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作成:2018/04/08
更新:2018/05/13

〈戦い〉の時代 Age of War



 〈戦い〉の時代(Age of War)は、2398年の第一次アンドゥリエン戦争から星間連盟結成の2571年まで長きにわたり続いた大規模な戦争の名称です。
 この戦いの中で、バトルメックが生まれ、封建主義が復活し、アレス条約が結ばれ、我々の知るバトルテックユニバースが姿を現します。
 "Era Digest: Age of War"から一部を抜粋して紹介します。



〈戦い〉の時代 THE AGE OF WAR

 歴史を学ぶ者は、後に中心領域と呼ばれることになる初期の国々の間で生じた戦争において、驚くようなことは見つけられないだろう。地球同盟は居住可能な惑星を求めて探検する余裕があった一方、地球同盟が最終的に恒星間共同体から撤退して残されることになった小さな原始国家群は、必要なものをすでに人が住んでいる近隣から奪うのが対費用効果に優れていると気がついたのである。ある国は相互防衛協定と貿易条約を結び、またある国は残忍な征服によって拡大した。

 第一次アンドゥリエン戦争(2398年)は一般的に〈戦い〉の時代のスタート地点と見られているが、宇宙規模の公然とした戦争は2236年のアウターリーチの反乱によってすでに始まっていた。戦いはほとんど止まることなく次の350年にわたって続いた。


拡大と収縮 EXPANSION AND CONTRACTION

 〈戦い〉の時代の根源は、人類の地球外惑星への植民の最初期にまで遡るものである。まず最初にニューアース(タウケチIV)が作られた。2235年までに、『第四次地球同盟総観』は600以上の世界に人が住んでいることを記している(こんにちにおいても、失われた同盟時代の植民地が発見されると言われている)。地球同盟内の元大国は最も近くて最も有望な世界を素早く手にしたが、最貧国でさえもそれより遠い世界に多数の市民を輸出したのである。植民者たちは地球の人口過剰と資源枯渇から自由になり、地球外の人口は爆発的に増加した。

 常として、遠方の植民者たちは、税金、遠くからの指図、無関心な権力者たちに苛立った……特に通信が宇宙の広さによって遅れた時には。あまりにも多くの植民地統治者が、地球によって任命され、絶対的な支配者であると宣言し、あるいは少なくとも不満を強める民衆にそのように見られた。大規模な反乱が勃発するのは時間の問題であった。

 2236年、地球同盟は革命を抑えるため人類宇宙の外辺部に植民地海兵隊を派遣する一方、同時に忠実な植民地には地球へ送る食料と物資を増やすよう要求した。こういった行動は民衆の意義という炎に風を送るのみであり、さらに多くの世界が反旗を翻した。

 18ヶ月以内に、いわゆるアウターリーチ反乱軍が植民地海兵隊を追い払うと、地球に幻滅がはびこり、独立派の自由党が権力についた。ほとんどすぐに、地球同盟は国境を内側に下げ、地球からわずか30光年の範囲に縮小した。いまだ地球同盟に忠誠を誓っていた数百の植民地は運命に任されたのである。多くが失敗したが、一部は繁栄した。地球同盟は閉じられた国境の中で崩壊したが、その独立した子供たちは自らを改善すべく手を付けた。


大王家の誕生 THE BIRTH OF THE GREAT HOUSES

 独立のための戦いを予想していた惑星においても、地球が突如として独立主義に走ったのは予想外であった。権力の空白の中で、急いで新しい政府が作られた。ニューアヴァロン盟約のように、大半は地球の民主主義に根ざした理想に固執しようとした。しかしながら、後に自由世界同盟になるものをのぞいて、新興の植民地群から複数惑星の同盟へと移り変わるストレスによって、より強力でより中央集権的な政権が必要とされたのである。地球後の現実を生き残るのに精一杯で権力を拡大するエネルギーを欠いていた民衆は、金のある者たちに支配された。

 地球同盟が撤退する前にも、いくつかの原始国家(有名なのはライラ共和国の創設メンバーとなるタマラー協定)が、貿易と相互防衛のために作られ始めていた。だが、2238年の後、さらに多くが現れた……マーリック共和国、オリエント連邦、チコノフ大連合、聖アイヴス商業団、シーアン至高国、辺境世界共和国、タウラス連合、カペラ帝国、スカイア連邦、ゲイルダン同盟、さらに多数である。数十年間でこれらの小国家は拡大・合併し、2366年までにその後700年にわたって中心領域を支配することになる5つの巨大な国家が結成された。

 これらの国家、特にカペラ大連邦国と隣国は、すでに国境で衝突していたが、2398年に問題が発生したのである。


新封建主義 NEO-FEUDALISM

 最初にエドワード・シチェドリーンによって指示された新封建主義のコンセプトは、大規模で利益のほとんど出ない労働者たちのニーズと、社会全体のニーズのバランスを取る試みであった。経済的なインセンティブによって、人々は一生のあいだ一箇所にとどまり、ひとつの職業につくことを奨励される。当初、世襲の貴族階級はなかったが、強力な一族が政治的王朝を作ると、誕生した。これは結局のところ、継承に関わる法的権利の伝統から、一世紀以上にわたって統治者が同じ苗字を持つことが確立されるまでの、小さな一歩に過ぎなかった。

 新封建主義はまた、巨大企業の成長を奨励した。これらのビジネスはそれ自体が政治権力となった。確かに、これは新しい社会に忠誠の概念を再導入したと言える。競合禁止契約を結ぶことは、領主に忠誠を誓うことと違いはない。



火薬樽にマッチ A MATCH TO A POWDER KEG

 カペラ国(最初は帝国で、それから共和区になり、最後に大連邦国と呼ばれた)は、数十年にわたって自由世界同盟とぶつかった。カペラは恒星連邦の「平和維持軍」に撃破されかかった(自国の首都を軌道爆撃することによってカペラは逃れることが出来た)が、侵略中の同盟に目を向け続けた。ついに、2398年、大連邦国はアンドゥリエン星系を奪還するために自由世界同盟に宣戦布告し、すべては地獄へとつながった。

 次の数年間、中心領域のすべての大国が、隣国との戦争に突入した。ライラ共和国が自由世界共和国との戦いを準備していたそのとき、ドラコ連合はライラ共和国を強襲した。恒星連邦はドラコと戦った。再編された地球帝国は、地球同盟が放棄した惑星を奪還ずくために戦った。カペラは周囲の全員と戦った。

 この時代、すべての国が絶え間なく隣国と交戦していたわけではないのだが、2398年から2500年代半ばまでの間、常に複数の国境で大規模な戦争が進行中だった。


野蛮と騎士道 BARBARISM AND CHIVALRY

 2412年、自由世界同盟はカペラの世界ティンタベルへの攻撃に着手した。歴史における、最大級の悲劇の中で、言葉足らずの命令と曖昧な交戦規定により惑星の大都市が引き裂かれ、数千人の民間人が死亡した。この紛争は、両陣営が互いを撃破するために核化学兵器を投入するまでにエスカレートした。30万人以上が殺されるか負傷した――そのうちの大半は非戦闘員だった。国家指導者たちが直々に戦闘の停止を呼びかけた後でさえも、損害が発生した。ティンタベルは数年以内に放棄された。

 カペラ大連邦国の若き首相、アレイシャ・リャオは、破壊と人命の喪失に恐れおののいた。数ヶ月後、彼女は5つの中心領域国家と4つの辺境国家のリーダーたちに個人的な呼びかけを行った。皮肉にも選ばれた惑星アレスのニューオリンピア市において、彼女は戦争による付随被害を制限するアイディアの概要を話した。この条約――6つの大勢力と、辺境世界共和国、クリタが支配するラサルハグ公国が調印した――はアレス条約として知られることになった。

 もちろん、アレス条約は戦争を終わらせなかった。実際、戦闘は拡大していったのみだった。条約加盟国はケーキを取って食べることも出来たのである。「戦争のルール」が尊重している限り、彼らは軍事作戦を少ないリスクで実行することが出来た。戦闘は機動の争いとなった……少なくともそれが戦闘員に向いているときは。このルールを強制する方法はほとんどないことから、敵の撃破を真剣に考えている国家は、非難されることなく総力戦戦術を使用することが可能であり、たいていの場合は敵を驚かせる。

 これは、残った〈戦い〉の時代の風潮を決めた。恐ろしい残虐行為に終止符が打たれた、ほぼ無血の長い紛争である。


その他の代表団 THE OTHER DELEGATIONS

 アレイシャ・リャオが、中心領域の指導者6名と、「小国」の中で最大の4ヶ国の指導者をアレス会談に招待したということはよく知られている。大半の人々(初期のコムスター公文書保存係含む)は、たびたび外世界同盟とカノープス統一政体が参加者に入っていると考えている。しかし、合意のなされた時点において、どちらも参加していなかった。

 実際に招待されたのは連合ヒンズー共同体とラサルハグ公国である。兄の賛成の下、ラサルハグ公国のアダム・クリタは条約に調印した。連合ヒンズー共同体は、血に飢えていたからではなく、条約が「戦争を正当化する」と恐怖して、異議を唱えた。連合ヒンズー共同体は攻勢作戦に興味がなく、近隣国と良い関係にあったことから、彼らは丁重に合意を拒否したのだった。



理由なき戦争 WAR WITHOUT REASON

 アレス条約のおかげで、大規模な恒星間戦役(その多くが落ち着き始めていた)は、新しい命を燃やした。ほとんどすべての国境が行ったり来たりした。それは各国が弱点(実際にそうであろうと、そう見えるだけであろうと)すべてに戦争を仕掛けたからだ。

 2418年、カペラ大連邦国は、新しい紛争を仕掛けた最初の国となった。アーダン・バクスター新首相の下、タウラス連合を強襲したのである。タウラスはアレス条約調印を拒否していたことから(皮肉にも、カペラを信用していなかったために)バクスターは容赦をすることがなかった。その後の2423年、彼は突如として方向転換し、自由世界同盟の孤立化を狙った防衛条約「一千世界合同」への支持を求めた。タウラス人はこの条約を拒否した一方で、両者の関係は注意深い中立に改善された。

 恒星連邦にとっては、戦争よりも政治的な混乱の時期であったが、拡大する地球帝国相手にいくつかの世界を失った。同じく、ドラコ連合はフォン・ロアーズ家が権力の座について全政体が変化していた際にもライラ共和国への作戦行動を続けていた。

 自由世界同盟はライラ共和国、カペラ大連邦国に対する戦争をほとんど抑えることはなかった。議会が総帥の拡大する権力を制限しようと無駄な努力をしたので、自由世界同盟もまた政治的混乱を見たのだった。

 中心領域国家の中で地球帝国だけが大きく前進したのだが、それは領土の拡大ではなく、技術上のものであった。


新たな騎士 NEW KNIGHTS

 2439年、地球帝国は最初のバトルメック、MSK-5Sマッキーを導入した。このような巨大歩行マシンは一世紀近くに渡って工業用途で使用されていたのだが、マッキーはそれまで想像も出来なかった頑丈と洗練の水準をもたらしたのである。帝国はこの新型機を厳しいセキュリティの下に置き、存在を知らしめるのに絶好の時と場所を伺っていた。同時に、途方もない資源を投入して、メック工場を建設し、新型機を開発した。

 2443年、帝国はスークでクリタの装甲中隊相手にメック1個小隊を展開した。巨大なマッキーは、現代の水準からすると原始的だったが、たやすくドラコの重戦車を処理した。新しい戦争マシンのニュースが野火のように中心領域に広まり、すぐにすべての国家が自分たちのバトルメック開発に目を向けた。

 2455年前半、ライラ共和国の奇襲部隊チームがヘスペラスの帝国工場を襲撃した。このプロメテウス作戦でバトルメックの技術データと図面が多数奪われ、ライラは自分たちのメックをすぐにも生産することが可能になった。ライラ共和国のメックは、2459年のローリックで初陣を迎え、そのうち1機がゲラルド・マーリック総帥を踏みつぶしたのである。

 他の3家はバトルメックの秘密をライラから入手したが、それぞれ違った形でだった。恒星連邦はその優秀な情報ネットワークを通してプロメテウス作戦の成功をつかみ、技術と引き換えに大金を支払うという交渉を行った。一方のドラコ連合は、単純にコベントリの主力メック工場を強襲し、必要なものを奪った。自由世界同盟(先進のライラに対して自分たちのバトルメックを投入するのに必死だった)は複雑なスパイ作戦を行い、共和国の科学者を亡命させた……わずか数年後、カペラ大連邦国は同じ手法を自由世界同盟に使った。

 バトルメックの秘密が明らかになると、すべての国家が出来る限りの大量生産を行った。これらのマシンは、アレス条約の教訓に最適であると証明された。小規模なメック戦力は、非常に狭いエリアで機動可能であり、兵站支援はほとんど必要なく、付随被害を少なくすることが出来た(逆に、その数からでは計り知れないほどの荒廃を引き起こすこともまた出来た)。メック戦士は現代に蘇った騎士であり、まず最初にメディアのスポットライトを浴びたが、後に正真正銘の真実となった――地球帝国の貴族目録や後の類似品がそれに少なからぬ影響を与えた。


意図せぬ結果 UNINTENDED CONSEQUENCES

 バトルメックの登場は、中心領域を紛争の狂気へと追いやったように見える。国境沿いの世界は絶え間ない侵攻と逆侵攻の温床となった。この時期の作戦の詳細な分析はほとんど不可能であるが、2475年から2551年まですべての国家が隣国と戦争していたと見て間違いない。

 国家を支配する一族にとっては、大きな政治動乱の時期でもあった。恒星連邦は15年におよぶ三すくみの内戦に苦しんだ。ライラ共和国はシュタイナー家と強力なライバルたちの衝突があったが、戦争が勃発することはなかった。ドラコ連合だけが、有名なシリワン・マカリスター=クリタの行動によってこのような問題を避けることが出来た。シリワンは2人の危険な大統領を毒殺したと疑われている(136年に及ぶ人生で3度以上、大統領の座についている)。


恒星大連邦国? THE CONFEDERATED SUNS?

 ダヴィオン内戦が終結した後、カペラ人がヴァルナイ一族をかくまっていたにもかかわらず、2546年までにカペラ大連邦国と恒星連邦の関係は大きく改善されていた。両国の間での核兵器の使用を禁止するベル協定の調印によってさらなる希望が生まれた。とりわけテリル・ダヴィオンが恒星連邦の後継者候補となってサリシア・リャオ首相の結婚候補となってからは。この政略結婚は、連邦共和国同盟の数世紀前に、2つの国家を合併させるかもしれないものだった。

 残念ながらサリシア・リャオはテリル・ダヴィオンを生理的に受け入れず、そしてテリル・ダヴィオン(カサンドラ・ダヴィオンとディヴィッド・ヴァルナイの私生児)はダヴィオンの家系図に入れられることはなかった。2565年、大連邦国はロジャー・ヴァルナイの実を結ばぬ反乱に兵站的支援を提供し、両国の関係は修復不可能となったのだった。



平和への前奏曲 PRELUDES TO PEACE

 イアン・キャメロン(2549年、地球帝国総統に就任)はいつも、人類を一つの旗の下に集結させることを夢見ていた。彼の動機は一般に信じられるほど純粋なものではなかったが、彼はこの時代の人類を蝕む紛争を終わらせられると信じていた。だが、彼は帝国の意図が誰にも信用されないこともまたわかっていた。帝国は〈戦い〉の時代に他の国と同じように行動していたからである。

 帝国のイメージをアップするチャンスはすぐに来た。2551年、テレンス・リャオがカペラ大連邦国の首相に就任した。有能なリーダーであることを証明したがった彼は、またもアンドゥリエン星系への侵攻に着手した。イアン・キャメロンは素早く割って入り、第三次アンドゥリエン戦争をほとんど始まりすらする前に終わらせる交渉を持ちかけたのである。

 自由世界同盟総帥、アルバート・マーリックは帝国の申し出に感銘を受け、自由世界同盟、地球人、大連邦国の秘密三者会談に同意した。このサミットは5年近く続き、その間、大連邦国と同盟は国境をまたいで散発的な砲火を交えた。しかし、会談の集大成となったのは、両国の自由貿易協定と非侵略協定という驚異的なものであった。この300年間ではじめて、人類の半分が平和を見たのである。

 テレンス・リャオ首相が打ちのめされた大連邦国の再建に集中すると、マーリックとキャメロンは統一された「星間連盟」というイアンの夢に取り組み続けた。次に二人は国境を共有するライラ共和国に目を向けた。賄賂、小細工、トラシャル・シュタイナーの顧問への徹底的潜入によって、彼らは頭の固い共和国のリーダーにターカッド協定へのサインをさせた。

 これで残りは恒星連邦とドラコ連合になった。ここでマーリックとキャメロンは軽く踏みつけねばならなかった。この二人の指導者は難しい政治的立場に置かれており、仇敵に屈したかのように見える行動で民衆を怒らせるリスクを冒すことは出来なかった。外交的な提案は10年近くにわたって失敗し、それから2567年、イアン・キャメロンが素晴らしい解決策を生み出した彼は連合が攻撃してきたら帝国の強力な軍隊が恒星連邦の仲間になると密かに持ちかけた……そしてクリタに対しても同じことをした。アレクサンダー・ダヴィオンは同年の10月、ニューアヴァロン協定に調印し、ヘヒロ・クリタは2年後、似たような似たようなヴェガ条約にサインした。

 その後の2年間、6ヶ国の間で交渉が続き、誰もが思っていたよりも良い結果が残された。2571年、第一君主となったイアン・キャメロンの庇護の下、星間連盟が公式に発足した。2世紀近くにわたる〈戦い〉の時代は終わったのだ。

 辺境の国々にとって、星間連盟の創設は残忍な戦争と最終的な征服につながるのだが、それについてはこの巻の範囲外である。










戦時期 A TIME OF WARS

 〈戦い〉の時代は、紛争の続いた期間だったが、中でも目立った戦役がいくつか存在する。


第一次アンドゥリエン戦争(2398〜2404年) FIRST ANDURIEN WAR (2398-2404)

 2360年後半に自由世界同盟がアンドゥリエンを占領して以来、アンドゥリエンと周囲の世界を巡って30年間の小競り合いが続いたが、2498年、カペラが大規模な逆侵攻を行い、第一次アンドゥリエン戦争――そして〈戦い〉の時代を開始した。

 この戦役は侵攻軍である大連邦国にとってうまくいかないものだった。自由世界同盟は防衛陣地の構築にちょっとした時間をかけた。カペラ人は何度も価値のない獲得をしては撃退されるのみであった。

 最終的に、アレイシャ・リャオが和平を求めた。アンドゥリエンは同盟の統治下に戻り、10年後に帰属を決める惑星市民の投票が行われた。だが、自由世界同盟は他の世界では敵対を続け、ティンタヴェルの残虐行為でその頂点に達し、アレス条約が結ばれたのだった。


辺境戦争(2418〜2422年) RIM WAR (2418-2422)

 アレイシャ・リャオの後継者、アーダン・バクスターは大連邦国に共和制の理想を再導入するべきだと信じていた。計画の一部として、彼はCCAFの規模を縮小する一方、「国境の海賊」(すなわちタウラス連合)に対する戦役を実施した。

 両国の間で20年にわたる衝突があったので、バクスターの行動は前例のないものではなかった。だが、CCAFは軍縮中に紛争を始めることで無理を強いられた。経験豊かな士官たちが退役したことから、経験に欠ける下級士官たちがこの戦争を実行した。これらの若き士官たちは、紛争をどのように実施するかを把握していないことがすぐに判明した。戦略・戦術的な愚かさは、残虐さによって覆い隠された。タウラス連合はアレス条約に調印してなかったことから、CCAFは「野蛮な」敵に対して自由に大量破壊兵器を使っていいと感じていた。

 2422年、わずか2つの星系を占領した後、バクスターは戦争を終わらせた――両陣営の軍・民に莫大な被害を犠牲として。


ロングマーチ(2463〜2468年) THE LONG MARCH (2463-2468)

 ライラ共和国は、〈戦い〉の時代の間、隣国の手で大きな損失を出した。だが、運命の逆転により、彼らは地球帝国以外でバトルメックを配備した最初の国家となったのである。ドラコ連合と自由世界同盟がどうにか技術を盗むのに成功した後、アリステア・シュタイナー国家主席は自国の優位が失われる前に先制攻撃を急いだ。

 この戦役は野心的な二正面攻勢によって始まった。一つ目はセント・ジョンの世界に陽動で向かい、それからドラコ連合宙域の深くに方向転換した。二つ目は失われた惑星を奪還するため、単純に自由世界同盟を打ち負かす手はずだった。

 ロングマーチはうまくいった。ドラコへの侵入によってクリタの防衛部隊はたやすく引き剥がされ、すべての目標を達成するのに成功した。自由世界同盟方面では、最初の2つの目標を苦もなく達成した。だが、アルラ・ボレアリスは遙かに弾力性があると判明し、2467年までにいまだ占領されておらず、両方面への作戦は突如として停止した。アリステア・シュタイナーが暗殺されたのである。


ダヴィオン内戦(2525〜2540年) DAVION CIVIL WAR (2525-2540)

 ダヴィオン内戦の発端となったのは、若きアレクサンダー・ダヴィオンの摂政5人を選抜したことである。共同摂政という政治的な夢のバランスが取られることはなく、この妥協による統治で、摂政たち(ダヴィオンの2人の伯母、カッサンドラ・ヴァーネイとローラ・ダヴィオンが主)は自分たちの軍を集めて、互いに対する陰謀を企んだ。

 アレクサンダーが成人する直前に問題は発生した。アレクサンダーが身を隠した後、元摂政たちは公然と戦いを始めた。アレクサンダーは自国内でゲリラ戦をする羽目に陥った。若き国王は奮闘し、かつての敵を自分の旗の下に集めすらしたのである。

 この紛争は2540年に終わった。ローラ・ダヴィオンを2533年に下し、2537年ヴァーネイ軍を惑星メグランの宇宙海戦で倒したアレクサンダーは、最後の障害であるドミトリ・ロストフ将軍と直面し、惑星ロビンソンでのメック決闘で殺害したのだった。


第二次アンドゥリエン戦争(2528〜2531年) FIRST ANDURIEN WAR (2398-2404)

 2528年、カペラ大連邦国はこの重要な惑星を奪還する大規模な作戦に再び着手した。カルヴィン"ザ・マッド"リャオはアンドゥリエンとアンドゥリエン公爵の娘を勝ち取ることに主眼を置いていた。各世界が行ったり来たりするに従い、リャオ首相はさらなる狂気に陥った。紅色槍機兵団のある隊員がこの大虐殺を止めるためカルヴィンを暗殺し、地球帝国総統デボラ・キャメロンが協定を仲介するのが可能となった。

 ミカ・リャオ(名前を変えてニューアヴァロンに隠れていた)はすぐさま平和条約に調印し、再びアンドゥリエンを自由世界同盟に譲り渡したのだった。


第三次アンドゥリエン戦争(2551〜2556年) THIRD ANDURIEN WAR (2551-2556)

 テレンス・リャオは、臣民たち、隣国、地球帝国に対して自分の価値をなんとしても証明したがっていた。よって、自由世界同盟に対する戦争を宣言するという単純で理論的な一歩を踏んだ。

 5年間におよぶ成果なき戦争の後、帝国が介入し、地球での交渉によって、テレンスがアンドゥリエンをついに勝ち取ったのみならず、後に星間連盟へと変貌を遂げる秘密の協定を結んだのだった。










技術の進歩 THE MARCH OF TECHNOLOGY

 〈戦い〉の時代は、第一次継承権戦争までは過去最大規模の紛争だったのだが、科学と工業のすべての分野で驚くべき進歩を見た。この時代の軍隊は、宇宙時代前の兵士でもすぐに扱えるような戦車と小火器から始めて、都市をなぎ倒す巨大な二足歩行戦争機械で終わった。この軍隊がアレス条約の監視下で戦ったのは多くの助けとなった。各国は失われた装備や人員を補充することなく、資金を研究と生産追加に注ぎ込むことが出来たのである。

 地球帝国が、地球と周辺の資源豊富な惑星を所有していたおかげで、進歩の先頭に立った。その最も目に見える貢献はバトルメックであるが、この時代の170年で、数千の新しい発明と技術が地球帝国内で生まれたのだった。


軍事技術 COMBAT TECHNOLOGIES

 前述の通り、この時期で最大の進歩はバトルメックの開発である。最初は「プリミティブ」だったが、急速に発展した(この時代のメックで、最後の有名なプリミティブは、DV-1S デルヴィッシュであり、マッキーの8年後に登場した)。シャドウホークなど現代の戦場で重要な役割を果たしているシャーシの多くは〈戦い〉の時代に登場した。

 戦闘車両もまた大きく飛躍したが、2400年代半ば以降はメックの後塵を拝することになった。巨大で強力な兵器はもちろんのこと、メックに途方もない耐久性を与えている超高密度な融解型装甲が車両にも使用された。

 気圏戦闘機、降下船、戦艦は、〈戦い〉の時代の前から存在していたが変貌を遂げた。今まで以上に大きくて高性能な艦が、マッケナ時代初期の戦艦にとって変わった。戦艦と航宙艦は小型(コンパクト)で安価(スタンダード)なジャンプコアの恩恵を受け、それがこの二つの艦種を厳密に分けることになった。その一方で、降下船は役割と武装をのぞいて変化はほとんどなかった。それまでの巨大な汎用貨物船から、特定の専門を持ち発進ベイを備えた戦闘用の輸送船へと、徐々に変わっていったのである。

 ほとんど進化を見せなかった兵科は歩兵であったが、ヴィブロブレードや携帯PPCのような個人兵器の進化により、通常歩兵は戦場において打撃力を増したのだった。


医療技術 MEDICAL TECHNOLOGIES

 この時代の医療の特徴は、病気に対する理解が深まったことと、軽度の遺伝子療法である。人類の平均寿命と健康状態は地球同盟の標準を越えて進化したが、諸外国より帝国の裕福な世界で顕著だった。

 サイバネティクスもまた進歩した。その大半は本質的に実用本位だったが、現在と同じような烙印を伴うものであった――理由は違うが。機械による代用品はワード・オブ・ブレイクのマネイドミニという不愉快な記憶を呼び起こすが、〈戦い〉の時代には無作法な富のひけらかしと見なされた。帝国において、サイバネティクスが大王家や(特に)辺境よりも一般的であり、非難されづらかったのは驚くべきことではない。


存在しなかったもの WHAT DIDN’T EXIST

 しかし、これらの驚くべき進歩があったとしても、現代で見られる一部の技術は2400年代、2500年代には存在しなかった。たとえば、高周波発生装置(HPG)はこの時代になかったものの代表格である。情報、ニュース、娯楽、軍令は、航宙艦の配達人を通して移動するものだった。これはなぜこの時期の大規模な戦役がすぐに勢いを失うかの説明を助けるものである……指揮官たちはたいていの場合、自軍を確認するため偵察任務を行う必要があり、恒星間作戦の速度と範囲を大きく制限されたのである。










新機種 NEW UNITS


中心領域車両


マーズデンI主力戦車 Marsden I MBT
重量: 65トン
移動: 無限軌道
パワープラント: アークトゥルス・エンジンCM・エリート
巡航速度: 32 キロメートル/時
最高速度: 54 キロメートル/時
装甲板: AAバトルプレート
武装:
 アークトゥルス・アームズ・ロングアームシリーズ・オートキャノン 1門
 アルファウェーブSRM6ランチャー 1門
 ジェネラルA70モデル・マシンガン 1門
製造元: アークトゥルス・アームズ
 主要工場: アークトゥルス
通信システム: アークシグナル100
照準・追尾システム: スコーピオン・シリーズAFCシステム




概要
 マーズデンの名前を使った最初の戦車である本車は、70年近くにわたってライラ共和国の主力であった。当時の基準でも、最速で装甲が厚く最高の兵器プラットフォームというわけではなかったが、飛び抜けた長所がないことはバランスのいい装甲戦闘車両であることを意味したのである。マーズデンI主力戦車は、〈戦い〉の時代の直前の2369年に登場し、マーズデンIIが公式に後継車種となった2463年まで現役であった。だが、マーズデンIは惑星市民軍の駐屯部隊に残り続け、初期のバトルメックとやりあう性能を持っていた。

 マーズデンI最後の大規模な実戦投入は再統合戦争におけるものだった。有名なタマラー・タイガースが大量の旧型戦車を輸送車列護衛と哨戒線警備に用いて、バトルメックと新型の装甲車両を攻勢作戦に回したのである。その結果、タイガースの戦車部隊は、2409年の「激怒の日」に、怒り狂ったヴィオラ・シュタイナー国家主席と第4親衛隊1個中隊の攻撃を受けた最初の部隊となった。戦車兵たちはよく戦ったが、狂戦士と化した国家主席と従者たちが駆る近代的なメックにはかなわなかった。国家指導者の手で殺された117名の兵士たちのうち、多くがマーズデンIの搭乗員だった。シュタイナーは後悔したが、この戦車がついに旧式化したことを証明してしまい、再統合戦争の後、残った車体も退役したのだった。



性能
 原型のマーズデンは、対装甲用の大型の主砲を中心とし、副砲の機関銃が歩兵から身を守るという1900年代半ばの戦車のレイアウトを真似ている。主砲と機関銃は当時の標準の通り、砲塔に配置されている。だが、巨大な短距離ミサイルラック(と大量の予備弾薬)は、マーズデンをユニークなものとした。SRMは砲塔に搭載されず、前面の傾斜の中に埋め込まれている。このランチャーが何度か斉射すれば、装甲を破壊し、移動システムを無力化することが出来る。こうして、精度の高いオートキャノンが強力な劣化ウラン弾を敵の車両の奥深くに貫通させることが可能となるのだ。SRMラックは特殊な状況に対応して非通常弾頭を搭載することも出来る。1個装甲歩兵小隊の指揮戦車は、1トン分の煙幕ロケットを搭載し、味方の移動を援護することがよくある。後継機種のマーズデンIIが設計思想を変更することなく装甲と武装を強化するだけにとどまったのは、本車が頑丈で単純であることの証左となっている。

 歴史上、マーズデンIの派生型はさほど多くない。改造品の大多数は、通信装置や照準システムの小規模なアップグレードである。アークトゥルス・アームズによって少数が工兵用車両や架橋戦車にコンバートされたが、この分野においては同社のビュッフェル・シリーズ支援車が優秀であると証明されている。

 〈戦い〉の戦争の最中、数カ国がマーズデンI(後のマーズデンII)に影響された戦車を投入した。名前と部品は違うものだが、戦場ではほとんど同じものと言えるほど似ていた。





タイプ: マーズデンI主力戦車
技術ベース: 中心領域
移動: 無限軌道(中型)
装備レーティング: C/C-X-X/E
重量: 65トン
戦闘価値: 500

                            装備重量
内部中枢:                       17
エンジン:                           22
タイプ:           ICE
    巡航時MP:      3
    限界時MP:       5
放熱器:            0              0
燃料:            450km             1
砲塔:                          1
装甲板(BAR7):        134             7.5


            装甲値
前面           30
右/左側面        26/26
背面           25
砲塔           27

武器・装備       配置       重量
AC/5          砲塔        8
弾薬(AC)20      車体        1
マシンガン       砲塔        .5
弾薬(MG)100      車体        .5
SRM-6          前面        3
弾薬(SRM)30      車体        2
先進火器管制装置    車体       1.5

戦車兵: 9名(士官2名、兵卒2名、砲手5名)
積載: なし

付記: 装甲シャーシで改造されている。
   以下の機種別特徴を持つ。旧式/2470(4ポイント)、整備が容易(1ポイント)。




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