎮圧されたものの、頻度と勢いを増していった。ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンが氏族宙域から勝者として帰還し、コムスターの新しい軍司教として任命されたことは、連邦=共和国宙域中のダヴィオン忠誠派を活気づけた。そのあいだ、キャサリンは締め付けを強め、内戦はほとんど避けられぬものとなった。

 3062年12月、かつて大国だった両派のあいだで沸き立つ摩擦はついに沸騰したのである。その触媒になったのは、アーサー・シュタイナー=ダヴィオン公爵が殺されたことで、キャサリン国家主席の共謀を示す不穏な証拠があった。この戦いは初期段階にあり、結果を予測するのは時期尚早だろう。だが確かなことがひとつある。どちらの側が勝利しようとも、亀裂を癒やすのには全精力を傾ける必要があるだろう。そうしなければ、連邦=共和国という短命の統一は永遠に消え去ることになる――それとともに、中心領域が平和に共存することを学ぶという最大の希望も潰えてしまうのだ。





恒星連邦の社会 Federated Suns Society

 恒星連邦の社会は常に、中央集権化された軍事・政治権力と、大切である人民の自由の微妙なバランスを反映するものであった。平均的な恒星連邦市民はそれなりに裕福であるかそうなる可能性がある……彼らは快適なのを、憲法上の自由と強力な軍隊のおかげだと考えている。だが、自由は平等を保障するものではない。特に大量の資源が軍事活動に注がれているときはなおさらだ。現在の内戦は、こういった社会的緊張を悪化させ、日常生活のほとんどあらゆる側面に影響を及ぼしている。





軍の名声 Prominence of the Military

 AFFSが文字通りに恒星連邦を支配しているわけではないのだが、軍隊は24世紀半ばのチャールズ・ダヴィオンが大統領だった時代からダヴィオン家と密接な関係があった。歴史上最も偉大なリーダーとされるアレクサンダー・ダヴィオン国王は、事実上の軍事クーデターによって権力の座につき、このつながりを強めた。玉座を得たのは確固とした法的に根拠に基づいていたものの、軍の強い支援がなければそれを実現できなかっただろう。熾烈な内戦を終わらせたことに感謝した当時の大衆たちは、平和をもたらしたアレクサンダーと軍隊を崇拝したのである。軍隊に対するほとんど崇敬といえるものは、最高位の貴族から労働者階級まで恒星連邦の市民全体に現在まで続くものである。

 中心領域中で尊重されている職業、軍人は恒星連邦において間違いなく魅力的な職業である。まだ尻の青いブートキャンプに入りたての新米でも、志願書にサインしたそのときから栄光を感じている。驚くべきことではないが、AFFSの隊員は兵役に大いなる誇りを持っている。戦争という栄誉ある大事業に参加するチャンスを得られることから、つらい訓練、正規部隊での困難な任務があっても、新兵を確保出来るのである。このように軍隊に対して広い敬愛があることから、ほとんどすべての世界のあらゆる階層から、AFFSに引きも切らず情熱的な新兵たちがやってくる。恒星連邦のほとんどの家庭で、少なくとも一人は訓練中か現役中であり、軍隊に不相応な資源が注ぎ込まれることに文句を言う市民はほとんどいない。公的教育は、恒星連邦史上の軍事的勝利を強調し、親軍隊的な見方を助長している。ほとんどすべての市民が、カペラ大連邦国かドラコ連合に対する勝利いくつかについて何も見ずに語ることが出来るだろう。まるで当人が実際に参加したかのように誇り高く思い出すのである。

 「我らが戦う男女」に対する高い評価は、軍内の全部署にかかってくるものであるが、一部は他よりもさらに魅力的なものとなっている。ほとんどすべての中心領域国家でメック戦士と気圏戦闘機パイロットが高い地位を占め、他は忘れ去られる。恒星連邦においては、歩兵と戦車指揮官たちもまた同じ立場を得られる。たいていは下位に置かれるこういった職務が大きな威信を得ているのは、革新的な諸兵科連合部隊、連隊戦闘団(RCT)が幅広く使われているところから来ている。連隊戦闘団というものは現代より前に存在していたが、AFFSで広く導入されるようになったのは、第二次継承権戦争以降である。戦場で冷酷なまでに効率的なRCTは現代のAFFSの屋台骨となっている。市民の大半はこれをいくらか理解しており、軍服を着ている者は誰でも大きな敬意を払う価値があると見なしている。ただし、同じように尊敬するわけではない。かつて南十字星部隊のある士官が言ったように、「歩兵なら誰でもニューアヴァロンのバーに入って、ただで一杯飲める。メック乗りと飛行機乗りは一晩中勘定がただになる。第1カシル槍機兵隊みたいな部隊に所属していたら、おそらく生涯ただになる。悪くないボーナスじゃないか?」

 恒星連邦がその装甲軍に誇りを抱くが故に、軍隊の規模自体が問題を引き起こしている。大規模で、訓練が行き届き、装備の優れた戦力を維持するには金がかかり、莫大な工業的資源を必要とする。合金、装甲、兵器、燃料に必要な、税金、生産能力、金属、鉱物、化学物質はすべて、まず軍需に回される。社会は残ったもので生きていく。ニューアヴァロンや各境界域主星のような金のある大都会、あるいは農業に収入を依存しているマローリーズワールドのような惑星は、軍への資金と資源の集中による影響はほとんどない。同じく、工業惑星や資源豊富な世界もほとんど被害がなく、貪欲な軍需によって多大な利益を受けていることが多いくらいだ。だが、そうでない惑星は多くを奪われて苦しんでいる。軍に注意が払われることで民間への投資が犠牲になり、こういった世界の貧困と苦難が放置されるのである。

 バランスが取れてない明白な例は、今世紀の初頭に教育省が創設したいわゆる「バガボンドスクール」の末路である。移動教室として改造された老朽航宙艦は、貧しいアウトバック管区などで僻地世界を移動し、人々にはじめて基礎教育を施した。だが、資金を欠いていたことから、ハンス・ダヴィオン国王がバガボンドプログラムを拡大するのは不可能であった。第四次継承権戦争と氏族侵攻のあいだの戦間期に、予算増額が約束されたものの、氏族戦争で戦費が高騰したことから、「辺境の浪費」の全予算が吸収されてしまったのである。バガボンドスクールは3050年全面閉鎖に追い込まれ、航宙艦は軍の輸送用に徴発されるか、部品取りのためにスクラップにされた。しかしながら、ヴィクターは3055年に玉座を継いだあと、プログラムを再始動した。3057年に再び凍結されてしまったものの、最近新たに再開された(数十年前の規模にはほぼ遠いが)。

 ただ毎日を生き抜くしかない持たざる者たちの苦労と憤慨は、裕福な同胞たちからほとんど見えなくなっている。繁栄と個人の自由を胸に秘める平均的な市民たちの大半は、貧しいものたちと共に歩いていると信じている。従って、真に貧しい人々は自由を愛する世界にどうあっても存在することが出来ない――もしいても、貧しいのは彼らの責任に違いない。民衆の大半にとって、問題の根源である巨大な軍隊を非難するなど思いも寄らないことである。そのような可能性を認めることは、恒星連邦の社会における装甲軍の特権的な立場について再考することを意味するかもしれず、そうすることは最終的に国家の基礎を揺るがすものになろう。

 持たざる者の多くは政治的に洗練されておらず、このような見解を支持している。多くの場合、彼らはこの国に住むことに誇りを持っており、とある女性が言ったように「時々は大変になることもあるかもしれないけど、少なくともあたしゃ奴隷じゃあないね」なのである。彼らはドラコ連合やカペラ大連合国の下層階級を証拠として上げて、自分たちが大変であるもののそれでもなおうらやましがられる立場にあることを指摘する。真夜中にドアをノックされる恐怖におびえることも、指導者たちの事実上の資産にされることもないのである。なにより重要なのは、社会のどん底にずっといる必要がないということだ。自分や子供たちの生活が改善されることに何らかの希望を抱く人たちは、軍の栄光や統治者の何気ない怠慢に憤慨することはない。そうでない者たちは反対派になる……のだが、反対派でさえも大半は日々を生きるのに力を使いすぎて、暴動のためにエネルギーを集めることが出来ないのである。

 暮らし向きの良い者たちから貧者の苦境を見なくさせる自己満足は、軍隊の優越的な立場と組み合わされたときに、危険なまでの傲慢さを生み出してしまう。民主的な伝統に正統な誇りを抱いている恒星連邦は、それを強引に広めることに躊躇しないことがよくある。そのような征服は常に歓迎されるわけではない。地元民の抵抗は常に締め付けにつながる。解放されたことに感謝しない「洗脳された」住人たちに対する恒星連邦当局の困惑した怒りは、その一因でもあるのだ。締め付けはさらなる抵抗を呼び、そう長くないうちに占領された惑星は、征服を正当化する自由の希望をすべて失うかもしれない。だが、この皮肉を理解する恒星連邦市民はほとんどいない。大衆の大半にとって、自由に生きるのを可能とする力を持った軍隊が間違いを犯すなど、思いも寄らないことなのだ。





大衆の権利と貴族の統治者 Common Rights and Noble Rulers

 他の継承国家と同じように、貴族制が恒星連邦を本質的に支配している。広大に広がる領土を治めるのは理論的に困難なことから、真に民主的なシステムは不可能である。恒星連邦の初期のリーダーたちが気づいたように、人民による政府の取り散らかったプロセスは恒星間のスケールでは単純に機能しないのだ。だが、ニューアヴァロンの平等主義的伝統は、故郷として統治するダヴィオン一族の心に深く残っている。その結果、恒星連邦政府は民主主義という理想を完全に捨て去ることはなかった。

 統治される側の同意による政府という考え方は、感情的な理由だけでなく実際的な理由からも、生き残った重要な概念である。わずかな例外を除き、過去最も独裁的な国王でさえも、民のための適切な統治が平和を促進し、満足させることを認識している。権力の乱用は、遅かれ早かれ反乱につながり、国庫への収入が奪われ、費用のかかる軍事介入の必要を作り出してしまう。こういった問題を回避して、国家の長期にわたる健全性を保証するため、恒星連邦の憲法とコモン・ローには、無能だったり腐敗した支配者を大衆が退位させるふたつの仕組みが組み込まれている……請願と直接行動の権利である。

 請願の権利は、惑星の市民が惑星侯爵や公爵の前に、まず地元の男爵や伯爵(ダヴィオンの貴族位で最下級)に不満を申し立てるものである。2634年にアレクサンダー・ダヴィオン国王が制定した貴族品行評定法は、申し立てに基づいて惑星当局が調査を行うことを義務づけている。それから公爵、侯爵が問題になっている貴族の運命を決めるのだ。たいていの場合、近親の後継者と交代させられる。一族全体に嫌疑がかかってるケースでは、一族の称号が剥奪される可能性がある。批判者を黙らせようとする貴族は、譴責処分から直接的な軍事行動まで、中央政府が地元民に変わって処罰を行う。国王と大臣たちはまっとうな統治で平和を維持できない貴族たちに冷たい目を向けており、悪い統治者に対する民衆の反乱の後押しをためらったりはしない。有名な介入の例としては、2701年、タンクレディのドンヴィエ・ロッシーニ伯爵が自らの都市国家の法務省ビルを破壊し、批判者たちを処刑した。その後すぐに、伯爵を逮捕するためエリート部隊がタンクレディに到着した。ロッシーニ伯爵はすべての容疑で有罪になり、都市国家の中央広場で斬首された。

 直接行動は恒星連邦の憲法には存在しないが、不文法であるコモン・ローの一部として受け入れられている。たいていストライキか暴動の形で現れる直接行動は、請願の権利が失敗した際に実行に移される。ストライキは絶望的なほうではないが、もし抗議活動が暴力に発展したら、上位の当局に軍事的占領されるリスクを背負っている。公然とした暴動は、装備の優れた兵士たちがやってくるのを事実上確実にしている。到着した軍政官が惑星の統治貴族の首をすげ替え、国家の平和を脅かしたとして暴動の両陣営に重い刑罰を与えることになる。





六つの自由 The Six Liberties

 支配階級の権力もまた限界を持っている――個人の自由を保障していることは、平均的市民が世襲貴族の指導に満足しているのを説明するいくらかの助けとなるだろう。恒星連邦の憲法は以下の六つの自由を定めている。個人の自由の権利、公正な取り扱い、プライバシー権、財産の所有、武器の所有、惑星政府に参加する権利である。最後の権利については、政府によって大きな違いがある。ニューアヴァロン式の議会制民主主義から、ノヴァヤゼムリャなどゼニアのコミューンで行われてる旧ロシア式の共産主義システムまで様々である。こういった「文民政府」は、惑星貴族の統治力とつながっているが、別のものである。理論的には、惑星を統治する公爵や、大陸や州を統治する伯爵・男爵は、文民当局による決定を覆すことができる。だが、正当な理由なしにあまりに多くそうすると、平和的な請願やもっと穏やかでない手段によって退位させられることになるのだ。

 六つの自由は恒星連邦の市民に無限の意欲と熱意の大半を与えている。それは、国境襲撃から商業ベンチャー、市民団体、芸術の祭典に至るまで、何にでも向かうのだ。自らの行く末を選ぶ自由は、やることすべてに自信を与える――正しいという感覚は祝福と呪いの両方になるのだ。自由への誇りは、連邦=共和国を生み出した同盟のように、大胆な動きを可能にする。カペラ大連邦国やドラコ連合などの伝統に縛られた社会は、40年未満のものであっても、同盟のような関係を築くことが出来ないであろう。自由な選択になれている人々だけが、何世紀にもわたる陰謀と紛争の重みに逆らって、戦争よりも平和を選ぶという考えに思い至るのだ。

 しかし、この国ではよくあることだが、自由に対する各個人の姿勢は、それぞれの状況によって大きく異なるかもしれない。発展した世界では、憲法上の権利に大きなプライドを抱く可能性が高そうだ。こういう人たちは、驚くべきことではないが、権利を行使する機会が多いのだ。それほど裕福でない世界や、貧民の多い地域など希望の失われているところでは、六つの自由は見当違いになりがちである。何も買えないほど金がないのであれば、財産所有の権利は無意味だ。公正な取り扱い、個人の自由などの権利は、どん底の市民たちが法廷で自分を守る余裕がないことから、意のままに踏みにじられることがよくある。だが、最貧の市民たちでさえも、ある程度のプライドを残している。多くが権利に心地よさを感じている――人生は崩壊しているかもしれないが、少なくとも自由がある。自由がどこまでを意味するかは避けた方がいい質問である。

 恒星連邦のあまりに多くの人たちにとって、民主的伝統に対するプライドは、たやすく醜悪なものとなり得る。平均的な市民たちは、祖国が人類宇宙で唯一の真に自由な空間であり、従って他の国より優れていると思っている。一部はこの正義を先に進めて、必要なら何をしても恒星連邦の啓蒙を広げていく義務があると信じている。正気な人であれば、選択肢を与えられたら恒星連邦人と同じように生きていくだろうと本気で信じ込んでいるのだ。違った暮らしをしている星間国家に直面すると、彼らは無知であると同情するか、「よりよい」生活を意図的に拒絶したことで軽蔑する傾向がある。このような態度は、恒星連邦社会で蔓延する親軍隊的な心情を強化し、戦争という醜怪になりやすい事業を、明白な運命の表現に変えてしまうのだ。小さいスケールの話では、独善と自己満足に浸る者は外部の友人を作ることがほとんど出来ない。有名な恒星連邦の傲慢さは、最終的にライラの分離に結びつき、現在の戦闘が終わった後で連邦=共和国を再建する大きな障害になる可能性がある。





連邦共和国内戦 The FedCom Civil War

 始まってわずか3ヶ月のこの紛争は、すでに恒星連邦の日々の暮らしに影響を与えはじめている。最近キャサリン国家主席が権力の座についたことで混乱に突き落とされた惑星駐屯部隊と地元政府は、激しく対立する派閥に分裂している。最初に出てきた大雑把な証拠は、アーサー・シュタイナー=ダヴィオン公爵を殺した犯人をドラコ連合としたかに見えた。その他の証拠はキャサリンの関与を指し示した。前者を信じる者は、キャサリンを支持し始めている……おそらくはヴィクター派よりも熱心に。後者の見方を信じる者は、キャサリンをダヴィオン家に対する裏切り者とみる。彼らの多くは、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンを(連邦=共和国全体でないとしても)恒星連邦の正統な統治者として支持するのをやめたりはしなかった。キャサリンが連邦=共和国の玉座を簒奪し、権力を維持するため意図的に連邦=共和国を引き裂いたことは、ヴィクター自身が不本意ながら気がついたように、キャサリン・シュタイナー=ダヴィオンが国家の指導者としてふさわしくないとヴィクターの支持者たちに証明したのである。

 妹を廃位させる必要があるとついにヴィクターが受け入れたことで、支持者たちは彼に代わって行動に移る自由を得た。アーサー公爵の死からわずか数日後、いくつかの世界で親ヴィクター派と親キャサリン派のAFFC部隊の戦闘が勃発した。そうならなかった惑星でも平和は不安定さを増しつつある。民衆、民間政府の指導者たち、支配貴族たちは、親キャサリン派のパルチザン、親ヴィクター派、単純に争いを治めたいと望む者の不安定な混合物となっている。デモ活動は頻繁かつ激しいもので、反対派閥の政府による取り締まりをさらに厳しいものとしている。多くの世界での緊張した空気は投資を混乱させるリスクをはらみ、もしかすると数百万の仕事を失わせ、不安に火を注ぐ可能性がある。民衆の教育水準が低く、使える資源のないアウトバック地区の一部はすでにリスクが高いと考えられており、連邦=共和国同盟の短すぎる好況期にどうにか引きつけたわずかな投資を失ってしまっている。

 個人のスケールでは、迫り来る戦争がパニック的行動と激しい反抗のブレンドを生み出している。軍事行動のない惑星でさえ、買いだめは一般的である。戦争の発生している地域では、交戦中の軍事部隊はたいてい大規模な民間付随被害を避けようとしている。だが、軍事基地と生産施設への激しい攻撃によって、地元経済が打撃を受け、一度の戦闘で数千の民間人が食い扶持を失っているのである。戦闘の起きない世界の市民たちは、遙か昔の地球の世界大戦と同じように、互いを本気で励まし合っている……この紛争はイースターまでに終わる、夏までに終わる、雨期までに終わる。戦闘で傷ついた民間人たちは悲観的な見方をしている。一部の人たちはまだ平和な近くの惑星に逃げている……そうできない人たちは最終的に誰が勝つかに関係なく、それまで持ちこたえると悲壮な決意を固めている。

 国境に近い境界域の市民たちは、特に緊張感を持ち、内戦に加えて隣国からの攻撃があることを恐れている。理論上、ホイッティング協定で再興した星間連盟は、かつての敵国が連邦=共和国の内乱を利用することを禁止しているはずである。だが、実際には星間連盟はまだ新しく、対立は古いのである。人民の多くにとって、カペラ、自由世界同盟、ドラコ連合が現在の混乱を利用して連邦=共和国の国境世界への日和見主義的な侵攻を仕掛けることはないと信じるのは難しい。この8月に連合がリヨン・サムを併合したのを証拠としてすでに侵略は始まっていると信じるものたちもいるくらいだ。

 ドラコ連合国境のドラコ境界域は爆発するのを待っている火薬庫である。この地域の統治者、サンドヴァル公爵は、現在、キャサリンの陣営におり、ヴィクターがドラコ連合と関係を持っていたことから、キャサリンを支持するのが自領にとって最大の利益になると信じるに至った。歴史と地位が渾然となって、この地域は反連合感情の温床となっている……連合が人気のあるアーサー公爵を公の場で殺したとされていることで、悪感情はやっかいなレベルにまで達している。すでにドラコ境界域のアジア系住民は増加する暴力犯罪の被害者となっている。反日本的な落書きがほとんどすべてのアジア人地区に見られる一方、暴力的な若者のごろつき集団がスシバーの窓をたたき割り、中華料理店に放火している(暴力的な偏見を持つ者たちにとってアジア人はみな同じなのだ)。境界域主星のロビンソンでは、一連の凶悪な殴打事件によって、これまでのところ日本人3名、中国人の老人1名、韓国人の若い女性2名が病院に担ぎ込まれている。サンドヴァル家は落ち着くように呼びかけているものの、ドラコ境界域は2790年代に発生したのに似ている反アジア虐殺の瀬戸際にある。それはドラコ連合兵がケンタレスIVの民間人たちを大量殺戮した後で暴力が爆発したものである。第二の波が沖にまで迫っているか、それが深刻なものになるかどうかは、サンドヴァル一族がドラコ連合に対する憎しみを克服し、怒り狂う緊張を緩和できるかどうかにかかっている。実際のところは、公爵と一族は反連合感情を持つことで知られているので、落ち着くようにという呼びかけはすべて意味の薄いものになっている。















恒星連邦 3075 Federated Suns


指導者: イボンヌ・シュタイナー=ダヴィオン女王摂政
政府: 立憲貴族制(西洋型封建主義)
首都、主星: ニューアヴァロン・シティ、ニューアヴァロン
主要言語: 英語(公用語)、フランス語、ドイツ語
主要宗教: キリスト教(カソリック)、仏教、ユダヤ教
居住星系: 432
創世年: 2317年
通貨: ポンド


 戦争を賛美する国とみられているダヴィオン家の恒星連邦は、中心領域で最も有能な軍隊のひとつを持ち、その国王は中心領域で最も力を持つ統治者のひとりとされる。地球の西欧からの移住者と支配者を主とする恒星連邦は、イングランド、フランス風の貴族システムを採用しており、何よりも個人の自由と法の支配を理想にすると公言している。

 ダヴィオン家の怨敵は、隣人たるリャオ家のカペラ大連邦国と、クリタ家のドラコ連合だ。第四次継承権戦争の間、恒星連邦はシュタイナー家のライラ共和国と合併し、連邦=共和国を作り出した。この連合国家の下で、ダヴィオン家とシュタイナー家はカペラ大連邦国の半分を征服し、3039年戦争ではクリタ家の力に挑戦した。だが、結局のところ、この同盟は3060年代の連邦共和国内戦で分断された。いまやワード・オブ・ブレイクと聖戦に脅かされている恒星連邦は、再び旧敵と肩を並べ、共通の脅威に対して団結した。

 恒星連邦は個人の自由と商業に関しては極めてリベラルであり、自由市場経済で市民が利益追求するのを許している。軍事的には諸兵科連合戦、戦略的主導権を好み、力尽くや残虐さよりも兵站と機動に価値を置く。




イボンヌ・シュタイナー=ダヴィオン Yvonne Steiner-Davion
称号/階級: 恒星連邦摂政、3067年〜
生年: 3039年(3075年時点で36歳)

 連邦共和国内戦終結後に再び摂政として任命されたイボンヌは、10年以上前には信じられなかったほどの力強さで、聖戦の炎に晒された国を見届けた。ニューアヴァロンがブレイク派に占領された際には主星と切り離されたものの、イボンヌと夫のタンクレッド・サンドヴァル公爵はニューアヴァロンを奪還するその日まで隠れた場所から恒星連邦の抵抗活動を統制したのである。以来、彼女は国家の未来のため新たなスローガンを採択した……二度と繰り返さない。

 国王になるのに必要な兵役を満たしていないイボンヌは息子に譲るためダヴィオンの玉座を守っている。




第2ダヴィオン近衛隊 Second Davion Guards

 ニューアヴァロン包囲戦は、誇り高きダヴィオン旅団を終わらせかけ、2個部隊が完全に潰滅し、残った3個部隊も撃破された。

 第2ダヴィオン近衛隊はニューアヴァロン包囲戦には参加していなかったが、ワード・オブ・ブレイクを憎む理由があった。アンゴルの凍り付いた大地で繰り広げられた6ヶ月の熾烈な戦役で、第2近衛隊はついにブレイク派侵略軍に世界を譲ることを余儀なくされたのである。第2は遠くまで移動しなかった――元指揮官ウィリアム・コサックス海軍大将の遺産である大規模な航空宇宙戦力を用いる彼らは、戦力低下した部隊が完全な機動力を持てるように追加の輸送手段を徴発した。HPGでの通信を避けて、信頼性は劣るが安全なファクス技術を使った第2は、ニューアヴァロンが包囲されていた数年間にわたって、高い機動性を保ち、ワードを繰り返し攻撃した。つい最近、部隊は休息と補修のために後退し、ダヴィオン重近衛隊が妨害攻撃の役割を引き継いだ。


南十字星部隊 Crucis Lancers

 ケレンスキーのエグゾダスの際に残った元SLDF兵士で作られた南十字星部隊は、南十字星境界域の行政地区ごとに1個RCTを持っていた。連邦共和国内戦ではじめて、南十字星部隊1個RCTが完全に現役を解かれ、聖戦によって再建計画が台無しになったのみならず旅団の戦力がさらに低下した。

 恒星連邦の敵たちから損害を被ったにも関わらず、彼らは女王摂政の新たな防衛政策を強力に後押しし、南十字星境界域の防衛予算増加を扇動し、境界域中で数多の支援・救援任務に参加した。


第22アヴァロン装甲機兵隊 Twenty-second Avalon Hussars

 連邦共和国内戦中に、派閥で割れたアヴァロン装甲機兵隊旅団は、聖戦の出だしに大きな損害を被った。指揮官のウィリアム・ウォーターズ上級元帥がニューアヴァロンに閉じ込められたことで、旅団は団結と方向性を失い、生き残った部隊は麻痺状態に陥った。第20装甲機兵隊のみが大規模な攻勢作戦に参加し、カペラ大連邦国の逆襲で広範囲な損害を被った。生存者たちは最終的に第22に編入された。




ジャガーメック JagerMech
タイプ: JM6-S JagerMech
導入: 2774年
ソース: TRO3039

 ダヴィオン家は長年にわたってオートキャノンを好み、おそらくジャガーメックをおいてそれを体現するメックは他にないだろう。砲塔式の両腕にミドロンC型、D型キャノンを装備したジャガーメックは、地上・空中の敵に砲弾の雨を浴びせる。この重兵器は設計士に装甲量を減らすことを余儀なくさせた。ジャガーメックは友軍の支援を専門とすることから、それは概して大した問題にならない。

 ウルトラオートキャノン、ロータリーオートキャノン、ガウスライフル、新型ターゲティングコンピュータによる近年の改修型は、この由緒あるバトルメックがダヴィオン家の軍隊に籍を置き続けることを保証した。


ディヴァステイター Devastator
タイプ: DV-2 Devastator
導入: 3048年
ソース: TRO3058U

 元々は星間連盟の設計であるディヴァステイターは大量生産されたことがなかった。3040年代に先進技術が再発見されたことで、ダヴィオンのエンジニアたちは設計図のほこりを払い、ディヴァステイターの生産を開始することが可能になった。

 これまで戦場を闊歩した最大のメックたちと同じように、ディヴァステイターはガウスライフル2門と荷電粒子砲2門を組み合わせて遠距離の弾幕を大量にばらまき、生き残ったものがいたら小型のレーザー砲群でとどめを刺すのである。ダヴィオン強襲部隊の多くで中心となっているディヴァステイターは、汗をかくこともなく1機で小型メック小隊を丸ごと片付けるのである。


マンティコア Manticore
タイプ: マンティコア重戦車
導入: 2668年
ソース: TRO:3039

 この由緒ある戦車は数世紀にわたる歴史を持ち、数多の軍隊において前線の主力戦車であり続けてきた。粒子砲1門と10連LRMを組み合わせるマンティコアは、遠距離から敵を激しく叩き、中口径1門と6連SRMにスイッチして駄目押しする。マンティコアはけして高速ではないが、様々な射程で攻撃可能かつ頑丈な装甲を持っていることから、多くのメックにとって非常に深刻な脅威であることを証明している。マンティコアはダヴィオンの戦車部隊で好まれており、持たないRCTはほとんどない。最近行われたアップグレードは、重PPCを載せただけである。


インフィルトレーター Mk. II Infiltrator Mk. II
タイプ: インフィルトレーター Mk. II "ピューマ"
導入: 3060年
ソース: TRO: 3058U

 恒星連邦最初のバトルアーマー・スーツであるインフィルトレーターの後継機として開発されたマークIIは、旧式機と似ている点がほとんどない。ステルス装甲、相当なジャンプ能力、腕に優秀なマグショット・ガウスライフル1門を持つマークII(ピューマの名でも知られる)は、同クラスの機体と比べるといささか装甲が薄くなっている。幸いなことに、マグショットの射程とステルスシステムを組み合わせると、他のスーツによる反撃は難しくなっている。その結果、AFFSのRCTと特殊部隊チームの大半がインフィルトレーターMk.IIを採用している。


スパローホーク Sparrowhawk
タイプ: SPR-8H スパローホーク
導入: 2906年
ソース: TRO3039

 ダヴィオン家が空から攻撃する際、この小型だが珍しい形状の戦闘機を使うのがいつものことである。優美なフレームの先端に中口径レーザー砲塔を持つスパローホークは、素早く動いてエネルギー兵器で目標を叩き、対空砲火を受ける前に高速で爆撃する。加速力があることから、指揮官たちはスパローホークを緊急防衛出動機として用いるのを好む。小型機なのだが、スパローホークは驚くほどタフで、他の軽戦闘機では不可能なほどの打撃に耐えることが出来る。30世紀初頭に登場して以来、人気のある当機は、継承権戦争で工場が破壊されて以降、恒星連邦の外では珍しいものとなっている。




ゼネラルモータース General Motors

 事業の多角化は破滅的な損害を防ぐ盾になると証明されており、ゼネラルモータースは巨大な事業規模でそれに反論する一方、聖戦により広範囲な打撃を受けている。ブレイク保護領にアディックスを奪われ、ギャラックスが化学兵器に襲われ、ニューヴァレンシアへの攻撃が繰り返され、タルコットとワウナキーへの懲罰的攻撃を受けたなら、どんな企業であろうときりもみ降下することは避けられないであろう。カシルでメック工場がほぼ完全に破壊され、周囲の通常工場に大きな被害が及び、軌道上の造船所が破壊されたことは、さらなる打撃となった。ゼネラルモータースは解散の瀬戸際にあるが、強力な経営陣を持ち、戦争資材の強い需要があることで、操業を続けている。


アケルナル・バトルメックス Achernar BattleMechs

 アケルナル社が生き延びたのは、ひとえに故ジャクソン・ダヴィオンの飛び抜けた(厳格な、と呼ぶ者もいる)先見の明によるものである。ブレイク派による強襲の開幕砲撃で、アヴァロンシティの工業地区とアケルナルの主バトルメック工場は燻る瓦礫と化し、最高司令官ジャクソン・ダヴィオンはアケルナル社を戒厳令に置いた。

 ニューアヴァロンがブレイク派の占領から解放されると、アケルナルは隠れ家から素早く出てきた。政府の許可を受けて、アケルナルはコリアン・エンタープライズと提携し、六ヶ月以内にアルビオン・テクノロジーズの地下工場からリージョネア・バトルメックの最初の限定的な生産を行うと発表した。彼らが約束した出荷期日は本年の3月である。


フェデレーテッド・ボーイング・インターステラー Federated Boeing Interstellar

 フェド=ボーイング社のギャラックス・メガコンプレックス(巨大工場施設)が完全に破壊されたことは、たいていの企業にとって死を告げる鐘となり得た。だが、継承権戦争を生き延びたように、フェド=ボーイングは残虐な聖戦をどうにか生き延びている――これまでのところは。

 ブレイク派の強襲で主力組み立て工場が潰滅した一方で、フェド=ボーイングはずっと前に生産施設を数多の星系に拡散させていたのである。攻撃の直後、中央工場の喪失で中断することもなく、恒星連邦の軍隊にスペアパーツが送られた。この多様な産業基盤と、巨額の現金積み立てを利用して、フェデレーテッド・ボーイングは長年の提携先であるユニバーサル・エー社との合併を画策した。合併した企業はフェデレーテッド・ボーイングの名前とティッカーシンボルの下に操業し、ディリヴァン造船所を本社としている。




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