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作成:2009/12/19
更新:2014/12/16

連邦共和国内戦 FedCom Civil War



 ハンス・ダヴィオン(恒星連邦)とメリッサ・シュタイナー(ライラ共和国)の結婚によって生まれた超巨大国家、連邦=共和国。3055年、この国を受け継いだのは、両者の長男であるヴィクターでした。しかしながら、政治力に劣る彼は国を御することが出来ず、領土の半分をライラ同盟の離脱という形で失ってしまいます。
 この事件の首謀者こそ、ヴィクターの妹、カトリーナ(キャサリン)でした。権力欲が強く、陰謀家である彼女は、兄の不在時に恒星連邦側を乗っ取り、ついには連邦共和国全体をその手に収めたのです。スモークジャガーを滅ぼし英雄として帰還したヴィクターは内戦を嫌い、すべての公職から身をひき、コムスターの軍司教となることを選びました。
 しかし、ヴィクターを望む声は(特に恒星連邦で)大きく、カトリーナの圧政に立ち向かう動きがあちこちで持ち上がり、ついにはカシルでヴィクター派(Allied、同盟)とカトリーナ派(Loyalist、王党派)の戦いが勃発するに至ります。
 最終的にヴィクターを動かしたのは、3062年12月、弟のアーサー=シュタイナー・ダヴィオンがテロで爆死したとの一報でした。彼はコムスターを辞して、軍の招集を呼びかけ、3067年にまで及ぶ連邦共和国内戦を始めることになります。
 この戦いに前線と呼べるものはありません。連邦共和国内のあちこちで同時に交戦が行われ、5年にわたるダイナミックな機動戦が繰り広げられました。
 内戦に関わった部隊は連邦共和国正規軍のほぼすべて。中立を宣言した者たちでさえも、支持しなかったという理由でカトリーナの攻撃を受けました。その代表がカペラ境界域の統治者であるジョージ・ハセク公爵でしょう。一方、ドラコ境界域では、陰謀に乗せられたジェームズ・サンドヴァル公爵がドラコ連合に対する攻撃を行い、無意味な犠牲を出しています。同じく中立のスカイア連邦は連邦共和国からの独立をもくろみ、反乱を起こしました。戦略的に重要でない地域でも、地元の小貴族同士が争うなどしたようです。
 また、国外に目を移すと、ドラコ連合の他に自由世界同盟とタウラス連合が内戦に巻き込まれ、カペラ大連邦国とジェイドファルコン氏族は混乱を利用してその軍を進めました。中立であるはずのコムスターでさえも一部の部隊がどちらかの派閥に寄与しています。











フラッシュポイント(発火点) Flashpoint



恒星連邦内の戦争


ニューアラゴン
3062年、12月9日

  カトリーナ派、第3F-C RCT(チャールズ・フィニガン少将)
  ヴィクター派、第1アラゴン国境守備隊(ジミー・カーストン准将)
  ヴィクター派、第12ヴェガ特戦隊アルファ連隊(トム・スタンセル将軍)

 連邦=共和国内の他の世界の多くと同じように、ニューアラゴンはカトリーナ派、ヴィクター派の対立の温床となっており、両陣営の軍事部隊が駐留していたことから、状況はさらに悪くなっていた。第1アラゴン国境守備隊はブルドック作戦への参加を命じられたが、ニューアラゴンに派遣された第3F-C RCTは国境守備隊が作戦から帰還しても移動することがなかった。指揮官のチャールズ・フィニガン少将は、全RCTをモラヴィアンに移動するのに充分な降下船、航宙艦がないとして、上官の問いかけをはねつけた。最終的にこれらの主張は、明細表を完成させるため、あるいは部隊の半数が修理中でパーツが来るのを待っているためなど他の言い訳に変わっていった。

 それから、ヴィクターが兵力を動員したのに続き、カシルの火薬庫が爆発した。カシルと同じことがニューアラゴンで起きることを望まなかったブルーロとカーストンは、必要なら国境守備隊の降下船と航宙艦を使って、即座に惑星を離れるよう第3F-Cに命令を出した。

 フィニガンは命令を確認し、全RCTを移動中と返答した。実際に彼は移動命令を出していた……惑星からの撤退のためのものではなかったが。南アラゴン大陸、デールマー、ガリー両都市の本部から、フィニガンは国境守備隊の駐留するアレクサンドリアに進撃するよう命令を出したのである。第3F-Cが二方向から接近するに連れて、カーストン(国境守備隊指揮官)はその移動を注意深く見張った。

 12月9日、地獄が解放された。第12ヴェガ特戦隊のアルファ連隊が、嵐の真っ最中に第3F-Cガリー隊の真上へと戦闘降下を行ったのである。サーナ境界域の陥落以来、ニューアラゴンに駐屯していたトム・スタンセル将軍と第12ヴェガ特戦隊は、フィニガンと彼のやり口を知り抜いていた。進撃の道すがら、第3F-Cは戦略地点と十字路を確保し、後に小規模な防衛隊を残していった。それを認識したカーストンとスタンセルは奇襲攻撃を仕掛け、第3F-Cを倒し、あるいは戦時捕虜としたのである。さらに第3は主導権を失ってしまった。

 アレクサンドリアまで一日のところで、フィニガンは国境守備隊を追い出そうとデールマー隊を都市に突き進ませたが、協調した機動防衛に遭遇しただけだった。国境守備隊のレパード級降下船十数隻が先陣となり、重強襲メックの半個大隊が足止めを行ったのである。国境守備隊のメックが全周囲に降下すると、第3は隊列はすぐさま多数の組織化されてない部隊に分裂した。

 第3はデールマーとガリーにかなりの規模の守備隊を残していたので、フィニガンが主力を再編していた間に、第12ヴェガと国境守備隊の分隊は第3F-Cを駆逐し、補給線を分断しようと、両基地を叩いた。12月13日、連合タスクフォースはデールマーから第3を掃討したが、翌日のガリーは失敗した。その時までに、フィニガンは生き残った第3F-C RCTの再編を成し遂げ、アレクサンドリアを攻撃した。

 第3F-Cは半分以下の戦力となっていたのだが、その2個諸兵科連合旅団を国境守備隊が払いのけるのは難しかった。国境守備隊の完全な崩壊を妨げたのは、第12ヴェガ1個大隊を乗せた降下船が折良く到着したことだった。その後の戦いで両陣営ともに酷い損害を負ったことから、国境守備隊はアレクサンドリアへ、第3F-Cはガリーへ戻り、翌年まで傷を舐めることとなったのだった。

 数回の交戦で第3からかなりの量の装備を奪った国境守備隊は、見かけより良い状態を保っていたが、一方、フィニガンと第3F-Cは、惑星市民軍の志願兵と近隣星系の部隊から支援を得ようと努めた。

 1月4日までに、両陣営はニューアラゴン争奪戦の新しいラウンドを行う準備をした。カーストンが最初に動き、第3F-Cの野営地をガリーの西約50キロメートルから攻撃したが、丘陵地、機械化歩兵、集中砲撃、気圏戦闘機がカーストンの国境守備隊を手早く片づけた。またも第12ヴェガが戦闘降下でカーストンを救援した。この戦いは一週間にわたる血塗られた包囲戦となり、その後の二週間、両陣営による一撃離脱戦が続いた。この作戦で第3F-Cは深刻な損害をだしたが、国境守備隊が確実に最悪の打撃を受け、1個大隊分のメックのみが残されたのだった。打ちのめされ、疲れ果てた両陣営は、1月の終わりまで、休息に入った。






ライラ同盟内の戦争


ソーリン
3062年、12月8日

  カトリーナ派、第15アークトゥルス防衛軍(フェリックス・ブリュッヒャー大佐)
  中立派、ソーリン市民軍(アーチャー・クリスティフォーリ中佐)

 惑星ソーリンは、人類発祥の地からほどないフリーダム管区の中心にある。不幸にもこの管区は地球と恒星連邦への中継地点であり、またドラコ連合、自由世界同盟への中継地点でもあった。このことは各世界の住人が多国籍であることを意味している。フリーダム管区は、ライラ同盟のどこよりも、不満と反乱に晒されていた。高まる不満を抑え込むため、ノンディ・シュタイナー総司令官は、3062年の半ばまでに、相当数の正規連隊をフリーダム管区に駐留させた。これは部分的な成功を収めたのみだった。

 ノンディ・シュタイナーは第15アークトゥルス防衛軍をソーリンに配置し、残りの2個大隊をジャンプ一回の場所にあるムフリッドに置いた。ソーリンはソラリスVIIのような人命を奪う公然とした暴力に巻き込まれておらず、またフォートロードンのように連日の抗議活動が行われるようなことはなかった一方で、反カトリーナ運動が活発であった。この運動が趨勢を得られないようにするのが、フェリックス・ブリュッヒャー大佐の職務であった。

 11月の始めまでに、アークトゥルス防衛軍の存在だけでは、反体制活動を抑えるには不十分であると明らかになった。爆破テロにより幾度か人命が奪われたあと、テロの容疑者たちが一網打尽にされた。11月の終わりまでに、アークトゥルス防衛軍は惑星内の治安を守るのみならず、カトリーナ反対派、ダヴィオンへの協力者と見なされた者を検挙するようになった。アークトゥルス防衛軍の隊員によって、さる著名なジャーナリスト兼活動家が殺されると、新たな爆破テロが主に軍事的目標を狙うようになった。この一連の爆破に応じるため、ブリュッヒャー大佐はソーリン市民軍を招集し、自部隊の直接指揮下に入れた。

 ヴィクターによる放送のあとの12月8日、革命が始まった。ソーリン市民軍指揮官にして殺されたジャーナリストの兄である、アーチャー・クリスティフォーリ中佐は脱走し、市民軍のほとんどを連れていった。陽動として、惑星首都エコールシティの政治犯たちを解放したクリスティフォーリは、うまいことブリュッヒャーの追跡を逃れた。

 翌月、クリスティフォーリと配下のバトルメック大隊(定数割れ)は身を隠し、ブリュッヒャーと第15アークトゥルス防衛軍を無防備にする目的で、小規模な襲撃を行った。同時に、クリスティフォーリは地元の反抗勢力と協力体制を確立し、目標となるリストを渡した。

 その月、クリスティフォーリはソーリン市民のちょっとした伝説と化した。騒ぎが始まる遙か前から彼はすでにソーリンの有名人であった。氏族戦争の英雄であったのみならず、この惑星最大の恒星間艦運輸企業を保有し、従って必要な輸入品の多くをソーリンに運ぶ責務を直接負っていたのである。ブリュッヒャーがクリスティフォーリの部隊を探し続けていたあいだ、脱走した指揮官は敵を刺激し続けた。過大なまでに宣伝されたLAAFへの攻撃――クリスティフォーリは盗み取ったものをソーリン市民に分配した――は、市民による支持以上のものをもたらした。テロリストグループが軍事目標だけでなく、民間を狙い始めた時でさえも、クリスティフォーリの評判に傷が付くことはなかったのである。

 だが、1月の第一週までに、ブリュッヒャー大佐はクリスティフォーリの基地を突き止めるのにとうとう成功したのである。レミントンの森奥深く、星間連盟時代のソーリン大学廃墟跡の中に隠されたその基地を狙うブリュッヒャーは、脱走した指揮官と部下たちを追い出すべく、強襲の準備を行った。しかしながら、クリスティフォーリは、アークトゥルス防衛軍指揮下の市民軍内にいる協力者から警告を受け、この攻撃に備えていたのである。クリスティフォーリはブリュッヒャーの弾薬に細工を行うことすら成功しており、バトルメックが不発のミサイルとオートキャノンを撃ち始めるまで、大佐はそれに気づかなかった。

 ブリュッヒャーは撤退し、バトルメックの半数を回収品として残していったが、同時にクリスティフォーリの鼻面を殴りつけてもいた。どちらの陣営も戦う状態になかったが、ブリュッヒャーはいまだエコールシティを確保しており、それとともにソーリンの支配権を握っていたのである。気圏戦闘機の厚い傘に守られ、クリスティフォーリの攻撃を交わすことができたブリュッヒャーは、首都を硬く握る一方で、第15アークトゥルス防衛軍第2大隊にソーリンへ移動するよう命令を発した。

 スパイを通してクリスティフォーリはこの計画を知り、ソーリンの第15アークトゥルスを抹殺するための作戦を実行に移した。この世界にある衛星通信基地のうちふたつがすでに破壊され、ブリュッヒャーの衛星監視ネットワークに大穴が空いていたことから、クリスティフォーリは所有企業の降下船を使ってソーリンを離れ、第2大隊が移動の準備を完了する前にムフリッドに降下した。配下のメックと降下船群を第2大隊のほぼ真上に降下させた彼は、アークトゥルス防衛軍を驚かせ、彼らが降伏する前に3隻の降下船のうち1隻を破壊した。ほぼ2週間後、彼はソーリンに戻り、ブリュッヒャーをトロイの木馬で騙すことに成功し、第2大隊の降下船2隻を使って降下した。

 手の打ちようがなくなったことに気づいたブリュッヒャー大佐は3063年2月2日、降伏した。その条件のなかで、第3大隊はムフリッドを離れることになった。ブリュッヒャーと部下たちは武器をクリスティフォーリに引き渡したが、惑星を離れることを許された。兵士たちの大半はブリュッヒャーと共にムフリッドへ行くことを選び、第3大隊と合流した彼らはリヨンへと移動した。



ドラコ連合内の戦争


アル・ナイル Al Na'ir
3062年、12月22日

 サンドヴァル公爵は、第12デネブ装甲機兵団(DLC)とファイティング・ウルクハイの第8打撃連隊にアル・ナイル星系を任せた。最初の強襲で目標となった3つの世界は通常の世界であったが、アル・ナイルはほとんど空気のない惑星であった。さらに、星系内の各小惑星、月、人工衛星に重要な目標が分散していた。目標の独自性が故に、第12DLCは通常戦力をティバルトに残していった。サンドヴァルは援軍として、第27連邦戦術戦闘機連隊、3個バトルアーマー大隊(指揮下の他部隊から持ってきたもの)、2個工兵大隊、海兵特殊連隊、若干のMI-6特殊部隊チームを付け加えた。アル・ナイル作戦の全体を指揮するのは、最近昇進したばかりのアリエル・ジブラー少将である。

 アル・ナイル強襲において危険なのは、戦場の環境だけでなく、星系内に入るときにハイリスクなジャンプが必要なことであった。通常の天頂、天底ポイントは目標から1G加速で3週間以上離れており、星系内に多数の小惑星があることから、安全なパイレーツポイントを探すのは困難であった。

 ジブラー少将は星系内にある相当数の異なったパイレーツポイントを選んだ……複数の目標に対しあらゆる方向から大規模な強襲をかけることで星系内のDCMS戦力を動揺させ、一度にひとつのグループしか狙えないようにし続けることを望んだのである。彼女の計画は実際上手くいった……少なくともひとつの点においては。

 アル・ナイルまであとジャンプ一回のところで気密不良が発生し、航宙艦の1隻が失われた。それからもう1隻(降下船2隻と400名の兵士含む)が巨大な破片の中に一部実体化して失われた。だが、残りは安全にジャンプし、ジブラーの降下船艦隊を一斉にはき出した。第27連邦戦術戦闘機連隊のアヴェンジャー、アキレス、ヴェンジャンス級強襲船艦隊は、DCMSが星系内に展開した戦闘機前衛部隊を容易に押し通り、地上部隊がほとんど邪魔されることなく上陸することを可能としたのである。

 アル・ナイルVはジブラーの第一目標だった。ここには、星系の人口の大部分がおり、ヨリ・メックワークスの最終組み立て工場があった――加えて、第24ディーロン正規隊がいた。気圏戦闘機大隊群に支援されたジブラー将軍は、上陸を妨害しようとしたディーロン2個中隊を手早く片付けた。しかし、アル・ナイルを賭けた戦いは始まったばかりだったのである。ほとんど大気のないこの世界の都市は、ほぼ地下に建造されていた。当初は資源採掘を支援するために作られたこれらの都市は、地下の露天鉱山に残された巨大な洞窟を埋めるほどまでに成長したのである。地下の上下にある大規模な氷盤から作られる酸素によって、この世界はほぼ無制限に生き残ることができた。ジブラーのバトルアーマーと海兵たちが、すぐさまアル・ナイルの小規模な都市群に押し入る仕事を始める一方、工兵たちは降下地点近くに臨時基地を立ち上げた。

 この星系の別の場所では、ジブラーの兵たちが最初よりさらに大きな幸運を得ていた。天頂点では、オムラ再充電ステーションをすぐに奪うことができた。小惑星のヨリ・パーディションでは、2日間の激しい戦闘の結果、ダヴィオンの傭兵メックと正規軍バトルアーマー、海兵の連合部隊が、駐屯していた第24ディーロン正規隊1個大隊を制圧した――施設が突如として減圧した際、ヨリの組み立て工場に深刻なダメージが発生し、約300名の労働者が死ぬという犠牲が出たのだった。惑星外の部隊は、次の二ヶ月間、鉱業施設、軍事聴音哨を探し出していった。

 アル・ナイルVに戻ると、ジブラーは幸運をつかめないでいた。第24ディーロン正規隊指揮官、ブンタリ・アキヒト大佐は、喜んでジブラー兵たちを自由に惑星上で走り回らせた。そして地下都市ホマイ=ザキにつながるすべてのアクセス・トンネルを、指揮下のバトルメックと手にある少数の歩兵戦力で強化した。ジブラーがメイン・エントランスいくつかを突破しようとしていた間、アキヒトは敵を悩ませるため地下施設から第12DLCの作戦基地に数個小隊を派遣した。ジブラーはDLCのメックを強襲に使い、傭兵の第8打撃連隊に惑星地表のパトロールを任せ、アキヒトの襲撃部隊を監視し続けた。

 この行き詰まりは一月いっぱい続いた。ジブラーの工兵たちは、メイン・エントランスのひとつを突破したが、強力な防衛に阻まれるか、アキヒトの工兵に埋められるかするのみであった。

 だが、ジブラーは1月24日に足場を勝ち取った……MI-6の1個チームが、地下複合施設から50キロメートル近く離れたクレーターに人間用のアクセス・トンネルが隠されていたのを発見したのである。すぐさまバトルアーマーの1個中隊が押し入り、工兵と海兵が続いた。この日が終わるまでに、ジブラー兵はかなりの規模の地下歩兵用展開地点を確保し、主要施設に向かって戦い始めた。10日後、彼らはメックを発進させるのに充分なほどのハンガーを占領し、主要地下都市に向かって進み始めた。







第一波

3063年3月 - 3063年8月



恒星連邦内の戦争


ニューアラゴン

  カトリーナ派、第3F-C RCT(チャールズ・フィニガン少将)
  ヴィクター派、第1アラゴン国境守備隊(ジミー・カーストン准将)
  ヴィクター派、第12ヴェガ特戦隊アルファ連隊(トム・スタンセル将軍)

 第一波が始まるまでに、ニューアラゴンの戦いはすでに死傷者リストを積み上げていたのだが、両陣営ともに壊滅からはほど遠かった。同盟軍は第1アラゴン国境守備隊と傭兵の第12ヴェガ特戦隊を中心に構成されており、より大規模な第3F-Cを相手に多大な成功を収め、RCTの大半に深刻な損害を与えていた。もっとも、当人たちも大きな損失を出し、特に国境守備隊の損害は大きかったのである。

 ニューアラゴンの第一波はチャールズ・フィニガン少将と第3F-Cが奇襲による逆襲を仕掛けることによって始まった。国境守備隊は半分以下の戦力になっていたことから、フィニガンはジミー・カーストン将軍と国境守備隊に陽動攻撃を行い、戦力の大部分を第12ヴェガ特戦隊のアルファ連隊に向けた。彼は国境守備隊を簡単に片づけられると思っていた一方で、傭兵隊を排除したがっていた。第12ヴェガは連日の戦闘降下で第3RCTを痛めつけていたのである。諸兵科連合の1個戦闘隊が国境守備隊を釘付けにし、第12ヴェガのメック大隊をおびき寄せる一方で、フィニガンは残りの部隊をデールマーの第12ヴェガ基地に導いた。フィニガンは都市を勝ち取れなかった一方で、傭兵の降下船の大多数を破壊するか行動不能としたのである。彼は作戦の成功に喜び撤退した。

 翌月は、両陣営の散発的な交戦となり、有利な地形を探してダンスを繰り広げた。傭兵隊指揮官、トム・スタンセル将軍はついに第3F-C戦線の弱点を見つけ、ただちに突こうとしたが、すぐさま1個旅団に包囲されるに終わった。生き残るには戦うしかなかった彼はそうした。

 傭兵隊は四時間持ちこたえ、その間、カーストン将軍は指揮下の国境守備隊を動かし、第3F-Cの頭上に戦闘降下した。国境守備隊の強襲に元気づけられた第12ヴェガは3F-Cの南西戦闘団を叩き、この地域に降下した国境守備隊への圧力を軽減した。両軍はすぐに合流し、作戦基地としてフーバーツヴィルとファラウの町を確保した。不幸にも、戦闘降下は守備隊にすさまじい損害を強いた。5個メック中隊(大半は戦場からの回収品)で作戦を始めたカーストンは、この日が終わるまでに15機の作戦可能なメックを持つのみだった。テックたちはもう1ダースをすぐにも修理可能だったが、国境守備隊は作戦可能な部隊として事実上終わっていた。フィニガン少将はこれに気づき、国境守備隊と第12ヴェガ特戦隊を掃討するために第3を押し進めた。カーストンとスタンセルは常にそうしてきたように戦い続けた――あわせた力をすべて叩きつけたのである。

 2個同盟部隊はまだ袖口にトリックの種を託しており、4月13日、先の戦闘から10日後、もう一度空挺降下攻撃に着手し、1個メック大隊をフィニガン将軍の指揮所(CP)の真上に落とした。同盟側の戦闘機と降下船(大半は国境守備隊所属)がCPの上空をカバーしている間、メック隊は第3の指揮系統を破壊するために激しい戦いを繰り広げた。同時に、フーバーツヴィルとファラウの同盟軍は第3の前線を15キロメートルの幅にわたって攻撃した。同盟の攻撃で足止めされたフィニガンの旅団の大多数は、離脱して指揮官を助けにいくことが出来なかった。フィニガン少将はディヴァステイターのコクピットで死んだのだった。

 第3F-Cはルパート・ハンデ准将(フィニガンの副官)の指揮下で作戦を続けたが、すぐさま低下する士気に押しつぶれそうになった。いまだに装甲と歩兵の1個混成旅団を展開しているのだが、第3は使えるバトルメックをわずかしか持っていなかったのである。さらに悪いことに、RCTの戦闘機大隊群はかつての残骸に過ぎないものとなっていた。ハンデ将軍は同盟軍に圧力をかけ続けようとしたが、傭兵隊と生き残った国境守備隊は機動の面で優位を保っていた。

 4月の残りと5月に入ってからの2週間、同盟軍は通常の一撃離脱戦術をいくらか変更したものを使い、第3F-Cを押し込んだ。第12ヴェガは国境守備隊の降下船をうまく使用し、第3F-Cの陣地の上に戦闘降下を次々と仕掛け、ある時は王党派を殲滅し、またある時は単に敵RCTを無防備な状態においた。最終的に攻撃はニューアラゴンの市民を勝ち取るためのものとなり、さもなくば少なくとも第3F-Cと対立させようとするものを意味するようになった。

 ニューアラゴン争奪戦は、5月11日に最終局面に入った。士気が低下するごとに、第3F-Cの兵士たちは日常的に持ち場を放棄し、市民たちの中に消えていった。スタンセル将軍は再度空挺強襲を実行し、アルファ連隊の半数を第3F-Cのただ中に降下させ、残りの半分と国境守備隊の残存兵力――およそ2個諸兵科連合大隊――を、正面から第3F-Cにぶつけた。さらにスタンセル将軍は残った同盟の降下船を機動砲台として使い、6隻のオーバーロードとユニオンを第F-Cの陣地のほぼ中央に着陸させた。戦闘は6時間続いたが、最後にはRCTの1/3が持ち場を放棄し、生き残った40パーセントが捕虜として捕られた。もちろんのこと、これは第3F-Cの戦闘員のほぼ1/3が戦死したことを意味している。

 第12ヴェガは完全な形で生き残ったが深刻に弱体化しており、一方の国境守備隊はほぼ存在を終えていた。2個部隊は二ヶ月かけて出来る限り脱走兵を追いかけたが、最終的にこれは成功しなかった。その後、スタンセル将軍はアルゴルから報告を受けた。第1共和国の到着に伴い、生き残った第12ヴェガの部隊が深刻な数的不利に陥ったのである。彼はすぐさまアルゴルにジャンプし同盟側に天秤を傾けるべく準備を行った。






ライラ同盟内の戦争


オデッサ

  カトリーナ派、ウルバートン・ハイランダーズ(ロバート・フィーハン大佐)
  ヴィクター派、ソーリンFTM(アーチャー・クリスティフォーリ将軍)
  中立派、スノード・イレギュラーズ(ロンダ・スノード大佐)

 オデッサは戦場にならないはずだったのだが、ヴィクターの代理人が交渉に訪れると、キャサリン・シュタイナー=ダヴィオンと惑星領主、ニコラス・フィスク侯爵の陰謀により血の確執が持ち上がった。同盟のコアスピンワード方面で作戦を行っていたソーリンFTM(指揮官アーチャー・クリスティフォーリ将軍の名をとってアーチャー・アヴェンジャーズと呼ばれていた)はヴィクター国王の命令の下、アルコーを出発し、傭兵隊スノード・イレギュラーズとの交渉のためオデッサへと向かっていった。この傭兵たちは同盟との契約が切れたところだったのである。イレギュラーズの契約は内戦への関与を除外しており、よってこのエリート部隊は国家主席の求めによりオデッサの後方警護を行っていた。ヴィクターはイレギュラーズを自陣営に引き込もうとし、交渉のためクリスティフォーリを送ったのだった。しかしながら、この時、ソーリンFTMを抹殺し、イレギュラーズをキャサリン側に引き込むための計画が実行中だったのである。

 クリスティフォーリとスノードの接触は平和的なもので、話し合いのため直接対面を行うことで合意した。両者は知らないことであったが、三番目の部隊がオデッサには到着していた。フィスク侯爵への忠誠を誓う、傭兵部隊、ウルバートン・ハイランダーズである(彼らは形式上、傭兵隊ブラックストーン・ハイランダーズの傘下にあった)。両部隊に化けたハイランダーズのロバート・フィーハン大佐は、4月16日、会合に向かう途中のロンダ・スノードとアーチャー・クリスティフォーリを待ち伏せしたのである。

 この攻撃により、スノード大佐は昏睡状態となり、娘のナターシャが部隊の指揮をとって、「二枚舌の」アヴェンジャーズに償いをさせようとした。その一方、クリスティフォーリ将軍は裏切ったイレギュラーズに対する報復を行おうとした。フィーハンとフィスク侯爵は距離をとり、両者が無分別に打ち合うのを眺めた。イレギュラーズはビールトンの遺跡のなかで包囲されたことに気づいたが、4月末、ウルバートン・ハイランダーズの「到着」により救援の希望が与えられた。だが、フィスクはこの状況を利用して、イレギュラーズとの再契約(4月28日に満了)を狙ったのである……今回は内戦の除外項目がないものを。

 イレギュラーズとアヴェンジャーズにとっては幸運にも、ハイランダーズの背信行為は明らかとなった。アヴェンジャーズがウルバートン・ハイランダーズと共にいたライラの工作員を捕らえ、待ち伏せに使われたメックを発見したのだ。多大な個人的リスクを払ってアーチャー・クリスティフォーリはこの情報をイレギュラーズに届け、4月2日、目を覚ましたロンダ・スノードはアヴェンジャーズとの同盟を結んだ。

 アヴェンジャーズ、それからイレギュラーズとの容易な戦闘を予期していたウルバートン・ハイランダーズは敵にかなわないことに気がついた。フィスク侯爵は戦時捕虜収容所に入れられ、ヴィクターに領地を没収された。クリスティフォーリ将軍とスノード大佐はロバート・フィーハンをアウトリーチに送り、そこで彼は傭兵評価・雇用委員会(ウルフ竜機兵団運営)の審理を受けることになった。

 最終的にフィーハンは著しい不法行為と傭兵規約の違反で有罪となり、それから指揮権を奪い取られた。だが、この部隊の運命はいまだ不確かなものである。ブラックストーン大佐による再審理の請求はいまだ係争中だが、この裁判により彼の部隊は事実上破産し、雇用主を捜せないほどまでに評価値を下げられている。



ドラコ連合


アル・ナイル Al Na'ir

 アル・ナイルの地下都市と軍事施設という迷路の中にそれなりの足場を得たアリエル・ジブラー少将と旗下の第12デネブ軽機兵隊は、アル・ナイルの権力中枢であるホマイ=ザキに向かう作業を始めた。同時にファイティング・ウルクハイの第8打撃連隊が惑星の地表をパトロールする主力となり、第24ディーロン正規隊が派遣した攻撃部隊から降下地点と野戦本部を守った。

 3月の初週までに、ジブラー将軍は4つの大規模な洞穴のうち2つに到達していた。ここにはスカボロー製造社があり、ホマイ=ザキのすぐ近くであった。ブンタリ・アキヒト大佐は、地下の洞穴・トンネル内でDLCとメックを使った戦闘をするのは非効率的だと知っていたので、DLCの突破を妨害する歩兵部隊のバックアップに小規模な大隊だけを残し、第24ディーロンの大半を率いて地表に出ていった。

 ミヤザキ大陸に隠された半ダースのエントランスから姿を現したブンタリ・アキヒト大佐は、メックを率いて曲がりくねった渓谷を抜け、AFFSの降下地点まで数キロメートル南の場所に出た。1個大隊未満でLZを守り、少数の上空戦闘機支援しかなかった傭兵は、完全に不意を打たれ、数で負けた。ディーロン正規隊が2個中隊分のメックを破壊すると、生き残った傭兵たちは降下船の砲撃の下、後退した。だが、ディーロン正規隊は強襲をやめず、巨大で不動な降下船と最大射程で撃ち合い、数隻を無力化して、AFFSの指揮本部に砲撃の雨を降らせ、混乱を巻き起こした。パトロール中の傭兵が戻ってくるまでに、ディーロン正規隊は地形のどこかに消えていた。AFFSの戦闘機が集団でスクランブルをかけた後でさえも、サンドヴァル兵はディーロン正規隊を発見できなかったのである。

 従って、2週間におよぶ熾烈なサーチアンドデストロイが実施され、ブライアン・ホルステッド将軍と指揮下のファイティング・ウルクハイを支援するために、DLCのメック数個中隊が派遣された。ホルステッドは最低2個航空中隊を、常時、空に張り付かせ、パトロールを強化した。それでも、ディーロン正規隊は傭兵のメックを恒常的に攻撃し、メック戦士数名をコクピットの減圧で殺したのである。実際、ホルステッド将軍自身が18日に死亡し、傭兵の指揮はジェラルド・デュボワ大佐が取ることになった。

 指揮官の死後、ファイティング・ウルクハイは、ブンタリ・アキヒト大佐とディーロン正規隊を追い詰めて殺すため、復讐心と共にかけずり回った。ディーロン正規隊は傭兵が怒りを募らせていることに気づいており、地下の展開地点を隠そうと努めたが、デュボワ大佐のメック戦士たちはすぐにセンサー以外の手法を使って、渓谷、山の小道(ほぼすべてが鉄の成分を含んでいた)でドラコ連合のメックを追いかけるやり方を学んだ。傭兵たちは、隠れた出口いくつかをふさぎ、ウルクハイのメック戦士が「シャーウッドの森」と名付けた自然の岩場までディーロン正規隊を追い詰めたのである。2日間にわたって傭兵はディーロン正規隊を叩いたのだが、4月24日、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンからの緊急メッセージを受け取った……ドラコ連合強襲をやめて恒星連邦宙域に帰還せよと命じられたのである。傭兵たちはLZに戻り、1個大隊以下のディーロン正規隊を戦場に残していった。

 デュボワ大佐から恒星連邦に戻るとの決断を聞いたとき、ジブラー少将は激怒したが、傭兵のメックを撃つのは問題外としても、退却を妨げるために出来ることはほとんどなかった。地下の迷路にいることを選んだジブラーは、地表の降下地点を守るために3個中隊を保ち、星系中で配置についていた数個中隊分の海兵を呼び戻した……ホマイ=ザキ強襲の最終段階を実施するためである。

 アキヒト大佐と指揮下のメックは、地表のDLC降下地点を悩ませ続けたが、5月の第三週までに、ジブラーは小さなホマイ=ザキの洞窟3つに到達し、工業地区の半数近くを含む都市の1/3の支配権を得たのである。ヨリ・メックワークスもDCMS司令部も手にしていなかったのだが、ドラコ連合兵はすぐにやる気を失っていった。メック戦士少数と歩兵多数が追い詰められたときは自殺的となり、DLC兵に向かってカミカゼ攻撃を仕掛けた。6月3日には、この考え方は、第24ディーロン正規隊、地下市民軍中に広まったようだ。

 アキヒト大佐は兵士を思いとどまらせようとするのにベストを尽くしたが、カミカゼ攻撃は一週間続き、DCMS兵の虐殺に他ならないものとなった。なぜなら、ジブラー少将は単純に部下を守勢に回らせたからである。ホマイ=ザキに簡単に入れないようにするため、アキヒトはDLCの降下地点を攻撃し、敵の地下陣地から戦力をいくらか引き上げさせようとするしかなかった。不幸なことに、アキヒトの攻撃は部下のメック戦士18名の命を奪っただけだったのである。彼はいまだ稼働する数機のメックと共に引き上げ、遠隔地の聴音哨に退却した。

 地下では、ジブラー将軍はカミカゼ攻撃を二週間堪え忍んでから攻勢を再開した。DCMS防衛隊の大半が死亡するか、無意味な自殺攻撃で疲れ果てるまでに、DLCは残りを片付けていた。

 ジブラーはドラコ連合の伝統的な民衆に直面したが、その大半は工場労働者か炭鉱夫であり、ホマイ=ザキ市民を押さえつけるつもりはないことを証明すると、DLC兵に対する潜在的な脅威は収まったのだった。DCMSアル・ナイル管区司令部への侵入、情報の吸収、捕らえた士官の尋問は、DMIに任された。ディヴィス・トレメロ大将とリチャード・オウチワ少将は捕まるのを嫌って切腹したが、一部の上級士官は上官に続かなかった。

 実際、ジブラー少将が、7月、8月にアル・ナイル星系の支配を固め、部下たちが捕獲した装備と補給物資(ヨリ、スカボローの全生産ライン含む)の目録を作ると、その中で最も価値があったのはDMIがDCMS司令部から得た情報だったのである。この情報は、その後の数年間、大いに役立つこととなる。







第三波

3064年3月 - 3064年10月



ドラコ連合


アル・ナイル Al Na'ir

 アリエル・ジブラーと指揮下の第12デネブ軽機兵隊RCTは、第24ディーロン正規隊を撃破したあと、ほぼ1年近く(ドラコ連合内の)アル・ナイルで平和に過ごした。この世界の工業生産力はほとんど衰えてなかったので、第12デネブRCTは損耗を埋めるバトルメックと装甲車両を受け取ることができた。ドラコ連合の連携した逆襲が避けられないことを知っていたアリエル・ジブラーとRCTは、アル・ナイルのような重要な世界を失うという面目を取り戻すべくやってくる「サムライ」中隊・大隊を撃退・撃破する準備を完了させた。彼女の部下たちは地下の通路システムを本質的に知るようになっていた。

 予想された逆襲は、3064年6月、ついにやってきた。だが、サンドヴァル公爵と違って、ジブラー将軍と上級士官たちは、大規模な部隊がやってくると予想していた。第15ディーロン正規隊と第10ゴーストが、6月5日、軌道上に到着すると、彼らの予想は確認された。

 ジブラーは自身のアル・ナイル強襲から多くを学んでおり、手元にある戦闘機連隊群と支援降下船を投入してDCMSと激しい上陸戦を戦った。実際、強力な航空宇宙戦力は、第一週目に上陸の試みを三度妨害し、サミュエル・ノダ大佐(第10ゴースト指揮官)は小惑星ヨリ・パーディションに視線を変えることとなった。ジブラーはこちらにも戦闘機と追加の兵士1個大隊分を送った。かなりの戦闘機が小惑星帯で失われたが、ノダもまた戦闘機の多数を失い、主力降下船数隻に大損害を被った。もう一度アル・ナイルを目指すためにノダは撤退したが、ISFの工作員2個大隊を小惑星帯に残していった。ジブラーの戦闘機はアル・ナイルを守るために移動した一方で、ISF軍はゆっくりとヨリ・パーディションに近づいていった。

 ISF兵士は、7月22日、ついに小惑星施設を叩いた。立てこもったDLC(デネブ軽機兵隊)がISFの工作員に猛打を浴びせると、戦闘はすぐさま血塗られたものとなった。AFFSの海兵は容易にやられなかった一方で、ISF兵士のほうが単純に訓練も装備も上だった。それでもなお、ノダの兵士たちは施設からDLCの兵士たちを追い払うのに6週間を要した。この戦いは両陣営が援軍を送り込み、大規模なものに発展していた。

 ノダは9月半ばまでにヨリ・パーディションを勝ち取ったが、これはアル・ナイルでの作戦のごく一部に過ぎなかった。アル・ナイルそのものには、まだ部隊を上陸させていなかったのだ。さらに悪いことに、メック戦士たちは無重力空間にいるうちに、ゆっくりと腕を落としていった。10月前半、彼はもう二回上陸を試み、それから諦めた。ディーロンからの追加の支援を待ったのである。



戦術

 この内戦は、2個以上の旅団(通常は1個RTCか戦闘連隊の大規模な集団)を指揮するタスクフォースの指揮官たちに、長年あきらかにされていなかった多くの事実をあきらかにした。その理由はきわめてシンプルである。これまでの数世紀、連邦共和国内戦のように機動性が高く、熾烈な戦いは他になかったのである。第四次継承権戦争でさえも、内戦が見せたような残忍と憤怒はなかった。

 戦争が始まるまで(そして第二、第三波の時でさえも)、一般的な野戦指揮官たちは軍事輸送降下船を支援程度のものとしか見ていなかった。さらに、文明化された戦争のルールでは、たいていの場合、降下船を目標にするのは禁止と見なされている。重武装なのだが、降下船という巨獣は文字通り座り込んだアヒル――巨大で動かない目標なのである。結果として、指揮官の大半は降下船を単に便利な基地として見て、最後の防衛砲台として見ていた。

 内戦が進むと、作戦の熾烈さは増していった。指揮官たちは伝統を求めなくなり、血に餓えていった。敵の降下船は捕獲か破壊かのターゲットとなった……それがたとえ、敵の逃亡を妨げるためか、空挺強襲の奇襲を妨げるためだけでも。

 これらの攻撃が行われると、指揮官たちの多くが降下船の使用について考え直すようになった。当初、彼らは「蛙跳び」の移動を行い、準軌道飛行で地上部隊を前進させた。不幸にも、蛙跳びは危険であり、燃料を大量に消費する。すぐに指揮官たちは降下船の大半(すべてでないにせよ)を軌道に置き始め、きわめて即応力のある軌道砲台にするか、脱出の手段とした。これらの船には、半永久的に部隊を積むのが可能で、素早く展開し、防衛陣地を強化するなり敵の弱点を突くなりすることができる。軌道上の降下船は軌道偵察と惑星封鎖戦力を提供する。宇宙において降下船は機動性を完全に保ち、大規模な艦隊の一部として運用されるときは、戦艦すらひるませるのに充分な火力をお見舞いできる。

 とりわけいいのは、降下船部隊の大半を宇宙に保つことで、敵に降下地点を蹂躙されなくなることだ。戦闘機中隊群を便利な宇宙基地から運用することも可能となる。実際、レパード級やその他の空力型降下船が普及していることから、指揮官たちの手には地上の敵に激しい砲火を浴びせることができる船が残されているのだ。

 不幸にも、我々の敵もまた、内戦で学んだ教訓に目を向けている。

――ロバート・フェルスナー元帥『兵士の目の中で』、NAISプレス、3067年








第四波

3064年11月 - 3065年5月



ドラコ連合


アル・ナイル Al Na'ir

 10月後半、ディーロン軍事管区の指揮官、太守イソロク・クリタは第12ゴーストを派遣し、管区からかき集めた2個特殊バトルアーマー大隊、DEST数個部隊、1個戦闘機大隊からなる追加の支援を送り込んだ。このタスクフォースは、11月5日、アル・ナイル星系に入り、先にいたDCMS部隊と合流したあと、全力で強襲を行った。

 このとき、追加の戦闘機と降下船を得たドラコ連合軍は、アル・ナイルに上陸して、阻止するためジブラー将軍が残した若干の戦力を押しのけ、即座にホマイ=ザキに動いた。DESTと特殊部隊は、すぐさま6つの隠しエントリーポイントからこの地下都市に入り、ジブラーの第12デネブ軽機兵隊から驚くべき素早さで都市の多くを奪い取った。

 バトルアーマー部隊が主エントランスポイントを確保すると、3個ドラコ連合部隊が都市に入り、システマチックにホマイ=ザキから恒星連邦兵を排除し始めた。しかしながら、戦いの趨勢を変えたのは、メックではなかった。それは両陣営のバトルアーマーであり特殊部隊(DEST、MI6チーム含む)である。それらが真にホマイ=ザキ争奪戦を戦ったのだ。

 ドラコ連合軍はいわゆるホームのアドバンテージを持っており、それを第12デネブ軽機兵隊に対して使った。ジブラー将軍の部下たちは、1年以上、アル・ナイルに駐屯していたというのに、地下のトンネル・システムについて基本的なことしか学んでいなかった。ドラコ連合軍の士官や下士官兵の一部はかつてアル・ナイルで勤務するか、少なくともここで訓練を受けていた。ドラコ連合のバトルアーマーは第12デネブ軽機兵隊をものともせず、1月半ばまでに地下施設から追い出した。

 ジブラー将軍はロビンソンからの相当な援軍なしにはこの都市を奪還できないとわかっており、援軍が来ないこともわかっていた。作戦は一部成功――連合軍の管区首都を占領し、工場と倉庫からかなりの装備と物資を得た――とした彼女は、退却を命じた。大規模な戦闘機大隊群の援護の下に、彼女は第12デネブ軽機兵隊を降下地点に導き、脱出する準備を行った。

 ドラコ連合の指揮官は脱出を妨げる最後の試みを行い、戦闘機を恒星連邦の降下地点に投じる一方で、若干のDEST小隊に第12デネブ軽機兵隊の野営地への浸透を行わせた。DESTはかなりの上級士官を殺すのに成功し、ジブラー将軍を含む多数を負傷させたが、ピエトール・クズネッツオフ少佐が第12デネブ軽機兵隊を組織し、1月13日に部隊を脱出させた。

 ホマイ=ザキは熾烈な戦闘で破壊され、ヨリとスカボローは一時的に操業停止になった。第12デネブ軽機兵隊はかなりの諜報データと軍事物資をこの世界から得た一方で、残されたものからDCMSのアナリストも大当たりを得た。この世界で破壊され残された連合と恒星連邦のバトルアーマー4個大隊の中に、相当数のインフィルトレーターMk.IIスーツがあった。加えて、ドラコ連合は初めて恒星連邦のロータリーオートキャノンとその高度なターゲティングシステムを目撃した。この戦闘によって、連合は多量の死者を出し、軍需物資を失ったのだが、ついてに長年かけて得ようとしていた物資を手にしたのである。







第五波

3065年5月 - 3066年1月



恒星連邦内の戦争


ニューシルティス

 ジョージ・ハセク公爵は内戦を通して、いくらか良いところを歩いていた。彼は公的にはヴィクターとカトリーナのどちらも支持せず、完全なる中立の態度を示していた。しかしながら、彼はひとつの懸念を抱いていた――カペラ境界域の市民に対する福祉である。彼に直接従っていた主力部隊はほんのわずかだったのだが、カペラ境界域で同盟側(ヴィクター派)に立って戦っていたことについて発言をせねばならなかった。

 ハセク公爵は個人的に国家主席を統治の権利を失った暴君と見ていた。その結果、彼は王党派を傷つけてもとがめられないと思ったときにそうしていた。第6シルティス機兵連隊をカシルに送って戦わせたことなど、彼は命令にもっともらしい否認権を与えるため部下を大規模に用い、その一方でタルコット確保などよりあからさまな動きについては、カペラ境界域の補給線を保ち続けるためだと単純に説明した。

 内戦の前半、国家主席のアドバイザー、アナリストたちはハセク公爵の本当の意図は何なのかで割れた――彼は玉座を狙っているのだと考えている者が多かった(ハンスとイアン・ダヴィオンの半妹マリーの孫として、彼はシュタイナー=ダヴィオンの子供たちの次に玉座を継ぐ正当性が強かった)。

 国家主席は公爵に彼のゲームをさせていた……なぜなら、それが兄の同盟軍を引き寄せていたからだ。また彼女は公爵を道具として操作出来ていると信じていた。そのすべてが変わったのは、3064年11月の星間連盟会議である。この時、ハセク公爵はカトリーナもその兄も支持しないと彼女に伝えたのだ。

 無礼に怒った国家主席は将軍たちにニューシルティス強襲の計画を立てるよう命じた。

 当初、彼らはニューシルティスに駐屯する傭兵ヴァンガード軍団を買収しようと考えた。他に駐屯していたのは、ニューシルティスCMM、ダヴィオン軽近衛隊、第8シルティス機兵連隊である。(カトリーナ側の)タスクフォースは、第11アヴァロン装甲機兵隊、第4ドネガル防衛隊、リッジブルックCMMで構成されており、戦艦〈ハンス・ダヴィオン〉の援護を受けて、3065年10月27日にニューシルティス星系に入った。四日後、〈ハンス・ダヴィオン〉は惑星を守っていたFCS〈コヴナント〉とやりあい、両戦艦が破壊されるという結末を迎えたのだが、王党派が地上に向かう道は切り開かれた。上陸前に王党派は傭兵にコンタクトをとり、サービスを買い取ろうとしたが、チャド・ディーン大佐にきっぱりと拒絶された。

 最初の交戦は11月1日に発生した……王党派のコマンド部隊が10月31日、公爵の司令部に侵入し、暗殺を試みたのである。これは失敗したのだが、公爵は昏睡に陥り、ニューシルティス防衛はデボラ・パル少将が取り仕切らざるを得なくなった。

 王党派が上陸するまでにHPG通信は応答不能となり、ハセクや部下たちがすぐに援軍を呼ぶのは不可能となった。王党派の最初の目標となったのは、この惑星を運営するのに必要な兵站的主柱である補給庫と指揮通信施設だった。最初の降下地点から王党派は惑星中に広がり、11月中、二番目の目標を叩いた。

 公爵が昏睡状態に陥ったことから、惑星の守備兵たちは闘志の大半を失ってしまい、王党派がかなりの成果をあげることが可能となった。12月4日、ジョージ・ハセク公爵は目を覚まし、11日に惑星の防衛の指揮をとった。兵士たちは力を取り戻し、王党派を押し返して、主目標、第二目標から彼らを追い払った。

 主導権を取り戻そうとしたジャスティン・リーボ少将は第11アヴァロン装甲機兵隊のバトルアーマー部隊に公爵の軍司令部への強襲を命じた。だが、この作戦は完全に失敗し、わずか数日後の3066年1月21日、(公爵軍による)第11装甲機兵隊本部への攻撃を招いたのである。第8シルティス機兵連隊が海から攻撃を仕掛け、ヴァンガード軍団が本部の真上に軌道降下を行った。

 この戦いで第11装甲機兵隊の本部は破壊され、リーボ少将は死に、装甲機兵隊は叩き潰された。第五波が終わったとき、ハセク公爵は大急ぎで本拠地を取り戻そうとしているところだった。







第六波

3066年2月 - 3066年8月



恒星連邦内の戦争


ニューシルティス

 王党派に打撃(ジャスティン・リーボ少将の戦死含む)を与えた公爵は国家主席の侵攻軍を故郷から追い出すべく攻撃を続けた。ヴィクター・アメリオ少将は公爵を押しとどめ、部隊のひとつを破壊すべく独自の計画に着手した。

 アメリオはリーボが死んだことを知った後で、第11アヴァロン装甲機兵隊の生存者の指揮を執り、部隊をボートン・グレイシアに再展開した。そこは自由に惑星のあちこちを脅かすことが出来る場所であった。公爵は対処のためカシルCMMを派遣したが、戦力激減した第11装甲機兵隊でなく、アメリオの第4ドネガル防衛軍に遭遇したのである。装甲機兵隊が文字通り氷の下から飛び出し、CMMの足止めをする一方で、アメリオの第4防衛軍が両翼から挟み込んだ。二日に及ぶ戦いで、CMMだけでなく、装甲機兵隊の残存戦力もまた壊滅した。次の二週間で、CMMの生存者たちは少しずつ近くのAFFS基地にたどり着き、アメリオは装甲機兵隊の生き残りをRCTに組み込み、ハセク公爵への攻撃を続行した。

 アメリオ将軍は惑星の首都サソーとハセク公爵の地下司令部に目を向け、リッジブルックCMMを使って激しい攻撃を仕掛けた。両陣営はしばしのあいだ互いに陣地を争ったが、リッジブルックCMMは氷原のただ中にあるモーガン・ハセク記念公園に退却するという重大なミスを犯した。前公爵の記念碑が破壊されたことで惑星の防衛軍は王党派侵攻軍に対する怒りを燃え上がらせた。この時点から彼らは慈悲を見せなくなった。

 リッジブルックCMM指揮官、セス・ミラー少将の死後、アメリオ将軍は、4月の第一週、エムリーヌ・ジョーンズ准将に部隊の指揮をとらせた。二人の将軍は戦闘を続けたが、長い戦役により王党派側は大きな損害を被った。しかし4月の最終週と5月の第一週、第二週で、2個王党派部隊は、かなりの前進を果たした。

 すぐに彼らはそれが自身の力によるものだけではないことを知った。

 第六波の最中に、ハセク公爵は弾薬と物資が欠乏しつつあることに気がついた――不幸にも彼はニューシルティスの最後の備蓄からカペラ境界域内で活動する部隊に補給を送っており、残ったのは九ヶ月間の濃密な戦役を戦える分だけだった。しかしながら、彼の部隊はさらに早いペースで物資を消費し、戦役が七ヶ月に達すると、ハセク公爵は素早い勝利が必要だと気づいたのである。

 彼はサソーまでゆっくりと後退するよう上級指揮官たちに指示を出した。サソーで戦えば、ハセク軍は短い後方連絡線の優位を享受できるのみならず、熱意をもって戦えるだろうことを、公爵は知っていた。

 王党派は5月14日に首都の外辺部にたどり着き、防衛隊の陣地を弱めるために激しい砲撃を浴びせて強襲を開始した。彼らが撃ち始めてから数分後に、ハセク隊は上手をとった。

 間接砲で反撃したニューシルティス防衛隊は直後に王党派の砲を沈黙させ、攻撃に着手した。傭兵隊のヴァンガード軍団は数個歩兵連隊と共に都市内で配置につき、一方でニューシルティスCMMと第6シルティス機兵連隊は王党派の側面を叩いた。リーボ将軍は自分のRCTをサソーから方向転換しようとはせず、ジョーンズ将軍に側面攻撃の対処を任せた。ダヴィオン軽近衛隊は機動予備として推移を見守り、第4ドネガルが2個戦闘隊が都市部に入ろうとしたところで妨害に動き、24時間、異なった方向から攻撃した。

 18時間以内にリーボ将軍は都市内に足場を築いたが、すぐさまライラの全てを憎む傭兵ヴァンガード軍団と対峙していることに気づいた。ヴァンガード軍団の指揮官、チャド・ディーン大佐はリーボの第4ドネガル防衛隊との交戦に入り、重い損害を負ったが、敵の前進を押しとどめた。戦闘が進むに連れ、彼とメック戦士たちは自制心を失い、撃墜された敵メックのコクピットを撃ち抜き、二度と戦闘に参加できないようにした。リッジブルックCMMを粉砕し、第4ドネガルを追って都市に入った第6シルティス機兵連隊のメック戦士たちによる介入だけが、傭兵による王党派兵士の処刑を妨げたのだった。

 ニューシルティスをかけた死にものぐるいの戦いはこの日、3066年の5月16日に終わり、ジャスティン・リーボ少将は降伏した。

 12日後、第2ケチ戦闘部隊がこの世界に上陸した。彼らが力を貸す前にニューシルティス争奪戦は終わっていたのだが、この部隊は同盟のためにタイゲタを完全に確保していた。彼らはソーテック元帥がたどり着くまでそこにとどまり、彼を追ってニューシルティスへと向かった。再度、元帥とハセク公爵はニューアヴァロン争奪戦について話し合いを持った。しかしながら、ハセク公爵は最後の攻勢への参加を拒否して、カペラ境界域の支配権確保に従事し、長い回復の過程に入ったのだった。

 だが、ソーテック元帥はダヴィオン軽近衛隊とヴァンガード軍団の残存勢力を拡大しつつあるタスクフォースに参加させ、直後、ニューアヴァロンへの長い旅を始めた。


スモールワールド

 第17アークトゥルス防衛軍は(カトリーナ)国家主席を助けるため、恒星連邦、おそらくチコノフに向かっていたところだった。だが、彼らがカオス境界域にたどり着いたとき、スモールワールドで待機するよう命令を受けた。そこにいるあいだにニューアヴァロンの司令部は次の進路を指定する予定だった。部隊は4月20日、スモールワールドのパイレーツポイントいくつかにジャンプし、次の命令を待つために惑星へと向かった。

 指揮官のディヴィス・リリー准将にとっては不幸なことに、この世界は無防備ではなく、住人たちは侵略者となりえる者たちに対して優しくなかった。数年間ソラリスVIIにいた第17は、あらゆる戦闘スタイル、特に市街戦に熟達していたのだが、スモールワールドで待っていた種類の戦闘に対する準備はできていなかったのである。

 第17が上陸時点からわずか数時間のところにジャンプした時、惑星の大規模な鉱業区域を守っていたのはスミッソン・チャイニーズ・バンディツだった。傭兵隊は警戒し、市民軍含む指揮下の部隊をすべて機動させた。第17が上陸すると、彼らは激しく攻撃し、リリー将軍を驚愕させた。彼は追加命令を待つ間、ただ兵士を上陸させただけのつもりだったのである。

 最初の戦いはすぐに惑星をかけた長引く戦いに変わった。チャイニーズ・バンディッツは極寒の世界を動きまわり、一方のアークトゥルス防衛軍は打撃を加えようとした。防衛軍は6月14日、アケルナルSMMからなる援軍を受け取った。両部隊の指揮官たちは互いに戦力不足であることに気づいたが、それにも関わらず、チャイニーズ・バンディッツを傷めつけ、倒すために協力した。

 4日後、ケーニッヒ少将が旅団規模の援軍とともに到着した。彼はカトリーナ派に立ち向かい、アークトゥルス防衛軍とSMMを磨耗させるために長距離砲撃を使った。ある程度ケーニッヒは成功したが、7月2日、カトリーナ派の2個部隊は一団となって攻撃を仕掛け、ケーニッヒの戦線を押し下げて、彼の上陸地点を蹂躙しかけた。

 4日、スモールワールドのバランスは劇的に変化した。傭兵バトルメック2個大隊が到着したのである。ウィルソン軽機兵隊に率いられた傭兵たちは、ケーニッヒ将軍が契約し、近隣のカオス境界域から集められた戦力だった。ケーニッヒは現金を持っていなかったが、きわめて有利な回収権と、将来、AFFSと契約交渉するときに良い扱いをするとの約束をしたのである。

 その腕前、技術レーティング、能力はともかく、傭兵たちを加えたことは、ケーニッヒに求めていたアドバンテージを与えた。たった二週間の作戦で彼はこの世界の状況を180度ひっくり返し、カトリーナ派を敗走させた。23日までに2個カトリーナ派部隊は退却する準備を行った。しかしケーニッヒはそう簡単にいかせるつもりはなかった。降下船への乗船が終わる前に、彼は投入できるメックの大半を持って上陸地点の真上に戦闘降下を実行し、それから装甲部隊を大々的に前進させた。

 翌日、カトリーナ派は崩壊し、1ダース分の傭兵バトルメックに監視されるなかで降伏した。ケーニッヒは部隊とともにスモールワールドに残り、カトリーナ派の収監を監督した。彼がいることでこの惑星が事実上恒星連邦の傘下に入ったことは公式には二次的な問題だった。







第七波

3066年9月 - 3067年8月



恒星連邦内の戦争


ニューアヴァロン

  カトリーナ派、ジャクソン・ダヴィオン陸軍元帥
  ヴィクター派、アーダン・ソーテック大元帥、タンクレッド・サンドヴァル公爵、ランド=ダヴィオン元帥

 タンクレッド(サンドヴァル)公爵は6月30日にニューアヴァロン星系に入り、強襲降下船の1個艦隊で国家主席の海上封鎖を突破した。その先陣を務めたのは、ギャラックスより(ダヴィオン)重近衛隊が使っていた1ダースのコンキスタドール級(降下船)である。サンドヴァルの第2ロビンソン特戦隊は、同盟シンパの援護を受け、ロストック大陸に上陸した。シンパたちは宇宙航空管制センサーを無効化し、人影まばらな大陸に降下地点を設定したのである。大陸上には(カトリーナ派の)第3ロビンソン特戦隊がおり、名ばかりの公爵とその同盟部隊の迎撃に入ったが、第2特戦隊のメックと数個装甲騎兵大隊が素早く展開し、第3特戦隊を同盟の降下地点から30キロメートルのところで足止めした。

 ランド=ダヴィオン元帥は第1南十字星部隊と重近衛隊でブランズウィックを叩き、通常歩兵2個旅団と1個装甲旅団からなる敵に遭遇した。王党派はこの大陸にメックを配備しなかったが、タフで(しかし短い)ブランズウィック争奪戦を行った。

 アーダン・ソーテック大元帥はサンドヴァルに遅れること一週間、第2ケチ戦闘部隊、ダヴィオン軽近衛隊と共に降下したが、彼のタスクフォースはサンドヴァルのように幸運ではなかった。ソーテックは突入中に、ケチ戦闘部隊のうち1個戦闘隊と軽近衛隊の降下船数隻を失った。彼はサンドヴァルのいるロストックから200キロのところに降下し、すぐに第3特戦隊とジャクソン・ダヴィオンがロストックに配置した装甲旅団の左側面に移動した。(ジャクソン)ダヴィオンは、ソーテックが上陸してから二日後に、追加の数個機械化・装甲連隊、コムスター第299師団の1個レベルIIIを送り込むのに成功し、同盟のタスクフォース同士が容易に合流するのを妨げた。しかしながら、彼らは7月10日に合流をやってのけた……数日間に渡ってサンドヴァルと第3特戦隊が争っていたゲーブストン峡谷に、ソーテックは軽近衛隊の1個大隊を押し込んだのだ。

 ソーテック、ランド=ダヴィオン指揮下の同盟タスクフォースは国家主席の部隊と戦い続け、5週間の戦闘後、ブランズウィックの大半を解放し、残った3個防衛旅団を押しやった後で、第1南十字星部隊がハンマーとなり、ソーテック軍が鉄床となってとどめの一撃を放った。しかしながら、第3特戦隊と2個通常旅団以上がいまだ大陸に残されていたのだった。

 ヴィクターは11月8日に星系にたどり着き、FCS〈メリッサ・ダヴィオン〉とフォックス級4隻を持つ事実上の大艦隊を率いていた。彼らに立ち向かったのは、アヴァロン級FCS〈ルシアン・ダヴィオン〉、FCS〈アレクサンダー・ダヴィオン〉、2個のフォックス級だった。この艦隊戦(第一次継承権戦争以来、中心領域で最大の戦いとなった)は、ニューアヴァロン軌道上で一時間以内に終わり、3隻の艦が撃沈し、2隻の王党派所属艦が降伏し(そのうち1隻が〈ルシアン・ダヴィオン〉)、参加した全艦が大打撃を被り、1隻が撤退する(このフォックス級FCS〈ムルマンスク〉はパイレーツポイントから星系外に脱し、以降目撃されていない)結末になった。その日、ヴィクターはブランズウィックに降り立った。伴っていたのは、第23アークトゥルス防衛軍、第6南十字星部隊、第10ライラ防衛軍、第1NAIS候補生隊、アウトランド軍団、第1聖アイヴス槍機兵隊1個大隊だった。

 ジャクソン・ダヴィオンは同盟の攻勢に備え、第5ドネガル、第17アヴァロン装甲機兵隊と、1個装甲機械化混成旅団を第3ロビンソンの援軍に送り込んだ。12月半ば、同盟側が完全にブランズウィックを確保すると、その攻勢は始まった。サンドヴァルとソーテックがいまだこの大陸の重王党派部隊と戦うなか、ヴィクターは進撃し、5個重旅団の戦力で激しく攻撃した。

 ソーテック、サンドヴァルは王党派と機動戦を行い、幾度か離脱するあいだに、ヴィクターが移動して、第5ドネガル、第17アヴァロン装甲機兵隊と戦った。六週間近い激しい戦役で、カトリーナ国家主席がニューアヴァロン市民にどんな手を使っても同盟に抵抗するよう呼びかけたことでさらに状況が難しくなったにもかかわらず、ブランズウィックは解放され、第5ドネガルと2個通常旅団は壊滅した。不幸にも、この過程で同盟は第23アークトゥルス防衛軍とダヴィオン軽近衛隊を失い、第17アヴァロン装甲機兵隊の退却が可能となった。第17がいなくなると、第3特戦隊もまた引き上げた。戦いはアルビオン大陸とアヴァロンシティをかけたものに移った。

 連携した同盟タスクフォースは、3067年の2月10日にアルビオン大陸の南端に上陸した。ランド=ダヴィオン元帥率いるダヴィオン強襲近衛隊と第1南十字星部隊が先陣を果たした。ポートランド近郊の海岸線に設置された大砲、塹壕にこもった重戦車との二日間の熾烈な戦いで、彼らは重い損害を出したが、タスクフォースのための橋頭堡を勝ち取った。第19アークトゥルスと第17アヴァロン装甲機兵隊、数個通常部隊・市民軍戦闘隊が来ると、2個RCTは内陸で戦い続けた。だが、ヴィクターが援軍を送り込む前に、第10DLC(デネブ軽機兵隊)が同盟の側面に電撃的な攻撃を仕掛け、これによって攻撃戦線は崩壊し、王党派は一日の戦闘で1個旅団以上を包囲、殲滅することができたのである。

 この攻撃で強襲近衛隊と第1南十字星部隊が崩壊したが、生存者たちはクーパー元帥の下で旅団として再編成され、戦線から外された。翌日、ヴィクターは押し進んだ。彼はアルビオンの中心へ進撃を続け、大陸の半分を勝ち取り、7週間でDLCと第17アヴァロン装甲機兵隊を殲滅した。

 カトリーナ(労働者たちが国家主席を攻撃するか、あるいは仕事の手を止めていたことから、すでに惑星の支配権を失っていた)は、3月28日、最も優秀な軍人を失った。ジャクソン・ダヴィオンが陸軍元帥の地位を辞し、埋めようのない空白を作ったのである。国家主席は公的にはサイモン・ギャラガー大元帥をこの地位につけたが、実質的にはワーナー・ギャスト大元帥が指揮を行った。

 一ヶ月以内に、同盟軍はアヴァロンシティに入った。コムスターの第224師団が数週間前に到着しており、素早く同盟軍に加わったが、4月19日に到着した第5南十字星部隊は遅すぎて最後の攻勢に参加できなかった。ヴィクターはアヴァロンシティを守る残った王党派部隊――第19アークトゥルス防衛軍、レマゲンCMM、コムスター第299師団を激しく攻撃した。第1NAISが第299重砲兵隊の弾幕で壊滅する一方、ダヴィオン重近衛隊の3個戦闘隊が王党派3個RCTからの集中攻撃を受けて崩壊した。

 カトリーナの第22アヴァロン装甲機兵隊は一団となって都市内に撤退し、その一方、同盟軍は第299師団と第19アークトゥルスの側面を切り開き、数個中隊、大隊が比較的安全に都市内へと入った。同盟の3個旅団と予備の2個RCT以上に対し、王党派側は3個戦闘隊だけが都市を守っていた。国家主席さえもが、この戦力差は覆せないと知り、3067年4月20日、ジャクソン・ダヴィオンを通して降伏を通告した。

 ニューアヴァロンをかけた長く血塗られた戦いはついに終わったのだ。



ライラ共和国内の戦争


ターカッド

  カトリーナ派、ノンディ・シュタイナー
  ヴィクター派、ピーター・シュタイナー=ダヴィオン

 ヴィクター国王がニューアヴァロンを第一目標とした一方で、真に内戦を終わらせるためにはターカッドと摂政ノンディ・シュタイナーを制圧せねばならなかった。モーガン・ケル大公爵が、この作戦の計画と実行を取り扱い、平和裏に状況の解決を図る一方で、必要なら戦う準備をした。

 ターカッド強襲は3066年8月18日に始まったが、当初は平和的な侵攻であった。第20アークトゥルス防衛軍の分遣隊を連れたピーターはリサウリス・キープの邸宅を訪ね、ライラの摂政である大叔母に接見した。ノンディはピーターが国家主席になるという話をそっけなく拒絶した。8月24日、ケルハウンド、放浪ウルフ氏族、ブルースターイレギュラーズ、第20アークトゥルフ防衛軍が星系に入り、戦艦の援護の下、惑星強襲に動いた。

 ライラ戦艦は向かってくる艦隊の阻止に動き、深宇宙で最初の戦いが始まった。フェランケルのマッケナ級〈ワーウルフ〉に率いられた侵攻軍の戦艦はライラの艦船を叩きのめしたが、代償なしとはいかなかった。ブルースターイレギュラーズのフレダサ級〈ケレンスキーブルース〉が大打撃を受け、アークトゥルスの兵員輸送降下船数隻がLCS〈ユグドラシル〉の前に沈んだ。このミョルニル級はウルフの戦艦に航行不能とされている。ウルフは漂流する〈ユグドラシル〉に船員を送り込み、改装して〈ウィンターウルフ〉として氏族軍に加えた。

 惑星上では2個王宮親衛連隊が侵攻軍を待ちかまえていた。コムスター第66師団(ダグ・ケッセルリング指揮下)は「外部の軍隊」からライラの主星を守る決意を固め、支援を行った。それにも関わらず、8月26日の上陸は比較的抵抗のないものとなった……気圏戦闘機中隊群が橋頭堡に何度も襲来したが、地上部隊による強襲はなかった。侵攻軍――ライラ国家のそれぞれを代表する第1ケルハウンド、両ブルースターイレギュラーズ連隊、第20アークトゥルス防衛軍、ウルフ氏族第4ウルフガード――は、陣地を固めることが可能となり、守備側による調査攻撃を受け流した。

 書類上では、ピーターの汎ライラ同盟は戦力の面で有利だったはずだが、防備の固いターカッドシティから離れた降下地点では、その優位を活かすことができなかった。実際、大規模な戦役が始まる前に、ノンディ・シュタイナーは、スカイア侵攻を中断して到着した第11アークトゥルス防衛軍とアラリオン・イェーガーで陣地を強化することができた。

 最初の大規模な衝突は、10月4日、マーラレン湖でケルハウンドが第11アークトゥルスによる偵察をはねのけたときに勃発した。より重要な衝突は、10月13日、ウルフガード星団隊がメソウ谷で第2親衛隊RCTに激しく押し込まれたものである。平原でなら、氏族軍は数で勝る親衛隊を餌食にできたろうが、ケル氏族長はスタールヴルツェルに部下たちを率い、血塗られた接近戦を行った。翌週、ウルフはその名に違わぬどう猛さで親衛隊RCTに食らいつき、10月21日、ライラ部隊は離脱して、ターカッドシティに戻り、修理、再武装した。

 そのあいだ、ケルハウンドはアラリオン猟兵隊と長期戦を戦った。ジュール・ホフマン大佐の的確な指揮があったにもかかわらず、猟兵隊は経験豊かな傭兵隊に太刀打ちできなかった。ホフマンは賢明にも機動戦を挑み、素早い強襲に着手したが、大規模な損失を避けて逃げ出した。不幸にも1月12日にケルハウンドの降下船が彼らの退路を断ち、猟兵隊の幸運は尽きた。ホフマンは傭兵の強襲で撃墜され、彼女の指導力を無くした部隊はすぐに崩壊した。猟兵隊は装甲車両の92パーセント、歩兵の約70パーセントを失った。メック2個小隊が生き残り、ほとんど脅威とはならなかったが、この戦役が終わるまでピーター軍を悩ませた。

 ブルースターイレギュラーズ、第21辺境世界共和国連隊はそう上手くいかなかった。指揮大隊が第11アークトゥルス防衛軍に撃破され、連隊は大混乱に陥り、生存者たちはアークトゥルスRCTに痛めつけられた。ブルースター連隊の1個大隊が生きのこったが、戦う力は残されていなかった。幸運にも第4スカイア特戦隊で構成される援軍が、スカイアの分離失敗後に、この厄介な国を代表してピーターの合同軍に加わった。ベラ・バラグ少将指揮下の第39アヴァロン装甲機兵隊もまたピーターへの支援を誓ったが、政治的な混乱を避けるために、ダヴィオン系の部隊はこの惑星から離されていた。

 ノンディ・シュタイナー軍もまたドネガルから第24ライラ防衛軍RCTという援軍を受け取っていた。別名スラッシャーズは、第11アークトゥルス防衛軍がターカッドシティに退却して守備に加わってから、ノンディ・シュタイナーの主力機動部隊となった。一方、侵攻軍は首都からわずか100キロメートルのナーゲルリンクに戦力を集めた。そこでピーター軍は立ち止まり、大叔母が同盟で最上級の養成校から彼を追い出そうとするのをあえて待った。両軍は一ヶ月に渡って小競り合いを行った。多数の浅瀬がターカッドシティとナーゲルリンクを分断し、メックと装甲車両の往来を難しくしていた。襲撃と狙撃はどちらの陣営にも本質的な優位を与えず、両軍の指揮官は正面からの衝突が避けられないものと悟った。

 それは3月23日となった。ノンディ・シュタイナーが直々に部隊を率いて、甥の同盟軍とぶつかったのだ。第1王宮親衛隊が攻勢戦線の中心に立ち、第24ライラ防衛軍と第11アークトゥルス防衛軍が脇を固めた。コムスターの第66師団はシュタイナー将軍の予備戦力となったが、第4スカイア特戦隊が第11アークトゥルスを陣地から釣りだし浅瀬での無意味な追撃戦を行わせるのに成功すると、すぐに彼らはもっと積極的な役割を行うようになった。ピーター・シュタイナー=ダヴィオンは自分の部隊の指揮をとり、この戦役ではじめてファフニールに乗って戦場に出た。ケルハウンドは第1王宮親衛隊と第24ライラの間に挟まれていることに気づき、その一方で、第20アークトゥルス防衛軍は第66コムガード師団と親衛隊からの分遣隊に押しまくられた。両軍は死力を尽くしたが、ピーターは麾下の部隊を解放し、戦況を有利に導く戦略を思いついた。

 彼はケルハウンドに対し、第24ライラ防衛軍に注視し、側面を叩いて後退を促すよう命令した。これによって王宮親衛隊がケルハウンドに全軍をぶつけたが、傭兵を破ろうという試みはウルフガードによって妨げられた。王宮親衛隊がケルハウンドにかかずらっていたことから、ピーターのアークトゥルス防衛軍は解放され、コムガード師団を積極性と数的優位で叩くことができた。驚くべきことに、コムガード部隊は持ちこたえた――少しの間だけ。同盟軍の気圏戦闘機部隊がコムガードに注意を向けたのである。

 コムスター部隊は崩壊し、ピーターはすぐさま第1王宮親衛隊の側面に部隊を向けた。突然の強襲で親衛隊は分断され、一方は脱出しようともがき、一方は同盟軍によってすぐに戦力低下した。ノンディ・シュタイナーは第24ライラ防衛軍のリスカインド将軍に対し、「いかなる損害が出ようとも」同盟陣地への突撃を行うよう命じた。スラッシャーズには孫娘のサビーヌ・シュタイナーがいるというのにこのような驚くべき捨て鉢な命令を受けたリスカインドはこのような行動の無意味さに気づき、しばし部隊を救おうとした後で、降伏を求めた。

 浅瀬の戦いで同盟軍の戦力が失われたのに伴い、ピーターはターカッドシティに進み、3月27日に最初の戦いを行った。ウルフガードは強襲で最も困難が予測される部分、ヴォータン山とアースガルド指揮所を受け持ったが、施設の防衛は驚くほど軽いもので、氏族人たちは問題なく目標を達成した。ピーター個人の進撃はトライアドの政府施設に対するもので、そう上手くはいかなかった。彼の叔母は第1王宮親衛隊にいかなる犠牲を払っても守り抜くよう命令していたのである。第20アークトゥルス防衛軍はすさまじい損害を被り、敵を崩壊させるまでに、約1/3の戦力を失った。実際、損害はブルースターイレギュラーズよりひどいものだったかもしれない。第1親衛隊を直々に率いていたノンディは、第2王宮親衛隊、第11アークトゥルス防衛軍と共に最後の戦いを行うおうと、同盟軍の包囲を抜け、ターカッドシティから逃げ出そうとした。遺憾なことに、第11は彼女の命令を拒否し、姉妹連隊に降伏した。第2親衛隊は同盟軍に勝つ見込みがなかったが、降伏を拒否した。結果、数日にわたる激しい市街戦が起こり、4月2日、ノンディ・シュタイナーが甥と一対一の戦いで戦死し、頂点に達した。それから数日間、散発的な戦闘が続いたが、4月5日、最後の抵抗が終わった。ターカッドは同盟軍の手に落ち、ライラ同盟での戦争は終結したのだった。




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