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作成:2021/10/24
更新:2022/05/15

エスケープ・フロム・キャッスル・ウルフェンシュタイン Escape from Castle Wulfensteiner



 "Escape from Castle Wulfensteiner"は、2021年のエイプリルフールにリリースされたアドベンチャーシナリオです。
 内容は深辺境の探査を行っていたプレイヤーたちが、旧辺境世界共和国で謎の城に遭遇するというもの。
 タイトルは有名なFPSのパロディ。残念ながら本作は non-canon 、つまり作品内で史実とはならないジョークシナリオであるようです。






ワールドガイド WORLD GUIDE



RWR前哨基地25 RWR Outpost 25

星: SLSC A8V.24881
位置: ライプフルからコアワードとアンチスピンワードに約112光年
星のタイプ: A8V(169時間)
星系内の位置: 第5惑星(12惑星のうち)
ジャンプポイントからの行程: 25.77日
衛星の数: 1
地表重力: 0.86
大気圧: 低い(毒性)
赤道温度: 44度(砂漠)
表流水: 8パーセント
補給ステーション: 発見できず
コムスター施設: 不明
進化生命体: 不明
人口(3148年): 不明
社会産業レベル: 不明
大陸と首都: 超大陸1(首都不明)



事前観測報告 PRELIMINARY SURVEY REPORT

 以下は、SLSC A8V.24881(暫定的に「RWR前哨基地25」とする)の初期観測を要約したものである。



軌道上からの調査 ORBITAL REVIEW

 この惑星は不毛の地であるものの、あちこちに人の居住地らしきものが多数観測されている。だが、これらの地点を熱探知、ズームで観測すると、現時点で人が活動していたり、居住している痕跡は確認されない。建物の配置と軌道上から確認できる荒廃の状況を鑑みると、これらの「居住地」はほぼ確実に放棄されている。実際のところ、最初から居住不可能で、模擬都市の廃墟を軍事訓練などに使ったのかもしれないと、現在のところ我々は信じている。結局、この惑星のバイオスフィアでは、大規模な生命維持用の防護装置と農業栽培なしにはひとつの都市(ましてや我々が発見した数十)を支えることすら不可能なのである。そういったものはまだ発見されていない。



当面の結論 INITIAL CONCLUSIONS

 大気は呼吸不可能であるものの、惑星地表に複数の遺跡があることで、過去に何らかの規模で人が住んでいたことが確認される。なんにせよ、ここで価値あるものを見つけられるだろう確信を得られた。植物や農地、その他の重要な資源がないことは、人類がおそらくは生き延びてないことを示唆する一方、それは結論からほど遠い。

 接近しての観測を推奨する。







ニュースの中のインターステラー・エクスペデション INTERSTELLAR EXPEDITIONS IN THE NEWS



戦争の中で、IEは深辺境の探査を続ける

3145年11月11日

アウル[マークネット] - 過去8年間、全中心領域で戦争が横行する中、容易に推測しうるのは、恒星間での人生が日々生き延びるためもがくものになったことと、通信・交易の断絶によって惑星間の輸送に依存するすべての企業と組織が大打撃を受けたことである。だが、グレイマンデー以来の危機で、ライラ共和国やスフィア共和国やコムスターさえもがほぼ崩壊する一方、いまだに通常営業を続ける星単位の組織が存在する。インターステラー・エクスペデションのオフィスと航宙艦艦隊ではその実例を見ることが出来る。IEの船は、深辺境の無限の宇宙を往復し続け、失われた世界、秘密基地、人類史の忘れられた一章を探しているのだ。

 IEは書類上アウルに本社が所在し、調整を行っているものの(敵国に囲まれ分断された共和国宙域の一方にある)、国や氏族に属さないこの恒星間組織の日々の運営は中心領域と辺境のあちこちにある衛星ハブで行われている。

 「我々は宇宙人種となってから1000年が経ちました」と、語るのはIEのスポークスマン、ドノヴァン・マクリアリーである。「そして、このとき、我々は星図に書かれているより遙かに多い世界に居住しています。生命が存在しないと考えられていた惑星に人が住んでいたというIE船からの報告がなかった年はないのです」

 深辺境には――特に中心領域の全方向を囲む小国家の先にある広大な地域には――このような失われた人類の文明が数多あふれている。その起源は、進路を逸れて数回ジャンプした植民船か、あるいは王家の戦争や海賊行為から逃れてきた難民の集団か、さもなくば忘れられた局所的虐殺の生き残りか……マクリアリーはIEの数世紀に及ぶ記録から多くの例を引用した。彼らの探検グループは見過ごされてきた世界で生き延びてきた人類を追跡したり、ばったり出くわしたりしてきた。

「一方で、こういった失われた植民地は、琥珀の中に閉じ込められた歴史の断片のようなものです。そこに住む人々は、最後にコンタクトがあったときと同じやり方で暮らしているのです」マクリアリーは付け加える。「しかし、我らが体験してこなかったような何らかの社会的変化に基づいて、新しい文化や技術が発展した歴史の断片らしきものも目撃してきたのです」



失われた世界、隠された前哨基地: アマリスの遺産は消えず

3139年12月7日

ヴァーチュー[スターハンター・マンスリー] - ジャーディン、ガブリエル、マヤディ、ムンド・ヌブラー、キャメロット・コマンド、ロス248――これらは前世紀に中心領域の注目を引いた失われし隠された世界である。第一次継承権戦争以来、のぞき見から逃れてきた彼らの遺産は、氏族侵攻とその後の聖戦のさなかに白日の下へと晒された。いにしえのSLDF、コムスター、ワード・オブ・ブレイクに結びつくこれらの世界は、数世紀にわたって陰謀論の焦点になり、31世紀の大半を通じて我らの世界を再構築することになる動乱の種を蒔いたのである。だが、継承国家が争っている間に氏族とコムスターが隠したかもしれない暗い秘密を探す中で、歴史上最高の陰謀家の一人が隠した世界と前哨基地についてはほとんど語られることがない。

 ステファン・アマリスである。

 よく言われるように、この簒奪者は第一星間連盟を崩壊させるクーデターの準備のために、最も大規模で邪悪な作戦を実行した。数千光年のあちこちに設置された極秘の基地、工場、中継地点、訓練場から、帝国を破壊する空前の陸軍と海軍が作られた。結局のところ、アマリス家が未来永劫、人類を支配する帝国を築くことは出来なかったものの、数十年にわたって隠し通してきた努力のほどには計り知れないところがある。

 それでも、何世代分もの時間が過ぎ去り、何らかの形で発見されたのはアマリスが建設した巨大なインフラの断片のみである。そうなった理由の一部は、こういった世界のいくつかが中心領域の範囲から気が遠くなるほど離れた場所に所在するという事実にある。たいていは、大きな星雲の向こう側にあるか、古い植民世界の廃墟の中にあるのだ。旧コムスターが報告した「トレントウォッシュII」のように、起源が不確かなものもある。この世界の住人たちは、簒奪の1世代以上前にシンシア・アマリスが立ち上げた、つまらない共和国植民地のひとつにすぎないとしている。確認されたデータの断片によると、ステファン・アマリスは200もの「前哨基地」(消滅した探査局とインターステラー・エクスペデションが同じく使っている用語)を地球と氏族本拠地から離れた深辺境に持っていることが示唆されている。だが、現在に至ってなお、深宇宙を往き来する者たち(探検のためか、交易のためか)に発見された地点の数は、20にも満たないのである。

 それで、簒奪者の失われた遺産の大部分に何が起きたのか? 一部は我らの目の前にあって、ジャーディンやマヤディのように別の名前で知られているのか? 海賊などに発見されて、利益を守るために場所が伏せられているのか? おそらくそれらは、ガブリエル遺跡のように、無人の月、矮星、小惑星(デブリとして見過ごされる)の軌道上を巡る宇宙ステーションであるか、あるいは地表の上に存在する可能性すらある。さもなくば、もっと隠し基地があると思いこませるために、アマリスと辺境世界共和国の諜報部アスロックが「赤いニシン」(ミスディレクション)として作った単なる幻なのだろうか?

 時が経てば、そして我らが知る世界を越えて暗黒宙域の探検が続けば、真実がわかることだろう。


事例研究要約: RWR前哨基地#27 / コアワード連合国

(アーカイブファイルより編集: 3141年10月12日)


『クエスチョン・エブリシング』(別名『聖戦の陰謀』)「スターリング・ファイルズ」より抜粋、3074年頃

 覚えておられる方もいるかもしれないが、深辺境、中心領域コアワードの最初の星図は、探査局が投稿・公開してからわずか1〜2ヶ月後に彼ら自身が回収した。「編集的な理由のため」としていたが冗談じゃない! 一ヶ月かそこらで再投稿された改訂版の星図からは、ひとつの国が消されていた。この消えた国はその名を単純に「RWR前哨基地#27」という。

 探査局の内外からコムスターへの問い合わせは、返答がないか、「ミスをお詫びします」という適当な返事を受け取るだけで、なぜコンパス座連邦サイズの漠然としたエリアが登場し、迅速に消されたかについて説明されることはなかった。ある日のこと、ペシュトのフラストレーションを溜めた侍祭が我慢の限界に達し、ワード・オブ・ブレイクの「モンキー・ウォーフェア」について5分間まくし立てた(間違いなく彼の人生において出世を妨げる最大の行為である)。



注釈 [3125.03.12, N.ベイジングストーク, PhD, DCSPED]:

 スターリングの評価が、部分的な真実に純粋な憶測を混ぜ合わせたものであると現在の我らは知っている。RWR前哨基地#27の位置は3034年ごろ最初にコムスターの探査局が特定した。実際には地球の実業家ジョナサン・チャフィンII世が2317年にニューヴァージニア専制国として設立したもので、人口の少ない約8つの世界からなる小国家である。幾度かの内紛を経て、コアワード連合国として再編された(2850年〜2860年頃)。

 いまでは、6つの世界からなる分散した星団に過ぎず、まばらな入植地に外国人嫌いの住人たちが住んでいるだけで、経済・社会的には〈戦い〉の時代のラサルハグ侯国に似たところまで退化してるのだが、歴史調査によると、辺境世界共和国に発見された2700年代前半から共和国が事実上崩壊した2767年まで、秘密裏に従属国にされていたことがわかった。共和国の時代、この国家(当時はバージニア連合)は秘密の訓練地区と化した。共和国の最高機密文章で「前哨基地#27」とされていたのはここである。アマリスの反乱の前に辺境世界共和国が訓練と宣伝目的で作り上げた摸擬都市群が、連合国の世界いくつかの遠隔地で朽ち果てているのが見られる。空になった星間連盟時代の倉庫や掩蔽壕、数多の老朽化した航宙艦や降下船(すでに設備を剥ぎ取られ破壊された共和国協力の造船所で建造されたもの)はすべて2700年代の後半に遡るものである。

 コムスターとワード・オブ・ブレイクは連合国に興味を抱いたようだが、利用しようという動きは緩慢としたもので、それも聖戦が終わりに近づくとなくなった。ブレイク軍の残存兵力が連合国の奥地に隠れようとしたかもしれないとの噂は絶えないが、3080年以降、コムスターやワード・オブ・ブレイクが活動しているとの決定的な証拠は見つかっていない。さらに、IEの船員や代理人による地元民へのインタビュー記録によると、第一星間連盟の崩壊、辺境世界共和国の解散、あるいはコムスターやワード・オブ・ブレイク、氏族について、一般の人たちは何も知らないようだ。聖戦後に至っても歴史的な知識を得ておらず、過去にコムスター/WoBの干渉を受け、おそらく商人や海賊が訪れても何も知らないのは、社会全体が部外者からのニュースを受け取りたがっていないことを物語っている。それでも、目に見えない影響力が、外部の妨害から未開発な連合国を意図的に守っている可能性も捨てきれない。

 いずれにしても、コアワード連合国はある陰謀の残骸が別の陰謀と勘違いされた典型例になっているかもしれない。コムスターやワード・オブ・ブレイクではなくアマリス家がこの地の秘密を守り、その遺産は深辺境のあちこちで見られる多数の例に過ぎないのである。








重要参考人 PERSONS OF INTEREST



プレイヤーのグループ THE PLAYERS' GROUP

 このアドベンチャーに参加するプレイヤーたちは、傭兵の小規模なグループ(4〜7名)である。どの生まれの勢力でもかまわないが、3130年代の中心領域に存在する勢力でないとならない。ブラックアウトの始まった時点で、プレイヤーたちの傭兵団は、深辺境に向かうインターステラー・エクスペデションのコアワード方面任務の警備を担う長期契約を結んだところだった。キャラクターの大半は――全員でなくとも――最低限基本歩兵技能(例えば、応急手当、近接兵器、航法/地上、小火器)を持つべきだが、このアドベンチャーの各時点でメック戦闘や技術的ジレンマに直面する可能性があるので、専門のメック戦士と少なくとも一人の技術者がいると助けになるだろう。

 チームは降下船アポジー・ミューズに配属された小規模な警備班としてアドベンチャーを始める。このシーカー級降下船は、主要車両ベイを改装して、最大5機のバトルメック、2機の小型船艇、8両の重車両を積めるようにしている。インターステラー・エクスペデションが所有し、運用するアポジー・ミューズは、深辺境探検チームを構成する船員20名、研究者13名にとっての家から離れた家となる。これら人員に加えて、プレイヤーの戦力と、車両ベイの機体を整備・修理するのに必要な支援テックが存在する。

 アポジー・ミューズの車両ベイに入っている、メック1機、小型船艇1機、車両4両がIEの直接的な所有となり、すべて研究チームの任務に使われる。メックはロックオポッサム採掘メック、小型船艇はLC-100"アストロラックス"シャトル、車両はマゼラン・シリーズフォー2両、セイヴァー修理車1両、シャクルトンAESV1両である。通常、アポジー・ミューズのベイには、フィグイェル科学研究用人工衛星2基も積まれているが、このアドベンチャーが始まる時点で、SLSC A8V.24881 星系(研究者たちは「RWR前哨基地25」であると信じている)の第5惑星の軌道上に投入済みである。残ったベイには、傭兵PCたちが保有する、あるいは配備されている車両を積んでもよい。

 このアドベンチャーの時点(3145〜3151年のいつでもよい)で、アポジー・ミューズはライラ共和国向こうのコアワード辺境内で考古学的発掘を実施する5年の実地研究の3年目である。警備班として配置されたプレイヤーのチームは、この遠征の全日程を契約期間とし、任務の大半は地元の乱入者を思いとどまらせること、海賊・襲撃隊が来ないか空を監視することである。ここまでいずれもまったく姿を現していない。

 このアドベンチャーのために新たなグループを作るのなら、以下のガイドラインが参考になる。

 インターステラー・エクスペデションは研究者と科学者が求める数多のサービスとサポートを下請けに出すことが多く、追加の任務を補うため現場チームに幅広い裁量権を与えている。これが意味するところは、IEの調査結果の理解を助ける上で、プレイヤーたちの副業的才能(各種の儀礼・言語、地元での取引に使う交渉技能、歴史や考古学の研究に使う各種の興味・キャリア技能)が彼らの仕事に役立つ可能性があるということだ。

 広大な廃墟と屋外の発掘地点での安全と同じくらいに、屋内や船内での安全が大事なので、プレイヤーは希望する戦闘職種がなんであれ、少なくともいくつかの歩兵戦闘技能を持ってなければならない。

 プレイヤーはほかのPCより多すぎたり少なすぎる経験点でキャラクターを作らないようにする。専門分野が違っても、彼らは対等な仲間であるべきなのだ。さらに、この遠征に雇われる部隊は小規模(完全な1個混成中隊より小さい)であることから大尉を越える軍事階級は避けるべきである。



導入 GETTING THEM INVOLVED

 導入は単純明快である。プレイヤーたちは傭兵で、単独艦による探検の安全と成功のために雇われた。道中はほとんど何もなく、支払いは正当で、ありがたいことに中心領域中で猛威を振るう無制限のカオスから遠く離れている。



プレイヤーグループのオプション: 氏族 PLAYER GROUP OPTION: CLAN

 プレイヤーのグループに推奨される出身、編成、導入は、もちろんのこと中心領域を基盤とする勢力出身のキャラクター向けである。だが、氏族を好むプレイヤーには、インターステラー・エクスペデションではなく、氏族中心のスコーピオン帝国(元エスコーピオン・インペリオ)に属するという選択肢が存在する。この場合、プレイヤーたちはゴリアテスコーピオン氏族のシーカーの随行員となる。彼らはグタラVと呼ばれる世界でエグゾダス時代の文章をさらい、辺境世界共和国の拠点との遭遇に関する言及を見つけ、第一星間連盟にまつわる歴史的に重要な場所があるかもしれないと知ったのだ。

 これを採用するのなら、以下の変更が必要になる。

 まず第一に、アポジー・ミューズと船員たちを、話にあうように改変せねばならない。ミューズ自体はそのままで、中身もそのままになる。より高性能な軍用船を使うのは注意を引きすぎると上官たちが判断した結果である。だが、ロックオポッサム採掘メックは非武装化されたアラナ(ERレーザー群、上級火器管制、放熱器5基を取り外して、右胴の砲塔にバックホー1基、左胴の貨物ベイ3トン分に換装する)になり、LC-100ラグジュアリーシャトルはST-46Cカーゴシャトルになる。その他の車両と衛星は同じスペックのままだが、スコーピオン宙域で汎用のコピー品として生産されたものになる。アポジー・ミューズの船員は帝国の労働者階級から揃えられ、戦士階級(気圏戦闘機)の落伍者サイラスに指揮される。この人物は、中心領域版のウォーナー・サイラス船長の代わりである。

 このシナリオの研究チームは、シーカーと随行員のプレイヤーキャラクターを中心に作られることが想定されているが、もっと助けが必要だとGMが感じたならば、キャラクターのヤン・カーマック、トーマス・マチスをIEの人員として登場させてもよい。彼らはこのアドベンチャーの前に、アイソーラとしてシーカーのチームに捕まり、現在では遠征の手助けをしている。



ウォーナー・サイラス WARNER SILAS
階級/職務: 船長、降下船アポジー・ミューズ
生年: 3103年(3145年時点で42歳)

 ベテランの宇宙民、サイラスは3122年に海上勤務の水兵として、並びにタフな何でも屋としてキャリアを始めた。彼の任務には、各降下船、航宙艦の船員の手伝いが含まれており、貨物の移動、基本的な整備、船内の警備などの一般業務を行った。アポジー・ミューズ号での職務が始まったのは、3135年、ヴァーチュー星図作成通信輸送社(VCCT)が降下船を買収した直後である。VCCTの下で、サイラスは4年間ミューズのナンバースリーを努め、ライラ共和国のブエナ州で様々な貨物を運び、配達任務を行った。

 活動の大半はルーチン的なものであったが、少なくとも一度、ハイジャッカーの小集団に攻撃を受けたことがあった。ハイジャック犯たちはコールドブルックに短期間停泊していた際にアポジー・ミューズを簡単な獲物と勘違いしたのである。事件時に、サイラスは仲間たちの1個分隊を率いてデッキからデッキの射撃戦を行い、自称海賊のうち8人が死亡し5人(リーダー含む)が重傷を負った。船長とVCCTの役員から賞賛されたサイラスは、昇進が早まって、3140年までにはミューズの指揮をとることになった――それは、昨今の深宇宙活動のためインターステラー・エクスペデションと下請け契約を結ぶちょうど1年前のことだった。

 アポジー・ミューズの船長として、サイラスは堅実で、ストイックで、実用主義的なリーダーとなった。勤務中は、どんなにひどい状況であろうとめったに大声を出さない。彼は船員(多くが10年近く一緒に勤務している)と客員全員の安全を真剣に考えており、他人任せにせず面倒を見る。また仕事をする上で自分の手を汚すことを恐れない……これが意味するのは、自ら船の整備をしたり、貨物の荷下ろしに参加したり、頼みのシュレッダー・ニードルライフルとヴィブロブレードを手に取り侵入者と戦うということだ。このような性格から、サイラスは安全の問題に積極的に関心を持つ傾向がある。たとえ、雇い主や乗客が下請け契約した部隊が関わっていてもだ。



ヤン・カーマック JAN CARMACK
階級/職務: 博士/考古学・人類学教授、IEシニアミッションディレクター
生年: 3099年(3145年時点で46歳)

 ライラ共和国のバックランドで生まれ育ったヤン・カーマックは、自ずと辺境世界共和国に魅了されていった。元々は辺境世界共和国のフィンマーク州として植民されたバックランドは、再統合戦争で旧星間連盟防衛軍とアマリス家軍の最初の戦地になり、カーマックの祖先の少なくとも一人は第2アマリス機兵連隊で勤務して新設SLDF第VII軍団との7ヶ月にわたる戦闘を行った。

 共和国の歴史と星間連盟との複雑な歴史に、学問的にも個人的にも興味を引かれたカーマックは、地元のバックランド大学トレントン校で歴史と人類学を学び始め、最後には考古学の学位を取るためにターカッド大学に編入した。3128年にはついに地球へと旅したカーマック博士は、ネパールのカトマンズ渓谷にあるキャッスルブライアンの遺跡を調査する考古学チームに加わった。ここは、祖先が所属していた第2アマリス軽機連隊がケレンスキーのSLDFと最期の戦いを行った土地であった。インターステラー・エクスペデションはカーマックの仕事に注目し、大昔に滅びた辺境世界共和国を中心とする一連の遠征のために彼を採用した。ブラックアウトの1年前の3131年、カーマックは正式にIEに加入した。

 科学者、歴史家として、ヤン・カーマックは自分の客観性に誇りを抱いているのだが、話を聞いた者は特に辺境世界共和国絡みの時は別の意見を持つのである。長きにわたり没落した辺境の超大国(特に第一次星間連盟時代)について研究してきたカーマックは、アマリス家の行動に対し擁護と批判を同程度に行うことで知られている。彼は擁護者でない――ステファン・アマリスがモンスターであり人類全員に対する裏切り者であるときっぱり同意する――一方で、辺境世界が批判された時には、同時代に存在した他の国より悪いわけでないと指摘するのが常である。あるいは、その後の歴史を考えると、共和国が負けて中心領域がよくなったとは言いがたいことを思い出させるのである。



トーマス・マチス THOMAS MATHIES
階級/職務: 博士/歴史・文学教授、IEシニアアシスタントミッションディレクター
生年: 3111年(3145年時点で34歳)

 トーマス・マチスは3138年にドネガルのニューチェクスワ大学で第一星間連盟史の博士号を取得し、故郷のギャラリーに戻って目を輝かせる未来の世代の若者たちに教育を施すつもりであった。だが、ライラ共和国の国境で緊張が高まって、ウルフ氏族が大規模な移住を実行し、3132年のブラックアウト後にスフィア共和国内外で戦闘が勃発すると、マティスはライラ宙域の中心部にいたほうが安全だと考えドネガルに残る決断を下した。わずか2年後、ウルフが共和国に向かってくると、ワシントン大学でティーチングアシスタントとして雇われていたマティスはもっと離れたブエナ州のノヴァーラに移住すると決めた。

 マティスがインターステラー・エクスペデションの「タレントスカウト」を受けたのはノヴァーラでのことである。彼らは、若き教授の論文(第一星間連盟末期におけるライラ、辺境、地球の星間政治の性質について)に感銘を受けたのである。辺境に近いアンチスピンワードのティンブクトゥにある研究部門での終身雇用を持ちかけたIEは、3142年、どうにか移住の説得を成し遂げた。1年もしない内に、マティスはかつての偉大な辺境世界共和国の忘れられた残りを探すカーマック博士のコアワード辺境への遠征に誘われた。

 カーマック博士は、マティスが書いたティンブクトゥ(かつての辺境世界共和国州都)に関するIE出版の論説を多数読んで個人的に持ちかけたのである。マティスが「ティンブクトゥの黄金期」を懐かしそうに語るのに共感を覚えたカーマックは、若き教授が弟子になりたがっているのに気づき、それ以来、急速に親交を深めていった。だが、遠征に加わった後進たちの一部は、マティスが今回の任務に熱心に取り組んでいるのはカーマックに対するごますりや心酔に他ならず、シニアミッションディレクターが遠征にマティスを選んだのは自身のエコーチェンバーにするためでしかないとしている。











アドベンチャー・トラック ADVENTURE TRACKS





ようこそ、旅人よ! WELCOME, TRAVELERS!



ミッション・ブリーフィング MISSION BRIEFING

 ここまでは静かな仕事だった――中心領域で起きていることに比べるととんでもなく静かだ、実際。数多のホロヴィッド、冒険小説、王家のプロパガンダが語っているところと違って、辺境は海賊の被害者ではなく、貧しくもない。きみたちは5年の契約で、IEのインテリと降下船アポジー・ミューズの護衛を行っているが、ここまでの3年間でバーでの喧嘩を引き離すより大変なことをほとんどしていなかったように感じられる。

 もちろんのこと、これまでの任務地のほとんどが宇宙の誰からも見捨てられた廃墟であった事実も、戦闘がなかったことに影響しているのかもしれない。だが、やはり、遠いスフィア共和国の内外で発生している地獄を考えると、誰が文句を言うというのか?

 カーマック博士(中心領域と旧氏族本拠地間の辺境深くに赴く独特な遠征の長)はいつもより幾分か興奮しているように見える。その理由は容易に想像が付く……彼と研究チームは、星図、データその他諸々から、ジャンプした新しい星系――SLSC A8V.24881――が彼らの探していた場所であると確信したのだ。おそらくは簒奪者がクーデターの前に用意した拠点のひとつであり、カーマックと研究者たちはきみたちが歴史的瞬間に立ち会っていると断言した。

 断言したのは一ヶ月前であったが、ともかくとして、センサーの探査・望遠による捜索・計算を駆使して見つけた、前哨基地があるかもしれない岩は、巨大な砂漠の荒野のようだとわかる前のことであった。大気は――そのようなものは――窒素、メタン、二酸化炭素が混ざった毒性で、水はほとんどなかった。人が生きてくには、ちゃんとした生命維持装置が必要になるだろう。

 しかし――他ならぬきみたちを驚かせたのは――望遠鏡が複数の都市サイズの遺跡を地表に発見したことである。それまでもカーマックは興奮していたが、今では期待に目を輝かせていた。

 しかし本物の驚きは、きみたちが船員を手伝って2基の探査衛星(遺跡を発見した)を展開したわずか1日後にやってきた。そのとききみたちはブリッジにいなかった――サイラス船長はミューズが軌道に滑り込んでから博士たちがどれだけ時間を使ったかにイライラしていた――が、カーマックが船内の会議室で緊急会議を招集したのはわずか数分後であった。そして、眼下の惑星の亡霊からひっかいたような声が届いた。

「やあやあ、未確認の艦船よ! 汝らは承認されたフライトプランなしに、星間連盟の帝国宙域に侵入しておられる。身元と目的を一度に報告されたし。繰り返す。やあやあ、未確認の……」

 誰が話してるにせよ、彼のアクセントはゲルマン語で時代遅れのものだった。まるで歴史ドラマヴィッドに出てくるライラ人のキャラクターのようだ。共和国で最も近い惑星からここまではジャンプ8回かかるかもしれないが、継承権戦争から遠くへ逃げた難民もまた、けして新しい話ではない。

 カーマックは、ミューズが平和な任務についていると納得させることに成功したと話を続けた……星間連盟は歴史上の存在になったと言わずにだ。さらに、もう少しのやりとりの後、上陸して地元民を訪問する招待を受けさえしたと言う。これはカーマックのキャリアの中で最大の発見であった。だが彼は単なる頭でっかちではない。当然、雇われの兵士が一緒に来ることを期待していた。



装備 Assets

 プレイヤーのチームは、インターステラー・エクスペデションの深辺境での遠征に付けられた警備部隊である。装備は降下船アポジー・ミューズに積み込まれている。

 アポジー・ミューズ号はシーカー級降下船で、輸送ベイは最大メック5機、小型宇宙艇2隻、重車両8両、1680トンの貨物(車両/メックベイ上の大型ベイに分散)を積めるように改造されている。その他の重要な仕様(兵器、装甲、エンジンその他)は3054年前のクラシックなものである。軍事行動ではなく貨物輸送用に作られていることから、また機体輸送に見られるような専門の人員を乗せていないことから、戦闘中に地上機を降下させる設備が存在せず、小船艇の発進と回収に軍用船の3倍の時間がかかる。

 IEの遠征では、死んだ世界、衛星、漂流する宇宙船の残骸すらも探検するのが普通なので、アポジー・ミューズには乗客と船員(プレイヤーのチーム含む)分の3倍に及ぶ軽環境スーツを積んでいる。追加の宇宙服10着(真空下での車両修理のため温存される)もまた利用可能である。



抵抗 OPPOSITION

 死の世界の謎めいた廃墟から歓迎の声が聞こえてきた。この地は400年近く前に星間連盟を破壊した大いなる陰謀の一端を担っていたのだろうか? 確かに、ここに心配するようなものは何もない!



戦術分析 TACTICAL ANALYSIS

 風に削られた高台の南端に、その大規模な複合施設は建っている。アポジー・ミューズが求められたのは、「降下パッド・アルファ」への着陸であった。中央棟は西から東に伸びて(窓のない掩蔽壕、レーダー塔に見える)、それぞれが装甲化された地表トンネルのネットワークでつながっている。東西それぞれの連結部分の先端に、2つの巨大な円形降下船着陸パッドが見える。これが示すところは、東西の掩蔽壕は車両と人員の受け入れ区画のようなものになっているということだ。大きな鍋皿(HPG送信/受信装置によく似ている)が中央棟の屋上東側を占拠しているが、損傷を受けているように見受けられ、空ではなく北東を向いて下に垂れている。

 北側には、キロメートル単位の滑走路3本が連なり、五角形のエプロンにつながる。エプロンと中央棟の間に、倉庫(あるいは格納庫)とサイロ(燃料貯蔵庫に見える)がいくつか雑然と並んでいる。中央の滑走路は他の2本よりも二倍の幅があり、大型艇や降下船の着陸用と考えられる。南側には別の倉庫に似た構造物と小さい建物が連なる(数キロメートルの高さがある高台の崖と、建物のあいだ)。この小さな建物の目的ははっきりしていない。監視塔や何かの支援施設かもしれないが、はっきりとした目印はない。

 建物の周囲に灰色・赤・黒の砂山がはっきりと見える。フェロクリートの降下パッドと滑走路はうねる砂に半分覆われて、荒涼たる風景の中に溶け込んでいる。建っている施設はすべて風化し、ひび割れ、建物と建物のあいだのそこかしこにがれきの山が積み重なっている。放置され、崩壊したわびしい外観と、建物のどこにも照明がないことから、この基地は放棄された遺跡にしか見えない。ドロップパッドのひとつに、2隻の球形降下船が停泊しているのをセンサーが探知したが、両船ともに壊れた金属の殻に過ぎないことがすぐわかった。老朽化した記章のない船体は大きく割れ、この地域で間違いなく頻繁に発生するだろう砂嵐に晒され朽ちるままにされた。

 そんな中、肉眼で見ても、降下船のセンサーを使っても、何らかの兵器のようなものが施設や周辺から突き出ているのは確認出来ない。レーダー信号や照準レーザーも検出されていない。事実、軌道上で受信した信号をのぞけば(ミューズを誘導する定期的な遠隔測定データ含む)、この地には生命が活動している痕跡は存在しない――ましてや敵の兵器に追跡される気配はみじんも感じられない。

 熱せられ広がる砂の雲がミューズの着陸排気煙で霧散すると、受け入れ区画とおぼしき鉄色の建物の近くで鈍い黄色のライト群が明滅した。日没がゆっくりと近づくなかで、並ぶ金属のドアが光で浮かび上がった。それぞれ約3メートルの高さと幅があり、あばたのようなくぼみが長い年月を物語る。まるで誰かが歓迎用のマットを広げたかのようだった。



任務成功条件 MISSION SUCCESS CONDITIONS

 カーマック博士によると、ファーストコンタクト任務の成功条件は、両陣営が流血せずに終わることだという。それに失敗した場合、チーム全員の命を守るのが、きみに支払われている給与の理由となる。





<<<GM ONLY>>>



 Enemy

 プレイヤーたちが見ている施設は、キャッスル・ブライアン流に建築された地下氷山の一角に過ぎない。崩れかけた壁と壊れたHPGアンテナを持つ暗い見捨てられた廃墟にしか見えないが、下にいる誰かがアポジー・ミューズに歓迎のメッセージを寄越し、降下船を外側の降下パッドに誘導したという活動の証拠は無視できない。

 事実上すべての建物に窓がなく、灰色の掩蔽壕スタイルの設計がされていることと、マーキングや標識が完全に欠落していること(惑星の過酷な環境の結果)を考えると、巨大なベイドアや大型ポンプ、アンテナなどがなければ、何に使う建物なのか判然としがたい。ゲストのために点けるまで外部にライトがなかったことも、不気味さを醸し出している。

 事実として、当然のことながら、この複合施設は完全に機能しており、人員が揃っているが、状況はひどいもので、明らかに衰微している。施設の詳しい説明については、この本のゲームマスター・ソースブック部分にあるストーンウルフ・コンプレックス(キャッスル・ウルフフェンシュタイナー)セクションを参照。このトラックでプレイヤーが遭遇する抵抗のほどは、最初のコンタクトにどう臨むかにかかっている。



友好的アプローチ THE FRIENDLY APPROACH

 プレイヤーたちと随行員が、この前哨基地の住人に会いに来たのなら、攻撃されることはなく、基地のドアは前までたどり着くと自動的に開く。ライトの点灯したドア群に導かれて、1個歩兵小隊が入るのに充分な広さのエアロックベイまで案内される。中に入ると、30秒かけて与圧され、プレイヤーたちはついに歓迎する集団(士官3名、護衛4名)と面会する――全員が、多少の変化があるが、見覚えのあるオリーブドラブのSLDF制服を着ている。士官たちの制服は少々くたびれているが、清潔で手入れが行き届いており、のばされたしわ、磨き上げられたブーツ、輝く徽章が見て取れる。士官3名全員が、赤と青のサッシュをかけており、辺境世界共和国のサメの記章が肩の近くに目立つ。さらに、それぞれが、特徴のない拳銃ホルスターをベルトに吊している。護衛たちはサッシュをかけておらず、SLDF制服の上に黒ずんだ防弾ベストを着用し、肩には目立たない記章(SLDFのキャメロンスターの上に小さな共和国シャーク)を付けている。護衛たちは明らかにくたびれたスラッグ弾用ライフルを、低い位置でこれ見よがしに構え、引き金からは指を離している(ミューズから来た者たちが挑発しない限りはそのまま)。

 エフラム・オッフェンバッハ少佐と名乗った先任士官は、「ミクラガルド総督、ヴィルヘルム・ストラスボルグ・フォン・ウルフェン少将」の代理として、ストーンウルフ・コンプレックスへの訪問者を歓迎する。それから彼は一行を司令官のところまでの案内を提案する――近くに止めてあるフラットトップの輸送システムを使い、長いトンネルを通って施設の中枢まで行こうというのだ。道すがら、オフェンバッハは雑談を交わし、基本的な質問いくつかに答えさえする。彼の答えは、この惑星に住む人たちの「パーティーライン(公式見解)」に沿ったものである(パーティーラインに関してはGMセクションの「ホールドアウト」を参照)。



防衛発動 TRIGGERING THE DEFENSES

 プレイヤーのグループや降下船アポジー・ミューズが施設住人の意に沿わない行動を取る(離陸する、前哨基地の建物に撃ち込む、軍事車両やメックで建物に突入するなど)のなら、無害そうに見える建物4棟の出番となる……中には艦載級兵器が隠されているのだ。これら兵器は真っ先にアポジー・ミューズを狙い、キラーホエール級艦載ミサイル4基の斉射から始め、船体に素早く穴を開けるため船の側面に間接砲式の砲撃を行う。もし、ミューズが離陸を成し遂げたなら、総計8門のNL35艦載型レーザーが、射程内にいる限り撃墜するまで砲撃を行う。降下船が撃破されたなら、艦載級兵器掩蔽壕は沈黙し、装甲外壁を最初のように閉じて、事実上施設を閉鎖する。

 この時点でミューズが破壊されたのなら、船員と客員の生存者は施設内の地上軍に処理される。この場合、「トラック4: 冗談だろ!」に飛ぶ。



困難 DIFFICULTY

 平和的なコンタクトの中で、プレイヤーたちはしばらくの間、問題が起きているのに気づきすらしないかもしれない。輸送システム(屋内仕様に改造されたトラックに他ならない)に乗ったプレイヤーたちとオフェンバッハのグループは、巨大なエレベーターホールのある中央本部の一角にたどり着く。このリフトはバトルメック1機か車両2両を載せるのに充分な広さを持ち、施設内を下ってメック1機分の高さがあるフロア(広大で、ほのかに光り、事実上人の住めないガレージ)を通過して、1階下の似たようなフロアに停止する。近くのベイには、旧式のメックや戦車が見えるのだが、オフェンバッハは小さなドアにプレイヤーたちを案内する。そこには2基のエレベーターがある――一度に2ダースの人間を運べるように設計されているものだ。

 人用のエレベーターはさらに2階下って、黄色い警告灯が光ると停止する。ドアが開いて6名の護衛が現れる。服装と装備はオフェンバッハについている護衛とまったく同じである。オフェンバッハは何も問題は起きてないとプレイヤーたち(と護衛たち)に保証し、注意を怠らない責任者とおぼしき護衛に話しかける。オフェンバッハはこれが基地で最高の警備レベルで、下にいる少将と面会するには前進の許可が必要だと説明する。明敏なプレイヤー(平均の知覚スキルチェックを行う)は、護衛隊長が幾分汚れて大きなキーカードを近くのコンソールにスライドさせて、オフェンバッハにうなずくのを見て取る。エレベーター内の黄色い警告灯が消えると、オフェンバッハは護衛たちに礼を言い、次のフロアに下りるためエレベーターを操作する。

 エレベーターで移動するあいだ、アポジー・ミューズはECMに包まれ、連絡が取れなくなる。降下船と積極的に通信しようとしたり、搭載されている通信システムを使おうとしたキャラクターだけがこれに気づく。オフェンバッハは肩をすくめて、何も心配する必要はないと伝えてくる……地下に入ると、キャッスルの城壁と構造のシールディングで信号がつながりにくくなるというのだ。だが、ミューズに乗っている者たちにとって、これは船を奪うため海兵が攻撃を仕掛けてくる前兆であった。もし、ミューズが離陸するか砲撃を開始したならば、「防衛発動」に書かれている通り、基地の防衛システムに攻撃を受ける。



結末 AFTERMATH

 キャッスルの中で、プレイヤーたちは会議室まで案内される。少々薄汚れているが、1個小隊分の士官たちがここから戦闘の計画を練るには充分な空間であった。部屋の向こう側には3つのドアがあるが、オフェンバッハとゲストが入ってきた方向には1つだけである。大きな金属製のテーブルが中央に陣取り、豪華だが古びた士官用の椅子約25脚が取り囲んでいる。部屋の奥に2本の旗竿が立ち、出入り口の間に別の士官たち3名がいる。旗の1本は星間連盟の紋章旗である。もう1本は辺境世界共和国の旗を掲げている。

 旗の間には、武装護衛に守られた色白の男がいる。年齢は50代くらいで制帽の下から白髪がのぞいている。オフェンバッハのように、彼もまた手入れの行き届いたSLDFの礼装をまとっているが、サッシュはオフェンバッハと仲間たちの赤と青ではなく赤のみである。辺境世界の青いサメの徽章がサッシュの肩にあり、襟の右に付いた青い円に二つ星(角8つ)は彼がSLDFの少将であることを表している。

 「ストーンウルフ城にようこそ、外界人たちよ」と、ライラなまりでいう。「私はウィルヘルム・ストラスボルグ・フォン・ウルフェン少将。当施設の指揮官にして、当世界の総督なり。帝国の片隅で我らに加わってくれるのを喜ばしく思う」

 カーマック博士が前に出て自己紹介を始めると、少将は突如として黒手袋のはめられた手を上げて制止する。

「始める前に友よ、ひとつお願いがある……」

 部屋にいた護衛たち全員がライフルを持ち上げプレイヤーたちに向け、指揮官たちは素早くその後ろに隠れる。フォン・ウルフェンの後ろのドア3つが開け放たれ、6名の護衛が乱入し、プレイヤーたちの後ろの出入り口からさらに2名が現れる。プレイヤーのチームと護衛対象が反応する前に、18名の武装した護衛たちに取り囲まれる。全員が神経をとがらせ、撃つ準備を整えている。

「……武器を捨てて降伏したまえ」、フォン・ウルフェンは続ける。「さもなくば、ここで死ぬかだ」









気合いを入れろ! GET PSYCHED!



ミッション・ブリーフィング MISSION BRIEFING

 これが驚きだといったらおそらく嘘になってしまうだろう。結局のところ、ここには星間連盟との戦争にどうにか勝ったと考えている辺境世界人がいっぱいいて、秘密の軍事植民地に住んでいるのだ。(と、何度も話題に上っても、馬鹿馬鹿しいと感じられる)

 カーマック博士とアシスタントたちは、この状況全体がなぜ「何も心配する必要はない」のか言い訳と半端な説明を混ぜて、ウルフェンの罠にはまってしまったことを謝罪する。当然、そんなことで元気づけられるはずがない。時代遅れのならず者たちに武装解除されたあと、君たちは銃口を突きつけられ、他の貨物エレベーターで運ばれ、じめじめして荒廃した施設の中へと下りていった。ようやくドアが開くと、そこは監獄区画で驚くこともなかった。「問題が終わるまで撃つ」ことを仕事にしている者たち特有の礼儀正しさで、君たちは汚れていて、誰もおらず、ほの明るい監房の並んだ廊下に連れてこられる。各房は、ひび割れた灰色のフェロクリートと鋼鉄の檻を混ぜたもののように見え、黒の塗装が錆びて剥がれているにも関わらずいまだに堂々としている。小さな房には、間違いなくコットかベンチであろう折りたたみ式の台が2組備え付けられ、隅にステンレス製のトイレとシンクがある。大きな房も同じに見えるが、ベンチコットがもっと多く、2つのトイレセットがある――それぞれ奥の角に設置されている。

 これからの住処になるだろう男女別の房につながれる前に、君たちはここが空でないことに気づく。向かい側――数歩向こう側――に、青いカバーオール(得体の知れない黒い染みが付いている)を着た汚れたぼさぼさの男が立っている。茶色の瞳で君たちを見つめ、しゃがれた声で話し始める。

「何事だい、バート」と、護衛の一人に尋ねる。「俺のために隣人を連れてきてくれたのか?」

「そうだぜ、トロッグバイト」と、"バート"は不敵な笑みを浮かべる。「新入りの外界人に挨拶しな」

「ウー!」と虜囚は、もっさりしたあごひげの向こうからにやにや笑う。「外界人といったのか? もう何年もそんなの見てないぞ?」

「騒ぐな、スクレーパー」他の護衛が怒る。「今日はもうカッツェに来てもらいたくないだろ」

「ピリピリするなグロスマン! どうでもいい質問をしただけだ」

 君たちの房が閉められると、"グロスマン"と呼ばれた看守は手袋をはめた手で囚人の鉄格子を素早く叩く。檻の中にいた男は後ろに下がって両手を挙げる。二人は互いに視線を合わせ、それからグロスマンと他の兵士たちは消えていった。足音が遠ざかっていくと、再び収監者が現れ、君たちの方を見て、親しみを込めてうなずく。

「キャッスル・ウルフェンシュタインへようこそ。名前はジャクソン。ビル・ジャクソンだ」



戦力 ASSETS

 きみと、きみと一緒に来た者たちと、服だけ。フォン・ウルフェンのならず者たちは、会議室を出る前に尊厳以外のすべてを奪い去り、会議室が何階上にあるのかも測るのは難しい。

 もしかしたらビル・ジャクソンがきみたちの助けになるかもしれない……たとえ彼が長年ここにいるかのように見えたとしても。



抵抗 OPPOSITION

 放棄されているらしき古代の要塞と見たものは、アマリスを愛する軍隊であふれ、砂と毒の惑星に囲まれている。さらにいえば、君たちが投獄されたこの地下牢はおそらく1個小隊の武装した看守に見張られており、他に何があるのかはわからない。



戦術分析 TACTICAL ANALYSIS

 きみたちは、地元民が「キャッスル・ウルフェンシュタイナー」と呼ぶ施設の地下深くにある監獄にいる。正確にはキャッスル・ブライアンなのだろうか? ともかく、きみたちの選択肢は、脱出するか、取引するか、死ぬかである。取引できるものがないので、現段階では2つの選択肢しかない。





<<<GM ONLY>>>



 Enemy

 ストーンウルフキャッスルの本部棟は、辺境世界共和国軍1個師団の本拠地として機能しており、従っておよそ4000〜6000人の生活を支援するように設計されていると考えられる。4世紀近くに及ぶサバイバルと、0.5パーセントの限られた人口増加率で、人口は4万人に達する。ストーンウルフキャッスルは崩壊寸前となるが、どこかを拡張すれば――少なくとも理論的には――上限が増えるかもしれない。こういった数字は、カーマック博士やマチス博士などが最大限に見積もったものである。この惑星に人が住めないことを考えると、数を減らさざるを得ないと、両者は認めている。

 良いニュースとしてマチスが付け加えたのは、この瞬間、戦闘態勢を取れるのは人口の内の一部(おそらくは半分)だけということだ! ということは、2万人の敵しか心配しなくて済む!

 実際、2人の研究者は、この環境での生存能力と成長力を過小評価しているが、それはプレイヤーのグループが関与するところではない。この階(拘留ゾーン)おける敵は随時およそ30〜50名いる看守である。そのほとんどが退屈しきっており、囚人との世間話で暇を潰すのは問題外というわけではない。

 だが、この階での真の恐怖は、オーガスタス・カッツェ軍曹、まるで筋肉の上に別の筋肉を載せたような奇形的外観を持つ巨漢の兵士である。ジャクソンは彼の人間離れした外見と膂力について「やつらのミューテーションの一種に過ぎない」と(カッツェに聞こえないところで)惜しげもなく語る。カッツェはほとんどしゃべることがなく、看守たちが囚人としゃべりすぎたように見えるときに、かろうじて意味の通る命令を吠えるのみである。短気だが、爆発するのは血が出るくらいに負傷したときに限られる。カッツェのキャラクターステータスは、本製品の最後にあるGMセクションを参照。

 カッツェの「やつら」についてもっと尋ねたら、ジャクソンが生まれる前にミクラガルドに来た外惑星人であり、戦いと死を崇拝する幾分変わった信仰を持ち、これまで誰も聞いたことのない戦争と戦士について空想的な話を互いにすると教えてくれる。ああ、それから彼らは猫が好きなようで、それ故「カッツェ」(ドイツ語でキャット)の名前を、仲間たちのほとんどが使っている。彼らはキャッスルでの生活になじむことがなく、よって穴蔵の外で見ることはまれだ。

 房に入れられた翌日――古びたパン、正体不明の肉(もちろん鶏の味はしない)、気味の悪い野菜のペーストなどの「食事」が与えられた――プレイヤーたちは、オフェンバッハ少佐、元の「歓迎委員会」から士官2名と護衛4名、NPC兵士1名の訪問を受け始める。前回の訪問から2D6時間後に次の訪問がある。オフェンバッハ少佐は楽しそうに意味のない世間話をして、グループの中から一見ランダムにメンバーを一人選ぶ。このラッキーな一人は、銃口を突きつけられて連れ去られ、たいてい次の訪問時に戻ってくる。プレイヤー・キャラクターが選ばれたら(あるいはむしろ介入して「志願」したら)、鎖につながれて、同じ階にある別の場所でオフェンバッハ少佐に尋問される。オフェンバッハ少佐が知りたいのは、プレイヤーたちが誰のために働いてるのか、どこから来たのか、降下船はどこかであり、彼らがここにいることを誰かが知っているのかである。尋問者を侮辱・攻撃したり、彼らの「パーティーライン」の歴史観に反する話をしたら、オフェンバッハ少佐の手下の一人から1D6の格闘攻撃を受ける。

 最初の5回の訪問で、オフェンバッハ少佐はカーマック博士、マチス博士、(同行していたら)サイラス大尉を選ぶ。3人の内、マチス博士だけが、明らかに手荒く扱われた様子で戻ってくる。尋ねたならば、オフェンバッハ少佐はサイラス大尉が処刑されたことを率直に認め、カーマックも死んだというもの、実際には施設のどこかに連れて行かれただけである。



結末 AFTERMATH

 独房から出て、エレベーターを登ったとしても、パーティーの問題がすべて解決したわけではない! リフトへの脱出に成功するとロックダウンが発生し、基地中に警報が鳴り響いて人員の多くが武装し、一行の進行を妨害する。だが、ロックダウンは不完全なものとなる。酸素流出の可能性を念頭に設計されているシステムは、事実上すべてのエレベーターを停止し、階を移動する別のルートもすべて閉鎖する。各階で最上級の者たちが持っているだろうキーカードだけが、セイフティーを上書きして解放の道を進むことが出来る。こういったセイフティはひとつ上か下かの階への移動を可能にするだけで、システムは再びロックダウンされる。いまやキャッスル・ウルフシュタイナーの最上階に向かうのは、階から階をうろつきまわって必要なアクセスカードを持っている者を探すのみならず、カードを受け付けるエレベーターを探すことにもなっている。

 地球の1990年代にあった初期のファーストパーソンシューティングから台詞を借りれば、気合いを入れる時が来た!









ここは何階あるんだ!? THIS PLACE HAS HOW MANY LEVELS!?



ミッション・ブリーフィング MISSION BRIEFING

 よいニュースは、ついにウルフェンの監獄から出て、来るべき戦いに備え軽武装に充分な武器を発見しさえしたことだ! 悪いニュースは、ここが悪夢の緊急ロックダウンモードに移行して、アンロックされたリフトで一階上がるか下がるかしか出来ないことだ。もし状況が変わらなければ、次の階に行くためだけに戦って必要なアクセスカードを手に入れて、それをずっと繰り返さないとならないかもしれない!

 捕まえた側がこの事実を無視するとは考えにくいので、護衛と兵士たちは行く手のすべてで道を阻もうとしていると想像される。そしてこのすべてがおかしな事態の中で、降下船が待ってくれているのかも不確かなのだ! ええい、たとえ待ってくれたとしても、乗組員たちが無事と考えるのは調子がよすぎるだろうか?

 まるで、世界と残酷なゲームをしているかのようだ。こんな時、気落ちするのは簡単だが、ここで何もしないとおそらくは死んでしまうので、結末を心配するのはやめてゲームを続けるのがベストだろう。



戦術分析 TACTICAL ANALYSIS

 何はともあれ、監獄区画にビル・ジャクソンのような地元民の囚人がいることは、この小さく空虚な社会を支配する法に誰もが従っているわけではないことを表している。反対派がもっと見つかる可能性もある――あるいは単純に意志が弱かったり、甘い言葉をささやけば外世界人を助けるくらいにやる気のない者たちを、少なくとも少数は。結局のところ、昔のライラ国家主席が口癖にしていたように「情報は実包」、そうじゃないか?

 もちろん、本物の実弾を充分に持っていれば役に立つだろう! アマリスを愛するストームトルーパーを何人倒せばいいか、誰がわかるんだ?



任務成功条件 MISSION SUCCESS CONDITIONS

 出来る限り大勢が生きている状態で地上に出るのが第一のゴールである。逃走用の降下船とそれを飛ばす乗組員たちを探せるのならなおいい!

 そして、どうしても復讐してやりたいのなら、フォン・ウルフェンを打倒するのは最高のボーナスになるだろう!





<<<GM ONLY>>>



 ENEMIES

 基地全体がロックダウン下に置かれ、本部棟の各階は警戒状態に入り、サテライト棟(市民の大多数が生活し働いている)は積層型装甲隔壁で完全に隔離される。その結果、プレイヤーたちが対処するのは、次のエレベーターや通路にいる限られた数の武装人員だけとなる。大半はジェネリックなもので、レコードシートは本書のGMソースブックで見つかるだろう。

 各フロアの詳細(これもGMソースブックにある)はプレイヤーが遭遇する敵NPCの数とタイプを判断する助けになるだろう。各階の「ボス」……次の階へのエレベーター/通路をアンロックするのに必要な鍵を持っているか、あるいは鍵のあるチャンバーを守っている……の性質もまたわかる。フロアの軍人(護衛からボスまで)たちは交渉に興味を持っていない。プレイヤーたちは侵略者で、自由に動き回っており、鎮圧せねばならない脅威なのだ。だが、技術者たちやその他の非戦闘員は、弾丸よりも言葉が通じやすいかもしれない。

 フロアの入り口、出口、ボスに兵力を集めるのは、魅力的(そして合理的)だが、基地にまたがるロックダウンは脱出した囚人たちと同じくウルフェンシュタイナー城の住人たちにとっても無秩序なことが証明されている。予期せぬカメラ信号の断絶、局所的な電力停止、各セクション間の内部通信不通、その他により、彼らは保安部員を分散せざるを得ない。施設を構成する部屋と通路の終わりなき迷路を監視するためだけとしても、そうしなければならないのだ。その結果、GMは各部屋を占拠している敵の数を、プレイヤーグループの武装人数より多くしてはならない(階層ボスは半分に制限される)。



地元の状況 LOCAL CONDITIONS

 キャッスル・ウルフェンシュタイナーは長期の居住を計画して建設された、真に巨大な地下要塞である。施設はすべての方向に数百メートル広がっているが、プレイヤーにアクセス出来るのは各階の中心地区だけである。ベテランのテーブルトップRPGプレイヤーとGMは古き良きダンジョン探索を模したものと気づくであろうし、1990年代からビデオゲームを遊んで育った層は昔のファーストパーソンシューター(FPS)ゲームのテーブルトップ版だと考えるかもしれない。

 もちろんそれは我らが目指したものである。

 ゲームマスターはフレーバーとして各フロアに要素と遭遇を追加してもよく、推奨される。それはもしかしたらロックダウンのストレスの中で勃発した地元民の衝突かもしれない。あるいは買収すれば「おたくらがここにいる限り」手助けしてくれる非戦闘員がいるかもしれない。興味深い日常の痕跡がそこかしこに現れ、中心領域から約400年隔てた時代錯誤を強調する。たとえば、辺境世界の通貨がそこかしこで見つかる。何度も何度も繰り返し読まれたらしきプロパガンダ雑誌(アマリス時代の星間連盟帝国がどれほど偉大であるか、あるいは帝国から不可解にも切り離された軍事基地で暮らすための「ライフハック」が特集されている)。星間連盟時代の各種設備……壊れ方は様々だが、巧みな修理によって一部はまだ稼働している(「おい見ろ! 28世紀のマンガボックス・ホロウィンドウだ!」)。手製の玩具、装飾品、日記。害虫害獣のペット、どうやってか持ってきた警備動物の末裔、何から育ったのかわからない奇妙な植物。そしてもちろん、故障している奇妙な区域があるはずだ。照明が消えていて、障害物のリストに闇を追加する。コンピューター端末が支離滅裂なデータ用紙を吐き出して使い物にならない。エアフィルターと下水処理が故障して、室内に胸が悪くなるような匂いを加える。人がいるかいないかに関わらず、自動ドアがランダムに開いたり閉じたりする。近くの通信機から状況報告を求める声が聞こえるが、誰も応答しようとはしない。ここは生活の場であり、実際に何世代にわたり住んできた――その結果、多数の特徴が出来ているはずである。

 一部の区画には、インフラやパッチワークの修理が露出していて、(意図的、偶発的に)損傷させるかいじって、何らかの局所的効果を引き起こせるかもしれない。空調の通風孔を壊して不快な温度に上げる。混乱を引き起こすため、水道管、送電線を破裂させたり、通したり、止めたり出来る。普通のドアやコンピューターシステムを理不尽な暴力で吹き飛ばすことも出来る。簡単に壊せるものは、一発殴ったり、撃つことで物語的に処理出来る一方、内部ドアや調度はもう少し手間がかかるかもしれない。だが、基地のメインフェロクリート壁と装甲隔壁はメックの重兵器に耐えるほどに丈夫なので、プレイヤーたちが道中手に入れた小火器ではほとんど効果がないだろう。

 最後に、各フロアの複数箇所で、食料、医薬品、弾薬が見つかる。ウルフェンシュタイナー城はいい時でさえも危険な場所であり、住人たちは緊急事態に備えて緊急物資を用意しておくことを学んでいるのだ。



目的 OBJECTIVES

 意図されている通り、新しい階に進むプロセスは同じ基本テーマのバリエーションとなる。鍵を持っている者を探して戦い、倒して鍵を手に入れ、鍵の使えるリフトか階段を探す。

 なお、プレイヤーが移動に使ったエレベーターが、次の階に上がるエレベーターであることは事実上ない。ロックダウンの一環として、各リフトは機密区画で物理的に閉鎖され、スタート地点からひとつ上か下にしか行かないようになっている。エレベーターを利用すれば、元の位置にまで戻り、正当な鍵の持ち主がアクセスするまで、事実上シャットダウンする。従ってロックダウン時に六階にいたエレベーターは七階にだけ上がり、五階にだけ下りられる――それから六階に戻って「許可されたユーザー」の次の呼び出しを待つ。

 プレイヤーが八階(外部警備)を突破すると、このサイクルは終わりを告げる。なぜなら、基地の駐機場、メックベイにたどり着いたからだ。九階のドアが開くとすぐに、このアドベンチャーの最終トラックが開始される。



困難 DIFFICULTY

 特殊なひねりとして、GMは七階の最終戦に「中ボス」を加えることも出来る……カーマック博士だ。いまや「星間連盟帝国」の士官として、制服と装備を身にまとうカーマックは、オフェンバッハ(七階のボス)の側に立って、プレイヤーたちを降伏させようとする。カーマックの地位はフォン・ウルフェン軍の中尉で、戦闘時のステータスは一般の士官のものを使う。IEの考古学者たる彼は洗脳されておらず、強要されているわけでもない。キャッスル・ウルフェンシュタイナー城での状況を鑑みて、逃走はほぼ間違いなく失敗するだろうことを認識し、辺境世界愛国者の子孫として「伝統に従う」ことを選び、キャッスルの権力構造で有利な扱いを受けるのと引き換えに、フォン・ウルフェンと指導部に忠誠を誓ったのである。



結末 AFTERMATH

 九階のドアが開くと、プレイヤーたちは洞窟のような駐機ガレージにたどり着いたことに気づく。空気は乾燥していて、グリースとオゾンの臭いがする。明かりが8メートル近い高さの天井から降り注ぎ、各方向に長さ1キロメートルはありそうなベイの影を消そうとしている。その一方で、太いフェロクリートの柱と、薄汚れてサビの浮いた金属製ガントリーが、広大な天井を支えている。ジープ、トラック、大型回収車両の列がエレベータードアに近いところを占領し、星間連盟ヴィンテージの車体にはフォン・ウルフェン「帝国」の鮫と星の徽章が灰色のほこりの層の下に描かれている。ベイのもっと遠くには、継承権戦争の前に遡る戦車が鎮座する――大半はダークグリーンのシートに覆われ、エレベーター近くの車両よりもさらにほこりまみれに見える。。

 スロープと車両サイズのリフトが巨大な空間の向こう側の角に見える――間違いなく地上への出口だ!

 もちろん、この駐機場は完全に無人ではないが、純粋な広さ(両方向に500メートル以上)と、両側に重車両がみっしりと詰め込まれていることは――途中に小さな小屋とオフィスのような建物、ガントリーに登るはしごがあるだけ――広い空間と規則的に並ぶ3メートル×3メートルの支柱以上のものがある。そして、中央に並ぶ各種支援車両は巨大な中古車展示場のようであった。

 基本的な説明と九階以上の追加ルールについてはGMソースブックを参照。

 十一階(上部メックベイ)は、車両やメックを持ってきたプレイヤーの興味を特にそそるだろう。アドベンチャーが始まった時点でアポジー・ミューズに載せられていた地上機はすべてここで見つかる。ミューズ(あるいは残骸)から持ってこられたメックは、サルベージトラックのベッドに横たえられているか、フェロクリートのフロア上に直接置かれており、車両はそれぞれの形で停車している。降下船が無事なまま拿捕されていたのなら、車両とメックは1D6ポイントのダメージを受けているのみである(1ポイントずつランダムに振る)。降下船が破壊されているか行動不能の場合は、2D6×5ポイントのダメージを受け(5ポイントずつ振る)、通常通りクリティカルダメージのロールをする(弾薬武器爆発のような機体の破壊効果は無視する)。プレイヤーたちが持ってきた航空宇宙戦力――スタート時点でミューズが運んでいた小船艇含む――は、現時点で存在しない。もし生き残っているのならば、外部の北にある航空機ハンガーのひとつに置かれている。プレイヤーたちの機体は、ダメージ効果の有無にかかわらず、すべて稼働し、通常通り機能する……キャッスルの技術者たちは、まだ操縦システムに触れていないのだ。









冗談だろ! YOU HAVE GOT TO BE KIDDING!



ミッション・ブリーフィング MISSION BRIEFING

 ミクラガルドの地表に戻ると、ついにこの悪夢の終わりにたどり着く……それがどう終わるにしても。目の前にキャッスル・ウルフェンシュタイナーの地上部分がそびえ立つ。だが、ひび割れた外観や、砂とがれきの山こそ変わってないものの、ここが単なる遺跡以上の場所であることを今はよく知っている。投光器が広大な敷地を照らし出し、基地の警報が薄い大気で減退して不協和音を奏で、これから始まる勇壮なる戦いの序曲となる。

 キャッスルから逃げる間、ヴィルヘルム・ストラスボルグ・フォン・ウルフェン少将を見かけることはなかった。おそらく、護衛たちを制圧した瞬間、報復を恐れて逃げ出したのだろう。もしかしたら点在する他の掩蔽壕のひとつに逃げ込んだのかもしれない。やつを倒せば、この孤立した辺境世界共和国の面影は混乱に陥るだろう……特に、地下で大騒ぎを繰り広げた後では。

 だが、この不快な場所からの脱出が最優先のはずだ。

 もし、アポジー・ミューズを探せるのなら!



戦力 ASSETS

 このトラックでは、プレイヤーたちがアドベンチャーの中で入手した装備と人員をすべて投入できる。だが、重火器、防具、環境装備があるのが望ましい……有害な大気の中で戦うことはほぼ確実だからだ。



抵抗 OPPOSITION

 ウルフェンシュタイナーの地表から聞こえてくるのは、装甲気密スーツを着た兵士たちの叫び声、スピーカーから流れる命令であった――あるものは即座の降伏を求め、あるものは兵士たちに展開するよう伝える。それをかき消したのは、バトルメックと装甲車両の大軍が近づいてくる音。まるで全周囲から押し寄せてくるようだ。

 この忘れられた地獄で捕まって以来の声がついに聞こえる――ミクラガルドの主にして支配者、フォン・ウルフェン少将である。

 「小生意気な外界人め」、基地のスピーカーを通してがなり立てる。「貴様らは最悪の失態を犯した! 星間連盟帝国の怒りを見よ!」



戦術分析 TACTICAL ANALYSIS

 キャッスルの外に出たことで、戦場は広く、危険なものになったようだ。星間連盟時代のバトルメック1個中隊(SLDFの塗装と徽章をパロディ化したもの)がこちらの陣地に迫ってくる。それほどの火力は持ってきていないが、ここの大気が有毒なことを忘れてはならない。一番弱い重火器でもコクピットや操縦席のいいところに当たれば脅威となる。

 アポジー・ミューズはこの施設から1キロメトールのところに着陸している。少なくとも、そう記憶しているが、この基地にはあちこちに別の降下パッドがある。ミューズは戦闘艦ではないものの、まだ動くのならばここから脱出する最高のチケットになる。

 だが、ミューズを飛ばす乗員がいなければ、絵に描いた餅になりかねない。あるいは、ウルフェンシュタイナーの悪漢どもが袖にまだ何かを隠しているかもしれない!



 ENEMIES

 プレイヤーたちが監房から脱出したその時、フォン・ウルフェン少将はキャッスルの近くにはいなかった。1個中隊分のメック戦士を集めて、広大な荒野をパトロールするため北に向かっていたのである――基地が現役の防衛拠点であるという伝統的な見せかけを保つため彼と幹部たちは日常的に行っていた――オルフェンバッハから基地中に警報が発令されたとの取り乱した通信を受けた際、彼と麾下の部隊は数時間離れた場所にいた。

 フォン・ウルフェンは、プレイヤーたちが基地を上がっていく間に、パトロールから戻る。総督が駆けつけたのは、プレイヤーが上部メックベイに達したそのときだった。実戦に参加する機会がほとんどないことから、フォン・ウルフェンとメック戦士たちは一般兵相当であり、キャッスルにいる他のメック戦士、戦車兵、歩兵も同様である。フォン・ウルフェンの中隊はトラックの開始時に北から進撃し、ひとかたまりになってプレイヤーと交戦する。可能であれば砲撃を集中させ、出来るだけ早く各個撃破しようとする。真っ先に狙うのは、重くて遅い機体である。もし、ウルフェンの中隊がメック6機以下になったら、基地に援軍を求める。援軍が来るのは、呼んでから1D6+6ターン後である。



目的 OBJECTIVES

 この時点でどんな行動を選ぼうとも、プレイヤーたちはミクラガルドに長期間囚われる可能性に直面する。このミッションのスタート時点でアポジー・ミューズが抵抗するか脱出しようとしていたら、前哨基地の隅にある大型防衛兵器に撃ち落とされる。たとえ船が無事だとしても、乗員たちは地元民に捕まっており、スキルを持っていないプレイヤーのグループにとって離陸するのはとてつもない難題となる。そしてミューズが無事で、打ち上げに充分な数の乗務員が残っていたとしても、砲撃の下、船に乗り込み、無傷で大気圏脱出するのは茨の道である。ミューズは貨物船であり、従って軍用船のように車両とメックを迅速に展開・収容する設備はなく、その上、外界人の脱出を察知したらすぐにキャッスル・ウルフェンシュタイナーの艦載級兵器が砲門を開くだろう。このトラックの前に、プレイヤーたちがどうにか艦載級兵器を発見し、無力化していたら、後者の問題は軽減される。もしそうでないなら……

 プレイヤーたちが取り残された場合、生き残るための選択肢は限られたものであるが、不可能ではない。キャッスル内での冒険中に知ったかもしれないが、フォン・ウルフェンの支配を逃れた反乱サバイバリストの小規模な集団がミクラガルドには住んでいる。遙か昔に逃げ延び、市街戦用の訓練場だった古代の廃墟に住んでいる、こういったグループは独自の気密環境を作り上げ、相応の水準のコミュニティを維持し、この地獄の世界を脱出するか、「嘘つきキャッスル人」フォン・ウルフェンの支配を終わらせる手段を待ち続けているのである。反乱者たちは、いわゆる星間連盟帝国と戦うのみならず、共通の敵に痛みと絶望を与える力を持った人々を受け入れる、部屋と資源と意思を持っているかもしれない。

 短期的には、フォン・ウルフェンと手下の兵士たちに正面から戦って完全な勝利を収める確率は極めて低いが、プレイヤーたちが総督を殺すことに成功すれば、権力の空白と補佐たち(オフェンバック含む各階のボス)の死によって、キャッスルの泡沫社会は混乱に落とし入れられるだろう。住人たちに、星間連盟帝国がないことや、死んだ政府の偏執的な生き残りが作り上げた数世紀にわたる嘘の上に生きてきたと納得させれば、この混乱はさらに破滅的なものになるはずだ。このような混乱からどのようなチャンスが転がり込んでくるかわかるだろうか?



結末 AFTERMATH

 キャッスル・ウルフェンシュタイナーからの脱出時に、プレイヤーたちがどれだけの破壊を巻き起こしたにせよ、もし基地の「ボスたち」――フォン・ウルフェン自身を含む――が生き残っていたとしたら、放っておいても数週間か数ヶ月以内に秩序は回復される。基地に与えられた損害を修復するのには時間がかかるかもしれないが、プレイヤーのグループが生きて惑星を脱出していたならば優先されるだろう。もしプレイヤーたちが、ミクラガルドからの脱出に失敗したがウルフェンに捕らえられていなかったら、ウルフェンたちはキャッスルが使える軍事力を投入して一年近く追い回す。戦力の大半は、無限の荒野に点在する疑似都市の崩壊した残骸をさらうために送り込まれる。1年の捜索後、ウルフェンシュタイナー軍が生き残ったプレイヤーをまったく見つけられなかったら、捜索は打ち切られ、外界人は死んだと見なす。

 中心領域にこの話を持ち帰ると、プレイヤーたちは地元メディアにセンセーションを巻き起こし、IEの子会社が発行する歴史年表で何らかの言及がされるかもしれないが、深辺境でよくある退化した人々の共同体と見なされ、純粋に好奇心を引かれる以上のことはないだろう。

 結局のところ、現在はもっと大きな事態が進行中なのだ。





デブリーフィング DEBRIEFING

 壮大な世界観のなかで、失われた世界をひとつふたつ冒険するというのは、たとえドラマチックなストーリーが語られていたとしても、恒星間戦争の裏ではたいした意味を持たない。そして、辺境世界共和国は、過去に星間連盟(と人類全体)に罪を犯したために、歴史のゴミ箱に捨てられている。同じことがスモークジャガー氏族にも言えるが、ミクラガルドで見つかった残りかすは特定する価値すらないかもしれない。この惑星にワード・オブ・ブレイク狂信者の生き残りがいれば、宇宙が起き上がって少しの注目を示すかもしれないが、結局のところ、我らがヒーローたちもまたブリガドーンを見つけ、トラブルに巻き込まれただけかもしれない。

 このアドベンチャーには三種類のエンドがある――逃亡してサバイバル(ウルフェンシュタイナーを脱するが、ミクラガルドからは無理だった)、転覆(フォン・ウルフェンを打倒したが、惑星脱出は出来なかった)、完全な成功(キャッスルと惑星から脱出)である。こういった結末のその後は以下のようになると考えられる。



岩の上に置き去り MAROONED ON A DEAD ROCK

 プレイヤーたちのグループが降下船を失った上で、ウルフェンシュタイナー軍を撃破するのに失敗するか、あるいはキャッスルをどうにか破壊するのに成功したら、生存の手段もなくミクラガルドに取り残されたことがすぐにも明らかとなるはずだ。航宙艦は何らかの救援手段を持つ――さもなくば少なくとも助けを呼びに行ける――かもしれないが、たとえそうだとしてもプレイヤーたちがキャッスルを脱出してから救援が来るまでの時間は数ヶ月かあるいは数年に及ぶだろう。惑星の過酷な地表の状況や飢えで死ぬには充分な時間である。それでも希望は残る……

 プレイヤーたちが知っているかは別として、キャッスルの施設外にはいくつかの独立した住処がある。このうち一部は大規模な軍事演習を支援するために作られた中継地点や現場から離れた地下指揮壕で、アポロ陥落から1世紀以内に放棄されたものである。少なくとも呼吸が可能で、つつましいコミュニティを1ヶ月か2ヶ月維持出来るだけの物資が備蓄されている。そのほかは、どうにかキャッスルを抜け出し荒野に逃げ込んだ反体制派が作ったもので、訓練地点として使われていた模擬都市の一部が元になっている。独立した居住地としてやっていけるだけの設備と資源をかき集めた反乱軍の村は、自己完結し、気密構造で、わずかな穀物を生産し、おそらくは不定期にキャッスルを秘密裏に襲撃(あるいは取引)してその他の必要なものをなんでも漁っている。

 取り残されたプレイヤーのグループにキャッスルの外で生き残るチャンスがあるとしたら、失われた壕のひとつを発見するか、反体制派の居住地と手を組まねばならない。逃げ出した新参者がいると聞いた、反乱者の一部はおそらく手を差し伸べすらするかもしれない。自分たちの数を増やす望みを抱いて――あるいは単にプレイヤーたちから何か漁れるとみている。



街の新総督 THERE’S A NEW GOVERNOR IN TOWN

 もし、プレイヤーたちのグループが、囚われの身を脱したのみならず、ウルフェンシュタイナーの指導部を打倒し、その過程でキャッスルを壊していなかったのなら、ほぼ自活できる軍事基地と植民地というユニークな機会が与えられる。もし、アポジー・ミューズを失い、惑星に事実上足止めされたことに気づいたのなら、これは特に重要になるだろう。

 惑星を出られないのなら、キャッスルを奪うのがプレイヤーたちにとって未来を切り開く最高の道の一つとなるだろう。基本的に「死んだ岩に取り残された」結末であることがはっきりする一方で、プレイヤーたちは軍事力と艦載級兵器を備えた惑星の事実上の支配者となる。このような戦力を使って与えうるダメージは――特に降下船を何隻か見つけられたのなら――ほとんどのプレイヤーが見過ごせないものである。よってこのルートを辿ったGMは注意すべきである……通常の冒険ゲームから、プレイヤーが運営する完全な海賊国家の建設に変わる可能性は、まさにホラーショーになるだろう。



自由だ!! FREEDOM!!!

 ウルフェンシュタイナー軍がどれだけアポジー・ミューズを破壊したいかを考えると、惑星からの脱出はありそうにないが、それでも可能性は存在する。GMが寛大であれば、ミクラガルドという不愉快な岩の塊から脱することが出来るかもしれない。

 たとえば、惑星降下から1時間以内に探検隊からの連絡が途絶えたにもかかわらず、隊員たちを運んできた航宙艦はいまだ星系内に存在する。IEの任務に1隻以上の降下船が配されることはないのだが、1〜2隻の長距離シャトルがあればチームを救援するには充分である。ただ、移動の片道に3週間かかり、大半のシャトルは1Gで1週間の燃料と物資しか積んでないことを思い出して欲しい(惰性での移動にはもっと時間がかかるが、充分な――それでも最低限の――食料があれば、長期間の航海は確かに可能である)。ウォン・ウルフェンの部下たちがまだキャッスルを占領しているのなら、艦載級対空防衛について考慮する必要があることも忘れてはならない。

 だが、ミクラガルド脱出を成し遂げたプレイヤーたちは、遙か昔に消滅した辺境世界共和国の小規模な孤立地帯とアマリスの遺産が少なくとも32世紀まで生き残っているという情報を伴っている。

 ところが実際のところ、孤立したキャッスル・ウルフェンシュタイナーは、全宇宙からせいぜい考古学的、人類学的な興味を引かれるだけの存在になるだろう。話を広めることで、海賊や日和見主義者がこの世界を訪れて、ロステック強奪を狙うかもしれないが、中心領域のそれより大きな勢力がキャッスル・ウルフェンシュタイナーを脅威として見ることはない。

 従って、脱出を成し遂げたプレイヤーキャラクターは、成し遂げたことに対して名声を得ることはなく華やかに迎えられることもないことに気づく。IE内の反応でさえも、カーマック博士を失ったことが深辺境探索にとって手痛い打撃と考える者がいるので、控えめなものになるかもしれない。とはいえ、プレイヤーたちはベストを尽くし、少なくとも遠征の一部を成功させて戻ったとして感謝されるだろう。もしかしたら、新しい契約を勝ち取れるかもしれない――それを求めているかどうかは彼ら次第だ!



その他の結果 OTHER OUTCOMES

 もし、GM/プレイヤーのグループが上記の選択肢を好まないのなら、1年以内に2隻目のIE船がミクラガルドにやってきたり、カーマック博士の仕事を引き継ぐため後に残るというのも可能だ。あるいは海賊団が星系内に侵入し、取り残されたプレイヤーたちが海賊を招き寄せ、船と船員を奪うチャンスを与えられる。

 もし、プレイヤーたちが脱出し得たのなら――だが、その前にキャッスル・ウルフェンシュタイナーのコンピュータとHPG記録を漁る時間があったのなら、他の失われた共和国前哨基地をひとつ突き止めるかもしれない。あるいはみっつだろうか? そしてアマリス政権の生き残りが深辺境に生きているとの話を持って中心領域に戻ったら、反応はどのようなものだろうか? 中心領域は恒星間戦争の新たな時代に入っているのに、どの王家が本気で気にするのだろうか? 氏族はどうか? さらに言えば、フォン・ウルフェン軍の一部がどうにか離脱し、プレイヤーの船に密航するかハイジャックするかして、中心領域に入ったらどうなるだろうか?

 プレイヤーのグループが、ワールドガイドで触れたスコーピオン帝国などの氏族出身ならば、いまだ簒奪者アマリスの遺産にしがみついているのみならず、ケレンスキーの子らを捕らえるのに成功した(どれだけ落ちこぼれであっても)という意味合いは、あまりに大きすぎて返答せずにはいられないものだ。初代星間連盟の裏切り者を探すため、深辺境を掃討するという新たな氏族侵攻を引き起こすかもしれない。

 大騒ぎが続く可能性は終わりがない……もし、プレイヤーたちがどうにかキャッスル・ウルフェンシュタイナーを脱出出来たのなら。









ゲームマスター・ソースブック GAMEMASTER’S SOURCEBOOK



RWR前哨基地25(ミクラガルド)について ABOUT RWR OUTPOST 25 (MIKLAGARD)



人口 POPULATION

 辺境世界共和国が陥落する前、RWR前哨基地25の定住人口は9000人以下であり、その全員がアマリス家に秘密裏に雇われた――あるいは仕事を強制された人々である。このうち5700人がストーンウルフ内に住む共和国市民で、残りは近くの鉱山にいる。数世紀間、人口を抑制する努力が払われたにもかかわらず、3148年時点では60000〜65000人が惑星上にいると推定される。



再充電ステーション、HPG等級、地元の生活 RECHARGING STATION, HPG CLASS, NATIVE LIFE

 秘密軍事基地であるRWR前哨基地25は、再充電ステーションを持たず、来訪した航宙艦はソーラーセイルを使って自力でドライブに充電するのを余儀なくされる。

 ハイパーパルス通信に関し、ストーンウルフは自前のHPGを持っているが、極秘のネットワークの中でのみ稼働する。ネットワークの大半は、辺境世界共和国の地方前哨基地につながっている。アポロが陥落し、共和国が崩壊した直後、基地の司令官たちは緊急無線封鎖プロトコルを実施し、通信が不能となった。それからの長きに渡って、司令官たち(並びに子孫たち)は、HPG基地を小道具として使い、アマリス帝国と日常的に連絡を取っていると称して基地の秩序を維持した。だが、現実には、通信システムは29世紀の中頃に完全に機能停止していた。最後に通信を受け取ったのは2815年後半で、200光年離れた他の秘密基地からネットワークを経由して届いたものだった。破損したメッセージは、崩壊した共和国の生存者たちに、「ヴァージニア連合」への避難を呼びかけていた。返答する意思も手段もなかったストーンウルフの司令官たちは、メッセージを基地のアーカイブに保存しただけだった。

 ミクラガルドの生態系は、様々な天然の微生物とわずかな土着の植物である。その大半は多肉植物と、病気にかかりやすい極地のコケ類である。これに加えて、植物と動物が輸入され、最低限の農業が行われる基礎となったが、共和国の崩壊後、他の前哨基地からの必要な支援が途絶えたため、わずかな供給も消えていった。初期の数十年は近くの世界に遠征を行い、足りない分を補うことが出来たが、航宙艦が戻らなくなると、タンパク質の生産、必須栄養素の合成に多大な努力が払われ、民衆は合成による代替物の生産が可能になったのである。この「ミステリー・ミール」生産は数世紀にわたって人口を維持するのに成功し、地元民がどうにかやりくりしてきた農業生産の残りがこれを補った。それでも、食糧の備蓄を維持するために、惑星の指導部が非人道的な手段をとっているとの悪い噂は絶えない。



社会=工業レベルと防衛軍 SOCIO-INDUSTRIAL LEVELS AND DEFENDING FORCES

 ミクラガルドに正式な社会=工業指標は存在しない。自給自足に必要な分をのぞき、本物の経済、交易、工業と呼べるものが欠けているのだ。住人たちは互いに物々交換することでニーズを賄っているが、基地の指導部は文明の見せかけを維持するために、ある種の信用追跡システムとして、星間連盟ドルと辺境世界シェケルを流通に使っている。長年、輸入がないことで、下層階級は惑星が事実上全宇宙から切り離されたことを理解しているが、厳しい弾圧によりそれ以上知るのを妨げられている。

 アドベンチャーの開始時点で、ミクラガルドの軍事用重装備(バトルメック、気圏戦闘機、重戦闘車両)は、共和国崩壊時のものがすべて残されており、数十年前の襲撃と、その後ごくたまにやってくる来訪者から漁り取ることで補っている。低い階級の市民たちがマシンを整備する一方で、ウルフェンシュタイナーの士官団だけが操縦を許されている。だが、住人の大半は基礎的な小火器と近接武器の扱いに精通している。









ストーンウルフ・コンプレックス(ウルフェンシュタイナー城) STONE WOLF COMPLEX (CASTLE WULFENSTEINER)

 ミクラガルドにおける生命の中心、ストーンウルフ・コンプレックスは、「ブライアンキャッスル・ウルフェンシュタイナー」か単純に「ウルフェンシュタイナー城」と呼ばれる。地球帝国中で見られるキャッスル・ブライアンをモデルに作られたこの施設(同じ広範囲な軍事工学を用い、長期の生存を目指している)は、ステファン・アマリスが大規模クーデターに向けて秘密軍を訓練するために作った数十の隠し基地のひとつに過ぎない。



ウルフェンシュタイナー城 CASTLE WULFENSTEINER

 小型キャッスルブライアンとして作られた古い施設、ウルフェンシュタイナーは、元々、ステファン・アマリスの1個秘密師団(メック、装甲車両、歩兵、支援人員)用の訓練地点、居住地として作られた。居住に適さない大気であることから、この強化施設は特に密閉を主眼に設計されているが、四世紀近く孤立して過ごした――支配民の間で起きる争乱により定期的に中断する――後、システムの多くは修理不能となっている。

 以下の段落では、最下層から地表の建物まで、ウルフシュタイナーの施設を解説する。GMが各階を作るのに充分な詳細(率直に言って精密なマップを描く予算はなかった)、どのように人が住んでいるか、各フロアボスにどう対処するかが記述されている。

 境界: 鉱業・水耕エリア(レベル0)をのぞいて、キャッスルの大半は一辺700メートルの巨大な正方形となっている(レベル9以上は800×800メートルである)。各階は小さな隔壁、部屋、スイートに分かれ、たいていは直角に配置されるが、単調さを減らし、プレイヤーの興味を保つため、GMは好きなようにレイアウトを変更してもいい。装甲隔壁が外周に沿って配置され、その向こうまで拡張されているのが示唆されるが、GMがフロアの「基準外」にあるスペシャルルーム/シークレットエリアを望まない限りは出てこない。装甲隔壁の主目的は、キャッスルが実際には広大であり、アドベンチャーの道中で出会うより大勢が住んでいるのをプレイヤーに知らしめることである。GMが追加のスペシャルルーム/シークレットエリアを追加した場合、プレイヤーが発見できる専用の鍵でのみ装甲隔壁は開く。耐力内壁と装甲隔壁は少なくとも0.5〜1メートル幅の強化フェロクリートとして扱い、小火器ではまず貫通出来ず、支援火器と爆薬に高い耐性を持つ。外周壁は3メートルの厚さがあり、車両・メックの重兵器を除いて事実上貫通不可能である。

 エレベーターと階段: 上部10階(つまりレベル1以上)には、少なくとも10基の人用エレベーターが存在し、外周壁の東西に2基ずつ、南北側の中央に1基、中心の「共用ルーム」(各階のど真ん中)周辺の壁に4基がある。レベル9以上には、車両サイズのエレベーターが追加され、各階の角近くに4基の大型エレベーターがある(稼働するのなら)。フロアの間には緊急用に階段も通っているが、すべて外周壁に沿って作られており、全基地のロックダウンの際にはエレベーターと同じく閉鎖され、1階以上登り降りできないようになる。





レベル0 - 鉱石採掘と水耕栽培 LEVEL 0 - ORE MINING AND HYDROPONICS

 この階は拘禁施設のひとつ下にある。かつては労働者たちの大多数が、上の工作室で使う原材料の採掘と精錬していた。坑道が全方向に張り巡らされ、一部は何キロメートルも続いている。そのほとんどが少ない埋蔵量を掘り尽くし、一部は落盤したのだが、中央坑道の相当数が、追加の生活区画、保管庫として拡張されている。だが、3つの大きな区画が水耕栽培園に改装され、食料の主要供給源となっている。

 ルール: キャッスル建設後の拡張部分である鉱石採掘、水耕栽培レベルは、ウルフェンシュタイナーの「階層」の中で最も無秩序かつランダムである。採掘用の坑道が全方向に数十キロメートル伸びているかのように見える。3〜40メートル以上直線になっている道はほとんどなく、突然曲がったり、広がって部屋になったりする。一番大きい部屋は横幅60メートルサイズで、長年のうちに居住区画となり、ドア、壁、配電設備で仕上げられている。新しい現役の坑道や落盤した坑道をのぞいて、この階は充分に明るく、プレイヤーに視界修正がかかることはない。

 水耕栽培園(3つともレベル2のキッチンに直接向かうリフトの近くにある)は、約90×30メートルの部屋で、紫外線照明と水道パイプを備えている。パイプはタンクとスプリンクラーシステムにつながり、絶え間なく葉物野菜にミストスプレーを吹きかけている。これらの部屋は高湿度の気温29度に保たれており、比べると他の坑道は寒く感じる。詳しく調べてみると、栽培されているのはジャガイモ、レタス、キャベツ、ホウレンソウ、ブロッコリー、ニンジンなどであるが、寄生虫や病原菌がないのに病的に見える。水耕栽培一区画の半分が穀物用になっており、小麦、大麦、米と、奇形の綿花や麻すらも育てられている。野菜と同じように、穀物も元気がなく発育不良である。

 NPCs: レベル0は主に労働者が運営しており、治安維持のため少数の警備員(労働者10人に1人の割合)がパトロールする。居住している労働者たちが定期的に手に負えなくなるからだ。水耕栽培園で働くのは労働者と技術者の組み合わせで、その多くが軽装で作業する。労働者たちの多くが腕に旧スモークジャガー氏族の紋章に似た入れ隅をしているが、シュタイナーの拳や辺境世界の鮫の大雑把な入れ墨も見える――すべて同じ場所に掘られているが、一部は若干の個性がある。

 ボス("ユーバーフリーク・ミュータント"): このレベルの"ボス"らしき者は存在せず、カードも持ってない。オーガスタス・カッツェと同じように、この異常に大きな種族は、奴隷化されたスモークジャガー(採掘レベルにほとんどが住む)のエレメンタルの子孫、あるいはもしかしたら実験の結果である。男性とされているが、ミュータントの異様な筋肉、ボサボサの長髪、ゴツゴツしたプレート・アーマー、奇妙な声域は、すべて性別の確認を困難にするものである。そして彼がそれを説明することはない……なぜなら、病気の子供並みの知性と人格しかないからだ。通常、鉱山の最も危険な場所で起用される彼は、プラズマ採掘ドリルを持っており、戦闘では支援レーザーとなるが、問題の解決には拳を使うことになりそうだ。





レベル1 - 拘禁と尋問 LEVEL 1-DETENTION AND INTERROGATION

 ウルフシュタイナーで公式に最下層とされているのは拘置区画である。かつては原材料保管庫、追加の業務サービスなどに使われていたここは不心得者を入れる矯正収容所になり果てた。かつては食料、衣料品、生産用資源などを備蓄していたかもしれない部屋は、いまや奴隷たちを従わせるための拘留、尋問、その他の刑罰に使われる。





レベル2 - 台所と食堂 LEVEL 2-KITCHEN AND MESS

 このレベルには、勤務中の職員の大半が使用する各種の調理場と食堂がある。元々は、食堂区画、キッチン、食料庫、水浄化設備、冷蔵庫、汚水処理設備が均等に並んでいたが、キャッスルのニーズは数世紀で変化し、家畜小屋と「原料処理」センターを追加せざるを得なくなっている。従って、このレベルで最も獣的な部屋は、家畜小屋と畜殺場である。ウルフェンシュタイナーの食用動物の子孫たちが、恐るべき近親交配を繰り返し、狭い部屋で食べられるまで育てられ、それから畜殺される。非人道的で胃が痛くなるような作業だが、新鮮な食肉のストックを維持するには非常に有効だと証明されている。

 感染リスク: このレベル全体で見つかる基本的なカトラリーと銀食器(大半は薄っぺらで作りが悪いので武器としては役に立たない)は別として、畜殺場やキッチンにはたくさんの刃物、フック、チェーン、その他の尖った道具があり、即席のハチェット、ダガー、ウィップ、あるいは槍にすらなる。だが不快なことに、こういった道具のほとんんどにバクテリアやその他の毒が付着しており、特に洗浄してないものや、食肉処理場、キッチンで見つかるものはその傾向が強い――このレベルの「ボス」マックス・ブッチャー軍曹が持っているものは言うまでもない。地元民は、こういった寄生虫や毒に免疫が出来ているが、ミューズに乗ってきた者たちやプレイヤーのグループは同じだとは言えず、汚染された武器で傷を負ったのなら感染の高いリスクを背負うことになる。

 NPCs: レベル2は主に食料準備、貯蔵、メンテナンス要員の労働者、テックにより運営され、各部屋にそれぞれのタイプのNPCが平均1D6人いる。加えて3D6×5人の衛兵、2D6×5人の兵士、1D6人の士官もおり、食堂エリアに分散している。キッチンは2D6の労働者、1D6人のテック、ボス1人がいる。





レベル3 - 居住区(支援要員) LEVEL 3-LIVING QUARTERS (SUPPORT SERVICES)

 このレベルの大半がウルフェンシュタイナーの「労働者階級」の居室、娯楽施設である。要するに、レベル0の鉱山にいるよりは上位の奴隷が住むところである。

 ボス(ルーサー・シャッブス): キャッスルの医学界で高位かつ尊敬されているシャッブス博士(最高医務責任者からはほど遠いが)は、レベル3住人たちからフロアのリーダー的な存在と見なされており、従って緊急のバイパスキーを任されている。シャッブスは外側の隅にあるアパートメントに、妻、ルームメイトと一緒に住んでいるが、彼の持つ鍵でアンロック出来るエレベーターは中心の共用ルームにある。彼は民間人であり、ファイターと言うよりヒーラーであるが、小火器を使う訓練を受けており、基地全体がロックダウンされている間、外界人を恐ろしい脅威以外の何者でもないと見なすだろう。





レベル4 - 居住区(兵士) LEVEL 4-LIVING QUARTERS (SOLDIERY)

 このレベルはレベル3によく似ているが、ウルフェンシュタイナーの「中産階級」……かつて師団の歩兵、戦車兵の大半をなしていた警備要員と下士官兵向けである。

 ルール: このレベルのレイアウトはレベル3と基本的な間取りが一緒だが、こちらのアパートの大半は15×6メートルで、居住スペースが少しだけ広くなっている。

 このレベルはウルフェンシュタイナーの社会で「上の階級」と見なされる人々向けだが、家具と装飾はレベル3より粗雑で古びているように見える……その理由の大半は、ここが何世代にもわたり乱暴な兵士たちの住居となってきたからだ。彼らは週末の激しいパーティーやたまの乱闘で調度を壊した後、誰かが直すのに任せるのである。ヴィッドスクリーンの半分は壊れているか、半分壊れたゲームシステムにつながっている。

 ボス(レナーテ・アドラー): レベル6の大尉と婚約しているのだが、アドラー中尉はまだレベル4に住んでおり、基地全体の警報が鳴った際にもいた。ライラ系コミュニティの有力者という社会的な地位であることから、彼女は緊急のアクセスキーカードを任されており、従って名目上の「フロア指揮官」を務めている。レーザーライフルを背負い、旧式のロイネックスSMGを手にパトロールしているが、実弾の発砲は貴重な金属資源の浪費と考えるため、戦闘ではレーザーを使うことを好む。アドラー中尉はフロアの北東部に近いスイートのひとつに住んでいるが、キーが動かすのは最南部のエレベーターである。





レベル5 - 室内訓練場と射撃場 LEVEL 5-INDOOR TRAINING AND RANGES

 このレベルは大学のキャンパスに似ており、講義ホール、体育館、射撃場のような部屋にアレンジされ、シミュレーターベイやアーケードまでもがある。換気状態がますます悪化する中で、何世代にもわたり過酷なトレーニングが繰り返された結果、この部屋の臭気はキッチンレベルの家畜小屋と畜殺場よりはましな程度になっている。当然ながら、このレベルには大隊分の歩兵が一度に使える大きさの共用シャワーとロッカールームがある。





レベル6 - 居住区(幹部団) LEVEL 6-LIVING QUARTERS(OFFICER CORPS)

 幹部団(全階級のメック戦士含む)の住居、娯楽設備は、レベル4に比べてあからさまに豪華なものとなっている。図書館とホロシアターまであるが、本は少なく、ホロプロジェクターは少なくとも100年前に三次元で動作するのをやめている。

 ボス(トーマス・ヴォンウィンクル): ヴォンウィンクル大尉は同僚たちから「美少年」と見なされており、清潔で一分の隙もない装いを保つのに血道を上げ、キャッスルで最高に手入れされた制服を維持している。靴と階級章でさえも毎日磨き上げられる。だが、虚栄心は確かに彼の特徴のひとつだが、それ以外にも特徴はある。彼は厳格にして真面目な士官で、格闘、射撃、刀剣の練習を日夜繰り返し、その腕前はウルフェンシュタイナーの士官の中でも類い希なものとして有名である。中には彼が秘密の工作員だと考える者たちもいる……幕僚たちに背信の徴候がないかフォン・ウルフェンが彼を使って監視しているのだ。





レベル7 - 戦術本部(CIC) LEVEL 7-TACTICAL HEADQUARTERS (CIC)

 この基地の中枢たる戦術本部では、士官たちと支援スタッフが施設全体を監視、管理している。このレベルのセキュリティは厳重なものである。とりわけその理由は、コンピュータと制御システムの大多数がこのレベルに収められ、軍事作戦の計画に使われるのみならず、施設の生命維持システム、配電、通信、その他の大半を維持していることにある。

 ルール: このフロアのレイアウトは、事実上、レベル5と6のハイブリッドである。レベル5と同じように、会議場、講義室として機能する部屋がある。それは、おそらく120人の兵士が一度に訓練、ブリーフィングを行うためのもので、ビデオと(ともかく部屋の一つには)ホログラフィック・プロジェクターシステムがある。3x9メートルのファイル室から12x12の指揮スイートまで、オフィスの多くが幹部用居住区画のレイアウトに従っており、レベル2の食堂より臭気と外見の面でましなカフェテリアまでもがある。このレベルには少なくとも4つの大部屋(20x20メートルから30x30メートルまで)も存在し、認可された人間にのみロックが解除される。このうち2つは地下司令壕として機能し、装甲壁と隔壁を備えている。すべての部屋に監視カメラが設置されている。中に入るには「ブザーでの呼び入れ」が必要で、幕僚の一人だとすぐにわからない限りは入れそうもない。もう2つは通信・制御室で、ここから基地の中と外に命令が送信され、伝達される。通信/制御室も関係者以外立ち入り禁止で、入室に「ブザーでの呼び入れ」が必要だが、このレベルの通信技術者と士官は余計な形式なしにドアを開けられるキーカードを所有している。

 もしプレイヤーが通信/制御室に突入して、時間をかけて操作することが出来たなら、他の場所では困難か不可能な行動を実行可能になるが、内部通信で適切な人物を説得するか、あるいは極めて難しいコンピュータ技能のチェックが必要になる。プレイヤーは以下の行動を取ることが出来る。

 ボス(エフラム・オッフェンバッハ): オッフェンバッハ少佐はフォン・ウルフェン少将の右腕で、おそらく最も近しい側近である。大佐の星を得る間近である彼は、フォン・ウルフェンの惑星総督、少将という称号を受け継ぐ後継者と見なされており、その結果、ややうぬぼれた態度をとっている。馬鹿ではない彼は、プレイヤーがこのレベルにやってきても司令壕に籠もり、部下たちが危機に対処するのに任せる。もしカーマックが一緒にいるなら、プレイヤーたちが司令壕に近づきすぎた際に、「話し合い」のため送り込む――それから寝返った研究者の背後でドアをロックする。もし、プレイヤーたちが降伏する、敗北した、通信/指揮本部を乗っ取ってすさまじい大混乱を引き起こしたと思いこませることに成功したら、オッフェンバッハ少佐は司令壕を離れるかもしれない。あるいは、プレイヤーたちは単純にオッフェンバッハ少佐をやり過ごして、次のレベルまでの別の道を探すことが出来る。オッフェンバッハ少佐のキーは、南側外壁のエレベーターのドアを開く。





レベル8 - 外部防衛 LEVEL 8-OUTER SECURITY

 このレベルは、外部からの危機に対する防波堤であり、日常的にCICとほぼ同数の人員が配置されている。施設内にある小火器、弾薬、ボディアーマーの大半は、このレベルに少なくとも4つある武器庫で見つかる。外部防衛では、頭上からやってくる脅威を監視するだけでなく、下のレベルにあるセキュリティカメラとリモートセンサーの監視も行う。ここから施設全体のロックダウンが可能で、アンロックも可能である。

 ルール: このレベルは事実上レベル1の焼き直しである。例外は4つの監獄区画が北ではなく入り口の南に存在していることだ。出入り可能な箇所のレイアウトがなんらかの理由で通常のキャッスルから逸脱していることが示唆される。レベル1と同じように、各監獄区画には警備室と2つの特別な防音尋問室と、さらに2つの「独房」がある。プレイヤーがエレベーターエントランスに到着すると、中央警備室(防弾ガラスで守られ、警備管制、通信設備がある)、カメラ監視室、緊急ロッカー2つに出くわす。このレベルのボス、ガイ・デュマ少佐はここを拠点としているので、即座に激しい戦いが勃発する。彼は、この部屋の中で黒のナイトホークPA(L)スーツ(星間連盟帝国の記章付き)を身にまとって姿を表す。

 ボス(ガイ・デュマ): デュマ少佐とオフェンバッハ少佐は、キャッスルの権力構造の中で同じ階級なのだが、対象的な例となっている。オフェンバッハはウルフェンシュタイナーの幹部団の顔役であるが、ガイ・デュマは兵士階級の頂点である。戦士として絶頂期にあるデュマは、肉体的なピークにあり、古参兵の水準に近い軍事的技能を持つ。バトルアーマーを乗りこなせる数少ない一人として(この施設ができて以来、バトルアーマーのような兵器は完全に不足している)、デュマはプレイヤーの集団による脅威に適切に対処するだろう。

 デュマ少佐は容赦のない戦闘員で、戦闘ステータスは通常の兵士と同じだが、ナイトホークPA(L)スーツは個人用アーマーと違って、アーマー値の減少がないことを忘れてはならない。デュマ少佐のダメージモニターがスタート時点から50パーセントを下回る(7/14ピップ以下)か、メイン武器の弾薬が尽きたら、近くのホールやドアから1D6人の隊員が出てきて、上官が司令本部に撤退するのを援護する。

 撤退すると、デュマは5ターン使って、再装填を行い、レベル3の強化メディパックと負傷パッチで疲労を消し去って初期状態のヘルスの75パーセント(最低11/14ピップ)に戻す。その後、彼は姿を表して戦闘を再開する。(各メディパックは8点の疲労を解消し、負傷パッチは2点のダメージを回復して4疲労点を与える。デュマーは回復中に完全に昏倒するのを避けるため交互に使わないとならない)

 退却後、戦闘再開するにあたり、回復したデュマは薬物で朦朧としてすべてのダイスロールに-2の修正を受ける。一度に大量の化学物質を服用したことと急いで実戦に戻ったことの複合的な効果である。デュマは二度目の退却をすることはない。





レベル9 - モータープール LEVEL 9-MOTOR POOL

 800x800メートルのこのレベルは車両の格納を専門としており、一度に1個連隊分の装甲戦闘車両を収容できる広さを持つ。ガレージのような装甲ベイが外部防壁沿いに並び、フロアの残りにはオープンなパーキングエリア、巨大リフト、3x3メートルのフェロクリート円柱と錆びて埃の積もったガントリー(両方とも天井を支え、遮蔽を提供する)がある。隣の倉庫施設には部品と弾薬があるが、とっくの昔にほぼ底をついている。サイズ問わず重量級車両に充分な大きさのベイを使うことで、テックたちは整備、修理、共食いの際の移動が楽になっている。

 モータープールの内部に6基の大型エレベーターが設置され、レベル10、11のメックベイを通って地表に車体を移動出来るが、エレベーターのうち一部は故障しており、残った不安定なものを使うか、地表まで螺旋状に登っていく緊急トンネルを使うしかない(現在閉鎖中)。

 ボス(存在せず): モータープールにボスはいない。上の階に上がるのに、キーカードでのアクセスを必要としない。





レベル10 - 下層バトルメックベイ LEVEL 10-LOWER BATTLEMECH BAYS

 ここには1個連隊分のメックがかつて存在した。今では基本的に、この施設の重装備が捨てられたボーンヤードとなっている。レベル9からのエレベーター6基はこのフロアを通っており、モータープール、上層メックベイに移動可能である。施設の気密が破られた際には、故障や酸素漏れが発生する可能性の高いフロアなので、人間サイズの通路は気密区画となっている。

 ボス(存在せず): 下層バトルメックベイにボスはいない。上の階に上がるのに、キーカードでのアクセスを必要としない。





レベル11 - 上層バトルメックベイ LEVEL 11-UPPER BATTLEMECH BAYS

 レベル10と同じレイアウトのこのフロアは、残った稼働するメックが置いてある。通信グリッドが落ちた際、ウルフェンシュタイナーには1個メック連隊があるのみだったので、ベイの大半は老朽化した戦闘マシンで満たされている。このレベルはキャッスルが「地表」に到達するポイントでもある。メックが機動する充分な広さがあるので、外につながる6つの出入り口に歩いて移動可能である。レベル10と同じく、人間サイズのアクセスポイントの事実上全てが気密区画となっている。

 レベル11はモータープールからつながる車両用リフト6基の終着点である。この広大なレベルの四隅に追加の車両リフトがあり、地表までつながっている。キャラクターたちは稼働する車両リフトのすべてで、地表の中央棟の角にある特別なエアロックまで移動できる。上までつくと、4基のリフトは気密処理を開始して、外部エアロックの床部分と化し、自動的に減圧する。エレベーターはベイが空になり、再加圧すると戻っていく。その一方、人間用のエレベーターは、プレイヤーが基地の受け入れエリアから案内されたのと同じ、ほとんど何もない地表施設の中に出る。

 ルール: ここでプレイヤーたちのメックや車両を発見できたのなら、奪還が可能だが、動かす前に静止状態から起動せねばならない。バトルメックとバトルアーマーは起動に1分間必要で、産業用メックと戦闘車両は30秒、非戦闘車両は15秒かかる。ここで見つかるプレイヤーのメックとバトルアーマーは伏せた状態にある。





レベル12 - 地表施設 LEVEL 12-THE SURFACE COMPLEX

 ウルフェンシュタイナー基地の外見についての記述は、トラック1(ようこそ、旅人よ!)の「戦術分析」にある。端的に言うと、キャッスル地表施設の全体(隣接する降下パッド、滑走路含む)は、雄大な渓谷を望む低い台地の南、断崖の上、およそ15平方kmを占めている。キャッスル・ブライアン流に建設されているウルフェンシュタイナーは、隠蔽された対宇宙艦艇用海軍装備、HPG(作動せず)、複数のレーダー管制塔、艦艇・航空機用の滑走路と降下パッドを揃えている。各建物の壁と屋上は厳重に要塞化、装甲化されており、人間が呼吸出来るように与圧され、出入り口はすべてエアロックである。中央にある低層で850x850メートルの巨大な建物(屋上には主レーダー塔と壊れたHPG受信アンテナがある)は、プレイヤーたちがアドベンチャーの大半を過ごすであろうキャッスルの中心である。 内部へのアクセスはレベル9〜11を通る人間用エレベーターを使うか、地表の東西にある受け入れエリアから長いトンネルを通る。安全と警備のために、角にある車両用エアロックは他の地表レベルの施設からは隔離されている。よって、こういったアクセスポイントを使うプレイヤーは、ここから中央の施設に入ることは出来ない。

 キャッスル全体のうち、地表の建物は、プレイヤーに最も無視される部分である。ここには、受け入れエリアのエアロックにつながる電動ムーバーを除けば、どう見ても使われてない無数の小さなオフィスと部屋しかない。放棄された家具と大昔に機能停止したコンピュータステーションがたくさんあるが、プレイヤーが探せば興味を引く3つのエリアを発見する。そのうち2つは、西側の両角近くにそれぞれある分厚い金庫状のドアの特別な部屋である。ドアを開けるとエアロックになっていて、上に向かうはしごから、ふたつの無線レーダー管制塔につながっている(屋根から20メートル上)。キャッスルの奥底から遠隔操作できる自動スタンバイモードに入っている両管制塔は、エアロックに表示されているように減圧されたままである。どれだけいじっても、パッキンが劣化して惑星の大気が入り込んでしまっているので、与圧することはできない。与圧されておらず、呼吸不可能にも関わらず、管制塔への出入り自体は可能だが、酸素タンク付き環境装備を持ったキャラクターだけが長時間活動可能である。興味深い3つ目は、北東を占める極高周波発生装置(動作せず)の操作、機械室である。調べようとするのなら押し入る必要があり、中では往古の死んだ技術が見つかる。空気は古く、乾き、薄いが少なくとも呼吸可能である。

 かつてテックたちが恒星間通信を送信し、受信し、復元したHPGの通信ステーションを、プレイヤーたちが存分にいじくり回したのなら、データベースから最後のメッセージを吸い出すことができるかもしれない。そのメッセージは、2768年12月16日に「オメガ・ハート」が中継したものである。

  『アポロ陥落。地球も疑わしい。コンディション・ブラック発動。司令諸君の成功を祈る』

 さらに調査すれば、一部が壊れた別のメッセージが見つかるかもしれない。中継基地から受け取ったこの文字化けしたメッセージは、日付が2815年12月のもので、避難地を探す元辺境世界共和国の生存者たちに「バージニア連合」へ来るよう招待するものであった。ストーンウルフからどんな返事が送られたのかを示す証拠はデータバンクになかったが、そもそも2852年末の時点でHPGが稼働状況にあったかも定かでないのである。どのような理由であれ、キャッスルの指導部は招待を無視したようである。





キャッスルの向こう側 - 模擬都市 BEYOND THE CASTLE-THE MOCK CITIES

 ウルフェンシュタイナーを超えて、ミクラガルドの広大な荒野に入ったプレイヤーたちは、小さな村落から密集した郊外まで各種サイズの街の遺跡を多数発見する。小さい建物の大半は瓦礫と化しているが、大きな建物、強化された建物は時代を耐え抜いて、砂に覆われ曲がりくねった通りや忘れられた星間連盟時代技術の残骸という風景の中にそびえ立っている。

 まれにだが、こういった模擬都市にはキャッスルから逃げてきたはぐれものが住んでいることがある。彼らは、サルベージした空気・水浄化技術、パッチワークの環境装備、漁りとったり交換した武器を使って生き延びている。こういった小さな飛び地の住人たちが惑星外から来た異邦人にどう反応するかは誰にもわからない。





抵抗勢力 THE HOLDOUTS

 ミクラガルドの人々は、反対勢力であろうとウルフェンシュタイナー人であろうと、ステファン・アマリスの反乱のあと、星間連盟が崩壊することはなかったという入念な作り話を何世代にも渡って聞かされている。実際、脆弱で腐敗したキャメロンが失墜し、「大反逆者」アレクサンドル・ケレンスキーが敗北したあと、アマリスが星間連盟を真の帝国――星間連盟帝国――に作り直したと彼らは信じているのだ。この精巧なフィクションの中で、辺境世界共和国は同輩たちのトップに立ったとされる。それは、多様性を受容していること、品性が優れていること、人々が偉大であるからだった。アポロ、別名テラ・プライムは、ヒエラルキーの中で地球と同じくらいに重要になり、共和国はかつてないほどに繁栄している。





星間連盟帝国の階級、用語、記章 STAR LEAGUE EMPIRE RANKS, TERMS, AND INSIGNIA

 ウルフェンシュタイナーの指揮系統は、日常においてSLDFの階級構造と記章を使い、ごくわずかな変更しかしていない。目に見える最大の変更点は、「星間連盟」を「星間連盟帝国」に、「星間連盟防衛軍(SLDF)」を「星間連盟帝国軍(SLIC)」に変えたこと、全部署のロゴでキャメロンスターの上にアマリスシャークを重ねていることである。





公式見解 THE PARTY LINE

 キャッスル・ウルフェンシュタイナーが、いかに辺境世界の秘密前哨基地から帝国宙域の一番端にある植民地へと変貌を遂げたかの歴史は、事実から大きく書き直され、元の指導者一族が何世代にも渡って増強してきた。その結果、下層の労働者から総督その人自身まで、事実上全てのキャッスル住人が、以下のような解釈を取り入れている。そして大半は完全に信じすらしているのだ。

 キャッスルの建設で始まり、惑星がミクラガルドと名付けられる以前から、最初の世代がステファン・アマリスの秘密軍を立ち上げていたことは否定されていない。それはキャメロン王朝を打倒するという究極の目的のためだ。この解釈では、キャメロン家の統治は本質的に腐敗しており、護民官アレクサンドル・ケレンスキーは堕落の奴隷的な信奉者にして執行者だとし、反乱によって人類の愛すべき故郷が権力狂いの化け物たちから開放されたものとみなす。長年にわたりステファン・アマリスは地球帝国の外周国(2760年代に存在した自由を愛する辺境4ヶ国のみならず貴族制五大王家含む)に対する虐待の絶え間ないサイクルを終わらせようとしてきたが、ついに若き第一君主リチャード・キャメロンを祖先たちと同じ悪の道から救えないと気づいたのだ。王家君主たちは第一君主とたちの悪いSLDF最高司令官に恐れをなしていたことから、ステファンは非常に気が進まないながら誰の力も借りず力づくで玉座を奪い取るのが人類に残された最後の希望だと悟った。目的を果たすべく、辺境世界の秘密前哨基地は作られ、星間連盟の真の愛国者たちが過酷な任務に備えて育成、訓練されたのである。

 キャッスル住人が「愛国的クーデター」と呼ぶもののあと、公平で平等な星間連盟への速やかな移行は達成されず、アレクサンドル・ケレンスキー将軍が亡き主君に代わって反旗を翻した。辺境世界共和国に侵攻して、罪なき国民を虐殺することでアマリスを罰しようという間違った行動に出たケレンスキーと配下の略奪者たちは、情け容赦なく次々と惑星を荒らしていった。共和国主星、アポロ星系のテラ・プライムで、最後の敗北が待っていた。運命的な戦闘でケレンスキーが戦死した後、SLDFの反乱部隊は後退して、散り散りになった。指導者が死んだことで、破綻し士気低下した反乱軍は、次の10年で捕らえられるか撃破された。第一君主ステファン・アマリスと忠実な軍の大いなる団結と力が敵を破ったのである。

 内戦の煙が晴れると、アマリスと仲間の王家君主たちは、星間連盟をもっと力強く、連帯した星間連盟帝国として再組織した。帝国では、指導者たちの肩書とは関係なく、全参加国が同じ発言権を持つ。当然、星間連盟防衛軍は星間連盟帝国軍と改名され、かつて互いに交戦したのと同じ新師団によって補充、強化された。アマリス家の統治で、人類が体験したことのない平和と繁栄の新時代が始まった。

 星間連盟の復活に伴い、革命に備えて軍を訓練していた秘密基地の世界は、深宇宙に向かう冒険的な新フロンティアの前哨地となった。フロンティアのあちこちで新たな植民地が現れ、人類の領域をかつてなく拡大した。それまでは人類宙域の外周に位置する必死な小国に過ぎなかった辺境国家群は、古き大王家と同じ規模にまで成長し、ついには上回ったのである。新たな植民者はストーンウルフ城のある名称未定の惑星にまでやってきた。その大半がライラ共和国出身で、彼らの持ち込んだ起業家精神がキャッスルを今日のような繁栄する真の社会に作り変える助けとなった。事実、ミクラガルドの名前を世界に与えたのは新植民者である――古ノルド語で「グレートシティ」の意味だ。彼らはキャッスルに新しい名前、ウルフェンシュタイナーも与えた……3020年代に総督の座についたカレブ・フォン・ウルフェンから来ている。現在のフォン・ウルフェンは、実際のところカレブの子孫である。

 だが、ミクラガルドの繁栄が辺境の隣人との貿易を促すと、不幸にも宇宙海賊軍の注意まで引いてしまった。キャッスル・ウルフェンシュタイナーの抜かりない兵士たちは海賊を寄せ付けず、本拠地のみならず、付近の世界もまた数多く守った。還らぬものとなった兵士たちの尊い犠牲は未来永劫忘れられることはないだろう。そしてスモークジャガーの盗賊たちがやってきた。獰猛で野蛮な海賊氏族は、戦いのために生き、優れた戦士の力にのみ敬意を払った。だがジャガーは激しく戦った一方、ミクラガルドのストーンウルフには敵わなかったのである。

 ウルフェンシュタイナーの名誉ある主人たちは、敗北した変節者たちと野性的な一族を処刑することなく、惑わされた不信心者たちに慈悲を与え、キャッスル内に居場所を提供した。無法な性質を矯正するのは骨が折れたが、続くスモークジャガーの子孫たちはそれにもかかわらずミクラガルドの力と繁栄に有益で、彼らがもたらした団結と倹約に関する独自の見解は、この不毛な世界での生活に大きな恵みとなっている。実際、優秀な氏族技術者たちの創意工夫なくしては、キャッスルの人口は数十年前に維持出来なくなっていたかもしれない。

 これが、成長する星間連盟帝国の永遠の砦、ミクラガルドにまつわる物語である。そしてそのすべてが、ステファン・アマリス第一君主=皇帝の知恵、力、犠牲の賜物なのだ!

 万歳!





真実……多かれ少なかれ THE TRUTH…MORE OR LESS

 プレイヤーたちはもちろんのこと、中心領域で何があったかの通史を知っている……辺境世界共和国の陥落とステファン・アマリスの敗北から、ケレンスキーのエグゾダス、継承権戦争、氏族侵攻、聖戦に至る道筋、スフィア共和国の誕生、現在の混乱まで。だが、ミクラガルドの本当の歴史については話が別だ。

 簡潔に述べると、アポロ陥落後に起きたことは、基地の司令官(エフラム・オフェンバッハ)の決断がもたらしたものである――外部の世界との通信をすべて切断し、アマリスか代理人から危険は去ったとの正式な通知があるまで、すべて順調なように振る舞うのである。メッセージは来ず、誰もが故郷からの情報を渇望するようになると、オフェンバッハと幕僚たちは単純に順調なふりを続行し、長年にわたり平穏なように装った。最終的に、ケレンスキーがステファン・アマリスの打倒に失敗した後で星間連盟帝国が作られたというフィクションをでっち上げた彼らは、前哨基地が今では軍事入植地(アマリス家の庇護のもと、再統合された星間連盟による深宇宙作戦の哨所)として再利用されているとの名目により活動を続けた。

 しばらくのあいだ、オフェンバッハ、その幕僚、後継者たちは、平和を維持するために働き、彼らの任務がいかに大失敗したか知られるのを妨げ、興味を持ち過ぎた者たちが失踪するのは本国の持ち場に異動になったからと説明し、その一方、航宙艦4隻、降下船20隻で到達出来る居住世界への襲撃任務を実行し、結果として生まれた獲得と損害を共和国からの補給や(完全に自然な)戦力の再配置と説明した。こういう任務から得られるたまの捕虜は、大変な世界からの海賊や難民とし、中心領域に関する話の食い違いは間違ったニュース報道、反乱軍のプロパガンダ、あるいは単なる狂気によるものとされた。

 30世紀半ばに現れた大勢のライラ難民や31世紀後半のスモークジャガー氏族生存者についても似たような説明がなされた。ライラ人たちは辺境世界共和国の拡大するフロンティアで新たな家への居住を望む植民者と説明され、ジャガーは変わった習慣ともっと変わった改造装備を持った捕虜の海賊とされた。両グループともに、最初は隔離されていたが、一方的に(あるいは互いに)教化されるか、最終的に公式見解に従うようになった。だが、ライラが完全に統合されて、惑星にライラ風の名前が付き、ドイツ語のアクセントがキャッスルで一般的になった一方で、怒りっぽく反抗的なジャガーたちはリメンバランスを記憶するなど氏族の伝統を秘密裏に続けた(リメンバランスには、ジャガーが没落し、いかに「裏切り者の巣」に「腰を落ち着ける」ことになったかについて独自の説明と言い訳が付け加えられている)。キャッスルの指導部が何度も弾圧してジャガーは減少し、残った人口と文化は文字通り地下に追いやられ、鉱山で見捨てられた「トロッグ」となったのである。

 奇妙なことにジャガー民起源の奇妙なタトゥーがキャッスル中で見られる。最初は恥ずべきもの……教化の最中にキャッスル指導部がジャガーに入れた追放の「焼印」……として見られたものの、ジャガーたちは最終的に印をおのがものとし、遺産の永続的なサインとして誇りを抱くようになった――子供たちにも早い段階で入れるようになっている。そのうち、ライラ人と辺境世界人の一部も似たような理由でこの習慣を受け入れ、起源を誇るために祖先の記章を身につけた。これは人種的、文化的な分離に対するおかしな試みの逆をいっているが、キャッスル指導部は特に何も言わず受け入れることを選んだ。(中には奨励した者さえいた。彼らがどうにか作り上げた階層社会を効果的にまとめたという皮肉について言及している)

 一方で、海軍の艦が駄目になり始めると、キャッスル指導部はなぜ船が来なくなったかの言い訳を付け加えて話を続け、HPGの故障を否定しさえし、フェイクニュースと焼き直しのプロパガンダが絶え間なく書かれ、何も起きてないかのごとく人々に伝えられた。矛盾だらけで整合性の取れない作り話だったが、キャッスル・ウルフェンシュタイナーの住人たちは毒の大気の中で死ぬよりは従ったほうがいいと気づくようになったのである。その時までに、惑星の第一世代はほとんど残っておらず、よって住人が知る唯一の家は事実上そこだけとなった。

 荒涼としているが、ミクラガルドの住人たち全員があるがままを受け入れ、現在まで続いている。従って、惑星と城は確固とした縁故主義体制の手に握られ、少なくとも人々に生きる意味と目的が与えられているとだけはいえる――それが幻影だとしても。一方、現状に我慢できない強情で頑固な者たちは、投獄され、時間をかけて「矯正」されるか、荒野に落ち延びてキャッスルよりも遥かに少ない資源で反乱軍的な存在としてどうにか生き残ることに望みをかけるのだ。




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