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作成:2005/06/08
更新:2006/10/22

コンパス座連邦 Circinus Federation



 自由世界同盟とライラ共和国の国境線沿いに位置する辺境の蛮王国。ただ襲撃をくり返すだけの海賊たちとはひと味違う「海賊国家」です。
 Classic Battletechより。
 文中の [ ] に囲まれた注釈は、ワード・オブ・ブレイクによるもの。




機密度:コピー不可
発:VI-Rho アンジェリス・ウッドバイン司教
宛:キャメロン・サン=ジャメ戦司教

 コンパス座連邦に関するレポートであります。辺境軍のマニュアルを完成させるのに役立つでしょう。このレポートは、カノープス統一政体の情報省から入手したものです。必要なところには、私がコメントを付け加えています。このコメントは、ROMがHPG網から入手した情報や、既存のアーカイブに基づいております。どう見ても強国ではありませんが、レポートをまとめているときに、この重要でない国がいわゆる"ピラニア主義"の一例であると気づきました。ほとんど報復を受けることなく、周囲の国に脅威を与え、この地域に混乱をまき散らしているのです。




発:ダナ・アンブローズ、分析担当主任、MIM
宛:エマ・セントレラ総統
題名:コンパス座連邦の分析
日付:3063年9月4日

セントレラ総統

 送付いたしましたのは、コンパス座連邦に関する情報省の最新のレポートです。今日、彼らは準合法国家として存在します。政府機関が組織化された盗賊行為を遂行するのは、歴史に詳しい者にとって、驚くべきことではありません。政府が海賊行為を後援するのは、宇宙進出前の人類の歴史上ではよくあることでした。こういう海上の盗賊による、誘拐、殺人、奴隷化といった行為は、有名な海賊(1〜2隻の船しか持ってない)によるものよりも遙かに多かったのです。同様に、現代の逃亡傭兵や、たちの悪い独裁者による短期的な災厄は、コンパス座連邦のような真に手慣れた蛮王国が数世紀にわたって我らの世界にしてきたことに比べると見劣りします。海賊旗を翻していた地球の海賊と違って、連邦は正体を隠して襲撃を行います。立派な農業社会を隠れ蓑として使うことで、その経済を支えてきた秘密の作戦を隠蔽するのです。

 現在起きている一件で、統一政体とコンパス座連邦の関係が劇的に変わるかもしれません。マリア帝国の急激な成長が、連邦の存続を脅かしています。マリア人と比べると、コンパス人は、まだましなほうです。だからこそ、自由世界同盟は今でも連邦に秘密の軍事的援助を与えているのです。連邦を支援するのは、帝国の拡大主義者への妨害になるかもしれず、従って我らの利益にも沿うかもしれません。このレポートにある情報を使っても、そういう選択が正しいかは不明確です。最近、コンパス人が新植民地区を襲撃しているのは、中心領域の何者かが連邦を雇っていることを表しています。これは総統閣下とリャオ首相、シュラプレン護民官の同盟を脅かすものです。敵の敵は味方とできないでしょうか?



歴史 History

 連邦の起源は、傭兵連隊ブラック・ウォリアーズにさかのぼる。2769年に雇用主の自由世界同盟から契約違反で訴追された部隊だ。かろうじて同盟海軍の手から逃れたシリオ・ザカリヤ大佐と部下たちは、マーリック家への復讐を誓い、コンパス座で盗賊としての人生を始めた。

[ これはブラック・ウォリアーズの起源をほんの一部しか説明していない。ほとんどの隊員は元星間連盟の兵士で、傭兵としての儲かるキャリアを選んだ者である。傭兵ではあったが、ブラック・ウォリアーズは星間連盟防衛軍内に多くの戦友がおり、星間連盟に忠誠を誓い続けていた。記録によると、ブラック・ウォリアーズが逃亡部隊となったのは、アマリス内戦の際に、地球帝国内の簒奪軍を攻撃するのにマーリックの世界を使う許可を与えられなかったときのことである。ケニオン・マーリック総帥はアレクサンドル・ケレンスキー将軍に古い恨みを抱いていたのだ。

マーリックの補給庫を襲撃したのち、ブラック・ウォリアーズはコンパス座を訪れた。ここは辺境世界共和国が放棄した惑星で、辺境軍と戦う義勇兵を鍛える星間連盟の訓練キャンプとなっていた。ブラック・ウォリアーズはコンパス座にて、情熱に燃える義勇兵から少なくとも36個連隊を編成し、星間連盟防衛軍を助けのだった。不幸なことに、ケレンスキーがエクソダスを呼びかけたとき、通信ミスでブラック・ウォリアーズは取り残されてしまった。中心領域の雇い主を探す望みがなく、辺境に置き去りにされたブラック・ウォリアーズは、生き延びるために前の雇い主であるマーリックの世界を襲撃せざるを得なくなったのである。 -AW(アンジェリス・ウッドバイン) ]



剣と鋤 Swords and Plowshares

 連邦は2785年、公式に結成された。ライラの農民集団が、星間連盟の崩壊から逃れ、コンパス座に辿り着いたときのことである。ロベルト・マッキンタイアに率いられた農夫たちはブラック・ウォリアーズと協定を結んだ。協定によると、ウォリアーズは農夫たちを守り、生産したものを買うことになっている。引き替えに、農夫たちはウォリアーズの惑星外での活動に立ち入らず、襲撃で得られた産業機械やその他の商品を購入する。この契約が今日の連邦の基礎を作った。立派な農業社会は、政府の後援する"秘密作戦"を通して、経済を増大させた。数世紀も、ウォリアーズはほぼ正体を明かすことなく襲撃を行った。他の部隊のコールサイン、塗装、記章を使って、被害者を騙したのである。伝統を守り、今日までブラック・ウォリアーズは連邦の公式な国家機密のままである。



軽機隊の占領 Light Horse Occupation

 第一次継承権戦争で全勢力が消耗するなか、ブラック・ウォリアーズは秘密の海賊的襲撃を行うことができた。報復の心配はほとんどなかった。重要な仕事がたてこんでいた自由世界同盟諜報部は、マーリック家辺境沿いの国境に対する襲撃を、生まれたばかりのコンパス座連邦と結びつけることができないほどに忙しかったのである。

 第二次継承権戦争の最中に状況が変化した。マーリック家はライラ前線で手詰まりに達し、チャールズ・マーリック総帥(シュタイナー家を攻撃する方策を探していた)はエリートのエリダニ軽機隊と契約したのである。重量のあるライラ軍に対して戦略的に優位に立ちたかった軽機隊は、辺境に作戦基地をおけば、ライラ国境世界に駐屯する強襲連隊を避けられると気づいた。古い星間連盟の地図を取り出し、コンパス座を戦略拠点と決め、2853年に惑星を占領した。侵攻があったとき、明らかにブラック・ウォリアーズのほとんどは襲撃で惑星を離れており、10年後に軽機隊がいなくなるまで帰還しなかった。軽機隊と自由世界同盟が成功を収めた一方、この占領で、ブラック・ウォリアーズとコンパス座の人々は、中心領域、古の星間連盟、そして特にマーリック家に対する深い憎悪を深めたのである。

[ またもこの歴史は部分的なものである。軽機隊の古い通信文が我らのアーカイブに残っている。ブラック・ウォリアーズは実のところ、元星間連盟の部隊として、エリダニ軽機隊のコンパス座来訪を歓迎した。過去の盗賊行為を隠したウォリアーズは、ライラ世界襲撃のあいだ軽機隊に加入し、古い星間連盟訓練施設を提供した。軽機隊を助けることで、部隊内で地位を確立するのを望んでいた。

最終的に、ウォリアーズが星間連盟崩壊後の数十年間、海賊的襲撃をしていたことは、軽機隊指揮官の知るところとなった。伝統に縛られる傭兵にして、最高の評判を持つ軽機隊にほとんど選択の余地はなく、2862年、第二次継承権戦争が終局に近づくなかで、ブラック・ウォリアーズを見捨てた。これは1世紀近く前に星間連盟防衛軍がウォリアーズを見捨てたのとよく似ていた。二度目の裏切りで深く傷ついたブラック・ウォリアーズは、盗賊としてのライフスタイルに戻った。新たにライラに対する詳細な知識を得て、軽機隊の優れた戦術を身につけていた。軽機隊はブラック・ウォリアーズとの提携を明らかにしようとはしなかったが、2871年、名無しの辺境世界で休息、修復を行っていたとき、盗賊に襲撃を受けた。ほぼ確実に、軽機隊への復讐を求めるブラック・ウォリアーズが、襲撃の背後にあったと思われる。 -AW ]



中心領域の私掠隊 Inner Sphere Privateers

 第三次継承権戦争のあいだ、ブラック・ウォリアーズは目標リストに、ライラ共和国の惑星を付け加えた。この襲撃で裕福になった連邦は、2990年から3020年のあいだに、8つの近隣惑星を開発するに足る資源を得たのである。少ない人口と産業基盤では、これらの世界を植民できないと連邦はすぐに気づいた。この問題を解決するために、市民への移住プログラムを作りだした。このプログラムの下で、市民は新惑星で政府、企業、免許を持つ地主のために一定時間働き、移住費用をまかなうことができたのだった。すぐにこのプログラムは奴隷契約に近いものに陥った。連邦政府は、軽犯罪者と市民(追徴課税を課された者)を、大地主に貸し出し、骨の折れる農作業と開墾に従事させたのである。最終的に労働者の需要は逼迫し、ブラック・ウォリアーズは襲撃で奴隷を捕まえ始めた。第三次継承権戦争が終わるまでに、コンパス座連邦は真の蛮王国になる最後の一歩を踏み出したのである。

 第三次継承権戦争の進行中に、マーリック家とシュタイナー家はそれぞれ、ブラック・ウォリアーズの兵士を捕虜としていた。行われた尋問によってはじめて、両王家は襲撃のうちいくつかがコンパス座によるものだとわかったのである。マーリックとシュタイナーのあいだで何度か折衝が行われたのち、連邦のC.J."ボブ"マッキンタイア大統領は、成長しつつある自身の帝国が侵攻の可能性に直面していることに気がついた。そしてすぐマーリック、シュタイナー大使との合同和平協議に入ったのである。巧みな外交手腕と、捕虜返還の賢い判断によって、マッキンタイアは連邦に対する大規模な逆襲を避け、連邦大統領としての地位を高めたのだった。

 第四次継承権戦争が始まる前には、ブラック・ウォリアーズは中心領域から手を引き、辺境のより貧しい目標(カノープス統一政体、イリュリア伯爵領、のちにリムコレクションとなる世界など)に集中した。3028年、5大王家の緊張が高まるなか、ブラック・ウォリアーズは中心領域で活動するチャンスを再び得た。その年の10月、マーリック家は同盟したライラ共和国と恒星連邦に対して、ダガー作戦を発動した。共和国はリャオ家とクリタ家への攻勢を進めており、新兵の第42アヴァロン装甲機兵隊が共和国を守っている数少ない部隊であった。

 ダガー作戦の進行速度を緩めるために、装甲機兵隊はセリロス(コンパス座に近いマーリックの惑星)への逆襲を行った。セリロスは古参兵の第6オルロフ擲弾連隊の本拠地となっていた。簡単に惑星を奪取できたのではあるが、帰還した擲弾連隊は装甲機兵隊より優秀で経験豊富だった。薄く伸ばされた前線に余力はなく、装甲機兵隊はいやいやながらマッキンタイア大統領にコンタクトを取った。装甲機兵隊が窮地に陥るなか、マッキンタイアはブラック・ウォリアーズを提供する契約を結んだ。この契約で、連邦は一時的にライラの補給を受けることになる。装甲機兵隊とウォリアーズの連合軍は、最終的にセリロスで擲弾連隊に敗北したのだが、ウォリアーズはマーリックのメックを多数回収し、さらに契約で明記された共和国製のメックを受け取ったのである。こうして3032年までにブラック・ウォリアーズは2個連隊を戦力に加えたのだった。



海賊の政治家 A Priate's Politician

 コンパス座連邦は伝統的に、シリオン家(ブラック・ウォリアーズ指揮官)とマッキンタイア家(連邦大統領の民間用称号を継承している)とのあいだで、慎重に権力バランスを保っている。3032年に、アダム・シリオン将軍が折り悪く死亡し、ブラック・ウォリアーズは指導者不在に陥った。H.R."リトル・ボブ"マッキンタイア(父の心臓発作後に、連邦大統領の職務を継いだところだった)は、ブラック・ウォリアーズの指揮をとって権力の空白を埋めた。マッキンタイアの行動は、ウォリアーズ士官同士の内乱を防いだ。だが、彼は民間人の政治家であって、軍事指揮官ではなく、専門外であったために、ウォリアーズを指揮した10年間は、連邦の全体にとって災厄に近いものとなったのだ。

 コンパス座帝国という父の夢を追い求めたマッキンタイアは、3034年に隣国であるイリュリア伯爵領への侵攻を指揮し、これは完全な失敗に終わった。ウォリアーズは惑星強襲でなく襲撃のために作られていたのだ。最終的にウォリアーズは1個連隊あまりの中軽量級メックを失った。強襲級メック2個大隊からなるイリュリアの傭兵、アームズ・オブ・トールの火力に破れたのだった。

 市民に対し少なくとも形の上での勝利を必要としていたマッキンタイアは、ウォリアーズを率いてデルジダツ(ロシア連盟に所属する地図も価値もない世界)に侵攻した。その高い代償が必要とされた戦いで、ウォリアーズは3040年を通して対ゲリラ活動に拘束されたのである。戦力を半分に減らされ、1個大隊を常にデルジダツに置いていたウォリアーズは、伝統的な目標に対する海賊作戦を効果的に行えなくなった。3035年に、ウォリアーズは、マーリックの惑星シエラ襲撃の際、第5オリエント軽機兵隊に敗北し、1個大隊を丸まる失った。最後の屈辱は、ウォリアーズの将来有望な指揮官ホッパー・モリソンが1個中隊とともに出奔し、自身の海賊部隊モリソン・エクストラクターを結成したことである。マッキンタイア大統領は、10年足らずで、熟練した3個バトルメック連隊を、打ちのめされた戦力不足の2個大隊にまで減らしたのである。

 マッキンタイアが失敗に失敗を重ねていたあいだ、我慢を強いられていたマイケル・シリオンは、いま、ブラック・ウォリアーズのバトルメック中尉を率いる大尉に成長していた。3041年に成人すると、マッキンタイアに対する秘密のクーデター組織を作った。精算の日が近づいていたことを予期したマッキンタイアは、一族の資産を使って自身に忠誠を誓うバトルメック部隊、マッキンタイア親衛隊を創設していた。1ヶ月間、コンパス座の荒野で最悪の戦闘を行ったあと、ウォリアーズと親衛隊は手詰まりに達した。両者ともに戦力が1個バトルメック大隊と支援隊にまで減少していた。クーデターの背後にシリオンがいたと証明できなかったマッキンタイアは、いまだ自身の失態を認めており、ブラック・ウォリアーズから反対派の大半を追放し、指揮官の座に忠実だが有能な士官フリッツ・ドナー少佐を据えた。



帝国の影で Under The Hegemony's Shadow

 マッキンタイア大統領に対する反乱以降、コンパス座連邦とブラック・ウォリアーズはゆっくりとした再建の途上にある。ブラック・ウォリアーズは氏族侵攻で優位に立ち、3050年代前半、連邦=共和国国境線沿いの惑星で一連の襲撃を行い、大成功を収めた。同時にマッキンタイア大統領は共和国と幾度かの外交予備交渉を行い、疑いの目をブラック・ウォリアーズからそらしたのだった。

 ブラック・ウォリアーズの好む目標は、惑星ソン・ホア、惑星コーン・ケン、それに薄く広く配備されている共和国の傭兵部隊、モバイルファイアだった。だが、ライラ同盟が連邦=共和国から離脱してから数年後、ライラの諜報員はソン・ホア、コーン・ケン襲撃の犯人を探せるようになった。両攻撃の背後にコンパス座連邦があるとの証拠がすぐに見つかった。報復として、3058年、ティンブク境界域市民軍が連邦の全世界への襲撃を行った。このとき、ブラック・ウォリアーズは別の場所で襲撃を行っていたのだが、マッキンタイア親衛隊が、コンパス座首都防衛に成功した。他の連邦世界ではそううまくいかなかった。マッキンタイア首相が小規模な傭兵隊を数個雇って秩序を回復し、国境の世界に駐屯させるまで、一時的な混乱が続いたのである。

 マーリック家は氏族と直接的には戦っていなかったので、ウォリアーズは自由世界同盟からほとんど成功をつかめなかった。しかし、第5オリエント機兵連隊にはベストを尽くし(3056年の二度目の交戦)、首尾良くシェラのファーミントン地区の掠奪に成功したのである。応じて、マーリック家のオルロフ擲弾連隊がティンブク境界域市民軍に加わり、3058年の連邦世界への襲撃を行ったのだった。連邦外部の世界は、いまだライラ/マーリックの攻撃からの回復の途上にあり、ブラック・ウォリアーズによる中心領域への襲撃は一時的に減少している。だが、不安定なライラ同盟に対しブラック・ウォリアーズが優位に立つのは時間の問題である。

 辺境では、マッキンタイア大統領はマリア帝国(ロシア連盟征服に成功した)に接近し、連邦内で冒険主義を実践される可能性を減らそうとした。ショーン・オレイリィ皇帝との正式な貿易関係を確立し、ブラック・ウォリアーズとマリア軍団が組んで、新植民地区への攻撃を始めた。だが、連邦と帝国は常に相手を疑っていた。つい最近、ユリウス・オレイリィ皇帝が権力を持つと、この関係はほとんど終わってしまったのである。

 イリュリア伯爵領を征服したいま、帝国は、マッキンタイアの懇願を無視でき、連邦に侵攻の脅威を与えるまでに拡大していた。両国家間の貿易関係、共同軍事作戦は減少し、マッキンタイア大統領は帝国の脅威に対する軍事的助力を探し求めたのである。

 連邦だけが、帝国の成長を畏れる唯一の王国ではない。最近、ブラック・ウォリアーズが我らの国境世界に襲撃を行った。回収した装備から製造者番号を確認した結果、自由世界同盟の勢力が極秘裏に、余剰バトルメックや他の兵器を連邦に供給し、帝国と戦う連邦軍を支えようとしていることがわかった。トーマス・マーリック総帥はいかなる蛮王国にも軍事的援助を与えそうにないのだが、帝国の成長に脅威を受けるリム共和区や他の自由世界同盟地方国家は、独自に秘密の行動を行っているようだ。こういう勢力は、帝国より連邦の方がまだましであると見ているのは間違いない。

 最近、新植民地区への正体不明の襲撃が頻発している。回収された物資を吟味したところ、連邦が背後にいるのが明らかとなり、また中心領域の第二の勢力から援助を受けていることがわかった。この回収された物資はコムスターの倉庫から出てきたものである。ワード・オブ・ブレイクか、コムスターか、再生した星間連盟防衛軍が、極秘裏に連邦を援助しているのを示している。明らかに、これらの組織のひとつが、ブラック・ウォリアーズを雇って、三国同盟(カペラ大連邦国、カノープス統一政体、タウラス連合)を密かに妨害しようとしている。

[ 承知の通り、ROM工作員はこの件に関わっていない。だが、ヴィクター・シュタイナー=ダヴィオンは、スン=ツー・リャオの敵であることが知られている。彼にとって、リャオ首相とその仲間の注意をそらすのは、大きな利益となる。現在進めている連邦=共和国奪還のみならず、リャオ首相と対決する長き戦いの助けにもなるだろう。-AW ]



コンパス軍 Circinian Military

 部外者を混乱させるため、コンパス軍はブラック・ウォリアーズと呼ばれている。本物のブラック・ウォリアーズ(秘密の盗賊活動を行う)は、連邦軍全体の半分でしかない。もう半分はマッキンタイア親衛隊(コンパス座防衛の責務を負い、連邦大統領の監督下にある)だ。この責任分担があるから、ブラック・ウォリアーズはコンパス座を守備せずに襲撃を仕掛けられ、大統領はブラック・ウォリアーズの行動に拒否権を持てるのである。これは親衛隊とウォリアーズの内乱の原因にもなっており、コンパス軍の能力を制限している。ウォリアーズと親衛隊に加え、連邦は小隊〜中隊規模の傭兵隊を数多く雇用し、連邦外縁部の世界を守っている。



傭兵 Mercenaries

 脅威を増すマリア帝国にそなえ、連邦は最近、傭兵の数を増やした。そのうち、半ダース以上が、中隊サイズかそれより大規模なメック部隊である。この件は連邦の国庫と大統領のポケットマネーの負担になった。帝国がイリュリア伯爵領を簡単に倒したことを考えると――数年前、アームズ・オブ・トール両隊は大統領の部隊に大損害を与えていた――帝国に支配されずに済むなら割に合うと考えている。これら傭兵隊は一般に、装備と訓練の面において、平均かそれ以下なのだが、雇えるものならどんな部隊でも求めている。



階級 Ranks

 ブラック・ウォリアーズが星間連盟時代の傭兵だったことから、コンパス軍は星間連盟の組織と階級に従っている。少佐が大隊を指揮し、大尉が中隊を指揮し、中尉が小隊を指揮する。ブラック・ウォリアーズもマッキンタイア親衛隊も、三番目のバトルメック大隊が足りず、完全な連隊編成ではないのだが、大佐がそれぞれの部隊を指揮し、直接連邦大統領に従っている。

 ブラック・ウォリアーズは通常、中隊単位でバトルメックを展開する。結果、才能ある若き士官は大尉の階級を持つことになる。ブラック・ウォリアーズは、エリダニ軽機隊による10年の占領期間中に学んだ諸兵科連合戦術を採用しており、各バトルメック中隊に様々な種類の通常小隊群が付随している。対照的にマッキンタイア親衛隊はもっと大きな大隊サイズの編成を使い、中隊以下には支援部隊を組み入れない。



訓練 Training

 ウォリアーズの新兵になるには、3つのパターンがある。両親のメック、戦闘機、車両を受け継ぐ既存の戦士の子弟。様々な戦闘分野で才能を示したテック、その他の支援人員。何らかの理由で雇い主の下を離れた、元王家軍、傭兵隊の隊員である。ウォリアーズはコンパス座にある星間連盟の訓練施設を大規模に使って、技量を維持し、新たに雇った戦闘員(3パターンすべて)のテストを行う。将来有望な者たちがウォリアーズに加入する一方で、残りはマッキンタイア親衛隊への加入を誘われる。ブラック・ウォリアーズの新兵は、一連の「歓迎」を受けることになる。おそらくはウォリアーズの秘密の作戦を叩き込む目的で行われると思われる。この歓迎の儀式は残酷だとの噂があるが、真実は謎のままになっている。



制服 Uniforms

 盗賊活動が秘密厳守の性質を持つことから、ブラック・ウォリアーズは公の式典、行事に参加せず、また統一された制服を持たない。手信号、海賊旗のピン、黒い腕章、レザージャケットの絵柄などを使って、個人や階級を識別するとの報告がある。にもかかわらず、コンパス人の群衆からブラック・ウォリアーズの隊員を見つける確固とした方法はないのである。戦場では、寄せ集めの冷却ベスト、防弾チョッキ、携帯武器、他軍の制服、装備を採用しているのだが、固有の記章はつけない。ウォリアーズ内で表彰が行われるかは不明なのだが、襲撃を成功させるごとに、簡単に隠せる入れ墨をすると言われている。隊員の多くは、確実に数十年の海賊活動から得られた戦利品で裕福になっているので、それ以上の報奨は必要ないのであろう。

 マッキンタイア親衛隊は質実剛健とした機能的な礼服を使用している。黒のパンツとダークグレーのシャツ。コンパス座の紋章(牙と王冠をつけた、髑髏と交差する骨)を右の胸に、マッキンタイア家の紋章(鎌)を左につける。大隊、中隊の記章は右肩に帯びる。親衛隊内の階級を表す、様々な髑髏と骨十字の階級章を左肩に。戦闘服は同じくシンプルなもので、各分野(メック戦士、気圏戦闘機パイロット、戦車兵、歩兵)で基本的に必要とされるものだ。まだ公式な表彰制度はないが、ブラック・ウォリアーズの反乱と戦った古参兵の多くが、マッキンタイア大統領から個人的な賞を受けている。




人物 Personalities

H.R."リトル・ボブ"マッキンタイア Federation President H.R. "Little Bob" McIntyre

 まだ権力を持つのに取り憑かれているのだが、マッキンタイアは、3030年代にブラック・ウォリアーズの指揮をとったときの失敗から学び続けている。ひどく肥満し、扱いづらい蛮王国の軍事、政治の圧力で押しつぶされかかっているマッキンタイアは、現在では代理人を送り込み、より洗練されたやり方で政敵と戦っている。脅威を増すマリア帝国に対しては、傭兵との契約を増やし、中心領域の元目標から軍事援助を求めることで、慎重に応じている。ライラ移住者の子孫であるマッキンタイア家は、連邦で最大の地主である。


フリッツ・ドナー大佐 Colonel Fritz Donner

 ブラック・ウォリアーズの反乱の際、マッキンタイア大統領に忠誠を誓っていた唯一の大尉である、フリッツ・ドナーは、3042年に昇進して、全ウォリアーズの指揮をとることになった。優れた戦術家であるドナーは、過去20年の襲撃で成功し、多額の財産を得た。伝えられるところによれば、ドナーはブラック・ウォリアーズの子孫ではなく、名も無き傭兵隊から追放されたメック戦士だという。指揮官就任に異議が多数あったのは間違いないが(これまでにわずかな例外しかない)、ドナーは批判的な者を完全に黙らせている。マッキンタイアから途方もない富を与えられ、まだ健康であるドナーは、マッキンタイアが権力を持っている限りウォリアーズを指揮しそうである。




部隊

ブラック・ウォリアーズ Black Warriors:Covert bandits

 一流の傭兵から海賊に転じたブラック・ウォリアーズは、星間連盟崩壊時に、コンパス座連邦の創設を助け、その軍隊の中心となっている。一時期、メック1個大隊と支援部隊にまで減少していたウォリアーズは、再び、ゆっくりと連隊規模まで向かいつつある。ドナー大佐指揮下で20年間、襲撃に成功してきたことと、中心領域各国(他の辺境国家に対抗しようとしていた)からの極秘な軍事援助が、この拡大の要因である。

 連邦の市民は、ブラック・ウォリアーズと呼ばれる部隊の存在と、「極秘」作戦を知っているが、こういう活動の実体や、連邦の経済に寄与していることを知る者はほとんどない。連邦の外部では、匿名で攻撃を行い、敵に部隊の正体を告げることはない。しばしば敵を騙すようなコールサイン、配色、記章を用いて、他の部隊が攻撃したと思わせるようにする。ブラック・ウォリアーズの真の記章は不明である。ウォリアーズの襲撃で得られた回収物によると、小さな海賊旗をメック、車両の背面パネルに取り付けている。

士官
 マイケル・シリオン大尉(ブラック・ウォリアーズ傭兵隊を創設した星間連盟防衛軍士官たちの子孫)は、3041年、マッキンタイア大統領に対する反乱を極秘に率いた。ウォリアーズの正統な後継者であるシリオンは、いまだマッキンタイアを追い出そうとしている少数の隊員の代弁者となっている。

戦術
 軽量級部隊であるのを補うために、ウォリアーズは強化諸兵科連合中隊を展開し、ひとつの惑星の複数の目標に対する一撃離脱線を実施する。[この戦術はエリダニ軽機隊に極めて似ていることを付記する。-AW]。ウォリアーズが正面から攻撃を仕掛けることは滅多になく、敵が戦術ミス犯すよう欺瞞を用いる。戦利品と奴隷を持ち出した後で、ウォリアーズは目標を破壊し、証拠を消し去る。

ブラック・デス
メック大隊/古参兵/信頼できる
指揮官:ブランデン"デスウォッチ"ウィリアムズ少佐
 ウォリアーズは3個の指揮小隊をもつ。各大隊に1個ずつとドナー大佐の指揮小隊である。これら小隊はECM一式とウォリアーズのわずかな最新装備、機種を用いる。ほとんどが中軽量級バトルメックという状況で、最高速が85km/hを下回るものはない(ジャンプ能力を持った機体は除く)。メックの大半はライラ/マーリックの旧型機である。ウルフハウンドがヘルメス、トレビュシェットの脇で戦っている姿は、ブラック・ウォリアーズの襲撃を示唆するものである。

ブラック・ハーツ
メック大隊/古参兵/信頼できる
指揮官:キーラン・ヨザース少佐
 ブラック・ハーツは比較的、重い分類のバトルメックを用いる。これにはライラの世界ソン・ホア襲撃で得た、ハイランダー1機を含む。

ブラック・エンジェルス
強化航空大隊/古参兵/信頼できる
指揮官:アン・"レッドデス"ハーリー少佐
 地上部隊と違って、ウォリアーズは重戦闘機を好む。敵の領空に道を作り、地上部隊が罠にかかった時、猛烈な航空支援を与えるためである。機動性を保つべく、ウォリアーズは専用の降下船、航宙艦支援を持ち、パイレーツポイントのみを使う。

ブラック・ホース
強化戦車大隊/古参兵/信頼できる
指揮官:ケリー"キルロイ"ベルグストロム少佐
 ブラックホースは、偵察、救援、火力支援任務のために、ホバー戦車、VTOL小隊を各バトルメック中隊に配属し、クロストレーニングする。

ブラック・ドッグ
2個歩兵中隊/古参兵/信頼できる
指揮官:ジェベダイア・ゴースト少佐
 足の遅い歩兵隊は、電光石火の襲撃で活躍する場がないのだが、目標惑星への「事前展開」用の1個特殊中隊が配備されていると噂されている。懇願された場合、これら歩兵は、ジャンプ、対メック能力でブラック機兵隊を強化できる。通常の輸送用に、ウォリアーズは各種のカーゴトラック、メック輸送機、APCを使って、戦利品と奴隷を運ぶ。



マッキンタイア親衛隊 McIntyre House Guards

 防衛を専門とする部隊。罠や機動防御戦術を用いる。ブラック・ウォリアーズの反乱(3041年)とシュタイナー/マーリック襲撃(3058年)を除いて、大規模な戦闘は経験していない。オウサム、ゼウスなど、重量級、強襲級メックが所属している。

 マッキンタイア"A"大隊 メック大隊/一般兵/狂信的
 マッキンタイア"B"大隊 メック大隊/一般兵/狂信的
 マッキンタイア航空大隊 航空大隊/一般兵/狂信的
 マッキンタイア装甲機兵隊 戦車大隊/一般兵/狂信的
 マッキンタイア市民軍 強化歩兵大隊/一般兵/狂信的







3067年アップデート

命令変更(3067年7月21日)
受領:マイケル・シリオン大尉
作成:フリッツ・ドナー大佐

 この手紙が届いた時点で、貴官はブラック・ウォリアーズの指揮官となる。証拠として、星間連盟忠誠標章を同封した。我が国は、再設計型バトルメックを得るために、ブレイク信徒の悪魔どもと取り引きした。奴らはウォリアーズを未知の作戦に使うよう要求してきた。貴官がずっと疑っていたように、私は辺境の盗賊ではなかった。元々、私は憎き軽機隊員の一人として訓練を受けたのだ。不名誉除隊につながったあの事件は、私の長い人生において最初の陵辱だった。だが、ブレイク信徒が計画を明らかにしたとき、奴らの残酷さが私の骨すらも凍り付かせたのだ。ウォリアーズをこんなことには使えない。マッキンタイアは死んだ。いまブレイク信徒が親衛隊を支配しており、次は私を狙うだろう。我らには見解の相違があり、言いたいことはたくさんあるが、ウォリアーズを危機から救えるのは貴官の他にいない。

 貴官とウォリアーズに、ブレイク信徒とのコンタクトを避け、すぐ連邦を離れるよう命じる。私の旧部隊に行き、同封したブレイクの計画書を届けるのだ。機兵隊は何をすべきか知っているだろう。

 貴官らの祖先を二度も見捨てた中心領域人と一緒に戦うのは難しいだろうが、過去の遺恨を捨てるべき時だ。私は盗賊に英雄的行為を求めているが、災厄を前にそれが求められている。



皇帝の戦争 THE CAESAR'S WAR

 中心領域が連邦=共和国内戦に明け暮れていた一方、辺境では途方もない戦争が繰り広げられていた。小さなコンパス座連邦が、強大なマリア帝国と対峙したのだ。

 むろん、マリアの攻撃が予期できなかったわけではなかった。3054年にロシア連盟征服、3063年にイリュリア伯爵領征服と、ここ最近、マリア軍団は連邦に近づきつつあった。帝国の成長に危機を感じた連邦大統領 H.R."リトル・ボブ"マッキンタイアは、3063年、帝国新皇帝ユリウス・オレイリィに外交官を送った。彼らは死体袋に詰められて連邦に帰還した。

 自らより強い攻撃軍に直面したマッキンタイア大統領は、カノープス統一政体、リム共和区(自由世界同盟所属国家)、ワード・オブ・ブレイクに助けを求めた。彼らは連邦の襲撃に怯えていたが、帝国の拡大をもっと畏れていたのだ。だが、連邦のような蛮王国を公に支援することはできず、統一政体とリム共和区は密かに小規模で無名の傭兵中隊群を雇い入れ、連邦軍を強化した。

 これらの部隊に加え、連邦はイリュリアとロザリオの反乱を煽り、第2、第5軍団を釘付けにして、侵攻に参加させなかった。3066年1月、侵攻の第一波が、連邦世界のブラントレフ、マクシミリアンを叩いたとき、傭兵のパルチザンが第3、第6軍団に立ち向かった。マリア軍団を前にしては、ほとんど雑兵に過ぎなかったが、一撃離脱攻撃をくり返した。

 連邦は2月に、防衛戦の次の段階に移った。ブラック・ウォリアーズとマッキンタイア親衛隊は、大幅な譲歩と引き替えにワード・オブ・ブレイクから再設計型メックを受け取っていた。第4軍団の増援に化けたウォリアーズが、マクシミリアンで第3軍団の後方を叩いた。1ヶ月後、親衛隊と彼らの新兵器がブラントレフの第6軍団に襲いかかった。帝国は両世界をなんとか維持したものの、事実上、帝国を拘束し、勢いを止めたのである。

 親衛隊はコンパス座に帰還し、ウォリアーズは姿をくらました。マリア人がフラストレーションを募らせているのを感じたマッキンタイアは、コンパス座が直接強襲されるのを待った。連邦首都周辺は重防御されていたにもかかわらず、ユリウス皇帝と第1、第4軍団は着実に進軍した。マッキンタイアはカードを切らざるを得なくなった。5月11日、ブラック・ウォリアーズが、マリア主星アルファードのパイレーツポイントにジャンプした。モリツリ大隊との短い交戦後、ウォリアーズは地元のHPGステーションを目指し、コンパス座のマリア軍に存在を知らせた。ユリウス皇帝と軍団は強襲をやめ、数日以内にコンパス座を離れたのだった。



マッキンタイア親衛隊 MCINTYRE HOUSE GUARDS

 同盟したブレイク信徒から受け取った再設計型バトルメックと、マリア侵攻で回収したバトルメックで、親衛隊は重量級・強襲級メックの完全1個大隊を配備リストに加えた。連邦最初の軍需工場が、ブレイク信徒の手を借りてバルタザールIIIに建設され、親衛隊の戦力は拡大し続けると思われる。だがマッキンタイア大統領が死亡(心臓発作)したいま、親衛隊と連邦政府の大部分はワード・オブ・ブレイクの操り人形である。



ブラック・ウォリアーズ BLACK WARRIORS

 親衛隊と同じように、ブラック・ウォリアーズは、マリア帝国による侵攻後に、中軽量級メックの1個大隊を増やした。マッキンタイアの死に際して、ブラック・ウォリアーズは再び消え失せた。新たな主人であるブレイク信徒のために、秘密作戦を行っているのだと考えるコンパス人もいる。そうでない者たちは、ウォリアーズは盗賊的襲撃を仕掛ける新たな本拠地を探すために出ていったのだとしている。




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