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作成:2014/09/16
更新:2014/12/01

フィールドマニュアル:3145 Field Manual: 3145



 "Field Manual: 3145"は、ブラックアウト(3132年)が発生してから13年が経過した3145年時点の中心領域について解説したソースブックです。"Era Report: 3145"と内容がかぶっていますが、フィールドマニュアルは軍事中心の記述となっています。
 フォートレスの内部、デヴリン・ストーンが帰還したスフィア共和国の視点で語られます。




研ぎ澄まされた爪 SHARPENED CLAWS

 ノヴァキャットの反乱の根は、さかのぼると、今世紀が始まる前後に勃発した第二次ゴーストベア=連合戦争にたどり着くが、実際には、氏族とドラコ連合の関係はほぼ最初から悪化していた。ドミニオンによる直接攻撃で、キャットの工業生産能力はほとんど全滅し、戦後、ドラコ連合が課した制限により残ったものは大事にされた。ブラックドラゴンによる民間階級への壊滅的な攻撃を加えると、キャットが戦後に作られたいわゆる「文化保存地区」へと素直に向かったのは不思議ではない。

 だが、すべてのノヴァキャットがこの地位低下を受け入れたわけではない。ひどい扱いに対する憤慨は、すでに戦争が終わる前に噴出しており、それからの数十年で高まっていくのみであった。実利主義的なケサリ哲学がノヴァキャット氏族内に広まる一方で、指導者たちは強制的に貶められた隷属状態(と彼らが考えていたもの)から脱する長期計画を採用した。この目的のために、彼らは、オーダー・オブ・ファイブ・ピラーズ(O5P)の有力者たちの支援を得たようだ。その人物たちは、キャット指導部と数十年におよぶ関係を保ち、新たな神秘階級(Mystic Caste)に関し相互利益を持っていたのである。

 ふたつの出来事が、ついにノヴァキャットを龍の爪から解放するチャンスを与えた。3137年に死んだと思われていたエミ・クリタを匿ったキャットは、王座の真の後継者であるエミと、息子のダイスケを手中にしたのである。その後の3141年4月、恒星連邦のコーウィン・サンドヴァル公爵が近年失われたドラコ・リーチを奪還する攻撃を仕掛け、さらに連合の下腹部を進んだ。このチャンスをつかんだキャットは蜂起した。

 この反乱は、イレースのDCMS駐屯部隊を処刑することから始まった。ジャカーリ・ノストラが繰り返し命令し、エミ・クリタが自制を嘆願したにもかかわらず、ノヴァキャットの鬱積した不満と怒りが、暴力の嵐に結びついたのである。これは賞賛すべきだが、高まった感情が落ち着くと、キャットの戦士たちの多くが、氏族長にスルカイレードを求め、今後、ドラコ連合が名誉を見せる限りは名誉を持って振る舞うことを誓った。ノヴァキャットの反乱は、余計な混乱があったが、見込みのありそうなスタートとなった。

 イレースを解放した直後、キャットはインヤンの占領に動き、それからディーロン管区の元共和国世界多数を奪った。彼らはカタナ・トーマーク元帥の支援という形で後押しを受けた。彼女もまた個人的な理由で王座に対して反旗を翻したのである。彼女の支援によって、予定されていたDCMSの反撃は規模縮小され、キャットの背後に対する圧力は軽減されたが、長期的に見るとほとんど助けにはならなかったのだった。

 管領トラナガは反乱に対して、恒星連邦への全面侵攻を準備中だった兵士たちを解き放った。目標となったのは、特にトーマーク元帥の戦力であり、イレース自体を脅かしさえしたのである。主星が危機に陥り、最大の仲間が追い詰められると、キャットは綿密な計画を放棄し、本拠地と民間人を守るためにイレース管区にとって返した。窮余の一策たるルシエン強襲が計画されたが、実行に移される前に、管領トラナガの戦力がキャットに襲いかかった。イレースとカゴシマでの最終決戦は3143年1月に終わった。ドラコ連合は氏族の民間人を手荒に扱ったことから、ノヴァキャット氏族は中心領域から消滅したのだった。反乱を続けたカタナ・トーマークは、3月に敗北し、ルシエンで投獄された。








日蝕

 50年にわたって、恒星連邦はスフィア共和国の最も近しい同盟国であった。HPGのブラックアウトで混乱が生まれた後でさえも、恒星連邦は、ハリソン・ダヴィオン国王の指導の下で、我々と共に暗闇に立ち向かったのである。ハリソンが死んで、息子のケーレブが後を継いだのに加えて、レヴィン総統が第X宙域の外の全てを放り出すと、両者の関係は断ち切られ、ダヴィオン家は重荷に単独で対処せねばならなくなった。



国境通過 BORDER CROSSINGS

 ドラコ連合がドラコリーチを征服した後、コーウィン・サンドヴァル公爵は、龍が足場を固める前に逆襲を行った。ニューアヴァロンに援軍を拒否された彼は、退役した老兵の徴兵を含め、ドラコ境界域から使える全ての兵士をかき集め、同時に懐のコインで雇えるすべての傭兵を雇った。3141年4月、サンドヴァルの攻勢は敵の不意を打つのに成功し、連合の下腹部に突き進んでいった。

 だが、サンドヴァルは知らなかったのだが、管領トラナガは恒星連邦侵攻のため密かに部隊を結集させており、押し寄せるAFFSはそこに直接突っ込んでいったのである。7月までに、侵攻は勢いを緩め、イルールゼン、フアン、ニューアバディーンなど重要な世界いくつかに集中した。この侵攻(ペラヨ作戦とサンドヴァルの幕僚が名付けた)で一番前進したのは、三週間におよぶアナポリスの首都メアリーランド包囲戦であった。この部隊は首都に押し入ろうと六回攻撃を仕掛けたが、そのたび、死にものぐるいの防衛部隊に跳ね返された。七度目の強襲計画は廃棄された……イルールゼンに後退してここで包囲されている恒星連邦軍を強化するよう命令を受けたのである。

 サンドヴァルは初戦で成功を収めたにもかかわらず、ドラコ・リーチで数十年にわたって見られたような泥沼に陥ってしまった。新年まであと少しというところで、戦闘はわずか5つの世界に帰着した……イルールゼン、ニューアバディーン、エリデアIV、シストリア、フアンである。これらの世界で戦線を保つように命じられたウルフ竜機兵団とリュウケンは、龍がノヴァキャットの反乱に対処するあいだ、サンドヴァルの連隊群を釘付けとした。同時に、チャンスと見た予備のDCMS部隊がドラコ境界域国境の世界に襲撃を仕掛け、サンドヴァルが紛争にさらなる戦力を注ぎ込むのを妨げた。ケーレブ・ダヴィオンがカペラ大連邦国への侵攻に備えて援軍を拒否し続けたため、これはさらに悪化したのである。

 3143年1月、ノヴァキャットの反乱が頂点に達したことは、ペラヨ作戦の終わりの始まりを伝えた。竜機兵団とリュウケンが相当数の援軍を受け取るまでさらに六ヶ月あったのだが、サンドヴァルのアナリストたちは、管領トラナガがすぐにも侵攻軍を追い出すことに注意を迎えるだろうと公爵に納得させた。国王からの支援なしでは目標を達成する力がないことに気づいたコーウィン・サンドヴァルは段階的な退却を命令し、AFFS兵は8月にエリデアIV、9月にシストリアを離れた。全面退却命令は12月25日に出され、1月末までにイルールゼン、ニューアバディーン、フアンから最後のサンドヴァル軍がいなくなった。

 すべての懸念がなくなった管領トラナガは、恒星連邦を侵攻する計画を進めた。ノヴァキャット相手に被った損失から回復するのに3143年の大半を費やしたトラナガは、3月に大規模な侵攻に着手して誰をも驚かせた。失敗に終わった侵攻からかろうじて戻ったところだったドラコ境界域軍は不意を打たれたが、それにも関わらず、迅速だが全力の防衛に身を投じた。ロビンソンへの侵攻はDCMSの作戦計画者が期待していたよりもゆっくりだったが、辺境回廊への侵攻は早いテンポで進行した。



パルミラの災厄 PALMYRA DISASTER

 ケーレブ・ダヴィオン国王は数年かけて、カペラ大連邦国への大規模な侵攻(自らサンシャワー作戦と名付けた)の計画を練った。間違いなく曾祖父ハンス・ダヴィオンのやり方に刺激を受けたケーレブの目的は、カペラ大連邦国を永遠に無力化することだった。彼はAFFSの大半を予備とし、他の目的に使うのをかたくなに拒否して、戦力の多くを無意味な状態にした。ドラコ連合の侵攻というニュースはケーレブを怒らせたが、予想されるような理由からではなかった。自国が攻撃に晒されているからではなく、彼のアイディアを盗むものがいたからなのだ。この侵略を跳ね返すのに軍隊を使わねばならないということは、カペラ侵攻の計画を放棄することを意味している。ニューアヴァロンからの報告によると、国王は夢を諦めたくなかったようだ。

 最終的に常識が――あるいはアドバイザーたちの言葉が――勝利し、ケーレブは龍と対決すべくコアワード側に計画を移した。サンシャワー作戦のために集めた兵士たちを再利用した彼は、最高の防衛は優れた攻勢であるとの決断を下し、マンドラゴラ作戦、圧倒的戦力による連合管区主星ニューサマルカンド強襲作戦を作り上げた。彼の計画はドラコ連合の中心部を叩くことで、連合の戦力を恒星連邦から引き揚げさせ、自国の内部を守ることであった。ケーレブはパルミラを集結地点に選び、レイヴン同盟(氏族長と個人的な関係を持っていた)に海軍力の強化を依頼した。マッケナ氏族長はケーレブの計画に戦艦数隻を提供すると約束し、ケーレブはパルミラでその到着を待った。

 3144年6月19日、ケーレブの計画は彼の周囲で崩壊した。見事に実施された不意打ちが、AFFSをパルミラ星系に封じ込め、軌道上の戦力を迅速に片付けたのである。宇宙での損失の中には、マクファーデン・スカイストームの集中攻撃で沈んだFSS〈ルーシャン・ダヴィオン〉が入っていた。これがこの戦闘のターニングポイントとなり、地上の部隊が孤立した。ドラコ連合のポケット戦艦は砲門を地上部隊に向け、ほとんど被害を受けることなく、容易に攻撃することができたのだった。丸一日かけて、惑星の兵士たちに壊滅的な砲火が降り注いだ後で、DCMSの地上部隊が最後の仕上げをするために上陸した。次の一週間で、ケーレブ国王が集めた13個のAFFS部隊は、わずか1個までに戦力減少していたのである。生存者の大半が捕らえられた。

 ケーレブ自身は奇跡的に死を免れた。最初の攻撃の際、第1親衛機士団の視察を行っていた彼は、基地が軌道砲撃で破壊される前に、どうにか機士団の一部と共にタワーマウンテンの中に逃れ得た。国王と部下たちは6日間山中で生き延び、ドラコ連合のパトロールを避け、クーパーにある二番目の降下港に歩を進めた。6月25日、この小部隊は、惑星首都ソールを拠点に活動していた第5〈光の剣〉連隊のパトロールに発見された。ケーレブ・ダヴィオンを殺さないように管領からの命令を受けていたDCMSのメックは、国王のマークスマン戦車を包囲し、ソール本部からの命令を待つ間、国王を閉じ込めていた。王たる気高さがケーレブを攻撃に駆り立てたが、〈光の剣〉連隊は慇懃に距離を保ち、噛みつかれるのを拒否した。それはマークスマンのガウスライフルが剣持ちシローの腕を落とすまでの話だった。フラストレーションを募らせたメック戦士は、戦車の砲塔を潰し、国王を殺したのである。二日後、パルミラ平定は完了し、恒星連邦指導者を捕らえるという褒賞を得ることは出来なかったのだが、国の中への道は広く開かれたのだった。

 ケーレブ自身の死は戦争にほとんど影響を与えなかったものの、これほど多くの戦力が失われたことはAFFSにとって致命的な一撃となった。コーウィン・サンドヴァルは、主君からの支援なしでやっていくのに慣れきっていたのだが、すぐに懸念すべき大きな問題がやってきた。ロビンソンを侵略者から守っていたルツェルン、ロチェスターのボトルネック部分が8月前半に陥落し、境界域主星への道が開かれたのである。8月23日、サンドヴァル公爵は、やってくる第7、第8〈光の剣〉に対し、生まれ故郷の防衛を取り仕切った。だが、防衛側はDCMS軍にかなわず、月末までに公爵は死亡し、ロビンソンは龍の手に渡ったのである。



第二戦線開幕 A SECOND FRONT OPENS

 あたかもドラコ境界域で負った損失では充分でないという風に、恒星連邦のもう一国の伝統的な敵もまた国王の死から5ヶ月後に侵攻を開始した。ダオシェン・リャオのカペラ大連邦国が、三手に分かれて国境をまたぎ、チコノフ、ヴィクトリア、ニューシルティスを狙った。すぐにも明らかとなったのは、ヴィクトリアとニューシルティスが最初の目標であり、チコノフ方面攻勢よりも遙かに早いスピードで進んでいることであった。3144年末までにヴィクトリアは陥落し、カペラ人たちは40年前(アマンダ・ハセク公爵のヴィクトリア戦争)に奪われたこの工業世界が戻ったことを祝福した。主星たるニューシルティスにカペラ軍が到達すると、ニューシルティス女公自身が攻撃に晒された。ダオシェン・リャオが視察にやってくるとのニュースは、カペラ人に大きな力を与え、デスコマンドがハセク王宮の襲撃に成功し、女公を拐かしたことは、恒星連邦の防衛部隊を士気向上させていた放送を終わらせたのである。ダオシェン・リャオはハセク女公を被告とするまさに馬鹿げた裁判を取り仕切り、大連邦国に対する犯罪で死の判決を下した。数ヶ月前にケーレブ・ダヴィオン、コーウィン・サンドヴァルを失っていた恒星連邦は、強力なリーダーシップを欠く状況に追い込まれたのである。ジュリアン・ダヴィオン(ケーレブの従兄弟であり、数年間ライラ共和国にいた)が国王に指名され、エリック・サンドヴァル=グローエルが摂政となった。アマンダ・ハセクのカペラ境界域君主としての地位は息子のアレクサンダーが受け継ぎ、境界域の世界いくつかで侵略者に対するゲリラ戦を行った。

 チコノフ戦役はニューシルティス方面攻勢よりもゆっくりと進んだ。3145年、最初の攻撃は失敗した……首都チコグラッドを守る全身全霊の防衛が、第8カペラ予備機兵隊を都市から押しのけたのである。だが、アーロン・サンドヴァル公爵の生命が代価となった。二度目の攻撃は、より巧妙なやり方で始まった……8月、デスコマンドがチコノフに浸透したのである。彼らは相当数の民衆の根底に流れるカペラ支持の感情を利用して、マーシャル・オブ・チコノフと名付けた市民兵の部隊を立ちあげた。数ヶ月におよぶデスコマンドとマーシャルたちの活動によって惑星は脆弱となり、10月、二度目の強襲が行われた。恒星連邦の防衛部隊は持ちこたえることが出来ず、チコノフは聖戦以来初めてカペラの世界となったのである。








カペラ大連邦国





星の海 THE SEA OF STARS

 カペラ海軍は残った2隻の重巡洋艦、〈イルサ・ヒョン〉、〈アレイシャ・クリス〉を運用し続けている。両戦艦と同行する強襲降下船艦隊がどこにいるのかは現在不明であるが、セレスティアル・リワード作戦に直接関わってはない。ダヴィオンのコルベット〈ニューシルティス〉は、境界域主星の上空で、1個飛行団連隊と同行するポケット戦艦に破壊された。カペラ人は取り替えのきかない巡洋艦をリスクに晒すのをひどく嫌がっているので、これらヴェンジャンスDC、ルン・ワンによる艦隊は、いまや艦隊の主戦力となっている。





内壁 THE INNER WALL

 長い間カペラ大連邦国の防衛を支えていたカペラ郷土防衛軍は、サン=ツー・リャオの手でゆっくりとした再建が図られた。これは、兵員・装備の大規模な増強を隠すための巧妙な欺瞞の一部だったのだ。捕らえたカペラ人兵士の証言により、CCAFの最新連隊に配属された兵士たちの多くが、最初はカペラ奥深くの目立たぬ郷土防衛軍に配属されていたのである。これらの連隊には、先進バトルメックが書類上「訓練用装備」として配備されることがよくあり、遠隔地の施設に置かれた。郷土防衛軍連隊のうち多くが聖戦期のプリミティブ・バトルメックを若干数、歩兵支援用に維持していたことから、演習を視察した者たちが何らかの疑いを持つことなく、前線メック戦士の候補者たちが腕を磨き続けることが出来たのである。





カペラ工業の準備状況 THE STATE OF CAPELLAN INDUSTRY

 大量に備蓄されたハイテク軍需装備と、実は聖戦後に民間生産向けに転換されなかった生産工場群を持つCCAFは、氏族を除いて、おそらく中心領域で最も補給の良い軍事部隊である。聖戦後、中心領域の各勢力は不要な軍需装備をモスボールしたのだが、リャオ家は密かに聖戦前と同じ勢いでバトルメックと車両を大量生産し続け、スペアパーツ、弾薬、稼働する車両を秘密の保管庫やダミーの市民軍に送り込んだ。生産に満足しなかったカペラ人は、自由世界同盟、シーフォックス武器商人の主要顧客にもなり続け、リャオの戦争準備をさらに追加した。


カペラ共和区
 長きにわたって、大連邦国の工業中心地であったカペラ共和区は、3105年にシェンリ・アームズを失ったことで生じた穴の大半をふさいだ。工業の巨人であるセレス金属は、残ったシェンリの企業資産を買い取り、カペラにあったオストロックの生産ラインを閉鎖・転換して、リャオ家のトレードマークであるユー=ホワン指揮メックを生産した。これら新型のユー=ホワンは、セレスの技術者たちが追加した頭部の凝った紋章により、一目で見分けることができる。シェンリのドーラを作るつもりがなかったセレスは、バーガン工業にサブライセンスし、アレスの小規模な製造拠点での生産を行った。カペラ共和区の航空宇宙産業もまた、暇をもてあましているわけでなかった。オーバーロードA3、ヴェンジャンスDCポケット戦艦の支援を付けた新飛行団連隊が多数現れたのが確認されている。どうにかして、アースワークスは我々に気づかれることなくこれらの船の生産を増やすことが出来たのだ。さらなる懸念となっているのは、カペラ境界域でカペラ軍のアサルト・トライアンフが多数活動していると報告されていることだ。ラスプール=オウェンズ社が我が国の設計をコピーして生産したとの懸念がのぼっている。


サーナ、チコノフ共和区
 ナンキン、チコノフのバトルメック生産ラインを再稼働させることでスフィア共和国の防衛力を強化するという我が国の取り組みは裏目に出た。カペラ人が両世界を占領し、今では生産物資をCCAFに供給しているのである。カロン製のライフルマン、ウルバリーンがリャオ防衛軍、長城旅団に供給されており、チコノフ防衛軍はコシチェイとサンダーボルトを大量に調達しているのをプライドの一点としている。ホリス社やタオ・メックワークスのような地元で長くやってる製造業者は、最近、生産を強化したのだが、綿密な調査によると、現在に至るまで生産は少ないままだ。旧式のステルス型クルセイダーの数が増えているのは、スークでCRD-8Lと一緒に生産されていることを示唆されているのかもしれない。リャオ家はニューヘッセンで捕獲したメックを採用したくないようだ。ルックについては相当数を前線に送っているのだが、ブレードは惑星外の訓練部隊に送っているとされている。


シーアン共和区
 共和国諜報組織の目から完全に隠されているのだが、聖戦が終わって以来、シーアン共和国の工業施設が生産を減らすことはなかったのではないかと我々は疑念を持っている。それどころか、この地域の軍需産業はゆっくりと拡大していると思われる。多数のアサシン、ファイアビーが潜む獅子(ヒドゥン・ライオン)連隊に現れていることは、ヘレスポントが両機種の生産をやめたのではなく、隠し補給庫に両ラインの完成品を備蓄していたことを示唆しているようだ。だが、ヘレスポントの拡大する市場独占に挑む者がないわけではない。CCAFを代表する重メックというカタフラクトの座がヘレスポントのティアン・ゾンに脅かされていることから、アースワークスは反撃として、カタフラクトの優れた生存性を喧伝し、ヘレスポントのレイスの対抗機種であるGRF-4R型グリフィンを生産した。負けじとセレス金属も、ラオ・フーがどちらの対抗機種よりも優れていると主張してきた。すでにシーアンの工場でラオ・フーの部品を大量生産しているセレス金属は、ヴィクトリアが失われた後に、サンダーのラインをシェンリのバトルメック生産用に変更した。ラオ・フーとヤオ・リエンを持つセレスは、どちらの競合他社にもすぐ負けるという危険性は無い。


聖アイヴス共和区
 聖アイヴスが歴史的に誇ってきたバトルメック製造産業は、聖戦から完全に回復することはなかった。この地域では、ピラジャーやトレバルナのような強襲メックを多数生産しているが、聖アイヴスにある企業の多くが民間の生産に投資するという中心領域全体のトレンドに従った。ルーツに戻ったヒルドコ・インタープラネタリー社は、3089年に、新しい民間航宙艦の開発を開始した。3102年に完成したこの軌道上ステーションは、カペラの貿易企業にマーチャント級航宙艦を供給している。聖アイヴス共和区の軍需産業分野において、近年で最大の変化は、実のところニューシルティスの征服である。カエサルはカタフラクトと似ていることからすぐさまCCAFに受け入れられたが、ガルム(CMM向けに大量生産されている)のようなジョンストンの他製品はあまり受け入れられてないようだ。


ヴィクトリア共和区
 ハセク軍が、3105年、ヴィクトリアからカペラ軍を追い出した際、撤退するCCAFは、工場を収めた地下トンネルを崩壊させ、シェンリ・アームズを破壊した。ダオシェンが王座についたのに伴い、統一政体はこの損失を部分的に埋めるために、デトロイトを大連邦国に贈った。デトロイト・コンソリデーテッド・メックワークスは、両国に平等な供給を続け、人気偵察メックのデュアン・ガンがなくならないようにした。ハセク女公は、シェンリ・アームズの残った部分を再建のためカロン工業に売却した。ヴィクトリアはカペラ人の手で奪還されたが、軍事戦略調整官はダヴィオンの機種であるジャガーメック、ペネトレーター、シャドウホークを工場で生産し続けるか、カペラで一般的な機種を生産するために改装するか、まだ決めていない。








恒星連邦





パルミラの大敗

 ひとつの世界を巡る戦闘で、戦場になることすら想定されてなかった戦闘で、AFFSは前線バトルメック戦闘部隊の20%以上を失った。3143年6月19日に行われたドラコ連合のパルミラ強襲は、ひとつの国家を復帰できないきりもみ状態に追い込んだ。かつて、オッズメーカーたちは恒星連邦がニューアヴァロンを守れるかについての賭けを行っていた……いまはドラコ連合とカペラ大連邦国のどちらがそうするかについて賭けを行っている。

 サンシャワー作戦(カペラ大連邦国侵攻作戦)に選ばれた13の部隊は、南十字星・カペラ境界域国境の重要な世界に分散して配置されていた。ケーレブ国王は、カペラ大連邦国への侵攻を直々に率いるためニューアヴァロンを離れたわずか数日後、ドラコ連合がドラコ境界域に強襲を行ったと聞いた。大胆にもクリタ家が先に手を出し、従ってリャオ家を征服する綿密な計画を台無しにされたことにショックを受け、怒ったケーレブ・ダヴィオンは、もうひとつの隣国を謙虚にする新たなマスタープランを作り上げた。ドラゴンの首を切り落とし、レイヴンとベアが死体をついばむことになるであろうマンドラゴラ作戦である。

 そうなる代わりに、パルミラはケーレブの墓場と碑文になったのである。ケーレブの行動は、恒星連邦で過去最大の軍事的な失敗の一つにつながった。バトルメック1000機、30個装甲連隊、40個歩兵連隊、多数の気圏戦闘機が、パルミラで破壊されるか奪われたのである。ドラコ連合によるすべてを押し流すような災厄の中で、恒星連邦で最高の指揮官たちの一部と、恒星連邦で最高の戦士一族の一世代分が丸ごと消滅したのである。

 13という不吉な数はさておき、この大失態の責任の大半はケーレブ・ダヴィオンの肩に乗せることかできる。一箇所にあまりに多くの兵士たちを置くというのは、AFFSのあらゆる慣行に反するものである。さらに、必要な航空宇宙防衛を見誤ったことで、惑星の守りが薄くなった。彼は、〈ルーシャン・ダヴィオン〉に、部隊の真上の低空静止軌道に入るよう命令を出した。戦艦は攻撃に対応するのが難しい位置におかれ、艦載級ミサイル攻撃に対してきわめて脆弱となったのである。しかし、死んだ国王に非難を浴びせるのは簡単なのだが、彼の失策は連合がいつどこで攻撃をしかけるべきか正確に知っていたときにのみ致命的となるものである。

 マンドラゴラは恒星連邦とレイヴン同盟の共同作戦だったと思われる――レイヴンが姿を現さなかったというだけで。あてにしていたレイヴンの支援が来なかったことから、恒星連邦の強襲計画はすでにスケジュールから遅れていた。この事件と、レイヴンが一ヶ月で恒星連邦の世界3つを奪ったことで、我々の警報ベルはオフにされた。その後の調査によって、レイヴン同盟上層部が恒星連邦をクリタ家に売り渡したという唾棄すべき証拠が持ち上がった。引き替えにドラゴンはウッドバイン方面リムワードのダヴィオン世界をすべてレイヴンに引き渡した。

 ジュリアン・ダヴィオンがこの情報を使ってするかもしれないことは不明である(国のひどい状況を鑑みると、彼はなんでもできる)。そうなのだが、恒星連邦への静かな移動から姿を現したら、我々はこのデータを彼に与えることを考えるかもしれない。共和国とレイヴンの将来の関係がどうなるかを考えると、注意深く考えないとならないだろう。なぜなら、この裏切りは、レイヴンの航空宇宙戦力とドラコ連合の地上戦力が組み合わされたらどれほどのインパクトをもたらすかを如実に現しているからだ。


パルミラの待ち伏せで失われたAFFS部隊
 第2恒星連邦装甲機兵団
 第1恒星連邦槍機兵隊LCT
 第1親衛機士団
 第22アヴァロン装甲機兵隊LCT
 第27アヴァロン装甲機兵隊LCT
 第5ケチ戦闘部隊LCT
 第2南十字星部隊
 第4南十字星部隊
 第7南十字星部隊
 ダヴィオン重近衛隊衛RCT
 第2ダヴィオン近衛隊衛RCT
 第3ダヴィオン近衛隊衛RCT
 第3ロビンソン打撃隊LCT









恒星連邦槍機兵団 FEDERATED SUNS LANCERS

 3132年のAFFS防衛再武装プログラムの一環として、恒星連邦槍機兵団は完全な1個旅団に拡大された。32世紀初頭、実戦に参加した時点で、第1槍機兵団LCTはすでに5個バトルメック中隊に増強されており、聖戦後からバトルアーマー戦力を2倍にしていた。このメック中隊のうち3個と追加のバトルアーマー連隊を中核として使って、3個の新しい部隊が作られ、すぐさま実戦配備された。指揮するのは、槍機兵団、恒星連邦装甲機兵団出身の経験豊かな士官たちであった。養成校の卒業生が流入したおかげで、槍機兵団の新しい部隊は、それなりに早く、一体感を持つことが出来た。

 残念ながら、第1、第3槍機兵団は、最近の戦闘で失われている。第1槍機兵団はパルミラでの連合による強襲で壊滅し、第3槍機兵団はチコノフで戦闘能力を減じ、生存者は一時的に第8南十字星部隊に入れられ、それから第2、第4槍機兵団に移った。トーガー・マクガハー将軍(サンドヴァルのソードスォーンが恒星連邦に忠誠を誓う直前に、RAFを退役して加わった人物)が第4槍機兵団の指揮を執っている。アディソン・ドナキュー元帥がパルミラで死亡したことから、最近、マクガハーが旅団指揮官に昇進した。


第2恒星連邦槍機兵団
 第2槍機兵団は、全機体が最低85トンの強襲バトルメック中隊を中心に結成された。この中核から、第2は槍機兵団で専門の強襲部隊に発展し、現在では、70トン未満のバトルメックは存在しない。重装甲部隊もまた同じく強力である。各大隊は4個中隊からなる強化大隊となっており、そのうち1個中隊は、パラディン、デストリエール包囲突破戦車のような超重量の自走砲で構成される。強襲部隊の限られた機動力を相殺するために、騎兵部隊は主に高速ホバーとVTOLで輸送されるバトルアーマー兵で構成されている。

 その重量により、第2槍機兵団は数で負けていたにもかかわらず、ニューヘッセンに立ちふさがる第2マッカロン装甲機兵団と戦うことができたのである。それでもなお、周囲の世界すべてが落ちたことで、ケースルトンに後退せざるを得なくなった。カペラは3144年12月にニューヘッセンを手にすることができたが、今日まで続いている草の根の抵抗活動に苦しむことになった。


第4恒星連邦槍機兵団
 第4槍機兵団は、純粋な騎兵部隊であり、時速60キロメートル以下の巡航速度を持つ機種は部隊内に存在しない。その軽重量を考え、第4槍機兵団は気圏戦闘機の重支援に依存している。従って、このブラックペガサス航空大隊の戦闘機は、爆装アローIVを使った航空爆撃にきわめて習熟している。

 緒戦のあいだ、第4槍機兵団はチコノフで戦ったが、バー・コブラを撃破した一方で、重い損害を受けて退却した。はるばるエクセターにまで後退した第4装甲機兵団は、現在、カペラとの戦争の外に置かれており、最近昇進した新指揮官、ウォレス・グリン准将の下で補修中である。








アヴァロン装甲機兵隊 AVALON HUSSARS

 聖戦後の回復期に策定した計画を続けているアヴァロン装甲機兵隊旅団は、既存の部隊をRCTに拡大することなく、新しいLCTを加えることで、戦力を再建した。これによって、共和国時代の恒星連邦で、装甲機兵隊は抜群の火消し部隊となり、国家の脅威に対処すべく縦横無尽に駆け巡った。

 カペラ、ドラコ両方面で戦争が勃発して以来、アヴァロン装甲機兵隊は両方の脅威に参加し、しばしば最も激しい戦いに加わった。できる限りのベストを尽くした各連隊は勇戦したのだが、損害なしにとはいかなかった。歴史に名高い第22装甲機兵隊と、新部隊の第17装甲機兵隊は、パルミラの大敗で全滅した。そして、しばらくの間、第42の兵士たちのことが忘れられることはないだろう……ヘレンでDCMS2個連隊と直面した「恒星連邦の息子たち」は、あと少しで侵略者たちを倒すところだったのだが、荒れ地に逃げるのを余儀なくされたのである。ヘレンで連隊の生き残りたちがゲリラ戦を繰り広げるとの根強い噂が残っている。


第1アヴァロン装甲機兵隊LCT
 ハリソン・ダヴィオンは第1ダヴィオン近衛隊にマークソン駐屯という「名誉」を与えたが、ニューアヴァロンの近衛兵が必要なくなったわけではなかった。第1装甲機兵隊は恒星連邦主星を守る任務に選ばれたが、重近衛隊のように国王と共に移動することはなかった。35年におよぶ儀式的な任務は第1装甲機兵隊の見栄えを良くしたが、戦闘能力を高めることはなかった。この理由から、ここ12ヶ月、第1装甲機兵隊は集中的な訓練プログラムを実施し、玉座に差し迫る脅威に対処するため、腕を磨いている。


第2アヴァロン装甲機兵隊LCT
 恒星連邦の地球回廊に駐屯している第2装甲機兵隊は、この十年で絶え間ない低強度紛争の雨に晒された。大量の補給を受けているのであるが、新しい物資では戦闘で失われた大勢の古参兵を補充することは出来ないのだ。新兵たちを受け入れるにつれ、部隊の戦闘能力は深刻に低下している。かつてのような技量は持ってないのだが、第2はきわめてよい補給状況にあり、ヤマシタ少将の着実な指導のおかげで、侵略者に対する手強い敵であり続けている。


第5アヴァロン装甲機兵隊LCT
 シューティング・スターズこと第5アヴァロン装甲機兵隊は、ダヴィオン軽近衛隊のライバルである……AFFSで最速の座を争っているのだ。第5ではアヴァロン装甲機兵隊重装甲大隊でさえも、少なくとも時速50キロメートルをたたき出す。バトルメックのすべてがジャンプ可能であり、大多数が時速100キロメートル以上の最高速度を誇っている。

 スピードと諸兵科連合の戦術的な連携が取れていることは、今年の前半、第3カペラ・チャージャーズがカマルを襲撃したときに効果を発揮した。正面からの戦闘を避けたチャージャーズは、遠隔地の倉庫、輸送鉄道などを叩こうとした。第5は襲撃隊の速度に追いつき、短い惑星「訪問」中にカペラが深刻なダメージを与えるのを妨害したのだった。


第8アヴァロン装甲機兵隊LCT
 第8アヴァロン装甲機兵隊のファイティング・デストリエールというニックネームは、前線部隊で最初にウルトラヘビー攻城戦車、デストリエールが最初に配備されたところから来ている。ヴィクトリア戦争が勃発するわずか一年前に現役復帰した強襲級の第8アヴァロン装甲機兵隊の新兵たちは、第3マッカロン装甲機兵団がスピカを狙ったときに惑星を守っていた。前衛にホバークラフトとVTOLを使った第8は、MACのメック大隊に向かった。だが、MACのバトルメックと遭遇することなく、アヴァロン装甲機兵隊のメックは散り散りになり、デストリエールと支援のアローIVトレイラーの1個中隊が砲門を開いたのである。スピカは恒星連邦の手に残り、第8アヴァロン装甲機兵隊は旅団で最高のLCTという地位を賜った。

 再び間接砲が大きな役割を果たしたのは、第7カペラ・チャージャーズが、カシルのゼネラル・モーターズ工場に損害を与えようとした二ヶ月にわたる攻勢のときである。超重量戦車からの猛烈な砲撃に苦しんだ後、チャージャーズは得るものなく撤退し、後に1/4のバトルメックを残していったのだった。


第17アヴァロン装甲機兵隊LCT
 俗称、ハート・オブ・アヴァロン連隊は、聖アイヴス・センチネルスがフォーティマイルへの深襲撃を仕掛けたときに打撃を受けた。秘密の情報に基づき活動中だったセンチネルスは、第17アヴァロン装甲機兵隊が惑星に下りたってからわずか数時間後に攻撃を仕掛けた。LCTの通常部隊の大半がいまだ荷下ろし中という状況において、アヴァロン装甲機兵隊のバトルメックとバトルアーマーが第2センチネルスの強襲の矢面に立った。カペラの航空爆撃が、ダヴィオンのコロッサス級降下船の1隻を破壊し、さらに第17を痛めつけた。ここには装甲車両と支援物資が満載されていた。

 スティッカル将軍がカシルかサレムから装備を得られない限り、第17アヴァロン装甲機兵隊はカペラ侵攻軍に対して逆襲を行えない状態にある。


第20アヴァロン装甲機兵隊LCT
 聖戦前の時期、第20はAFFSで最高の戦闘工兵を持っているとのふさわしい評判を得ていた。この点において、共和国時代に至っても、この連隊は伝統を受け継いでおり、サンドバッガーズのあだ名がふさわしいものとなっている。3134年、巨大な津波がカルタゴの人口密集地帯を襲ったとき、第20はこの星系を通って移動中であった。サンドバッガーズは、復旧を助けるために戦闘工兵をこの世界に展開した。

 第20の工兵技術は、近年のロビンソンの戦いで再び脚光を浴びた。防衛準備の先頭に立った第20の工兵たちは、首都の入り口とその他の重要地点を地雷原、要塞、掩蔽対空砲台、緊急通路による迷路とした。ドラコ連合軍がロビンソンで受けたダメージの大半は、第20の戦士たちの勇敢な行動と、これらの準備された防衛設備によるものである。第7〈光の剣〉は、第20のせいで通常部隊のほぼすべてを失ったが、この成功は高い代償を伴うものだった。戦後、第20のメックで稼働するのはかろうじて30パーセントとなり、装甲・歩兵部隊はそれより少しまり程度であった。一方、かつて1個連隊であった工兵部門は、わずか1個中隊が現時点で戦闘任務に適した状態である。








タスクフォース・ナバレ

 ジュリアンは寄せ集めの戦力(すでに数年間戦い続けていた)と共にファルコン国境から旅を始めた。その補給線は伸びきっており、指揮官と兵士に深刻な不足が生じていた。ポリーマから旅を始めた彼は、古きダヴィオン/ライラの友好関係がまだ続いていることに気がついた……少なくとも、ライラ国のために少なからぬ血を流したものに対しては。新たな補給物資、いくらかのライラ人志願者と共に、ジュリアンはまずスフィア共和国に向かい、それから恒星連邦に入ることにした。

 修理と再武装する時間だけスフィア共和国宙域にとどまるのを計画していたジュリアン・ダヴィオンは、出発する前に第1ダヴィオン近衛隊を再建するのに必要な人員を募集するか雇用するのを望んだ。カリソンにたどり着く前にこの目的は達成された……第1ダヴィオンでは吸収できないほどの志願兵と三流傭兵部隊(単に補給のために戦う以上の者が一部いた)がすぐに集まったのである。ここからジュリアンは第1ダヴィオン補助隊を作り、(カリソンを経つ前に)第2を作り、この2個旅団をバランスよく再編成した。


第1ダヴィオン近衛隊
 この60年間で、第1ダヴィオン近衛隊の運勢は恒星連邦それ自体と同じく上下してきた。聖戦後に再建してから、部隊のメックは青目のフェニックスを付けており、次の25年間にわたって主君のイヴォンヌ、ハリソンから1キロメートル以上離れたことはなかった。だが、平和な日々が過ぎるにつれて、複数の惑星を侵攻するのに充分な戦力と共に移動するのは「愚かな」行為だとハリソン・ダヴィオンは考え、ついにマークソン駐屯を命じたのである。彼らの亡命(そう考えた)は20年以上におよび、名誉ある部隊を警備隊と変わりのないところにまで落としたかに見えた。この15年間の激しい戦闘は、この部隊を実戦の嵐に追いやったかのように見える。指揮官にして恒星連邦の新たな国王に負けじとついていこうとしているかのようだ。

 ファルコン国境での絶え間ない実戦は、第1近衛隊をいくぶんすり減らした一方で、戦闘に耐えうる経験豊かな部隊に磨き上げた。エドワード・ナナーヴァ将軍(長年実質的な第1近衛隊指揮官であり、現在は正式に就任)は、遙かに年下の主君から課された挑戦を受け入れた。ファルコン国境にいた時期、ナナーヴァは一連の訓練プログラムを始め、旅団の「プレイブック」を作り上げた。これによって、ほぼどんな部隊の組みあわせでも、小規模な戦力レベルでの活動が可能になったのである。


ダヴィオン補助部隊群
 この旅団群は、第四次継承権戦争後にハンス・ダヴィオンがケストレル擲弾連隊を再建したやり方をモデルにして作られている。バトルメック連隊が、2個装甲連隊と1個歩兵混成旅団に支援されるのである。志願兵と小傭兵部隊からなる補助部隊群は、無理からぬことだが、寄せ集めの装備を使っており、いまだ団結を欠いている。

 ショーハン・ソーテックは、ジャスティン・ソーテックの妹である。ジャスティンがソードソーンに加わったとき、ショーハンは彼の成功を願ったが、後に続くことはなかった。共和国と共和国が表すものを信じていたからである。フォートレス・ウォールが上がり、共和国外周部が試練に立たされたことで、彼女の信頼は粉々に破壊された。ジュリアン・ダヴィオンが恒星連邦に戻ってくるとの話を聞いたとき、ショーハン・ソーテックは敵のいる星系いくつかを通って向かった。ジュリアンは彼女の度量を見て、ほとんどすぐ第1補助部隊の指揮官にした。

 アルキメデス・リースもまた王家から共和国に加わった元兵士の子孫である。彼の大大大叔父は自由世界同盟出身なのだが、彼の一族は恒星連邦と長い間良い関係にあった。経験豊かなバトルメック指揮官であるジュリアンは、アルキメデス・リースにいまだ定数割れにある第2補助部隊の指揮を任せた。








自由世界同盟








氏族保護領軍

 氏族保護両軍は、スピリットキャッツ、ノヴァキャット氏族、シーフォックス氏族(旧名ダイアモンドシャーク)、保護領世界の各地元民という、バラバラな勢力で構成される。ヴィジョンに導かれた(当時)スターコーネル・リカルド・ノヴァキャットが、スピリット軍を惑星マーリックに移動させた。軍事的な支援(最初はオリエント保護領、次にシーフォックス氏族スピナ副氏族長領から)を受けたスピリットキャッツ派遣団は、この世界を我が物とした。スピリットキャッツは保護を近隣世界に広げ、3138年、氏族保護領(Clan Protectorate)が公式に誕生した。翌年、氏族保護領の兵士たち(スピリットキャッツ、シーフォックス地上軍、海軍支援、エンジェルII惑星市民軍など)が、ジェシカ・マーリックの戦役を支援し、レグルス軍からアトレウスを奪還した。

 保護領創設以来、崩壊した共和国からのノヴァキャット避難民がゆっくりと氏族保護領に引き寄せられている。これらの難民たちは、保護領の軍事能力をさらに強化した。保護領の軍隊は、法的にFWLMの一部であるが、スピリットキャッツのマーリックへの傾倒と、氏族人の自由世界同盟との関係の性質から、マーリック総帥は注意と敬意を持って保護領軍を扱うようになっている。地域の垣根を越えて部隊をローテーションさせるというLCCCの意向があるにもかかわらず、保護領の各星団隊は近い将来その場にとどまり続けるだろうとアナリストたちは予想している。ウルフ帝国の新たな侵攻を除いては、これら部隊を動かすものはなさそうだ。


シヴァ親衛隊 (Toward New Horizons)
 スピリットキャットのリーダー、ギャラクシー・コマンダー・リカルド・ノヴァキャットが直々に指揮するシヴァ親衛隊は、惑星マーリックを確保するために力を尽くした。以降、ウルフ帝国による所有の神判(「偽氏族」を弱体化させるためのもの)を幾度か撃退している。親衛隊の一部は惑星マーリック代表議員のボディガードを勤め、マーリックにいるときも議会に参加する時も仕事を行う。


ピュリファイアー星団隊 (Righteous Vengeance)
 ピュリファイアー星団隊の各三連星隊は、主に重強襲作戦に使われる。ウルフ帝国に対する所有の神判がほとんどである。少数ながら、戦闘においてボンズマンを取らず敵を殲滅したケースが報告されている。(敵が氏族出身か否かにかかわらず)。また、理由は不明ながら、ピュリファイアー星団隊はウルフ氏族を深く憎んでいるようだ。


オミクロン星団隊 (The Storm Before the Calm)
 公式にはスピナ副氏族長領デルタ・アイマグ所属だったオミクロン星団隊の創設者たちは、氏族保護領の地上部隊として残ることを選択した。この決断はデルタ・アイマグの指導部内で不評を買ったが、オミクロンは拒絶の神判を宣言し、不利な戦いに勝ったのである。交戦においては、長距離のミサイル射撃を浴びせ、近づいてとどめを刺すのを好む。初っぱなの一斉射撃によって、敵軍の決意をくじく様子が何度も目撃されている。


第1保護領ガーディアン (Strength in Unity)
 3138年の氏族保護領結成で、いくつかの世界が氏族の軍事的な保護下に入った。新しい領土によって氏族の戦力は薄く引き延ばされ、拠点をカバーするための新しい方策が必要になった。よって保護領は地元民による新しい2個星団隊を立ち上げた。この地域に強い忠誠心を抱くフリーボーン兵士で構成され、上級指揮官の地位にはスピリットキャット、シーフォックスの戦士が配属される。ガーディアン候補生は、過酷な訓練を受け、階級の神判を突破することが求められる。第1ガーディアンは第2保護領ガーディアンほどのめざましい戦果を上げられていないが、兵士たちは故郷を守ることに専心し続けている。


第2保護領ガーディアン (Unity in Strength)
 第2ガーディアンは、氏族保護領の地元民と氏族の血統を持つ共和国難民で構成される。この星団隊は、3140年にウルフ帝国と自由世界同盟が相互不可侵条約を結ぶ前に、ほぼ壊滅した。幸運にも、第1保護領ガーディアンは、崩壊した第2が再建するに足る人員と装備を一時的に補充することができた。これによって氏族保護領出身者が部隊の大部分を占めることとなり、部隊内の元氏族民たちの一部は居心地の悪い思いをしている。


第1ノヴァキャット臨時部隊
 このノヴァキャット臨時星団隊は、比較的新しい部隊で、共和国崩壊後に避難地を探して逃げてきたノヴァキャットの難民が人員を占めている。報告によると、この星団隊が持つ3個三連星隊は、共和国での戦闘の後で適切な修理を受けていない一部動作するメック(たまにオムニメック)で構成される。ノヴァキャットの難民は保護領軍内での地位をオファーされたが、スピリットキャッツや自由世界同盟政府を完全に信頼することができなかった。彼らから見れば、スピリットキャッツはいまだ狂信的なカルト信者なのだ。








ライラ共和国








親衛隊 ROYAL GUARDS

 親衛隊の忠誠心は、ヴェデット・ブリューアーが国家主席の座にあったときも、疑問符が付くことはなかった。メリッサ・シュタイナー国家主席に鋼の忠誠を誓う親衛旅団は、死力を尽くして両氏族と戦い、命令があらばターカッドで他のLCAF部隊と戦うための準備が出来ていた。メリッサがその命令を下すことがなかったのは――実際にライラの戦友と戦わないように求めていた――ブリューアーが謁見の間の守りを第1親衛隊から第1ヘスペラス防衛軍に変えた後でさえも、部隊の忍耐力の証となったのである。メリッサ・シュタイナーの死去に伴い、親衛連隊の指揮官たちはトリリアン・シュタイナーに個人的な忠誠を誓い、各RCTからバトルメック1機ずつを派遣し、ターカッドの謁見の間の護衛を行うという伝統を開始した。

 親衛隊は、メックと補充兵の再補給優先順位でトップにある一方、ターカッドをかけた戦闘で重い損害を被り、いまだ完全に回復していない。


第1親衛隊RCT
 ブリューアーの取り巻きと戦ったり、「国家主席代理」を力づくで引きずり下ろさないように命令を受けていたようなのだが、第1親衛隊内の多くがブリューアー公爵のクーデターからメリッサ国家主席を守る任務に失敗したと感じている。トリリアン国家主席はこの「失敗」を突きつけることはなかったが、マーカス・クラークストン少将は部下たちに護衛任務の練習を続けさせるのをやめたりはしなかった。氏族のターカッド侵攻で実戦経験を得た第1親衛隊は、LCAFで最高の戦闘部隊であると考えられている。第1親衛隊への異動願いは記録的な数が届いているが、国家主席の近くに来るまでに、各候補者はLICによる広範囲な身辺調査を受けねばならない。

 第1親衛隊のディファイアンス1機が、謁見の背後、右手に配置されている。このディファイアンスに乗るのは、メリッサ・シュタイナーを殺害したエレメンタルを追いかけ、ウルフ氏族が惑星脱出する前に仕留めたことで有名になったボニー・リチャーズ少佐である。


第2親衛隊RCT
 氏族によるターカッド侵攻の間、第2連隊はナーゲルリンクとターカッドシティ周辺の戦いでウルフ相手に大きな損害を出した。第2連隊は、ゆっくりと再建している最中だが、50パーセント以下の戦力のままである。ライラ共和国と氏族のあいだで戦争が起きていることから、またウルフ氏族長アラリックが(少なくともウルフ帝国内で)共和国の「本物」の国家主席であると主張していることから、LCAFは第1親衛隊だけではターカッド防衛に不十分であると感じており、第2も一緒に配置した。

 スティーヴン・ブラセッガ大尉の操縦するファフニールが、王宮建物正面入り口で永続的な警護を続けている。ブラセッガは、第2で最高のマークスマンであることから、この任務(謁見の間の護衛から新たに拡大)に選ばれた。ターカッド争奪戦の間、彼は、航空支援に使われていたウルフ氏族のレパードCVにガウスライフル4発の命中を記録し、後でこの降下船はエンジン不調で墜落したのである。


第3親衛隊RCT
 第3親衛隊は最近の氏族侵攻において主にジェイドファルコンの手で恐ろしい損害を出した。ジェイドファルコンが国境をジャンプした際、サルガッソーに配置されていた親衛隊は、ターカッドに後退しながら、数度の防衛的な交戦を行った。3142年7月半ば、ファルコンの強襲に先駆け、第3親衛隊はターカッドに惑星降下した。このときまでに、第3親衛連隊は20パーセントの戦力にまで低下していた。

 この戦闘後、トリリアン・シュタイナーは、ヘスペラスIIの工場を守るという危険な任務をもう一度命じた。ここで、小規模な市民軍、数個傭兵部隊の支援のみを受けた親衛隊は、強力なライラ軍がいるという幻影を生み出すのを助け、ジェイドファルコンが3145年1月に攻撃を行ったとき、形式上の抵抗を行ったあとで撤退した。このほとんど即時の撤退は、ウルフ氏族が攻撃を仕掛けるまでファルコンとホースをヘスペラスにつなぎ止め、(願わくば)LCAFが侵略した双方の氏族を片付けられるくらいライバル氏族を痛めつけるようにするという絶望的な計略の一部だったのである。

 第3親衛隊は現在ドネガルを守っているが、キャリー・ランディス大尉が謁見の間に配置されており、彼女のウォーハンマーは玉座の左に立っている。ファルコンに対する目を見張る戦闘記録を残したことで、ランディスはこの名誉にノミネートされた。ウェスタースティードにおけるある戦いで、ファルコンのサモナー2機を撃墜したのである。


第4親衛隊RCT
 ハンマーフォール作戦の間、第4親衛隊は、タマリンド=アビーの重要な世界、サルティヨ、コシチューシコ、タマリンドに橋頭堡を作るために使われた。第4親衛隊は、たとえ圧倒的な戦力を相手にしたときでさえも、揺るぎなく立ちふさがることで評価を高めた。LCAFがタマリンドに侵攻したとき、第4親衛隊は軌道戦闘降下してから二日間、3対1の戦力差で惑星上に孤立した。彼らはたった15パーセントの損害で生き延びることが出来た……その後、LCAFは航空優勢を確立し、第4親衛隊がすでに確保したLZに追加の戦力を上陸させることが可能となったのである。

 圧倒的な敵に持ちこたえる第4親衛隊の能力から、トリリアン国家主席が重要な世界であるヘスペラスIIの駐屯を任せたのは明白だろう。第4のターカッド儀仗兵は、オルダス・タナシ指揮下のローテーションするフェンリル・バトルアーマー分隊で構成される。第2親衛隊のファフニールのように、このフェンリルもまた、玉座の間の追加「ガーディアン」としての役目を果たす新しい国家主席の護衛である。フェンリル2機が、玉座の脇に立つメックの横に位置する。その砲塔は、トリリアン国家主席に近づくものすべてに突きつけられる。








ライラ正規隊 LYRAN REGULARS

 ライラ正規隊は、この十年間に渡り、多くの連隊を失ってきた。全部隊がハンマーフォール作戦に投入され、当初は成功の連続だったが、状況はすぐに変化した。ウルフ氏族が裏切ると第4、第11正規隊が殲滅され、第7、第10がターカッドの戦いで壊滅した。生き残った連隊はいまだぼろぼろの状態である。ターカッドの生存者たちが他の連隊に組み込まれ、損害の一部を緩和したが、ライラ正規隊は兵站と生産への負担を四面楚歌の全LCAFと同じくらいに感じている。


第3ライラ正規隊
 昨年、第3ライラ正規隊は、ジェイドファルコン国境沿いに広がり、第2正規隊の生存者を迎えたにもかかわらず、隊列が薄くなったのである。反応速度を上げ、カバーする地域を広げるために、残った8個バトルメック中隊のうち4個がフッドIVからアルルーナに再配備された。

 ダニエル・カヤン大佐は、このやり方から得られた結果をLCAFの上官に報告した。ジェイドファルコンによる襲撃はこの地域で停滞し、より効率的に部隊を派遣することが出来た一方で、支援を欠いていることで損失が増えているというものだ。カヤン大佐が現在懸念しているのは、本気の攻撃があったら、中隊を超える戦力を展開することができないくらい損害を受けてしまうかもしれないということである。


第5ライラ正規隊
 元指揮官のシュテファン・ハーパー少将が、スモールニクでの英雄的行為(この戦闘に負けたのは、ハーパーが負傷して指揮を執れなくなったからだった)を成し遂げ、将軍に昇進した後、新指揮官ロイ・アダムス准将の下で、第5正規隊は再構成されている。第3正規隊とよく似て、第5正規隊はファルコン国境をよく守るために二つの世界に分かれている。

 3145年までに、アダムス准将は、12個中隊からなる完全な戦力の連隊を用意することができたが、この年の1月15日、ジェイドファルコンは征服を目指してロクスリーの工場を強襲した。6個中隊しか手元になかったアダムスは、惑星陥落が避けられないと知っていた。退却を拒否した第5は、侵攻軍がついに退却するまでに4個メック中隊を失っていた。氏族による別の攻撃がいつあるとも知れないことから、LCAFは第5正規隊を出来るだけ早く再建することに優先順位を与えている。


第8ライラ正規隊
 ハンマーフォール作戦の間、第8ライラ正規隊は、マーリック=スチュワート共和国から送られた支援を迎撃する「妨害」部隊として用いられた。第8正規隊はコリスカーナ、ミッドキフなど無数の元自由世界同盟独立世界を襲撃し、時折は短期的に占領し、それからウルフ氏族が突如としてライラ国境にやってきた。第8正規隊はウルフ侵攻地域の深くにいることに気づいた。ここから脱出できたのは、航宙艦船員たちの勇敢さによるものである。無人星系を最充電ポイントとして使い、静かに抜け出したのだ。この旅の最中に二回、第8は元ライラ星系にジャンプして補給を求めて襲撃し、新帝国の内部世界を守っていた二線級ウルフ部隊を驚かせることになった。

 第8正規隊がボランに帰り着くまでにターカッドでの軍事危機は終わっており、彼らはウルフのさらなる拡大からこの地域を守るために残っている。


第9ライラ正規隊
 ウルフ氏族による侵攻の間、そしてヴェデット・ブリューアーによる治世の年、第9ライラ正規隊は、ウルフと激しく交戦しながらも新自由世界同盟からコアワード方面にゆっくりと押し出されていた。第9連隊は、ターカッドに一歩ずつ迫るウルフと最も交戦したライラ正規隊である。ターカッド戦までにメック3個中隊に戦力低下していた第9正規隊は、主星を賭けた戦闘から脇に置かれた。代わりにこの連隊は、ブエナ州への民間人の脱出を手助けし、ウルフ氏族軍に攻撃された国境世界で救援活動を行った。

 ターカッドでの交戦が終わって以来、第9正規隊は第10、第12ライラ正規隊の生存者を吸収し、ファルコン前線に移動するまでにいくらか兵力を強化した。実戦で鍛え抜かれた第9正規隊は、氏族が完全にターカッドを包囲するのを防ぐために、ヴォーゼルとグリーンロウの主力防衛部隊となっている。


第14ライラ正規隊
 ブリューアー公爵のクーデター後、第14ライラ正規隊は、声高に「国家主席代理」を支持し、メリッサ・シュタイナーの失政を口やかましく非難した。これが理由になり、第14正規隊は「忠実な野党」としての評価を確立し、新しい装備がまわされることは滅多になかった。これが変わったのは、第14の士官たちが退職を強制され、能力で劣るが忠実な指揮官(少なくともLICに認められた者たち)に入れ替わった後でのことである。

 以降、第14正規隊は、第9正規隊と同じ理由で、すぐコアワードのチーナン、サラヴァンに配備された。3145年3月のファルコンによるチーナン襲撃の間、第14正規隊は間接砲の砲撃で氏族降下船を破壊し、この二線級氏族部隊を包囲し、降伏を強要することができた。捕獲された装備は、連隊の戦闘能力を完全に回復する長い道のために使われた。


第15ライラ正規隊
 第15ライラ正規隊は、この十年間、魔法で守られたかのような存在であったのだが、その典型例は、おそらく、3141年10月にある……ウルフ氏族がアリストテレスに侵攻し、第15正規隊が降下船に逃げざるを得なくなったときのことだ。第15正規隊が首都パーフェクションを通って逃亡していたとき、大規模な倉庫から出てきた機齢100年近いバトルメックの中隊が思いがけず仲間に加わった。これらメックのパイロットたちは全員がアリストテレス歴史上演ギルド(AHRG)の生き残りだった。AHRGは、惑星外に脱出するチケットと引き替えに、追加の火力を提供した。この合同軍は一ヶ月近くかけて、ついに脱出を成し遂げた。感謝を込めて、LCAFはAHRGの退役軍人たちにライラ共和国軍への再加入を正式に許可した(第15に配属)。スティーヴ・リベラ大佐(現在の第15正規隊指揮官)は、AHRGにパレード用の各種塗装様式を使い続ける許可を出しさえしている。その大半は、第四次継承権戦争以後、消滅した連隊のものなのだ。


第16ライラ正規隊
 ライラ正規隊旅団で最も腕の立つ部隊として、第16正規隊はターカッドの橋頭堡になるギブス星系の守備を任された。ターカッドとコベントリからジャンプ一回の位置にある一方、共和国に残された最大の海軍工廠を持つギブスは、LCAFにとって戦略的な重要地点である――ウルフ氏族、ジェイドファルコン氏族の両方がそれを知っている。ライラは第4、第7ライラ防衛軍の生存者を第16正規隊に移し、意欲ある戦いで鍛えられた古参兵たちを相当数隊列に加えた。しかし、これらの人員とメックを加えても、第16正規隊は少しずつ戦闘能力を失っている……絶え間なくギブスの分厚い航空宇宙防衛網をすり抜けてくる氏族襲撃部隊によるものだ。よって、LCAFは第16正規隊に送り込むことができる追加の補充兵か傭兵を探している。








地域市民軍 REGIONAL MILITIAS

 共和国中の地域市民軍は、ブリューアーの玉座簒奪について特に無関心だった。シュタイナー家への忠誠を叫んだコベントリCPMは別として、他の地域市民軍は現状維持に努め、ブリューアーの治世とその後を見守った。氏族の共和国宙域への侵攻が始まったときに12個あった市民軍のうち、現在まで6個が生き残っている。残念ながら、LCAF全体に与えられた損害を考えると、市民軍の再武装は後回しになりそうだ。

 バトルメックの数量は地域市民軍全体で少ないのだが、その一方、装甲車両・歩兵小隊の数は遙かに多く、1個連隊かそれを超える規模がある。市民軍は防衛専門と考えられていることから、派遣された航宙艦は部隊が任地につくと配置転換となり、ライラ兵站ネットワークのどこかに配備される。これは前線市民軍の士気を落とす効果をもたらした。兵士たちはあたかも見捨てられたかのように感じているのだ。


ネッカルDPM
 地域市民軍旅団で最も活動的なネッカルDPMは、ジェイドファルコン氏族による本拠地ネッカルで日常的に実戦参加しており、部隊の士気はすでに危機的状況に陥っている。最近あった攻撃の最中、ファルコンが近づいてくると、指揮官たちの中に敗北主義が蔓延した。原因となったのは、連隊の崩壊が間違いないことと、脱出に使う航宙艦がないことである。連隊の持ち場を蜂起して、氏族に惑星をゆだねるという話が持ち上がると、部隊内にいたあるLIC工作員が素早く指揮幕僚を排除し、市民軍の全権を掌握して、確固とした――そして成功した――防衛に部隊を奮い立たせたのである。

 この勝利があってもなお、またジェイドファルコンの本気の強襲が行われていないにもかかわらず、状況は良くなっていない。市民軍の現在の指揮官、フェイス・レイノルズはLCAFに対して、ネッカルDPM(それか少なくともネッカル惑星政府)が脱出に使える航宙艦の要望をほとんど出し続けている。


コベントリCPM
 コベントリCPMは、ブリューアーが権力を掌握した後で、声高にメリッサ国家主席への忠誠を主張した唯一の地域市民軍連隊として有名である。それにも関わらず、この連隊はコベントリに立ちはだかり、ターカッド戦の間、ジェイドファルコンによる重襲撃から故郷を守った。重要なコベントリ・メタル・ワークスを守っていた際、コベントリCPMは戦力強化のためメックと補給物資をCMWから直接受け取った。

 トリリアン国家主席はコベントリCPMの貢献と忠誠を認識しており、毎月、CMWの生産ラインからメック1機を自由に選ぶ名誉を与えられている。よって、部隊の装備は完全に整い、いつでも戦う準備が出来ているのである。このことと、最近のコベントリの戦闘で得た新しい機体があることから、コベントリCPMは地域市民軍でよくある数世紀前の機種でなく、ライラ防衛軍旅団、アークトゥルス防衛軍旅団の外では滅多に見られない最新鋭マシンを多数保有しているのである。


カナチルMTM
 一番近いLCAF部隊がジャンプ2回のところにいて、稼働するバトルメックちょうど30機の戦力を持つカナチルMTMは、どんな戦闘にも非常に用心せねばならない状況にある。この市民軍は「牧童」として最も小さい軽量級マシンを使い、砲兵大隊、大規模な歩兵部隊の集中砲火に追いやるのである。重量のあるメックは予備となり続けるか、戦闘にまったく関わらないことすらある。この戦術により、バトルメックの損耗は減ったのだが、メック撃破数もまた減ることになり、部品のためにサルベージ出来る量はごくわずかなのだった。


フロリダTTM
 フロリダTTMはいつも共和国宙域の遠く外れに配置されてきた。単独で支援なしに使われるこの市民軍は、エネルギー兵器のみを載せたバトルメックや戦闘車両のような補給なしで長時間使える機種を多数使用している。これは変わるかもしれない……リムコレクションとの貿易が着実に増加しており、この小辺境国家からの武器弾薬が共和国の辺境方面国境に流入しつつあるのだ。この六ヶ月間、リムコレクションの製造業者、エイブル・ハンティングアームズの代表者がオートキャノンと弾薬の大規模な販売に目を向けて、フロリダTTMの駐屯地を訪れている。


カーライルBUPM
 ウルフ帝国国境に近いカーライルは、ジャンプ2回以内のところにウルフの占領星系がないという幸運に恵まれており、国境の近くにしては比較的平穏を保っている。フランシス・ムバーダ大佐は、最近、商人の航宙艦を徴発したと伝えられている……ウルフがカーライル侵攻にバックドアとして使うかもしれない近くの旧共和国植民惑星星系を調べるためである。LCAF最高司令部は、民間船に誰も住んでない星系の偵察任務を課す危険性を指摘して、公式に不満を表している。だが、本当に最高司令部を苛立たせているのは、ムバーダ大佐が市民軍の資源を使い、指揮系統を外れてこれを行ったという事実にある――それに加えて、ネッカルDPM指揮官との激高したやりとりに油を注ぐことにあるようだ。


フリーロBPM
 フリーロBPMは、現在、エイドスフォスに配備されている。ここは、ウルフ氏族がフリーロへの全面侵攻を支援するのに必要だろうとLCAFの戦略分析官が信じている前線世界である。そのような理由から、フリーロBPMは2個気圏戦闘機大隊にバックアップされており、ほとんど毎日訓練している。エイドスフォスでの緊張は高く、地元指揮官たちは差し迫った攻撃を感じているが、絶え間ない訓練がフリーロBPMを優れた準備状態においている。








スフィア共和国





スフィア共和国の準備状況 STATE OF REPUBLIC READINESS

 ストーン合同軍がワード・オブ・ブレイク保護領を解放したことにより、元ブレイク世界の多くで産業基盤に深刻なダメージが引き起こされた。ワードによって再生された工場群は再びくすぶるがれきの山となるか、それよりさらに悪いこととなった。しかしながら、この大打撃にもかかわらず、スフィア共和国は強力な防衛産業を持っていた。聖戦後、これが即座に使用されて共和国装甲軍が作られたのだが、HPGネットワーク崩壊前の数十年間、軍需産業部門の工場の多くが民間物資を生産するべく一新されていた。軍事生産を減らす一環としてだけではなく、中心領域に平和をもたらすのを助けるためでもあった。





続く伝統

 ワード・オブ・ブレイクの終焉によって、ストーンの共和国は計り知れない量の先進技術研究・設計データを入手した。中には、ワードの武器庫で最も象徴的かつ最も恐ろしい戦争機械、セレスティアルの一部もあった。

 聖戦が終わると、ストーンとリーアはこの情報その他を最終的にどうするべきか話し合いを持った。デヴリンはワード・オブ・ブレイクの最も恐ろしいシンボルのひとつを消し去ることで、聖戦が正真正銘終わったことを表すべきだと考えていた。元ブレイク保護領の世界はすでに似たようなことをしており、占領時代の象徴を破壊していた。セカリス(メックワークス)に残されたものを抹消することは、自然な選択と思われた。

 リーアには別の考えがあり、忍耐を助言した。たとえ改造したセレスティアルであっても、新国家を守るために使うというのは、デヴリンと同じくらい吐き気を催すものであったが、ブレイク派の設計図は共和国がいつか必要とするかもしれない強力な資源だったのである。ストーンはそれを受け入れたがらなかった……CCAF部隊がセレスティアルにインスパイアされたヤオ・リエンを使っているとの諜報報告が届くまでは。ようやくデヴリンは折れて、データを破壊するのではなく安全に保管するよう命令したのだった。

 それは幸運な決断だった。

 共和国によって警備万全なデータ倉庫に残されたストレージ装置は、3128年、マルコム・ブール司教と教団の支持者たちによる極秘の襲撃を受けた。コムスターの中立性を隠れ蓑に使ったブールの工作員たちは、共和国の鼻先からワードの最も進んだ技術データの一部を盗み取ったのである。

 入手したセレスティアルの設計図を再設計したブールは、NETCニューアース貿易会社(継承権戦争初期よりコムスターが所有し操業しているフロント企業)を使って、復活したコムガード第1師団に装備を供給するべく、再建したニューアース工場内に秘密の生産ラインを作り上げた。聖戦後に再建されたニューアース貿易会社は、おびただしい量の民間向け物資を煙幕として使い、日常風景の中に生産した兵器を隠したのである。

 第1師団がルイテン68-28から退却し、RAFが追撃していたあいだ、NETCの秘密生産ラインが発見され、無傷で確保された。すでに新型メック2機種と、新型降下船1隻を生産する準備が出来ていた設備は、ワード・オブ・ブレイクのセレスティアルのような烙印を持っていなかった。これらの機種は再建されたRAFの戦列に加わった。コムガードの設計図を変更し、設備入れ替えするコストと手間を惜しんだのだった。



軍拡競争
 カペラ大連邦国やその他勢力の猛烈な侵攻を受けたブラックアウト初期に、ストーンの取り組みが共和国に予期せぬ弱点をいくつか作っていたことが露呈した。

 まず第一に、伝統的な敵たちが迅速に軍を作り上げたことである。3134年、ダオシェン・リャオの侵攻は驚きでなかったが、カペラ大連邦国とドラコ連合が軍を拡大した速度は衝撃的であった。大王家が想像以上に大量の物資を隠していた事が、数年以内にどんないい加減な専門家にとっても明らかなものとなったのである。共和国を攻めるために兵器を備蓄していたのかどうかは不明だが、3130年代、共和国に侵攻し領土拡大するのが可能になったことは確かである。似たような大量の備蓄と予備がないRAFは、深刻な不利を被った。3年間、装備の優れた侵略者を前に次々と世界が陥落した。

 共和国が救われたのは、ひとえにフォートレスのたまものである。レヴィン総統の命令で共和国の中心部分が封鎖され、貴重な物資が生産された……時間である。征服の脅威に瀕し、共和国の眠れる防衛産業が息を吹き返した。

 この10年で再始動されたバトルメック工場は相当なものである。スコーベル社のベルリン工場のような新工場が大量生産を行うと同時に、クルップ・マーティンソンの伝説的な生産ラインなど地球各地の古い生産施設が再び急成長し、RAFに戦争用の装備を供給した。

 負けじと、共和国の航空宇宙産業もゆっくりと冬眠から這い出てきた。地球上のメック工場よりもゆっくりと設備交換し、スタッフ増員したタイタンの造船所は、ストーンがベルターたちの社会に援助を求めたおかげで、徐々に降下船の建造を増やすことが出来た。ストーンの要求で、数千人の熱心な志願者が集まり、彼らの支援によって、新型のポケット戦艦が造船されたのである。RAF海軍にとっては残念ながら、聖戦時の地球解放作戦で破壊されたオニール造船所の恒星間ドライブ工場が再建されることはなかった。聖戦前には戦艦用核融合ドライブの大手製造業者だったのだが、元々乏しい資源配分の優先順位が低かったことから、工場の再建計画は断念されたのだった。

 [注:ファスレーン級修理艦〈ユスティティア〉が3117年に工業的な事故で失われたあと、当然、航空宇宙の状況は悪くなっており、その他のファスレーン3隻――クレメンティア、ハルモニア、ネケッシタス――は、3120年代後半に退役し、モスボールされていた。予想されるように、抜け目ない海軍指揮官たちの一部がこれらの船を再始動するように騒いでおり、おそらくは間に合わせの補助造船施設として使うことになるだろう。これを考慮に入れるなら、安全保障への潜在的な影響を考えて、どう安全に進めるか真剣な議論が必要になるだろう]

 地球の軍需産業を再始動するのに加えて、他の生産施設も兵器生産用に設備交換されている。3139年までに、クレスリー・テクノロジーズ(カペラの影響を粛正済み)がRAFに製品を供給し、同じくコサーラ造兵工廠とニューアースのヤンキー・ウェポン社の両方がピーク時の生産能力にまで復旧した。共和国はフォートレス内で釘付けになっていたので、調達局は外国の物資を購入することから国内で重要な装備を得ることに視点を移した。調達局の指導の下、3144年までに、別の工場群が再建に加わった。これまで既存の機種向けに交換用パーツを生産するだけだったブリガディア・コーポレーション、ミッチェル・ビークル、ブランケンブルク・テクノロジーズが、3060年代、3070年代のブレイク占領時代以来の生産数に達した。

 おそらく、RAFの成長拡大にとって最大の障害は、重要な資源が不足しつつあることである。フォートレスの壁に囲まれた共和国は、特定の資源を供給し工業的需要を満たすのに恒星間交易に頼ることが出来ないのだ。急成長する工場の貪欲な需要に応じるため、小惑星採掘(かつては高コスト過ぎて儲けが出ないと考えられていた)と海底採掘が大々的に復活している。





すべての敵に対して、国外・国内

 3130年代の前半、RAFと共和国の安定にとって、国内の敵が特に危険であった。3132年、第IV宙域のカル・ラディック元司政官がシェラタンを占領しようとした。第4プリンキペスが折良く介入し、スティールウルヴズの惑星占領を防いだのである。3133年、ヤセク・ケルスワ=シュタイナーのストームハンマーズがふたつの宙域で常備防衛軍を撃破し、第IX宙域のRAF正規旅団群に打撃を与えた。この行動は、その後のジェイドファルコン侵攻を助けることになり、スカイア征服への道を切り開いた。かつて忠実だった市民たちが私心のために共和国を切り刻むという筋書きが何度も繰り返された。

 この悲しい物語の唯一の例外は、ダミアン・レッドバーンのレムナントである。第7ハスタティ、第3プリンキペス、第8トライアリ、謎めいたフィデリスなど、フォートレスの外に残ったRAF部隊のみで構成されたレムナントは、カリソンを中心にした狭い一帯を確保している。フィデリスの戦艦〈フラタス〉に強化されたここは、フォートレスの外で共和国の夢がまだ生きている場所なのである。



解放に向けた訓練
 HPGブラックアウト後に共和国が崩壊したことは、RAFの募兵部に壊滅的な影響をもたらした。外国の侵略者が領土を占領し、かなりの大規模養成所が失われたことは、共和国にとってもう一錠の苦い薬となった。占領された学校群のうち、スカイアのサングラモア養成校が特にひどいものだった。聖戦後、ヴィーナス軍事養成校が閉鎖され、サングラモアが訓練された海軍兵の主要供給源となったことから、3134年、ジェイドファルコンにこの学校を奪われたことは海軍にとって大打撃となったのである。

 ほとんど選択肢がない中で、元マーズ軍養成校だけがまともな代わりになることが判明した。聖戦後、この学校は軍事諜報部(DMI)に渡され、新本部に改装されていた。3137年、大々的な再建が命じられ、何度かの挫折の後、3139年に最初の生徒たちを受け入れた。キャンパスにDMI関係者が大勢いるので、生徒たちの大半は常に監視されているという事実を飲み込んでいる。数百名しか枠がないことから、この学校(教官は海軍で最も経験豊かな士官たち)の受験戦争は熾烈であるが、最高の受験者だけが選ばれて入学することもまた意味している。ストーンが帰ってきたことから、46年のクラスは全体の60パーセントがベルター・コミュニティから来ることが予想されている。

 中心領域で最も古い現役軍事大学のひとつにして、唯一完全に生き残った第一星間連盟「三大軍学校」であるサンドハースト軍事学部は、共和国で最高の軍事養成校としての地位を取り戻している。RAFの兵士需要に応じるため、3131年から校長を務めるA.J.ロバーツ准将が、大学を星間連盟時代の規模に拡大しようと休みなく働いている。募兵局の最新の見通しによると、秋に卒業するクラスは落第率がわずか12パーセントと予想されている。

 またひとつ生き残った学校、ノースウィンド軍養成校(NMA)は、3134年にスティール・ウルヴズの手によって与えられた損害を修理した。元の運営に戻ったこの学校の教官は、ハイランダーズ古参兵と退役したRAF士官である。出来るだけ早く生徒を送り出しているこの学校のOCS(士官候補生学校)プログラムは、依然として最高のものであると考えられている。より迅速に候補生を育成するため、NMAは現地にいる第12ハスタティ・センチネルスとの追加訓練プログラムを策定している。





スフィア共和国の軍備 THE REPUBLIC OF THE SPHERE MILITARY

 内外の敵に悩まされたHPGネットワーク崩壊後の10年間は、共和国装甲軍にとって厳しいものであった。共和国の主権に対する突然の危機に対して、組織不足で準備不足だったRAFは、複数の侵略者に対する長期戦役を戦うだけの準備がなかった。

 ヨナ・レヴィン総統がフォートレス創設の許可を出したとき、彼は残ったすべてのRAF部隊を第X宙域に呼び戻すのを忘れなかった。正規部隊の多くが命令に応じて期限までに壁の中に戻ったが、そうしなかった部隊も数多くあった。フォートレスの外で孤立した生き残りのRAF部隊のうち少数が、レムナントの一部として元総統のダミアン・レッドバーンと共に働いた。だが、大半はたった数年で少しずつ殲滅されていったのである。3140年までに、フォートレス外のRAFは存在をやめていた。

 フォートレスの内側では、RAFはルネッサンスのようなものを経験していた――生き残った一握りの連隊から22個連隊まで拡大した――のだが、かなりの重要な変化があった。そのうちいくつかは、ストーン本人が指図したものである。


スフィア共和国の騎士たち
 RAFを再建して共和国を奪還する能力を持った戦闘部隊に変えるという大変な任務を前にした総統は、単なる兵士以上の存在が必要なことを知っている。第X宙域常備防衛軍の吸収を即座に決定したのは良いスタートになった一方で、共和国領土を元に戻すためには、より多くの――さらに多くの――RAFが必要になるだろう。

 使える資源が限られていたことから、下級の騎士と遍歴騎士を成長しつつあるRAFに直接吸収するのは明らかな選択だったが、レヴィンを批判する者たちはまたひとつの共和国機関を廃止することに反対している。ブラックアウトの前に、騎士たちは独立連邦警察軍(共和国の各世界で地元の問題を解決する)であったが、常にそうであったわけではなかった。聖戦後のこと、ストーンは騎士を別のシステムにするつもりであった。騎士は軍の一部となり、ストーンの理想を表す実例、共和国軍内のリーダーとして活動するのである。騎士を再吸収するというレヴィンの決断は、元々のコンセプトに戻るものであった。

 いまや、共和国の騎士たちはRAFの士官団の中核をなしている。遍歴騎士と正規の騎士は、その称号と特権を有しているが、戦場で中隊、大隊、連隊を指揮するのである。正規部隊内に彼らが存在することは、共和国軍の連隊の多くが実戦経験を欠いているのに経験豊かなことの主要因になっている。


指揮統制
 騎士の吸収に加えて、厳しい現実が最高司令部のサイズを小さくさせた。共和国の領土と軍事力はかつてのごく一部となっている。10個あった宙域は1個となったのだ。最初の数年間、レヴィン総帥が再建計画の指揮をとったことから、最高司令官の地位は不必要と考えられ、退役状態となった。市民軍が完全に統合されると、司政官10名と常備防衛軍の代表者1名もこれにならった。3140年までに最高司令部は合計で1ダース以上の地位を排除した一方、RAFの再建と再始動は共和国の再生を待たねばならないだろう。現在、レヴィン総統はこの軍隊で唯一の指揮官であるが、日常業務の大半を聖騎士ジャネラ・レイクウッドに任せていることから、自身は戦略的な計画に集中することができている。

 ストーンの熱心な勧めにより、RAFの基本的な構造もまた、フォートレスの壁が取り払われる来たるべき日に備えて、大規模な再組織化が行われいてる。SLDFの『軍団』、『軍』の編成からインスピレーションを受けて、各正規部隊は大規模な『軍』に組み入れられた。共に作戦・行動するように考えられた各軍は、すべてのRAFから集められた戦闘部隊で作られる。トライアリ・プロテクターズ、プリンキペス・ガード、ハスタティ・センチネルス、ストーン旅団は、もう独立して活動することがないだろう。まだ始まったばかりなのだが、聖騎士レイクウッドは新しい組織を準備し、実現するために、各旅団、部隊指揮官たちと緊密に働いている。


新たな代理戦士たち
 デヴリン・ストーンの覚醒で、聖騎士の地位に変化がもたらされた。帰還後、ストーンは粛清を行い、ディヴィッド・マッキノン、ケルソン・ソレンソンなど年老いた者や、共和国が生き残るのに必要な手腕を欠いている者が排除された。聖騎士の全員が有能なのだが、全員が戦場で大規模な部隊を指揮するのに向いているわけではない。たとえば、聖騎士アンダース・ケッセルは、野戦司令官というより政治屋だったのでその後解任された。残った聖騎士、新たに任命された聖騎士は、騎士道的なアドバイザーよりもさらに軍事的な色彩が濃い。フォートレスから出るときが来たら、聖騎士たちが軍隊を勝利に導くことになるだろう


海軍の状況
 地球の軍艦支援設備を使えたにもかかわらず、軍拡競争を誘発しないために、共和国は戦艦艦隊を制限した。その結果、主力艦艦隊はイージス級巡洋艦〈アウスピシム〉、エセックス級駆逐艦〈アバンダンティア〉、ローラIII級駆逐艦〈トリウムフス〉で全てである――全艦がフォートレス内で現役にあり、極秘活動中である。4隻目、ダンテ級フリゲート〈フラタス〉(元CSS〈ボルドー〉)は共和国レムナントで活動している(フィデリス指揮下)。








ストーン旅団

 3071年、キタリーの収容所から脱出した後、デヴリン・ストーンによって最初に作られたストーン旅団は、スフィア共和国軍のエリートである。カペラ・クルセイド中に活躍した旅団は、ダオシェン・リャオの「武家攻勢」を緩める役割を果たし、共和国の国境中から侵攻軍を押し戻した。この紛争で大打撃を受けたストーン旅団は、共和国の政治家たちの目が他に向いたため、再建に苦労することになった。ブラックアウト後の数年間、ゆっくりとした再建を旅団は好んだ。なぜなら、古参兵を徐々に受け入れることで技量を保つことができるからである。

 グレイマンデー後に国が崩壊したとき、ストーン旅団はほとんど活動しておらず、共和国を覆い尽くす混沌に巻き込まれた。レヴィン総統の帰還命令に最初に応じた部隊の中に入っていた旅団は、壁の後ろに入ると、これまでにない拡大を始め、戦列を新たな戦士たちで満たした。騎士たちが戦力を元に戻した一方で、正規連隊の兵士たちで2個追加連隊が作られた。ストーン軍の先陣たる各6個連隊は、最高の装備・交代要員・養成校卒業生を与えられる。共に彼らはデヴリン・ストーンの夢の最も熱狂的な戦士となっている。


ストーン・ラメント
 ストーン第1連隊たるラメントは、デヴリンの護衛、友人、信頼する兵士たちである。聖戦中、たいがいは最も危険な任務を割り当てられていたラメントは、3084年、チコノフで武家のイマーラ家、イジョーリ家に壊滅的打撃を与えた。旅団の他部隊と共に3111〜3113年のカペラ・クルセイドに参加したラメントは、リャオの「武家攻勢」をせき止め、大連邦国による侵攻の流れを変えた。総帥に呼び戻されるまで蚊帳の外に置かれていたラメントは、ストーンによる共和国の崩壊に衝撃を受けた。しかし、自己憐憫にふけるようなことはなく、来たるべき解放の日に供えて訓練に明け暮れたのである。壁が下りるときは、ラメントが進撃の先陣に立つことになっている。

 旅団の精神的な主柱として、1個中隊の戦士たちが、四六時中、デヴリンの警護を任されている。初期のラメント隊員ジョン・ホープウェルの孫にして、エリヤ・ホープウェルRAF退役大将の息子であるプレストン・ハウェル少佐が、現在、ストーン警護隊を率いている。アンドリュー・ターナー准将(ラメント指揮官、ストーン旅団先任士官)が、聖騎士レイクウッドと肩を並べて働き、ストーンの名を持つ部隊を戦闘可能状態としている。


ストーン・リベレーターズ
 Scour作戦中にブレイクから解放された戦士たちを中心に作られたリベレーターズは、地球解放作戦で最初に地球上陸した部隊であり、ブレイクの支配を終わらせるのに尽力した。共和国設立後、リベレーターズはカペラ・クルセイド(3111〜3113年)の矢面に立ち、大連邦国に対する逆襲では先陣に立ち、ここで軌道突撃兵としての新しい専門分野を開拓した。残念ながら、カペラ人が狂信的に祖国を防衛したことから、戦争が終わる前にリベレーターズは共和国宙域に戻らざるを得なかった。重い損害を被ったこの連隊は再建を行い、総帥が帰還命令を出すまで大連邦国の監視を緩めなかった。素早く移動して激しい攻撃を加えることを念頭に置いたこの部隊の戦士たちは、強襲の専門家である。最近地球を離れたリベレーターズは、リケンマイナーとリギルケンタウルスで軌道戦闘降下の訓練を実施し、腕を磨き続けいてる。


ストーン・レブナンツ
 カペラ・クルセイド後、ラメントとリベレーターズを再建するためにほとんど解散したレブナンツは、3136年にフォートレスの壁が持ち上がった後で、最初に戦力回復した最初の旅団部隊となった。コムガード第1師団がエプシロン・エリダニで目撃されたとのニュースが地球に届くと、レヴナンツは第14ハスタティ・センチネルスと共に展開し、シェイマス山脈の麓でマルコム・ブールのコムガードと戦った。第1師団は大損害を負い、山の要塞に退却せざるを得なくなった。レヴナンツがコムガードを釘付けにする一方、第14ハスタティが勇敢な戦闘降下を行い、完全に息の根を止めたのだった。3145年、ストーン・ディフェンダーズの結成を助けるべく、レヴナンツは2個中隊分の兵士たちを「寄付」した。歴史的にCCAFに対する成功で知られているレヴナンツは、戦場で大連邦国軍と再会するのを楽しみにしている。


ストーン・プライド
 元々はパレード用部隊であり、総帥の儀仗兵であったストーン・プライドは、ストーンの引退後にダミアン・レッドバーンが退役させるまで、一部が現役であり続けた。3143年に復活したプライドは、すぐ持ち場に戻り、レヴィン総帥の護衛となった。ピースキーパー、その他の強襲メックが占めるプライドは、レヴィンの儀仗兵という役柄上、戦闘に関わるのを制限されている。現状、レヴィンがダムナティオ作戦をまとめる間、彼らはアスタに駐留している。


ストーン・ディフェンダーズ
 旅団内で最も新しい連隊、ストーン・ディフェンダーズは、狂信的なアカデミー卒業生と志願兵で構成される。ストーン・レヴナンツから引き抜いた幹部に率いられるディフェンダーズは、ドラコ連合のサン=ツァン候補生部隊によく似ている。連隊にはサンドハースト、ノースウィンド軍養成校で最高の卒業生が多数いると同時に、第11トライアリのイェンス・ショルツ大佐が後援した驚くべき数の兵士たちが存在する。この両者によって、ディフェンダーズは、RAFで最も兵士たちがいる連隊となっている。地球の防衛部隊の一部であるディフェンダーズの狂信と傾倒は、将来、侵略者が高い犠牲を払うことになるのを保証している。


ストーン・フューリー
 全体が騎士と古参戦士で作られたストーン・フューリーは、旅団内、そしておそらくはRAFで最も危険な連隊である。戦士のための戦士団であるフューリーに匹敵する部隊はないが、騎士たちが歴史的に独立して行動してきたことから、中隊以上の戦力で戦闘を行った経験を欠いている。現在、定数を満たしていないのだが、ホリウチ・コガラ大佐は戦争に備えて厳しい訓練レジュメで部隊を運営している。歴史の研究者であるコガラは、毎月、特定の敵に対応する訓練プログラムを作り出している。近年、フューリーはディーロン正規隊のプログラムを開始しており、2月のカリキュラムはウルフ氏族のベータ銀河隊を念頭に置いたものになる予定である。








氏族





氏族の準備状況 STATE OF CLAN READINESS



ヘルズホース氏族

 占領域に到着して以来、ヘルズホース氏族は成長しているようだ。たいていにおいて、ホースは地元民を放っておく傾向にあり、引き替えに地元民は飛び地領と権威に敬意を払う。その結果が、二重の経済である。ひとつは公式の経済で、すべてが氏族に捧げられる。ひとつは大規模なブラックマーケットで、地元民が氏族的な人生には存在しない贅沢品を得る。公式にはこれは腐敗とされるのだが、ホース指導部は平和を維持するためのコストとして許容している。商人階級でさえも(逮捕されない限り)ブラックマーケットに手を出すことが知られており、ホースと地元民のもうひとつの交流となっている。ホース領域において、ブラックアウトの影響は限られたものだった。中心領域から隔てられた比較的小さい国家であるがゆえ、また内部での通信を保つのに充分な航宙艦を持っていることから、ホース商人階級は通常の取引でクローナーとケレンスキーに頼ることができた。

 軍事的な資源は別の問題である。ニューオスロがラサルハグ・ドミニオンの手に落ちたことで、メック生産能力の2/3が失われ、チェストレグの強襲級メック・クアッドヴィー生産ラインだけが残された。もっと軽いメックを輸入することはできるのだが、氏族軍にふたつの影響が出ている。第一にメックの平均重量が上がり、第二に元々車両が多かったところますます支援用の通常戦力に頼るようになると同時に、クアッドヴィーなど極端な代替物を求めるようになっていることである。第666機械化強襲星団隊の件もあって、これはヘルズホースのモンゴル・ドクトリン再解釈につながっている。大量の軽戦力を使って、重メックという金床に押しつけられた敵を掃討するのである。

 ウルフ氏族が占領域から移動した後、ホースはウルフの製造施設跡地をすべて得るのに成功した。設備をはぎ取られていたのだが、工場の大半はウルフが急いで移住するにはあまりに大きすぎるものだったのだ。以降の10年間で、ホースは氏族軍を重メックで強化するのが可能となり、近隣国と戦うのに必要な重騎兵を得たのだった。

 氏族軍の一部をゴールデン・オルドゥンに参加させただけなので、ホースの軍事的な損害は比較的少ないものであった。こうして、ホースは経験豊かな氏族軍という贅沢品を与えられ、これまでのところ、ウルフやファルコンのように民間階級の新兵を「育成する」必要に迫られていない。一部の原住民はオールド・リグレット訓練施設に入るが、本物の統合を欠いていることは一般大衆の忠誠心に疑問符を置くものである。元ウルフ占領域の世界では間違いなくそうであろう。長年にわたる粗雑な扱いで地元民は怯えているが、氏族政府の怒りっぽさ、ホースの不干渉的政策への反応は、究極的に利用されるものと思われる。



ジェイドファルコン氏族

 3130年に比べると、ジェイドファルコン氏族はズデーテン、エレウォンの工場を減らしており、マルヴィナ・ヘイゼン氏族長の成果は驚くべきものである。パンドラの復旧、アークトゥルス、スカイア奪取によって、ファルコンの工業生産能力は事実上2倍となっている――ファルコンが死活的に必要としていたものだ。マルヴィナは終わりなき戦争を大規模に実行し続けねば氏族長として生き残ることができず、奪った工場を氏族水準に改装する時間はほとんどなかった。

 ゴールデン・オルドゥンを進めるために、マルヴィナは、民間階級や落第した戦士を受け入れることで戦力を拡大するという異論を呼ぶ一歩を踏み出した。一世紀におよぶ占領と再教育を持ってしても、氏族占領域で氏族の道が完全に受け入れられることはなかったが、氏族軍に入ることがよりよい人生への進路であると考える者たちがそれでも数多くいるのだ。むろんのこと、大半がメック戦士として起用するにはふさわしくないが、戦車兵、歩兵として弾よけ代わりになるに充分な成果を残している。ジェイドファルコンのブラックジャック軍学校は、マルヴィナが氏族長となって以来、二軍兵士たちの訓練を任されている。シブコ・プログラム用の資源を犠牲にしたくなかったので、新兵たちには標準以下の設備と有能でないファルコナーが回される。このような困難にもかかわらず、ブラックジャック校は氏族で最高の通常戦力訓練場となっている。例外は、ホースのオールドリグレットとドミニオンのフリーヘト訓練所だけである。占領域内で、マルヴィナは物事を平静に保つことができた。氏族で最も航宙艦が少ないので、艦隊がゴールデン・オルドゥンに回される前から、通信はまばらなものとなっている。マルヴィナが次々と征服を続けていることから、この状況が改善することはないだろう。しかし、たいていの場合、下層階級は問題に気づかぬままである。ファルコンに新しいマシンを供給する必要があるので失業率が低く保たれており、ウォッチの目を避ける限り、暮らし向きは良いものとなっいてる。

 占領域の外で物事はそれほど薔薇色というわけではない。続行中のケルハウンドの襲撃によって、占領域の世界は落ち着かないものとなっている。ズデーテンとの通信状況が悪いことから、ファルコンの輸送船団よりライラの襲撃部隊が来ることが多いというケースがいくつかある。これらの状況下において、獲得した新しい世界は完全に非生産的であり、ファルコンに継続的な負担を強いている。ウォッチが展開し、通常通りの暴力性で活動しているが、担当する世界が増えたことで、3050年の侵攻以来、最も薄く分散している。テロ戦術が狙うのは工場と鉱山の労働者であり、従ってこれらの世界は完全な崩壊から守られているが、ウォッチの数が少ないことがOZ内の反乱を誘発しているとの噂が存在する。これはファルコンにとって悪夢のような状況である。



シーフォックス氏族

 シーフォックス氏族は、ブラックアウト以来、成功すると同時に被害を受けている。工業が無事だったフォックスは、来る者すべてに兵器を売っている。不幸にも、Cビルの崩壊により、大半の顧客と物々交換するところに成り下がっている。実際のところフォックスはいつでも物々交換したがったが、基軸通貨は中心領域中の交易を容易にするものであり、独自単位のフォックス・クレジットさえも打撃を受けたのである。これは、フォックス艦隊と交易世界の両方が、交易可能な物資を持つか、あるいは儲かるがタイミングの難しい取引を逃すリスクを抱えることを意味する。

 シーフォックスの工業的な状況について我らに分かることはほとんどない。むろん、イタビアナ、ツカイード、トワイクロスにいまだ工場と飛び地領があることはわかっているのだが、チェインレーン・アイルズの守りを突破できた者はだれもいない。加えて、中心領域中の世界に1ダースばかりの小規模な飛び地領が存在する。ここで正確な数を書けたらいいのだが、ブラックアウト以来、多くが放棄され、多くが作られるか、移動しているのである。最後に、アークシップのことがある。噂によると、シーフォックスはアークシップに工場を載せて、取引するなり資源を生産に回しているという。専門の工場船もあるのだが、どの船が工場でどの船が単なる輸送船なのかは確認出来ないでいる。ブラックアウト以来、シーフォックス艦隊を追跡するのは事実上不可能となっており、情報入手を難しくしている。

 近年、通信の断絶が、各州(Aimag)の多様性と独立性を増しているようだ。最も顕著な例が、スピナ副氏族長領(Khanate)が氏族保護領を共同で創設したことである。氏族保護領運営で出しゃばることはないが、それでもシーフォックス的な中立を捨てて、自由世界同盟の政治に身を投じている。彼らはこういったコネクションを使って、コムスターのインフラを購入し始めている……将来HPGの通信が復旧するのを予想していることは間違いない。ティブロン副氏族長領は似たような方策をとっているようで、激しく押し込まれている恒星連邦から便宜と引き替えに資産を得ている。捨て値でも売りたい者から安く買うのは上手いビジネスに見えるかもしれないが、シーフォックスにも入手できない資源がこれらの新しい世界にあるというわけではないのである。



ウルフ帝国

 あるライラ人アナリストはこう言った……ここ15年のウルフ氏族の政策は、間抜けなほどに馬鹿げたものだと。50個の世界からなる宇宙帝国(事実上すべての工業・民衆含む)を放棄するという命令を出して、成功を望むことが出来るのは、氏族長のほか誰もいない。現時点で、ウルフ氏族は成功しているようだ。彼らはアミティ、カリダーサ、キーストーン、ソラリス、スチュワートの工業地帯を占領し、工業生産能力を飛躍的に増大させ、人口基盤を増やした。それでも、せいぜい6年間これらの世界を確保しているだけだ。民衆の利己心を上手く使い、前の支配者への不満と未知の恐怖を組みあわせて、ウルフはこれらの世界を維持することが可能となった。だが、究極的に、氏族の一部となりたい世界は存在せず、ウルフ氏族は意思を押しつけることになるだろう。

 コリアン・エンタープライズ、アースワークス、カリヤマ、VESTを使えるようになったウルフ氏族は、幅広い機種のメックを持っている。もっとも、これらの企業は3138年時点でフル生産状態になかったのだが。加えて、相当数の小規模な車両製造業者を旗下に収めた。

 これは、我々にとって、悪いニュースである。

 いいニュースは、ウルフ氏族が氏族占領域にあった工場の設備を事実上持っていかなかったことだ。我々が聞いている限り、ウルフがメリッサ・シュタイナーと取引を行いガネットに到着するまで、一年と少々の時間しかなかった。養育プログラムとシブコに優先順位があったことから、大型機材のほとんどは置いていかねばならなかった。その大半は隣人たちの手に落ちた。さらに、彼らは一番優秀な科学者、技術者、商人たちを連れていったが、労働階級の大多数(実際に物事を動かしていた人々)もまた残していった。

 侵攻時代のウルフ氏族と状況は似通っている。3050年代は氏族技術の工場を開業するまで15年の時間がかかったが、現時点では中心領域工場のアップグレードを監督する技術者たちまでもが少なくなっているのだ。「移動式工場」を使うことで、ウルフ氏族はいくつかの施設をアップグレードしているのだが、その数は少なく、生産される装備の大半はいまだ守備星団隊向けのローテクなものである。その一方で、大々的に成功した前線星団隊は修理を受ける必要性が少ない。現状において、氏族技術を今すぐ大量に求めたいのなら、シーフォックスが売却してくれるものに頼る必要があるだろう。

 話変わって、ウルフはニューオリンピアを除き、市民軍級の訓練施設を持っていない。よって、新兵の戦士たちはかき集めることができた設備で訓練を受けている。軍隊が外部の紛争に力を注いでいることから、ウルフは地元民に権威を行き渡らせるだけの数を欠くことになりそうである。彼らはそれを知っている。もし、ブラックアウトが不確実性という空気を生み出していなかったら、すでに通りでの反乱に面していたかもしれない。

 この潜在的な危機に対処するため、ウルフ帝国は異なった統合のアプローチを取った。ベアがやっているように少しずつ地元社会に溶け込んだり、レイヴンのように単純に力で地元民を支配するのではなく、ウルフは地元民を入隊させた。戦闘の損失を埋めるため、車両星団隊に地元民を使っているウルフは、戦力を保つと同時に、占領民が実際に故郷防衛の責を担っているという確信を与えるのである。このアプローチは長期的に見ると影響を及ぼすかもしれない一方で、(近年ウルフがとった他の行動と同じように)継続的な戦闘と勝利を必要とするものである――もし、勝ち続けられるのなら、問題はおそらく自然と解決するだろう。



ラサルハグ・ドミニオン

 ブラックアウトはラサルハグ・ドミニオンに雑多な衝撃を与えた。一方で、中央の統制が失われたことが混乱を生み出したが、一方で、航宙艦の頻繁な往来が通信と交易を開かれたままとした。国内の交易は若干の調整を必要としたが、外国とはだいたいにおいて隔絶されていたことから、Cビル崩壊の影響が限られたものとなったのである。

 工業的に、ドミニオンは氏族国家で最も多様性に富んでいるのだが、ウルフ帝国がその看板を奪い取るかもしれない。下層階級民が大勢おり、ベア=クローナーを好きに使うことができることから、つまらない贅沢品の巨大市場が存在する。こういった航宙艦で取引しても利益の出ない商品の大半は、地元消費者向けに現地惑星で生産される。これら家内工業は、アルシャインとラサルハグの信用市場に即座にアクセスできなくなると大打撃を受けたが、ゆっくりと回復しつつある。

 防衛産業は別次元の話である。第二次連合=ドミニオン戦争は、防衛産業に大きな打撃を与えた。ゴートン・キングスレー・ソープ社はラサルハグ工場で被害を受け、一方、グルミウム・クリエーション社とBA生産工場ガンマは襲撃された。この三箇所のうち、BA生産工場ガンマだけが戦前の生産力に戻っている。軍需品の販売が出来なくなると、GK&T社は気圏戦闘機の生産を停止し、グルミウム社は改修工場を減らした。加えて、ヤナセク工業が軍用航空機の生産を辞めて、民間モデルに切り替えた。ブラックアウト以来、これら工場の全て(といくつかの新工場)が、来たるべき戦争に備えて準備を整えようと苦労している。民間向けの製造企業よりも、国内の市場への依存度が高い軍需企業は、必要な資源を入手するのに苦労している。伝統的に氏族は独断で需要拡大できたかもしれないが、もしそうしたら経済にどんな影響がおよぶのか、ドミニオン評議会は、商人、金融業者と共に、考慮せねばならなかった。従って、ドミニオンは再軍備しつつある一方で、かつてよりもゆったりとしたペースでそれを行っているのである。

 おそらくこれはベストである。ウルフとファルコンが拡大するなか、ドミニオン軍は第二次連合=ドミニオン戦争以来、大部分が静かにしたままである。氏族軍のうち20パーセント以上が、ラサルハグ人で成り立っている。戦士階級は、政治的影響力が希釈化するのを懸念しており、拡大のため必要以上のフリーボーンを取り入れたがっていない。その代わり、ドミニオンは、3132年以来、毎年、シブコ・プログラムを拡大しており、最初のグループは卒業間近である。他氏族が夢見るような軍隊を生み出すため、ラサルハグ民衆を大量動員する緊急計画が存在するが、評議会には受け入れがたい社会的、経済的コストがついてくる。



レイヴン同盟

 政治的に言えば、スノウレイヴン氏族は元外世界同盟を吸収するのに成功したのだが、戦士階級の外で物事はそう簡単ではない。遅れた地方であることから辺境国家というものは貧しく、外世界同盟は特にそうであった。辺鄙で人口まばらな外世界同盟の各世界は、長らくのあいだ成長を助ける資本を探し続けており、レイヴンの存在あってしてもこれはほとんど変わらなかったのである。今日、外世界同盟が抱える問題の要点は、レイヴンが地元民を統合できないことにある。レイヴンの飛び地領は近代の輝ける象徴となっており、その多くが第三次継承権からほとんど変わってない都市からわずか数キロメートルのところにある。商人階級は地元コミュニティと交易しようとしているが、氏族のシステムから切り離された経済を持つ外世界同盟人は、購入するだけの金銭を持っていないのである。レイヴン・エスクード(統一通貨的なもの)が導入されたにもかかわらず、外世界同盟内の無数の世界でふたつの分かれた経済が存在するという現実があり、従って経済成長は停滞している。

 その最も明白な影響は、キャトルベル、ミッチエラ造船所の大部分をモスボールしていることにある。星間連盟の時代から稼働する造船所なしで、どうやって航空宇宙中心の外世界同盟が生き残ってきたのか、疑問を持たない者はなかった。その答えは交通自体が少ないことにある。政府の補助金を持ってしてのみ、3090年代以来、両造船所は稼働しているのだ。軍事生産はもう少し良い状況にある。時期が良かったあいだ、レイヴンは氏族軍を再建し、同盟市民軍軍団(元の同盟市民軍軍団の後継者)を改装したが、それ以来、ほとんどが民間の生産に頼らねばならなかった。

 ブラックアウト以後、氏族軍を活性化するための苦労は頓挫している……レイヴン同盟は、小氏族が辺境国家に接ぎ木された存在に過ぎないという事実があるからだ。氏族長たちは、ユナイテッド・アウトワールダース・コーポレーション(UOC)社などに、物資の増産を指示しているが、そうするだけの資金を確保出来ないでいる。UOC社は過酷な条件下の労働を強いることができないし、そうしたくもないので、レイヴンが汚れ仕事をして、社会の団結を危機に晒さざるを得なくなっている。氏族の工場施設では幾分簡単であるが、レイヴンで最大の工場でも、UOCの規模と生産量にはおよばないのである。

 人口はまた別の問題である。聖戦から65年経っても、レイヴンには4個銀河隊を維持できる戦士しかいないのである。艦隊の再始動は戦士階級をさらに薄く引き延ばすだろうが、ドラコ連合と恒星連邦の戦争に首を突っ込む選択をした。これらの巨像に押しつぶされないため、レイヴンはAMCの数を増やす必要に迫られると思われる。だが、AMCは(聖戦後に再編された通り)単なる市民軍となっていて、対海賊任務のみを行っている――レイヴンにとってはソラーマの仕事だ。これら11個連隊分の気圏戦闘機は、完全に地元民のナショナリズムへの譲歩として残されている。氏族軍は言うまでもなく、レイヴンがAMCのを拡大を望んだとしても、それは難しいだろう――歴史的に平和主義者の外世界同盟人を使うことになるので。



(放浪)ウルフ氏族

 ジェイドファルコンによるライラ侵攻路の狭間にあるアークロイヤルは、希望の灯台となっている。放浪ウルフの工場は、ファルコンを止めるために戦うすべての軍隊に向けて戦争用の兵器を生み出し続けている。

 それが簡単なことならいいのだが。

 放浪ウルフ氏族は最大でおよそ15個星団隊を配備するが、長引く戦争で戦力は半分以下となっている。工場で働く市民はいるのだが、氏族のために戦おうという志願兵はほとんどいない。その理由はケルハウンドにある。ケルの名前があまりに高く鳴り響いているのだ。カランドラ・ケルが勇敢で華々しい攻撃を行うところ、放浪ウルフは新兵を引きつけることのない防衛戦を行っている。数年前、これは問題ではなかった……ウルフ竜機兵団以外にもアークロイヤルを基盤にする傭兵部隊が存在し、放浪ウルフは氏族技術の装備を持って彼らのサービスを望むことが出来た。いまや、同じくらい死にものぐるいのライラが、放浪ウルフでは支払いできないような額をオファーしているのだ。

 放浪ウルフの解決策は、潜在的に恐ろしいものであった。他の氏族すべてと同じように、ブラックアウト以来、彼らは戦争勃発を予想してシブコ・プロジェクトを拡大し、ウルフ竜機兵団がドラコ連合と契約した後で再びそうした。コベントリ防衛のために、ライラ共和国が国境から兵士を引き上げ始めた後、放浪ウルフは自らが危険な場所にいることに気づき、これまでで初めて、氏族軍を3個銀河隊以上に増やすべく急いだ。ソリチュード訓練施設には若い声が響いている……厳しいトレーナーが子どもたちを戦士に鍛え上げようとしているのだ。シブコの大半が5歳以下なのだが、15歳以下の大規模なグループが存在する。彼らは16歳の誕生日を迎える前に、ジェイドファルコン氏族との実戦という形で階級の神判を行うことになるのだ。放浪ウルフのような「良い」氏族にとって、これは深刻な出発地点であるのだが、前例は存在し、兵士の需要は大変なものなのである。





ウルフ帝国 WOLF EMPIRE


アルファ銀河隊
 アルファは、ウルフ氏族の筆頭銀河隊として、第IX宙域への囮攻撃を皮切りに忙しい10年を過ごした。後にガネットでマーリック=スチュワート共和国への隊列の中核をなし、トンガタプまで突き進んだ。ライラを攻撃するときが来たとき、アルファに立ち向かうものはほとんどなかった。3143年、アルファはターカッドに達した。3145年にはヘスペラスIIでゴールデン・オルドゥンを破った。

 主に騎兵メックを装備してるこの銀河隊は、ウルフ氏族のすべてを集約している。3110年代に5個星団隊へと戻ったアルファは、3132年以来、規模を増やし続けており、車両三連星隊をほとんど放棄した。戦闘での損失が出続けていることが、真のエリート銀河隊となることを妨げている。


ベータ銀河隊
 アルファが行くところに、ベータ銀河隊はついていく。3137年の囮襲撃に加わった後、マーリック=スチュワート共和国の侵攻においてベータはスピンワード側面に陣取った。これにより、スチュワート、キーストン、ニューオリンピアを奪う名誉を得た。ライラ共和国への侵攻は、それほど上手くいかなかった……ウルフハンターズが脇腹に刺さるトゲとなったのである。停戦の後で戦いが再び勃発すると、ギャラクシーコマンダー・アラリック・ウルフがスモルニクでアナスタシア・ケレンスキーをボンズマンとし、ウルフハンターズに対する復讐を果たしたのだった。

 ベータは、3142年、ターカッドシティ攻略で大きな役割を果たした……ベータが都市で防衛部隊を足止めするあいだ、アルファ銀河隊が王宮を確保したのだ。アルファがヘスペラスIIに挑んでいた時、ベータはフォートレス・リパブリックの国境を調査するために送られ、レムナントの列を切り開いた。現在、アルファ銀河隊はベータに加わり、共に共和国への致命的な脅威となっている。


デルタ銀河隊
 スフィア共和国崩壊に伴い、ウルフ氏族はデルタ銀河隊を復活させた。その姿形と様相は60年前に共和国に贈られたデルタと同じだった。第IX宙域に送り込まれた三番目の銀河隊として、デルタはアルファとベータの脇役を演じた。通常車両ばかりのデルタは、両メック銀河隊のような機動力を欠いており、ウルフ氏族の常套手段である掃討機動を実行することが出来なかったのだ。マーリック=スチュワート共和国侵攻において、デルタは組織的な抵抗のほとんどないアンチスピンワード方面を任された。ライラ共和国侵攻の際にスピンワードにターンしたデルタは、第2ウルフ強襲星団隊がウルフハンターズに敗北した後で救援に向かった。

 ターカッド侵攻後、デルタはライラの主星近くに駐屯している。ウルフ帝国内の占領した工場を使って、デルタは完全なメック銀河隊に再武装されたが、アルファ、ベータと違って氏族技術のオムニメックを持っていない。同じく、新兵メック戦士の流入により、デルタは上位銀河隊より幾分技量で劣っている。


エプシロン銀河隊
 聖戦の後に作られたエプシロン銀河隊は、戦力を再建するというウルフ氏族の試みのひとつである。エプシロンはよく言っても、イオタやカッパのような二線級ではないといった程度だ。デルタが第IX宙域の襲撃に使われていたところ、エプシロンはガンマ銀河隊と共にウルフ氏族の資産をマーリック=スチュワート共和国に運ぶ護衛を行った。侵攻の最中、エプシロンは他の前線銀河隊の予備戦力を努めたが、ウルフが反転しライラを攻撃したときにこれは変わった。

 上位銀河隊が自由世界同盟国境から移動する間、ライラの補給線のほぼ真上にいたエプシロンは容易な勝利を重ね、大量の回収品を得た。回収品により、エプシロンはメック銀河隊として改修することが可能となり、まるでライラ軍部隊のようになったのである。皮肉なことに、これによってウルフ氏族の指揮官たちはエプシロンが攻勢に投入されるのが遅すぎると感じることになった……ウルフ帝国の中心部を守るため守勢に置かれたからだ。


ガンマ銀河隊
 ウルフ氏族の旧銀河隊のひとつであるガンマは、ブラックアウトまでに大規模な再建を遂げていた。ガンマはアルファ、ベータ銀河隊の第IX宙域襲撃に同行するという入札に負け、残りの者たちをマーリック=スチュワート共和国に護衛する限られた役割をこなしたのだった。マーリック=スチュワート共和国で実戦のチャンスが訪れたとき、ガンマはデルタとアルファに挟まれて、重要な目標がほとんどないことに気がついた。ガンマが幾分の栄誉を得られたのは、ライラ攻撃でだった。有名なのはアルカディアである。

 ホラブランで第7戦闘星団隊が呆れるような敗北を被ると、これは相殺されてしまった。休息中にガンマ銀河隊は出来るだけ多くのオムニメックを入手しようと特段の努力を費やし、3145年、第VIII宙域に送られたとき、隊列から戦闘車両を完全に追い出すのに成功した。第VIII宙域で異常に高い損失を被ったにもかかわらず、ガンマは氏族内で最も経験豊かな銀河隊なのだが、アルファやベータのような氏族技術を欠いている。


ゼータ銀河隊
 名目上は二線級銀河隊であるゼータは、ウルフで最も若い銀河隊である。ウルフ帝国創設後、この新国家はライラ、自由世界同盟から捕獲した戦争物資の膨大なストックの上に座っていることに気がついた。既存の銀河隊が戦利品を分け合った後でさえも、新しい銀河隊を武装するのに充分な量が残ったのである。戦士はウルフ占領域から旅してきた最年長のシブコを使った。その大多数は、ゼータ銀河隊が第VIII宙域に送られたときが階級の神判となった。損害は激しかったが、多くが生き残り、ウルフ氏族の訓練の証としたのである。実戦の機会を得たことによって、ゼータ銀河隊はアラリック・ワードに狂信的な忠誠を誓い、気に入られるよう他の銀河隊よりも激しく訓練している。アルファ、ベータ銀河隊の両方が、自身をアラリックのお気に入りと考えていることから、この点は争いの種になっている。


イオタ銀河隊
 2個ある二線級銀河隊の1個として、イオタはこの数十年間、戦闘部隊の形を保とうと奮闘している。ウルフ帝国の創設によって全面刷新が可能となったが、イオタはいまだ1個車両三連星隊を保っている。マーリック=スチュワート共和国への侵攻があったにも関わらず、イオタ銀河隊はウルフ氏族の資産を守るのを任された。損害は事実上なかったのだが、前線ウルフ銀河隊群による損害補充の対象にされ、定数未満となり、攻勢作戦で不利となったのである。その結果として、イオタはライラの攻撃からアンチスピンワード国境を守る2個星団隊規模の駐屯部隊として展開している。地元民の補充兵を使いたがっていないことから、この状況はしばらく変わりそうにない。


カッパ銀河隊
 ウルフ氏族の二線級銀河隊として、カッパはイオタよりも苦境にある。3090年代のある時点で、メック1個星団隊以下の戦力しかなかったのである。10年にわたり、近隣のラサルハグ・ドミニオンに訓練ツールとして使われていたカッパは、ウルフ氏族で一番の通常兵器使用者になるのを余儀なくされ、邪道との評価を得てしまった。3130年までに、カッパは新しい星団隊群と新しいメックを配備されたが、評判はそのまま残り、驚くべきことではないが、ハンマーフォール作戦のあいだ、駐屯任務を与えられたのだった。ウルフ帝国の新しい守備銀河隊群を作るときが来ると、これは不幸となって戻ってきた。名誉なき中心領域人の新銀河隊を指揮するのに、カッパの戦士が適任だと思われてしまったのだ。50%をわずかに超える戦力のカッパは、再びかろうじて戦える程度に戻った。幸運にも、自由世界同盟との平和条約は、カッパに対する脅威がなさそうなことを意味している。


ラムダ銀河隊
 ラムダ銀河隊は地元ライラの入隊者で作られた2個銀河隊の片方である。ウルフ帝国創設後に作られたこの部隊は、ウルフ氏族への支持を集めることを意図している。これが成功かどうかは判断しがたい。ラムダは最近作られた銀河隊のひとつであり、使っている武装は誰もほしがらないものである。よって志願兵たちがウルフを慕うことはなかった。士気は非常に低く、口コミによって新兵の流入は滞り、戦力が80パーセントを超えたことはない。現在、ライラ共和国との密輸入が蔓延しているところだが、ラムダはこれを止めたがっていないし、止めることも出来ないようだ。ウルフ帝国にとって幸いなのは、ライラ共和国があまりに弱すぎて、ラムダの兵士たちが共和国に戻りたがっていないことである。

 だが、変化の兆しはある。ファルコンのソイリハル襲撃において、第37ウルフ守備星団隊が防衛のために団結したのである。ライラ共和国の退却に伴って襲撃の機会が増加したら、民衆を守る唯一の道として、銀河隊はウルフ氏族を支持するようになるかもしれない。


シータ銀河隊
 シータ銀河隊は最も成功している新銀河隊であり、最良の技量レベルと在籍率を持つ。ウルフ帝国創設の発表から数日後に立ちあげられると、ウルフの募兵担当者たちは、ライラ共和国の「裏切り」を強調し、ウルフ氏族とマーリック=スチュワート共和国が共同でシュタイナーに逆襲するチャンスを言い立てた。装備は、他のウルフ銀河隊が放棄した戦車三連星隊、ライラとマーリック=スチュワートの回収品から来ている。ライラ共和国侵攻に参加するのには遅すぎた一方、シータはレムナントの侵攻に備えた予備としての役割を任された。ソラリス、カリダサを占領するために移動したシータは、メック三連星隊、バトルアーマー三連星隊をアップグレードすることが可能となり、下級の戦士たちに戦車を送った。現在、シータはスフィア共和国国境におよぶ旧マーリックの世界を奪還するという数世紀来の夢を達成するチャンスに湧いている。誰よりも彼らはウルフ氏族と共に働くことの利益を実証している。


タウ銀河隊
 タウ銀河隊は、事実上、アリソン・メック戦士校とロイド・マーリック=スタンレー航空宇宙学校の3139年から3142年の卒業生で構成されている。すでに訓練を受けた才能が多数いることから、ウルフ氏族が彼らを使うのは当然であった(ウルフ・ウォッチの綿密な調査の後で)。この状況を最大限に活用するため、ウルフは守備銀河隊にしては普通より多くのメックと気圏戦闘機を供給するのに特別な努力を払った。残念ながら、完全なメック星団隊にするには不足があったことから、穴を埋めるために腕の劣る戦車兵と歩兵を募らねばならなかった。

 養成校での教育を受けている戦士たちは、自分たちを高く評価していて、比較的静かな自由世界同盟国境に駐屯していることにいらだちを隠せないでいる。訓練を受けたマーリック=スチュワート共和国にまだいくらかの忠誠心を残していることから、これはさらに悪化するかもしれない。彼らをライラ国境に動かせば、外交的な事件が待っているだろう。よって、タウは忍耐強くなる必要がある。


シグマ銀河隊
 二番目のライラ人による守備銀河隊であるシグマは、自由世界同盟=ライラ国境にまたがっている。あらゆる意味で、この配置は銀河隊自体の混乱した性質をシンボル化したものである。ライラとして、彼らは自由世界同盟という大昔の敵から守る一方で、同時に、新しいウルフ帝国の一部としてボラン州の同胞を食い止めているのである。アンチスピンワード国境に足止めされ、新しい装備はやってこないので、たいていの場合、シグマは戦車を使って激しい戦いを繰り広げている。バトルアーマーですら珍しいことから、通常歩兵に頼らざるを得なくなっているが、少なくとも氏族技術の改良された小火器を使っている。今のところ、自由世界同盟による侵攻という恐怖だけがシグマ銀河隊の忠誠心をウルフ帝国に縛り付けている。この状況がいつまで続くかは誰にもわからないことだ。


ユプシロン銀河隊
 ユプシロン銀河隊は隊員の大部分がスチュワート周辺で育っており、スフィア共和国出身という背景を持っている。自由世界同盟の一部だった一方で、故郷をマーリック=スチュワート共和国に占領されていたことは、部外者に対する当然の恐怖心を民衆に与えている。ウルフ氏族はこの恐怖を利用し、自由世界同盟にもスフィア共和国にも出来なかった自らを守る力を申し出たのである。コリアン・エンタープライゼスの工場を使えるユプシロンは、二線級ウルフ銀河隊と似たようなやり方で装備を調えることが出来た。最も印象的なのは、1個星団隊あたり少なくとも2個の超新星隊を持つバトルアーマーの採用数である。残念ながら、輸送手段がないことから、これら部隊の有効性は制限されるだろう。

 今のところ、ウルフ氏族はユプシロンが自由世界同盟に敵対する範囲にいることに満足している。停戦樹立に伴い、短期的に危険性はほとんどない。だが、スピリットキャッツが近くにいることを考えると、ウルフはユプシロンによって避けられぬ攻撃に対する優れた準備が出来るのだ。


ミュー銀河隊
 ミュー銀河隊の戦士たちは、マーリック=スチュワート共和国とタマリンド=アビー公国の間にある独立世界、係争中の世界から来ている。誰からも愛されず、求められてないこれらの世界は、恒星間の地理的要因以外に寄り集まる理由がなかった。これはミュー銀河隊を立ちあげるにあたって、ウルフ帝国が克服せねばならない挑戦であった。志願兵による戦力であるにもかかわらず、氏族の人生の現実が明らかとなったことから、ミューの戦士たちは訓練に関心を示していないようだ。ある演習において、ミュー全星団隊による活動は、実弾による乱闘に発展した……なぜなら戦士たちは、数世紀におよぶ惑星間の怨恨によって諍いを起こすからだ。ウルフ氏族は窃盗や持ち場放棄などの軽犯罪に対処せねばならなかったが、氏族戦士がいないことにより伝統的な刑罰を執行するのは難しかった――特に、厳しい指揮官たちは、死に至る「事故」に遭遇しがちなので。シータ銀河隊が地元文化を氏族軍に取り込むことの良い面を表しているとすれば、ミューが表しているのはリスクである。これまでのところ、問題は隔離されているが、遅かれ早かれ解決せねばならない危機である。


ウルフ氏族艦隊
 現在、ウルフ氏族艦隊は〈ブラッディ・ファング〉(キャメロン級)、〈ダイア・ウルフ〉(ソヴィエトスキー・ソユーズ級)、〈ジェローム・ウィンソン〉〈ヴィクトリア・ワード〉(リベレーター級)、〈ローグ〉(コングレス級)からなる。〈ローグ〉はアトレウスとターカッドで氏族の旗艦を務めた。

 各戦艦はイセグリム級降下船の護衛なくして移動することはなく、倒しがたい存在となっている。常に適切な造船所を欠いていたことから、これらの艦を維持するのは50年にわたりウルフ氏族にとって挑戦であった。ウルフ帝国で状況が悪化したわけではないのだが、シーフォックスの造船所はかつてより遠くなっている。結果、ウルフ帝国の海軍星隊は、ここまで戦闘に参加していない。

 降下船についてはこの限りでない。ウルフ氏族のイセグリムは作りが悪いかもしれないが、長年かけて多数を生産してきたのである。イセグリムを機銃掃射に使えるのは、あらゆる者にとって恐怖である……パイロットも含めて。だが、アミティを除いて、損害を補充出来るような航空宇宙施設が不足しており、ウルフ氏族は空軍力の使用を控えねばならなくなっている。








傭兵





概要 GENERAL REVIEW

 共和国にいるあいだ、我々は不誠実な傭兵を排除しようとしてきたのだが、傭兵の需要はかつてよりも増大している。ブラックアウトが始まって以来、軍を動かす我らの能力がそう損なわれたわけではないのだが、多くの世界が――共和国内の世界さえも――用心棒を雇ってさらに守りを固めようとしている。契約が激増にしたにもかかわらず、傭兵業界の見通しは、現在ほど寒々しいものにはならないかもしれない。聖戦によって数多の名門部隊が全滅し、意図するせざるに関わらずブレイク派の入札に応じたさらに多くの部隊が評判を傷つけられた。31世紀後半に比較的平和が保たれたことと、我らが行った軍縮キャンペーンは、傭兵に鎮魂の鐘を鳴らすあと一歩まで迫った。軍の余剰品(多くの傭兵にとって補給の中心)は矛盾となった。

 グレイマンデー以降の混乱によって、既存の部隊と駆け出しの部隊が、準軍事部隊を展開した……伝統的な選択肢が欠けていたからだ。状況が改善されて、メックと戦闘車両が入手できるようになった(大半はここ10年で回収品が流入したことによる)が、傭兵たちは戦場の内外を問わずこの13年間命をかけて戦ってきた。





新しいものは古くて古きもの NEW IS THE OLD OLD

 3140年代は、雇われ兵の歴史で最悪の日々への逆戻りであった。グレイマンデーに続いて打撃となったのは、傭兵評価・雇用委員会共和国支部(MRBC-RB)の破産であった。リアルタイムな通信が途絶したことで、委員会は機能不全に陥り、3132年12月、会社更生手続きの適用を申請した。破産救済法案が上院で3133年に廃案となり、予備保護は拒絶された。抜け目ない裏取引によって、この企業は運営を続け、5ヶ月後、ビジネスは通常に戻ったかのように見えた。傭兵たちはすぐに軒先を見つけた。MRBC-RBはガラテアでいまだ活動していたが、中立な仲介の時代は過ぎ去っていた。重要な雇用主の偏見は遠慮のない契約条件につながった……王家軍票での支払い、ひどい回収権、独立指揮権の拒否、輸送費用のゆすりなどである。

 コムスターのCビル(恒星間経済の中心)が事実上崩壊したことで、さらなる困難がもたらされた。これまでぬかりない部隊は、王家軍票での支払いを避けていた……なぜならひどい雇用条件を押しつけられたり、「専門店化」してしまうかもしれないからだ。さらに王家軍票は国家間を旅するときに両替が難しく、Cビルよりも国際市場で受け入れられづらかった。良い代わりの貨幣がない中で、一部の部隊は弾薬を通貨として使い始め、無意識のうちに市場を動かした。弾薬の供給は記録的に少なく、価格は記録的に高い状況である。天井知らずのインフレーションは、3060年代に起きた内戦最盛期の恒星連邦を思い起こさせるものである。よって、平均的な傭兵は軍需物資を法外な価格で入手し、各契約で受け取る稼ぎは遙かに少ないものとなっている。名門部隊でさえももがき苦しんでいるところだが、それはチャンスがないからではないのである。





いたるところに市場はある WATER, WATER EVERYWHERE…

 共和国の衰退は、傭兵に活躍の機会をもたらしたが、作戦に成功しても損失が補充できないという状況に置かれた。共和国の世界が陥落していくに従い、ストーンの価値も下落していった。一部の傭兵は輸送の混乱で足止めされ、第VII、IX、I宙域の部隊は氏族に破壊された。現金化できた部隊はすぐに評判と名声を獲得したが、そのどちらも支払いをもたらさなかった。

 伝統的に信頼できる雇い主は、リスクのある取引相手となっている。ライラ共和国の未来については激しい議論がなされているところであり、ターカッドが(再び)陥落したら、共和国の将来もそうなるだろうと多くが恐れている。ライラ軍の信頼性は、第三次継承権戦争初期より最低の状況にあり、契約は溢れているが、リスクは深刻である。ライラは名門傭兵部隊をヘスペラスIIに放置し、氏族のなすがままに任せた。ライラは最終的にヘスペラスを取り戻したが、こんな噂が影でささやかれている……共和国と契約した小部隊は死んだも同然というものだ。恒星連邦もまた似たような災厄に遭遇しそうなところであり、契約を持ちかけられた賢い指揮官たちは懸念を示している。長年の支持者たちは恒星連邦が勝利すると主張しているが、3039年戦争以来、連合相手にそううまくやってきたことはない。狐が死んだのは大昔の話であり、子孫たちは勝利することが少ない。

 自由世界同盟が復活する中、朝食のために内戦をするようなこの国での仕事を求める傭兵向けの仕事は存在する。長年にわたって、同盟との契約は氏族と戦わずに済むものであったが、現在、事実上全ての国からの脅威に瀕しており、休戦中であっても注意を要する。他の国家の場合は、聖戦以来最悪の戦争に直面して財政的な支払い能力が最大の懸念すべき点となっている。カペラは雇用を行っていないが、傭兵抜きでどうやって恒星連邦に対する成功をやってのけたのだろうか? ドラコ連合は唯一、傭兵たちが向かう国となっている。ヨリ・クリタのリーダーシップに対して懸念があるにもかかわらず、トーマーク元帥、恒星連邦、ノヴァキャットに対する戦歴は敬意に値するものなのである。

 辺境はもっとましな状況であるが、輸送コストとその他の問題が、傭兵にとってのオアシスというより蜃気楼にしてしまった。MRBCのペテン師抜きに取引を仲介するのは、ピンを抜いた手榴弾を持つようなものであるが、再統一戦争以来初めてとなるペイオフの可能性は、リスクに見合う勝ちがある――賭け金を支払える者たちにとっては。





傭兵の準備状況 STATE OF MERCENARY READINESS



傭兵の拠点 THE MERCENARY HUBS

 31世紀で有名だった傭兵の拠点は、ほとんど忘れ去られている。フレッチャーはカペラに吸収され、ウェスターハンドもまたカペラが廃止した。アンタロスはスノウレイヴンが閉鎖した。ノースウィンドは(我らの「提案」で)閉鎖した。アストロカスジーとノイジエルは聖戦後に再開することがなかった。グレイマンデー前の比較的平和な30年間で、仕事が干上がったことから、さらに無数の拠点が閉鎖された。平時を生き残った拠点の多くは、かつての栄光の幻影に過ぎないものとなっている。



アークロイヤル

 アークロイヤルは再び活況を取り戻している。雇い主候補たちは、氏族に対する出撃、ライラ国境防衛の機会を多数提示している。ウルフとファルコンの挟撃が共和国の多くをむさぼり尽くしていくなかで、傭兵の仕事(と支払額)は激増した。死にものぐるいの貴族たちが自星を守るために、どんな戦力でも求めているからだ。残念ながら、仕事を取る者たちはほとんどいない……どれだけの金額が提示されようとも、クローネ通貨切り下げと、氏族の残虐さは、あらゆる展望を弱めるものなのだ。41年に起きたブリューワーズ一族のほぼ無血のクーデター、43年の氏族によるターカッド強襲、そしてつい最近のヘスペラスII一時的喪失……このすべてがクローネを不安定にしている。共和国の外では、一部から無価値と嘲笑われているのだ(といっても、他の全王家通貨のように、Cビルよりは上がっているのだが)。42年、ケルハウンドがファルコンにほぼ殲滅された後、アークロイヤル陥落が間近との噂が出回っている。マーティン・ケル大公爵は、守りを固める傭兵も、雇い主を探す傭兵も惹きつけることが出来ていない。



ガラテア

 アウトリーチが核攻撃されて以来、傭兵の中心に戻ったガラテアは、聖戦中、すぐブレイク派に占領された。3076年に解放されると、MRBCはただちのオフィスを再開し、雇用を開始した。5年後、共和国傭兵法によって、ガラテアはスフィア共和国で唯一の合法的到着地点となった。ガラテアはソラリスVIIと競争を行った……ソラリスVIIは世紀の変わり目に、独自の浄化作戦を完了させ、グラディエイター的な戦闘を中心にすることとなった。

 3109年までに、ガラテアは再び傭兵たちの星となった……傭兵雇用と訓練場の分野で疑いようもなくチャンピオンになったのである。多数の傭兵と雇用主が、既知宇宙の他の場所よりもここで取引を行った。グレイ・マンデーはビジネスを停滞させ、MRBCをほぼ終わらせたが、HPG通信の喪失でさらに傭兵と雇用主が訪れ、両陣営の落とす金でガラテアは潤った。3133年までに、ビジネスは好況となった……少なくとも雇い主の視点からは。

 フォートレス・リパブリックはガラテアにとって新たな試練となった。ガラテアまでの進路いくつかが寸断されただけでなく、共和国に放棄された宙域がすぐさまウルフ、ファルコン、ベアに併呑されていったのだ。昨年の12月、ファルコンがガラテアを攻撃し、相当数の傭兵部隊がレッドバーンのリパブリック・レムナントに加わり、ファルコンを追い払った。

 この紛争後、『ガラテア防衛連盟』の創設が発表された。ハンセン荒くれ機兵団に率いられたこの集団は、ガラテア、シルマ、ミザール、アルコルを守る。契約は豊富だが、支払いは連盟が生き残るかどうかにかかっており、ここに投資してない部隊はほとんど呼びかけに応じなかった。



ヘロタイタス

 リムワードの主要勢力すべてがヘロタイタスでの雇用を行う。中心領域とは異なり、辺境の傭兵たちは現金と物々交換システムで取引を行うことが多かった。Cビルの切り下げはここではほとんど影響をもたらさなかった。仕事は合法性が怪しいものから完全に違法な活動までたくさんあるが、正しいコネクションを持っているのなら、きちんとした仕事をいくつか見つけることができる。



アウトリーチ

 決断と強迫観念の間にはちょっとした違いしかないと言われている。そして中心領域に、この違いをぼやけさせる場所があるとしたら、それはアウトリーチである。聖戦中、核の炎で焦土と化し、軌道爆撃で粉砕されたアウトリーチは、グレイマンデーまでほとんど死んだ世界となっていた。グレイマンデーに続く混乱のなかで、中心領域リムワード地方の小規模な傭兵団がアウトリーチに集まり始めた――MRBCは60年前にこの世界を放棄していたというのに。

 傭兵がいるという話は急使航宙艦によって広められ、3133年5月までに、第III宙域、第VII宙域、第X宙域の政務官、惑星特使たちは、アウトリーチで雇用することで防衛を強化した。仕事は少なく、アウトリーチには公式のMRBC資格がなかったのだが、ビジネスは成長し続けた。3133年6月、スピリットキャッツが(ウルフ竜機兵団の小規模な派遣部隊の助けを借りて)アウトリーチを一時的に占領した。キャッツはかつての傭兵世界に興味を示さなかった一方、活動を邪魔する理由もなかった。3134年1月までに、マーリック=スチュワート共和国、オリエント保護領、マーレッテ管区、ヴァレクサPDZのすべてが、この世界に代表を置いた。

 フォートレス・リパブリックが動き出したとき、アウトリーチには50近い傭兵部隊がおり(そのうち一部は、メック1機という小規模さだった)、2ダースの部隊が第X宙域内で活動中だった。国境が閉じられると、RAFは国家の安全のため真っ先に傭兵の活動を終わらせた。これら部隊の大半は、すぐにRAF部隊に編入させられたが、一部はそれに抵抗し、適切に処理された。RAF士官の中には、徴発された傭兵で部隊を強化することに怒る者がおり、暖かい歓迎を受けた元傭兵はほとんどいなかった。それにも関わらず、多くが新しい役割において確固とした協力関係を樹立している。





こんにちの傭兵 MERCENARIES TODAY

 傭兵に関する情報収集は常に臨機応変的なものとなっている。知られている全傭兵部隊について詳細な概要を提供するよりも難しいことがひとつだけある……それは知られている傭兵部隊のリストをまず最初に作ることだ。なので、このセクションは中心領域と辺境で活動するよく知られた36の部隊を中心とする。簡潔さをよしとするため、包括的なアップデートを行うのではなく、各地域の部隊ごとの来歴/アップデートを載せた。



カペラ大連邦国

 3138年11月、ダオシェン・リャオは大連邦国内での傭兵雇用を段階的に中止するという宣言を行い、無期限で傭兵雇用を取りやめた。いつものリャオのやり方の通り、移動を強要された忠実な部隊に対し、説明は行われなかった。傭兵の支援を失ったことは、大連邦国の戦争継続を妨げなかった。グレイマンデー以降、リャオ家は共和国と最大の仇敵である恒星連邦から大きな勝利を得ている。その要因の大半は、「潜む獅子」部隊によるものである。



ドラコ連合

 信頼できない過去がある(例、タカシ・クリタ統治時代の悪名高い「傭兵に死を」命令)にも関わらず、ドラコ連合は32世紀における傭兵雇用主筆頭となっている。ドラコは全力を持ってしてニューアヴァロンへの進撃を続けており、この地域で多数の契約を提供している。ラサルハグ・ドミニオン、レイヴン同盟への国境襲撃は継続中である。ノヴァキャット反乱があったので、イレース管区での防衛任務は豊富である。契約条件は20年前より劣っているが、たいていの国よりは良いものであり、現状において勝っていることが魅力を増している。



ウルフ竜機兵団

 ワコー特戦隊によるハーレフシティへの卑怯な奇襲が、聖戦の「公式な」始まりだと考える者はいまだに多い。3067年末までに、ジェイム・ウルフは死に、ベータ連隊はワード・オブ・ブレイクが支配する火星への強襲が失敗に終わって失われ、ブレイク派のアウトリーチ核攻撃で生き残った竜機兵団は半数以下だった。竜機兵団はアークロイヤル(次の60年間本拠地となった)に退却し、聖戦で重要な役割を果たした。機能不全となり、士気崩壊した竜機兵団のわずかな生き残りは、倒れていった仲間たちとは別個の存在に成り果てていた。

 ウルフ竜機兵団は、比較的平和な次の25年を、雇用、再建、傭兵としてのアイデンティティの再定義に費やした。3113年までに、ウルフのオナーネームは永続的に廃止され、部隊を占めるのは、ウルフ氏族出身フリーボーンの子孫たちよりも、集められた戦災孤児のほうが多くなった。ベータ連隊は再構成され、ゼータ大隊とウルフスパイダー大隊は、スパイダーウェブ大隊とタランチュラ大隊(3129年)に引き継がれた。3個目の特殊戦力――ウルフズベイン大隊――は、3140年に登場した。アルファ連隊は聖戦をだいたいにおいて乗り切ったのだが、竜機兵団で最高の戦士たちが集まった連隊ではなくなり、訓練、事務管理の役割を果たしている。

 32世紀における竜機兵団で最初の重要な作戦行動は、タマリンド=アビー公国襲撃で始まった。ガンマ連隊がカマチョ機士団と共にラボーチェアで仕事を果たし、スパイダー・ウェブ大隊がサルティヨで戦った。ベータ連隊はプレストンとニイハウでタマリンド=アビー公国軍を倒したが、どちらの世界にも居すわることがなかった。7年後、竜機兵団はファルコンと手合いを行い、デイアで激しい攻撃を行った。

 グレイマンデー後、竜機兵団の偵察部隊がスピリットキャッツを支援し、かつての本拠地アウトリーチを襲撃したが、両部隊はしばしの後に退却し、ウルフ竜機兵団が帰ってきたと考えた者たちを失望させた。竜機兵団は3130年代の大半をアークロイヤルで過ごし、ジェイドファルコンを襲撃するか、逆に襲撃をはねのけた。3137年、トーマス・ブラベイカーが竜機兵団の指揮を引き継いだ。数十年にわたる防衛任務に退屈した彼は、ヴィンセント・クリタとの交渉を行った。その結果、この数世代で初めて全軍がアークロイヤルを離れ、ドラコ連合に仕えることとなったのである。3139年の残りの期間、竜機兵団はリュウケンと共に戦い、ドラコ境界域の恒星連邦世界を征服していき、『龍』のニューアヴァロンへ向けた攻勢を支援した。

 竜機兵団はほぼエリートのメック戦士たちで構成され、氏族、ライラの装備を主に使っている。最近加わったウルフズベイン大隊は、このルールの例外である。ダヴィオン領攻撃の際に回収された物資を使うウルフズベインのメックは、恒星連邦製品が大半である。



恒星連邦

 3135年、ケーレブ・ダヴィオンが国王となった。9年後、ドラコ連合の侵攻中に国王は戦死した。彼と共に、13個におよぶAFFS部隊がパルミラで永遠の眠りについた。これによってジュリアン・ダヴィオンが新国王となったのだが、そのとき彼はファルコン占領域でケルハウンドを支援していた(そして現時点で彼は恒星連邦に移動している最中である)。指揮系統が混乱したAFFSはドラコ連合を食い止めるのがほとんど不可能となり、クリタ軍はニューアヴァロンまでジャンプ数回のところに移動した。ニューアヴァロンに近い十数の世界の防衛を強化する契約は、あえてリスクを取りに行くすべての傭兵に開かれている。現在、MRBCが仲介している契約の多くと違って、ダヴィオンとの契約では独立指揮権、完全な回収権、輸送費用すら喜んで与えられるのである。

 恒星連邦は複数の前線で負ける側になっていることに気がついている。これは傭兵を勧誘する魅力にも影響を及ぼしている――ライラ共和国と同じように。今年はじめ、カペラ境界域主星のニューシルティスはリャオ家の前に陥落し、カペラはこの13ヶ月で20近いリムワードのダヴィオン世界を平らげている。加えて、この地域で増えている契約は、ニューシルティス奪還が選択肢にないことを示唆している。カペラ境界域で求められているのは、無数にある「防衛的機会」を取り扱える戦士だけなのだ。リャオの流れを止めるのを手伝える者には、有利な条件が提示されている。



第12ヴェガ特戦隊

 第12ヴェガ特戦隊は聖戦で幾度も戦闘に参加し、1個強化連隊にまで減少した。この部隊は地球強襲に参加し、北アメリカ戦役で名を上げた。聖戦後、特戦隊は恒星連邦との契約を更新し、3085年、ベネットIII駐屯を任された。この規模の他部隊と同じように、第12は比較的平和な次の30年間で財政的に苦労することになる。世紀が変わるまでに、支払いを行うため中隊(あるいは大隊)単位で部隊を貸し出す方向に向かっていた。

 3116年、ミラー・アル=ナイブ将軍が退役し、指揮権は娘のデラに渡った。より良いチャンスを探す中で、デラは恒星連邦と袂を分かち、20年近く、マーリック=スチュワート共和国に仕えたのだった。崩壊した自由世界同盟での日々は、大部分が派手さに欠けるものであったが、アップグレードと戦力強化のための素晴らしい機会を得たのだった。

 3133年半ばに、特戦隊はジェイコブ・バンソンと契約した。3年後、ドラコ連合の攻撃を阻止するため、バンソンはこの連隊をヴェガに送りこんだ。連合軍を追い返した後、特戦隊は(バンソンの後援の下)ヴェガに残り、ギャラクシーコマンダー・イシス・ベッカー=フローララに加わって、『ヴェガ保護領』を立ち上げた。3137年前半、ドラコ連合が再び攻撃をしかけると、第12ヴェガ特戦隊は第5〈光の剣〉をしたたかに撃退して、回収した連合製メックを備蓄物資に加えた。ヴェガ保護領が自身の力を蓄えると、3141年に特戦隊はその場を去り、ルーツである恒星連邦に戻った。再びダヴィオン家に雇われた連隊は、カペラ国境に配置された。3145年前半、特戦隊はウランバートルで第1リャオ擲弾兵隊と直面した。擲弾兵隊は特戦隊を数ヶ月封じ込めて、カペラ境界域をさらに不安定としたのだった。

 特戦隊は恒星連邦が使える中でまさに最高の技術を持っている。幅広いメックを使用し、丹念に組み上げられたメック小隊群と柔軟性に富んだ戦力展開戦略を持つ。



自由世界同盟

 3138年から3140年にかけて、自由世界同盟での傭兵の仕事は、主にウルフ氏族の前進を止める方向に向かった。かつて自由世界同盟との契約では氏族人を避けることが出来たのだが、ウルフ帝国の創設によって状況は変わった。今日、『鷹』のために働くなら、ケレンスキーの子らと遭遇するのがほぼ確実である。

 自由世界同盟はジェシカ・マーリックの指導下でほぼ再統一され、「通常営業」という感覚が広まっている。契約のほとんどは国境惑星での駐屯任務で、襲撃の実施・撃退、私兵の強化を行う。内乱の長い歴史を考えると、傭兵たちは近い将来、多くの仕事を見つけるだろうことは確実である。



カマチョ機士団

 権力闘争で負けた側についた自由世界同盟亡命メック戦士によって作られたカマチョ機士団は、その過去をよく知られている。3050年代にスモークジャガーと直面し、3060年代にはアンクル・チャンディ肝いりのプロジェクトに関わった。3068年後半、機士団はドラコ連合宙域を脱して自由世界同盟へと戻り、ここでスワン機士団を叩きのめし、バッドロックの虐殺を止めたのだった。バッドロック戦後、ライラ同盟と契約するつもりだったカマチョ機士団は、ブレイク派による戦乱に巻き込まれ、タマリンド=アビー公国を守ることに聖戦を費やした。

 3079年、ライラ同盟は元同盟の世界をいくつか支配下においた。この中には、機士団が故郷と呼ぶ「トリニティ・ワールド」のひとつ、ガリステオがあったのである。すでに聖戦で血を流しており、故国にさらなる破壊をもたらしたくなかった機士団は、ライラ軍との降伏を交渉した。降伏の条項により、傭兵はその後の8年間、ライラの雇用下に置かれた。3080年代前半の9ヶ月におよぶ戦役のあいだ、カマチョ機士団は元コンパス座連邦の攻撃から複数の世界を守った。

 3092年、マリア帝国のマートン強襲において、カマチョ機士団は防衛に失敗した。[2年後、マートンは反乱によってマリアを追い出したが、そのまま独立を保った。3136年、元自由世界同盟が再結成されると、タマリンド=アビー管区に加わった]。この戦いの後、機士団はほとんど活動しなかったが、3113年、ウルフ竜機兵団(当時ライラとの契約下)の分隊と組んで、タマリンド=アビー公国に一連の襲撃を行った。カマチョ機士団はサルティヨとラブーシェールで第2タマリンド正規隊と衝突し、前者で分けて、後者からは撤退した。

 3095年、アンジェラ"イテタホ"カマチョ(キャシー・サスロンの娘)は、ヘスース・カマチョ(ガヴィラン・カマチョの息子)と結婚した。ヘスースが3106年に死亡すると、アンジェラが連隊の指揮を引き継ぎ、「トリニティワールド」の民衆を守るという約束を再確認した。彼女の指揮の下、機士団はボラン地区からの防衛任務のみを引き受け続け、誓いに対して妥協することはなかった。

 3137年、機士団はシンプソン・デザートを奪い取るライラ共和国の任務を支援した。第3タマリンド正規隊との熾烈な戦役に釘付けとされた一方で、シンプソン・デザートの勝利は、3139年前半に行われたタマリンド奪還作戦における頂点となったのである。タマリンドで機士団の第4大隊はハーヴィソン平原で敵戦線を突破し、ザンジバルを狙う友軍のためにドアを開いた。タマリンドとシンプソン・デザートで1個大隊以上を失った機士団は、故郷での休息と回復のために任を解かれた。

 タマリンド=アビー管区が失われた世界を取り戻した際、カマチョ機士団はセリロスとガリステオで自由世界同盟の侵攻軍と戦った。圧倒的な敵に直面した傭兵たちは最後には降伏し、契約をタマリンド=アビーに移す交渉を持った……契約条件はライラと同じだった。経験を積み重ねた機士団は、鍛え上げられた古参兵部隊であり続けており、なにをおいても故郷(さらに言うと封建領主)に狂信的な忠誠を誓っている。機士団の機体はすべてがなんらかの先進技術を搭載している……最も必ずしも最新式で最高のものではないのだが



ライラ共和国

 かつて中心領域の巨大工業国家だったライラ共和国は、氏族侵攻以来、打撃を受けている。一世紀前、ライラはジェイドファルコンの前進をゆるめ、見事に戦ったのだが、軍事指導部の巧みな采配は、連邦共和国の分裂とヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンの離脱以来、色あせている。ウルフ、ファルコンふたつの前線に包囲されたライラは、指導部が不安定なこの時期に有効な抵抗活動を行うのに苦労している。アークロイヤル、ターカッド、ヘスペラスII、コベントリなど、かつて不可侵に近いと考えられていた世界群は、いまや信じられないような契約を提供している。ファルコンとウルフの挟撃のあいだに置く傭兵を誘致するためだ。



ケルハウンド

 カランドラ・ケル大佐に指揮されるケルハウンドは、一世紀以上にわたって、ライラの中心であり続けてきた。3010年に結成された部隊は、聖戦までに2個連隊を誇り、アークロイヤルから永遠に動かないかのように見えた。3072年、ハウンドはワード・オブ・ブレイクからターカッドを解放するのを手助けし、ブレイク派の逆襲からアークロイヤルを守ったのだが、3073年に運勢が変わった。ニュー・エクスフォードで第50シャドウ師団の罠にかかったケルハウンド第1連隊は崩壊した。3077年のジェノアでさらなる損害が起きた。ケルハウンドはひるまず残った戦力をかき集め、地球解放に向かい、カイロ、モスクワ戦役後にはわずかな残存兵力だけが残された。存在を忘却される危機に瀕したハウンドは、地球戦後にゆっくり再建と募兵を行ったが、1個連隊の戦力にまで達したのは3095年のことだった。

 3104年、ケイトリン・ケルはハウンドの指揮権を、マリア・アラード(ハウンドの共同創設者モーガン・ケルのひ孫)に渡した。32世紀前半の数十年間、ハウンドはアークロイヤルの守護を続け、そのあいだジェイドファルコンと繰り返し衝突した。3122年、マリア・アラードはダストボールの戦いで戦死し、エヴァン・ケルが指揮を受け継いだ。

 3142年、ジェイドファルコンのイージス級〈レッド・タロン〉は、ティムコヴィチの戦いの最中、友軍が近くにいるのを無視してハウンドに軌道砲撃を浴びせた。この爆撃で連隊がほぼ破壊され、エヴァン・ケルが死亡した。生存者の指揮権はカランドラ・ケルの手に落ちた。3143年、カランドラは1個大隊規模のタスクフォースを結集して、アークロイヤルの守りを放浪ウルフに任せ、虐殺者への報復に乗り出した。

 昨年の前半、カランドラのハウンドはファルコン占領域中で襲撃を行った。最後に報告されているのは、3144年後半、ポリーマでヘルズホース氏族と交戦したことである。継続的な戦闘によってハウンドは大きな被害を受けた。疲労と損害の両面で苦しんでいることが多くの報告から示唆されている。判明しているのは、ケルハウンドが大規模にアップグレードされており、中心領域で最高の技術と、実線で鍛え上げられたエリートメック戦士を用いていることだ。メックの多くは高速機動重量級のようだが、幅広い中量級も使っている。



非所属

 どの大規模勢力にも与していない傭兵部隊が一定数存在する。昨年、これらの部隊のうち一部が結集し、ガラテア防衛連盟の指揮下に入る第1、第2ガラテア防衛軍を創設した。今や守勢に立たされていることから、ガラテア防衛軍はウルフ、ファルコンの脅威から惑星を守る未契約の傭兵を求め続けたいと考えているが、フォートレス・リパブリック両氏族はライラ共和国のほうに注意を向けているようだ。



ガラテア防衛軍

 3144年12月17日、ジェイドファルコンがガラテアに到来し、ダミアン・レッドバーンの共和国レムナント(数多の小傭兵団の支援を受けていた)による激しい抵抗を受けた。一週間におよぶ戦闘の後、ファルコンは重い損害を受けて撤退した。同日、ガラテア防衛連盟の誕生が発表された。

 防衛連盟は、いまだ自治にあったすべての元共和国に対し相互防衛協定を申し出た。ミザール、シルマ、アルコルが加わったが、メンケントは拒否し喜んでファルコンの下に入った。防衛連盟は共和国レムナントとは別個の団体であるが、ガラテアは最近レムナントとの支援・防衛宣言に署名した。

 第1、第2両連隊は、複数の独立傭兵部隊をまとめたものである。一番小さなものはわずかにメック1個小隊であり、最大のものは1個大隊を展開する。12月の攻撃以前に共闘した部隊はほとんどなかったのだが、2ヶ月の訓練と準備によって、ハンセン荒くれ機兵団は独立した部隊群をひとつの団結した戦闘部隊に変えたのである。

 第1連隊はメック中心の部隊であり、小規模な車両部隊と1個気圏戦闘機支援群を持つ。防衛作戦に優れており、メックの半数以上が重・強襲級であり、長距離射撃用に調整されている。スタッフォード・レイフッソン大佐のTR-XBトレバルナは、昨年のファルコン攻撃軍がよく見かけたものだった。大佐は1機の撃墜と2機の撃墜支援を記録した。

 第2連隊は中軽量級車両の2個中隊と、相当数の中量級メックからなる。ファルコンとの戦いの中で、第2連隊は一撃離脱戦術を嗜好し、機動力を効果的に使用した。モーガン・フィン中佐は、TFT-A9サンダー・フォックスから第2連隊を指揮している。この選択は、彼が四脚メックへのバイアスをいくらか持つのを示唆しているが、目的は不明である。

 全体として、ガラテア防衛軍はアップグレード具合の異なる様々なメックを展開している。第1連隊はわずかにアップグレード率が高いが、両連隊とも先進技術に進む道半ばである。



辺境

 辺境は、既知宇宙の隅で雇われるリスクを進んで受け入れる傭兵にとって、良い機会を提供し続けている。支払いは、地元の軍票よりも、ホリーSRM、スタースラブ装甲のような形で来ることか多いが、優れた補給将校であれば、そのような取り決めをするのに失敗することはまずない。辺境で活動する著名な傭兵の詳細なデータは、配備表で見ることが出来る。その他にも、もちろん多くの部隊が存在するが、大半は小規模、資源不足、腕前に欠けることから語るに値しない。



バトルコープス軍団

 聖戦後、バトルコープスに属するメック戦士の多くが、ストーンの「新政策」にのって、スフィア共和国の市民となったが、軍団は生き残り、元自由世界同盟のシャールカーで数年を過ごした。3080年代後半までに、軍団はメック2個中隊と通常車両の各種取り合わせのみとなっていた。3090年代前半、彼らはマリア帝国、カノープス統一政体の外辺部を行き交い、指揮官のジョーイ・ニコル大佐はここでアンドリュー・レイヴンサー=クーパーと出会い、後に結婚した。3097年に娘が生まれるとジョーイはほぼ引退状態となったが、民衆に対する献身によって勤務を続けることとなり、3122年、娘のエリザに指揮を受け継いだ。3137年、エリザはロイヤル・フォックスでの戦闘降下で重傷を負い、それ以来、息子のジョシュア・H・ニコルが軍団の舵を取っている。

 軍団は合法性の怪しい利他的な任務を専門としている。法的な立場にかかわらず、一般市民、圧政・汚職の被害者、敗者の代理戦士を続けている。これによって、誰にも助けてもらえないときに、問題を解決してくれる存在との評価を獲得している。

 バトルコープス軍団は、継承権時代のアンティークメックからここ20年以内に生産されたものまで、幅広い装備を使用している。この10年で、入隊する独立戦士が増えていることから、1個バトルメック大隊近くまで軍団はふくれあがっている。




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