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作成:2012/03/21
作成:2012/04/05

グレンガリーの戦い



 ツカイードの停戦から数年を経た3056年。グレイデス軍団はまたもいかがわしい陰謀に巻き込まれ、またも絶体絶命のピンチに陥りました。指揮官グレイソン・デス・カーライル大佐の不在時に、スカイア反乱軍が本拠地であるグレンガリーを襲ったのです。
 代わりに軍団の指揮をとることになったのが、グレイソンとローリー・カルマーの一人息子、アレクサンダー・カーライルです。圧倒的に不利な状況の中で、彼は父親譲りの手腕を振るい、ぎりぎりのところで薄氷の勝利を積み重ねていきます。その戦いぶりは、まさにトレルワン、ヴェルダンディ、ヘルムの再現といえるでしょう。
 このシナリオには、かつての隊員たち、そしてその子供たちが大勢登場しています。









グレンガリーの戦い

 3055年のメリッサ・シュタイナー=ダヴィオン暗殺は、ライラ社会に衝撃を与えたが、常に分離主義者であるスカイア島は、国家主席の死んだ夫、ハンス・ダヴィオン恒星連邦国王によって葬られたスカイア独立という夢を蘇らせた。3056年4月までに、スカイア島はほとんど大々的な反乱状態となったが、連邦=共和国の官僚たちはそこまでにはならないだろうと信じていた。

 彼らは間違っていた。

 4月1日、インベーダー級航宙艦6隻からなる自由スカイア分離主義分艦隊がグレンガリー星系に入り、降下船と気圏戦闘機を切り離し、素早くグレイデス軍団のジャンプポイントにいた小規模な航空宇宙戦力を処理した。彼らは軍団の航宙艦が逃げ出すのを阻止できなかったが、ジャンプポイントと近くの軌道ステーションを奪取した。星系内に入ってきた自由スカイア反乱軍の上級士官フォン・ビューロー中将は、スカイア島の離脱とグレンガリーの領有を発表した。氏族国境に部隊の半分が駐屯し、グレイソン・デス・カーライル大佐がターカッドに移動していた軍団は、どう対応するべきか決断しようとした。しかし、デブリーズ総督はグレンガリーを守るために自らの手で問題を解決しようとし、フォン・ビューロー中将にグレンガリーの中立を保証した。軍団の士官たちが彼の決断に従うのを拒否すると、彼は士官たちを拘留した。

 デイヴィス・クレイと、自由の身にあった上級士官、アラード・キング技術少佐に率いられた軍団の軍事教練隊は、軍団の士官たちが捕らえられていた惑星防衛軍の施設への強襲の先陣にたち、彼らを開放した。しかしデブリーズ総督に忠実なグレンガリー市民軍は抵抗し、惑星上の軍団最先任戦闘士官、ゴメス・ド・ヴィラール少佐を殺したのである。市民軍が奥地に逃げると、軍団は迫り来るスカイア分離主義者部隊と戦うために結集しようとした。ド・ヴィラール少佐を失ったことは、軍団の指揮系統にとって致命的な損失であり、ディヴィス・マッコール少佐は若きアレックス・カーライルにこの穴を埋めるよう説得した。グレンガリーの各地で争いが紛糾し、戦力の大きいスカイア軍が上陸したこの状況では、唯一カーライルだけが軍団をまとめられるだろう。

 若きカーライルは、彼の戦力不足の軍団が、開けた戦場ではスカイア反乱軍の全戦力と戦えないことに気づいていた。よって、使える数個バトルテック中隊をグレンガリーのマグレブ(リニアモーターカー)に載せて即応部隊として使う計画を承認したのだった。メック部隊が到着するまで、通常部隊と歩兵部隊は敵が使いそうな降下地点を妨害するために展開されることとなった。

 最初の反乱軍はダンケルドに降下した。デヴリーズからの戦時通行証とされたものに騙され、小規模な部隊が誘い出されたのである。若干の気圏戦闘機部隊に支援された軍団のメックと歩兵からなる小部隊が、スカイアのメックと交戦し、損傷した軍団の降下船を地雷として使った罠に惹き寄せた。ダンケルドの勝利の後で支援を失った軍団は、スカイアの猛攻に対し準備を行った。

 スカイア反乱軍は次にロッホ・ショールに降下しようとした。グレンガリーで最大の淡水湖のほとりにある漁村である。第4スカイア防衛軍の1個中隊が、戦車小隊と歩兵中隊の支援を受けて、都市外部の荒地に降下船2隻を上陸させた。マグレブにメック部隊を乗せて移動したアレックス・カーライルは、敵軍が船から完全に降り切る前に到着し、限られた戦力を使って上陸中の分離主義者を圧倒し、残りを降伏させた。軍団は勝利を祝ったが、次の部隊がマグレブのターミナル都市であるコルトブリッジに向かっているとのニュースが飛び込んできた。カーライルは素早くメックをマグレブに戻す命令を出す一方で、デイヴィス・マッコール少佐が第2即応部隊を降下地点に向かわせた。

 コルトブリッジで第4スカイアはマグレブ・ターミナル駅の外部に直接降下し、グレイデス軍団の1個メック中隊と直面した。ここのスカイア軍はロッホ・ショールに降下した部隊よりも重量があり、スカイア防衛軍の地上部隊総司令官であるレオニダス・ブラノック少将がいた。グレイデスを壊滅から救ったのは、ロッホ・ショールから駆けつけたアレックス・カーライルのすでに打撃を受けていた部隊だった。損害は依然として大きいものだったが、軍団はスカイア軍を緊急降下地点(降下船が回収できるかもしれないところ)まで撤退させた。

 しかしながら、ロッホ・ショール、コルトブリッジ戦後に軍団が合流していたその時、軌道警戒システムがハリドン(モナハン高地の鉱山都市)近くの降下地点により大きいスカイア部隊が向かっていると伝えた。歩兵と装甲車両に支援されたスカイアの2個メック中隊が上陸し、グレイデス軍団の小規模な通常部隊(メックが到着するまでスカイア軍を苦しめるよう命令されていた)とだけ直面した。即応メック中隊が彼らを押しとどめようとし、軍団の残りが到着するまでそれに成功したが、それでもスカイア軍は戦力で上回っており、軍団を撤退させた。スカイア軍はついに軍団の勢いを止めたのである。

 次の数カ月間、軍団はスカイア防衛軍と鬼ごっこを行った。軍団が使ったドクトリンはヴェルダンディで確立されたもので、隠れつつも分離主義者の弱点を突いた。隠された降下船を基地にした軍団は生き残り、天の恵みを受け取った。カレド少佐の第2大隊が駐屯任務から戻り、スカイアの封鎖を抜けたのである。宇宙で深刻な損害を出したのだが、この援軍は軍団の希望であり、キリークランキーとインヴァルーリーの交戦で活用された。グレンソン・カーライルがノースウィンド・ハイランダーズを率いてグレンガリーへと帰還するまでに、軍団は分離主義者に損害を与えており、それはスカイア防衛軍を粉砕する助けとなった。スカイアの反乱は終了したのだった。





指揮官


アレクサンダー・カーライル
 階級:大佐(候補生)、グレイデス軍団指揮官
 生年月日:3037年(3056年時点で19歳)
 グレイソン・デス・カーライルと、ローリー・カルマー=カーライルの一人息子であるアレクサンダー・デュラントカーライルは、物心ついたそのときから、いつの日かグレイデス軍団を指揮するであろうことを理解していた。彼は父と同じくらいの年から、軍団の見習いとして訓練を始めた。その後、軍団はグレンガリーに移動し、ブレンダー訓練センターを開いた。そこで彼は本格的にメック戦士としての勉強を開始し、訓練用に専用のメックを与えられた。軍団の教官は、彼を他の訓練員を監督する士官候補生とすることで、未来のグレイデス軍団指揮官として鍛えはじめた。

 スカイア分離主義者がグレンガリーを攻撃したとき、候補生カーライルはダンケルドでデー・オブ・ヒーローズの式典に参加していた。軍団の指導部とともに捕らえられた彼は、他の士官とともにグレンガリー市民軍の独房から解放された。この作戦により、オールドマン(グレイソン)の息子は、いつの日か軍団を指揮するにたるなにかを持っているかもしれないことを軍団員たちに示した。むろんのこと、彼がグレイデス軍団の指揮をとる日は誰もが想像したよりも早かった。スカイア防衛軍が攻撃を仕掛けたのだ。3056年のグレンガリー戦役は若きメック戦士にとって特に残忍な地獄であった。彼は指揮下の兵士たちが戦闘で失われていくという経験から学んだ。ハリドンからリコ山道を通っての退却を余儀なくされるまでには、カーライルは得られるすべてを得ていた。最後の交戦において、逆上した彼は、前進してくるスカイア防衛軍の偵察小隊を一人で撃破するために隊形を崩して突進したのだった。

 長年、軍団の士官を務めていたデイヴィス・マッコール、ハッサン・アリ・カレド、チャールズ・ベアの経験と支援を受けて、アレックス・カーライルは軍団を小さな勝利から勝利に導き、抵抗し続けるのに成功し、ノースウィンド・ハイランダーズが救援に来るまで、スカイア防衛軍の勝利を拒絶したのである。


レオニダス・ブラノック
 階級:少将、第4スカイア防衛軍指揮官
 生年月日:3000年(3056年時点で56歳)
 サングラモア養成校を卒業したレオニダス・ブラノックは、完全なメック士官であり、スカイア忠誠派である。サングラモア卒業後、最初の配置はスカイア特戦隊だった。ここで彼は小隊指揮官、中隊指揮官を務め、第四次継承権戦争ではドラコ連合と戦った。第四次戦後のスカイア島への襲撃と、3034年にハンス・ダヴィオンが分離主義者を手荒に扱ったことは、ブラノックを自由スカイア陣営に追いやった。しかし、彼が大佐の階級にあがるまで、ライアン・シュタイナー公爵と自由スカイア指導部の注意を引くことはなかった。

 3056年、ブラノック准将(当時)はスカイア公爵の幕僚を務めており、フォン・ビューロー中将によって新設された第4スカイア防衛軍の指揮官とされた。この防衛軍は、第4、第10スカイア特戦隊の一部から作られた。彼らはグレンガリー戦役の開始が秘密裏に発表されると、ほとんど集団となって脱走し、自由スカイアであると宣言したのである。スカイア軍で長年の経験を持つことから、ブラノックは防衛軍指揮官として完璧な人選となった。彼はすぐに幕僚団を結成し、自身の連隊をまとめた。

 グレンガリーの戦いは、ブラノック少将が経験した最も激しいもののひとつとなった。ダンケルドとロッホ・ショールへの上陸に失敗したことに怒ったブラノックは、コルトブリッジに降下し、スカイア軍の上陸を成功させた。コルトブリッジから攻勢をかけた彼の怒りは不信に近いもので、軍団がゲリラ戦に消えるまで、スカイアの前線が前進するごとに野戦指揮所を移動していった。グレイデス軍団による部下たちへの絶え間ない低強度作戦は、援軍が来る前に軍団を撃破せよというフォン・ビューロー中将からのプレッシャーと併せて、ブラノックの神経と自信をすり減らしていき、3056年12月に(ノースウィンド)ハイランダーズの一部が彼と幕僚を捕まえたころには、彼はほとんど衰弱した男となっていたのだった。





参加部隊


グレイデス軍団第1大隊
 指揮官: アレクサンダー・カーライル代理大佐
 平均経験: 古参兵
 注釈: 第1メック大隊(グレイデス)は軍団の先任部隊である。グレイデスには、グレイソン・デス・カーライルがガラテアでヴェルダンディとの最初の公的な契約を結ぶ前に雇ったメック戦士たち数名がいまだ現役で在籍している。彼らは雇われて以来、すべての戦闘で最前線に立ち続けてきたのである。


グレイデス軍団第2大隊
 指揮官: ハッサン・アリ・カレド少佐
 平均経験: 古参兵
 注釈: 第2メック大隊(ハッサン・アサッシンズ)は、第1大隊ほどの歴史を持ってはいないが、それを補うのに充分な気構えを持っている。カレド少佐は最も積極的なメック戦士として部下の士官たちの規範となり、敵の弱点を突くために軍団のエリート装甲歩兵たちを最大限に利用する。ジェイドファルコンでさえも、ハッサン・アサッシンズの不屈の意思を感じた――グレイソン・カーライルはタフな問題に対処するため喜んでアサッシンを解き放つのである。


第4スカイア防衛軍
 指揮官: レオニダス・ブラノック少将
 平均経験: 一般兵
 注釈: 第4スカイア防衛軍は、リチャード・シュタイナーの軍事的冒険主義を支持することを選んだ、第4スカイア特戦隊と第10スカイア特戦隊の一部が合併して作られた。メック隊の大半は第10スカイア特戦隊であるが、通常部隊は第4の支援連隊群から来ている。この特別編成のスカイア防衛軍は、種類の異なるスカイア特戦隊部隊に共に活動する経験を与えるために結成され、また隊員たちに彼ら自身をスカイア特戦隊でなくスカイア防衛軍であると考えさせるために始まった。








プリズンブレイク
状況
ダンケルド
グレンガリー、連邦=共和国
3056年4月4日


 侵攻の危機にさらされるなかで、グレンガリーの民間指導者、ロジャー・デヴリーズ総督は、侵攻艦隊が軌道上に来る前に、フォン・ビューロー中将と軍団の中立について取り決めを結ぼうとした。彼はグレンガリーの危うい復興を駄目にするであろう戦闘を避けることを望んでおり、惑星防衛軍の全面的な支援を受けていた。デヴリーズは密かに軍団の上級士官とその家族をさらい、キャッスルヒル近くの邸宅に彼らを集めた。軍団員たちを動かすために使うと考えたのである。

 しかしながら、軍団は自分の面倒を見ることができたのだ。



 マドレ・デ・ディオス(聖母マリアよ)、あの馬鹿は父さんを捕まえやがった!

 つまりは、ぼくたちの大半がケイトの父――ロジャー・デヴリーズ総督閣下を信用していないということだ。やつは神とグレイ・カーライルの恵みで、大人たちが見てない隙に、グレンガリーの指導者となったのだが、我々は間抜けな侵攻艦隊がやってくるとは思っていなかった! それは嵐の前に木の値段を議論するようなものだろう? ぼくたちが父さんとあなたを救い出す、ママ。それができるとわかってる。アラードおじさんが指揮をとる。ぼくもあなたも彼が単なるレンチ・モンキー(テック)でないことを知っている。

 デイブ・クレイはメックを動かし、ぼくたちは1個中隊分の装甲車両とPBIを連れていく。我らはまるで羊の群れを突破する狼のように、惑星防衛軍の中を通ることだろう、ママ――見ることになるはずだ。

 これをすべての人達に伝えたい――ぼくがやるんじゃなくても。ぼくが父さんのようにやれるのをあなたが見ることのはわかっている。アレックスのようにやれるのを見るのはわかっている。奴の親父さんは大佐で、ぼくの父さんは少佐に過ぎないのだけど……

 冗談だ。愛してるよ、ママ、父さん。

 これから救いに行く。

――メック戦士候補生クリスティアーノ・ド・ヴィラールのロッカーで見つかった個人的な手紙



結末
 惑星防衛軍への攻撃は、訓練を受けていない兵士たちが実行せざるを得なかったことを考えると、非常にうまくいった。惑星防衛軍(装甲車両、歩兵隊、近くのダンケルド宇宙港からの航空支援)は激しく防戦した。軍団のメック2機が撃墜され、そのパイロット、戦車兵数名、数個分隊分の歩兵も戦死したが、惑星防衛軍は事実上消滅したのだった。

 しかし、もっとも衝撃だったのは、第1大隊指揮官、ゴメス・ド・ヴィラール少佐の死である。上級士官を欠いたことで、軍団は非正統的な指導者を採用するという解決法を取らねばならなかった――アレックス・カーライルである。








熱くなるまで火にかける
状況
ダンケルド
グレンガリー、連邦=共和国
3056年4月7日


 軌道スキャンにより、侵攻艦隊の一部がダンケルド宇宙港に向かっているのが明らかになると、デヴリーズ総督との合意に達したカーライル大佐と軍団は先陣の中隊を倒すべく、迅速に待ち伏せを計画した。滑走路周辺の重装甲ハンガーを使い、侵攻軍が降下して展開するまでに、1個強化中隊分のメック、車両、装甲歩兵を隠し、それから攻撃を行って、軍団の稼働するユニオン級降下船のうち一隻を逃がそうというのである。



 彼が計画を立てたときに、彼の中に父親を感じたことを認めねばなるまい。オールドマンはこの計画を気に入るだろう――とても。降下船を吹き飛ばすところ以外はすべて。彼はロステックに敵を詰めて殺す気だった。デニケンはそれについて尋ねたが、坊やは明快に返答した。「やつらとともにふっ飛ばしてやるか、それとも彼らが修理するのを待って、それから船を撃ち落とすか――どっちが好みだ?」

 坊やはコンパニオン小隊の指揮官に話すだけの度胸を持っていた。私だったら、大佐の息子であろうとなかろうと殴っていたに違いない。

 それでも、大勢がいて、コンパニオン小隊だけが彼に対面して、加えて坊やの候補生小隊とルッチのバトルスーツ・サイコ野郎どもが周囲を走り回っていた。私が望むのは、第一波でスカイア反乱軍が強襲部隊の1個中隊以上を倒さないように、ということだけだ――そうなったら全艦隊が降りてきて、我が軍は焼かれるだろう。

――フリーダ・バーグストローム中尉の日誌より



結末
 奇襲をかけたにもかかわらず、軍団は素早くスカイア防衛軍の先陣を圧倒することに失敗し、軍団の降下船がエンジンをかけて脱出するまで耐え忍ばねばならなかった。この重要な任務が完遂されると、軍団はスカイア防衛軍が行動不能となったユニオン級降下船〈メディア〉に隠れるような機動を行った。彼らがこのバスケットに入ると、軍団は降下船のエンジンの燃料庫を爆破し、スカイア防衛軍を破壊した。軍団の降下船が山に隠れると、軍団は損害を修理し、来るべき次の強襲に備えた。スカイア防衛軍が次の戦闘で彼らを過小評価しないのは確実だった。








ロッホ・ショール
状況
ロッホ・ショール
グレンガリー、連邦=共和国
3056年4月11日


 宇宙港での敗北の後、自由スカイア軍の降下船4隻が軌道を離れ、ロッホ・ショールの都市外部に上陸した。軌道上の監視者に見せつけるため、ダンケルドに戦力を置いていた軍団は、マグレブの貨物車にメック1個中隊分を載せてロッホ・ショールに向かわせた。軍団は見つかることなくメックを下ろし、素早く自由スカイアの降下地点に向かった。分離主義者の不意を打つことを望んでいたのである。


結末
 スカイア防衛軍の上陸に対する密かな反応と、優秀な偵察小隊群により、まだ装備の半分が降下船に乗った状態で、スカイア防衛軍をとらえることが可能となった。軍団は素早く船を降りることができたわずかな敵を圧倒した。降下船に中隊規模の砲撃を受けたスカイア防衛軍はグレイデス軍団とアレクサンダー・カーライルに降服した。だが、軍団が勝利を祝う前に、マッコール少佐はコルトブリッジへの二度目の上陸に対処中だと報告した。アレックス・カーライルと麾下の部隊は素早くマグレブに再搭乗して、急ぎ足で戻っていった。








スリー・ゲージ
状況
コルトブリッジ
グレンガリー、連邦=共和国
3056年4月11日


 アレックス・カーライル指揮下の軍団がロッホ・ショールの自由スカイア軍の降伏を受け入れていたまさにそのとき、二番目の大規模な部隊が小都市コルトブリッジ近くに直接降下を行った。デイヴィス・マッコール指揮下の即応中隊群は降下を妨げるために急いだが、スカイア防衛軍が降下地点を確保するまでに間に合わなかった。それでも軍団は前進し、敵を撤退させようと決めた。数では劣っていたが、彼らは地元にいるグレイデス軍団なのである。彼らはパンドラでジェイドファルコンに立ち向かった――スカイア分離主義者の相手もできるだろう……



 どういう意味だ? イソン・プライスが降伏した? 降伏だって?

 傭兵に? 戦おうとしているときに?

 どういうことなんだ? いや、援軍を準備しなくていい。あの女は降伏したんだ。この烏合の衆どもを片付けるまで、牢獄にいればいい。それから――もしかしたら――彼女をコクピットに戻すことになるかもしれない。

 いや、奴らがどうやってここまで来たかはわからない。もしかしたら、列車に乗ってきたのかもしれない。

 冗談だ。そうじゃなくて――

 どうやって、メックをマグレブに載せるんだ?

 平台の貨車。私が馬鹿だった。シグナル・アースガルド。カメラを全部回してくれ。マグレブのレールを見る必要がある。

 いや、撤回しない。我々は負けている――我々は連中に対処して、進まないとならない。映像を見せてくれ!

――レオニダス・ブラノック少将と幕僚の通信傍受



結末
 自由スカイア降下地点への強襲は、最初からうまくいかなかった。最後の瞬間に、ロッホ・ショールからアレックス・カーライルが駆けつけ、バランスを軍団の方に傾けたのである。中量級メックの影に隠れたスカイア防衛軍は緊急降下地点に後退し、逃げ出した。

 コルトブリッジはスカイア防衛軍にとってターニングポイントとなった。彼らはいくらかの失敗をしたが、ついに軍団に十分な損害を与えたのである。自由スカイアの計画によると、次の交戦ではより大きな打撃を与えるとこになっていた。








高価値の不動産
状況
ハリドン
グレンガリー、連邦=共和国
3056年4月17日


 グレイデス軍団が一度にあちこちでの攻撃に反応できないと確信したスカイア防衛軍は、軍団がコルトブリッジの傷を癒やす前に、ハリドン周辺の丘に兵を進めた。彼の戦略は単純だった……十分な数の兵士を下ろせば、軍団はスカイア防衛軍を降下地点から追いやることなく、手を引くことになるだろう。一度、地上に基盤を確保すれば、彼らは全軍を地上に降下させ、軍団に対する戦争を執行できる。

 グレイデス軍団は、当然、そうなることを止めないとならなかった。


結末
 軍団はハリドン上陸を邪魔しようとしたが、自由スカイア軍が強すぎたので、撤退を強いられた。スカイア防衛軍は撤退を許さず、軍団がそうしてきたように、彼らを追跡し、足止めして、可能なら殲滅しようとした。秩序正しい退却はすぐに敗走へと変わり、ロイコ・パス(山道)にたどり着いた。ここで軍団は向き直って、傷ついた機体が逃げる間に、立ちふさがった。それはまるで、トレルワンのサンダーリフト、ヴェルダンディのレジス、ヘルムの平原のようだった。

 立ち止まって、対価を血で支払ったのである。








仲間
状況
ロイコ・パス
グレンガリー、連邦=共和国
3056年4月17日


 スカイア防衛軍は軍団をロイコ・パスまで激しく押し続けたが、防衛軍が損害を受けたことで、追撃はバラバラになり、逃げる軍団に追いつけたのは重量の軽い先陣だけだった。グレイデスがロイコ・パスにたどり着くと、メック数機は停止し、振り向いて、追ってくる分離主義者を待ち伏せし、後顧の憂いを断つ準備をした。撃ち始めるとアレックス・カーライルはバーサーカーとなったようで、敵に単独で突撃した。このアレックスのアーチャーが中軽量メックの中に乱入すると、自由スカイアの強襲はつまづいた。

 アレックスの親友であるデイヴィス・カーライル・クレイがあとに続いた……



 軍団に入った初日から、デルマー・クレイに関する伝説は聞かされてきた。デルマー・クレイ。彼はオールドマン(グレイソン)、ディヴィス・マッコールと共に、ヴェルダンディで、シリウスで、ヘルムで、アルタイスで、どこでも戦ってきた。荒くれ機兵団出身の彼は、軍団という我が家を見いだし、妻のテリと息子のディヴィス・カーライル・クレイを持った。我が友、デイヴ・クレイ。我が死んだ友。

 私はハリドンから退却しているところだった――ここでアレックスから持ちこたえるように言われた。彼がついに退却を命じたとき、その声にいらだちが感じられた。ディンゴ・ジャック・マーフィーが文句を言って、アレックスに殴り倒された。まるで30歳の軍曹のようだった。20歳の候補生ではなく。それから我々はロイコ・パスに向かい、アレックスは敵を押しとどめるために引き返した……

 ……それからデイヴ・クレイが助けにいった。

 アレックスは戻ってきた。

――ケイトリン・デヴリーズの日誌より



結末
 スカイア防衛軍追撃部隊への強襲は、追撃をやめさせるに充分なものだったが、グレイデス軍団への最悪の損害はすでに出ていた。メックと車両の多くが行動不能となって放棄され、スカイア防衛軍が待ち望んでいた回収品と捕虜が手に入ったのである。防衛軍はハリドンへと退却し、上陸が本格的に始まって、フォン・ビューロー中将はすぐに本部を地上に移した。

 軍団は隠しておいた降下船基地に退却し、損害を修理しようとしたが、あまりに多くのメックとメック戦士が失われた――その中にはデイヴ・クレイ、伝説のデルマー・クレイの息子で、アレックス・カーライルの親友がいた。軍団はゲリラ戦に移り、単に軍団のほかの部隊が帰還するまで生き残るのが任務となったのである。








パイプへ
状況
インヴァルーリー
グレンガリー、連邦=共和国
3056年11月26日


 数ヶ月のゲリラ戦の後、軍団のメックを永遠に抹殺するため、スカイア防衛軍は結集し、グレンコー高地への最後の攻勢に備えた。引退した軍団員チャールズ・ベア(グレンコーに私有地を持っていた)に支援された軍団は、30年前にヘルムでグレイデス軍団が行った作戦を真似た。まずひとつを叩き、それから別の部隊を叩くのである。

 軍団はキリークランキーで最初の部隊を撃破した。この勝利はスカイア防衛軍の士気を下げ、軍団に歓迎されるべき熱狂を与えた。敵の一つを撃破し、他の敵が軍団の重要な倉庫に近づいてくるという状況において、グレイデスはインヴァルーリーに進軍し、スカイア防衛軍と最後の戦いを行った。



 あのろくでなしどもをキリークランキーで叩いてやったのはいい気分だった。我が軍は長い間移動し、攻撃して離脱し、くそったれたスカイアのろくでなしどもがグレンガリーでやりたいことはすべて監視してやった。あいつらの計画を台無しにしてやって、ちょっとした仕返しをするのはいい気分だった。神は――あー、アラー――は(カレド)少佐があいつらを喜んで痛めつけて憂さ晴らししているのを知っている。もし見るべきものがなにかあるとしたら、それはジ・アサッシンの古き良き殺人衝動だ。

 ともかく、あれは郷土週間(オールド・ホーム・ウィーク)の催しのようだった。ちょっと前にベアが戻ってきた。旧部隊にいた、チャールズ・ベア、その人だ。オールドマンの仲間たちの一人が、軍団を助けるためにクルセイダーと共に気取った歩きかたでやってきた。彼が歩いてきたときのマッコールの反応は見物だったことだろう――マックが彼を殴るか抱きしめるために近づいたのか、あるいは単に座って大声で叫び笑ったのかはわからない。それはアサシンが我らと共に戻ったときよりもひどいものだった。だれもカレドに対して叫ぶことはない。

 例外はおそらくスカイアのろくでなしどもだろう。いま彼らは泣き叫んでいる。

――クイン・ミッソナックの日誌より



結末
 スカイア防衛軍によるグレンコー高地への攻撃失敗は、戦役を軍団側に傾けるターニングポイントとなった。防衛軍は依然として強かったが、ダンケルド外部での戦いと、敵意を増しつつある民衆を支配し続けるのに使う戦力を集めることはできなかった。軍団の心理戦担当者は数ヶ月にわたって都市に軍団が勝つバトルROMを流し続け、地下活動のトーンは親軍団、反スカイア防衛軍となった。

 航宙艦を使ったフォン・ビューロー中将からスカイアへの増援の要請に対する返事はなく、応答がないまま数ヶ月が過ぎるごとに、彼は動揺の度合いを増した。ジャンプポイントが通行禁止になっているかのように、グレンガリー星系に入る船はなかったが、スカイアの計画はそれを求めていたわけではなかった。彼のいらだちは部下たち、ブラノック少将にさえも移り始めた。

 3056年12月30日に小艦隊がジャンプポイントに姿を現したとき、フォン・ビューロー中将は安堵のため息をつき、それから船からの通信を受けた。彼はショックを受けた。グレイソン・デス・カーライル大佐が軍団の残りと共に本拠地に帰還し、ノースウィンド・ハイランダーズの支援を受けていたのである。ハイランダーズが上陸すると、あとは時間の問題となった。アレックス・カーライルからの情報を受けて、新年までにスカイア防衛軍の隊員全員が検挙され、第二次スカイア反乱は終わったのだった。




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