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作成:2013/06/18
作成:2013/09/08

フィールドマニュアル: 3085 Field Manual: 3085



 『フィールドマニュアル: 3085』は、聖戦終了後の各勢力について記述したソースブックです。スフィア共和国とカペラ大連邦国の紛争が終わり、両国の国境が確定した3085年を時代設定としています。
 この本に書かれている情報は、中心領域、氏族、辺境の簡単な経過、軍需生産、訓練施設、軍事部隊などについてです。






最後のドミニ?

 10年以上にわたって、マネイドミニは中心領域の災禍だった。戦場の内外の恐怖である彼らは、ワード・オブ・ブレイクの謎めいたマスターに理屈を超えた狂信的献身を捧げた。だが、彼らは、突然どこからか現れたときと同じように、地球解放後すぐに姿を消した。3079年前半の自由世界同盟での破壊的な大暴れは例外として、地球解放から6ヶ月以内にドミニのシャドウ師団は中心領域から事実上消え失せた。彼らの犯罪を裁くジュネーブ裁判に出席したドミニはなく、出し抜かれたと感じる不満な人々を残したのだった。

 あるマネイドミニを裁く唯一の法廷が、戦争犯罪裁判が終わってから約2年後の3081年10月に開かれた。ストーン総統の命令により、記録の全体は非公開となったのだが、基本的な部分は結審後に公開されている。それらの文章によると、彼女は何らかの手法により聖騎士評議会を転覆させようとして、逮捕された。聖騎士による裁判で彼女は有罪となり、死刑を宣告されたが、殺されたのは逃亡しようとしたときだった。この際、7名の衛兵が殺され、たとえサイバー装備を取り外され投獄されていてもマネイドミニがいかに危険なのかの証拠となっている。

 このドミニ潜入工作員の名前は公開されていないが、ある部分から特定が可能である。レグルスの大使がこの裁判に出廷しており、噂によると、彼女が脱出した際にトリガーを引いたのは彼であるという。その後、大使は記者団との会見を拒否し、共和国との外交関係を断絶する声明だけを出した。この不確かな証拠から、専門家の多くが問題となっているこのマネイドミニを悪名高いナーマー、またの名をソーニャ・アモーラであると結論づけた。3077年、タイタス・キャメロン=ジョーンズ国王の妻と腹の中の子供を残酷に殺した人物である。

 彼女が本当にナーマーであるかはともかく、この名無しの狂信者の裁判が、ワード・オブ・ブレイクのエリートサイボーグ殺人鬼の最後の行動となった。それから数年、中心領域内でマネイドミニは目撃されていない。その多くは戦後行方不明になっているが、貴族院の公式見解ではドミニは存在しないとなっている。

















世界中から集まる

 3081年3月15日、地球で共和国設立協定に調印がなされたことで、新しい時代が誕生したが、古いやり方にしがみつく者が多く、簡単にうまくいくわけではなかった。カペラ大連邦国も自由世界同盟の各国家も、共和国を承認しなかった……ジュネーヴ会議に参加した元同盟の使節(そしてカペラの使者)は、デヴリン・ストーンと貴族院議員の耳障りな非難の声のなかで地球を発った。彼らは共和国が中心領域の国家として地位を確立する前に、存在する権利を勝ち取らねばならなかった。


黄金の夜明け
 シルバーホーク連合がニューホープを奪い取ったのは、共和国設立協定の署名からちょうど10日後だった。共和国の反応は、素早く決定的なものであった。ストーン最大の仲間にして、自由世界同盟関係の主席顧問であるアリス・ルーセ=マーリックは、元祖国に対処するための緊急計画を持っていたのだ。シルバーホークの侵攻で、彼女は行動に移った。ゴールデンドーン作戦が4月3日に発動され、一ヶ月以内に最初の目標が攻撃された。国境沿いの世界8つを叩いた新共和国装甲軍(RAF)の諸連隊は素早く前進し、6月までに、自由世界の国家(主にマーリック共和国だが、独立世界も一定数)から20近い世界を確保していた。この戦役で初お披露目されたのが、聖戦中にストーンの呼びかけに応えた部隊で構成された新共和国アウクシリア連隊群(Auxiliaries)である……このアウクシリアは後に、RAF最高司令部がハスタティ・センチネル、プリンキペス防衛旅団の基礎として使われることになる。

 この作戦で最大の戦いは6月下旬に行われた。第3自由世界軍団、第12アトレウス竜機兵団、3個ノースウィンド・ハイランダーズ部隊など、5つのRAF連隊から派遣された分遣隊がスチュアートを強襲したのである。戦闘は2ヶ月続き、最後の郷土防衛軍(Home Guard)がロシアンの荒野に逃げ去り、降伏を強要されることとなった。9月7日に条約が調印され、マーリック共和国、スチュアート共和区との平和が樹立された。オリエントとの条約は7月に調印済みで、新しい国境を公式に承認するのと引き替えに、カペラ国境沿いにある元自由世界同盟の対するオリエントの影響を共和国が承認した。紛争に参加した国のうち、シルバーホーク連合だけが共和国との和平を拒否した。しかし彼らの軍隊は崩壊していたことから、それ以上の抵抗を示すことが出来ず、再武装は共和国による報復の原因になると警告された。


カペラ紛争
 3081年の秋、この紛争が避けられないものとなることを誰もが知ることになった。サン=ツー・リャオは、ストーンが自由世界の各世界を自国に編入させるの目撃し、同じことが大連邦国にも起こるであろうことを恐怖し始めた。ストーンとの交渉は3079年以来停滞していた……どちらの側も元ブレイク保護領のリムワールド沿い星系を放棄したがっていなかった。攻撃にもろいのを感じ、交渉再開で強い立場に立つことを望んだリャオ首相は先制攻撃に着手した。

 カペラ侵攻のタイミングはRAFの不意を打った。このとき、部隊の相当数が自由世界戦役から移動中であり、新たな配置に落ち着いていなかったのだ。断固たるカペラ軍の猛攻は彼らに襲いかかり、少なからぬ数の部隊が崩壊した。驚くべき速度で、侵攻軍はカポラからアカマー、ウッドストック、アンゴル、チコノフまでの戦線を確立し、勝ち誇ったカペラ人はこの防衛陣地をゴールデン・フォートレスと名付けた。チコノフは5個もの武家による強襲で陥落し、ストーン・スチュワートはチコグラッド防衛失敗で、完全に崩壊した。より強い交渉の立場を得たと信じたサン=ツー・リャオは共和国との交渉を再開しようとしたが、カペラが勝ち取った惑星のみならず、ブレイク派との戦いで解放した大連邦国世界の多くを放棄する無条件降伏を求められたのである。

 3082年半ばまでに、RAFはカペラの強襲で壊滅した部隊の多くを再建し、生存者たちから数個の新しいアウクシリアを作り上げた。共和国軍の再組織は戦争の間中続いたが、最高司令部は逆襲の時期が来たと判断し、カポラ、ヤンツェ強襲でそれを始めた。ゆっくりと、だが着実に、カペラ軍は惑星から惑星へと追い立てられていった。第9〜第16アウクシリアが現役となったことで、RAFはウッドストック、バラト、テラ・フィルマの防衛部隊を圧倒することが可能となり、そのほかの世界でも決定的な勝利を収めた。だが、真の褒賞はチコノフであり、3083年前半までに奪還する準備が整った。

 ヴィンドランダ作戦によって、ストーン旅団の残った3個部隊と、新ハスタティ・センチネル連隊群が送り込まれ、聖騎士4人と小部隊いくつかが同行した。対するは最大5個の武家である。戦闘は残酷なものとなり、両陣営に大損害が出たが、最後には共和国が勝利した。武家はチコノフを放棄し、共和国の攻勢に備えて戦争前の国境を越えて後退した。チコノフ争奪戦は聖騎士が戦死した最初の戦役ともなった。アルハンゲリスク近くの渡河地点を守っているときに、ダーク・ラディックがツァン・シャオ家の1個小隊に倒されたのである。解放から二週間後の式典において、デヴリン・ストーンは第3ハスタティの指揮官、レオニード・テレシチェンコをラディックの後釜として聖騎士に任命したのだった。

 チコノフを取り戻してすぐ、共和国軍は国境を越えてカペラ領域に入った。地球開放前にブレイク保護領だった世界を主に狙ったRAFは、断固たるカペラ防衛軍を相手にゆっくりと前進した。3084年後半、リャオ陥落と共に抵抗はついに崩壊した。若干の掃討作戦が残され、3085年半ばまでに停戦が達成された。戦闘行為の終了から1ヶ月後、サン=ツー・リャオとデヴリン・ストーンはチコノフ協定に調印し、カペラ大連邦国はスフィア共和国を承認して、現在の国境を受け入れたのだった。この協定によって共和国の産みの苦しみは終わり、新しい時代が幕を開けた。
















カペラ大連邦国


増強連隊 THE AUGMENTED REGIMENT

 3060年代以来、CCAF軍のドクトリンで最大の変化は、おそらく、強化小隊(augmented lance)の名称で知られる諸兵科連合編成を増やしていることであろう。第4回ホイッティング会議時点で受け入れられつつあった上、ブレイクの諸兵科連合レベルIIや共和国の混合戦闘隊との戦闘は、すでに諸兵科連合の価値を強く信じていた大連邦国の信条を強化したのみであった。3081年、戦略局は、増強小隊をもっと上手く使うために、CCAF連隊の再組織を命令した。カペラの各バトルメック連隊のうち、少なくとも1個大隊が、2個小隊からなる中隊を4個と、1個独立小隊に再編成された。各小隊はメック4機と通常戦闘車両2両を持つ。この新しい編成は、通常のメック大隊と同じバトルメック戦力を保っているが、装甲戦力を統合したことで大隊の火力が著しく強化され、連隊から離れて活動することが可能となり、士官たちが装甲車両を消耗可能な支援部隊と考えないことを促す。残った大隊は、付随するバトルアーマー隊と共に臨時の増強小隊を作ることを奨励される。マグネティック・クランプで移動するファ・シー・スーツがCCAFのどこにでもいることは、これを比較的簡単な仕事とする。

 おそらくより驚きなのは、近年、武家の家長が増強小隊への改変を命令したことである。かつて1個メック大隊と1個歩兵大隊だったところ、2個混合大隊――メック24機とバトルアーマー48体の大隊とメック12機とバトルアーマー96体――が普通になった。聖戦前ならロリックス教義に抵触したかもしれない一方で、現代的な現実がメック戦士と歩兵の間にあるギャップを縮小した。いまだメック戦士は歩兵より優れていると考えられる一方で、その関係は主と従者というより兄弟関係に近いものとなっている。武家において彼らは、尊敬と友情の証として、それぞれ「兄」「弟」と呼び合うのである。






準備状況


産業の状況
 大連邦国内で通常の通信が回復したことで、疲弊しているが無傷の軍事産業は、再び、通常の運営に戻った。大連邦国の兵器製造は低下する兆候を見せていない。損害を完全に回復するのにかなりの時間がかかるだろうが、現在の速度でバトルメックと戦闘車両が大量生産されることは想像に難くない。CCAFの拡大は、共和国の未来に深刻な脅威をもたらす可能性がある。CCAFは錯乱状態にあるかもしれないが、大連邦国は他の国よりも戦場の損失を取り戻すのが早いかもしれない。彼らがそれを成し遂げたら、我らの勝利をひっくり返そうと考えるのは間違いないだろう。


カペラ共和区
 前回の報告から6年経ってもひとつの竜骨さえ作っていないラッシュプール=オーエンズ社は、大連邦国の戦艦製造を再開するという夢を諦めたようだ。カペラ海軍は新たなフェン・ホァン級を造船できない一方、恒星連邦の開発したポケット戦艦というコンセプトに適応し、採用している。カペラ共和国はポケット戦艦の生産の中心地である……ラッシュプール=オーエンズとアースワークスが、聖戦前の強襲降下船を恥じ入らせるような恐ろしい新型強襲降下船を進水させた。大連邦国の中心的バトルメック製造業者であるセレス金属は、ブレイク派のバトルメック、アイドロンを生産することに満足していない。大連邦国内でヤオ・リエンと名付けられたとの噂があるこの機体は、セレスでかなりの実験兵器改装が続けられている。


カペラ共和区
 スーク(スフィア共和国領)のタオ・メックワークスは、ダイ=ダ=チ家とツァン・シャオ家から工場を奪う戦いの際に破壊されたが、狡猾なカペラ人たちは我らの手をすり抜けていった。共和国諜報部はは、サーマクサに新しいタオ・メックワークスの工場があることを看破した。この工場はクルセイダーの新派生型(CRD-7Lと同じパーツを多数使用)を生産中である。大型のXL核融合エンジンを使っていることから、このモデルの性能は大きく異なっている一方、我々は大連邦国が不吉の予兆を感じ、攻撃の前にタオの工作機械の大半を避難させたと疑っている。しかし、コーリーのホーリス社は残ったリャオ共和国に主要工場を残している。


シーアン共和区
 聖アイヴス共和区が荒廃したのに伴い、大連邦国の工業的中枢は、グランドベースのアースワーク、メンケのスターコープス、シーアンのヘレスポントと、シーアン共和区内に存在する。アースワークスはよく知られた信頼性の高い機種を供給し続ける一方で、メンケのスターコープス本部は最近、リッチという生産モデルを発表した。地球の生産ラインでリッチは生産されているが、このウォーリッチ(カペラでの名称)はCCAFにリャオ製バトルメックでは珍しいような幅広い性能を与えるのである。カーティス・ハイドロポニクス社が軍事市場から撤退すると発表したことで、ヘレスポント社は不人気なアサッシンに代わってレイスを購入することに興味を示している。ヘレスポントのベテルギウス工場は、近年、プリミティヴのファイアビーから現代基準のFRB-3Eへの最終的な転換を完了させた。


聖アイヴス共和区
 大連邦国の産業中心地である聖アイヴス共和国は、ハセクとマスターの両方からひどい損害を被り、いまや純粋な生産量はシーアン、カペラ共和区に劣っている。聖アイヴスが支配的地位を誇る数少ない分野は航空宇宙産業であるが、このタイトルに挑戦しているものたちがいる。ラッシュプール=オーエンズとセレス金属が、テンゴ・エアロスペース、ムジカを作って、その後を追っているのだ。セレス金属は強襲級バトルメック、トレバルナを製造するために聖アイヴスを選び、生産センターを再建した。


聖アイヴス共和区
 ヴィクトリア共和区の生産について語るときは、シェングリ・アームズ社について語ることになるだろう。この工業の巨人――事実上、新生運動と同義――は、通常の営業に戻り、ドーラで大連邦国向けの新型偵察バトルメックを登場させたが、ラオ・フーの生産ラインを再生するには、セレス金属工業からの多大な支援が必要だった。セレスはシェングリ・アームズのユー・ホワンの設計を購入することに興味を示しているが、これまでのところヴィクトリア社はこのメックを生産できないにもかかわらず権利を持ち続けている。
















ドラコ連合






準備状況


ブレイクの断末魔
 ボイス・オブ・ザ・ドラゴンを聞く限りでは、ワード・オブ・ブレイクの「流血の祭典」は、ドラコ連合ではほとんど無意味だったことが証明されている。実際には、ブレイクは効果的に恐怖と破壊をばらまき、いくつかのケースでは、生産能力に深い打撃を与えた。最悪の例はゲイルダン軍事管区のマルドゥクである。ここでワード・オブ・ブレイクの工作員は、ヴィクトリー工業施設群の採鉱施設部分を破壊しようとした。地元の市民軍部隊のみがマルドゥクを守っているという状況において、工作員たちはほとんど抵抗に遭遇しなかった。地下で核兵器を起爆して、採鉱施設を破壊し、クレーターで工場を倒壊させるという計画は、設置箇所が悪かったために失敗した。工場を倒壊させる代わりに、ティラービー・ジャングルの下に走る広大な坑道が崩壊し、巨大な陥没穴を作り出し、発火した炎が大陸全土を荒廃させた。それはブレイク派が望んでいたより大きな損害を与えたのである。1万人が荒れ狂う火炎旋風によって死亡し、工場の労働力を激減させた。HPGが大打撃を受けたことで、DCMSは調査部隊を送った。彼らが発見したのは、生き残ったマルドゥクの民衆のほぼすべてが、ジャングルから耕作地にまで広がり、生態系を破壊した大規模な山火事と闘っている姿だった。

 他のブレイク派による攻撃は、連合中の1ダース以上の世界で工業と民間を狙ったものとなった。守られてない世界を狙った彼らは、ルシエン・アーマーワークスにさらなる打撃を与えることを望んで、ニークヴァーンもまた狙った。しかし、警戒状態にあった市民軍のパトロールが工場に入ろうとするブレイク派を捕らえ、躊躇なく発砲した。起爆された爆弾は核爆弾ではなかったが、工場よりも近くの民間地区に大きな損害をもたらし、工場の操業が停止されることはなかった。ユニティでも似たようなことが起きた。ここのペシュト・モーターズ工場は、居住地区から離れていたので、ブレイク派は未開の荒野を通らざるを得なかった。工場フェンスの外で捕まったテロリストたちは爆弾を起爆させたが、古い豊かな森が炎を防ぎ、マルドゥクのような運命を避けたのだった。スカイラーでワカザシ・エンタープライズ工場を守っていた第22ディーロン正規隊は攻撃を受けたが、素早い反撃で、工場が破壊される前に敵を殺した。

 エクス・ラ・シャペルの工場(市民軍が駆けつけるまでに、強固な建造物が攻撃側の全面強襲を防いだ)、ソウルの工場(極地であることが工場労働者による消火の助けとなり、工業地帯内に閉じ込められた装備不足で凍えたテロリストたちは、市民軍に追い詰められた)に加えられた小規模な損害を除くと、軍需産業全体はたいした損害を受けなかった。聖戦で発生した損害を考えると、これらの攻撃を任された工作員たちが諸外国の工作員よりも有能でなかったのは幸運だった






サン=ツァン候補生部隊 SUN ZHANG CADRE

 恒星連邦が平凡な訓練大隊を持つ一方、DCMSは最も尊敬される養成校、サン=ツァンメック戦士養成校から集められた連隊群を作っている。サン=ツァン候補生部隊は、〈光の剣〉連隊群のように、管区元帥でなく、大統領と最高司令部にのみ応じる。彼らが受けている比類なき教育に釣り合うように、候補生部隊は最高の装備もまた受け取っている。ニューサマルカンドに新しい設備と工場生産ラインが移されたことで、高品質の新装備が候補生部隊の隊員に保障されている。DCMSの有名部隊に仕える通過点として、候補生部隊は戦争の大釜から離されることはない。この学校の卒業生たちが精選されていることを知っているDCMSは、彼らを他の正規連隊と同じように扱う。このやり方で理論通りに行くと、候補生たちは戦争の現実を直接知ることができるのだ。

 ツカイード時代以降、ホヒロ大統領は〈光の剣〉連隊とゲンヨウシャ連隊が、候補生部隊に入る前に卒業生を徴募できる許可を出した。これはサン=ツァン連隊群の規模にそれほど大きな打撃を与えなかった。なぜかというと、常に卒業生が流入してくるからである。セオドアは数年間にわたってこれを許したが、ホヒロがどれだけ長く直接的な採用を続けるかは不明である。サン=ツァン連隊群は連合の防衛にとって重要であり、この政策はすぐに短縮されることが予想される。

 現在、戦力低下した3個サン=ツァン連隊のみが活動中である。第14候補生部隊は生き残ったが、第14の戦士6名は、終戦以来、第1ゲンヨウシャに残っている。大統領は彼らの職務遂行と献身を理解しているが、3個連隊が定数を満たすまでこの連隊を再建しないと決めた。第14は公式にDCMSの名簿に残り、卒業生がもう少し出るまで再建するのを待っている。我々は5年以内に第14が戦場に戻ることを予想しているが、戦力が満たされるのは3090年代半ばになりそうだ。


第5サン=ツァン候補生部隊
 聖戦中、あまりに多くの兵士が異動となったので、聖戦勃発時にケッセルにいた者たちはほとんど残っていない。卒業生が第5に所属してから離隊するまでの期間は短く、大半が最初の9ヶ月で異動となっている。しかし、それはまれなものとなりがちだ。聖戦による需要は、数世紀の変化を耐え抜いた訓練計画を乗り越えるものだった。現在、ニンシャー地区で任務に就いている第5候補生隊は、ペシュト軍事管区で海賊行為が増加していることから、ここ三年ほど、忙しくしている。中隊規模のとある海賊軍を執拗に追跡した彼らは、ホンゴルの荒野にたどり着き、海賊を抹殺しベースキャンプを破壊した。敵の古いが機能する降下船を奪ったことは、候補生部隊にとって大きな成果だった。だが、絶え間ないローテーションによって、すでに候補生の大半は正規連隊に移り、代わりに来た兵士たちは似たような作戦を待ち望んでいる。


第13サン=ツァン候補生部隊
 ゴーストベア国境の辺境に駐屯している第13は、第8〈光の剣〉連隊、第10ペシュト正規隊、第1ゴースト連隊と演習を行った。これら部隊のすべてが近くに駐屯していることから、ゴーストベアへの襲撃や訓練任務で経験豊かな正規連隊を見ることによって候補生たちへの教育は促進されている。

 3084年半ば、第13の第1大隊は、第1ゴーストによるラストフロンティア偵察襲撃への同行を許され、第3軽機兵隊星団隊から砲撃を受けた。第1大隊にとってこれは災厄になるところだった。なぜなら、指揮官のミコ・タナカ大佐(元第2ゲンヨウシャ)は一時的に自分を見失い、数年前にアルドースの作戦から呼び戻された人物だったのである。幸運にも彼の無謀な突撃は第3軽機兵隊を追い散らし、第13の候補生たちは降下船に戻ることが出来た。彼らは指揮官を支持したことで祝いの言葉をかけられたが、タナカは戦いに加わりたがったことで、私的な叱責を受けた。


第16サン=ツァン候補生部隊
 第16の聖戦での経験は、ブレイク保護領で戦争が荒れ狂うあいだ、ゴーストベア国境をパトロールしたことである。彼らの兵数はたいていが保たれ、経験を積んだ候補生は第5候補兵部隊に移り、空いた分はアカデミーの卒業で補充された。戦後は戦力が低下し、定数未満のままである。タバヤマに配置された彼らは、発展途上の技術を使って、氏族の国境をまたいだ襲撃を撃退している。

 聖戦期と同じように、第16はレイヴンの国境をパトロールし、どんな侵攻とも戦う準備を行っている。第22ニューサマルカンド正規隊しかタバヤマ地区にいないので、第16は忙しくなっている。連合がゴーベラットとシューメクを奪還した後、レイヴンたちは襲撃を増やした。後者の際、第16候補生隊は支援役を果たし、降下地点を守った。






ゴースト連隊 GHOST REGIMENTS

 セオドア・クリタ大統領の発案であるゴースト連隊は、3039年戦争でドラコ連合を救い、ハンス・ダヴィオンに屈辱を与えた。セオドアは連邦共和国ほど早く連隊を再建できないことに気づいていた。彼はやり方が変わったことに気づいていた……中心領域の勢力均衡が不安定となっていたのである。確実なる敗北を防ぐために、セオドアは連合社会ののけ者たちに訴えた。ヤクザの中に彼は喜ぶパートナーを見いだしたのである。ゴースト連隊が存在していたことは、3039年の「狐」の侵攻の際に、不愉快な驚きとなった。彼らのおかげで勝利を達成できたものの、既存の連隊群と最高司令部はこれら犯罪者たちを見下したのである。ホヒロ大統領の下、ゴースト連隊の命運は未知のものである。ゴーストはセオドアに絶対の忠誠を誓っていた……その忠誠心を息子に移すかどうかはわからないのだ。

 おそらく、ほかのどんな理由よりも、第12ゴースト連隊の尊い犠牲こそが、旅団の存続を正当化している。アン=ティンで疫病を逃れる機会があったにもかかわらず、第12は降下船を脱出できるかもしれない民間人に与えたのである。DCMS内でより敬意を集める連隊の多くが、いわゆる下層階級から多くを学んだ。名誉の死に対する敬意として、第12ゴーストは正式にDCMSのリストに残り、ゴースト連隊のみならずDCMS全体の規範となっているのである。

 補給部はゴーストの前に他部隊への補給を行うことから、ゴースト連隊は相変わらずブラックマーケットから物資を調達している。DCMSの全部隊が装備を必要としているので、独自の技術を使わずに再建を果たすのには長い時間がかかるだろう。彼らの装備はDCMSの仕様とあわず、DCMSの目録に載ってさえしてないかもしれないが、それにも関わらずゴーストは戦力を維持している。

 新兵を探すのは、いつも装備を探すのより簡単である。オヤブンはバトルメックのコクピットから龍に仕えたがる歩兵に困ることがないようだ。自分たちの練兵場のようなところを使って、ゴーストは最高の志願兵を選ぶために、どこか氏族に似た試験を行う。


第1ゴースト
 第1ゴーストは聖戦の大半を、恒星連邦、保護領国境沿いに駐屯することで過ごした。外国人よりも不実な同胞であるブラックドラゴンと戦った彼らの奮闘は、まるで遺恨試合のようであった。一部の親分は黒龍会と取引があったが、全員がこの秘密結社に良い条件を与えていたわけではない。第1は後者だったようである。クズーの蜂起を鎮圧したあと、彼らはSCOUR作戦の駐屯部隊としてデヴリン・ストーンに貸し出された。

 現在、ニークヴァーンに駐屯している彼らの3個大隊は良い状態にある。地元から離れた彼らは地元民から募兵は行っていない。代わりに、クロマクは新兵を探すために元ディーロン管区の世界からオヤブンと交渉を行っている。


第5ゴースト
 聖戦期にブレイク派のグラム襲撃で戦力の半数を失った第5ゴーストは、見事に持ち場を守った。状態は悪かったにもかかわらず、この世界は陥落のリスクに晒されることがなかったのである。ブラックドラゴンの反乱もまたなかった。敵と直面して勇気を見せたことで、DCMS内の敬意を勝ち取ったが、これまでのところ補給は受けていないままである。いずれにしても、第5ゴーストの再建は遅々としたものである。ハロウズサン駐留中に恒星連邦ドラコ境界域から多数の襲撃を受けたので、彼らの取り組みは妨げられたのだ。ヤクザが弱体化していることから、補充兵の助けはほとんどない。


第7ゴースト
 第7は恒星連邦の襲撃が日常茶飯事なカプラに駐屯している。スノウレイヴン氏族からの襲撃はそれほどでないが、この10年で増加している。聖戦で最も打撃を受けたゴースト連隊である(フェラニンIIでブラックドラゴンの特に熾烈な反抗を受けた)第7は、入隊基準を下げねばならなかった。これによって、大勢の生きた兵士を展開することが出来た一方、その劣った技量レベルによって、部隊に加わった直後に多くが冷たい死体となったのである。


第11ゴースト
 第11はスノウレイヴン相手にヴァレンティナを失ったことの責任を負っている。見下されることになれているこの部隊はゲイルダン管区で寝ずの番を行っている。戦力低下しているが、この部隊が存在することは、スノウレイヴンのそれ以上の攻勢を阻止するのに充分である。

 SCOUR作戦時にゴーストベア国境に一時的に配置された第11ゴーストは、もう一度レイヴン国境に移された。カズンジョイを守っている第11は、惑星の政治的重要性を考えると、DCMSが思っているより多くの新兵を集めることができた。ISFは暗黒街の一掃を計画している(実行はしていない)が、第11ゴーストは無視して氏族の戦術を跳ね返すために新兵の訓練を続けている。
















恒星連邦






準備状況

 恒星連邦は順調な回復を続けている……まるで工場、改装施設、崩壊した軍事教育システムにかかっている負担に気づかないかのごとく。再建を進めているのは、軍事のためであるが、理由の一部はニューアヴァロンが迫る不況を食い止めようとすることがあるようだ。公的債務、国家資源予備、国営企業の資本余力などをレバレッジに使って、イボンヌ女王=摂政の政府は使える資源のすべてを再建プログラムに注ぎ込んでいる。この投資が成功するか、不況をひどいものにするだけなのか、大規模な推測がなされている。とにかくわかっているのは、もがき苦しむAFFSの利益になっているということだ。

 この5年、恒星連邦軍は広範囲な再建を行い、より現代的な装備に改装している一方、同時に大規模な再組織を実行中である。バトルメック生産は限られたままだが、通常装備とバトルアーマーの流入によって、すべての前線部隊に完全な支援部隊が配備され、新しい軽戦闘団(LCT、機動性の高い小規模な連隊戦闘団)の展開が可能となっている。この再建に加えて、AFFSは1ダース以上の戦闘部隊を再始動するか、作り上げた。ドラコ境界域、南十字星境界域のあちこちから送られて来た装備を使って、カペラ境界域市民軍が完全に再始動された。他の3境界域もまた市民軍を再建し、これらLCTを基礎とした部隊の相当数を連邦共和国内戦の前の水準にまで戻した。加えて、新しい辺境境界域がほとんど出費をかけずに独自の旅団を作り上げた。それでもなお記述すべきことは、これらの新LCTが完全なバトルメック部隊を持っておらず、従って装甲連隊群に重火力支援を頼らないとならないことだ。よって、これらの市民軍は聖戦末よりも多くの活動可能な部隊を持っているかもしれない一方で、AFFSの前線部隊は同じ水準の戦力を取り戻す長い道のさなかにある。

 道が長くなったことには、国家のバトルメック生産能力に大打撃が浴びせられたことが少なからず関わっている。損害を受けなかった工場でさえ、生産の急激な低下に遭遇している。この生産低下は、工場の損傷(タロンやギャラックスの場合は完全な消滅)、部品の不足(補給線への負担によるもの)、多様化によるものである。恒星連邦の防衛産業は、軍事生産物のためでなく、民間のために再建を行っている。たとえば、伝統あるセンチュリオンを生産していたラインは、ジャバウォック・エンジニアメックを組み立てている。この多様化は大半がインフラに集中しており、政府に割引価格か、寛大な長期ローン契約で販売される。ニューアヴァロンは各企業に軍事生産能力を復旧するように圧力をかけていない。

 ブレイク派のスリーパー工作員による攻撃――流血の祭典攻撃――は、他の国と同じように恒星連邦にも打撃を与えた。恒星連邦の多様なインフラは損害を相殺するものだが、バトルメックを希望通りに生産する能力を奪うのに多大な貢献を果たした。この国で最大のメック用ジャイロ製造業者、ニューアヴァロンのカレイドスコープ・テクノロジーは、ブレイク派テロ・セルの攻撃で完全に倒壊した。カレイドスコープが失われたことは、企業の規模以上のインパクトをもたらした。

 経験豊かな軍人が欠けていることは、恒星連邦にとってもうひとつの大きなハードルである。集団引退はAFFSに衝撃を与えた……最も顕著な例は古参のバトルメックパイロットたちである。メック戦士たちの多くが3062年以来、ほぼ絶え間なく戦闘を行ってきたことから、平時に直面して引退を選んだのである。これらの人員は容易に補充できる――志願者数はドラコ境界域を除いて歴史的高さにある――のだが、経験を失ったことは克服するのが遙かに難しい問題である。危機が迫っていることから、アルビオン、NAISの訓練候補生隊の再建は加速され、いくつかの前線部隊には引退予定の兵士が新人メック戦士と共に訓練する中隊群が存在する。そうしても、AFFSの装備の質は、すぐにそれを使う兵士たちよりも高いものとなるかもしれない。

 恒星連邦の海軍戦力は、地上戦力よりもかなり良い状態にある。残った4隻の戦艦は各境界域の主星を守る一方で、通常海軍戦力が活動の前面に立たされている。ポケット戦艦海軍戦隊(ポケット戦艦4隻、気圏戦闘機空母1隻、支援船1隻)が、最も一般的な海軍配備である。惑星ジューンが辺境境界域の主星に指名されたことから、FSS〈ブレスト〉がニューアヴァロンからジューンに移された。FSS〈ルシアン・ダヴィオン〉はニューアヴァロン防衛に残り、FSS〈アドミラル・マイケル・サリー〉とFSS〈ニューシルティス〉はそれぞれロビンソンとニューシルティスにある。シルティスはいまだジャンプ不能で、構造的欠陥により最大の機動が出来ないでいるが、それでも通常の星系哨戒を行っている。





マタドール作戦

 それは聖戦後に権力を固めることを可能とする純粋な政治的煙幕であったのか、国家に平和と安定性をもたらそうとするものだったのか、シュタイナー=ダヴィオン女王=摂政のマタドール作戦について語れる者はまずない。この作戦は彼女の政治的な発案によるものだったが、戦略面はジョン・ダヴィオン最高司令官がかかわったものである。ニューアヴァロン占領のあいだ、彼は最小の戦力で最大の効果を達成する達人となり、SCOUR作戦とSCYTHE作戦でこれらのテクニックを完成させた。第四次継承権戦争の数で圧倒する侵攻モデルはないものとなった。速度と奇襲性は、最小の戦力を持って2ヶ月で15の世界を解放、獲得するのを可能とした。

 この強襲は、3080年5月5日、9つの世界に対する連携された攻撃として始まった。ダヴィオン強襲近衛隊は、新兵の第1シルティスの支援を受けて、フリントフトに軌道降下した。守る連合国猟兵隊の2個大隊は2週間で一掃され、強襲近衛隊がカーマイケルを攻撃可能となった。

 第4ケチ戦闘部隊(元レキシントン戦闘団)の両戦闘隊はホーシャムを強襲した。タウラス防衛軍のバトルメック大隊は素早く無効化された一方で、通常戦力を探し出して完全に惑星を解放するのには1ヶ月を要した。

 だが、第5南十字星部隊はロブサートを守るタウラス防衛軍派遣部隊の強硬な抵抗に遭遇した。5週間におよぶ戦闘で、防衛軍は第5南十字星部隊をひどく痛めつけた。最終的に、タウラスは完全なRCTに近い戦力に対抗できず、かろうじて1個諸兵科連合大隊をこの世界から逃がすことができた。6月後半、惑星が安定したあとで、第5はディーフェンベーカーにジャンプし、2日以内に守っていた市民軍を片付けた。

 再統一戦争以来見られなかった配備として、シルティス機兵連隊からの部隊とロビンソン旅団からの部隊が、ハイアライトで肩を並べ第3タウラス槍機兵隊第2連隊と戦った。叩きのめされた槍機兵隊が退却すると、第2ロビンソン打撃連隊はハイアライトを確保し、一方、第8シルティス機兵連隊LCTは国境を越えて、守る市民軍からノーマンズ・ワールドを奪った。

 ロタールに2個RCT近い戦力を落としたことは奇襲となり、第3タウラス槍機兵隊第1大隊はこの世界からいかなる戦力も逃がすことが出来なかった。2週間以内にロタールは平定され、第22アヴァロン装甲機兵隊はパーディションに飛んで、第1ダヴィオン近衛隊が第3軍団の最新連隊、第1マクロードを塹壕から追い出すのを支援した。第22が到着したことで、ダヴィオン近衛隊はローガン・ランドを確保することが可能となった。アイリシアン槍機兵隊の第21特戦隊は戦力の半数をロタールに残し、残りをアンバー・グローブにジャンプさせた。アンバー・グローブは砲火を交えることなく降伏し、続いて恒星連邦の辺境境界域に最速で統合された。

 アイリシアン槍機兵隊の第4特戦隊はオルガノ侵攻を任され、経験豊かな赤色追撃兵隊の第1大隊に遭遇した。追撃兵隊は持ち前の機動力を使って戦闘を長引かせ、退却せざるを得なくなるまで1ヶ月引き延ばしたのだった。

 それほど上手くいかなかったのは、アテナズ・チョイス防衛で第2ケチ戦闘部隊、第3ケチ戦闘部隊(新たに再構成された)と遭遇した、赤色追撃兵隊の第2大隊である。1ヶ月近く持ちこたえた追撃兵隊は全滅した。残った追撃兵隊の抵抗を探し出すため、第2は第3を残してキールトンに押しかけ、惑星宇宙港での短い戦闘後、惑星市民軍を降伏させた。

 リッジブルックでのみ恒星連邦の攻勢がとまり、ついに崩壊した。ニューアヴァロンはだれにも責任をかぶせようとはしなかったが、作戦後評価では、ナサニエル・ハセクが命令を無視し、自分の部隊を持ってきただけでなく、自身の侵攻を行ったことが示されている。おそらく「正しくある」というハセクの個人的な思いが、タウラスの待ち伏せで彼が死んだことにつながり、タウラスの守備隊がリッジブルックの人口密集地帯に核兵器をしかける(もしくはそのような武器を持っているという確信が生み出される)だけ攻勢が止まることになったのかもしれない。ついに停戦が呼びかけられたとき、アイリシアン第59打撃連隊とシルティス・アヴェンジャーズは退却を余儀なくされて、ぼろぼろになっていた。

 カルデロン保護領に仲介された停戦と和平の速度は、恒星連邦がタウラス軍を倒した速度と奇襲性に匹敵した。このタウラスから離脱した国家の本当の動機は不明である。カルデロンは紛争が彼らにおよぶのを心配したのかもしれず、あるいはタウラス連合、ニューアヴァロンの人々との関係を強化したかったのかもしれない。最終的な結末は、より遠いところにあるカルデロン保護領がタウラスの戦艦〈ヴェンデッタ〉を事実上没収することと、停戦時に占領している世界がそのままになるということだった。和平で最も驚くべき条項は、タウラス国境から45光年以内の星系(PDZ主星のぞく)にカペラ境界域の部隊を置かないという恒星連邦の合意であった。実際には、最高司令部の指揮下にある部隊がタウラス国境を監視するのを確実にすることを、ニューアヴァロンは示唆しているのかもしれない。







独立部隊 INDEPENDENT COMMANDS

 聖戦において、AFFSの各独立部隊は大事のために呼ばれることが多かった。彼らが英雄的な貢献をなしてきたことを考えると、この数年は比較的平穏である。この安定期を使って、ニューアヴァロンは卒業したばかりの新人士官たちをより恒久的な部隊に配属することが可能となった。

 AFFSの既存の旅団に当てはまらない各部隊の集積センターとなっている、この独立部隊は、ダヴィオン近衛隊に近い名声を持つ輝ける星となった。各部隊はAFFSの最補給優先順位が高く、日常的に新装備の試験のために使われる。これは彼らの士気を上げ、恐れられる引退者の自然減を相殺する助けになっている。


第1恒星連邦装甲機兵団
 カペラ/ニューシルティスが和平を結んだあとでほぼ再建された装甲機兵団は、カペラ国境の機動防衛を任された。ワードの襲撃隊、タウラスの深攻撃、海賊、「無認可の」カペラ襲撃隊に対してほぼ絶え間なく活動したことは、部隊の技量を磨き続けた。

 第1装甲機兵団は何不自由していない。従って、聖戦後の軍事再建は大きな挑戦だった。即座の再建を行ってきた第1は、いまだ名目上、バトルメック戦力が定数以下である。これは支援部隊(最新型のバトルアーマー、VTOL、ホバー戦車が豊富)を1個連隊に拡大したことでいくらか相殺される。レナード将軍は機嫌良くこれらの新戦力を部隊に組み込み、機兵団の戦術をより統合された部隊用に調整し続けている。


第1恒星連邦槍機兵隊LCT
 このかつて第1連邦共和国RCTだった部隊は、AFFSで最も尊敬された戦闘部隊であった。数個自由連隊を配備された槍機兵隊は、SCOUR作戦でライラ方面攻勢に参加した。シドニー戦役の残忍なトンネル戦で、部隊はほぼ壊滅した。LCTモデルで再組織された第1槍機兵隊は、即応任務に特化した。

 ニューヘッセン突端部に置かれた第1恒星連邦槍機兵隊は、聖戦後に重要な作戦行動を行った数少ない独立部隊のひとつである。カペラ大連邦国、スフィア共和国、恒星連邦のあいだのこの地域で活動する「海賊」を追い詰めるために幾度か招集された。これら「海賊」がカペラの装備を使っていたことは、ニューアヴァロンや地球に見過ごされているわけではない。


第1ケストレル擲弾連隊
 ケストレル擲弾連隊は、至高の正義作戦の全4波に参加し、カペラまでジャンプ1回のところまで到達した。ジョージ・ハセクの違法な戦争が彼自身に牙をむいてからも、擲弾連隊は強さを保ち続け、大連邦国の前進を血塗られたものとし、聖戦のあいだ常に脅威として残った。槍機兵隊のように、ケストレル擲弾連隊はカペラ国境で低強度の戦闘に身を置いている。現在、ふたつの戦闘部隊に分割されている擲弾連隊は、リー=ベル国境を常にパトロールしている。これによって、若い士官をローテーションさせて「味付け」する部隊の最有力候補になっている。

 書類上はRCTでないのだが、擲弾連隊は装甲、歩兵支援を維持しており、1個歩兵連隊を2個バトルアーマー大隊に交換した。驚くべきことではないが、グレネーディア(擲弾兵)・スーツは第1ケストレル擲弾連隊で高い人気がある。


ニューアイバーセン追撃隊
 両アイバーセン追撃隊は聖戦で広範囲な損害に苦しんだ。ドラコ連合国境に移動した両部隊は3068年のDCMS侵攻で戦闘を行った。第2追撃隊はゲイルダンの疫病で殲滅され、恒星連邦に長年仕えてきたニューアイバーセンの防衛軍は第1のみとなった。SCOURの初期に打撃を受けた第1はかろうじて戦力半分まで回復し、シドニーの戦いというグラインダーに突っ込んだ。

 ニューアイバーセン生まれで完全に再建すると決意している追撃隊は、補給部の最補給リストで比較的高い位置にあるにもかかわらず、ゆっくりと再建している。最高の装備を保有することは、経験の損失を幾分相殺している。


第1親衛機士団
 かつて連邦共和国旅団のように冷たい目で見られていた親衛機士団は、いまや装甲機兵団やダヴィオン近衛隊のような威信を獲得している。聖戦初期に安定したことは、辺境境界域の防衛で第一の座をもたらした。

 威信の兆候のひとつは、機士団がRCTを保っていることである。他の独立連隊はここまでの規模を保っていない。スターコープス製のマシンのおかげで、ほぼ定数を満たしている機士団は、海賊の冒険主義を打ち砕くマルサン公爵のハンマーの1本となっている。現在は3つの戦闘群に別れて活動中である。アルファ戦闘群はクロフトン、ブラボー、チャーリー戦闘群は、レンツからデロスIVまでの国境地域を転々としている。






ダヴィオン近衛旅団 DAVION BRIGADE OF GUARDS

 AFFSの頂点であると考えられるダヴィオン近衛隊は、恒星連邦軍で最も装備がよく、最大の戦闘部隊であり続けている。聖戦中に見せた忠誠心、奉仕、犠牲は、彼らの献身の証明となった。ある時点でかろうじて機能する2個戦闘隊のみだった近衛旅団は、この10年が終わるまでに、5個の完全なRCTを配備できそうである。ダヴィオン近衛隊のうち2個連隊がマタドール作戦に参加し、もう1個がまだ問題のある辺境境界域国境地方で活動している。

 かつて強化バトルメック連隊を配備していた全5個旅団は、いまでは通常の連隊を使っている。バトルメック戦力の不足は、強化気圏戦闘機大隊群と、通常歩兵を支援する完全な1個バトルアーマー連隊の追加によって相殺される。

 ディクソン・ジブラー大元帥は、3080年、強襲近衛隊の指揮をあきらめ、旅団そのものに注視することとなった。彼は指揮中隊を維持しており、定期的にニューアヴァロンの現役部隊と訓練を行う。


ダヴィオン強襲近衛隊
 強襲近衛隊、クラッシャーズが戦闘を避けることはない。ニューアヴァロンが侵攻されたとき、強襲近衛隊は危険な海軍封鎖を突破して主星を助けるために押しかけ、逃げる望みも再補給を受けられる望みもない世界に降り立った最初の部隊のひとつとなった。占領を通して戦った強襲近衛隊は、ぼろぼろになったが、崩壊することはなかった。戦闘能力のある最初の近衛隊であると考えられる彼らは、キャメロン・サミットに先駆けてタウラス国境に転地するまで、ニューアヴァロン防衛の要をになっていた。この動きは、イボンヌ女王=摂政がサミット前にマタドール作戦を計画していたことのはっきりした証拠となっている。

 強襲近衛隊の生き残ったコンキスタドール級降下船はポケット戦艦として改造され、クラッシャーズに想像以上の航空宇宙パンチ力を与えている。それまでよりも、はるかに中重量級バトルメックが増えた強襲近衛隊は、その戦術を変更せねばならず、強襲メックによる鉄の壁を、メックと強襲級装甲車両に取り替えた。クラッシャーズは完全な2個バトルアーマー連隊を所有するふたつの部隊のうちのひとつである。1個連隊は重強襲スーツで構成され、もう1個連隊は軽スーツ、PALでのみ構成される。


ダヴィオン重近衛隊
 聖戦の最後までニューアヴァロンを守った重近衛隊は、再建し、新兵を統合するための充分な時間を得た。第1近衛隊が地球から帰還したのに伴い、重近衛隊は再建された多数の惑星市民軍向けに訓練部隊を作るという重要な任務を与えられた。ゴールデンワールド(ニューアヴァロン周辺の発達した世界)から始めたダヴィオン重近衛隊は、3080年から3084年まで費やして、これらの世界の惑星市民軍を訓練した。最近、ダヴィオン重近衛隊、ストレングス・オブ・ザ・ダヴィオンは作戦本拠地をカシルに移し、惑星市民軍訓練のプログラムを続けている。

 重連隊である重近衛隊のバトルメックは、ほぼすべてが最低54kmの歩行速度を持ち、部隊に打撃を与えるためのめざましい速度を与えている。二倍の規模の気圏戦闘機部隊に加え、現在、重近衛隊は通常型大気圏内戦闘機1個連隊を持っている。これは市民軍訓練プログラムの重要な部分をなしている。


ダヴィオン軽近衛隊
 連邦共和国内戦において、恒星連邦への揺るぎない忠誠心は、軽近衛隊の特徴だった。このRCTがキャサリンの派閥に傾くことはなかったのである。この忠誠心は聖戦でも見られたが、ブレイクに占領されたニューアヴァロンの地表にたどり着く前にほぼ全滅した。現在の軽近衛隊には軽近衛隊出身の古参兵が一握りいるだけである……部隊の大半は第1NAIS候補生隊出身の忠実なる古参兵で構成される。彼らの忠誠心が内戦と聖戦の両方で証明されたことから、ダヴィオン元帥は候補生隊すべてを持ってきて、軽近衛隊の再編に使った。まだ定数以下なのだが、既存の部隊を使ったことは軽近衛隊がすぐ戦闘可能状態となったことを意味する。部隊はマルサン公爵の辺境境界域に付けられ、対海賊活動と「防衛」任務を行っている。

 高速VTOLとホバーAPCによって、ダヴィオン軽近衛隊、スウィフト・フォックスは強襲バトルアーマーを使うことが可能となり、軽メックと装甲車両に普通でない打撃力を与えている。これら輸送部隊を支援するのは攻撃VTOLの1個連隊で、軽近衛隊に機動火力を与える。第1ダヴィオンに配備されたアーロンVTOLは、ムールトリーでダヴィオン軽近衛隊と一緒に戦闘を行った。


第1ダヴィオン軽近衛隊
 彼らの歴史を考えると、不死鳥が第1ダヴィオン軽近衛隊の非公式な記章となってもおかしくはないだろう。五大国王内戦後にさかのぼるその起源から、連邦共和国内戦で壊滅し、それからブレイク占領時に名前以外は消滅したことまで、この部隊は全滅に瀕し、より強くなってカムバックした。今日、第1のメックの腕や足に青目の不死鳥が描かれているのは珍しいことではない。一部の兵士は、火の鳥の下に「イボンヌ」を描きさえしている。

 第1は歴史的にニューアヴァロンに配置されるのを楽しんでいる。第1はまずLCTとして、それからRCTとして再建され、聖戦の前線で仕えたあと、国王とその家族を守るという歴史的な役割を果たす機会を得た。出席するには早すぎるのだが、第1近衛隊は士官食堂に若きハリソン・ダヴィオンのための席を用意している。


第2ダヴィオン近衛隊
 第2近衛隊は古いトリヴィッドの比喩的用法によって最もうまく表現される。最悪の戦場で戦う鍛えられた戦士が最期の場面を迎え、運命的な言葉を吐く。「切り抜けてやるさ」。それから殺されるのだ。聖戦の始まりを純粋に幸運で乗り切った第2近衛隊は、一撃離脱攻撃を繰り返し、ワード保護領を悩ませた。SCOUR作戦、SCOURGE作戦に参加した第2近衛隊は、最も戦闘能力のあった恒星連邦部隊として地球解放作戦に突き進んだ。そして、合同軍が勝利を手にしたとき、彼らは核の炎の中で全滅した。唯一残った生存者たちは、重傷を負ってシンガポールから移動できなかった者たちだった。

 3079年時には書類上のフィクションとまではいかなかったが、第2近衛隊は戦闘に耐えられるレベルを大きく下回っていた。バトルメック大隊は、ほぼリージョネア、ヴァルキリーで構成されており、完全にマスケティア・ホバー戦車のみの連隊が、唯一の装甲支援部隊となっている。バトルアーマーは不足していないのだが、スーツ連隊の装備はアルビオン・アドバンスド・テクノロジーズ社の作った機種のみである。
















自由世界同盟






準備状況


アンドゥリエン公国
 ハンフリーズ公爵の計画は完全に実現し、アンドゥリエン公国は軍事、民間両方の商品で主要な輸出国となった。それでも自給自足からはほど遠く、公爵は兵士と商品を輸送するために降下船と航宙艦を輸入している。幸運にも、公国は元同盟の大国と良い関係にあり(マーリック=スチュワート共和国を除く)、貴重な輸送船の供給源を見つけるのは簡単だった。


マーリック=スチュワート共和国公国
 アースワークスのキーストン工場は、戦闘の損害から再建した工場の大半を、民間産業メック生産用に転換することを選んだが、新しい軍事システムもまた開発し続けている。彼らの新型ショックウェーブは、マーリック=スチュワート共和国が最近オートキャノンを好んでいることの象徴であるが、輸出市場ではフットワークの軽い販売主であることを証明した。一方、カロン工業は近ごろローヤルティ工場のCRD-6Mクルセイダー生産ラインを公開した。カロンは我々が惑星ベルナルドを奪った際に、自由世界同盟への輸出能力が制限されることを恐れたようで、それを防ぐ手立てを取ったようだ。クルセイダーに加え、ローヤルティ工場はVTOLの生産も拡大し、もがき苦しむマイケルソン社から買い取ったキャバリー、ホークモスを生産している。イムスター・エアロスペース社は、3084年、アトレウスのチーター生産ラインを星間連盟スペックのEGL-R6bイーグルに転換した。真の国産重戦闘機を持てたCCCCは安堵のため息をついた。


オリエント大公国
 アースワークス社は、近年、ディファイアンス工業との共同ベンチャーでゴーストを開発し、ステルスアーマーを装備した最初の量産バトルメックとしていくらかの成功を経験したが、その武装は比較的貧弱であると考えられた。顧客の懸念を聞いたアースワークスは、すでによりパンチ力のある派生型ゴーストを開発中であり、旧式アンヴィルの兵装を真似て実験を行っている。エムリスIVのスターコープス工場は、防衛・経済条約によって、事実上、オリエントの工業中心地となっている。ブレイク派のC3iは中心領域からほぼ消滅したが、この会社のEMP-6M2エンペラーは通常のC3に換装し、DDOCFH内で成功を証明した。


レグルス侯国
 長年にわたる国営の後、侯国はラージャ山にある生産施設を新規開業したトヴァスター・エンタープライズ社に売却させた。レグルスにある聖戦時代の生産工場を買い取るためこの会社を興したキャメロン=ジョーンズ家は、トヴァスター社の権益を支配したままだが、民間の管理者と投資資金の流入で、負担が大きく削減されることが予想されている。小規模だが重要なローニン社のバトルメック工場は、インフラの拡大に費用がかからないことから、通常戦闘車両の生産を始めている。タフナ・ホバークラフトは、与えられた役割を見事にこなしており、すでにこの会社で最大の売り上げを誇っている。近い将来、ローニン社は地上車両の生産を拡大しそうである。


リム共和区
 長年にわたって、ニマカチ・フュージョン・プロダクツ社をリム共和区に戻すべく懇願してきたことは、ついに実を結んだ。破壊されたテマタギ工場は一部が再建完了している。現在、バトルメック、スパイダーとフレアを生産しているニマカチは、生産施設が完成し次第、より大型のヴァルカンとスコーピオンの生産開始を計画している。レズノヴォからかなりの補助金を受け取っているが、再建のために多額の資金がオリエント公国から提供されている。次の20年間、工場の出荷の何パーセントかを受け取る条件である。


タマリンド=アビー公国
 タマリンド=アビー防衛の最大の障害は、現代的な軍事装備の生産センターがほとんどないことである。フォトン公爵はトレルセイン、サーモポリス惑星政府を彼の生まれたばかりの連邦に誘っているが、これまでのところ拒絶している。その理由はおそらく、守りの薄い国家に加わるよりも、中立を保ってすべての陣営に物資を販売した方が両世界の平和に寄与するからだろう。公爵は両世界に請願を行い、国外の企業に公爵内への工場建設を奨励している一方で、国内の企業は軍の需要に応えるべく奮闘している。マクスウェル社はサンパーで失敗したのに伴い、単純なACP、ミサイルキャリアーの生産に立ち戻っている。

 事業を好転させるためにマクスウェル社のオーナーは、ミルミドン中戦車のライセンスを望んでニューアース貿易社(NETC)に近づいた。NETC本拠地のミルミドン生産ラインはいまだ放射線に汚染されたクレーターの中にあることから、マクスウェル社の完全だが原始的な生産ラインのアップグレードに投資してくれるものと考えたのである。その一方で、タマリンドのグラハム=ディヴィス・エンタープライゼスと国有のヴェンカテスワラ工場は、現代的なバトルメック工場を作るために協力した。これまでのところ、両者が達成したのは若干のイカルスIIをでっち上げることだが、さらに生産できるように信頼できる軍事グレードの核融合エンジンの生産がすぐにも始まることを望んでいる。公国はカーティス・ハイドロポニクス社のヨーマンとイーグルに興味を示しているが、これまでのところ生産する手段を欠いている。






保護領防衛団 PROTECTORATE GUARD

[注: 保護領防衛団は公式には元自由世界同盟国家の軍隊であると考えられてないが、自由世界同盟に所属していた過去を持ち、指揮官がオリエント公爵との取引が疑われていることから、ここに記される。]

 ヴァージル・リッジウェイ大佐は、仲間の保護領防衛団指揮官たちが、一発も撃つことなく、ブレイク派に国境保護領を引き渡したことにぞっとした。防衛団の裏切りを止める力がなかった鉄衛団はメンカリネンを辞してニューデロスに向かい、総帥がかつての仲間たちに対する逆襲の命令を下すのを待った――命令が来ることはなかった。詐欺師としてトーマス・ハラスが追放され、ブレイク派の操り人形が後釜に付くと、鉄衛団は保護領国(The Protectorate)に残り、同盟として残ったわずかなものをできる限り保持しようとした。3076年、アリス・ルーセ=マーリックに接触を受けたリッジウェイ大佐は鉄衛団を率いて合同軍に加わり、彼らの世界を堕落した兄弟たちから解放するのを望み、ブレイク保護領を倒すために戦った。地球が陥落すると、ルーセ=マーリックはリッジウェイに近づき、RAF内の地位を申し出たが、きっぱりと断られた。

 彼女を驚かせたことに、リッジウェイ大佐は自由世界同盟のために合同軍とともに戦って、国境保護領を開放しただけだったのである。アリスの嘆願にもかかわらず、鉄衛団は地球を出発して元自由世界同盟の地域に向かった。ニューデロスに帰還した彼らが見たのは、崩壊した保護領国の軍事政府だった。支配を実行するのに必要なFWLMの力を持たないナタリア・シモノフ将軍はリッジウェイ大佐に支援を求め、鉄衛団を保護領国の公式な軍隊にしようとした。彼はこの申し出を受けた。シモノフ将軍は平和を守ることに関心が薄く、軍事独裁者としての地位を守りたいだけであることに、リッジウェイはすぐに気がついた。

 3081年、トーマス・ハラスがニューデロスに到着し、保護領国にオリエント公国との防衛協定を申し出た。最初は懐疑的だったものの、リッジウェイ大佐はトーマスの誠実さを確信した。防衛協定に調印して以来、シモノフ将軍の保護領国支配は貧弱なものになっていった。自由を得た民衆は落ち着かなくなったように見え、無意味になりつつある支配から逃げ出した。保護領国が防衛、交易、外交をほぼ全面的にオリエント公国に依存するようになると、いずれ保護領国が完全にオリエントに取り込まれるかのように見えた。伝えられるところによると、リッジウェイ将軍は、保護領国の各世界がオリエント公国の自治メンバーになる交渉を行ったという。条件はシモノフ将軍に満額の年金とDDOCFHの警備を与えることである。


鉄衛団
 老いたリッジウェイが保護領防衛団全体を指揮し、政府への関わりを強める中で、この連隊の指揮はゲオルゲ・スキール大佐が行っている。彼は長年にわたって連隊の戦術的頭脳であると考えられていたので、この指揮官変更で部隊内にほとんど問題は起きていない。常に優秀な漁り屋である鉄衛団は、先進のブレイク回収品を大量に配備している。さらにスターコープス社のエムリスIV工場で作られた若干の装備が、鉄衛団のメック重量を相当に増加させている。スキール大佐の指揮小隊(キングクラブ、エンペラー、サグ、氏族製グラディエイター)は特に恐ろしいものである。


鋼鉄衛団
 3077年、チャラで合同軍がマリリン・ストラウドと彼女の連隊を殺したとき、ストラウド家の資産は別居中の息子である息子ジェラルド・ストラウドに譲渡された。サバンナで父に育てられた若きストラウドは、ブレイク派の凶行を直接目撃し、母親とブレイクの側につくと決めた判断を呪った。ブレイクという化け物は、レジスタンスの闘士たちを虐殺し、声高に反対する人々を夜中に家から誘拐していたのである。ストラウドは突如として転がり込んできた富をどうするか、数年間思い悩んだが、3082年までにどう行動するか決めた。

 若干23歳で、ジェラルド・ストラウドは"真"の鉄衛団を結成するため、リッジウェイ将軍に助けを求めたのである。それは自由世界同盟の理想を現した1個連隊だった。傭兵と幻滅した元同盟正規兵たちを雇った若者は、一族の部隊を再生した。リッジウェイは、3084年、ジェラルド・ストラウド大佐が新連隊の大佐だと宣言した。

 本物の経験を欠いているストラウドはお飾りのリーダーである。サンディ・マンデルバウム副指揮官が日々の指揮を行い、若きストラウドの訓練を監督している。鉄衛団の記章は部隊が持つ不名誉のシンボルであると考えているので、新しい記章が作られた。






レグルス軽機兵隊 REGULAN HUSSARS

 3060年代以来、軽機兵隊は平和な時期を過ごしたが、その平和は自分たちで選んだものではなかった。オリエント、マーリック政府内のブレイク共謀犯に対するタイタス国王の報復戦役は、第1オリエント機兵連隊の電撃的な妨害攻撃作戦で急停止させられた。コンパス座戦役で第11、第12、第13軽機兵隊を失ったキャメロン=ジョーンズは、戦力が彼の願いを果たすに足らないと認識せざるを余儀なくされている。現在までに、軽機兵隊は再建中で、攻撃のときを待っている。


第1レグルス軽機兵隊
 レグルス侯国首都に戻った第1レグルス軽機兵隊(通称、スティール軽機兵隊)は、ジュクで第2オリエント軽機兵隊に敗北した恥辱を振り払えないでいるようだ。第1レグルスより経験で大きく劣る第2オリエント(通称、クレイジーセカンド)はスティール軽機兵隊に圧勝した。戦闘の中で、レグルスは風船メックを攻撃し、油で滑り、落とし穴に落ち、ハンチバックのオートキャノンにダミーのペイント弾を装填したこともあった。レグルスの誇りを傷つけられたジェイコブ・ヘイスティングズ大佐は「オリエントの道化ども」を抹殺すると誓った。当面のあいだ戦争は停止しているが、再開したら大佐がそれを実行することを疑う者はいない。


第2レグルス軽機兵隊
 カーク・キャメロン=ジョーンズが、3069年、自由世界同盟の総帥であると宣言したとき、第2レグルス軽機兵隊はLCCCが押しつけた指揮官であるハウゼン大佐に反乱を起こし、彼をゴス・ハカールに置き去りにした。第2はレグルス侯国に帰還し、侯国で唯一バトルメック工場のあるウォリス防衛を任された。不運にも、3071年、第49シャドウ師団がマーリック共和国軍に化けてウォリスを襲った。第2レグルスは全滅した。カーク・キャメロン=ジョーンズは、彼らの勇敢な(しかし無意味な)最期に敬意を表して部隊の再建を誓い、その後の数年間をかけて、他の下級軽機兵連隊から経験豊かな人員を移して部隊を再建した。

 現在、ヴィノース・シン大佐が第2レグルスを指揮している。彼は3050年代に第2レグルスがギブソンのブレイク派を攻撃したことは聖戦で正当化されたと感じている。


第4レグルス軽機兵隊
 第4はレグルス自由州の平和的な吸収で重要な役割を果たした。レグルス自由州がレグルス侯国と組んだのは、自由州の選択ではなく、第4レグルス軽機兵隊(通称、ククリ)が民衆に見せた敬意によるものだった。それが同盟解散後の不安とあわさり、現在の状況を受け入れることになったのである。自由州人の多くがタイタス国王による意思の押しつけを苦々しく思っているが、同盟の解散で孤立化した世界の多くが海賊や略奪に転じた傭兵の餌食になっているという運命を、レグルスの干渉でほぼ逃れたことに気がついている。

 第4レグルスはそれ以来、マーリック=スチュワート方面にローテーションし、マニヒキとアトレウスの両方に調査襲撃を開始している。どちらの攻撃も大きな損害を与えることがなかった一方で、エドマンド・ジャーラ大佐の目的は、共和国軍の技術と能力を単純にテストすることであり、ククリは深刻な打撃を受けることなく両共和国部隊を自分のペースに置いたのだった。


第5レグルス軽機兵隊
 第5レグルス軽機兵隊の元指揮官、トーマス・オルフェルトは、一時期レグルス軽機兵隊全体の指揮をとり、コンパス座での対ブレイク戦役を指揮した。タイタス国王との政治的な違いによってオルフェルトは辞職し、3080年、イーサン・ハンターが第5レグルスの指揮官となった。

 第5の兵士の大多数が、ブロークンフィスト作戦と最近のブレイクに対する戦役の両方に参加している。ウォリスでは、ローニン社を守るのに甘んじてなかった第5は、マーリック共和国、オリエント公国、その同盟国への幾度もの襲撃をしかけ、一時的にエムリスIVを奪取し、スターコープス社の倉庫を略奪した。それからオルロフ擲弾兵隊がたどり着いて、彼らを追い出したのだった。ローニン社は第5が持ち帰ったデータと物資がかなり有益であることに気がついた。


第6レグルス軽機兵隊
 独立後に初めて作られた第6は、元第1の副指揮官ポール・デブリーズの指揮下にある。デブリーズ大佐の指揮スタイルは、慎重にして熟考するというものである。戦場において、第6は敵の弱点が判明するまで戦争に関わろうとしない。これによって第6の兵士たちは「非レグルス」的であると叱責されているが、弱点を見ぬいたときは他のレグルス軽機兵連隊のように残忍な攻撃が与えられるのである。そして残忍さを慎重に適用していることは、経験に欠けるわりに、大きな効果をもたらしているのである。


第7レグルス軽機兵隊
 第7レグルス軽機兵隊はローニン社のバトルメック警備会社として始まった。先見の明があるローニン社の幹部たちは、中心領域中からメック戦士を雇い入れ、警備部隊を1個メック大隊に拡大した。この中には、不名誉を被った連合のメック戦士、カオル・アケチがいたのである。

 アケチは3068年に前指揮官を殺し、連合から逃げた。この人物は、アケチがまっとうな扱いを保障したダヴィオンの捕虜メック戦士を処刑したのである。3069年、カーク・キャメロン=ジョーンズが総帥の宣言を行ったとき、彼は警備大隊をレグルス軽機兵隊に組み入れた。それからの数年間、この部隊はうまくやってきた。襲撃による損失は、他の元同盟連隊からの離脱者メック戦士多数を受け入れることで補われた。第7のメック戦士のあまりに多くが他部隊からの離脱者であることから、また部隊の指揮官が乗機のニンジャトーを独立部隊としていることから、連隊のニックネームは「三十七士」となっている。部隊のロゴは、アケチ家の記章が使われている。金のキキョウとその下にあるカタナである。


第8レグルス軽機兵隊
 第8は地元レグルス人の入隊者と、脱走した同盟軍人から作られた。元ギブソン公国の内外で、核兵器と過剰な軍事力を理不尽に使用するという評判を得た。これまでのところ、第8レグルスは関わったすべての軍事的な交戦で戦術核兵器を使用しており、クリッパートンではあらゆる社会不安の兆候に対し、民衆に連隊を配備した。平和的な抵抗活動に対し、軽機兵隊は3度ゴム弾を発射し、暴動鎮圧用の泡を放出した。

 保護するはずの民衆から最悪の評判を得ていることに仰天したオルフェルト将軍は、ホンチャオへの退却を命令し、指揮幕僚は静かに引退した。オルフェルトに指揮を任されたロメッシュ・ターカー大佐は危機に対してより適当な対応を身につけるための激しい訓練を課した。

 最近、ハンター少将はこの部隊をフォスローラスに配備するのが適当と考え、借りを返すチャンスを与えた。これまで、軽機兵隊は大きな事件を避けているが、懸念は残っている。この連隊のロゴは湾刀でる。公式のニックネームは、勇者を意味する"Bahaadur"であるが、他の軽機兵連隊からは、臆病者を意味する"Kaayar"と呼ばれ、あざけられている。


第10レグルス軽機兵隊
 第10レグルス軽機兵隊は、第3自由世界防衛軍(自由世界同盟がジオンの放棄を受け入れたので、ワード・オブ・ブレイクに与した)の残存戦力から結成された。この元自由世界防衛軍は、ブレイク派のプロパガンダの行間を読み始めて幻滅を感じるようになり、3077年、ストーン合同軍がウィングを攻撃したとき主人に反旗を翻して、ブレイク軍を合同軍と挟み撃ちで粉砕し、それから輸送船に急いで自由世界同盟宙域へと向かった。現在では、ワードと関わるものすべてに深い怒りを感じている元自由世界防衛軍は、マーリック共和国とオリエント公国を避けて代わりにレグルスに到着し、タイタス国王に許しを求めた。

 タイタス国王は、連隊を解散することなく再補給を行い、レグルス侯国の指揮下に組み入れた。ドン・カーディー大佐は、オリエントをもうひとつのブレイク派傀儡政府とみて、ディール・クーナ攻撃への参加を大いに喜んだ。第10の正面強襲は第1オリエント機兵連隊を驚かせたが、援軍が到着すると退却を余儀なくされた。彼らが脱出したのは、第4オリエントの降下地点にクロケット戦術核弾頭を撃ち込んだ後だった。第10は旧第3自由世界防衛軍のロゴと同じものを使っており、モットーの"Sic Semper Tyrannis"(専制者は常にかくのごとし)が下についている。


第14レグルス軽機兵隊
 第14レグルス軽機兵隊は、第3シリウス槍機兵団の生存者からなる。早めにブレイク派から脱した第3自由世界防衛軍とは違って、このシリウス部隊は最後の最後までブレイク派に付き従い、一部は地球防衛に参加しさえした。あきらかなワードへの忠誠にもかかわらず、槍機兵団はシリウス連合の自由と保護のために行動しただけだと主張した。生存者たちは合同軍に降伏し、RAFへの統合を求めたが、合同軍暫定政府はそれを拒否した上に、槍機兵団の士官たちを戦争犯罪の咎で捉えようとして、ショックを与えた。

 槍機兵団はレグルス侯国に逃れ、タイタス・キャメロン=ジョーンズの慈悲にすがった。彼らの忠誠心を疑ったにもかかわらず、国王は自らを証明するチャンスを与えた。第12、第13、第14レグルス軽機兵隊と名称を変更したこれら連隊群は、コンパス座戦役で鬼神のように戦った。第12、第13連隊はこの戦役で壊滅した。

 残ったシリウス連隊、第14は幻滅を感じているが、侯国を真の故郷として受け入れるようになった。軽機兵隊で最も装備の軽い第14は、軽機兵隊名物の立ち止まっての殴り合いよりも、一撃離脱戦に依存している。
















ライラ共和国






準備状況

 「戦争の源泉は5つである。人、金、物、整備(食料)、士気」。最初と最後については議論が白熱するかもしれないが、ライラ共和国が中心領域の他国より「源泉」を持っていることを認めぬ者はほとんどいないだろう。この数十年間の絶え間ない戦争から回復しようという軍事的な試みにおいて、ライラの経済は、恒星連邦のNAISよりも、カペラ反乱軍の狂信性よりも、強力な資産である。ライラの軍事アカデミーシステムは、それほど飛び抜けているわけではないが、独自の回復と成功を見た。

 聖戦の怒りを逃れ得たものはなく、難攻不落に近いヘスペラスIIでさえもそうなった。一部の工場、施設は直接的な損害を免れたのだが、地球から500光年以内にあるすべての軍需企業が上昇気流と下降気流の混乱を受けた。ライラ同盟の名前が消える直前、政府は大規模な資金を、ローン、補助金、税金控除の形で防衛産業に注ぎ込んだ。他の経済はもっと通常の手法でリバウンドしているが、ライラ軍は復興にジャンプスタートが必要な防衛産業の大きな消費者となっているのである。スカイア島を失ったことは、防衛産業、特に航空宇宙産業にとって大きな悪影響があった。


ボラン地方
 ボラン地方のフリーロは侵攻、襲撃を避けられたので幸運だった。ここにあるディファイアンス社の工場は部品輸入の影響を受けただけだった。ロッキード/CBM社とナシャン社は、顧客が商品を移動、受け入れできないことに制限されただけだった。なぜなら、彼らはフリーロの企業に部品や鉱物資源を頼っていたからである。ギーナー・オートモーティブ社は、戦闘車両の生産を再拡大する事業計画をまとめていない。ギーナー社の公開増資は目的に達しておらず、しばらくのあいだ防衛産業から締め出されそうである。最後に、ハーフウェイは少量の戦闘車両、工兵車両を生産し続けている

 この地域に対する恩恵として、ヘスペラスとソラリスがライラ同盟に残ったスカイア地方の一部として加わった。ディファイアンス工業はワード軍から解放された後、通常の生産能力の半分以下となっているが、巨大工場はそのまま最も生産能力の高い施設として残っている。少なくとも15機種のバトルメック、1ダースの戦闘車両(新型のゴルティエ強襲戦車含む)、少数のバトルアーマー、降下船の生産ラインが稼働している。幅広いラインナップを持つ一方で、その量は10年前を遙かに下回っている。工場への損害は最初考えられていたよりも広範囲だと判明し、現在の推定では完全に修理が終わるまで3120年代半ばくらいまでかかるという。ソラリスは防衛産業にほとんど寄与していないが、新しいアイディアはたいていLCAFに止められてしまうのである。


ブエナ地方
 アラリオンを失い、ブレイク派の攻撃から最後に解放された地方であるにも関わらず、ブエナ地方は聖戦から順調に回復している。主星では、もうひとつのアークトゥルス・アームズ工場がマーズデンIIをこの地方に供給するために立ち上げられたようだ。ボウイ社とSLルイス社は小さすぎてワードの攻撃を招くことがなかった。彼らは軍事生産の巨人たちのなかで取るに足らないプレイヤーとして残っているが、聖戦を通じて成長し、製品の多くを増産した。両者は合弁でマーケティング、販売ベンチャーを行い、互いの売り上げを上げるため、一部の顧客にパッケージでの取引をオファーした。ボウイは新型の戦闘機に取り組んでおり、スカイアが失われたのを埋めるため中軽量級機種を作ることになりそうである。マウンテン・ウルフ社は100%以上の生産率で操業している。それを推進するのは、需要の増加と、最近獲得された自由世界同盟の世界からの突然の部品供給である。

 ブエナにおける兵器製造の巨像は、広大なスターコープス社である。彼らのローバーグ工場はブレイク軍に悩まされることはなかったが、ソン=ホアは補給物資のためたびたび襲撃された。ワード・オブ・ブレイク最後の攻撃で、生産ラインの多くが致命的な損傷を負った。修理がいくらか完了し、工場は完全にシャットダウンしているわけではないが、現在でも、生産は3060年代を大きく下回っている。ソン=ホアの生産ラインのいくつかは、がれきが除去され、ここでラインを再開する代わりに、回収した設備をローバーグに送っている。


コベントリ地方
 コベントリの中心部は傷ついた。ライラで最古のバトルメック生産企業は聖戦で大きな損傷を負った。メック生産ラインの多くは再開したが、生産速度は遙かに遅いものである。彼らはまた、生産の出荷を急ぐあまり、クオリティコントロールの低下にも阻まれている。これは何度かのリコールに結びつき、売り上げを低下させ、この工場で生産されている部品を作り直すためにラインのいくつかを閉鎖せざるを得なくなっている。コベントリ・メタル・ワークス再生への道は、中軽量級メックだけを生産していることに助けられているわけではない。これらの機種の利ざやは薄いもので、歴史的な大量生産によってかろうじて黒字確保しているのである。

 惑星オイティンは、ターヘス社のバトルアーマー販売増加で、税収の増加を見ている。惑星イナールチュでは異なる様相が見られる。スコルテック社はそれなりに製品を売っているが、ブラックストーン・バトルメックス社は、大規模な調査の真っ最中であると同時に、ブラックストーン一族は所有する元傭兵部隊の行動とタマリ・ラルー女公爵を支持したことで捜査を受けている。惑星クァンジョン・ニのディファイアンス工場でバトルメック生産が続いているかは謎であるが、生産ないし販売が上向いているのか下がっているのか知っているのはディファイアンスの役員たちだけである。

 流血の祭典攻撃で膨大な損害を負ったにも関わらず、ロクスリーの新採鉱施設は、ノース=ストーム社とブルーショットウェポンズ社(ノース=ストームの尻馬に乗っている小規模メック製造業者)向けの採掘で成果を上げた。JBバトルメックスは人気のバトルマスターにのみ関心を向けているわけではない。ライラと外国で養成校多数が再建されていることから、カメレオンの注文が急増しているのだ。リッチヴェールでは、クイックセルの戦闘車両の需要が高いことから、かつての規制が脇に置かれている。ライラ共和国が作られたことから、この新しい名前の政府が介入し、労働者の安全を確保できるよう改装する間、工場を閉鎖している。LCAFはクイックセルの製品が必要であることについてぶつぶつ言っているが、安全当局は譲歩を拒否している。


ドネガル地方
 アークロイヤルの兵器製造はドネガル地方で主役の座にあるが、その大半はLCAFには行かない。フェラン・ケルのウルフ氏族は一握りの機体だけをライラに販売する一方、アークロイヤル・メックワークスは傭兵業界に多数を販売している。コムテックはコムガード向けの需要が消滅したが、LCAFはこの分を取っている。いにしえのアークトゥルス・アームズ社が蘇ると、民衆はアークトゥルスの雇用が増加したことを喜んだ一方、氏族とドラゴンからジャンプ3回の位置にあることで目標になりそうだと一部の政治家たちが懸念を示している。DBCはアルクトウルス・アームズの主要株主であるセントリオン社の株主に対する調査を始めた。

 ターカッドは軍事生産部門の再建において震源であり続けている。4つの企業が幅広い製品を生産し続けいるが、バトルメックは1機種だけである。政府の資金は主星に残された航空宇宙産業に向けされており、ターヘスは浮上し続けるための融資を求めている。ドネガル地方のターカッドからギブスまでには、共和国におけるほぼすべての航空宇宙産業が存在する。ギブスは唯一の航宙艦製造施設である。迅速なアップグレードにより、戦艦の整備が可能となった一方で、マーチャント級航宙艦以上の生産拡大は少なくとも3090年代半ばまで実行されそうにない。これは降下船の不足を利用してライラの製品を入手するすばらしい機会である。ギブスの拡大を遅らせることはなんでも、我らの大義を助けるのみである。


軍事訓練センター
 ライラの軍事生産は、10年前に比べて低下しているが、他の国よりまだ良い状況にある。訓練の状況のほうは、相対的にバラ色とは言えない。3つの養成校は深刻な損害を受けることなく生き残った。メリッサ・シュタイナー軍事養成校と、ブエナ戦争学校とロイヤルニューケープタウン軍事養成校である。二校は失われた……ひとつは聖戦で、もうひとつは共和国創設で。残ったふたつ、コベントリ軍事アカデミーとナーゲルリンクは再建を目指している。両方とも運営中だが、クラスの規模は聖戦前より遙かに小さい。残った他の学校は、穴を埋めるためにキャパシティがオーバーしている。
















氏族






準備状況

 いま中心領域にいる氏族は、10年にわたって居を移しておらず、予想できるように、飛躍的に産業基盤を成長させた。そのほとんどは流血の祝典テロに対応したもので、既存の設備を新しい生産で最大限に活用するためのものだった。これはもちろんスフィア共和国の要望にそぐわないことだが、氏族が軍のバランスを取り戻そうとしていることは予想せねばならない。

 最も予期せぬ発展は、おそらく実験用の驚くべき技術が拡散していることである。そのうち一部は3050年代からよく知られていたものである。そうでないものは(特にバトルアーマー、プロトメック用は)、登場してから10年にも満たないものなのだ。


ダイアモンドシャーク氏族
 ダイアモンドシャーク氏族の尽力は、ツカイードの新造船所という結果をもたらした。現時点では彼らがこの造船所をどう使うか不明だが、中心部にあることから前線作戦基地として使うのに有効である。より興味深いのは、ダイアモンドシャーク氏族の新型航宙艦が目撃されていることだ。これらはたいがい長期交易に適したモノリスかスターロードであり、のぞき見の視線から離れたチェインレーンで製造されているものと思われる。トワイクロスのダイアモンドシャーク氏族は、交易ルートを支援するためにダナイスC降下船を建造し、2機種のマッドキャット派生型、先進的な新型ダッシャーIIを来る者すべてにマーケティングしている。より販売が制限されているのが改装型ヒュダスペスで、これまでのところ氏族の買い手のみ入手可能である。

 5年におよぶ統合でダイアモンドシャーク氏族の経済は安定している……少なくとも我々に見えるところでは。惑星領土が少ないことから(各国に作った飛び地領は小さなもので、大半が小都市、軍事基地を少し上回る程度のものでしかない)、ダイアモンドシャークは星間連盟以来なかった貿易上の実験を行っている。ただ交易に頼るのではなく、彼らは付加価値を上げるのに多大な投資を行い、鉱物資源を購入して、最終生産物を販売している。このやり方にはひとつの大きな弱点がある。恒星間交易はきわめて高額であるため、ペイするには高価格で小さい商品が必要となるのだ。資源センター、工場を行き来させることは、ダイアモンドシャーク氏族がやろうとしている貿易の規模では、利益を大量に食いつぶしてしまう。彼らは生き残りを説明するために、伝統的な取引の法律をショートカットする何らかの道を見つけたのに違いない。

 彼らの経済状況がなんであれ、シブコ・プログラムは完全なようだ。戦争をしないことから、氏族軍は目に見えて拡大し、氏族で最大の軍のひとつとなっている。


ヘルズホース氏族
 ヘルズホース氏族は氏族の中でも最大の変化を見た。最後に本拠地を出た氏族のひとつである彼らは、最も先進的な技術を最も改革的なやり方で使っている。その中で最も目を引くのは、新型のプロトメックである。四脚で、空を飛び、これまで見なかったサイズなのだ。ヘルズホース氏族は明らかに技術を限界まで突き詰めた。改装向けのシャーシが枯渇したのに伴い、生産地点#3で新型の高速軽量級メック、エニュオを生産する一方、そのコストは硬化型装甲を使うことで最小にしている。巨大なアイトーン戦車とエレメンタルIIは、氏族中に革新的な思考が浸透していることを示している。

 最近のウルフ氏族による攻撃は、ヘルズホース氏族の兵站網の強さを示すことになった。戦後に傷ついた銀河隊群を修理したことは、装備を生産・移動する能力の証拠となっている。オールド・リグレット訓練所はおおざっぱだが役に立つ施設であり続けており、誇りの象徴となっていることから生き残った。ひいき目に見ても、ホースの氏族軍は期待されていたように回復したわけではない。トゥルーボーンのシブコはとても小さい一方で、フリーボーンのシブコは制限されている。なぜなら、氏族を成り立たせる非軍事階級を維持する必要があるからだ。


ジェイドファルコン氏族
 ジェイドファルコン氏族はインフラの需要を第一に考えているので、追加された武装はほとんどなかった。この中でもっとも重要なのは、導入されたばかりの新型戦車と、来年導入予定のもう一機種を持つクイックセル社の拡大である。ヴィジゴス戦闘機の再導入は明白に失敗した……なぜなら、ジェイドファルコン氏族は先進技術を多量に使う新型の気圏戦闘機を導入することにしたからだ。致命的に不足している航宙艦の生産は、バトラーで続行中だが、遅々としたものである。問題はゲルマニウムの不足だ……ダイアモンドシャーク氏族とゴーストベアドミニオンが占領域での市場を占有している。ジェイドファルコンは航宙艦を見つけ次第拿捕することで不足に対応している。

 効果的に資源を活用する兵站網を欠いているジェイドファルコン氏族は、古い専門分野のひとつに立ち返った。ジェイドファルコン氏族の商人階級は、かつて本拠地で最も有用な銀行家であると考えられており、よって彼らはトラブルなしに未来を買い取るのに、彼らの難解な技を使うことを望んだのである。だからといって悪いことばかりではない。ファルコンは50以上の世界を占領している……彼らの艱難辛苦は永遠に続くわけではないのだ。ジェイドファルコン氏族の債権は長期だといい投資であり、他氏族が熱心に購入している。加えて、商人階級は中心領域の貿易家たちにファルコン占領域で商う許可を販売している。未開拓の市場にアクセスする争奪戦が勃発した。

 ジェイドファルコン氏族のトゥルーボーン・シブコは、ヘルズホース氏族のように規模が小さく、成長に限界がある。これまでのところ、ファルコンは収穫の神判や、低年齢の戦士起用に興味を示していないようだが、未来においては定かでない。


ウルフ氏族
 まだウルフ氏族は非常に弱体化した産業基盤を再建しているところである。デル航空工場群はイセグリム級降下船の生産を拡大した。これは他のハードウェアと取引するのに価値ある交渉手段となっている。しかしながら、この真に英雄的な生産は無頓着な品質管理によって危ういものとなり、問題解決のため生産速度が低下している。新型の強襲バトルメックの生産が始まったが、ウルフはまだオムニメックを作る能力を欠いている。戦車の生産拡大が穴を埋めているが、これは誇り高き氏族にとっては苛立つものである。良い面は、新型の強襲バトルスーツが来年に登場することだ。伝統的に、オムニメックの存在はこのようなスーツに対して多大な貢献となるのだが、ウルフ氏族は不足を補うため装甲兵員輸送車に多大な投資をしている。

 短い連絡線と過剰な航宙艦を持つウルフ氏族の兵站網は非常に強力なもので、よそで作られた部品を使ってバトルメックを組み立て続けることが可能となっている。タマラー破壊から15年がたって、この世界は再び占領域の中心に位置する活発な兵站ハブとなっている。ワード氏族長が襲撃を繰り返して氏族軍が縮小したにもかかわらず、またシブコが小さいのだが、ウルフ氏族は自慢の遺伝子遺産に関するいかなる問題も否定している。フリーバース戦車兵を大量に抱え込まなければならないこともまた問題を引き起こしている。彼らに公式な訓練を施していないことは、受け入れがたいほどの損失を出す結果となり、ここでもまた氏族軍の成長を妨げている。商人、科学長官たちは繰り返しこれを指摘しているが、戦士たちの多くにとって戦車兵がメック戦士に劣るのは自然なことなのである。


ゴーストベア・ドミニオン
 3080年以降、ゴーストベア・ドミニオンは4機の新型機と数機種の派生型を導入した一方で、軍の生産は近い将来、縮小することが予想されている。リョウケンIIやクマのような非効率なバトルメックが原因であると指摘されることもあるが、真の触媒はベイオウルフIIである。平和がもたらされたことで、ドミニオンは生産の合理化を目指しており、柔軟性のあるオムニメックに基づいた戦力に戻そうとしている。ベイオウルフはこれに反するのみならず、故意に高価格になるように設計されているのだ。聖戦のあいだ、ドミニオンは結果を出している限り、ある程度の不当利益を喜んで受け入れていたが、3080年以降、あまりに多くの機体が生産され、ドミニオンに優秀な戦闘マシンを供給するというよりも、利益を得ることに目的が置かれてしまった。

 今後、ドミニオンの軍事生産のすべては、告示によるものになるだろう。効果的なオムニメックを持つバーガン工業とオーディン製造社、アルシャインの軌道工場、成功したジョイント・イクイップメント・システムズ、ベンソン、ビョルンはおそらく問題ないだろう。危険なのは時代遅れの工場を持つグルミウム・クリエイションズ、ヤネセクのような小規模業者である。もし、外部の買い手に販売することで生き残れないのなら、彼らの軍需産業としての未来は暗いだろう。

 4個星団隊がスフィア共和国に行ったことは、ドミニオンの氏族軍にとって打撃となったが、全体の人員は増加している。コピーされた遺伝子貯蔵庫はシブコのサイズを保っている。ラサルハグ現地人にとって氏族に加わることは社会で出世する手段となるが、多くがショックを受けるのだった。ドミニオンの兵站ネットワークは強いままであり、新造の民間航宙艦と降下船が強化し続けている。同様に、地域主星の制度を導入したことで、軍事、政府量レベルでの反応時間が向上した。


レイヴン同盟
 スノウレイヴン氏族はついに10年前、ダンテに新しいプロトメックとバトルメックの工場を作り上げた。同盟防衛産業のスティンガーの生産ラインを改装したこととあわせ、これは氏族にバトルメックの確固たる基盤を作り上げるだろう。また同盟軍(AMC)の刷新もなされることになりそうだ。オデッセイ級航宙艦、ミッチェル・アヴェラーが進水した後、キャトル・ベルはハンター級1隻とコミタトゥス級航宙艦2隻の生産に向かった。キャトル・ベルは中心領域で最も先進的な航宙艦生産施設になっている。地元が環境汚染の懸念を示したためにラモーラの工場がPALスーツの生産に制限されると、キャトル・ベルがバトルアーマーの主要供給源となった。この移動式工場船は軌道を巡り続けているが、地上での生産を強化するために使われている。

 ラモーラでは、連合外世界社(UOC)が氏族技術を完全に使っている。先進的なコーラックスCは完全な氏族オムニ戦闘機に至る一歩であると明かされた一方、降下船ヤードは船舶改装施設から氏族降下船を一から生産できる施設に前進した。疑問符を置かれるのは、UOCが伝統的な気圏戦闘機を生産し続けていることだが、いまのところ、UOCの利益のあまりに多くの部分がここから得られているものとして説明される。

 外世界同盟との同盟関係は、上手くいけば、現在、この国を覆っている防衛の二重体勢の問題を合理化するだろう。それは装備と儀礼の統一から始まったが、驚くべきなのは、スノウレイヴン氏族の航宙艦艦隊に接続した際に、同盟内で行われる交易と戦略機動の可能性である。ウェイサウで1個星団隊を失ったことから、氏族軍は期待されたほどの成長を見せていない。他氏族の多くのように、スノウレイヴン氏族のシブコは小さいままだが、AMCの兵士を使おうというのなら、これはたいした問題ではないかもしれない。スノウレイヴン氏族はいまやコロンビア・アカデミーを日常的に使っているが、シブコはまだエデン・ローズで訓練を開始したところだ。


(放浪)ウルフ氏族
 (放浪)ウルフ氏族は、ナーシャン・ダイバーシフィード社のフェンサリルをアークロイヤルで製造するという形で、シュタイナー家からの援助を受け取った。逆に、(放浪)ウルフ氏族は、イセグリム級降下船をライラ共和国に販売している。本拠地では、アークティック・ウルフがまたも改造される一方で、ヘルズホース氏族との共同開発で新型のVTOLが生産された。

 ループス・メジャー宇宙ステーションは、最も完全な造船所として、ライラ共和国の兵站網の重要なハブとなっている。もちろん、A級HPG、工場、訓練施設を持つアークロイヤルもまた中心司令ハブである。


ノヴァキャット氏族
 ノヴァキャット氏族の産業的成長は最小のものだが、新型のバトルアーマーが来年、登場する予定である。おそらく最も興味深い発展は、続くルシエン・アーマーワークスの影響である。ムーラン・アルファはLAWからの資金を受け入れ続けており、これがモリガン(バトルメック)に直接結びついた。ノヴァキャットの兵站網の状況は様々である。生き残った戦艦は、いま共和国装甲軍の手にある。しかし、航宙艦艦隊の大部分は残り、兵士と物資をイレース管区内で迅速に移動可能である。

 3個銀河隊を失ったノヴァキャット氏族の広大な訓練施設は奇妙なことに空っぽのように見える。かなりの新しいシブコが作られた一方で、あまりに多くの戦士たちが失われたことは、次世代の教官がいないことを意味している。悪いことに、いなくなった戦士たちは氏族の精鋭であり、よって基準は落ち込んだ。唯一の良いニュースはDCMSとのクロストレーニングが再開したことで、両陣営にとってよい結果をもたらしている。






ダイアモンドシャーク氏族

 ダイアモンドシャーク氏族の氏族軍は、現在、6個現役銀河隊と戦艦11隻で構成される。


アルファ銀河隊
 このデスストライク銀河隊は、シャークの先頭に立つ銀河隊なのだが、ここ15年間、戦闘を行ってないことで有名である。現在、トワイクロスに終結している新クルーザー星団隊がアルファに加わったが、他の星団隊のような技量は欠いている。


ベータ銀河隊
 シャークがツカイードに飛び地領を確保して以来、このプレデター銀河隊は駐屯部隊のようなものとなっている。ツカイードとニクヴァーンの防衛を任されているプレデター銀河隊は再建に満足している。

 ニクヴァーンの事件の余波により、連合の市民たちはシャークに広大な停泊地点を与えた。ここでの接触は公的な商業チャンネルを通じてのみ行われる。スターコーネル・ファイサル・カラザはこの扱いに満足しており、DCMSの軍事連絡士官の派遣をすべて拒絶している。地元の商人長は、貿易の機会が妨げられると信じており、あまり快く思っていない。


ガンマ銀河隊
 トワイクロスにいるスナッピング・ジョーズ銀河隊は、流血の祝典テロが起きたときその場にいた。一連の爆発が起きると、予防措置として、この銀河隊はトレルシェア重工業と宇宙港の守備陣地に入ったが、実際には罠へと誘い込まれたのである。核攻撃で地下のトンネルを爆破することで工場を倒壊させる試みがなされたのだ。これは失敗したが、人命が失われ、生産設備が破壊された。続いて発生したのは、テロリストが脱出する前に降下船打ち上げ地点まで急ぐレースだった。砂嵐の中を移動するのは、LB-Xオートキャノンのようにメックへの打撃となった。

 期待に反し、復讐に燃える戦士たちは遅すぎた上に、メックを無力化とされ、一部を嵐の中で失った。一ヶ月後、調査チームがテロリストの死体を発見した。打ち上げ地点から1キロの砂の下に車ごと埋まっていたのである。以降、銀河隊はイタビアナにローテーションして、ここでジャスパー・スケート星団隊が10年ぶりに姿を現し、その一方で、第28クルーザー星団隊がトワイクロスで航行不能中の〈デヴァウアー〉に配置転換となった。


ラムダ・スピナ
 第6打撃星団隊と交代でトロントハイムに姿を現したとき、我々は初めてこのスターストライク銀河隊を目の当たりにした。到着したサファイア・スケートと第11打撃星団隊は定数未満であり、第15クルーザー星団隊は存在しなかった。それ以来、1個星団隊が彼らに加わり、2個目が結成され、すぐさま戦艦〈ツナミ〉に配備された。


オメガ銀河隊
 このブラッドセント銀河隊は、3080年10月12日の危機に応じて、2個星団隊をイタビアナに置いている。第35クルーザー星団隊は生産施設DSF-IT1を確保したのだが、第57連合強襲星団隊は民間航空機がダイアモンドシャーク氏族のインダストリプレックスCに突っ込むのを阻止するには遅すぎた。守るもののなくなった第57は、それ以降、復興活動に参加している。それ以来、ブラッドセント銀河隊の役割は変化した。公式には守備銀河隊となっているオメガは、ダイアモンド艦隊に配備され、強力な戦艦群の護衛となっている。


シグマ銀河隊
 このフォックス・ウェルプス銀河隊は、氏族本拠地との連絡が絶たれて以来、はじめて姿を現した。その代表はこれまで目撃されてなかった新部隊、第422打撃星団隊である。傍受された通信によると、ムーンストーン・スケートと第23打撃星団隊がいまだ存在していることが示唆されているが、目撃はされていない。加えて、第51打撃星団隊は、かつてのテリトリアル・ウォーターズ銀河隊ではなく、このフォックス・ウェルプス銀河隊に属しているようだ。


シャーク艦隊
 ダイアモンドシャーク氏族海軍は〈テラー・オブ・ザ・ディープ〉(ナイトロード級)、〈ナガサワ〉(ソヴィエトスキー・ソユーズ級)、〈スペース・ハンター〉(ローラIII)、〈トレイシー〉〈アーキテウジス〉(エセックス級)、〈スウィフト・ストライク〉(フレダサ級)、〈デヴァウアー〉(キャラック級)、〈クラーケン〉〈ポセイドン〉〈タイタニック〉〈ツナミ〉(ポチョムキン級)からなる。これらの船のうち、〈デヴァウアー〉は最近の改装作業中になんらかの大規模な損傷を被り、トワイクロスで座礁状態にある。他の船数隻はツカイードで大規模な改装をうけており、モジュラー式造船施設が建設されたと思われることで意見が一致している。

 近い将来、大型艦の数が制限されることから、ダイアモンドシャーク氏族は3085年に生産されたイセグリム級降下船をすべて購入したと伝えられている。これはウルフ氏族の品質管理問題を考えると、諸刃の剣になるかもしれない。






ウルフ氏族(放浪)

 ウルフ氏族(放浪)の現在の氏族軍は、3個銀河隊と戦艦1隻からなる。


アルファ銀河隊
 第1ウルフ軍団がグラウスから撤退してわずか数ヶ月後、ジェイドファルコンがグラウスに侵攻するのを黙ってみていることを強いられたアルファ銀河隊は、数年間静かな時を過ごした。何度かファルコン占領域への襲撃を試みたが、ジェイドファルコン氏族の反応は釣り合いが取れてないもので、たいていはセーフコンを無視して大軍を入札した。その規模の戦力と戦いたくなかったアルファ銀河隊は、眠れる犬とならねばならなかったのである。

 その代わりに、アルファ銀河隊は、ケルハウンド、ウルフ竜機兵団、その他アークロイヤルの傭兵隊のために仮想敵部隊となり、その爪を研ぎ続けた。これは経験豊かな部隊を相手にするときは建設的だったが、エリートでない一部の部隊は教訓を得ることが出来ず、遺恨を残すこととなった。


ベータ銀河隊
 地球戦役でぼろぼろになったベータ銀河隊は、3080年にジェイドファルコンがモグヨロド、クレアモント、マチダを攻撃した際、休む時間もなく戦いにかり出された。アークロイヤル戦域から送られたベータ銀河隊は、ジェイドファルコンが戦闘を続けずに撤退したので、幸運だった。ジェイドファルコン氏族が万一戻ってくる場合に備えて残ったことは、地元との軋轢を生み出した。幸いにも補給物資は豊富だったことから、ベータは失われた戦力の一部を回復することができた。マイナス面は、アークロイヤルが破壊されたことで、中心領域の装備に頼らざるを得なくなったことである。


オメガ銀河隊
 オメガ銀河隊はアークロイヤル戦域のリムワードいっぱいのところに駐屯し、ドミニオン、ウルフ氏族方面を守っている。互いに興味が無いことから、ドミニオン方面は静かである。一方、ウルフ氏族ベータ銀河隊に対しては、日常的に国境をまたぐ襲撃を行い、ウルフのしっぽをつねることとなったのである。ベータ銀河隊からの反応がないことは、むしろオメガ銀河隊のやる気を高めている。スターキャプテンたちが同僚と競い合ってることから、リスクが高く、大胆な攻撃を行うようになっている。


放浪ウルフ艦隊
 ポチョムキン級〈フルムーン〉で構成される(放浪)ウルフ氏族の艦隊は、かつての名残に過ぎない存在である。この現実に直面し、引き続きアークロイヤルを守る必要のある放浪ウルフは、イセグリム級降下船を開発した。ライラ共和国と他氏族が関心を示したので、この船は放浪ウルフにとっての資金源にもなった。いずれにせよ、成長する降下船艦隊は、(放浪)ウルフ氏族にきわめて有効な戦術的選択肢をいくつか与えることだろう。






ノヴァキャット氏族

 ノヴァキャット氏族の、現在の氏族軍は3個銀河隊で構成される。


クシー銀河隊
 運命の悪戯によって、クシー銀河隊はノヴァキャット氏族の中で最先任の銀河隊となった。クラウドコブラ氏族との関係を考えると、これは一部からよく思われず、ラムダ銀河隊に名誉をもたらすために神判が行われた。上位銀河隊群がスフィア共和国に加わったあとで、ドミニオンの国境に移動したクシーはイレース管区とドラコ連合の国境の間の最後の防衛戦の役割を果たしている。これはクシーにとって問題となった……なぜなら彼らはほとんど実戦に参加してなかったからだ。ドミニオン兵は彼らと交戦するのをあからさまに拒否している。これを解決するため、襲撃作戦を求めているのだが、その機会は制限されており、DCMSは必要以上にドミニオンとの関係を悪化させたがっていない。クシー銀河隊は氏族の中心に移動したというのに、ますます部外者となっている。


ラムダ銀河隊
 デヴリン・ストーンにイレースを守るよう強制されたラムダは、それ以来、アルシャインとルシエンの強襲戦線の真ん中に位置している。これによりラムダはゴーストベア・ドミニオンの襲撃の目標になりそうである。ノヴァキャット軽機兵星団隊は、ドラコ連合のハードウェアに代わり新型のスフィンクスを受け取っている。これらの機体は3084年、ムーランで第1〈光の剣〉と共に実戦を経験したが、戦った星団隊は第246であると誤認された。アースガルドを守るノヴァキャット機兵星団隊は、修理を続け、銀河隊の予備の役割をつとめている。


オミクロン銀河隊
 ノヴァキャットの3個銀河隊のうち最大のオミクロン銀河隊は、イレース管区の残りを守っている。サンダーキャット親衛隊とノヴァキャット猟兵星団隊は、イタビアナをダイアモンドシャーク氏族と分け合っている。少なくとも猟兵星団隊にとって、これはありがた迷惑となった。ダイアモンドシャーク氏族の工場で作られる物資で、装備を強化しようとしていた彼らは、エリートの駐屯部隊と日常的に神判を行い、成長を阻害されてしまったのだ。しかし損害を正当化するだけの充分な勝利を得ている。アウター・ヴォルタのノヴァキャット竜機兵星団隊は、まったく攻撃を行っておらず、姉妹星団隊よりも回復している。不運にも、ノヴァキャット竜機兵星団隊は「流血の祭典」の際、エイヴォンに居合わせた。損害はなかったのだが、二ヶ月におよぶワード・オブ・ブレイクのエージェント二十数名(狙撃、ガス、爆弾攻撃でエイヴォンの都市群を麻痺させた)を追うあいだ、スキャン装備と監視能力を提供した。


ノヴァキャット艦隊
 3個銀河隊と共に、ノヴァキャット氏族の戦艦艦隊のすべてが、スフィア共和国に加入した。よって降下船海軍に格下げされてしまったのだが、良い兆候もいくつかある。ノヴァキャット氏族は3隻のアシール級と4隻のヴァニル級を確保するのに成功したのだ。さらに求める神判は災厄で終わっている。これはノヴァキャット氏族が、アルシャインのパイレーツポイントで神判を求めたときのことである。ドミニオンのヴァルキリー星団隊は挑戦を拒否しただけでなく、キャット部隊(5隻目のヴァニルと航宙艦含む)を破壊したのである。氏族製降下船に加え、ノヴァキャット氏族は3060年代後半に作られた第一世代のネコノホノオ級1個星隊を運用しており、ドラコ連合の望み通りにドミニオンの国境を強化している。最後に、キャットはイセグリム級を購入しようとしているが、ライラ共和国とウルフ氏族の反対は問題になるかもしれない。
















辺境






準備状況


カノープス統一政体
 聖戦中、カノープスの軍事産業は将来に向けて地ならしされた。デトロイトとカノープスの工場が受けた小規模な損害は、聖戦が収まるまでに修理されている。我々が判断できる限り、ブレイク派を陥れた戦術は、数世紀前、星間連盟を相手に使われたものと同じであるようだ。降伏と占領を受け入れるふりをすることで、懲罰的な攻撃を受けず、国家の産業は守られたのである。戦中、工業力が拡大した一方で、戦後は持てる資源を再建に向けている。これによって多角化の継続と軍需産業のさらなる拡大は妨げられてしまっている。唯一の例外はカノープスのブリストル・サルベージワークス工場である。報告書が不十分なので詳細は曖昧であるが、小規模な生産を拡大しているようだ(レトロテック・メックの可能性がある)。


タウラス連合
 タウラスは、損害と占領の両方で、工場を失った。パーディションとオルガノの生産がない現状において、マクロード・ランド、ストロペ、タウラスの乏しい生産では、TDFの需要におよんでいない。カルデロン保護領が近隣の辺境国家にさえも孤立主義を取っているようなので、輸入は減っており、問題の解決にはなっていない。所属惑星の離脱で使える資源が減っていることから、タウラスの工業生産能力はさらに逼迫している。3083年にフォックスハウンド小船艇が登場したことから考えみて、いくらかの回復がなされたようだが、TDFの需要の大半は新型の阻止船艇ではなく、既存のTO&Eを再建する地上・航空宇宙装備なのである。


マリア帝国
 養成校と軍団に深刻な損失か出たのだが、マリア帝国の豊富な鉱物資源と工業インフラはそのまま残された。産業への損害はなく、よって帝国はついに最初の国産バトルメックを配備した。相当数のレトロテック・メックが真のバトルメックに先駆けて導入された。いまやコマンドゥとローカストが、アルファードにあるATCのラインから出てきている。


カルデロン保護領
 保護領の工業力は、国の若さから考えるとかなりのものである。聖戦中、ワークメックの工場がレトロテック工場に転換されて、トロの生産が達成された。聖戦後半、スターダガーが試験機として登場し、直後に生産が始まった。これらマシンの双方が、ニューホープの候補生たち、カルデロン防衛軍、辺境の友好国に喜んで受け入れられた。国庫の潤った保護領政府は、保護領防衛コングロマリット社の工場をアップグレードするか、通常技術、先進技術を生産できる工場を建設してくれるグループを探し始めた。


フロンクリーチ
 フロンクリーチの車両工場は驚異的なものであり続けている。この国の膨大な生産は、地元市民軍を増大させ、胸甲機兵隊への充分な供給を生み出している。フィルトヴェルト連合、カルデロン保護領との貿易で、地上車両以上の装備が入手可能となり、防衛軍の幅を広げた。


ランディス領
 ホープ・インダストリアル・ワークスの出現は、ランディスIVに多大な恩恵をもたらした。修道院の下にある都市で生産されるレトロテックのメックを販売することによって、ブラザーフッドは多大な利益を得ている。収益は、難民の支援とメックのアップグレードに均等に分割されている。

 ブラザーフッド修道院は、大量の戦闘機を輸入することで、最近、カリキュラムに気圏戦闘機の操縦を追加することができた。彼らの望みはランディスの地表を守ることだけでなく、この世界とジャンプポイントのあいだを守ることである。くわえて、ブラザーフッドは外国から生徒を受け入れ、代わりに修道士たちを送り始めた。この国際的な経験は、ブラザーフッドの理想への献身につながるが、受け入れ国に人材が流出することも何度かあった。望んで離脱した者たちは呼び戻されることはない。ブラザーフッドは失われた息子たちを祝福している。


フランクリン領
 オコナー・キャンプは、扱いづらいノヴォ・フランクリンの世界において、もっとも軍事アカデミーに近い存在である。グラウス領に位置するオコナーは、志願兵がブルドッグスに仕える限り、対海賊戦術を訓練してくれる。これは少なくとも防衛の目的では、領地群の統一を図れるかもしれない。歩兵訓練は基本的なものであるが、よく反復練習されており、歩兵たちは捕獲した海賊の装備で見事に武装をしている。


ミカ・マジョリティ
 ラーセン首相の下、ミカ市民軍旅団は訓練を受けてない烏合の衆から、組織化されたものになった。制服以外に使える資金がないことから、市民軍は自前の武器を使って任務を果たさねばならない。混成の隊員たちは練習を繰り返しているが、標準化された装備を欠いていることは、たとえば恒星連邦の市民軍などに比べてプロフェッショナルであると見なされているのを妨げている。


ニューセントアンドリュース
 メリディアン製造は、いまや十年近くアービターを生産している。天井知らずの成功を果たしているのに、彼らは現在のレトロテック生産能力をアップグレードするつもりはない。しかし、提供する商品を広げるために、レトロテックのライセンスを考えている。リム・モータースとの貿易協定に関する議論は無駄に終わった。


ニオプス協会
 プロジェクト・ワークショップの崩壊が確認されたことは、この孤立した飛び地にとって打撃となった。3つの星系にはまだ市民軍の訓練センターがあるが、ニオプスIVの主軍事アカデミーはブレイク派の爆撃で失われた。

 聖戦中ブレイク派の略奪を受けたにもかかわらず、3星系の鉱物資源は大規模なものである。ニオプスVでは、ゲリラたちが採鉱を妨害したので、操業が遅々としたものになった一方で資源が枯渇することはなかった。


リムコレクション
 リムコレクションは正式なアカデミーを持っていないので、エイブル大佐が新兵の観察・訓練プログラムを開始した。警察の民間人パトカー同乗プログラムに似たこれは、志願者たちに戦闘の現実を見せつけるものである。この経験は、入隊者たちを怖がらせるよりも決意を固めさせるもののようで、歩兵ブートキャンプを膨らませている。

 シミュレーターがないので、市民軍はリムモータースのレトロテック・コマンドゥを訓練メックとしても使わざるを得なくなっている。コレクション議会はオーティスの復活した工場の隣にアカデミーを建設する議論を始めている。生産品の一部を売却することは、建設を実施し、経験豊かな講師を雇うための最高の資金源となりそうである。カルダリウムとオールドーンの議員がこの施設を自惑星に建てることを望んでいるので、これまでのところ議論は脇に置かれている。






マリア帝国


第I軍団
 ノヴァローマへの中性子爆弾攻撃で大打撃を受けた第I軍団は、コンパス座、支援傭兵部隊の猛攻を受けた。第I軍団によるイリュリア世界防衛は、ブレイクがバックにいるコンパス座軍を苛立たせ、イリュリア陥落を防いだのである。アルファードに守備軍団として配置されたのは、カエサルの謝意を示すものである。好きな装備を選択できることから、軍団の再建は優位に進んでいる……補充装備としてよく見られるのは、母国で生産されるセンチュリオンとコマンドゥである。


コホート・モリツリ
 聖戦後、ウァレリウスから移動した死のコホートは「報復の日」のニュースヴィッドを見ると、嘆き、怒った。彼らが長年守ってきたウァレリウスの民衆たちが、抑えの効かない傭兵部隊に殺されたのである。コホート・モリツリがウァレリウスの反乱を小規模に抑えるのに尽力してきたという事実にカエサルが気づくのはあまりに遅すぎた。それにも関わらず、カエサルはコホートを帝国中、マリウス・ティアーズとホラティウスに移した。海賊たちは、当地の市民軍を打ちのめしたあと、抵抗を受けることなくこれらの世界を荒らし回っていた。最初の海賊との遭遇は、コホートにとってひどいものとなった。

 彼らが星系に到着したのは、海賊が発ったのと同時だった。コホートの降下船が惑星降下していたときに、襲撃部隊の戦闘機が彼らを攻撃した。古ぼけたユニオン級が撃ち落とされ、12機のバトルメックを失ったコホートは、戦闘機戦力を持っていないので追撃が出来なかった。だが、2隻のレパード降下船を貧者のCAP(戦闘空中哨戒機)として使ったことで、いくらかの復讐を果たした……逃げようとした海賊のレパードCVを撃ち落としたのである。コホートの損失は、これまでのように、すぐさま死刑囚で補充された。彼らの到着以来、海賊の攻撃は急減しているが、とある交戦で5隻のメックが犠牲となった。一方で海賊側は15機を失った。数で劣っていたのと、タイミング良くコホートの戦車が側面を攻撃したからである。






フィルトヴェルト市民軍


第1フィルトヴェルト市民軍
 元はフィルトヴェルト養成校訓練大隊だった第1市民軍は、フィルトヴェルト連合の誇りである。それを証明するのは、行進時の見事なパレード陣形であろう。彼らの戦闘能力はたいしたことがない……海賊たちはたいてい準備された防衛地点を迂回し、邪魔されることなく襲撃を実行するのである。数少ない戦闘において、兵士たちの技術レベルは平均だと示されている。彼らの成長がゆっくりとしているのは、養成校の卒業生が他の2個連隊に回されているからである。


第2フィルトヴェルト市民軍
 マラグロッタ境界域市民軍の離脱者を中心に作られた第2市民軍は、すぐにも国防の信頼できる中核にならねばならなかった。第2は熱心で信頼できるのだが、正式な訓練を欠いている。兵士の一部は優れた腕前のひらめきを見せているので、未来への希望は残っている。連合最高司令部に専門分野を託された第2は、市街戦の広範囲な訓練を行っている。歩兵連隊は優秀だが、メックはこれまでのところまだまだである。


第3フィルトヴェルト市民軍
 即応部隊となっている市民軍の歩兵、車両、メックは、複数の世界に配備されていることから、中隊レベルでの統合がなされている。訓練は厳密な諸兵科連合戦術と熾烈な戦闘降下シナリオに焦点を当てている。第3市民軍は絶え間ない訓練のおかげで、どの部隊よりも早く降下船に搭乗可能である。


サンパース強襲大隊
 サンパースは連合と契約したときに正統性を獲得し、デス・コンソルト相手に際立った成果を見せて、後援が続くことを保障した。この大隊はもう企業としては運営されていないが、バック少佐の交渉能力によって補給物資を獲得し、連合がよそでは入手できないかもしれないものを取引している。独立部隊として活動することを許されているサンパースは多数の海賊を撃破する一方で、市民軍を訓練する際に仮想敵の役割を果たしている。






ランディス領


ブラザーフッド・オブ・ランディス
 ホープ・インダストリアル・ワークスが充分な量のレトロテック・メックを生産し、ブラザーフッド軍の規模を増大させているのだが、戦力は2個大隊のままである。ブラザー・ジブラー=スコットは1個連隊を完成させるために3番目の大隊の創設を提唱しているが、ベケット騎士団長は異議を唱えている。

 両強化大隊はランディスIVの防衛を維持し、同じ熱意を持って多くの新兵を訓練している。ディーク(カルデロン保護領)からスターダガー戦闘機を輸入し、訓練を減らすことなく入信パイロットの訓練需要に応えた。この航空宇宙部隊は現在航空大隊規模にあり、地上支援を専門としている。






フランクリン領


領地軍事部隊
 他の小領土を征服して作られたグラウス領は、惑星で最大の領土を維持している。FMF(領地軍事部隊)は雑多な戦力からなっているが、戦力の主体は小部隊を吸収して2個中隊になったオコナー・ブルドッグスである。彼らの忠誠心はグラウスへの忠誠と引き替えにメックの所有権を認めることで保たれている。これまでのところ、約束が破られたことはない。

 緩い連携をとっているFMFは、大きな危機が潜在的な不信を上回ったとき、ひとつの大きな部隊となる。これが発揮されたのは、聖戦の初期、ポート・クリンからトルトゥーガに海賊団が逃げてきたときのことである。防衛の必要性が、10年以上、FMF内の反目を妨げたが、聖戦の終結後、混沌とした日常が戻ってきた。いまだ2個大隊以下であるノヴォ・フランクリン全体の力は、内紛によってゆっくりとむしばまれている。






ミカ・マジョリティ


ラーセン・ローナーズ
 装備の優れた大勢の賞金稼ぎ集団がトルトゥーガ・プライムの元司教を追ってミカVにたどり着き、賞金の分け前と引き替えにローナーズに協力を求めた。ミカVのローナーズはミカIIのラーセン大佐に追跡を行うとの通信を送った。戦闘の詳細は不明だが、ローナーズの主力がオロポリスに到着して見たものは、崩壊したドーム都市だった。放射線センサーは核兵器が爆発した痕跡を探知した。ローナーズ小隊、賞金稼ぎ、ブレイク派、1万5000人の市民のうち、生き残った者はなかった。

 4個小隊にまで減少したローナーズは、名簿に戦力を追加する機会がほとんどない。ランディスIVと連絡して、ブラザーフッドの訓練生が駐屯する申し出を受けたが、ローナーズに入りたがっている新兵はいない。

 ローナーズは市民軍師団の訓練を続けている。最大の努力を払っているにもかかわらず、市民軍は武装した群衆でしかなく、ミカ星系に流れ込んでくる不運な流れ者たちよりもほんのわずかに合法性があるに過ぎない。






ニューセントアンドリュース


ネルソン・ロングボウズ
 ロングボウズは聖戦で一度だけ大きな戦闘を行った。コンパス座へと逃亡するブレイク派の集団から、賢明にもひとつのグループが分かれた。この保護領市民軍大隊はニューセントアンドリュース星系にたどり着き、間抜けにもキリーモントに戦闘降下を行い自らの存在を明かした。彼らは厳しい防衛に対する準備が出来ていなかった。

 ロングボウズ(数十機の市民軍アービターに強化されていた)は、自殺的なまでの熱狂を持ってして侵攻軍に群がり、虐殺した。航宙艦は逃げ出したが、恐れる民衆のあいだに着陸しようとしていた降下船は一発も撃つことなく捕獲された。その後、乗組員は即座に処刑された。市民軍は損失を出したが、ロングボウは兵士を失わなかった。失われた装備は、即座に感謝でいっぱいのメリディアン製造社からの新品アービターでまかなわれた。






ニオプス協会


ニオプス協会市民軍
 ブレイク派の攻撃によって4個メック大隊のうち3個大隊が壊滅し、航空連隊が半減したのに伴い、フリッツ・ドゥ大佐が唯一生き残った高級士官となった。生存者たちを指揮している彼は、破滅を逃れたばらばらの大隊を、メック2個大隊にまで再建した。航空連隊は2個航空中隊にまで減少し、回復にはもっと長い時間がかかりそうである。しかし、ブレイク派の絶え間ない襲撃は、市民軍を情熱溢れる古参兵部隊へと鍛え上げた。3つの星系を守るため、同数に分かれた中隊指揮官たちが民間の選挙を組織し、秩序を再生する責務を負う一方、ドゥ大佐はこれら3星系の仕事を統制している。






リム・コレクション


エイブル・エース
 エース大隊は、4個コレクション市民大隊群からのすばらしい支援を受け続けている。エースは全3個中隊と指揮小隊を輸送するに足る降下船を取得し、展開の柔軟性を上げた。分割して配備されるとき、各中隊はコレクション市民軍大隊の指揮中隊となることがよくある。これは経験の浅い市民軍メック戦士を強化する。といっても、彼らの技量はこの5年間、対海賊戦闘を行ったことで著しく上昇している。

 提供された議席に座るつもりらしいエイブル大佐は、日々のエースの運営を息子のレスタリック・エーブル少佐に任せている。彼は父親の引退後、指揮を受け継ぐのが予想されている。若きエイブルはタブロイド紙のちょっとしたスターである……火遊びによって大勢の女性とのあいだで最低でも15人の子供を作っているとされているのだ。だが、彼女の誠実な妻とのあいだには子供がないようで、センセーショナルな記事の正確性に疑いを投げかけている。


コレクション市民軍
 3個大隊は、保護の傘を提供するために、分かれて配備されている。彼らの地元民との関係は、平等主義で有名である。市民軍のメック戦士に高い地位は与えられないが、命をかけて国民を守ることから英雄として正しく扱われている。
















傭兵






総評

 聖戦後に全面的な緊張緩和がなされたのに伴い、中心領域内での死活的な傭兵需要は顕著に落ちたんだ。しかしながら、惑星防衛の需要が、傭兵産業を完全に終わらせることを妨げたのである。特に辺境ではいつものようにそうなのだが、これまでとは違って中心領域でも、海賊が安全と法を守る市民を脅かしている。これら海賊の多くは、合法的な雇用主を確保できなかった傭兵であり、生活のため海賊行為に走った。なので、民間セクターでの傭兵の評判があがることはなかった。評判の高い傭兵部隊は一定数残っているが、複数連隊の傭兵部隊はすでに絶滅しているようだ。

 信頼出来る支払いと相応の仕事を得るのに苦労する傭兵部隊がある一方で、それなりの部隊が再建中の王家軍に防衛を提供し続けている。その多くが新兵たちの教官となっている。これら傭兵の多くが養成校の教師になる能力を持っているのだが、公式に就職するのを好まない者が多いようだ。それでも、養成校の教師たちまでもが戦闘の殺戮に放り込まれたことから、一部の傭兵は職業を捨て去って、学校の正式な職員になるかもしれない。

 ブレイクに与した傭兵の正確な集計はいまだ進行中であるが、逃げ出し罰を受けるべき戦争犯罪者たちのリスト(判明した分)が、中心領域と辺境に配布されている。これら部隊、個人を捕らえるか殺した場合に出る賞金によって、傭兵産業が完全な違法に陥ることは妨げられている。賞金首を探す賞金稼ぎの競争は激しく、命に関わるものである。生命と装備が失われることで、さらに傭兵の数が減っている。






新興市場

 各王家軍が数百年間におよぶバトルメック中心の戦闘ドクトリンから離れ始めたのに伴い、小規模な諸兵科連合軍による国境襲撃が恐怖の源となっている。機動防御、報復襲撃に大規模な戦力が必要であることから、王家軍は小規模な中隊規模以下の傭兵部隊を使って惑星市民軍を強化している。生産能力と軍事力が壊滅したことで、防衛力の柔軟性を回復するのは死活的な問題となった。しかし、一部の王家、惑星君主は自軍の兵士、パイロット、メック戦士の代わりに、国家を持たない者たちの生命をリスクに晒すことを選んだ。


ドラコ連合
 ドラコ連合の政策は最も急進的な変更を経験した。傭兵団はここで雇用を探すことを奨励されるのである。DCMSの外部隊員として仕える者たち(元帥の絶対の管理下に置かれる)は、契約期間によって様々な結末を迎える。一部は厳しい体制下で成功したが、さらに多くの部隊が不安的になるか、逃げるか、追い出されることになった。連合が雇った傭兵団の大半は襲撃任務を任され、連合の正規部隊が到着するまで敵の防衛の陽動を行う。特にこの傾向が強かったのは、聖戦の直後に外世界同盟の侵略があるまでの時期だった。


恒星連邦
 恒星連邦は事実上、傭兵のパラダイスであり続けている。広大な領土を守るために常に多くの傭兵を雇用してきた彼らは、アウトリーチ損失の責任を取るために動いた。前線部隊と共に、自慢の恒星連邦境界域市民軍すらも聖戦で破壊されたことから、恒星連邦はこれまでより弱体化している。境界域君主から惑星知事まで、地域の政府は、雇用する傭兵を制限されることなく、出来るだけ市民を守る義務を背負わされている。小規模な地域の雇用所(特に充分な輸送力を欠いている雇用者候補のためのもの)が立ち上げられ、傭兵の雇用を促進している。恒星連邦伝統の巨大な複数連隊傭兵部隊ではなく小規模な部隊を雇っていることは、傭兵コミュニティが支払った聖戦の犠牲を表現している。有利な条件を提供する恒星連邦は、他の国よりも優れた傭兵を数多く雇用している。


カペラ大連邦国
 カペラ大連邦国は、聖戦中に取っていた傭兵に関する政策を変更しようとしている。恒星連邦が多数を雇っていることを考えると、これはサバイバルの問題である。カペラ人で構成される傭兵部隊を雇いたいと思っていることから雇用候補が大きく制限される一方で、彼らの外国人嫌いの気質は保たれている。これら「新生」にひきつけられた部隊はごく少数であることから、カペラは国境を強化するために嫌々ながらその他の有能な傭兵部隊を雇用した。これらの部隊のうち大半は共和国と元同盟国境沿いに配置されており、より危険な敵を撃退するためカペラ王家軍が恒星連邦国境に駐屯している。


元自由世界同盟
 元自由世界同盟は傭兵にとって恵みになっていると考えられるかもしれない。しかしながら、自由世界同盟の死によって生まれた数多の小国家は苦境に陥っている。各国のあいだのささいな嫉妬から、特定の国との契約を探すか締結した部隊は、他の国から冷遇されるかもしれない。同じく、元同盟と国境を接する国家のために働く傭兵は、それがライラであろうと、カペラであろうと、マリアであろうと、敵意によって迎えられることになる。従って、傭兵たちは元同盟で仕事を探すことのできる一方、特定のつながりのある国だけで仕事を探せるのは大きな幸運に恵まれていると言えるだろう。


辺境
 辺境は傭兵が仕事を探すのに、よい選択肢のひとつである。これまでのように、すべての辺境国家が横行する海賊行為を根絶したいと考えている。対海賊傭兵部隊の雇用はやむことがない。激しい競争により、辺境は死にものぐるいの中心領域国家と比較して、追加の補償を出すようになっている。これは限られた成功をもたらした。いくつかの有名な部隊が中心領域を離れ、(少なくとも一時的に)文明の外辺部までやってきた。一部は急成長している国々に惹かれ、一部はフロンティアへの魅力に惹かれたのである。

 タウラス連合は、恒星連邦との戦争中に傭兵を放置したことから、傭兵を得るのに最も苦労している。

 安定した経済を持ち、カペラと同盟し、産業が無傷のカノープスは、知られた雇用主であり、他の辺境国家よりも多くの傭兵を雇用している。

 土地を提供する政策のフロンク・リーチは、いま傭兵を雇っていないのだが、元傭兵の多くをフロンク・リーチ・センチネルスとして正規軍に転換したところである。

 仲裁的なやり方を取っているカルデロン保護領は、防衛契約と海賊狩りのためだけに雇用を行う。これは顕著に国家の防衛力を増加させ、カルデロン防衛軍が定数に達するチャンスを与えている。

 マラグロッタで海賊とのトラブル後にパラノイアに陥った結果として、フィルトヴェルト連合は国境の向こうにいる傭兵に連絡し、契約するのを好む。彼らは連合の世界に上陸する許可を与える前に、傭兵と交渉する恒常的なチームを確保している。寛大な契約により、恒星連邦からハーロック・ウォリアーズすら得ることが可能となり、新生国家にしては大手柄となった。

 マリア帝国は著名な傭兵を確保するのを困難としている。一部は文化的な傾向のためであり、傭兵の扱いが悪く、契約条件が悪いからでもある。傭兵の数を揃えられないだけでなく、質が悪くもあった。それでも、カエサルは数が独自の質を持つと考えている。マリア帝国の雇われ兵士たちは、攻勢作戦に使われており、大半が近隣国家、特に元自由世界同盟での偵察を行っている。

 辺境の小国家の大半は、財政的不安から傭兵雇用にほとんど成功していない。マイカ・マジョリティ、フランクリン領、リムコレクションのような国にいるのは中隊以下の規模の部隊だけである。他方、ランディスやニオプスのように、部外者でなく自軍に頼るのを好む国もある。


落ちぶれた傭兵たち
 契約を得られなかった傭兵にとって、海賊行為は誘いである。デス・コンソルト没落の余波でいまだ様々な規模の海賊団が生まれているが、小規模な傭兵団の数は少なくとも一桁増えている。小規模であることから、海賊を追い詰め、殲滅するのは難しい。これに注目したようで、海賊団同士がちょっとした協力をして活動するのが、最近の不穏な傾向である。同じ世界を同時に襲撃し、防衛部隊にどちらと戦い追跡するかを選ばせるのである。不幸にも、これら海賊団の活動範囲と襲撃能力は、現時点で筆舌に尽くせぬほど遠大である。トルトゥーガのようなよく知られた海賊の隠れ家が、活発に奴隷取引、闇取引を行っているといえば充分であろう。






準備状況

 聖戦が終わって以降、傭兵という職業は全体的によろめいているところである。アウトリーチに代わる雇用ホールは存在しないが、それに近いのがかつてその地位にあったガラテアで、傭兵評価・雇用委員会の生き残りのための中心地となっている。一般的に信じられていることと違って、MRBCは公式な団体として残り続け、王家、傭兵業界の構成員の多くからまだ敬意を払われている。アウトリーチが滅ぼされ、ウルフ竜機兵団がほぼ根絶されたことで、この組織は最も単純な契約仲介業務以上のことをまったくできないでいる。

 現在、国家・地域の主星は、政府代表との面会を求める傭兵の代理人で溢れている。このような無計画なやり方での成功例はほんの一部である。それも雇用主候補の需要によるものではなく個人的な過去のコネクションに助けられた場合だ。


傭兵ハブ
 小規模な雇用ホールは貧しく信頼の置けない傭兵を集める一方で、大きなホールには各国からの雇用主がいる。


ノースウィンド
 ノースウィンド・ハイランダーズが共和国装甲軍に加わると、すでに活気のなかったノースウィンドの雇用ホールは閉鎖された。ノースウィンドでの傭兵取引を支持する者たちは、RAFがガラテアのMRBCホールを受け入れていることをダブルスタンダードの証拠だとしているが、傭兵サービスの施設を閉じることを選んだのは、(共和国ではなく)ハイランダーズの長老たちなのである。ホールは主に元ハイランダーズ隊員と野心を持ったハイランダーたちが大きな傭兵市場にアクセスするためだけに存在し、ハイランダーズ自体が国家軍に変わったことから、ハイランダーズの指導者たちは、もうノースウィンドが「死につつある商売」などとも呼ばれるものにふさわしい場所ではないと宣言している。


ガラテア
 元傭兵たちの星であるガラテアは、移動可能な傭兵たちがここに来る目的地という地位を再開した。我々は傭兵全体を抹殺できなかったので、傭兵をある程度コントロール出来るのはベストと言えるだろう。忠実なRAF部隊がいることは、最底辺の傭兵たちをガラテアから遠ざけるものである。そのような者たちは他の世界で仕事を探すこととなり、共和国は汚れから守られるのだ。我々は諸外国がガラテアの元雇用センターを再開する許可し、契約を追跡するのが可能となった。必要な料金(共和国領土への入国料金よりもはるかに安い)の支払いを拒否したカペラだけが、雇用センターを持っていない。小さな辺境国家を除くすべての国家がガラテアに傭兵雇用のためオフィスを構えている。


フレッチャー
 ブレイク派が傭兵を追い出すのに成功したことを考えると、フレッチャーがいわゆるカオス境界域時代にあった地位を再開することはないだろう。それよりも、正統的な政府を再建し、民間のインフラを回復することが必要とされている。ガラテアかノースウィンドに向かう傭兵に対しては、HPGを通じてのメッセージが出され、共和国の他世界に近づかないよう警告される。我らの政策は確固としたものである……傭兵隊は歓迎されず、ガラテアを除いて我らの国境内では許容されないのだ。


ノイジエル
 ライラ共和国のノイジエルとソラリスVIIは両方とも聖戦から順調に回復したが、受けた傷はまったく違うものである。ノイジエルの被害は、ブレイク派と戦うために資産が犠牲になったというものである。ノイジエルのゲームはソラリスと深刻に対立することはなかったが、それにも関わらず地元の経済は見世物によってたっていた。経済が崩壊すると、民衆はホームレス、貧困、飢餓、海賊行為といった被害を受けた。

 戦後の3081年、10年ぶりにゲームが行われ、突如として経済回復が起きた。ゲームが再開すると共に、失業中の傭兵と、それに付随するギャンブル、売春産業が戻ってきた。経済は再び好況となったが、一般市民の生活水準は聖戦前まで戻っていない。


ソラリスVII
 ソラリスはさらに素早く回復した。その理由の大半は、反ブレイク感情が強く、共和国に近かったからである……傭兵は共和国宙域で歓迎されないことから、多くがソラリスに行かざるを得ないからだ。しかしながら、ゲームで栄光を求める傭兵が供給過剰となっていることは、人道主義にとってほとんど全宇宙的な災厄となっているのである。ゲームでの仕事がないときは、週替わりの暴君たちが外辺部の入植地を支配する。これにより、惑星を出なくても、このような芳しくない傭兵を追い詰める仕事が作られるのである。


アークロイヤル
 アークロイヤルはテンポの早い雇用ホールであり続けている。ケルハウンドとウルフ竜機兵団が雇用をほとんど断念し、数多くの大小傭兵部隊が存在するアークロイヤルは、もしかしたら運営中の雇用ホールで最も権威があるかもしれない。しかしながら、かつてのアウトリーチは全傭兵産業の中心地で、中心領域と辺境のすべてにサービスを行っていた一方、アークロイヤルは対象がきわめて制限されており、主にライラとアークロイヤルに近い傭兵に奉仕している。


ウェスターハンド
 傭兵に対する不信にもかかわらず、カペラ大連邦国はウェスターハンドの小規模な雇用ホールを再開するのが適当であると見た。聖戦中に閉鎖したのを再開したウェスターハンドは、国軍に吸収されるのをどうしても避けたいプロ兵士のための場所を作った。カペラ人は明白に、これら傭兵を多く採用して、国境の強化をしたいと望んでいる。CCAFの高官たちは、「偽りの共和国に支配された、カペラの世界の奪還」を支援する傭兵の雇用を望んでいると、公に発言している。

 カペラ専用雇用ホールとして、この世界はローテーションするCCAF駐屯部隊に強化されている。これらの部隊は、主君を持たない戦士たちの冒険主義を阻止するのとともに、大連邦国での仕事を探す者たちの質と評判を綿密に調査することを意味している。一部の報告を信じるとしたら、銃口を突きつけられてCCAFに入隊させられた志願者がいたという。


国営雇用所
 ドラコ連合は、聖戦が終わって以降、20年前よりも多くの傭兵を雇用している。彼らのガラテア事務所は、恒星連邦の次に往来が多い。しかしながら、ドラコ連合を選ばない者たちは、恒星連邦よりも多い。なぜなら、裏切りを避けるために連絡士官を組み入れるのを要求されるなど、連合の契約条項は厳しいからだ。過去、ドラコに雇われた傭兵たちは、即座に殺される危機にさらされていたが、現在は、たとえ制限が強くても、安定を得るチャンスを持っている。生まれつきの不信は、わずかに克服されたのみであり、いくつかの部隊は命令に従うのに失敗して、契約をキャンセルされ、装備の多くを没収された。傭兵の装備を盗みたくて雇っただけだと、多くが非難している。実際のところはそうではなく、雇われた傭兵たちは、契約条項をよく読まず、厳しい行動規範が必要とされることを見落としただけのようだ。基本的に、傭兵たちはDCMSの兵士と同じように任務成功のために必要なら、命を犠牲にすることを求められる。募集時に基準を落とすよりも、名誉ある誇り高き傭兵団を雇用しようとしているようだ(たとえそれが精査の価値を証明するだけであったとしても)。契約の多くは、海賊狩りや連合正規部隊になりすますというものである。本当の防衛に値するほど信頼されている部隊はほとんどなく、DCMSが到着するまで穴埋めに使われる。その他には、DCMSと戦う厳しい訓練任務がある。新兵たちが非DCMS的戦術を直に経験できるようにするためである。

 自由世界同盟の崩壊で、傭兵雇用の機会が多数生まれる結果となったが、契約に関わる両当事者の信頼性は疑わしいものである。経済が低迷している分離した国家群は、しばしば支払いする手段を持たず、安定した通貨すら存在しない。これによって海賊行為が増える傾向がある……この中には支払いを受けられず困った傭兵が含まれているのだ。各国の主星をのぞいて、元同盟宙域に真の雇用ホールは存在しない。

 契約数と報酬額の両方で最高の傭兵雇用主と長らく考えられてきた恒星連邦は、傭兵の最終到着地点であり続けている。兵士を確保するために、恒星連邦はいくつかの雇用所を作った。最初の建設地点は、辺境境界域の主星、ジューンである。これは、常軌を逸したタウラス人と、タウラス領域に根付いた多数の海賊部隊(TDFがAFFSにやられたため)に対する防衛のためだった。他の境界域君主たちも、自らの雇用所と高額の契約を宣伝することで、辺境境界域のマルサン公爵に続いた。ニューアヴァロンをのぞいて、すべての境界域、地方主星が、このような雇用所を設立している。

 ヘロタイタスでの雇用が終わったわけではないのだが、ここに来る傭兵たちが国家に所属しない世界を通過していることは、非合法の証拠になるだろう。タウラスの軍事政権が恒星連邦との戦争で傭兵を低く扱って以降、タウラスとの雇用を考えるのは、傭兵業界の最底辺だけとなっている。信頼のおける傭兵が、彼らとの契約を得ることはほとんどない。フロンクリーチ、フィルトヴェルト連合、カノープス統一政体、マリア帝国、カルデロン保護領のすべてがヘロタイタスに雇用事務所を作っている。だが、リーチはかなりの量のマーシャルを配備して自らを守っている。地元のボスたちは傭兵のブラックマーケットによって、法と秩序が侵害されるかもしれないことを恐れているのだ。






傭兵の現在

 聖戦を生き延びた傭兵団は、戦力を回復するという大きな前進を果たした。これは壊滅した部隊から雇用を行うことによって達成された。ほとんどの傭兵団は小規模なまま契約を探したが、かなりが戦力を結集させ、他の部隊と統合した。他の部隊の吸収は、ケルハウンド(すさまじい損失でほぼその存在が終わっていた)のような有名な傭兵部隊でよく発生した。以下は、中心領域、辺境の各国が雇用している有名な部類に入る傭兵団である。MRBCが加入傭兵のすべてを追跡することすら難しいので、このリストはそもそも完成されることを意図されていない。



ライラ共和国

 商業といまだ強力な経済を持つライラ人は、元自由世界同盟国境の不安定さと、攻撃的なドラコ連合、複数の氏族の脅威に対処せねばならない。彼らは、最も有名な傭兵の一部を雇用しているが、それらの部隊は聖戦時に崩壊した。他の国家と同じように、ガラテアと固有の世界を使って傭兵を雇用している。

 ケルハウンドは再生を始めたところだが、戦力は聖戦前のほんの一部である。3083年にモーガン・ケルが死んだ(睡眠中の自然死。50年前にザニアを離れてから犠牲にしてきた平和をようやく手に入れただろう)のに伴い、彼の爵位と指揮権は娘に渡った。ケイトリン・ケル大佐の指揮下で4年かけて、ケルハウンドはバトルメック1個中隊強分のスクラップから、2個大隊以上への再建がなされた。他の傭兵隊を吸収することで、その大半はなされた……この中で最も重要なのは、グレイヴ・ウォーカーズとの合併である。グレイヴ・ウォーカーズは第2大隊の主柱となり、その名をつけられた。アークロイヤル市民から大規模に徴募したことで、予備となるかなりの訓練生が集まった。補充用のバトルメックが限られていることから、徴募は通常戦力、バトルスーツの再建に重きを置いている。ケル大佐は、職務を放棄することなく、二歳の双子の息子と共にハウンドの練兵場で訓練を視察している姿がよく目撃されている……これはケルの伝統が次世代に受け継がれるのを補償するものだろう。

 ディオスクーリは、モルゲスでの災厄後、回復への道を重い足取りで歩み続けているところだ。ブレンダ・ネルス大佐は、モルゲスからの死にものぐるいの脱出時に兄を失ったあとで、炎の一部を再燃させた。ジェイドファルコン・デルタ銀河隊から逃げるのを嫌がったことで、資金、補給、評判という褒賞を得た彼らは、1個中隊分のライラ製戦車を追加した。歩兵部隊、ブラザーフッドは移動する前にローナムとアトコンガの民衆から多数の志願兵を得たが、2個大隊以外は新兵である。補充用のバトルメックとメック戦士が欠けていることから、ネルス大佐は古参兵を中核に諸兵科連合部隊を作るのを余儀なくされている。元自由世界同盟国境の弱小な敵に面した彼らは、氏族国境を離れて以来、士気を少なくとも一部は回復させている。



ドラコ連合

 ドラコ連合の傭兵雇用は小規模ながら復活したのだが、ここで触れる価値のある部隊はごく少ない。ドラコ人は惑星上に傭兵がいることに以前よりオープンになった一方で、その選考方法によって交渉段階から多くの部隊が排除されるという現実があるのだ。その中で及第に達しているのが、クレーターコブラである。彼らは聖戦前と聖戦中、連合に仕えた。よって、新しい習慣が始まる前に、すでに信頼を確立していたと考えられる。複数連隊のまま聖戦を終えた数少ない大規模部隊のひとつとして、コブラは大統領自身にアピールすることで補給問題を大規模に克服してきた。

 マクファーデン・スカイライダーズは、聖戦が段階的に縮小するなか、ゲイルダン軍事管区内の企業、産業地点を守るために契約を行った。名目上はオーシカ管区の防衛を任された彼らは、2個航空大隊の戦力を最大にまで再建した。これら2個航空大隊が一緒に展開されることは珍しいが、両大隊ともに、最高司令部の決定でフン・ホー、トグラ、アゲマツ、ミッドウェーのあいだをランダムにローテーションしている。出発時間、移動先をほとんど知らせることなく持ち場を変えるのは、作戦のセキュリティを保つことになる。管区内の各造船所を守る間、彼らはコンスタントに航空哨戒を提供する。ミッドウェイに駐留していた際、スカイライダーズは航空宇宙学校の教官役も果たし、宇宙と大気圏内の両方でドッグファイトを行い、技術を磨くため候補生たちと共に修理ステーションを縫って飛んだ。



恒星連邦

 実質的に墓場から戻ってきたケンタウリ第21槍機兵隊は、聖戦の終結時に足を引きずりながら恒星連邦に入った。かつての残骸に過ぎない槍機兵隊だが、誇り高き伝統を維持している。レモンズ大佐の指揮下で、ぼろぼろのメック5個小隊が横並びで降下船から出て、ロビンソンの宇宙港のフェロクリートの上に結集するというシーンがあった。指揮官のレモンズ大佐はグラスホッパーのハッチから出て、ロビンソン公爵の代理人に歩み寄った。日が出ているうちに、契約が結ばれ、部隊を回復させるために、食料、医療、技術支援が提供された。槍機兵隊は刷新されたAFFSと働くために、戦闘訓練を実施中である。彼らの活動区域は、主にラマンからベネットIIIなどの国境世界である。

 ハンセン荒くれ機兵団は、間違いなく聖戦で最も悪名高い非ブレイク派傭兵である。タウラス軍、民間に対する彼らの行動は、かろうじて正当化できるだけのものだ。それにも関わらず、鼻っ柱の強いウォルフガング・ハンセンによるタウラス連合後方地域浸透は、タウラスの前身を止めた。各世界でいくつかの工場を完全に破壊するか損害を与えた後、荒くれ機兵団はTCS〈ヴェンデッタ〉の破滅的な追撃を交わし、タウラスの目を侵攻から反らし続けたのだった。地球侵攻に参加した荒くれ機兵団は、テキサスで核攻撃に晒され、消滅しかけた。わずかな生き残りの中にはハンセン大佐、その人がいた。おそらく、家族を殺したタウラス人への終わらない憎しみが彼を生かしたのだろう。現在、荒くれ機兵団はカーマックと隣の世界を守る部隊の一つとなっている。彼らの強化メック中隊は、白髪交じりの古参兵で構成されており、そのうち多数が大佐と同じような心情を抱えている。



カペラ大連邦国

 カペラは聖戦中のリーサル・インジェクションの戦果に喜んでいる。カノープス人への譲歩として、カペラ人は珍しくリーサル・インジェクションとの5年契約を結んだ。カペラの新型バトルメックを使うリーサル・インジェクションは、ヴィクトリアへの逆襲で共和国知事警護隊に同行した。現在、ひどい損害からの回復を図る一方で、オニール大佐は部隊の共同オーナーであるドサマーズヴィル伯爵と連絡を取り続けている。ドサマーズヴィル伯爵の説得を受けて、カノープス長官は、リーサル・インジェクションの損失を穴埋めするためにデトロイトで生産されたバトルメック数機を与えた。リーサル・インジェクションはヴィクトリアに駐留し続けており、回復したオニール大佐が再び指揮をとっている。



(元)自由世界同盟

 多数の分裂した国家を持つ同盟は、継承権戦争の縮図である。大慌てで行われた傭兵雇用の多くが、国境地帯に主眼を置いたものだった。ライラとカペラによる侵略の恐怖が、財政的懸念を超えたのである。この地域の傭兵部隊の大半が、中隊規模の小部隊である。彼らは、独立した世界を歩き回り、海賊の攻撃と小国家の日和見主義的襲撃をはねのけている。こうして多くの世界が自由で平和となっている。

 コンパス座のワードが倒れた後、地元を拠点にするカマチョ機士団が、崩壊したコンパス座連邦の襲撃者から元同盟のアンチスピンワード世界を守っている。ここ9ヶ月のあいだ、カマチョ機士団が二週間以上ひとつの世界にいることはなかった……なぜなら、休むことなく地元海賊や反逆傭兵による国境襲撃に対応しているからだ。タマリンド=アビーのフォトン・ブレット=マーリック元帥は、彼らを永久的に雇用するため、高額の長期契約を持ちかけた。ガヴィラン・カマチョ大佐は、これを真剣に検討しているという。



タウラス連合

 ゴードン装甲機兵団はタウラスによく扱われていた傭兵のひとつであった。タウラスの侵攻で装甲機兵団が最前線に立ったのは、ここに多くがあるだろう。ロタール征服を諦めるのを嫌がったことは、彼らの気概を示したが、転落の原因になったかもしれない。聖戦前の15%の戦力にまで落ち込んだ機兵団は、ミスロンに退却して以来、タウラス連合からほとんど無視されている。タウラス連合が再建に集中するあいだ、工業も同じくらい崩壊していたことから、傭兵はタウラスに多くを与えたにもかかわらず、引き替えになにも受け取ることがなかったのである。彼らはヘロタイタスに向かうことを計画しているという。彼らが侵攻に参加したことは、目の利かない雇用主たちに見逃されてしまうかもしれない。

 カペラ大連邦国の守備兵として何年ものあいだ惨めに暮らしたあとで、グリーンマシーンの下降スパイラルは、彼らの戦闘能力と評判を侵食した。グリーン大佐と部下たちは、3080年に驚くべき低報酬の契約を受け入れたあと、酒で自らを慰めた。酒に酔ったオスカー・ギャンブル中尉が、カペラ首相を大声でおとしめ、スフィア共和国を持ち上げると、マスキロフカの代表が問題を「話し合う」ために派遣された。グリーン大佐はギャンブル中尉の引き渡しを拒否し、勃発した戦いによってこのマスキロフカは死亡した。宇宙港まで押し通って、輸送船を徴発することを余儀なくされたグリーンマシーンは、補給物資の多くを置き去りにしていくこととなった。それでも、彼らは隊員の大半とともに脱出し、カペラ宙域から逃げ出すのに成功したのである。それから1年近くあとに、彼らはヘロタイタスに姿を現し、そこで8ヶ月仕事を探していた。同じくらい死にものぐるいのタウラスが役立たずのグリーンマシーンを雇い、駐屯任務につけた。現在は、ディカルスのボウイ工業の工場を守っている。



カノープス統一政体

 ラミリー襲撃隊は、統一政体に対する献身の報酬に飛びつき続けている。彼らが第41師団に自殺同然の降下を行ったことは、ハジ・ドルが脱出し、抵抗を指揮し続けるのに貢献した。熟練した兵士の補充は、中心領域より辺境のほうが難しいのだが、襲撃隊は再建のために特別な分配を受け取った。カノープスの工場で生産された新しい先進装備と、来年作られるエマ・セントレラ軍事学校からの卒業生である。襲撃隊はカノープスIV防衛の一端を任されているが、戦力が減少していることから、第1カノープス胸甲機兵隊と再建されたレイヴンサー・アイアンハンドのおまけに過ぎないものとなっている。

 ハーコート・デストラクターズもまた、ブレイク派と戦う統一政体を支援するためにフロンクリーチを放棄した後、カノープスに残っている。彼らの功績は襲撃隊ほど宣伝されていないが、デストラクターズはシャドウ師団の執拗な襲撃を撃退する助けになったのだった。



マリア帝国

 イリュリア州の反乱セルを半ダース根絶した後、ドラゴンスレイヤーズはロシア州に降下させられた。モリツリ大隊がウァレリウスを去ると、ドラゴンスレイヤーズの隊員たちは待ち伏せ、誘拐、暗殺の被害者となった。熟練したパイロットたちが驚くべき早さで消えていくと、彼らは一連の報復襲撃を行って反乱軍数十人を殺した。翌日、5名の誘拐されたメック戦士の首が袋に入れられて基地の外で発見された。その結果、「報復の日」によって、ドラゴンスレイヤーズは郊外全体を廃墟とした。おそらくロシア独立の最後の一撃として、第5軍団が反乱市民に加わって、ロザリオから帝国軍を追い出そうとした。ドラゴンスレイヤーズはロシア州に残った数少ない抵抗勢力のひとつである。その理由は主に、彼らの残虐な攻撃が、ウァレリウスの反乱セルを実際に殺していることにあるだろう。



カルデロン保護領

 保護領の主な障害は、中心領域から遠いことである。傭兵たちは、雇用の開始日が始まる前に移動の時間がかかる任務を受けたがらない。これは、流れを完全に止めるものではないが、遅くするものである。現時点において、小隊規模の傭兵と多数契約中であるが、傭兵の中で悪評を獲得していた部隊ではない。実際のところ、その大半が王家軍や傭兵部隊の脱走兵から作られた新部隊である。



フィルトヴェルト連合

 ハーロック・ウォリアーズは聖戦の最中に大きな損害を出した(特に3071年後半の第10ゴーストによるロビンソン襲撃で)。指揮を受け継いだケネス・ペトルッツェッリ少佐は、ガラテアかアークロイヤルへの安全な移動手段を確保出来なかった。よってヘロタイタス行きの船が手配された。彼らはこの独立世界で兵士の募集をせず、部隊の金庫を埋めるため緊急の契約を探し、部隊をまとめ続けた。彼らの4個中隊はマルサン少将の呼びかけに応じ、デス・コンソルトを抑えるためアデルソンの前哨部隊の一部を形成した。彼らは外辺部での生活に魅せられ、トレンぺルー侯爵からの気前いい契約を大歓迎した。彼らはブロークン・ホイールに駐屯しており、クイックセル工場の防衛を任され、近くの世界から助けがあったら飛んでいく緊急即応部隊として仕えている。



フロンクリーチ

 マーシャルたちは候補となってる傭兵たちの面接過程で非常に慎重な選択を行う。過去に無法者的な兆候があったり、不審な態度をとった志願者は、ことごとく失格となる。ここに上告は存在しない。彼らの契約条件は非常に有利なものである一方、小部隊以外は仕事に就くことができない。理由はふたつある。第一にマーシャルたちが彼らを監視するのが容易なこと。第二に、柔軟で反応の早い防衛戦略をとれるからだ。
















スフィア共和国






共和国装甲軍(RAF)





民間部門情報部

 ほとんどの元ROM工作員がDMI(軍事情報省)に行き着いたが、相当数が民間部門での情報ゲームを行うことを選び、情報総局(Intelligence Secretariat)に加わった。この閣僚級の部門はマルセル・ウェブの領域である。彼は聖戦中にストーンとの関係を密なものとし、その極秘作戦の経験から総統の主席情報顧問の地位についている。情報総局にはふたつの主だった部門がある……スフィア情報部(SIS)と保安理事会である。

 SISはデータ分析、スパイ活動、防諜活動を専門とする組織である。ジュネーブの本部から、ガーレン・コックス長官が中心領域中の活動を統制している。この部門の高官の多くはSLIC(星間連盟情報部)出身であり、聖戦中、故カラドック・トレヴェナの危機対応チームに参加していた。

 保安理事会は、警察/准軍事部隊とスパイ活動の両方の役割を果たし、共和国内外で対テロの調査と取り締まりを行う。スターシード傭兵部隊を中心に作られて以来、バイロン・モンタギュー長官はこの部門を共和国の敵に対して投入できる巧妙で効果的な部隊へと進化させた。情報総局の2部門のうち、保安理事会はSISよりも元ROM工作員が多く、ブレイクズ・レイスの生き残った隊員のほぼ全員が含まれている。ブレイクズ・レイスは、ほぼ全滅した星間連盟フューリー分隊群と共に、プラエスティテス、情報総局のエリート極秘作戦チームに組み込まれた。

 両下位部門は委任統治の一部として、宙域レベルの部局で運営される。SISは10個の宙域情報部を維持し、地域レベルで情報収集し、君主政務官と共和国内のすべての惑星の各局で顧問として活動する。対称的に、情報総局は各主星にオフィスを持つのみで、ここで宙域保安部が作戦地域内の関連した活動すべてを監督する。




ハスタティ・センチネルス HASTATI SENTINELS

 初期の共和国には多数のアウクシリア連隊群が存在し、これらの部隊は元自由世界同盟国家、カペラとの戦闘を行った。後者の紛争において、アウクシリアは徐々に今日ある正規連隊に変わっていき、ハスタティ・センチネルスが始まった。82年後半のバーラト、ウッドストック、テラファーマの戦いの後、最初の6個連隊が創設され、チコノフにおいて初陣を飾った……ハスタティ・センチネルス、ストーン旅団は武家5個部隊とぶつかり、惑星から追い出すのに成功したのである。最初にこのような大きな成功を得たハスタティは、共和国の逆襲において強い背骨であり続けた。

 ハスタティはRAFのエリート部隊である。繰り返し、戦場で自らを証明し、その結果、補充として最高の装備と人員を受け取った。ハスタティの編成は、1個バトルメック連隊と、支援する2個装甲連隊、3個歩兵連隊、砲兵、気圏戦闘機中隊群である。だが、ほとんどの共和国部隊のように、彼らは諸兵科連合作戦の訓練を積んでいる。各連隊から集めた小規模な部隊――小隊、分隊さえもある――が協調して活動するのはよくあることである。各ハスタティ部隊が本拠地の宙域に配備されるが、最高司令部はハスタティの大半に機動性を持たせるようにしており、必要に応じて紛争地帯に移動させる。

 第1、第6共和国アウクシリアから作られた第1ハスタティは、ナンキンで成功を続け、その後の3084年後半、リャオを奪還するタスクフォースに加わった。戦後、第1ハスタティはアルナイルに駐屯し、その間、再建を行った。最近、アヴリル・タナー准将が肝臓癌と診断された後、コナー・ソーテック(元第1ダヴィオン近衛隊)が指揮官に就任した。

 第2ハスタティは、終戦時にウェイで第4タウ・ケチ・レンジャー部隊を破った後、そこにとどまり続けている。ハリス・ハーヴィソン准将は今年いっぱいで引退するとの発表を行っている。

 チコノフ戦後、第13、15アウクシリアから再建した第3ハスタティは、ハロランVとパロスで実戦に参加した。以来、パロスにとどまっている彼らは、海賊(サハリンを根城に活動しており、カペラの関与が疑われる)による一連の襲撃を撃退した。

 クレイグ・キンバーリン准将は、チコノフ、アルゴル、パロス戦により、自身と第4ハスタティの価値を証明し、次の特使候補だと噂されている。一方、第4ハスタティは数週間前アスンシオンに腰を落ち着けたばかりである。

 カイ・アラード=リャオが、第5宙域の君主政務官に選ばれたときでさえも、惑星リャオは高い緊張に包まれており、第5ハスタティの兵士たちは警戒態勢にある。状況が落ちつくまで、ケルヴィン・アトウォーター准将は、外出と特権を制限している。チューリッヒとハロランVでひどい損害を受けて以来、6ヶ月かけて再建した第6ハスタティは、スチュアートに移動し、調達・補充部に優先順位を下げられている。

 RAFがチコノフを奪還したことで、4個のハスタティ部隊が作られた。第11、16、25アウクシリアから作られた第7ハスタティもその一部である。3083年後半、アズハでアンバーマール・ハイランダーズを撃破した後、彼らはハロランVで交戦を行い、再建のためイリアンに退いた。

 カペラからニューカントンを取り戻す先陣として、第8ハスタティは戦役が終了するまで立て続けに3名の指揮官を失った。ブリジット・オハンロン准将は、ガン=シンでそれを覆した。第8ハスタティは大打撃を受けたもののハスタティ旅団で最も有効な部隊の一つとなっている。残念ながら、少ないもので多くをなすという彼らの能力によって、再建リストで低い位置に置かれることとなり、旅団内で最低の戦力となっている。

 最近、ウィリアム・マクラウドの後釜として第9ハスタティの指揮を受け継ぎ、スカイアに駐屯しているチャスティティー・マルヴェイニーは、部隊の生まれたばかりの伝統に彼女自身のスコットランド系の遺産を注ぎ込みはじめ、第9ハスタティ内にいる元ゴーストベアの隊員たちを困惑させている。

 第10ハスタティの兵士の大半は、ハイランダーとウルフ氏族から来ており、これは興味深い組み合わせとなっている。元オリエント人の指揮下にある第10は、現在、カペラ国境沿いに配置され、この地域の共和国防衛戦線の主軸である最強の正規連隊群となっている。



プリンキペス・ガード PRINCIPES GUARDS

 カペラとの戦争が続き、傷ついた部隊が回復のため退却してくるに連れ、RAFの最高司令部はこれらのハスタティ、アウクシリア連隊群を使って、新しい旅団を作ることにした。この部隊は、2年間にわたって戦闘のただ中にいた兵士たちの受け皿となるものである。ローマ共和国初期の重歩兵から名前をとった、プリンキペス・ガードの第1連隊は3084年半ば実戦に投入され、すぐに残りの9個連隊が加わった。全10個連隊は、戦争をほぼ終わらせた84年後半の大攻勢で強い役割を果たした。

 ハスタティが共和国のハンマーとなるのを意図しているのに対し、プリンキペスは金床になるべく作られた。ハスタティ部隊に比べて、配備しているバトルメックは少ない(2個大隊のみ)一方で、装甲歩兵連隊は同じ数を確保している。プリンキペス連隊群はカペラ紛争が終わってからも流動的であり、全連隊が恒久的な配置についているわけではない。プリンキペスの背後にある意図は、本拠地の人々の近くで暮らし、地元コミュニティと緊密な関係を結び、彼らの責務を信用してもらうことである。

 第1プリンキペスは、第2、第9、第10プリンキペスと共に、3084年後半のガン=シン戦役に参加するために作られた。戦争が終わってから、彼らはディーロンに残り続けているが、トゥルン大佐はこれが一時的な駐屯であり、恒久的な本拠地が割れ当てられることを保証している。

 ガン=シンでの交戦中、第2プリンキペスの第223歩兵連隊は、バヤナ市外の渓谷で部隊の主力から切り離されてしまった。ガン=シンがカペラから解放されると、第223歩兵連隊の壊滅は共和国軍のかけ声となった。現在、プロセルピナに駐屯しているエディオス・ウバリト大佐は、第223の犠牲になんらかの名誉を与えると決断している。

 第3プリンキペスの最初の実戦は、ニンポーで第4大連邦国防衛軍の一部を相手にしたもので、ほとんど損害を出さず勝利を達成するのに成功した。これは戦力充足のために多くを必要としていないということを意味しており、現在、チコノフに強力な防衛を提供している。

 第4連隊のオリ・デルポータス大佐は、今のところRAFの正規連隊で唯一の氏族人指揮官であるが、プレイオネでの戦闘中のリーダーシップと戦術的成功は、彼の下についている部下の懸念をすべて払拭した。

 第5ハスタティと第7アウクシリアの一部から作られた第5プリンキペスは、プレイオネで第6プリンキペスと共に戦い、ヒリツ家を負かしたが、両部隊ともひどい損害を受けた。数ヶ月におよぶ軽い任務と休息で若干回復したが、第5プリンキペスは大きく戦力が不足したままである。

 第6連隊は第5よりもわずかによい状態にあるが、事実上冷戦状態にある国境ではなく宙域主星に駐屯していることの利益を得ている。

 第7連隊は3084年に稼働した直後にアルゴットで第5大連邦国防衛軍と対面し、素早くカペラ軍を惑星から追い出すのに成功した。彼らはカーリダーサに恒久的な配置をされたが、地元商人とのあいだでちょっとした緊張を引き起こしている……モリス大佐はそれが大きな問題になる前に関係を修復しようとしている。

 第8プリンキペスは最初に現役となったの連隊なのだが、旅団の他連隊とほぼ同時に実戦に参加し、3084年後半、ニューアラゴンから第5大連邦国防衛軍を追い出した。それ以来、彼らはガクルックスに配置され、移民令によって移民してきた者たちとの関係を築こうとし始めている。

 ガン=シンで、第9連隊は指揮官を失い、一時的に第10プリンキペス指揮官の下に入った。現在、ジョーディ・カバノフ大佐が指揮権を与えられており、部隊を最大戦力に戻すため、彼女は調達補充部に対する積極的な運動を開始している。

 共和国の主星に駐屯するのにふさわしく、現在、第10連隊は旅団で最も強い部隊となっている。第10のバトルメックはジュネーブに訪れる外国の要人の儀仗隊役となっている。

 "Anima et Mens Concordantur"――「心と精神の結合」がプリンキペス・ガードのモットーであり、コミュニティの一部として統合するという欲求と、部隊内で互いに生まれ始めた仲間意識を表現している。



トライアリ・プロテクターズ TRIARII PROTECTORS

 RAF正規連隊で最も新しい部隊であるトライアリは、総帥の司令部によって作られたばかりであり、大半がまだ半分の戦力である。既存の兵士を新しい組織に入れたハスタティ、プリンキペスと違って、トライアリは共和国による最初の正規旅団として一から作られたのである。他の旅団が、エリートの戦闘力やコミュニティとの深いつながりによってたっているところ、トライアリ新連隊群は、共和国の多様性と、人類が一つになったときの力を体現し、世に知らしめるのである。彼らのモットーである"Vis per Varietate(多様性による力)"は、単なるレトリックではないのだ。プロテクターズはすべての人種、皮膚の色、国籍、民族、宗教的背景、生まれ故郷を持つ新兵を受け入れている。その全員が、デヴリン・ストーンの夢に対する情熱的な信念を求められる。

 基本的に、装飾的な駐屯部隊(パレード部隊としての役割も果たす)であることを意図しているトライアリは、他の2個旅団よりも非バトルメック的であることに重きを置いている。彼らは1個メック大隊を配備するのみだが、それを補填するために、3個目の装甲連隊を追加している(ハスタティとプリンキペスは2個のみである)。他の旅団と同じように、メックと装甲に加えて、3個歩兵連隊と気圏戦闘機、間接砲支援大隊群を持つ。

 第1トライアリは、10個連隊のうち最後に活動を始めた部隊で、三週間前に現役となったばかりである。モリーナ大佐は、第9トライアリの指揮官に六ヶ月のシミュレーション戦闘の挑戦を行った。友好的でない競争が両部隊になんらかの良い効果をもたらすことを望んでいるのである。

 第II宙域の新兵募集担当者は驚いた……シタラで大勢のノヴァキャット下層階級が入隊に興味を示したからだ。聖騎士デヴァリスの助けを借りて、連絡事務所はこの奇妙な試み(少なくとも氏族の基準では)を進めるための神判プログラムを用意した。これまでのところ、第2トライアリは旅団内の他部隊よりも多くの氏族兵士を持っている。

 オザワは人口が少ないので、RAFはムロラン大陸の広大な敷地に訓練、試験場を作った。現在、第3トライアリは、建設中の施設群に基地を構えている。

 有名なAFFS将軍の息子である、アンドリュー・テレッキー四世は、バトルメックを平和のために使うという父の約束を受け継いだ。彼の第4トライアリは、損害を受けたリオの経済と生態系の復旧を支援しすでに名前を挙げている。

 本拠地宙域にいない唯一の部隊である、第5トライアリは、旅団で最も強い部隊のひとつであり、エプシロン・エリダニで少なくとももう六ヶ月続くことになっている長期の訓練を行っている。

 現在、第6トライアリは、ベルナルド統合に反対し駐屯するRAF軍と対立するグループいくつかからメディアを使った攻撃を受けている。これまでのところ、暴力的な事態には発展していないが、ミッチェルトレナ大佐は火花が散るまで時間の問題だと考えている。

 聖騎士ルーセ=マーリックは数週間前にコンノートで目撃されている。目撃地点は特に3081年、第40マーリック市民軍が撃破された場所の周囲であった。ドアン大佐の第9トライアリ・メック大隊は、アローヘッドの街の近くに駐屯しており、特使キーフは何度もそこを訪問している。彼らの目的は不明だが、民間人はトライアリの歩兵によって遠ざけられている。

 デネボラの僻地にブレイク派の生き残りがいるとの報告を受け、根絶するため最高司令部は第8トライアリを駐屯させた。

 レオン・シュタイナー=ジブラー大佐は、ケイトリン・モリーナ大佐の挑戦を受け、この友好的な競争に勝つ決意をした。しかし、部下たちは、彼が兵士を激しくしごき過ぎていることから、指揮の問題が出ていることに気づき始めている。

 第1トライアリよりちょうど一ヶ月早く作られた第10は、まだ戦力の半数も満たしていない。旅団内の他部隊と違って、第10には新兵たちよりも、引退せずRAFに入隊した年かさの兵士が大勢いる。



ストーン旅団 STONE’S BRIGADE

 ストーン旅団は共和国軍のまさに中核である。これら4個連隊のそれぞれは共和国の最も狂信的な守護者であり、デヴリン・ストーンとの個人的なつながりに大きな価値を感じている。RAFの部隊指揮官の中には、ストーン旅団が優れた装備を受け取り(調達補充部の最優先)、毎年養成校の最優等生を受け入れていることに不平を述べる者たちがいるが、旅団は享受している特権以上のものを得ている。

 ストーン・ラメントはデヴリン・ストーンが3071年にキタリーの収容所から逃げ出した際に作った最初の部隊であり、戦時中は護衛としての役割を果たした。その一方で、ワード・オブ・ブレイクに対する最も危険な任務もいくつか引き受けた。

 ラメントの隊員たちは、RAFの兵士たちの中でも神秘的なオーラのようなものをまとっている。最近終わったカペラとの戦争のあいだ、ラメントはまず戦場にいるベル・リーの指揮部隊となった。リーが地球に移動し、大将に昇進すると、ラメントはチコノフ奪還のために解き放たれ、守るイマーラ家、イジョーリ家に対し残酷なほど効果的に戦った。それから1年弱、旅団はリャオ解放の大規模な作戦で先陣に立った。ラメントはツークでダイ=ダ=チ家とツァン・シャオ家に決定的な敗北を与えて戦争を終え、回復のため地球に後退した。聖戦後の伝統により、ラメントの指揮官は准将の階級を与えられ、他の旅団連隊指揮官よりも先任となっている。

 SCOUR作戦のあいだ、ブレイク派の収容所から解放された戦士たちで作られたリベレーターズは、アンドリュー・レッドバーン将軍の着想で作られ、指揮された。彼らが受けた試練に敬意を払って、リベレーターズは地球に上陸する先陣の名誉を与えられ、地上での戦いのいくつかに尽力を尽くした。勝利の直後にレッドバーンが死亡したことは悲しみをもたらしたのだが、以降、リベレーターズはRAF連隊の中核のひとつとなり、ラメントの次に兵士たちから尊敬を集めているのである。4年前、リベレーターズは自由世界との戦闘で重要な役割を果たし、カペラとの紛争でも同じく前線に立って、チコノフ、リャオ確保など成功した作戦に関わった。彼らは当面の間、第V宙域に残り、チコノフ条約を受け入れたくないカペラ兵の攻勢を警戒している。

 レヴナントは長期にわたるSCOUR戦役のさいにストーンが作ったもうひとつの部隊である。崩壊した合同軍部隊の生存者から作られたレヴナントは、兵士たちの幅広い経験と自部隊を失っても戦いたいという意欲を利用するため、ひとつの部隊としてまとめられたのである。地球解放後、地球に駐屯した彼らは、カペラとの交戦中、カペラ方面に素早く展開され、リベレーターズと共にハマル、スローカムで交戦を行い、それからチコノフ戦役のタスクフォースに追加された。その後、彼らはアカマーで実戦に参加し、惑星リャオの都市、ハッサン確保に貢献した。紛争終了間際に、サイツァンで第3、第5マッカロン装甲機兵団を破って以来、レヴナントは第VII宙域の君主政務官ポール・デフランシスの要求を受けて、アウグスティヌスに移動した。

 ストーン旅団の連隊群で最も新しいストーン・プライドは、カペラ大連邦国との休戦のちょうど数ヶ月前に結成された。現在、プライドは地球におり、足りない人員を埋め、部隊を完成させているあいだ、ほぼパレード部隊と総帥の儀仗兵としての役割を果たしている。75%の戦力に達したら、旗幟を鮮明にするためコアワード地方に配属されることが予期されている。



独立部隊 INDEPENDENT UNITS

 大王家が新生共和国に贈った部隊のうち、大多数が分割され、RAFの正規連隊を作るのに使われた一方、すべての部隊が同じ運命をたどったわけではなかった。たとえば、崩壊したデネブ軽機兵隊連隊群は、デネブ・カイトスと周辺世界の惑星市民軍に改変された。過去4年間で異なる運命をたどったふたつの部隊がある……ノースウィンド・ハイランダーズと第9〈光の剣〉である。

 本拠地で聖戦の大半から切り離されて過ごしたノースウィンド・ハイランダーズは、合同軍に自分たちを証明するのを熱望し、喜んでワード・オブ・ブレイクとの戦いに加わった。SCOURの際にドラコ連合方面攻勢の一部となり、地球でシドニー戦役に参加したハイランダーズは、激しく、よく戦い、仲間からの敬意を勝ち取り、アンドレア・スターリング大佐は聖騎士のひとりに選ばれたほどだった。戦後、彼らはデヴリン・ストーンの新国家に加わるというチャンスに飛びつき、ハイランダーズ諸連隊をRAFの正式な一員にする許可さえ出し、寄せ集めによる正規連隊誕生の一部となった。ストーンとの交渉により、その歴史に敬意を払って1個連隊がそのまま残され、残りの連隊はRAF兵站家の禄を食むことになった。残された唯一のハイランダー連隊、第1カーニーが伝説的な傭兵の何世紀にもわたる伝統を続けているが、ノースウィンドにRAFの主要軍事アカデミーが作られ、ノースウィンド出身の教員が多数いることから、たとえ連隊群はなくなってしまっても、ハイランダーの精神は共和国装甲軍の中で生き続けていくことだろう。

 5個ハイランダー連隊のうち4個が、黄金の夜明け作戦で大きな役割を果たし、すべての攻撃波と数多くの惑星で実戦を行った。3081年、カペラが共和国の領土に侵攻したことは、共和国アウクシリアが作られるきっかけとなり、第2カーニー連隊、スターリング機兵連隊、マクロード連隊、ノースウィンド軽機兵連隊、第1カーニー連隊のうち1個大隊が、これらの部隊に組み込まれた。第1カーニーの残りは、ノースウィンドに残って養成校と損害を負って後退したRAF部隊を守っている。3078年の地球で傷つき、第3アウクシリアに1個大隊を提供したことで、第1カーニー連隊の再建は難しいものとなり、は完全な連隊規模に達するまで数年かかることが予期されている。

 第9〈光の剣〉は聖戦の後半に作られたのだが、批判と共に生まれたのである。彼らは第2〈光の剣〉の中で、ドラゴンへの反乱を拒絶した者たちを中心に作られたのだが、裏切り者たちと一緒にいたこと自体が汚名になってしまったのだ。次の数年間、彼らはクリタ大統領に仕えたのだが、汚名をそそぐことができず、DCMSとISFからよりいっそう疑われることになった。彼らは部隊を形作る装備と人員すら与えられず、非番の時は事実上の自宅軟禁状態に置かれた。3079年後半まで、彼らは書類上、強化連隊だったが、現実には1個大隊を配備するのみであった。大統領が共和国にこの部隊を贈与すると決めたとき、悲しむ者はなかった。

 RAFの指針に沿って、第9の中隊群は分割され、一緒にいることを許されなかった。だが、RAF最高司令部は、即座に新生アウクシリアに組み込まず、3個の小部隊を作った――アマテラス、ツクヨミ、フージン――これらはエリート即応部隊として機能することを意図していたが、そういう目的で実戦に投入されるチャンスはなかった。ツクヨミは3083年前半、チコノフ奪還を支援するために呼ばれ、すばらしい戦果を残したが、武家ヒリツの偵察部隊に遭遇して最後の一人までが全滅した。フージンは実戦に参加することすらなく、その1年後、第27アウクシリアと共に第8プリンキペス・ガードを作ることになった。この部隊はカペラ前線に配置され、ニューアラゴンで戦った。アマテラスのみが残って、アルタイルに駐屯し、現在、新トライアリ・プロテクターズ連隊群の訓練部隊となっている。来年には戦力充足することが予想されており、そのときには任務が与えられるだろう。





遍歴部隊 ERRANT FORCE

 遍歴部隊プログラムは、ベル・リー大将の発案であり、いくつかの目的を念頭に置いている。まず第一に、共和国周辺の紛争地帯に小規模な独立部隊を送り込む能力である。これらの部隊は、最高司令部の監督なしに活動することを頻繁に求められ、現場での意思決定を認められている。このプログラムの二つ目の目的は、MMRPの下で軍事装備をあきらめることを求められた傭兵や地元軍に、承認されたはけ口を与えることだった。このような部隊を公式なプログラムに取り込むことで、RAFは共和国内で活動するルーズキャノン(転がる危険な砲弾)を避けるのである。

 最初の遍歴部隊で、そのコンセプトに影響を与えたのは、共和国創設の際にデヴリン・ストーンに忠誠を乗り換えたリュウケン=ニのメック戦士小隊から作られた部隊である。カーヴィルに構えた彼らは、弱い守りの補助としての役割を果たし、3083年まで残されたブレイクの装備を狙う海賊団の襲撃を6度撃退するのを助けた。最高司令部はこの小隊を惑星市民軍に統合するか、武装解除・解散を強要しようとしたが、元リュウケンは抵抗した。この問題に注意を引かれたベル・リーは、このような独立部隊に可能性を見て、大将としての最初の行動として遍歴部隊プログラムを作り上げた。

 その後、プログラムの基準に合う元傭兵部隊とRAF小隊の両方から、遍歴部隊の小隊群が作られた。これまでのところ、プログラムは成功しているようで、隊員の何人かは騎士としてヘッドハントされ、大将のオフィスからのちょっとした不満につながっている。




共和国常備防衛軍 REPUBLIC STANDING GUARD

 正規連隊があらゆる栄光を受け、報道陣の関心を集める一方で、RAFにおける汚れ仕事の大半は惑星市民軍に向かう。彼らの任務は、共和国の惑星すべてに永続的に駐屯することで、迫り来るすべてのものから惑星を守ることだ。正規部隊は強い戦力と士気を持つかもしれないが、市民軍は鋼のバックボーンなのである。

 公式には常備防衛軍の名を持つ市民軍は、デヴリン・ストーン合同軍の後援の下に作られた最初の専門部隊であった。地球解放、地球保護領改名の前にもう作られていたのである。実際、防衛軍の兵士の相当数が、聖戦期にワード・オブ・ブレイクが組織した惑星市民軍の隊員だった。兵士の大多数はブレイクの教義でなく故郷に忠誠を誓っていたので、ストーンが駐屯任務に自軍を浪費する必要は無くなった。彼らは、ブレイク派への復讐よりも、解放された故郷を守ることに懸念を抱いていることをストーンは知っていたのである。

 とは言うものの、大王家が合同軍の責務の一部として供給したかなりの駐屯部隊が存在し、既存の元保護領市民軍をストーンと彼の目標の支援者にする助けとなった。ストーンとデイビッド・リーアの強い要請によって、これらの兵士は新しい持ち場に家族を連れてきていいとされている。なぜなら、どれだけ長く勤務地に残るかが不明だからであり、移動にどれだけの費用がかかっても士気の面で見返りが大きいからだ。これらの兵士を既存の市民軍に組み入れることで、ストーンへの忠誠、ひいては共和国への忠誠が強化された。家族を同行させることは、コミュニティに根を下ろすことを許し、守ることになった新しい世界への関与を強めることにもなった。

 最初の兵士たちが任務に就いてから10年近くが経った現在に置いて、惑星市民軍は繁栄している。士官のほとんどは惑星外から来ているが、下の階級の兵士たちは地元の徴募兵である。部隊の数は惑星ごとに違うが、大半は複数の連隊を持つ。しかし、これらの連隊は装甲・歩兵戦力が中心である……バトルメックは市民軍にほとんど存在せず、現在、ほぼすべての世界が1個中隊を持つ。たいていの場合のように、地球は例外である。つい最近終わった紛争中、他のところで装備が必要となったために、市民軍部隊が配備しているメックと車両は、旧式であるか、レトロテックの場合さえもある。同じく、市民軍歩兵は少数のバトルアーマー分隊しかない傾向にあり、また大半の市民軍空軍は気圏戦闘機ではなく通常型戦闘機で構成される。

 常備防衛軍を指揮する特使各人の裁量によって、惑星市民軍の編成と命名に若干の自由が存在する。一部の世界には、特別税、金持ちの貴族、地元事業家の資金によって創設された「エリート」市民軍部隊があり、優れた訓練と装備を受け取っているか、特殊な任務を帯びている。氏族入植地のある世界には、氏族流に組織された少なくとも1個の市民軍部隊がある。完全な氏族流の階級を持ち、氏族の飛び地領を守る特別な任務を帯びるのである。



共和国海軍 REPUBLIC NAVY

 RAFの哲学を保つため、共和国の海軍戦力は、対応する地上部隊と緊密に統合されている。高い命令系統と階級のみが、通常のRAFの制度から外れる。戦艦司令部と国境艦隊を例外として、すべての海軍戦力は地上軍に組み入れられ、同じ命令系統を通して行動する。海軍はRAFから外れた独自の幕僚を持つが、必然的に小規模である。パトリシア・ウッドハウス提督が共和国海軍を指揮している。

 共和国の海軍ドクトリンは、主に聖戦の結果として、氏族侵攻以後に大王家で見られるようになった大型戦艦の使用から離れている。その代わり、他国の海軍のように、ポケット戦艦の大量配備に傾いている。共和国海軍はこれらの船種をいくつか採用している(一部は同盟国から購入したもの)が、外国製を減らして自国製を増やすことを決めている。国内で作られているポケット戦艦は、聖戦の終盤にブレイクから得られた設計を元にしている。インターディクター級はすでに最近のカペラとの紛争で性能を証明しているが、数週間前に登場したばかりのティアマト級が海軍の戦力をさらに強化することが約束されている。

 戦艦司令部は、RAF正規軍から独立した組織で、共和国の小規模な戦艦艦隊を運用している。艦隊は3隻の船――イージス級〈アウスピキウム〉(元NCS〈ブレード〉)、ローラIII級〈トライアンファウス〉(元NCS〈ハンター〉)、エセックス級〈アブダンティア〉(サルベージされたWBS〈ディヴァイン・フォーギブネス〉)――と、同行する降下船、戦闘機部隊、支援航宙艦である。この艦隊は、戦艦の介入を必要とするような状況が起きない限り、各領域の主星をローテーションする。司令部はブライズ・レナルドン副提督が監督している。

 共和国海軍内の二番目に大きい組織は、国境艦隊である。RAFの地上連隊群の大半のように、国境艦隊は各領域に1個ずつの10個準艦隊に分割される。彼らの任務は任された地域の国境星系をパトロールすることで、警戒システムとしての役割を果たし、外国の侵攻に対して最初の防衛戦線となる。予測されるかもしれないように、敵対的な国境に面する領域は、他の領域よりも戦力を割り当てられているのだが、そういう場合であっても、最小限の予算と時代遅れの装備しか持たない海軍の継子となっている。国境艦隊に配属された者たちは、たいていこれを理想的な任務ではないと見る。国境艦隊司令官、クリストフ・ブレナン・ライト副提督は、組織のためにより多い資源を手に入れようと地球で時間のほとんどを過ごしている。



特殊部隊 SPECIAL FORCES

 RAFの特殊作戦部隊は奇妙な獣である。SCOUR作戦とSCYTHE作戦に参加した合同軍の多くが、自分たちの特殊作戦部隊を持ってきており、戦争が終わったのに伴い、一定数が共和国に忠誠を移すことにした。結果として生まれた寄せ集めのスタイルと専門によって、RAFは特殊な状況に対処するのに、幅広い手段を得たのだった。同時に部隊の組織化は頭痛の種となった。

 第212ノヴァキャット・ヘッドハンター二連星隊(公式の命名規則に反して、自らを「ストーンズ・トラッカーズ」と呼ぶ)が持つ専門知識から、共和国自由兵団(元ラサルハグ自由兵団)の偵察技術、ブラック・トレントの市街戦における証明された実績、その他の半ダースの小部隊に至るまで、現代の戦場においてRAFが必要としない部隊は存在しないのである。これらのうち、バトルメックを持つのは2部隊だけだが(どちらも1個中隊以上はない)、すべての部隊がRAFの任務にとって重要な戦力だと考えられている。

 グエン・ンガイ将軍(聖戦中にアリス・ルーセ=マーリックについて戦った元イーグル・コープスの隊員)が特殊作戦部隊を指揮している。




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