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作成:2003/09/26

ルシエンの戦い Battle of Luthien



 氏族侵攻初期、ツカイード戦の直前に行われた、ドラコ連合首都攻防戦です。
 〈光の剣〉、ゲンヨウシャといったクリタ家の最精鋭部隊と、かつての仇敵、ウルフ竜機兵団とケルハウンドが肩を並べて氏族に立ち向かいました。
 ルシエン防衛の指揮を実際にとったのはセオドア・クリタ。大統領タカシ・クリタの息子で、「軍事の管領」というドラコ軍総司令官の座にあります。





 氏族戦争で行われたすべての軍事作戦のうち、もっとも重大な交戦は、ツカイード防衛を除けば、おそらくルシエンの戦いである。

 ドラコ連合招集軍(DCMS)にとって、この戦いは、タカシ・クリタ大統領による傭兵との取引停止が終了することを意味した。かわりに、2個の傭兵部隊――ケルハウンドとウルフ竜機兵団――が、対氏族軍戦で強力なサポートをし、20年間にわたって続いていた竜機兵団司令官ジェイムウルフと大統領の不和を棚上げさせた。しかしもっと重要なことは、この戦闘により中心領域でもっとも強烈な敵同士であったドラコ連合とハンス・ダヴィオンの連邦=共和国が、一体となり共通の敵と立ち向かったことである。

 激しい戦いがたった数時間続いただけなのに、その影響は何年分にも感じられた。

 ウォルコットの勝利後、セオドア、ホヒロ・クリタは、シン・ヨダマとともにルシエンへと撤退し、ウォルコット戦の戦闘データを検討して、スモークジャガーの次なる強襲に備えて計画を練った。スモークジャガー/ノヴァキャット前線に関する諜報リポートがどっと押し寄せてきたが、彼らはドラコ連合への攻撃を中止したように見えた。ウォルコットでの敗北によって侵攻軍は攻勢を停止した、とシン・ヨダマは意見したものの、管領(セオドア・クリタ)はその可能性を小さいものと考えた。

 スモークジャガーのキンケイド・フューレイ氏族長は、ウォルコットでの手痛い敗北にいまだ苦しんでおり、ドラコ連合への復讐の許可を求めた。ウルリック・ケレンスキー大族長はすぐ、フューレイ氏族長に目標選択の許可を与えた。もしスモークジャガーが成功したならば、抵抗軍のほとんどがスモークジャガー、ノヴァキャット、ゴーストベアに直面し、消滅するだろう。この理由から、ケレンスキー大族長はドラゴンスレイヤー作戦、ルシエン侵攻を許可した。

 管領は氏族占領域へISF士官を急派し、工作員を雇った。シン・ヨダマは、スモークジャガー、ノヴァキャット保有の世界で活動しているヤクザのセル(諜報員)とコンタクトを取った。彼らの受け取った命令は同じものだった。氏族侵攻の次の目標を探せというものだ。不運にも、これらのエージェントは、氏族の気を引いた世界を発見できず、その後二度と連絡が取れなくなった。その後、11月の後半に、コムスター内のシンパからセオドア・クリタに通告があった。氏族はドラコ連合に対する新たな侵攻を計画しており、攻撃対象はルシエンだった。

 管領はただちに、ルシエン駐留の連隊司令官たちとの緊急会合を招集した。氏族がルシエン侵攻を狙っているというセオドアの発表は、ゲンヨウシャ、第1〈光の剣〉連隊、第2ヴェガ軍団、オトモ連隊の司令官たちに、呆然とした静寂を喚起させたのだった。

 「氏族が攻撃すると決めたら、それを止める術はない」管領は軍の指導者たちに語った。「氏族の侵攻艦隊が星系に到着する前に阻止する艦艇が我々には欠けている。奴らがいったんルシエンに来てから、追い出すための方法を考えるしかない」

 オトモのオダ・ヒデヨシ大佐と、第1〈光の剣〉のシゲル・ヨシダ大佐は、すぐに自らの連隊で連合の首都を守ると誓った。ヨシダは、リュウケン部隊を国境から呼び出し、この作戦の補助にあたらせるよう提案した。セオドアは一瞬考え、そのアイディアを退けた。リュウケンは氏族占領域とドラコ連合の国境線にいてこそ、この戦争で最も価値ある役割を果たせるのだ。ルシエンにリュウケン部隊がいても、スモークジャガーが侵攻のため差し向けた兵士と交戦できるだけだ。セオドアは、リュウケンを国境地帯に置いたままにして、深浸透襲撃を行い、スモークジャガーが守備隊を多数配備せねばならないようさせる方を選んだ。

「ルシエンを失うと、その外側にある数百の世界を失うことになる」管領は部下の司令官たちに語る。「そう。首都陥落は大変な不名誉だ。しかし名誉を守るために、国のすべてを失うわけにはいかない。たとえそれがルシエンを失うことを意味するとしても、氏族に脅かされている地域から連隊を持ってくるわけにはいかない」

「もし首都を失っても、他の世界で氏族を負かせば、我らの名誉は取り戻せよう。我々は誇りや名誉や惑星のために、この戦争を戦ってはならない。我々は生き残るために、生き方を守るために、戦わねばならないのだ。もし氏族が自由ラサルハグ共和国と同じようにドラコ連合の占領に成功したとしたら、私たちと――私たちが知っていて、大事にしていたもの――が破壊されるだろう。我らはドラコ連合ではなくなる。サムライの伝統の継承者ではなくなるということだ。そして、友よ、それこそが最もつらい不名誉なのだ」

 その瞬間に、戦いが決まった。他の世界から呼び出された部隊はなかった。ゲンヨウシャ、第1〈光の剣〉、第2ヴェガ軍団、オトモがルシエンを守るのだ。それに加えて、侵略者の到着前に、市民兵連隊を招集し、武装することができた。



予期せぬ同盟 Unlikely Allies

 3051年11月27日、管領セオドア・クリタはルシエン防衛の援軍を、連邦=共和国のハンス・ダヴィオンに要請した。熟慮のあと、ハンス・ダヴィオンは、セオドアへの援助を決め、2人のもっとも信頼できる傭兵部隊司令官にメッセージを送った。ウルフ竜機兵団司令官のジェイム・ウルフと、ケルハウンド司令官のモーガン・ケルである。ルシエン防衛に参加するよう、彼らに求めた。ジェイム・ウルフとモーガン・ケルの両者はこれを受諾し、迅速に全部隊をルシエンへ輸送した。



ジャガーの準備 The Jaguar Prepares

 クリタの軍指導者たちがどのようにルシエンを守るか討議していたころ、スモークジャガー氏族とノヴァキャット氏族の指導者たちもまた計画を練っていた。ケレンスキー大族長は、キンケイド・フューレイ氏族長(スモークジャガーの氏族長)を、全侵攻の司令官として任命した。フューレイは次に、ジャガーのドリアン・ワース副族長に、ノヴァキャットのセーヴェレン・ルルー氏族長への入札(ルシエン強襲を主導する権利を賭けてのもの)を任せた。

 珍しいことであるが、フューレイ氏族長は両入札者に、軍を両氏族から引き出す許可を与えた。スモークジャガーとノヴァキャットにいるフューレイ族長のライバルたちは、ケレンスキー大族長がフューレイ族長の手を縛ったのだろうと推測した。彼の支持者たちはこう主張している。フューレイが入札のため両氏族にアクセスする許可を与えたのは、ルシエンで強固な抵抗(スモークジャガーもノヴァキャットもこれまでに直面していないようなもの)に遭遇するのを知っているからだと。ワース副族長は入札を開始した。

「私は諸兵科連合の4個銀河隊をもって、ルシエンを奪取する」とワース副族長は言った。そのあと彼は、ルルー氏族長の反対入札を待ったが、相手の反対提案を遮って、素早く自らの入札の修正を行った。「マイナス。航宙艦への艦船支援をすべて」

 ワース副族長の入札によって戦艦を取り去られてしまい、ルルー氏族長の当初の計画はめちゃくちゃになった。大急ぎでルルー氏族長は、気圏戦闘機による支援を半分にするという反対入札をした。このとき氏族の両士官にはわからなかったが、この動きは中心領域軍に戦術面での優位性を与えていたのだ。最終的にワース副族長が3個戦闘銀河隊と3個航空星団隊で、ルシエン侵攻を率いる権利を勝ち取った。

 入札が終わって、氏族司令官たちは戦略計画を整えた。ウォルコットと同じようにクリタが氏族を騙すと決めつけたフューレイ族長は、敵に対し、バッチェルも、正式な挑戦も行わないことを宣言した。結局、バッチェルは名誉ある戦士のあいだで行われる儀式なのだと、フューレイ族長は言った。そして、ウォルコットで連合の兵士には名誉が無いことがわかった、と。

 ノヴァキャットのルルー氏族長は、ドラゴンの首を狩る事を狙って、局地攻撃に賛成した。彼は侵攻を帝都周辺に集中させるべきだと論じた。一度の攻撃で都市を陥落させれば、残った惑星の防衛隊を混乱させられるからである。スモークジャガーのワース副族長は、作戦エリアを限定することに反対した。ルルー氏族長の計画を採用したら、氏族侵攻軍はクリタ防衛隊によって防御に向いた地上戦に引きずり込まれると、彼は信じていた。それはウォルコットで行われたことだ。ワース副族長は、軍を惑星上に広げることを提案した。主要都市や工業地帯を精力的に叩き、フリーバースの兵士を第二の目標に束縛させることで、氏族は防衛隊を限界点まで引き延ばすことが出来る。フューレイ氏族長は話に割って入り、彼の決断を示した。

 双方の計画には長所があった。ドラゴンスレイヤー作戦に両者の要素が加えられた。帝都奪取が侵攻の主目的となる。ジャガーのアルファ銀河隊とベータ銀河隊が惑星首都の近くに降り立ち、そこから攻勢をかける。同時に両氏族の分隊が、ルシエンを横切って第二の目標を叩く。フューレイ族長の妥協案の下で、帝都を奪取し、連合の前線部隊をつなぎ止めることに最大限の努力を傾ける。そのあいだ第二の攻撃を行い、連合軍が都市防衛隊によって支援されるのを妨げる。

 準備は完了し、3052年1月4日の午前中、氏族の航宙艦がルシエン上空に現れたとき、連合はそれを待ちかまえていた。



ルシエン星系、0530時、3052年1月4日 Luthien System, 0530 Hours, 04 January 3052

 スモークジャガーとノヴァキャットの氏族軍はルシエンに対して猛スピードで突入を始める。第3、第7ルシエン航空大隊がこの迎撃に向かった。第7隊に所属する重攻撃船の針路を開けるため、氏族の戦闘機を降下船から排除するよう、第3隊は指示されていた。

 しかしながら、第7隊のカタパルト発射ステーションにトラブルが発生し、到着が数分間遅れたのである。そのあいだ第3隊は9機の氏族戦闘機を撃破し、2隻の降下船にダメージを与えた。第7隊が最終的に到着したとき、彼らのスレイヤー、スツーカ重戦闘機は、散在している容易な目標、氏族の戦闘機を発見した。

 戦闘中、第3ノヴァキャット強襲星団隊のヤガタイ-Aは、第3隊のスレイヤー戦闘機の1機から重いダメージを加えられた。しかしクリタの戦闘機が無力化された犠牲者を始末する前に、2機のシサ戦闘機と交戦したのである。スレイヤーが強敵と決闘しているあいだ、クリタ軍シロネ戦闘機の2機(マイケル・カネーロ大尉の指揮下にあった)がぼろぼろのヤガタイを見つけ、ツシマに着陸させた。スターキャプテンイェホダは、ルシエンの戦いにおける最初の捕虜となった。



ルシエン星系、2200時、3052年1月4日 Luthien System, 2200 Hours, 04 January 3052

 多くの例に反して、ルシエンの戦いの始まりとなった航空機の交戦は、ただひとつの伝説的戦いとはならなかった。もっと正確に言えば、それは一連の短い、猛烈な小競り合いを含んでいた。連合第3航空大隊の交戦時間は20分以下だった。第7航空大隊は氏族の侵攻軍とちょうど一時間戦った。その後、侵攻軍は、2個航空大隊の作戦区域外に入り、ほぼ15時間、現実的に邪魔されずに進むことができた。ルシエン上に駐留していた連合と同盟傭兵隊の航空機は、惑星の大気圏内に進入してきた氏族の降下船と遭遇した。



タイラカナ平原、0500時、3052年1月5日 Tairakana Plains, 0500 Hours, 05 January 3052

 普通ならバッチェルによって得られる情報を得ようと試みたセオドア・クリタは、タイラカナ平原の氏族降下地点に数個偵察パトロール隊を急送した。これらパトロール隊がもたらしたデータは、管領が部下を最大限に活用する防衛計画を仕立て上げるのを助けた。



タイラカナ平原、0715時、3052年1月5日 Tairakana Plains, 0715 Hours, 05 January 3052

 帝都攻防の地上戦がはじまったのは、ジャガーガードがベイスン湖沿岸に整列したクリタの3個連隊への攻撃に着手したそのときである。

 ジャガーガードは長距離射撃で戦闘を開始したが、すぐ接近戦の範囲に足を踏み入れ、管領の最初の罠にかかった。それがオトモのメックであると信じて接近した氏族は、連合の陣地の前後に敷設された振動地雷を発見した。その後、彼らは「オトモのメック」が、応急装備のドローンであるのを知った。それらの多くにもブービートラップが仕掛けられていた。

 スモークジャガーが、地雷と「Q−メック」の効果でよろめいていると、本物のオトモが争いに参加した。突然の突撃と、地雷原の巻き起こした破壊が、スモークジャガーを停止させた。



タイラカナ平原、0845時、3052年1月5日 Tairakana Plains, 0845 Hours, 05 January 3052

 管領の罠によって、スモークジャガーは連合戦線に対する最初の調査攻撃を封じられたのだが、第1ジャガーガードのアルファ三連星隊が連合守備陣地の中央を叩いた。彼らは第1〈光の剣〉を突破して、帝都への進撃路をあけることを望んでいた。

 〈光の剣〉戦線は、ジャガーガードの猛烈な強襲をほぼ1時間に渡って持ちこたえた。その後、オトモと第2ヴェガ軍団の増援によって、侵攻軍を押し戻し始めたのである。

 次に氏族の援軍(スモークジャガーとノヴァキャットの航空攻撃に支援されていた)が到着して、この抵抗は無に帰した。



タイラカナ平原、0915時、3052年1月5日 Tairakana Plains, 0915 Hours, 05 January 3052

 スモークジャガーが第1〈光の剣〉の第二戦線に躍り込むと、オトモ、第2ヴェガ軍団、ゲンヨウシャは、侵略者への最初の全面強襲を開始した。

 ゲンヨウシャは、侵略者の右翼側面を保持していたスモークジャガーに背後からすさまじいダメージを与えた。侵攻軍が転回してゲンヨウシャに正対すると、クリタ軍は戦力の一部を第1〈光の剣〉、オトモ、第2ヴェガ軍団の方から引き抜くこととなった。

 氏族侵攻軍の敗北は明らかなように見えたが、そのときスモークジャガーとノヴァキャットは軍を結集させ、二度、連合防衛隊を強引に押し込んだ。



帝都防空域、1130時、3052年1月5日 Imperial City Air Defense Zone, 1130 Hours, 05 January 3052

 連合戦線が崩壊したあと、ノヴァキャットと打ちのめされたスモークジャガーは、氏族航空編隊に支援されながら、帝都への進軍を開始した。

 侵攻軍がベイスン湖とワセダ丘陵に近づくと、新たな段階の戦闘が始まった。氏族と傭兵の、航空優勢をかけた戦いである。ウルフ竜機兵団の戦闘機編隊と、ケルハウンドの航空師団が、氏族戦闘機に対する一連の攻撃に着手した。それは大乱戦となった。戦闘はすぐ傭兵たち(あらゆる利点をねばり強く持ち続けた)の方へと傾いた。最終的に、氏族の戦闘機は空から追い出され、ルシエン上空は中心領域防衛隊の支配下に置かれたのである。



カツラ川渓谷、1345時、3052年1月5日 Katsura River Valley, 1345 Hours, 05 January 3052

 ワセダ丘陵での戦いがはじまると、タイラカナ平原の端での交戦は、下火になっていった。スモークジャガーによる大打撃と、続いて起きたノヴァキャットによる突破で、クリタ中隊にできることはほとんどなくなった。

 ぼろぼろのスモークジャガーに、さらなるプレッシャーをかける目的で、セオドア・クリタは第2ゲンヨウシャ2個中隊とオトモ1個中隊に対して、氏族後方地域への電撃的な襲撃を始めるよう命令した。スモークジャガーの予備部隊を攻撃して、できるだけ大ダメージを与え、混乱を促すよう指示した。

 作戦中、クリタのメック2機が破壊され、ほぼすべてが深刻なダメージを負った。翻って、襲撃者は氏族のマシン8機を破壊するか、重大なダメージを与えた。侵攻軍はルシエンから撤退する際に、それらのマシンを放棄した。



シャイダン・ベイスン:アモリ軍管区、1350時、3052年1月5日 Shaidan Basin: Amori Military District, 1350 Hours, 05 January 3052

 不正確な情報を渡されていた氏族侵攻軍の作戦立案者たちは、フリーバース星団隊にアリサカ軍需工業施設群の奪取を命じた。

 その間に、ヴェルク大尉は、シャイダン・ベイスンの沼地のような田圃に、アモリ市民軍を整列させた。

 氏族の戦士たちが滑りやすい田圃を渡り始めると、ヴェルク大尉は罠を発動させた。アモリ市民軍は強固な抵抗を続け、その後、パニックを起こしてシャイダン川にかかる2本の橋から撤退するように見せかけた。あとを追う侵攻軍が橋にさしかかると、市民兵は爆薬に点火し、橋を吹き飛ばした。地上装甲部隊とミニクチに支援された市民軍は、レインスウォールン川で氏族の戦士を釘付けにした。

 完全に不利な位置に押し込められたスターキャプテンエドナは、破壊されるのを避けるために唯一できることを行った。降伏したのだ。



ノヴァキャット第2降下地点、1400時、3052年1月5日 Nova Cat Secondary Landing Zone, 1400 Hours, 05 January 3052

 タイラカナ平原とカドグチ谷での戦いが落ち着き始めると、セオドア・クリタは第6DESTに作戦「ブラックサンダー」を命令した。隊員は、氏族のユニオン級降下船ブロードソードを攻撃するため、死角から群がった。メインメックデッキでの短い交戦後、特殊部隊員はブロードソードと2名の船員を捕獲した。4名のDEST兵が戦死し、ほぼ同数が負傷した。

 その後、DESTは捕獲した降下船を、戦闘機に護衛されながら、帝都南東の主軍用空港へ空輸した。



ルシエンアーマーワークス:ジルシ市、1400時、3052年1月5日 Luthien Armor Works: Jirushi City, 1400 Hours, 05 January 3052

 ドラコ連合の機能を損なわせるために、中重量級オムニメック1個星隊が、ルシエンアーマーワークスに攻撃をかけた。そこで彼らが遭遇したのは、氏族侵攻の初期に殲滅されたメック中隊の残存兵力を結集させた部隊だった。

 施設の機械と鉄筋強化フェロクリートのビルが、現実的にすべての通信、センサー、照準システムを無効化した。エレメンタルの支援が欠けるなかで、予期していたより強力な部隊と直面した氏族の戦士たちは、降下地点に逃げ出す前に、施設内でそれなりの損害を被った。



カドグチ谷、1600時、3052年1月5日 Kado-guchi Valley, 1600 Hours, 05 January 3052

 ノヴァキャットは、ゲンヨウシャ/第1〈光の剣〉/オトモ戦線を叩き、ケルハウンド、ウルフ竜機兵団と長引く一進一退の攻防を繰り返したあとで、最終的にワセダ丘陵の突破に成功して、カドグチ谷に押し入った。すでに予期していたより頑強な抵抗に直面していたノヴァキャットは、別の強襲を警戒していた。戦いは、ドラゴン・クロウ、タカシ・クリタ大統領指揮する古参兵たちの部隊とのあいだで行われた。

 父が古代地球のサムライのような自殺的突撃を好むことを知っていたセオドア・クリタは、もっとも信頼していた副官(シン・ヨダマ少佐)を、連絡士官としてドラゴン・クロウにつけた。「タカシをつなぎ止めろ」に対するヨダマ少佐のすさまじい義務遂行について触れている戦史家も存在する。



カドグチ谷、1630時、3052年1月5日 Kado-guchi Valley, 1630 Hours, 05 January 3052

 ドラゴン・クロウがカドグチ谷の坂を駆け下り、ノヴァキャットが帝都に進む勢いを止めた。最初の谷で氏族のメック数機が猛火に沈んだ。その後、氏族軍は撤退を命じようとしたが、ケルハウンドはキャットの側面、後方への攻撃に取りかかった。



帝都、1700時、3052年1月5日 Imperial City, 1700 Hours, 05 January 3052

 カドグチ谷での争いがピークに達すると、第4ノヴァキャット正規隊の打撃三連星隊が戦闘から逃げ出した。フューレイ族長の機嫌を取ろうとするために、スターコーネル・カミルは、帝都南東部の小規模な工業区を破壊するよう部隊に命令した。氏族軍が仕事を始めるとすぐに、第7帝都市民軍の分隊と第1オメガ連隊の装甲歩兵が彼らを攻撃した。結果としてすさまじい市街戦が繰り広げられ、竜機兵団の航空攻撃がようやくノヴァキャットを撤退させたものの、重大な被害が出たのだった。



ニジュウネン砂漠、0235時、3052年1月6日 Nijunen Desert, 0235 Hours, 06 January 3052

 ルシエンの戦いにおけるもうひとつの「サイドショー」である夜間戦闘が、タカオグチの外で起きた。第225ジャガー戦闘星団隊の分隊が、第143ルシエン防衛連隊に立ち向かったのだった。

 連合の戦争継続能力を奪うために、フューレイ族長は、ニジュウネン砂漠の中央(タカオグチの南25キロメートル)に位置する、広大な鉄鉱山を破壊するように命じた。このとき、コムスターが氏族に正確な情報を提供していた。

 闇に乗じて、古参兵の第225星団隊は防衛軍に立ち向かった。防御に向いた自然の穴を活用して、アレクシ・ナグモ大佐の兵士たちはジャガーを止めるべく戦った。重大な損害によって連合連隊は撤退せざるを得なくなった。



プロローグ Prologue

 ルシエンの戦いはカドグチ谷で頂点に達し、中心領域12個連隊が氏族5個銀河隊に向かった。カドグチ谷はすさまじいキリングゾーンと化した。戦闘が終わったとき、数百機のメックから立ち上る煙が、空にインクリボンの線を引いた。氏族軍は敗北し、生き残って捕虜となった氏族の戦士はほとんどいなかった。ルシエンへ来たときに2個連隊だったケルハウンドのうち、まだ動くメックは2個大隊分程度だった。5個連隊でやってきたウルフ竜機兵団は2個連隊半にまで減った。連合の2個連隊も似たような酷いダメージを受けていた。もっともましなゲンヨウシャと第2ヴェガ軍団は、50%の損害を被っただけだった。予備連隊がもっとも傷つき、戦闘終了時に3機のメックだけが残されていた。



カドグチ谷での戦闘に参加したDCMSと同盟部隊:

ゲンヨウシャ(2個連隊/6個大隊)
オトモ(1個連隊/3個大隊)
第1〈光の剣〉(1個連隊/4個大隊)
第2ヴェガ軍団(1個連隊/3個大隊)
ドラゴン・クロウ(1個連隊/3個大隊)
ウルフ竜機兵団(5個連隊/15個大隊)
ケルハウンド(1個連隊/2個大隊)


カドグチ谷での戦闘に参加した氏族部隊:

第31スモークジャガー強襲銀河隊(3個星団隊)
第44スモークジャガー攻撃銀河隊(3個星団隊)
第315スモークジャガー戦闘銀河隊(4個星団隊)
第4ノヴァキャット強襲銀河隊(3個星団隊)
第183ノヴァキャット強襲銀河隊(5個星団隊)


36個中心領域大隊が18個氏族星団隊と相対した。




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